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こんなに面白くしていいのかという感じ。ジョン・リスゴーにまた会えた。

「教皇選挙 [DVD]」レイフ・ファインズ
ある日、カトリック教会のトップにしてバチカン市国の国家元首であるローマ教皇が、心臓発作のため突如として急死してしまう。教皇死去の悲しみに暮れる暇もなく、イギリス出身でローマ教皇庁首席枢機卿を務めるトマス・ローレンス枢機卿は枢機卿団を招集し、次のローマ教皇を選出する教皇選挙(コンクラーヴェ)を執行することとなった。100人以上の枢機卿がコンクラーヴェが行われるシスティーナ礼拝堂に集まる中、有力候補者として
・ベリーニ枢機卿(米国出身バチカン教区所属・リベラル派)
・トランブレ枢機卿(カナダ・モントリオール教区所属・穏健保守派)
・アデイエミ枢機卿(ナイジェリア教区所属、初のアフリカ系教皇の座を狙う)
・テデスコ枢機卿(イタリア・ベネチア教区所属・保守派伝統主義者)
の4人の名が取り沙汰される中、メキシコ出身で昨年に前教皇によって新たに任命されたばかりのアフガニスタン・カブール教区のベニテス枢機卿が開始直前に到着する。かくしてコンクラーヴェが始まるが、枢機卿団の票が割れていく水面下では陰謀や差別、スキャンダルの数々が犇めいていた。裏で信仰に関する悩みを抱えるローレンスは、それらに苦悩を深めつつもコンクラーヴェを執行していくが―。
2024年公開のエドワード・ベルガー監督作で、「白い巨塔」('66年/大映)など選挙モノは面白いのに(「白い巨塔」の場合は医局の教授選だが)「選挙映画」は意外と少ないと思っていたら、コレまさにタイトルも中身も選挙そのものでした。奇しくも上映期間中の2025年4月21日に教皇のフランシスコ教皇が亡くなったことを受けて、実際のバチカンでコンクラーベが行われることとなり、日本でもそれが本作品の上映期間と重なったことから観客数が急増しました。因みに、原作者ロバート・ハリスは自身は非カトリックですが、リベラル派のフランシスコ教皇を敬愛しており、フランシスコ教皇が選ばれた前回のコンクラーベが作品のヒントになっていて、随所にフランシスコ教皇へのオマージュが散りばめられているようです。フランシスコ教皇はトランスジェンダーや同性カップルへの受容を公式に表明した教皇です(ただし、映画のラストのがベニテスがインターセックスだったというのは面白過ぎる創作)。
首席枢機卿としてコンクラーベを主宰するローレンス枢機卿を演じたレイフ・ファインズ(「ナイロビの蜂」('05年)に主演)はキャリアハイライトとも言える演技で、重厚感ありました。内容的にも面白く、選挙は最後に予想外の結果となります。でも振り返ってみれば問題のある候補は淘汰されて、これはこれで"予定調和"なのかなと。ところが、最後の最後にもうひと捻りありました(因みに、映画におけるベニテス枢機卿の国籍はメキシコでメキシコ人俳優のカルロス・ディエスが演じてるが、原作ではフィリピン人である)。こんなに面白くしていいのかという感じもありましたが(ジェンダー問題がストーリーの"オチ"として扱われてしまっている印象も)、米国映画だからできるのでしょう。ヨーロッパでは無理かも(英国も製作国に名を連ねるが、あそこは長年ローマ教皇庁と対立してきた英国国教会だから)。
「トワイライトゾーン・超次元の体験」映画チラシ
ジョン・リスゴー in「教皇選挙」(2024)/「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」(2023)

穏健保守派の教皇候補トランブレ枢機卿(この人も"問題あり"人物)役でジョン・リスゴーが出ていたのが嬉しいです(マーティン・スコセッシ監督の「キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン」('23年)にも判事役で出ていたので、久しぶりというわけでもないが)。
このジョン・リスゴーという人を最初に観たのは、ジョン・ランディス、スティーヴン・スピルバーグ、ジョー・ダンテ、ジョージ・ミラーの4監督によるオムニバス映画「トワイライトゾーン 超次元の体験」('83/米)だったでしょうか。
第1話「偏見の恐怖」:ジョン・ランディスがビック・モローを主演にすえて描く人種差別主義者を襲う恐怖の世界。
第2話「真夜中の遊戯」::老人ホームで暮らす人々に子供の頃の夢と希望を運ぶ男の話をスピルバーグが描く。
第3話「こどもの世界」:ジョー・ダンテ監督による、スポイルされた超能力少年をめぐる女教師の恐怖の体験。
第4話「2万フィートの戦慄」:「マッド・マックス」のジョージ・ミラー監督は飛行機恐怖症の男の悪夢を描く。
人種差別主義者の男が時空を超え、逆に手痛い差別を受けるシリアスかつブラックな第1話は、撮影中の事故で主演のビック
・モローと子役が亡くなるという、いわくつきの作品。スピルバーグらしいヒューマンな感動(第2話)や、ダンテの
過剰なまでにシュールな映像(第3話)など、それぞれの原点や個性が窺えますが、第4話の「2万フィートの戦慄」が最も面白かったです。高所恐怖症の男が嫌々に乗った飛行機で、窓の外に見たものは翼を齧るゴブリン風の生き物(ジョー・ダンテっぽい((笑))。恐怖に駆られ男は近くの席に座っていた警官の拳銃を奪い、窓超しに生き物めがけて発砲。破れた窓から吸い出されそうになり、上半身を機体の外へ突き出し―。この男を演じているのがジョン・リスゴーで、神経質な飛行機恐怖症の男を見事に演じていました。
「トワイライトゾーン/超次元の体験 [DVD]」
「世にも不思議なアメージング・ストーリー」シーズン1・第22話「愛の人形」(1986)

「トワイライトゾーン 超次元の体験」の元になっているのは往年のTVシリーズ「トワイライトゾーン (ミステリーゾーン)」(原題: The Twilight Zone、CBS 1959~64)ですが、ジョン・リスゴーは、スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮を務めた、80年代の同じく一話完結のTVシリーズ「世にも不思議なアメージング・ストーリー」(原題: Amazing Stories、NBC 1985~87)のシーズン1・第22話「愛の人形」(原題: The Doll、1986)に出ていて、こちらは、ジョン・リスゴー演じる孤独な独身男性が手に入れた精巧な人形に魅了され、やがてその人形のモデルとなった実在の女性の悲劇的な運命を知るファンタジー・サスペンスでした。人形に宿るモデルの魂か、あるいは男の狂気か。人形とモデルの女性の過去が交錯し、不思議で切ない結末でしたが、幻想的で少し不気味な雰囲気でもありました。脚本はスティーヴン・スピルバーグ監督の「激突!」('72年/米)の原作・脚本のリチャード・マシスン。ジョン・リスゴーはこの作品で「エミー賞」を受賞しています。
「世にも不思議なアメージング・ストーリー」の第1話は製作総指揮を務めたスティーブン・スピルバーグ自身が監督した「ゴースト・トレイン」です。アイオワ州の田舎町の線路沿いの古い家に住むポーランド移民パパ・オストロウスキー(バーナード・ヒューズ)は、昔幼い頃に列車の脱線事故に偶然居合わせ、列車が橋の崩落で沼に沈み、乗客がは全員死亡したという事故だったが、その列車がいつか自分を迎えに来ることを確信しており、息子夫婦には相手にされないが、幼い孫息子クリンカに対し「列車が来たら、パパはもういない」と伝えていた。するとある夜、家が揺れ始め、霧の中から「幽霊列車」が現れるーというもの(このセット、どうやって撮った?)。主人公の名はパパですが、もい一人の主人公である孫のクリンカから見れば祖父にあたり、「列車に乗る」=「死出の旅」ということなのでしょう。「ゴースト・トレイン」というのが宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のようで(あの列車にもタイタニック号で亡くなった人が乗ってくる場面がある)、家の中に列車が入ってくるのはつげ義春の「ねじ式」みたいでした。「未知との遭遇」や「E.T.」などのスピルバーグ作品を彷彿させるシーンが多々あるのが興味深いです。
シーズン1・全24話、シーズン2・全21話の内、日本では第5話「最後のミッション」、第4話「パパはミイラ」、第3
2話「真夜中の呪文」の3エピソードを纏めたものが1987年7月に「世にも不思議なアメージング・ストーリー」として劇場公開されています。「最後のミッション(原題: The Mission)」はこれもスティーブン・スピルバーグ自身
の監督作。第二次世界大戦中、爆撃機の中で腹部銃座に閉じ込められた若きガンナー(射撃手)が、車輪が故障して着陸できない状況で取った驚くべき方法とは...。緊張感とファンタジーが融合した作品。「パパはミイラ(原題: Mummy Daddy)」はウィリアム・ディア監督作。ミイラの着ぐるみを着たまま撮影所から帰宅した父親が、そのままの姿で子供と交流する、微笑ましくも少し奇妙な物語。選ばれただけに、共に人気が高いエピソードです。
「世にも不思議なアメージング・ストーリー [VHS]」
「最後のミッション」監督:スティーブン・スピルバーグ/出演:ケビン・コスナー
「パパはミイラ」監督:ウィリアム・ディア/出演:トム・ハリソン
「真夜中の呪文」監督:ロバート・ゼメキス/出演:クリストファー・ロイド
話をジョン・リスゴーに戻して、ジョン・リスゴーはさらに90年代にはTVシリーズ「3rd Rock from the Sun」(1996~2001)に計139話出演し「エミー賞ドラマシリーズ 男優賞」を受賞。00年代は、同じくTVシリーズ「デクスター~警察官は殺人鬼」(Dexter 、Showtime 2006~2013)のシーズン4(2009)で、シリアルキラーのアーサー・ミッチェル役で12話ほど出演しています。全米各地で、「同じ境遇の人物を、同じ方法で殺す」3パターンでの殺人を定期的に繰り返す「トリニティ・キラー」。その正体は、表向きは長年教師を務め、教会に欠かさず通い、ボランティア活動に積極的に従事し、良き夫
良き父親として、理想的な人物として周囲の信頼を得ているアーサー(その殺戮衝動は、幼い頃、衝撃的な出来事によって、次々と家族を失ったことに起因していた)。ジョン・リスゴーはこのアーサー役で、「エミー賞ドラマシリーズ ゲスト男優賞受賞」(80年代、90年代、00年代とエミー賞を受賞したことになる)、「ゴールデングローブ賞ドラマシリーズ 助演男優賞受賞」を受賞しています。
「デクスター~警察官は殺人鬼」シーズン4(2009)
「クリフハンガー〈DTS版〉 [DVD]」
「トワイライトゾーン 超次元の体験」(1983)「クリフハンガー」(1993)
「ペリカン文書」(1993)「完全犯罪」(1993)
一方で、メジャー大作の方では、「ダイハード2」('90年/米)のレニー・ハーリンが監督し、シルヴェスター・スタローンが主演した、ロッキー山脈に不時着した武装強盗団と山岳救助隊員の戦いを描いたサスペンス・アクション映画「クリフハンガー」('93年/米・仏・伊・日)で、スタローンを追い詰める冷酷無比な武装強盗団のボスを演
じていました(スタローンは高所恐怖症をおして奮闘。セット撮影やCG合成もあるが、断崖に引っかかったヘリでの死闘などは「荒鷲の要塞」('68年/英・米)のロープウェイ上の格闘シーンを彷彿させた)。
「クリフハンガー」('93年)ジョン・リスゴー(武装強盗団のボス・エリック)
と思ったら、同じ1993年公開の、魔性の女を巡り2人の男の愛憎と欲望が交錯する犯罪計画の顛末を、二転三転するプロットの中に描いたサスペンス・スリラー「完全犯罪」('93年/米、元々はTVムービー)では、メッチェン・アミック
(メッチェン・アミックは2人の男を相手にするのは「ツイン・ピークス」('90年-'91年/米)のときと同じだが、堂に入ったと言うか貫禄が増した? この2作以降も、夫がありながら他の男と密通する女性を演じることが多かった女優)が演じる妻を別の男に寝取られる夫を演じていて、でも実はラストでどんでん返しがあり、
そう言えば善良に見えて実は何かを隠しているような雰囲気はありました。多彩な役をこなし(1作品の中でさえ!)、まさにカメレオン俳優と呼ばれるに相応しい俳優だと思います。この1993年には、「ペリカン文書」('93年/米)にもワシントン・ヘラルド紙の編集長役で出て、デンゼル・ワシントン演じる記者グレイ・グランサムの、途中から彼を支援するようになる上司を演じています。いつまでも活躍してほしい俳優です。
「完全犯罪」('93年)ジョン・リスゴー(銀行家ポール)/メッチェン・アミック(妻ローレン)/エリック・ロバーツ(脱獄犯リノ)
「ペリカン文書」('93年)
ジュリア・ロバーツ(法学部の学生ダービー・ショウ)/デンゼル・ワシントン(ワシントン・ヘラルド紙の記者グレイ・グランサム)/ジョン・リスゴー(編集長・グレイの上司スミス・キーン)
「教皇選挙 [DVD]」

「教皇選挙」●原題:CONCLAVEE●制作年:2024年●監督:エドワード・ベルガー●製作:テッサ・ロス/ジュリエット・ハウエル/マイケル・A・ジャックマン/アリス・ドーソン/ロバート・ハリス●脚本:ピーター・ストローハン●撮影:ステファーヌ・フォンテーヌ●音楽:フォルカー・ベルテルマン●原作:ロバート・ハリス●時間:120分●出演:レイフ・ファインズ/スタンリー・トゥッチ/ジョン・リスゴー/セルジオ・カステリット/ルシアン・ムサマティ/カルロス・ディエス/メラーブ・ニニッゼ/ブライアン・F・オバーン/イザベラ・ロッセリーニ●日本公開:2025/03●配給:キノフィルムズ●最初に観た場所:TOHOシネマズ池袋(25-04-24)(評価:★★★☆)
「トワイライトゾーン 超次元の体験」●原題:THE TWILIGHT ZONE:THE MOVIE●制作年:1983年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ランディス/スティーヴン・スピルバーグ/ジョー・ダンテ/ジョージ・ミラー●製作:スティーヴン・スピルバーグ/ジョン・ランディス●脚本:ジョン・ランディス/ジョージ・クレイトン・ジョンソン/リチャード・マシスン/メリッサ・マシスン●撮影:ティーブン・ラーナー/アレン・ダヴィオー/ジョン・ホラ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:101分●出演:(ナレーター)バージェス・メレディス/(プロローグ)ダン・エイクロイド/アルバート・ブルックス/(第1話)ヴィック・モロー/チャールズ・ハラハン/(第2話)スキャットマン・クローザース/(第3話)キャスリーン・クインラン/ウィリアム・シャラート/パトリシア・バリー/ケヴィン・マッカーシー/ナンシー・カートライト/ディック・ミラー(第4話)ジョン・リスゴー●日本公開:1984/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:自由ヶ丘武蔵野推理(84-09-04)(評価:★★★☆)



「トワイライトゾーン (ミステリーゾーン)」The Twilight Zone (CBS 1959~64) ○日本での放映チャネル:日本テレビ(1960)/TBS(1961~67)/AXN

「世にも不思議なアメージング・ストーリー」 Amazing Stories (NBC 1985.09~1987.04) ○日本での放映チャネル:日本テレビ「金曜ロードショー」など (1992など)シーズン1全24話・シーズン2全21話
「世にも不思議なアメージング・ストーリー 1st シーズンDVD-BOX」[2009年リリース]
DISC.1
●第1話「ゴースト・トレイン」監督:スティーブン・スピルバーグ●第2話「愛と哀しみの磁石男」監督:マシュー・ロビンス●第3話「タイムトラベル少年」監督:マイケル・D・ムーア
DISC.2
●第4話「パパはミイラ」監督:ウィリアム・ディア●第5話「最後のミッション」監督:スティーブン・スピルバーグ●第6話「超魔術師と殺人オペラ」監督:ピーター・ハイアムズ
DISC.3
●第7話「宇宙のTVオタク」監督:ボブ・バラバン●第8話「最後のマジック」監督:ドナルド・ペトリ●第9話「こんな天使でよかったら...」監督:バート・レイノルズ ※初ソフト化
DISC.4
●第10話「リモコン親父の逆襲」監督:ボブ・クラーク●第11話「52年目のXマスプレゼント」監督:フィル・ジョアノー●第12話「亡き妻の肖像...魂が棲む画」監督:クリント・イーストウッド
DISC.5
●第13話「魔法の鳥のベビー・シッター」監督:ジョーン・ダーリング●第14話「英雄になった男」監督:レスリー・リンカ・グラッター●第15話「最後の一杯」監督:トーマス・カーター ※初ソフト化
DISC.6
●第16話「夢のガラクタ」監督:ノーマン・レイノルズ●第17話「いないいないバア!」監督:ジョー・ダンテ●第18話「二人だけの霊界」監督:トーマス・カーター
DISC.7
●第19話「鏡よ鏡...」監督:マーティン・スコセッシ●第20話「シークレット・シネマ」監督:ポール・バイテル●第21話「地獄のかつら」監督:アーヴィン・カーシュナー ※初ソフト化
DISC.8
●第22話「愛の人形」監督:フィル・ジョアノー●第23話「ワタシは何でも知っている...」監督:レスリー・リンカ・グラッター●第24話「想い出のラブ・ソング」監督:ティモシー・ハットン ※初ソフト化
「世にも不思議なアメージング・ストーリー 2ndシーズンDVD-BOX」[2009年リリース]
DISC1
「呪いの結婚指輪」(監督・主演:ダニー・デビート/原案:スティーブン・スピルバーグ)
「(秘)インスタント美女」(監督:トム・ホランド/主演:ジョン・クライヤー)
「おじいちゃんの魔球」(監督:ロバート・マルコウィッツ/主演:M・エメット・ウォルシュ)
DISC2
「悪夢へようこそ...」(監督:トッド・ホランド/主演:デヴィット・ホランダー)
「危ない夢」(監督:ケビン・レイノルズ/原案:スティーブン・スピルバーグ/主演:チャールズ・ダーニング)
「腹ペコモンスター」(監督:ジョー・ダンテ/原案:スティーブン・スピルバーグ/主演:ヘイリー・ミルズ)
DISC3
「最期のハンドパワー」(監督:ミック・ギャリス/主演:パトリック・スウェイジ)
「真夜中の呪文」(監督:ロバート・ゼメキス/主演:スコット・コフィ)
「井戸の恩返し」(監督:トッド・ホランド/主演:デビッド・キャラダイン)
DISC4
「かぼちゃコンテスト」(監督:ノーマン・レイノルズ/主演:ポリー・ホリデイ)
「向こう側に渡る会かい?」(監督:ジョーン・ダーリング/主演:ジェイク・ハート)
「永遠の別れのために」(監督:J・マイケル・リーヴァ/主演:ジェフリー・ジョーンズ)
DISC5
「別れ道」(監督:ケン・クワピス/主演:キャシー・ベイカー)
「ゴースト・コップ」(監督:ポール・マイケル・グレイザー/原案:スティーブン・スピルバーグ/主演:マックス・ゲイル)
「ひみつの蘭ちゃん」(監督:ニック・キャッスル/主演:ロバート・タウンゼント)
DISC6
「ワンワン騒動記」(監督:ブラッド・バード/キャクター・デザイン:ティム・バートン/声の出演:マーシャル・エフロン)
「天才作曲家のいたずら」(監督:ポール・バーテル/主演:ダナ・グラッドストーン)
「おかしな隣人」(監督:グラハム・ベイカー/主演:フレデリック・コフィン)
DISC7
「忘れじのダイアナ」(監督:レスリー・リンカ・グラッター/主演:ビリー・グリーン・ブッシュ)
「お引越し」(監督:ロバート・スティーヴンス/主演:スティーヴン・ジェフリーズ)
「キャベツ男の微笑み」(監督:トビー・フーパー/原作:リチャード・マシスン/主演:ディック・ショーン)

「世にも不思議なアメージング・ストーリー(第22話)/愛の人形(愛しのドール)(S1 E22 #22)」●原題:Amazing Storie-The Doll●制作国:アメリカ●本国放映:1986/05/04●監督:フィル・ジョアノー●脚本:リチャード・マシスン●音楽:ジョルジュ・ドルリュー●時間:25分●出演:ジョン・リスゴー/アン・ヘルム/アルバート・ヘイグ/レイン・フェニックス●日本放映:●日本公開:劇場未公開●発売元:ビクターエンタテインメント●発売日:1988/07/22【VHS】(評価★★★☆)
「世にも不思議なアメージング・ストーリー ファースト・シーズン パート2 バリューパック [DVD]」[2016年リリース]
DISC.5/「魔法の鳥のベビー・シッター」監督:ジョーン・ダーリング/主演:メイベル・キング/「英雄になった男」監督:レスリー・リンカ・グラッター/主演:チャーリー・シーン/「最後の一杯」監督:トーマス・カーター/主演:ダグラス・シール/DISC.6/「夢のガラクタ」監督:ノーマン・レイノルズ/主演:マーク・ハミル/「いないいないバア!」監督:ジョー・ダンテ/主演:エディ・ブラッケン/「二人だけの霊界」監督:トーマス・カーター/主演:ジョー・セネカ/DISC.7/「鏡よ鏡...」監督:マーティン・スコセッシ/主演:サム・ウォーターストン/「シークレット・シネマ」監督:ポール・バイテル/主演:ペニー・パイザー/「地獄のかつら」監督:アーヴィン・カーシュナー/主演:トニー・キーニッツ/DISC.8/「愛の人形」監督:フィル・ジョアノー/主演:ジョン・リスゴー/「ワタシは何でも知っている...」監督:レスリー・リンカ・グラッター/主演:レオ・ペン/「想い出のラブ・ソング」監督:ティモシー・ハットン/主演:アンドリュー・マッカーシー

「世にも不思議なアメージング・ストーリー(第1話)/「ゴースト・トレイン(S1 E1 #1)」●原題:Amazing Storie-Ghost Train●制作国:アメリカ●本国放映:1985/09/29●監督・脚本・原案:スティーブン・スピルバーグ●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:25分●出演:ロバーツ・ブロッサム/ルーカス・ハース/ゲイル・エドワーズ/スコット・ポーリン●本国放映:●日本公開:劇場未公開●発売元:ビクターエンタテインメント●発売日:1988/07/22【VHS】(評価★★★☆)
「世にも不思議なアメージング・ストーリー ファースト・シーズン パート1 バリューパック [DVD]」[2016年リリース]
DISC.1「ゴースト・トレイン」監督:スティーブン・スピルバーグ/主演:ロバーツ・ブロッサム/「愛と哀しみの磁石男」監督:マシュー・ロビンス/主演:ジョン・スコット・クロウ/「タイムトラベル少年」監督:マイケル・D・ムーア/主演:ケリー・レノ/DISC.2「パパはミイラ」監督:ウィリアム・ディア/主演:トム・ハリソン/「最後のミッション」監督:スティーブン・スピルバーグ/主演:ケビン・コスナー/「超魔術師と殺人オペラ」監督:ピーター・ハイアムズ /主演:グレゴリー・ハインズ/DISC.3「宇宙のTVオタク」監督:ボブ・バラバン/主演:マシュー・ラボートー/「最後のマジック」監督:ドナルド・ペトリ/主演:シド・シーザー/「こんな天使でよかったら...」監督:バート・レイノルズ/主演:ドム・デルイーズ/DISC.4「リモコン親父の逆襲」監督:ボブ・クラーク/主演:シドニー・ラシック/「52年目のXマスプレゼント」監督:フィル・ジョアノー/主演:ダグラス・シール/「亡き妻の肖像...魂が棲む画」監督:クリント・イーストウッド/主演:ハーヴェイ・カイテル
「クリフハンガー [DVD]」

「クリフハンガー」●原題:CLIFFHANGER●制作年:1993年●制作国:アメリカ・フランス・」伊ラリア。日本●監督:レニー・ハーリン●製作:レニー・ハーリン/アラン・マーシャル●脚本:マイケル・フランス/シルヴェスター・スタローン●撮影:アレックス・トムソン/ノーマン・ケント●音楽:トレヴァー・ジョーンズ●時間:113分●出演:シルヴェスター・スタローン/ジョン・リスゴー/マイケル・ルーカー/ジャニーン・ターナー/レックス・リン/キャロライン・グッドール/クレイグ・フェアブラス/グレゴリー・スコット・カミンズ/デニス・フォレスト/ミシェル・ジョイナー/マックス・パーリック/ポール・ウィンフィールド/ラルフ・ウェイト/トレイ・ブロウネル/ザック・グルニエ/ヴィト・ルギニス/スコット・ホクスビー/ジョン・フィン/ブルース・マッギル/キム・ロビラード●日本公開:1993/12●配給:東宝東和(評価:★★★☆)
「完全犯罪 [DVD]」

「完全犯罪」●原題:LOVE,CHEAT&STEAL●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ウィリアム・カラン●製作:ブラッド・クレボイ/スティーヴ・ステイブラー●撮影:ケント・ウェイクフォード●音楽:プレイ・フォー・レイン●時間:106分●出演:メッチェン・アミック/エリック・ロバーツ/ジョン・リスゴー/デビッド・アクロイド/ダン・オハーリー/ドナルド・モファット/ジェイソン・ワークマン●日本公
開:1994/06●配給:松竹富士(評価:★★★☆)

メッチェン・アミック in「ツイン・ピークス」
《読書MEMO》
●NHK 総合 2026/03/02「映像の世紀バタフライエフェクト#121―ローマ教皇 世界との格闘」
第二次世界大戦中(特にピウス12世の時代)、ローマ教皇庁がナチス・ドイツに対して公然とした批判を避け(共産主義(ソ連)を脅威と捉えていた)、結果的に接近した時期があったことに触れていたのが印象に残った。
危機回避に動いたヨハネ23世。命を狙われるも冷戦下のポーランドで民主化運動を鼓舞したヨハネ・パウロ2世。21世紀には、聖職者による児童への性的虐待が世界中で明るみに出た。その言葉、時に沈黙さえも世界の運命を変えてきた。(語り:糸井羊司)
ヨハネ・パウロ2世(教皇就任:1978年10月16日・教皇離任:2005年4月2日)は、1981年5月13日のトルコ人メフメト・アリ・アジャから銃撃された事件で奇跡的に一命をとりとめるが、その後、1983年に狙撃犯人のアジャが収監されている刑務所を訪れ、彼を許したというのがスゴイと思った。

第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。これに参加した J・ロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)は優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーは飲まれていく―。
「
日本の原爆開発を背景に時代に翻弄された若者たちの姿を描いた作品「太陽の子」のテレビ版('20年/NHK)・映画版('21年/イオンエンターテイメント)を撮った黒崎博監督は、「批判的な意見もあるが、知らないよりは知るべきだ」としています。原爆開発における、ナチに先んじるという大義名分がナチの降伏で消えたにもかかわらず、開発を止められなかった、そこを避けずに描いていることを評価していました(「日本が降伏しないから」との説明も入れているが、"広島"で思い知らしめ、"長崎"で諦めさせる―という発想であったことも作品の中で示されている)。
因みに、NHK「映像の世紀バタフライエフェクト」の「マンハッタン計画 オッペンハイマーの栄光と罪」('24年2月19日放送)は、原爆を開発した天才科学者オッペンハイマーの葛藤、水爆開発への反対、そして赤狩りによる公職追放という激動の人生を描いた回であり、映画「オッペンハイマー」への理解を深めることができるドキュメンタリーでした。この番組と映画を観て、映画についてやや不満に思ったのは、先にも述べたように映画の後半はほぼ政治劇なのですが、オッペンハイマーが当局の尋問を受けるのは、妻が共産主義者であり、また、彼が水爆開発に協力しな
いということだけが原因のように見えてしまうことです。それもありますが、聴聞会でスパイ容疑をかけられたのは、オッペンハイマーの下、原子爆弾の研究・開発に最年少の18歳で参加した(18歳でハーバード大学を卒業した)天才物理学者テッド・ホールのように、マンハッタン計画で米国の原子爆弾開発に貢献しながら、その傍らスパイとして核情報をソ連へ流出させていた人物が実際に複数いたためであり、そうした背景があまり説明的には描かれていなかったような気がしました(ただ、セオドア・ホール
に関しては、1951年にFBIによる尋問を受けているが、その時は証拠不十分で告発されることはなかったため、原爆開発計画に関する情報のほとんどはクラウス・フックスやローゼンバーグ夫妻によって流出したと考えられてきた)。
因みに、オッペンハイマーに関しては、映画化に合わせて刊行されたこの映画の原作である評伝『オッペンハイマー(上・中・下)』(カイ・バード&マーティン・J・シャーウィン、河邉俊彦訳、山崎詩郎監訳、ハヤカワ文庫)があり(2006年ピュリッツァー賞受賞作品『オッペンハ
イマーー「原爆の父」と呼ばれた男の栄光と悲劇(上・下)』('07年/PHPP研究所)の文庫化)、監訳者の山崎詩郎氏は、NHK・Eテレの「すイエんサー」や「天才てれびくん」などでもお馴染みの気鋭の若手物理学者です。


Clint Hill(1932-2025)
今年['25年]2月21日93歳で死去した元シークレットサービス、クリント・ヒルの本(原題:Mrs. Kennedy and Me: An Intimate Memoir、2012)です(彼はケネディに近しい人物の中で1963年11月22日のケネディ暗殺を間近で見た最後の生存者だったという)。1958年にアイゼンハワー大統領のシークレットサービス警護官となっていますが、本書は1960年11月、政権がジョン・F・ケネディに移行する前に、彼より2歳年上の次期ファーストレディ、ジャクリーン・ケネディの警護官に任命され、彼女と初めて会うところから始まり、ケネディ政権下の1961年から1963年までの3年間のジャクリーン・ケネディのことが書かれています。ジャーナリストによる聞き語りと思われますが読みやすく、著者は後にこのジャーナリストと結婚しています。
外遊先では非常に堂々とした振る舞いを見せる一方で、ジャクリーン人気ゆえのあまりに過密なスケジュールに、著者のクリント・ヒルに対して1日寝ていたいのでその日の予定を全部キャンセルして欲しいといった"ドタキャン"要請することもあったようです。学生時代にフランスに留学していたためフランス語が話せ、欧州などでトップ外交の一翼を担ったようです。それらを間近で見た著者は、あの元首はいい人物だったとか、あの財界人はいけ好かなかったとか述べていますが、ギリシャの海運王オナシスはケネディの大統領在任中からジャクリーンにアプローチしていたようで、著者から見てオナシスはいけ好かない人物の部類に入るようです。
そして話はケネディ暗殺の日へと向かっています。この時、ケネディはダラスでパレードをしていて喉に銃撃を受け、著者は、数秒遅れてリムジンに飛び乗りましたが大統領を守ることができす(3発目の銃弾がケネディの頭を砕いた)、しかし、ジャクリーン・ケネディを守ろうとして身体を盾にして病院に到着するまでリムジンの上にいました。
番組では、アル中からの復帰の過程でインタビューに応えた映像がありましたが、責任感からくる後悔の念を未だ引き摺っている感じで、痛々しかったです。ただ、本書は原著刊行が2012年でケネディ暗殺から半世紀を経ようとしている頃であり、1932年生まれの当時29歳だった著者も80歳になっており、いろいろと語れるようになったのではないかと思われます(冒頭にも述べたように、この共著者リサ・マッカビンと何冊か本を出した後、2021年に彼女と結婚(89歳と57歳のカップル!)、その後も『
昨年['24年]7月13日の選挙集会中に起きた当時大統領候補だったドナルド・トランプの暗殺未遂事件で、「女性は警護分野で最高ではない」との女性SP不要論が勃発したのに対し(イーロン·マスクは「女性警護員たちはトランプ前大統領を体で隠すには小さすぎた」として「力量により選抜されなかった」と主張した )、本書の著者クリント・ヒルは、自分は身長が特別に高いわけでもないのにシークレットサービスを勤め上げたとして女性SPを擁護し、92歳にして尚も発信をしていました。どん底から立ち直ったすごい人です。


1986年。故郷 天津に恋人シャオティン(小婷)(クリスティ・ヨン(楊恭如))を残し、シウクワン(小軍)(レオン・ライ(黎明))は香港へやって来る。シウクワンの夢は、香港で金を蓄えてシャオティンと結婚すること。しかし、広東語はチンプンカンプン、右も左も分からない香港では迷う事ばかり。そんなある日、初めて入ったハンバーガーショップで 店員のレイキウ(李翹)(マギー・チャン(張曼玉))に偶然助けられ、彼女と徐々に親しくなっていく。いくつも仕事を掛け持ちするシッカリ者のレイキウは、シウクワンにとって、香港で唯一頼れる友人に。ところが、何でも知っているように見えたレイキウもまた広州からやって来た大陸出身者であると判る。香港で孤独な二人はどんどん親密になり、1987年大晦日の晩、ついに一線を越えてしまう。それでも、お互いを"友人"と偽り続け、関係を続けるが、1990年、シウクワンは天津から呼び寄せたシャオティンと結婚、レイキウもまたパウ(豹哥)(エリック・ツァン(曾志偉))の援助で、実業家として成功していくのであった―(「ラヴソング」)。
1986年から始まり、1995年までの主人公二人の10年に及ぶ心温まるラブストーリーで、特にラストがいいですが、ラストがいいと感じられるということは、そこまでのストーリーの積み上げ方が上手いのでしょう。テレサ・テンの歌をモチーフにしており、
原題にもなっている「甜蜜蜜(ティェンミミ/ 蜜のように甘く)」という曲もその1つ。当時香港ではテレサ・テンのファンであることは 大陸出身であることを意味し、それを隠すためテレサ・テンのカセットは密かに買われていたようですが、 それまでいかにも香港人らしく振る舞っていたレイキウも実は大陸出身であることを告白し、他に親しい人のいない寂しい二人の仲は一気に 深まっていきます。
二人が自転車に乗って「甜蜜蜜」を歌うのが、恋愛の始まりの高揚感を現していて良かったです(まさに「ラヴソング」)。テレサ・テンの曲では、その他に、「再見!我的愛人」(アン・ルイスの「グッドバイ・マイ・ラブ」)、「涙的小雨」(クールファイブの「長崎は今日も雨だった」)といったカバー曲も流れます。テレサ・テンが亡くなったのは1995年5月8日ですが、そのニュースが流れる場面が最後にあり、この映画で重要な役割を果たします。この映画はテレサ・テンが亡くなった翌年に作られているため、ラストシーンはほぼリアルタイムということになります。
テレサ・テンについては、昨年['22年]8月にNHKの「
エリック・ツァン(曾志偉)演じる、レイキュウがその愛人になってしまうヤクザ者のパウ(豹哥)も、実は見かけに
よらず人間味のあるいい男でした(エリック・ツァンはこの演技で「香港電影金像奨最優秀助演男優賞」を受賞)。ウォン・カーウァイ監督作品の撮影監督で知られるクリストファー・ドイルが、英語学校の酔いどれ不良講師役で出ていますが(その授業というのが、海賊映画を見せてその台詞を覚えさせるものだった)、これもまた見かけによらず優しい男であり、この辺りもラブロマンス的には良かったです。
1900年代の初頭。中国の大財閥の総帥チャーリー宋(チアン・ウェン(姜文))は、三姉妹のわが子を米国留学させた。長女の宋靄齢は14歳。三女の美齢はまだ9歳の時に。当時の中国は清朝打倒運動が盛んで、宋も密かに革命家の孫文(ウィンストン・チャオ(趙文瑄))を支援していた。やがて辛亥革命で清朝は滅亡、孫文は中華民国大統領に選出される。1910年、帰国して孫文の秘書となる長女の靄齢(ミシェル・ヨー(楊紫瓊))。だが、靄齢は程なく富豪の孔祥熙(ニウ・チェンホワ(牛振華))と結婚。代わって孫文の秘書となる次女の慶齢(マギー・チャン(張曼玉))。政争に破れた孫文が日本に亡命すると慶齢も渡日し、親の反対を押し切って親
子ほど歳の離れた孫文と結婚。1922年、広東に革命政府を樹立した孫文は、味方であるはずの軍閥に急襲され、軍事顧問の蔣介石(ウー・シングォ(呉興国))により救出される。だが、妻・慶齢は脱出に苦労し、妊娠中の子を失う。1924年、孫文の抜擢で蒋介石は黄捕士官学校の校長となる。学校設立には、財閥である靄齢の夫・孔祥熙が深く関わっていた。蒋介石の出世を見越して、妹の美齢(ヴィヴィアン・ウー(鄔君梅))に結婚を勧める靄齢。1925年、
孫文は総理在任中に「革命未だ成らず」と言い残して逝去。人々から孫文の思想の象徴と見なされる慶齢。政治的に孫文になり代わったのは総司令官の蒋介石だった。蒋家の権力、孔家の財力。孫家の名声が国を動かすと確信する靄齢。孫文が作り上げた中国国民党は彼の死後、権力争いで分裂。乱れた国民党を嫌って脱退する慶齢。混乱に乗じて権力拡大を画策する蒋介石。蒋介石を非難した慶齢は、美齢や靄齢と敵対する。美齢は既に蒋介石と婚約していたのだ。1927年、慶齢はソ連に渡り、美齢は国民革命軍の総司令官となった蒋介石と盛大な結婚式を挙げる。1931年。満洲事変が勃発するが、蒋介石の国民党は中国共産党の粛清を優先し、日本軍の侵攻を許す。ソ連から帰国し、蒋介石非難声明を発表する慶齢。慶齢が邪魔だが、義姉であり、英雄・孫文の妻である彼女を暗殺できない蒋介石。1936年、蒋介石が西安で張学良らに拉致・監禁される。国民党と共産党の内戦を停止し、対日戦線を開始せよと蒋介石に迫る張学良。蒋介石の救出に力を合わせる宗家の三姉妹。日本軍との戦いのために、共産党に働きかけて張学良らの暴走を止める慶齢。救い出された蒋介石は、挙国一致の抗日を宣言。兵士の慰問などで反日戦線の象徴となる三姉妹。だが、終戦を待たずに靄齢と夫は香港に、慶齢は上海に移住。中国では共産党が台頭し、蒋介石と美齢は国民党と共に台湾に去る。「一人は金と、一人は権力と、一人は国家と結婚した」と言われた三姉妹が再び揃うことは無かった―(「宋家の三姉妹」)。
長女・宋靄齢(孔祥熙と結婚)... ミシェル・ヨー(楊紫瓊)
「一人は金と、一人は権力と、一人は国家と結婚した」いうこの映画のキャッチから、「宋靄齢は金を愛し、宋美齢は権力を愛し、宋慶齢は国を愛した」と評されるようになったそうです。宋三姉妹については、これもまた昨年['22年]8月にNHKの「
「ラヴソング」●原題: 甜蜜蜜/(英)COMRADES, ALMOST A LOVE STORY●制作年:1996年●制作国:香港●監督:ピーター・チャン(陳可辛)●製作:ピーター・チャン/クローディ・チョン(製作総指揮:レイモンド・チョウ)●脚本:アイヴィ・ホー●撮影:ジングル・マー●音楽:チウ・ツァンヘイ(主題歌:テレサ・テン「甜蜜蜜」)●時間:118分●出演:マギー・チャン(張曼玉)/レオン・ライ(黎明)/エリック・ツァン(曾志偉)/クリストファー・ドイル(杜可風)/クリスティ・ヨン(楊恭如)/アイリーン・ツー●日本公開:1998/02●配給:BMGジャパン=ビターズ・エンド●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(23-07-10)(評価:★★★★☆)
「宋家の三姉妹」●原題:宋家皇朝/(英)THE SOONG SISTERS●制作年:1997年●制作国:香港・日本●監督:メイベル・チャン(張婉婷)●製作:ン・シーユエン●脚本:アレ
ックス・ロー●撮影:アーサー・ウォン(黄岳泰)●音楽:喜多郎/ランディ・ミラー●時間:145分●出演:マギー・
チャン(張曼玉)/ミシェル・ヨー(楊紫瓊)/ヴィヴィアン・ウー(鄔君梅)/ウィンストン・チャオ(趙文瑄)/ウー・シングォ(呉興国)/チアン・ウェン(姜文)/エレイン・チン(金燕玲)/ニウ・チェンホワ(牛振華)●日本公開:1998/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:Bunkamura ル・シネマ渋谷宮下(23-07-09)(評価:★★★★)






1944年8月、第2次世界大戦の連合軍の反撃作戦が始まっていた頃、フランスの装甲師団とアメリカの第4師団がパリ進撃を開始する命令を待っていた。独軍下のパリでは地下組織に潜ってレジスタンスを指導するドゴール将軍の幕僚デルマ(アラン・ドロン)と自由フランス軍=FFIの首領ロル大佐(ブリュノ・クレメール)が会見、パリ防衛について意見を闘わしていた。左翼のFFIは武器弾薬が手に入りしだい決起すると主張、ドゴール派は連合軍到着まで待つという意見だった。パリをワルシャワのように廃墟にしたくなかったからだ。一方独軍のパリ占領軍司令官コルティッツ将軍(ゲルト・フレーベ)は連合軍の進攻と同時に、パリを破壊せよという総統命令を受けていた。将軍は工作隊に命じて、工場、記念碑、橋梁、地下水道など、ありとあらゆる建造物に対して地雷を敷設させていた。このような時に、イギリス軍諜報部から"連合軍はパリを迂回して進攻する"というメッセージがレジスタンス派に届いた。ロル大佐は自力でパリを奪回しようと決意し、これを知ったデルマは、これをやめさせる人間は政治犯として独軍に捕らえられているラベしかないと考え、ラベの妻フランソワーズ(レスリー・キャロン)とスウェーデン領事ノルドリンク(オーソン・ウェルズ)を動かして、ラベ救出を図ったが失敗、結局、ドゴール派と左翼派の会議の結果、決起が決まった。ドゴール派は市の要所を占領し、市街戦が始まった。パリ占領司令部は、独軍総司令部からパリを廃墟にせよという命令を受けていた上、市
街戦が長びけば爆撃機が出動すると告げられていた。コルティッツ将軍は、すでにドイツ敗戦を予想していて、パリを破壊することは全く無用なことと思っていた。そこでノルドリンク領事を呼び、一時休戦をしてパリを爆撃から守り、その間に連合軍を呼べと遠回しに謎をかける。ノルドリンクから事情を知ったデルマは、ガロア少佐(ピエー
ル・ヴァネック)を連合軍司令部に送った。ガロアはパリを脱出、ノルマンディの米軍司令部に到着した。パットン将軍(カーク・ダグラス)はパリ解放は米軍の任務ではないと告げ、ガロアを最前線のルクレク将軍(クロード・リッシュ)に送る。ルクレク将軍は事態の急を知ってシーバート将軍(ロバート・スタック)を動かし、ブラドリー将軍(グレン・フォード)を説いた。ブラドリーは全軍にパリ進攻を命令した。8月25日、ヒットラーの専用電話はパリにかかっていて"パリは燃えているか"と叫び続けていた―。
1966年の米・仏合作のオールスターキャスト戦争映画で、原作はラリー・コリンズ、ドミニク・ラピエールによるレジスタンスとパリの解放を描いたノンフィクション作品。「
群像劇の中で誰が主人公か敢えて言えば、ゲルト・フレーベが演じた"独軍のパリ占領軍司令官コルティッツ将軍だったかも。ヒトラーの信任が厚い人物ながら、パリの破壊と市民の人命を救うべく、ナチ親衛隊の命令を聞き流すなど面従腹背の腹芸をしたことが描かれています。ラストの方で、フランス軍の中尉が降伏要求と身柄確保に乗り込んで来るシーンがありますが、伝わるところでは、仏軍中尉は、司令官室に乗り込むと緊張のあまり「ドイツ語を話せるか」とドイツ語で叫んでしまい、それに対してコルティッツ将軍は「貴官よりいくらか上手だと思う」と余裕で答えたそうです。ただし、この逸話は映画では描かれていませんでした(代わりに、中尉が自分が敵将軍を逮捕するまでの人間になったと親に電話で報告する場面が描かれている)。

「パリは燃えているか」●原題:PARIS BRULE-T-IL ?/IS PARIS BURNING?●制作年: 1966年●制作国:アメリカ・フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ポール・グレッツ●脚本:ゴア・ヴィダル/




2022(令和4)年・第19回「本屋大賞」第1位(大賞)作品。2021(令和3)年・第11回「アガサ・クリスティー賞(大賞)」(早川書房・公益財団法人早川清文学振興財団主催)受賞作。2022(令和4)年度・第9回「高校生直木賞(大賞)」(同実行委員会主催、文部科学省ほか後援)受賞作。2021(令和3)年下半期・第166回「直木賞」候補作。
直木賞の選考で論点となったことの1つに、「どうして日本人の作家が、海外の話を書かなくてはいけないのか」というものがあり、林真理子氏などは、それが最後まで拭い去ることが出来なかったとしています。しかし一方で、三浦しをん氏は「彼女たちの姿を描くことを通し、現代の日本および世界に存在する社会の問題点をも「撃て」ると作者は確信したからだろう」という積極的に評価しており、この意見は選考委員の中では少数意見だったようですが、個人的には自分もそれに近い意見です。よって、評価は「◎」としました。
●NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀バタフライエフェクト」で2022年12月19日、ウクライナ出身の伝説の最強女性狙撃手「リュドミラ・パヴリチェンコ」が取り上げられていた。本書にも主人公の少女セラフィマの「第三十九独立小隊」の指揮官である「イリーナ」の戦友という設定で登場する。作者は


ベトナム戦争が泥沼化し、アメリカ国民の間に疑問や反戦の気運が高まっていたリチャード・ニクソン大統領政権下の1971年、政府がひた隠す、ベトナム戦争を分析・記録した国防省の最高機密文書=通称「ペンタゴン・ペーパーズ」の存在をニューヨーク・タイムズがスクープし、政府の欺瞞が明らかにされる。ライバル紙でもあるワシントン・ポスト紙は、亡き夫に代わり発行人・社主
に就任していた女性キャサリン・グラハム(メリル・ストリープ)のもと、編集長のベン・ブラッドリー(トム・ハンクス)らが文書の入手に奔走。なんとか文書を手に入れることに成功するが、ニクソン政権は記事を書いたニューヨーク・タイムズの差し止めを要求。新たに記事を掲載すれば、ワシントン・ポストも同じ目に遭うことが危惧された。記事の掲載を巡り会社の経営陣とブラッドリーら記者たちの意見は対立し、キャサリンは経営か報道の自由かの間で難しい判断を迫られる―。
スティーブン・スピルバーグ監督の2017年公開作で、メリル・ストリープ、トム・ハンクス出演の二大オスカー俳優の共演で、政府と報道機関の闘いを通してジャーナリズムの使命や良心とはなにかを問うたアメリカ映画らしい作品(原題は"The Post")。背景は複雑ですが、見どころを明日の新聞にスクープ記事を掲載するかしないか、掲載すれば新聞社は潰れるかもしれないという究極の状況にフォーカスすることで、娯楽性も兼ね添えた作品となっています。
こうした単純化の手法は、アラン・J・パクラ監督がよく使っていたように思いますが、この映画の最後に、政府の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露された当時の大統領リチャード・ニクソンが、怒り心頭に発して電話で怒鳴りながら何やら指示しており、さらにその後のラストシーンが、アラン・J・パクラ監督の「
テーマ的にはいいテーマだと思います。ただ、脚本のせいなのか、6カ月という短期間で撮り上げたせいなのか(スピルバーグの作品で「最も短期間で完成」した作品とのこと)よくわかりませんが、オスカー3度受賞のメリル・ストリープとオスカー2度受賞のトム・ハンクスの共演にしては演出的な盛り上がりはやや物足りず、トム・ハンクスが役柄上のこともあってメリル・ストリープに喰われるかたちで、両者の共演が相乗効果に至っていない印象を受けました。
因みに、2013年10月、グラハム家(社主はキャサリンの息子に代替わりしていた)は同紙をアマゾン創業者のジェフ・ベゾスが設立した持株会社ナッシュ・ホールディングスに2億5千万ドルで売却しており、以来、同紙の実質的オーナーはジェフ・ベゾスということになります(イーロン・マスクがTwitter(ツイッター)社を約440億ドル(5.6兆円)で買収するという最近の話と比べればその180分の1というずっと小規模な売却額だが)。ジェフ・ベゾスに買収されてからというもの、「ワシントン・ポスト」はデジタルファーストを掲げて急速な変化を遂げており、2015年10月、「ワシントン・ポスト」のWebサイトへの訪問者数が6690万人と、はじめて「ニューヨーク・タイムズ」の数字(6580万人)を上回っています(それ以前の同紙は、知名度は高いがあくまで「地方紙」という存在で、発行部数も50万部程度だった)。
スキー●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:116分●出演:メリル・ストリープ/トム・ハンクス/サラ・ポールソン/ボブ・オデンカーク/トレイシー・レッツ/ブラッドリー・ウィットフォード/ブルース・グリーンウッド/マシュー・リース●日本公開:2018/03●配給:東宝東和(評価:★★★☆)






60歳前後は「筋トレ適齢期」であるとともに、時間が自由に使えるようになる定年前後は、まさに「はじめどき」でもあると説いた本。シニアの運動は「ウオーキング」ばかりになりがちだが、ウオーキングばかりしていても筋肉は増えず、きちんとした知識を身につけて行えば、少々ハードな筋トレをやっても大丈夫とのことです。去年['19年]観た映画で、「RBG 最強の85才」('18年/米)という米国で最高齢の女性最高裁判事として国民的アイコンとなったRBGことルース・ベイダー・ギンズバーグを追ったドキュメンタリー映画がありましたが、その中でギンズバーグが85歳にしてパーソナルトレーナーをつけてがんがん筋トレしていたのを思い出しました。
著者は京大名誉教授であり、「京大の筋肉」のキャッチとヌード写真で一躍注目を浴びましたが(当時64歳)、個人的にどんな人か知ったのは、NHK-BSプレミアムのフットボールアワーがMCを務める「美と若さの新常識〜カラダのヒミツ〜」で"実践!おサボり筋トレ"というテーマの時にコメンテーターとして出演しているのを見たのが最初だったでしょうか。自分で実践しているので、言っていることに説得力がありました(同じ番組に出ていたフィットネスビキニの日本女王・安井友梨などにも言えることだが)。
冒頭に挙げた「RBG 最強の85才」は、米国では関連本が何冊も出版され、Tシャツやマグカップといったグッズまで作られるほどの知名度と人気を誇る、RBGことルース・ベイダー・ギンズバーグの若い頃から現在までを二人の女性監督が描いたドキュメンタリーで、85歳(映画製作時)で現役の最
高裁判所判事として活躍する彼女は、ニューヨークのユダヤ系の家に生まれ、苦学の末に判司となり、1980年にカーター大統領によってコロンビア特別区巡回区連邦控訴裁判所判事に指名され、1993年に
はビル・クリントン大統領政権下で女性としては2人目のアメリカ最高裁判事(長官を含めて9人で構成される)に任命されています。85歳の年齢で現職にあるので保守派かというと、実はその逆で、これまでも女性やマイノリティへの差別撤廃に寄与した判決を多く出しているリベラル派です(だか
ら若者に人気がある)。映画の中でも一部解説されていますが、ドナルド・トランプは2017年1月大統領就任後、引退する連邦最高裁判事の後任として保守派の判事を次々に任命しているため、リベラル派のギンズバーグはこれ以上の連邦最高裁の保守化を食い止めるために、少なくともトランプが退陣して新たな民主党出身の大統領が現れるまでは、引退を見送ると見られているようです。現職に留まっているのには理由があり、また、職務継続のため「筋トレ」で健康を維持しているということになるかと思います(もうすぐ87歳になるなあ)。






寛永7(1630)年10月、井伊家上屋敷に津雲半四郎(仲代達矢)という浪人が訪れ、「仕官先もままならず、生活も苦しくなったので屋敷の庭先を借りて切腹したい」と申し出る。申し出を受けた家老・斎藤勘解由(かげゆ)(三國連太郎)は、春先、同様の話で来た千々岩求女(石濱朗)の話をする。食い詰めた浪人たちが切腹すると称し、なにがしかの金品を得て帰る最近の流行を苦々しく思っていた勘解由が切腹の場をしつらえると、求女は「一両日待ってくれ」と狼狽したばかりか、刀が竹光であったために死に切れず、舌を噛み切って無惨な最期を遂げたと。この話を聞いた半四郎は、自分はその様な"たかり"ではないと言って切腹の場に向かうが、最後の望みとして介錯人に沢潟(おもだか)彦九郎(丹波哲郎)、矢崎隼人(中谷一郎)、川辺右馬介(青木義朗)の3人を順次指名する。しかし、指名された3人とも出仕しておらず、何れかの者が出仕するまでの間、半四郎は自身の話を聞いて欲しい
と言う。求女は実は半四郎の娘・美保(岩下志麻)の婿で、主君に殉死した親友の忘れ形見でもあった。孫も生れささやかながら幸せな日が続いていた矢先、美保が胸を病み孫が高熱を出した。赤貧の浪人生活で薬を買う金も無く、思い余った求女が先の行動をとったのだ。そんな求女に一両日待たねばならぬ理由ぐらいせめて聞いてやる労りはなかったのか、武士の面目などとは表面だけを飾るもの、と勘解由に厳しく詰め寄る半四郎が懐から出したものは―。
「人間の條件」6部作('59-'61年)の小林正樹(1916-1996/享年80)が1962(昭和37)年に撮った同監督初の時代劇作品であり、
を抜かれたお飾りのように被告席にいるだけ)、そのことを(主役が法廷にいないことも含め)浮き彫りにした内容であるだけに4時間37分を飽きさせることなく、下手なドラマよりずっと緊迫感がありました(この編集の仕方こそがドキュメンタリーにおける監督の演出とも言える。ナレーターは佐藤慶)。争点が天皇にあったことは、この裁判が、昭和天皇の誕生日(現昭和の日)に11ヶ国の検察官から起訴されたことに象徴されており、天皇に処分は及ばなかったものの、皇太子(当時)の誕生日(現天皇誕生日)に被告人28名のうちの7名が絞首刑に処されたというのも偶然ではないように思われます。
「切腹」の原作は滝口康彦(1924-2004)の武家社会の虚飾と武士道の残酷性を描いた作品です。映画化作品にも、かつて日本人が尊んだサムライ精神へのアンチテーゼが込められているとされていますが、井伊家の千々岩求女への対応は、武士道の本筋を外れて集団サディズムになっているように感じました(同時に斎藤勘解由は、千々岩求女を自らの出世の材料にしようとしたわけだ)。ストーリーはシンプルですが骨太であり(脚本は橋本忍)、観る側に、何故半四郎が介錯人に指名した3人が何れもその日に出仕していないのかという疑問を抱かせたうえで、半四郎がまさに切腹せんとする庭先の場面に、半四郎の語る回想話をカットバックさせた橋本忍氏の脚本が巧みです。
壮絶且つ凄絶な復讐(仇討)劇でしたが、改めて観ると、息子・千々岩求女の亡骸を半四郎が求女の妻・美保と一緒に引き取りに来た際に、求女に竹光で腹を切らせた首謀者である沢潟、矢崎、川辺の3人しか半四郎に会っておらず、それ以外の者には半四郎の面が割れていないとうのが一つの鍵としてあったんだなあと。
半四郎役の仲代達矢(当時29歳)は、長台詞を緊迫感絶やすことなくこなしており、勘解由役の三國連太郎(当時39歳)、沢潟役の丹波哲郎(当時39歳)の "ヒール(悪役)"ぶりも効いています(19歳の美保を演じた岩下志麻は当時21歳だったが、やはり若い。11歳の少女時代(右)まで演じさせてしまっているのはやや強引だったが)。
撮影中に起きた仲代達矢と三國連太郎の演劇と映画の対比「論争」は
カットバック(回想)シーンの中にある仲代達矢と丹波哲郎の決闘場面はなかなかの圧巻で、仲代達矢はこの作品と同じ年の1月に公開された「

因みに、滝口康彦(1924-2004)による原作「異聞浪人記」は、講談社文庫版『一命』に所収(三池崇史監督、市川海老蔵 主演の本作のリメイク作品('11年)のタイトルは「一命」となっている)。『滝口康彦傑作選』(立風書房)にある原作に関する「作品ノート」によれば、「『明良洪範』中にある二百二十字程度の記述にヒントを得た。彦根井伊家の江戸屋敷での話で、原典では井伊直澄の代だが、小説では、大名取潰しの一典型といえる福島正則の改易と結びつけるため、直澄の父直孝の代に変えている」とのことです。『明良洪範』の記述の史実か否かの評価については様々な異論があるようですが、ある程度歴史通の人たちの間では、この中にある、彦根藩(この藩は当時は弱小藩だったが後に安政の大獄で知られる大老・井伊直弼を輩出する)が士官に来た浪人を本当に切腹させてしまったことが、こうした「狂言切腹」の風習が廃れるきっかけとなったとされているようです。
小林 正樹(こばやし まさき、1916年2月14日 - 1996年10月4日)は、北海道小樽市出身の映画監督である。1952年(昭和27年)、中編『息子の青春』を監督し、1953年(昭和28年)『まごころ』で正式に監督に昇進。1959年(昭和34年)から1961年(昭和36年)の3年間にかけて公開された『人間の條件』は、五味川純平原作の大長編反戦小説「人間の條件」の映画化で、長きに渡る撮影期間と莫大な製作費をつぎ込み、6部作、9時間31分の超大作となった。続く1962年(昭和37年)初の時代劇『切腹』でカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受賞。続いて小泉八雲の原作をオムニバス方式で映画化した初のカラー作品『怪談』は3時間の大作で、この世のものとは思えぬ幻想的な世界を作り上げ、二度目のカンヌ国際映画祭審査員特別賞を受けた他、アカデミー賞外国語映画賞にノミネートされ、日本映画史上屈
指の傑作と絶賛された。1965年(昭和40年)松竹を退社して東京映画と契約し、1967年(昭和42年)三船プロ第一作となる『上意討ち 拝領妻始末』を監督して、ヴェネツィア国際映画祭批評家連盟賞を受賞、キネマ旬報ベスト・ワンとなった。1968年(昭和43年)の『日本の青春』のあとフリーとなり、1969年(昭和44年)には黒澤明、木下恵介、市川崑とともに「四騎の会」を結成。1971年(昭和46年)にはカンヌ国際映画祭で25周年記念として世界10大監督の一人として功労賞を受賞。1982年(昭和57年)には極東国際軍事裁判の長編記録映画『東京裁判』を完成させた。1985年(昭和60年)円地文子原作の連合赤軍事件を題材にした『
「切腹」●制作年:1962年●監督:小林正樹●脚本:橋本忍●撮影:宮島義勇●音楽:武満徹●原作:滝口康彦「異聞浪人記」●時間:133分●出演:仲代達矢/三國連太郎/丹波哲郎/石浜朗/岩下志麻/三島雅夫//中谷一郎/佐藤慶/稲葉義男/井川比佐志/武内亨/青木義朗/松村達雄/小林昭二/林孝一/五味勝雄/
安住譲/富田仲次郎/田中謙三●公開:1962/09●配給:松竹(評価:★★★★)
「東京裁判」●制作年:1983年●監督:小林正樹●総プロデューサー:須藤博●脚本:小笠原清/小林正樹●原案:稲垣俊●音楽:武満徹●演奏:東京コンサーツ●ナレーター:佐藤慶●時間:277分●公開:1983/06●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋文芸坐(84-12-08)(評価:★★★★)
仲代達矢(俳優)

情報を入手、その詳細を突き止めるため、闇社会に通じている雑技団団長・張豪(ジャンハオ)の紹介で、首謀者シャマルに会うが交渉は決裂、更に、商売敵デイビッド・キムや謎の女AYAKOが暗躍し、中国国営エネルギー巨大企業CNOX(中国海洋石油)が不穏な動きを見せる中、田岡が何者かに誘拐されたため、張豪の部下である張雨(ジャンユウ)と共に、彼が拉致されていると思われる天津へと飛ぶ―。

アクション風ということで、「
AYAKOのイメージは、「エントラップメント」で主人公の美術泥棒役のショーン・コネリーと共演し、主人公と様々な駆け引きを繰り広げる保険会社調査員役のキャサリン・ゼタ=ジョーンズかな。ゼタ=ジョーンズの方がよりアクション系で、主人公の相方(弟子?)的立場になったりし、その間、ショーン・コネリーに若干惹かれ気味になったりするんだけど、ラストは...。
キャサリン・ゼタ=ジョーンズはこの作品でゴールデン・ラズベリー賞の最低主演女優賞にノミネートされていますが(すごくいいと言うほどでもないが、そんなに悪くもなかったと思う)、この『太陽は動かない』も、仮に映画化されるとすると、鷹野やAYAKOを演じきれる役者はあまりいないように思います(巷ではAYAKOは「ルパン三世」の峰不二子が相応しいとの声を聞くが、いきなりアニメに行っちゃうのか)。
因みに、作者は映画「ラストエンペラー」('87年/イタリア・中国・イギリス)の大ファンということで、版元のサイトによれば本書執筆のため2011年5月に3泊4日という強行スケジュールで、北京→天津→内モンゴル自治区を行く取材旅行し(編集者同行)、北京では紫禁城を、この作品の前半の主要な舞台となる天津では溥儀が暮らしていた邸宅「静園」なども訪問したそうですが、そうしたモチーフはこの作品には織り込まれていなかったなあ(純粋に溥儀の家を見たかったということか)。
ベルナルド・ベルトリッチ(最近はベルトルッチと表記するみたい)監督の「ラストエンペラー」は、アカデミー賞の作品・監督・脚本・撮影・美術・作曲など9部門を獲得した作品で(ゴールデングローブ賞作品賞も)、紫禁城で世界初の完全ロケ撮影を行うなど前半のスペクタクルに比べ、ジョン・ローンが演じる庭師になった元・皇帝が、かつて自分が住んでいた城に入場料を払って入るラストが侘しかったです。
2時間43分という長尺でしたが、実はこれでも3時間39分の完全版を劇場公開用に短縮したものであり、そのため繋がりの良くないところもあって、個人的には星3つ半の評価でした(これ、有楽町マリオン別館内の「丸の内ルーブル」で観たけれど、たまたま天井の可動式シャンデリアの真下に座ったので、最初それが気になったのを憶えている)。その後、今世紀に入って完全版のDVDが発売されていますが未見。完全版を観れば評価が変わるかもしれません。
「エントラップメント」●原題:ENTRAPMENT●制作年:1999年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アミエル●製作:ショーン・コネリー/マイケル・ハーツバーグ/ロンダ・トーレフソン●脚本:ロン・バス/ウィリアム・ブロイルズ●撮影:フィル・メイヒュー●音楽:クリストファー・ヤング●原案:ロン・バス/マイケル・ハーツバーグ●時間:113分●出演:
「ラストエンペラー」●原題:THE LAST EMPEROR●制作年:1987年●制作国:イタリア・中国・イギリス●監督:ベルナルド・ベルトリッチ●製作:ジェレミー・トーマス●脚本:ベルナルド・ベルトルッチ/マーク・ペプロー●撮影:ヴィットリオ
・ストラーロ●音楽:坂本龍一●時間:163分(劇場公開版)/219分(オリジナル全長版)●出演:ジョン・ローン/ジョアン・チェン/ピーター・オトゥール/坂本龍一/ケイリー=ヒロユキ・タガワ/デイヴィッド・バーン/コン・スー/ヴィヴィアン・ウー/ヴィクター・ウォン/デニス・ダン/イェード・ゴー/マギー・ハン/リック・ヤング/ウー・ジュンメイ/英若誠/リサ・ルー/ファン・グァン/立花ハジメ/坂本龍一/高松英郎/池田史比古/陳凱歌(カメオ出演)●日本公開:1988/01●配給:松竹富士●最初に観た場所:丸の内ルーブル (88-04-23)(評価:★★★☆)
ジョアン・チェン/ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラストエンペラー」('87年/伊・中国・英)・デヴィッド・リンチ監督「


マリオン」新館7階に5階「丸の内松竹」とともにオープン(2005年12月~2008年11月「サロンパス ルーブル丸の内」) 2014年8月3日閉館(「丸の内松竹」は1996年6月12日~「丸の内ブラゼール」、2008年12月1日~「丸の内ピカデリー3」2018(平成30)年12月2日休館、2019(令和元)年10月4日~ドルビーシネマ専用劇場「丸の内ピカデリー ドルビーシネマ」として再オープン) 
丸の内ルーブルの巨大シャンデリア




1924年にFBI長官に任命され、1972年に亡くなるまで長官職にとどまったジョン・エドガー・フーヴァー(John Edgar Hoover, 1895 - 1972/享年77)の人と生涯の記録ですが、謎の多い彼の長官時代の実態を、多くの証言と資料から立体的に再構築しているように思われました。
折しも、クリント・イーストウッド監督、レオナルド・ディカプリオ主演によるフーヴァーの伝記映画「J・エドガー」('11年/米)が公開され、この映画に対する評価は割れているそうですが、本書を読む限り、分かっている範囲での事実関係、或いはフーヴァーのセクシュアリティ(同性愛、異性装)など、ほぼ事実とされている事柄については、比較的漏らさずに描かれていたように思います。
映画では、フーヴァーの、FBIの機能・権力を整備・改革・拡大していく才気に溢れた青年時代を、マザコンのために女性と上手く付き合うことが出来なかったその性癖と併せて描く共に、ケネディ兄弟に対する脅迫など自分の地位を守るために手段を選ばなかった最盛期、老いて権力にしがみつく亡霊のようになった晩年期が、ほぼ同じような比重で描かれていたように思います。
自らがFBIの副長官に任じたクライド・トールソンとの同性愛は、映画ではキス・シーンが1回ある程度で、あとは、フーヴァーのトールソンに贈った詩や、彼が異性との交際の意思をトールソンに伝えた際にトールソンが激昂する―といった象徴的な表現に抑えられていますが、二人が老齢に達して両者の肉体関係は終わったものの、その後もフーヴァー自身は若いゲイなどを相手に同性愛に耽り、女装癖も保持し続けていたことが、本書からは窺えます。
「犯罪とスキャンダルの摘発」「権力者への恫喝」「自らの性癖の隠蔽」の3つがトライアングルのような関係になっていたことを暗示している分、心理学的にみても本書の方が読みが深いと言え、また、このような人物が国の機関の最高権力者として居続けたことに対する問題提起もされています。
本書の原題 "Official and Confidential(公式かつ機密)"は、フーヴァーが収録したファイルの名前で、所謂この「フーヴァー・ファイル」には、有名人に対する恐喝や政治的迫害が記録されているとのことですが、本書にも映画にもあるように、長年にわたって彼の秘書を務めた女性(映画でナオミ・ワッツが演じた、フーヴァーが初めて女性に想いを打ち明け、結婚を断られた相手)が、フーヴァーの死後に、訃報に触れたニクソンがファイル回収のために配下をフーヴァーの屋敷に送り込む前に持ち出し、密かに処分したとのことです。
「J・エドガー」●原題:J. EDG
AR●制作年:2011年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:クリント・イーストウッド/ ブライアン・グレイザー/ロバート・ロレンツ●脚本:ダスティン・ランス・ブラック●撮影:トム・スターン●音楽:クリント・イーストウッド●時間:137分●出演:レオナルド・ディカプリオ/ ナオミ・ワッツ/アーミー・ハマー/ジョシュ・ルーカス/ジュディ・デンチ/エド・ウェストウィック●日本公開:2012/01●配給/ワーナー・ブラザーズ(評価★★★☆)




個人的には、ちょうどNHKスペシャルで「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」('11年12月24日放送)を見たところでしたが、それと照らしても、偏りの少ない伝記と言えるのではないでしょうか。元々が毀誉褒貶の激しいジョブズですが、そのスゴイ面、人を強烈に引きつける面と、ヒドイ面、友人や上司にはしたくないなあと思わせる面の両方が書かれていて、それでいて、ジョブズに対する畏敬と愛着が感じられました。
アップルの共同創業者や自らが引き抜いた経営陣との確執のほかに、同年代のライバルであるビル・ゲイツとの出会いや彼との交渉、Windowsの牙城を切り崩そうするジョブズの攻勢なども描かれていますが、ピクサーでの仕事におけるディズニー・アイズナー会長との様々な権利を巡るビジネス面での交渉が特に詳しく描かれており、アメリカのコンピュータ業界の内幕を描いた本であると同時に、映画ビジネス界を内側から描いたドキュメントにもなっています。
NHKスペシャルの「世界を変えた男 スティーブ・ジョブズ」を見て、彼の人生には幾つかの印象的な場面が印象的な映像と共にあったように思われ、とりわけ、'84年のマッキントッシュ発売の際のジョージ・オーエルの『1984』をモチーフとしたコマーシャル(CM監督は「ブレードランナー」('82年)のリドリー・スコット)や、'86年のCGの可能性を如実に示した"電気ランプ"の親子が主人公の短篇映画「ルクソーJr.」(Luxo Jr.)、'95年の「世界初のフル3DCGによる長編アニメーション映画「トイ・ストーリー」などが個人的には脳裡に残りました。
「トイ・ストーリー」以外は番組で初めて見ましたが、そうした映像のイメージもあって本書を比較的身近に感じながら読むことができ、「トイ・ストーリー」も、初めて観た時はCGが進化したなあと思っただけでしたが、ジョブズが買収も含め個人資産を10数年も注ぎこむも全く利益を生まなかったピクサーが、土壇場で放った"大逆転ホームラン"だったと思うと、また違った感慨も湧きます(この作品だけでも公開までの4年間の投資額は5千万ドルに及び、「こんなに金がかかるなら投資しなかった」とジョブズは語っているが、本作のヒットでピクサー株は高騰し、結果的にジョブスの資産は4億ドル増えた)。
人々を惹き付ける素晴らしいプレゼンテーションをする一方で、傲慢な人柄で平気で人を傷つけ、また、類まれなイノベーターとして製品のデザインや性能への完璧主義的なこだわりを持つ一方で、相手の弱みに付け込む政治的画策も厭わない冷酷な経営者という一面も持つ―こうしたジョブズの多面性が、本書では充分に描かれているように思いました。
「トイ・ストーリー」●原題:TOY STORY●制作年:1995年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ラセター●製作:ラルフ・グッジェンハイム/ボニー・アーノルドズ●脚本:ジョス・ウィードン/アンドリュー・スタントン/ジョエル・コーエン/アレック・ソコロウ●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ランディ・ニューマン●時間:81分●出演:トム・ハンクス/ティム・アレン/ドン・リックルズ/ジョン・モリス/ウォーレス・ショーン/ジョン・ラッツェンバーガー/ジム・バーニー●日本公開:1996/03●配給/ブエナ ビスタ インターナショナル ジャパン(評価★★★☆)
●NHKのドキュメンタリー番組「映像の世紀バタフライエフェクト」で2022年12月19日、スティーブ・ジョブズを、彼が影響を受けたバックミンスター・フラーと併せて取り上げていた。「宇宙船地球号」という概念を唱え、人類と地球との調和を説いた思想家バックミンスター・フラー。「現代のレオナルド・ダビンチ」とも「狂人」とも称されたフラーの思想が多くの若者たちを突き動かし、その中に若き日のスティーブ・ジョブズもいたとのこと。フラーの思想は、時空を超え、ジョブズに受け継がれ、世界を変えていき、そして伝説のスピーチが生まれたのだとしている。



砂漠化した故郷の星に妻子を残し、地球にやってきたニュートン(デヴィッド・ボウイ)は、発明家として人知を超えた9つの特許を元に巨万の富を築き、アメリカのかつての大富豪、ハワード・ヒューズなどを思わせる、彼の奇妙な暮らしは全米の注目の的となる。ニュートンはロケットを建造して家族の待つ星に帰ろうとするが、地球で知り合って愛し合うようになったメリー・ルー(キャンディ・クラーク)を残して宇宙に飛び立とうとする直前、政府組織に捕らえらてしまい、拷問じみた人体実験と軟禁生活の中で数十年を過ごす―。
原作はウォルター・テヴィス。「ブレードランナー」の原作者であるフィリップ・K・ディックらに影響を与えたとされるSF映画ですが、特撮(と言えるほどのものでもない)部分は、ニュートンが回想する故郷の星の家族が"着ぐるみ"みいたいだったりして(しかも、お決まりの"キャット・アイ")、むしろ、地球人の姿を借りている主人公の宇宙人を演じているデヴィッド・ボウイ自身の方が、表情や立ち振る舞いがよほど宇宙人っぽく見えました。これって相当な集中力を要求される演技だと思います(デヴィッド
・ボウイ自身もこの作品に思い入れがあったのか、2015年にオフブロードウェイで舞台化された際にはボウイ自身もプロデュースを担当した)。
パンフレットの解説によれば、これはSFと言うよりも愛の物語であるとありましたが、メリー・ルーがニュートンとの数十年ぶりの再会で心を開くことが出来なかったのは、彼女が年齢を加えているのに、ニュートンの方は一向に年をとっていないという隔たりのためで、時を共有するというのは、一緒に年齢を重ねていくということなのだなあと思ったりもしました。
「時間」というものも、この作品のテーマの1つであると言えるかもしれません。
、酒に溺れていく(宇宙人もアル中になる!)ニュートン―。人間の疎外というものを描いた作品でもあるように思いました。
デヴィッド・ボウイは、本作が映画では日本初お目見えでしたが、この作品の前後に「ジギー・スターダスト」('73年/英、ボウイのステージと素顔を追ったドキュメンタリー。日本での公開は'84年)、「ジャスト・ア・ジゴロ」('81年/西独、未見)に出ていて、その後「クリスチーネ・F」('83年/西独、ドイツの麻薬中毒少女をドキュメンタリー風に扱った映画)、「ハンガー」('83年/英、カトリーヌ・ドヌーヴが吸血鬼女、デヴィッド・ボウイがその伴侶という設定)、大島渚監督の「戦場のメリー・クリスマス」('83年/日・英)と続きます。因みに、「ジギー・スターダスト」は1972年にデヴィッド・ボウイがリリースしたアルバム名であり、異星からやってきた架空のスーパースター「ジギー」の成功からその没落までを描いたというそのコンセプトは、3年後に作られた「地球に落ちて来た男」にほぼ反映されたとみていいのではないでしょうか。


「クリスチーネ・F」は、西ベルリンの実在のヘ麻薬中毒の少女(当時14歳)の手記『かなしみのクリスチアーネ』(原題: "Wir Kinder vom Bahnhof Zoo", 「われらツォー駅の子供たち」)をベースに作られ映画ですが、主人公のクリスチーネも、同じ14歳の女友達も、共に薬代を稼ぐために売春していて(この女友達はヘロインの過剰摂取で死んでしまう)、更に、男友達も男娼として身体を売っているという結構すごい話で、クリスチーネをはじめ、素人を役者として使っていますが、演技も真に迫っていて、衝撃的でした(因みに、手記を書いたクリスチアーネ・フェルシェリノヴ(1962年生まれ)は、2010年現在生きていて、一旦は更生したものの、最近また麻薬に手を出しているという)。
この頃の「西ドイツ」映画には、日本に入ってくるものが所謂"芸術作品"っぽかったり(「ノスフェラトゥ」('78年)、「ブリキの太鼓」('79年)、「メフィスト」('81年))、歴史・社会派の作品だったり(「リリー・マルレーン」('81年)、「マリア・ブラウンの結婚」('79年))、重厚でやや暗めのものが多く、また、娯楽映画の中にもアナーキーな部分があったりして(「

リドリー・スコット監督の弟トニー・スコットの初監督作品でもある「ハンガー」では、デヴィッド・ボウイは、「地球に落ちてきた男」で演じた「歳を取らない」宇宙人役とは真逆で、吸血鬼に若さを奪われ「急速に老いていく男」を演じています。
この他にも、スーザン・サランドンとカトリーヌ・ドヌーヴとのラヴシーンといったのもありましたが、個人的には、全体的にイマイチ入り込めなかった...。日本でもそんなにヒットしなかったように思いますが、ガラッと作風を変えた次回作「
デヴィッド・ボウイが日本で再びブレイクすることになったのは、「ハンガー」より先に公開された大島渚監督作品「戦場のメリークリスマス」('83年/日・英)によってであって、音楽の方は、同じく役者として出演していた坂本龍一が担当していました。


「地球に落ちて来た男」●原題:THE MAN WHO FELL TO EARTH●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ニコラス・ローグ●製作:マイケル・ディーリー/バリー・スパイキングス●脚本:ポール・メイヤーズバーグ●撮影: アンソニー・B・リッチモンド●音楽:ジョン・フィリップス●原作:ウォルター・テヴィス●時間:119分●出演:デヴィッド・ボウイ/キャンディ・クラーク/リップ・トーン/バック・ヘンリー/バーニー・ケイシー●日本公開:1977/02●配

「ジギー・スターダスト」●原題:ZIGGY STARDUST●制作年:1973年●制作国:イギリス●監督:ドン・アラン・ペネベイカー●撮影:ジェームズ・デズモンド/マイク・デイヴィス/ニック・ドーブ/ランディ・フランケン/ドン・アラン・ペネベーカー●音楽:デヴィッド・ボウイ●衣装デザイン:フレディ・パレッティ/山本寛斎●時間:90分●出演:デヴィッド・ボウイ/リンゴ・スター(ノンクレジット)●日本公開:1984/12●配給:ケイブルホーグ●最初に観た場所:三鷹オスカー(86-07-06)(評価:★★★)●併映:「地球に落ちて来た男」(ニコラス・ローグ)/「ハンガー」(トニー・スコット)
「クリスチーネ・F」●原題:CHRISTINE F●制作年:1981年●制作国:西ドイツ●監督:ウルリッヒ・エーデル●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ヘルマン・ヴァイゲル/カイ・ヘルマン/ホルスト・リーク●撮影:ユストゥス・パンカウ●音楽:ユルゲン・クニーパー/デヴィッド・ボウイ●原作:クリスチアーネ・ヴェラ・フェルシェリノヴ「かなしみのクリスチアーネ(われらツォー駅の子供たち)」●時間:138分●出演:ウルリッヒ・エーデル/ナーチャ・ブルンクホルスト/トーマス・ハウシュタイン/イェンス・クーパル/ヘルマン・ヴァイゲル/デヴィッド・ボウイ●日本公開:1982/06●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:荻窪オデヲン座(82-12-11)(評価:★★★☆)●併映:「グローイング・アップ ラスト・バージン



「ハンガー」●原題:THE HUNGER●制作年:1983年●制作国:イギリス●監督:トニー・スコット●製作:リチャード・シェファード●脚本:ジェームズ・コスティガン/アイヴァン・デイヴィス/マイケル・トーマス●撮影:スティーヴン・ゴールドブラット●音楽:デニー・ジャガー/デヴィッド・ローソン/ミシェル・ルビーニ●時間:119分●出演:カトリーヌ・ドヌーヴ/デヴィッド・ボウイ/スーザン・サランドン/クリフ・デ・ヤン
グ/


「戦場のメリークリスマス」●制作年:1983年●制作国:日本・イギリス・オーストラリア・ニュージーランド●監督:大島渚●製作:ジェレミー・トーマス●脚本:大島渚/ポール・メイヤーズバーグ●撮影:杉村博章●音楽:坂本龍一●原作:ローレンス・ヴァン・デル・ポスト「影さす牢格子」「種子と蒔く者」●時間:123分●出演:デヴィッド・ボウイ/坂本龍一/ビートたけし/









(●ギュンター・グラスの『ブリキの太鼓』を読書会のテーマ本となったのを機に読み、面白くて映画も再見した。映画は、戦争が終わり、成長を決意したオスカルが家族とともに西ドイツ独に移住する場面で終わっているが(文庫3巻の上巻・中巻に該当)、原作はその後が描かれている(文庫3巻の下巻)。戦後、オスカルは故郷ポーランドのダンツィヒを離れ西ドイツに移住(これは敗戦国民としてポーランドを追放されたギュンター・グラス自身の来歴と重なる)、闇商売から出発し、石工、美術学校のモデルと職業を替えた後(グラスも彫刻家・石工として生計をたてながら美術学校に通っていた時期がある)、ジャズバンドのドラマーとして成功し脚光を浴びる一方で、殺人事件に巻き込まれたりもする。成長するとともにガラスを破壊する声は失ってしまっていたが、「ブリキの太鼓」を叩くことで観客たちの幼少時の記憶を喚起するという新たな機能を見出し、彼は再び「ブリキの太鼓叩きのオスカル」に戻っていく―。オスカルが成長を再開してからトーンが変わって、むしろ話がぶっ飛んでいるように思ったが(この部分を映画化しなかったのは正解)、「大人としての新生活」に向かって歩み始めたはずの彼の戦後が虚構でしかなかったことの表れか。)
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実際、チェスの世界は伝説的な話には事欠かないようで、'08年にアイスランドで亡くなったボビー・フィッシャー(米国)みたいに、何度も世界チャンピオンになりながら何度も消息不明になった人などもいて、ボビー・フィッシャーの再来といわれた天才少年ジョシュ・ウェイツキンを主人公にした「ボビー・フィッシャーを探して」('93年/米)という映画も作られるなどしました(Photo:Bobby Fischer: (1958)He wins US Chess Championship at age 14)。
ボビー・フィッシャーは日本に潜伏していた時期もあったらしく、無効パスポート保持で成田で拘束されたこともあり、米国に強制送還される恐れがあったため、チェスが"趣味"の羽生善治氏が、彼に日本国籍を与えるよう当時の小泉首相に嘆願メールを出したということもありました。


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「美しき獲物」●原題:KNIGHT MOVES●制作年:1992年●制作国:アメリカ/ドイツ●監督:カール・シェンケル●製作:クリストファー・ランバート/ジアド・エル・カウリー ●脚本:ブラッド・ミルマン●撮影:ディートリッヒ・ローマン●音楽:アン・ダッドリー●時間:116分●出演:クリストファー・ランバート/ダイアン・レイン/トム・スケリット/ダニエル・ボールドウィン/アレックス・ディアクン/フェルディ・メイン/キャスリーン・イソベル/アーサー・ブラウス●日本公開:1992/11●配給:アスキー(評価★★★)







