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自分にとってはストーリーよりも技巧(フラッシュフォワード)の小説だった。



『ミス・ブロウディの青春 (1973年) 』『ミス・ブロウディの青春 (白水Uブックス 203 海外小説永遠の本棚)』['15年]『ブロディ先生の青春』['15年/河出書房新社]


「ミス・ブロディの青春」('69年/英)マギー・スミス
1930年代、エディンバラの寄宿制一貫女子学校での、風変わりな女性教師ブロウディ先生と生徒たちの物語。思い込みの激しいブロウディ先生は、自分の世界観に相応しい生徒を育てるために、サンディをはじめとす6名のブロウディ組と呼ばれる少数精鋭的生徒のグループを結成し独特の教育を進める。しかし、思春期の学生の変化は早く、かつてはブロウディに憧れた彼女らも16歳の時点では各々の道を進みたがるようになる―。、
ミュリエル・スパーク(1918-2006)が1961年に発表した小説(原題:The Prime of Miss Jean Brodie)で、英ガーディアン紙「必読小説1000冊決定版リスト」に「運転席」などと共に入っている作品(彼女の作品は5作も入っている)。物語はブロウディ先生とそれを囲む十代前半の生徒たちの話ということで、小説からは結構ガーリームービーっぽい雰囲気も感じました。
それにしても、このブロウディ先生はちょっとやりすぎというかエキセントリックな感じが強くて、自意識としては正義感に満ちているのでしょうが、ブロウディ組の御しやすい生徒を自分の恋愛のために利用したり、あるいはその内の1人に自身の恋愛願望を代行させたりして(その結果、その娘はスペインで爆死することになる)、結構あざとくもあり、また結果として残酷でもあって、シンパシーが湧きにくい感じです。
そもそも、ブロウディ先生は思想的にファシズムに傾倒してしてしまって、これを生徒に押しつけるのもどうかしています(自身がヒトラーやムッソリーニになってしまっている)。遂には生徒の裏切りに遭い、彼女は職を失うことになるのですが、あまり気の毒な気はしませんでした。
むしろ、彼女の自身の信念に沿った行為がどんどん危険なものとなっていくという点で結構ブラックというか、ミステリではありませんが「いやミス」的でもあります。作者の本当の狙いも、実はそのあたりにあるのではないかと思われ、少なくとも、作者はブロウディ先生を突き放しているように思えます。
ただし個人的には、ストーリーよりもその構成に特徴があるように思いました。所謂フラッシュフォワードと言うか、「将来」に起きることやその結末が、「現在」進行中の物語の合間合間に語られています。そのため、ブロウディ先生がやがて生徒に裏切られ、学校を去るということも、読んでいて早い段階から分かります(先に挙げた生徒の悲惨な最期も、実際にはずっと先の話なのだが、読んでいる途中で明かされてしまう)。
あとは、生徒の内の誰がブロウディ先生を裏切ったかということがミステリ的ですが、これもおおよそ検討はつかなくもないです。作者は、ミス・ブロウディを通して、人間の思念の暴走とその成れの果ての悲惨を描き、そこに、作者が得意とするフラシュフォワード的な手法を織り込むことで「決定論」的な世界を構築してみせたものと思われます。ただ、どちらかと言えばやはりストーリーよりも技巧の小説でした(自分にとっては)。
この作品は、ロナルド・ニーム監督(「ポセイドン・アドベンチャー」('72年)、「オデッサ・ファイル」('74年))、マギー・スミス(「ナイル殺人事件」('78年)、「地中海殺人事件」('82年))主演で「ミス・ブロディの青春」('69年/英)として映画化され(邦題でブロウディ→ブロディに。そのブロディ組は6人から4人に圧縮されていた)、マギー・スミスが1969年・第23回「英国アカデミー賞」並びに1970年・第42回「アカデミー賞」の主演女優賞をW受賞しています。
1930年頃、スコットランドの首都エジンバラ。マーシア・ブレーンという名門女子高があった。先生たちは、みな地味だったが、一人ミス・ジーン・ブロディ(マギー・スミス)だけは違っていた。派手な服装、ウィットに富んだ会話そして自分はいま、青春のただ中にいると公言してはばからなかった。彼女に反感を持った生徒もいたが、逆に、彼女に惹かれ〈ブロディ一家〉と称する生徒たちもいた。サンディ(パメラ・フランクリン)、モニカ、ジェニー、メリーの四人組である。一方ブロディは、美術教師テディ(ロバート・スティーブンス)の恋人なのだが、彼の態度が煮えきらないので、音楽教師ゴードンに心を移した。こんな一件に生徒たちが関心を持たないはずがない。加えて学校側も攻撃に出る。ブロディの立場は少しずつ悪くなっていく。やがてゴードンが離れ、テディも離れていく。だがブロディはテディのことを忘れることが出来ない。テディとて同じこと。ブロディの代りにサンディをモデルにして絵を描いていたが、顔だけはブロディになってしまう。このことはサンディの心をいたく傷つけた。やがてブロディにとって進退きわまりない事件が持ちあがった。スペイン戦争を賛美した彼女の教えに、生徒の一人メリーが兄を訪ねて戦場に行ったのである。そして空爆に遭い死んでしまう。攻撃の矢は一斉にブロディに向けられ、ついに退職するところまで追い詰められた。頼みの生徒サンディも彼女に背を向ける。ここに来て初めて、ブロディは、自らの青春が終りを告げたことを知るのだった―。
映画では、冒頭からマギー・スミス演じるブロディ先生は学校に新しい息吹をもたらすエースであるかのように颯爽と登場し、女性校長はそれを良く思わない頑固な守旧派のような形で始まって、この点では小説と同じですが、やがてすぐにブロウディ先生はどこかおかしいということが伝わってくるようになっています。それと、映像で見るせいか、性的抑圧が強い印象を受け(実際に複数の男性教師から誘惑される)、彼女の行動の根底にそうしたものがあることを原作以上に窺わせるものとなっていました(サンディって原作ではメガネかけていたっけ。美術教師テディの絵のヌードモデルになるのは原作と同じで、原作では愛人になる)。
映画では小説のようなフラシュフォワード的な手法は使われておらず、ブロウディ先生が生徒の裏切りに遭って学校を追われるまでが描かれていますが、学校の授業で、ムッソリー率いる黒シャツ隊の映像を生徒に見せて賛美するのはやはりマズいでしょう。ミス・ブロウディというキャラクターの歪みを分かりやすく描いていましたが、それが画一的な描かれ方にはなっておらず、一定のリアリティを保っているところは、マギー・スミスの演技力によると思われます。
美術教師テディが最初ブロディの代りにサンディとは別の女生徒をモデルに絵を描くも、目がマギー・スミスになっていて女生徒とは似ておらず、彼が描く少年少女や、果ては犬までもがマギー・スミスの目になっているのがご愛敬でした(行き詰ってヌード画家に転身した?)。
「ミス・ブロディの青春 [DVD]」

「ミス・ブロディの青春」●原題:THE PRIME OF MISS JEAN BRODIE●制作年:1969年●制作国:イギリス●監督:ロナルド・ニーム●製作:ロバート・フライアー●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:テッド・ムーア●音楽:ロッド・マッキューン●時間:102分●出演:マギー・スミス/ロバート・スティーブンス/パメラ・フランクリン/ゴードン・ジャクソン/ジェーン・カー/セリア・ジョンソン/シャーリー・スティードマン/ダイアン・グレイソン●日本公開:1969/11●配給:20世紀フォックス((評価:★★★☆)
【2015年叢書化[白水社Uブックス(岡 照雄:訳)/2015年単行本[河出書房新社(『ブロディ先生の青春』木村政則:訳)]】


(エスプリ)を体現したような作品。1958年・第11回「カンヌ国際映画祭 審査員特別賞」を受賞したほか、米国で1958年・第31回「アカデミー賞外国語映画賞」を受賞していますが、この作品ではそのモダンな住宅のセットも話題になり、ジャック・タチのモダニスト的な資質も注目されました(映画は小説化されていて、文庫化もされている)。
一方、「ぼくの伯父さんの休暇)」は、海辺の避暑地にやって来てバカンスを楽しむユロ氏が、行く先々で珍妙な騒動を巻き起こすというもので、ストーリーらしいストーリーは存在せず、いわゆる「スケッチ・コメディー」(ポートレイト・ムービー形式のコメディ)に仕立てていますが、こちらもフランス人らしいエスプリの効いたコメディ作品であり、「ぼくの伯父さん」以前にジャック・タチのスタイルが出来上がっていたことを窺わせます。「ぼくの伯父さん」と違ってモノクロ映画ですが、これはこれで強い印象がありました。この作品は、1953年度の「


・エテックスはどこに出ていたか思い出せない。また、
「ぼくの伯父さん」●原題:MON ONCLE(英題:My Uncle)●制作年:1958年●制作国:フランス・イタリア●監督・製作・脚本:ジャック・タチ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アラン・ロマン/フランク・バルチェッリーニ●時間:120分●出演:ジャック・
タチ/アラン・ベクール/ジャン=ピエール・ゾラ/アドリアンヌ・セルヴァンティ/ドミニク・マリー/ルシアン・フレジス/ベティ・シュナイダー/イヴォンヌ・アルノー/ピエール・エテックス(?)●日本公開1958/12:●配給:新外映●最初に観た場所:日仏学院(82-09-25)(評価:★★★★)
「ぼくの伯父さんの休暇」●原題:LES VACANCES DE MONSIEUR HULOT(英題:Monsieur Hulot's Holiday, Mr. Hulot's Holiday)●制作
年:1953年●制作国:フランス●監督・製作・脚本:ジャック・タチ●撮影:フレッド・オラン/ジャック・タチ●音楽:アラン・ロマン●時間:88分●出演:ジャック・タチ/ナタリー・パスコー/ルイ・ペロー/アンドレ・デュボワ●日本公開:1963/08●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:日仏学院(82-09-25)(評価:★★★★)


世界恐慌で破産した大富豪(ピエール・エテックス)は、元恋人であるサーカスの曲馬師と再会し、その存在を知らなかった幼い息子との3人での地方巡業の旅に出る。やがて成長した息子はヨーヨー(ピエール・エテックス二役)という人気クラウンになり、第2次世界大戦が終わると、かつて父が暮らしていた城を再建するべく奔走する。空中ブランコ乗りのイゾリーナ(クローディーヌ・オージェ)に恋したヨーヨーは、興行プロデューサーとして成功するが―。
世界恐慌までを字幕付きのサイレントで、その後をトーキーで描いています。エテックスの盟友で後に「ブルジョワジーの秘かな愉しみ」などを手がける脚本家ジャン=クロード・カリエールが共同脚本を担当。日本では「ピエール・エテックス レトロスペクティブ」(2022年12月24日~2023年1月20日、東京・シアター・イメージフォーラム)で劇場初公開されました。
最初の方の大豪邸における大富豪の暮らしぶりから圧巻。就寝するだけのことに何人の執事らが関わるのか数えきれす、楽団が来てセレナーデか何か奏でたり、大勢の女性たちが体をほぐすに来たりと、一体この邸宅で何人雇っているのでしょうか。立派な岩風呂にこれから自分が入るのかと思ったら、飼い犬用だったというのには笑いました。でも、大富豪自身はどこか虚無的。曲馬師の娘に恋することで人生の喜びに目覚める―。
やがて世界恐慌。ビルの屋上から自殺者が降ってくるので気をつけなければならない。富豪も破産し、女性と再び出会うが、彼女の傍にいたのは自分の息子だった。そして3人でサーカスの旅へ。ライバルのサーカス一行が「ザンパノとジェルソミーナ」(フェデリコ・フェリーニの 「
やがて、主役は富豪からクラウンとして有名になった息子にバトンタッチされます(言ってもどちらもエテックスが演じているだが)。彼は子供時代に父の屋敷に入り込んで彷徨い(そのシーンはベルイマン映画のよう)、その時の憧れから父の屋敷を取り戻そうと頑張り、クラウンとして稼ぎをすべて屋敷の修復に費やします。その間、人気スターゆえの煩わしさや、製作者としての何かとままらない気持ちも描かれます(前年公開のフェリーニの「
そして、遂に屋敷を完全修復し、大勢を招いてお披露目パーティーを。離れて暮らす両親(画面に顔は出てこない)を呼び寄せ、屋敷の中を見るよう言いますが、両親は中には入らず去っていきます。そのことで、華やかだが空疎な豪邸を後に、ヨーヨー自身も象に乗って去っていく―やはり、ヨーヨーはサーカスの世界に帰っていくということでしょう。ちょっと寂しいけれど、いいエンディングでした。
さらに、そうした「映画愛」以上に「サーカス愛」に溢れるコメディ映画で、ピエール・エテックスもこの5年後、フェデリコ・フェリーニ監督の「フェリーニの道化師」('70年・伊)に出演します。かつての名道化師を追いかけていたフェリーニが、彼らの演技を収めたフィルムのある家を訪ねます。そのフィルムを持っていたのが、名
コメディアンで映画監督でもあったピエール・エテックス(「道化師」に関しては本邦ではピエール・エテの表記)だったと(部屋のバックに「ヨーヨー」のポスターが見える)。
、フェリーニ監督がイタリア国営放送のために制作したドキュメンタリー風テレビ映画で、実際にはドキュメンタリーに見える部分も演出されているようです(実在の道化師たちの談話がフェリーニ率いる虚実混淆の"撮影隊"によってフィルムに収められる様子が描かれることで、映画は幻想と現実が幾重にも入り組んだ複雑な様相を呈している)。1970年の12月25日(クリスマスの日)にテレビ放映され、同月27日から劇場公開されていますが、傑作との評判に7年後の1976年12月に日本でも公開の運びとなっています。サーカスやピエロといった消えゆく文化への惜別の念と再興への希望という点で、「ヨーヨー」「道化師」の両作品は通底しているように思いました。
ピエール・エテックスはこのほかに自身の監督作以外に10数本の映画に出演していて、映画を撮ることは早くにやめてしまいましたが(1971製作のヴァカンスに出かけるフランス人たちを辛辣ともいえる視線で捉え(「ぼくの伯父さんの休暇」へのオマージュか)、ビュルレスク的に構成した初のドキュメンタリー「


⦅「フェリーニの道化師」あらすじ⦆
現在、道化師はどうなったか。フェリーニ監督は「恐怖を誘う強烈な喜劇性と大騒ぎの楽しさ。彼らの属していた世界はない。サーカス小屋はグランドだ。観客に子どもらしい単純さはない」と現状を調べようと取材チームを組み各地を取材する。イタリアのオルフェイサーカスを訪ねた(サーカスではアニタ・エクバーグと偶然会う)。座長は「現代の道化師は、長いものは喜ばれない。笑いは10分でいい」「昔の道化師は終わった。今は扮装も変わった」と語る。オーギュストという道化師は、酒びたりで病院に入院したが、ヌーボーサーカスの道化を見るため病院を抜け出し、芸を見ながら亡くなった。パリの「冬」サーカス場は、全盛は終わり観客が子どもだけ、そこにいるバプティストやチャップリンの娘はフランス巡業を夢見ている。スペインの道化師リベルは道化師の学校を作れと主張。ピエール・エテ監督は道化師の記録映画を持っていたが、フイルムが焼けて見られない。ロリオ、バリオなどはアルバムを見せ過去を語るだけ。そしてクライマックスの道化師の死をテーマにした大掛かりな道化師を結集した圧巻の芸が展開される。やがて終演し、道化師たちは退場して消灯される。その中で一人の道化師はトランペットで「引き潮」を吹き鳴らし、死んだ仲間の存在を確かめまる。すると死んだ仲間が現れ、一緒に舞台で演奏し合い静かに楽屋へ去る。
「ヨーヨー」●原題:YOYO●制作年:1964年●制作国:フランス●監督:ピエール・エテックス●製作:ポール・クロードン●脚本:ピエール・エテックス/ジャン=クロード・カリエール●撮影:ジャン・ボフティ●時間:98分●出演:ピエール・エテックス/リュス・クランクローディーヌ・オージェ●日本公開:2022/12●配給:ザジフィルムズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(24-08-06)(評価:★★★★)
「フェリーニの道化師」●原題:FELLINI:I CROWNS●制作年:1970年●制作国:イタリア●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:エリオ・スカルダマーリャ/ウーゴ・グエッラ●脚本:フ
ェデリコ・フェリーニ/ベルナルディーノ・ザッポーニ●撮影:ダリオ・ディ・パルマ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:110分●出演:フェデリコ・フェリーニ/アニタ・エクバ
ーグ/ピエール・エテックス/ジョセフィン・チャップリン/グスターブ・フラッテリーニ/バティスト/アニイ・フラッテリーニ/リアナ/トリスタン・ルミイ/フランコ・ミグリオリーニ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-02-07)(評価:★★★★)●併映:「フェリーニのアマルコルド」(フェデリコ・フェリーニ)
「桃源郷」●原題:PAYS DE COCAGNE(英題:Land of Milk and Honey)●制作年:1971年●制作国:フランス●監督:ピエール・エテックス●製作:ポール・クロードン●脚本:ピエール・エテックス●撮影:ジャン・ボフティ●音楽:ホセ・パディーヤ●時間:80分●ドキュメンタリー●日本公開:2022/12●配給:東京日仏学院[自主上映](「フレンチタッチ・コメディ!〜30年から現在までのフランス映画のコメディ特集」(15-11-20))(評価:★★★?)
ポスター 「

富豪に嫁いだ姉を頼り、蘇州にやってきた少年・忠良(チョンリァン)。そこでは当主の愛娘・如意(ルーイー)を始め、皆が阿片
に酔いしれていた。退廃した空気の中、最愛の姉に弄ばれ絶望した忠良は屋敷を飛びだす。時は過ぎ、1920年代の魔都・上海。心に傷を負って女性を愛せなくなった忠良(張国栄(レスリー・チャン))は、人妻を誘惑して金品を巻き上げる上海マフィア配下のジゴロとなっていた。そんな彼に、マフィアのボスが故郷の女富豪を誘惑する様に命令を下す。彼女こそ、美しく成長した如意(鞏俐(コン・リー))だった。様々な思惑を交差させながら、二人はいつしか本気で愛し合うようになるが―。
1996年公開作で、陳凱歌(チェン・カイコー)監督のもと、「
というわけでカタルシス効果は弱いですが、デカダンスな雰囲気を醸す映像はスタイリッシュでもあります。室内シーンが多いせいか、クリストファー・ドイルっぽくはなかったかもしれませんが、この映像美を味わうだけでも価値はあるように思いました。

当時30歳のコン・リーが奇麗。忠良が行くナイトクラブの垢抜けない少女(アヘン中毒者?)は周迅(ジョウ・シュン)だったのかあ。婁燁(ロウ・イエ)監督の 「
「花の影」●原題:風月(英:TEMPTRESS MOON)●制作年:1996年●制作国:香港・中国●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:湯君年(タン・チュンニェン)/徐楓(シュー・フォン)●脚本:舒琪(シュウ・チー)●撮影: クリストファー・ドイル(杜可風)●音楽: 趙季平(チャオ・チーピン)●原案: 陳凱歌/王安憶(ワン・アンイー)●時間:128分●出演:張國榮(レスリー・チャン)/鞏俐(コン・リー)/林健華(リン・チェンホア)/何賽飛(ホー・サイ
フェイ)/呉大維(デヴィッド・ウー)/謝添(シェ・ティェン)/周野芒(ジョウ・イェマン)/周潔(ジョウ・ジェ)/葛香亭(コー・シャンホン)/周迅(ジョウ・シュン)●日本公開:1996/12●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★☆)●最初に観た場所[4K版]:池袋・新文芸坐(24-02-26)


第1章のミニシアターというものが未知数だった「80年代」のトップは新宿「シネマスクエアとうきゅう」(81年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン)。企業系ミニシアターの第1号で、1席7万円の椅子が売り物でした。柳町光男のインディペンデント作品「
が16週上映(コピーは"中世は壮大なミステリー"。教養映画風だが実はエンタメ映画)、今で言うストーカーが主人公で、買い手がつかなかったのを買い取ったというパトリス・ルコントの「
六本木「俳優座シネマテン」(81年3月、「俳優座劇場」内にオープン)の「テン」は夜10時から映画上映するためだけでなく、ブレイク・エドワーズのコメディ「テン」(79)から
とったとのこと。トリュフォーの、フランスの文豪ヴィクトル・ユーゴーの次女アデルの狂気的な恋の情念を描いた「アデルの恋の物語」(75)はここでした。ルキノ・ヴィスコンティが看板監督で、「地獄に堕ちた勇者ども」(69)や「
81年オープンのもう1館は、渋谷「パルコ・スペース・パート3」。ヴィスコンティの「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(43)(ヴィスコンティの処女作。原作はアメリカのハードボイルド作家ジェームズ・M・ケイン。映画での舞台は北イタリア、ポー河沿いのドライブイン・レストランに。ファシスト政権下でオールロケ撮影を敢行した作品)、「
行機でやってきて、ホテルに泊まり1週間通い詰めた人もいたとのこと。カルトムービーとインディーズのメッカでもあり、日本では長年オクラだった「ピンク・フラミンゴ」(72)は、86年に初めてここで正式上映されたとのこと、個人的には84年に「アートシアター新宿」で観ていましたが、その内容は正直、個人的理解を超えていました。99年に映画常設館「CINE QUINTO(シネクイント)」となり、これは第2章で「シネクイント」として取り上げられています。個人的には、初期の頃観た作品では、フランスの女流監督コリーヌ・セローの「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」(77)、チェコスロバキアのカレル・スミーチェクの「少女・少女たち」(79)、台湾の侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「
「シネヴィヴァン六本木」(83年11月「WAVEビル」地下1階にオープン)は、オープン2本目でゴッドフリー・レジオ監督の「コヤニスカッティ」(82)を上映、アメリカの大都市やモニュメントバレーなどを映したイメージビデオ風ドキュメンタリー。コヤニスカッティとはホピ族の言葉で「平衡を失った世界」。延々と続いた早回しシーンがスローモーションに転じた途端に眠気に襲われました。アンドレイ・タルコフスキー監督の「ノスタルジア」(83)が84年に7週間上映、ビクトル・エリセ監督の「
監督の「
「ユーロスペース」(82年、渋谷駅南口桜丘町「東武富士ビル」2Fにオープン)は、85年6月のデヴィッド・クローネンバーグ監督の「
ーヴン・キング原作の「
「シャンテ・シネ」(87年、日比谷映画跡地にオープン)は、今の
「TOHOシネマズ シャンテ」。ここの大ヒット作は何と言っても88年公開の「ベルリン・天使の詩」(87)で、30週のロングランという単館ロード全体の記録を打ち立てたとのこと(動員数は16.6万人)。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)の「
「シネスイッチ銀座」(87年にオープン)は、個人的には前身の「銀座文化劇場・銀座ニュー文化」さらに「銀座文化1・2」の頃から利用していましたが、"シネスイッチ"は、洋画と邦画の2チャンネルを持つという意味でのネーミングだそうで、ジェームズ・アイヴォリーの「
第2章のブームの到来の「90年代」のトップは渋谷「シネマライズ」(86年6月、渋谷 スペイン坂上「ライズビル」地下1階にオープン)。劇場の認知度を上げたのは86年7月公開のトニー・リチャードソンの「
2011年に閉館した「シネセゾン渋谷」 (85年11月、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン)はリバイバル上映に個性があり、市川崑の「
「ル・シネマ」(89年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン)の方は東急系で、92年にかけられたジャック・リヴェット監督(原作はバルザック)のフランス映画「
主演の「花の影」(96)も17週上映、今世紀に入ってからは、張藝謀(チャン・イーモウ)監督、チャン・ツィイー主演の「
「恵比寿ガーデンシネマ」(94年10月、恵比寿ガーデンテラス弐番館内にオープン)は、ポール・オースター原作、ウェイン・ワン監督の、ニューヨークのタバコ屋の人間模様を描いた「スモーク」(95)のような渋い作品をやっていました。個人的には、ロイ・アンダーソンの「
第2章の最後は、「岩波ホール」(68年オープン、74年から映画常設館に)。サタジット・レイ「
4年2月にロードショー。4週間後にホールは満席になったといいます(因みに、サタジット・レイの「大地のうた三部作」のうち「大河のうた」は結末がハッピーエンドでないため、インドでも興行上は振るわなかった)。その後も、75年にルネ・クレールの「

「隣の女」●原題:LA FEMME DA'COTE(英:THE WOMAN NEXT DOOR)●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン/ジャン・オーレル●撮影:ウィリアム・ルプシャンスキー●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:107分●出演:ジェラール・ドパルデュー/ファニー・アルダン/アンリ・ガルサン/ミシェル・ボートガルトネル/ヴェロニク・シルヴェール/ロジェ・ファン・ホール/オリヴィエ・ベッカール●日本公開:1982/12●配給:東映ユニバースフィルム●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「アメリカの夜(映画に愛をこめて アメリカの夜)」●原題:LA NUIT AMERICAINE(英:DAY FOR NIGHT)●制作年:1973年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●撮影:ピエール=ウィリアム・グレン●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:115分●出演:ジャクリーン・ビセット/ヴァレンティナ・コルテーゼ/ジャン=ピエール・オーモン/ジャン=ピエール・レオ/アレクサンドラ・スチュワルト/フランソワ・トリュフォー/ジャン・シャンピオン/ナタリー・バイ/ダニ/ベルナール・メネズ●日本公開:1974/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★☆)●併映:「隣の女」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「終電車」●原題:LE DERNIER METRO(英:THE LAST METRO)●制作年:1980年●制作国:フランス●監督:フランソワ・トリュフォー●製作:マルセル・ベルベール●脚本:フランソワ・トリュフォー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:134分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ジェラール・ドパルデュー/ジャン・ポワレ/ハインツ・ベネント/サビーヌ・オードパン/ジャン=ルイ・リシャール/アンドレア・フェレオル/モーリス・リッシュ/ポーレット・デュボスト/マルセル・ベルベール●日本公開:1982/04●配給:東宝東和●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-10-01)(評価:★★★)●併映:「アメリカの夜」(フランソワ・トリュフォー)/「終電車」(フランソワ・トリュフォー)
「薔薇の名前」●原題:LE NOM DE LA ROSE●制作年:1986年●制作国:フランス・イタリア・西ドイツ●監督:ジャン=ジャック・アノー●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:アンドリュー・バーキン●撮影:トニーノ・デリ・コリ●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:ウンベルト・エーコ●時間:132分●出演:ショーン・コネリー/クリスチャン・スレーター/F・マーリー・エイブラハム/ロン・パールマン/フェオドール・シャリアピン・ジュニア/エリヤ・バスキン/ヴォルカー・プレクテル/ミシェル・ロンスダール/ヴァレンティナ・ヴァルガス●日本公開:1987/12●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所(再見):新宿武蔵野館(23-04-18)(評価:★★★)
「赤い影」●原題:DON'T LOOK NOW●制作年:1973年●制作国:イギリス・イタリア●監督: ニコラス・ローグ●製作:ピーター・カーツ●脚本:アラン・スコット/クリス・ブライアント●撮影:アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ピノ・ドナッジオ●原作:ダフニ・デュ・モーリエ「いまは見てはだめ」●時間:110分●出演:ドナルド・サザーランド/ジュリー・クリスティ
/ヒラリー・メイソン/クレリア・マタニア/マッシモ・セラート/レナート・スカルパ/ジョルジョ・トレスティーニ/レオポルド・トリエステ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(83-09-11)(評価:★★★)
「マーラー」●原題:MAHLER●制作年:1974年●制作国:イギリス●監督・脚本:ケン・ラッセル●製作:ロイ・ベアード●撮影:ディック・ブッシュ●音楽:グスタフ・マーラー/リヒャルト・ワーグナー/ダナ・ブラッドセル●時間:115分●出演:ロバート・パウエル/ジョージナ・ヘイル/リー・モンタギュー/ロザリー・クラチェリー●日本公開:1987/06●配給:俳優座シネマテン=フジテレビ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(87-06-21)(評価:★★★)
「ケレル(ファスビンダーのケレル)」●原題:QUERELLE●制作年:1982年●制作国:西ドイツ/フランス●監督:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●脚本:
ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー/ブルクハルト・ドリースト●撮影: クサファー・シュヴァルツェンベルガー/ヨーゼフ・バブラ●音楽:ペール・ラーベン●原作:ジャン・ジュネ『ブレストの乱暴者』●時間:108分●出演:ブラッド・デイヴィス/ジャンヌ・モロー/フランコ・ネロ/ギュンター・カウフマン/ハンノ・ポーシェル●日本公開:1985/05●配給:人力飛行機舎=デラ●最初に観た場所:新宿・シネマスクエアとうきゅう(88-05-28)(評価:★★★?)
「アデルの恋の物語」●原題:L'HISTOIRE D'ADELE H.(英:THE STORY OF ADELE H.)●制作年:1975年●制作国:フランス●監督・製作:フランソワ・トリュフォー●脚本:フランソワ・トリュフォー/ジャン・グリュオー/シュザンヌ・シフマン●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:モーリス・ジョベール●原作:フランセス・ヴァーノア・ギール『アデル・ユーゴーの日記』●時間:96分●出演:イザベル・アジャーニ/ブルース・ロビンソン/シルヴィア・マリオット/ジョゼフ・ブラッチリー/イヴリー・ギトリス●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:大塚名画座(78-12-08)(評価:★★★★)●併映:「二十歳の恋」(フランソワ・トリュフォー/ロベルト・ロッセリーニ/石原慎太郎/マックス・オフュルス/アンジェイ・ワイダ)
「地獄に堕ちた勇者ども」●原題:THE DAMNED(独:Götterdämmerung)●制作年:1969年●制作国:イタリア・西ドイツ・スイス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:アルフレッド・レヴィ/エヴェール・アギャッグ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/ニコラ・バダルッコ/エンリコ・メディオーリ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ/パスクァリーノ・デ・サンティス●
音楽:モーリス・ジャール●時間:96分●出演:ダーク・ボガード/イングリッド・チューリン/ヘルムート・バーガー/ラインハルト・コルデホフ/ルノー・ヴェルレー/アルブレヒト・シェーンハルス/ウンベルト・オルシーニ/シャーロット・ランプリング/ヘルムート・グリーム/フロリンダ・ボルカン●日本公開:1970/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:大塚名画座(79-02-07)(評価:★★★★)●併映:「ベニスに死す」(ルキノ・ヴィスコンティ)
「カッコーの巣の上で」●原題:ONE FLEW OVER THE CUCKOO'S NEST●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ミロス・フォアマン●製作:ソウル・ゼインツ/マイケル・ダグラス●脚本:ローレンス・ホーベン/ボー・ゴールドマン●撮影:ハスケル・ウェクスラー●音楽:ジャック・ニッチェ●原作:ケン・キージー『カッコウの巣の上で』●時間:133分●出演:
ジャック・ニコルソン/ルイーズ・フレッチャー/マイケル・ベリーマン/ウィリアム・レッドフィールド/ブラッド・ドゥーリフ/クリストファー・ロイド/ダニー・デヴィート/ウィル・サンプソン●日本公開:1976/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82-03-13)(評価:★★★★)●併映:「ビッグ・ウェンズデー」(ジョン・ミリアス)
「光と影のバラード」●原題:Свой среди чужих, чужой среди своих(英題:AT HOME AMONG STRANGERS)●制作年:1974年●制作国:ソ連●監督:ニキータ・ミハルコフ●脚本:エドゥアルド・ボロダルスキー/ニキータ・ミハルコフ●撮影:パーベル・レベシェフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●時間:95分●出演:ユーリー・ボガトィリョフ/アナトリー・ソロニーツィン/セルゲイ・シャクーロフ/アレクサンドル・ポロホフシコフ/ニコライ・パストゥーホフ/アレクサンドル・カイダノフスキー/ニキータ・ミハルコフ●日本公開:1982/10●配給:日本海映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(82-11-21)(評価:★★★☆)
「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:OSSESSIONE●制作年:1943年●制作国:イタリア●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:カミッロ・パガーニ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/マリオ・アリカータ/ジュゼッペ・デ・サンティス/ジャンニ・プッチーニ●撮影:アルド・トンティ/ドメニコ・スカーラ●音楽:ジュゼッペ・ロゼーティ●原作:ジェームズ・M・ケイン●時間:140分●出演:マッシモ・ジロッティ/クララ・カラマイ/ファン・デ・ランダ/ディーア・クリスティアーニ/エリオ・マルクッツォ/ヴィットリオ・ドゥーゼ●日本公開:1979/05●配給:インターナショナル・プロモーション●最初に観た場所:池袋・文芸坐(79-09-24)(評価:★★★★)●併映:「家族の肖像」(ルキノ・ヴィスコンティ)
「ピンク・フラミンゴ」●原題:PINK FLAMINGOS●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本・撮影:ジョン・ウォーターズ●時間:93分●出演:ディヴァイン/ディビッド・ロチャリー/メアリ・ヴィヴィアン・ピアス●日本公開:1986/06●配給:東映=ケイブルホーグ●最初に観た場所:渋谷・アートシアター新宿(84-08-01)(評価:★★★?)●併映:「フリークス・神の子ら(怪物団)」(トッド・ブラウニング)
「彼女と彼たち-なぜ、いけないの-」●原題:POURQUOI PAS!●制作年:1977年●制作国:フランス●監督・脚本:コリーヌ・セロー●製作:ミシェル・ディミトリー●撮影:ジャン=フランソワ・ロバン●音楽:ジャン=ピエール・マス●時間:97分●出演:サミー・フレイ/クリスチーヌ・ミュリロ/マリオ・ゴンザレス/ニコル・ジャメ●日本公開:1980/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(84-06-17)(評価:★★★★)
「寡婦(やもめ)の舞」●原題:과부춤(英:WIDOW DANCING)●制作年:1984年●制作国:韓国●監督:李長鍋(イー・チャンホ)●脚本:李長鍋(イー・チャンホ)/李東哲(イ・ドンチョル)/イム・ジンテク●撮影:ソ・ジョンミン●原作:李東哲(イ・ドンチョル)『五人の寡婦』●時間:114 分●出演:イ・ボイ(李甫姫)/パク・ウォンスク(朴元淑)/パク・チョンジャ(朴正子)/キム・ミョンコン(金明坤)/パク・ソンヒ/チョン・ジヒ/ヒョン・ソク/クォン・ソンドク/ソ・ヨンファン/イ・ヒソン●日本公開:1985/09●配給:発見の会●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(「東京国際映画祭」)(85-06-02)(評価:★★★☆)
「ビジル」●原題:VIGIL●制作年:1984年●制作国:ニュージーランド●監督:ヴィンセント・ウォード●製作:ジョン・メイナード●脚本:ヴィンセント・ウォード/グレーム・テットリー●撮影:アルン・ボリンガー●音楽:ジャック・ボディ●時間:114 分●出演:ビル・カー/フィオナ・ケイ/ペネロープ・スチュアート/ゴードン・シールズ●日本公開:1988/02●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:渋谷・パルコスペース3(85-06-02)(評価:★★★☆)
「コヤニスカッティ(コヤニスカッツィ)」●原題:KOYANISQATSI●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ゴッドフリー・レッジョ●製作:
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「暗殺の森」●原題:CONFORMISTA●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督・脚本:ベルナルド・ベルトリッチ●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:アルベルト・モラヴィア『孤独な青年』●時間:115分●出演:ジャン=ルイ・トランティニャン/ステファニア・サンドレッリ/ドミニク・サンダ/エンツォ・タラシオ●日本公開:1972/09●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(84-06-21)(評価:★★★☆)
「闇のカーニバル」●制作年:1981年●●監督・脚本・撮影:山本政志●製作:伊地知徹生/山本政志●時間:118分●出演:太田久美子/桑原延亮/中島稔/太田行生/じゃがたら/遠藤ミチロウ/伊藤耕/中島稔/前田修/山口千枝●公開:1981/12●配給:CBC=斜眼帯●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(83-07-16)●2回目:渋谷・ユーロスペース(88-07-09)(評価:★★★★)
「ブラザー・フロム・アナザー・プラネット」●原題:THE BROTHER FROM ANOTHER PLANET●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョン・セイルズ●製作:ペギー・ラジェスキー/マギー・レンジー●撮影:アーネスト・ディッカーソン●音楽:メイソン・ダーリング●時間:110分●出演:ジョー・モートン/ダリル・エドワーズ/スティーヴ・ジェームズ/レナード・ジャクソン/ジョン・セイルズ/キャロライン・アーロン/デヴィッド・ストラザーン●日本公開:1986/05●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:ユーロスペース(86-06-14)(評価:★★★★)
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「避暑地の出来事」●原題:A SUMMER PLACE●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:デルマー・デイヴィス●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽:マックス・
スタイナー●原作:スローン・ウィルソン『避暑地の出来事』●時間:131分●出演:リチャード・イーガン/ドロシー・マクガイア/トロイ・ドナヒュー/ サンドラ・ディー/アーサー・ケネディ●日本公開:1960/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:銀座文化劇場(84-06-21)(評価:★★★☆)
「酒とバラの日々」●原題:DAYS OF WINE AND ROSES●制作年:1962年●制作国:アメリカ●監督:ブレイク・エドワーズ●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:
「シャレード」●原題:CHARADE●制作年:1963年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:マーティン・マヌリス●脚本:J・P・ミラー●撮影:フィル・ラスロップ●音楽:
ー・マッソー/ジョージ・ケネディ/ネッド・グラス●日本公開:1963/12●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●最初に観た場所:銀座文化劇場(88-04-16)(評価:★★★☆)

「レザボア・ドッグス」●原題:RESERVOIR DOGS●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラクトマン●時間:100分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ティム・ロス/マイケル・マドセン/クリス・ペン/スティーヴ・ブシェミ/ローレンス・ティアニー/クエンティン・タランティーノ●日本公開:1993/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所(再見):早稲田松竹(24-05-20)(評価:★★★★)●併映:「バッド・ルーテナント/刑事とドラッグとキリスト」(アベル・フェラーラ)

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ダー●音楽:レイチェル・ポートマン●原作:ポール・オースター『オーギー・レンのクリスマス・ストーリー』●時間:113分●出演:ハーヴェイ・カイテル/ウィリアム・ハート/ハロルド・ペリノー・ジュニア/フォレスト・ウィテカー/ストッカード・チャニング/アシュレイ・ジャッド/エリカ・ギンペル/ジャレッド・ハリス/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1995/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿武蔵野館(24-06-05)((評価:★★★★)
「木靴の樹」●原題:L'ALBERO DEGLI ZOCCOLI(米:THE TREE OF WOODEN CLOGS)●制作年:1978年●制作国:イタリア●監督・脚本・撮影:エルマンノ・オルミ●音楽:J・S・バッハ●時間:186分●出演:ルイジ・オルナーギ/フランチェスカ・モリッジ/オマール・ブリニョッリ/テレーザ・ブレシャニーニ/バティスタ・トレヴァイニ/ルチア・ベシォーリ●日本公開:1979/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽町・スバル座(80-12-02)(評価:★★★★)
「大理石の男」●原題:CZLOWIEK Z MARMURU●制作年:1977年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:バルバラ・ペツ・シレシツカ●脚本:アレクサンドル・シチボ
ル・リルスキ●撮影:エドワルド・クウォシンスキ●音楽:アンジェイ・コジンスキ●時間:165分●出演:イエジー・ラジヴィオヴィッチ/クリスティナ・ヤンダ/タデウシ・ウォムニツキ/ヤツェク・ウォムニツキ/ミハウ・タルコフスキ/ピョートル・チェシラク/ヴィエスワフ・ヴィチク/クリスティナ・ザフヴァトヴィッチ/マグダ・テレサ・ヴイチク/ボグスワフ・ソプチュク/レオナルド・ザヨンチコフスキ/イレナ・ラスコフスカ/スジスワフ・ラスコフスカ●日本公開:1980/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(81-05-24)(評価:★★★☆)●併映:「水の中のナイフ」(ロマン・ポランスキー)

「女の叫び」●原題:A DREAM OF PASSION●制作年:1978年●制作国:アメリカ・ギリシャ●監督・脚本:ジュールス・ダッシン●撮影:ヨルゴス・アルヴァニティズ●音楽:ヤアニス・マルコプロス●時間:110分●出演:メリナ・メルクーリ/エレン・バースティン/アンドレアス・ウツィーナス/デスポ・ディアマンティドゥ/ディミトリス・パパミカエル/ヤニス・ヴォグリス/フェドン・ヨルギツィス/ベティ・ヴァラッシ●日本公開:1979/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:岩波ホール(80-02-04)(評価:★★★★)

モロッコ海沿いの街サレ。旧市街の路地裏で、ミナ(ルブナ・アザバル)とハリム(サーレフ・バクリ)の夫婦は母から娘へと世代を超えて受け継がれる、カフタンドレスの仕立て屋を営んでいる。伝統を守る仕事を愛しながら、自分自身は伝統からはじかれた存在と苦悩するハリム。そんな夫を誰よりも理解し支えてきたミナは、病に侵され余命僅かである。そこにユーセフ(アイユーブ・ミシウィ)という若い職人が現れ、誰にも言えない孤独を抱えていた3人は、青いカフタン作りを通じて絆を深めていく。そして刻一刻とミナの最期の時が迫る―。
モロッコ出身の映画監督マリヤム・トゥザニの2022年作品。2022年のカンヌ国際映画祭「ある視点」部門に出品され、国際映画批評家連盟賞を受賞。本作のタイトルにもあるカフタンとはモロッコの民族衣装で、結婚式や宗教行事など、フォーマルな席で着用するドレスのこと。コードや飾りボタンなどで華やかに刺繍を施し、完成に数カ月を費やすオーダーメイドの高級品となるものです。
妻ミナと夫ハリムの間に25年間の結婚生活で築かれた愛情がある一方、芸術家乃至職人肌のハリムには世間知らずの子どものようなところもあり、実務家で現実家肌のミナが、独り立ちできない息子を助ける過保護な母親のようにも見えます。そうした二人の関係を、言葉や事件ではなく、その仕事などをする日常を描くことで観る側に伝えているのが旨いと思いました。
しかし、このミナという女性が強かった! 自らが余命いくばくもないことを悟るや、今で経験していなかったことを夫といろいろ経験しようとし、一方で、仕事にこだわりを持っているくせに、無茶を言うお客には抗えないという夫の性格を矯正し、自分がいなくても一人で仕事や店をマネジメントしていけるよう教育しています。
ミナは夫にすごく大きなものを遺したと思います。自分が亡くなった後も夫が自立して生活できるようにすることが、彼女の最後の生きがいであり、自らの病を嘆いている間もなくそのことに没頭したという意味では、彼女にとっても充実した最期の時間だったかもしれません。そして、その延長線上に、夫のアイデンティを回復を後押しする言葉があったのだと思います。
ミナを演じたルブナ・アザバルは、マリヤム・トゥザニ監督の長編デビュー作「モロッコ、彼女たちの朝」('19年/モロッコ・仏・ベルギー)に続く主演で、ドゥニ・ヴィルヌーヴ 監督 「
「青いカフタンの仕立て屋」●原題:LE BLEU DU CAFTAN●制作年:2022年●制作国:フランス/モロッコ/ベルギー/デンマーク●監督:マリヤム・トゥザニ●製作:ナビール・アユーシュ●脚本:マリヤム・トゥザニ/ナビール・アユーシュ●撮影:ビルジニー・スルデー●音楽:ナシム・ムナビーヒ●時間:122分●出演:ルブナ・アザバル/サーレフ・バクリ/アイユーブ・ミシウィ●日本公開:2023/06●配給:ロングライド●最初に観た場所:新宿武蔵野館(23-07-20)((評価:★★★★☆)


1986年。故郷 天津に恋人シャオティン(小婷)(クリスティ・ヨン(楊恭如))を残し、シウクワン(小軍)(レオン・ライ(黎明))は香港へやって来る。シウクワンの夢は、香港で金を蓄えてシャオティンと結婚すること。しかし、広東語はチンプンカンプン、右も左も分からない香港では迷う事ばかり。そんなある日、初めて入ったハンバーガーショップで 店員のレイキウ(李翹)(マギー・チャン(張曼玉))に偶然助けられ、彼女と徐々に親しくなっていく。いくつも仕事を掛け持ちするシッカリ者のレイキウは、シウクワンにとって、香港で唯一頼れる友人に。ところが、何でも知っているように見えたレイキウもまた広州からやって来た大陸出身者であると判る。香港で孤独な二人はどんどん親密になり、1987年大晦日の晩、ついに一線を越えてしまう。それでも、お互いを"友人"と偽り続け、関係を続けるが、1990年、シウクワンは天津から呼び寄せたシャオティンと結婚、レイキウもまたパウ(豹哥)(エリック・ツァン(曾志偉))の援助で、実業家として成功していくのであった―(「ラヴソング」)。
1986年から始まり、1995年までの主人公二人の10年に及ぶ心温まるラブストーリーで、特にラストがいいですが、ラストがいいと感じられるということは、そこまでのストーリーの積み上げ方が上手いのでしょう。テレサ・テンの歌をモチーフにしており、
原題にもなっている「甜蜜蜜(ティェンミミ/ 蜜のように甘く)」という曲もその1つ。当時香港ではテレサ・テンのファンであることは 大陸出身であることを意味し、それを隠すためテレサ・テンのカセットは密かに買われていたようですが、 それまでいかにも香港人らしく振る舞っていたレイキウも実は大陸出身であることを告白し、他に親しい人のいない寂しい二人の仲は一気に 深まっていきます。
二人が自転車に乗って「甜蜜蜜」を歌うのが、恋愛の始まりの高揚感を現していて良かったです(まさに「ラヴソング」)。テレサ・テンの曲では、その他に、「再見!我的愛人」(アン・ルイスの「グッドバイ・マイ・ラブ」)、「涙的小雨」(クールファイブの「長崎は今日も雨だった」)といったカバー曲も流れます。テレサ・テンが亡くなったのは1995年5月8日ですが、そのニュースが流れる場面が最後にあり、この映画で重要な役割を果たします。この映画はテレサ・テンが亡くなった翌年に作られているため、ラストシーンはほぼリアルタイムということになります。
テレサ・テンについては、昨年['22年]8月にNHKの「
エリック・ツァン(曾志偉)演じる、レイキュウがその愛人になってしまうヤクザ者のパウ(豹哥)も、実は見かけに
よらず人間味のあるいい男でした(エリック・ツァンはこの演技で「香港電影金像奨最優秀助演男優賞」を受賞)。ウォン・カーウァイ監督作品の撮影監督で知られるクリストファー・ドイルが、英語学校の酔いどれ不良講師役で出ていますが(その授業というのが、海賊映画を見せてその台詞を覚えさせるものだった)、これもまた見かけによらず優しい男であり、この辺りもラブロマンス的には良かったです。
1900年代の初頭。中国の大財閥の総帥チャーリー宋(チアン・ウェン(姜文))は、三姉妹のわが子を米国留学させた。長女の宋靄齢は14歳。三女の美齢はまだ9歳の時に。当時の中国は清朝打倒運動が盛んで、宋も密かに革命家の孫文(ウィンストン・チャオ(趙文瑄))を支援していた。やがて辛亥革命で清朝は滅亡、孫文は中華民国大統領に選出される。1910年、帰国して孫文の秘書となる長女の靄齢(ミシェル・ヨー(楊紫瓊))。だが、靄齢は程なく富豪の孔祥熙(ニウ・チェンホワ(牛振華))と結婚。代わって孫文の秘書となる次女の慶齢(マギー・チャン(張曼玉))。政争に破れた孫文が日本に亡命すると慶齢も渡日し、親の反対を押し切って親
子ほど歳の離れた孫文と結婚。1922年、広東に革命政府を樹立した孫文は、味方であるはずの軍閥に急襲され、軍事顧問の蔣介石(ウー・シングォ(呉興国))により救出される。だが、妻・慶齢は脱出に苦労し、妊娠中の子を失う。1924年、孫文の抜擢で蒋介石は黄捕士官学校の校長となる。学校設立には、財閥である靄齢の夫・孔祥熙が深く関わっていた。蒋介石の出世を見越して、妹の美齢(ヴィヴィアン・ウー(鄔君梅))に結婚を勧める靄齢。1925年、
孫文は総理在任中に「革命未だ成らず」と言い残して逝去。人々から孫文の思想の象徴と見なされる慶齢。政治的に孫文になり代わったのは総司令官の蒋介石だった。蒋家の権力、孔家の財力。孫家の名声が国を動かすと確信する靄齢。孫文が作り上げた中国国民党は彼の死後、権力争いで分裂。乱れた国民党を嫌って脱退する慶齢。混乱に乗じて権力拡大を画策する蒋介石。蒋介石を非難した慶齢は、美齢や靄齢と敵対する。美齢は既に蒋介石と婚約していたのだ。1927年、慶齢はソ連に渡り、美齢は国民革命軍の総司令官となった蒋介石と盛大な結婚式を挙げる。1931年。満洲事変が勃発するが、蒋介石の国民党は中国共産党の粛清を優先し、日本軍の侵攻を許す。ソ連から帰国し、蒋介石非難声明を発表する慶齢。慶齢が邪魔だが、義姉であり、英雄・孫文の妻である彼女を暗殺できない蒋介石。1936年、蒋介石が西安で張学良らに拉致・監禁される。国民党と共産党の内戦を停止し、対日戦線を開始せよと蒋介石に迫る張学良。蒋介石の救出に力を合わせる宗家の三姉妹。日本軍との戦いのために、共産党に働きかけて張学良らの暴走を止める慶齢。救い出された蒋介石は、挙国一致の抗日を宣言。兵士の慰問などで反日戦線の象徴となる三姉妹。だが、終戦を待たずに靄齢と夫は香港に、慶齢は上海に移住。中国では共産党が台頭し、蒋介石と美齢は国民党と共に台湾に去る。「一人は金と、一人は権力と、一人は国家と結婚した」と言われた三姉妹が再び揃うことは無かった―(「宋家の三姉妹」)。
長女・宋靄齢(孔祥熙と結婚)... ミシェル・ヨー(楊紫瓊)
「一人は金と、一人は権力と、一人は国家と結婚した」いうこの映画のキャッチから、「宋靄齢は金を愛し、宋美齢は権力を愛し、宋慶齢は国を愛した」と評されるようになったそうです。宋三姉妹については、これもまた昨年['22年]8月にNHKの「
「ラヴソング」●原題: 甜蜜蜜/(英)COMRADES, ALMOST A LOVE STORY●制作年:1996年●制作国:香港●監督:ピーター・チャン(陳可辛)●製作:ピーター・チャン/クローディ・チョン(製作総指揮:レイモンド・チョウ)●脚本:アイヴィ・ホー●撮影:ジングル・マー●音楽:チウ・ツァンヘイ(主題歌:テレサ・テン「甜蜜蜜」)●時間:118分●出演:マギー・チャン(張曼玉)/レオン・ライ(黎明)/エリック・ツァン(曾志偉)/クリストファー・ドイル(杜可風)/クリスティ・ヨン(楊恭如)/アイリーン・ツー●日本公開:1998/02●配給:BMGジャパン=ビターズ・エンド●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(23-07-10)(評価:★★★★☆)
「宋家の三姉妹」●原題:宋家皇朝/(英)THE SOONG SISTERS●制作年:1997年●制作国:香港・日本●監督:メイベル・チャン(張婉婷)●製作:ン・シーユエン●脚本:アレ
ックス・ロー●撮影:アーサー・ウォン(黄岳泰)●音楽:喜多郎/ランディ・ミラー●時間:145分●出演:マギー・
チャン(張曼玉)/ミシェル・ヨー(楊紫瓊)/ヴィヴィアン・ウー(鄔君梅)/ウィンストン・チャオ(趙文瑄)/ウー・シングォ(呉興国)/チアン・ウェン(姜文)/エレイン・チン(金燕玲)/ニウ・チェンホワ(牛振華)●日本公開:1998/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(23-07-09)(評価:★★★★)




「最後の一葉」「賢者の贈物」など、O・ヘンリーの代表的短編5編を原作とする、5人の監督による全5話のオムニバス映画で、進行役を作家のジョン・スタインベックが務めています。
紳士気取りで人の善いルンペン男ソーピイ(チャールズ・ロートン)は、夏は涼しいセントラル・パークで、冬は暖かい留置所で暮らすこと
にしていた。ある年の冬、彼は仲間のホレス(デイヴィッド・ウェイン)に、留置所に入る秘術を伝授しようとしたが、どうもうまく警官に捕まらない。ソーピイは街の女(マリリン・モンロー)に声を掛けたが、かえって彼女に好意を寄せられ面喰らって逃げ出す始末。ある教会に入り、オルガンの響きに心打たれて、ルンペン渡世から足を洗おうと決心したが―。
刑事のバーニイ(デール・ロバートソン)は、迷宮入り殺人事件の犯人をヤクザ者のジョニイ(リチャード・ウィドマーク)だと睨んだ。バーニイとジョニイは幼な友達で、2人は十数年ぶりで再会したのだ。バーニイはジョニイに証拠を突きつけ迫るが、ジョニイはバーニイに昔千ドル貸したことを持ち出した。バーニイはジョニイを一応見逃し、千ドルの工面を考えた。すると町の新聞「クラリオン・コール」が、犯人の名前を通告した者に千ドル出すという懸賞を―。
最後の格闘シーンは要らなかったが、新聞記事で見せる終わり方は旨かった。リチャード・ウィドマークのヤクザ者の役が嵌っている。晩年は大御所的存在だったが、若い頃は、冷やかな笑顔をトレードマークに、
ギャング映画の非情な殺し屋、戦争映画の冷徹で人望のない指揮官役などで持ち味を発揮していた人だ。「
恋人に捨てられた若い女画学生ジョアンナ(アン・バクスター)は、失望し、寒いニューヨークの街を彷徨った末、姉スーザン(ジーンン・ピータース)と一緒に住むアパートに辿り着くと、そのまま病の床に伏す。医師は肺炎と診断し、ジョアンナが生きる希望を取り戻さなければ助からないと言った。彼女は自分の部屋の窓ぎわに生えている蔦にある21枚の葉が、その1枚ごとに彼女の1年間の生命を意味し、最後に残った葉が風に吹き落とされたら、自分は死ぬと思い込んでいる。容態は悪化し、ある朝、蔦も葉も最後の1枚になっ
た。途方にくれたスーザンは、バーマン(グレゴリー・ラトフ)という自分の才能に自信を失った画家に悩みを訴える―。
評価されているようだ。他のカラー作品も観たが、「葉っぱ」がダメなものが多い。白黒が幸いしたかも。アン・バクスターと言えば「イブの総て」('50年)だが、「
サム(フレッド・アレン)と相棒のビル(オスカー・レヴァント)は、金持ちの子を誘拐して身代金を稼ごうとアラバマの村へやって来た。2人はうまく少年を誘拐する
ことに成功、身代金請求の手紙を少年の両親宛てに出した。ところが、この少年、インディアンの酋長気どりの腕白小僧で2人はほとほと手を焼く。そのうち、両親から手紙が来たが、それには身代金を払わないと言うばかりか、どうしても少年を返したいなら250ドルよこせと書いてあった―。
愛し合う若夫婦デラ(ジーン・クレイン)とジム(ファーリー・グレンジャー)は、貧乏なのでクリマス・イヴが来るのにお互いの贈物を買うことができなかった。デラは出勤するジムを送りながら一緒に街に出、途中で2人はある宝
石商のウィンドウの前に立ち止まる。ジムは素敵な櫛に目をつけ、これがデラのふさふさした金髪を飾ったらさぞ美くしかろうと考えた。一方デラはプラチナの時計入れを見て、これはジムの骨董的な金の懐中時計を入れるのにふさわしいと思った―。
「人生模様」●原題:O. HENRY'S FULL HOUSE●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:(第1話)ヘンリー・コスター/(第2話)ヘンリー・ハサウェイ/(第3話)ジーン・ネグレスコ/(第4話)/ハワード・ホークス/(第5話)ヘンリー・キング●脚本:(第1話)ラマー・トロッティ/(第2話)リチャード・L・ブリーン/(第3話)アイヴァン・ゴッフ/ベン・ロバーツ/(第4話)チャールズ・レデラー/ベン・ヘクト/ナナリー・ジョンソン/(第5話)ヘンリー・キング/ウォルター・バロック/フィリップ・ダン●撮影:(第1話)ロイド・エイハーン/(第2話)ルシアン・バラード/(第3話)ジョセフ・マクドナルド/(第4話)ミルトン・R・クラスナー/(第5話)ジョセフ・マクドナルド●音楽:アルフレッド・ニューマン●原作:原作:О・ヘンリー●時間:117分●出演:(第1話)チャールズ・ロートン/マリリン・モンロー/デヴィッド・ウェイン/(第2話)デイル・ロバートソン/リチャード・ウィドマーク/(第3話)アン・バクスター/ジーン・ピーターズ/グレゴリー・ラトフ/(第4話)フレッド・アレン/オスカー・レヴァント/リー・アーカー/(第5話)ジーン・クレイン/ファーリー・グレンジャー/(進行役)ジョン・スタインベック●日本公開:1953/06●配給:20世紀フォックス(評価:★★★★)


中国系移民のエヴリン(ミシェル・ヨー)は、自身が経営するコインランドリーが破産寸前で、しかも国税局から監査が入り、税金の申告をやり直さなければならなくなったという問題や、頼りにならない夫ウェイモンド(キー・ホイ・クァン)、反抗的な娘ジョイ(ステファニー・スー)、老齢で車椅子が必要な上に最近ボケてきた父親ゴンゴン(ジェームズ・ホン)といった家族の問題など、数多くのトラブル
を抱えていた。疲れ果てた彼女の前にある日、夫に乗り移った"別の宇宙(ユニバース)の夫"が現れ、「全宇宙にカオス
をもたらそうとしている強大な悪ジョブ・トゥパキを倒せるには君だけだ」と彼から告げられて、世界の命運を託されてしまう。彼女は"無限の多元宇宙(マルチバース)"に飛び込み、カンフーの達人の"別の宇宙のエヴリン"の力を得て、マルチバースの脅威ジョブ・トゥパキと戦うこととなるが、ジョブ・トゥパキの正体は"別の宇宙の自分の娘"だった―。

2022年制作のダニエルズ(ダニエル・クワン&ダニエル・シャイナート)監督よる「異次元間アクション映画(通称「エブエブ」)。主演は香港アクシ
ョン映画の華として活躍し、「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年/英・米)、「
どうして今このメンバー?とも思える組み合わせですが、先月['23年3月]発表の第95回アカデミー賞において、作品賞、監督賞、主演女優賞、助演男優賞、助演女優賞、編集賞の計7部門を受賞し、この3人ともが演技賞を受賞したことになります(主演男優賞は「ザ・ホエール」のブレンダン・フレイザ)。
アカデミー賞受賞決定の直後に観ました。そんなスゴイ作品かなあというのはありましたが、話は強引ながらも勢いがあり、乗せられて観てしまいました(フツーに娯楽映画として観たということか)。ミシェル・ヨー演じるエヴリンの、現実生活の苦しさをぶっ飛ばすキレキレのアクションは「グリーン・デスティニー」での彼女を髣髴させ、キー・ホイ・クァンも、一時俳優業から武術指導のアシスタントに転じていただけに、なかなかのアクションでした。共にCGは使っていないそうです(ミシェル・ヨーの小指での腕立て伏せのシーンはCGだと思うが)。
人生をカオスと捉え、マルチバースの世界にそれを反映させているといった感じでしょうか(監督のダニエルズは「湯浅政明や今敏、宮崎駿などといった、日本のアニメ監督からインスピレーションを受けて作った」とコメントしている)。例えばエヴリンには、カンフーマスターであったり女優として成功するなど別宇宙での彼女が沢山いるといった具合です(ミシェル・ヨーの過去に出演したカンフー映画や、国際的な映画祭での実際の映像などを使っている。映画自体は低予算映画で、2023年・第38回「インディペンデント・スピリット賞 作品賞」を受賞している)。SFのスタイルを借りつつ、女性とマイノリティを励ます映画にもなっています。
一方で、観終わってみれば、徹底した「現実逃避」映画ともとれ、要は、「母と娘」の関係の解(ほつ)れとその修復という古典的・感情的テーマを、大袈裟なマルチバースという枠組みの中で展開しただけに過ぎなかったという見方もできなくはないと思います(この点が「そんなスゴイ作品かなあ」という印象に繋がる)。
この作品でアジア人女優として初めてアカデミー主演女優賞を受賞した(エントリーされること自体がアジア人女優初だった)ミシェル・ヨー(楊紫瓊・1962年生まれ)は、その前にゴールデングローブ賞(今年['23年]1月)でも主演女優賞を受賞していて、その時のスピーチで「昨年私は60歳を迎えた」「女性は年齢の数字が大きくなればなるほど、機会に恵まれることは少なくなる」と女性の年齢による機会損失について訴えていましたが、アカデミー賞の授賞式のスピーチでもオスカー像を掲げ、「これは希望と可能性の印です。夢が叶う証です。そして女性のみなさん、『あなたはもう盛りを過ぎた』なんて誰にも言わせてはなりません」と語ったことが、世界的に大きな反響を呼びました。
その彼女に、来月['23年5月]のカンヌ国際映画祭のオフィシャルディナーの場にて、「ウーマン・イン・モーション」アワードが授与されることが今月['23年4月]決定しました。2015年に発足した「ウーマン・イン・モーション」アワードは、女性に対するコミットメントや取り組みを称えるもので、アジア人では2019年のコン・リー以来2人目の授賞になります。
ていなかったと思います。作品賞や監督賞はあっても、俳優だけはノミネートされなかった。ジョアン・チェンやコン・リーなど、私より先に活躍していた美しい女優たちは、本来ならアカデミー賞にノミネートされているべきでした。人種のせいなのか? 私はそうだと思います。しつ
こく言いたくはないですが、ただ『前に進みましょう』と言いたい。いまこそ前進するときです。素晴らしい映画の魅力とは、文化を超え、時代を超え、言語を超えるところにあると思います」と述べています。
ミシェル・ヨーは1985年、初主演作「レディ・ハード 香港大捜査線」('85年/香港)でアクション映画に初挑戦、バレエ仕込みの身体表現で激しいカンフーアクションや危険なスタントシーンを演じ、レディ・アクションスターの先駆けとなって、「皇家戦士」('86年/香港)では真田広之と共演、「ポリス・ストーリー3」('92年/香港)でジャッキー・チェンと共演し「走行中の貨物列車の屋根にオートバイで飛び乗る」というスタントを代役なしで演じています(ジャッキー・チェンをして「自分の見せ場を奪われるから競演NG」と言わしめたとか)。映画のラストにジャッキー・チェン作品ではお馴染みのNG集があり、1回では成功していないことが窺えますが、これ、ハリウッド映画だったら、スタントを使わないこと自体がNGでしょう。「ジェームズ・ボンド」シリーズ第18作「007トゥモロー・ネバー・ダイ」('97年/英米)(公開時タイトルは「トゥモロー・ネバー・ダイ」)で
35歳で「ミシェル・ヨー
」(それまではミシェル・キングまたはミシェル・カーンだった)としてハリウッドへ進出したのは、"満を持して"といった感じだったでしょうか。中国国外安保隊
員ウェイ・リンという役柄で、ジェームズ・ボンド役のピアース・ブロスナンと対等に渡り合う「戦うボンドガール」として注目を浴びました。ボンドと一緒に手錠をかけられた
状態でビルからジャンプするシーンや、そのままバイクで市中を駆け抜けるシーンは派手で、格闘シーンもよく脚が上がっていてキレキレと言う感じでした。ストーリーは大したことなかったものの、優れたSF・ファンタジー・ホラー作品に送られる「サターン賞」で4つのノミネートを受け、ピアース・ブロスナンが「
キー・ホイ・クァンで、ゴールデングローブ賞助演男優賞、アカデミー助演男優賞のほかに、第88回「ニューヨーク映画批評家協会賞 助演男優賞」、第57回「全米批評家協会賞 助演男優賞」、第48回「ロサンゼルス映画批評家協会賞 助演男優賞」など多くの賞を受賞しています。「現実世界の頼りない夫」としてのハリウッド映画における従来のアジア人のパターナルな演技と、「"別の宇宙(ユニバース)の夫"」としてのヒロイックな演技(まるでブルース・リー(!?))の使い分けが際立っていたことが評価されたのでしょう。
さらに、ボケているのに頑固な父親ゴンゴンを演じたジェームズ・ホンは1929年生まれの今年94歳。ジェニファー・ジョーンズ、ウィリアム・ホールデン主演の香港を舞台とした映画「慕情」('55年)の頃からノンクレジットですが映画に出ており、「砲艦サンパブロ」('66年)のヴィクター・スー役などもありましたが、「
とは、ハリソン・フォードは、この映画に出ているキー・ホイ・クァンと「インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説」('84年/米)で共演したほかに、ジェームズ・ホンとも「ブレードランナー」で共演したことがあるということか。
「エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス」●原題:EVERYTHING EVERYWHERE ALL AT ONC●制作年: 2022年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ダニエルズ(ダニエル・クワン/ダニエル・シャイナート)●撮影:ラーキン・サイプル●音楽:サン・ラックス●時間:140分●出演:ミシェル・ヨー/キー・ホイ・クァン/ステファニー・スー(許瑋倫)/ジェイミー・リー・カーティス/ジェームズ・ホン/タリー・メデル/ジェニー・スレイト/ハリー・シャム・Jr/ビフ・ウィフ/スニータ・マニ/アーロン・ラザール/オードリー・ヴァシレフスキ/ピーター・バニファズ●日本公開:2023/03●配給:ギャガ●最初に観た場所:TOHOシネマズ西新井(シアター1)(23-03-15)(評価:★★★☆)
「007 トゥモロー・ネバー・ダイ」●原題:TOMORROW NEVER DIES●制作年:1997年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ロジャー・スポティスウッド●製作:マイケル・G・ウィルソン/バーバラ・ブロッコリ●脚本:ブルース・フィアスティン●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:デヴィッド・アーノルド(主題歌:「トゥモロー・ネヴァー・
ダイ」シェリル・クロウ)●原作:イアン・フレミング●時間:119分●出演:ピアース・ブロスナン/ジョナサン・プライス/ミシェル・ヨー/テリー・ハッチャー/ジョー・ドン・ベイカー/リッキー・ジェイ/ゲッツ・オットー/デスモンド・リュウェリン/ヴィンセント・スキャベリ/ジョフレー・パーマー/コリン・サーモン/サマンサ・ボンド/ジュディ・デンチ●日本公開:1998/03●配給:UIP(評価:★★★☆)
「ポリス・ストーリー3」●原題:警察故事3/超級警察(英題:POLICE STORY III:SUPER COP)●制作年:1992年●制作国:香港●監督:スタンリー・トン(唐季禮)●製作:ウィリー・チェン/エドワード・タン●脚本:エドワード・タン/フィレー・マー/リー・ウェイイー●撮影:ラム・ウォクワー(アンディ・ラム(林國華))●音楽:ジョナサン・リー(李宗盛)●時間:96分●出演:ジャッキー・チェン(成龍)/ミシェール・キング(ミシェル・ヨー(楊紫瓊))/マギー・チャン(張曼玉)/トン・ピョウ(董驃)/ユン・ワー(元華)/ケネス・ツァン(曾江)/ジョセフィーヌ・クー(顧美華)/ケルヴィン・ウォン(王霄)/フィリップ・チャン(陳欣健)/ロー・リエ(羅烈)●日本公開:1992/12●東宝東和(評価:★★★)




2021(令和3)年・第18回「本屋大賞」(翻訳小説部門)第1位作品。
ノースカロライナ州の湿地で男の死体が発見された。人々は「湿地の少女」に疑いの目を向ける。6歳で家族に見捨てられたときから、カイアはたったひとりで生きなければならなかった。読み書きを教えてくれた少年テイトに恋心を抱くが、彼は大学進学のため彼女を置いて去ってゆく。以来、村の人々に「湿地の少女」と呼ばれ蔑まれながらも、彼女は生き物が自然のままに生きる「ザリガニの鳴くところ」へと思いをはせて静かに暮らしていた。しかしあるとき、村の裕福な青年チェイスが彼女に近づく―。
オリヴィア・ニューマン監督の起用で昨年[2022年]に映画化され、女性監督だからやはり女性映画っぽくなるのだろうと思いましたが、予想どおりでした。原作は、幼いころから事件が起きるまでの少女の歩み(ドラマ部分とも言える)と、事件が起きた後の捜査の進捗や裁判の様子(ミステリ部分とも言える)が、あざなえる縄のように交互に描かれていますが、映画はほとんど少女の生きざまと成人するまでを中心に描いていて、特に、成人してから恋愛の方に重点が置かれています。ただ、それが何だか「学園ドラマ」を観ているような感じで、深まりがないまま話がだらだらと続く印象を受けました。
ミステリ部分ももっと描いてほしかったように思います。深夜でもバスは走っているのだなあ(高速バスみたいな路線バスか)。映像で再現する必要はなですが、省き過ぎです。この監督、ミステリには関心がないのかな。
沼地の自然は美しく撮っていて、それはそれで良かったのですが、ドラマ部分含め全体に明るすぎる印象で、少女の沼地での生活や服装、身の回りなども小綺麗すぎて、原作の重くてダークなイメージとの間にギャップを感じました。Amazonプライムで有料視聴したのですが、原作の評価★★★★に対して、映画は評価★★★となりました。
「ザリガニの鳴くところ」●原題:WHERE THE CRAWDADS SING●制作年:2022年●制作国:アメリカ●監督:オリヴィア・ニューマン●製作:リース・ウィザースプーン/ローレン・ノイスタッタ●脚本:ルーシー・アリバー●撮影:ポリー・モーガン●音楽:マイケル・ダナ●原作:ディーリア・オーウェン●時間:126分●出演:デイジー・エドガー=ジョーンズ/テイラー・ジョン・スミス/ハリス・ディキンソン/マイケル・ハイアット/スターリング・メイサー・Jr/デヴィッド・ストラザーン/ジェイソン・ワーナー・スミス/ギャレット・ディラハント/アーナ・オライリー/エリック・ラディン●日本公開:2022/11●配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント(評価:★★★)
ある日、建築技師のマシコフ(スタニスラフ・リュブシン)は、「あそこに自分は異星人だという男たちがいる」と困った様子の学生ゲデバン(レヴァン・ガブリアゼ)に助けを求められる。異星人など信じられないマシコフが、その男たちが持っていた空間移動装置のボタンを押すと、次の瞬間、マシコフとゲデバンは地球から遠く離れたキン・ザ・ザ星雲のプリュク星へとワープしていた。星の
住民は地球人と同じ姿をしており、見かけによらぬハイテクとな野蛮な文化を併せ持っていた。彼らはテレパシーを使うことができ、話し言葉は「キュー」と「クー」のみで、前者は罵倒語、後者がそれ以外を表す。しかし、高い知能を持つ彼らはすぐにロシア語を理解し話すことができた。この星の社会はチャトル人とパッツ人という二つの人種に分かれており、支配者であるチャトル人に対して被支配者であるパッツ人は儀礼に従
わなければならない。両者の違いは肉眼では判別できず、識別器を使って区別する。この星を支配しているのは、「エツィロップ」と呼ばれる警官たちである。プリュクの名目上の為政者は「PJ様」と呼ばれ、人々は彼を熱烈に崇拝している。プリュクにおける燃料は水から作られたルツというもので、自然の水は取り尽くされ、飲み水は貴重品となっており、ルツから戻すことでしか手に入らない。プリュクでは地球のマッチ棒(の化学物質)が非常に高価なものであり、カツェと呼ばれて事実上の通貨となっており、所有者は特典が受けられる。マシコフとゲデバンの二人は、マッチの価値を利用してなんとか地球へ帰ろうとするのだが―。
1886年公開のソ連のゲオルギー・ダネリヤ監督(グルジア共和国出身)によるコメディーSF映画()。ディストピアな設定はソビエト社会の寓意的描写ではないかと言われるそうで、「言われている」と言うのは、検閲を通り抜けるためにほとんどすべて比喩的な表現になっているためで、ウィキペディアにも「作中では解説が若干省かれているので解りにくく、理解するには前後の伏線を注意深く頭に留めておく必要がある」とあるぐらいです。
実際、ソ連全土で1570万人という驚異的な観客を動員したそうで(ソ連の人は、どの部分が何の風刺か凡そ解ったんだろなあ)、その後も世界中でカルト的人気を博し、日本でも1991年に公開され('89年の池袋文芸坐の「ソビエトSFファンタジー映画祭」で上映されたとの話もある)、2001年にはニュープリントで再公開、2016年にはデジタル・リマスター版が公開されました。また、監督自身の手になるアニメ版「クー!キン・ザ・ザ」が、2013年に公開されていますが、こちらは、舞台が21世紀はじめに移すなど、多少内容を変えているようです。
この作品は根強いファンがい
るのか、或いは毎年新たにファンになる人がいるのか、'18年にデジタル・リマスター版が発売されて以降、今年['22年]まで毎年DVD&Blu-rayがリリーズされています。また、ゲオルギー・ダネリヤ監督自身による「クー! キン・ザ・ザ」(Ku! Kin-dza-dza)('13年)というアニメ化作品も作られています(ゲオルギー・ダネリヤ監督は本2019年に88歳で逝去し、これが遺作となった)。
ブリアゼ●撮影:パーヴェル・レベシェフ●音楽:ギヤ・カンチェリ●時間:135分●出演:スタニスラフ・リュブシン/レヴァン・ガブリアゼ/ エヴゲーニー・レオノフ/ ユーリー・ヤコヴレフ●日本公開:1991/01●配給:マウントライト●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(21-11-23)(評価:★★★☆)





主人公アラン・グレー(ジュリアン・ウェスト)は、ある夜遅くクルタンピエール村の寂れた旅館へやって来る。その周囲の凄惨な光景が彼に強い印象を与えた。宿では朝まで眠れなかった。それ以来アランは、説明のつかないような現象を目にするようになる。宿には義足の男と村医者(ジャン・ヒエロニムコ)と老婆(ヘンリエット・ジェラルド)がいた。宿主(モーリス・シュッツ)はアランに何かを託して、自分の死後に開けるよう書き遺す。アランが奇妙な影を追いかけると屋敷があり、主人が宿主で病に伏す長女レオーヌ(ジビレ・シュミッツ)と妹のジゼル(レナ・マンデル)、それに何人かの召使が暮らしていた。やがて主人は何者かに銃で撃たれて死ぬ。続いて、レオーヌが夜中に外に出てさ迷い歩くのを見たアランとジゼルは、レオーネを探して外に出るが、レオーネは闇の帝王に血を吸われてぐったりしているところを見つかって屋敷へ運び込まれる。ジゼルが介抱するが、自分は
呪われていると言い、嘆き悲しんだかと思うと突然不気味に笑う。それを見て慄(おのの)くジゼル。アランが主人の遺したものを開封すると、それは吸血鬼の存在とその魔力について書かれた古い本だった
。アランが本を読み進めると、「吸血鬼は人間に彼らの犯行を手伝わせることがあり、ハンガリーでは悪魔に魂を売った医者が吸血鬼の犯罪の手先になっていた」と書いてあった。村医者はレオーネは助からないが血を欲しがっていると言うので、アランは献血をする。アランが眠っている間、召使が置いてあったアランの本を読むと、「吸血鬼は犠牲者から精気を吸い尽くすと犠牲者を自殺に追い込む。自殺した者は来世も放棄するからで天国の扉が開かないからだ」と書いてある。そこには、「胸に鉄の杭を打ち込むと、本当の意味で死を迎える」とも書いてあった。真実は、老婆こそが吸血鬼であり、村医者とその助手の義足の男とを自分の忠実な下僕にし、義足の男に主人を殺害させ、村医者が主人の長女レオーヌをさらって吸血鬼の餌食にしたのだった。この吸血鬼はかつて世にありし時に犯した罪悪のために墓場に入っても静安を得ることの出来ない女亡者で、人間の生き血を吸わねば生きていられないのだ。その第一の犠牲者が、長女レオーヌだったのだ。乗り越えるべき困難を前に、ジゼルとアランとの間に強い愛情が生まれる。吸血鬼に侵された病めるレオーヌは、村医者の企みにより自殺させられそうになるがアランに気づかれ、毒薬の瓶は彼女の手からもぎとられる。その毒薬は、吸血鬼がレオーヌに飲ませるべく村医者に渡したものだった。アランは眠りに
襲われる。――眠っているアランから意識が抜け出して、建物に入る。中にはジゼルが捕らわれていた。さらにそこには棺があり、蓋を開けるとアラン自身が入っていた。驚くアランだが、村医者とその下僕がやってきて、棺の蓋を閉めると釘を打つ。アランは棺の中から外を、町の風景を見上げている。空が見え、建物が見え、鐘の音が聞こえて棺は運ばれていく――。眠っている本当のアランの横を棺が運ばれていき、アランは目を覚ますと召使が行くのが見える。召使が墓を暴くのをアランは手伝い、出てきた棺の蓋を開ける。中にはレオーネの血を吸っていた老女がいて、召使がその胸に鉄の杭を突き刺すとその姿はたちまち白骨に。その時、臥せっていたレオーネは起き上がり、元気になる。義足の男は崖から落ちて死に、村医者も逃げ込んだ製粉所で粉に埋もれてその命を落とそうとしていた。同じ頃、アランは愛するジゼルと共に、夜の恐怖の去った森で、輝かしい夏の朝を迎えていた―。
デンマークノカール・テオドア・ドライヤー(「
ドライヤーは超自然の存在を題材とした作品を書こうと思って30冊以上のミステリ小説を読み、「なぜかドアが開いたり、わけもなくドアノブが動く」といったいくつかの要素がよく出てくることに気づいて、「我々ならこういうのを楽しく作れそうだ」と思ったとのこと。ロンドンとニューヨークで1927年に舞台版「ドラキュラ」が大ヒットした折でもあり、吸血鬼物は時代の最先端を行くと考えていた彼は、脚本において、シェリダン・レ・ファニュの同性愛
ドライヤーはキャスティングとスカウトを開始して貴族ニコラ・ド・ガンズビュールと知り合い、彼を主役にするという条件で作品の資金提供の約束を取り付け、俳優になることを許していなかった家族と揉めたガンズビュールは、ジュリアン・ウェストという芸名で出演することに。彼に限らず、この映画の出演者のほとんどは素人で、城主役のモーリス・シュッツとその長女レオーネ役のジビレ・シュミッツだけがプロの俳優で、あとは、村医師役のジャン・ヒエロニムコなどは、ドライヤーが深夜のパリの地下鉄でスカウトした人物だったとのこと。映画に出ないかと持ちかけられた時、ヒエロニムコはぽかんとドライヤーを見つめそのまま答えなかったが、後で出演の意向を伝えたとのことで、他の素人出演者も同様に店先やカフェで声をかけられたそうです。
そのせいか、この作品を観ると、ドライヤーは俳優の演出よりも背景づくりに力を入れている印象があり、その部分については、前衛的なカメラワークを駆使するなどして雰囲気はよく出ていて、1930年に製作された作品としては上出来ではないでしょうか。ストーリー自体ははっきりしない部分も多く、ただただ全体を通して恐ろしい夢の中のような雰囲気に包まれていますが(全部を夢想家である主人公の夢であるとする見方もあるようだ)、ガーゼをカメラから90cm離れたところに置き、それを通じて撮影したりしたようです(わざとボカしたのか)。

脚本の草稿では、村医師が村から逃げようとして沼地にとらわれるという展開だったそうですが、スタッフが沼地探しに行った途中で製粉場を見つけ、その製粉錠の窓やドアの周りに白い影が現れたのを目の当たりにして、村医者が製粉場で大量の小麦粉に押し潰されて死ぬというものに変更されたそうです。ドライヤーというと重々しい作品のイメージがありますが、何だか制作秘話に事欠かないみたいで楽しいです。
当時、この作品をある評論家が、同時期のトッド・ブラウニング(「
因みに、吸血鬼に憑かれた長女レオーヌを演じたジビレ・シュミッツは、戦前のドイツ映画で活躍しましたが、戦後はキャリアを失いモルヒネ中毒に苦しんだ末、自殺を遂げています。このジビレ・シュミッツの伝記に着想を得て映画化したのがライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「ベロニカ・フォスのあこがれ」('82年/西独)で、第32回「ベルリン国際映画祭」で金熊賞を受賞しており、1979年の「
「吸血鬼(ヴァンパイア)」●原題:VAMPYR●制作年:1930年(公開年:1932年)●制作国:フランス・ドイツ●監督:カール・テオドア・ドライヤー●製作:カール・テオドア・ドライヤー/ジュリアン・ウェスト●脚本:カール・テオドア・ドライヤー/クリステン・ジュル●撮影:ルドルフ・マテ●音楽:ウォルフガング・ツェラー●原作:シェルダン・レ・ファニュ●時間:75分(82分)●出演:ジュリアン・ウェスト/レナ・マンデル/ジビレ・シュミッツ/ジャン・ヒエロニムコ/ヘンリエット・ジェラルド/ジェーン・モーラ/モーリス・シュッツ/アルバート・ブラス●日本公開:1932/11●配給:東和商事(評価:★★★★)


莫大な父の遺産があり、あらゆる快楽に飽き果てて、生きている意義も見出せないという30歳の男アルチュール・ランプルール(ジャン=ポール・ベルモンド)は退屈の余り自殺したがるが、その試みは全て失敗する。そこで、フィアンセのアリス(ヴァレリー・ラグランジュ)とその小姓のレオン(ジャン・ロシュフォール)、アリスの母親スージー(マリア・パコム)とその恋人コルネリウス(ジェス・ハーン)、元後見人でもあった古くからの中国人の友人ミスター・ゴーことゴー氏(ヴァレリー・インキジノフ)と船旅に出る。ランプルールの法定代理人ビスコトン(ダリー・コール)が香港までアルチュールを探しにやってきて、アルチュールの破産を知らせる。これで自殺の名目ができたと喜んだアルチュールは自殺の試みを続け
、フィアンセの母親スージーは婚約解消を要求する。ゴー氏のアイデアで、スージーにアルチュールの生死を委ねることになる。アルチュールは婚約者アリスとゴー氏を受取人に有効期間1か月の生命保険に署名する。ゴー氏は殺し屋を手配し、そうなると自殺志願のアルテュールも生命の危険を感じて懸
命に逃げまわるという奇妙な状況になる。港のバーに逃げこんだ時、ストリッパーのアレキサンドリーヌ(ウルスラ・アンドレス)に匿ってもらった。彼女は考古学者の卵で、アルバイトにストリッパーをしていたのだ。彼は一目で好意を抱くが、恋を語っている余裕はない。ゴー氏ともう一度話し合おうと、彼を追ってネパールへ行く。例によって二人の尾行者がついてくるが、実は彼らは保険会社がつけたボディ・ガードだった。ところが今度は、保険金の一部をもらう約束になっている香港ギャングのボス、フォリンスター(ジョー・セイド)の命を狙われることに―。
「
ジュール・ヴェルヌの1879年刊行の小説『中国での中国人
の苦難』(Les Tribulations d'un chinois en Chine)が原作とのことですが、大幅に翻案されているようです。自殺志願の男(原作では中国系)が自分に生命保険を懸けられたのを機に考え方が変わるというのは同
じようですが、原作では主人公は最後、婚約者と結婚するようです(映画でもアリスは最後、結婚するのだが...)。ウルスラ・アンドレス演じるストリッパーは、映画のオリジナルかと思われます。
と同じで、むしろヒートアップした感じさえあります。なので、ベルモントのアクションは楽しめますが、ストーリーが「リオの男」以上にぶっ飛んでいて、アクションとの両方が相俟って、ややドタバタ喜劇調になったきらいもあります(同じ大金持ちの役でも、ベルモントのアクションが無いフィリップ・ラブロ監督の「
舞台出身のジャン・ロシュフォール(フィリップ・ド・ブロカ監督の「大盗賊」('62年)や「相続人」でもベルモントと共演し
ていた)が「小姓」(御屋敷付きの「執事」というよりは、どこでも主人に付いて行って面倒を見る「フットマン」という感じか)の役で脇を固めていて、いい味出していました(最後まで主人に付いて行くので出演場面が多い)。ただ、それよりも、ゴー氏を
演じたヴァレリー・インキジノフが、フセボロド・プドフキン監督の「アジアの嵐」('28年/ソ連)で、主人公のモンゴル人を演じたあの俳優だったと後で知って少し驚きました。ヴァレリー・インキジノフはロシア・ブリヤート出身のフランス人俳優ですが、血統的にはモンゴル人のようです。「モンパルナスの夜」('33年/仏)に、金持ちに怨念を抱くチェコ人の挫折した元医学生という、まるで「天国と地獄」の山崎努を連想させるような役で出演していますが、60年代のこの「カトマンズの男」では好々爺の役でした。
「アジアの嵐」は、1920年代、イギリス統治のモンゴルを舞台に、〈チンギス・ハーンの後裔〉に祭り上げられたモンゴルの青年(ワレリー・インキジノフ)が,やがて民族の自覚に燃えてイギリス帝国主義に闘いを挑むという、モンゴル解放闘争の黎明期を描いたものですが、その主人公を"覚醒"させ、英国の軛(くびき)からの解放を手助けしたのがソ連であるという、ロシア革命と「共産主義」運動を美化するプロパンガンダ映画でもあります。
それゆえに評価をするのは難しいのですが、エイゼンシテインと並ぶとされるフセヴォロド・プドフキン監督でさえ、ソ連の映画監督である限り、当時はそうした映画を撮らざるを得なかったのでしょう(「戦艦ポチョムキン」('25年/ソ連)にしても共産主義的プロパガンダ映画であり、日本でも終戦から22年が経った1967年にようやく一般公開された)。
出演者でもう一人の注目は、やはり007シリーズ第1作「
前はアーシュラ・アンドレスと表記されていた)でしょうか。スイス出身で両親はドイツ人。「ドクター・ノオ」出演時は英語がおぼつかなく、彼女のセリフはすべて吹き替えでしたが、それでも「ゴールデングローブ賞」の
新人賞を受賞しています。その後は、ドイツ語、イタリア語、フランス語、さらにはマスターした英語の4カ国を操る語学力を活かして、ハリウッド映画にもヨーロッパ映画にも多数出演しています(出演はB級娯楽映画が多いが)。因みに、この映画出演時にはジョン・デレクと結婚していましたが、ジャン=ポール・ベルモンドと恋仲になり、1966年にはジョン・デレクと離婚しています。その後もライアン・オニールらと浮名を流したりしましたが、1980年の「タイタンの戦い」で共演したハリー・ハムリンとの間に男児を生んだものの、再婚はしていません(この手の肉食系女優に結婚は似合わない?)。
ソ連映画「アジアの嵐」に出ていたモンゴル系俳優と、アメリカ映画「007 ドクター・ノオ」に出ていたドイツ系女優が同じフランス映画に出ているというのが何となく面白いです。



「カトマンズの男」●原題:LES TRIBULATIONS D'UN CHINOIS EN CHINE(英:UP TO HIS EARS)●制
作年:1965年●制作国:フランス・イタリア●監督:フィリップ・ド・ブロカ●製作:アレクサンドル・ムヌーシュキン/ジョルジュ・ダンシジェール●脚本:ダニエル・ブーランジェ●撮影:エドモン・セシャン●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●原作:ジュール・ヴェルヌ「中国での中国
人の苦難」●時間:110分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/ウルスラ・アンドレス/ヴァレリー・ラグランジュ/マリア・パコム/ジェス・ハーン/ヴァレリー・インキジノフ/マリオ・ダヴィッド/ポール・プレボワ/ダリー・コール/ジョー・セイド●日本公開:1966/05●配給:エデン●最初に観た場所:新宿武蔵野館(21-05-25)(評価:★★★)●併映(同日上映):「相続人」(フィリップ・ラブロ)
「アジアの嵐」●原題:Потомок Чингис-хана(STORM OVER ASIA POTOMOK CHINGIS-KHANA)●制作年:1928年●制作国:ソ連●監督:フセ
ヴォロド・プドフキン●脚本:オシップ・ブリーク/レフ・スラヴィン/ウラジーミル・ゴンチュコフ●撮影アナトーリー・ゴロヴニャ●音楽:セルゲイ・コズロフスキー/ M・アロンソン/(サウンド版音楽)ニコライ・クリューコフ●原作:イワン・ノヴォクショーノフ「ジンギス汗の末喬」●時間:87分●出演:ワレーリー(ヴァレリー)・インキジーノフ/アナトーリー・デジンツェフ/リュドミラ・ベリンスカヤ/アネリ・スダケーヴィチ/ボリス・バルネット●日本公開:1930/10●配給:三映社(評価:★★★☆)

見習航空兵のアドリアン(ジャン・ポール・ベルモンド)は、1週間の休暇で婚約者アニェス(フランソワーズ・ドルレアック)の住むパリに滞在することに。その頃パリでは博物館の守衛が殺害されてアマゾンの小像が盗まれ、考古学者カタラン教授(ジャン・セルヴェ)が呼びだされる。その小像は、カタラン教授、アニェスの父親であるヴィレルモ
ーザ教授、実業家アンドレ・ディ・カストロ(アドルフォ・チェリ)の3人がブラジルの奥地探検から持ち帰った3体セットのうちの1体だった。3人は3体の小像
をそれぞれ一体ずつ所持し、カタラン教授は自分の像を博物館に寄贈したのだった。またヴィレルモーザ教授は探検後に死亡し、現地リオのある場所に自分の像を隠していた。そして、その娘アニェスは、その隠し場所の秘密を知っていた。しかし、そんな折、カタラン教授が何者かに連れ去られ、さらにアニェスまでが誘拐されてしまう。ちょうど、そこに居合わせたアドリアンは、連れ去られるアニェスの姿を見つけ、必死に後を追う。アニェスを連れた男たちは旅客機に乗り、アドリアンも咄嗟の機転
でに乗り込むと、旅客機はブラジルのリオデジャネイロまで来てしまう。リオに着いたアドリアンは、土地の少年の助けを得て、アニェスを取り戻す。小像のありかを知るアニェスの手引でアドリアンは小像を見つけ出すが、それも束の間、例
の男たちが現れ小像を奪われる。残る一つは、カストロが持っているのだ。アニェスとアドリアンは、彼の居るブラジリアに向かう。そして途中2人は、"敵"に囲まれたカタラン教授を見つけ、救出に成功するが、しかし―。
1964年公開のフィリップ・ド・ブロカ監督作で、ジャン・ポール・ベルモンドのコンビによるアクション・コメディ映画作(日本では'64年に初公開。今年['21年]、ベルモンド主演作をHDリマスター版で上映する「ジャン=ポール・ベルモンド傑作選2」(5月14日~、東京・新宿武蔵野館ほか)で公
開)。追いつ追われつのサスペンスをノンストップで描いたもので、公開当時、歴代フランス映画の興行記録を更新する空前のヒットを記録したそうです。そうした娯楽映画であるとともに、1964年の「ニューヨーク映画批評家協会賞 外国語映画賞」を受賞しています(
スティーブン・スピルバーグはこの映画を公開当時劇場で9回観たほどお気に入りで、「
テンポが良くて楽しめます。背景としてのリオの街の異国情緒もいいですが、新首都ブラジリアでの、無機質な建造物をバックにした追走劇もシュールで良かったです。まるで、イタリアの画家ジ
ョルジョ・デ・キリコが描く絵のような背景に感じられました(建物だけ屹立していて人影がほとんど無い)。モダニズムの理念に基づいて建設された計画都市ブラジリアの当時の映像は、結構貴重ではないでしょうか。
「レイダース」のヒントになったとのことですが、終盤、小像の奪い合いになり、洞窟を舞台に三体の小像が悪の手に落ちた、まさにその時、森林をゆさぶる大爆発が起きたので、「レイダース」のように巨岩が転がってくるのかと思いきや、最後はちょっとショボかったですが、それでも★4つはあげていい出来映えでした。
ヒロイン役のフランソワーズ・ドルレアックは、1964年2月5日に封切られたこの「リオの男」と、同年4月20日に封切られた「
この映画とフランソワ・トリュフォー監督の「柔らかい肌」で見せたフランソワーズ・ドルレアックの演技を比べれば、妹のカトリーヌ・ドヌーヴの当時より姉の方が演技力に幅があったことが窺えますが(「柔らかい肌」では男を不倫に引き込むCAを演じた)、1967年に妹と「ロシュフォールの恋人たち」で共演を果たした、まさにその年に、運転中に事故に遭い、25歳で亡くなっているのが惜しまれます。


「リオの男」●原題:L'HOMME DE RIO(英:THAT MAN FROM RIO)●制作年:1964年●制作国:フランス・イタリア●監督:フィリップ・ド・ブロカ●製作:アレクサンドル・ムヌーシュキン/ジョルジュ・ダンシジェール●脚本:ジャン=ポール・ラプノー/アリアンヌ・ムヌーシュキン/フィリップ・ド・ブロカ/ダニエル・ブーラン
ク/ジャン・セルヴェ/ロジェ・デュマ/ダニエル・チェカルディ/ミルトン・リベイロ/ウビラシ・デ・オリヴェイラ/アドル
フォ・チェリ/シモーヌ・ルナン●日本公開:1964/10●配給:東和●最初に観た場所:新宿武蔵野館(21-05-18)(評価:★★★★)


18世紀のフランス・パリ。悪臭漂う魚市場で、一人の赤子が産み落とされた。やがて孤児院で育てられたその男児の名はジャン=バティスト・グルヌイユといい、生まれながらにして数キロ先の匂いをも感じ取れるほどの超人的な嗅覚を持っていた。成長したグルヌイユ(ベン・ウィショー)はある日、街で素晴らしい香りに出合う。その香りを辿っていくとそこには一人の赤毛の少女がいた。少女の体臭
にこの上ない心地よさを覚えるグルヌイユであったが、誤ってその少女を殺害してしまう。少女の香りは永遠に失われてしまった。しかしその香りを忘れられないグルヌイユは、少女の香りを再現しようと考え、橋の上に店を構えるイタリア人のかつて売れっ子だった調香師ジュゼッペ・
バルディーニ(ダスティン・ホフマン)に弟子入りし、香水の製法を学ぶ。同時にその天才的な嗅覚を生かして新たな香水を考え、バルディーニの店に客を呼び戻す。さらなる調香技術を学ぶ
ため、香水の街・グラースへ旅に出るグルヌイユはその道中、なぜか自分だけ体臭が一切ないことに気づく。グラースで彼は、裕福な商人リシ(アラン・リックマン)の娘ローラ(レイチェル・ハード=ウッド)を見つける。以前街角で殺してし
まった赤毛の少女にそっくりなローラから漂う体臭は、まさにあの運命的な香りそのものだった。これを香水にしたい、という究極の欲望に駆られたグルヌイユは、脂に匂いを移す高度な調香法である「冷浸法」を習得する。 そして時同じくして、若い美少女が次々と殺される事件が起こり、グラースの街を恐怖に陥れる。髪を短く刈り上げられ、全裸で見つかる美少女たち。グルヌイユは既に禁断の香水作りに着手していたのだった―。
2006年公開のトム・ティクヴァ監督によるドイツ・フランス・スペイン合作映画で、原作は世界中で1500万部を売り上げているパトリック・ジュースキントの1985年発表の小説『パフューム ある人殺しの物語』(ジュースキントはスタンリー・キューブリックとミロス・フォアマンのみが正しく映画化できると考えており、他の者による映画化をを拒否していたという)。
そもそもスタンリー・キューブリックが映画化に意欲を示しながらも断念しているし、私財を投げ打って映画化権を得た映画プロデューサーのベルント・アイヒンガー(脚本も担当)も、最大の問題は「主人公は自分自身を表現していない。小説家はこれを補うために物語を使用することができる。それは映画ではできない」として苦心し、3人の脚本家による脚本は最終的な撮影台本となるまでに20以上の段階を経たとのことです。
映画を観直してみて、ストーリー的にも概ね原作に忠実であったと思いました。それでは、原作との違い(違和感とも言っていい)をどこで感じたかというと、グルヌイユが少女に近づくとき、映画ではどうしても"香り"的なものと性的なものが混然としているように見えてしまう点です。原作ではその点がはっきり峻別されていました。
ダスティン・ホフマンが調香師バルディーニ役で出演しています。そう言えば、昔から、ヨーロッパの監督の撮る文芸映画に、ハリウッドで活躍するスター俳優が出演するということがあったと思います。ルキノ・ヴィスコンティ(伊)監督の「

「パフューム ある人殺しの物語」●原題:PERFUME: THE STORY OF A MURDERER●制作年:2006年●制作国:ドイツ・フランス・スペイン●監督:トム・ティクヴァ●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:トム・ティクヴァ/アンドリュー・バーキン/ベルント・アイヒンガー●撮影:フランク・グリーベ●音楽:アトム・ティクヴァ●原作:パトリック・ジュースキント『香水 ある人殺しの物語』●時間:147分●出演:ベン・ウィショー/ダスティン・ホフマン/アラン・リックマン/レイチェル・ハード=ウッド/(ナレーション)ジョン・ハート●日本公開:2007/03●配給:ギャガ・コミュニケーションズ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(19-04-09)(評価:★★★★)


第1章「悲劇」では、「
行った」('71年/米)も相当なもの。カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ受賞作でありながら、殆どホラー映画に近い戦慄を覚えましたが、選者の森達也氏が、映画を通して主人公の苦痛を一度は体験すべきだと述べているのには賛同します。監督は「ローマの休日」('53年/米)の脚本家ドルトン・トランボで(原作もドルトン・トランボで発表は1938年)、第二次世界大戦後に「赤狩り」の標的とされ投獄された経験もあり(そう言えば「

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「ジョニーは戦場に行った」●原題:JOHNNY GOT HIS GUN●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:ダルトン・トランボ●製作ブルース・キャンベル●脚本:ダルトン・トランボ●撮影: ジュールス・ブレンナー●音楽:ジェリー・フィールデ
ィング●原作:ダルトン・トランボ●時間:112分●出演:ティモシー・ボトムズ/キャシー・フィールズ/ドナルド・サザーランド/ジェイソン・ロバーズ/マーシャ・ハント/ チャールズ・マッグロー/ダイアン・ヴァーシ/エドワード・フランツ/ ケリー・マクレーン●日本公開:1973/04●配給:ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿アートビレッジ(79-02-24)(評価:★★★★)![未来世紀ブラジル [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E6%9C%AA%E6%9D%A5%E4%B8%96%E7%B4%80%E3%83%96%E3%83%A9%E3%82%B8%E3%83%AB%20%5BDVD%5D.jpg)
「未来世紀ブラジル」●原題:BRAZIL●制作年:1985年●制作国:イギリス●監督:テリー・ギリアム●製作:アーノン・ミルチャン●脚本:テリー・ギリアム/チャールズ・マッケオン/トム・ストッパード●撮影:ロジャー・プラット●音楽:マイケル・ケイメン●時間:142分●出演:ジョナサン・プライス/ロバート・デ・ニーロ/キ
ム・グライスト/マイケル・ペイリン/キャサリン・ヘルモンド/ボブ・ホスキンス/デリック・オコナー/イアン・ホルム/イアン・リチャードソン/ピーター・ヴォーン/ジム・ブロードベント●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘(87-07-19)(評価:★★★★)●併映:「ザ・フライ」(デビッド・クローネンバーグ)
蝶々/倍賞美津子/小川真由美/清川虹子/殿山泰司/垂水悟郎/絵沢萠子/白川和子/フランキー堺/北村和夫/火野正平/根岸とし江(根岸李江)/河原崎長一郎/菅井きん/石堂淑郎/加藤嘉/佐木隆三●公開:1979/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-17)(評価:★★★★☆)
ン=ピエール・ラッサム●撮影:マリオ・ヴルピアーニ●音楽:フィリップ・サルド●時間:130分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ウーゴ・トニャッツィ/フィリップ・ノワレ/ミシェル・ピッコリ/アンドレア・フェレオル●日本公開:1974/11●最初に観た場所:大塚名画座 (78-11-07) (評価★★★★☆)●併映:「糧なき土地」(ルイス・ブニュエル)/「自由の幻想」(ルイス・ブニュエル)






1938年、日中戦争の激化によって混乱する中国本土から香港に逃れていた女子大学生・王佳芝(ワン・チアチー)(タン・ウェイ)は、学
友・鄺祐民(クァン・ユイミン)(ワン・リーホン)の勧誘で抗日運動を掲げる学生劇団に入団し、やがて劇団は実践を伴う抗日活動へと傾斜していく。翌1939年、佳芝も抗
日地下工作員(スパイ)として活動することを決意し、特務機関の易(イー)(トニー・レオン)暗殺の機を窺うため麦(マイ)夫人として易夫人(ジョアン・チェン)に麻雀・買い物友達として接近、易を誘惑したが、学生工作員の未熟さと厳しい警戒で
暗殺は未遂に終わる。3年後、日中戦争開戦から6年目の1942年、特務機関の中心人物に昇進していた易暗殺計画の工作員として上海の国民党抗日組織から再度抜擢された佳芝は、特訓を受けて易に接触したが、度々激しい性愛を交わすうち、特務機関員という職務から孤独の苦悩を抱える易にいつしか魅かれていく。工作員としての使命を持ちながら、暗殺対象の易に心を寄せてしまった佳芝は―。
「ブロークバック・マウンテン」('05年/米)で2005年・第62回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞や2005年度アカデミー監督賞を受賞したアン・リー(李安)監督の2007年公開作で、1942年日本軍占領下の中国・上海を舞台に、日本の傀儡政権である汪兆銘政権の下で、抗日組織の弾圧を任務とする特務機関員の暗殺計画を巡って、抗日運動の女性工作員ワン(タン・ウェイ)と、彼女が命を狙う日本軍傀儡政府の顔役イー(トニー・レオン)による死と隣り合わせの危険な逢瀬とその愛の顛末を描いたもので、2007年・第64回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞と撮影賞をW受賞し、アン・リー監督はルイ・マルや張藝謀(チャン・イーモウ)と並んで、金獅子賞を2度獲った歴代4人目の監督となりました。
原作は、ドミニク・チャン南カリフォルニア大学教授によれば、「国民党と共産党の政治的分裂がなければノーベル賞を受賞していたはずだ」という作家・張愛玲(ちょう あいれい、アイリーン・チャン、1920-1995)による小説『惘然記』(1983)に収められた短編小説「色、戒」で、1939年に実際にあった暗殺事件にヒントを得て書かれたものです。1955年に作者は米国に移り住むことになりますが、その頃から既に構想されていたもののようです(1977年初出)。映画公開に併せて『ラスト、コーション 色・戒』('07年/集英社文庫)など訳書が刊行され、『短編コレクションⅠ(池澤夏樹=個人編集 世界文学全集 Ⅲ‐05)』('10年/河出書房新社)にも収められていますが、池澤夏樹氏は、「『色、戒』はぼくには圧縮された長編小説と読める」としています。
原作は女性工作員・王佳芝(ワン・チアチー)の数日を描いていますが(それは劇的な結末で終わる)、映画も、その形をきっちり踏襲した上で、回想の部分に肉付けして2時間38分の作品にしています。そして、その肉付けの仕方が、ぎゅっと詰まった高密度の原作を分かりやすく展開して"長編小説"に戻したような形になっています。ジェーン・オースティン原作の「
ヒロインの王佳芝を演じた湯唯(タン・ウェイ)は、オーディションで約1万人の中から主演に選ばれたそうですが、当時28歳ながら学生を演じれば学生らしく見え、男を誘惑する女スパイを演じればそれなりに魅力的な女性に見えました(タン・ウェイは第44回台湾金馬奨最優秀新人賞受賞)。原作とイメージが若干違うのは、原作では「ねずみ顔の中年の小男」とされている特務機関の易(イー)をトニー・レオンが演じているため、"いい男"過ぎる点でしょうか(笑)(トニー・レオンはアジア・フィルム・アワード主演男優賞、台湾金馬奨最優秀主演男優賞受賞)。
因みに、「色、戒」の王佳芝のモデルは、父親が中国人、母親が日本人の女スパイ・鄭蘋茹(テン・ピンルー、1918 -1940/享年22)で、易のモデルは、汪兆銘政権傘下の特工総部(ジェスフィールド76号)の指導者・丁黙邨(ていもくそん、1903-1947)です。鄭は丁に近づき、1939年12月、丁の暗殺計画を実行するも失敗、特工総部に出頭して捕らえられ、1940年2月に銃殺されますが、後に中華民国より殉職烈士に認定されています。一方の丁は、戦後も蒋介石の国民政府に再任用されるなどしましたが、結局は漢奸として逮捕され、1947年に死刑判決を受け、南京で処刑されています(享年45)。
この映画は所謂「漢奸問題」を引き起こしました。佳芝を演じたタン・ウェイは、トニー・レオンが演じる戦時中日本の協力者と見なされた漢奸を愛するようになる役柄であることから、漢奸を美化し「愛国烈士」を侮辱する象徴として中国国内のネット上では批判された時期があったようです。張愛玲の原作では愛欲描写は殆ど無いものの、佳芝が易を逃がすのは原作も同じです。原作者の張愛玲は人生半ばで渡米して今は故人、そうなるとこの作品を選んだアン・リー監督に矛先が行きそうですが、当のアン・リーは台湾出身で米国国籍も有し普段は中国にはいないので、トニー・レオンと大胆なラブシーンを演じたタン・ウェイに批判の矛先が向けられたのかもしれません(タン・ウェイは2008年に香港の市民権を得て、その後は主に香港映画に出演、ハリウッドにも進出した)。
原作では、佳芝が易にどのような理由で愛情を抱くようになったかは明確に描かれていません。また、佳芝が易を逃がしたことが、同時に彼女が仲間を裏切ったことになり、そのため彼女だけでなく仲間が皆捕まって処刑されたということも、原作ではさらっと触れているだけで、この佳芝の言わば"裏切り"行為は、原作よりも映画の方がより前面に押し出されていると言えます。敢えてそうした上で(つまり批判を見越した上で)、それでもヒロインとして観る者を惹きつける佳芝の描きっぷりに、アン・リー監督による"原作超え"を感じました。3年も経ってからやっと佳芝に口づけをしたかつての学友に、「3年前にしてくれていれば...」と佳芝が言う場面で、「ああ、これは"女性映画"なのだなあと」とも思いました(アン・リー監督は女性映画の名手として定評がある)。
この作品の2年前にヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲った「ブロークバック・マウンテン」は、ワイオミング州ブロークバック・マウンテンの雄大な風景をバックに、2人のカウボーイの1963年から1983年までの20年間にわたる秘められた禁断の愛を綴った物語で、原作は『シッピング・ニュース』でピューリッツァー賞を受賞した女流作家E・アニー・プルーの同名中編で、1997年に雑誌「ニューヨーカー」に掲載され、1998年の全米雑誌賞とO・ヘンリー賞を受賞した作品です(これも佳作だった。彼女は「ブロークバック・マウンテン」がアカデミー作品賞にノミネートされるも受賞を逃したことで、代わりにアカデミー作品賞を受賞した「クラッシュ」を酷評した)。
1963年、ワイオミング。ブロークバック・マウンテンの農牧場に季節労働者として雇われ、運命の出逢いを果たした2人の青年、イニス・デル・マー(ヒース・レジャー)とジャック・ツイスト(ジェイク・ギレンホール)。彼らは山でキャンプをしながら羊の放牧の管理を任される。寡黙なイニスと天衣無縫なジャック。対照的な2人は大自然の中で一緒の時間を過ごすうちに深い友情を築いていく。そしていつしか2人の感情は、彼ら自身気づかぬうちに、友情を超えたものへと変わっていくのだったが―。
、ロンドンなどの各映画批評家協会賞作品賞を受賞し、ゲイ・ムービーにはスティーヴン・フリアーズ監督の「マイ・ビューティフル・ランドレット」('85年)やウォン・カーウァイ監督の「
この映画の場合、主人公の2人の男性は共に家庭も持っていて、しかも時代設定が60年代から80年代にかけてということで、ゲイに対する偏見が今よりもずっと強かった時代の話であり、それだけ"禁断の愛"的な色合いが強く出
ているように思います。一方で、その"禁断の愛"をブロークバック・マウンテンの美しい自然を背景に描いており、
イニスとジャックを演じた、故ヒース・レジャー(1979-2008/享年28)とジェイク・ギレンホールの演技も良かったです。この作
品のイニス役で
その後ヒース・レジャーは、クリストファー・ノーラン監督のバットマン映画「
「ラスト、コーション」●原題:色,戒/LUST, CAUTION●制作年:2007年●制作国:アメリカ・中国・台湾・香港●監督:アン・リー(李安)●製作:アン・リー/ビル・コン/ジェームズ・シェイマス●脚本:ワン・ホイリン/ジェームズ・シェイマス●撮影:ロドリゴ・プリエト●音楽:アレクサンドル・デスプラ●原作:張愛玲(ちょう あいれい、アイリーン・チャン)「色、戒」●時間:158分●出演:トニー・レ
オン(梁朝偉)/タン・ウェイ(湯唯)/ジョアン・チェン(陳冲)/ワン・リーホン(王力宏)/トゥオ・ツォンファ/チュウ・チーイン/ガァオ・インシュアン/クー・ユールン/ジョンソン・イェン/チェン・ガーロウ/スー・イエン/ホー・ツァイフェイ/ファン・グワンヤオ/アヌパム・カー●日本公開:2008/02●配給:ワイズポリシー)(評価:★★★★☆)
ジョアン・チェン/ベルナルド・ベルトルッチ監督「
「ブロークバック・マウンテン」●原題:BROKEBACK MOUNTAIN●制作年:2005年●制作国:アメリカ●監督:アン・リー(李安)●製作:
ダイアナ・オサナ/ジェームズ・シェイマス●脚本:ワダイアナ・オサナ/ジェームズ・シェイマス●撮影:ロドリゴ・プリエト●音楽:グスターボ・サンタオラヤ●原作:E・アニー・プルー「ブロークバック・マウンテン」●時間:134分●出演:ヒース・レジャー/ジェイク・ギレンホール/アン・ハサウェイ/ミシェル・ウィリアムズ/ランディ・クエイド/リンダ・カーデリーニ/アンナ・ファリス/ケイト・マーラ●日本公開:2006/03●配給:ワイズポリシー(評価:★★★★)
「ダークナイト」●原題:THE DARK KNIGHT●制作年:2008年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:クリストファー・ノーラン●製作:クリストファー・ノーラン/チャールズ・ローヴェン/エマ・トーマス●脚本:クリストファー・ノーラン/ジ
ョナサン・ノーラン●撮影:ウォーリー・フィスター●音楽:ハンス・ジマー/ジェームズ・ニュートン・ハワード●原作:ボブ・ケイン/ビル・フィンガー「バットマン」●時間:152分●出演:クリスチャン・ベール/ヒース・レジャー/アーロン・エッカート/マギー・ジレンホール/マイケル・ケイン/ゲイリー・オールドマン/モーガン・フリーマン/メリンダ・マックグロウ/ネイサン・ギャンブル/ネスター・カーボネル●日本公開:2008/08●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)


1日目・・・農夫(デルジ・ヤーノシュ)は馬車に乗り、風の中人里離れた家に戻る。娘(ボーク・エリカ)は彼を出迎え、農夫は馬と車を小屋に戻す。娘は農夫の服を着替えさせ、2人で茹でたジャガイモ1個の食事を貪る。寝る段になって、農夫は58年鳴き続けた木食い虫が鳴いていないことに気付く。外は暴風が吹き荒れている。2日目・・・娘は井戸に水を汲みに行く。パーリンカ(焼酎)を飲んだ後、農夫はいつもの通り、馬車に乗って外へ出ようとするが、馬は動こうとしない。諦めた農夫は家に戻って薪を割り、娘は洗濯をする。ジャガイモを貪ったところへ男(ミハーイ・コルモス)が現れ、パーリンカを分けてくれるように頼む。町は風で駄目になったという男は、世界についてのニヒリズム的持論を延々述べるが、農夫はくだらないと一蹴、男はパーリンカを受け取って出て行く。3日目・・・娘は井戸で水を汲む。パーリンカを飲み、農夫と娘は馬小屋の掃除をする。新たな飼い葉を与えても馬は食べない。ジャガイモ
を食べていた時外を見ると、馬車に乗った数人の流れ者が現れ、勝手に井戸を使い出す。2人は外へ飛び出して流れ者を追い払い、流れ者は2人を罵って去る。食器を片付けた後、娘は流れ者の一人が水の礼として渡した本を読むと、教会における悪徳について書かれていた。未だ風は激しく吹き続けている。4日目・・・娘が水を汲みに行くと、井戸が干上がっていた。馬は相変わらず飼い葉を食べず、水
も飲まない。農夫はここにはもう住めないと、家を引き払う決心をする。荷物を纏めて馬を連れ、今度は自分らで車を引いて農夫と娘は家を出るが、丘を越えたところで戻ってくる。娘は窓から外を何も言わず見続ける。5日目・・・娘は農夫を着替えさせ、農夫は小屋に行き馬の縄を外してやる。2人はジャガイモを貪るも力なく、農夫は殆どを残してしまう。夜になったが、ランプに火が付かなくなり、火種も尽きる。嵐は去っていた。6日目・・・農夫と娘が食卓についている。農夫はジャガイモを生のまま口にするが、すぐ諦める。2人を沈黙が支配する―。
ハンガリーのタル・ベーラ監督(1955年生まれ)の2011年の作品で、第61回ベルリン国際映画祭銀熊賞
(審査員グランプリ)、国際批評家連盟賞(コンペティション部門)を受賞した作品ですが、タル・ベーラ監督はこの作品を監督としての最後の作品と表明しています。それぞれ農夫と娘を演じたデルジ・ヤーノシュ、ボーク・エリカ,ミハーイ・コルモス共、前作「倫敦から来た男」('07年/ハンガリー)に続いての出演で、音楽、撮影、編集も同じスタッフです。
強烈な印象を残す馬は、本当に働かなくてその日に売り手がつかなかったらソーセージになるところだった馬を、タル・ベーラ監督がこれだと思って"スカウト"したそうです。冒頭に「1889年1月3日。哲学者ニーチェはトリノの広場で鞭打たれる馬に出会うと、駆け寄り、その首をかき抱いて涙した。そのまま精神は崩壊し、彼は最期の10年間を看取られて穏やかに過ごしたという。 馬のその後は誰も知らない」とナレーションが流れます。この馬は、そのニーチェの馬を象徴的に指しているのでしょうか(原題は「トリノの馬」)。
農夫と娘が強風の中家に閉じ込められ、2日目にはその馬は動かなくなり、4日目には水を失い、5日目には火を失うといった具合に生きていく上で欠かせないものを順番に失っていくわけで、旧約聖書における神が6日間で世界を作った「天地創造」とは逆に、6日で世界が静かに崩壊していく様が、農夫と娘の生活の変化を通して間接的に描かれているとも言えます(タル・ベーラ監督はこの作品について、「本当の終末というのはもっと静かな物であると思う。死に近い沈黙、孤独をもって終わっていくことを伝えたかった」と語っている)。
長回しという点で、アンドレイ・タルコフスキー監督やテオ・アンゲロプロス監督の作品と似ているように思われ、また、世界の終わりを間接的に描いたのであるならば、タルコフスキー監督が第39回カンヌ国際映画祭で、カンヌ映画祭史上初の4賞(審査員特別グランプリ、国際映画批評家賞、エキュメニック賞、芸術特別貢献賞)を受賞した「サクリファイス」('86年/スウェーデン・英・仏)を思い出させます。「サクリファイス」はタルコフスキー監督の遺作で、この監督は晩年になればなるほど作品の哲学的な色合いが濃くなっていったように思いますが、但し「サクリファイス」では、世界の終りの危機が核戦争勃発によってもたらされたことが、登場人物がテレビでそのニュースを聴く場面があることから具体的に示されているのに対し、この「ニーチェの馬」では、2日にパーリンカを分けて欲しいと立ち寄った男が、「町は風で駄目になった」と言うだけです。
ほぼ全編に渡って吹きすさぶ風(人工の風だそうだが)―この風によって世界が滅ぶという抽象性がある意味この映画の"重み"になっているように思います。加えて、農夫を演じたデルジ・ヤーノシュの哲学者のような顔つき。殆どセリフがないのも"重さ"に繋がっているし、モノクロ映画であることも効果を増しているように感じられ、個人的には「サクリファイス」より骨太感があるように思いました。長回しが多く、観るのにある程度覚悟のいる作品ですが、他にあまり類を見ない作品であると思います(ジャガイモがこれほど印象に残る映画も無い)。
ハンガリー)の監督ヤンチョー・ミクローシュ(1921-2014)なども「ミクローシュ・ヤンチョー」と「名・姓」の順で長年通ってしまっているのでややこしいです。1869年、オーストリアとハンガリーの二重帝国治下に入って3年目のハンガリーの、農民と義賊の群れが狩りこまれた荒野の砦を舞台にした「密告の砦」は、ハンガリー人将校たちが仕組んだ"密告"の罠にはまり、次々と倒れていく義賊集団のゲリラたちが悲惨でした。農民が義賊ゲリラ狩りに駆り出されるというのは皮肉ですが、コレ、すべて史実とのことです(1966年度ハンガリー批評家選出最優秀映画賞、1967年度英国批評家協会優秀外国映画賞受賞作品)。「密告の砦」と「ニーチェの馬」の2本だけで、ハンガリー映画って"重い"なあという印象になってしまいがちですが、とりあえず「ヤンチョー」と「タル」が姓であることを憶えておきましょう。
「ニーチェの馬」●原題:A TORINOI LO/THE TURIN HORSE●制作年:2011年●制作国:ハンガリー・フランス・スイス・ドイツ●監督:タル・ベーラ(苗字・名前順、以下同じ)●製作:テーニ・ガーボル●脚本:タル・ベーラ/クラスナホルカイ・ラースロー●撮影:フレッド・ケレメン●音楽:ヴィーグ・ミハーイ●時間:154分●出演:デルジ・ヤーノシュ/ボーク・エリカ/コルモス・ミハリー●日本公開:2012/02●配給:ビターズ・エンド●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-03-25)(評価:★★★★)
「サクリファイス」●原題:OFFRET●制作年:1986年●制作国:スウェーデン・イギリス・フランス●監督・脚本:アンドレイ・タルコフスキー●製作:カティンカ・ファラゴ●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:ヨハン・ゼバスティアン・バッハ●時間:149分●出演:エルランド・ヨセフソン/スーザン・フリートウッド/オットーアラン・エドヴァル/グドルン・ギスラドッティル/スヴェン・ヴォルテル/ヴァレリー・メレッス/フィリッパ・フランセーン/トミー・チェルクヴィスト●日本公開:1987/04●配給:フランス映画社●最初に観た場所:テアトル新宿(87-10-17)(評価:★★★☆)
「密告の砦」●原題:SZEGENYLEGENYEK●制作年:1965年●制作国:ハンガリー●監督:ミクローシュ・ヤンチョー(名前・苗字順、以下同じ)●脚本:ジュラ・ヘルナーディ●撮影:タマーシュ・ショムロー●時間:149分●出演:ヤーノシュ・ゲルベ/ティボル・モルナール/アンドラーシュ・コザーク/ガーボル・アガールディ/ゾルタン・ラティノヴィッチ●日本公開:1977/06●配給:フランス映画社●最初に観た場所:千石・三百人劇場(80-01-23)(評価:★★★★)●併映:「オーソン・ウェルズのフェイク」(オーソン・ウェルズ)


パリに住む富豪のフィリップ(フランソワ・クリュゼ)は、頸髄損傷で首から下の感覚が無く、体を動かすこともできない。フィリップと秘書のマガリー(オドレイ・フルーロ)は、住み込みの新しい介護人を雇うため、候補者の面接をパリの邸宅でおこなっていた。ドリス(オマール・シー)は、職探しの面接を
紹介され、フィリップの邸宅へやって来る。ドリスは職に就く気はなく、給付期間が終了間際となった失業保険を引き続き貰えるようにするため、紹介された面接を受け、不合格
になったことを証明する書類にサインが欲しいだけだった。気難しいところのあるフィリップは、他の候補者を気
に入らず、介護や看護の資格も経験もないドリスを、周囲の反対を押し切って雇うことにする。フィリップは、自分のことを障害者としてではなく、一人の人間として扱ってくれるドリスと次第に心を通じ合っていく―。
2011年11月本国公開のエリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ監督作で、第37回セザール賞で作品・監督・主演男優・助演女優・撮影・脚本・編集・音響賞にノミネートされ、オマール・シーが主演男優賞を受賞、フランスでの歴代観客動員数で3位(フランス映画のみの歴代観客動員数では2位)となる大ヒットとなりました。日本では、2011年10月に
実在の富豪フィリップ・ポゾ・ディ・ボルゴとその介護人アブデル・ヤスミン・セローの実話を基にした作品であるということですが、映画では介護人ドリスはアフリカ系の黒人になっていますが、実際のアブデルはアルジェリア出身のアラブ系で、フィリップと1年程度で別れたのではなく、10年程度介護したとのこと。他にも事実と異なる点は多くあり、映画は映画として観た方がよいかもしれません。
その点において、フィリップが多くの候補者の中からなぜドリスを自らの介護人として採用したのかということがひとつこの作品のカギとなりますが、他の候補者が障害を持つフィリップに同情を示す中、そうした他人の同情にウンザリしていたフィリップにとって、対等な人間として自分と接するドリスには偽善的なものが感じられず、"偽善者"に囲まれて暮らしてきたようなフィリップにとっては、彼がが唯一心を許せそうな相手であったということでしょう。
2人が生活環境や趣味趣向の違い―クラシックとソウル、高級スーツとスウェット、文学的な会話と下ネタ―を超えて心を通い合うようになる様がコメディタッチで描かれていますが、異文化交流とでも言うか、異価値許容性とでも言うか、ある意味今日的なテーマを扱った作品とも言えます。また、その根底には、両者の間で通じ合う何かがあったということが言えるかと思います。フィリップは友人から「注意したまえ。ああいう輩は容赦ない」と言われ、「そこがいい...容赦ないところがね」と答えています。
一方で、白人の富豪と黒人の介護人という組み合わせになったことで、アメリカ映画「
また、介護事業者や介護に携わる家族などからすれば、介護問題のかなりの部分は経済的な問題であって、この映画の主人公のように大富豪であればそうした問題の殆どは解決可能であり、あとは介護人と被介護者の相性の問題だけになるので、現場にとってさほど参考になるものはない(●批判3)との見方もあるかもしれません。でも、本来がこの作品は、そうした介護の大変さを伝えることを趣旨としたものではなく、元々異質な他人同士だった2人が、お互い対等な立場で相手を認め合い、相手を思い遣る関係となった―"Intouchables"という原題からして―それがこの映画のテーマではなかったかと思います。
ただ泣けるだけの映画にしようとすれば、もっとそうした効果も織り込むことができたかもしれませんが、むしろ、そうした方向よりも、"偽善"への抵抗や"人間性"とは何かといったことに力が注がれている印象を受けました。ドリスを演じたオマール・シーもいいですが、顔の表情だけで演技したフランソワ・クリュゼも良かったし、介護助手をイヴォンヌを演じたアンヌ・ル・ニ(セザール賞助演女優賞ノミネート)、秘書のマガリーを演じたオドレイ・フルーロなど脇役も悪くなかったように思います(マガリーは○○○○○だったのかあ。ある意味、"ダイバーシティ映画"でもあったなあ)。
「最強のふたり」●原題:INTOUCHABLES●制作年:2011年●制作国:フランス●監督・脚本:エリック・トレダノ/オリヴィエ・ナカシュ●製作:ニコラ・デュヴァル・アダソフスキ/ヤン・ゼノウローラン・ゼイトゥン●撮影:マチュー・ヴァドピエ●音楽:ルドヴィコ・エイナウディ●時間:112分●出演:フランソワ・クリュゼ/オマール・シー/アンヌ・ル・ニ/オドレイ・フルーロ/
クロティルド・モレ/アルバ・ガイア・クラゲード・ベルージ/トマ・ソリヴェレ/クリスティアン・アメリ/グレゴリー・オースターマン/アブサ・ダイヤトーン・トゥーレ/シリル・マンディ/ドロテ・ブリエール・メリット●日本公開:2012/09●配給:ギャガ●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(17-12-14)(評価★★★★)


パリの銀行で働くジャン・フルニエ(クロード・マン)は、同僚のキャロン(ポー
ル・ゲール)に連れられて行った市中のカジノで、一時間で給料の半年分を稼ぐ大当たりする。それを契機にギャンブルに取り憑かれた彼だったが、謹厳な時計修理職人の父親から「賭博師はごめんだ。出て行け」と勘当されると、ニースの安ホテルに居を移し、「天使の入江」のカジノ通いを始める。そんなある日、以前カジノで見かけたブロンド美女のジャッキー・ドメストル(
ジャンヌ・モロー)に偶然出会う。ジャンは彼女に惹かれると共に、意気投合した彼女とパートナーを組み、ますますギャンブルにのめり込んでいく。彼女は夫の懇願にもかかわらずギャンブルに熱中して離婚し、息子とは週に一回会えるだけだと言う。ボロ負けした日は「二度としない」と誓
うが口だけで、「軽率な自分に腹がたつ」と言いながらやめられない。ホテル代もなく駅のベンチで寝るというジャッキーを、ジャンは自分のホテルに泊まらせる。翌朝二人は別れるが、午後
海岸にいたジャンを探しに来たジャッキーは、女友だちに借金した金で賭
けてくると言い、別れるつもりだったジャンはカジノまでジャッキーを追っていく。そして、カジノで二人は勝ちまくり、「崖っぷちのドンデン返しね。モンテカルロに行きましょう」というジャッキーの誘いに車を買い、ドレスにタキシードを用意し、豪華ホテルに横付けし、海が見えるバルコニー付きのスイートルームにチェックインする。しかし、二人はカジノで今度は大敗し、結局有り金を全部使い果たしてしまう―。
作品を特集した「ドゥミとヴァルダ、幸福についての5つの物語」での上映が「初公開」だそうです。同じくニースのカジノを舞台にしたアンリ・ヴェルヌイユ監督の「
すでに、ルイ・マル監督の「
ただ、ジャッキーはギャンブルに対する弱さだけでなく、ギャンブルについての哲学も持っていて、「贅沢できなくても平気よ。お金のために賭けをやるのじゃない。十分あってもやるわ。賭けの魅力は贅沢と貧困の両方が味わえること。それに数字や偶然の神秘がある。もし数字が神様の思し召しなら、私は信者よ。カジノに初めて入ったとき、教会と同じ感動を覚えた。私にとって賭けは宗教よ。お金とは関係ない」「この情熱のおかげで私は生きていられるの。誰にも奪う権利はないわ」と言っています。ギャンブラーとしての凄みを感じさせながらも、強がっている部分も感じられ、その辺りがジャンヌ・モローならではの演技の機微であり、同じファム・ファタールを演じても、監督が違えば違ったタイプのそれを見せる演技の幅であると思いました。
「天使の入江」●原題:LA BAIE DES ANGES(英:BAY OF ANGELS)●制作年:1963年●制作国:フランス●監督・脚本: ジャック・ドゥミ●撮影:ジャン・ラビエ●音楽:ミシェル・ルグラン●時間:101分●出演:ジャンヌ・モ
ロー/クロード・マン/ポール・ゲール/アンナ・ナシエ●日本公開:2017/07●配給:ザジフィルムズ●最初に観た場所:渋谷・シアター・イメージフォーラム(特集「ドゥミとヴァルダ、幸せについての5つの物語」)(17-08-18)(評価★★★★)


第二次世界大戦後のドイツ。15歳のマイケル(ダフィット・クロス)は、体調が優れず気分が悪かった自分を偶然助けてくれた21歳も年上の女性ハンナ(ケイト・ウィンスレット)と知り合う。猩紅熱にかかったマイケルは、回復後に毎日のように彼女のアパートに通い、いつしか彼女と男女の関係になる。ハンナはマイケ
ルが本を沢山読む子だと知り、本の朗読を頼むようになる。彼はハンナのために『オデュッセイア』や『犬を連れた奥さん』などを朗読する。ある日、ハンナは働いていた市鉄での働きぶりを評価され、事務職への昇進を言い渡されると、マイケルの前から姿を消
してしまう。理由がわからずにハンナに捨てられて8年が経ったある日、ハイデルベルク大学法学部生となったマイケルは、ロール教授(ブルーノ・ガンツ)のゼミ研究のためにナチスの戦犯を裁くアウシュビッツ裁判を傍聴し、被告席の一つにハンナの姿を見つける。彼女は第二次世界大戦中に強制収容所で看守をしていたのである。裁判はハンナに不利に進み、彼女は無期懲役の判決を受ける―。
2008年のアメリカ・ドイツ合作映画で、監督は英国人のスティーブン・ダルドリー、原作は1995年に出版されたベルンハルト・シュリンク(Bernhard Schlink)の長編小説『朗読者』('00年/新潮社、原題:Der Vorleser/The Reader)です。映画は(終盤に主人公がニューヨークへ行く場面を除き)ドイツで撮影されていますが、英語による製作であるため、主人公の名前も、原作のミヒャエルからマイケルになっています。但し、少年時代のマイケルを演じたダフィット・クロスはドイツの俳優、母親を演じたズザンネ・ロータもドイツ人女優、法学部のロール教授はスイス出身のブルーノ・ガンツが演じていてます。ハンナ役のケイト・ウィンスレットは英国人女優、成人してからのマイケルを演じたレイフ・ファインズも英国人俳優、アウシュヴィッツの生存者母子ローゼ・マーターとイラーナ・マーターの二役を演じたレナ・オリンはスウェーデン出身、若き日のイラーナを演じたアレクサンドラ・マリア・ララはルーマニア人、成人したマイケルの娘を演じたハンナー・ヘルツシュプルングは、これまたドイツ人女優です(アメリカ人、いないね)。
先に原作を読みましたが、かつて齋藤美奈子氏が「包茎小説」と呼んでいたのを思い出しました。15歳のミヒャエルと21歳年上のハンナが出会い、男女の関係を持って別れるまでを描いた第1章だけならば、確かに"筆おろし"小説と言えなくもなく、元判事で法学部教授である作者がこういうの書くのが興味深いと思いました。しかし、第2章の裁判の場面はまさにキャリアに裏打ちされたもので、作品に深みを与えることにも繋がっているように思いました。小説はこれに、裁判以降の主人公とハンナの話を描いた第3章を加えた3つの章から成ります。
一方の映画の方は、1995年の主人公マイケルの「現在」を軸に、1958年の15歳の時にハンナと出会った少年期、1966年のハンナの裁判を偶然傍聴することになった法学部生
時代、1976年のマイケルが本を朗読しテープに録音して、それを獄中のハンナに送ることを思いついた時期、1980年のハンナから届いた短い文章の礼状にマイケルが感動した出来事、1988年の20年の刑に減刑されたハンナが釈放されることが決まった時などとの
間を行き来する形をとっていますが、概ね原作に忠実であるといっていいでしょう(マイケルが離婚して娘となかなか会えないでいるといった現況は映画のオリジナル。あとは、ブルーノ・ガンツ演じる教授のウェイトが原作より大きくなって、主人公に精神的に導き支えるという点で、原作における主人公の父親である哲学教授の役割を一部代替していたりする)。
原作でも言えるのは、ハンナが幾つか謎を抱えている女性であるという点であり、①なぜマイケルと交わるようになったのか?(単なる気まぐれ?)、②なぜ裁判で不利になることを承知で自らの"秘密"を明かさなかったのか?(主人公がその"秘密"に気づく場面は、ミステリの謎が明かされるようで、原作でも映画でも白眉)、③そして最後に彼女がとった行動の理由は?―等々。映画を観て、①の理由は、マイケルが彼女にとっての癒しとなる"朗読者"であり、自らを成長させるパートナーであったことが窺えましたが

こうした"秘密"を持つ女性を演じるのは難しいだろうなあと思いますが、それだけ魅力的でもあり、ケイト・ウィンスレット(1975年生まれ)はそこに上手く嵌ったように思います(ニコール・キッドマンが妊娠で降板し、当初の候補だったケイト・ウィンスレットが結局演じることになった)。ケイト・ウィンスレットは、この作品で「タイタニック」('97年)以来4度目のアカデミー賞主演女優賞ノミネート(「助演賞」ノミネートを含むと6度目)にして、初の受賞を果たしています。「タイタニック」で共演したレオナルド・ディカプリオ(1974年生まれ)も、「レヴェナント:蘇えりし者」('15年)で4度目のアカデミー賞主演男優賞ノミネート(「助演賞」ノミネートを含むと5度目)にして初受賞していますが、若い頃から演技の天才などと呼ばれたレオナルド・デカプリオよりもケイト・ウィンスレットの方が受賞は7年早かったことになります。
「タイタニック」でケイト・ウィンスレット演じるローズは1等客室の客、レオナルド・ディカプリオ演じるジャックは3等客室の客でした。「船」って階層社会の縮図だなあと思いました(それは現在の豪華クルーズ船の旅などでも同じかも)。階級差を超えた恋という定番の設定ですが、意外と感情移入できたのは、振り返ってみれば二人の演技がしっかりしていたのかもしれません。個人的には、昔、八戸と苫小牧間のフェリーで1等の個室部屋がとれなくて2等の部屋に雑魚寝部屋にいったん入ったのを思い出しました。すぐに1等のキャンセル待ちに並んで、窓ありの個室部屋に移りましたが、やはり天と地の差があったなあ(笑)。学生時代は、雑魚寝部屋で伊豆大島に行ったりしていましたが、その頃は全然抵抗なかったけれど...。
局ビデオで観てしまいましたが、「タイタニック」の監督と言うより「アビス」('89年)の監督によるCG映画だと思って軽く見ていました(「アビス」は海洋SFだが、夫婦愛がテーマのひとつになっている。なのに、キャメロン監督はこの映画の撮影中に、製作者で妻でもあるゲイル・アン・ハードと離婚したという皮肉。'89年公開作に30分の未公開部分を付加した完全版も観たが、話題になっていた大津波来襲のSFXはイマイチ。メッセージ性が前面に出た分だけ説教臭くなったし、いずれにせよ、異星人の船は海底から浮上させない方が良かった)。
それが、さほど期待していなかった「アバター」を実際観てみると、結構ドラマ部分もしっかりしていて、事前の予想よりも良かったです。主人公のジェイク・サリー(サム・ワーシントン)は、アバターと一体化し、先住民族であるナヴィの一員として彼らの地パンドラで生きることを選びますが、ああ、これって、ケビン・コスナーが監督し、自身で主演した「ダンス・ウィズ・ウルブズ」('90年)年と同じで、「こちら側」にいた人間が「あちら側」の世界と接し、最後はあちら側に行く話だなあと思いました。ネットで調べたら、大筋には共通点があるとの見方が幾つか見
受けられ、「『アバター』では,『ダンス・ウィズ・ウルブズ』と同様の方法によって観客の評価や解釈が誘導されます」とする大学の先生の論考(神戸市外国語大学・山口治彦教授「
「愛を読むひと」●原題:THE READER●制作年:2008年●制作国:アメリカ・ドイツ●監督:スティーブン・ダルドリー●製作:アンソニー・ミンゲラ/


「タイタニック」●原題:TITANIC●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ジョン・ランドー●撮影:ラッセ
ル・カーペンター●音楽:ジェームズ・ホーナー(主題歌:セリーヌ・ディオン「マイ・ハート・ウィル・ゴー・オン」●時間:194分●出演:レオナルド・ディカプリオ/ケイト・ウィンスレット/ビリー・ゼイン /デビッド・ワーナー/フランシス・フィッシャー/ダニー・ヌッチ/ジェイソン・ベリ
ー/エイミー・ガイバ/ビル・パクストン/グロリア・スチュアー
ト/スージー・エイミス/ルイス・アバナシー/キャシー・ベイツ/バーナード・ヒル /ジョナサン・ハイド/ヴィクター・ガーバー/マーク・リンゼイ・チャップマン/ヨアン・グリフィズ/エドワード・フレッチャー /エリック・ブレーデン/マイケル・エンサイン/バーナード・フォックス●日本公開:1997/12●配給:20世紀フォックス(評価★★★★)

「アビス」●原題:THE ABYSS●制作
年:1989年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●撮影:ミカエル・サロモン●音楽:アラン・シルヴェストリ●時間:140分(公開版)/171分(完全版)●出演:エド・ハリス/メアリー・エリザベス・マストラントニオ/マイケル・ビーン/レオ・バーメスター/トッド・グラフ//キ
ジョン・ベッドフォード・ロイド/J・C・クイン/キンバリー・スコッャプテン・キッド・ブリューワー/マイケル・ビーチ/ディック・ウォーロック/ジョージ・ロバート・クレック/クリス・エリオット/クリストファー・マーフィ/アダム・ネルスン/ジミー・レイ・ウィークス/J・ケネス・キャンベル/ケン・ジェンキンス/ピーター・ラトレイ/ジョー・ファーゴ●日本公開:1990/03●配給:20世紀フォックス映画(評価★★★)
「アバター」●原題:AVATAR●制作年:2009年●制作国:アメ
リカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ジョン・ランドー●撮影:マウロ・フィオーレ●音楽:ジェームズ・ホーナー(主題歌:レオナ・ルイス「I See You」●時間:162分●出演:サム・ワーシントン/ゾーイ・サルダナ/シガニー・ウィーバー/ステ
ィーヴン・ラング/ミシェル・ロドリゲス/ジョヴァンニ・リビシ/ジョエル・デヴィッド・ムーア/ディリープ・ラオ/ラズ・アロンソ/ウェス・ステュディ/CCH・パウンダー●日本公開:2009/12●配給:20世紀フォックス映画(評価★★★★)
「ダンス・ウィズ・ウルブズ」●原
題:DANCES WITH WOLVES●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:ケビン・コスナー●製作:ケビン・コスナー/ジェイク・エバーツ●脚本:マイケル・ブレイク●撮影:ディーン・セムラー●音楽:ジョン・バリー●原作:マイケル・ブレイク●時間:181分(オリジナル版)/236分(完全版)●出演:ケビン・コスナー/メアリー・マクドネル/グラハム・グリーン/ロドニー・A・グラント/モーリー・チェイキン/ロバート・パストレリ/ラリー・ジョシュア/トム・エヴェレット●日本公開:1991/05●配給:東宝東和(評価★★★★)





ローマに住む映画監督のサルヴァトーレ(中年期:ジャック・ペラン)は、アルフレード(フィリップ・ノワレ)という老人が死んだという知らせを受ける。アルフレードは、かつてシチリア島の小さな村にある映画館・パラダイス座で働く映写技師だった。「トト」という愛称で呼ばれていた少年時代のサルヴァトーレ(少年期:サルヴァトーレ・カシオ)は大の映画好きで、母マリア(中
年期:アントネラ・アッティーリ)の目を盗んではパラダイス座に通いつめていた。「トト」はやがて映写技師のアルフレードと心を通わせるようになり、ますます映画に魅せられていった。アルフレードから映写技師の仕事も教わる
ようになった「トト」だったが、フィルムの出火から火事になり、アルフレードは重い火傷を負って失明してしまう。その後、焼失したパラダイス座は「新パラダイス座」として再建され、父の戦死が伝えられた「トト」は、家計を支えるためにそこで映写技師として働くようになる。やがて思春期を迎えた「トト」ことサルヴァトーレ(青年期:マルコ・レオナルディ)は駅で見かけた美少女
エレナ(アニェーゼ・ナーノ)との初恋を経験、それから兵役を経て成長し、今は映画監督として活躍するようになっている。成功を収めた彼のもとに母マリア(壮年期:プペラ・マッジオ)からアルフレードの訃報が届き、映画に夢中だった少年時代を思い出しながら、サルヴァトーレは故郷のシチリアに30年ぶりに帰って来たのだった―。
ジュゼッペ・トルナトーレ監督(1956年生まれ)の1988年公開作で、1989年カンヌ国際映画祭審査員グランプリを受賞したほか、イタリア映画としては15年ぶりにアカデミー賞最優秀外国語映画賞を受賞した作品です(ゴールデングローブ賞外国語映画賞も受賞)。日本でも'89年12月に公開され、「シネスイッチ銀座」での単館ロードながら40週というロングランを記録し、観客動員数約27万人、売上げ3億6900万円という数字は、単一映画館における興行成績としては未だ破られておらず、単館ロードそのものが減っているため、この記録は今後も破られないと言われています。
この映画について、母性(女性)原理への回帰という意味で日本人の気質に通じるものがあって、日本人に受け入れられやすいのではないかという見方をどこかで読んだ覚えがありますが、確かにシシリア人気質というのは家族の絆を非常に重んじるところがあるようです。但し、映画において「トト」ことサルヴァトーレにとって疑似的な父親の役割を果たすアルフレードは、サルヴァトーレに「この村から出て行け。ローマに行って、もう戻ってくるな」と諭すわけであって、これは完全な父性(男性)原理と言えるのではないかと思いました(「ノスタルジーに惑わされるな」と言っているのも同じことだろう。極論すれば、家族を犠牲にしてもわが道を行けと言っているともとれる)。
それがいいのか悪いのかというと、結局トトことサルヴァトーレは、映画監督としては成功したものの、アルフレードの教えを守ったばかりに母親は30年間息子に会えず、そして、成功しているはずのサルヴァトーレ自身も、実を結ばなかった初恋の思い出を引き摺っているのか、結婚もせずに付き合う女性をとっかえひっかえし、何となく虚無感を漂わせている感じです。但し、これをもってアルフレードの教えが誤っていたとかそんなことは言えないだろうなあ。アルフレードの教えを守ったからこそ映画人としての今の自分があるのかもしれないし、何かを得れば何かを失う、人生って大方そのようなものではないかなあと思いました。
「ニュー・シネマ・パラダイス」●原題:NUOVO CINEMA PARADISO●制作年:1988年●制作国:イタリア・フランス●監督・脚本:ジュゼッペ・トルナトーレ●製作:フランコ・クリスタルディ●撮影:ブラスコ・ジュラート●音楽:エンニオ・モリコーネ/アンドレア・モリコーネ●時間:155分(オリジナル版)/124分(国際版(劇場公開版))/175分(完全版(ディレクターズカット版))●出演:フィリップ・ノワレ/ジャック・ペラン/サルヴァトーレ・カシオ/マルコ・レオナルディ/アニェーゼ・ナーノ/アントネラ・アッティーリ/プペラ・マッジオ/レオポルド・トリエステ/エンツォ・カナヴェイル/レオ・グロッタ/イサ・ダニエリ/タノ・チマローサ/ニコラ・ディ・ピント●日本公

フランスの国民的写真家ロベール・ドアノー(1912 -1994)の人生と創作に迫ったドキュメンタリーで、監督のクレモンティーヌ・ドルディルはドアノーの孫娘です。作品の撮影秘話や当時の資料映像、親交のあった著名人による証言や(「
親交があり、サビーヌ・アゼマは作品のモデルにもなっている)、作品蒐集家・ファンへのインタビューなどから成ります(作家の堀江敏幸氏がフランス語でコメントしている)。ドアノー自身は写真では殆ど登場せず、家族が映したと思われるカラー8ミリフィルムなどで多く登場するため、どことなくファミリー・ムービーっぽい感じがします。ドアノーという人が全く"大家"ぶっていなくて、冗談好きで人懐っこいキャラクターであることが分かり、こうした人柄が被写体となる人を安心させて、活き活きとした写真を撮ることが出来るのだなあと思いました。
ドアノーは殆どパリで活動していたようです。海外にも行ってはいますが、世界中を飛び回っていた
という印象ではありません。今回、アメリカなど海外で撮った写真やカラーで撮った写真も見ることができて良かったですが(アメリカで撮ったカラー作品は、どこか無機質な感じのものが多い)、やはりパリを撮ったモノクロ写真が一番いいように思いました。映画全体を通しても、ドキュメンタリー部分もさることながら、そうした写真を紹介している部分の方が印象に残りました(ちょうど作品集を見ている感じか)。
この映画を観て知ったのですが、専らパリで活動していたこともあって、世界的に
有名になったのはかなり年齢がいってからのようです。あの有名な「パリ市庁舎前のキス」と呼ばれる作品は、1950年に「ライフ誌」に発表されていますが、この映画によると、その後長らく埋もれていて、ある日突然脚光を浴びた作品であるようです。
パリの若い恋人たちのシンボルとなったこの写真のカップルが誰なのかは1992年まで謎のままで、パリに住むラヴェーニュ夫妻は自分たちがこの写真のカップルだと思い込んでいました。夫妻は80年代にドアノーと会っていますが、ドアノーは真相を語らなかったため、夫妻は「無許可で写真を撮影した」としてドアノーを告訴し、裁判所はドアノーに事実を明らかにするよう要求しています。実は写真のカップルはフランソワとジャックという若い俳優の卵で、ドアノーが夫妻に真相を語らなかったのは、夫妻の夢を壊したくなかったからのようです。
この映画でも、「パリ市庁舎前のキス」のモデルは恋人同士の俳優の卵であり、ドアノーは他にも多くのモデルを使ってこうした"スナップ"を演出したことはこの映画でも紹介されていますが、裁判のごたごたについては一切触れられていません。ある意味、ドアノーの他者への思いやりときっちりとした性格が窺えるエピソードだと思うのですが、アシスタントを務めていたドアノーの長女アネットによれば、裁判には勝ったもののの、裁判の過程で偽りと嘘に満ちた世界を見てしまったドアノーはひどくショックを受けたそうで、後にアネットは「あの写真は父の晩年を台無しにしてしまった」とまで述べています。
「パリが愛した写真家/ロベール・ドアノー<永遠の3秒>」●原題:ROBERT DOISNEAU, LE RÉBOLTÉ DU MERVEILLEUX●制作年:2016年●制作国:フランス●監督:クレモンティーヌ・ドルディル●製作:ジャン・ヴァサク●時間:80分●出演:ロベール・ドアノー/フランシーヌ・ドルディル/アネット・ドアノー/サビーヌ・ヴァイス/ダニエル・ペナック/フランソワ・モレル/フィリップ・ドレルム/サビーヌ・アゼマ/ジャン=クロード・カリエール/梶川芳友/佐藤正子/堀江敏幸/クレモンティーヌ・ドルディル/エリック・カラヴァカ●日本公開:2017/04●配給:ブロードメディア・スタジオ●最初に観た場所:渋谷・ユーロスペース(17-04-28)(評価★★★☆)
ユーロスペース 2006(平成18)年1月、渋谷・円山町・KINOHAUSビル(当時は「Q-AXビル」)にオープン(1982(昭和57)年渋谷・桜丘町にオープン、2005(平成17)年11月閉館した




1963年11月22日、西独ハンブルグ。新聞記者あがりのルポライター、ペーター・ミラー(ジョン・ヴォイト)は母親(マリア・シェル)の家を訪ねた帰り道、カーラジオでケネディ大統領暗殺の臨時ニュースを聴く。その時一台の救急車が彼の車を追い越し、ミラーは反射的にその後を追う。事件は一老人のガス自殺だったが、翌日、知人の警部補から自殺した老人の日記を渡される。老人はドイツ系ユダヤ人で、日記はラトビアのリガにあったナチ収容所での地獄の生活を記録したものだった。老人は、リガ収容所長だったSS大尉ロシュマン(マクシミリアン・シェル)の非人道的な残虐さを呪い、復讐しようとしていたが果たさず、絶望のうちに自殺したのだ。ミラーは老人に
代わってそのロシュマンを捜し出す決心をする。彼はまず、老人の仲間を捜し出し、"オデッサ"という、元ナチSS隊員で作った、ナチ狩りから逃れ身元を偽って社会にもぐり込んでいる元ナチSS隊員を法廷にかけさせないために様々な活動をしている秘密組織の存在を知る。数日後、ミラーが恋人のジギー(メアリー・タム)とXマスの買物のために地下鉄に乗ろうとしたとき、突然後から何者かに走ってくる電車に向かって突き落とされる。間一髪で命は助かるが、こうなるとミラーとしても意地があった。米資料センターでロシュマンの資料を発見したミラーは、帰りに3人組に捕まる。彼らは元SS隊員に復讐することを目的としたグループで、ミラーが"オデッサ"を追っているのを知り、彼に協力しようという
のだ。ミラーを"オデッサ"に潜入させる工作が始まる。元ナチ隊員で病死した男コルブの出身証明書を盗み、彼に化けて元SS軍曹で警察に追われているという設定で"オデッサ"に接近、下級隊員の紹介で幹部に会うことになる。ミラーはファイルを盗み出し、ロシュマンの足跡を掴むことが出来た。ロシュマンを尾行し、彼の屋敷に潜入して彼と対峙する―。
発表の第2作『オデッサ・ファイル(The Odessa File)』('74年・角川書店)。1974年発表の『
ーケンが演じた主人公がなぜ傭兵になったのか分からないまま終わってしまっていました。この「オデッサ・ファイル」でペーター・ミラーを演じたジョン・ボイドはどうかというと、原作の主人公(原作ではミューラー)のイメージと違っていたかもしれませんが、ジョン・ボイドが当時まだ若いながらも演技達者なのと、主人公が相手方に潜入してから
の危機の脱し方など部分的には原作を改変しているものの、大まかには原作に沿っていたため、個人的には楽しめました(原作の主人公の愛車がジャガーであるのに映画ではベンツになっていた一方、オデッサの殺し屋のクルマがジャガーだった。この辺りは意図的に変えている?)。評価として、「ジャッカルの日」「オデッサ・ファイル」「戦争の犬たち」の順で、やはり監督の知名度順になるのでしょうか)。
「ジャッカルの日」の主人公はプロのスナイパーであり、「戦争の犬たち」の主人公はプロの傭兵、それに対してこの「オデッサ・ファイル」の主人公だけがある意味アマチュアであり、素人が元SS軍曹に化けて"オデッサ"に潜入することが出来るのかというリアリティの問題がありますが、"オデッサ"幹部将校が主人公の身許審査のためSSについて矢継ぎ早にした質問で、「収容所の真中に何が見えたか?」との問いに、答えに詰まって「空が見えました」と答えてしまい、将校の眼が鋭く光るといった場面など、逆に旨い具合に緊張感を生む効果にも繋がっていたかも。なぜジャーナリストとは言え、一市民に過ぎない主人公が元SS大尉ロシュマンにこだわるのか、作品の鍵となるその秘密の明かされ方は原作と同じで、但し、原作を読んでいると、映画の方はややあっけなくて、ちょっともの足りなかったでしょうか。
ラストで主人公に追い詰められて、身勝手な理論に基づく演説をぶつロシュマンを演じた オーストリア人俳優のマクシミリアン・シェル(1930-2014)も好演で、主人公の母親役のマリア・シェル(1926-2005)
は彼の実姉になります(「
因みに、マクシミリアン・シェルが演じたエドゥアルト・ロシュマンは実在の人物で、リガにあった強制収容所の歴代所長の一人で、"リガの屠殺人"と呼ばれ、1977年7月、アルゼンチン警察に逮捕されるも、4日後に国外退去を条件に釈放され、同年8月、アルゼンチンとパラグアイの間の船上で心臓発作を起こし、69歳死亡しています(この作品の原作をフォーサイスが書いていた時はまだ逃亡・潜伏中だったということか)。
「オデッサ・ファイル」●原題:THE ODESSA FILE●制作年:1974年●制作国:イギリス・西ドイツ●監督:ロナルド・ニーム●製作:ジョン・ウルフ●脚本:ケネス・ロス/ジョージ・マークスタイン●撮影:オズワルド・モリス●音楽:アンドルー・ロイド・ウェバー●原作:フレデリック・フォーサイス●時間:130分●出演:ジョン・ヴォイト/マクシミリアン・シェル/マリア・シェル /メアリー・タム/デレク・ジャコビ/ハンネス・メッセマー/シュミュエル・ロデンスキー/エルンスト・シュレーダー/グンナー・メラー/ポール・ジェフリー/エル・ウィルマン/クラウス・レーヴィッチ/タウジェ・クライナー/ギュンター・シュトラック/クルト・マイゼル/マルティン・ブラント/ギュンター・マイスナー/アレクサンドル・ゴリング/エリザーベト・ノイマン=フィアテル/クリスティン・ウォデツキー/ミリアム・マーラー/オスカー・ウェルナー●日本公開:1975/03●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:新宿ローヤル(82-12-08)(評価★★★☆)




1960年代初頭のパリのとあるビストロで、ナナ・クランフランケンハイム(アンナ・カリーナ)は、別れた夫ポール
(アンドレ・S・ラバルト)と近況の報告をし合い別れる。ナナは、女優を夢見て夫と別れ、パリに出てきたが、夢も希望もないままレコード店の店員を続けている。ある日、舗道で男(ジル・ケアン)に誘われるままに抱かれ、その代償を得た。ナナは昔からの友人のイヴェット(ギレーヌ・シュランベルジェ)と会う。イヴェットは売春の仲介をしてピンハネして生きている。ナナにはいつしか娼婦となり、ラウール(サディ・ルボット)というヒモがつく。ナナは無表情な女になっていた。バーでナナがダンスをしていると、視界に入っ
てきた若い男(ペテ・カソヴィッツ)にナナの心は動き、彼を愛し始める。ナナの変化に気付いたラウールは、ナナを売春業者に売り渡そうとする。ナナが業者に引き渡される時、業者がラウールに渡した金が不足していた。ラウールはナナを連れて帰ろうとするが、相手は拳銃を放つ。銃弾はナナに直撃した。ラウールは逃走、撃ったギャングも逃走する。ナナは舗道に倒れ、「生きたい!」と叫んで絶命する―。
ローに描かれた映画」の意(「タブロー」はフランス語で持ち運びの可能な絵画(=キャンパス画、板絵)のことで「章」とほぼ同じとみていいのでは)。時期的には「
第1章でナナが近況を交換する別れた夫ポールを演じるのは、ゴダールの批評家時代からの盟友でドキュメンタリー映画監督のアンドレ・S・ラバルトであり、終盤、ナナと哲学を論じあう碩学として登場するのは、アルベール・カミュやアンドレ・ブルトンと親交のあった哲学者ブリス・パランで、ゴダールの哲学の恩師であるそうです。最初観た時は、その「衝撃的」ラストに、むしろあっけないという印象を抱きましたが、ゴダールが説明的表現を排したドキュメンタリー・タッチで撮っているということもあったかもしれません。ゴダールがアンナ・カリーナの了解を取らずに隠し撮りのように撮ったシーンもあり(そのことをアンナ・カリーナはすごく怒ったらしい)、ナナと哲学者との対話における哲学者の受け答えも即興だそうです。
アンナ・カリーナ演じるナナは、生活のために娼婦に転じるわけですが、別に不真面目に生きているわけではなく、むしろ「自分の人生を生きる」という哲学を持っています。彼女は、「裁かるるジャンヌ」を観て涙したり(このシーンのアンナ・カリーナの表情がいい)、偶然に出会った哲学者と真理について語ったりします(第12章のタイトルは「シャトレ広場- 見知らぬ男 - ナナは知識をもたずに
哲学する」)。哲学者との会話のシーンなどは、最初に観た時は、言葉が映画の背景になっているような感じがしたのが、今回改めて観直してみると、結構深いことを言っているなあと(「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」なんて言葉を思い出した)。儚(はかな)くも散った一娼婦の人生においても、その中に確実に「詩と真実」はあったのだ―という見方は、あまりにロマンチックすぎるでしょうか。ミシェル・ルグランの音楽もいいです(この音楽がそんな気分にさせる)。
「女と男のいる舗道」●原題:VIVRE SA VIE:FILM EN DOUZE TABLEAUX(英:MY LIFE TO LIVE(米)/IT'S MY LIFE(英))●制作年:1962年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ピエール・ブロンベルジェ●撮影:ラウール・クタール●音楽:ミシェル・ルグラン●原作(原案):マルセル・サコット「売春婦のいる場所」(ドキュメ
ント)●時間:84分●出演:アンナ・カリーナ/サディ・ルボット /アンドレ・S・ラバル/ギレ
ーヌ・シュランベルジェ/ジェラール・ホフマン/ペテ・カソヴィッツト/モニク・メシーヌ/ポール・パヴェル/ディミトリ・ディネフ/エリック・シュランベルジェ/ブリス・パラン/アンリ・アタル/ジル・ケアン●日本公開:1963/11●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会〔四谷公会堂〕 (81-09-12)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ (16-09-06)(評価★★★★☆)●併映(1回目):「裁かるるジャンヌ」(カール・テオドア・ドライヤー) anna karina
「裁かるるジャンヌ (裁かるゝジャンヌ)」●原題:LA PASSION DE JANNE D'ARC●制作年:1927年(1928年4月デンマーク公開、同年10月フランス公開)●制作国:フランス●監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー●撮影:ルドルフ・マテ●時間:96分(短縮版80分)●出演:ルネ・ファルコネッティ/ウジェーヌ・シルヴァン/モーリス・シュッツ/アントナン・アルトー●日本公開:1929年10月25日●配給:ヤマニ洋行●最初に観た場所:カトル・ド・シネマ上映会〔四谷公会堂〕 (81-09-12) (評価★★★?)●併映:「女と男のいる舗道」(ジャン=リュック・ゴダール)



容姿は冴えないが天才的才能をもつ無名の青年音楽家ウィンスロー・リーチ(ウィリアム・フィンレイ)は、懸命に自分の曲を売り込もうとしていた最中に、無名で駆け出しの女性歌手フェニックス(ジェシカ・ハーパー)の才能を見出し、共に将来を夢見る。しかし、大手レコード会社「デス・レコード」社長のスワン(ポール・ウィリアムズ)に曲を奪われ、美しい彼女は身体を奪われかけ、自身は無実の罪で投獄される。獄中でスワンが自分の作
品に醜悪なアレンジをして売り出そうとすることを知ったウィンスローは激怒し、脱獄してレコード会社に乱入するが、警官に追われた際に誤ってプレス機に頭を挟まれ顔と声が潰れてしまう。復讐のため、スワンが建設した杮落とし前の大劇場「パラダイス」に現れたウィンスローは、リハーサルで自分の曲を歌うバンド
「ビーチ・バムズ」の舞台セットに爆弾をしかけてスワンを襲うが、スワンは恐れるどころか逆にウィンスローに、「パラダイス」のオープニングをウィンスローの曲で飾る契約を持ちかける。それが悪魔との契約とは知らず、フェニックスを大劇場のオープニングにと夢見てウィンスローは作曲を続けるが、スワンはそれを裏切り、オカマロックシンガーのビーフ(ゲリット・グレアム)を舞台に立たせた。完成したスコアと愛するフェニックスもスワンに奪われていて、怒りに燃えたウィンスローは怪人ファントムと化す―。
'74年公開のブライアン・デ・パルマ監督によるロックンロール・ミュージカルで、元々ブロードウェイなどでの舞台が無い映画オリジナルの作品ですが、最初はジム・シャーマン監督の
ずロック・オペラっぽく感じられました。「オペラ座の怪人」「ファウスト」「ノートルダム・ド・パリ」「ドリアン・グレイの肖像」などがモチーフとして織り込まれていて、更にヒッチコック映画のパロディなどもあったりして盛り沢山、ある意味トラジディ(悲劇)ですが、テンポよく話が進むのと、今観ると70年代カルチャーが横溢しているのが窺え、意外と悲壮感は感じられませんでした。
主人公のウィンスロー(ファントム)を演じたウィリアム・フィンレイは、デ・パルマ監督の前作「悪魔のシスター」('73年)での変態ドクター役に続けての起用、歌姫役のジェシカ・ハーパーは、この映画を観たダリオ・アルジェントによって「サスペリア」('77年)に抜擢されることになりますが、この映画で一番目立っているのはやはりスワンを演じたポール・ウィリアムズで、本職のシンガーソングライターで、カーペンターズの「愛のプレリュード」「雨の日と月曜日は」などの作詞も手掛けている人
です(2010年から「米国作曲家作詞家出版者協会」の会長を務めている)。日本では、アニメ「ルパン三世」の劇場版第1作「
しめてしまうことにも繋がっているのかもしれないと思った次第です。タイトルからして、ストーリーの中心には「オペラ座の怪人」がきていると思いますが、その割にはシャンデリアの落下シーンなどが無いのが今思うとやや残念だったかも。70年代の雰囲気のノスタルジー効果とプラスマイナスして、最初に観た時の評価(星4つ)としました。
「ファントム・オブ・パラダイス」●原題:PHANTOM OF THE PARADICE●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:エドワード・R・プ
レスマン●撮影:ラリー・パイザー●音楽:ポール・ウィリアムズ/ジョージ・アリソン・ティプトン●92分●出演:ウィリアム・フィンレイ/ポール・ウィリアムズ/ジェシカ・ハーパー/ゲリット・グレアム/ジョージ・メモリ●日本公開:1975/05●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)(評価:★★★★)●併映:「ロッキー・ホラー・ショー」(ジム・シャーマン) 


シカゴ記念病院の有能な血管外科医リチャード・キンブル(ハリソン・フォード)がある夜帰宅すると、妻のヘレン(セーラ・ウォード)が家の中で何者かに襲われて死に瀕していた。キンブルは犯人と思しき「片腕が義手の男」を撃退するも、妻は既に致命傷を負っており手遅れであった。キンブルは自分が取り逃がした義手の男について捜査するよう警察に懇願するが、警察は死の間際のヘレンの通報内容を誤解し、キンブル本人が妻殺しの濡れ衣を着せられ逮捕されてしまう。キンブルは裁判で無実を証明することができず、死刑判決を受けて刑務所へと移送されることになるが、その最中に他の囚人たちが逃亡を企てたことにより、護送車が列車と衝突し爆発炎上するという事故が発生する。事故を間一髪で生き延びた
キンブルは混乱に乗じ、妻を殺害した真犯人を自らの手で見つけて汚名をすすぐため、事故現場から逃亡してシカゴへと向かう。一方、いち早く脱走した囚人がいることを突き止めた連邦保安官補サミュエル・ジェラード(トミー・リー・ジョーンズ)とその部下達はキンブルを追跡する。時には持ち前のヒューマニズムが仇となって窮地に陥りつつも、執拗なジェラードの追跡を振り切りながら、キンブルはシカゴに帰り着いて証拠を辿り、同僚であり親友でもあるチャールズ・ニコルズ(ジェローン・クラッベ)からの援助も受けながら、自分が目撃した「片腕が義手の男」の名前を突き止める―。
オリジナルは1963年から1966年にかけて、デビッド・ジャンセン主演で放映され、アメリカ国内で平均視聴率45%という驚異的な数字を叩き出したTVドラマです。日本でも、1964(昭和39)年から1967(昭和42)年までTBS系列(関西地区は朝日放送)で放送されて人気を博し、最終話の放送時刻には銭湯が空になったと言われています(TVドラマ版は当初モノクロだったが、最後の方はカラーになった)。映画では、妻殺しの濡れ衣を着せられ死刑を宣告された医師リチャード・キンブルが、連邦保安官補サミュエル・ジェラードの追跡を逃れながら逃げまくるという枠組みは、TV版をそのまま
踏襲しています。
ハリソン・フォードは、
ハリソン・フォードより4つ年下のトミー・リー・ジョーンズ(当時46歳)は、この作品で'93年のアカデミー助演男優賞を受賞し、以降は「メン・イン・ブラック」('97年)、「逃亡者」のスピンオフ作「追跡者」('98年)などの
「メン・イン・ブラック」のバリー・ソネンフェルド監督はトミー・リー・ジョーンズのことを、「彼は大真面目に演じていてもどこかコミカルだ」と評していますが、確かにそうかも(「逃亡者」におけるトミー・リー・ジョーンズの中にも「メン・イン・ブラック」に通じるコミカル要素があるともとれる)。'06年から続くサントリー缶コーヒーBOSSのCM「宇宙人ジョーンズの地球調査シリーズ」も、誰か慧眼の
持ち主が彼のそうした特性に着眼して起用したのでしょう(因みにトミー・リー・ジョーンズは親日家であり、大の歌舞伎ファンであるとともに
トミー・リー・ジョーンズの"活躍"もあって、映画としては悪くはないのですが(初めて観た時の評価は星4つ)、改めて観直してみると、アクションのヤマ場が中盤のキンブルのダム底へのダイビングであり、あとはやや流れが緩慢な印象も受けます。電車内での「片腕が義手の男」との対決もある種お決まりのパターンであれば、最後に真犯人を追い詰めて銃撃戦になる展開もこれまたパターンであるように思えたため、星半個減の3つ半としました。
映画に出始めた頃のジュリアン・ムーア(左)が(前年に「ゆりかごを揺らす手」('92年)に出演しているが、その作品ではレベッカ・デモーネイが怖すぎて、彼女の印象は薄かった)、キンブルが「片腕が義手の男」が装着していた義手の手がかりを求め、清掃員に扮して病院に忍び込んだ際、彼に「男の子の患者を運んで!」と頼み、その後男の子にちゃんと独自の処置がされているのを不審に思って警察に通報する女医役で出ていますが、キネ旬をはじめ多くの映画データべースで、「元同僚のアン・イーストマン医師(ジュリアン・ムーア)の協力で、病院の中にある義手を持つ人のリストを調べあげ...」など
とあり、ジェーン・リンチ(右)が演じたキャシー・ワーランド医師の役との混同が見られます(キンブルに協力するのはキャシー・ワーランド医師)。これも、ジュリアン・ムーアが後に有名になったためでしょうか(最近では、2014年公開の「アリスのままで」でゴールデングローブ賞の主演女優賞(ドラマ部門)とアカデミー賞の主演女優賞を受賞している)。
因みに、「片腕の男」の義手の資料を集めるためにキンブルが潜り込んだ病院は、本作の1年後に放送が開始されたTVドラマ「
「逃亡者」●原題:THE FUGITIVE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・デイヴィス●製作:アーノルド・コペルソン●脚本:デヴィッド・トゥーヒー/ジェブ・スチュアート●撮影:マイ
ケル・チャップマン●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●原作:ロイ・ハギンズ●130分●出演:ハリソン・フォード/トミー・リー・ジョーンズ/ジェローン・クラッベ/セーラ・ウォード/ジュリアン・ムーア/アンドレアス・カツーラス/ジョー・パントリアーノ/ダニエル・ローバック/L・スコット・カードウェル/トム・ウッド/ジェーン・リンチ●日本公開:1993/09●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)




●2020年テレビドラマ化「テレビ朝日開局60周年記念 2夜連続ドラマスペシャル・逃亡者」(テレビ朝日・2020年12月5日5・6日放送)



1971年、文革の嵐が吹き荒れる中国。青年マー(馬剣鈴)(劉燁〈リウ・イエ〉)とルオ(羅明)(陳坤〈チェン・クン〉)は医者を親に持つことから、反革命分子の子として再教育のために奥深い山村へ送り込まれた。彼らはそこで過酷な肉体労働を強いられる。ある日二人は、美しい少女、お針子(周迅〈ジョウ・シュン〉)に出会う。ルオはお針子に一目惚れした。彼らは、同じ再教育で来ている若者が禁書である西洋の本を大量に隠し持っていることを知り、それ
を盗み出す。そして、文盲のお針子に毎夜西洋の文学を読み聞かせてあげるのだった。許されない秘密を共有することで結びつきを強める三人。そして、お針子は西洋文学が語る自由に次第に目覚めていく―。
「下放」に出された経験がある監督は、「第五世代監督」の旗手と言われる「紅いコーリャン」の張芸謀(チャン・イーモウ)、「さらば、わが愛/覇王別姫」の陳凱歌 (チェン・カイコー)を筆頭に数多くいて、「下放」そのものを扱った映画も、陳監督の「子供たちの王様」('87年/中国)や、「紅いコーリャン」に主演した姜文(チアン・ウェン)が監督した「太陽の少年」('94年/中国・香港)、陳冲(ジョアン・チェン)監督の「シュウシュウの季節」('98年/米)、池谷薫監督の「延安の娘」('02年/日)などがあります。
そのように、実質フランス映画であるということもあってか、観ていてそれっぽい筋書きや演出、或いは撮り方をしていると感じれる部分がありました。主人公の二人、ヴァイオリン青年マー(より作者の分身に近いと言える)と歯科医を目指すルオが違った形でお針子に恋をするため、二人の青年とお針子の恋愛を描いた青春映画としての色合いも濃いように思います。革命思想に洗脳されたかのように見えた村長も実は人柄はそう悪くなく、後にマーが再訪した時は歓待してくれたという―いくら恋愛絡みにしても、みんな懐かしくていい思い出となり、苦楽ともにノスタルジーによって美化されてしまうというのはどうなのかという印象は若干あります。しかし、戴監督自身は、「下放」というのは映画の背景に過ぎず、描きたかったのは「文学の力が人を変えていく」様だったというようなことを、どこかのインタビューで答えていたように思います。
個人的に印象に残った場面があり、それは、お針子がルオの子どもを身籠ってしまって違法ながらも中絶するしかなくなり、マーが町で何とか産科医に会い、自分の父親の名前を告げると、マーの父親の名も政治的不遇をも知っていたにも関わらずその産科医に身構えられてしまい(マーが「妹」に生理が無いので相談に乗って欲しいと切り出し「お前の父親に娘などいない」と嘘がバレれたということもあるが)、マーが最後に一縷の望みを賭けて、この窮状を救ってくれるならば「バルザックの本を一冊差し上げます」と言ってその本を見せると、産科医がその中の一文を読んで、「この翻訳は傅雷だな、文体で分かる。可哀そうに、お前のお父さんと同じ人民の敵だ」と言いい、こらえきれなくなって泣きじゃくるマーを慰め、お針子や青年たちのために危険を冒してひと肌脱ぐ決意をするという箇所で、ああ、これは当時弾圧を受けながらも内面の矜恃を保った多くの「知識人」に対するオマージュなのだなあと思いました。
そうした「知識人目線」みたいなのは確かにあり、その辺りもこの映画に対する批判的な見方の要因としてあるようです。お針子の描き方は、川端康成の原作で何度も映画化された「伊豆の踊子」などにも通じるところがあるように思いました(あの作品には東大生から見た"上から目線"との批判もある)。あとはやはり「外国人目線」でしょうか(正確には"外国からの目線"か)。中国語タイトル「巴爾扎克与小裁縫」(バルザックと小さなお針子)に対し、フランス語タイトルは「Balzac Et La Petite Tailleuse Chinoise」(原著共)。原著の仏語タイトルに倣って日本語タイトルに「中国の」とわざわざ入れたことで一層「外国人目線」が意識させられるようになってしまいましたが、ある意味、この作品の微妙な本質というか性格を表しているようにも思います。
中国で中国の俳優を使って中国の地で撮影出来たことはやはり大きかったように思います。ロケ地の張家界(湖南省)は幻想的に美しく今や中国の一大観光名所ですが、当時は60人の映画クルーが何日もかけてやっと辿り着き、そこには何も無かったと言います。撮影のために建てた主人公の青年らが寝起きした住居などは、後に休憩所として使えるように取り壊さないで残してきたとのことです。
当局との中国でのロケ交渉と併せ、中国との共同製作作品とし中国の俳優を使うことを条件として作られた映画であるのに(何れも中国国内で上映できるようにとの仏側からの提案だった)、結局、中国では上映もされていなければ原作も刊行されていない状態が今も続いていますが、周迅(ジョウ・シュン)をはじめ主演俳優のその後の人気もあって、海賊版のビデオやインターネット動画などで結構多くの人が観ているのではないかという気もします。
「小さな中国のお針子」●原題:巴爾扎克与小裁縫/BALZAC ET LA PETITE TAILLEUSE CHINOISE/BALZAC AND THE LITTLE CHINESE SEAMSTRESS●制作年:2000年●制作国:フランス・中国●監督:戴思杰(ダイ・シージエ)●脚本:戴思杰(ダイ・シージエ)/ナディーヌ・ペロン●撮影:ワン・プージャン●音楽:ジュン=マリー・ドリュージュ●原作:戴思杰(ダイ・シージエ)●時間:110分●出演:周迅(ジョウ・シュン)/陳坤(チェン・クン)/劉燁(リウ・イエ)/王双宝(ワン・シュアンパオ)/叢志軍(ツォン・チーチュン)/王宏偉(ワン・ホンウェイ))●日本公開:2003/01●配給:アルバトロス・フィルム(評価:★★★☆)

81,000トンの豪華客船「ポセイドン号」は1,400名の乗客を乗せてニューヨークを出港、ギリシャ行の航海に出たが、船長(レスリー・ニールセン)は、船の重心が高くバラスト(底荷)をしていないため、大波に襲われて転覆することを恐れていた。
船内ホールでは大晦日の年越しパーティーが開かれていたが、折しもクレタ島沖で海底地震が発生して高さ32mの巨大津波が船を襲い、船体に問題があった船はあっという間に転覆、ホールの船客らは、それまでの
上部が足下に、足下が上部にひっくり返って、躰ごと投げ出されて落下、壁に叩き落されるなどし、船内は阿鼻叫喚の地獄図となる。180度横転したホールには、この時点ではまだ相当数が生存しており、その内の1人のパーサーは、この場に留まることが最善で、救援隊が来るまでここで待機しようと訴える。しかし牧師のフランク・スコット(ジーン・ハック
マン)は、留まっていれば海面下に置かれているホールはやがて浸水して全員死ぬので、ひとまず上に上がって「船底」の竜骨付近に行ってそこで救援隊を待つ方がよいと主張、ホールに居た船客も意見が分かれるが、牧師に従って上に登る決意をしたのは僅か8名だった。スコット牧師らは、大きなクリスマスツリーをよじ登って、上にいたボーイのエイカーズ(ロディ・マクドウォール)と合流、その時、大爆発がし鉄砲水が残りの大勢の船客を押し流すが、牧師にはどうすることも出来ない。牧師に
従ったのは、ニューヨークの刑事マイク・ロゴ(アーネスト・ボーグナイン)と リンダ・ロゴ(ステラ・スティーヴンス)の夫婦、気ままな旅をしていたマニー・ローゼン(ジャック・アルバートソン)とベル・ローゼン(シェリー・ウィンタース)の中年夫婦、雑貨商ジェームズ・マーティン(レッド・バトンズ)、ホールで演奏していた楽団メンバーを全て失った歌手ノニー・パリー(キャロル・リンレー)、欧州へ遊びに行く予定だったスーザン・シェルビー(パメラ・スー・マーティン)とロビン・シェルビー(エリック・シーア)の姉弟の8人であり、スコット牧師、エイカーズと合わせて10人でエンジンルームを目指す―。
1969年に発表されたポール・ギャリコの小説を原作として1972年に映画化された作品で監督はロナルド・ニーム(1911-2010/享年99)、製作は後に同じパニック映画「タワーリングインフェルノ」('74年)を製作するアーウィン・アレンです。'72年公開作では「ゴッドファーザー」('72年)に次ぐ全米興行収入を上げ、日本でも、'73年の興行収入第1位となり、パニック映画ブームの先駆けとなった作品とされていますが、個人的にはテレビで観たと思います(記録を調べると、1976年10月11日TBS「月曜ロードショー」で放送され、その後、2006年6月15日にテレビ東京「午後のロードショー」で放送されたりしている)。
まず、豪華客船が転覆して、全てが上下ひっくり返るというのが、原作通りではあるものの、映像にしてみるとなかなか面白く、「パニック映画、こうあるべし」みたいな感じで、それでいて、1回使ったらもうよそでは使えないみたいなユニークさがあったのではないでしょうか(結局、続編を含め「ポセイドン」というタイトルをそのまま使用して、この後3度映画化された(ウォルフガング・ペーターゼン監督「
パニック映画ではありますが、ヒューマンドラマ的な部分もしっかりしていました。とりあえず、船内ホールにいた100人ぐらいの船客以
外は"絶望"として生存者を絞り込んで、更に「船底」に退避するかその場に留まるかで、結局、留まった人々は全滅、退避した10名だけに早々に絞り込まれます。そのことによって、以降、演劇的な、丹念な人物像の描き方となっていたように思います。そして、その10人の中から更に犠牲者が1人、2人と出続ける―。
序盤の船内ホールには、居残り組にも牧師がいて、こちらはただ祈るのみ。一方のジーン・ハックマン演じる牧師は、とにかく生きるために前へ進もうとする、この対比のさせ方はかなり明確です。そして、その牧師が最後にとった自己犠牲的な行動―。やや典型的なヒロイズムになってしまった印象もあるし、その際に、牧師が"神"に向かって「邪魔しないでくれ」と言いますが、牧師がそんなこと言うかなあというものちょっと引っ掛かったけれど、穿った見方をすれば、この映画ではこの牧師が「モーゼ」のような神により近い存在ということなのかもしれません。
ジーン・ハックマンは好演でした。他の俳優陣では、牧師と意見の衝突を繰り返す刑事役のアーネスト・ボーグナイン(1917-2012/享年95)
の、ジーン・ハックマンとの演技合戦が見所でしょうか。ジーン・ハックマンは英国アカデミー賞の主演男優賞を受賞しましたが、アーネスト・ボーグナインの濃い演技もパニック映画向きで良かったように思います(元水泳選手
で牧師を救うも自らは斃れる中年婦人ベル・ローゼンを演じたシェリー・ウィンタースがゴールデングローブ賞助演女優賞を受賞している)。最近観直してみて、船長役が「裸の銃を持つ男」('88年)などコメディに転ずる前のレスリー・ニールセン、ボーイ役が「猿の惑星」シリーズのロディ・マクドウォールだったことに改めて気づきました。
「ポセイドン・アドベンチャー」●原題:THE POSEIDON ADVENTURE●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:ロナルド・ニーム●製作:アーウィン・アレン●脚本:スターリング・シリファント/ウェンデル・メイズ●撮影:ハロルド・E・スタイン●音楽:ジョン・ウィリアムズ/アル・カシャ/ジョエル・ハーシュホーン●原作:ポール・ギャリコ「ポセイドン・アドベンチャー」●時間:117分●出演:ジーン・ハックマン/アーネスト・ボーグナイン/レッド・バトンズ/キャロル・リンレー/ロディ・マクドウォール/ステラ・スティーヴンス/シェリー・ウィンタース/ジャック・アルバートソン/パメラ・スー・マーティン/エリック・シーア/レスリー・ニールセン/アーサー・オコンネル●日本公開:1973/03●配給:20世紀フォックス(評価:★★★☆)

ジーン・ハックマン(俳優)



1984年、東西冷戦下の東ベルリン。国家保安省(シュタージ)局員のヴィースラー大尉(ウルリッヒ・ミュー
エ)は、後進の若者たちに大学で尋問の手法を講義する教官をしている。ある日、ハムプフ文化相(トーマス・ティーメ)の意により、劇作家のドライマン(セバスチャン・コッホ)と舞台女優である恋人のクリスタ(マルティナ・ゲデック)が反体制的であるという証拠を掴むよう命じられる。国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、かつての同期ヴォルヴィッツ(ウルリッヒ・トゥクル)が今は国家保安省の中佐として彼の上司となっている。但し、この盗聴作戦に成功すれば彼にも出世が待っていた。しかし、権力欲にまみれた大臣や、それに追従し自らの政界進出のために手段を選ばないヴォルヴィッツを見るにつけ、彼のこれまでの信念は揺らぐ。更に、盗聴器を通して知る劇作家のドライマンと恋人クリスタの、これまで彼が経験したことのなかった自由、愛、音楽、文学の世界に影響を受け、いつの間にか新しい価値観が彼の中に芽生えてくる―。
フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督33歳の時の初の長編作品であるとともに、ヨーロピアン・フィルム・アワード主要3部門制覇、アカデミー賞外国語映画賞受賞など多くの賞を受賞した出世作でもあり、映画監督ヴェルナー・ヘルツォークは「ドイツ映画史上、最も素晴らしい作品である」との賛辞を寄せています。記録文書のリサーチだけで4年を費やしたとのことで、人類史上最大の秘密組織と言われる"シュタージ"の内幕を正確に描いているそうです(撮影も当時の建物などが使われた)。ストーリーの本筋そのものは実話ではありませんが、断片的には当時の記録や証言をもとに多くの実話的要素を織り込んでいるようです。
ある意味、人は変われるかということをテーマにしている作品ともいえ、公開当時は"シュタージ"にヴィースラーのような人間はいなかったとの批判もあったようです。更には、作品の描かれ方としても、ヴィースラーの変化が一部には唐突感をもって受け止められたようですが、個人的には、ヴィースラーの変わっていく様子は、ウルリッヒ・ミューエの抑制の効いた演技によって説得力をもって伝わってきました。
スパイ映画的な緊迫感もあって、エンタテインメントとしても上手いと思いました。ただ、終盤に大きな悲劇があって、ここで終わりかと思ったら、ややもの足りない印象も。ところが話はやや長めのエピローグへと入っていきます。エピローグが長い映画でいい作品は少ないように思われ、どう落とし込むのかと思ったら、最後はいい意味で予想を裏切り、オリジナリティのある展開で大感動させてくれました。
ベルリンの壁崩壊後に自分達が盗聴されていたことを初めて知ったドライマン。では当時なぜ当局にすぐさま検挙されることが無かったのか、その謎を探るうちにある真実が浮かび上がり、その"当事者"に行き着く―。当のヴィースラーは、ベルリンの壁崩壊前は国家保安省で閑職に追いやられていましたが、ベルリンの壁崩壊後もチラシを投函する仕事をしていて、かつての大学教員の面影は無く落魄しています。しかし、ドライマンは彼を見つけても声を掛けないし、駆け寄って有難うと言って抱きついたりもしない―この抑制がいいです。でも、作品としてのカタルシスという面ではどうかなと思ったら...。
最後、ヴィースラーは相変わらずチラシ配りをしています。そのヴィースラーが偶々ドライマンの新刊の広告を書店前で見かけて店に入り、その著作『善き人のためのソナタ』を手にしてページをめくった時に、もう何が出てくるか、さすがにここまでくれば観ていて分かってしまうのですが、やはり感動してしまいます。そして、ギフト用に包みましょうかと声をかける若い店員に、「私のための本だ」と言ったときのヴィースラーの表情といい、その表情のストップモーションで終わるエンディングといい、カタルシス全開でした(ラストで一番泣かせてくれるというのがニクイ)。
ヴィースラーと、終盤のヴィースラーを発見するも観察するだけのドライマン、大学で尋問手法の講義で使われたヴィースラーが被尋問者の人格を否定するかのように番号で呼ぶ場面と、本の献辞の中にあったHGW XX/7というヴィースラー自身を指すコード(但し後者は、ドライマンにとっては自分を助けてくれた恩人の唯一の手掛かりとなり、ヴィースラーにとっては自らの人生の選択が正しかったことを再確認させるものとなった)、等々。

BF館」「シネマライズシアター1(2階)(303席)(後のシネマライズ)」になる。2004年、3スクリーン目、デジタル上映劇場「ライズX(38席)」を地下のバースペースに増設。地下1階スクリーン「シネマライズBF館(旧シネマライズ渋谷)」2010年6月20日閉館(地下2階「ライズⅩ」2010年6月18日閉館)。2011年、編成をパルコエンタテインメントに業務委託。地上2階「シネマライズ」2016年1月7日閉館。[写真:2015年11月26日/ラストショー「黄金のアデーレ 名画の帰還」封切前日]


様々な種類の人間が集まる国際都市モナコに、ロシア貴族カラムジン伯爵と称する軍人風の男が、従妹2人と滞在していたが、実は彼らは詐欺師で、上流階級に取り入り金銭を騙し取ったり、贋
金を作ったりしていた。モナコへの米公使来訪の報を目にした彼らは、公使夫人をカラムジンの手管で篭絡し、金を巻き上げようと企む―。
カジノやホテル等、モンテカルロの街並みごと再現し(無声映画なのにホテルのどの部屋のベルもちゃんと鳴ったという)、豪華な食事を俳優たちに食べさせて、雰囲気から徹底的に作り込んだそうです。そのうえで、人間の性に対する露わな欲望を、カラムジンなる怪物的人物を通して描いたリアリズム作品であり(監督・主演のほかに脚本・衣装もシュトロハイムが担当)、シュトロハイムは、ハリウッドに初めてリアリズム演出を持ち込んだ天才監督と評されています。
マツダ映画社の「無声映画鑑賞会」(日暮里サニーホール・コンサートサロン)で澤登翠氏の活弁で鑑賞しましたが、108分の長尺の活弁はお疲れ様でしたという感じ。但し、オリジナルは上映時間が8時間あったのが長すぎるということで、それが最終的に1時間50分ほどに短縮させられたものが今日あるものであるとのことです(同監督の「
「グリード」と比べると、シュトロハイム本人が主演しているという点でその多才ぶりがより強く印象づけられます(この前に「悪魔の合鍵」('19年)という監督・出演・原案・美術を担当した長編もあるがフィルムが現存していない)。いやあ、凄い話だなあ。シュトロハイム演じるカラムジンは貴婦人だけでなくメイドまで誑かすし(結局彼女は自殺に追い込まれる)、最後は高跳びする前に贋金作りのやや頭の弱い娘まで襲おうと
してその父親に惨殺され下水に捨てられるのですが(殺される場面はフィルムが紛失しているが活弁で補足説明されていた)、自分がその役をやる映画で普通こんな脚本を書くかねえ。しかも、この部分もフィルムが現存していませんが、オリジナルでは死体がネズミの餌になっている場面があったそうな(これぞリアリズム)。
作品全体のテーマは、タイトルに表象されるように、上流階級の欺瞞や空疎、浅薄さを揶揄したものでしょうが、カラムジン伯爵の人物造型があまり強烈であり、プロセスにおいてはある種ピカレスクロマンになっています。カラムジンがニセモノの涙を流すところなどはやや演出過剰な感もありましたが、当時の基準からすれば、こうしたシーンもリアリズムの範囲内ということになるのか。 カラムジン中心にみれば人間の飽くなき「性欲」を描いているとも言え、人間の「金銭欲」を描いた「グリード」との対比で、そうした捉え方の方がすっきりするかもしれません。
「チャップリンの恋のしごき」は1914年3月26日公開作。チャップリンがデビューした年の作品で(原題:Cruel, Cruel Love、「痛ましの恋」の邦題で公開されたこともある)、但しチャップリンはこの年だけで40本近くの短編に出ていて、この作品はデビュー作「成功争い」から数えて第8作です。因
みに、エーリッヒ・フォン・シュトロハイムの映画デビューも100年前のチャップリンのデビューと同じ年の1914年です(D・W・グリフィスの「國民の創生」('14年)で監督助手兼エキストラ出演)。
「チャップリンの大酔(たいすい)」は1916年8月7日公開作で、チャップリンのミューチュアル・フィルムにおける4作目。酔っぱらったチャップリンがタクシーから降りて我が家に入り寝室に行き着こうとするまでを描いた(結局最後はバスタブに行き着いてしまうのだが)純粋なドタバタコメディで(原題:One A.M.、そのまま「午前一時」の邦題で公開されたこともある)、しかも冒頭のタクシー運転手を除いては実質チャップリン
の完全な一人芝居です。ここにきて、ようやくと言うか、既にすっかりチャップリンのコメディスタイルが出来上がっているなあという感じで、それをずっと一人芝居でじっくり観ることが出来るという意味では貴重な作品とも言えるかもしれせん。
「愚なる妻」●原題:FOOLISH WIVES●制作年:1921年(公開1922年)●制作国:アメリカ●監督・原作・脚本:エーリ

「チャップリンの恋のしごき(痛ましの恋)」●原題:CRUEL, CRUEL LOVE●制作年:1914年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・ニコルズ●製作:マック・セネット●脚本:クレイグ・ハッチンソン●撮影:フランク・D・ウィリアムズ●時間:現存9分(オリジナル18分)●出演:チャールズ・チャップリン/エドガー・ケネディ/ミンタ・ダーフィ/アリス・ダヴェンポート/グレン・カーヴェンダー●最初に観た場所(活弁付き):日暮里サニーホール・コンサートサロン (14-09-30) (評価★★★)●併映:「チャップリンの大酔」(チャールズ・チャップリン)/「愚なる妻」(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)」
「チャップリンの大酔(たいすい)(午前一時)」●原題:ONE A.M.●制作年:1916年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:チャールズ・チャップリン●撮影:ローランド・トザロー●時間:12分(オリジナル32分)●出演:チャールズ・チャップリン/アルバート・オースチン●最初に観た場所(活弁付き):日暮里サニーホール・コンサートサロン (14-09-30) (評価★★★☆)●併映:「チャップリンの恋のしごき」(ジョージ・ニコルズ)/「愚なる妻」(エーリッヒ・フォン・シュトロハイム)」

![HAROLD LLOYD COLLECTION [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/HAROLD%20LLOYD%20COLLECTION%20%5BDVD%5D.jpg)

周囲の期待を一身に集め、田舎から都会に出て来た青年がいた。残してきた恋人には主任を任され......なんて手紙を出すが、実のところ、ただのデパートの売り子。それも度重なるドジで、首さえも危ない状態だった。そこへ彼女がやってきて、なんとか取り繕おうとしてますますドツボにはまり、ついに解雇通告を受け取ってしまう。だが、壁登りが得意な友人をビルに登らせる販促キャンペーンに借り出すことで、何とか汚名返上を果たそうと画策。しかし宿敵の警官に友人は追われ、ついに彼自身がビルに挑むことに―(「allcinema ONLINE」より)
ハロルド・ロイド(1893-1971)主演の1923年作品で、本邦公開は1923(大正12)年12月。淀川長治はこの作品をロイド主演作の中でベストとしていますが、大方の見方も同じでしょう。先に「
前半の細かいギャグの連続がロイド作品の中でもテンポがいいというのもありますが、やはり後半の、ロイドが1階ずつビルの壁をよじ登っていく場面が見せます。どうやってこうした危険そうに見えるシーンを撮ることが出来たのか、タネを知ればナルホドで終わってしまうのですが、それにしてもカメラワークが巧みです。創意工夫によって、映像上のスリルと、撮影上の安全性の両方を成り立たせている点は、CG全盛の今日において、大いに参考にすべき映画の原点的な技と言えるのではないでしょうか。
デパートに新入社員として入社し、洋服の生地売り場でのお客対応でこき使われているロイドからは宮仕えのツラサもたっぷり感じられますが、解雇通告を受けてもめげず、何百人も客をデパートに呼び寄せれば報奨金1000ドルを出すという支配人の発言を聞きつけ発奮するロイドからは、チャンスを生かせば誰もが恵まれた人生を手にすることが出来るという、アメリカ的な考え方、成功への上昇志向が窺えます(因みに、ハロルド・ロイドが作品中で「ハロルド・○○○」として登場した作品は多いが、ちゃんと「ハロルド・ロイド」として登場した作品はこの「ロイドの要心無用」のみ。但し、オープニングクレジットでは単に「The Boy」となっている)。
主人公は、最初は取り敢えず1階分だけ登って後は壁登りの得意な友人と交代する手筈だったわけで、それが結果として...。この1つ1つ目の前の"課題"に取り組むことで、意図せずして当初不可能と思われたことを独力で成し遂げていたという話の流れも上手いと思います。ビルの下に集まってくる群衆なども、非常に多くのエキストラを使っているように思われますが、それらが、実際にロイドがスタント無しでビル登りしているのを固唾を飲んで見守っているかのように撮られているのが絶妙です(実際にはビル登りするロイドは最初の下の方の階を除いては別撮りであり、スタントは使っていないが、先述の通り一定の安全は確保されていた)。
後半の壁登りに次ぐ見所は、その前の、恋人を安心させるために自分が会社で要職に就いていると偽っていたところ、その恋人が会社を訪ねて来てしまい、社内で新入社員のくせにあたかも支配人であるかのように振る舞ってみせる場面でしょうか。これもなかなか楽しめ、このことにより、中盤、後半と、"引き込まれ度"がステップアップしていく作品になっているように思います。
このシチュエーションで思い出されるのが、小津安二郎監督の「
![ロイドの要心無用~Safety Last~ [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%AD%E3%82%A4%E3%83%89%E3%81%AE%E8%A6%81%E5%BF%83%E7%84%A1%E7%94%A8~Safety%20Last~%20%5BVHS%5D.jpg)




田舎から出てきて憧れの大学生となったハロルド(ハロルド・ロイド)は、学内の人気者になりたくて皆にアイスクリームを御馳走したりパーティを開いたりする。車中で知り合って意気投合した下宿屋の娘ペギー(ジョウビナ・ラルストン)の気を引こうとしたのだった。恋敵に触発されて今度はフットボール部に入り花形選手を目指すが、監督
は彼を補欠として在籍させるものの、練習の時は選手のタックルの練習台として、試合の時はウォーターボーイ(水汲み)としてしか扱わない。そんな中、大事な試合でケガ人が続出し、やがてハロルドにも出場の機会が訪れる―。
パントマイム系であるにも関わらず表情豊かでおとぼけぶりも際立つチャップリン、アクロバット系であるにも関わらずピンチでも無表情を崩さないシュールなキートン―個性が強烈で存在そのものがエキセントリックなこの両者に比べると、ロイドはその特徴的な眼鏡を除いてはごく普通の若者といった感じで、逆に眼鏡によって都会的な印象を醸しており、その辺りが当時の観客に親近感を与えたのではないでしょうか。
「
この作品は「
但し、この作品も、終盤のフットボールシーンのロイドのアクションは愉しめるし、どちらかと言うとギャグ系のロイドが、ここでは体を張って頑張っています。随所にエスプリも効いていて、恋人の泣かせる励ましの言葉もあり、人によっては「要心無用」よりこちらが好みだという人がいてもおかしくないかもしれません(個人的にはやはり「要心無用」の方が上にきてしまうのだが)。
因みに、ハロルド・ロイドが作品中で「ハロルド・ロイド」として登場した作品は「要心無用」のみで、この作品では「ハロルド・ラム(Harold Lamb)」、通称「スピーディー(Speedy)」となっています。このスピーディーという愛称はその後の作品に引き継がれ、「ロイドのスピーディー」('28年)などは、小津安二郎監督の「
俗を描いているという点では、映像的には貴重かも。同じく小津安二郎の「




石器時代、ローマ時代、現代の3つの時代で繰り広げられる、美しい娘を手に入れるまでの男の恋愛騒動&奮闘劇で、キートン・プロダクションのキートン監督・出演作の【第20作】で、キートンが監督した初長編作品(1923年9月公開、47分)ということになっていますが、長編への進出に不安のあったキートンが、従来に短編を組み合わせる形で制作し、上手くいかなかった場合はそれぞれ個別の作品として公開しようと考えていたという説もあるようです。日本公開は1925(大正14)年3月で、公開時邦題は「滑稽恋愛三代記」。'74年7月に「キートンの恋愛三代記」のタイトルで「ニュー東宝シネマ2」でリバイバル上映されました(併映短編「スケアクロウ」「マイホーム」)。
各時代それぞれシチュエーションごとに区切って、47分の間に石器時代、ローマ時代、現代の3つの時代が繰り返し出てくる展開は、キートンならではのギャグ満載で観る者を飽きさせず、しかも前半の恋占いシーンや、中盤の女性をめぐる男達の決闘シーンなど、時代ごとのモチーフを揃えているところなどから、やはり最初からから長編としての公開を意識したものと思われます(キートンの相手役のヒロインも一貫してマーガレット・リーイー(Margaret Leahy)が演じているし)。
セシル・B・デビル監督を皮肉ったものとも言われていますが、このキートンの「恋愛三代記」の中でもセットなどに最もお金をかけている場面のように思われました。D・W・グリフィス監督の「イントレランス」('16年)のパロディとも言われていますが、確かにセットは「イントレランス」と似ています(大掛かりなだけに、大観衆の迎える中でキートンがしょぼい犬ぞりで登場するギャップが非常に効果的なのだが)。
キートンは実際に映画「ベン・ハー」を参考したのでしょうか? ウィリアム・ワイラー監督、チャールトン・ヘストン主演の「ベン・ハー」('59年/米)はアカデミー賞11部門を獲得した大作として知られていますが、その前にフレッド・ニブロ監督が撮ったラモン・ノヴァロ主演のMGM映画「ベン・ハー」('26年/米)があり、ウィリアム・ワイラーはこの作品で助監督を務めています。この作品は、「民衆」役でジョン・バリモア、ジョーン・クロフォード、マリオン・デイヴィス、ダグラス・フェアバンクス、リリアン・ギッシュ、ハロルド・ロイド、メアリー・ピックフォードなど多くのスターが出演していることでも知られています。但し、これはこの「恋愛恋愛三代記」の3年後の公開作品であり、キートンが真似ようにもそれは不可能です。
品を参照した可能性はかなり高いように思います。
ローマ時代だけでなく、石
器時代も現代も手抜きしておらず、石器時代ではマンモスの代わりに本物のアフリカゾウを使い(ローマ時代のキートンが爪を磨いてあげることで喰われずに済んだライオンは明らかに着ぐるみだが)、現代ではフットボールの試合をスポーツ大好き人間のキートンらしくかなり本格的に撮影しています。石
器時代の岩から岩へ飛び移ってのアクションが、現代のビルからビルへ飛び移るアクションと重なるのも上手いし(それにしてもスゴいアクション)、ラストはどの時代のキートンも目出度くヒロインと結ばれ、石器時代では凄い数の子どもに恵まれ、ローマ時代もそこそこ、それが現代では夫婦の間にペットの犬が一匹というのが見る側の予想を覆して可笑しいです(少子化時代を予測した?)。
派手なアクションもありますが、細かいギャグや小道具も効いていたように思います。石器時代で言えば、キートンがしている"腕時計型の日時計"とか"ゴルフセット"とか。現代においては、ジョー・ロバーツ演じる恋敵(こちらも3時代を通しての)の見せる身分証(社員証)にFirst National Bank(国立一流銀行)であるのに対し、キートンのがLast National Bank(国立三流銀行)であるというのも可笑しいです。現代版
におけるキートン帽にネクタイ、ワイシャツ、チョッキ、ダブダブのズボン、ドタ靴という組み合わせは、所謂「アーバックル時代」と言われるロスコー・アーバックルとの共演時代(1917-1920)の最後の名残りかと思われますが、キートン帽など以降の作品にも暫く引き継がれていくものもあります。
石器時代にキートンがアプローチする女性の一人で岩の上に寝そべっている女性―立ち上がると実は大女だった―は、ブランシ・ペイソンという人で、ニューヨーク最初の婦人警官だったそうです。
「キートンの恋愛三代記(滑稽恋愛三代記)」●原題:THE THREE AGES●制作年:1923年●制作国:アメリカ●監督:バスター・キートン/エドワード・F・クライン●製作:バスター・キートン/ジョセフ・M・シェンク●脚本:バスター・キートン/クライド・ブラックマン/ジョゼフ・ミッチェル/ジャン・C・ハヴェズ●撮影:エルジン・レスレー/ウィリアム・C・マクガン●時間:47分●出演:バスター・キートン/ウォーレス・ビアリー/マーガレット・リーイー/ジョー・ロバーツ/ホラス・モーガン/リリアン・ローレンス●日本公開:1925/03●配給:イリス映画(評価:★★★★)
「ベン・ハー」●原題:BEN-HUR●制作年:1959年●制作国:アメリカ●監督:ウィリアム・ワイラー●製作:サム・ジンバリスト/ウィリアム・ワイラー●脚本:カール・タンバーグ/マクスウェル・アンダーソン/クリストファー・フライ/ゴア・ヴィダル/S・N・バーマン●撮影:ロバート・L・サーティーズ●音楽:ミクロス・ローザ●原作:ルー・ウォーレス●時間:212分●出演:チャールトン・ヘストン/スティーヴン・ボイド/ジャック・ホーキンス/ハイヤ・ハラ
リート/ヒュー・グリフィス/マーサ・スコット/キャシー・オドネル/フランク・スリング/サム・ジャッフェ/フィンレイ・カリー/テレンス・ロングドン/アンドレ・モレル/ジョージ・レルフ/マリ
ナ・ベルティ/ジュリアーノ・ジェンマ/クロード・ヒータ/フィンレイ・カリー●日本公開:1960/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:杉本保男氏邸(80-12-02)(評価:★★★★)
「ベン・ハー」●原題:BEN-HUR:A TALE OF THE CHRIST●制作年:1926年●制作国:アメリカ●監督:フレド・ニブロ●脚本:ジューン・メイシス/ケイリー・ウィルソン/ベス・メレディス●撮影:クライド・デ・ヴィナ/ ルネ・ガイサート/ パーシー・ヒルバーン/カール・ストラッス●音楽:ウィリアム・アクスト●原作:ルー・ウォーレス●時間:141分●出演:ラモン・ノヴァロ/フランシス・X・ブッシュマン/メイ・マカヴォイ/ベティ・ブロンソン/クレア・マクドウェル/キャスリーン・キー/カーメル・マイヤーズ/ナイジェル・ド・ブルリエ/ミッチェル・ルイス/レオ・ホワイト/フランク・


「ベン・ハー」●原題:BEN-HUR●制作年:1907年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・オルコット●脚本:ジーン・ゴルチエ●原作:ルー・ウォーレス●時間:15分●出演:ハーマン・レトガー/ウィリアム・S・ハート●米国公開:1907/12●最初に観た場所:杉本保男氏邸(81-09-27)(評価:★★★☆)



ミシシッピー川で操業する蒸気船ストーンウォール・ジャクソン号のオーナー、ウィリアム・キンフィールド(アーネスト・トーレンス)は"スチームボート(蒸気船)ビル"と呼ばれる町の人気者。一人息子のスチームボート・ビル・ジュニア(バスター・キートン)は故郷を離れてボストンに遊学中だった。副船長のトム・カーター(トム・ルイス)と長閑な日々を送るビルだったが、強力なライバルが現われる。金持ちのジョン・ジェイムズ・キング(トム・マクガイアー)が新造船キング号で事業に乗りだしたのだ。そんな時、ボストンから息子が帰ってくる。都会風に妙に洗練された息子を見て、父は落胆。おまけに息子と、商売仇の娘メアリー(マリオン・バイロン)が恋仲になり、ますます面白くない。更ににジャクソン号が老朽化のため使用停止勧告を出されてしまう。警察にはむ
かったためビルは拘置所に入れられる。ジュニアは父親を助けようとするが、そこへ巨大な暴風雨がやってきて猛威を奮う。ミシシッピーの河川地帯は大パニックとなり、吹きすさぶ風の中、ジュニアは父親と恋人メアリー、そして命を落としかけたキングも救い出す―。
前半部分はマッチョ志向の父親が、赤ん坊の時以来久しぶりに会った息子の思いもよらなかった脆弱ぶりに幻滅しつつも、何とか一人前の蒸気船乗りに仕立て上げようと躍起になるも、なかなかそうはいかず、そのう
ち息子はライバルの蒸気船会社のオーナーの娘と恋仲になるは、自身は拘置所に入れられてしまうはの踏んだり蹴ったりというドラマ的な展開が主となりますが、父親役のアーネスト・トーレンスの演技がなかなかいいです(帽子を使ったギャグは、「荒武者キートン」「海底王キートン」にもあったことを思い出させる)。それと、キートンのことを慕って何かと面倒を見るヒロインの娘もなかなかきびきびしていて良かったですが、演じているマリオン・バイロン(1911-1985)は当時16歳であったとのこと。可愛らしいながらにも(キートン作品のヒロインの中では今風にカワイイ)、役柄のせいで随分しっかりして見えます。
物語が終盤に入って、残り15分のところで町は暴雨風に見舞われ、一気に映画はスぺクタルの様相を呈します。暴雨風の中、斜めになったまあ動けなかったり木に掴まって風に靡いたりするキートンの姿や、家屋が倒れてきて偶然にも窓枠の位置にいて奇跡的に助かるといったキートンの躰を張ったアクション・シークエンスは、キートン作品の中でもよく知られている場面です。
そして、ラスト5分、キートンが演じるビル・ジュニアは、これまでと打って変わって獅子奮迅の働きを見せることになりますが、ラスト15分に「起承転結」のうちの暴風雨による「転」とジュニアの活躍という「結」を集約させた作りが、前半から中盤にかけてその脆弱ぶりが繰り返し描かれていただけに効いています。暴風雨で危険な状態に晒された娘を救い、拘置所ごと漂流していた父親を救い、そして父親のライバルである彼女の父親キングをも救う―これらの神業を表情も変えず黙々とこなしていくのが小気味良く、ラストも両家の父親の和解という"感動的"な場面でありながら当人は感傷に浸ることなく、今度は漂流していた牧師を引っぱってきて、そこで"ジ・エンド"となる終わり方がいです。このラストは、同じく恋人の親同士が対立しているという「ロミオとジュリエット」風の状況設定であった「
この作品の「暴雨風」というモチーフは当初「大洪水」というモチーフだったそうで、「大洪水」で亡くなる人が多くいるのでコメディに相応しくないとの意見で「暴雨風」に変更されたそうですが、後で統計を調べてみたら「暴雨風」で亡くなる人の方が「大洪水」で亡くなる人より何倍も多いことが判ったとのことです。
この作品にヒントを得て作られたと言われているのが、同じ年に公開された世界初のトーキー・アニメ「蒸気船ウィリー(Steamboat Willie)」('28年)で、正しくは世界初の「サウンドトラック方式」のトーキー・アニメ。それまでのBGMとして音楽が流れるだけの方式ではなく、登場人物(ミッキー)が台詞を喋ります。ミッキー・マウス作品としては3作目ですが、ミッキーの初主演作であるため、1928(昭和3)年ニューヨークのコロニーシアターで初公開された、その11月18日という日
が「ミッキー・マウスの誕生日」とされています。但し、ディズニーがこの日をミッキーの誕生日として公式に定めたのは、生誕50周年を記念して大々的な回顧展が行われるのを機にしてのことでした(日本公開は1929年で、どの会社がいつ輸入し、どの映画館で最初に上映したのか明確ではないが、9月に新宿にあった武蔵野館でミッキー・マウス映画が公開された記録があり、この時が本邦初公開だったのではないか。因みに本国では大手配給会社に配給を断られ、セレブリティ・プロダクションという制作会社が配給した)。
東京ディズニーリゾートの「ミート・ザ・ミッキー」で順番待ちの間にこの作品が流れていますが、基本的にはウォルト・ディズニーのオリジナルという感じでした。但し、原題(Steamboat Willie)などは確かに「キートンの蒸気船」(Steamboat Bill Jr.)のバロディっぽく、ミッキー・マウスの実質デビュー作がキートン作品から何らかの影響を受けているというのが興味深いです。因みに、1928年公開のこの作品から1947年までの約20年間、ミッキーの声優を務めたのはウォルト・ディズニー自身であり、自分の声を入れたのは予算の都合だったそうで、実は1作目からミニーの声も担当していたそうです(ミニーは4作目からディズニー社の女性社員に変更されたという)。
「キートンの蒸気船(船長)」●原題:STEAMBOAT BILL JR.●制作年:1928年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・F・ライスナー/バスター・キートン(ノンクレジット)●製作:バスター・キートン●脚本:カール・ハルボー●撮影:デヴ・ジェニングズ/バート・ヘインズ●時間:59分●出演:バスター・キートン/アーネスト・トレンス/マリオン・バイロン/トム・ルイス/トム・マクガイア●日本公開:1928/08●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:渋谷ユーロスペース(84-01-16)(評価:★★★★)●併映:「キートンのセブンチャンス(栃面棒)」(バスター・キートン)
「蒸気船ウィリー」●原題:STEAMBOAT WILLIE●制作年:1928年●制作国:アメリカ●監督・製作:ウォルト・ディズニー●作画:アブ・アイワークス/レス・クラーク/ジョニー・キャノン/ウィルフレッド・ジャクソン●(声の)出演:ウォルト・ディズニー●時間:7分●日本公開:1929/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ(評価:★★★☆)![ジョンとメリー [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%20%5BVHS%5D.jpg)
![ジョンとメリー [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%82%B8%E3%83%A7%E3%83%B3%E3%81%A8%E3%83%A1%E3%83%AA%E3%83%BC%20%5BDVD%5D.jpg)

![卒業 [DVD] L.jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E5%8D%92%E6%A5%AD%20%5BDVD%5D%20L.jpg)
マンハッタンに住む建築技師ジョン(ダスティン・ホフマン)のマンションで目覚めたメリー(ミア・ファロー)は、自分がどこにいるのか暫くの間分からなかった。昨晩、独身男女が集まるバーで2人は出会い、互いの名前も聞かないまま一夜を共にしたのだった。メリーは、整頓されたジョンの家を見て女の影を感じる。ジョンはかつてファッションモデルと同棲していた過去があり、メリーはある有力政治家と愛人関係にあった。朝食を食べ、昼食まで共にした2人は、とりとめのない会話をしながらも、次第に惹かれ合っていくが、ちょっとした出来事のためメリーは帰ってしまう―。
脚本は「シャレード」('63年)の原作者ジョン・モーティマーですが、構成の巧みさもさることながら、演じているダスティン・ホフマンとミア・ファローがそもそも演技達者、とりわけダスティン・ホフマン演じるジョンの、そのままメリーに居ついて欲しいような欲しくないようなその辺りの微妙に揺れる心情が可笑しく(ジョンの方に感情移入して観たというのもあるが)ホントにこの人上手いなあと思いました(でも、ミア・ファローも良かった)。
最後に互いの気持ちを理解し合えた2人が、そこで初めて「ぼくはジョンだ」「私はメリーよ」という名乗り合う終わり方もお洒落(その時に大方の日本人の観客は初めて、そっか、2人はまだ名前も教え合っていなかったのかと気づいたのでは。アメリカ人だったら普通は最初に名乗るけれど、アメリカ人が見たらどう感じるのだろうか)。観た当時は、これが日本映画だったら、もっとウェットな感じになってしまうのだろうなあと思って、ニューヨークでの一人暮らしに憧れたりもしましたが、逆に、ニューヨークのような大都会で恋人も無く一人で暮らすということになると、(日本以上に)とことん"孤独"に陥るのかも知れないなあとも思ったりして。
そうした大都会での孤独をより端的に描いた作品が、ダスティン・ホフマンがこの作品の前に出演した同年公開のジョン・シュレシンジャー(1926-2003/享年77)監督の「真夜中のカーボーイ」('69年)であり、ジョン・ヴォイトが、"いい男ぶり"で名を挙げようとテキサスからニューヨークに出てきて娼婦に金を巻き上げられてしまう青年ジョーを演じ、一方のダスティン・ホフマンは、スラム街に住む怪しいホームレスのリコ(一旦は、こちらもジョーから金を巻き上げる)役という、その前のダスティン・ホフマンの
主演作であり、彼自身の主演第1作だったマイク・ニコルズ監督の「卒業」('67年)の優等生役とはうって変った役柄を演じました(「卒業」で主人公が通うコロンビア大学もニューヨーク・マンハッタンにある)。
映画デビューした年に「卒業」でアカデミー主演男優賞ノミネートを受け(この作品、今観ると「サウンド・オブ・サイレンス」をはじめ「スカボロ・フェアー」「ミセス・ロビンソン」等々、サイモン&ガー
ファンクルのヒット曲のオン・パレードで、そちらの懐かしさの方が先に立つ)、主演第2作・第3作が「真夜中のカーボーイ」(これもアカデミー主演男優賞ノミネート)と「ジョンとメリー」であるというのもスゴイですが、ゴールデングローブ
賞新人賞を受賞した「卒業」の、その演技スタイルとは全く異なる演技をその後次々にみせているところがまたスゴイです(「卒業」で英国アカデミー賞新人賞を受賞し、「真夜中のカーボーイ」と「ジョンとメリー」で同賞主演男優賞を受賞している)。
3作品共にアメリカン・ニュー・シネマと呼ばれる作品ですが、その代表作として最も挙げられるのは「真夜中のカーボーイ」でしょう。ニューヨークを逃れ南国のフロリダへ旅立つ乗り合いバスの中でリコが息を引き取るという終わり方も、その系譜を強く打ち出しているように思われます。「真夜中のカーボーイ」も「ジョンとメ
リー」も傑作であり、ダスティン・ホフマンはこの主演第2作と第3作で演技派としての名声を確立してしまったわけですが、個人的には「ジョンとメリー」の方が、ラストの明るさもあってかしっくりきました。一方の「真夜中のカーボーイ」の方は、ジョーとリコの奇妙な友情関係にホモセクシュアルの臭いが感じられ、当時としてはやや引いた印象を個人的には抱きましたが、2人の関係を精神的なホモセクシュアルと見る見方は今や当たり前のものとなっており、その分だけ、今観ると逆に抵抗は感じられないかも(但し、原作者のジェームズ・レオ・ハーリヒー自身はゲイだったようだ)。![ミスター・グッドバーを探して [VHS].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%9F%E3%82%B9%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%BB%E3%82%B0%E3%83%83%E3%83%89%E3%83%90%E3%83%BC%E3%82%92%E6%8E%A2%E3%81%97%E3%81%A6%20%5BVHS%5D.jpg)
ダイアン・キートン演じる主人公の教師はセックスでしか自己の存在を確認できない女性で、原作は1973年にニューヨーク聾唖学校の28歳の女性教師がバーで知り合った男に殺害された「ロズアン・クイン殺人事件」という、日本における「東電OL殺人事件」(1997年)と同じように、当時のアメリカ国内で、殺人事件そのものよりも被害者の二面的なライフスタイルが話題となった事件を基にしており、当然のことながら結末は「ジョンとメリー」とは裏腹に暗いものでした。主人公の女教師は最後バーで拾った男(トム・ベレンジャー)に殺害されますが、その前に女教師に絡むチンピラ役を、当時全く無名のリチャード・ギアが演じています(殺害犯役のトム・ベレンジャーも当時未だマイナーだった)。
何れもニューヨークを舞台にそこに生きる人間の孤独を描いたものですが、ニューヨークを舞台に男女の出会いを描いた作品がその後は暗いものばかりなっているかと言えばそうでもなく、ロバート・デ・ニーロとメリル・ストリープの演技派2人が共演した「恋におちて」('84年)や、メグ・ライアンとトム・ハンクスによるマンハッタンのアッパーウエストを舞台にしたラブコメディ「ユー・ガット・メール」('98年)など、明るいラブストーリーの系譜は生きています(「ユー・ガット・メール」は1940年に製作されたエルンスト・ルビッチ監督の「街角/桃色(ピンク)の店」のリメイク)。
「恋におちて」はグランド・セントラル駅の書店での出会いと通勤電車での再会、「ユー・ガット・メール」はインターネット上での出会いと、両作の間にも時の流れを感じますが、前者はクリスマス・プレゼントとして買った本を2人が取り違えてしまうという偶然に端を発し、後者は、メグ・ライアン演じる主人公は絵本書店主、トム・ハンクス演じる男は安売り書店チェーンの御曹司と、実は2人は商売敵だったという偶然のオマケ付き。そのことに起因するバッドエンドの原作を、ハッピーエンドに改変しています。
トム・ハンクスとメグ・ライアンは「めぐり逢えたら」('93年)の時と同じ顔合わせで、こちらもレオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の
(●今度は韓国系の男女を主人公にした、ニューヨークでの再会物語が作られた。海外移住のため離れ離れになった幼なじみの2人が、24年の時を経てニューヨークで再会する7日間を描いた、セリーヌ・ソン監督のラブストーリー作品「パスト ライブス/再会」('23年)である。
とソウルでそれぞれの人生を歩んでいた。2人はオンラインで再会を果たすが、互いを思い合っていながらも再びすれ違ってしまう。そして12年後の36歳、ノラは作家のアーサー(ジョン・マガロ)と結婚していた。ヘソンはそのことを知りながらも、ノラに会うためにニューヨークを訪れ、2人はやっと巡り合うのだが―。


公開:1969/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17)(評価:★★★★☆)●併映:「ひとりぼっちの青春」(シドニー・ポラック)/「草原の輝き」(エリア・カザン)三鷹東映 1977年9月3日、それまであった東映系封切館「三鷹東映」が3本立名画座として再スタート。1978年5月に「三鷹オスカー」に改称。1990(平成2)年12月30日閉館。
「真夜中のカーボーイ」●原題:MIDNIGHT COWBOY●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・シュレシンジャー●製作:ジェローム・ヘルマン●脚本:ウォルド・ソルト●撮影:アダム・ホレンダー●音楽:ジョン・バリー(主題曲「真夜中のカーボーイ」ハーモニカ演奏:トゥーツ・シールマンス)●原作:ジェームズ・レオ・ハーリヒー「真夜中のカーボーイ」●時間:113分●出演:ジョン・ヴ
ファー・ソルト/ボブ・バラバン●日本公開:1969/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:早稲田松竹(78-05-20)(評価:★★★★)●併映:「俺たちに明日はない」(アーサー・ペン)
マン●脚本:バック・ヘンリー/カルダー・ウィリンガム●撮影:ロバート・サーティース●音楽:ポール・サイモン
ニエルズ/エリザベス・ウィルソン/バック・ヘンリー/エドラ・ゲイル/リチャード・ドレイファス●日本公開:1968/06●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(83-02-05)(評価:★★★★)●併映:「帰郷」(ハル・アシュビー)


キー●音楽:デイヴ・グルーシン●時間:106分●出演:ロバート・デ・ニーロ/メリル・ストリープ/ハーヴェイ・カイテル/ジェーン・カツマレク/ジョージ・マーティン/デイヴィッド・クレノン/ダイアン・ウィースト/ヴィクター・アルゴ●日本公開:1985/03●配給:ユニヴァーサル映画配給●最初に観た場所:テアトル池袋(86-10-12)(評価:★★★)●併映:「愛と哀しみの果て」(シドニー・ポラック)




「パスト ライブス/再会」●原題:PAST LIVES●制作年:2023年●制作国:アメリカ●監督・脚本:セリーン・ソン●製作:デイヴィッド・イノヨーサ/クリス
チン・ヴァション/パメラ・コフラー●撮影:シャビエル・キーシュナー●音楽:クリストファー・ベア/ダニエル・ローセン●時間:106分●出演:グレタ・リー/ユ・テオ/ジョン・マガロ/ユン・ジヘ/チェ・ウォニョン●日本公開:2024/04●配給:ハピネットファントム・スタジオ●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(24-05-06)((評価:★★☆)

貧しいフィリピン青年の「僕」キドラット(キドラット・タヒミック)はジムニー(小型乗合バス)の運転手であるが、将来は宇宙飛行士を夢みている。僕のジプ
ニーがアメリカ人のビジネスマン(ハルムート・レルヒ、この作品の共同撮影カメラマン)の気に入り、ひとまずパリに赴くことになって、村をあげての大騒ぎの中、憧れの地へ発つが、日夜チューインガム自販機を詰め替える単純作業に追われ、夢は遠のく。巨大なスーパーの煙突の中に身を隠し、故郷を想う僕は、進歩という観念そのものに疑問を抱くようになる―。
1977年にフィリピンの映像作家キドラット・タヒミック監督(Kidlat Tahimik 、1942年生まれ)が発表した彼のデビュー作で、スペイン人が造った橋、アメリカの軍用車を改造したジプニー、月ロケットなどをモチーフに、フィリピン社会に染みついた植民地主義を、とぼけたユーモアや温かい詩情、ファンタジックで時にナンセンスな展開、ドキュメンタリー風の映像などを通して炙り出した作品です。
フィリピンの田舎町で行われる熱狂的な大祭を背景とした物語を描いて国際映画賞を受賞しています(マンハイム・ハイデルベルグ国際映画祭映画「新興国のための審査員賞」)。'87年に第2回東京国際映画祭(アジア秀作映画週間部門)にて上映されたのを観ましたが、馬や犬のマスコ
ットを家族で作って祭りで売っていた祖母と少年が、ある日ドイツのデパートの女性バイヤー(カタリーナ・ミューラー)がたまたま通りかかって、大量注文をしたために家族は大騒動となるという、ちょっと「悪夢の香り」と似た展開。但し、"日記映画作家"と呼ばれるだけあって、祭りの準備をする人々や本番の祭りの模様を記録映画風に描いていて、ドキュメンタリータッチがより色濃く出ています。また、単に反商業主義・反植民地主義というだけでなく、土着的、アジア文化的なものへの回帰指向もより鮮明になっています。この辺りは、「悪夢の香り」の主人公である「僕」が、最後に文明批判に目覚め、先住民の友達の教えを思い出して帰国するという結末からの流れを汲んでるともとれます。
今やその風貌や語り口から仙人のような趣を醸す同監督ですが(50代になってからマニラを離れ、山間部に移り住んでいる)、元々は富裕知識階層の出身で、ペンシルバニア大学ウォ―トンスクール(米国でもトップクラスとされるMBA)で経営学の修士号を取得し、パリで経済協力開発機構(OECD)の研究員をしていたという、かつては自他共に認めるバリバリのエコノミストでした。その彼が、帰国してから経済人への道をではなく、自主制作映画作家としての道を歩み(MBAの卒業証書を破り捨たというから相当の覚悟だったのか)、反商業主義を貫いて、国際的に高く評価される映像作家になったというのが興味深いです(相変わらず祭り好きの、剽軽なオッサンである点は変わらないみたいだけど)。
福岡アジア文化賞受賞スピーチ(2012)
「悪夢の香り」●原題:KIDLAT WORLD MABABANGONG BANGUNGOT(Perfumed Nightmare)●制作年:1977年●制作国:フィリピン●監督・製作・脚本・撮影:キドラット・タヒミック●共同撮影:ハルトムート・レルヒ●音楽:エフゲニー・グレボフ●時間:95分●出演:キドラット・タヒミック/ジェジェット・ボードリィ/マン・フェリィ/ハルムート・レルヒ/カタリーナ・ミューラー/ドロレ

ネセゾン●最初に観た場所:シネセゾン渋谷(87-09-26)(評価:★★★☆) シネセゾン渋谷 1985年11月6日、渋谷道玄坂「ザ・プライム渋谷」6Fにオープン。2011年2月27日閉館。



ベルトラン・タヴェルニエ(Bertrand Tavernier、1941- )監督の初期作品で、第37回カンヌ国際映画祭監督賞作(原作は脚本家ピエール・ボストの遺作『ラドミラル氏はもうすぐ死んでしまう』)。ストーリー的にはただこれだけの話ですが、パリ郊外の田舎の風景の映像も美しく、何となくじわーっとくる作品です。こうした作品を飽きずに最後まで見せるのは、相当な力量ではないかと最初に観た当時思いましたが(途中で退屈になってしまう人もいておかしくない作品でもあるが)、この監督はその後も佳作を世に送り続けています。でも、自分が観たベルトラン・タヴェルニエの作品ではこれが一番かと。娘イレーヌ役のサビーヌ・アゼマは、1985年(第10回)セザール賞(フランスにおける映画賞で、同国における米アカデミー賞にあたる)の最優秀女優賞を受賞しています。
邸での些細な出来事の殆どが、老境の画家ラドミラル氏の視点から描かれているように思えますが、彼が数年前までは風景画を描いていたのが、最近はアトリエの中の椅子等のオブジェを描くように変わっているのが興味深いです。更に、娘イレーヌは、父のアトリエの屋根裏部屋で、美しいレースのショールと情熱的な画を見つけて感動しますが、これらも、老画家のこれまでの内面の精神的歩みを物語っているように思えました。
妻に先立たれたとはいえ、美しい田舎の邸に住まい、訪ねてきてくれる子どもも孫もいて、しかも自分には創作という"定年の無い仕事"があるという、ある意味、ラドミラル氏は充分に恵まれた老人なのかもしれません。それでも、全体として見れば、老いと人生の侘しさをしみじみと描いた作品であると言え(印象派絵画のように描かれる田舎の紅葉の光と影が主人公の老境にすごくマッチしている)、家族のこと(娘イレーヌの恋愛)が心配事に絡んでいる点など、小津安二郎の作品にも通じるものがあるように思いました。
しかし、最後に家族が去った後、新たな創作にとりかかろうとするラドミラル氏のその姿からは、非常に強い「個人」や「自我」というものが見て取れ、小津安二郎などの日本映画とはまた違った趣も感じられました。
「田舎の日曜日」●原題:UN DIMANCHE A LA CAMPAGHE●制作年:1984年●制作国:フランス●監督・製作・脚本:ベルトラン・タヴェルニエ●共同脚本:コロ・タヴェルニエ●撮影:ブルーノ・ド・ケイゼル●音楽:ガブリエル・フォーレ●原作:ピエール・ボスト「ラドミラル氏はもうすぐ死んでしまう」●時間:95分●出演:ルイ・デュクルー/サビーヌ・アゼマ/ミシェル・オーモン/ジュヌヴィエーヴ・ムニック/カティア・ボストリコフ●日本公開:1985/11●配給:フランス映画社●最初に観た場所:テアトル新宿(86-03-30)(評価:★★★★)●併映:「パリ、テキサス」(ヴィム・ヴェンダース)




引退後のベリゼール・べレスフォード大佐(アンドレ・デュソニエ)と妻のプリュダンス(カトリーヌ・フロ)は田舎でのんびり過ごしているが、プリュダンスは退屈を持て余し気味。そんな折、大佐の叔母のバベットが二人のもとを訪ねるために乗った夜行列車の車中で深夜、すれ違う列車内で女性が首を絞められているのを目撃、車掌に伝えるが寝ぼけていたのだと相手にされない。翌日、大佐夫妻に事件を伝えたが、新聞に事件の記事は載っていない。プリュダンスは、その列車がモルガン発4時50分の列車で、死体は犯行直後の急カーブで窓から外に投げ出されたと推理、線路近くの邸が怪しいと、夫に内緒で家政婦として単独その邸に入り込む。そこには、大富豪とその長女及び3人の息子たちがいた―。
パスカル・トマ監督による、トミーとタペンスのおしどり夫婦探偵シリーズの『親指のうずき』をフランス風に改変した「奥様は名探偵」('05年)、ノンシリーズ物の『ゼロ時間へ』の舞台をブルターニュ地方に改変した「ゼロ時間の謎」('07年)に続く、アガサ・クリスティのフランス映画化シリーズ第3弾で、原作はもちろんミス・マープルシリーズの『
カトリーヌ・フロ、アンドレ・デュソリエ主演のおしどり夫婦探偵物としては第2弾で、他にもトミーとタペンスのおしどり夫婦探偵シリーズ物の原作はあるのに、なぜこの本来ミス・マープル物である『パディントン発4時50分』をおしどり夫婦探偵物に改変したのかということについては、前作「奥様は名探偵」の原作が一旦引退したトミーとタペンスのその後の活躍を描いたものであったために、それ以前の作品をもってこれなかったんだろうなあ。「おしどり探偵」シリーズも最後の『運命の裏木戸』では2人とも75歳と更に年齢がいっており、これはカトリーヌ・フロが演じるには原作の方が年齢が高すぎるという判断からではないでしょうか。
シリーズ3作の前2作は劇場公開されたのに対し、こちらは劇場未公開でしたが、比較的原作通りに作られた「奥様は名探偵」に対し、本来は「ミス・マープル物」であるところを「おしどり夫婦探偵風」のサスペンスコメディにアレンジした作品でありながらも結構愉しめ、劇場公開されなかったのがやや不思議。
カトリーヌ・フロとアンドレ・デュソリエの遣り取りが楽しく、未亡人と偽って邸に乗り込んだところへ夫のべレスフォード大佐が捜査に乗り込んで来て、邸の人々の前では初対面をつくろいながら、裏では、夫が妻の冒険に苦言を呈し、妻がそれを宥めすかすという構図が愉快です。
コメディ部分において、スコットランド系フランス人のべレスフォード大佐のキルトスカートが、ポーチのベルトがマンホールに引っ掛かった際にめくれるといった場面はややベタでクドかったかな。でも、叔母バベットが蛾の大家という設定で、べレスフォード大佐に頼まれて嫌々ながら乗り込んだ邸で蛾の講釈を垂れる場面など、素直に笑えるシーンの方が多かったように思います。
大富豪の長女エンマ役のキアラ・マストロヤンニと次男で彫刻家(原作では画家)のフレデリク役のクリスチャン・ヴァディムはカトリーヌ・ドヌーヴの娘と息子で、キアラ・マストロヤンニはクリスティ原作の主演作「
「アガサ・クリスティー 奥さまは名探偵 〜パディントン発4時50分〜」●原題:LE CRIME EST NOTRE AFFAIRE(Crime Is Our Business)●制作年:2008年●制作国:フランス●本国上映:2008/10/15●監督・脚本:パスカル・トマ●製作:ナタリー・ラフォリ●原作:アガサ・クリスティ●時間:119分●出演:カトリーヌ・フロ/アンドレ・デュソリエ/キアラ・マストロヤンニ/メルヴィル・プポー/クリスチャン・ヴァディム/クロード・リッシュ/アレクサンドル・ラフォーリ/イポリット・ジラルド/イヴ・アフォンソ/アニー・コルディ●DVD発売:2011/05●発売元:ファインフィルムズ(評価:★★★☆)
「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」
がレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含め米国においてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。
個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの
芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「
ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「


「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)「


「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(07-08-28)(評価:★★★☆)

「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シド
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」 by Alexandre Petrov(アレクサンドル・ペトロフ) 1999.jpg)
「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた





個人的には、映画「白雪姫」を観て、これがディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと。白雪姫や継母である后の登場する場面は実際に俳優を使って撮影し、その動作を分解して絵を描くという手法はこの頃からやっていたわけです。因みに、7人の小人は、原作ではゴブリン(ドラクエのキャラにもある小鬼風悪魔)であるのに対し、ディズニーによって、サンタクロースのイメージに変えられたとのことです。
原作では、王子が初めて白雪姫に合った時、姫は死んでいたため、本書では、王子はネクロフィリア(死体に性的興奮を感じる異常性欲)であるとしています(半分冗談を込めてか?)。ディズニー版では王子を最初から登場させることで純愛物語に変えていますが、原作の基調にあるのは、白雪姫の后に対する復讐物語であり(結婚式で、継母=魔女は真っ赤に焼けた鋼鉄の靴を履かされて、死ぬまで踊り続けさせられた)、ヒロインが自分の婚礼の席で、自分を苛め続けてきた義姉妹の両眼を潰して復讐する「シンデレラ」の原作「灰かぶり姫」にも通じるものがあります。
むしろ、本書にも紹介されている、シガーニー・ウィーヴァーが継母の后を演じたTV実写版「スノーホワイト」('97年)が比較的オリジナルに忠実に作られている分だけ、よりホラー仕立てであり、'99年の年末の深夜にテレビで何気なく見て、そのダークさについつい引き込まれて最後まで観てしまいました。これ、継母が完全に主人公っぽい。ホラー風だがそんなに怖くなく、但し、雰囲気的には完全に大人向きか(昨年('12年)テレビ東京「午後のロードショー」で再放映された)。
本書の最後に取り上げられている「美女と野獣」は、個人的には90年代のディズニー・アニメの頂点を成している作品だと思うのですが、原作では、ヒロインであるベルは妬み深い二人の姉に苛められていて、グリムの「灰かぶり姫」のような状況だったみたいです。ディズニー・アニメでは、この姉たちは出てこず、代わりに、強引にベルに言い寄るガストンなる自信過剰のマッチョ男が出てきますが、これは、グリムのオリジナルには全く無いディズニー独自のキャラクター。
本書によれば、オリジナルは、ベルの成長物語であるのに対し、ディズニー版ではベースト(野獣)の成長物語になっているとのことで、「美女と野獣」ではなく「野獣と美女」であると。そう考えれば、「悔い改めたセクシスト」であるビスーストと対比させるための「悔い改めざるセクシスト」ガストンという配置は、確かにぴったり嵌る気もしました。
'05年にディズニーのアイズナー会長は経営責任をとって退任し、'06年にはディズニーとの交渉不調からディズニーへのピクサー作品提供を打ち切るかに思われていたスティーブ・ジョブズが一転してピクサーをディズニーに売却し、同社はディズニーの完全子会社となり、ジョブズはディズニーの筆頭株主に。「トイ・ストーリー」などを監督したピクサーのジョン・ラセターは、ディズニーに請われ、ピクサーとディズニー・アニメーション・スタジオの両方のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任することに。'06年にピクサー制作の「カーズ」('06年)を監督するなどしながらも、「ルイスと未来泥棒」('07年)などの以降のディズニー・アニメの制作総指揮にあたっています(ディズニー作品も3D化が進むと、ディズニー・アニメのピクサー・アニメ化が進むのではないかなあ)。
「スノーホワイト(グリム・ブラザーズ スノーホワイト)」
●原題:SNOW WHITE: A TALE OF TERROR(THE GRIMM BROTHERS' SNOW WHITE)●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・コーン●製作:トム・エンゲルマン●脚本:トム・スゾロッシ/デボラ・セラズ●撮影:マイク・サウソン●音楽:ジョン・オットマン●原作:グリム兄弟●時間:100分●出演:シガーニー・ウィーヴァー/サム・ニール/モニカ・キーナ/ギル・ベローズ/デヴィッド・コンラッド/ジョアンナ・ロス/タリン・デイヴィス/ブライアン・プリングル●日本公開:1997/10●配給:ギャガ=ヒューマックス(評価:★★★)
「美女と野獣」●原題:BEAUTY AND THE BEAST●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ゲーリー・トゥルースデイル/カーク・ワイズ●製作:ドン・ハーン●脚本:リンダ・ウールヴァートン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・メンケン●原作:ジャンヌ・マリー・ルプランス・ド・ボーモン●時間:84分●声の出演:ペイジ・オハラ/ロビー・ベンソン/リチャード・ホワイト/レックス・エヴァーハート/ジェリー・オーバック/アンジェラ・ランズベリー/デイヴィッド・オグデン・スティアーズ●日本公開:1992/09●配給:ブエナ・ビスタ(評価:★★★★)





ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、最近のリメイクのようにすぐにコングが出てくるのではなく、結構ドラマ部分で引っ張っていて、コングが出てくるまでにかなり時間がかかったけれど、これはこれで良かったのでは。当のコングは、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ている不思議と慣れてきて、ティラノサウルスっぽい「暴君竜」との死闘はまるでプロレスを観ているよう(コマ撮りでよくここまでやるなあ)。比較的自然にコングに感情移入してしまいましたが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中での
コングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]
因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのに
ラクェル・ウェルチがバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしているのはある種"お約束ごと"か)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。
「

代では「遊星よりの物体X」('51年)や「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「
「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督によりカート・ラッセル主演で「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。
前者「キャット・ピープル」は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になる
場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日
「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、むしろ構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。ナスターシャ・キンスキー自身は、「テス」('79年)で"演技開眼"した後の作品であるため、「肌を出し過ぎた」発言に至っているのではないでしょうか。「テス」は、19世紀のイギリスの片田舎を舞台に2人の男の間で揺れ動きながらも愛を貫く女性を描いた、文豪トマス・ハーディの文芸大作をロマン・ポランスキーが忠実に映画化した作品で、ナスターシャ・キンスキーの演技が冴え短く感じた3時間でした(ナスターシャ・キンスキーはこの作品でゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞)。一方、「テス」に出る前年にナスターシャ・キンスキーは、スイスの全寮制寄宿学校を舞台に、そこにやって来たアメリカ人少女という
設定の青春ラブ・コメディ「レッスンC」('78年)に出演していて、そこでは結構「しっかり肌を出して」いたように思います。「レッスンC」は音楽は



「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、
リメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、
興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラングも「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。
(●2017年に32歳のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督による「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られた。シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島が
舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「
込められているようだ)。ヴォート=ロバーツ監督自らが来日して行われた本作のプレゼンテーションに参加した
「

「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサ
ック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★☆)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)


「恐竜100万年」●原
題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★) Raquel Welch age71

「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作:レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)


ズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジ
オ・モロダー(主題歌:








「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)![郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E9%83%B5%E4%BE%BF%E9%85%8D%E9%81%94%E3%81%AF%E4%BA%8C%E5%BA%A6%E3%83%99%E3%83%AB%E3%82%92%E9%B3%B4%E3%82%89%E3%81%99%20%5BDVD%5D.jpg)

ブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)


「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/
サミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)

OSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。







同著者による『図説 モンスター―映画の空想生物たち』('01年/河出書房新社)に続くシリーズ第2段で、草創期(サイレント時代~1930年代)、繁栄と低迷(1940~1950年代)、復興と世代交代(1960年代以降)という流れで、各時代の名作を紹介、製作にまつわる裏話やエピソードなども交え解説しています。
でみると、戦前はボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ(上右)をホラー・スターに育てたユニヴァーサル、戦後はピーター・カッシングとクリストファー・リー(右上)をホラー・キングに育てたハマー・プロが中心なっています。

現代のホラー映画をすっかり観慣れてしまうと、ジェームズ・ホエール(1889-1957)監督、ボリス・カーロフ主演の「フランケンシュタイン(FRANKENSTEIN)」('31年/米)に出てくる怪物も、漫画「怪物くん」のフランケンのようにどこか可愛いかったりもし、湖のほとりで少女と触れ合うシーンは、ビクトル・セリエ監督の「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、主人公の少年が観る映画の1シーンで使われました。


製作した、ケネス・ブラナー監督の「フランケンシュタイン」('94年/英・日・米)などもありましたが、

フランケンシュタインのパロディ映画では、メル・ブルックス(1926- )監督の「
マン(せむし男)やピーター・ボイル(怪物)など、脇役がいいです。オリジナルの「フランケンシュタインの花嫁」にも出てくる山小屋に住む盲目の老人役はジーン・ハックマン、ラストに小さくクレジットされていました。


ヘルツォーク/キンスキー版は、「ドラキュラ伯爵」に戻しながらも設定はムルナウ版を踏襲。全体として透明感のある映像で、ペストで住民が死滅した村の描写などは絶妙でしたが、それら以上に、クラウス・キンスキーの怪演ぶり、「キモさ」が際立っていた印象です(彼に噛まれる女性役は美貌のイザベル・アジャーニ。トリュフォーの「アデルの恋の物語」('75年/仏)で知られるフランスの人気女優だが、この作品でドイツ語で話しているのは、父親がアルジェリア人であるのに対し、母親はドイツ人であるため。「ノスフェラトゥ」の前年作のウォルター・ヒル監督のアクション映画「ザ・ドライバー」('78年/米)でみせたように英語も堪能)。
ドラキュラのパロディでは(クリストファー・リーが「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米)で土左衛門姿で出てきた際に見せていた苦悶の表情も、ドラキュラのパロディと言えばパロディだったけれど)、たまたま「ノスフェラトゥ」と同じ年に作られたもので、本書にも紹介されている「ドラキュラ都へ行く」('79年/米、原題:Love at First Bite)というジョージ・ハミルトンが製作総指揮し、主演もした作品もありました(ジョージ・ハミルトンはこの作品で「
ョージ・ハミルトンは「刑事コロンボ」の第31話「5時30分の目撃者」('75年)で犯人の精神分析医役を演じていた二枚目俳優で、ハリウッド社交界でもプレイボーイで鳴らした彼らしく、愛人が絡むエピソードですが、計画殺人ではなく衝動殺人になっているのがややプロット的には弱点だったでしょうか。ハミルトンは、「刑事コロンボ」の新シリーズ(通算第57話)「犯罪警報」('91年)でも人気テレビ番組のホストである犯人役を演じていました。
「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1931年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:アーサー・エジソン●音楽:バーンハルド・カウン●原作:メアリー・シェリー
●時間:71分●出演:コリン・クライヴ/ボリス・カーロフ/メイ・クラーク/
エドワード・ヴァン・スローン/ドワイト・フライ/ジョン・ポールズ/フレデリック・カー/ライオネル・ベルモア●日本公開:1932/04●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★☆)●併映:「フランケンシュタインの花嫁」(ジェイムズ・ホエール)
「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制
作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1994年●制作国:イギリス・日本・アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:



「ノスフェラトゥ」●原題:NOSTERTU. PHANTOM DER NACHT(英:NOSFERATU THE VAMPYRE))●制作年:1979年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ヴェルナー・ヘルツォーク●撮影:イェルク・シュミット=ライトヴァ![ノスフェラトゥ(1978)[A4判].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%8E%E3%82%B9%E3%83%95%E3%82%A7%E3%83%A9%E3%83%88%E3%82%A5%281978%29%EF%BC%BB%EF%BC%A1%EF%BC%94%E5%88%A4%EF%BC%BD.jpg)


「ドラキュラ都へ行く」●原
題:LOVE AT FIRST BITE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:スタン・ドラゴッティ●製作・脚本:ロバート・カウフマン●撮影:エドワード・ロッソン●音楽チャールズ・バーンスタイン●時間:96分●出演:ジョージ・ハミルトン/スーザン・セント・ジェームズ/ディック・ショーン/アート・ジョンソン/リチャード・ベンジャミン/シャーマン・ヘムズリー●日本公開:1979/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(79-12-15)(評価:★★★)
「刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者」●原題:A DEADLY STATE OF MIND●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ジョージ・ハミルトン/レスリー・ウォーレン/スティーブン・エリオット/カレン・マックホン/ブルース・カービー/ライアン・マクドナルド/ジャック・マニング/フレッド・ドレイパー/ウィリアム・ウィンターソウル/ヴァンス・デイヴィス/レッドモンド・グリーソン/グローリー・カウフマン●日本公開:1976/12●放送:NHK(評価:★★★☆) 「

'96年の映画館の入場者数は1億1,957万人とのことで1億2千万人を割り込みましたが、本書の編者・江藤努氏は編集後記において、レンタルビデオによる映画鑑賞が定着し、〈映画人口〉というより〈映画館人口〉が減少したとみるべきだろうが、やはり憂慮すべき事態であるとしています。また、シネマ・コンプレックス建設ブームで映画館自体の数は52館増えたので、小劇場化の流れが定着したところで、この凋落傾向の底が見えるのではないかともしています。
個人的には、トム・クルーズがプロデューサーとしてブライアン・デ・パルマを監督に指名した「ミッション:インポッシブル」('96年)に注目しましたが、それなりに楽しめたけれども、オリジナルの「スパイ大作戦」とは随分違った作りになったなあと。
という脚本が好きなのかなあ(ヴァネッサ・レッドグレイヴが謎の武器商人「マックス」を演じて貫録の演技)。「007シリーズ」におけるボンドガール的な役回りには、「
プスを演じたピーター・グレイブスは衝撃を受け、他のドラマ出演者からの評判も良くなかったようです。
「スパイ大作戦」の映画化らしい出来にする、という前提条件があり、テレビシリーズの構図に近い出来となっていました。現場を引退して教
官をしていたイーサンが、敵に拉致された教え子の女エージェントの救出プロジェクトに参加することになりますが、彼女は頭の中に仕掛けられていた小型爆弾により死亡し、逆にイーサン自身が彼女と同様の窮地に陥り、さらにミシェル・モナハン演じる婚約者も拉致されてしまう―イーサンを救い、さらにイーサンの婚約者を奪還するために仲間が協力するという"身内"色の強い内容でしたがそう悪くなく、この3作目をシリーズベストに挙げる人もいるようです。
「ミッション:インポッシブル」●原題:MISSION:IMPOSSIBLE●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ブライアン・デ・パルマ●製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー●脚本:デヴィッド・コープ/ロバート・タウン/スティーヴン・ザイリアン●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ダニー・エルフマン(テーマ音楽:ラロ・シフリン)●原作:ウィンストン・グルーム●時間:110分●出演:トム・クルーズ/ジョン・ヴォイト/エマニュエル・ベアール/ジャン・レノ/ヘンリー・ツェーニー/ダニー・ エルフマン/クリスティン・スコット・トーマス/インゲボルガ・ダクネイト/ヴィ
ング・レイムス/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ヘンリー・ツェニー/アンドリアス・ウイスニウスキー/ロルフ・サクソン/マーセル・ユーレス/デイル・ダイ●日本公開:1996/07●配給:パラマウント=UIP(評価:★★★☆)


「ミッション:インポッシブル2(M:i:2)」●原題:MISSION:IMPOSSIBLE 2●制作年:2000年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ウー●製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー●脚本:ロバート・タウン●撮影:ジェフリー・L・キンボール●音楽:BT/ハンス・ジマー●原作:ブルース・ゲラー●時間:123分●出演:トム・クルーズ/ダグレイ・スコット/タンディ・ニュートン/ヴィング・レイムス/リチャード・ロクスバーグ/ジョン・ポルソン/ブレンダン・グリーソン/ラデ・シェルベッジア/ウィリアム・メイポーザー/ドミニク・パーセル/マシュー・ウィルキンソン/アントニオ・バルガス/ダニエル・ロバーツ●日本公開:2000/07●配給:パラマウント=UIP(評価:★★★)
「ミッション:インポッシブル3(M:i:III)」●原題:MISSION:IMPOSSIBLE III●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:J・J・エイブラムス●製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー●脚本:アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/J・J・エイブラムス●撮影:ダニエル・ミンデル●音楽:マイケル・ジアッキーノ(テーマ音楽:ラロ・シフリン)●時間:126分●出演:トム・クルーズ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ヴィング・レイムス/ビリー・クラダップ/ミシェル・モナハン/サイモン・ペッグ/ジョナサン・リース=マイヤーズ/ケリー・ラッセル/マギー・Q/ローレンス・フィッシュバーン●日本公開:2006/07●配給:パラマウント=UIP(評価:★★★☆)

ハリウッド映画のアクション系で、「ダイ・ハード」('88年)、「氷の微笑」('92年)のカメラマンだったヤン・デ・ボン(「トータル・リコール」「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督と同じくオランダ人)の初監督作品「スピード」('94年)が気を吐きました。
時速を80キロ以下に落とすと爆発する爆弾を仕掛けたバスの疾走が迫力満点のノンストップアクションで、バスが街中を車をはじき飛ばしながら爆走したり、キアヌ・リーブスが爆弾を解除するために高速で走るバスの下にもぐりこむシーン、或いは、地下鉄の車両が工事現場を破壊しながら地上に突き抜けるシーンなどは実写中心であるため見応えはありました。
脚本を書いたグレアム・ヨストは、 アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「暴走機関車」('86年/米)の原
案である黒澤明のオリジナル脚本を読んで着想を得たと述懐していますが、その脚本もまずまずではないでしょうか。但し、脚本を含めてよく出来ていた「ダイ・ハード」と比べるのと、トータルではやや落ちるか。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック共に頑張っているけれど、爆弾魔のデニス・ホッパー(1936-2010)は、クイズ好きのオタクみたいで、それほど凄味がないような....。デニス・ホッパーということで、期待し過ぎてしまったのかもしれませんが(結局、大掛かりなアクションで見せる映画だった。元々の狙いも概ねそうだとは思うが)。
ということで、個人的にはヤン・デ・ボン監督には次に期待、というところだったのですが、その続編「スピード2」('97年/米)であっさりコケてしまった感じでした(既に同年の「ツイスター」('97年/米)を観れば、この監督の力量の限度は窺い知れたのだが。因みに、竜巻パニック
「スピード」の「四つ星」評価に対し、本書で星3つの評価となっている「ターミネーター」シリーズのジェームズ・キャメロンが監督した「トゥルーライズ」('94年)の方が、ユーモアの要素があって個人的な評価はやや上になります。
アガサ・クリスティの「おしどり探偵」シリーズの現代アクション版みたいで、アーノルド・シュワルツェネッガーはコメディも充分にこなすし、スタント無しのジェイミー・リー・カーティスも良かったです(アクションでもそれ以外でも身体を張った演技をしていたなあ)。
カーチェイスの場面で実際に橋を爆破したというのもスゴいですが、一方で、シュワちゃんがゴールデン・ゲート・ブリッジにしがみつくシーンやハリヤー・ジェット機上でのテロリストとの"生身"のバトルシーンなど、デジタル合成のSFXをふんだんに使っています。
「トゥルーライズ」ではそのほかに、ハリヤー・ジェット機の熱で空気が揺らぐシーンなどにもデジタル・ドメイン社が開発したCGが初めて使われていて、この技術は「アポロ13」('95年)のロケット発射シーンなどにも使われました(ジェームズ・キャメロンはデジタル・ドメイン社の初代共同経営者)。
「スピード」●原題:SPEED●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:
ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:ランダル・マコーミック/ジェフ・ナサンソン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:マーク・マンシーナ/ビリー・アイドル●時間:115分●出演:キアヌ・リーブス/デニス・ホッパー/サンドラ・ブロック/ジョー・モートン/ジェフ・ダニエルズ/アラン・ラック●日本公開:1994/12●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-12-17)(評価:★★★☆)
「スピード2」●原題:SPEED:CRUISE CONTROL●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:グレアム・ヨスト●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:121分●出演:サンドラ・ブロック/ジェイソン・パトリック/ウィレム・デフォー/テムエラ・モリソン/ブライアン・マッカーディー/グレン・プラマー/コリーン・キャンプ/ロイス・チャイルズ/マイケル・G・ハガーティー/ボー・スヴェンソン/フランシス・ギナン/ジェレミー・ホッツ●日本公開:1997/08●配給:20世紀フォックス映画(評価:★★☆)
「ツイスター」●原題:TWISTER●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:キャスリーン・ケネディ/イアン・ブライス/
「トゥルーライズ」●原題:TRUE LIES●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ステファニー・オースティン●オリジナル脚本:クロード・ジディ/シモン・ミシェル/ディディエ・カミンカ●撮影:ラッセル・カーペンター●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:144分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイミー・リー・カーティス/トム・アーノルド/ビル・パクストン/ティア・カレル/アート・マリック
/エリザ・ドゥシュク/グラント・ヘスロヴ/チャールトン・ヘストン●日本公開:1994/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-09-25)(評価:★★★★)
「ラスト・アクション・ヒーロー」●原題:LAST ACTION HERO●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:スティーヴ・ロス/ジョン・マクティアナン●脚本:デヴィッド・アーノット/シェーン・ブラック●撮影ディーン・セムラー●音楽:マイケル・ケイメン●時間:131分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/オースティン・オブライエン/チャールズ・ダンス/ロバート・プロスキー/トム・ヌーナン/フランク・マクレー/
アンソニー・クイン/ブリジット・ウィルソン/F・マーリー・エイブラハム/マーセデス・ルール/アート・カーニー/イアン・マッケラン/プロフェッサー・トオル・タナカ/ジョーン・プロウライト/ノア・エメリッヒ/(カメオ出演)M.C.ハマー/リトル・リチャード/マリア・シュライヴァー/ティナ・ターナー/ジェームズ・ベルーシ/チェビー・チェイス/ジャン=クロード・ヴァン・ダム/ロバート・パトリック/シャロン・ストーン/シルヴェスター・スタローン/ハンフリー・ボガート/ローレンス・オリヴィエ●日本公開:1993/08●配給:コロンビア映画(評価:★★★)

'90年公開の洋画で先ず個人的に良かったのは、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」('89年/米)で、ブルックリンの黒人街でピザ屋を営むイタリア系父子と店員のムーキーやその周辺の黒人たちの暑い夏の1日を、毒々しい色彩感覚とラップのリズムにのせて描いたものですが、まだメジャーになる前のスパイク・リー監督自身がピザ屋の店員のムーキー役で主演しており、作品の根柢には人種差別問題があるのですが、予定調和に終わらない結末にスパイク・リーの鋭さが窺えました。ダニー・アイエロは「ゴッドファーザーPart II」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にもちょこっと出ていた俳優ですが、この作品で1989年・
続いて良かったのがブルース・ベレスフォード監督の「ドライビング Miss デイジー」('89年/米)で、90年度アカデミー賞優秀作品賞・主演女優賞などの最多4部
門に輝いた秀作(ジェシカ・タンディは歴代最高齢(80歳)でのアカデミー主演女優賞受賞)。1948年のアトランタを舞台に70歳過ぎのユダヤ人の元教師(ジェシカ・タンディ)と黒人運転手(モーガン・フリーマン)の交流を描いたもので、ラストの老人ホームでの二人の再会シーンは感動的。こうした"感動ストーリー"仕立てを好まない人もいますが、個人的には入れ込んでしまいました。dジェシカ・タンディの名演もさることながら、この頃のモーガン・フリーマンもいいです(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。
モーガン・フリーマンが映画俳優として知られるようになったのは50歳の時、ジェリー・シャッツバーグ監督の「NYストリート・スマート」('87年/米)でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからで、この「ドライビング Miss デイジー」でアカデミー主演演男
優賞にノミネートされたのは52歳の時。さらにフランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」('94年/米)でティム・ロビンスと共に主役レッドを演じて最高の評価を得、前作に続いてアカデミー主演演男優賞にノミネートされますが受賞はならず、その10年後に、クリント・イーストウッドが監督した「
デミー助演男優賞受賞を受賞し、4回目のノミネートでアカデミー俳優となります。(●2023年10月9日、「ショーシャンクの空に」を「TOHOシネマズ錦糸町オリナス」にて「午前十時の映画祭13」で4K版にて再鑑賞(劇評で観るのは初)。モーガン・フリーマンの堂々たる演技が、レッドを単なる"観察者"ではなくより強い存在していることを再認識した。一方で、アカデミー賞を獲れなかった理由も、主人公と異なりレッドが"行動者"ではなく"観察者"に留まっているという役柄設定のせいもあったのではないかと思った。原作は スティーヴン・キングの『刑務所のリタ・ヘイワース』。壁に貼られた女優のポスターリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチと変わっていくのが時の流れを表していた。2023年時点で、
・ザ・ライト・シング」を取り上げ、「この映画には真実がある」と訴えています(キム・ベイシンガーも「ドライビング Miss デイジー」が良くないとは言っていない。しかしながら、この頃からアカデミーのある種"偏向"を見抜いていたとも言える)。
マーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」('90年/米)は、実在の人物をモデルにギャングたちの生き様を描いた作品で、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」受賞作。ロバート・デ・ニーロが口封じのために仲間を次々と殺していく様子や、ジョー・ペシがギャングの幹部に呼ばれて昇格かと思い出向いたところ、逆に殺されてしまうところなどオソロシイ。「グッドフェローズ」って、反語的意味合いを含んでいるわけね(本書評価★★★★/個人的評価★★★★)。
「トータル・リコール」('90年/米)は、フィリップ・K・ディック(1928-1982/享年53)の短編SF小説「記憶倍
ります」をポール・バーホーベンが監督したもので、シュワルツェネッガー演じる主人公の偽(ニセ)の妻役に、後に同じくポール・バーホーベン監督の「氷の微笑」('92年/米)に主演するシャロン・ストーンが出ていました。優れたSF映画に贈られる「サターンSF映画賞」の第17回受賞作。この作品、最近リメイクされています(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。
因みに、ポール・バーホーベン監督は「ロボコップ」('87年/米)で米映画界に進出して成功を収めたオランダ人です。「ロボコップ」は、殉職した警官の遺体を利用したサイボーグ警官が活躍するバイオレンスSFアクション映画で低予算で作られながらもヒットし、「ロボコップ2」「ロボコップ3」やテレビドラマシリーズも作られました(2014年にリメイクされた)。サイボーグ警官を演じたのはピーター・ウェラーでしたが、アーノルド・シュワルツェネッガーも候補だったと
か。犯罪多発都市としてデトロイト市を舞台としていますが、デトロイトは当時から既に自動車産業の衰退で荒廃していたため、ロケのほとんどはダラスで行われたそうです。暴力シーンも多いですが、一方で、ピーター・ウェラーの演じる哀愁を帯びた主人公と、そのロボット歩き(ピーター・ウェラーしかできなかったので彼がスタントも演じた)はなかなかのものでした。ラストで、悪人がオム二社(ロボコップを造った会社)の会長を人質にして逃走を図りますが、悪人はオムニ社の役人で、ロボコップに内蔵されていた「オムニ社役員には危害を加えない」というプログラムがあって手を出せないでいたところ、会長が悪人に「お前はクビだ!」と叫んだことでプログラムの規定が消滅し、ロボコップは悪人を射殺するという、そうしたコミカルな面もありました(これも「サターンSF映画賞」の受賞作)。







「ショーシャンクの空に」●原題:THE SHAWSHANK REDEMPTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フランク・ダラボン●製作:ニキ・マーヴィン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:トーマス・ニューマン●原作:スティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」●時間:142分●出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン/ウィリアム・サドラー/クランシー・ブラウン/ギル・ベローズ/ジェームズ・ホイットモア●日本公開:1995/06●配給:松竹富士(評価:★★★★)「
「グッドフェローズ」●原題:GOODFELLAS●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:アーウィン・ウィンクラー●脚本:ニコラス・ピレッジ/マーティン・スコセッシ●撮影:ミヒャエル・バルハウス●時間:145分●出演:レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ/ジョー・ペシ/ロレイン・ブラッコ/ポール・ソルヴィノフランク・シベロ/


ティン/シャロン・ストーン/ロニー・コックス/マイケル・アイアンサイド/マーシャル・ベル/メル・ジョンソン・Jr/ ロイ・ブロックスミス/レイ・ベイカー/マイケル・チャンピオン/デビッド・ネル●日本公開:1990/06●配給:東宝東和(評価:★★★☆)
「ロボコップ」●原題:RoboCop●制作年:1987年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:アーン・L・シュミット●脚本:エドワード・ニューマイヤー/マイケル・マイナー●撮影:ヨスト・ヴァカーノ/ソル・ネグリン●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●時間:103分●出演:ピーター・ウェラー/ナンシー・アレン/ロニー・コックス/カートウッド・スミス/ダン・オハーリー/ミゲル・フェラー/ロバート・ドクィ/フェルトン・ペリー/レイ・ワイズ/ポール・マクレーン●日本公開:1988/02●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)






マイケル・ハフハール(スティーヴ・マーティン)は世界的に有名な脳外科医だが、亡き愛妻の思い出に胸締め付けられる日々を送っていた。ある日、車を運転中、目の前を横切ったドロレス(キャスリーン・ターナー)を跳ね飛ばしてしまうが、駆け寄って見た彼女の美しさに参ってしまう。美貌のドロレスは、実は遺産目当てで年老いた男に近寄り、結婚後に夫を死に追いやる悪女だったが、そうと知らずにドロレスの脳外科手術を買って
出たハフハールは、手術を成功させ、意識を取り戻したドロレスにアタックをかけ結婚へ。しかし、新婚生活を送るうちにドロレスの傲慢さが目につくようになり、その上夜の営みを拒み続けるドロレスに欲求不満気味、上司の勧めで仕事とハネムーンを兼ねてオーストリアへ行き、脳移植の権威ネセシスター博士(デビッド・ワーナー)に出会い、彼の研究室で、"アン・アールメヘイ"と名乗る頭脳(声:シシー・スペイセク)とテレパシーで意思疎通出来ることを知る。意思疎通を図るうちに、次第にアールメヘイの持つ優しさに惹かれて、挙句の果てには、横行していた"エレベーター・キラー"にかこつけて、彼女に見合う女性を殺害してその肉体を手に入れようとまでし始める―。
'85年の第1回「東京国際映画祭」の一環としての「ファンタスティック映画祭」で上映された、カール・ライナー監督、スティーヴ・マーティン(1945‐)主演のホラー・コメディで、"脳"に不倫心を抱いてしてしまう男と
いう奇抜な設定。その流れで、その男は、"脳"のために肉体を探し、"脳移植"手術をしようとするという、ハチャメチャながらも、SF風のドタバタ喜劇であることを踏まえて観れば結構良く出来たストーリーであったように思え、意外と面白かったです(「ファンタスティック映画祭」に相応しい上映作品と言える)。
スティーヴ・マーティンにしてもレスリー・ニールセンにしても、銀髪のダンディな男が途方も無くバカバカしいことをやるという点で似ているかも。両者共に日本にはあまりいないタイプの喜劇役者でしょうが、そもそも洋モノコメディ軽視の日本では、当時スティーヴ・マーティンの名は殆ど知られていなかったように思われ、自分自身この作品で初めて知り、なかなかの芸達者だと思いました。この作品も日本ではロードにかかっておらず(映画祭出品後にビデオ化はされた)、「愛しのロクサーヌ」('87年)などでやっと日本でも彼の名知られるようになりましたが、その後も出演作品数は多く、バイプレイヤーだったりシリアスな役もこなしたりしているようで、最近では、2010年に、自身3回目となるアカデミー賞授賞式の司会をしています。

キャスリーン・ターナーはこの後、ロバート・ゼメキス監督の「ロマンシング・ストーン 秘宝の谷」('84年)にマイケル・ダグラスとの共演で出演しています。 「2つの頭脳...」がロードにかからなかったため、こちらを「東京国際映画祭」の1か月前に先に観ることになったのですが、ロマンス作家が否応なしに自分の書く小説張りの恋と冒険に巻き込まれていくという「インディ・ジョーンズ」と「ハーレクイン・ロマンス」を足して2で割り、それにコメディの味付けをしたような"盛り沢山"の作品でした。 

)という作品も作られています。今度は、人気冒険作家である主人公(キャスリーン・ターナー)が、独裁国大統領の伝記執筆のため渡ったアフリカで大騒動に巻き込まれるというもの。そこで、冒険家(マイケル・ダグラス)と再会し、その彼は悪党(ダニー・デヴィート)
とも再会していて...と、監督は変わりましたが主要メンバーは変わらず、気心知れた仲間で楽しみながら作っているような映画でした。

もありました。「
コメディタッチでテンポはそう悪くなかったように思います。ただ、個人的にはそんなに熱くなるほどの映画かなあとも。配役がある種ノスタルジーを醸すのかなあ。リチャード・チェンバレンは同じく主役を演じた「
結婚17年目を迎えたローズ夫妻の泥沼の離婚戦争をブラック・ユーモアで描いたコメディで(タイトルはイングランドの「バラ戦争」に準えている)、家庭間で領域を二分し、車をぶつけ合い、装飾品を投げ合って、生きるか死ぬかの闘いを繰り広げる様は、コメディというよりは恐怖映画に近く、寒気を覚えるくらい...。マイケル・ダグラスがシャンデリアにつかまっている場面が印象的でした。
ちょっとやり過ぎの感もありましたが、マイケル・ダグラス自身はこの作品を気に入っているようで(グレン・クローズに苛められる「
因みに、マイケル・ダグラスは「ローズ家の戦争」の3年後に、ポール・バーホーベン監督の「氷の微笑」('92年/米)でシャロン・ストーンと共演、殺人事件の容疑者となった女流作家に惹かれていく刑事を演じています。恋人が次々と死んでいく魔性の女を演じたシャロン・ストーンはこの作品が出世作となり、彼女が取調室で足を組みかえるエロティックなシーンは評判となりました。マイケル・ダグラスは当時さほ
ど有名ではなかったシャロン・ストーンの配役に難色を示し、役柄のリスク分散のため、スター女優との共演を望んみましたが、前作「
も(笑))。シャロン・ストーンは翌年には「
マイケル・ダグラスは「氷の微笑」('92年)と「ディスクロージャー」('94年)の間に「フォーリング・ダウン」('93年)に出演、 ささいなストレスが積み重なって主人公の理性を蝕んできたことが引き金となり、プッツン状態になる平凡な中年男D-フェンスを演じましたが、かつて「
・レイン」('89年)でハードボイルドな刑事ニック・コンクリンを演じた彼も、これだけ神経症的な役が続くと、「フォーリング・ダウン」の精神的にぶっ壊れた主人公の役が似合ってしまうのが何となく面白かったです。ただ、この映画、前半のコメディタッチに較べ、ラストはちょっと主人公が哀れ過ぎて、そこがイマイチでした。
「2つの頭脳を持つ男」●原題:THE MAN WITH TWO BRAINS●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:カール・ライナー●製作:デイヴィッド・V・ピッカー/ウィリアム・E・マッキューン●脚本:カール・ライナー/スティーヴ・マーティン/ジョージ・ガイプ●撮影
:マイケル・チャップマン●音楽:ジョエル・ゴールドスミス●時間:93分●出演:スティーヴ・マーティン/キャスリーン・ターナー/シシー・スペイセク(声の出演)/デビッド・ワーナー/リチャード・ブレストフ/ジェームズ・クロムウェル/ジェフリー・コムズ/ポール・ベネディクト/マーヴ・グリフィン:マーヴ・グリフィン●日本公開:1985/06●配給/ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:渋谷パンテオン(85-06-02) (評価★★★★)
「ロマンシング・ストーン 秘宝の谷」●原題:ROMANCING THE STONE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●製作:マイケル・ダグラス●脚本:ダイアン・トーマス●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・シルヴェストリ●時間:106分●出演:キャスリーン・ターナー/マイケル・ダグラス/ダニー・デヴィート/スピロス・フォーカス/アヴナー・アイゼンバーグ/ホランド・テイラー/ポール・デヴィッド・マギッド●日本公開:1984/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿ローヤル(85-05-06) (評価★★★)



「ナイルの宝石」●原題:THE JEWEL OF THE NILE●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:ルイス・ティーグ●製作:マイケル・ダグラス●脚本:マーク・ローゼンタール/ローレンス・コナー●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:ジャック・ニッチェ●原作キャラクター創作/ダイアン・トーマス●時間:107分●出演:マイケル・ダグラス/キャスリーン・ターナー/ダニー・デヴィート/ザック・ノーマン/アルフォンソ・アラウ/マヌエル・オヘイダ/ホランド・テイラー/メアリー・エレン・トレイナー/エヴァ・スミス●日本公開:1986/04●配給:20世紀フォックス(評価★★★)

「キング・ソロモンの秘宝/ロマンシング・アドベンチャー」●原題:KING SOLOMON'S MINES●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:J・リー・トンプソン ●製作:メナヘム・ゴーラン/ヨーラム・グローブス●脚本:ジーン・クインターノ/ジェームズ・R・シルク●撮影:アレックス・フィリップス●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:100分●出演:リチャード・チェンバレン/シャロン・ストーン/ハーバート・ロム/ジョン・ライス=デイヴィス/ケン・ガンプ/ジューン・ブゼレッジ●日本公開:1986/06●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:日比谷スカラ座(86-06-29) (評価★★★)


「ローズ家の戦争」●原題:THE WAR OF THE ROSES●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ダニー・デヴィート●製作:ジェームズ・L・ブルックス/アーノン・ミルチャン●脚本:マイケル・リースン●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:デヴィッド・ニューマン●原作:ウォーレン・アドラー「ローズ家の戦争」
●時間:116分●出演:キャスリーン・ターナー/マイケル・ダグラス/ダニー・デヴィート/マリアンネ・ゼーゲブレヒト/ショーン・アスティン/ヘザー・フェアフィールド●日本公開:1990/05●配給:20世紀フォックス(評価★★★)
「氷の微笑」●原題:BASIC INSTINCT●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:アラン・マーシャル●脚本:ジョー・エスターハス●撮影:ヤン・デ・ボン●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●時間:118分●出演:マイケル・ダグラス/シャロン・ストーン/ジョージ・ズンザ/ジーン・トリプルホーン/レイラニ・サレル/デニス・アーント/チェルシー・ロス/ブルース・A・ヤング/ダニエル・フォン・バーゲン/ドロシー・マローン/ウェイン・ナイト/スティーヴン・トボロウスキー/ベンジャミン・ムートン/ジェームズ・レブホーン/スティーヴン・ロウ/ミッチ・ピレッジ●日本公開:1992/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿プラザ(90-06-02) (評価★★★)
「フォーリング・ダウン」●原題:FALLING DOWN●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・シュマッカー●製作:ティモシー・ハリス/アーノルド・コペルソン/ハーシェル・ワイングロッド●脚本:エブ・ロー・
スミス●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:123分(完全版128分)●出演:マイケル・ダグラス/ロバート・デュヴァル/バーバラ・ハーシー/レイチェル・ティコティン/チューズデイ・ウェルド/フレデリック・フォレスト/ロイス・スミス/ジョーイ・ホープ・シンガー/マイケル・ポール・チャン/レイモンド・J・バリー●日本公開:1993/07●配給:ワーナー・ブラザース (評価★★★)

香港から恋人を追って演劇の勉強をしにニューヨークへやって来たジェニファー(チェリー・チェン)は、やくざな生活を送る遠縁の青年サミュエル(チョウ・ユンファ)のぼろアパートで暮らすことになり、早速恋人のビンセント(ダニー・チャン)との再会を果たすが、彼は別の女性と付き合っていた。ショックを受けたジェニファーをサミュエルが慰めるうちに、二人は惹かれ合っていく―。
後に「宋家の三姉妹」('97年)、「玻璃(ガラス)の城」('98年)などを撮るメイベル・チャン (張婉婷) の監督第2作で、1988年・第7回「香港電影金像奨」の最優秀作品賞受賞作。香港人の眼で見たニューヨークの街が美しく活き活きと描かれていて、この映画を観ているとNYに旅行に行きたい気分になりますが(一方で、そこで生活するとなると、なかなか大変であるようにも思った)、お上りさん的な"観光"気分を味わえただけでなく、登場人物の心象風景ともよくマッチしており、ストーリーや演出にも、女流監督らしい細やかな感性が行き届いていて、ホロリとさせるものがありました。当時売り出し中のチョウ・ユンファの演技が良く、チンピラのような役なのですが、「
サミュエルとジェニファーはいい雰囲気になりながらも、いざとなるともう一歩のところで邪魔が入ったりアクシデントがあったりして、その一歩が踏み出せない―そうなってしまう背景には、想いを寄せる相手が失恋で落ち込んでいるところに突け入るような行為を善しとしないサミュエルの美意識のようなものも働いていて、実のところジェニファーの方はサミュエルのキスを待っているのに、彼にはそうする勇気がやや足りないともとれるのが微妙なところ(結局「いつか」「いつか」と思いながら機を失ってしまう...よくありそうな話)。
終盤の、O・ヘンリーの「賢者の贈物」に似たベタなエピソードにも、むしろガチガチの悲恋物語から解き放たれたような、観る側をほっとさせるユーモアを感じました。
トル「さらば、わが愛/覇王別姫」、台湾のホウ・シャオシェン(侯孝賢)監督の「童年往時」('85年/台湾)は「童年往時―時の流れ」と、原題の中国語を残していますが、そのことで表意文字の特性を生かしているように思います。

「誰かがあなたを愛してる」●原題:秋天的童話AN AUTUMN'S TALE●制作年:1987年●制作国:香港●監督:メイベル・チャン(張婉婷)●製作:ジョン・シャム(岑建勲)●脚本:アレックス・ロウ(羅啓鋭)●撮影:ジェームズ・ヘイマン/デイヴィッド・チャン●音楽:ローウェル・ロウ(盧冠廷)●時間:98分●出演:チョウ・ユンファ(周潤發)/チェリー・チェン(鐘楚紅)/ダニー・チャン(陳百強)/ジジ・ウォン●日本公開:1989/09●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画●最初に観た場所:シネスイッチ銀座 (89-10-10)(評価:★★★★)


1951年のサイゴン、10歳になる娘ムイは田舎からとある家へ奉公にやって来て、食事の世話や家事手伝い、その他細々とした事を任され、毎日を過ごしていた。その家には何もせずただ楽器を楽しむだけの父親、衣地屋を営み家系を支える母親、嫁に辛くあたる祖母、社会人の長男と幼い弟という家族がいた。やがてムイは、家に遊びに来た長男の友人クェンに密かに恋心を抱くようになる。10年後、ムイは暇を出され、今度はクェンの家へ奉公に出される―。
前半から中盤にかけては、ベトナム版「おしん」という感じですが、少女ムイを演じる子役の演技が旨く、子供ながらもこうしたしっとりした情感を出せるのは、監督の演出の成せる業(わざ)だろうと思いました(この作品の殆どの俳優がフランス在住のベトナム人で映画初出演であり、トラン・アン・ユン監督は、この作品でカンヌ映画祭のカンヌ国際映画祭で新人監督賞に該当する「カメラ・ドール」を受賞している)。
二十歳になってからの話は、ちょっとシンデレラ・ストーリーっぽくって、しかも、結果として"略奪愛"的な展開になっているのですが、ひたすら相手に尽くすムイの姿勢には、クェンならずとも惹かれるのかも。但し、前半の少女時代の話に比べると、ストーリー的にはやや平板な感じもしました。
トラン・アン・ユン監督はベトナムで生まれ、パリ育ち、またパリで映像芸術について学んだ人で、デビュー作にあたるこの作品は、すべてフランスでセットを組んで撮られたそうですが、昆虫や魚、野菜や果物、料理などの映像を合間ごとに挟むことにより、アジア的雰囲気を巧みに醸しているように思えました(パパイヤはベトナム人にとっては"野菜"であることがよく分かる)。
二十歳のムイを演じた女優は、実生活において監督の妻となったということで、こういうパターンは日本でも海外でもよくありますが、監督が女優を恋愛対象として見ている時は、いい映画に撮れるのかも。主人公が、永く召使い的な立場にありながらも純粋さと女性らしさを失わず、「凛として生きる」ことを貫いてきたことが分かるように描いていたように思います。
但し、映画全体としてはやはり、小さな出来事を積み重ねることである家族の全体を浮き彫りにするとともに、その中における、外部からやって来た10歳の少女の精神的成長を描いた前半部分の方が優れていたように思います。
「青いパパイヤの香り」●原題:Mùi du du xanh/仏:L'ODEUR DE LA PAPAYE VERTE/英:THE SCENT OF GREEN PAPAYA●制作





社を解体させるアイデアを"植えつける(インセプション)"仕事を依頼する。自殺した妻モル(マリオン・コティヤール)殺害の容疑をかけられ子供に会えずにいたコブは、犯罪歴抹消と引き換えに仕事を引き受けることにし、コブ及びサイトーに、コブの仕事仲間のアーサー(ジョゼフ・ゴードン=レヴィット)、夢の世界の「設計士」アリアドネ(エレン・ペイジ)、ターゲットの思考を誘導する「偽装師」イームス(トム・ハーディ)、夢の世界を安定させる鎮静剤を作る「調合師」ユスフ(ディリープ・ラオ)の4人を加えた計6人で、ロバートの夢の中に潜入する―。
最初は6人がこれからやろうとしていることの説明(理屈)が多くてややダルかったけれども、実際に夢への潜行が始まると、「夢」から「夢の中の夢」に、更に「夢の中の夢の中の夢」に降りて行くという発想が面白く、思いつかないことでもないけれど、よくこれを「お話」にして「映像化」したものだと―。突っ込み所は多いのですが、つい先月['11年7月]発表された英国の映画誌「TOTAL FILM」の投票による"史上最高のSF映画べスト10"で、今世紀の作品として唯一8位にランクインしています。
実際に夢の第1階層(雨のL.A.)、第2階層(ホテル)、第3階層(雪の要塞)のそれぞれで繰り広げられるのは、カーチェイスだったり銃撃戦だったりと定番のアクションなのだけれど(敵はロバートの潜在意識に既にインセプションされているライバル企業側の輩)、下の階層に行くにつれて相対的に上の層より時間の流れが遅くなり、その分だけ時間稼ぎ出来るといった着想などはなかなか秀逸ではないかと思われ(「黄粱一炊の夢」「邯鄲の夢」の"二乗"ということか)、ラストも、コブは本当に現実世界に戻ってきたのか、ちょっと気を持たせる終わり方でした(この辺りはむしろ「胡蝶の夢」か)。(2010年度・第37回「サターンSF賞」受賞作)
仮想現実世界での戦いと言えば、ウ
映像面でスタンリー・キューブリック
の「2001年宇宙の旅」('68年/米)や、アンドレイ・タルコフスキー作品へのオマージュが見られますが、モチーフとして特に似ているのはタルコフスキーの「
「惑星ソラリス」の宇宙飛行士であり科学者でもある主人公(ドナタス・バニオニス)は、"意識を持つ"惑星ソラリスを調査する中で、ソラリスが主人公の記憶の中から再合成して送り出してきた「かつて自殺した妻」(ナタリア・ボンダルチュク)と邂逅し(「インセプション」も同じ)、その仮想現
実世界の虜囚となってしまうのですが、クリストファー・ノーランは、どうしてもあの作品のモチーフを使いたかったのでしょうか。
「インセプション」には、700系新幹線「のぞみ」が富士川鉄橋を走る映像が出てきますが、「惑星ソラリス」では、未来都市のイメージとして、首都高速道路の赤坂
トンネル付近を走行するクルマの車内から見た映像があり、こうした日本からの素材の抽出なども「惑星ソラリス」を意識しているのではないかと思いました。
「イ
ンセプション」●原題:INCEPTION●制作年:2010年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クリストファー・ノーラン●製作:エマ・トーマス/クリストファー・ノーラン●撮影:ウォーリー・フィスター●音楽:ハンス
・ジマー●時間:148分●出演:レオナルド・ディカプリオ/渡辺謙/キリアン・マーフィー/トム・ベレンジャー/マイケル・ケイン/マリオン・コティヤール/ジョセフ・ゴードン=レヴィッド/エレン・ペイジ/トム・ハーディー/ディリープ・ラオ/ルーカス・ハ―ス/ロバート・フィッシャー/キリアン・マーフィ●日本公開:2010/07●配給:ワーナー・ブラザース(評価:
「マトリックス」●原題:THE MATRIX●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ウォシャウスキー兄弟(アンディ・ウォシャウスキー/ラリー・ウォシャウスキー)→ウォシャウスキー姉弟(アンディ・ウォシャウスキー&ラナ・ウォシャウスキー(性転換前はラリー・ウォシャウスキー))→2016年弟アンディ・ウォシャウスキーも性転換手術をしてリリー・ウォシャウスキーとなり、ウォシャウスキー姉妹に)●製作:ジョエル・シルバー●撮影:
ビル・ポープ●時間:136分●出演:キアヌ・リーブス/ローレンス・フィッシュバーン/キャリー=アン・モス/ヒューゴ・ウィービング/グローリア・フォスター/




「惑星ソラリス」●原題:SOLARIS●制作年:1972年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アンドレイ・タルコフスキー/フリードリッヒ
・ガレンシュテイン●撮影:ワジーム・ユーソフ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●原作:スタニスワフ・レム「ソラリス」(「ソラリスの陽のもとに」)●時間:165分●出演:ナタリア・ボンダルチュク/ドナタス・バニオニス/ウラジスラフ・ドヴォルジェツキー/アナトーリー・ソロニーツィン/ソス・サルキシャン/ユーリー・ヤルヴェト/ニコライ・グリニコ/タマーラ・オゴロドニコヴァ/オーリガ・キズィローヴァ●日本公開:1977/04●配給:日本海映画●最初に観た場所:大井武蔵野館(83-05-29)(評価:★★★☆)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(23-07-25)(評価:★★★★☆) 「惑星ソラリス」1977年岩波ホール公開時パンフレット
「鏡」●原題:ZERKALO●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:アンドレイ・タルコフスキー●脚本:アレクサンドル・ミシャーリン/アンドレイ・タルコフスキー●撮影:ゲオルギー・レルベルグ●音楽:エドゥアルド・アルテミエフ●挿入詩:アルセニー・タルコフスキー●時間:108分●出演:マルガリータ・テレホワ/オレーグ・ヤンコフスキー/イグナト・ダニルツェフ/フィリップ・ヤンコフスキー/アナトーリー・ソロニーツィン●日本公開:1980/06●配給:日本海映画●最初に観た場所:岩波ホール (80-07-03) (評価:★★★★★) 「




胸部外科医のメイフィールド(レナード・ニモイ)は、上司のハイデマン博士(ウィル・ギア)との心臓移植の拒絶反応を抑える新技術の共同研究の成果を、他の研究グループが発表する前に先手を打って発表すべきだと考えていたが、ハイデマン博士はもっと治験が必要だとして発表を認めない。そんな折、博士が心臓の病に倒れ、博士の主治医でもあるメイフィールドが手術をすることになるが、手術を補佐した看護婦のシャロン(アン・フランシス)は、メイフィールドが縫合糸に何か細工をしたことに気づく。真面目な彼女は自分の疑問を確認しようとするが、その最中にメイフィールドに殺されてしまう―。
「刑事コロンボ」第15話で、レナード・ニモイの冷静な犯人役が際立っている作品。むしろ、コロンボの方がメイフィールドのデスクを叩いて激昂するという珍しい場面(台詞上は「ハイデマン博士の面倒をよくみることだ。もし死んだら、当然われわれは検死解剖を要求する。そして、単なる心臓発作による死亡なのか、糸のためなのかを確認するからな」―言葉使いも荒い)があったりするので、ますますメイフィールドの冷静さが浮き彫りにされるわけですが、この「冷静さ」がコロンボによる事件解決の伏線になっていたわけだなあ(実はコロンボの「激昂」そのものも、メイフィールドを窮地に追い詰め、彼に次の行動を起こさせてボロを出させるための演技だったわけだが)。
犯人だとは分かっているけれど、証拠が出ない―それが最後の最後で閃いた、土壇場の逆転劇であるとするならば、その直前にコロンボがメイフィールドに対し表向きは負けを認めて一旦引き下がったのは、まだ逆転の可能性はあるという思いを裡に秘めた演技半分、悔しいという本音半分だったのでしょうか。とにかく、それぐらい手強い相手だったということなのでしょう。それにしても、ミスター・スポックことレナード・ニモイ、昔からああいう独特のマスクだったんだなあ。
但し、TV版「宇宙大作戦/スタートレック」は1966年から1969年に全米で放映されており、このコロンボ出演('73年)の前のこと(従って、彼が「コロンボ」に出演していた時には既に「レナード・ニモイ=スポック博士」のイメージが浸透していたことになる)、TV版が映画「スタートレック」になったのが'79年で、その後、「スタートレックⅥ」まで作られましたが(新シリーズを含めると2009年までに11作映画化されている)、「Ⅲ・Ⅳ」をレナード・ニモイ、「Ⅴ」をカーク船長ことウィリアム・シャトナーが監督しています。
因みに、宇宙艦エンタープライズ号のカーク船長役のウィリアム・シャトナーも、'76年に「刑事コロンボ」の第38話「ルーサン警部の犯罪」に犯人役で出演しています(第63話「4時02分の銃声」でも再び犯人役を演じている)。
その「ルーサン警部の犯罪」は、本物の警部が犯罪を犯すわけではなく、テレビの人気ミステリ・シリーズで名警部役を演じている俳優が犯人であるという、あたかも「刑事コロンボ」を意識したかのような背景で、ウィリアム・シャトナー演じるところの犯人が「ルーサン警部」の立場からコロンボと一緒に事件の謎を解いていくという凝った設定ですが、事件そのものは余りに状況証拠が多すぎて、コロンボにとってはあまり難事件とは言えなかったかも。
最後に決め手となる物的証拠も、犯人の指紋の拭き忘れという凡ミスに拠るもので、強いて言えば、犯人が殺人を犯した自分自身とルーサン警部という架空のキャラクターとの区別がつかなくなっている(?)のが、
犯罪心理面での見所でしょうか。そうしたことも含め、レナード・ニモイの冷静な犯人像に比べると、ウィリアム・シャトナーのこのエピソードにおける犯人像はかなり弱々しく思えました(それにしても、ウィリアム・シャトナー、若いなあ)。
個人的には、「スタートレック」シリーズを劇場で観たのは「Ⅲ」くらいまでかなあ(「Ⅲ」では初代「宇宙大作戦」の原作者(生みの親)ジーン・ロッデンベリーが原作者としてクレジットされている)。「新スタートレック」 「スタートレック:ディープ・スペース・ナイン」といったTV版も一部ビデオで観たので、もう、どれがどれだか分らなくなってしまいましたが、作品の出来不出来はともかく、やはり最初に観た「Ⅰ」が印象に残りました(「ヴィジャー」って何かと思ったらそういうことだったのか、という衝撃があった)。
いずれにせよ、このTVシリーズと映画化作品が全米で絶大な人気を得たのは事実で、トレッキーまたはトレッカーと呼ばれる熱心なファンがアメリカのみならず世界中の宇宙関連事業関係者にも多いと言われています。そうした現象を逆手に取ってパロディ化したディーン・パリソット監督、ティム・アレン主演の「ギャラクシー・クエスト」('99年/米)というのもありました。20年前TVシリーズ「ギャラクシー・クエスト」で宇宙の英雄である「エンタープライズ号」ならぬ「プロテクター号」乗組員を演じて
人気を博すも、今は売れずにファンへのサイン会
やイベントを糧にして生活を送っていた俳優たちが、他の星の宇宙人の侵略に苦しむ中「ギャラクシー・クエスト」の電波を自星で受信し、架空のドラマだとは思わずに歴史ドキュメンタリーと信じて助けを求めてきた宇宙人たちによって実際の宇宙戦争に巻き込まれるという二重構造に、「スタートレック」のパロディを絡ませた三重構造の形を取っていて、なんだかオリジナルより面白かったような...。今思えば、当時「エイリアン4」('97年)までの出
演を終えたシガニー・ウィーバー(「
因みに、「溶ける糸」でメイフィールドに殺されてしまう優しく真面目な看護婦役のアン・フランシス(1930-2011)は、ロープウェイでのラストシーンが印象的な「刑事コロンボ」シリーズ第8話「
は、「
アン・フランシス&レスリー・ニールセン 「禁断の惑星」(1956)
「刑事コロンボ(第15話)/溶ける糸」●原題:A STITCH IN CRIME●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:ハイ・アヴァバック●製作:ディーン・ハーグローヴ●脚本:シャール・ヘンドリックス●ストーリー監修:ジャクソン・ギリス●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/レナード・ニモイ/ウィル・ギア/アン・フランシス/ニナ・タルボット/ジャレッド・マーティ/ヴィクター・ミラン/アニタ・コルシオ●日本公開:1973/10●放送:NHK-UHF(評価:★★★★)

「スタートレック」●原題:STAR TRECK●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ワイズ●製作:ジーン・ロッデンベリー●脚本:ハロルド・リヴィングストン/レナード・ニモイ●撮影:リチャード・H・クライン
アン/ウォルター・ ケーニッグ/ジョージ・タケイ/パーシス・カンバータ/スティーブン・コリンズ/メイジェル・バレット/ニシェル・ニコラス●日本公開:1980/07●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:渋谷パンテオン(80-07-14)●2回目:大井ロマン(85-02-09)(評価:★★★☆)●併映(2回目):「スター・トレック2 カーンの逆襲」(ニコラス・メイヤー)/「スター・トレック3 ミスター・スポックを探せ!」(レナード・ニモイ) 

「スタートレックII カーンの逆襲」●原題:STAR TREAK 2 THE WRATHOF KHAN●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ニコラス・メイヤー●製作:ロバート・サリン●脚本:ジャック・B・ソワーズ/ニコラス・メイヤー●撮影:ゲイン・レシャー●音楽:ジェームズ・ホーナー●時間:113分/117分(ディレクターズ・カット版)●出演:ウィリアム・シャトナー/レナード・ニモイ/デフォレスト・ケ
リー/ジェームズ・ドゥーアン/ニシェル・ニコルズン/ジョージ・タケイ/ウォルター・ケーニッグ/ビビ・ベッシュ/メリット・バトリック/カースティ・アレイ/ポール・ウィンフィールド/リカルド・モンタルバン/ジャドスン・スコット/ジョン・ウィンストン●日本公開:1983/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:大井ロマン(85-02-09)(評価:★★★)●併映:「スター・トレック」(ロバート・ワイズ)/「スター・トレック3 ミスター・スポックを探せ!」(レナード・ニモイ)

「スタートレックⅢ ミスター・スポックを探せ!」●原題:STAR TREAK 3 THE SEARCH FOR SPOCK●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:レナード・ニモイ●製作:ロバート・サリン●脚本:ジャック・B・ソワーズ/ニコラス・メイヤー●撮影:チャールズ・コレル●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:ジーン・ロッデンベリー●時間:105分●出演:ウィリアム・シャトナー/レナード・ニモイ/デフォレスト・ケリー/ジェームズ・ドゥーアン/ニシェル・ニコルズン/ジョージ・タケイ/ウォルター・ケーニッグ/メリット・バトリック/ロビン・カーティス/クリストファー・ロイド/マーク・レナード/デイム・ジュデ
ィス・アンダーソン/キャシー・シリフ/ロバート・フックス/フィリップ・R・アレン/ジェームズ・B・シッキング/ジョン・ラロケット/ティーヴン・リスカ/ポール・ソレンセン/フィル・モリス/ミゲル・フェラー●日本公開:1984/06●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:大井ロマン(85-02-09)(評価:★★★)●併映:「スター・トレック」(ロバート・ワイズ)/「スター・トレック2 カーンの逆襲」(ニコラス・メイヤー)



「ギャラクシー・クエスト」●原題:GALAXY QUEST●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督:ディーン・パリソット●製作:マーク・ジョンソン/チャールズ・ニューワース●脚本:デビッド・ハワード/ロバート・ゴードン●撮影:イェジー・ジェリンスキー●音楽:デヴィッド・ニューマン●時間:102分●出演:ティム・アレン/シガニー・ウィーバー/アラン・リックマン/トニー・シャルーブ/サム・ロックウェル/ダリル・ミッチェル/エンリコ・コラントーニ/パトリック・ブリーン/ミッシー・パイル/ジャスティン・ロング/ロビン・サックス/ジェド・リース/ジェレミー・ハワード/ケイトリン・カラム/ジョナサン・フェイヤー●日本公開:2000/01●配給:ユナイテッド・インターナショナル・ピクチャーズ(評価:★★★★)






アダムス機長を演じたレスリー・ニールセンが昨年('10年)11月に亡くなった(享年84)のに続いて、アルティラを演じたアン・フランシスも今年('11年)1月に亡くなり(享年80)、寂しい限りです。TV番組「ハニーにおまかせ」('56年~)の私立探偵役のアン・フランシスも、「裸の銃(ガン)を持つ男」('86年)のレスリー・ニールセンも、この映画では2人とも20代でしょうか。この作品を観ると、永遠に2人とも若いままでいるような錯覚に陥ります。
「禁断の惑星」がシェイクスピアの「テンペスト」を下敷きにしていることはよく知られていて、最初に劇場(名画座ミラノ、すでに「名画座料金」ではなくなっていた)で観た時も、同時期の作品「宇宙水爆戦」('55年)などに比べてよく出来ているように思いました。
「宇宙水爆戦」の方は結構キッチュ趣味と言えるかも。惑星間戦争で絶滅の危機にある星の異星人の科学者が、地球の科学者に協力を依頼するが、実はその星の指導者は地球を支配して移り住むことを企んでいた―というストーリーですが、最後、事件が一見落着したかと思ったら、宇宙船内に潜んでいた宇宙昆虫人間みたいなミュータントに襲われそうになるという―このとってつけたように出現するミュータントがポスターなどではメインになっていて、それだけストーリーは印象に残らないといことでしょうか。ストーリー的にも怪物キャラクター的にも、当時流行ったSFパルプマガジンの影響を強く受けているようです(そのこともキッチュ感に繋がる要因か。でもこのキッチュ感こそが、この作品の根強い人気の秘密かも)。
一方、「禁断の惑星」に出てくる有名キャラクターは万能ロボット「ロビー」で、これを参照したのが60年代に作られたテレビ番組「宇宙家族ロビンソン」に出てくるロボット(愛称:フライデー)だったりし、先駆的な要素も結構あったわけです(「宇宙家族ロビンソン」には外にも「宇宙水爆戦」も参考にしている箇所が幾つかある)。
因みに、このロボットは、「刑事コロンボ」の第23話「愛情の計算」('74年)にも"ゲスト出演"して
おり(下半身の造りが二本脚から台座型に変わっている)、人工知能研所の所長である犯人のアリバイ作りに一役買っていますが、ロボットのキー・ボードを叩く手つきの大雑把さを見ると、ちょっと所長の代役をさせるには無理な感じも。
(こちらは娘を庇ってだが)使われましたが、真犯人ではないと分かっていながら拘束するのはいかがなものでしょうか(「恋におちたコロンボ」の脚本はピーター・フォーク自身が手掛けている)。但し、フェイ・ダナウェイの演技力はさすが。70年代のシリーズ作に比べ見劣りがする90年代のシリーズ作(特に後期作品)の中では、ひときわ映える名犯人役と言っていいのではないでしょうか。



をはじめフセイン大統領、ホメイニなど様々な人物をコケにし、「裸の銃を持つ男PART2 1/2」('88年)では当時のアメリカ大統領
ジョージ・ブッシュをコケにしています。「裸の銃を持つ男PART33 1/3 最後の侮辱」('94年)までプリシラ・プレスリー、ジョージ・ケネディ、O・J・シンプソンという共演トリオは変わらず和気藹々といった雰囲気でしたが、O・J・シ
ンプソンは'94年に発生した元妻の殺害事件(「O・J・シンプソン事件」)の被疑者となってしまいました(刑事裁判で殺人を否定する無罪判決となったが、民事裁判では殺人を認定する判決が下った)。
「禁断の惑星」という作品は、ストーリーも凝っているように思われ、「テンペスト」をなぞるだけでなく、「イドの怪物」という精神分析的な味付けがされていて、ファーザー・コンプレックスがモチーフになっているように、フロイディズムの影響も濃く滲んでいます。
ている彼の演技とは全く異なる演技をしているし(昔の怪獣映画の宝田明や夏木陽介の感じ、乃至は、背景も含めると「キャプテンウルトラ」('67年)の中田博久の方がより近いか)、いろいろと見所が多い作品です(「なぜウチの中にビオトープがあるのか?」とか、突っ込み所も含めて)。
尚「キャプテンウルトラ」にも、「宇宙警察パトロール隊」と共に「宇宙船シュピーゲル号」(なぜか「鏡」を意味するドイツの有名週刊誌の名前)に乗り込み、バンデル星人や怪獣たちと戦い続ける万能ロボット「ハック」が登場しますが、こちらは「ゴジラ」以来の日本の"伝統"か(この番組の制作
会社は東映)、着ぐるみっぽいロボットでした。このシリーズは、脚本が番組放送に追いつかなくなった「ウルトラマン」と、その後継番組として構想されていた「ウルトラセブン」との間の所謂「つなぎシリーズ」だったので、書割りのような背景からも察せられる通り、番組制作予算は限られていたようです。その後ウルトラ・シリーズでお決まりとなる"紅一点"の女性隊員は、ここでは「アカネ隊員」ですが、「ウルトラマン」で桜井浩子が演じた「フジ・アキコ隊員」、「ウルトラセブン」で菱見百合子が演じた「アンヌ隊員」と並んで、この「キャプテンウルトラ」で城野ゆきが演じた「アカネ隊員」も、今も
って人気があるようです。いわばフジ・アキコ隊員の後輩格、アンヌ隊員の先輩格になりますが、アカネ隊員は紅一点と言うより"準主役"と言った方がいいかも。アカネ隊員は番組の最初から準主役級でいたわけでなく、レギュラーメンバーだった「キケロ星人ジョー」(演じていたのは無名時代の
SFパルプマガジン風ファッション
万能ロボット・ロビー登場







●原案:ロバート・スペクト●音楽:ディック・デ・ベネディクティス●時間:74分●出演:ピーター・フォーク/ホセ・ファーラー/ロバート・ウォーカー/ジェシカ・ウォルター/リュー・エヤーズ/リー・H・モンゴメリー/アーサー・バタニデス/ジョン・ザレンバ/ウィリアム・ブライアント/ルー・ワグナー/バート・ホランド●日本公開:1974/08●放送:NHK総合(評価:★★★)「
「新・刑事コロンボ/恋におちたコ

「裸の銃(ガン)を持つ男」●原題:THE NAKED GUN:FROM THE FILES OF POLICE SQUAD!●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・ザッカー●製作:ロバート・K・ウェイス●脚本:ジェリー・ザッカー/ジム・エイブラハムズ/デヴィッド・ザッカー/パット・プロフト●撮影:ロバート・スティーヴンス●音楽:アイラ・ニューボーン●時間:85分●出演:レスリー・ニールセン/プリシラ・プレスリー/ジョージ・ケネディ/O・J・シンプソン/リカルド・モンタルバン/ナンシー・マルシャン●配給:UIP映画配給●日本公開:1989/04(評価:★★★☆) 


「キャプテンウルトラ(第9話)/怪生物バンデルエッグあらわる」●制作年:1967年●監督:加島昭●脚本:鈴木良武/伊東恒久●音楽:冨田勲●時間:92 分●出演:中田博久
/小林稔侍/城野ゆき/伊沢一郎/安中滋/佐川二郎/桐島好夫/川田信一/(以下、非レギュラー)八名信夫/三重街恒二/大槻憲/木内博之/比良元高●放送局:TBS●放送日:1967/06/11(評価:★★★)


城野ゆき(アカネ隊員)






農民が地主の横暴に苦し
められた19世紀末のアイルランド、農夫ジョセフ(トム・クルーズ)の父も、厳しい地代の取立ての混乱で事故死する。更に地主の配下に家を焼かれ、怒ったジョセフは地主を射殺しようと地主邸に向かうが失敗、銃の暴発のため負傷し、復
讐相手の邸で介抱を受けるという間抜けな結果となる。そこには、放火の張本人で地主令嬢と結婚を図るスティーブン(トーマス・ギブソン)がいて、ジョセフは彼を襲うも再度失敗し、彼と決闘させられることに。そこへ、実はスティーブンのお高くとまった性格が嫌いで、堅苦しい生活を捨てアメリカ行きを望む地主令嬢のシャノン(ニコール・キッドマン)が現れ、ジョセフを攫うように連れ去り、二人のアメリカ行きの旅が始まる―。
アイルランド系移民の苦労を描いたロン・ハワード監督の'92年作品で、トム・クルーズとニコール・キッドマンが仲良かった頃、と言うか、結婚したての頃の作品ですが、映画の中に出てくる「オクラホマ・ランドラッシュ」というのが印象深かったです。
1889年4月22日の正午を境にオクラホマへの白人の入植が認められた。同年同月日には15ドルの入植手続き料を支払った人々がオクラホマとの境界に集まり、正午を告げる号砲が鳴ると一斉にオクラホマへと乗り込んでいった。彼らは一人当たり160エーカー(65ヘクタール)の土地を手に入れることができた――これは、新大陸のフロンティア時代の入植者に土地を無料で配るというもので、移民たちが白線に並んで「用意ドン!」で駆けっこして、ここからここまでは自分の土地だと主張した範囲の土地が与えられるというスゴイものなのですが(当然、そこで醜い争いも生じる)、お嬢さんだが気が強いシャノンと、自分の土地を得るにはこの方法しかないと考えるジョセフは、このレースに参加する―。
ロン・ハワードにはアイルランド人の血が流れていて、祖先にはこのオクラホマのランド・ラッシュに実際に参加した人もいたとのことで、随分前からこの映画の構想は練っていたそうです。ニコール・キッドマンをヒロインに想定していたところに、トム・クルーズが出演の名乗りを上げたそうですが、ロン・ハワードは当時二人が交際していることを知らなかったそうです。因みに、トム・クルーズ自身にもアイルランド人の血が流れています。
2人ともいい演技をしています。特に、上流意識を持ち、気位が高いながらも、ボディガード代わりに連れてきたトム・クルーズに内心では惹かれていくニコール・キッドマンの演技がいい(トム・クルーズはこの映画の随所で、状況の急な変化に振り回される、三枚目的な味を出している)。
移民たちが駆けっこして奪い合っている土地は、元々は北米原住民のものであるはずという批判的な見方も出来ますが、この映画が日本でも本国でもあまりヒットしなかったことを思うと、もう少し注目されても良かったのでないかと。ロン・ハワードは両親とも俳優だったので、子役の頃から多くのテレビドラマや映画に出演していましたが(「

一方のトム・クルーズは、それ以前に「トップガン」('86年)で一躍世界的なスターになっていたわけで、日本でもこの映画は大ヒットしました。まあ、米海軍が協力を惜しまない "USネイビィのリクルート戦略"の一環のような映画でした。「
ヴァル・キルマー、メグ・ライアン、ティム・ロビンスら若手俳優の出世作としても知られ、「ER 緊急救命室」の"グリーン先生"ことアンソニー・エドワーズがトム・クルーズの同僚パイロット役で出てましたが、出ていた記憶が薄いのはまだ髪の毛が濃かったせいでしょうか。ともかく、トム・クルーズ人気を一気に高めた作品であって、その分だけ相対的に他の俳優の影が薄い? 後になって、あの人も出ていた、この人も出ていたと言われる映画です(当時まだ皆さほど名が知れてなかったということもあるが)。
トム・クルーズの当時の人気はすさまじく、その勢いで「トップガン」と同年にマーティン・スコセッシ監督の「ハスラー2」('86年)に出演、翌々年にはロジャー・ドナルドソン監督の「カクテル」('88年)、バリー・レヴィンソン監督の「
ューマンに初のアカデミー主演男優賞をもたらし、ダスティン・ホフマンと共演した「レインマン」は第61回アカデミー賞と第46回ゴールデングローブ賞(ドラマ部門)、さらに第39回ベルリン国際映画祭においてそれぞれ作品賞を受賞しました。一方、トム・クルーズのスマイルと、フレアバーテンディングによるカクテル作りの派手なパフォーマンスでヒットを博した「カクテル」は、(一応"原作"はあるようだが)完全なトム・クルーズ・ファンのためのアイドル映画でした。これ、ビデオパーティで観た(90-04-01)のですが(自分で選んではいない)、当時の日本のバブリーな雰囲気にマッチしていた面もあったかも。

ケリー・マクギリスは1982年に映画デビューしていますが、彼女を一躍有名にしたのは、ハリソン・フォードと共演し、アーミッシュの女性を演じた「刑事ジョン・ブック 目撃者」('85年)でしょう(これも知人宅でのビデオパーティで観た(89-05-03))。ハリソン・フォード演じる警察の不正を知ったために警察に追われること
になった刑事が主人公で、警察を舞台にした犯罪サスペンスかと思ったら、そのジョン・ブック刑事が匿われたアーミッシュの村の暮らしぶり(と言うより、アーミッシュの人々の考え方)が描かれていて、ある種カルチャーショック映画のようになっていました。ハリソン・フォードはアカデミー主演男優賞にノミネートされましたが、来日した時に、今まで出演した中で一番印象に残っている作品として、この「刑事ジョン・ブック 目撃者」を挙げていました。この作品でのハリソン・フォードの演技の延長上に、後の「
ました。女性がアレクサンドル・ゴドゥノフ演じる許嫁候補(?)と仮に結婚したとしても、ずっとジョン・ブックのことを思い続けるのでしょう(「シェーン」にも同じことが言えるが、旦那または許
嫁は"立場ない"なあ)。それにしてもケリー・マクギリス、最初の主演作がハリソン・フォードの相手役で、次がトム・クルーズの相手役であったわけで、当時の圧倒的な美貌のせいもあってか、キャリアの最初の方がとりわけ華々しかったです。
(●2022年にジョセフ・コジンスキー監督による「トップガン マーヴェリック」('22年/米)が公開され
た。「トップガン」から36年ぶりの続編で、トム・クルーズが前回同様マーヴェリック役を演じ、米海軍パイロットのエリート養成学校、通称"トップガン"に教官として戻ってくることになるも、結局、自らチームを率いて敵地へウラン濃縮施設撃破のために飛ぶことになるというもの。トム・クルーズは60歳で頑張っているなあという感じで、映画もヒットしているようだ。日本でも世代を問わず絶賛する声が多い。ただ、前作と異なり、映画評論家までが褒めていたりするのには違和感を感じる。俳優のミッキー・ロークが、トム・クルーズが「トップガン マーヴェリック」で米国
で興行収入1位になったことについてどう思うかとの質問に、「あいつは35年間あんな同じ役を演じてるんだ。尊敬に値しないね」と言っており、そちらの方がまともなマトモな見方とも言える。ヒロイン役はジェニファー・コネリー(51歳)。ケリー・マクギリスは、自分のところには出演オファーが無かったと言っている(笑)。気になったのはストーリーで、教官が部下を救い、今度は部下が教官を救うという話は美しいが、敵地に不時着して、"たまたま近くあった"敵の戦闘機を強奪して帰還するというのはあまりに話が出来過ぎているように思った。かつて、クリント・イーストウッドが監督・主演した「ファイヤーフォックス」('82年)で、イーストウ

ッド演じる元米空軍パイロットがNATOの秘密ミッションでソ連に潜入し、最新鋭戦闘機「MiG-31 ファイヤーフォックス」を盗み出すという映画があったが、あれは最初から周到な計画のもとに敵地に潜入しているわけであって、しかも、
当時の〈東西冷戦〉状況を背景としているとはいえ戦闘機自体はパイロットの意志を感知してオートマチックに敵を攻撃する機能を搭載しているといった半ばSF仕立てでもあった(この機能は実際に研究されているが、まだ実現していない)。苦心惨憺の末に敵戦闘機に辿り着いたイーストウッドとの比較でみると、トム・クルーズの、不時着した付近にたまたま敵の戦闘機があったというのは、あまりにご都合主義的な話だったように思う。
「トップガン マーヴェリック」には、トム・クルーズが前作と同じ"マーヴェリック"役で出ているほかに、ヴァル・キルマーが前作と同じ"アイスマン"役で出ていて、個人的には「
「遥かなる大地へ」●原題:FAR AND AWAY●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:ブライアン・グレイザー/ロン・ハワード●脚本:ボブ・ドルマン●撮影:ミカエル・サロモン●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:140分●出演:トム・クルーズ/ニコール・キッドマン/トーマス・ギブソン/バーバラ・バブコック/シリル・キューザック/ロバート・プロスキー/コルム・ミーニー/アイリーン・ポロック/ミシェル・ジョンソン/ダグラス・ジリソン/ウェイン・グレイス/バリー・マクガヴァン●日本公開:1992/07●配給:ユニヴァーサル映画=UIP(評価:★★★☆)
「トップガン」●原題:TOP GUN●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:トニー・スコット●製作:ドン・シンプソン/ジェリー・ブラッカイマー●脚本:ジム・キャッシュ/ジャック・エップス・Jr●撮影:ジェフリー・キンボール●音楽:ハロルド・ファルターメイヤー/ジョルジオ・モロダー●時間:110分●出演:トム・クルーズ/ケリー・マクギリス/ヴァル・キルマー/アンソニー・エドワーズ/トム・スケリット/マイケル・ アイアンサイド/ジョン・ストックウェル/リック・ロソビ
「カクテル」●原題:COCKTALEN●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロジャー・ドナルドソン●製作:テッド・フィールド/ロバート・W・コート●脚本:ヘイウッド・グールド●撮影:ディーン・セムラー●音楽:ピーター・ロビンソン(主題歌:ザ・ビーチ・ボーイズ「ココモ」)●原作:ヘイウッド・グールド●時間:104分●出演:トム・クルーズ/ブライアン・ブラウン/エリザベス・シュー/ケリー・リンチ●日本公開:1989/03●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★)

「刑事ジョン・ブック 目撃者」●原題:WITNESS●制作年:1985年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・ウィアー●製作:エドワード・S・フェルドマン●脚本:ウィリアム・ケリー/アール・W・ウォレス●撮影:ジョン・シール●音楽:モーリス・ジャール●時間:113分●出演:ハリソン・フォード/ケリー・マクギリス/ルーカス・ハース/ジョセフ・ソマー/ダニー・グローヴァー/ヤン・ルーベス/アレクサンドル・ゴドゥノフ/パティ・ルポーン/ブレント・ジェニングス/アンガス・マッキネス/フレデリック・ロルフ/ヴィゴ・モーテンセン●日本公開:1985/06●配給:UIP(評価:★★★☆)
「トップガン マーヴェリック」●原題:TOP GUN: MAVERICK●制作年:2022年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ
・コシンスキー●製作:ジェリー・ブラッカイマー/トム・クルーズ/クリストファー・マッカリ
ー/デヴィッド・エリソン●脚本:アーレン・クルーガー/エリック・ウォーレン・シンガー/クリストファー・マッカリー●撮影:クラウディオ・ミランダ●音楽:ハロルド・フォルターメイヤー/レディー・ガガ/ハンス・ジマー●時間:131分●出演:トム・クルーズ/マイルズ・テラー/ジェニファー・コネリー/ジョン・ハム/グレン・パウエル/ルイス・プルマン/エド・ハリス/ヴァル・キルマー●日本公開:2022/05●配給:東和ピクチャーズ●最初に観た場所:TOHOシネマズ上野(スクリーン2)(22-07-12)(評価:★★☆)




二子東急 1957年9月30日 開館(「二子玉川園」(1985年3月閉園)そば) 1991(平成3)年1月15日閉館 

主役を食ったロバート・デ・ニーロ、映画を食ってしまったショーン・ペン。



「ミーン・ストリート」('73年/米)は、マーティン・スコセッシ 監督の初期の映画で、しがないヤクザ者のチャーリー(ハーヴェイ・カイテル)が、組織に対する忠誠心や自分の生き方に自信を持てないでいる一方、気分によって仕事をし、酒・博打・女による借金で首が回らなくなっている親友のジョニーボーイ(ロバート・デニーロ)をかばい続けるがばかりに、共に窮地に追い詰められていく―という話。
本来の主役はハーヴェイ・カイテルであり、親友を巡って葛藤する青年を見事に演じているのですが、それを凌いでいるのが、ジョニーボーイという無頼のキャラクターを演じているロバート・デ・ニーロ(当時29歳)の演技で、そのハチャメチャぶりと破滅型人格の底に滲む哀感には、当時スゴい役者が現れたものだと思わせるものがあったのではないでしょうか。
「初体験/リッジモント・ハイ」('82年/米)は(故・伊藤計劃の『
てきた)、アメリカの高校生達の恋と青春を描いた作品で、当時人気のフィービー・ケイツ(Phoebe Cates、中
学生のようなルックスと大学生のような肉体の持ち主である彼女には、ロシア系、中国系などの血が混ざっている)を中心に据えたアイドル映画ですが(ストーリー上の主人公はジェニファー・ジェイソン・リーJennifer Jason Leigh)、学生になりすまして母校リッジモント・ハイに潜入し若者たちの生態を観察したキャメロン・クロウの同名原作が元になっており、高校生の実態を世の大人たちに知らしめる啓蒙的意図を持った作品でもあったようです。

フィービー・ケイツはこの作品の2年後、ジョー・ダンテ監督の「グレムリン」('84年/米)に主演し、日本でもその年(昭和59年)のクリスマス映画として公開されましたが大ヒットし(そもそも"モグワイ"という珍獣は、クリスマス・プレゼントだった。どうして
フィービー・ケイツが日本でホントにブレイクしたのは、やはり「グレムリン」ではないでしょうか。個人的には、この「初体験/リッジモント・ハイ」を観て最も印象に残ったのは、教室内の不良少年の1人で、その悪ガキぶりは演技を超えて本物の不良に見え、しかも、本当に少しキレてしまっているような感じさえありました。この不良少年を演じたのがショーン・ペンで(Sean Penn、当時22歳と高校生役にしては結構老けていた)、ちょっと狂った若者を映画に出させたわけではなく、やはり類稀なる演技力の賜物だったのだと、後で思いました(前年の「タップス」('81年/米)にも出ていたらしいが、坊主頭のトム・クルーズ(当時19歳)の方が印象深い)。
その後、ショーン・ペンの方は、デ・ニーロを超える2度のアカデミー主演男優賞を受賞するまでの俳優になっていますが、「リッジモント・ハイ」に関して言えば、こんなたわいもないアイドル映画(乃至は"啓蒙映画")の中に置くにはあまりに"規格外"な存在であり、作品そのものの予定調和を掻き乱し、結果として映画そのものを食ってしまったという印象があります。
映画公開時は準主役というより脇役に近かったと思いますが(ポスターの右上に小さく写真が出ているだけ)、最近のDVDカバーなどでは彼の写真が前面に使われていて、「無名時代のショーン・ペンを観ることが出来る作品」というのがウリになっているのかも(売り出し前のニコラス・ケイジやフォレスト・ウィッテカー、後の「ER」のグリーン先生ことアンソニー・エドワーズなども高校生役で出ている)。
「ミーン・ストリート」●原題:MEAN STREETS●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:マーティン・スコセッシ/ジョナサン・T・タプリン●脚本:マーティン・スコセッシ/マーディック・マーティン●撮影:ケント・ウェイクフォード●時
間:115分●出演:ロバート・デ・ニーロ/ハーヴェイ・カイテル/デヴィッド・プローヴァル/エイミー・ロビンソン/ロバート・キャラダイン/デヴィッド・キャラダイン/リチャード・ロマナス●日本公開:1980/11●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(81-03-18)(評価:★★★★)●併映「アリスの恋」(マーティン・スコセッシ)
「初体験/リッジモント・ハイ」●原題:FAST TIMES AT RIDGEMONT HIGH●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:エイミー・ヘッカーリング●製作:アート・リンソン/アーヴィング・エイゾフ●脚本:キャメロン・クロウ●撮影:マシュー・F・レオネッティ●音楽:アーヴィング・エイゾフ●原作:キャメロン・クロウ●時間:90分●出演:ジェニファー・ジェイソン・リー/フィービー・ケイツ/ショーン・ペン/ジャッジ・ラインホールド/ニコラス・コッポラ/ニコラス・ケイジ/フォレスト・ウィッテカー/ブライア
ン・ベッカー/ヴィンゼント・スキャベリ/アンソニー・エドワーズ/エリック・ストルツ●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:中
野武蔵野館(83-07-02)(評価:★★☆)●併映「マイ・ライバル」(ロバート・タウン) 
「グレムリン」●原題:GREMLINS●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:ジョー・ダンテ●製作:マイケル・フィネル●脚本:クリス・コロンバス●撮影:ジョン・ホラ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:106分●出演:ザック・ギャリガン/フィービー・ケイツ/ホイト・アクストン/フランシス・リー・マッケイン/ポリー・ホリデイ/コリー・フェルドマン●日本公開:1984/12●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(84-12-29)(評価:★★★)





'99年にフィリップ・ノイス監督により映画化されましたが、リンカーン・ライム役がデンゼル・ワシントンということで、白人から黒人になったということはともかく、原作のライムの苦悩や気難しさなどが、優等生的なデンゼル・ワシントンが演じることで薄まっている感じがし、アメリア・ドナヒュー(原作ではアメリア・サックス)役の アンジェリーナ・ジョリーも、この映画に関しては演技の評価は高かったようですが、個人的には、ちょっと原作のイメージと違うなあという感じ。
このアンジェリーナ・ジョリーという女優は、演技派と言うより肉体派では?と、実父ジョン・ヴォイトと共演し、役柄の上でも父と娘の関係の役だった「トゥームレイダー」('01年)などでも思ったのですが、「トゥームレイダー」は、世界中で大ヒットしたTVアクション・ゲームの映画版で、タフで女性トレジャー・ハンターが、惑星直列によって強大な力を発揮するという秘宝を巡って、その秘宝を狙う秘密結社と争奪戦を繰り広げるもの(インディ・ジョーンズの女性版?)。ストーリー
も役者の演技もしょぼく、アンジェリーナ・ジョリーのアクロバティックなアクションだけが印象に残った作品(アンジェリーナ・ジョリー自身が、脚本を最初に読んだ時、主人公を「超ミニのホット・パンツをはいたバカ女」と評して脚本家と口論となった)。この作品で彼女は、ゴールデンラズベリー賞の「最低主演女優賞」にノミネートされたりもしていますが、最近では、クリント・イーストウッド監督の「チェンジリング」('08年)でアカデミー主演女優賞にノミネートされたりもしています。
「ボーン・コレクター」●原題:THE BONE COLLECTOR●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督:フィリップ・ノイス●製作:マーティン・ブレグマン/マイケル・ブレグマン/ルイス・A・ストローラー●脚本:ジェレミー・アイアコーン/ジェフリー・ディーヴァー●音楽:クレイグ・アームストロング●原作:ジェフリー・ディーヴァー●時間:118分●出演:デンゼル・ワシントン/アンジェリーナ・ジョリー/クィーン・ラティファ/エド・オニール/マイク・マッグローン/リーランド・オーサー/ルイス・ガスマン●日本公開:2000/04●配給:ソニー・ピクチャーズ(評価:★★☆)
「トゥームレイダー」●原題:TOMB RAIDER●制作年:2001年●制作国:アメリカ●監督:サイモン・ウェスト●製作:ローレンス・ゴードン/ロイド・レヴィン/コリン・ウィルソン●脚本:パトリック・マセット/ジョン・ジンマン●撮影:ピーター・メンジース・Jr●音楽:BT●時間:100
ア分●出演:アンジェリーナ・ジョリー/ジョン・ヴォイト/イン・グレン/ダニエル・クレイグ/レスリー・フィリップス/ノア・テイラー/レイチェル・アップルトン/クリス・バリー/ジュリアン・リンド=タット/リチャード・ジョンソン●日本公開:2001/06●配給/東宝東和(評価★★)






日本人が聖書を読んでよく引っ掛かるのが「奇跡」に関することですが、著者は、「奇跡」と「異象(異常な現象)」とは別であり、現象として信仰の有無に関係なく、誰にも認識できるものは(現象化されたもの)は「奇跡」ではなく「異常な現象」であり、「奇跡」とは認識の対象ではなく、現象の背後にあるものに対する信仰の対象であるとしていて、こうした見方を通して、処女降臨やキリストの復活をどう読むかが、分かり易く解説されています。


この物語は、セシル・B・デミル監督により「サムソンとデリラ」('49年/米)という映画作品になっていて、ジョン・フォード監督の「荒野の決闘」('46年/米)でドク・ホリデイを演じたヴィクター・マチュア(1913-1999)が主演しました。往々にして怪力男は純粋というか単純というか、デリ
ラのような悪女にコロっと騙されるというパターナルな話であり(アブラハム、サラ、ハガルの三角関係同様に?)、全体にややダルい感じがしなくも無いけれど、ヴィクター・マチュアの"コナン時代"のアーノルド・シュワルツネッガーのようなマッチョぶりは様になっていました。最後の方で、髪を切られて怪力を失ったサムソンが囚われの身となり神に嘆願するシーンはストレートに胸をうち、ラストの神から力を得て大寺院を崩壊させるスペクタルシーンは圧巻、それまで結構だらだら観ていたのに、最後ばかりは思わず力が入り、また、泣けました(カタルシスだけで終わってはマズイいんだろうけれど・・・。と言って、勝手にストーリーを変えたりすることも出来ないだろうし、聖書の物語の映像化は案外と難しい?)
これ、オペラにもなっていて、カミーユ・サン=サーンスが作曲したテーマ曲はフィギアスケートの安藤美姫選手が以前SP(ショート・プログラム)で使っていましたが、その時の衣装もこの物語をイメージしたものなのかなあ。
とデリラ」●原題:SAMSON AND DELILAH●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督・製作:セシル・B・デミル●脚本:ジェシー・L・ラスキー・ジュニア/フレドリック・M・フランク●撮影:ジョージ・バーンズ●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ハロルド・ラム●時間:128分●出演:ヴィクター・マチュア/ヘディ・ラマー/ジョージ・サンダース/アンジェラ・ランズベリー/ヘンリー・ウィルコクスン●日本公開:1952/02●配給:パラマウント日本支社(評価:★★★☆)
「奇跡」●原題:ORDET●制作年:1955年●制作国:デンマーク●監督・脚本:カール・テオドア・ドライヤー●製作:エーリク・ニールセン●撮影:ヘニング・ベンツセン●音楽:ポール・シーアベック●原作:カイ・ムンク ●時間:126分●出演:プレベン・レアドーフ・リュエ/ヘンリック・マルベア/ビアギッテ・フェザースピール/カイ・クリスチアンセン/エーミール・ハス・クリステンセン●日本公開:1979/02●配給:フランス映画社●最初に観た場所:岩波ホール (79-02-27) (評価:★★★★)



中国の著名な映画監督チェン・カイコー(陳凱歌、1952年生まれ)が、60年代半ばから70年代初頭の「文化大革命」の嵐の中で過ごした自らの少年時代から青年時代にかけてを記したもので、「文革」というイデオロギー至上主義、毛沢東崇拝が、人々の人間性をいかに踏みにじったか、その凄まじさが、少年だった著者の目を通して具体的に伝わってくる内容です。
著者の父親も映画人でしたが、国民党入党歴があったために共産党に拘禁され、一方、当時の共産党員幹部、知識人の子弟の多くがそうしたように、著者自身も「紅衛兵」となり、「毛沢東の良い子」になろうとします(そうしないと身が危険だから)。
結果的には「農民から学んだ」とも言える著者ですが、17年後に映画撮影のため同地を再訪し、その時撮られたのが監督デビュー作である「黄色い大地」('84年)で、撮影はチャン・イーモウ(

その前月にシネヴィヴァン六本木で観た台湾映画「童年往時 時の流れ」('85年/台湾)は、中国で生まれ、一家とともに台湾へ移住した"アハ"少年の青春を描いたホウ・シャオシェン(
劇を描いたもので、台湾の3監督によるオムニバス映画の内の1小品。他の2本も台湾の庶民の日常を描いて、お金こそかかっていませんが、何れもハイレベルの出来でした。


一方、チェン・カイコー(陳凱歌)監督の名が日本でも広く知られるようになったのは、もっと後の、
(●2023年10月12日、シネマート新宿にて4K修復版を鑑賞(劇場で観るのは初)。張國榮(レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)が一人の男を巡って恋敵となるという、ある意味"空前絶後"的映画だったと改めて思った。)
中国は今月('09年10月1日)建国60周年を迎え、しかし今も、共産党の内部では熾烈な権力抗争が続いて(このことは、清水美和氏の『「中国問題」の内幕』('08年/ちくま新書)に詳しい)、一方で、ここのところの世界的な経済危機にも関わらず、高い経済成長率を維持していますが(GDPは間もなく日本を抜いて世界第2位となる)、今や経済界のリーダーとなっている人達の中にも文革や下放を経験した人は多くいるでしょう。記念式典パレードで一際目立っていたのが毛沢東と鄧小平の肖像画で、「改革解放30年」というキャッチコピーは鄧小平への称賛ともとれます(因みに、このパレードの演出を担当したのもチャン・イーモウ)。
「童年往時/時の流れ」●原題:童年往来事 THE TIME TO LIVE AND THE TIME TO DIE●制作年:1985年●制作国:台湾●監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)●製作:徐国良(シュ・クオリヤン)●脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェン






CONCUBI●制作年:1993年●制作国:香港●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:徐淋/徐杰/陳凱歌/孫慧婢●脚本:李碧華/盧葦●撮影:顧長衛●音楽:趙季平(ヂャオ・ジーピン)●原作:李碧華(リー・ビーファー)●時間:172分●出演:張國榮(レスリー・チャン)/張豊毅(チャン・フォンイー)/鞏俐(コン・リー)/呂齊(リゥ・ツァイ)/葛優(グォ・ヨウ)/黄斐(ファン・フェイ)/童弟(トン・ディー)/英達(イン・ダー)●日本公開:1994/02●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画(評価:★★★★☆)●最初に観た場所(再見)[4K版]:シネマート新宿(23-10-12)


鞏俐(コン・リー)in「さらば、わが愛 覇王別姫」(1993年・



著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。









アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。


ならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。.jpg)

24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。
「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)
⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)


「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラーナー●撮影:アルフレッド・
ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)


![バンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpg](/book-movie/archives/バンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpg)
落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。
「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。
衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。
ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。「タワーリング・インフェルノ」 ('74年)ではその演技が高評価を受け、アカデミー助演男優賞にノミネートされた。
「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:ス
タンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー)
⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
れる自然が満喫できる島だった)。著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろしいくらい青い(カラーフィルターのせいか? フィルターの色が濃すぎて技術的に失敗しているとみる人もいるようだ)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。



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B級映画俳優のジェイク(クレイグ・ワッソン)は、ドラキュラ映画の主演で棺に入るシーンで閉所恐怖症の発作を起こしてクビになり、失意のまま帰宅したところ、同棲中の恋人が男と情事にふけっているという散々な有様。家は彼女のものであり、意気消沈のまま家を出た彼は、あるオーディション会場で、サム(グレッグ・ヘンリー)という男と知り合い彼の家へ招かれる。そこはモ
ダンな豪邸で、サムはジェイクに留守中の家の管理を頼むとともに、望遠鏡越しに見える魅惑的な隣人(デボラ・シェルトン)の存在を教える―。
ブライアン・デ・パルマ監督の同系統のサスペンス作品では「殺しのドレス」('80年)が知られてますが、確かに面白い作品で、美術館でのなめまわすようなカメラワークや、「サイコ」を意識したア
も当時デビュー10年ながらいまだに"売り出し中"の身)、エロチックなシーンもふんだんにあり、この映画全体がB級の雰囲気を醸していますが、そのキッチュ感が却ってでいいです。内容的にも、ヒッチコックへのオマージュを込めながらも、ミステリとしてのオリジナリティは十分にあるように思われ、個人的には「裏窓」×「めまい」+アルファという評価ですが、観る人によっては、最後が"マイナス"になる人もいるかもしれません。

映画後半に出てくるポルノ女優を演じたメラニー・グリフィスは、ヒッチコック監督作品「鳥」('63年)のヒロイン役を演じたティッピ・ヘドレンの娘であり(この作品の翌年にTV番組「
「ワーキング・ガール」は、ウォール街の投資銀行のM&A部門で働く秘書(メラニー・グリフィス)が、尊大な女性上司(シガニー・ウィーバー)がスキー休暇中に骨折し職場復帰するまでの間に、上司の愛人(ハリソン・フォード)と共に進行中の合併話を期せずして進行させることになるというサクセス・ストーリーですが(当時のアメリカではM&Aの嵐が吹き荒れていたようだ)、メラニー・グリフィス、シガニー・ウィーバー共にいい味出していて、映画自体もまあまあ楽しめました。冒頭にワールドトレードセンター(WTC)の空撮が出てきますが、この作品自体WTCで撮影されています。因みに、"ワーキング・ガール"というタイトルには「キャリア・ウーマン」の他に「娼婦」という意味もあります。

「ボディ・ダブル」の作品ベースとなっているヒッチコックの「裏窓」('54年)と「めまい」('58年)のうち「めまい」
「めまい」では、カメラワークにおいてズームアウトしながらカメラを前方へ動かすことで被写体のサイズが変わらずに広角になる映し方(逆ズーム)で墜落感を表す手法や、カメラが被写体の周りを回る映し方(360°パン)でキスシーンなどの陶酔感を表す手法などが用いられていることでも有名で、デ・パルマ監督もこの作品でそうした技法をしっかり採り入れています。キム・ノヴァクの妖しげな魅力が印象に残った映画でもありました。 
「ボディ・ダブル」●原題:BODY DOUBLE●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督・製作:ブライアン・デ・パルマ●脚本:ロバート・J・アヴレッチ/ブライアン・デ・パルマ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ピノ・ドナッジオ●時間:114分●出演:クレイグ・ワッソン/グレッグ・ヘンリー/デボラ・シェルトン/メラニー・グリフィス/ガイ・ボイド/デヴィッド・ハスケル/デニス・フランツ/アル・イズラエル/レベッカ・ スタンリー/ダグラス・ワーヒット/B・J・ジョーンズ/ラス・マリン/レーン・デイヴィース●日本公開:1985/02●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:三軒茶屋映劇 (85-09-15)(評価:★★★★☆)●併映:「聖女アフロディーテ」(ロバート・フュースト)/「ブレスレス」(ジム・マクブライド)



みち街」にオープン。 ①三軒茶屋東映(→三軒茶屋シネマ)2014(平成26)年7月20日閉館 ②三軒茶屋映劇(映画劇場)(現サンタワービル辺り)1992(平成4)年閉館 ③三軒茶屋中劇(中央劇場))2013(平成25)年2月14日閉館
「殺しのドレス」●原題:DRESSED TO KILL●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:ジョージ・リットー●撮影:ラルフ・ボード●音楽:ピノ・ドナッジオ●時間:114分●出演:マイケル・ケイン/アンジー・ディキンソン/ナンシー・アレン/キース・ゴードン/デニス・フランツ/デヴィッド・ マーグリーズ/ブランドン・マガート●日本公開:1981/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(81-04-03)●2回目:テアトル吉祥寺 (86-02-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「デストラップ 死の罠」(シドニー・ルメット)/「日曜日が待



「ワーキング・ガール」●原題:WORKING GIRL●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:マイク・ニコルズ●製作:ダグラス・ウィック●脚本:ケヴィン・ウェイド●撮影:ミハエル・バルハウス●
音楽:カーリー・サイモン●時間:115分●出演:ハリソン・フォード/シガニー・ウィーバー/メラニー・グリフィス/アレック・ボールドウィン/オリバー・プラット/ケヴィン・スペーシー/ジョーン・キューザック/フィリップ・ボスコ/ノーラ・ダン/ジェームズ・ラリー●日本公開:1989/05●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:新宿アカデミー (89-07-08)(評価:★★★☆) 



「めまい」●原題:VERTIGO●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:アレック・コペル/サミュエル・テイラー●撮影:ロバート・バークス●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ピエール・ボワロー/トマ・ナルスジャック「死者の中から」●時間:128分●出演:ジェイムズ・スチュアート/キム・ノヴァク(Kim Novak)/バーバラ・ベル・ゲデス/トム・ヘルモア/ヘンリー・ジョーンズ/レイモンド・ベイリー/エレン・コービイ/リー・パトリック●日本公開:1958/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:歌舞伎町シネマ1(84-03-31)(評価:★★★★) 

歌舞伎町シネマ1・歌舞伎町シネマ2 1985年、コマ劇場左(グランドオヲデオンビル隣り)「新宿ジョイパックビル」(現「ヒューマックスパビリオン新宿歌舞伎町」)2Fにオープン→1995年7月~新宿ジョイシネマ3・新宿ジョイシネマ4。1997(平成9)年11月閉館。
1.『めまい』"Vertigo"(1958/米) 監督:アルフレッド・ヒッチコック 191票


「ひまわり」(I Girasoli 、'70年/伊・仏・ソ連)は、最初に観た時、ジョヴァンニ(ソフィア・ローレン)が戦地で消息を絶った夫アントニオ(マルチェロ・マストロヤンニ)を訪ねウクライナに行き、彼に再会し全てを知ったところで終わっても良かったかなと、その方がラストのひまわり畑のシーンにすんなり繋がるのではないかという気もしました。 
後半、今度はマルチェロ・マストロヤンニがソフィア・ローレンを訪ね再会を果たすも、既に彼女は結婚もしていて子供もいることがわかり(自分にもロシア人妻リュドミラ・サヴェーリエワとの間に子供がいることも改めて想起し)、失意のうちにウクライナへ帰っていく部分は、かなり地味だし、「子は鎹(かすがい)」ということ(?)なんて思ったりしたのですが、しかしながら、最近になって観直してみると、後半も悪くないなあと思うようになりました。
愛の"記憶"に生きると決めているジョヴァンニ。ガックリくるマストロヤンニに対し、共に痛みを感じながらも彼を包み込むような感じがラストのソフィア・ローレンにはあり、母は強しといった感じも。.jpg)
2つの別れのシーン(出征の別れと再会後の最後の別れ)に「ミラノ中央駅」が効果的に使われていて、ひまわりが咲き誇る畑も良かったです。
このひまわりの下に、ロシア兵も
イタリア兵も戦場の屍となって埋まっているという、戦争の犠牲者に対する国を超えたレクイエムが込められていて、冷戦下でソ連側が国内でのロケを許可したのもわかります(ソフィア・ローレンはソ連のどこのロケ地へ行っても大歓迎を受けたとのこと)。
同じく、戦争で運命を狂わされた男女を描いたものに、ジャック・ドゥミ(1931‐1990)監督の「シェルブールの雨傘」(Les Parapluies De Cherbourg、'64年/仏)がありますが、のっけから全ての台詞にメロディがついていて、やや面食らいました(それが最後まで続く)。音楽のミッシェル・ルグランによれば、全てのセリフを歌で表した最初の映画とのことで、オペラのアリアの技法を用いたとのことです(カンヌ国際映画祭「グランプリ」(現在の最高賞パルム・ドールに相当)及び「国際カトリック映画事務局賞」受賞作)。
石畳の舗道に雨が落ちてきて、やがて色とり
どりの美しい傘の花が咲くという俯瞰のファースト・ショットはいかにもお洒落なフランス映画らしく('09年にシネセゾン渋谷で"デジタルリマスター版"が特別上映予定とのこと。自分が劇場で観た頃にはもう色が滲んでいた感じがした)、監督のジャック・ドゥミ(当時31歳)、音楽のミッシェル・ルグラン(当時30歳)も若かったですが、傘屋の娘を演じたカトリーヌ・ドヌーヴは当時20歳でした。
恋人が出征する戦争は、第2次世界大戦ではなくアルジェリア戦争で(この映画からは残念ながらアルジェリア側の視点は感じられない。フランス版「ひまわり」とか言われるからつい比べてしまうのだが、戦争終結直後に作られたということもあるのだろう)、「ひまわり」みたいに一方がもう一方を訪ねて再会するのではなく、ラスト別々の家族を持つようになった2人は、母の葬儀のためシェルブールに里帰りしたカトリーヌ・ドヌーヴが、クルマの給油に寄った先が、彼が将来経営したいと言っていたガソリンスタンドだったという、偶然により再会します。
2人は将来子供が出来たら付けようと恋人時代に話していた「フランソワ」「フランソワーズ」という名をそれぞれの男の子と女の子につけていたのですが、そう言えば「ひまわり」のソフィア・ローレンは、自分の子に「アントニオ」というマルチェロ・マストロヤンニが演じた前夫の名をつけていました。何れにせよこういうの、知らされた相手側の未練を増幅しそうな気がするなあ。
「ひまわり」●原題:I GIRASOLI(SUNFLOWER)●制作年:1970年●制作国:
イタリア・フランス・ソ連●監督:ヴィットリオ・デ・シーカ●製作:カルロ・ポンティ/アーサー・コーン●脚本:チェザーレ・ザバッティーニ/アントニオ・グエラ/ゲオルギス・ムディバニ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:107分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ソフィア・ローレン/リュドミラ・サベーリエ
ワ/アンナ・カレーナ/ジェルマーノ・ロンゴ/グラウコ・オノラート/カルロ・ポンティ・ジュニア●日本


「シェルブールの雨傘」●原題:LES PARA PLUIES DE CHERBOURG(英:THE UMBRELLAS OF CHERBOURG)●制作年:1964年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャック・ドゥミ●製作:マグ・ボダール●脚本:チェザーレ・ザバッティーニ/アントニオ・グエラ/ゲオルギス・ムディバニ●撮影: ジャン・ラビエ●音楽:ミシェル・ルグラン●時間:91分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/ニーノ・カステルヌオーボ/マルク・ミシェル/アンヌ・ヴェルノン/エレン・ファルナー/ミレーユ・ペレー/アンドレ・ウォルフ●日本公開:1964/10●配給:東和●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)(評価:★★★☆)●併映:「巴里のアメリカ人」(ヴィンセント・ミネリ)







また、スクルージと幽霊のやりとりはかなりコミカルであり、頑固で神経質なスクルージのキャラクターは、個人的には、ディズニーのドナルドダックの伯父さんであるスクルージのキャラクターとよく符合したように思います。
文豪が大衆や子供たちに向けて贈ったクリスマス・ストーリーということになるのでしょうが(新潮文庫版の翻訳は『赤毛のアン』シリーズの翻訳で知られる村岡花子(1893-1968))、クリスマス・ストーリーの中では最も有名なもので、何度か映画化やミュージカル化もされていています(2020年に越前敏弥氏による新訳『クリスマス・キャロル』が角川文庫より出された。同氏の訳本では、エラリー・クイーンの『

ーズ」('84 年/米)にも主演していて、幽霊繋がり?)、映画では主人公は"金の亡者"ならぬ"視聴率の亡者"であるテレビ局の若社長になっていて、登場する"ゴースト"がタクシー運転手だったり女妖精だったりとバラエティ豊かですが、一応、原作のストーリーは押さえている感じでした。
「3人のゴースト」●原題:SCROOGED●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:リチャード・ドナー●製作:アート・リンソン/リチャード・ドナー●製作総指揮:ステファン・J・ロス/●脚本:ミッチ・グレイザー/マイケル・オドノヒュー●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:ダニー・エルフマン●原作
:チャールス・ディッケンス「クリスマス・カロル」●時間:101分●出演:ビル・マーレイ/カレン・アレン/ジョン・フォーサイス/ボブキャット・ゴールスウェイト/デビッド・ヨハンセン/キャロル・ケイン/ロバート・ミッチャム/マイケル・J・ポラード/アルフレ・ウッダード/ジョン・グローバー●日本公開:1988/12●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:名古屋毎日ホール(88-12-30)(評価:★★☆)●併映:「星の王子ニューヨークへ行く」(ジョン・ランディス)


リル・サバラ/フェイ・マスターソン/レスリー・マンヴィル/モリー・C・クイン●日本公開:2009/11●配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・モーション・ピクチャーズ・ジャパン(評価:★★★☆)











映画の解釈では、淀川長治のホモ・セクシュアル映画説が有名です(因みに、原作者のパトリシア・ハイスミスはレズビアンだった)。あの吉行淳之介も、淀川長治のディテールを引いての実証に驚愕した(吉行淳之介『恐怖対談』)と本書にありますが、ルネ・クレマンが来日した際に淀川長治自身が彼に確認したところ、そのような意図は無いとの答えだったとのことです(ルネ・クレマン自身がアラン・ドロンに"惚れて"いたとの説もあり、そんな簡単に本音を漏らすわけないか)。(●2016年にシネマブルースタジオで再見。トムがフィリップの服を着て彼の真似をしながら鏡に映った自分にキスするシーンは、ゲイ表現なのかナルシズム表現なのか。マルジュがフィリップに「私だけじゃ退屈?そうなら船をおりるわ」とすねるのは、フィリップの恋人である彼女が、男性であるトムをライバル視してのことか。再見していろいろ"気づき"があった。) 









「デス・トラップ 死の罠」の原作は「死の接吻」「ローズマリーの赤ちゃん」のアイラ・レビンが書いたブロードウェイの大ヒット舞台劇。落ち目の劇作家(マイケル・ケイン)の許に、かつてのシナリオライター講座の生徒クリフ(クリストファー・リーヴ)が書いた台本「デストラップ」が届けられ、作家は、金持ちの妻マイラ(ダイアン・キャノン)に「この劇は
傑作だ」と話し、盗作のアイデアと青年の殺害を仄めかし、青年が郊外の自宅を訪れる際に殺害の機会を狙う―(要するに自分の作品にしてしまおうと考えた)。ドンデン返しの連続は最後まで飽きさせないもので、「スーパーマン」のクリストファー・リーブが演じる劇作家志望のホモ青年も良かったです(この人、意外と演技派俳優だった)。
クリストファー・リーブ/マイケル・ケイン![映画「ディーバ].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E6%98%A0%E7%94%BB%E3%80%8C%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%90%5D.jpg)
「ディーバ」は、ジャン=ジャック・ベネックス監督の長編第1作で、オペラを愛する18歳の郵便配達夫が、レコードを出さないオペラ歌手のコンサートを密かに録音したことから殺人事件に巻き込まれるというもので、1981年12月にユニフランス・フィルム主催の映画祭「新しいフランス映画を見るフェスティバル」での上映5作品中の1本目として初日にThe Space (Hanae Mori ビル5F)で上映されるも、その時はすぐには日本配給には結びきませんでした。しかし、'81年シカゴ国際映画祭シルヴァー・ヒューゴー賞を受賞し、'82年セザール賞で最優秀新人監督作品賞(ジャン=ジャック・ベネックス)のほかに、撮影賞(フィリップ・ルースロ)、



「私が密かに愛した映画」で「パワー・プレイ」を推した橋本治氏が、「すっごく面白いんだけど、これを見たっていう人間に会ったことがない」とコメントしてますが、見ましたよ。
ヨーロッパのある国でテログループによる大臣の誘拐殺人事件が起き、大統領がテロの一掃するために秘密警察を使ってテロリスト殲滅を実行に移すもののそのやり方が過酷で(名脇役ドナルド・プレザンスが秘密警察の署長役で不気味な存在感を放っている)、反発した軍部の一部が戦車部隊の隊長ゼラー(ピーター・オトゥール)を引き入れクーデターを起こします。クーデターは成功しますが、宮殿の大統領室にいたのは...。「漁夫の利」っていうやつか。最後、ピーター・オトゥールがこちらに向かってにやりと笑うのが印象的でした。
「第三の男」●原題:THE THIRD MAN●制作年:194





「恐怖の報酬」●原題:LE SALAIRE DELA PEUR●制作年:1953年●制作国:フランス●監督・脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー●撮影:アルマン・ティラール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:ジョルジュ・アルノー●時間:131分●出演:イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ/ウィリアム・タッブス/ダリオ・モレノ/ジョー・デスト●日本公開:1954/07●配給:東和●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10) (評価:★★★★)●併映:「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)
「ポスター[左](

「太陽がいっぱい」●原題:PLEIN SOLEIL●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●脚本:ポール・ジェゴフ/ルネ・クレマン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:パトリシア・ハイスミス 「才能あ

「白いドレスの女」●原題:BODY HEAT●制
作年:1981年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ローレンス・カスダン●製作:フレッド・T・ガロ●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェイムズ・M・ケイン 「殺人保険」●時間:113分●出演:ウィリアム・ハート/
キャスリーン・ターナー/リチャード・クレンナ/テッド・ダンソン/ミッキー・ローク/J・A・プレストン/ラナ・サウンダース/キム・ジマー●日本公開:1982/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07) ●2回目:飯田橋ギンレイホール(86-12-13)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)





「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー
マン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス/ブルース・ウィリス/エリック・ストルツ/ロザンナ・アークエット/マリア・デ・メディロス/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)
ハーヴェイ・カイテル(掃除屋"ザ・ウルフ")
「デス・トラップ 死の罠」●原題:DEATHTRAP●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:バート・ハリス●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジョニー・マンデル●原作:アイラ・レヴィン●時間:117分●出演
:マイケル・ケイン/クリストファー・リーヴ/ダイアン・キャノン/アイリーン・ワース/ヘンリー・ジョーンズ/ジョー・シルヴァー●日本公開:1983/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (86-02-15) (評価:★★★☆)●併映「殺しのドレス」(ブライアン・デ・パルマ)
「ディーバ」●原題:DIVA●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:ジャン=

「パワー・プレイ 参謀たちの夜」●原題:POWER PLAY OPERATION OVERTHROW●制作年:1978年●制作国:イギリス/カナダ●監督:マーティン・バーク●製作:クリストファー・ダルトン●撮影:オウサマ・ラーウィ●音楽:ケン・ソーン●時間:110分●出演:ピーター・オトゥール/デヴィッド・ヘミングス/バリー・モース/ドナルド・プレザンス/ジョン・グラニック/チャック・シャマタ/アルバータ・ワトソン、/マーセラ・セイント・アマント/オーガスト・シェレンバーグ●日本公開:1979/11●配給:ワールド映画●最初に観











映画「ディア・ハンター」そのものは、アカデミー賞やニューヨーク映画批評家協会賞の作品賞を受賞した一方で、以上のような観点から「ベトナム戦争を不当に正当化している」との批判もあります(
で
いたジョン・カザール(享年42)の遺作でもあり、ロバート・デ・ニーロが彼を説得して出演させたとのことです。因みにジョン・カザールは、舞台「尺には尺を」で共演し、この作品でも共に出演しているメリル・ストリープとの婚約中のガン死でした(メリル・ストリープにとってはこの作品が映画デビュー2作目だったが、彼女この作品
で
「ディア・ハンター」●原題:THE DEER HUNTER●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・チミノ●製作:マイケル・チミノ/バリー・スパイキングス/マイケル・ディーリー/ジョン・リヴェラル●脚本:デリック・ウォッシュバーン●撮影:ヴィルモス・スィグモンド●音楽:スタンリー・マイヤーズ●時間:183分●出
演:ロバート・デ・ニーロ/クリストファー・ウォーケン/ジョン・カザール/ジ
ョン・サヴェージ/メリル・ストリープ/チャック・アスペグラン/ジョージ・ズンザ/ピエール・セグイ/ルタニア・アルダ●日本公開:1979/03●配給:ユニバーサル映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-02-15)(評価:★★★★)









こうした"情"の部分をストレートに表現することをできるだけ避けていたのが作者の特質だったのではないだろうか? 映画自体は悪くは無いけれど(むしろ傑作の部類だと個人的にも思うが)、原作の方がより男っぽい重厚感があります。 


先に映画の脚本として書かれたものを、後にセリフなどを書き加えて小説化したものと後で知って納得しましたが、結果的にはこれはやはり映画の方が面白く(映画の評価★★★★)、ロープウェイを使った映画では№1ではないかと思います("ロープウェイを使った映画"なんてそう矢鱈あるものではないが)。
「ナバロンの要塞」●原題:THE GUNS OF NAVARONE●制作年:1961年●制作国:アメリカ●監督:J・リー・トンプソン●音楽:デミトリー・ティオムキン●原作:アリステア・マクリーン「ナヴァロンの要塞」●時間:157分●出演:グレゴリー・ペック/デビッド・ニーヴン/アンソニー・クイン/スタンリー・ベイカー/アンソニー・クエイル/イレーネ・パパス/ジア・スカラ/ジェームズ・ダーレン/ブライアン・フォーブス/リチャード・ハリス●日本公開:1961/08●配給:コロムビア映画 (評価★★★★)
「荒鷲の要塞」●原題:WHERE EAGLE DARE●制作年:1968年●制作国:イギリス・アメリカ●監
督:ブライアン・G・ハットン●音楽:ロン・グッドウィン●原作:アリステア・マクリーン「荒鷲の要塞」●時間:155分●出演:リチャード・バートン/クリント・イーストウッド/メアリー・ユーア/イングリッド・ピット/マイケル・ホーダーン/パトリック・ワイマーク/ロバート・ ビーティ/アントン・ディフリング/ダーレン・ネスビット/ファーディ・メイン●日本公開:1968/12●配給:MGM (評価★★★★)
『ナヴァロンの要塞』...【1966年単行本〔早川書房(『ナバロンの要塞』)〕・新書版〔ハヤカワ・ポケット・ミステリ〕/1971年単行本[
『荒鷲の要塞』...【1968年単行本[
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2003年に発表されたダン・ブラウンのベストセラー小説で、2004 (平成16) 年度「週刊文春ミステリー ベスト10」(海外部門)第1位作品であり、映画化もされたのであらすじを知る人は多いと思いますが、著者自身の説明によると―、「高名なハーヴァード大学の象徴学者が警察によってルーヴル美術館へ呼び出され、ダ・ヴィンチの作品にまつわる暗号めいた象徴を調べるよう依頼されます。その学者は暗号を解読し、史上最大の謎のひとつを解き明かす手がかりを発見するのですが...追われる身となります」ということで、実はその前に、ルーヴル美術館の館長が異様な死体で発見されるという出来事があるのですが...。




「ダ・ヴィンチ・コード」●原題:THE DA VINCI CODE●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:ブライアン・グレイザー/ジョン・コーリー●脚本:ダン・ブラウン/アキヴァ・ゴールズマン●撮影:サルヴァトーレ・トチノ●音楽:ハンス・ジマー●原作:ダン・ブラウン「ダ・ヴィンチ・コード」●時間:150分●出演:トム・ハンクス/オドレイ・トトゥ/ジャン・レノ/イアン・マッケラン/ポール・ベタニー/アルフレッド・モリーナ/ユルゲン・プロホノフ●日本公開:2006/05●配給:ソニー・ピクチャーズ(評価:★★☆)
「ナショナル・トレジャー」●原題:NATIONAL TREASURE●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・タートルトーブ●製作:ジェリー・ブラッカイマー/ジョン・タート
ルトーブ●脚本:コーマック・ウィバーリー/マリアンヌ・ウィ
バーリー/ジム・カウフ●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:トレヴァー・ラビン●時間:131分●出演:ニコラス・ケイジ/ダイアン・クルーガー/ジャスティン・バーサ/ショーン・ビーン/ハーヴェイ・カイテル/ジョン・ヴォイト/クリストファー・プラマー/オレッグ・タクタロフ/マーク・ペルグリノ/ロン・カナダ●日本公開:2005/03●配給:ブエナ・ビスタ(評価:★★★☆)




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文学賞を受賞した脚本家ハロルド・ピンターの脚色であり、現代の役者が19世紀を舞台とした『フランス軍中尉の女』という小説の映画化作品を撮影する間、小説と同じような事態が役者達の間で進行するという入れ子構造になっていることからもわかるように(そのため個人的にはやや入り込みにくかった)、映画はほぼハロルド・ピンターのオリジナル作品になっているとも言え、映画は映画として見るべきでしょう。
『コレクター』の方のストーリーは、蝶の採集が趣味の孤独な若い銀行員の男が、賭博で大金を得たのを機に仕事をやめて田舎に一軒家を買い、自分が崇拝的な思慕を寄せていた美術大学に通う女性を誘拐し、地下室にに監禁する―というもの。
しかし、性的略奪が彼の目的でないことを知った女性が彼に抱いたのは「哀れみ」の感情で、彼女の日記からそのことを知った男はかえって混乱する―。
文芸・社会評論家の長山靖生氏は、この作品の主人公について「宮崎勤事件」との類似性を指摘し、共に「女性の正しいつかまえ方」を知らず、実犯行に及んだことで、正しくは"コレクター"とは言えないと書いてましたが、確かにビデオや蝶の「収集」はともかく、この主人公に関して言えば女性はまだ1人しか"集めて"いないわけです。しかし、作品のラストを読めば...。
映画化作品の方も、男が監禁女性を標本のように愛でるのは同じですが、彼女に対する感情がより恋愛感情に近いものとして描かれていて、結婚が目的となっているような感じがして、ちょっと原作と違うのではと...。
因みに、冒頭に挙げた「フランス軍中尉の女」('81年)のメリル・ストリープは、前述の通りこの作品でゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞しましたが、アカデミー賞の主演女優賞はノミネート止まりで、翌年の「ソフィーの選択」('82年)で主演女優賞を、2年連続となるゴールデングローブ賞主演女優賞と併せて受賞しました(ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞、
アラン・J・パクラの「ソフィーの選択」('82年)は、昨年['06年]亡くなったウィリアム・スタイロン(1925-2006)が1979年に発表しベストセラーとなった小説が原作です。駆け出し作家のスティンゴ( ピーター・マクニコル )が、ソフィー(メリル・ストリープ)というポーランド人女性と知り合うのですが、彼女には誰にも語ることの出来ない恐るべき過去があり、それは、彼女の人生を大きく左右する選択であった...という話で、ネ
タバレになりますが、自分の幼い娘と息子のどちらを生きながらえさせるか選択しろとドイツ将校に求められるシーンが壮絶でした。この作品でメリル・ストリープは役作りのためにロシア語訛りのポーランド語、ドイツ語及びポーランド語訛りのある英語を自在に操るなど、作品の背景や役柄に応じてアメリカ各地域のイントネーションを巧みに使い分けており、そのため「訛りの女王」と呼ばれてその才能は高く評価されることになります。「
「コレクター」●原題:THE COLLECTOR●制作年:1965年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ウィリアム・ワイラー●製作:ジョン・コーン/ジャド・キンバーグ●脚本:スタンリー・マン/ジョン・コーン/テリー・サザーン●撮影:ロバート・サーティース/ロバート・クラスカー●音楽:モーリス・ジャール●原作:ジョン・ファウルズ●時間:119分●出演:テレンス・スタンプ/サマンサ・エッガー/モナ・ウォッシュボーン/モーリス・ダリモア●日本公開:1965/08●配給:コロムビア映画(評価:★★★☆)
「フランス軍中尉の女」●原題:THE FRENCH LIEUTENANT'S WOMAN●制作年:1981年●制作国:イギリス●監督:カレル・ライス●製作:レオン・クロア ●脚本:ハロルド・ピンター●撮影:フレディ・フランシス●音楽:カール・デイヴィス●原作:ジョン・ファウルズ●時間:123分●出演:メリル・ストリープ/ジェレミー・アイアンズ/レオ・マッカーン/リンジー・バクスター/ヒルトン・マクレー●日本公開:1982/02●配給:ユナイテッド・アーチスツ●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(82-05-06)●2回目:三鷹文化(82-11-06)(評価:★★☆)●併映(2回目):「情事」(ミケランジェロ・アントニオーニ)
「ソフィーの選択」●原題:SOPHIE'S CHOICE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督・脚本:アラン・J・パクラ●製作:キース・バリッシュ/アラン・J・パクラ●撮影:ネストール・アルメンドロス●音楽:マーヴィン・ハムリッシュ●原作:ウィリアム・スタイロン●時間:150分●出演:メリル・ストリープ/ケヴィン・クライン/ピーター・マクニコル/リタ・カリン/スティーヴン・D・ニューマン/グレタ・ターケン/ジョシュ・モステル/ロビン・バートレット/ギュンター・マリア・ハルマー/(ナレーター)ジョセフ・ソマー●日
テレンス・スタンプ(英・俳優)
「スーパーマン」●原題:SUPERMAN●制作年:1978年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:リチャード・ドナー●製作:ピエール・スペングラー●脚本:マリオ・プーゾ/デイヴィッド・ニューマン/レスリー・ニューマン/ロバート・ベントン/トム・マンキウィッツー●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:144分(劇場公開版)/152分(ディレクターズ・カット版)●出演:クリストファー・リーヴ/マーゴット・キダー/マーロン・ブランド/ジーン・ハックマン/ネッド・ビーティ/ヴァレリー・ペリン/
マーク・マクルーア/ジャッキー・クーパー/グレン・フォード/フィリス・サクスター/スザンナ・ヨーク/トレヴァー・ハワード/マリア・シェル/テレンス・スタンプ/サラ・ダグラス/ジャック・オハローラン/ジェフ・イースト/ハリー・アンドリュース/ダイアン・シェリー/ウェストン・ギャビン/ラリー・ハグマン/ポール・テュルペ/ジョージ・ハリス2世●日本公開:1979/06●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:池袋・文芸坐 (82-12-29)(評価:★★★)●併映:「スーパーマンⅡ」(リチャード・レスター)
「スーパーマンⅡ/冒険篇」●原題:SUPERMANⅡ●制作年:1980年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:リチャード・レスター●製作:ピエール・スペングラー●脚本:マリオ・プーゾ/デイヴィッド・ニューマン/レスリー・ニューマン/トム・マンキウィッツー●撮影:ジェフリー・アンスワース●音楽:ケン・ソーン(テーマ曲:ジョン・ウィリアムズ)●時間:127分●出演:クリストファー・リーヴ/マーゴット・キダー/ジーン・ハックマン/ネッド・ビーティ/テレンス・スタンプ/ヴァレリー・ペリン/スザンナ・ヨーク/
ジャッキー・クーパー/マーク・マクルーア/サラ・ダグラス/ジャック・オハローラン/E・G・マーシャル/クリフトン・ジェームズ●日本公開:1981/06●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:池袋・文芸坐 (82-12-29)(評価:★★★)●併映:「スーパーマン」(リチャード・ドナー)
村の掟を破った息子を銃殺する父。凄まじきかな、父性原理。
Prosper Mérimée(1803-1870)

若い頃から射撃に優れ、村人の人望もあった羊飼いマテオ・ファルコーネは、妻と3人の娘、そして最後に生まれた男の子とともに自活的な農牧生活を送っていた―。そんなある日、マテオ一家が留守中に、憲兵に追われ村に逃れてきたお尋ね者が家にやって来て、1人留守を預かっていた10歳の息子は、一旦は彼を隠すのですが(伝統的にその村には、官憲などに追われている人をかくまう「掟」があった)、憲兵の「居場所を教えれば時計をやる」という言葉に負けて、お尋ね者を隠した場所を教えてしまい、彼は捕えられます。そのとき家に戻ってきたマテオに向かって男は「ここは裏切り者の家だ!」と叫び、すべてを察したマテオは、自分の息子を窪地へ連れて行き、大きな石のそばに立たせ、お祈りするよう命じ、終わるや否や、泣いて命乞いする本人や妻の制止を振り切って息子を銃殺するという話。
尚、この短編集の表題作「エトルリアの壺」は、パオロ&ビットリオ・タヴィアーニ監督のシチリアの説話を基にしたオムニバス映画「カオス・シチリア物語」('84年/伊)の中の一話「かめ(甕)」として映画化されています(翻案:ルイジ・ピランデッロ)。
欲しい物は全て手に入れたはずなのに、さらに多くを欲する大地主ドン・ロロがが購入した巨大なオリーブ油を入れる瓶-それは彼の権力の象徴であったが、そんな瓶が壊れてしまい、それをどうしても直したい彼は、瓶を修理することが出来る奇跡の技を持つ老職人を雇うが、職人は修理完了後に瓶の中から出られなくなる。ロロは瓶を壊すことを拒むが、職人は稼いだ金を使って村人達を集め、瓶を囲んでの宴会を繰り広げる。皆が職人を好いているように見えるのが気に入らないロロだったが、嫉妬が頂点に達した時、彼は遂に瓶を壊してしまう-。
因みに、この映画に触発されて、絵本作家の飯野和好氏が、この「壺」の寓話を、『ドン・ローロのつぼ』('99年/福音館書店(年少版 こどものとも)という絵本にしています。
「カオス・シチリア物語」●原題:KAOS●制作年:1984年●制作国:イタリア●監督・脚本:パオロ&ビットリオ・タヴィアーニ●製作:ジュリアーニ・G・デ・ネグリ●撮影:ジュゼッペ・ランチ●音楽:ニコラ・ピオヴァーニ●原作:ルイジ・ピランデッロ●時間:187分●出演:マルガリータ・ロサーノ/オメロ・アントヌッティ/ミコル・グイデッリ/ノルマ・マルテッリ/クラウディオ・ビガリ/ミリアム・グイデッリ/レナー
タ・ザメンゴ/マッシモ・ボネッティ●日本公開:1985/08●配給:フランス映画社●最初に観た場所:高田馬場東映パラス(87-10-03)(評価:★★★★)




ランベルト・マジョラーニ(右)
ビットリオ・デ・シーカ監督に「自転車泥棒」('48年/伊)という名画があり、世界中の人を感動させたわけですが、実際自分がフィルムセンター(焼失前の)でこの作品を観たときも、上映が終わって映画館から出てくる客がみんな泣いていました。
この映画の主人公を演じたランベルト・マジョラーニは、演技においては全くのズブの素人だったとのことで、ではなぜ、そんな素人が演じた映画が名画たりえたかと言うと、それは"モンタージュ"によるものであるとして、著者は、その"モンタージュ"という「魔法」を、この本でわかり易く解説しています(素人の演技が何故世界中の人々を泣かせるのかという導入自体がすでに"モンタージュ"の威力を示しており、効果的なイントロだと言える)。



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エイゼンシュテインは更に歌舞伎の影響を強く受け、結局「イワン雷帝」(第1部'44年/第2部'46年/ソ連)などはその影響を受け過ぎて歌舞伎っぽくなってしまったとのことですが、確かに、あまりに大時代的で自分の肌に合わなかった...(この映画、ずーっと白黒で、第2部の途中からいきなり極彩色カラーになるのでビックリした。「民衆の支持を得た独裁者」というパラドクサルな主題のため、時の独裁者スターリンによって公開禁止になった作品。第3部は未完)。そのエイゼンシュテインに影響を与えた歌舞伎は、実は人形浄瑠璃の影響を受けているというのが興味深く、まさに「自然は芸術を模倣する」(人が人形の動きを真似する)という言葉の表れかと思います。



「自転車泥棒」●原題:LADRI DI BICICLETTE●制作年:1948年●制作国:イタリア●監督・製作:ビットリオ・デ・シーカ●脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ/オレステ・ビアンコーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/アドルフォ・フランチ/ジェラルド・グェリエリ●撮影:カルロ・モンテュオリ●音楽:アレッサンドロ・チコニーニ●原作:ルイジ



「イワン雷帝」●原題:IVAN THE TERRIBLE IVAN GROZNYI●制作年:1946年(第1部・1944年)●制作国:ソ連●監督・脚本:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン●撮影:アンドレイ・モスクヴィン/エドゥアルド・ティッセ ●音楽:セルゲイ・プロコフィエフ●時間:209分●出演:ニコライ・チェルカーソフ/リュドミラ・ツェリコフスカヤ/セラフィマ・ビルマン/パーヴェル・カドチニコフ/ミハイル・ジャーロフ●日本公開:1948/11●配給:東和●最初に観た場所:池袋文芸坐 (79-04-11) (評価:★★★)●併映:「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・エイゼンシュタイン)
杉山 平一(すぎやま へいいち、1914年11月2日 - 2012年5月19日)詩人、 映画評論家。2012年5月19日、肺炎のため死去。97歳。



面白いものが多く、またヴィヴィッドな印象を受けるのが意外かも知れません。よく知られているところでは、ジーン・セバーグ、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」('59年)、アンナ・カリーナ、ベルモント主演の「気狂いピエロ」('65年)などの初期作品でしょうか。スチール写真が適度に配置され、読むと再度見たくなり、未見作品にも見てみたくなるものがありました。


パトリシアはミシェルとの愛を確認するため、ミシェルの居所をわざと警察に密告する―というもので、この不条理に満ちた話のオリジナル作者はフランソワ・トリュフォーですが、最終シナリオはゴーダルの頭の中にあったまま脚本化されずに撮影を開始したとのこと。台本無しの撮影にジャン=ポール・ベルモントは驚き、「どうせこの映画は公開されないだろうから、だったら好きなことを思い切りやってやろう」と思ったという逸話があります(1960年・第10回ベルリン国際映画祭「銀熊賞(監督賞)」受賞作)。.jpg)
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「気狂いピエロ」は―、フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモント)という男が、イタリア人の妻とパーティに行くが、パーティに退屈し戻ってきた家で、昔の恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会し、成り行きで彼女のアパートに泊まった翌朝、殺人事件に巻き込まれて、2人は逃避行を繰り返す羽目に。フェルディナンは孤島での生活を夢見るが、お互いにズレを感じたマリアンヌが彼を裏切って情夫の元へ行ったため、フェルディナンは彼女と情夫を射殺し、彼も自殺するというもの(1965年・第26回ヴェネチア国際映画祭「新鋭評論家賞」受賞作)。
「勝手にしやがれ」●原題:A BOUT DE SOUFFLE(英:BREATHLESS)●制作年:1959年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●原作・原案・脚本:フランソワ・トリュフォー●撮

「気狂いピエロ」のポスター。『キネマ旬報』1967年2月下旬号に掲載された広告。
●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョル
ジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワース・デュアメル●原作:ライオネル・ホワイト「十一時の悪魔」●時間:109分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/アンナ・カリーナ/サミュエル・フラー /レイモン・ドボス/グラツィエッラ・ガルヴァーニ/ダーク・サンダース/ジミー・カルービ/ジャン=ピエール・レオ/アイシャ・アバディ/ラズロ・サボ●日本公開:1967/07●配給:セントラル●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★★)●併映:「彼女について私が知っている二、三の事柄」(ジャン=リュック・ゴダール)
作国:フランス・イタリア●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●撮影:ラウール・クタール●音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン●原案:カトリーヌ・ヴィムネ●時間:90分●出演:ジョゼフ・ジェラール/マリナ・ヴラディ/アニー・デュプレー/ロジェ・モンソレ/ラウール・レヴィ/
ジャン・ナルボニ/イヴ・ブネトン/エレナ・ビエリシック/クリストフ・ブルセイエ/マリー・ブルセイエ/マリー・カルディナル/ロベール・シュヴァシュー/ジャン=リュック・ゴダール(ナレーション)●日本公開:1970/10●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★)●併映:「気狂いピエロ 」(ジャン=リュック・ゴダール)



有楽シネマ (1955年11月14日オープン、1994年12月休館、1995年6月16日~シネマ有楽町(成人映画上映館)、1996年~銀座シネ・ラ・セット、159席) 2004(平成16)年1月31日閉館 跡地に建設のイトシアプラザ内に2007年10月シネカノン有楽町2丁目オープン、2009年12月4日ヒューマントラストシネマ有楽町に改称





冒頭に挙げた映画「十戒」('57年/米)は、セシル・B・デミル監督が自らが手がけたサイレント大作「十誡」('23年/米)を、10年の製作期間と1350万ドル(当時)を投じて自らリメイクしたもので、製作費の10倍もの興行収入を上げ、パラマウント映画としてのそれまでの最高記録を更新しました(2020年現在、
紅海が真っ二つに割れるシーンなどのスペクタルもさることながら(滝の落下を逆さまに映している?)、モーセが杖を蛇に変えるシーンなどの細かい特殊撮影も当時にしてはなかなかのもの(CGの無い時代に頑張っている)。
モーセを演じたチャールトン・ヘストン(1924-2008/享年84)の演技は大味ですが、それがスペクタクル映画にはむしろ合っている感じで、一方、もう1人の主役ラメセスを演じたユル・ブリンナー(1920-1985/享年65)は、父親がスイス系モンゴル人で母親はルーマニア系ジプシーであるという、ファラオ(エジプト王)を演じるに相応しい(?)ユニヴァーサルな血統(「王様と私」('56年/米)ではシャム王を演じている)。更に、癖のあるキャラクターを演じるのが巧みなエドワード・G・ロビンソン(1893-1973/享年79)、「イヴの総て」('50年)のアン・バクスター(1923-1985/享年62)などの名優が脇を固めていました。何れにせよ、もう1度観るにしても、劇場などの大スクリーンで観たい作品です。



ミル●脚本:イーニアス・マッケンジー/ジェシー・L・ラスキー・Jr/ジャック・ガリス/フレドリック・M・フランク●撮影:ロイヤル・グリッグス●音楽:エルマー・バーンスタイン●時間:222分●出演:チャールトン・ヘストン/ユル・ブリンナー/アン・バクスター/エドワード・G・ロビンソン/ジョ
