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読条件反射的な計算訓練だけでは「説明力」はつかず、「試行錯誤」が重要であると。

数学の出番です。.jpg数学の出番です。―つい人に伝えたくなる数学のハナシ (チャートBOOKS SPECIAL ISSUE)』 〔'06年〕

 数学に関する"つい人に伝えたくなるハナシ"が24話あり、それぞれの中に代数や幾何の問題が含まれていますが、主に日常生活から素材を選び、エッセイ風に(しばしば長屋談義風に)柔らかい文章でわかりやすくハナシを進めていくので、気軽に読めて、かつ飽きさせません。

 クイズ番組での正解との差が最も小さい回答者を勝ちとする近似値クイズに対する疑問を呈した「ニアピン賞の怪」などは、誰もがおかしいと感じたことがあるのでは。
 (a+b+c)の2乗を求めるのに、図を使って考えるというのは目からウロコで、7つの丸いケーキを16人で均等に分ける方法というのも、答えを聞けばなぁ〜んだという感じですが、自力では解けなかった...。

 全体に問題文がシンプルなため、すっと入っていくことができ、それでいてなかなか奥が深い。
 中身は単純なのに、どうしてそうなるのか未だに解けない命題も多くあるのだなあと。

 ちょっと気軽に、自分の"数学脳"をリフレッシュさせるにはいい本です。
 この著者、数学者でなく編集者ですが、漱石の『我輩は猫である』の寒月君(寺田寅彦がモデル)みたいな"いい味"が出ているなあという感じがしました。

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ちょっと気軽に、自分の"数学脳"をリフレッシュさせるにはいい本。

数学的思考法.jpg 『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント 講談社現代新書』 〔'05年〕

 桁数の多い掛算を行う「インド式算数」が注目され、インドがソフトウエア開発の大国である理由がその計算力にあるように思われたりしていますが、本書によれば、インドの数学教育はむしろ、証明力、問題解決力を重視しており、たとえ証明問題でなくとも、答えに至る説明が証明問題のようにしっかり書かれていなければ、答えが合っていても大幅に減点されるとのこと。

 著者は、計算能力を軽視しているわけではないのですが、「条件反射丸暗記」的な計算訓練だけでは「説明力」はつかないとし、現在の日本の算数・数学教育に見られるプロセス軽視傾向を批判しています。

 「説明力」を鍛えるにはどうすればよいかということについて、著者は、証明のための「試行錯誤」の重要性を説いていて、学生などを観察していても、答案を「見直し」によって正しく直せる者は、「条件反射丸暗記」的な問題に弱くても、試行錯誤して考えることは得意な傾向にあるそうです。

 こうした試行錯誤を通してきちんとした「説明」に至るために必要な「数学的思考」をするためのヒントや、「論理的な説明」の鍵となるポイントが、本書後半部では書かれています。

 著者は、算数・数学教育における数学的思考の重要性を意見し続けている数学者で、近年デリバティブ(金融派生商品)取引で日本の金融機関が大幅な損失を計上したのも、背景には数学力の弱さがあるとのこと。

 その他にも数学的思考は、ビジネスや生活の様々な場面で求められ、役に立っていることが、時にパズル形式で、時にエッセイ・社会批評風に述べられています。
 内容的には、同著者の『子どもが算数・数学好きになる秘訣』('02年/日本評論社)などとかなりネタがダブっていますが、初めて読む人には1話1話は面白いと思うし、書かれていることも尤もだと頷かされることが多いのでは。
 ただ、話が広がりすぎて、全体としてやや散漫になった感じも否めませんでした。

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数学教育(学習)に必要な能力と、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本。

数学に感動する頭をつくる.jpg 『数学に感動する頭をつくる』 〔'04年〕  栗田哲也先生.jpg 栗田 哲也 氏 (駿台英才セミナー講師)

 著者は、数学オリンピックを目指す学生のために駿台英才セミナーで教える、所謂カリスマ講師と呼ばれる人たちの1人で、本書では、「数学力」をつけるにはどうしたらよいかということを、小学生から大人まで幅広い層に向けて説きつつ、現在の学校教育に対する批判を織り交ぜています。

 ただし、著者によれば、計算力・連想力・発想力・推理力・洞察力などはあっても「数学力なんて存在しない」ということで、自分の目的を持って、どの能力を伸ばしたいか先ず決めなさいと。
 難関中学の入試問題の訓練をすれば作業力・推理力が伸び、学校のカリキュラムを先取り学習すれば抽象理解力・洞察力は伸びるが、何れにせよ、工夫力・イメージ力・発想力などは伸びないそうです。

 著者が重視するのは、頭の中に図形や数の状態を思い浮かべそれらを頭の中だけで操ることができる「イメージ能力」や、2つのものの類似を感じ取ったり問題を拡張したりする「発想力」であって、推理力や構想力はさほど重要でなく、また、「構造化された記憶」をもとに未知のもの自分の世界に取り込もうと自問自答することによって「位置づけの能力」を伸ばすことが大事だとのことです。

 数学オリンピックに出るような学生を見てきた経験からの説明は説得力がありますが(どういう子が"数学オリンピック向き"かという話になっている気もするが)、こうした抜きん出て優秀な生徒たちの中にも、小学校低学年まで「公文式」とかやっていた子が多いとのことで、小学校低学年で計算力や記憶力をつけることは、それはそれで大事であるとのことです。

 数学を再勉強したい大人の場合、子どもの中学受験の面倒を見たいということであるならば、網羅的な問題集を1冊買って繰り返し解くことがお薦めであるとのことで、そうした具体例も書かれていますが、全体としては、数学教育(数学学習)に必要な能力を定義するとともに、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本でした。

 著者は東大文学部中退ですが、算数・数学教師はこれを読んでどう思うのだろうか、個人的には書かれていることはそれなりに納得できるものでしたが、ただし、実践はたいへんではないかと...(だから著者の塾へ来なさい、ということでもないとは思うが)。

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こういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならなかったと思うかも。

入門 算数学.jpg 『入門 算数学』(2003/07 日本評論社)算数のできる子どもを育てる.jpg 木幡 寛 『算数のできる子どもを育てる

 数学者であり長年数学教育の研究に携わってきた著者による小中学校レベルの算数・数学の入門書。

 算数の背景にある数学的思考を、算数を学ぶ際に前面に押し出すという考えのもとに書かれていて、素人目にはかえって難しくなるのではと思いがちだけれども、読んでみると目からウロコが落ちるようによくわかります。
 本書を読んで、「ああ、学校でこういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならずに済んだのに」と思った人も多いとか。

 例えば、足し算・引き算を教える前に、数の概念をキッチリ解説しています。
 数には「集合数」「順序数」があり、「集合数」の性質には、1対1対応での不変性などがある...と言葉にすると難しく聞こえますが、図説でわかりやすく解説されていて、「1〜9までと10との明確な違い」とか今まであまり考えたこともなかった話や、古今東西の数の数え方(位取り)といった面白い話もあります。

 以前、「自由の森学園」の校長だった木幡寛氏の『算数のできる子どもを育てる』('00年/講談社現代新書)を読んで、「鯨8頭とサンダル2足は足すことができるか」といった問いから子どもに数の概念を理解させるやり方があり、実にユニークでわかりよいけれど、こんなふうに教えている余裕が学校教育にあるかなと思いました(実際、氏は退職後にフリースクールにおいてこのやり方で教えている)。
 本書を読んで、そうした考え方(教え方)が、ユニークというよりもむしろ"スジ論"的考え方であることが、体系的な説明を通してわかりました。

 ただし、本書にあるような考え方に基づく指導方法は「学習指導要領」にはなく、こうした教え方は教師の自主的な研究・努力と、現場でそうした時間を作る工夫に懸かっているということなのでしょう。

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身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思う。

算数パズル「出しっこ問題」傑作選.jpg  『算数パズル「出しっこ問題」傑作選―解けて興奮、出して快感! (ブルーバックス)』 〔'01年〕

 問題の数は60問で、難易度は、ブルーバックスにあるこの手の本の中では高い方ではないと思いますが、古典的な傑作問題が多く含まれています。

 例えば「うそつき村と正直村」の問題。
 たどり着いた村がうそつき村か正直村かを、住人に1つだけ質問して言い当てるにはどんな質問をすればいいのか。

 それから「神様と悪魔と人間」の問題。
 Aは「私は神様ではない」と言い、Bは「私は悪魔ではない」と言い、Cは「私は人間ではない」と言う。神様はホントのことを言い、悪魔は嘘しか言わないが、人間は嘘をついたりホントのことを言ったりする。ならば、ABCはそれぞれ何者か。

 さらには、「白い帽子と赤い帽子」の問題。
 赤い帽子が3個、白い帽子が2個あって、ABCの順に前向きに並んだ3人に自分の帽子の色がわからないように被せ、自分の帽子の色を訊ねたところ、Cは「自分の帽子の色がわからない」と言い、Bも「わからない」と。それを聞いたAは「わかった!」と。Aの帽子は何色か。

 簡単に暗記できる内容なので、身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思います。
 著者自身は以前からが学校の算数・数学教育に提言をしている人で、一方で、『お父さんのための算数と数学の本』('79年/日本実業出版社)などといった著作もあります(...とすると、出す相手は自分の子どもということになるのか)。
 ブルーバックスには本書の姉妹編として 『論理パズル「出しっこ問題」傑作選-論理思考のトレーニング』(小野田博一著/'02年)という結構売れた本もありますが、本書より問題がやや難しい気がしました。
 
 ちなみに、上記3問の答えは、
 「あなたはこの村に住んでいますか」
 「A人間・B悪魔・C神様」
 「赤」
 ですが、答えが合った合わないよりも、発想と考え方のプロセスが大切なのでしょう。

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