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映画と異なる結末。小説は小説的に書かれ、映画は映画的に作られているが、軍配は映画か。

Modern Classics a Clockwork Orange.jpg時計じかけのオレンジ 完全版.jpg アントニイ・バージェス.jpg  時計じかけのオレンジ dvd.jpg スタンリー・キューブリック2.jpg
Modern Classics a Clockwork Orange (Penguin Modern Classics)』『時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)』Anthony Burgess「時計じかけのオレンジ [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD]」Stanley Kubrick
『時計じかけのオレンジ(ハヤカワ・ノベルズ)』['71年]表紙イラスト:真鍋博/『時計じかけのオレンジ 完全版 (ハヤカワepi文庫 ハ 1-1)』['08年]/『時計じかけのオレンジ (ハヤカワ文庫 NV 142) 』['77年]
ハヤカワ・ノヴェルズ 『時計じかけのオレンジ』.jpg時計じかけのオレンジ100.jpg『時計じかけのオレンジ』hn.jpg 近未来の高度管理社会。15歳の少年アレックスは、平凡で機械的な毎日にうんざりしていた。そこで彼が見つけた唯一の気晴らしは「超暴力」。仲間とともに夜の街を彷徨い、盗み、破壊、暴行、殺人をけたたましく笑いながら繰り返す。だがやがて、国家の手がアレックスに迫る―。

時計じかけのオレンジ002.jpg 『時計じかけのオレンジ』は、アンソニー・バージェス(1917-1993/76歳没、翻訳出版物ではアントニイ・バージェスと表記される)が1962年に発表したディストピア小説で、スタンリー・キューブリック(1928-1999/70歳没)によって映画化された「時計じかけのオレンジ」('71年/英・米)は、第37回「ニューヨーク映画批評家協会賞」の作品賞や監督賞を受賞しています。

時計じかけのオレンジ 09.jpg 小説にも映画にも、少年たちが作家の家に押し入り、妻を暴行する場面がありますが、原作者アンソニー・バージェスが兵役でジブラルタルに駐在中、ロンドンに残っていた身重の妻が市内が停電中に4人の若い米軍脱走兵に襲われ、金を強奪され、結局赤ん坊を流産したという出来事があったとのことです。さらに、それから何年か後、バージェスは手術不可能な脳腫瘍があるという告知を受け、自分が死んだ後に妻が困らないようにと猛スピードで原稿を書き、『時計じかけのオレンジ』の元稿ができたそうです(脳腫瘍は後に誤診と判明した)。

時計じかけのオレンジ 004.jpg しかしながら、出来上がった原稿を作者自身が読み返してみて、ただの少年犯罪の小説であって新鮮味も無いことに気がつき、たまたま60年代初頭のソ連に旅行をした時、ソ連にも不良少年がいて英国の不良少年ともなんら違いがなかったことから、主人公の少年が、英語とロシア語を組み合わせて作った「ナツァト言葉」を操るという設定にしたとのことです。

 作品が発表された時の評判はイマイチで、「タチが悪く、取るに足らない扇情小説」と言われ、原罪と自由意志がテーマだとは気づかれずにいましたが、若者の間ではアンダーグラウンド的に支持を得ました。そして、時代や価値観の急激な変化や、映画界でも暴力や性の描写に寛大になってく中で、時代に乗り遅れないテーマを模索していたスタンリー・キューブリック監督の目にこの作品がとまって映画化されることになり、そのことによって一気に注目されるようになったとのことです。

 ストーリーと設定については原作と映画に大きな違いはないのですが、設定で1つ異なるのは、映画では成人男性である主人公のアレックスが、原作では15歳で設定されている点です。これはさすがに15歳のままの設定では映像化しにくかったということでしょう。

時計じかけのオレンジ003.jpg それと、それ以上に大きく異なるのは結末です。映画の衝撃的かつ皮肉ともとれる結末は、原作の第3部の6章で、アレックスが「ルドビコ療法」による「治療」を施されたにもかかわらず、結局「すっかり元通り」になった(要するに"ワル"に戻った)と宣言するところに該当します。しかし、原作は第1部から第3部までそれぞれ7章ずつで構成されており、この第3部の第7章が映画では割愛されています。

 なぜこうしことが起きたかというと、原作が米国で最初に出版された際、バージェスの意図に反し最終章である第21章(第3部の第7章)が削除されて出版され、キューブリックによる映画も本来の最終章を削除された版を元に作られたためです。

 その第3部の第7章を収めているゆえに、「ハヤカワepi文庫」版は「完全版」と謳っているわけです。本版は、'80年刊行の〈アンソニー・バージェス選集(早川書房)に準拠していますが、それ以前に刊行('77年)の「ハヤカワ文庫」版にはこの最終章がありません。

時計じかけのオレンジes.jpg 最終の第3部の第7章はどういった内容かというと、アレックスは21歳になっていて、新しい仲間たちと集い再び暴れ回る日々に戻るも、そんな生活に対してどこか倦怠感を覚えるようになって、そんなある日、かつての仲間ピートと再会し、妻を伴う彼の口から子どもが生まれたことを聞いて、そろそろ自分も落ち着こうと考え、暴力からの卒業を決意し、かつて犯した犯罪は若気の至りだったと総括するのです。

 文庫解説の映画評論家の柳下毅一郎氏(自称「特殊翻訳家」)によると、キューブリックは、「この版(第3部の第7章がある版)は、ほとんど脚本を書き上げるまで、読まなかった。けれども、私に関する限り、それは納得のいかないもので、文体や本の意図とも矛盾している」と言っていたとのことです(キューブリックは、出版社がバージェスを説き伏せて、彼の"正しい判断"に反して付け足しの章を加えさせたと思い違いしていたようだ。第3部の第7章はいわばハッピーエンドであるため、そうした"作為"があった思うのも無理ない)。

時計じかけのオレンジ dh.jpg 米国刊行時に最終章のカットを求めたのは実は米国出版社であり、キューブリックや出版社は、最終章をとってつけたハッピーエンドに過ぎないと考え、一方のバージェスはむしろ「主人公か主要登場人物の道徳的変容、あるいは英知が増す可能性を示せないのならば、小説を書く意味などない」とし、第6章で「すべて元通り」のままで終わったのでは、ただの寓話にしかならないと反発したそうです(バージェスはカソリック作家でもある)。

時計じかけのオレンジch.jpg この両者の言い分をどうとるかで「映画派」と「小説派」に分かれるかもしれません(バージェスは映画版を嫌っていたという)。バージェスの側に与したいところですが、そうなると、「ルドビコ療法」によるアレックスの「治療」というのは結果的にうまくいったことになり、「拷問を通じた再教育」を是認するともとられかねない恐れもあるように思われます。映画では、そうした自己矛盾に陥るのを回避し、原作が自由意志の小説であることがインパクトをもって伝わることの方を重視したように思います(キューブリックは「シャイニング」('80年/英)の結末も原作と変えていて、原作者のスティーヴン・キングと喧嘩になっている)。

 「映画派」に立っても「小説派」に立っても、人間の自由意志は尊重されるべきであるというテーマは変わりないと思います。小説は小説的に書かれ、映画は映画的に作られているように思います。ただし、小説の結末をキューブリックが、「納得のいかないもので、文体や本の意図とも矛盾している」としているのは単に"いちいちゃもん"をつけているとは言い難く、まさに小説の方の弱点とも言え、個人的にはこの勝負、映画の方に軍配を上げたいと思います(「シャイニング」は、自分は原作の方に軍配を上げるのだが)。

 因みに、先に取り上げた同じくディストピア小説であるジョージ・オーウェルの『一九八四年』を読んでいる時に、いつも想起させれていたのがこの作品でした。そして、バージェスはオーウェルの『一九八四年』を意識して『1985年』という未来小説を書いていますが、そこでは、オーウェルが描いた管理社とはまた違った社会が描かれているようです。


【2836】 尾形 誠規 (編) 『観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88
』 (2015/06 鉄人社)
IMG_7882.JPG「時計じかけのオレンジ」●原題:A CLOCKWORK ORANGE●制作年:1971年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ウォルター・カーロス●原作:アンソニー・バージェス●時間:137分●出演:マルコム・マクダウェル/ウォーレン・クラーク/ジェームズ・マーカス/ポール・ファレル/リチャード・コンノート/パトリック・マギー/エイドリアン・コリ/ミリアム・カーリン/オーブリー・モリス/スティーヴン・バーコフ/イケル・ベイツ/ゴッドフリー・クイグリー/マッジ・ライアン/フィリップ・ストーン/アンソニー・シャープ/ポーリーン・テイラー●日本公開:1972/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-02-09)●2回目:吉祥寺セントラル(83-12-04)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「非情の罠」(スタンリー・キューブリック)
『時計じかけのオレンジ(ハヤカワ・ノベルズ)』['71年]表紙イラスト:真鍋博
ハヤカワ・ノヴェルズ  『時計じかけのオレンジ』.jpg

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ニューシネマの中ではラストに救いがある「ゲッタウェイ」。メディアミックスの先駆「ある愛の詩」。

ゲッタウェイ 1972 .jpgゲッタウェイ dvd.jpg ゲッタウェイ05.jpg  ある愛の詩 1970.jpg
ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD]」スティーブ・マックィーン/アリ・マックグロー/ 「【映画パンフ】ある愛の詩 アーサー・ヒラー アリ・マッグロー リバイバル判 1976年」ライアン・オニール

ゲッタウェイs.jpg 刑務所を裏取引で出所したドク・マッコイ(スティーブ・マックイーン)は、引き換えに、取引相手のテキサスの政界実力者ベニヨン(ベン・ジョンソン)の要求で、妻キャロル(アリ・マッグロー)と銀行強ゲッタウェイ01.jpg盗に手を染める。ベニヨンからはルディ(アル・レッティエリ)とジャクソン(ボー・ホプキンズ)が助手兼ドクの監視役として送り込まれ、綿密な計画の末に強盗は何とか成功するが、ジャクソンが銀行の守衛を射殺してしまう。ルディは目撃者に面が割れたジャクソンを車内で射殺し、今度はドクに銃を向けるが、ドクの銃が先に火を吹く。ドクは、銀行から奪った金を約束通りベニヨンの元に運び込ぶが、キャロルの様子がおかしく、実はベニヨンとキャロルは男女の関係にあり、当初はドクゲッタウェイ02.jpgを裏切って消す考えだったのだ。しかし、キャロルはドクではなくベニヨンを射殺する。ドクは逃走中に車を止め、嫉妬と怒りからキャロルを殴り倒す。一方のルディは、防弾チョッキゲッタウェイ03.jpgのお蔭で死んでおらず、獣医の家に押し入り、ドクに撃たれた肩の治療をしていたが、ベニヨンの死を知り、ドクの追跡を開始する。ドクは町で自分が指名手配になっているのを知ってショットガンをゲッタウェイ04.jpg買い求め、警察に追われながらも逃げて、エルパソのホテルに辿り着く。だが、そこへはルディが先回りしていて、ベニヨンの手下も向かっていた。ルディがホテルに現れ、ドグが彼を殴り倒した時に今度はベニヨンの手下が現れて大銃撃戦が始まるが、ドクのショットガンで全員が倒され、ルディも射殺される。ドクはホテルからメキシコ人の老人のトラックに乗り込み、国境を越えたところで老人からトラックを買取り、夫婦はメキシコ側へ消えていく―。

 サム・ペキンパー監督の1972年作品で、原作は『鬼警部アイアンサイド』などで知られるジム・トンプスン、脚本は、後に「48時間」「ストリート・オブ・ファイアー」を監督するウォルター・ヒルが手掛けています。追手からの逃避行を続けるうちに、主人公2人の間に夫婦愛が甦ってきて、激しく血生臭い銃撃戦を乗り越えて2人は新たな世界へ逃げ延びる―というニューシネマの中では珍しく(?)ラストに救いがあるタイプです。アーサー・ペン監督の「俺たちに明日はない」('67年)にしても、銀行強盗の末路は警官から一斉射撃を浴びての"蜂の巣状態"でしたから。

ゲッタウェイ  .jpgゲッタウェイ 淀川.jpg しかしながら故・淀川長治は、必ずしも2人の未来は明るいと示唆されているわけではないと言っており、これは、原作にこの続きがあって、バッドエンディンが待ち受けていることを指していたのでしょうか。但し、原作における主人公のキャラクターは極悪人に近く、取引上やむなく銀行強盗をする映画の主人公とはかなり異なるようです。個人的には、この映画のラストには、やはり何となくほっとさせられます。

 一方、この映画の方には、もう1つのエンディングがあったこともよく知られており、最後は2人が警官に撃たれて「俺たちに明日はない」のボニーとクライドのように"蜂の巣状態"になるものだったそうです(実際に撮影された?)。これは、サム・ペキンパー監督が「俺たちに明日はない」に非常に感化されていたということもあったようですが、スティーブ・マックイーンが反対したようです。

 元々この映画は、ピーター・ボグダノビッチ監督、シビル・シェパード主演、原作者のジム・トンプスン脚本で進められていたのが、スティーブ・マックイーンが監督も主演女優も脚本家も変えてしまったみたいで、マックイーンがこうも口を挟む背景には、彼が実質的な製作者になっていったことがあるようです。音楽は、ペキンパー作品の常連ジェリー・フィールディングが担当することになったのが、これまたマックィーンの主張でクインシー・ジョーンズのジャズ音楽に差し替えられています。

 このように、様々な場面でサム・ペキンパー監督とも意見が対立し、マックイーンが押し切った部分もあれば譲歩した部分もあるようです。ペキンパーは破滅的な結末を望んだのかと思いましたが、実はこの映画を風刺のきいたコメディにしたかったらしいとも言われています。そうしたこともあってか、ペキンパー本人はこの作品に不満を持っていたとされていますが、結果として彼の作品の中では最大のヒット作となりました。

ゲッタウェイ  マックグロー.jpgある愛の詩05.jpg 妻役のアリ・マックグローは銃を扱ったことがなく、マックイーンが銃の撃ち方を教えて銃に慣れさせたりもしたそうですアリ・マックグロー 2.jpgが、「ある愛の詩」('70年)の白血病で死んでいく女子大生よりは、こちらの方が"演技開眼"している印象です。でも、この作品での共演をきっかけにマックイーンと結婚し、この後2本だけ映画に出て実質的に映画界を引退してしまいました。6年後に離婚してしまったことを考えると惜しい気もしますが、2006年に68歳で Festen(映画「セレブレーション」の舞台化)でブロードウェイ・デビューを果たしています。

ファラ・フォーセット オニール.jpgある愛の詩021.jpg 一方、「ある愛の詩」で共演したライアン・オニールは、その後「ペーパー・ムーン」('73年)、「バリー・リンドン」('73年)などに主演するなどして活躍しましたが、2001年に慢性白血病に冒されていることが判明し、また、パートナーであったファラ・フォーセットのガンによる死(2009年6月25日、マイケル・ジャクソンと同じ日に亡くなった)を看取るとともに、自身も前立腺がんであることが公表(2012年)されていて、こちらはかなりタイヘンそうだなあと。

love story eric.jpg 「ある愛の詩」は、エリック・シーガルによる同名の小説が原作ですが、未完の小説を原作として映画の製作が始まり、先に映画が完成し、映画の脚本を基に小説が執筆された部分もあるそうです。先に小説が刊行され、その数週間後に映画が公開されており、今で言う"メディアミックス"のはしりでした。ペーパーバックを読みましたが、初めて英語で読んだ小説の割には読み易かったのは、ある種ノベライゼーションに近かったせいもあるかもしれないし、ストーリーが古典的で結末が見えているせいもあったかもしれません。この映画のヒットの後、難病モノの映画が幾つか続いた記憶があります(アメリカ人は白血病モノが好きなのか?)。

大林宣彦2.jpg この映画がアメリカでヒットしたことについて、映画監督の大林宣彦氏はアメリカで封切り時にこの作品を現地で観ていて、ベトナム戦争で疲弊したアメリカが、本音ではこのような純愛ドラマを求めている時代感覚を肌で感じていたとのこと。但し、この映画の作られた1970年と言えばまだベトナム戦争の最中ですが、映画内にその影は一切見えません(最初観た時は"ノンポリ"恋愛映画だと思ったが、今思えば意図的にそうしていたのか)。日本でもヒットしたのは、古典的なストーリーに加えて、フランシス・レイの甘い音楽の効果もあったかと思います(日本ではフランシス・レイ来日記念盤として1971年3月に発売されたアンディ・ウイリアムス盤が、1月に発売されていたフランシス・レイ盤の先を越してトップ10にランクされた)。

love story Tommy Lee Jones.jpg 因みに、主人公のオリバー・バレット4世(ライアン・オニール)のルームメイト役で無名時代のトミー・リー・ジョーンズ(当時24歳)が出演していますが、その後3年間は映画の仕事がなく、彼の無名時代は長く続き、オリバー・ストーン監督の「JFK」('91年)出演でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからようやっと注目されるようになり、ハリソン・フォード主演の「逃亡者」('93年)でアカデミー助演男優賞を獲得しています。オリバーやそのルームメイトが通うのは名門ハーバード大学ですが、トミー・リー・ジョーンズは実人生においてもハーバード大学の出身で、当時のルームメイトに後の副大統領となるアル・ゴアがいたとのことです。


raiann.jpg ライアン・オニール 2023年12月8日逝去。(82歳没)

「ペーパー・ムーン」1973.jpg「ペーパー・ムーン」11.jpg(●ライアン・オニールが亡くなった。「ある愛の愛の詩」('70年)の興行的成功や「ザ・ドライバー」('78年)といった渋い作品もあるが、代表作はと言うとやはり「ペーパー・ムーン」('73年)と「バリー・リンドン」('73年)になるのではないか。「ペーパー・ムーン」は泣けた。原作はジョー・デヴィッド・ブラウンの小説『アディ・プレイ』だが、日本では『ペーパームーン』の題名でハヤカワ文庫 から刊行された。ライアン・オニールとテータム・オニールの父娘共演で話題になり、本国では年間トップの興行収入を得、1973年の第46回アカデミー賞ではテータム・オニールが史上最年少で助演女優賞を受賞したが、その後、彼女が思ったほど伸びなかったことを思うと、ピーター・ボグダノヴィッチ監督の演出力がやはり大きかったか、または、父親ライアンの導き方が上手かったのか(個人的評価は、初見の時の感動に沿って★★★★☆)。「バリー・リンドン」1975.jpg「バリー・リンドン」11.jpg「バリー・リンドン」は、スタンリー・キューブリック監督が、18世紀のヨーロッパを舞台とし、ウィリアム・メイクピース・サッカレーによる小説"The Luck of Barry Lyndon"(1844年)を原作としたもので、アカデミー賞の撮影賞、歌曲賞、美術賞、衣裳デザイン賞を受賞した。世評は「ペーパー・ムーン」よりむしろ「バリー・リンドン」の方が上か。ただ、"ライアン・オニール"に目線を合わせると、主人公でを演じる彼が抑制を効かせた演技をすることで回りを浮き立たせているので、彼自身はやや背景に埋没している印象も受けなくもない。ラストの決闘シーンにおいてさえそう感じる。そこがキューブリック監督の演出のやり方なのだろうが(個人的評価は★★★★)。)


The Getaway (1972) .jpgゲッタウェイ 09.jpg「ゲッタウェイ」●原題:THE GETAWAY●制作年:1972年●制作国:アメリカ●監督:サム・ペキンパー●製作:デヴィッド・フォスター/ミッチェル・ブロウアー●脚本:ウォルター・ヒル●撮影:ルシアン・バラード●音楽:デイヴ・グルーシン●原作:ジム・トンプスン●時間:122分●出演:スティーブ・マックィーン/アリ・マックグロー/ベン・ジョンソン/アル・レッティエリン/スリム・ピケンズ/リチャード・ブライト/ジャック・ダドスン/ボー・ホプキンス/ダブ・テイラー●日本公開:1973/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場パール坐(77-12-10)●2回目:自由が丘・武蔵野推理(84-09-23)(評価★★★★)●併映(1回目):「パピヨン」(フランクリン・J・シャフナー)●併映(2回目):「48時間」(ウォルター・ヒル)

ある愛の詩 01.jpgある愛の詩01.jpg「ある愛の詩」●原題:LOVE STORY●制作年:1970年●制作国:アメリカ●監督:アーサー・ヒラー●製作:ハワード・ミンスキー●脚本:エリック・シーガル●撮影:リチャード・クラディナ●音楽:フランシス・レイ●原作:エリック・シーガル●時間:99分●出演:ライアン・オニール/アリ・マックグロー/ジョン・マーレー/レイ・ミランド/キャサリン・バルフォー/シドニー・ウォーカー/ロバート・モディカ/ラッセル・ナイプ/トミー・リー・ジョーンズ ●日本公開:1971/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-11-03)(評価★★★)●併映:「おもいでの夏」(ロバート・マリガン)/「フォロー・ミー」(キャロル・リード)
ある愛の詩 [ラリアン・オニール/アリ・マッグロー] [レンタル落ち]

ペーパー・ムーン スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]
「ペーパー・ムーン」dvd.jpg「ペーパー・ムーン」22.jpg「ペーパー・ムーン」●原題:PAPER MOON●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督・製作:ピーター・ボグダノヴィッチ●脚本:アルヴィン・サージェント●撮影:ラズロ・コヴァックス●原作:ジョー・デヴィッド・ブラウン●時間:103分●出演:ラ「ペーパー・ムーン」21.jpgイアン・オニール/テータム・オニール/マデリーン・カーン/ジョン・ヒラーマン/P・J・ジョンソン/ジェシー・リー・フルトン/ェームズ・N・ハレル/リラ・ウォーターズ/ノーブル・ウィリンガム/ジャック・ソーンダース/ジョディ・ウィルバー/リズ・ロス/エド・リード/ドロシー・プライス/ドロシー・フォースター/バートン・ギリアム/ランディ・クエイド●日本公開:1974/03●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:名画座ミラノ(77-12-18)●2回目:名画座ミラノ(77-12-18)(評価★★★★☆)

バリー リンドン [DVD]
「バリー・リンドン」dvd.jpg「バリー・リンドン」22.jpg「バリー・リンドン」●原題:BARRY LYNDON●制作年:1975年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●撮影:ジョン・オルコット●音楽: レナード・ローゼンマン●原作:ウィリアム・メイクピース・サッカレー●時間:185分●出演:ライアン・オニール/マリサ・ベレンソン/ハーディ・クリューガー/ゲイ・ハミルトン/レオナルド・ロッシーター/アーサー・オサリヴァン/ゴッドフリー・クイグリー/パトリック・マギー/フランク・ミドルマス●日本公開:1976/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(79-02-05)(評価★★★★)

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「ロボット」という言葉を生み出しただけでなく、SFの一定のモチーフを確立させた作品。

カレル・チャペック 『ロボット』岩波.jpgカレル・チャペック 『ロボット』2.jpg チャペック戯曲全集.jpg カレル・チャペック戯曲集.jpg 2001年宇宙の旅 特別版.jpg
ロボット (岩波文庫)』['89年('03年版)]/『R.U.R.ロボット (カレル・チャペック戯曲集 (1))』['92年](表紙絵:ヨゼフ・チャペック)/『チャペック戯曲全集』['06年]/『カル・チャペック戯曲集〈1〉ロボット/虫の生活より』['12年](装丁・挿絵:和田誠) 「2001年宇宙の旅 特別版【ワイド版】 [DVD]

『ロボット (R.U.R.)』.JPGカレル・チャペック 『ロボット』 2.jpg 舞台はヨーロッパ旧世界を遠く離れた海の孤島、そこに建てられたロボット=人造人間の製造・販売会社、R.U.R.(エル・ウー・エル=ロッスムのユニバーサル(万能)ロボット)社。ここで作られるロボットは、生殖能力はなく、寿命は最長で約20年で、不良品や寿命を迎えた物は粉砕装置で処分される。そのロボット製造会社R.U.R.のオフィスで執務するドミン社長を、「人権連盟」の代表で、R.U.R.社会長の娘ヘレナが訪問する。ロボット製造の起源、ロボットの性質、そしてロボットによる人類社会変革の理想を語るドミンと、おのおのの担当部門の観点からそれを説明・擁護する役員達を相手に、ヘレナは労働者として酷使されているロボット達が人道的扱いを受けられるよう申し入れるが―。

1920年版表紙
rur 1920.jpgカレル・チャペック 『ロボット』 原著.jpg 『山椒魚戦争』(1936)などでも知られているカレル・チャペック(1890-1938)は、大戦間のチェコスロバキアで最も人気のあった作家で、1920年刊行の戯曲『ロボット (R.U.R.)』は「ロボット」という言葉を生んだことでも知られています(本邦初訳は1923年『人造人間』(宇賀伊津緒:訳))。作者によれば、「ロボット」という言葉そのものは、カレル・チャペックの兄で画家・漫画家のヨゼフ・チャペックの発案から生まれたものだそうで、チェコ語のrobota(もともとは古代教会スラブ語での「隷属」の意)に由来しているとのこと。ストーリーは労働用に作られたロボットが人間に対して反乱を起こすというものです。
  
カレル・チャペック 『ロボット』 3.jpgフランケンシュタイン dvd.jpg 人間が自ら作ったものに襲われるというのは、メアリー・シェリーの『フランケンシュタイン』(1818)以来ずっとあるモチーフと言えるでしょう(映画「フランケンシュタイン」('31年/米)では怪物の呼び名はFrankenstein 博士による"creator"(創造物)となっている)。アイザック・アシモフ(1920-1992)がいわゆる「ロボット工学3原則」を提唱したのは、短編集『ロボットの時代』(1964)で自ら語っているところによれば、『フランケンシュタイン』や『R.U.R.』から延々と繰り返されてきた「ロボットが創造主を破滅させる」というプロットと一線を画すためであったようですが、アシモフの作品にも、創造主である人間に抵抗し滅ぼそうとするロボットが登場します。このチャペックの『ロボット』では、人間は最後アルクピストという建築士だけが生き残り、ロボット同士の結婚を認めるという(生殖機能を有している?)、ロボットにとってのハッピーエンドとなっています。
アルクピスト建築士 in 『ロボット (R.U.R.)』

人間ども集まれ!.jpg あの「鉄腕アトム」の生みの親である手塚治虫も、『人間ども集まれ!』(1967)で、奴隷や兵士として消耗されていたロボットが一斉に立ち上がって人間に抵抗する話を描いていますが、丁度その頃読んだチャペックの『山椒魚戦争』に触発されたのではなかったかと後に述懐しています。
人間ども集まれ!
 『山椒魚戦争』に出てくるサンショウウオと人間の中間みたいな奇妙な生物たちも、労働力として人間に使役されるうちに反乱を起こすわけですが、この『R.U.R.』のロボットは、脳・内臓・骨といった各器官は攪拌槽で原料を混合して造られる人工の原形質の培養で、神経や血管は紡績機で作られ、それらを部品として組み上げたもので、プログラムで動く点は機械であると言えますが、外観は人間と同じになっています。これは、本作が戯曲であることも関係しているかと思います。

『ブレードランナー』3.jpg もともと感情を持たず、20年くらいで消耗し破壊されるが、「死」を怖れるといったこともない―そうしたものだったはずのロボットが、開発者グループの博士の一人が密かに高次元のプログラムを組み入れたために自ら思考するようになり人間に近くなってしまったという設定で、こ『ブレードランナー』4.jpgれは所謂「自律型ロボット」と呼ばれるものであり、彼らの哀しみからは、個人的には、フィリップ・K・ディック(1928-1982)の『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』(1968)の映画化作品「ブレードランナー」('82/米)年の「レプリカント」を想起させられました(「レプリカント」はクローン技術の細胞複製(レプリケーション)からとった造語)。                       

 当時のチェコは労働者と富裕層との階級対立が深刻化していて、貴族階級の没落や社会主義革命への脅威といった世相がこの作品には反映されているとされていますが、政治的背景を除いて純粋にSFとしてみると、「ブレードランナー」とちょっとモチーフやテーマが重なるのではないでしょうか。「ブレードランナー」に限らず、この「人間 vs. 人間の創造物」というモチーフは様々な作品で2001年宇宙の旅1.jpg2001年宇宙の旅 haru.png青豆とうふ.jpg繰り返されているように思われ、イラストレーターで今年('14年)亡くなった安西水丸氏と同じくイラストレーターの和田誠氏のリレーエッセイ『青豆とうふ』('03年/講談社)を読んでると、和田誠氏がこの作品に触れて、「ロボット」と「コンピュータ」の区別が曖昧になっている気がするとし、拡げて解釈すれば、「ハル」と呼ばれるコンピュータが反乱を起こすスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」('68年/米)などもこの範疇、系譜に入るような捉え方をしていました(和田氏は『カル・チャペック戯曲集』の装丁・挿絵を手掛けている。安西氏はプラハでチャペックのこの小説に出てくるロボットの置物を土産に買ったとか)。

2001 space odyssey2.jpg 「2001年宇宙の旅」は、雑誌「ぴあ」の読者が選ぶ「もう一度観たい映画No.1」の座を長年に渡って占めていた作品で、最初2001年宇宙の旅 2.jpg観た時は、哲学的な示唆が感じられる内容にやや驚き、他の人は皆が解ったのかなとも思ったりしましたが、脚本を書いたキューブリックとアーサー・C・クラークは「この映画は観客がどう解釈してもよい」と言い残2001年宇宙の旅 1968年.jpg2001年宇宙の旅 1978年リバイバル.jpgしています(キューブリックとアーサー・C・クラークがアイデアを出し合い、先ずアーサー・C・クラークが小説としてアイデアを纏め、その後キューブリックが脚本を執筆し、映画の公開の後に「小説」は発表されているが、その「小説」にはアーサー・C・クラーク独自の解釈がかなり取り入れられていることから、厳密に言えば、映画の原作であるともノベライゼーションであるとも言えないものとなっている。因みにコンピュータ「HAL9000」のHALは、IBMをアルファベット順で一文字ずつずらしたネーミング)。

1968年/1978年(リバイバル)各チラシ

2001年宇宙の旅 last.jpg 完璧な映像構成からキューブリック2001 space odyssey.jpgがカメラマン出身であることを強く感じさせる作品でしたが、ジョン・レノンも讃えたというラストのSFXは今日観るとそれほどでもないかも(もともと、このラスト及び映画自体は毀誉褒貶があり、小松左京、筒井康隆氏といった人たちはあまり買っていなかった記憶がある)。むしろ、ツァラトゥストラはかく語りき」や「美しく青きドナウ」などの曲が映像とマッチさせて上手く使われているのを感じました(宇宙飛行士が宇宙船外に放り出される場面は怖かった)。

 チャペックの『R.U.R.』は、単に「ロボット」という言葉を生み出したというだけでなく、それまであった一定のモチーフをSFとして確立させたという点でも、後に及ぼした影響力は大きいのではないでしょうか。「ブレードランナー」や「2001年宇宙の旅」に限らず、多くの映画や小説がこのモチーフを引き継いでいることを思うと、19世紀初頭の『フランケンシュタイン』と並んで、20世紀におけるエポック・メイキングな作品であると言えるかと思います。

珈琲屋チャペック2.jpg 因みに、北陸の金沢に行った時、金沢城の城跡付近に「チャペック」というコヒー・ショップがありましたが、この作品の作者の名前からとったようです。ネットで確認すると、確かに兄ヨゼフ・チャペックの絵を使っている...。行った時には前を通っただけでしたが、店内にはチャペック関連の趣向も施されているようで、あの時店の中に入ればよかったと後でやや後悔しました。


ブレードランナー チラシ.jpgブレードランナー.jpg「ブレードランナー」●原題:BLADE RUNNER●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:マイケル・ディーリー ●脚本:ハンプトン・フィンチャー/デイヴィッド・ピープルズ●撮影:ジョーダブレードランナー4.jpgン・クローネンウェス●音楽: ヴァンゲリス●時間:117分●出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング/ダリル・ハンナ/ブライオン・ジェイムズ/エドワード・ジェイムズ・オルモス/M・エメット・ウォルシュ/ウィリアム・ サンダーソン/ジョセフ・ターケル/ジョアンナ・キャシディ/ジェームズ・ホン●日本公開:1982/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:二子東急(83-06-05)●2回目:三軒茶屋東映(84-07-22)●3回目:三軒茶屋東映(84-12-22)(評価:★★★★☆)二子東急.jpg二子東急.gif●併映(2回目):「エイリアン」(リドリー・スコット)/「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター)●併映(3回目):「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター)
 


2001 nen: Uchuu no Tabi(1968)
2001 nen Uchuu no Tabi(1968).jpg『2001年宇宙の旅』y02.jpg「2001年宇宙の旅」●原題:2001:A SPACE ODYSSEY●制作年:1968年●制作国:アメリカ●監督・製作:スタンリー・キューブリック●脚本:スタンリー・キューブリック/アーサー・C・クラーク●撮影:ジェフリー・アンスワース/ジョン・オルコット●音楽:リヒャルト・シュトラウス《ツァラトゥストラはかく語りき》/ヨハン・シュトラウス2世《美しく青きドナウ》/他●時間:152分●出演:キア・デュリア/ゲイリー・ロックウッド/ウィリアム・シルベスター/ダニエル・リクター/ダグラス・レイン(HAL 9000(声))/ダニエル・リクター/レナード・ロシター/マーガレット・タイザック/ロバート・ビーティ/ショーン・サリヴァン/フランク・ミラー/エド・ビショップ/アラン・ギフォード/アン・ギリス/(以下、ノンクレジット)ビビアン・キューブリック/ケヴィン・スコット/ビル・ウェストン●日本公開:1968/04●配給:MGM●最初に観た場所:日比谷・有楽座(78-12-10)(評価:★★★★)  有楽座(旧)1.bmp右写真:有楽座[1984(昭和59)年9月]「ぼくの近代建築コレクション」より
旧有楽座内.jpg有楽座.jpg
旧・有楽座 1935(昭和10)年6月に演劇劇場として開館。1949(昭和24)年8月~ロードショー館(席数1,572)。1984年10月31日閉館。 

1978年リバイバル上映時新聞広告(前年公開の「スター・ウォーズ」第一作の大ヒットがきっかけでSF映画が盛り上がりリバイバル上映されたという経緯もあり、ジョージ・ルーカスのコメントが付されている)
「2001年宇宙の旅」78リバイバル.jpg
 
「RUR」hukamati.jpg【1924年単行本[金星堂(『ロボット』鈴木善太郎:訳)]/1968年単行本[平凡社『現代人の思想22 機械と人間との共生』収録(『ロボット製造会社R.U.R.』鎮目泰夫:訳)]/1977年文庫化『華麗なる幻想-海外SF傑作選』収録[講談社文庫(『R.U.R.』深町眞理子:訳)]/1989年再文庫化[岩波文庫(『ロボット (R.U.R.)』千野栄一:訳)]/1992年単行本[十月社(『R.U.R.ロボット』栗栖継:訳)]/2006年単行本[八月舎『チャペック戯曲全集』収録(『RUR』田才益夫:訳)]/2012年[単行本(『カル・チャペック戯曲集〈1〉ロボット/虫の生活より』栗栖継:訳)]】

RUR...ロッサム万能ロボット会社」電子版(深町眞理子:訳)

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スタンリー・キューブリック28歳の時のフィルム・ノワール作品。カットバック映画の第一級品。

THE KILLING 1956.jpgTHE KILLING 1956-2.jpg現金に体を張れ1.jpg  現金に体を張れ.jpg
現金(ゲンナマ)に体を張れ [DVD]
Gennama ni karada wo hare(1956)
現金に体を張れ02.jpg
 5年の刑期を終えて出所したジョニー・クレイ(スターリング・ヘイドン)は、恋人フェイ(コリーン・グレイ)との新たな生活のため、仲間を2THE KILLING 1956 .jpg集めて再び犯罪に手を染めようとしていた。それは、ダービーの行われる日に競馬場の売上金を強奪しようというもので、集まったのは、ジョニーの他に、軍資金を出すマーヴィン(ジェイ・C・フリッペン)、競馬場の馬券売場の現金係ジョージ(エライシャ・クック)、競馬場のバーのバーテンダーのマイク( ジョー・ソウヤー)、競馬場の整備を担当している悪徳警官ランディ(テッド・デコルシア)、元レスラーのモーリス(コーラ・クワリアーニ)の5人。ジョニーは更に射撃の名手ニッキを雇う。競馬場近くのモーテルの一室借りて犯行当日の根城とし、決行の前日、一味は最後の打合せをしたが、警官まで仲間に引き込んだ計画に隙はないように思われた。しかし、妻シェリー(マリー・ウィンザー)の尻に敷かれっぱなしのジョーが、妻から嘲りの言葉を浴びてプライドを踏みにじられTHE KILLING 1956.jpg、思わず計画のことを口にしてしまう。彼女からそれを聞いた彼女の不倫相手のヴァル(ヴィンス・エドワーズ)は、彼らが奪った金をさらに強奪する計画を立てる―。

『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg 決行の日、先ずモーリスがバーに来て飲物を注文、マイクの出した飲物に因縁をつけ暴れ始める。彼を押さえようとする警備員を大男のモーリスは次々と投げ飛ばして騒ぎは拡がり、競馬場の金庫室を見張っていた警官まで出てくる。一方、ニッキは競馬場の外側コースからレース中の馬を一発で倒してレースを混乱させるが、来合せた警官の銃弾に倒れる。競馬場の騒ぎの間にジョニーはジョージの合図で金庫室に入り、職員を機関銃で脅して200万ドルの紙幣を袋に詰込ませ、それを窓から投げて表へ出る。袋はランディが自分のパトカーに積んでモーテルの一室へ一旦放り込む。先に戻ったジョージら5人は別のホテルの一室で金を持って現れるはずのジョニーを待つが、そこへ現れたのは機関銃を構えたヴァルとその仲間で、その場で銃撃戦となり、重傷のジョージ以外は敵味方とも全員死んでしまう。ジョージは血まみれのまま車で自分のアパートへ戻り、ヴァルとの高跳びのための荷造りしていたシェリーを射殺、自身も息絶える。ジョージが血まみれになって車で行くのを、ホテルへ急ぐ途中で見つけたジョニーは、危険を覚ってフェイの待つ飛行場へ直行する―。

スタンリー・キューブリック.jpg スタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)監督の劇場公開第1作で(原題:THE KILLING)、この時彼は28歳でしたが、自ら脚本も手掛けたこの作品の完成度の高さには目を瞠るものがあります。前年作で同じくフィルム・ノワール系の「非情の罠」('55年)も観ましたが、1年で格段の進歩という感じです(まあ、この「現金に体を張れ」は「非情の罠」より以前から彼が構想を暖めていたものだそうだが)。
Self-portrait taken from Stanley Kubrick : Photographs 1945-1950

 原作は、ライオネル・ホワイトの『見事な結末』("Clean Break")で(ゴダールの「気狂いピエロ」もこの人の『十一時の悪魔』が原作)、綿密なはずの現金強奪計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を、時間を繰り返し何度も戻してそれぞれの登場人物の立場から描いています。

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgパルプ・フィクション.bmp こうしたカットバック方式の作品としては、後にクエンティン・タランティーノが自ら脚本を書き監督した「パルプ・フィクション」('94年)があり、これもアカデミー脚本賞受賞の傑作ですが、ジョン・トラヴォルタとサミュエル・L・ジャクソンの二人組がコーヒー・ショップで強盗を働く話であるのに対し、こちらの「現金に体を張れ」の強盗チームは6人組+狙撃犯で、スケールの大きさからみてもプロットの精緻さからみても、その上を行く第一級品だと思います("B級"ノワールと呼ぶには失礼かも)。

 カメラワークやプロットの見事さは勿論のこと、人間の弱さ、夢の儚さもしかっり描けていて(ラストはジャン・ギャバンとアラン・ドロンの「地下室のメロディ」('63年/仏)を想起させるが、「現金に体を張れ」の方が7年早く作られている)、エライシャ・クックをはじめ脇役陣も演技達者の性格俳優ばかり。28歳にしてこの演出力はさすがキューブリックという感じで、テンポの良さもあって、約1時間半の上映時間が短く感じられた作品でした。

 因みに、「フィルム・ノワール」作品の多くに共通する特徴として、主役乃至準主役の女性が明確に悪女(ファム・ファタール)であるか、そうでない場合でも、結果的に主人公の男を破滅させる原因を作ることの多い役柄であることだそうで、この作品の場合は当然のことながら、「悪女」はマリー・ウィンザー演じるシェリーということになります。

非情の罠 00.jpg非情の罠 01.jpg 「現金に体を張れ」の前年作の「非情の罠」('55年、原題:THE KILLER'S KISS)は、スタンリー・キューブリックの長編第2作で、商業映画では第1作に当たる作品で、キューブリックは撮影、編集なども兼ねています。絶頂期を過ぎたのボクサーのデイヴィー(ジャミー・スミス)が、向かい隣りのアパートに住むダンスホールで働くみじめな踊り子グロリア(アイリーン・ケイン)を彼女の情婦ヴィンセント・ラパロ(フランク・シルヴェラ)から救い出そうとするが、実は大物ギャングであったラパロに殺られてしまというだけのB級映画ですが(Wikipediaではデイヴィーはラパロ非情の罠  03.jpgを倒し、グロリアと結ばれるというストーリーになっているけれど、そうだったかなあ)、ストーリーはさることながら、凝った画面構成などにはキューブリックらしさが感じられます。特に、マネキン倉庫で迎えるクライマックスの格闘シーンなどは、マネキンの手足があちこちに転がって、異様な雰囲気を醸し出しています。44分に短縮されて'60年に劇場公開されたままだったのが、'93年にJSB日本衛星放送(WOWOWの前身)が全編を放映、67分の完全版としてはこれが日本初公開となりましたが、個人的にはまだ短縮版しか観ていません。1959年のロカルノ国際映画祭でグランプリを獲っている作品。個人的評価は△ですが、完全版を観れば○に変わるかもしれません。

現金に体を張れ01.jpg現金に体を張れ03.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/テッド・デコルシア/ ジョー・ソウヤー/コーラ・クワリアーニ/ヴィンス・エドワーズ●日本シアターアプル・コマ東宝.jpg公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル(86-03-22) (評価:★★★★☆)
歌舞伎町・新宿シアターアプル・コマ東宝  2008(平成20)年12月31日閉館

ライオネル・ホワイト原作: 「現金に体を張れ」 ('56年/米)/「気狂いピエロ」 ('65年/仏)
現金に体を張れド.jpg 気狂いピエロ Pierrot Le Fou.jpg

非情の罠 dvd.jpg非情の罠 02.jpg「非情の罠」●原題:THE KILLER'S KISS●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:スタンリー・キューブリック/モリス・ブーゼル●脚本:スタンリー・キューブリック/ハワード・サックラー●撮影:スタンリー・キューブリック●音楽:ジェラルド・フリード●編集:スタンリー・キューブリック●時間:67分(短縮版:44分)●出演:フランク・シルヴェラ/ジャミー・スミス/アイリーン・ケイン/ジェリー・ジャレット/ルース・ソボトゥカ●日本公開:1960/09●配給:ユナイト映画●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-02-09) (評価:★★★)●併映:「時計じかけのオレンジ」(スタンリー・キューブリック)非情の罠 [DVD]

パルプフィクション スチール.jpgパルプ・フィクション ポスター.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダー●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)

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映画も怖かったが、映画ではそぎ落とされてしまった独特の怖さが原作にはある。

シャイニング(上).gifシャイニング(下).gif シャイニング(下)映画.gifシャイニング(上)映画.gif シャイニング〈新装版〉 上.jpgシャイニング〈新装版〉 下.jpg  The scrap.jpg
シャイニング (1978年) 』 初版(上・下)/パシフィカ 1980年改装版 (上・下)(映画タイアップ・カバー)/『シャイニング 上』 ['08年/文春文庫 新装版]/村上春樹『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』(装丁:和田 誠

The Shining.bmp コロラド山中にある「オーバールックホテル」は冬の間閉鎖されるリゾートホテルで、作家志望のジャックはその妻と息子と共にホテル住み込みの冬季管理人としてやってきたが、そのホテルでは過去に、管理人が家族を惨殺するという事件が起こっていた―。

THE SHINING3.jpg 1977年に書かれたスティーヴン・キング(Stephen Edwin King, 1947- )の長編第3作(原題:"THE SHINING")で、この人のホラー小説は、後期のものになればなるほど「何でもあり」Stephen King.jpgみたいになってきていて、どちらかというと初期のものの方がいいような気がしていますが(TVドラマの「デッド・ゾーン」はそう悪くないと思うが)、その中でもこの作品はやはり記念碑的傑作と言ってよいのではと思います。
Stephen King

シャイニング  00.jpg スタンリー・キューブリック(1928-1999/享年70)の監督・製作・脚本による映画化作品('80年/英)の方を先に観ましたが、映画の方も、イギリスの学者によると数学的に計算すると世界最高のホラー映画になるとのこと(根拠よくわからないが)、確かに、家族を殺し自殺したホテルの前任者の霊にとりつかれた主人公が、タイプに向かって"All work and no play make Jack a dull boy "(働かざるもの食うべからず)と打ち続けるシーンは、映画のオリジナルですが怖かったです(それにしてもシェリー・デュバルは恐怖顔がよく似合う女優だ)。

THE SHINING2.jpg 但し、原作では、ホテル自体が邪悪な意志のようなものを宿し、それに感応する能力を持つ5歳の息子の(内なる)異界との交流がかなりのページを割いて描かれているのに対し、映画は、ジャックが閉塞状況の中で神経衰弱になり狂気に蝕まれていく様に重点が置かれており、ジャック・ニコルソンの演技自体には鬼気迫るものがあるものの、そこに至る過程は、書けない作家の単なるノイローゼ症状の描写みたいになってしまっている感じもしなくもないです。

シャイニング s.jpg 最後に、生垣を走り回って...というのも映画のオリジナルで、独創性は感じられるものの原作を曲げていることには違いなく、これでは原作者のキングが怒るのも無理からぬこと。

シャイニング es.jpg 劇場予告編で、ホテルの過去の歴史を暗示すべく、双子の少女をモチーフにした怖〜いイメージ映像がありましたが、これは本編では違った使われ方になっていて、こうした取ってつけたようなやり方もルール違反ではないかなあ。

creepshow (1982).jpgcreepshow .jpg キングはキューブリックに対して「あの男は恐怖の何たるかを知らん」とくそみそにこきおろした末に、「クリープ・ショー」というオムニバス・ホラー・ムビーの脚本を自分で書き、自らも出演したほか、「シャイニング」も自分で脚本を書き下ろして製作総指揮を務めTV版に作り直していますが、どういうわけか共に評判は今一だったようです。

"creepshow" (1982)

『'THE SCRAP'―.jpg村上春樹 09.jpg キングの「クリープ・ショー」の失敗を指して作家の村上春樹氏が、「恐怖小説作家が真剣に恐怖とは何かと考えはじめたり、ユーモア小説作家が真剣にユーモアとは何かと考えはじめたりすると、物事はわりにまずい方向に流れちゃうみたいである」と『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』('87年/文藝春秋)に書いています。まあ、何となく当たっているような気がします。

村上春樹『'THE SCRAP'―懐かしの1980年代』(装丁:和田 誠

 因みにこの『THE SCRAP』という本の中身は、スポーツ雑誌「ナンバー」に連載されたもので、アメリカの雑誌や新聞に掲載された記事やコラムをネタに、村上春樹流にコラムとして再構成した感じの本ですが、アメリカナイズされている感性の持ち主であるとも言われる彼の、アメリカ文化に関する「元ネタ帳」みたいで興味深いです。雑誌連載期間は'82年春から'86年2月にかけてで、単行本刊行は'87年。「懐かしの1980年代」とサブタイトルにありますが、80年代前半、彼が33~37歳の頃に、当時の雑誌から"リアルタイム"での様々な出来事、流行事をピックアップして書いているわけであって、その際に話が更に遡ることもあるけれど、基本的には、過去を振り返った回想記ではないです。でも、結構、「アメリカ文化オタク」みたいで面白かったです。

THE SHINING4.jpg「シャイニング」●原題:The Shining●制作年:1980年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●音楽:ベラ・バルトーク●原作:スティーヴン・キング「シャイニング」●吉祥寺東亜.jpg時間:140分●出演:ジャック・ニコルソン/シェリー・デュヴァル/ダニー・ロイド/スキャットマン・ クローザース/バリー・ネルソン/フィリップ・ストーン/ジョー・ターケル/アン・ジャクソン●日本公開:1980/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:吉祥寺セントラル(83-12-04) (評価★★★)●併映:「時計じかけのオレンジ」(スタンリー・キューブリック )
吉祥寺スカラ座・吉祥寺オデヲン座・吉祥寺セントラル・吉祥寺東宝
吉祥寺セントラル・吉祥寺スカラ座.jpg7吉祥寺セントラル.jpg吉祥寺セントラル 1954(昭和29)年、吉祥寺駅東口付近に「吉祥寺オデヲン座」オープン。1978(昭和53)年10月、吉祥寺オデヲン座跡に竣工の吉祥寺東亜会館5階にオープン(3階「吉祥寺スカラ座」、2階「吉祥寺アカデミー」(後に「吉祥寺アカデミー東宝」→「吉祥寺東宝」)、B1「吉祥寺松竹オデヲン」(後に「吉祥寺松竹」→「吉祥寺オデヲン座」)。 2012(平成24)年1月21日、同会館内の全4つの映画館を「吉祥寺オデヲン」と改称。2012(平成24)年8月31日、地下の前・吉祥寺オデヲン座(旧・吉祥寺松竹)閉館。 

吉祥寺東亜会館
吉祥寺オデオン.jpg 吉祥寺オデヲン.jpg

 【1986年文庫化・2008年新装版[文春文庫]】

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