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犯人の無目的性がこの作品を面白く、深くしている。「新幹線大爆破」などよりずっといい。

「太陽を盗んだ男」
中学校の理科教師の城戸誠(沢田研二)は、日頃から遅刻を繰り返す無気力教師。ある日、生徒たちを引率し原発の社会科見学を終え
た時、火器を持つ老人(伊藤雄之助)にバスジャックされる。彼の要求は「ただちに皇居へ向かい、天皇陛下に合わせろ」。事件を解決すべく、丸の内警察署捜査一課の山下警部(菅原文太)らによる犯人確保と人質救出作戦が始まる。山下は誠と協力し、生徒らを盾にしてバスを降りてきた老人を取り押さえる。この出来事に影響され、誠は変わる。休み時間に学校のネットをよじ登る、授業は学級崩壊を気にせず延々と原子力や原爆の作り方についての講義を行う等の奇行が始まった。だがこれは、彼がこれから起こす犯罪のための予
習だった。ある日、誠は茨城県東海村の原発から液体プルトニウムを強奪し、アパートの自室で
原爆を完成させる。そして、精製した金属プルトニウムの欠片を仕込んだダミー原爆を国会議事堂に置いて日本政府を脅迫、交渉相手として山下を指名する。誠の第一の要求は「プロ野球のナイターを試合の最後まで中継させろ」。電話を介しての山下との交渉の結果、その夜の巨人vs.大洋戦は急遽完全中継される。快哉を叫ぶ誠は山下に「俺は『9番』」と名乗る。第二の要求を何にするか思いつかずに迷う誠は、愛聴するラジオDJ・ゼロこと沢井零子(池上季実子)を巻き込む。
公開リクエストの結果、誠の決めた第二の要求は「ローリング・ストーンズ日本公演」。これにも従わざるを得ない山下だったが、原爆製造のため借金したサラ金業者(西田敏行)に返済を迫られた誠が出した第三の要求は「現金5億円」。山下は、逆探知時間を把握し、ギリギリまで電話で話す誠の性癖を逆手に、電電公社に電話の逆探知時間を短縮させる罠を仕掛ける。作戦は的中し、誠が東急デパート屋上から電話をしていることが判明、デパート出入口を警察が封鎖する。誠はトイレに駆け込むも、歯茎からの出血や吐き気などの被爆症状の進行を悟る。封鎖を突破することが困難とみた誠は、山下に原爆の在りかを教え、原爆のタイマー解除を交換条件として、用
意した5億円を屋上からばら撒くことと封鎖を解くことを指示。万札が空から降ってきて大騒ぎになる街中を誠は逃げ切る。原爆を回収した山下らは、起爆装置を解除するも、解体作業は翌朝になる。誠は原爆が保管されているビルを襲い、原爆を奪取す
ると車で逃走、追跡する警察とのカーチェイスの際に零子が事故の巻き添えになる。ローリング・ストーンズ公演の日、山下と誠は対峙する。ストーンズの来日はもともと予定されておらず、観客にわざと暴動を起こさせ全員まとめて逮捕、その中から犯人を洗い出すという作戦だった。誠は山下を、原爆を置いていたビルの屋上まで連れて行って銃で撃つが、銃弾を何発も身に受けながら、山下は誠を道連れにしようと屋上から転落する。山下は全身打撲で殉職、誠はどうにか生き長らえる。誠は被爆で弱った上に転落の怪我の流血が止まらないまま、原爆を持ちながら街を歩き、やがて30分が過ぎる―。
長谷川和彦監督の'79年公開作(同監督の監督作は「青春の殺人者」('76年/ATG)とこれのみ)。「キネマ旬報 日本映画ベスト・テン」第2位(同読者選出日本映画ベスト・テン第1位)、「毎日映画コンクール」監督賞(長谷川和彦)、「報知映画賞」作品賞・主演男優賞(沢田研二)、「日本アカデミー賞」最優秀助演男優賞(菅原文太)などを受賞。
脚本は当初は村上龍が予定されていたが、彼の仲介者だった長谷川和彦自身が村上案を没にし、'77年に渡米先で知り合ったレナード・シュレイダー(シドニー・ポラック監督・高倉健主演「ザ・ヤクザ」('74年/米)の原作者でもある)に依頼、レナード・シュレイダーはドストエフスキー張りの脚本を書き上げたとのこと。当初は中学教師・城戸が犯行に
及ぶ理由として、校長と喧嘩するとか色々と案はあったようですが、同じくパニック映画である「新幹線大爆破」('75年/東映)で高倉健が新幹線を爆破するにはそれなりに理由があるものの、それが映画をつまらなくしていると長谷川和彦は考えたため、主人公の家族の関係など全てカットし、都会で孤独に生きる中学校教師という人物造型にしたとのこと。この目論見は成功しており、犯人の無目的性がこの作品を「新幹線大爆破」などより面白く、また深くしています。
山本又一朗プロデューサーは萩原健一を主役の中学教師役に想定していたようです。長谷川和彦は警部のイメージを「鬼警部」として描いていたため、高倉健に話を持って行ったら、高倉健から「原爆を作る方をやりたい」と言われ(「新幹線大爆破」でも犯人役を演じたから?)、長谷川和彦は原爆を作る中学教師はちゃらんぽらんな男として描きたかったため高倉健のイメージと合わず、結局は高倉健からも断られます。そこで、以前から新宿ゴールデン街の飲み友達だった菅原文太に出演依頼すると快諾を得、その菅原文太から「主役にはジュリーなんかどうなの?」との提案を受けて沢田研二になったそうです(長谷川和彦は沢田研二主演のTVドラマ「悪魔のようなあいつ」('75年/TBS、全」17話)の脚本を書いていた)。
因みに、長谷川和彦は、石川達三原作・神代辰巳監督・萩原健一主演の「青春の蹉跌」('74年/東宝)で脚本を務め、主人公をアメフト選手にする原作には無い設定を入れ(長谷川和彦は東大アメフト部出身)、萩原健一演じる主人公が試合するシーンは、明大と東大のアメフト部員を動員して、長谷川和彦が自分でメガホンを取ったとのことで、萩原健一が主役を演じる可能性もかなりあったように思います。でも、この映画は沢田研二を使ったことで成功していると思うし、また、菅原文太も渋くて良かったです(長谷川和彦からヤクザ風の演技に何度もダメ出しされたのを、役者魂でよく耐えたとか)。
犯罪映画としては、今村昌平監督の 「復讐するは我にあり」('79年/松竹)に迫る面白さです。途中、巻き添えであっさり死んでしまう池上季実子に対し、ラストで、何発撃たれても
なかなか死なない菅原文太など、リアリティを外した場面もありましたが(没シーンも多かったようだ。主人公が小学校のプールにプルトニウムを撒いて多くの子供が死体となって浮き上がるシーンは、当初の"現実の出来事"の予定から"主人公の想像"に置き替わった)、「新幹線大爆破」で最後に射殺される主人公は高倉健のイメージにそぐわなかったのに対し、取り敢えずは生き延びるこの映画の主人公は、まずますジュリーのイメージに合っているのでは(「新幹線大爆破」の宇津井健演じる運転指令長運頼み的行動も疑問)。

ラストの沢田研二を羽交い絞めにし、一緒にビルの屋上から落ちようとする菅原文太の「行くぞ『9番』」というセリフは菅原文太の案で、元々は長谷川和彦自身が脚本でそう書いていたものの、ホモセクシュアルの暗示が露骨なため、「死ぬぞ『9番』」に変更していたところ、菅原文太から「行くぞ『9番』」でという提案があったそうで、菅原文太はこれがどんな映画かよく分かっていた?
意外と原爆製造シーンが丹念に描かれていたし、誠が液体プルトニウム強奪のため東海村の原発に潜入するシーンは「ミッション:インポッシブル」('96年/米)みたい。冒頭の日本兵の軍装で皇居に突撃しようとするバスジャック犯を演じた特別出演の伊藤雄之助(1919-1980)は怪演。池上季実子は、演技はクサいけれども、ヘドロの東京湾に飛び込んで体を張っていました。当時の新宿や渋谷の街並みも懐かしく、貴重映像と言っていいくらい('79年夏公開の映画「スーパーマン」('78年/米・英)の看板があった)。突っ込みどころも多いけれど、長谷川和彦にもっと作品を撮って欲しかったと思わせる力作。なかなか劇場で観る機会が無かったというレア感なども加味して、評価は★★★★☆としました。

「太陽を盗んだ男」●制作年:1979年●監督:長谷川和彦●製作:山本又一朗●脚本:長谷川和彦/レナード・シュレイダー●撮影:鈴木達夫●音楽:井上堯之/星勝●原作:レナード・シュレイダー●時間:147分●出演:沢田研二/菅原文太/池上季実子/北村和夫/神山繁/佐藤慶/伊藤雄之助(特別出演)/汐路章/市川好朗/石山雄大/森大河/樽仙三/中平哲仟/江角英明/風間杜夫/草薙幸二郎/小松方正/西田敏行/水谷豊●公開:1979/10●配給:東宝●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-07-19)(評価:★★★★☆)

西田敏行(サラ金の取り立て屋)/水谷豊(警官)・沢田研二(老人に扮して警官から拳銃を奪取する理科教師・城戸誠)
「新幹線大爆破」●制作年:1975年●監督:佐藤純弥●脚本:小野竜之助/佐藤純弥●撮影:飯村雅彦/山沢義一/清水政郎●音楽:青山八郎●時間:152分●出演:高倉健/千葉真一/宇津井健/山本圭/郷鍈治/織田あきら/竜雷太/宇津宮雅代/藤田弓子/多岐川裕美/志穂美悦子/渡辺文雄/福田豊土/田坂都/十勝花子/片山由美子/風見章子/岩城滉一/小林稔侍/阿久津元/黒部進/河合絃司/志村喬/山内明/永井智雄/鈴木瑞穂/(以下、特別出演)丹波哲郎/北大路欣也/川地民夫/田中邦衛●公開:1975/05●配給:東映(評価:★★☆)
宇津井健(倉持運転指令長)/高倉健(主人公・沖田哲男)/山本圭(元過激派・古賀勝)
千葉真一(ひかり109号・青木運転士)/小林稔侍(ひかり109号・森本運転士)

丹波哲郎(特別出演:須永警察庁刑事部長)/北大路欣也(特別出演:空港で張り込む刑事)/田中邦衛(古賀勝(山本圭)の兄)
山内明(内閣官房長官)・永井智雄(国鉄新幹線総局長)・志村喬(国鉄総裁)/鈴木瑞穂(花村警察庁捜査第一課長)・渡辺文雄(宮下義典国鉄公安本部長)・青木義朗(千田刑事)








1977年、角川春樹事務所製作の第2弾として映画化され、八杉恭子を演じた岡田茉莉子は、角川春樹と作者で直接を出演依頼し、松田優作、ジョージ・ケネディらが日本映画で初めて本格的なニューヨークロケをしたとのこと。映画は途中までは原作に比較的近いですが、原作では棟居とケン・シュフタンの刑事同士接触はなく、棟居(松田優作)がアメリカに行ってケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に会う辺りから急激に原作を外れてしまいます。作者自身は「映像化にOKを出した時点で、嫁に出すようなもの。好きに料理してくれ、という考えです」と言い、原作にはない米国ロケでアクションを繰り広げた松田優作にも感謝していたそうですが...。
それにしても原作から外れすぎ、と言うか、いろいろ付け加えすぎて、ますます浅くなった感じ。八杉恭子の息子・恭平(岩城滉一)は 、ヘイワード殺しの犯人を追っていたはずのニューヨーク市警ケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に射殺されるし、息子の死の知らせを受けた八杉恭子は、授賞式の舞台で「あの子は私の生きがいです。 あの子は私の麦わら帽子だったんです。 私はすでに一つの麦わら帽子を失っています。 だからもう一つの麦わら帽子を失いたくなかったんです」という、黒人の息子より恭平の方が大事だったみたいな演説をぶって、最後は霧積まで行って『ゼロの焦点』よろしく自殺するし―。
莫大な宣伝費をかけたメディアミックス戦略の効果で映画はヒットし、実際、観た人の中には感動したという人も少なくなかったようですが、映画評論家からは酷評されました(第51回「キネマ旬報ベスト・テン」では第50位、読者選出では第8位)。「山本寛斎のファッションショーが延々と長すぎる」「松田優作が、テレビドラマのジーパン刑事そのままで何とも異様」等々。小森和子は雑誌の映画評で「日米合作としては違和感のない出来上がり。ただすべてが唐突な筋立て」と述べたように、滅多に悪く批判しない映画評論家までが映画作品としての密度の希薄さを指摘し、特に大黒東洋士と白井佳夫の批判がキツ過ぎ、この二人は角川関連の試写会をボイコットされたそうです。出演した鶴田浩二も映画誌で、「製作に12億かけて宣伝に14億かけるなんて武士の商法じゃない。本来、宣伝費は製作費の1割5分か2割でしょう。これは外道の商法です」と角川商法を批判しました。
批判の多さに原作者の森村誠一自身が激怒し、「作品中のリアリティと現実を混同したり、輪舞形式をとった設定をご都合主義と評したりするのは筋違いの批評...映画評論家は悪口書いて、金をもらっている気楽な稼業。マスコミ寄生人間の失業対策事業で、マスコミのダニ」などと映画評論家を猛烈に批判したとのことです。


作者は、『人間の証明』の発表翌年に『野性の証明』を発表、東北の寒村で大量虐殺事件が起き、その生き残りの少女と、訓練中、偶然虐殺現場に遭遇した自衛の二人を主人公に、東北地方のある都市を舞台にした巨大な陰謀を描いた作品でした。こちらも発表翌年に高倉健、薬師丸ひろ子主演で映画化されましたが、大掛かりな分、多分に大味な映画になっていました。結局、高倉健演じる自衛隊の特殊部隊の隊員(味沢岳史)がある集落でたまたま正当防衛的に住民を殺してしまい、いろいろな経緯があって、薬師丸ひろ子演じる集落の生き残りの少女を守りながら、三國連太郎演じる日本のある地方を牛耳ってるボスと戦うというわけのわからない話である上に、映画では誰もが簡単に人を殺し、味沢もまたその例外ではなく、ラストも原作の味沢が細菌に侵されて狂人になってしまうというものではなく、異なる結末になっていました。まあ、とことん駄作にしてしまった感じ。結局は高倉健のカッコ良さも空回りしていて、お金をかけてこうした映画を撮る監督(どちらかと言うと製作者?)の気が知れないです。
「人間の証明」●英題:PROOF OF THE MAN●制作年:1977年●監督:佐藤純彌●製作:角川春樹/吉田達/サイモン・ツェー●脚本:松山善三●撮影:姫田真佐久●音楽:大野雄二(主題歌:ジョー山中「人間の証明のテーマ」)●原作:森村誠一●時間:133分●出演:岡田茉莉子/松田優作/ジョージ・ケネディ/ハナ肇/鶴田浩二/三船敏郎/ジョー山中/岩城滉一
/高沢順子/夏八木勲/范文雀/長門裕之/地井武男/鈴木瑞穂/峰岸徹/ブロデリック・クロフォード/和田浩治/田村順子/鈴木ヒロミツ/シェリー/竹下景子/北林谷栄/大滝秀治/佐藤蛾次郎/伴淳
三郎/近藤宏/室田日出男/小林稔侍(ノンクレジット)/西川峰子(仁支川峰子)/小川宏/露木茂/坂口良子/リック・ジェイソン/ジャネット八田/小川宏/露木茂/三上彩子/姫田真佐久/今野雄二/E・H・エリック/深作欣二/角川春樹/森村誠一●公開:1977/12●配給:東映(評価:★★★)



義人「戦士の休息」)●原作:森村誠一●時間:143分●出演:高倉健/薬師丸ひろ子/中野良子/夏木勲 /三國連太郎(特別出演)/成田三樹夫/舘ひろし/田
村高廣/松方弘樹/リチャード・アンダーソン/鈴木瑞穂/丹波哲郎/大滝秀治/角川春樹/ジョー山中/ハナ肇/中丸忠雄/渡辺文雄/北村和夫/山本圭/梅宮辰夫/成田三樹夫/寺田農/金子信雄/北林谷栄/絵沢萠子/田中邦衛/殿山泰司/寺田
農/芦田伸介(特別出演)/角川春樹
/ジョー山中●公開:1978/10●配給:日本へラルド映画=東映(評価:★★)










花田秀次郎(高倉健)は東京深川の老舗料亭「喜楽」に生まれたが、父・清吉(加藤嘉)が後妻を迎えたときに家を出て、そのまま裏街道を歩き始めた。賭場で袋だたきにあった秀次郎は、銀杏の木の下でうずくまっているところを、芸者になったばかりの幾江(藤純子)に救われた。3年後、いかさま師を怪我させた秀次郎は逮捕され、刑に服することに。だが服役中に父が死去、関東大震災が起こり義理の妹も死亡、継母のお秀(荒木道子)は盲目となってしまう。窮地に立たされた「喜楽」を救ったのは、板前の風間重吉(池部良)と小父の寺田(中村
竹弥)だった。昭和2年、出所した秀次郎は偽名で板前として働くこととなり、その姿を寺田は涙の出る思いで見守っていた。一方幾江は売れっ妓芸者となって秀次郎の帰りを待っていて、重吉と寺田の計いで二人は7年ぶりに再会する。そんな頃、寺田一家のシマを横取りしようとことあるごとに目を光らせていた新興博徒の駒井(諸角啓二郎)が、「喜楽」を乗っとろうとしていた。秀次郎の義弟・武史(松原光二)は相場に手を染め、むざむざと「喜楽」の権利書を取り上げられてしまう。それを買い戻す交渉に出かけた寺田が、帰り道で襲撃され殺される―。
1970(昭和45)年9月公開のマキノ雅弘監督の「昭和残侠伝」シリーズの第7作品主演は高倉健、共演は池部良、藤純子。高倉健が演じるのは唐獅子牡丹の刺青を背中に仁侠道に生きる昭和初期の渡世人・花田秀次郎で、1965(昭和40)年から1972(昭和47)年までのシリーズ9作のうち7作がこの役名であり、東映やくざ映画全盛時代の最大のヒーローといってもいいかと思います。
義理と人情のしがらみに苦悩し、堪えに堪えた新興やくざへの怒りをついには爆発させる―というのがほぼすべてに共通のパターン。ここでも最後、それまで駒井の執拗な挑発に耐えてきた秀次郎でしたが、かけがえのない恩人の死に遂に怒りを爆発させ、重吉と共に駒井の元に殴りこみます(幾江は行かないでとは言わず、死なないでと言う)。
ホントは、秀次郎は重吉に、堅気のあんたが行ってはいけない、俺一人で行くと言っていたのですが、結局、死地へ向かおうとする秀次郎の前に重吉が現れ、その流れで「道行」の図となります。この「道行き」を二人が共にするのもシリーズのパターンですが、シリーズ作でいちばん出会いのシチュエーションが凝っているのがこの第7作の「昭和残侠伝 死んで貰います」であるとも言われています。
れるのを見て、繰り返し量産されるワンパターンの作品でも観客が求めるならばと自らに言い聞かせて、同じような役どころを演じ続けたのだそうです(体力維持のため、ジムに通って筋力トレーニングに励み始めたのも各シリーズが始まったこの頃から)。因みに、あの三島由紀夫は、高倉や鶴田浩二主演の任侠映画を好み、特にこの「昭和残侠伝 死んで貰います」を高く評価していたとのことです。
編集部「あそこは質屋から間に合わせにもってきたドスと対照的だったけれど、なんか健さんのほうが良かった」


真田広之
「昭和残侠伝 死んで貰います」●制作年:1970年●監督:マキノ雅弘●脚本:大和久守正●撮影:林七郎●音楽:菊池俊輔●時間:92 分●出演:高倉健/藤純子/加藤嘉/池部良/永原和子/荒木道子/山本麟一/津川雅彦/三島ゆり子/松原光二/永原和子/八代万智子/石井富子/高野真二/諸角啓二郎/赤木春恵/小倉康子/日尾孝司/下沢広之(真田広之)/永山一夫/南風夕子/
小林稔侍/久地明/久保一/伊達弘/田甲一/土山登士幸/花田達/木川哲也/佐川二郎/山浦栄/畑中猛重/青木卓司/五野上力/高月忠/長門裕之●公開:1970/09●配給:東映●最初に観た場所:新宿昭和館(01-03-22)(評価:★★★★)●併映:「日本女侠伝 血斗乱れ花」(山下耕作)/「博徒対テキ屋」(小沢茂弘)



ロスで私立探偵をしているハリー・キルマー(ロバート・ミッチャム)は旧友のジョージ・タナー(ブライアン・キース)から、日本の暴力団・東野組に誘拐された娘を救出してほしいと依頼される。タナーは海運会社を営むマフィアで、武器密輸の契約トラブルで東野組と揉めていたのだ。東野が殺し屋・加藤次郎(待田京介)をロスに送り、4日以内にタナー自身が日本に来なければ娘の命はないと通達、タナーは、かつて進駐軍憲兵として日本に勤務していた旧友のハリーに相談したのだ。ハリーは日本語が堪能な上、田中
健(高倉健)という暴力団の幹部と面識があった。健はハリーに義理があり、東野との交渉もうまく行くだろうというのがタナーの目算だった。ハリーは20年ぶりに東京へ向い、ボディガードで監視役のダスティ(リチャード・ジョーダン)がこれに同行する。ハリーとタナーの共通の友人で、日本文化に惹かれ、大学で米国史を教えるオリヴァー・ウィート(ハーブ・エデルマン)の邸に滞在することになる。ハリーはバー「キルマーハウス」を訪れる。戦後の混乱時に田中英子(岸惠子)と知り合い、子連れの英
子が娼婦にならずに済んだのもハリーの愛情のお蔭だった。実は英子の夫・健が奇跡的に復員し、健は妻と娘が受けた恩義を尊び、二人から遠去かったのだが、ハリーには健と英子は兄妹だと話していた。軍命で日本を去る際にハリーはタナーから金を用意してもらい、バーを英子に与えたのだった。娘・花子(クリスティーナ・コクボ)も今は美しく成長し、ハリーを歓迎する。ハリーは健に会いに京都に向かう。健はヤクザの世界から足を洗い、剣道を教えていた
が、義理を返すために頼みを引き受ける。タナーの娘が監禁されている鎌倉の古寺に忍び入って娘を救出、今度は健の命が東野組に狙われる。ハリーはタナーが東野と手を握り、自分たちを裏切ったことを知る。東野組がウィート邸に殴り込みをかけ、目の前で花子とダスティが殺される。タナーを射殺したハリーは健と共に、賭場を開いている東野邸に殴り込む―。
1974年のシドニー・ポラック監督作で、脚本は、2年後に「
レナード&ポール・シュレイダー兄弟の東映ヤクザ映画への思い入れが感じられる作品です。とりわけレナード・シュレイダーはやくざ世界と任侠道についてきちんとリサーチをした上で原作を書いていていて、シドニー・ポラック監督もシュレイダー兄弟の意向をできるだけ汲んで映画化した模様です。従って、日本を舞台にしたハリウッド映画にありがちな、実態と乖離したへんてこりんなジャポニズムは殆ど見られなかったように思います。日本で米国史を教え、日本の歴史研究にも関心があるというオリヴァー・ウィート(ハーブ・エデルマン)のモデルは、原作者のレナード・シュレイダー自身でしょうか。
シドニー・ポラック監督自身も日本のヤクザ映画を研究したらしく、日本のヤクザ映画でよくみかけるショットなども結構あったように思います(東映のスタッフが制作に関わっている)。菅原文太の「
「
リーが、自分を裏切ったタナーを射殺した後、東野邸に単独で殴り込みをかけようとする田中健に同行するのは、「昭和残侠伝」シリーズにおける池部良の役どころと重なります。日本のヤクザ映画の"道行"のパターンを踏襲しているわけですが、日本人俳優と外国人俳優の組み合わせであってもその形がさほど崩れておらず、目だった違和感がないのは、ロバート・ミッチャムの演技力に負うところも大きいように思いました(岸恵子もほどよくバタ臭いところがあるし...)。
でも、全体としては、やはり高倉健の映画という感じです(高倉健はロバート・ミッチャムの次にクレジットされている)。殴り込みも、"主戦場"で闘っているのは高倉健で、岡田英次演じる敵方のボスを殺った後も、一人で何人
もの相手をしていて、ロバート・ミッチャムは拳銃とライフルで周辺でそれをアシストするのみです。最後は負傷でへたり込んで、ラストの待田京介演じる殺し屋との勝負にも手は出しません。最後に主人公が怒りを
爆発させて暴れまくり、それが観る側にカタルシス効果を生むのはヤクザ映画のお決まりですが、アメリカ人が観たら少しフラストレーションを感じるかも。実際、興行的にはアメリカでは失敗作だったようですが、後にクエンティン・タランティーノなどによって再評価されて自身の作品でオマージュが込めれたり(「キル・ビル」('03年))、ミンク監督、スティーヴン・セガール主演でリメイク作品が作られたりしています(「イントゥ・ザ・サン」('05年))。
「ザ・ヤクザ」●原題:THE YAKUZA●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督・製作:シドニー・ポラック●脚本:ポール・シュレイダー/ロバート・タウン●撮影:岡崎宏三/デューク・キャラハン●音楽:デイヴ・グルーシン(挿入歌:「ONLY THE WIND」作詞:阿久悠)●原作:レナード・シュレイダー●時間:122分●出演:ロバート・ミッチャム/高倉健/ブライアン・キース/ハーブ・エデルマン/リチャード・ジョーダン/岸惠子/岡田英次/ ジェームス繁田/待田京介/クリスティーナ・コクボ/汐路章/郷鍈治/植村謙二郎 /ヒデ夕樹●日本公開:1975/03●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)


桜島を望む鹿児島県知覧町で、元特攻隊員の生き残りの山岡(高倉健)はこの日も漁船「とも丸」から養殖カンパチの生簀に餌を撒いていた。それを見守る妻の知子(田中裕子)と二人の間には子はなく、「とも丸」を我が子のように大事に乗りこなしてきた。知子が14年前に腎臓を患い人工透析が必要になったのを機に、沖合漁をやめカンパチの養殖を始めたのだった。昭和が終わり、平成が始まった頃、山岡は同じ特攻隊の生き残りだった藤枝(井川比佐志)が自殺したという知らせを聞き、青森に住む藤枝が
毎年のように山岡にリンゴを送っていただけに衝撃を受ける。数日後、藤枝の孫・真実(水橋貴己)が山岡の元を訪れる。真美(水橋貴己)が携えた藤枝の遺品のノートには、山岡から「生きろ」と励まされているように感じたこと、昭和が終わり自分の役目は終わったと感じることなど、その想いが綴られていた。数日後、山岡はかつて特攻隊員らから「知覧の母」と呼ばれて慕われていた富屋食堂の店主・山本富子(奈良岡朋子)から、特攻で命を落とした金山文隆少尉こと
キム・ソンジェ(小澤征悦)の遺品である面飾りのついた財布を韓国の実家に届けてほしいと託される。折しも医師(中井貴一)から知子の余命が僅か1年半と宣告されており、山岡は最後の思い出にと知子との韓国行きを決める。戦争時、知子(戦時中:笛木優子)は金山と婚約していて、当時は遺言さえ検閲される時代であり、山岡(戦時中:高杉瑞穂)は金山から口頭で、自分は大日本
帝国のためではなく、知子や実家の家族、そして朝鮮民族の誇りのために死ぬのだという言葉を託されていた。山岡と知子は韓国の金山の実家を訪ねるが、遺族はなぜ金山が死に日本人の山岡が生き残ったのかと山岡を責める。しかし、山岡が金山の遺言を伝えると遺族は山岡を責めるのを止め、遺品を受け取る。山岡は知子に、今まで金山の遺言を伝えなかったことを謝罪すると、知子は「ありがとう」と泣きながら寄り添う。月日が流れ、21世紀のある日、老いた山岡は海辺で、役目を終えた「とも丸」が炎に包まれるのを見つめていた―。
2001年公開の降旗康男監督作で、その2年前に高倉健(1931-2014)が鹿児島県知覧町の「特攻平和祈念館」を訪ね、同行していた降旗康男監督に自ら映画化を持ちかけた作品で(高倉健が自ら製作を持ちかけたのは初めて)、降旗康男監督はこの作品で2001 年度・第52回「芸術選奨」を受賞しています。日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、70歳で203本目の出演映画となった高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退、富屋食堂の店主・山本富子を演じた奈良岡朋子がブルーリボン賞助演女優賞を受賞しています。
さくに応じ、気を使う番組スタッフに「あまり準備しない方がいいんだ」というようなことを言っていたのが印象的でした。同時期の「クローズアップ現代」の高倉健特集の中では、降旗康男監督が高倉健のことを、「涙を流すようなことが出来る俳優ではなかったのが最近変わった」というようなことを述べています。また、高倉健本人へのインタビューで国谷裕子キャスターが、「俳優・高倉健は、ご自身・小田剛一(高倉健の本名)に近づいているのではありませんか」と問うたところ、「小田剛一よりも高倉健の方が遥かに長くなりましたから、どちらが本当の自分なのか分からなくなってきています」と答えています。
映画の方は、「卓庚鉉」と「宮川三郎」を「金山文隆」ということで一緒にしてしまったのはともかく、金山に許婚がいて、それが主人公である山岡の今の妻の知子であり、その知子は不治の病に冒されていて余命いくばくもなく、最期に金山の遺言を伝えるため遺族のいる韓国へ夫婦で向かう―という、やや作りすぎというか、前半部分には同じ特攻隊の生き残りだった藤枝
の自殺もあったりして、それでその娘(水橋貴己)が山岡を訪ねてくるわけですが、こうなると盛り込み過ぎという感じで、何
れの話も中途半端になってしまった印象を拭えません。個人的評価としては本来は△ですが、「知覧の母」を演じた奈良岡朋子の、まさに「ホタル」のエピソードを語る部分の演技が光っていて(舞台劇風でありながらも映画向けの演技をしている)、星半個加点して○にしました。舞台出身俳優の中でも上手いです、この人。「
高倉健はこの映画においてもカッコいいにはカッコいいですが、ヤクザ映画ならともかく「
が「ホタル」のエピソードを語るシーンが前半部にあって、終盤それを超えるシーンが無いのも、"盛りだくさん"なのに"もの足りなさ"を感じる一因かもしれません。









直木賞の選評を見ると、8人の選考委員のうち田辺聖子、黒岩重吾、井上ひさし、五木寛之の各氏が◎で、他の委員も概ね推している印象ですが、故・井上ひさしが、「高い質を誇っていた」と評価しつつも、「8つの短編が収められているが、内4つは大傑作であり、残る4つは大愚作である」とし、「大傑作群に共通しているのは、"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向」であると指摘しているのが興味深いです(「この趣向で書くときの作者の力量は空恐ろしいほどだ」とも述べている)。
「鉄道員」は降旗康男監督、高倉健主演で映画化されましたが('99年/東映)、昔劇場で観た、同じ降旗康男監督、高倉健主演の「駅 STATION」('81年/東映)が、倉本聰が高倉健のために書き下ろした脚本だったためか、何だか高倉健のプロモーション映画みたいで、日本映画ワースト・テンに名を連ねることも多く、個人的にも、自殺した円谷選手の遺書のナレーションを映画の中で使うことなどに抵抗を感じ、いいと思えませんでした(小谷野敦氏が「日本語をローマ字読みしてくっつけた作品のタイトルはダサい」と言っていた(『頭の悪い日本語』('14年/新潮新書))。先にそのイメージと何となくあって、結局「鉄道員」の方は劇場で観ることはなく、テレビがビデオで観たように思います。
原作が短編なので、志村けんが酒癖の悪い炭坑夫として出て来きて炭鉱事故で亡くなる話や、その息子が成長してイタリアへ料理修業に行く話など、原作に無いエピソードで膨らませている部分はありますが、原作の持ち味(ひとことで言えば気持よく泣けるということか)はまずまず保たれていたのではないでしょうか。志村けんは
自宅の留守番電話に主演の高倉健直々の出演依頼のメッセージが入っていて驚いたとのこと。志村けんが俳優として映画出演したのは、ドリフターズの付き人時代に志村康徳名義で端役出演した「ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険」('68年/東宝)、「ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓」('69年/東宝)の2作以外ではこの作品のみとなります(志村けんは山田洋次監督の「キネマの神様」に菅田将暉とダブル主演の予定だったが、'20年に新型コロナウイルスによる肺炎で急逝したため叶わなかった)。
これも一歩間違えばどうしようもない映画になりそうなところを、高倉健をはじめとする俳優陣の演技力で強引に持たせていたという感じがします。実際、日本アカデミー賞の主要7部門のうち、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(高倉健)、主演女優賞(大竹しのぶ)、助演男優賞(小林稔侍)の6部門を受賞していて、高倉健主演映画で、主要7部門中"6冠"達成は山田洋次監督の「幸福
の黄色いハンカチ」('77年/松竹)以来ですが、「幸福の黄色いハンカチ」の方は第1回日本アカデミー賞ということもあって、監督賞や脚本賞は「『男はつらいよ』シリーズ」との合わせ技でした(因みに、「駅 STATION」も作品賞、脚本賞、主演男優賞を獲っている)。「鉄道員」で獲らなかったのは助演女優賞だけで、これは広末涼子のパートになるかと思いますが、その広末涼
子さえも、けっして上手いとは言えませんが、そう悪くもなかったように思います(最優秀賞の候補にはなっている)。大竹しのぶは流石に上手ですが、やはりこの映画は高倉健なのでしょう(高倉健は'99年モントリオール世界映画祭で主演男優賞受賞)。「駅STATION」の頃より年齢を重ねて良くなっていて、これなら泣ける? 泣けるかどうかと評価はまた別だとは思いますが。降旗康男監督、高倉健のコンビは2年後に再タッグを組み「
「鉄道員(ぽっぽや)」●制作年:1999年●監督:降旗康男●脚本:岩間芳樹/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一(主題歌:坂本美雨「鉄道員」)●原作:浅田次郎●時間:112分●出演:高倉健/大竹しのぶ/広末涼子/吉岡秀隆/安藤政信/志村けん/奈良岡朋子/田中好子/小林稔侍/大沢さやか/安藤政信
/山田さくや/谷口紗耶香/松崎駿司/田井雅輝/平田満/中本賢/中原理恵/坂東英二/きたろう/木下ほうか/田中要次/石橋蓮司/江藤潤/大沢さやか●公開:1999/06●配給:東映(評価★★★☆)





橋雅男/榎本勝起/烏丸せつこ/田中邦衛/竜雷太/小林念侍/根津甚八/宇崎竜童/北林谷栄/藤木悠/永島敏行/古手川祐子/今福将雄/名倉良/平田昭彦/阿藤海/室田日出男●公開:1981/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル池袋(82-07-24)(評価★★☆)●併映:「泥の河」(小栗康平) 






日露戦争開戦目前の1901(明治34)年10月、軍部はロシア軍と戦うためには雪と寒さに慣れておく必要があると判断、弘前の第4旅団司令部で行われた「日露戦争に備えての雪中行軍作戦会議」に、弘前第8師団より第4旅団長・友田少将(島田正吾)、参謀長・中林大佐(大滝秀治)、「弘前第31連隊」より連隊長・児島大佐(丹波哲郎)、第1大隊長・門間少佐(藤岡琢也)、徳島大尉(高倉健)、「青森第5連隊」よ
り津村中佐(小林桂樹)、木宮少佐(神山繁)、神田大尉(北大路欣也)、第2大隊長・山田少佐(三國連太郎)らがそれぞれ出席して、耐寒訓練として冬の八甲田山を軍行する計画を立て、神田大尉率いる「青森第5連隊」と徳島大尉率いる「弘前第31連隊」の参加が決まる。双方は青森と弘前から出発、八甲田山ですれ違うという進行が大筋だった。翌年1月20日、徳島率いる弘前
第31連隊は、雪に馴れている27名の編成部隊で弘前を出発し、一方の神田大尉も小数精鋭部隊の編成を申し出たが、大隊長・山田少佐に拒否され210名という大部隊で青森を出発した。神田の青森第5連隊の実権は大隊長・山田少佐に移っており、神田の用意した案内人を山田が断ってしまう。神田の部隊は低気圧に襲われ、磁石が用をなさなくなり、ホワイトアウトの中に方向を失い、次第に隊列は乱れ、狂死する者
さえ出始める。一方徳島の部隊は、案内人(秋吉久美子)を先頭に風のリズムに合わせ、八甲田山に向って快調に進む。出発してから1週間後、徳島隊は八甲田に入って神田大尉の従卒の遺体を発見、神田の青森第5連隊の遭難は疑う余地はなかった。そして徳島は、吹雪の中で永遠の眠りにつく神田と再会。青森第5連隊の生存者は山田少佐以下12名。徳島の弘前第31連隊は全員生還。山田少佐はその後に拳銃自殺する―。
1977年公開の森谷司郎監督、橋本忍脚本、高倉健・北大路欣也主演作品で、原作は新田次郎の小説『八甲田山死の彷徨』('71年/新潮社)。原作は、1902(明治35)年)1月、陸軍第8師団の「青森歩兵第5連隊」が青森市街から八甲田山の田代新湯に向かう雪中行軍訓練で参加者210名中199名が死亡した事件に材を得ていますが、「弘前歩兵第31連隊」の雪中行軍訓練と時期は重なるものの、お互いに相手の計画を知らなかったということで、これを徳島・神田両大尉が同時に行軍指揮の命令を受け、事前に両隊が八甲田山で出会うことを示し合わてスタートしたように描き、更に、強行スケジュールを立てて先を急いだ神田・青森隊と、自然の驚異への畏怖からそれに逆らわず慎重に行動した徳島・弘前隊を対比的に描くことで、ちょうど南極点一番乗りを目指して片や偉業達成、片や全滅したアムンゼン隊とスコット隊の物語のようにドラマチックにしたのは、新田次郎の作家としての力量の為せる技でしょう。
従って、事実としては、映画のように高倉健が演じた徳島大尉(モデルは福島泰蔵大尉)と北大路欣也が演じた神田大尉(モデルは神成文吉大尉)が出発前に出会って語らったこともなく、また、映画では三國連太郎演じる山田少佐(モデルは山口鋠少佐)の我田引水の判断や行動が遭難事故の誘因となったように描かれていますが、実際には山口少佐の遭難事故に与えた影響は判明していないそうです(部下の犠牲で生き残ったことへの自責の念から病院で拳銃自殺するというのも新田次郎の創作)。
一方の、徳島大尉は理想のリーダーのように描かれていますが、実際には福島隊も地元の案内人との関係は良くなかったらしく、高倉健の徳島大尉が秋吉久美子演じる(軽々と雪山を登って行く部分はスタント?)案内人に感謝の意を表して部下らに捧げ銃を命じるのは完全に映画のオリジナルで、新田次郎原作においてすら、小銭を渡して冷たくあしらったことになっています(映画では、三國連太郎演じる山田少佐が「金目当てか?」と案内人を追い返したのと対照的な行動として描かれている。感動的な場面ではある)。
しかしながら、事実がどうだったかはともかく、映画は映画としてみれば面白く、少なくとも長尺の割には、途中飽きることはありませんでした。原作の方は企業研修や大学において、リスクマネジメントやリーダー論などの経営学のケーススタディに用いられることがあるようですが、当然事前に読ませておくということでしょう。映画も(その後の討論を含め1日がかりの研修ならともかく)勤務時間中に見せるのは約2時間40分の長さはきついかもしれません。
そもそも、原作にしても映画にしても、明治陸軍という特殊な組織の中での話であって、これを現代のビジネス社会に当て嵌めて考えたり応用したりするには無理があるという見方もあるようですが、確かにそうした面もあるかもしれないし(「北大路欣也演じる神田大尉が上官の無茶な命令に逆らえないのはフォロワーシップの欠如だ」と言うのは簡単だが、当時の陸軍においては上官命令には絶対服従だっただろう)、一方、高倉健演じる徳島大尉はあまりに理想的に描かれ過ぎている感じもします。しかしながら、個々のリーダーシップと言うより組織論的な観点から見ると、命令系統の混乱が青森隊を混迷状況に陥れたわけで、マネジメントにおける「命令統一の原則」が守られなかった場合どうなるかということと呼応しており、参考になる部分はあるかもしれません。
今日まで続く"山岳映画"の流れの嚆矢にもなったとされる作品ですが(一応これ以前にも「



「八甲田山」●制作年:1977年●監督:森谷司郎●製作:
山谷初男/丹古母鬼馬二/菅井きん/加藤嘉/田崎潤/栗原小巻/金尾哲夫/玉川伊佐男/江角英明/樋浦勉/浜田晃/加藤健一/江幡連/高山浩平/安永憲司/佐久間宏則/大竹まこと/新克利/山西道宏/船橋三郎●公開:1977/06●配給:東宝(評価:★★★☆)



江戸築地明石町の伊三郎(高山徳右衛門)一家は、真の任侠道に生きることを信条としていた。一方、任侠道の裏を行く新興の但馬屋の仁右衛門(荒木忍)は、悪徳商人の丸谷惣平(大国一広)と組んで明石町の長屋を立ち退かせ、そこに歓楽街を作って、伊三郎一家を蹴落そうとしていた。伊三郎一家の三ン下の政吉(片岡千恵蔵)は、長屋で母おかね(二葉かほる)と二人暮しで、隣家の浪人小磯文之進(長浜藤夫)の娘お雪(琴糸路)とは相思の仲だった。政吉の兄貴分の弥吉(原聖三郎)が但馬屋一家の企みを知り、密かに但馬屋一家へ掛け合いに行くが、やがて水死体となって大川に浮かぶ。憤怒した政吉は単身但馬屋に乗り込むが、子供扱いされ追い返される。悔しさを伊三郎に訴える政吉を、親分は「何も恥じるこたねえ。おめいにはまだ貫禄が足りねいのだ」と諭し、「修行して立派な男になって帰って来い」と励まし旅に出す。そして3年、世は明治となり、但馬屋一家は官権溜池の御前(大井正夫)を黒幕に勢力を広げていた。御前は芸妓雪松に懸想し、仁右衛門が口説き役に廻ったが雪松はうんと言わない。雪松こそ病に伏す父のため芸妓になったお雪だった。そんな折政吉が旅から帰って来て、強引に立ち退き工作を進める但馬屋一家の横暴を知った政吉は但馬屋一家に乗り込むが、そこに大親分鮫洲の卯之助(小川隆)の仲裁が入り、事は納ったかにみえた。しかし、但馬屋一家は卯之助を謀って仲裁を無効にし、大挙して伊三郎一家を襲撃、親分にもケガを負わせる。今まさにお雪と祝儀を挙げたばかりの政吉は、これを知って単身但馬屋一家へ乗り込み、遂に仁右衛門を叩き斬る。そんな政吉に旅に出ることを勧める親分に対し、政吉は新時代に生きる人間になりたいと言い自首しに行く―。
太平洋戦争が始まってちょうど丸1年経った頃の1942(昭和17)年12月11日公開の八尋不二のオリジナル脚本、森一生監督作で、1962(昭和37)年に同じく八尋不二のオリジナル脚本、森一生監督により勝新太郎、小山明子主演でリメイクされています。
例えば、上記シリーズの中で最も早く作られたマキノ雅弘監督の「日本侠客伝」('64年/東映)も、深川木場の材木を運び出す運送業者の木場政組と親興の沖山運送の対立が背景にあって、新興やくざの非道に対して、昔気質の一家がじっと忍耐した末に斬り込みに行くというストーリーはよく似ているし、旅に出ていた片岡千恵蔵・政吉が戻って来て一家の危機を救うという構図は、出征先から戻って来た高倉健・長吉が一家を救うのと同じです(この映画でも高倉健は最後着物をはだけて上半身裸になるが、長吉は軍人上がりで躰に入れ墨はない)。
一方、「日本侠客伝」における狭い意味での"侠客"は、中村錦之助演じる一家の"客人"清治でしょう(当初は中村錦之助が主演予定だったが、中村錦之助のスケジュールがつかず、高倉健を主演にした脚本に変更された)。清治は、世話になった親分への義理のために覚悟して死地へ向かいますが、その女・三
田佳子演じるお咲には彼が何を考えているか分かっていて、こちらもそれを制止することなく最後の杯を交わして男を送り出します。一方の高倉健・長吉は、清治の遺体を見て意を決し、まさかそんなことになるとは思ってもいない恋仲の富司純子・お文には黙って何も告げず、敵方へ斬り込みに向かいます。ここでの富司純子は、「緋牡丹博徒」(シリーズ1968-1972、全8作)が始まる前の"お穣さん"的な役柄ですから、「三代の盃」で琴糸路・お雪に対応する役は(お雪も武家の娘でお嬢さんではあるが)、その精神性においては富司純子のお文よりむしろ三田佳子のお咲であるとも言えます。
「三代の盃」の片岡千恵蔵は、三ン下の頃は江戸時代で髷であるのが、旅から戻って来た時は明治で散切りですが、三ン下の頃からすでに貫禄が隠し切れず、やや窮屈そうな演技でしょうか(「
尚、片岡千恵蔵版で政吉が旅に出てからの年月の経過を表すために、旅芸人一座が街道を行くシーンとその一座の久保幸江(1924-2010/享年86)の歌が流れますが、久保幸江のデビューは1948年であり、これは戦後に久保幸江を特別出演させてフィルムを改修したものだそうです。やはり、そうしたシーンで入れて時間的経過を表す間を持たせないと、場面が切り替わって髷から散切りになっただけでいきなりすぐに迫力が増すというのは、当時としても観ていてやや唐突な印象があったのではないかという気がします。
「三代の盃(花嫁一本刀)」●制作年:1942年●監督:森一生●脚本:八尋不二●撮影:松村禎三●音楽:西梧郎●時間:67分●出演:片岡千恵蔵/琴糸路/高山徳右衛門/林寛/荒木忍/近松里子/長浜藤夫/原聖四郎/小川隆/大井正夫/香
住佐代子/二葉かほる/梅村蓉子/ 仁札功太郎/岬弦太郎/川崎猛夫/石川秀道/大国一公/水野浩/横山文彦 /久保幸江●公開:1942/12●配給:大映(京都撮影所)(評価:★★★☆)
「日本侠客伝」●制作年:1964年●監督:マキノ雅弘●脚本:笠原和夫/
野上龍雄/村尾昭●撮影:三木滋人●音楽:斎藤一郎●時間:98分●出演:中村錦之助(萬屋錦之介)/高倉健/大木実/松方弘樹/田村高廣/長門裕之/藤間紫/富司純子/南田洋子/三田佳子/伊井友三郎/ミヤコ蝶々/津川雅彦/島田
景一郎/五十嵐義弘/南都雄二/徳大寺伸/加藤浩/佐々木松之丞/島田秀雄/堀広太郎/那須伸太朗/大城泰/安部徹/天津敏/品川隆二/国一太郎/佐藤晟也/大井潤/月形哲之介/大前均/楠本健二/有馬宏治/内田朝雄●公開:1964/08●配給:東映(評価:★★★☆) 




冬の網走駅で汽車を降ろされた男たちが、トラックに乗せられ網走刑務所へ護送される。受刑者の橘真一(高倉健)もその一人だった。入所後、雑居房に入
れられた橘は、殺人鬼"鬼寅"の義兄弟と称して幅を利かせていた牢名主の依田(安部徹)や同じ新入りの権田(南原宏治)と衝突、喧嘩の責任をとって懲罰房に送られる。一人になった橘は、幼かった自分と妹を飢えさせないために母(風見章子)が不幸な再婚をしたこと、養父の横暴に耐え切れず母と妹(宗方奈美)を残して家を出たことを回想する。都会へ
出てやくざとなった彼は、渡世の義理で人を斬り3年の刑期を宣告され網走刑務所に送られたのだった。入所から半年が過ぎ、真面目に労役に汗を流す橘を囚人たちは点数稼
ぎとして冷ややかに見る。仲間への意地から騒動を起こし再び懲罰房へ行かされる橘に対し、保護司の妻木(丹波哲郎)だけは親身になって相談に乗る。故郷の妹からの手紙によると、母が死の床にあり早く戻ってほしいという内容
であり、同情した妻木は仮釈放の手続きを約束してくれる。一方、雑居房では依田、権田らが脱走計画を練っており、密告すれば渡世の仁義を踏みにじるイヌとされ、巻き込まれると仮釈放が消える橘は苦悩する。この脱走を直前になって失敗させたのは同じ雑居房にいた阿久田老人(嵐寛
寿郎)であり、彼の正体こそ"鬼寅"であり、鬼寅は橘の苦境を見抜いて彼を救ったのだった。翌日、森林伐採の労役でトラックに乗せられた依田らは無蓋の荷台から飛び降りる。権田と手錠でつながれた橘も彼と一緒に飛び出して脱獄囚とされてしまう。報告を聞いた妻木は、やっともらった橘の仮釈放認可の書類を破り捨て二人を追う―。
石井輝男(1924-2005/享年81)監督による作品で、'65年公開当初は小沢茂弘監督の任侠映画「関東流れ者」(鶴田浩二主演)の添え物映画という位置づけであり、映画業界でカラーフィルムによる「総天然色」が主流になりつつあった時代に、「主役が脱獄囚であり、ヒロインにあたる女優が登場せず、ラブロマンスもないため興収を見込めない(だから当たりそうもない)」という理由で、石井輝男監督らが北海道のロケハンより戻ってきた際に「予算はカット、添え物の白黒映画にする」と会社(東映)から言われたそうです。何とかカラーで撮らせてくれと執拗に迫った高倉健に対し、大川博社長(東映の事実上の創業者)は「文句があるなら主役を梅宮辰夫に変えるぞ」と言ったそうです。しかしながら映画はヒットし、高倉健は一躍スターダムへ。石井輝男=高倉健のコンビで、以下、シリーズ第10作まで作られました。
この第1作は、(高倉健はカラー映画を望んだわけだが望みが聞き入れられず)白黒映画になったことで、雪中シーンが多いことやシンプルなアクションシーンなどとの相乗効果で、却ってシリーズの中で際立つことになったように思
います(シリーズ第2作以降は全作品カラー)。また、第2作以降に出てくる(「男はつらいよ」シリーズのような)マドンナ的な女性がこの第1作では登場せず、「母子物」的要素と「義侠心」に近い男の'友情'が前面に押し出されています(「母子物」的要素は第5作「網走番外地 南国の対決」にもあるが、それは子供が当事者であって、一方、第1作は大人としての主人公が当事者である)。
ロケは大変だったろうなあと思わせる作品でした(特に高倉健と南原宏治)。大雪原の脱走、トロッコによる追跡劇、列車による手錠切断から大団円までを演じた高倉健
は、まだこの頃みずみずしさがあって良く、若くして存在感がある一方で(このシリーズでの特徴だが)ちょっと剽軽一面も見せます(高倉健の実際の性格にも近いとも言われる)。南原宏治やいかつい顔の安部徹(若手時代は二枚目俳優だった)も悪くないですが、嵐寛寿郎演じる"八人殺しの鬼寅"の役回りも極めて良く、嵐寛寿郎は南原宏治、安部徹らを凌駕するどころか、準主役の丹波哲郎や主役の高倉健より良かったという人もいます。どういうわけか獄中59年、残り刑期が21年あったはずの"鬼寅"
が、以降のシリーズ作でも設定を変え、キャラクターのみ"鬼寅"のそれを継承して毎回出てきますが、やっぱりこの第1作の"鬼寅"が一番印象に残ります。
は、スタンリー・クレイマー監督、トニー・カーチス,シドニー・ポワチエ主演の「手錠のままの脱獄』('58年/米)を換骨奪胎した脚本を書き、女っ気の無い、男だけの脱獄映画、雪上アクション映画となったという経緯があります(こうなると伊藤一の小説は殆ど'原作'とは言えないのでは)。
脱獄する気も無かったのに脱獄犯として追われるという不条理な状況に置かれた高倉健演じる主人公の橘が、最後の最後に嫌疑が晴れてスッキリというこのパターンは、映画会社が違っても高倉健が主演の「
「網走番外地」●制作年:1965年●監督・脚本:石井輝男●企画:大賀義文●撮影:山沢義一●音楽:八木正生●原作:伊藤一「網走番外地」●時間:92分●出演:高倉健/丹波哲郎/南原宏治/安部徹/嵐寛寿郎/田中邦
衛/沢彰謙/風見章子/杉義一/潮健児/滝島孝二/三重街恒二/ジョージ吉村/佐藤晟也/関山耕司/菅沼正/北山達也/志摩栄/宗方奈美/河合絃司/小塚十紀雄/山之内修/日尾孝司/久保一/相馬剛三/久地明/沢田実/水城一狼/久保比佐志/山田甲一/沢田浩二/秋山敏/植田灯孝/最上逸馬/勝間典子/佐藤公明/石川えり子●公開:1965/04●配給:東映(評価:★★★★)


今月['14年11月]10日に亡くなった高倉健(1931-2014/享年83)の52歳の時の出演作。文春文庫ビジュアル版の『
この作品は最初に観た時は、大原麗子(当時37歳)のあまりの暗さに引いてしまいましたが(「網走番外地 北海篇」('65年)などで見せた勝気で明るい女性キャラとは真逆)、改めて観直してみるとそう悪くも感じないのは自分の年齢のせいか。その大原麗子(1946-2009/享年62)も亡くなってしまったわけですが、河原役の伊丹十三(1933-97/享年64)、居酒屋の親爺で英治の師匠役の東野英治郎(1907-94/享年86)、「兆治」の常連客役の池部良(1918-2010/享年92)(高倉健とは「昭和残侠
伝」シリーズ('65-'72年)以来、正確には「
俳優だけでなく、原作者の山口瞳(1926-1995/享年68)や、この映画の題字を担当した山藤章二(共に右写真中央)、ミュージシャンの細野晴臣なども出演していて(水色のランニング姿。カメオ出演というより役者として出ている。'82年から'83年にかけてYMOの活動休止期があり、それを機に坂本龍一が「
4回も通って、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗康男君のところへ謝りに行きます」と口説いたけれども、高倉健は「いや、それをされたら降旗監督が困ると思いますから。二つを天秤にかけたら誰が考えたって、世界の黒澤作品を選ぶでしょうが僕には出来ない。本当に申し訳ない」と断ったため、黒澤明から「あなたは難しい」と言われたそうです(結局、鉄修理は
今観ると、高倉健の降旗監督に寄せる信頼が、この作品のアットホームな雰囲気を醸しているのかもしれないという気もします。高倉健と田中邦衛がやり合う場面で、田中那衛のオーバーアクションに高倉健が噴き出したように見えるシーンがあって、最初に観た時はそれがものすごく引っかかったのですが(普通はNGではないかと)、そうした雰囲気の中で撮られた作品だと思うとさほど気にはならず、高倉健の出演作の中ではちょっと変わった味があると思えるようにもなってきました。





「居酒屋兆治」●制作年:1983年●監督:降旗康男●製作:田中プロモーション●脚本:大野靖子●撮影:木村大作●音楽:井上堯之(主題歌「時代おくれの酒場」 歌:高倉健/作詞・作曲:加藤登紀子)●時間:125分●原作:山口瞳「居酒屋兆治」●出演:高倉健/大原麗子/加藤登紀子/





パリ郊外の飛行クラブでインストラクターをしているパイロットのマヌー(アラン・ドロン)と新型エンジンの開発に熱中する元エンジニアのローラン(リノ・ヴァンチュラ)のもとに、芸術家の卵である前衛彫刻家レティシア(ジョアンナ・シムカス)が現れ、2人とも彼女に恋心を抱くが、やがて3人はアフリカの海底に5億フランの財宝が眠っているとの話を聞き、共にコンゴの海に旅立つことに―。
やはり、ちょっと胴長のジョアンナ・シムカス(当時24歳)の明るさが効いていて、周囲を巻き込んでしまう―それだけに、彼女が演じるレティシアが亡くなってしまうのが哀しく、そこから本来のリノ・ヴァンチュラとアラン・ドロン(当時32歳)の哀愁を帯びたギャング映画みたいなトーンになるといったところでしょうか。それでも、この映
画は最後まで映像的には光に満ちているように思え、最後の方に出てくる銃撃戦の舞台となる要塞みたいな島も良かったです。
アラン・ドロンを軸に見れば「太陽がいっぱい」系の雰囲気かとも思えますが、結末から逆算的に見るとリノ・ヴァンチュラの視点での物語ということになるのかもしれません(アラン・ドロンというのは常に「見られる側」の存在であって、「見
る側」にはならないような気がする)。因みに、

リノ・ヴァンチュラ(1919-1987)は、俳優になる前はレスリングのヨーロッパ・チャンピオンだったそうですが、この映画での彼は、最近の俳優で言うと、ジャン・レノなどに通じるものがあるなあと勝手に思ったりしました。
テーマ曲もいいですが、アラン・ドロンの歌うサブ・テーマ曲「愛しのレティシア」は、口笛の伴奏がホンダシビックのCFなどで使われましたが、サワリの部分を聞くだけで、レティシアを水葬に付す場面など、映画の様々なシーンが甦ってきます。甘いけれど、許せる甘さの"青春映画"であると思います。
因みに、日本映画に「
識無しに観ましたが、「冒険者たち」の影響を受けていることがすぐに分かり、実際そうでした。但し、ジョゼ・ジョヴァンニ原作、ロベール・アンリコ監督の「冒険者たち」は、
女性が途中で亡くなり、男性が生き残ります。それが「無宿」では、ラスト逆になっていて、しかもそこで話は終わってしまい、「生き残った
者」(この場合は梶芽衣子)がどうなったかという話ありませんでした。どちらかというとダークな背景が似合いそうな勝新太郎、高倉健、梶芽衣子の3人が、前半は任侠映画風ながらも、後半はずっと陽光燦々と輝く海で演技しているというちょっと毛色の変わった作品ですが、こうした終わり方から、日本版「冒険者たち」のつもりなのか(それにしては"生き残った者の掟"というテーマが見出せない)、宝探しは単に部分的にモチーフを借りただけなのか、個人的には釈然としませんでした(男たちがヤクザ=ギャングに追われるところなどは同じなので、日本版「冒険者たち」のつもりなのだろうが...)。
因みに、この映画は高倉健(1931-2014)と勝新太郎(1931-1997)が共演した唯一の作品であるとともに、高倉健と大滝秀治(1925-2012)の初共演作であり、大滝秀治は前半部分で高倉健が演じる主人公に殺されるヤクザの親分役で出ています(ただし、直接的な絡みは無く、二人同時に画面に映らない演出がされている)。高倉健と大滝秀治はその後「
「冒険者たち」●原題:LES AVENTURIERS●制作年:1967年●制作国:フランス●監督:ロベール・アンリコ●脚本:ロベール・アンリコほか●撮影:ジャン・ボフティ●音楽:フランソワ・ド・ルーベ●原作:ジョゼ・ジョヴァンニ「生き残った者の掟」●時間:112分●出演:アラン・ドロン/リノ・ヴァンチュラ/ジョアンナ・シムカス/セルジュ・レジニア●日本公開:1967/05●配給:大映●最初に
観た場所:有楽町・ニュー東宝シネマ1(77-11-24)●2回目:テアトル池袋(84-11-11) (評価:★★★★☆) ●併映(2回目):「カリブの熱い夜」(テイラー・ハックフォード)



1972年5月~「ニュー東宝シネマ1」、1995年7月~「ニュー東宝シネマ」(「ニュー東宝シネマ2」閉館)、2005年4月~新生「有楽座」、2009年2月10日~「TOHOシネマズ有楽座」(右) 2015年2月27日閉館


「無宿(やどなし)」●制作年:1974年●監督:斉藤耕一●製作:勝新太郎/西岡弘善/真田正典●脚本:中島丈博/蘇武道男●撮影:坂本典隆●音楽:青山八郎●時間:125分●出演:勝新太郎/高倉健/梶芽衣子/安藤昇/藤間紫/山城新伍/中谷一郎/三上真一郎/今井健二/大滝秀治/殿山泰司/神津善行
/荒木道子/石橋蓮司/栗崎昇/木下サヨ子/伊吹新吾●公開:1974/10●配給:東宝(評価:★★★)







中国における高倉健の人気は、ハリウッドスターを含めた海外映画俳優の中で今でもトップという圧倒的なものだそうですが、女優で最大人気は、'84年から中国で放映されたTVドラマ「赤い疑惑」シリーズの山口百恵だそうで、殆どカリスマのような存在。
大物女優の鞏俐(コン・リー)なども、中国が本当にオリジナルな芸術性を持った作品を作り始めた第五世代の代表的監督・張芸謀(チャン・イーモウ)の初期作品「紅いコーリャン」('87年)に出演した頃は、中国国内で「中国の山口百恵」と言われているという話を聞いた覚えがあります(本書によれば、その後すぐに彼女はそのイメージから脱却したそうだが、スピルバーグがプロデュースした「SAYURI」('05年)に、チャン・ツィイーと共に日本人女性役で出ているというのが興味深い。本来は日本人がやる役だけれど、ハリウッド進出は中国女優の方が既に先行している)。
冒頭で掲げた「君よ憤怒の河を渉れ」は(原作は「ふんぬ」だが映画タイトルには「ふんど」のルビがある。因みに監督の佐藤純彌は東大文学部卒)、高倉健の東映退社後の第一作目(当時45歳)で、高倉健が演じるのは、政界黒幕事件を追ううちに無実の罪を着せられ警察に追われる立場になる東京地検検事・杜丘冬人(上
司の伊藤検事正を池部良が演じている)。原田芳雄が演じる彼を追う警視庁の矢村警部との間で、次第に友情のようなものが芽生えてくるのがポイントで、最後は2人で黒幕を追い詰め、銃弾を撃ち込むという任侠映画っぽい結末でした(検事と警官で悪を裁いてしまうという無茶苦茶ぶりだが、その分カタルシス効果はあったか)。健さんは逃亡過程においては、馬を駆ったりセスナ機を操縦したりと007並みの活躍で、その間、中野良子や倍賞美津子に助けられるという盛り沢山な内容です。
そこそこ面白いのですが、B級と言えばB級で、なぜこの映画が中国で受けたのか不思議というのはあります。中国人の約80%以上が観たというのが大袈裟だとして、たとえそれが30%であったとしても、最も多くの人が観た日本映画ということになるのではないでしょうか。張藝謀(チャン・イーモウ)監督のように、この映画を観て高倉健に恋い焦がれ、その想いがコラボ的に高倉健が主演することになった「単騎、千里を走る。」('05年)に結実したということもあります。やっぱり、中国で文革後に実質初めて公開された日本映画という、そのタイミングが大きかったのでしょう。今観ると、意外と2時間半の長尺を飽きさせずに見せ、また70年代テイスト満載の映画でもあり、その部分を加味して星半個オマケしておきます。


「君よ憤怒の河を渉れ」●制作年:1976年●監督:佐藤純彌●製作:永田雅一●脚本:田坂啓/佐藤純彌●撮影:小林節雄●音楽:青山八郎●原作:西村寿行「君よ憤怒の河を渉れ」●時間:151分●出
演:高倉健/原田芳雄/池部良/大滝秀治/中野良子/倍賞美津子/岡田英次/西村晃/田中邦衛/伊佐山ひ
ろ子/内藤武敏
/大和田伸也/下川辰平/夏木章/石山雄大/松山新一/木島進介/久富惟晴/神田隆/吉田義夫/木島一郎/浜田晃/岩崎信忠/姿鉄太郎/沢美鶴/田畑善彦/青木卓司/田村貫/里木佐甫良/阿藤
海(阿藤快)/松山新一/小島ナナ/中田勉、/飛田喜佐夫/細井雅夫/千田隼生/宮本高志/本田悠美子●公開:1976/02●配給:松竹 (評価:★★★☆) 
池部良(杜丘の上司・伊藤検事正)/原田芳雄/高倉健





'81年刊行の第1集は、チャップリン作品から始まり、「
映画の解釈が深く、第1集では「
また、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」('77年/松竹)を、「これを見て、ヤクザ映画の輝ける悲運のヒーローだったあの健さんが、幸せの健さんへと堕落したとみる人はよっぽど幸せなマイホームパパ」とし、この話は「嘘」を描いてもっともらしいところが秀逸なのであり、「山田監督は人情でなぜ悪いと居直っていますが、これはあくまで愛の神話であって、人情の神話ではありません」と断言、「健さんのヤクザ映画にみられた禁欲的フ
ェミニズムは、ここでは一夫一妻制のエロチシズムに見事に変質しています」という読み解きも興味深く、他にも、娯楽映画なども含め、新たな視点に気づかせてくれる解説が多くあり、映画評論としても第一級のものであるように思えます。
「禁じられた遊び」●原題:JEUX INTERDITS●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ポスト●撮影:ロバート・ジュリアート●音楽:ナルシソ・イエペス●時間:86分●出演:ブリジッド・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー/スザンヌ・クールタル/リュシアン・ユベール/ロランヌ・バディー/ジャック・マラン●日本公開:1953/09●配給:東和●最初に観た場所:早稲田松竹 (79-03-06)(評価:★★★★☆)●併映:「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)
「生きる」●制作年:1952年●監督:黒澤明●製作:本木莊二郎●脚本:黒澤明/橋本忍/小国英雄●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●原作:レフ・トルストイ「イワン・イリッチの死」●時間:143分●出演:志村喬/小田切みき/金子信雄/関京子/浦辺粂子/菅井きん/丹阿弥谷津子/田中春男/千秋実/左ト全/藤原釜足/中村伸郎/渡辺篤/木村功/伊藤雄之助/清水将夫/南美江/阿部九洲男 /宮口精二/加東大介/山田巳之助●日本公開:1952/10●配給:東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館 (85-02-24) (評価★★★★)●併映「隠し砦の三悪人」(黒澤明)

「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」●制作年:1978年●監督:山田洋次●製作:名島徹●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:佐藤勝●原作:
渥美清(新得警察署の警察官・渡辺勝次)
「シェーン」●原題:SHANE●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ジャック・シェーファー「シェーン」●時間:118分●出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジーン・アーサー/ブランドン・デ・ワイルド/ジャック・パランス/ペン・ジョンスン/エドガー・ブキャナン/エミール・メイヤー●日本公開:1953/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-20) (評価★★★☆)●併映:「駅馬車」(ジョン・フォード)
「エデンの東」●原題:EAST OF EDEN●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ポール・オスボーン●撮影:テッド・マッコード●音楽:レナード・ローゼンマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:115分●出演:ジェームズ・ディーン/ジュリー・ハリス/レイモンド・マッセイ/バール・アイヴス●日本公開:1955/10●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-18)(評価:★★★☆)●併映:「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)
「JAWS/ジョーズ」●原題:JAWS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:デイヴィッド・ブラウン/リチャード・D・ザナック●脚本:ピーター・ベンチュリー/カール・ゴッドリーブ●撮影:ビル・バトラー●音楽:ジョン・ウィリアムズ
●原作:ピーター・ベンチュリー●時間:124分●出演:ロイ・シャイダー/ロバート・ショウ/リチャード・ドレイファス/カール・ゴットリーブ/マーレイ・ハミルトン/ジェフリー・クレイマー/スーザン・バックリーニ/ジョナサン・フィレイ/クリス・レベロ/ジェイ・メロ●日本公開:1975/12●配給:CIC●最初に観た場所:新宿ローヤル (82-12-28) (評価★★★★)






「フィールド・オブ・ドリームス」は、アイオワ州のとうもろこし畑で働いていた
農夫キンセラ(ケビン・コスナー)が、ある日「それを造れば彼が来る」という"声"を聞き、畑を潰して野球場を造ると、「シューレス・ジョー」ことジョー・ジャクソンなど
過去の偉大な野球選手たちの霊が現れ、その後も死者との不思議な交流が続くというもので(キンセラが訪ねる作家テレンス・マン(ジェームズ・アール・ジョーンズ(1931-2024))のモデルはJ・D・サリンジャーで、原作では実名で登場する)、「ナチュラル」は、ネブラスカ州の農家の息子で若くして野球の天才と呼ばれた男(ロバート・レッドフォード)が、発砲事件のため
球界入りを遅らされるが、35歳にして「ニューヨーク・ナイツ」に入団し、"奇跡のルーキー"として活躍するというもの。
野球映画はまだまだあって、ロン・シェルトン監督の「さよならゲーム」('88年)は「ナチュラル」と比較されそうな、これまたケビン・コスナー主演の野球映画でした(評価★★★)。ロン・シェルトン監督はマイナーリーグで野球選手として活躍した経歴を持つ人物です。そう言えば、レッドフォードもコスナーも共にハイスクール時代は野球の選手でした。
コメディでは、デヴィッド・S・ウォード監督の「メジャーリーグ」('89年)(評価★★★)、「メジャーリーグ2」(評価★★)('94年)がありました。チャーリー・シーンは
オリバー・ストーン監督の 「
ャーリー・シーンはこの間「
セレックが中日ドラゴンズに助っ人でやってきた元メジャー・リーガー役。星野仙一と広岡達朗をモデルにしたという中日ドラゴンズの監督役・高倉健との共演はまずまずでしたが、日本にやって来た外国人のカルチャー・ショックというワンパターンにはまった?(評価★★★)。女流監督ペニー・マーシャルが撮ったトム・ハンクス主演の「
こうした今まで観た映画のことを思い浮かべながらでないと、歴史的イメージがなかなか湧かない部分もありましたが、個人的には、例えば、アフリカ系とアングロサクソン系の混血であるデレク・ジーターが、ここ何年にもわたり"NYヤンキースの顔"的存在であり、アメリカ同時多発テロ事件の後はニューヨークそのものの顔になっていることなどは、ベースボールが人種差別という歴史を乗り越え、近年ナショナル・スポーツとしての色合いが強まっているという意味で、何だか象徴的な現象であるような気がしています(メジャーリーグでは近年ラティーノと呼ばれる中南米出身者が占める比率が高まりつつある)。
(●2020年8月13日に、映画「フィールド・オブ・ドリームス」の舞台となったダイアーズビルの野球場でシカゴ・ホワイトソックス 対 ニューヨーク・ヤンキースの試合を開催することが前年に決まっていたが、そ
の後、新型コロナウィルス感染拡大による2020年のMLBのシーズン短縮化に伴い、ホワイトソックスの対戦相手はセントルイス・カージナルスに変更され、さらに、8月3日になって、移動の困難から試合開催の中止が発表された。)
ジェームズ・アール・ジョーンズ 2024年9月9日、ニューヨーク州の自宅で死去、93歳。
「フィールド・オブ・ドリームス」●原題:FIELD OF DREAMS●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フィル・アルデン・ロビンソン●製作:ローレンス・ゴードンほか●音楽:ジェームズ・ホーナー●原作:W・P・キンセラ 「シューレス・ジョー」●時間:107分●出
演:ケヴィン・コスナー/エイミー・マディガン/ギャビー・ホフマン/レイ・リオッタ/ジェームズ・アール・ジョーンズ/バート・ランカスター●日本公開:1990/03●配給:東宝東和 (評価:★★★☆)
「ナチュラル」●原題:THE NATURAL●制作年:1984年●制作国:アメリカ●監督:バリー・レヴィンソン●製作:マーク・ジョンソン●脚本:ロジャー・タウン/フィル・ダッセンベリー●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:
ランディ・ニューマン●原作:バーナード・マラマッド●時間:107分●出演:ロバート・レッドフォード/ロバート・デュヴァル/グレン・クロース/キム・ベイシンガー●日本公開:1984/08●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:自由が丘武蔵野推理(85-01-20) (評価:★★★☆)●併映:「再会の時」(ローレンス・カスダン)
「さよならゲーム」●原題:BULL DURHAM●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ロン・シェルトン●製作:トム・マウント/マーク・バーグ●撮影:ボビー・バーン●音楽:マイケル・コンヴァーティノ●時間:107分●出演:ケビン・コスナー/スーザン・サランドン/ティム・ロビンス/ロバート・ウール/ウィリアム・オリアリー/デイビッド・ネイドルフ/ダニー・ガンズ/トム・シラルディ/ロイド・ウィリアムズ/リック・マーザン/ジェニー・ロバートソン/ガーランド・バンティング/スティーブン・ウェア/ヘンリー・G・サンダース●日本公開:1988/09●配給:ワーナー・ブラザース (評価:★★★☆)
「メジャーリーグ」●原題:MAJOR LEAGUE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・S・ウォード●製作:クリス・チェイサー/アービー・スミス●撮影:レイナルド・ヴィラロボス●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●時間:107分●出演:トム・ベレンジャー/チャーリー・シーン/コービン・バーンセン/ウェズリー・スナイプス/デニス・ヘイスバート/チェルシー・ロス/マーガレット・ホイットン/レネ・ルッソ/ボブ・ユッカー/ピート・ブコビッチ●日本公開:1989/06●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★)
レネ・ルッソ in「


「メジャーリーグ2」●原題:MAJOR LEAGUE II●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・S・ウォード●製作:ジェームズ・G・ロビンソン/デヴィッド・S・ウォード●脚本:R・J・スチュワート●撮影:ビクター・ハマー●音楽:ミシェル・コロンビエ●時間:105分●出演:チャーリー・シーン/トム・ベレンジャー/コービン・バーンセン/マーガレット・ホイットン/ジェームズ・ギャモン/スティーブ・イェーガー/ デニス・ヘイスバート/レネ・ルッソ/オマー・エップス/石橋貴明/ミシェル・バーク/アリソン・ドゥーディ●日本公開:1994/06●配給:東宝東和(評価:★★)
「ミスター・ベースボール」●原題:MR.BASEBALL●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・スケピシ●製作:フレッド・スケピシ/ダグ・クレイボーン/ロバート・ニューマイヤー●脚本:ゲイリー・ロス/ケヴィン・ウェイド/モンテ・メリック●撮影:イアン・ベイカー●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:110分●出演:トム・セレック/高倉健/デニス・ヘイスバート/高梨亜矢/塩屋俊/穂積隆信/豊原功補/藤原稔三/森永健司/問田憲輔/スコット・プランク/レオン・リー/アニマル・レスリー●日本公開:1993/02●配給:UPI(評価:★★★)
「ホット・ショット」●原題:HOT SHOTS!●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジム・エイブラハムズ●製作:ビル・バダラート●脚本:ジム・エイブラハムズ/パット・プロフト●撮影:ビル・バトラー●音楽:シルヴェスター・リヴェイ●時間:85分●出演:チャーリー・シーン/ケイリー・エルウィス/ヴァレリア・ゴリノ/ロイド・ブリッジス/ケヴィン・ダン/ジョン・クライヤー●日本公開:1991/12●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)
「ホット・ショット2」●原題:HOT SHOT! PART DEUX●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジム・エイブラハムズ●製作:ビル・バダラート●脚本:ジム・エイブラハムズ/パット・プロフト●撮影:ビル・バトラー●音楽:シルヴェスター・リヴェイ●時間:89分●出演:チャーリー・シーン/ロイド・ブリッジス/ヴァレリア・ゴリノ/ブレンダ・バーキ/リチャード・クレンナ●日本公開:1993/06●配給:20世紀フォックス(評価:★★★)![プリティ・リーグ [DVD].jpg](http://hurec.bz/book-movie/%E3%83%97%E3%83%AA%E3%83%86%E3%82%A3%E3%83%BB%E3%83%AA%E3%83%BC%E3%82%B0%20%5BDVD%5D.jpg)
「プリティ・リーグ」●原題:A LEAGUE OF THEIR OWN●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ペニー・マーシャル●製作:ロバート・グリーンハット/エリオット・アボット●脚本:ババルー・マンデル/ローウェル・ガンツ●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/マドンナ/ロリー・ペティ/ロージー・オドネル/ジョン・ロビッツ/デヴィッド・ストラザーン/ゲイリー・マーシャル/ビル・プルマン/ティア・レオーニ/アン・キューザック/エディ・ジョーンズ/アン・ラムゼイ/ポーリン・ブレイスフォード/ミーガン・カヴァナグ/トレイシー・ライナー/ビッティ・シュラム/ドン・S・デイヴィス/グレゴリー・スポーレダー●日本公開:1992/10●配給:コロンビア・トライスター映画社(評価:★★★★)

「星の王子 ニューヨークへ行く」●原題:COMING TO AMERICA●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ランディス●製作:ジョージ・フォルセイ・ジュニア/ロバート・D・ウォッチス●脚本:デビッド・
シェフィールド/バリー・W・ブラウスティン●撮影:ウディ・オーメンズ●音楽:ナイル・ロジャース●時間:117分●出演:エ
ディ・マーフィ/アーセニオ・ホール/ジェームズ・アール・ジョーンズ/ジョン・エイモス/マッジ・シンクレア/シャリ・ヘッドリー/ヴァネッサ・ベル
/フランキー・フェイソン/サミュエル・L・ジャクソン●日本公開:1988/12●配給: UIP(評価:★★★)●最初に観た場所:名古屋・毎日ホール(88-12-30)●併映(同日上映):「3人のゴースト」(リチャード・ドナー) 






昭和22年秋、台風のため青函連絡船・層雲丸の転覆事故が起き、必死の救助活動が行われる中、3人の復員服姿の男が台風で不通になった列車から飛び降り、転覆事故の混乱に紛れ、本土へ向けて夜の海峡を船を漕いでいた。台風が去った後、転覆した層雲丸の乗客の遺体が次々と収容されるが、引取り人のいない遺体があり、収容遺体は実際の乗客数より2体多かった。一方、同じ台風の中、函館市内て質屋が全焼する火事があり、焼け跡から質屋一家の他殺体が発見され、質屋一家強盗殺人事件と、転覆事故の乗船者数より多い2体の遺体が結びついた―。
[映画]函館署のベテラン刑事の弓坂(伴淳三郎)は、亡くなった男2人と行動を共にしていた犬飼太吉なる大男の行方を粘りつよく捜索を続け、その男・犬飼太吉(三國連太郎)と思われる男と一夜を共にした女郎・杉戸八重(左幸子)の存在を突き止める―。

主人公・犬飼役の三國連太郎の生涯最高の演技に加えて、刑事役の高倉健の演技もいいですが、高倉健と共に捜査にあたる元
刑事役の伴淳三郎と、堅気になろうとしてなれない薄幸の女性・八重(ひたすら犬飼を思いながら生き続ける哀しさ)を演じた左幸子の演技が、この二人もまた生涯最高の演技と言っていいくらいに、とてもいいです。
とりわけ伴淳三郎については、内田吐夢監督がロケで、大勢の見物人の前で彼を罵倒して何十回もNGを出し、喜劇王伴淳のプライドをズタズタに傷つけ、すっかり意気消沈させたとのことで、実はそれこそが内田吐夢の狙いであり、伴淳がいつもの喜劇と場が違って巨匠の撮る大作にシリアスな大役ということで、いいところを見せようと肩に力が入り過ぎるのを、監督が伴淳を怒鳴りつける事で意図的に元気をなくさせ、それが作品が求めるところの人生に疲弊している老刑事像に繋がったというから、恐ろしいまでの演出です。



「飢餓海峡」●制作年:1965年●制作:東映●監督:内田吐夢●脚本:鈴木尚之●撮影:仲沢半次郎●音楽:冨田勲●時間:183分●出演:三國連太郎(樽見京一郎/犬飼多吉)、左幸子(杉戸八重/千鶴)/伴淳三郎(弓坂吉太郎刑事、函館)/高倉健(味
村時雄刑事、東舞鶴)/加藤嘉(杉戸長左衛門、八重の父)/三井弘次(本島進市、亀戸の女郎屋「梨花」の主人)/沢村貞子(本島妙子)/藤田進(東舞鶴警察署長、味村の上司)/風見章子(樽見敏子、樽見の妻)/山本麟一(和尚、弓坂
の読経を褒める)/最上逸馬(沼田八郎、岩内の強盗犯)/安藤三男(木島忠吉、岩内の強盗犯)/沢彰謙(来間末吉)/関山耕司(堀口刑事、東舞鶴)/亀石征一郎(小川、チンピラ)/八名信夫(町田、チンピラ)/菅沼正(佐藤刑事、函館)/曽根秀介(八重が大湊で働いていた娼館、"花や"の主人)/牧野内とみ子(朝日館女中)/志摩栄(岩内署長)/岡野耕作(戸波刑事、函館)/鈴木昭生(唐木刑事、東舞鶴)/八木貞男(岩田刑事、東舞鶴)/外山高士(田島清之助、岩内署巡査部長)/安城百合子(葛城時子、八重が東京で訪ねる)/河村久子(煙草屋のおかみ)/高須準之助(竹中誠一、樽見家の書生)/河合絃司(巣本虎次郎、網走刑務所所長)/加藤忠(刈田>治助)/須賀良(鉄、チンピラ)/大久保正信(漁師の辰次)/西村淳二(下北の巡査)/田村錦人(大湊の
