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秀でた脚本家がどうやって原作を脚色するのか、原作と読み比べてみると興味深い。
駅路/最後の自画像1.jpg駅路/最後の自画像2.jpg 駅路1.jpg 
駅路 最後の自画像』/『駅路 (1961年) 』(駅路・誤差・部分・偶数・小さな旅館・失踪)
駅路2.jpg駅路―傑作短編集(六)―(新潮文庫)』(白い闇・捜査圏外の条件・ある小官僚の抹殺・巻頭句の女・駅路・誤差・薄化粧の男・偶数・陸行水行)
[2009年テレビドラマ(出演:役所広司/深津絵里)タイアップ帯]

 銀行の営業部長を定年で退職した小塚貞一は、その年の秋の末、簡単な旅行用具を持って家を出たまま、行方不明となった。家出人捜索願を受けて、呼野刑事と北尾刑事は捜査を始める。家庭は平和と見えたし、子供も成長し、一人は結婚もした。人生の行路を大方歩いて、やれやれという境涯に身を置いていたように思える。自殺する原因もない。自分から失踪したとすれば、何のためにそのような行動を取ったのか―。

 松本清張(1909-1992/82歳没)の短編小説で、「サンデー毎日」1960(昭和35)年8月7日号に掲載され、1961年11月に短編集『駅路』収録の表題作として、文藝春秋新社から刊行されています。

 高卒ながら実直に精励恪勤し、銀行の支店長まで上り詰め、家の外に女など作りそうもないと周囲の誰もが思った真面目な勤め人・小塚貞一だったが、実は...。ちゃんと妻に残すものは残して出奔するところが、銀行員らしい? と言うより、それが主人公の気質なのでしょう。

 でも、男って、この主人公と同じことを考えていたとしても、その殆どがそれを実行に移せないないだろうから、その意味では主人公は大胆と言うか、行動力があると言えるかもしれません。なかなか、そう思わせる女性に出会うということもないというのもあるかもしれませんが、主人公はまさに、そうした女性に巡り逢ったということなのでしょう。

 過去4回テレビドラマ化されていて、それらは以下の通り。
・1962年 松本清張シリーズ・黒の組曲「旅路」(NHK)」 藤原釜足・内田稔・内藤武敏
・1977年「松本清張シリーズ・最後の自画像」(NHK)いしだあゆみ・小加藤治子
・1982年「松本清張の駅路」(テレビ朝日)田村高廣・古手川祐子・河内桃子
・2009年「松本清張生誕100年記念作品・駅路」(フジテレビ)役所広司・深津絵里・木村多江
 この内、1977(昭和42)年版の「最後の自画像」が、本書に併録されている向田邦子(1929-1981/51歳没)の脚本による作品で、2009年版「駅路」がそのリメイクになります。

「松本清張生誕100年記念作品・駅路」(2009年・フジテレビ)役所広司・深津絵里・木村多江
駅路/9.jpg 本書解説の編集者・烏兎沼佳代氏によれば、向田邦子はもともと原作がある作品の脚色を嫌った脚本家で、実際に脚色した作品も少なく、原作となるこの「駅路」を手にした時は、すでに「だいこんの花」「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」で人気脚本家になっていて、それがなぜ敢えてこの作品を脚色したのか、推論できる理由はあるとのことです。

 烏兎沼氏によれば、その一つは、この仕事が巡ってきたタイミングが、向田邦子が2年目に乳がん、1年前に肝炎を患った時期だったこと(つまり彼女い自身が人生に"駅路"に立たされたということ)、二つ目は、登場人物の中に向田邦子に近しい人を連想させる人物像があり、その典型が小塚貞一で、これが高学歴ではないのに出世した彼女の父親と重なるたのではないかということ(小塚貞一は向田の叶わぬ恋の相手を想起させるとも)、三つめは、「男の物語」に女を加えることで、放送時間70分のドラマとして効果を倍加できるのではないかと考えたからではないかとのことです。

 実際、「最後の自画像」では、小塚貞一の相手の女性・福村慶子が生きているという設定になっていて、小塚貞一よりもむしろ福村慶子の方が主人公になっているような印象を受けました。その他、原作には無い刑事と部下や聞き込み相手とのコミカルな会話もあり、秀でた脚本家がどうやって原作を脚色するのか、こうして原作と読み比べてみると、よく分かって興味深いです。

 福村慶子をいしだあゆみが演じたNHK版は観ていませんが、それを更に脚色した役所広司・深津絵里版は観ました。向田邦子の脚本をほぼ忠実に活かしていますが(ゴーギャンの絵のモチーフが前面に出ているのも向田脚本と同じ)、時代設定が、昭和の終わり昭和63年の暮れになっていて、昭和天皇崩御の1月7日に事件が解決するという風になっています(小塚貞一の生き様、或いはより広く"仕事人間"の時代というものを「昭和」に重ねたか)。

旅路101.jpg駅路/十朱.jpg 小塚夫妻役は石坂浩二と十朱幸代で、この辺りは改変がありませんが、役所広司演じる刑事が、彼も写真が趣味(所謂SLの"撮り鉄")という風になっていて、役所広司は向田邦子が脚本に仕掛けたコミカルな件(くだり)も卒なく演じており、上手いなあと。

駅路/深津.jpg駅路/役所 深津.jpg ただ、やはり圧巻は女優で、福村慶子を演じた深津絵里は、さすがに情感たっぷりで上駅路/木村.jpg手かったです。加えて、福村よし子を演じているのが木村多江で、彼女が演じることで同じ福村慶子の従姉であっても、福村よし子の位置づけが、観る者にシンパシーを引き起こすよう改変されているように思いました。

「最後の自画像」('77年)松本清張/「駅路」('09年)唐十郎
最後の自画像 清張.jpg駅路 唐.jpg 1977年のNHK版では、刑事の聞き込み先である福村慶子の下宿先の「小松便利堂」の主人で、隠居した恍惚老人の役で原作者・松本清張自身が出演しているのですが(この老人、ボケているけれども福村慶子に"男"(=貞一)がいたことだけは見抜いている)、この2009年のフジテレビ版では、松本清張が演じたこの役を唐十郎が演じており、今思うと、2009年版も結構豪勢な配役だったと言えるかもしれません。

駅路/タイトル横.jpg「松本清張生誕100年記念作品・駅路」●演出・脚色:杉田成道●脚本:向田邦子●脚色:矢島正雄●プロデュース:喜多麗子●音楽:佐藤準●原作:松本清張●出演:役所広司/深津絵里/木村多江/高岡蒼甫/北川弘美/大口兼悟/石坂浩二/十朱幸代/佐戸井けん太/根岸季衣/田山涼成/大林丈史/ふせえり/佐々木勝彦/石井愃一/中島ひろ子/唐十郎/田根楽子●放映:2009/04/11(全1回)●放送局:フジテレビ

【1965年文庫化[新潮文庫(『駅路―傑作短編集6』)]】

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家族にも明かさなかった恋人とその死。いろいろな見方はあるが、「謎はいくつも残る」。

『向田邦子の恋文』.JPG向田邦子の恋文 単行本.jpg  向田邦子2.jpg 向田 邦子(むこうだ くにこ、1929-1981/享年51)
向田邦子の恋文

 前半部分は、向田邦子の遺品の中から見つかった、彼女とその恋人N氏との間の手紙と、N氏の日記の一部であり、後半部分は向田邦子の妹である著者が、その手紙が見つかり発表に至った経緯を軸に、当時の姉や家族のこと或いは姉が亡くなった後のことを書いたエッセイとなっています。特に前半部分の向田邦子とN氏の間の手紙から、いかに二人の絆が強かったか、とりわけ向田邦子のN氏に対する想いの強さがじわりと伝わってくるように思いました。

 これら手紙は1963(昭和38)年から翌年にかけて書かれたもので、当時34歳だった向田邦子は、急成長の売れっ子脚本家としてホテルに缶詰め状態で、ホテルの便箋に恋文を書いてホテルから手紙を出し、またホテル気付で相手の手紙を受け取るといったこともあり、但し、収録されている手紙は圧倒的に向田邦子からN氏宛のものが多く、N氏のもとに急に会いに行けなくなった際には電報を打ったりしています。

 一方、N氏の文章として収録されてものは、N氏の日記の部分が殆どを占めます。この日記にはテレビ番組評などもありますが、どこへ買い物に行って何を買ったとか、昼食や夕食に何を食べたとか、自らの日常を"生活記録"風にテイクノートしている部分がかなり占めます。

 このN氏の日記は(収録されている部分では)1963(昭和38)年11月から始まり、N氏は翌年の2月に自死しているため、向田邦子は多忙を極めるなか、この短い期間内にこれだけの手紙を出しているということからも、病気療養中のN氏への向田邦子の気遣いが窺えます。

 不思議なのは、N氏の日記の内容が、自死した日とされるその前日まで、それまでの日記のトーンと全く変わらないことであり、自死した前日は番組の短い感想や、買物に出かけたこと、昼食や夕食に食べたものなどが"生活記録"風簡単に書かれているだけであり、前々日も「邦子来り、夕食は豆腐...」といった調子であることで、快癒の見通しが立たない病いであったにしても、その自死は向田邦子にとってもあまりに突然のものではなかったかと思われます。

太田光2.jpg 従って、この出来事を、"献身した男性に裏切られた"経験と解し、「後の向田作品は男性に対する復讐が根底にある」という説が出てくるのも、まあ、むべなるかなという気はします(その筆頭が「爆笑問題」の太田光か)。でも、それもあくまでも推測であって、本当のことは分からないのでは、とも思います。

 向田邦子とN氏の関係は、彼女が24、5歳の頃から35歳まで10年間続いたようで、N氏は向田邦子より13歳年上のカメラマン(妻帯者)でしたが、脳卒中の後遺症で最後の2年間は仕事も出来ず、母親と高円寺の自宅に居たとのことです。そのような状況下で、向田邦子は売れっ子の脚本家としての多忙な時間の合間に手紙を書き、訪れては食事の支度をし、またホテルへ戻って仕事をするという生活を送っていたことになります。

 しかし、もっと驚くべきことは、そうした向田邦子とN氏の関係を邦子の家族は殆ど感知していなかったということで(とりわけ、年の離れた妹である筆者は全く知らなかった)、N氏のこともその死も向田邦子が家族に伏せていたというのは、随分徹底して秘密にしていたのだなあと。一方で、向田家の天沼の実家から歩いて30分ほどの場所で、母親と息子(N氏)とその恋人(向田邦子)という"疑似家族"的な生活形態が形成されていたことになるわけです(N氏は妻とは完全別居状態にあった)。

向田邦子の恋文2.jpg 著者は、20代の向田邦子が旅先の宿で籐椅子に腰かけている写真を見て、テーブルの上に二つの茶碗が出ていることなどから、それがN氏との二人旅だったとのではないかと確信し、そこまで好きだったら駆け落ちでも何でもすればよかったのに...と思わずにいられなかったとしていますが、それでも彼女が向田家に居続けたのは、長女として家を支えていかなければならないという思いがあったのではないかともしています。
 但し、向田邦子が結婚というものに対して憧憬ばかりでなく、それとアンビバレントな感情をも抱いていたことはその作品からも窺い知ることが出来るため、この辺りも、結婚したくて出来なかったのか、そうした繋がりを回避していたのかは、結局のところ分かりかねるのではないでしょうか。筆者自身、「謎はいくつも残る」としていますが、その通りだと思います。

 筆者が、それまで開けなかった向田邦子の恋文が入った封筒を初めて開いたのは、こうした姉の知らざれざる側面に徐々に触れた後のことで、向田邦子が1981(昭和56)年に航空機事故で亡くなってから20年を経ていました。2001(平成13)年にNHKの衛生放送が没後20年のドキュメンタリー番組を作ることになったのが契機で、この時、番組スタッフの調べで、N氏のことや彼が自死を遂げたことを初めて知ったとのことです。本書刊行の2年後の2004(平成16)年には、この「恋文」を巡る向田邦子を主人公とした話そのものが、久世光彦(1935-2006)の演出によりTBSで単発ドラマ化されましたが、個人的には未見です(本人が存命していればドラマ化はありえなかったろうなあ)。

【2005年文庫化[新潮文庫]】

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「文字がそんなに詰まっているわけではないのに、味わえる密度は高い」という感じ。

あ・うん obi.jpgあ・うん 向田邦子 装丁・中川一政.jpg あ・うん2.jpg  ドラマ人間模様「あ・うん」('80.3.9~3.30).jpg
あ・うん (1981年)』(装丁・中川一政)『あ・うん (文春文庫)』〔83年〕 
ドラマ人間模様「あ・うん」(NHK/'80.3.9〜3.30、全4回)

 中小企業の社長で男気があり遊びも派手な門倉と、社命で転勤を繰り返す普通のぱっとしないサラリーマン水田という2人の男の友情に、水田の妻たみに対する門倉のプラトニックな想いが絡む、奇妙な三角関係の話です。

映画「あ・うん」('89年/東宝)
あ・うん 映画.jpg 映画化され、何度かTVドラマ化もされもされているので、この状況設定はよく知られているのではないでしょうか。降旗康男監督による映画化作品「あ・うん」('89年/東宝)では、高倉健・坂東英二が主演を務め、'00年にはTBSの新春ドラマで久世光彦演出のもと田中裕子、小林薫主演で放映されましたが、個人的には、作者自身が脚本も手掛けた'80年のフランキー堺・杉浦直樹主演のNHKの全4話のものの方がいいと思いました(2013年にDVD化された)

 以前に読んで、会話主体のムダの無い文章で人物像や状況を浮き彫りにしていくうまさに感心させられましたが、小説よりドラマの方が先だったことを思うと、なるほどという感じもしました。と言うことは、優れた「脚本」であるということになるのでしょうか? しかし、読み返してみて、やはり「小説として」良くできていると思いました。著者は小説に関しては「遅筆」だったそうですが、単純稚拙な言い方をすれば、「文字がそんなに詰まっているわけではないのに、味わえる密度は高い」小説です。

 かなりドロドロしたものを孕んだ作品のように思え、門倉や水田という人物に対しても無条件で好きになれるわけではないのですが、ほんわかしたユーモアが随所に効いているせいか、読み進むうちにだんだん登場人物に愛着が出てくるから不思議です。たみに叱られているときが門倉にとっての至福のときである、などというのはユーモアの中にも作者の鋭い人間観察眼が窺えます。

 水田・門倉の男2人の「こまいぬ」のような関係が印象に残りますが、水田の娘さと子の初恋や父初太郎の山師ぶりなどを通して、戦局に向かう時代背景や戦前の三世代同居の家族像というものも描いているかと思います。

 さと子の成長物語でもあり、最後の方で水田も強くなる。しかし、強がるばかりに2人の男の友情は...、とちゃんとクライマックスのあるエンタテイメントに仕上げていて、この先2人の男がどうなるかも暗示されている話だったのだなあ。

あ・うん フランキー 杉浦.jpgあ・うん NHK.jpg「あ・うん」t.jpg「あ・うん」●演出:深町幸男/渡辺丈太●制作:土居原作郎●脚本:向田邦子●音楽(効果):大八木健治/岩田紀良●出演:フランキー堺/杉浦直樹/吉村実子/岸田今日子/岸本加世子/池波志乃/志村喬/ 伊佐山ひろ子/殿山泰司●放映:1980/03(全4回)●放送局:NHK

 【1983年文庫化・2003年改訂[文春文庫]/1991年再文庫化(シナリオ版)[新潮文庫]/2009年再文庫化(シナリオ版)[岩波現代文庫]】

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少ない紙数で鋭く描き切る筆力。かなり"ブラック"なものもある。

思い出トランプ2.jpg思い出トランプ.jpg   男どき女どき.jpg  向田邦子2.jpg 向田邦子(1929‐1981)
思い出トランプ』新潮文庫 〔83年〕『男どき女どき (新潮文庫)』(表紙カット:風間 完)
『思い出トランプ (1980年)』
思い出トランプ tannkoubon.jpg 1980(昭和55)年上半期・第83回「直木賞」受賞作の「かわうそ」「犬小屋」「花の名前」を含む向田邦子(1929‐1981)の短編集。

 雑誌連載中に直木賞を受賞した3作を含むこの「思い出トランプ」所収の13篇や、航空機事故のため絶筆となった「男どき女どき(おどきめどき)」の4編(新潮文庫『男どき女どき』に所収)は、昭和という時代の家族や家庭への郷愁を感じさせる一方で、日常生活にふと姿を現す、封印したはずの過去の思い出や後ろめたさのようなものが、うまく描かれています。

 かなり"ブラック"なものもあり、冒頭の「かわうそ」もその1つだと思います。

『思い出トランプ』『男どき女どき』.JPG 定年後、家に自分の居場所のないような気分でいる夫に対して、生活場面や人付き合いにおいてどこか生き生きとしてくる妻。夫は最近に脳卒中で倒れたことがあり、発作の再発を恐れているが、そうした夫から見ると、生活上のイベントに奔走する妻が、獲物をコレクションするという"かわうそ"に、その風貌も習性も似て見えてくる。そしてある日、気付く。自分の病気という不幸さえも、妻から見れば...。

 『男どき女どき』の冒頭の「鮒」もいいです。

 42歳のサラリーマンで、妻と娘と息子のいる家庭人たる主人公の自宅の台所に、ある日突然何者かが一匹の鮒が入った盥を置いていくが、それは、以前は週一で通うほどに付き合っていたが今は別れた35歳の愛人女性と、まだ付き合っていた時分に飼うことにした鮒だった。息子は、家でその鮒を飼うと言って譲らない―。

 主人公が鮒に向かって、愛人と鮒に名付けた「鮒吉」という名前で呼びかけた時、後ろに妻がいたというのが、結末から振り返ると、あたかもミステリの伏線のようでもあり、これもちょっと怖いなあ

 今まで見えなかった夫婦や家族の位相のようなものが、あるとき突然に姿を現す―。
 こうしたヒヤッとした感じに読者を陥れる人間心理への通暁ぶりといい、人生のテーマを少ない紙数で鋭く描き切る筆力といい、脱帽させられます。

 直木賞受賞のとき選考委員だった山口瞳は、「選者よりうまい候補者に出会うのは驚きであり、かつ、いささか困ることでもある」と絶賛したそうです。

 【1983年文庫化[新潮文庫]】

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