【1232】 ○ 船本 弘毅 『図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (2009/05 青春新書INTELLIGENCE) ★★★★ (○ ノーマン・ジュイソン 「ジーザス・クライスト・スーパースター」 (73年/米) (1973/12 CIC) ★★★☆)

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わかり易くよく纏まっている。入門書として手頃なわりには"上質"。

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図説 地図とあらすじでわかる!聖書 (青春新書INTELLIGENCE)』「ジーザス・クライスト・スーパースター [VHS]

 旧約・新約新書のあらすじや解説を新書1冊に収めるのはもともと無理があるのではないかとも思いましたが、本書を手にしてぱらぱらめくってみると、2色刷りで体系的にわかり易く纏められており、ああ、これは聖書の複雑な構成を理解するにはいいなあと感じ、また、実際に読んでみて、「あらすじ」自体が大変面白ので、すらすら読めました。

 旧約聖書の壮大な「物語性」が抜け落ちてしまうことが危惧されましたが、確かに参考書を読んでいるような感じがしなくもない面もあったものの、全体としては物語性を排除しないよう、解説とあらすじのバランスに気配りがされているような印象を受けました。

 図説もよく整理されていて、また、情報の密度も濃いと思われ、諸説ある部分については、本文とは別に表などに纏めて再整理してあり、近年の研究成果や解釈なども入れ(キリストが両親に対して親子の情が薄かったことや、磔刑の際に十字架に腰掛けがあったことなどは新たな知識だった)、全体として偏りがなく、入門書として手頃なわりには"上質"であると言えるのではないでしょうか。

 地図による図説が多用されているのも、個人的には知識ニーズに適っていたように思え、また、物語の背景にある歴史的・政治的背景にも言及されていることで、簡潔な解説の中にもシズル感がありました。


 ハリウッドにはユダヤ系の才能も資本も集まってきたため、旧約聖書に材を得た映画が盛んに作られたようで、「サムソンとデリラ」('49年/米)、「十戒」('57年/米)、「ソドムとゴモラ」('62年/伊・米)、「天地創造」('66年/米・伊)など多くがありますが、新約聖書に材を得た映画では、リチャード・バートン主演の「聖衣」('53年/米)やロックオペラの映画化作品「ジーザス・クライスト・スーパースター」('73年/米)があり、後者は、背景に現在と過去が交錯して(キリストがロックミュージックのスターみたいに描かれている)ヴィジュアル的にも時代背景をぼかした感じでしたが、ストーリー自体は聖書をきちんとなぞっていたのではないかと。

 BSの再放映('09年6月)で久しぶりに観ましたが、ローマ総督のピラトが最初はイエスに刑を科すことを躊躇するくだりなどは、聖書及び本書の解説にもある通りに描かれていいます(それはそうでしょう、本国には聖書に精通している人が一般国民の中にも多くいるわけだし)。

 監督のノーマン・ジュイソンはユダヤ人で、「屋根の上のバイオリン弾き」('71年/米)なども撮っていますが、どちらかと言うと、万人受けするような映画を作るタイプ?(音楽はブロードウェイ・ミュージカル「キャッツ」や「オペラ座の怪人」を手掛けたアンドリュー・ロイド・ウェバー)
 この作品は舞台ほど過激でないにしても(ブロードウェイの舞台では、イエスがユダと口と口でキスする場面があり物議を醸したそうだが、この映画では普通に頬にキスするだけ)、彼の作品の中では異色の方かも知れません。

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「ジーザス・クライスト・スーパースター」●原題:JESUS CHRIST SUPERSTAR●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:ノーマン・ジュイソン●製作:ノーマン・ジュイソン/ロバート・スティグウッド●脚本:ノーマン・ジュイソン/メルヴィン・ブラッグ●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドリュー・ロイド・ウェバー/アンドレ・プレヴィン/ハーバート・スペンサー●原作:ティム・ライス●時間:106分●出演:テッド・ニーリー/カール・アンダーソン/イボンヌ・エリマン/バリー・デネン/ボブ・ビンガムド●日本公開:1973/12●配給:CIC●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-10-29)(評価:★★★☆)●併映:「ブラザー・サン シスター・ムーン」(フランコ・ゼッフィレッリ)

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