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実際問題として認知症の施設介護にどう取り組むかを指南。前著に続いてお薦め。
『マンガ認知症【施設介護編】』['24年]『マンガ 認知症 (ちくま新書) 』['20年]
大好きな祖母が認知症になってしまい、母と二人で介護に取り組むマンガ家、ニコ。在宅介護が限界を迎えて施設に入居してもらったものの、祖母の認知症の症状がみるみる悪化していった。二人はしょっちゅう呼び出され、かかる費用は月40万円―。
ベストセラーとなった『マンガ認知症』('20年/ちくま新書)の続編で、今回はより実際的な問題として、認知症の施設介護にどう取り組むかを、認知症の心理学と介護の仕組みの両面から取り上げています(各章の冒頭に体験的マンガがあって、その後に解説がくるスタイルは前著と同じ)。
今回は、「介護事業を立ち上げ現場を見続けて30年」という「暮らしネットえん」の小島美里代表理事も執筆チームに加わっています(マンガでは若々しいが、経歴的にはベテラン。そう言えば、佐藤眞一先生もマンガでは若々しいが、いつの間にか大学の教授から名誉教授になっている。敢えて若く描いて"権威主義"的な色合いを出さないようにする配慮か)。
施設介護の最初に来る大事な選択は、「どの老人ホームのどれを選ぶか」ということであり、老人ホームの種類には7種類あり、「民間型にすまい」としての①有料老人ホーム(介護付き・住宅型)、②(サービス付き)高齢者向け住宅、③グループホーム、そして「公共型のすまい」としての④ケアハウス(一般型・介護型)、さらに「公共型の施設」としての⑤特別養護老人ホーム、⑥介護老人保健施設、⑦介護医療院、があるとしています。
それぞれの入居金や月額費用、入居条件、さらには認知症の度合いなども示されていますが、認知症の人には「グループホーム」と「特別養護老人ホーム(「特養」)」が向いているとしています。ただし、「特養」は要介護3以上が入居要件であり、したがって、特に大きい病気がなく要介護1・2レベルであれば、「グループホーム」が第1の選択肢になるとにことです。
最近注目されている「(サービス付き)高齢者向け住宅(サ高住)」は、ここで言う「サービス」というのは介護ではなく「安否確認と相談」のことなので、小島美里氏らは「サービスなし高齢者住宅」と呼んでいるとか(各部屋にトイレや水回りがあるのは魅力的だが、認知症に限らず、年を重ねて体の具合が悪くなって要介護度が高くなると、住み続けることが難しくなる場合もある。さらに、費用の支払いが維持できなくなる怖れがあるとういう問題も)。
小島氏が代表理事を務める「えん」は「グループホーム」ですが、最近はグループホームでも「終身」(看取り)が可のところも増えている一方で、グループホームに向かない人もいて、認知症以外の病気が重い人は看護師が常駐する介護医院のような施設の方がいいとしています。また、グループホームは住民票がその地に無いと入居できず、満床のこともあるとのことです。
そのため、第二の選択肢として「介護付き有料老人ホーム」が考えられると。介護付き有料にするメリットは、この金額の中に介護費用もセットになっていることで、「サ高住」に比べて費用は高く見えますが、サ高住のようにそれ以外の費用が天井知らずになることは避けられるとしています(結局「サ高住」って、サービスは部分はほとんど別途持ち出しになるので、何もしなければ普通に何もサービスを受けず暮らしているのとあまり変わらないことになる。「サ高住」の費用の問題は最近よく指摘されることが多い(「サ高住はなぜ失敗するのか?」))。
本書は、そんな「サ高住」がなぜ高いのかといったことを始め、制度の問題点をも指摘しており、詰まるところ、介護保険制度をはじめとする国の介護福祉政策への批判の本にもなっていますが、そうした姿勢を衒わなくとも、現場の声を拾い上げていくと自ずとそうなるでしょう。思えば、こうした問題提起的な要素は前著『マンガ認知症』にもあり、この辺りも一般の入門書とは異なる点であると思います(小島氏は、利用者負担割合と補足給付の見直しによって、介護サービスが使えない人が増加していることに警鐘を鳴らしている)。
前著『マンガ認知症』に続き、佐藤眞一先生による心理学的な側面からの認知症の解説もされています。例えば、施設入所して無気力になって寝てばかりという人の場合には、「学習性無力感」の可能性も考えなければならないといった指摘もなされていて、この辺りは丁寧です。
前著『マンガ認知症』の復習的な解説も随所でされている一方で、番外編として、「レピー小体型認知症」の解説もその分野の専門家(樋口直美氏)によってされいます(マンガ部分は樋口氏が自身の母親がこの病に見舞われた際の体験談になっている)。「高齢者では発症していなくても3人に1人はレビー小体が認められる」というのは驚きでした。
認知症について介護と医療の両面から分かりやすく学べるという点で、前著に続いてお薦めです。
《読書MEMO》
●老人ホーム・介護施設の種類ごとの特徴を比較する(「みんなの介護」)