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「幸福」を学問的に捉えているのがユニークで、説得力もあった。
『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門 (講談社現代新書 2238) 』['13年]
脳・ロボット学者である著者が、個人の幸福追求、幸せにつながるビジネスのために「幸福」の仕組みを解き明かし、「幸せはコントロールできる」ことを示した、誰でも分かる学術書、学問としての体系的幸福学の本です。
第1章では、前提知識として、幸福の定義、測り方、世界的な研究動向、および幸福に影響することがら、主に心理学の分野で行われてきた幸福研究の成果とその限界」について述べてます。
第2章では、著者らのグループが行った幸福学の研究成果に的を絞って、幸福の因子分析をした結果、次の幸せの4つの因子が得られたとしています。
・「やってみよう!」因子(自己実現と成長の因子)
・「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)
・「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)
・「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)
著者はこれらを「幸せの四葉のクローバー」としています。
「やってみよう!」因子は、コンピテンス、社会の要請、個人的成長、自己実現に関係した因子。自分の得意なことを伸ばす楽しみ。オタク・天才・達人を目指せ!としています。
「ありがとう!」因子は、人を喜ばせる、愛情、感謝、親切などの要素から成りたち、たくさんの友人より多様な友人を持てと。さらに、人を幸せにすると自分も幸せになるとしています。
「なんとかなる!」因子は、楽観性、気持ちの切り替え、積極的な他者関係、自己受容に関連した因子。「そこそこで満足する人」が幸せであるとしています。
「あなたらしく!」因子は、社会的比較のなさ、制約の知覚のなさ、自己概念の明確傾向、最大効果の研究に関係し、人の目なんて気にせず、マイペースな自分を、と。また、「満喫」する態度を持つと幸せになれるとしています。
第3章は応用編で、第2章で得た4つの因子から見て、世の中はどうなっていくのか、どうすべきかを考察しています。
この本はある読書会の課題本として読んだもので、個人的には、これまであまり「(幸福を学問として捉える)幸福学」というものを意識してきませんでしたが、第1章の冒頭で、「幸福」「幸せ」(両者は同意だとしている)と「happiness」「well-being」の違いなどを解説しているのは興味深かったです(「happy」と「幸福」は、時間的スパンにおいて違うのだとしている)。
「幸せって何だろう」的な本は、それをテーマにしたエッセイなどのも含めると結構出ていますが、「幸福」を学問的に解明しようとしてる本である点がユニークであったし(前からこの分野は存在していたと思うが、自分にとっては目新しかっった)、科学的・統計的手法を駆使しているため説得力もあったように思います。
ジャンル的には心理学に近いと思うけれど、学問的な心理学の範疇ではないので、逆に、脳・ロボット学者である著者のように学際的な観点を持つ人が参入してくるのでしょう。海外などは、心理学者が経営学にどんどん参入したりしているけれど、そういうのも日本ではあまりないなあ、と思った次第です。
《同著者の本》
・前野 隆司『実践 ポジティブ心理学―幸せのサイエンス』(2017/08 PHP新書)
・前野 隆司『幸せな職場の経営学―「働きたくてたまらないチーム」の作り方』(2019/05 小学館)
・前野 隆司/前野 マドカ『ウェルビーイング』(2022/03 日経文庫)
・前野 隆司/太田 雄介『実践!ウェルビーイング診断』(2023/05 ビジネス社)
・前野 隆司『幸せに働くための30の習慣―社員の幸せを追求すれば、会社の業績は伸びる』(2023/12 ぱる出版
《読書MEMO》
●幸福と相関が高いもの...健康、信仰、結婚(58p)
●ダニエル・カーネマンの「フォーカス・イリュージョン」(63p)
「人は所得など特定の価値を得ることが必ずしも幸福に直結しないにもかかわらず、それらを過大評価してしまう傾向がある」
●ネッシィ「地位財と非地位財のバランスを取れ!」(70--74p)
●自由時間の長さは幸福に結びつかない(78p)
●「プロスぺクト理論」(87p)
●幸せは間接的にやってくる(91p)