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カラーイラストで紹介されていて解りやすい。解明されていないことも多いのだなあと。

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超美麗イラスト図解 世界の深海魚 最驚50 目も口も頭も体も生き方も、すべて奇想天外!! (サイエンス・アイ新書)』['14年]

 本書は、世界各国の科学者の研究成果をもとに、驚くべき深海魚の姿形を著者自身のイラストで再現しつつ、その不可思議な生態を紹介したものです。半分図鑑で、半分解説といった感じでしょうか(解説はかなり専門的であるように思えた)。

 同じサイエンス・アイ新書に、同著者の『深海生物の謎―彼らはいかにして闇の世界で生きることを決めたのか』['07年]がありますが、そちらは写真で深海生物を紹介していて、形態が見にくいものには、同じ場所にイラストが添えてあるのというスタイルでしたが、本書は全部カラーイラストで紹介されていて、細部の形状などはこのイラスト版の方が解りやすいかと思います。著者のイラストでは、『深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち』['05年]にあるように白地にカラーで深海魚を描いたものもありますが、本書はバックがすべて黒で、実際に深海で観た場合はこんな感じなのでしょう。イラストがたいへん緻密に描かれているせいもあり、写真以上に効果的であるように思いました。

 紹介されている50種類の内訳は、ムネエソ科3種、ワニトカゲギス科8種、ヒメ科8種、アカマンボウ類1種、オピスソプロクツス科6種、キガントキプリス1種、頭足類6種。キロテウティス科5種、チョウチンアンコウ10種、オニアンコウ科7種と、実は50種を超えていますが、素人目にはどこが違うのか分からないような種もあるので、逆に50種もあったかなあという印象も(笑)。

 それでも、解説を読み進んでいくうちに、深海魚の多様性に触れることができ、特にバラエティに富んでいると思われたのが、目の構造と機能でした。やはり、深海において目は大事なのだなあと。望遠鏡のような構造の目は珍しいものではなく、中には目が4つあるものもあったりして、一方で、形だけあって殆ど目の機能を果たしていないものもあり、そうした種は代替機能のようなものがあったりします。ただ、なぜそういう構造や機能なのかよく解らなかったりするようです。

 また、何を食べているかは捕まえて腹を裂けばわからないことはないけれども、どうやって獲物を探して捕食しているのかとか、より生態学的なこととなると、解らないことも多いようです。それでも、分かっている範囲で、その不思議な生態を紹介しています。自分より体の大きな魚を食べる深海魚などもいて、ホントに不思議な世界です。あとは、これも確かにそうだろうなあと思いまうSが、生殖関係も不思議なことが多く、なぜそうなのか解っていないことが多いようです。

 本書刊行時点で、深海探査艇をもつ国はわずか6カ国で、そのため、そもそも深海で生きる生物たちの姿が写真や映像で撮られる機会は少なく、研究も十分に進んでいないのが実情であるとのことで、これから更に様々なことが少しずつ解明されていくであろう分野なのでしょう。未解明の部分が多いことも、この分野の魅力の一つかもしれませんが、おそらく、研究し尽くされてその魅力が失われるということは無く、研究が進めば進むほど、未解明の部分も多く出てくるように思います。

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専門的だが見易さに工夫。大人でも子どもでも楽しめるパノラマイラスト。読み込むほどに味が。

EVOLUTION 生命の進化史.jpg (29.2 x 25 x 3.4 cm)        生物の進化大図鑑.jpg
EVOLUTION 生命の進化史』(2010/02 ソフトバンククリエイティブ) 『生物の進化 大図鑑』(2010/10 河出書房新社)
EVOLUTION 生命の進化史1.jpg 生命誕生から現在まで、地球35億年の生命の進化の歴史をイラスト化したもので、パノラマ・イラストを全て繋げると全長50メートルにも及ぶという「壮大な命の絵巻物」。

 2009年のダーウィン『種の起源』発刊150周年・生誕200周年を記念しての刊行の"稀少本"とのことで(定価4,700円(税別)、同種の"稀少本"では河出書房新社の『生物の進化 大図鑑』('10年/定価9,500円(税別))が1万円近い価格にも関わらず結構売れたようですが、本書もなかなかの出来栄えではないでしょうか(価格的にはよりお買い得)。

 『生物の進化 大図鑑』のイラストがCGなのに対し、こちらは英国の動物挿絵家で、食器の鳥の図柄や英国切手の図柄をはじめ、世界の童話に独特なタッチの水彩画を描いているピーター・バレットによる手書きイラストです。

何れもいかにも水彩画家らしい淡いタッチで描かれており、『生物の進化 大図鑑』のCGの迫力に対し、線画の緻密さに凝っている感じに何となく昔ながらの「図鑑」の懐かしさを覚えてしまい、こういうのも悪くないなあと。

EVOLUTION 生命の進化史2.jpg 丁度、歴史年表を見ているように、年代表が各パノラマ・イラストの最上部にあり、年代に関する情報や気候と生物相に関する情報が記されていて、下部には、化石産出地のかつての位置と現在の位置(大陸移動しているため両者は異なってくる)の図、種のリスト、イラストの一部のクローズアップや化石写真付きの解説などがあります。

 フルカラー全384ページですが、最初の陸生生物の登場までに80ページ以上のページ数を割いていて、後半140ページは「系統樹」「化石産出地の索引」「種の索引」に充てるなどしており(これらも視覚的に分かり易いよう工夫されている)、アカデミックと言うか、専門家向けという感じもします。

 生物進化史を体系的に理解しようとするにはうってつけの図鑑ですが、パノラマ・イラストは大人でも子どもでも楽しめるものとなっており、『生物の進化 大図鑑』と併せて一家に一冊置いておきたい図鑑、読み込めば読み込むほど味が出てきます。

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自分が今まさに「海底潜望鏡」を覗いているような"シズル感"。

深海生物の謎2.jpg深海生物の謎 彼らはいかにして闇の世界で生きることを決めたのか (サイエンス・アイ新書 32) (サイエンス・アイ新書 32).jpg   深海生物ファイル.jpg
深海生物の謎 彼らはいかにして闇の世界で生きることを決めたのか(サイエンス・アイ新書32)』['07年/サイエンス・アイ新書]『深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち』['05年/ネコ・パブリッシング]

 ソフトバンククリエイティブの"サイエンス・アイ新書"の1冊。著者の『深海生物ファイル』('05年/ネコ・パブリッシング)が好評だったもののやや値が張るため(内容から見れば高くはないのだが)、同じような構成でこれを新書化したのかなと思っていましたが、いい意味でちょっと違っていたかも。

 冒頭、三浦半島で見られる深海生物の痕跡、というやや身近な話に続いて、1993年に海洋研究開発機構が初島沖海底(水深1175m)に設置した観測ステーションのことが紹介されていて、以来14年間、この"初島沖ステーション"は継続的に深海の模様を映像で伝えてきているとのこと(このようなものがあるとは知らなかった。まるで惑星探査みたい)、本書では、このステーションによって観察された深海生物の映像を中心に、「しんかい」などの海底探査船の観測写真なども多く掲載されています。

 写真そのものの多くは、『深海生物ファイル』に掲載されていたものに比べると"派手さ"はないけれども、解説文章と併せて見ていると、深海魚やクラゲが装置に迫って来て(ぶつかってしまうのもいる)自分が今まさに「海底潜望鏡」を覗いているような"シズル感"があります。

 サカナのくせにまともに泳がず、のたうちながら海流に流されていってしまうものや、逆に、飛び立つように、或いは踊るように泳ぐナマコなど、見ていると結構、海の生き物に対する既成概念が変わる―。
 ヒラノマクラなど鯨骨に群がる生物群も興味深く、今まで、クジラの死んだ後の死体のことなんか考えてもみなかったけれど、何年、何十年にも渡って深海生物の栄養資源になっているのだなあと、ちょっと自然の摂理に感心させられました。

 『深海生物ファイル』と違ってイラストのためのページはとっていませんが、写真で深海生物の形態が見にくいものには、同じ場所にイラストが添えてあるのが親切。
 写真が、単なる形態写真ではなく、"生態"写真の観点から撮られている点、解説文が非常にわかり易い点は、『深海生物ファイル』同様、この著者ならではないかと思いました。

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写真が充実。解説・イラストもいい。深海に行けばいくほど、まるで別宇宙の生物のよう。

深海生物ファイル.jpg深海生物ファイル―あなたの知らない暗黒世界の住人たち』['05年/ネコ・パブリッシング]

 前半部が様々な深海生物を脊椎動物(所謂"深海魚")、無脊椎動物(クラゲ・イカ・タコ・ナマコなど)、節足動物(エビなど)などにジャンル分けした写真集で、後半部が、海層の深度別に区分した生物イラスト(モノクロ)と解説、前半部と後半部の相互索引機能が無いのがやや不満ですが、それ以外は満足のいく内容でした(最後に総合索引はある)。

 とりわけ、深海生物の写真が点数も多く、またよく撮れていて、この種の本や図鑑などは殆どがイラスト主体であることを考えれば、この写真の充実ぶりは相当のものだと言えるのでは。
 かなり貴重な写真も含まれているかと思いますが、ただ写真で見せるだけでなく、出来るだけその生き物の生態がわかるような写真を収めるよう配慮して掲載されているように感じました。

深海生物イラスト(イラスト:北村雄一).gif 解説は、最新の観察・研究情報を織り込みながらも、文章の端々にユーモアも感じられて親しみ易いものとなっており、なかなかの迫力であるイラストも、著者自身の描いたものです。

 魚類にしても、我々が通常思い浮かべる"サカナ"のイメージからかけ離れているものが多く、無脊椎動物や節足動物も含めると、その生態は更に不思議さを増し、深海に行けばいくほど、まるでSF世界か別宇宙の生物のようになってきます。

 たまには、こうした「暗黒世界の住人たち」に想いを馳せるのもいいかも。
 一見まったく我々の日常に関係無いように思えるけれども、ハンバーガーのフィレオフィッシュに使われているメルルーサ(アルゼンチンへイク)なども、一応"深海魚"の部類に入るのだなあと。
 
  深海生物イラスト (イラスト:北村雄一) 上から順にリュウグウノツカイ・オニキンメ・コウモリダコ・オオグソクムシ

 

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