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夏、海、鎌倉、心中ゲーム? と70年代の虚無的ムード漂う作品。

「十八歳、海へ」1.jpg「十八歳、海へ」2.jpg 「十八歳、海へ」3.jpg 「十八歳、海へ」4.jpg
日活100周年邦画クラシックス GREATシリーズ 十八歳、海へ HDリマスター版 [DVD]
[Prime Video]「十八歳 、海へ
十八歳、海へ (集英社文庫)
『十八歳、海へ』 文庫.jpg 実家から予備校の夏期講習を受けに東京の姉の自宅アパートに滞在中の高校生・有島佳(森下愛子)は、二浪中の予備校生・桑田敦夫(永島敏行)に誘われて鎌倉の夜の海に訪れる。そして砂浜で、佳たち「十八歳、海へ」01.jpgと同じ予備校の浪人生・森本英介(小林薫)が暴走族のリーダーと海に入っていく度胸試しをするのを偶然目撃する。数時間後、夜明けの海で2人きりになった佳と敦夫は、遊び半分で英介たちの真似をして海に入ると、彼女は海の息苦しさと気持ち良さを同時に体験し、不思議な感覚を覚える。しかし、たまたま通りかかった裕福な老人(小沢栄太郎)に心中と勘違いされて助けられた後、「もう心中しないように」と諭されて小切手を渡される。英介がホテルでバイトをしていると聞いた佳は心中未遂遊びを思いつき、彼のホテルに敦夫と泊まって少しずつ睡眠薬を飲み始める。その直前に佳と会っていた英介は、異変を感じて2人の部屋に入り、昏睡状態の2人と老人の連絡先のメモを見つけると、急いで救急車を呼ぶ。病室で目を覚ました佳は、連絡を受けて駆けつけた姉・悠(島村佳江)から「英介が警察沙汰にならないようメモを持ち帰った」と伝えられ、「十八歳、海へ」02.jpg余計なお節介だと不機嫌になる。退院した佳は敦夫と同棲を始め、そのまま姉に会おうとせず、心配した姉は英介に頼んで妹の様子を伺ってもらうが、妹から構わないよう言われてしまう。数日後、佳と敦夫は海水浴客で賑わう鎌倉の海に再び訪れ、敦夫はもう一度心中未遂遊びで老人から金を貰うことに誘うが、佳は「あの人はもう信じてくれない」と断る。数日後、夏期講習も終わりに近づき、会えるのも僅かとなった佳と敦夫は、英介に再びホテルに泊めて貰えるようにお願いする。その直後、数年前から家族に居場所を知らせていなかった英介のもとに、彼を偶然見かけた父(鈴木瑞穂)が現れる。しかし、父は英介の今の生活を否定して今すぐホテルを辞めるよう強要し、箱根のホテルに英介の名前で部屋を予約。後から来るよう言われる。ホテルを辞めさせられた英介は佳に会い、「心中未遂遊びをしたいが騙す相手がいない」との彼女の言葉に、父を騙すことを思いつく。英介は父が自身のために予約した部屋を佳と敦夫に貸してその場を後にし、2人はホテルの庭にある太い木で心中未遂遊びをするため首を吊ろうとする―。

 藤田敏八監督の「帰らざる日々」('78年/日活)の翌年1979年作で(同年9月に日活→にっかつに社名変更)、夏、海、鎌倉、心中ゲーム(狂言心中による小遣い稼ぎ?) と70年代の虚無的ムード漂う作品。そう言えば、同じ藤田敏八監督の「八月の濡れた砂」('71年/ダイニチ映配、この作品の後、日活は「ロマンポルノ」路線に転じた)も夏の湘南を舞台にしていたなあと。若者の激情が迸る印象のあった「八月の濡れた砂」に比べると、こちらはもう70年代の終わりの方で、やや疲れ切ったムードでしょうか(一方で、迫りくるバブルの気配も感じられる)。

『十八歳、海へ』t1.jpg『十八歳、海へ』t2.jpg 原作は、中上健次(1946‐1992/享年46)の23歳までの60年代作品を収めた初期短編集『十八歳、海へ』(1977年 集英社刊)の中の1編「隆男と美津子」で、この短篇集は「十八歳」「JAZZ」「隆男と美津子」「愛のような」「不満足」「眠りの日々」「海へ」の7編を収めますが、「十八歳」は青春小説としてなかなか良かったです(これ、作者が18歳の時に書き始めたらしい処女作。「俺十八歳」として1966年、作者20歳の時に「文藝首都」に掲載される)。「JAZZ」「海へ」などは散文詩的な作品で(文庫解説の津島佑子氏は「海へ」を絶賛しているが、「JAZZ」の方が好きという人がいてもおかしくない)、ユビというペッティング・ペットが出てくる「愛のような」は幻想小説、シュールレアリスム小説っぽく、川端康成の「片腕」や村上春樹「緑色の獣」を想起させました。それに対して「隆男と美津子」は、津島佑子氏によれば上手に書かれた「現代小説」とのこと。確かに、この中で映画化するとすればやはりこれなのかなという感じです(「現代」の若者の心中を描いた小説では、笹沢左保が1962年に発表した「六本木心中」など先行作品がある)。

「十八歳、海へ」04.jpg 原作では、主人公の「俺」は心中ゲームを繰り返す「隆男と美津子」に対して傍観者的な位置づけで、物語の語り手として一歩引いた状態であるのに対し、映画では、隆男に該当する永島敏行が演じる「敦夫」が一応の主人公ですが、「俺」に該当する小林薫が演じる「英介」がかなり前面に出てきて、敦夫や森下愛子が演じる「佳」に絡むだけでなく、佳の姉の、島村佳江が演じる「悠」にまで絡んできます(二人でいきなりロタ島へいくところがバブルの先駆けっぽい)。

森下愛子/永島敏行/小林薫/島村佳江

「十八歳、海へ」08.jpg 敦夫と佳のうち、心中ゲームに嵌っているのはどちらかというと佳の方で、やや病的な印象も。それに対し、敦夫の方は、半分は小遣い稼ぎが目的で、半分は佳に振り回されてただそれに従っているだけで影が薄く、英介も含めた同じ予備校に通う3人(英介は5浪くらいしているのか)の中では最も没個性的な存在になっています。その分、小林薫と島村佳江の演技力のせいもあってか、原作には全くない英介と佳の姉・悠のサイドストーリーの方がかなり前面に出ていて、二人が旅行に行ったのを自分に対する裏切りと捉えた佳が、ますます死に向かうという流れになっています。

 そうしてみると、病んではいるけれどキャラとしては一貫している佳が、この映画の主人公と言えるのではないと思います。英介と悠に対しては、姉である悠よりも、英介の方に対して裏切られたという気持ちを抱いたみたいで、結局のところ内心では、というか海で暴走族と度胸試しをするのを見た時から英介のことが実は好きだったということでしょう(ここが原作との最大の違い)。

 ただ、その英介が、最初はカッコ良かったけれども、実は金持ちの医師の息子で、父親を憎みながらも、悠の姉を強引に手に入れ、悠と敦夫の心中ゲームを父への復讐の手段にしようとするなど、実は結構エゴイストっぽい人格だとわかるにつれ、ややがっかり。ただし、小林薫はこの複雑なキャラを見事に演じ切っています。

 でも、観終わった後に虚無的なムードが残るのは、まさにこの作品の狙いなのかも。森下愛子が演じる危ういながらも一貫しているキャラが、ばらばらになりそうなこの作品を底支えしていて、やはり作品の一番の魅力だったかもしれません(彼女の演技はときどき"地"に見えるが、これも監督の演出力の賜物なのか。ヌードはオマケのようなもの)。

 それにしても1979年は、いずれも同じく中上健次の原作である、神代辰巳監督の「赫い髪の女」が2月に、柳町光男監督の「十九歳の地図」が12月に公開されていて、"中上健次イヤー"みたいな感じだったのだなあ。

「十八歳、海へ」m[.jpg

「十八歳、海へ」m1.jpg「十八歳、海へ」小沢jpg.jpg小沢栄太郎(鎌倉の海近くの大邸宅に暮らす裕福な老人。心中未遂ごっこ中の佳と敦天を助け、自宅の風呂を貸した後、二人に説教をする)

「十八歳、海へ」●制作年:1979年●監督:藤田敏八●製作:佐々木志郎/結城良煕●脚本:田村孟/渡辺千明●撮影:安藤庄平●音楽:チト河内●原作:中上健次「十八歳、海へ」より「隆男と美津子」●時間:88分●出演:永島敏行/森下愛子/小林薫/小沢栄太郎/島村佳江/下絛アトム/鈴木瑞穂/深水三章●公開:1979/08●配給:にっかつ●最初に観た場所:神保町シアター(22-09-07)(評価:★★★☆)

【1970年文庫化[集英社文庫]】

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「女性vs.女性」のドラマになっていた。ワインのぶっかけ合い」は「エール交換」?

疑惑 [DVD].jpg 疑惑  2.jpg 松本清張 疑惑 文庫.jpg
<あの頃映画> 疑惑 [DVD]」岩下志麻/桃井かおり/三木のり平『新装版 疑惑 (文春文庫)
疑惑 0.jpg 富山県新港湾埠頭で車が海中に転落、乗っていた地元の財閥・白河福太郎(仲谷昇)は死亡したが、後妻の球磨子(桃井かおり)はかすり傷ひとつ負わなかった。後に球磨子は過去に情夫の豊崎(鹿賀丈史)と共謀して数数の犯罪を起こしていたことが判明。しかも、彼女は夫に三億円の保険金をかけており、この事故も、泳げない福太郎を殺すための擬装ではないかと誰もが疑う。北陸日日新聞社会部記者の秋谷(柄本明)もその一人だった。物的証拠がないまま球磨子は身柄を拘束された。球磨子の弁護は、白河家の顧問弁の原山弁護士(松村達雄)が持病を理由に降り、その後輩で刑事専門の弁護士としては日本屈指とされる岡村弁護士(丹波哲郎)も断ってしまい弁護人の引き受け手がいない中、民事専門の佐原律子弁護士(岩下志麻)が国選弁護人として選ばれ、検事の宗方(小林稔侍)と法廷で対峙する。球磨子と律子は、互いに反感を抱きながらも、球磨子の無実を証明しようとする―。

松本清張 疑惑 単行本.jpg 野村芳太郎監督の1982年9月公開作で、松本清張の「オール讀物」同年2月号発表の中編小説「疑惑」の映画化ですが(発表して半年くらいで映画になってしまうところが、当時の松本清張の人気を物語っていてスゴイが)、原作者自身が脚色したとのことです(撮影台本は古田求と野村芳太郎)。白河福太郎を仲谷昇、球磨子を桃井かおり、その弁護人を岩下志麻が演じており、新聞記者の秋谷に柄本明、検事の宗方に小林稔侍、といった配役も楽しめます。映画の後半は法廷劇となりますが、証言者として、鑑定した大学教授に小沢栄太郎、事故の目撃者に森田健作、球磨子が元いた東京のクラブの経営者に山田五十鈴、球磨子の情夫・豊崎に鹿賀丈史、と配役も今見るとなかなか豪華です。

疑惑 柄本明.jpg 原作は、主に北陸日日新聞の社会部記者の秋谷の視点で描かれており、自社の新聞で、球磨子が犯人であるのは間違いなく、彼女は稀にみる毒婦であるといった論調を展開した秋谷が、国選弁護人の42歳の佐原卓吉弁護士が地道な検証を行った結果、球磨子の無実が立証される可能性が出てきたため、そうなると、球磨子が無罪放免になった際に彼女とその情夫の"お礼参り"に遭うのではないかと、次第に戦々恐々たる不安心理に陥っていき、遂に...という展開です(マスコミ報道の在り方に対する風刺がテーマになっているともとれる)。

疑惑 映画 iwashita.jpg 一方、映画の方は、桃井かおり演じる球磨子を弁護する国選弁護人が、原作の見た目はぱっとしない佐原卓吉弁護士から、岩下志麻演じる、やはり民事専門だが見るからに頭が切れそうな東大法学部卒の女性弁護士・佐原律子に改変されています。それによって、殺人容疑者の女と彼女を弁護することになった女性弁護士の間の確執を描く「女性vs.女性」の構図になっており、柄本明演じる新聞記者の秋谷は、原作よりかなり後退した印象を受けるし、小林稔侍演じる検事もあまりぱっとしません。仲谷昇演じる白河福太郎からして、原作以上に球磨子に振り回されっぱなしであり、男性陣は法廷の証言台に立ってもは皆おどおどしていて、頼りなさげな描かれ方になっているのは、監督の計算の内ではないでしょうか。

疑惑 7.jpg 脚本は途中で変更があったりしたようですが、桃井かおり、岩下志麻という配役が決まった時点で「女性vs.女性」のドラマとなるのは自明のことだったかもしれません。二人は被告人と弁護人という関係でありながら常に確執があり、事件解決後にはむしろ、それはより明白になるという展開でした。まったく境遇の異なる二人でありながら、共に、男性社会を生き抜く上でのしたたかさ、逞しさを持っているという点で両者は通底しているように思われました。映画終盤の「ワインのぶっかけ合い」をある種の「エール交換」との捉え方をする人もいますが、なかなか穿った見方だと思います。

疑惑 映画 momoi.jpg 桃井かおりの演技が高く評価されましたが、桃井かおりは、球磨子役のオファーを受けた際、「週刊誌的には私自身がわけもなく嫌われていて最悪な状態だったんで、『いまさらこの役をやる必要はないでしょ』と、うちの事務所は全員大反対(笑)。でも、(中略)等身大の桃井ネタは尽きたと思っていたので、いっそすごく嫌な人とかダメな人を少し作って演じてみたい、とにかく演じたいという気持ちが強かったんですね。球磨子のような人だと思われてこそ大成功くらいの気持ちで、思いっきりやってみようと思ったんです」と語っています。

疑惑6.jpg 桃井かおりは彼女なりのふっきれた演技だったと思いますが、ただ、個人的には、「影の車」('70年/野村芳太郎監督)、「内海の輪」('71年/斎藤耕一)、「鬼畜」('78年/野村芳太郎監督)と松本清張原作の作品に出演してきた岩下志麻がやはり印象が強かったでしょうか(ラストは佐原律子にとっても厳しいものだったが、この辺りも映画のオリジナルである)。この作品の翌年、「迷走地図」('84年/野村芳太郎監督)にも出演し、これら作品で相手方の男優の方は、加藤剛、中尾彬、緒形拳、勝新太郎と変わっていますが、この「疑惑」だけ、拮抗する相方が女優(桃井かおり)であり、その意味ではユニークな位置づけにあるかもしれません。

疑惑5.jpg もう一つ、原作からの改変点として、佐原弁護士が、水没した車の車内にあった「脱げた靴とスパナ」から真相に迫るのは原作も同じですが、映画の後半は裁判シーンが主となり、これだけでは公判が維持できないと考えたのか、映画の方には、白河福太郎の息子の決定的証言というのがあります。これは大きな改変かと思いますが、判決まで描くとすれば、やはり「靴とスパナ」だけでは弱く、理にかなった改変だったように思います(子どもに証言を迫る岩下志麻がちょっと怖くて、「鬼畜」の時の彼女を思い出した(笑))。

疑惑 jikeknn.jpg別府三億円保険金殺人事件2.jpg 車の「転落事故」の実証検分のための実験などは、原作より丁寧に描いていましたが、原作が、1974年11月発生の「別府三億円保険金殺人事件」からヒントを得たものであり、この事件において実際に何度か転落実験が実施され、その様子がテレビで報じられているため、撮影前から大体のイメージは掴めていたのではないでしょうか。

疑惑 kagaya.jpg 舞台を別府から富山に移しているのは、原作がそうなっているためです。ロケで石川・和倉温泉の「加賀屋」を使っているのは、松本清張の好み?でしょうか。「ゼロの焦点」('61年) のロケでも使われ、原作執筆時の松本清張も宿泊していた旅館ですが、「ゼロの焦点」の時から建て替えられて綺麗になっているよゼロの焦点 1961年.jpgうに見えます。ロケ中は富山と石川の往復が激しかったそうですが、富山のロケ先で桃井かおりがと松本清張と食事をした際、富山湾名物のオコゼの唐揚げを注文した松本清張を見て、桃井かおりが「オコゼ食べちゃうんですか」と言ったところ、清張は「似ているからって、僕が食べちゃいけないの」と返し、それまでの緊張が一気にほぐれて和んだという、彼女自身の回顧談があります。

「ゼロの焦点」('61年)
           

疑惑 tanba.jpg「疑惑」●制作年:1982年●監督:野村芳太郎●製作:野村芳太郎/杉崎重美●脚色:松本清張●撮影台本:古田求/野村芳太郎●撮影:川又昂●音楽:芥川也寸志●原作:松本清張●時間:127分●出演:桃井かおり/岩下志麻/鹿賀丈史/柄本明/仲谷昇/内藤武敏/小林稔侍/小沢栄太郎/山田五十鈴/森田健作/松村達雄/丹波哲郎/三木のり平/北林谷栄/名古屋章/新田昌玄/河原崎次郎/山本清/飯島大介/梅野泰靖/小林昭二/水谷貞雄/真野響子●公開:1982/09●配給:松竹=富士映画●最初に観た場所:銀座・東劇(野村芳太郎特集)(05-08-27)(評価:★★★★)
松村達雄(白河家の顧問弁護士・原山正雄)/丹波哲郎(原山の大学の後輩の弁護士・岡村謙孝。原山は球磨子の弁護を降り、後任を要請された岡村も結局は辞退する)
「野村芳太郎特集」00.jpg
「野村芳太郎特集」.jpg

中谷昇 in「にごりえ(第2話:大つごもり)」('53年)/「砂の上の植物群」('64年)/「キイハンター」('68-73年)/「疑惑」('82年)/「カノッサの屈辱」('90-91年)
にごりえ 大つごもり 中谷.jpg 中谷昇 砂の上の植物群9.png 仲谷昇 キイハンター.jpg 中谷昇 疑惑.png 仲谷昇 カノッサの屈辱.jpg


《読書MEMO》
●「疑惑」のテレビドラマ化
・1992年「松本清張スペシャル・疑惑」(フジテレビ)いしだあゆみ(白河球磨子)・小林稔侍(佐原卓吉)
・2003年「松本清張没後10年特別企画・疑惑」(テレビ朝日)余貴美子(白河球磨子)・中村嘉葎雄(佐原卓吉)
・2009年「松本清張生誕100年特別企画・疑惑」(TBS)沢口靖子(白河球磨子)・田村正和(佐原卓吉)
・2012年「松本清張没後20年特別企画・疑惑」(フジテレビ)尾野真千子(白河球磨子)・常盤貴子(佐原千鶴)
・2019年「松本清張ドラマスペシャル・疑惑」(テレビ朝日)黒木華(白河球磨子)・米倉涼子(佐原卓子)

1992年「疑惑」(フジテレビ)いしだあゆみ(白河球磨子)・小林稔侍(佐原卓吉)/2009年「疑惑」(TBS)沢口靖子(白河球磨子)・田村正和(佐原卓吉)
松本清張スペシャル・疑惑1.jpg 松本清張生誕100年特別企画・疑惑.jpg

2012年「疑惑」(フジテレビ)常盤貴子(佐原千鶴)・尾野真千子(白河球磨子)/2019年「疑惑」(テレビ朝日)米倉涼子(佐原卓子)・黒木華(白河球磨子)
松本清張没後20年特別企画・疑惑.jpg 松本清張ドラマスペシャル・疑惑.jpg

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社会派作品であり、心を揺さぶる作品、且つ、カフカ的不条理の世界「壁あつき部屋」。

壁あつき部屋 dvd.jpg 壁あつき部屋2.jpg   私は貝になりたいDVD.jpg 私は貝になりたい 1959 vhs 1.jpg
あの頃映画松竹DVDコレクション 壁あつき部屋」['16年]「私は貝になりたい <東宝DVD名作セレクション>」['20年]/VHS

「「壁あつき部屋」 .jpg 戦後4年が過ぎたが、巣鴨拘置所には多くのBC級戦犯が服役している。その一人・山下(浜田寅彦)は、戦時中南方で上官・浜田(小沢栄太郎)の命令で一人の原地人を殺したのだが、その浜田の偽証で罪を被せられ、重労働終身刑の判決を受けている。また横田(三島耕)は戦時中、米俘虜収容所の通訳だっただけで巣鴨に入れられた。横田が戦時中、唯一人間らしい少女だと思つた隠亡燒(北竜二)の娘・ヨシ子(岸惠子)は、今では渋谷の歓楽街に働いている。朝鮮人の許(伊藤雄之助)も、戦犯の刻印を押された犠牲者の一人だった。山下はある日脱獄を企てて失敗、その直後に母の死を知る。葬儀のため時限付で出所を許された山下は、浜田へのかつての恨みと、浜田が山下の母と妹(林トシ子)を今まで迫害し続けていたことへの怒り壁あつき部屋 0.jpgから、浜田家に向かうも、恐怖に慄く浜田を見て殺意が失せる。たった一人の妹は、「これからどうする?」という山下の問いに、「生きて行くわ」とポツリ答える。再び拘置所に戻り、横田らに迎えられる山下、そこには厚い壁だけが待っていた―。

 巣鴨拘置所に服役中のBC級戦犯の手記「壁あつき部屋」の映画化で、新鋭プロ第一回作品。脚色には芥川賞受賞作家の安部公房が当り、小林正樹が監督しています。作品自体は1953年10月に完成しましたが、GHQの検閲を恐れた松竹の上層部によって、一部カットされそうになったのを小林監督が拒否したため、公開が3年遅れ1956年10月となりました。

壁あつき部屋1.jpg 小説家の安部公房の脚本ということもあるためか、人間心理を深く追求しながらも、余分な説明は削ぎ落とし、多くのエピソードを組み込んでいます。同じ部屋(雑居房)の受刑者6人の話という構成ですが、信欣三が演じる男がやはり手を下したくなかった処刑で人を殺めてしまった苦悩から狂い死ぬ(自殺)という凄絶な場面が早々にあり、あとは5人になります。

壁あつき部屋3.jpg その5人の中心となる浜田寅彦演じる山下は、戦地で疑心暗鬼に駆られた上官に現地人の殺害を命じられたわけですが、その現地人は部隊が食料も無くジャングルを彷徨い歩いていたところを助けてくれた言わば命の恩人であり、山下自身は上官に抗議するも、それでも殺害命令に従わなければ反逆罪として銃殺すると言われて、失意の中で恩人の命を奪ったものでした。

壁あつき部屋m5.jpg それが戦犯として裁かれる際に、上官の方は偽証により罪を全て山下になすりつけ、山下には瞬く間に死刑判決が下って、現地で執行ぎりぎりのところで刑を減免されて巣鴨刑務所に送致されたわけです。そこではまた人間扱いされず不当な処遇のもと強制労働させられる「BC級戦犯」が多く収容されていて、中には精神を病む者もいる状況。この山下の自身が置かれた理不尽な状況は、カフカ的不条理の世界にも通じ、その辺りが安部公房なのかなとも思いました。

 戦争の現地である南方での裁判において、アメリカ人らが報復にも近い形で日本人を裁き処刑していく場面があり(処刑も残酷だが、それを日本人捕虜に見せるのも残酷!)、銃殺後に現地に遺体をぞんざいに埋葬するため、現地人の反感を買うという、こうした自分本位の「正義」を振りかざして現地人の反感さえ買うアメリカ人の横暴が描かれているところが、松竹の上層部がGHQの検閲を恐れた由縁ではないかと思われます。
    
壁あつき部屋 岸恵子.jpg壁あつき部屋 ポスター.jpg この映画は社会派作品であることは確かですが、今の時代でも人の心を揺さぶるような戦争というものの根本に迫った作品でもあります(且つ、壁あつき部屋17.jpgカフカ的不条理の世界にも通じるということか)。一時的に出所を許された山下は、世の中がすっかり平和ムードに変化しているのに驚かされますが、一方で、横田が戦時中、唯一人間らしく優しい少女だと感じたヨシ子は、戦後は米兵に体を売る女となっていて、心もすれっからしになっており、そこにも戦争の悲劇が縮図として組み込まれています。岸惠子が、戦時中の可憐な少女と、戦後の淪落した女性の両方を演じ分けています。

私は貝になりたい2.jpg私は貝になりたい 1958.jpg もともとこの雑居房の6人は普通の市井の善良な市民であり、それがいわれなき罪を負わされて重い刑に服しているわけです。無実の人間が戦犯とされてしまう話としては、「壁あつき部屋」と同じように、戦争中に上官の命令で捕虜を刺殺した理髪店主が、戦後C級戦犯として逮捕され処刑されるまでを描いた「私は貝になりたい」('59年/東宝)があります。もともと1958年10月にテレビ放映された作品が、芸術賞受賞をきっかけに翌年4月に映画化されたもので、監督はTV版の脚本を書いた橋本忍です(橋本忍にとっての初監督作品)。
私は貝になりたい <1958年TVドラマ作品> [DVD]
私は貝になりたい」 508.jpg私は貝になりたい」tbs.jpg<1958年TV版> ラジオ東京テレビ(KRT/現TBS)(第13回芸術祭文部大臣賞受賞)〈出演〉フランキー堺/清水房江/桜むつ子/平山清/高田敏江/佐分利信(特別出演)/大森義夫/原保美/南原伸二(特別出演)/清村耕次/熊倉一雄/小松方正/内藤武敏/恩田清二郎/浅野進治郎/増田順二/坂本武/十朱久雄/垂水悟郎/河野秋武/田中明夫/ジョージ・A・ファーネス(特別出演)/佐野浅夫/梶哲也/織本順吉
「私は貝になりたい」<1959年映画作品>
私は貝になりたい 1959 vhs.jpg こちらは、主人公の理髪店主・豊松(フランキー堺)が戦後やっとの思いで家族のもとに戻り、理髪店で再び腕を揮い、やがて二人目の子供を授かったことを知私は貝になりたい 1959 01.jpgり平和な生活が戻ってきたかに思えた―その時、突然やってきたⅯP(ミリタリーポリス)に従軍中の事件の戦犯として逮捕されてしまうというもので、しかも最後は死刑になるという結末であるため、相当にヘビーです。

私は貝になりたい 1959 2.jpg いかにも橋本忍っぽい脚本に思えなくもないですが、こちらもBC級戦犯・加藤哲太郎の巣鴨獄中手記「狂える戦犯死刑囚」が一部モチーフとなっていて、そこには「私は貝になりたいと思います」という囚人の切実な叫びが綴られています(加藤哲太郎自身は、絞首刑→終身刑→有期刑と減刑されている)。

私は貝になりたい 所1.jpg私は貝になりたい 所2.jpg 「壁あつき部屋」は、北千住・シネマブルースタジオでの「戦争の傷跡特集」で観ました。「私は貝になりたい」と観比べてみるのもよいかと思います。「私は貝になりたい」はその後、1994年に所ジョージ主演でテレビドラマ・リメイク版が放送されたほか、2008年に福澤克雄監督、中居正広主演で再映画化されています。
「私は貝になりたい」<1994年TVドラマ化作品>所ジョージ/田中美佐子
私は貝になりたい 所0111.jpg私は貝になりたい vhs.jpg<1994年TV(所ジョージ)版> TBS(第43回日本民間放送連盟賞ドラマ番組部門優秀受賞)〈出演〉所ジョージ/田中美佐子/長沼達矢/瀬戸朝香/津川雅彦/春田純一/桜金造/柳葉敏郎/渡瀬恒彦/矢崎滋/石倉三郎/杉本哲太/森本レオ/三木のり平/室田日出男/すまけい/小宮健吾/小坂一也/段田安則/竹田高利/寺田農/尾藤イサオ/ラサール石井


シネマ ブルースタジオ 戦争の傷跡 特集.jpg壁あつき部屋 (1956).jpg「壁あつき部屋」●制作年:1956年●監督:小林正樹●脚本:安部公房●撮影:楠田浩之●音楽:木下忠司●原作:「壁あつき部屋―巣鴨BC級戦犯の人生記」●時間:110分●出演:浜田寅彦/三島耕/下元勉/信欣三/三井弘次/伊藤雄之助/内田良平/林トシ子/北竜二/岸惠子/小沢栄太郎/望月優子/小林幹/永井智雄/大木実/横山運平/戸川美子●公開:1956/10●配給:松竹●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(20-10-12)(評価:★★★★)

「壁あつき部屋」巣鴨プリズン(現在は池袋サンシャインシティ)       
壁あつき部屋 巣鴨プリズン.jpg
     
「私は貝になりたい」フランキー新珠.jpg私は貝になりたい 1959 tokoya.jpg「私は貝になりたい」●制作年:1959年●監督・脚本:橋本忍●製作:藤本真澄/三輪礼二●撮影:中井朝一●音楽:木佐藤勝●原作:(物語、構成)橋本「私は貝になりたい」95.jpg忍/(題名、遺書)加藤哲太郎●時間:113分●出演:フランキー堺/新珠三千代/菅野彰雄/水野久美/笠智衆/中丸忠雄/藤田進/笈川武夫/南原伸二/藤原釜足/稲葉義男/小池朝雄/佐田豊/平田昭彦/藤木悠/清水一郎/加東大介/織田政雄/多々良純/桜井巨郎/加藤和夫/坪野鎌之/榊田敬二/沢村いき雄/堺左千夫/ジョージ・A・ファーネス●公開:1959/04●配給:東宝●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(84-12-09)(評価:★★★★)


143865267608226030179_PDVD_006_20150804104437.jpg143867866083089746178_PDVD_008_20150804175741.jpg1「私は貝になりたい」笠智衆.jpg143868414555329634178_PDVD_010_20150804192906.jpg加東大介(豊松に赤紙を届ける町役場職員・竹内)/フランキー堺(清水豊松)
藤田進(豊松の元上官(軍司令官)矢野中将)/笠智衆(教誨師の小宮)


平田昭彦(陸軍参謀)... 平田昭彦は陸軍士官学校出身
「私は貝になりたい」平田.jpg

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主人公を男性から女性に変えて成功したとも言えるし、原作と別物になったとも言える。

06『顔』.jpg 顔 映画 0.jpg 顔 (1956年) (ロマン・ブックス).jpg 『顔・白い闇』.JPG
<あの頃映画> 顔 [DVD]」岡田茉莉子/大木実『顔 (1956年) (ロマン・ブックス)』(顔/殺意/なぜ「製図」が開いていたか/反射/市長死す/張込み)『顔・白い闇 (角川文庫)』(顔/張込み/声/地方紙を買う女/白い闇)
顔 (1956年) (ロマン・ブックス)』『声―松本清張短編全集〈5〉 (カッパ・ノベルス)
『顔』ロマン・ブックス.jpg声―松本清張短編全集〈5〉 (カッパ・ノベルス).jpgchapter_l_0001.jpg 東海道線の夜行列車にある男が乗り込み、そこである女を見つける。その女・水原秋子(岡田茉莉子)は、元は安酒場で働いていたが、ふとしたことでファッションモデルの幸運を掴みこれを手放すまいと懸命になっていた。一方の男・飯島(山内明)は無免許の堕胎医だった。秋子はプロ野球二軍選手の江波(森美樹)と結婚しようとしていたが、飯島は酒場時代の秋子の古傷に触れ彼女を苦しめていたのだ。飯島は、秋子の大阪でのショーの帰りを追って夜行列車に乗り込んだのだが、洗面所で秋子と口論となり、揉み合いになって列車から落ち、付近の病院に搬送されるも間もなく死亡する。警察chapter_l_0002.jpgは事件を軽く見たが、長谷川刑事(笠智衆)は何かあると確信、病院の死体置場に贈主不明の花束が届いたことから疑念を深め、列車の乗客で事件の目撃者である石岡三郎(大木実)に辿り着く。石岡は洗面所で秋子の顔を見たという。その新聞記事を見て秋子はモデルをやめ、江波と田舎に帰る決心するが、秋子の最後のショーに、長谷川刑事が石岡を連れて首実検に来る。驚く秋子だったが、石岡は犯人はいないと刑事に告げる。chapter_l_0003.jpg止むなく警察は石岡を尾行したがマカれてしまう。その頃、秋子のアパートでは江波が田舎へ行くため荷造りをしていた。そこへ石岡が現れ、秋子はいなかったが、去り際に表で帰って来た秋子に会う。石岡は秋子を旅館に連込み脅迫したが、そこを出た途端トラックに轢かれ死ぬ。秋子がアパートに戻ると、江波は石岡との関係を難詰、別れると言い出す。秋子は、呆然として外に出た。長谷川刑事らは漸く飯島殺し犯人として秋子を突止める。夜の銀座を彷徨う秋子。それをパトロールカーのサイレン音がけたたましく追う―。 笠智衆(長谷川刑事)

 原作は、「小説新潮」1956(昭和31)年8月号に掲載され、同年10月、講談社ロマン・ブックスより刊行された松本清張による初の推理小説短編集の表題作となり(所収作品:顔、殺顔 1957年 okada31.jpg意、なぜ「星図」が開いていたか、反射、市長死す、張込み)、この短編集は1957(昭和32)年・第10回「日本探偵作家クラブ賞(第16回以降「日本推理作家協会賞」)」を受賞作しています。
岡田茉莉子(水原秋子)
右から岡田茉莉子(水原秋子)・笠智衆(長谷川刑事)・大木実(石岡)
顔  大木 岡田 笠智衆.jpg ただし、原作の「顔」の主人公はファッションモデル女性ではなく、井野良吉という劇団員で、最近味のある役者として人気が出てきて、映画出演も決まり始めた男性です(つまり映画は主人公の性別を改変している)。実は彼は過去に女性を旅行に誘って殺害しようとして目的を果たすも、その土地に向かう途中の列車内で女性が知り合いの男性と出会ったところから二人でいるのを目撃されたため、今度はその男を理由をつけて旅行に誘い出し、殺害しようとします。ところが、その誘いを訝った男性は警察に相談し、警察は井野が犯人と確信、その旅行についてきて、旅館が井野と同宿だったために鉢合わせに。そこで実質的に首実検の状況になったわけですが、ところが、男には井野が自分が列車内で見た人物と同一人物には見えない! 見えないから当然、コイツが犯人だととも言えない(この点が、石岡が秋子を同一人物と分かりながらも、後で脅迫するために、その場では「犯人はここ中にはいない」と刑事に言っている映画とは大きく異なる)。

 結局、最終的には偶然どこかで井野が犯人であることが男にはわかるわけで、どこで分かるかは読んでのお楽しみですが、人間の記憶の機微を扱った短編らしいモチーフの作品です。ただし、このままだと映画になりにくい短編でもあるので、主人公を男性から女性に変えて、サイドストーリーを幾つも付け足して映画として"見栄えある"ものにしたとも言えるし、原作のモチーフを映画では活かしていないので、原作と別物になったとも言えるかと思います。

松本清張2 .jpg 原作者の松本清張は、自分の短編が映像化する際に話を膨らますことについては鷹揚であったようで、むしろ、短編をどうやって1時間半なり2時間なりの物語に加工するかこそが映画監督らの力量とみていたようです。自身の短編の映画化作品で最も評価していたのは、野村芳太郎監督の「張込み」('58年/松竹)だったようで、「原作を超えている」と言っていたそうですが、この「顔」については、脚本で原作が「改悪」されたと見て、それ以来映画会社を信用しなくなり「物申す原作者」になったとのことです。個人的には、原作を超えたとまでは言い難いですが、まずまずだったように思います。ただし、原作のモチーフを活かしていないので、「別物」として"まずます"ということになります。

 映画の中で、石橋湛山が自民党総裁で岸信介と争って勝った出来事が銀座のビルのテロップニュースで流れる場面がありますが、これは1956年12月のことで、岸信介に7票差で競り勝って総裁に当選した石橋湛山は、12月23日に内閣総理大臣に指名されています。原作が「小説新潮」1956年8月号に掲載されたもので、この映画の公開が1957年1月22日なので、撮影時の時事ネタを織り込んだといったところでしょうか。それにしても、雑誌の8月号に発表された短編が翌年1月には映画になるなんて、当時の松本清張の人気を窺わせます。ただし、過去に10回以上ドラマ化されていますが、映画化作品はこの大曽根辰夫監督の作品のみです。

・1958年「顔」(日本テレビ)三橋達也(井野)・花柳喜章(石岡)
・1959年「顔」(KRテレビ(現TBS))天本英世(井野)・高野真二(石岡)
・1962年「松本清張シリーズ・顔」(NHK)南原宏治・松宮五郎
・1963年「顔」(NET(現テレビ朝日))大木実(井野)・大坂志郎(石岡)
・1966年「松本清張シリーズ・顔」(関西テレビ・フジテレビ)山崎努・内田稔
・1978年「松本清張おんなシリーズ・顔」(TBS)大空真弓(井野)・織本順吉(石岡)
・1978年「松本清張の「顔」・死の断崖」(テレビ朝日)倍賞千恵子(井野)・財津一郎(石岡)
・1982年「松本清張の「顔」」(TBS)烏丸せつこ・浅茅陽子
・1999年「「松本清張特別企画・顔」(TBS)戸田菜穂 (井野)・斉藤慶子(石岡)
・2009年「松本清張ドラマスペシャル 顔」(NHK)谷原章介(井野)・高橋和也(石岡)
・2013年「松本清張スペシャル 顔」(フジテレビ) 松雪泰子・田中麗奈・坂口憲二

・1978年「松本清張の「顔」・死の断崖」(テレビ朝日)倍賞千恵子・山口崇・財津一郎・今井健二
「松本清張の「顔」」t.jpg 「松本清張の「顔」」01.png 「松本清張の「顔」」03.png 「松本清張の「顔」」04.png
・2009年「松本清張ドラマスペシャル 顔」(NHK)谷原章介/2013年「松本清張スペシャル 顔」(CⅩ)松雪泰子
松本清張ドラマスペシャル 顔.jpg松本清張SP--松雪泰子の「顔」.jpg

  
   
顔 映画00.jpg「顔」okada.jpg「顔」●制作年:1957年●監督:大曽根辰夫●脚本:井手雅人/瀬川昌治●撮影:石本秀雄●音楽:黛敏郎●原作:松本清張「顔」●時間:104分●出演:岡田茉莉子/大木実/笠智衆/森美樹/宮城千賀子/佐竹明夫/松本克平/千石規子/小沢栄(小沢栄太郎)/山内明/細川俊夫/内田良平/永田靖/乃木年雄/草島競子/永井秀明/十朱久雄/笹川富士夫/高村俊郎●公開:1957/01●配給:松竹(評価:★★★☆)
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江戸時代の人って、今われわれがこの映画を観るような感じで浄瑠璃を愉しんだのではないかと思わせる作品。
近松物語1poster.jpg近松物語 dvd.jpg 近松物語 00chikamatsu.jpg
近松物語 4K デジタル修復版 Blu-ray」香川京子(おさん)/長谷川一夫(茂兵衛)

近松物語chikamatsu1.jpg 京烏丸四条の大経師内匠は、宮中の経巻表装を職とし、町人ながら名字帯刀も許されていて、傍ら毎年の暦の刊行権を持ちその収入も大きかった。当代の以春(進藤英太郎)はその地位格式財力を鼻にかけて傲岸不遜の振舞が多かった。その二度目の若い妻おさん(香川京子)は、外見幸福そうだったが何とか物足らぬ気持で日を送っていた。おさんの兄・道喜(田中春男)は借金の利子の支払いに困ってその始末をおさんに泣きつく。金銭に関しては厳しい以春に断わられ、止むなくおさんは手代・茂兵衛(長谷川一夫)に相談、彼は内証で主人の印判を用い、取引先から暫く借りておこうとしたが、それが主手代の助右衛門(小沢栄太郎)に見つかる。彼は潔く以春に詫びるが、以春の厳しい追及近松物語 05.jpgにもおさんのことは口に出さない。ところがかねがね茂兵衛に思いを寄せていた女中のお玉(南田洋子)が心中立に罪を買って出る。以前からお玉を口説いていた以春の怒りは倍加して、茂兵衛を空屋に檻禁する。お玉はおさんに以春が夜になると屋根伝いに寝所へ通ってくることを打明ける。憤慨近松物語 04.jpgしたおさんは、一策を案じて、その夜お玉と寝所を取り替えて寝る。ところがその夜その部屋にやって来たのは茂兵衛だった。彼はお玉へ一言礼を言いに来たのだが、思いがけずそこにおさんを見出し、しかも運悪く助右衛門に見つけられて不義密通だと騒がれる。遂に二人はそこを逃げ出す。琵琶湖畔で茂兵衛はおさんに思慕を打明けて二人は強く結ばれ、以後役人の手を逃れつつも愛情を深めていく―。

近松物語5.jpg 1954年公開の溝口健二監督作で、近松門左衛門作の「大経師昔暦」を川口松太郎が劇化(オール読物所載「おさん茂兵衛」)し、それをもとに依田義賢が脚色したもの。近松門左衛門作は30年以上前に起きた京都四条烏丸の大経師の妻おさんが手代の茂兵衛と不義に陥り処刑された事件をベースに(この事件は井原西鶴も「好色五人女」で近松に先駆けて元ネタにしている)、処刑された男女の三十三回忌に合わせてその事件の顛末を世話浄瑠璃に仕立てたとのことですが、観ていて、江戸時代の人って、今われわれがこの映画を観るような感じで浄瑠璃を愉しんだのだろうなあと思わせる作品です。
進藤英太郎(大経師以春)/南田洋子(お玉)

近松物語6-4.jpg 一方で、映画は原作から改変されている部分もあり(川口松太郎によるものと思われるが)、近松の「大経師昔暦」では、茂兵衛がお玉の親切に報いるために、かねてから自分を慕っていたお玉の気持ちに応えようとお玉の寝所に忍び込み、その時、お玉の代わりに控えていたおさんは、以春が忍んできたと思い込み、暗闇のなかでそのまま茂兵衛と実際に交情を交わしてしまい、これが二人の結びつく契機となったことになっています。それを映画では、その場で交情に至らなかったものの以春にその関係を疑われ、不義の濡れ衣を被せられたように改変近松物語 kagawa.jpgされていてます。こうして二人が逃避行に至るまでがテンポ良く描かれ、更に、二人のプラトニックな関係を中盤以降に引っ張る作りとなって、その分観る者の感情移入を促すし、香川京子という女優のイメージとも合致していて良かったのではないかと思います(これが当初予定されていた小暮実千代や京マチ子だとまた違った展開になったのか?)。

香川京子(おさん)

 茂兵衛役の長谷川一夫は、大映社長・永田雅一の強い要請での起用でしたが、スター嫌いだった溝口健二監督は、貧しい育ちで"素朴な"手代・茂兵衛を構想していたのに、長谷川一夫が徹頭徹尾"洗練された"演技姿勢を崩さなかったため、作品全体に対して不満を抱いていたとのことです。個人的には、歌舞伎役者時代に女形で鳴らした長谷川一夫だけに、手代という受け身的な立場の人間の仕草をさらっと演じているのは流石だと思いました。

近松物語 00.jpg 「西鶴一代女」('52年/新東宝)で1952年・第13回ヴェネツィア国際映画祭の「国際賞」を受賞し、それに続いて翌年、翌々年と「雨月物語」('53年/大映)、「山椒大夫」('54年/大映)で共に「銀獅子賞」受賞と3年連続でヴェネツィア国際映画祭での受賞を果たしていた溝口健二監督ですが、この作品は1955年・第8回カンヌ映画祭に出品されたものの、賞の選からは漏れています。賞を獲れなかった原因は、一説には、直前に大映社長の永田雅一が日本経済新聞の対談で「パリが大嫌い」「フランス人は真心がない、舌先三寸で世界を牛耳ってやろうと思っている」とフランスの悪口を延々と述べたことがカンヌ映画祭組織委員会に伝わり、委員の激怒を招いたためとされています。当時の溝口健二監督の海外での高い評価からすると、そのままの勢いでカンヌでの受賞があっても不思議ではなく、また(溝口健二監督自身はどう思っているかは別として)作品のレベルからしても、永田雅一の軽率な発言がなければ結果は違っていたかもしれません(この作品は日本では、溝口健二監督が1954年に芸術選奨を受賞した際の対象作品となっている)。

近松物語10.jpg 最後にはおさんと茂兵衛は捕らえられ、磔となる前の市中引き回しで、二人は馬上に背中合わせに縛られ、大経師屋の前を通りますが、その様を見た大経師屋の奉公人が、「おさんさんのあんな明るいお顔は見たことがない。茂兵衛さんも晴れ晴れとした顔色で、ほんまにこれから死なはんのやろか・...」と言います。しかし、実際にはおさんは晴れ晴れとした表情をしているものの、茂兵衛はどことなく浮かない顔をしていると言っていいのでは。これは愛する人と共に処刑されることを恋の成就と見做しているおさんにとって、市中引き回しは心中の「道行」を皆に見てもらっているようなものでどこか晴れがましさがあり、一方の茂兵衛にとっては、自らを犠牲にしてもおさんの命だけは助けようとしたのにこのような結果になってしまったことへの慙愧の念があるためではないかと思います。セリフと演技が整合していないとも言えますが、長谷川一夫の演技の方が"正解"でしょうか? この辺りにも、溝口健二監督と長谷川一夫の考え方の違いが表れたのかなとも思ってしまいました。でも、「雨月物語」と並ぶ溝口健二監督の傑作だと思います。

小沢栄太郎(主手代の助右衛門)/進藤英太郎(大経師以春)
近松物語 小沢栄太郎 進藤.jpg

近松物語_9.jpg「近松物語」●制作年:1954年●監督:溝口健二●製作:永田雅一●脚本:依田義賢●撮影:宮川一夫●音楽:早坂文雄●原作:近松門左衛門●劇化:川口松太郎●時間:102分●出演:茂兵衛:長谷川一夫/香川京子/南田洋子/進藤英太郎/小沢栄太郎/菅井一郎/田中春男/石黒達也/浪花千栄子/十朱久雄/荒木忍/東良之助/葛木香一/水野浩/天野一郎/橘公子/金剛麗子/小松みどり/小林加奈枝/仲上小夜子/小柳圭子/伊達三郎/石原須磨男/横山文彦/藤川準/玉置一恵●公開:1954/11●配給:大映(評価:★★★★☆)

「●増村 保造 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●中平 康 監督作品」【3249】 中平 康 「誘惑
「●林 光 音楽作品」の インデックッスへ「●岸田 今日子 出演作品」の インデックッスへ 「●岡田 英次 出演作品」の インデックッスへ「●川津 祐介 出演作品」の インデックッスへ  「●小沢 栄太郎 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(角川シネマ新宿2)

浅丘ルリ子の演技(悪女ぶり)と肉体(若々しさ)が見所か。ラストは安易。

女体 1969.jpg女体 1969 09.jpg 浅丘ルリ子 『女体』 スチールi.jpg
女体 [DVD]」浅丘ルリ子・伊藤孝雄      岡田英次・浅丘ルリ子・川津祐介
               浅丘ルリ子・岸田今日子
女体 浅丘ルリ子岸田今日子スチル.jpg 浜ミチ(浅丘ルリ子)は、大学理事長・小林卓造(小沢栄太郎)の息子・行夫(青山良彦)に強姦されとして慰謝料200万円を要求したが、行夫の姉・晶江(岸田今日子)に侮辱的な扱いを受け、敵意を抱く。スキャンダルを恐れた卓造は、婿である秘書の石堂信之(岡田英次)に処理を一任し、信之は晶江の意志に反して200万円を支払う。ミチは信之に愛を感じ、二人は求め合うが、ミチは信之との情事を晶江に伝えてしまう。それを知った信之は、ミチが元画家の青年・五郎(川津祐介)とも交渉があることを知ってミチと別れる決心をする。しかし、ミチを捨てられず、逆に五郎女体 1969_1.jpgから手切れ金を要求され、卓造から預っていた裏口入学金の一部500万円を流用して払う。だが、五郎はミチと別れないばかりか、金の出所を追求すると嘯き、信之はそんな五郎を誤って殺害する。やがて保釈された信之は、晶江を捨て、仕事も捨ててミチとの生活に飛び込女体 1969m.jpgむが、バー経営が行き詰まり、加えてミチの束縛を嫌う奔放な性格から二人の間に亀裂が生じる。ミチはやがて信之の妹・雪子(梓英子)の婚約者・秋月(伊藤孝雄)に心を寄せるようになる。秋月はミチの誘惑を拒むが、ミチは入水自殺する素振りをみせた挙句、深夜のドライブに秋月を誘い出し、事故による無理心中を図るも失敗する。信之にも去られて独りになったミチは「また素敵な男を見つければいいわ」と酔って、ふらつく足で風呂場のガス管を引っ掛けたまま湯舟で微睡み、永遠の眠り向かう―。

盲獣poster.jpg盲獣 .jpg 増村保造(1924-1986)監督の1968年10月公開作で、同監督は60年代は大体年3本くらい撮っていて、この年も江戸川乱歩原作、船越英二・緑魔子主演の「盲獣」('68年/大映)と川端康成原作、平幹二朗・若尾文子主演の「千羽鶴」('68年/大映)が公開されています。昔の監督は量産だったなあと思いますが、増村保造監督について言えば、次の年1970年に撮っているのが「でんきくらげ」「やくざ絶唱」「しびれくらげ」の3本であり、文芸路線、エンタメ路線、ピンク路線と何でも混在しているところが増村保造監督らしいです。
緑はるかに(オリジナルカラー版) [DVD]
緑はるかに.jpg緑はるかに2.jpg浅丘ルリ子 昭和44年 女体.jpg 14歳でカラー映画「緑はるかに」('55年/日活)でいきなり主役映画デビューした浅丘ルリ子は、29歳ですでに80本以上の映画に出演していましたが、当時まさに人気絶頂で、その日活に所属する超人気女優の浅丘ルリ子が大映映画に出ることになったということで、当時の大映のエース・増村保造監督が起用されたとのことです。

愛の化石L.jpg また、浅丘ルリ子はこの年('69年)にシングルレコード曲「愛の化石」をヒットさせており(唄よりもセリフが愛の化石.jpg浅丘ルリ子-p2.jpg多い曲だった)、翌年の1970年には、浅丘ルリ子と田宮二郎、高橋悦史主演で同名映画「愛の化石」('70年/日活)も製作されました。因みに、それまでも20曲以上シングルを発表していた彼女ですが、この曲で一旦歌謡曲の世界からは身を引き、「愛の化石」の次のシングルが出たのは45年後でした(小林旭とのデュエット曲「いとしいとしというこころ」('14年))。
愛の化石 [EPレコード 7inch]」/「愛の化石 [DVD]」/「愛の化石」('70年/日活)スチール写真
    
小谷野敦.jpg この「女体」については、比較文学者の小谷野敦氏が「ここでの浅丘ルリ子はニンフォマニアかサイコパスとしか思えず、ひたすらうざい。海に入って死のうとする時なんか、とめないで死なせたほうがいいと思ってしまう。『痴人の愛』よりひどく、まともな男ならまず逃げ出す。魅力のかけらもない。小沢栄太郎、岸田今日子ら理事長一家の描き方がまた類型的でげんなりする。どいつもこいつもゲヘナの火で焼きつくされてしまえばいいのにというような映画」と酷評していましたが(Amazon. comで星1つ)、お説ごもっともながら、そこまでヒドイかなあ(?)とも思ってしまいました。

痴人の愛 京マチ子.jpg 確かに『痴人の愛』のナオミに比べたら、この映画の浅丘ルリ子演じるミチは、なぜこんな女性に男が入れ込んでしまうのかなあと思うぐらい「自己愛性人格障害」ぶりが露骨に前面に出ているように感じられました。今で言う「ストーカー」的要素もあるし...(まあ、『痴人の愛』のナオミにおける谷崎ならではの絶妙なファム・ファタールぶりも、何度か映画化されたものにおいてそれが十全に描き出せているかというと、そうでもない気がするが)。

痴人の愛」('49年)京マチ子、宇野重吉

浅丘ルリ子 女体 .jpg ミチのウザさは、彼女が海に入って死のうとする時に、小谷野敦氏ならずとも、自分だってとめないで死なせたほうがいいと思ってしまったくらいですが、観客目線でミチという女性が好きだ嫌いだということとは別に、少なくとも映画の中では、伊藤孝雄演じる男はミチを助けに海に飛び込み、岡田英次演じる男は彼女を捨てられないわけであって、そこがこの映画のミソなのではないかと思います(と言っても、男たち、特に岡田英二演じる男に感情移入し切れない面があったが)。

女体 1969.jpg 男を引き付けるのはやっぱり、タイトル通り"女体"の力なのでしょうか。この映画の浅丘ルリ子はあっけらかんと下着姿を見せていて、しかも非常に締まったスレンダーな小麦色のボディをしています。但し、こうなると、女体(にょたい)と言うより、やはり女体(じょたい)になるのだろうなあ(野坂昭如風に言えば、エロスの具象かもしれないが、エロは感じられないと言うことか。野坂昭如は、エロは分かるがエロスは自分にはよく分からないとも言っている)。

 浅丘ルリ子は、やや芝居臭さがあって、演技に無理があるようにも見えますが、穿った見方をすれば、主人公の「演技性人格障害」を体現していると言えるのかも。川津祐介は増村保造監督の「」('64年/大映)でも、若尾文子演じる両性愛的女性の婚約者だかヒモだかよく分からない男を演じていて、ちんけなワルが似合います。「卍」で若尾文子に想いを寄せる女性を演じた岸田今日子は、「卍」の方がいい演技でしたが、こちらでは脇に回ったから仕方がないか(やったことと言えば、離婚を承諾しなかったことだけ)。

 全体にパターン化された演技が多いため(何だか小谷野敦氏に近くなってきた)、やはり浅丘ルリ子の演技(悪女ぶり)と肉体(若々しさ)が見所でしょうか。最後にミチを死なせてしまうのがいかにも安易に思われました。ラストでミチが独りポツンと居るだけの方が、余韻があったように思います。
1969(昭和44)年公開(大映)林 光(1931-2012)
浅丘ルリ子9.jpg女体  .jpg林光.jpg女体 1969m.jpg「女体(じょたい)」●制作年:1969年●監督:増村保造●脚本:池田一朗/増村保造●撮影:小林節雄●音楽:林光●時間:94分●出演:浅丘ルリ子/岡田英次/岸田今日子/梓英子/伊藤孝雄/川おとなの大映祭.jpg津祐介/小沢栄太郎/青山良彦/早川雄三/北村和夫/伊東光一/中条静夫/中田勉/小山内淳/三笠すみれ/川崎陽子/仲村隆/白井玲子●公開:1969/10●配給:大映●最初に観た場所:角川シネマ新宿(シネマ2・おとなの大映祭)(17-07-12)(評価:★★★)
角川シネマ新宿  0.jpg角川シネマ新宿 .jpg角川シネマ新宿 2.jpg角川シネマ新宿(新宿3丁目「新宿文化ビル」4・5階)シネマ1(300席)・シネマ2(56席)  2006(平成18)年12月9日〜旧文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ角川シネマ新宿シネマ2座席表.jpg1・2」として、旧文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」として再オープン、2008(平角川シネマ新宿 シネマ22.jpgEJアニメシアター新宿カフェ・ギャラリー.jpg成20)年6月14日「新宿ガーデンシネマ1・2」が「角川シネマ新宿1・2」に改称)2018(平成30)年7月7日休館、同月28日シネマ1はアニメ作品のみを上映する「EJアニメシアター新宿」に改称、シネマ2は「アニメギャラリー」としてリニューアルオープン。

角川シネマ新宿(シネマ2)[56席]
 
  

浅丘ルリ子(14歳)in「緑はるかに」('55年/日活)
緑はるかに 01.jpg緑はるかに 02.jpg

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講談調で娯楽性が高く、伝説的虚構性を重視。「忠臣蔵」の初心者が大枠を掴むのに良い。

忠臣蔵(1958).jpg
忠臣蔵 1958_0.jpg
忠臣蔵 [DVD]」(2004) 主演:長谷川一夫

忠臣蔵 [DVD]」(2013)

滝沢修 忠臣蔵1958.jpg 元禄14年3月、江戸城勅使接待役に当った播州赤穂城主・浅野内匠頭(市川雷蔵)は、日頃から武士道を時世遅れと軽蔑する指南役・吉良上野介(滝沢修)から事毎に意地悪い仕打ちを受けるが、近臣・堀部安兵衛(林成年)の機転で重大な過失を免れ、妻あぐり(山本富士子)の言葉や国家老・大石内蔵助(長谷川一夫)の手紙により慰められ、怒りを抑え役目大切に日を過す。しかし、最終日に許し難い侮辱を受けた内匠頭は、城中松の廊下で上野介に斬りつけ、無念にも討忠臣蔵(1958)市川.jpgち損じる。幕府は直ちに事件の処置を計るが、上野介贔屓の老中筆頭・柳沢出羽守(清水将夫)は、目付役・多門伝八郎(黒川弥太郎)、老中・土屋相模守(根上淳)らの正論を押し切り、上野介は咎めなし、内匠頭は即日切腹との処分を下す。内匠頭は多門伝八郎の情けで家臣・片岡源忠臣蔵  昭和33年.jpg右衛門(香川良介)に国許へ遺言を残し、従容と死につく。赤穂で悲報に接した内蔵助は、混乱する家中の意見を籠城論から殉死論へと導き、志の固い士を判別した後、初めて仇討ちの意図を洩らし血盟の士を得る。その中には前髪の大石主税(川口浩)と矢頭右衛門七(梅若正二)、浪々中を馳せ参じた不破数右衛門(杉山昌三九)も加えられた。内蔵助は赤穂城受取りの脇坂淡路守(菅原謙二)を介して浅野家再興Chûshingura(1958).jpgの嘆願書を幕府に提出、内蔵助の人物に惚れた淡路守はこれを幕府に計るが、柳沢出羽守は一蹴する。上野介の実子で越後米沢藩主・上杉綱憲(船越英二)は、家老・千坂兵部(小沢栄太郎)に命じて上野介の身辺を警戒させ、兵部は各方面に間者を放つ。内蔵助は赤穂退去後、京都山科に落着くが、更に浅野家再興嘆願を兼ねて江戸へ下がり、内匠頭後室・あぐり改め瑤泉院を訪れる。瑤泉院は、仇討ちの志が見えぬ内蔵助を責める侍女・戸田局(三益愛子)とは別に彼を信頼している。内蔵助はその帰途に吉良方の刺客に襲われ、多門伝八郎の助勢で事なきを得るが、その邸内で町人姿の岡野金右衛門(鶴田浩二)に引き合わされる。伝八郎は刃傷事件以来、陰に陽に赤穂浪士を庇護していたのだ。一方、大石襲撃に失敗した千坂兵部は清水一角(田崎潤)の報告によって並々ならぬ人物と知り、腹心の女るい(京マチ子)を内蔵助の身辺に間者として送る。江戸へ集った急進派の堀部安兵衛らは、出来れば少人数でもと仇討ちを急ぐが、内蔵助は大義の仇討ちをするには浅野家再興の成否を待ってからだと説く。半年後、祇園一力茶屋で多くの遊女と連日狂態を示す内蔵助の身辺に、内蔵助を犬侍と罵る浪人・関根弥次郎(高松英郎)、内蔵助を庇う浮橋(木暮実千代)ら太夫、仲居姿のるいなどがいた。内蔵助は浅野再興の望みが絶えたと知ると、浮橋を身請けして、妻のりく(淡島千景)に離別を申渡す。長子・主税のみを残しりくや幼い3人の子らと山科を去る母たか(東山千栄子)は、仏壇に内蔵助の新しい位牌を見出し、初めて知った彼の本心にりくと共に泣く。るいは千坂の間者・忠臣蔵  昭和33年tyu.jpg小林平八郎(原聖四郎)から内蔵助を斬る指令を受けるがどうしても斬れず、平八郎は刺客を集め内蔵助を襲い主税らの剣に倒れる。機は熟し、内蔵助ら在京同志は続々江戸へ出発、道中、近衛家用人・垣見五郎兵衛(二代目中村鴈治郎)は、自分の名を騙る偽者と対峙したが、それを内蔵助と知ると自ら偽者と名乗忠臣蔵e.jpgって、本物の手形まで彼に譲る。江戸の同志たちも商人などに姿を変えて仇の動静を探っていたが、吉良方も必死の警戒を続け、しばしば赤穂浪士も危機に陥る。千坂兵部は上野介が越後へ行くとの噂を立て、この行列を襲う赤穂浪士を一挙葬る策を立てるが、これを看破した内蔵助は偽の行列を見送る。やがて、赤穂血盟の士47人は全員江戸に到着し、決行の日は後十日に迫るが、肝心の吉良邸の新しい絵図面だけがまだ無い。岡野金右衛門は同志たちから、彼を恋する大工・政五郎(見明凡太朗)の娘お鈴(若尾文子)を利用してその絵図を手に入れるよう責められていて、決意してお鈴に当る。お鈴は小間物屋の番頭と思っていた岡野金右衛門を初めて赤穂浪士と覚ったが、方便のためだけか、恋してくれているのかと彼に迫り、男の真情を知ると嬉し泣きしてその望みに応じ、政五郎も岡野金右衛門の名も聞かずに来世で娘と添ってくれと頼む。江戸へ帰ったるいは、再び兵部の命で内蔵助を偵察に行くが、内蔵助たちの美しい心と姿に打たれる彼女は逆に吉良家茶会の日を14日と教える。その帰途、内蔵助を斬りに来た清水一角と同志・大高源吾(品川隆二)の斬合いに巻き込まれ、危って一角の刀に倒れたるいは、いまわの際にも一角に内蔵助の所在を偽る。るいの好意とその最期を聞いた内蔵助は、12月14日討入決行の檄を飛ばす。その14日、内蔵助はそれとなく今生の暇乞いに瑤泉院を訪れるが、間者の耳目を警戒して復讐の志を洩らさChûshingura (1958) .jpgず、失望する瑤泉院や戸田局を後に邸を辞す。同じ頃、同志の赤垣源蔵(勝新太郎)も実兄・塩山伊左衛門(竜崎一郎)の留守宅を訪い、下女お杉(若松和子)を相手に冗談口をたたきながらも、兄の衣類を前に人知れず別れを告げて飄々と去る。勝田新左衛門(川崎敬三)もまた、実家に預けた妻と幼児に別れを告げに来たが、舅・大竹重兵衛(志村喬)は新左衛門が他家へ仕官すると聞き激怒し罵る。夜も更けて瑤泉院は、侍女・紅梅(小野道子)が盗み出そうとした内蔵助の歌日記こそ同志の連判状であることを発見、内蔵助の苦衷に打たれる。その頃、そば屋の二階で勢揃いした赤穂浪士47人は、表門裏門の二手に分れ内蔵助の采忠臣蔵 1958_1.jpg配下、本所吉良邸へ乱入。乱闘数刻、夜明け前頃、間十次郎(北原義郎)と武林唯七(石井竜一)が上野介を炭小屋に発見、内蔵助は内匠頭切腹の短刀で止めを刺す。赤穂義士の快挙は江戸中の評判となり、大竹重兵衛は瓦版に婿の名を見つけ狂喜し、塩山伊左衛門は下女お杉を引揚げの行列の中へ弟を探しにやらせお杉は源蔵を発見、大工の娘お鈴もまた恋人・岡野金右衛門の姿を行列の中に発見し、岡野から渡された名札を握りしめて凝然と立ちつくす。一行が両国橋に差しかかった時、大目付・多門伝八郎は、内蔵The Loyal 47 Ronin (1958).jpg忠臣蔵 _V1_.jpg助に引揚げの道筋を教え、役目を離れ心からの喜びを伝える。その内蔵助が白雪の路上で発見したものは、白衣に身を包んだ瑤泉院が涙に濡れて合掌する姿だった―。[公開当時のプレスシートより抜粋]
若尾文子(お鈴)・鶴田浩二(岡野金右衛門)

忠臣蔵 1958 長谷川一夫.jpg 1958(昭和33)年に大映が会社創立18年を記念して製作したオールスター作品で、監督は渡辺邦男(1899-1981)。大石内蔵助に大映の大看板スター長谷川一夫、浅野内匠頭に若手の二枚目スター市川雷蔵のほか鶴田浩二、勝新太郎という豪華絢爛たる顔ぶれに加え女優陣にも京マチ子、山本富士子、木暮実千代、淡島千景、若尾文子といった当時のトップスターを起用しています。当時、赤穂事件を題材とした映画は毎年のように撮られていますが、この作品は、その3年後に作られた同じく大作である松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「赤穂浪士」('61年/東映)とよく比較されます。「赤穂浪士」の方は大佛次郎の小説『赤穂浪士』をベースとしています。

 "忠臣蔵通"と言われる人たちの間では'61年の東映版「赤穂浪士」の方がどちらかと言えば評価が高く、一方、この'58年の大映版「忠臣蔵」は、「戦後映画化作品の中で最も浪花節的かつ講談調で娯楽性が高く、リアリティよりも虚構の伝説性を重んじる当時の風潮が反映されている作品であり、『忠臣蔵』の初心者が大枠を掴むのに適していると言われている」(Wikipedia)そうです。概ね同感ですが、東映版「赤穂浪士」にしても、大佛次郎の小説『赤穂浪士』を基にしているため、史実には無い大佛次郎が作りだしたキャラクターが登場したりするわけで、しかも細部においては必ずしも原作通りではないことを考えると、この大映版「忠臣蔵」は、これはこれで「伝説的虚構性を重視」しているという点である意味オーソドックスでいいのではないかと思いました。

 「赤穂浪士」の片岡千恵蔵の大石内蔵助と、3年先行するこの「忠臣蔵」の長谷川一夫の大石内蔵助はいい勝負でしょうか。「赤穂浪士」が浅野内匠頭に大川橋蔵を持ってきたのに対し、この「忠臣蔵」の浅野内匠頭は市川雷蔵で、「赤穂浪士」が吉良上野介に月形龍之介を持ってきたのに対し、この「忠臣蔵」の吉良上野介は滝沢修です。この「忠臣蔵」の長谷川一夫と滝沢修は、6年後のNHKの第2回大河ドラマ「赤穂浪士」('64年)でも忠臣蔵 1958.jpgそれぞれ大石内蔵助と吉良上野介を演じています(こちらは大佛次郎の『赤穂浪士』が原作)。また、「赤穂浪士」が「大石東下り」の段で知られる立花左近に大河内傳次郎を配したのに対し、こちら「忠臣蔵」は立花左近に該当する垣見五郎兵衛忠臣蔵 1958 中村.jpg二代目中村鴈治郎を配しており、長谷川一夫が初代中村鴈治郎の門下であったことを考えると、兄弟弟子同士の共演とも言えて興味深いです。但し、この場面の演出は片岡千恵蔵・大河内傳次郎コンビの方がやや上だったでしょうか。
二代目中村鴈治郎(垣見五郎兵衛)

勝新太郎(赤垣源蔵)
忠臣蔵_V1_.jpg この作品は、講談などで知られるエピソードをよく拾っているように思われ(このことが伝説的虚構性を重視しているということになるのか)、先に挙げた内蔵助が武士の情けに助けられる「大石東下り」や、同じく内蔵助がそれとなく瑤泉院を今生の暇乞いに訪れる「南部坂雪の別れ」などに加え、赤垣源蔵が兄にこれもそれとなく別れを告げに行き、会えずに兄の衣服を前に杯を上げる「赤垣源蔵 徳利の別れ」などもしっかり織り込まれています。赤垣源蔵役は勝新太郎ですが、この話はこれだけで「赤垣源蔵(忠臣蔵赤垣源蔵 討入り前夜)」('38年/日活)という1本の映画になっていて、阪東妻三郎が赤垣源蔵を演じています。また、浪々中を馳せ参じた不破数右衛門(杉山昌三九)もちらっと出てきますが、この話も「韋駄天数右衛門」('33年/宝塚キネマ)という1本の映画になっていて、羅門光三郎が不破数右衛門忠臣蔵 1958 simura.jpgを演じています。こちらの話ももう少し詳しく描いて欲しかった気もしますが、勝田新左衛門の舅・大竹重兵衛(演じるのは志村喬)のエピソード(これも「赤穂義士銘々伝」のうちの一話になっている)などは楽しめました(志村喬は戦前の喜劇俳優時代の持ち味を出していた)。
志村喬(大竹重兵衛)

 映画会社の性格かと思いますが、東映版「赤穂浪士」が比較的男優中心で女優の方は脇っぽかったのに対し、こちらは、山本富士子が瑤泉院、京マチ子が間者るい、木暮実千代が浮橋太夫、淡島千景が内蔵助の妻りく、若尾文子が岡野金右衛門(鶴田浩二)の恋人お鈴、中村玉緒が浅野家腰元みどりと豪華布陣です。それだけ、盛り込まれているエピソードも多く、全体としてテンポ良く、楽しむところは楽しませながら話が進みます。山本富士子はさすがの美貌というか貫禄ですが、京マチ子の女間者るいはボンドガールみたいな役どころでその最期は切なく、若尾文子のお鈴は、父親も絡んだ吉良邸の絵図面を巡る話そのものが定番ながらもいいです。
1山本・京・鶴田.jpg忠臣蔵 鶴田浩二 若尾文子.jpg
山本富士子(瑤泉院)/京マチ子(女間者おるい)/鶴田浩二(岡野金右衛門)  若尾文子(お鈴)・鶴田浩二

山本富士子 hujin.jpg「婦人画報」'64年1月号(表紙:山本富士子)

忠臣蔵 1958es.jpg忠臣蔵(1958)6.jpg滝沢修(吉良上野介)・市川雷蔵(浅野内匠頭)

 渡辺邦男監督が「天皇」と呼ばれるまでになったのはとにかく、この人は早撮りで有名で、この作品も35日間で撮ったそうです(初めて一緒に仕事した市川雷蔵をすごく気に入ったらしい)。でも、画面を観ている限りそれほどお手軽な感じは無く、監督の技量を感じました。ストーリーもオーソドックスであり、確かに、自分のような初心者が大枠を掴むのには良い作品かもしれません。松田定次監督、片岡千恵蔵主演の「赤穂浪士」('61年)と同様、役者を楽しむ映画であるとも言え、豪華さだけで比較するのも何ですが、役者陣、特に女優陣の充実度などでこちらが勝っているのではないかと思いました。
 
【新企画】二大大型時代劇映画「忠臣蔵1958」「赤穂浪士1961」を見比べてみた。(個人ブログ「映画と感想」)


「忠臣蔵」スチール 淡島千景(大石の妻・りく)/長谷川一夫(大石内蔵助)/木暮実千代(浮橋太夫)
淡島千景『忠臣蔵』スチル1.jpg
淡島千景/東山千栄子(大石の母・おたか)
淡島千景『忠臣蔵』スチル5.jpg

小沢栄太郎(千坂兵部)・京マチ子(女間者おるい)    船越英二(上杉綱憲)
忠臣蔵 小沢栄太郎・京マチ子.jpg 忠臣蔵 船越英二.jpg

Chûshingura (1958)
Chûshingura (1958).jpg忠臣蔵 1958 08.jpg「忠臣蔵」●制作年:1958年●監督:渡辺邦男●製作:永田雅一●脚本:渡辺邦男/八尋不二/民門敏雄/松村正温●撮影:渡辺孝●音楽:斎藤一郎●時間:166分●出演:長谷川一夫/市川雷蔵/鶴田浩二/勝新太郎/川口浩/林成年/荒木忍/香川良介/梅若正二/川崎敬三/北原義郎/石井竜一/伊沢一郎/四代目淺尾奥山/杉山昌三九/葛木香一/舟木洋一/清水元/和泉千忠臣蔵 1958 10.jpg太郎/藤間大輔/高倉一郎/五代千太郎/伊達三郎/玉置一恵/品川隆二/横山文彦/京マチ子/若尾文子/山本富士子淡島千景/木暮実千代/三益愛子/小野道子/中村玉緒/阿井美千子/藤田佳子/三田登喜子/浦路洋子/滝花久子/朝雲照代/若松和子/東山山本富士子『忠臣蔵(1958).jpg千栄子/黒川弥太郎/根上淳/高松英郎/花布辰男/松本克平/二代目澤村宗之助/船越英二/清水将夫/南條新太郎/菅原謙二/南部彰三/春本富士夫/寺島雄作/志摩靖彦/竜崎一郎/坊屋三郎/見明凡太朗/上田寛/小沢栄太郎/田崎潤/原聖四郎/志村喬/二代目中村鴈治郎/滝沢修●公開:1958/04●配給:大映(評価:★★★★)

山本富士子(瑤泉院)・三益愛子(戸田局)

2020年2月20日NHK-BSプレミアム
千坂兵部(小沢栄太郎)と女間者おるい(京マチ子)/岡野金右衛門(鶴田浩二)と大工の娘・お鈴(若尾文子)
忠臣蔵_0182.JPG 忠臣蔵_0183.JPG
立場を転じて内蔵助に秘密情報を漏らすおるい(京マチ子)/「徳利の別れ」赤垣源蔵(勝新太郎)
忠臣蔵_0185.JPG 忠臣蔵_0186.JPG
娘婿・勝田新左衛門(川崎敬三)を叱る大竹重兵衛(志村喬)/「南部坂雪の別れ(後段)」瑤泉院(山本富士子)
忠臣蔵_0189.JPG 忠臣蔵_0190.JPG

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説明不足にはケチをつけたくなるが、大友柳太朗を楽しめる分、DVD化する価値はある?

酒と女と槍002.jpg酒と女と槍 vhs.jpg 酒と女と槍 title.jpg
酒と女と槍【ワイド版】 [VHS]」大友柳太朗

 秀吉(東野英治郎)の怒りにふれた関白秀次(黒川弥太郎)は高野で切腹、半月後には秀次の妻妾38人が三条河原で斬られ、伏見城大手門の前にこんな建札が立つ。「われらこと、故関白殿下諫争の臣として数年酒と女と槍 20花園ひろみ (2).jpgまかりあり候ところ、此の度不慮の儀これあり候ところ、われら職分怠たりの為と申訳なく存じ候。さるによって来る二十八日未の刻を期して切腹仕可」。建札の主は"槍の蔵人"の異名をもつ富田蔵人高定(大友柳太朗)。高定は死ぬまでの数日を心おきなく過すため、豪商・堺屋宗四郎(十朱久雄)の別荘に身を寄せ、贔屓の女歌舞伎太夫・左近(淡島千景)と妥女(花園ひろみ)を呼ぶ。建札を見て高定の心を知った妥女は一人残るが、一夜明けた朝「殿様は女というものの心がお分酒と女と槍 10大友柳太郎 (3).jpgりではございません」という言葉を残して迎えに来た左近と去る。千本松原には多くの見物人が集まったが、高定は乱酔のた酒と女と槍 40大友柳太郎 (4).jpgめ切腹の定刻を過ごし、介錯人(南方英二)に合図したところで秀吉の使者に切腹を止められる。高定は西山の村里に妥女と住むことになる。慶長3年(1598)、秀吉が亡くなる。兄の知信(原健策)は高定に再び切腹を迫るが、高定は兄を追い返し、仕官を勧めて訪れる前田利長(片岡千恵蔵)の家臣・内藤茂十郎(徳大寺伸)の言にも取り合わない。秀吉の死により家康(小沢栄太郎)の野望は高まり、関ケ原で豊臣徳川両家が興亡を賭け対峙する。今度は酒と女と槍 50大友柳太郎 (2).jpg高定の庵に利長本人が訪れて再度仕官を促す。高定に忘れ去ったはずの酒と女と槍 60花園ひろみ.jpg侍魂を呼び起したのは槍だった。子供が生れるとすがりつく妥女を残して、高定は利長の後を追うが、これは同時に左近との約束も破ることであった。関ケ原の本陣で、家康の本営に呼ばれた高定の酒と女と槍 70大友柳太郎 (5).jpg前に突き出されたのは、三成(山形勲)に内通したという兄・知信の首だった。利長のとりなしで陣営に帰った高定に、左近が迫る。女の一念酒と女と槍 90大友柳太郎 (7).jpgをこれで計れと高定を斬りつけ、返す刃でわが胸に懐剣を突き立てる。知信、左近の土饅頭を前に夜を明かした高定。家康の本陣から三成の陣へ。高定の目にはもう敵も味方も生も死もなかった―。

 「飢餓海峡」('65年/東映)で知られる内田吐夢監督の1960年公開作で、原作は海音寺潮五郎の「酒と女と槍と」(『かぶき大名―歴史小説傑作集〈2〉』('03年/文春文庫)などに所収)であり、文庫でおおよそ35ページの短編です。文庫解説の磯貝勝太郎(1935-2016)によれば、海音寺潮五郎は『野史』(嘉永4年、1851)に略述された高定に関する記述に拠ってこの短編を書いており、高定が秀次切腹事件の後、殉死しようと京都の千本松原を死に場所に定めるも、死装束で大勢の群衆や友人等と別れの杯を重ねていくうちに泥酔して切腹を果たせぬまま昏倒、それを秀吉に咎められ、濫りに殉死を試みた者は三族を誅すとの命令が出されため、自ら京都西山に幽居したというのは史実のようです。その後、前田利長がその将才を惜しんで1万石で召し抱え、関ヶ原の戦いでは、侍大将として東軍の前田勢の先陣を務めて加賀国に侵攻、西軍の山口宗永・弘定親子が籠城する大聖寺城を攻めて戦死していますが、その闘いぶりが功を奏して敵城は陥落しています。

 海音寺潮五郎はこれに妥女との逸話の潤色を加えた以外はほぼ史実通りに書いており、最後は前田利長が高定の見事な先陣ぶりと武士らしい最期を称え、自分の眼に狂いは無く、「臆病者に一万石くれるなぞ阿呆の骨頂」と言っていた者は「高定の死体にわびを言えい!」と涙声で怒鳴るところで終わっています。先の磯貝勝太郎によれば、前田家の連中は高定を手助けせず、わざと見殺しにしたようですが、それでも高定は前田利長に忠誠を尽くしたことになります。

 ところが映画では、ラストで大友柳太朗が演じる高定は、まず家康の本陣を襲って家康の心胆を寒からしめ、今度は馬首を翻して三成の陣に馳け登ってこれをこれを突き崩すという動きをみせています。主の前田利長は東軍・家康側についていますから、本来は家康を襲うというのはおかしいのですが、この辺りは、兄を家康に殺された憤りを表しているのでしょうか。

 これまでも高定は、切腹しようとしたら「もし切腹すれば親類・縁者を処罰する」との突然の上意があり、つい先刻まで切腹を迫っていた富田一族が一転して逆に「富田の家のためだ」とこれを制止するという事態のあまりの馬鹿馬鹿しさに高笑いする他はなかったのですが、秀吉が死んだら今度はまた一族が切腹を迫ってきて、もう武家社会の名誉だとか面子だとかにほとほと愛想が尽きたのかも。そうした武家社会に対する抵抗ならば、臆病者の汚名を晴らせないままでも、愛妻と庵暮らしをするのも抵抗の一形態だったようにも思いますが、やはり、戦場で能力を発揮する者は戦場に出たがるのでしょうか(利長が「男を捨てた者が槍を持っているのは妙だ」と指摘し、高定が鉈で槍を斬ろうとするが果たせないというのは原作と同じ)。でも一旦戦場に出たら、あくまで利長の臣下であって、そこを単なる自己顕示したり私憤を晴らしたりする場にしてしまってはマズイのでは。

酒と女と槍 30淡島千景.jpg 秀次の愛妾の中に家康の密偵として送り込まれた左近(淡島千景)の実の妹がいて、誰が密偵か分からない秀吉側は、秀次切腹後、冷酷な三成の進言により(山形勲かあ)妻妾38人全員を処刑しますが、同じく冷酷な家康の方も(小沢栄太郎かあ)そのことを特に何とも思わない―そうしたことに対する左近の怒りと悲しみというのも説明不足でしょうか。妥女と高定を張り合って、自ら降りて後見人的立場に引き下がっただけみたいな描かれ方をしています。

酒と女と槍 80大友柳太郎 (6).jpg このようにいろいろケチはつけたくなりますが、豪放磊落な高定を演じる大友柳太朗を楽しめ、ラストの(滅茶苦茶な)戦場シーンも、馬上で槍を振り回すその豪快さは見所と言えるでしょう。しかも、馬を急旋回させながらそれをやっているからすごいです。これだけでもDVD化する価値はあると思うけれど、現在['16年]のところまだされていません。

 因みに、事の発端となった関白秀次の切腹については、秀次に関する千人斬りなどの暴君論(所謂「殺生関白説」)や秀吉に対する「謀反説」は後から作られたものであり、秀次は秀吉の政治的戦略に翻弄された犠牲者であり、死後も秀吉の引き立て役として歴史上否定され続けてきたが、実は城下繁栄や学問・芸術振興における功績があり、思慮・分別と文化的素養を備えた人物だったという説が近年有力のようです(小和田哲男氏など)。今年['16年]の大河ドラマ「真田丸」では、2013年に国学院真田丸 秀次 .jpg真田丸 秀次 切腹.jpg関白秀次の切腹0_.jpg大の矢部健太郎准教授(当時)が発表した「秀吉は秀次を高野山へ追放しただけだったが、意図に反し秀次が自ら腹を切った」という新説を採用していました(新しいもの好きの三谷幸喜氏?)。
「真田丸」新納慎也(豊臣秀次)/第28話「受難」より/矢部健太郎『関白秀次の切腹』(2016)

東野英治郎(豊臣秀吉)        小沢栄太郎(徳川家康)
『酒と女と槍』。秀吉が東野英治郎.jpg 『酒と女と槍』家康が小沢栄太郎.jpg

酒と女と槍_0.jpg「酒と女と槍」●制作年:1960年●監督:内田吐夢●製作:大川博●脚本:井出雅人●撮影:鷲尾元也●音楽:小杉太一郎●原作:海音寺潮五郎「酒と女と槍と」●時間:99分●出演:大友柳太朗/淡島千景/花園ひろみ/黒川弥酒と女と槍003.jpg太郎/山形勲/東野英治郎/原健策/須賀不二夫/織田政雄/徳大寺伸/小沢栄太郎/片岡栄二郎/高松錦之助/松浦築枝/赤木春恵/水野浩/有馬宏治/十朱久雄/香川良介/楠本健二/浅野光男/舟橋圭子/近江雄二郎/大崎史郎/尾上華丈/石南方英二.jpg丸勝也/村居京之輔/南方英二(後のチャンバラトリオ)/泉春子/片岡千恵蔵●公開:1960/05●配給:東映(評価:★★★☆)

大友柳太朗(1912-1985/享年73、自死)

 
真田丸 title.jpg真田丸  dvd.jpg「真田丸」●演出:木村隆文/吉川邦夫/田中正/小林大児/土井祥平/渡辺哲也●制作:屋敷陽太郎/吉川邦夫●脚本:三谷幸喜●音楽:服部隆之●出演:堺雅人/大泉洋/草刈正雄/長澤まさみ/木村佳乃/平岳大/中原丈雄/藤井隆/迫田孝也/高木渉/高嶋政伸/遠藤憲一/榎木孝明/温水洋一/吉田鋼太郎/草笛光子/高畑淳子/内野聖陽/黒木華/藤本隆宏/斉藤由貴/寺島進/西村雅彦/段田安則/藤岡弘、/近藤正臣/小日向文世/鈴木京香/竹内結子/新納慎也/哀川翔●放映:2016/01~12(全50回)●放送局:NHK

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田舎村の駐在員日記。記録文学風でいい。映画化作品は、随分な"民事介入"が興味深かった。

多甚古村 新潮文庫 1950.jpg多甚古村・山椒魚.jpg 多甚古村 vhs.jpg 井伏鱒二.jpg 井伏鱒二(1898-1993)
多甚古村 (新潮文庫)』/『多甚古村・山椒魚 (小学館文庫―新撰クラシックス)』/「多甚古村」VHS 
多甚古村 昭和14年7月 河出書房 函.jpg 南国の海浜の村、多甚古村(たじんこむら)に新たに赴任してきた甲田巡査は平和を愛する好人物。その甲田巡査の日録の形で、飄々とした作者独特の文体でもって、多甚古村で起きた喧嘩、醜聞、泥棒、騒擾など、庶民の実生活が軽妙に描かれ、ジグザグした人間模様が生彩を放ちつつ展開される―。

『多甚古村』1939(昭和14年)7月(河出書房・函入り)

 「多甚古村」は作家・井伏鱒二(1898-1993/享年95)の代表作の一つで、日中戦争時下の1936~1937(昭和11~12)年頃の徳島市郊外の田舎村の風物や人情、世相が、駐在所の巡査の目を通して、ユーモア溢れる温かい筆致で描かれていて、あまり戦時下という印象は受けません。新潮文庫版の伊藤整による解説は、井伏鱒二がどういった作家であるかを解説してはいるものの、この作品がどのような経緯で書かれたかは一切解説していないのがやや不思議です。

 1939(昭和14)年2月から7月にかけて雑誌「文学界」等に発表され、7月に河出書房より刊行されたこの作品は(このことはさすがに伊藤整も書いている)、他資料によれば、昭和11~12年の間、徳島市沖洲(おきのす、徳島市国府町)の駐在所に勤務していた川野一という巡査が書き綴った日録が、井伏鱒二の元に何か月かに渡って送られてきて、それが厚さ二尺分くらいの膨大な量となり、それを井伏鱒二が改作したものであるとのことですが、刊行時にはそうした経緯までは明かされなかったのかもしれません。

多甚古村 vhs 2.jpg 翌1940(昭和15)年1月に今井正(1912-1991/享年79)監督による映画化作品「多甚古村」(東宝)が公開され、以降、井伏作品の映画化が「南風交響楽」(S.15)、「」(S.16)、「秀子の車掌さん」(S.16)、「本日休診」(S.27)、「集金旅行」(S.32)、「駅前旅館」(S.33)、「黒い雨」(H.1)と続くわけですが、その第1号がこの作品になります。

多甚古村21.jpg 映画では、前半部分では、新任の巡査、所謂「駐在さん」である主人公(清川荘司)がご近所から鮒を分けて貰った話や、同じくご近所さんが自炊を手伝ってくれた話など独身巡査の身辺生活の話と、村の老婆の住む家に押し込み強盗が入ったけれども何も盗らないで逃げたという話や、野良犬を退治してくれと村人が頼み込んできた話など、田舎村らしい事件と言えるかどうか分からないようなものも含めた事件話が、原作通りに取り上げられています。

多甚古村 01.jpg これらは何れも駐在所に持ち込まれた話であり、甲田巡査が現場に出向いて行く場面はありませんが、相次ぐ村人からの事件とも相談事ともつかない話の連続に甲田巡査は過労でダウンしてしまい、その看病や食事の世話をする村のお寺の和尚の役を滝沢修(1906-2000/享年93)が演じていて、老け役ではありますが、実年齢は当時33歳と若いです(原作でも淨海という和尚は出てくるが、巡査がダウンする話はない)。また、主人公の同僚の杉野巡査役で、滝沢修と戦後一緒に民衆芸術劇場(劇団民藝の前身)を設立することになる宇野重吉(1914-1988/享年73)も出ていますが、当時25歳とこれまた若いです(宇野重吉は10年後の成瀬巳喜男監督の「怒りの街」('50年/東宝)でもまだ学生役を演じている)。

多甚古村11.jpg このまま小事件をこまめに拾っていくのかと思ったら、映画の後半分は、原作の2つのエピソードに焦点を当て、後半の3分の2を、村出身の帝大の学生がカフェの女と相思相愛の仲になってしまったのを、学生の親に頼まれて巡査が2人を別れさせる話(原作における「恋愛・人事問題の件」)に、最後、後半の3分の1を村の2つの中学同士の集団決闘事件とその仲裁に巡査が関わる件(原作における「学生決闘の件」)に充てています。

 エピソードを絞ることで映画にメリハリが出ていますが、原作では、大掛かりな賭博を隣村の駐在と協力して検挙する "大捕物"的なエピソードなどもあるのに、今井正監督がなぜこうしたエピソードを選んだのかが不思議です(「恋愛・人事問題の件」の核心事件部分は原作で文庫7ページ分、「学生決闘の件」は3ページ分しかない)。とりわけ、映画において最もフィーチャーされている事件が「巡査が個人の恋愛問題に当事者の家族に頼まれて介入する」という、民事介入と言うか"恋路介入"とでも言うべきものになっているのが興味深いです。

「多甚古村」撮影風景 中央・今井正(当時28歳)
「多甚古村」撮影風景 中央・今井正(当時28歳).png カフェの女には刑務所に服役中のヤクザ者の元情夫がいるということが判明し、巡査は学生と女のそれぞれの所へ出向いて別れるよう説得しますが、原作では、巡査は一度学生に、「家庭争議というものは、或る段階に至るまでは一種の快楽に属する。いま、われわれは他人を介在する必要はない」という理論でやり込められていて(民事不介入という"法理論"よりハイレベルの"心理学的理論"?)、親子喧嘩の仲裁は自分に向かないと思ったのを(しかも相手はインテリ学生)、学生の家族に再度懇願されて説得に当たることになっています。

 映画では学生は(原作も結局そうなのだが)意外とあっさり巡査に説得されてしまい、巡査はカフェにも赴きます。原作では、女には元情夫が出て来てから(出所してから)ちゃんと別れ話をした方がいいという説得の仕方で、いざとなったらその時また警察も相談に乗ると言い、映画でも大体同じような流れですが、女に学生との恋愛を諦めてくれと言いつつも、彼女なりに幸せになるように巡査から彼女に対して言い含めていて、ほろっとさせられる一方で、結構キツイなあという印象も。

 今井正監督にとってもいい話に思えたのでしょうが、見方によってはちょっと酷な話であるともとれます。今日この映画を観ると、警察が私事(民事、恋路)に介入しているということが大きな注目点になるかと思われますが、当時としてもそうした観点から監督の関心事としてあったのか(それゆえ、このエピソードを取り上げたのか)、それとも、そうしたことは当時田舎などでは少なからずあって"民事不介入"という意識はそれほど作り手の側にも無かったのか、原作の舞台となった"当時"(昭和11~12年)と映画化された"当時"(昭和15年)であまり年代差がないため微妙なところです。

 原作の新潮文庫版は、「多甚古村」と併せて「多甚古村」の翌年(昭和15年)に短編集の一篇として発表された"続編"に当たる「多甚古村補遺」(後に「多甚古村」と合本化)を収めており、「多甚古村」の"正編"が当時どこの田舎村にもあったであろうと思われるような事件ばかりを扱っているのに対し、"続編"(補遺)の方では、村に外国人家族がやって来て村人と交流したりトラブルになったりするなど、やや特殊な事件や事情を扱っています。

 また、"正編"が「日録」風なのに対し、"続編"は「小説」風と言うか、伊藤整も文庫解説で「『多甚古村』もなかなか面白いが、私としては続編の方が好きである。続編は正編よりものびのびとして小説らしい展開を持っている」としています。ただ、伴俊彦氏の聞書によると、井伏鱒二本人は「終わりの方は大分ウソがまじっている」と述べたといい、"正編"と"続編"のトーンの違いから察するに、その「終わりの方」とは「多甚古村補遺」を指すものと思われます。個人的には、小説風にアレンジされた"続編"よりも、村人から鮒を貰った話も大捕物の話も同じように淡々としたトーンで綴られ、巡査の家計の状況なども出てきたりする"正編"の方が、記録文学的な味わいがあって良かったように思います(伊藤整とは逆の評価になるが)。

多甚古村 vhs2.jpg多甚古村 宇野重吉.jpg「多甚古村」●制作年:1940年●監督:今井正●脚本:八田尚之●撮影:三浦光雄●音楽:服部正●原作:井伏鱒二「多甚古村」●時間:63分●出演:清川莊司/竹久千惠子/月田一郎/宇野重吉/赤木蘭子/鶴丸睦彦/伊達信/小沢栄/深見泰三/原泉子/三島雅夫/藤間房子/月田一郎/滝沢修●公開:1940/01●配給:東宝映画(評価★★★)

宇野重吉 in「怒りの街」(1950)(35歳)

【1950年文庫化[新潮文庫]/1956年再文庫化[岩波文庫]/1957年再文庫化[角川文庫]/2000年再文庫化[小学館文庫新撰クラシックス(『多甚古村・山椒魚』)]】

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「幽玄美女」と「糟糠の妻」。ラストは主人公が真実を知ったところで終わった方が余韻が出た?

雨月物語.jpg雨月物語 ps.jpg 雨月物語 dvd.jpg 雨月物語2.jpg
「雨月物語」ポスター/「雨月物語 [DVD]」京マチ子/森雅之

雨月物語 田中絹代.jpg 戦国時代(天正11年)の琵琶湖周辺の地。陶器が良い儲けになることを知った貧農の源十郎(森雅之)は、妻・宮木(田中絹代)と子、更に実妹・阿浜(水戸光子)とその夫・藤兵衛(小沢栄)を連れて、焼き上がった陶器を長浜まで運ぼうとするが、海賊が出ることを知り、源十郎は自分の妻子だけ家に帰す。長浜に辿り着いた3人は、順調に陶器を売り捌いて大儲けするが、武士「雨月物語」 (1953 大映).jpgとなって立身出世する野心を捨て切れない藤兵衛は武具を買い求めに行き、藤兵衛の妻は夫を捜す間に狼藉者らに犯されてしまう。一方の源十郎は、臈たけた若狭(京マチ子)という元御姫様と出会い、陶器を届けに行った姫の邸で彼女と契りを交わしてしまった揚句、その邸で焼き物を作っては売りに行くという生活を始めてしまう。何年か後、藤兵衛は戦の武勲が認められ、出世した自分の姿を見せに村へ子分を引き連れ戻ろうとする途中、子分達を慰労しようと女郎部屋に立ち寄り、そこで零落し遊女となった妻と出会う。恨み事を言う妻に藤兵衛はひたすら謝るのみ。源十郎の方は、行商の途中で僧侶に死霊に憑かれていると言われて、姫の正体が亡霊であることを知り、やっとの思いで故郷の村に戻る。そこには妻・宮木が優しく待ち受けていたのだが―。

京マチ子 雨月物語.jpg 溝口健二の「雨月物語」('53年/大映)は、1953年のヴェネツィア映画祭サン・マルコ銀獅子賞をはじめ数々の賞に輝いた作品で、この年のヴェネツィア国際映画祭は金獅子賞が"該当無し"だったので、実質的には出品作中トップ評価だったことになります。

京マチ子 雨月物語.jpg 原作は、1776年に発表された上田秋成の「雨月物語」の中の「浅芽が宿」「蛇性の淫」で、2つの話を糾える縄の如くに仕上げた脚本は巧みであり(「蛇性の淫」は本来、中国の古典的説話「白蛇伝」や、能の「道成寺」の由来である"安珍・清姫伝説"と重なる)、更にモーパッサンの短篇「勲章」もモチーフとして織り込まれていたりして、相当に原作を翻案しているようですが、森鷗外の原作を膨らませ過ぎている感のある「山椒大夫」('54年/大映)ほど気にはならなかったです。「原作」と言われているものを実際に読んでいると、それにこだわってしまうのかも。但し、時代設定が近世初期なので(「山椒大夫」は中世)、セリフの言い回しが多少現代風であっても許せてしまうというのもあるかもしれません。

雨月物語 田中絹代2.jpg雨月物語1.jpg 原作自体が優れているわけですが、原作を分かり易く翻案したエンタテインメントとして充実していて、一方で、ジャン=リュック・ゴダールをして「涙が出てくる」と言わしめたほどの霧立ち込める湖に舟を漕ぎだす場面の美しさや、映画史に残るとされる京マチ子の彼岸の妖艶ぶりなど、随所で幽玄美を醸して古典的雰囲気を保持しているのは、宮川一夫のカメラワークによるところが大きいのでしょう(溝口監督からの注文は「絵巻物を撮るように」とのことだったそうだが、それに応えている)。

森雅之 雨月物語.bmp 京マチ子の現実離れした「幽玄美の妖女」と田中絹代や水戸光子の土臭い「糟糠の妻」(結局、男達の野望は叶わないため、最終的にはこの表現は的確でないのだが)の異質の両者のコントラストが良く、それを繋ぐ森雅之(作家・有島武郎の長男)の演技も活き活きしていていいのですが、ラストは、妻・宮木(この時だけ顔のライティングが「姫」と同じ)の真実を源十郎が知ったところで終わった方が、余韻が出たような気もします。

Ugetsu monogatari(1953).jpg雨月物語|.jpg ラストの宮木の母性的なナレーション(田中絹代)も心に滲みて悪くはないですが、その他にも藤兵衛夫婦の「テレビ時代劇のエピローグ」風のやり取りなどもあって、やや解説的と言うか、「幸せの青い鳥は...」的な人生訓風になった感じもします。でも、やはり傑作だと思います。

Ugetsu monogatari(1953)

 因みに、メキシコの作家カルロス・フエンテスが、この溝口の「雨月物語」に想を得て、「アウラ」という作品を書いていますが、これも傑作です。

京マチ子とソフィア・ローレンD.jpg 京マチ子とソフィア・ローレン.jpg 京マチ子とソフィア・ローレン(1955年・ヴェネチア)

小沢栄(栄太郎)(藤兵衛)/水戸光子(藤兵衛の妻・阿浜) 森雅之(源十郎)/京マチ子(若狭)
雨月 小沢栄太郎、水戸光子.jpg 雨月 森雅之、京マチ子.jpg
田中絹代(源十郎の妻・宮木)
雨月物語 田中絹代8.jpg「雨月物語」●制作年:1953年●製作:永田雅一●監督:溝口健二●脚本:川口松太郎/依田義賢●撮影:宮川雨月物語 dvd.gif一夫●音楽:早坂文雄●原作:上田秋生「雨月物語」●時間:96分●出演:森雅之/田中絹代京マチ子/水戸光子/小沢栄(栄太郎)/青山京マチ子.jpg杉作/羅門光三郎/香川良介/上田吉二郎/毛利菊枝/南部彰三/光岡龍三郎/天野一郎/尾上栄五郎/伊達三郎/小柳圭子/大美輝子/金剛麗子/横山文彦/玉置一恵/沢村市三郎●公開:1953/03●配給:大映(評価:★★★★☆)

京マチ子(1959年)[共同通信]

《読書MEMO》
●マーティン・スコセッシ監督の選んだオールタイムベスト10["Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)]
 ●2001年宇宙の旅(スタンリー・キューブリック)
 ●8 1/2(フェデリコ・フェリーニ)
 ●灰とダイヤモンド(アンジェイ・ワイダ)
 ●市民ケーン(オーソン・ウェルズ)
 ●山猫(ルキノ・ヴィスコンティ)
 ●戦火のかなた(ロベルト・ロッセリーニ)
 ●赤い靴(マイケル・パウエル & エメリック・プレスバーガー)
 ●河(ジャン・ルノワール)
 ●シシリーの黒い霧(フランチェスコ・ロージ)
 ●捜索者(ジョン・フォード)
 ●雨月物語(溝口健二)
 ●めまい(アルフレッド・ヒッチコック)

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予定調和だが、それなりに楽しめた。映画の方は「スーパーの女」などと比べるとやはり...。
県庁の星2.jpg  県庁の星 桂.jpg 県庁の星 dvd.jpg県庁の星 織田 柴崎2.jpg  スーパーの女.jpg
県庁の星 (2) (ビッグコミックス)』 (全4巻) 桂 望実『県庁の星』「県庁の星 スタンダード・エディション [DVD]」柴咲コウ・織田裕二 「伊丹十三DVDコレクション スーパーの女

 Y県のエリート県庁職員である野村聡は、民間との人事交流プロジェクトに選ばれ、スーパー富士見堂で1年間の研修を受けることになるが、最初は役員根性・県庁マインド丸出しだった彼が、全く肌違いの民間の仕事を通して変質し、真の"スーパー改革"を実現するに至る―。

 公務員って、民間で言う「出向」のことを「研修」と言ってるみたいですね(「研修(出向)」と言っても、労務提供はしているわけだが、民間の「出向」と異なり、労災の請け元は官公庁のまま)。

 ということで、実質的なマンガの舞台は県庁内では無く、前半部分(1巻・2巻)はスーパーマーケット。後半部分(3巻・4巻)は、スーパーの経営を建て直した彼が、第3セクター赤字テーマパークを"潰す"ために送り込まれますが、前半からの流れで、結果はともかく、彼がどう立ち回るかは大体予想がついてしまいます。

 官庁の上層部や主人公の同期の役人の描き方はパターン化していて、事の展開もかなりご都合主義ですが、それでも、主人公とその教育係であるシングルマザーのパート女性とのやりとりも含め、結構楽しく読めました。"ギャグ的"に面白いというか、テーマパークに赴任した初日、「名刺を猿に配って終了」には思わず噴きました。

県庁の星 ポスター.jpg県庁の星1.jpg '05(平成17)年から'07(平成19)年にかけて「ビッグコミックススペリオール」に連載されたコミックで(桂望実の原作を杉浦真夕が脚色)、連載途中の'06年に織田裕二、柴咲コウ主演で映画化されていますが(実際に制作されたのは'05年。「白い巨塔」などのTVドラマを手掛けた西谷弘の映画初監督作品)、織田裕二って本気で演技してそれが丁度マンガ的になるようなそんな印象があり、こうした作品にはピッタリという感じでした。 柴咲コウ/織田裕二

スーパーの女.jpgスーパーの女2.jpg 但し、スーパーを舞台にした作品では、伊丹十三(1933-1997)監督、宮本信子主演の「スーパーの女」('96年/東宝)があるだけに、それと比べるとインパクトは劣るし、「スーパーの女」が食品偽装問題など今日的なテーマを10年以上も前から先駆的に扱っていたのに対し、「県庁の星」は映画もマンガもその部分での突っ込み度は浅く、特に映画は単なるラブ・コメになってしまったきらいも無きにしも非ずという感じ。

マルサの女.jpgマルサの女 1987.jpg 「お葬式」('84年/ATG)で映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督でしたが、個人的には続く第2作タンポポ」('85年/東宝)と第3作「マルサの女」('87年/東宝)が面白かったです(「お葬式」と「マルサの女」はそれぞれ第58回と第61回のキネマ旬報ベスト・テン第1位に選ばれている)。「マルサの女」は、山崎努がラブホテル経営者"権藤"を演じていますが、彼が新人として出演した「天国と地獄」('63年/黒澤プロ・東宝)で三船敏郎が演じていた会社社長の苗字も"権藤"でした。巧妙な手口で脱税を行う経営者らとそれを見破る捜査官たちとの虚々実々の駆け引きをテンポよく描いており、ラストに抜けてのスリリングな盛り上げ方はなかなかのものでした。

マルサの女2 三國.jpgマルサの女 .jpg それまであまり世に知られていなかった国税査察部の捜査の様子をリアルに描いたということで社会的反響も大きく、翌年には「マルサの女2」('88年/東宝)も作られましたが、山崎努に続いてこちらも、宗教法人を隠れ蓑とし巨額の脱税を企てようとする"鬼沢"に大物俳優・三國連太郎マルサの女2 dvd.jpgを配し、これもまた脇役陣を含め演技達者が揃っていた感じでした。

 伊丹十三監督は「前作はマルサの入門編」であり、本当に描きたかったのは今作であるという伊丹十三.jpg趣旨のことを後に述べていますが、確かに、鬼沢さえも黒幕に操られている駒の1つに過ぎなかったという展開は重いけれども、ラストは前作の方がスッキリしていて個人的には「1」の方がカタルシス効果が高かったかなあ。監督自身は、高い娯楽性と巨悪の存在を一般に知らしめることとの両方を目指したのでしょう。
伊丹十三(1933-1997/享年64(自死))

お葬式 映画 dvd.jpg 確かに「お葬式」で51歳で監督デビューし、高い評価を得たのは鮮烈でしたが、作品の質としてはお葬式 映画 00.jpg3作目・4作目に当たる「マルサの女」「マルサの女2」の方が密度が濃いように思いました。それが、この「マルサの女1・2」以降は何となく作品が小粒になっていたような気がしたのが、この「スーパーの女」を観て、改めて緻密かつパワフルな伊丹作品の魅力を堪能できた―と思ったら、この「スーパーの女」を撮った翌年に伊丹十三は自殺してしまった。残念。
中央:菅井きん(日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞)(1926-2018.8.10/享年92
伊丹十三DVDコレクション お葬式

企業家サラリーマン.gif 「スーパーの女」の原作は、『小説スーパーマーケット』(『小説流通産業』('81年))で、作者の「安土敏」こと荒井伸也氏は元サミット社長であり、この人の『企業家サラリーマン』('86年/講談社、'89年/講談社文庫)は、海外飲食店グループを指揮する男性と、新しい時代の経営者を目指す女性たちの生き方を描いた作品で、作者が現役役員の時点でこお小説を書いているということもあってシズル感があり面白かったですが、こちらもテレビドラマ化されているらしい。どこかで再放送しないものかなあ。

企業家サラリーマン (講談社文庫)

酒井和歌子(K県知事・小倉早百合)/石坂浩二(K県議会議長・古賀等)
「県庁の星」酒井和歌子石坂浩二2.jpg県庁の星9.jpg「県庁の星」●制作年:2006年●監督:西谷弘●製作:島谷能成/「県庁の星」井川2.jpg亀山千広/永田芳男/安永義郎/細野義朗/亀井修朗●脚本:佐藤信介●撮影:山本英夫●音楽:松谷卓●原作:桂望実「県庁の星」●時間:131分●出演:織田裕二/柴咲コウ/佐々木蔵之介/和田聰宏/紺野まひる/奥貫薫/井川比佐志/益岡徹/矢島健一/山口紗弥加/ベンガル/酒井和歌子/石坂浩二●公開:2006/02●配給:東宝(評価:★★★)

井川比佐志(スーパー「満天堂」店長・清水寛治)
柴咲コウ in「県庁の星」('06年/東宝)/「おんな城主 直虎」('17年/NHK)

県庁の星 柴咲コウ.jpg おんな城主 直虎 .jpg

中央:津川雅彦(1940-2018.8.4/享年78
スーパーの女ド.jpgスーパーの女 9.jpg「スーパーの女」●制作年:1996年●監督・脚本:伊丹十三●製作:伊丹プロダクション●撮影:前田米造/浜田毅/柳島克巳/高瀬比呂志●音楽:本多俊之●原作:安土敏「小説スーパーマーケット」●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司/小堺一機/伊東四朗/金田龍之介/矢野宣/六平直政/高橋長英/あき竹城/松本明子/山田純世/柳沢慎吾/金萬福/伊集院光●公開:1996/06●配給:東宝(評価:★★★★)

お葬式 映画01.jpgお葬式 映画 02.jpg「お葬式」●制作年:1984年●監督・脚本:伊丹十三●製作:岡田裕/玉置泰●撮お葬式 大滝435.jpg影:前田米造●音楽:湯浅譲二●時間:124分●出演:山笠智衆 お葬式.jpgお葬式 笠智衆.jpg崎努/宮本信子/菅井きん/財津一郎/大滝秀治/江戸家猫八/奥村公廷/藤原釜足/高瀬春奈/友里千賀子/尾藤イサオ/岸部一徳/笠智衆/津川雅彦/佐野浅/小林薫/長江英和/井上陽水●公開:1984/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化 (85-11-04)(評価:★★★☆)●併映「逆噴射家族」(石井聰互)
[左]笠智衆(僧侶)/[下]高瀬春奈(侘助の愛人・良子。侘助もだだをこね、雑木林で性交する)/小林薫(火葬場職員・焼いている遺体が生き返る夢を見ることがあると吐露する)
お葬式 高瀬春奈.jpgお葬式 高瀬春奈2.jpg 「お葬式」小林薫2.jpg

菅井きん in「生きる」('52年)/「ゴジラ」('54年)/「幕末太陽傳」('57年)/「天国と地獄」('63年)/「お葬式」('84年)
菅井きん 生きる .jpg 菅井きん ゴジラ.jpg 菅井きん 幕末太陽傳 南田洋子  左幸子.jpg 菅井きん 天国と地獄.jpg お葬式8e-s.jpg 菅井きん.jpg
Marusa no onna (1987)
Marusa no onna (1987) .jpgマルサの女  .jpgマルサの女AL_.jpg「マルサの女」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/山崎努津川雅彦/大地康雄/桜金造/志水マルサの女347.jpgマルサの女 岡田ド.jpgマルサの女 津川.jpg里子/松居一代/室田日出男/ギリヤーク尼ヶ崎/柳谷寛/杉山とく子/佐藤B作/絵沢萠小沢栄太郎 マルサの女.jpg子/山下大介/橋爪功/伊東四朗/小沢栄太郎/大滝秀治/芦田伸介/小林桂樹/岡田茉莉子/渡辺まちこ/山下容里枝/小坂一也/打田親五/まる秀也/ベンガル/竹内正太郎/清久光彦/汐路章/上田耕一●公開:1987/02●配給:東宝
右端:小沢栄太郎
ジョイシネマ3 .jpg新宿ジョイシネマ3.jpg●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★★)●併映「マルサの女2」(伊丹十三)

新宿シネパトス (1956年3月「新宿名画座」オープン→1987年5月「新宿シネパトス」→1995年7月「新宿ジョイシネマ5」→1997年11月「新宿ジョイシネマ3」)

2009(平成21)年5月31日閉館 

「マルサの女」ポスター
マルサの女 ポスター.jpg

「マルサの女2」三國連太郎/上田耕一
マルサの女2 三國連太郎_1.jpgマルサの女2 .jpg佐渡原:丹波哲郎.jpg「マルサの女2」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅マルサの女2 笠.jpg彦/三國連太郎丹波哲郎/大地康雄/桜金造/加藤治子/益岡マルサの女2」.jpg徹他/マッハ文朱/加藤善博/浅利香津代/村井のりこ/岡本麗/矢野宣/笠智衆/上田耕一/中村竹弥/小松方正●公開:1988/01●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★☆)●併映「マルサの女」(伊丹十三)

《読書MEMO》
映画に学ぶ経営管理論2.jpg●松山 一紀『映画に学ぶ経営管理論<第2版>』['17年/中央経済社]

目次
第1章 「ノーマ・レイ」と「スーパーの女」に学ぶ経営管理の原則
第2章 「モダン・タイムス」と「陽はまた昇る」に学ぶモチベーション論
第3章 「踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」に学ぶリーダーシップ論
第4章 「生きる」に学ぶ経営組織論
第5章 「メッセンジャー」に学ぶ経営戦略論
第6章 「集団左遷」に学ぶフォロワーシップ論
第7章 「ウォール街」と「金融腐蝕列島"呪縛"」に学ぶ企業統治・倫理論

「●ま 松本 清張」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3257】 松本 清張 『波の塔
「●TVドラマ②70年代・80年代制作ドラマ」の インデックッスへ 「●森崎 東 監督作品」の インデックッスへ 「●さ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●市川 昆 監督作品」の インデックッスへ 「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76))「●新藤 兼人 脚本作品」の インデックッスへ(「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」)「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ(「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」)「●橋爪 功 出演作品」の インデックッスへ(「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」)「●小沢 栄太郎 出演作品」の インデックッスへ(「悪魔が来りて笛を吹く」「犬神家の一族」('76))「●梅宮 辰夫 出演作品」の インデックッスへ(「悪魔が来りて笛を吹く」)「●加藤 嘉 出演作品」の インデックッスへ(「悪魔が来りて笛を吹く」)「●夏八木 勲 出演作品」の インデックッスへ(「悪魔が来りて笛を吹く」)「●三國 連太郎 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76))「●高峰 三枝子 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76))「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76/'06))「●加藤 武 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76/'06))「●岸田 今日子 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('76))「●仲代 達矢 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('06))「●富司 純子(藤 純子) 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('06))「●松坂 慶子 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('06))「●岸部 一徳 出演作品」の インデックッスへ(「犬神家の一族」('06))「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●や‐わ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●三船 敏郎 出演作品」の インデックッスへ(「将軍 SHŌGUN」)「●フランキー 堺 出演作品」の インデックッスへ(「将軍 SHŌGUN」)「●宮口 精二 出演作品」の インデックッスへ(将軍 SHŌGUN)「●TV-M (その他)」の インデックッスへ「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(池袋東映)

平沢無罪説を先駆的に展開。GHQの関与については"隔靴掻痒の感"は否めないが。
小説帝銀事件.jpg 松本 清張 『小説 帝銀事件』.jpg 小説 帝銀事件.jpg  悪魔が来りて笛を吹く 1979 ちらし.jpg 犬神家の一族 角川映画 THE BEST [DVD].jpg
小説帝銀事件 (1959年)』/角川文庫/『小説帝銀事件 (角川文庫)』/「悪魔が来りて笛を吹く【DVD】」「犬神家の一族 角川映画 THE BEST [DVD]
昭和23年9月28日毎日新聞
帝銀事件02.jpg帝銀事件.jpg '59(昭和34)年に雑誌「文藝春秋」に発表された松本清張の「昭和史発掘シリーズ」に先立つ昭和の事件モノで、「昭和史発掘シリーズ」の中でも'48(昭和23)年という占領時代に起きたこの「帝銀事件」は取り上げられていますが、「小説」と頭に付くのは、捜査に疑念を抱いた新聞社の論説委員の視点からこれを描いているのと、事件の部分がセミドキュメンタリータッチで再現されているためでしょうか。

 12人が死亡した凶悪事件と平沢貞通画伯が犯人に祭り上げられていく過程もさることながら、個人的には本書によって初めて、関東軍細菌戦部隊(731部隊)の生き残り関係者の事件への関与が疑われること、彼らはGHQの保護下にあったことなどを知り、そっちの方の衝撃も大きかったです。

 731部隊がいかに残虐の限りを尽くしたか、また、その戦犯行為の当事者らが人体実験を含む研究データを渡す代わりに戦争犯罪に問われないと言う約束をGHQに取り付け免責されたという事実については、森村誠一氏の『悪魔の飽食―「関東軍細菌戦部隊」恐怖の全貌!長編ドキュメント』('81年/カッパノベルズ)があるし(この本は後に記述や写真の誤謬を多く指摘された)、太田昌克氏の『731 免責の系譜―細菌戦部隊と秘蔵のファイル』('99年/日本評論社)青木富貴子氏の『731-石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』('05年/新潮社)では "免責問題"をより深く追及していますが、「小説帝銀事件」の発表は『悪魔の飽食』と比べても、それより20年以上早いことになります。

 いま読み直してみると、最初に挙がった何人かの容疑者の中に平沢の名前があり、一旦それが消えて軍関係者へ嫌疑が向けられるも、そちら方面の捜査が打ち切られて再び平沢の名が浮上したという経緯や、面通しの結果誰も平沢を犯人だとする人がいなかったこと、彼の病的な虚言癖などについては細かく書かれている一方で、GHQの関与については"隔靴掻痒の感"は否めず、このことは、平沢は無実の罪に問われたということが公然の事実のようになっている今と違い(歴代の法務大臣が誰も死刑執行のハンコを押さなかったわけだし)、「事件は解決済み」とする風潮がまだ根強かった当時としては、米軍から情報を得られない限りは、平沢を犯人とする根拠の脆弱さに的を絞って、そこから平沢無実説を導き出すことを主眼とするしかなかったためと思われます。

帝銀事件0.JPG帝銀事件01.jpg平沢貞通.bmp 平沢が疑われることになった原因の1つに、所持金の出処の曖昧さの問題がありましたが、「春画を描いたと自分の口から白状すれば、彼の画家的な生命は消滅するのである」とし、「肉体的な死刑よりも、芸術的生命の処刑を重しとした」と、その精神的内面まで踏み込んで"推理"している点も作家らしく、またこれも、タイトルに「小説」と付くことの所以の1つであると思います。    

事件発生直後の現場の様子/犯人の行動を再現させられる平沢(ともにWikipediaより) 平沢貞通(1892-1987/享年95)

仲谷昇(平沢貞通)/田中邦衛(平沢を犯人と決めつけてしまった古志田警部補)
帝銀事件 ドラマ 1.jpg帝銀事件 ドラマ 3.jpg帝銀事件 ドラマ 2.jpg 松本清張のこの作品は1980(昭和55)年に1度だけドラマ化されていて、ドラママタイトルは「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」、監督は森崎東、脚本は新藤兼人、主演は仲谷昇、共演は田中邦衛・橋本功などです。テレビ帝銀事件・大量殺人獄中32年の死刑囚.jpg朝日の「土曜ワイド劇場」枠で放映されました。平沢(仲谷昇)を犯人と決めつけてしまった古志田警部補(田中邦衛)に焦点を当て、平沢に対する拷問に近い取り調べなどが描かれており、第17回ギャラクシー賞(月間賞)を受賞するなどしています。結局、「GHQのことなど何も知らなかった」と後に嘯く警部補も、利用された人間だったということでしょう。誰による犯行かについては、冒頭に犯人が犯「帝銀事件:タイトル2.jpg行に及ぶ場面がかなりの間尺であり、その間常に犯人の背中や手元・足元だけを映し顔を殆ど映していませんが、犯人が犯行後に現場付近で待機していたと思われる軍用ジープで現場を立ち去る場面などがあり、最初からGHQ関係者の犯行であることを強く匂わせる作りとなっています。

「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」●制作年:1980年●監督:森崎東(監修:野村芳太郎)●脚本:新藤兼人●撮影:小杉正雄●音楽:佐藤勝●原作:松本清張「小説帝銀事件」「日本の黒い霧」●出演:仲谷昇/田中邦衛/橋本功/中谷一郎/小松方正/戸浦六宏/木村理恵/大塚道子/浜田寅彦/稲葉義男/暮林修/ジェリー・ククルスキー●放送局:テレビ朝日●放送日:1980/01/26(評価:★★★★)
 
 
 因みに、横溝正史の『悪魔が来りて笛を吹く』(雑誌「宝石」1951年11月号 - 1953年11月号に発表)は、この帝銀事件をモチーフに書かれたと言われています(作中では「天銀堂事件」となっており、ストーリーは事件の後日譚となっている)。悪魔が来りて笛を吹く 1979.jpg原作は読んでいませんが、西田敏行が金田一耕助を演じた映画「悪魔が来りて笛を吹く」('79年/東映)を観ました(角川春樹製作、監督は「太陽にほえろ」「俺たちの旅」などのTVシリーズを手掛けた斎藤光正)。青酸カリも事件に絡んで出てきますが、メインのモチーフは近親相姦と言えるでしょうか。謎解きの部分で複雑な家系図が出てきますが、映画ではそれが分かりにくいのが難でした(「読んでから観る」タイプの映画だったかも)。歴悪魔が来りて笛を吹く 1979.jpg代の横溝正史原作の映画化作品の中ではまあまあの評価のようですが、そのわりには西田敏行が金田一耕助を演じたのはこの1回きりでした。まあ、映画で金田一耕助を1度演じただけという俳優は、西田敏行以前には池部良、高倉健、中尾彬、渥美清などがいて、西田敏行以降も古谷一行、鹿賀丈史、豊川悦司などがいるわけですが...(石坂浩二と並んで金田一耕助役のイメージが強い古谷一行は映画では1度きりだが、MBSテレビの「横溝正史シリーズ」('77-'78年)、TBSの「名探偵・金田一耕助シリーズ」('83-'05年)でそれぞれ金田一耕助役を演じている)。

犬神家の一族 (1976年)1.jpg犬神家の一族 (1976年)2.jpg 金田一耕助ものの映画化作品でやはりまず最初に思い浮かぶのは、東宝の市川崑監督・石坂浩二主演の金田一耕助シリーズ(「犬神家の一族」('76年)、「悪魔の手毬唄」('77年)、「獄門島」('77年)、「女王蜂」('78年)、「病院坂の首縊りの家」('79年))ではないでしょうか。特に、角川映画第1作として作られた「犬神家の一族」('76年)(配給会社は東宝、共演は島田陽子坂口良子など)は、かつて片岡千恵蔵の金田一耕助シリーズ(「獄門島」('49年)など)で千恵蔵がスーツ姿だったりしたのが、金田一耕助を初めて原作通りの着物姿で登場させた映画であり(結局、西田敏行版「悪魔が来りて笛を吹く」などもその路線をなぞっていることになる)、原作の複雑な人物関係も分かりやすく表されていて、細部では原作と改変されている部分も少なからずあるものの、エンタテインメントとしてよく出来ていたように思います。30年後の2006年に同じ監督・主演コンビでリメイクされ(原作からの改変部分まで旧作を踏襲している)、石坂浩二(金田一)のほかに、大滝秀治(神官)、加藤武(署長)が旧作と同じ役で出演していますが、00年代としては犬神家の一族」(2006ード.jpg犬神家の一族 (2006年 松嶋.jpg犬神家の一族 (2006年 富司.jpg豪華キャストであるものの、それでも旧作と比べると役者の豪華さ・熟達度で及ばないように思いました。犬神家の三姉妹は旧作の高峰三枝子、三條美紀、草笛光子に対して、新作が富司純子、松坂慶子、 萬田久子でそれなりに錚々たるものでしたが、何となく違うなあと思いました。富司純子も大女優ですが、高峰三枝子が長年役柄を通して培ってきた"毒気"のようなものが無いように思われました。ヒロイン役の島田陽子と松嶋菜々子を比べても、松嶋菜々子って何か運命的なものを負っている将軍 SHŌGUN0.jpgという印象が島田陽子に比べ弱いなあと(ただ、島田陽子も米テレビドラマ「将軍 SHŌGUN」('80年)に出てダメになった。ジェームズ・クラベルのベストセラー小説を原作に、アメリカで12時間ドラマとしてTV放映したものを劇場用にまとめたものを観たが、日本人の描き方がかなりヘンだ。どうしてこんな作品に三船敏郎はじめ日本の俳優は臆面もなく出るのか。ただし、島田陽子はこの作品で日本人女性初のゴールデングローブ賞を受賞している)。
島田陽子 in「将軍 SHŌGUN」

 「小説 帝銀事件」から始まって、映画「悪魔が来りて笛を吹く」を経て、映画「犬神家の一族」の新旧比較になってしまいました。

「犬神家の一族」(1976)
「犬神家の一族」1976.jpg
「犬神家の一族」(1999)
「犬神家の一族」1999.jpg
「犬神家の一族」新旧キャスト.gif
 
 
 

悪魔が来りて笛を吹く 1979 ポスター.jpg悪魔が来りて笛を吹く 1979 vhs.jpg「悪魔が来りて笛を吹く」●制作年:1979年●監督:斎藤光正●製作:角川春樹●脚本:野上龍雄 ●撮影:伊佐山巌●音楽:山本邦山/今井裕●原作:横溝正史●時間:136分●出演:西田敏行/夏木勲(夏八木勲)/仲谷昇/鰐淵晴子/斎藤とも子/村松英子/石浜朗/小沢栄太郎/池波志乃/原知佐子/山本麟一/宮内淳/二木てるみ0「悪魔が来りて笛を吹く」.jpg/梅宮辰夫/浜木綿子/北林早苗/中村玉緒/加藤嘉/京悪魔が来りて笛を吹く jidojpeg.jpeg慈道...加藤嘉.jpg唄子/村田知栄子/藤巻潤/三谷昇/熱田一久/住吉道博/村田知栄子/藤巻潤/三谷昇/金子信雄/中村雅俊/秋野太作/横溝正史/角川春樹●公開:1979/01●配給:東映(評価:★★☆)

西田敏行(32歳)/斉藤とも子(18歳)/鰐淵晴子(34歳)/原知佐子(43歳)/小沢栄太郎(70歳)
悪魔が来りて笛を吹く...西田敏行(32).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...斉藤とも子(18).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...鰐淵晴子(34).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...原知佐子(43).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...小沢栄太郎.jpg
「「悪魔が来りて笛を吹く」夏木.2jpg.jpg夏木勲(夏八木勲)(39歳)等々力警部

梅宮辰夫(40歳)「俺はな、金田一耕助というのは明智小五郎より名探偵だと思ってるんだ」(風間俊六)
「悪魔が来りて笛を吹く」梅宮1.jpg

池袋東映-2.jpg●最初に観た場所:池袋東映 (79-01-13)


池袋東映 池袋東口2分60階通り(地下に池袋名画座) 1985年頃閉館 

0池袋東映.jpg 1982年8月 舛田利雄監督・丹波哲郎主演「大日本帝国」公開時
         
犬神家の一族 (1976年)0.jpg「犬神家の一族」●制作年:1976年●監督:市川崑●製作:市川犬神家の一族 poster.jpg坂浩犬神家の一族 女優.jpg喜一●脚本:市川崑/日高真也/長田紀生●撮影:長谷川清●音楽:大野雄二●原作:横溝正史●時間:146分●出演:石坂浩二/島田陽子/あおい輝彦/川口恒/川口晶/坂口良子/地井武男/三条美紀/原泉/草笛光犬神家の一族 (1976年)00.jpg子/大滝秀治/岸田今日子/加藤武/小林昭二/三谷昇/三木のり平/高峰三枝子/小沢栄太郎/三國連太郎●公開:1976/11●配給:東宝(評価:★★★☆)

犬神家の一族(2006) [DVD]」「犬神家の一族」(2006年)市川崑監督とキャストら(2006.10 東京国際映画祭)
犬神家の一族 (2006年 DVD.jpg犬神家の一族 2006.jpg「犬神家の一族」●制作年:2006年●監督:市川崑●製作:市川喜一●脚本:市川崑/日高真也/長田紀生●撮影:五十畑幸勇●音楽:谷川賢作/大野雄二(テーマ曲)●原作:横溝正史●時間:134分●出演:石坂浩二/松嶋菜々子/尾上菊之助/富司純子/松坂慶子/萬田久子/池内万作/奥菜恵/岸部一徳/深田恭子/三條美紀/草笛光子/大滝秀治/加藤武/中村敦夫/仲代達矢●公開:200「犬神家の一族」matuzaka.jpg犬神家の一族 (2006年  大滝秀治.jpg犬神家の一族 (2006年 仲代.jpg6/12●配給:東宝(評価:★★★)
松坂慶子(次女・犬神竹子)/大滝秀治(神官・大山泰輔)/仲代達矢(犬神佐兵衛)

 
 
 
 

将軍 SHŌGUN p.jpg将軍 SHŌGUN1.jpg将軍 SHŌGUN2.jpg「将軍 SHŌGUN」●原題:SHŌGUN●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督:ジェリー・ロンドン●製作プロデューサーベル/ケリー・フェルザーン●脚本:エリック・バーコビッチ●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:モーリス・ジャール●原作:ジェームズ・クラベル●時間:121分(TV版全5話・547分)●出演:リチャード・チェンバレ将軍 shogun 島田.jpg/ベン・チャップマン/ジェームズ・クラ将軍 SHŌGUN31.jpgン/三船敏郎/島田陽子/フランキー堺/目黒祐樹/金子信雄/ダミアン・トーマス/ジョン・リス=デイビス/安部徹/高松英郎/宮口精二/夏木陽介/岡田真澄/宅麻伸/山本麟一/(ナレーション)オーソン・ウェルズ●日本公開:1980/11●配給:東宝●最初に観た場所:飯田橋・佳作座 (81-01-24)(評価:★☆)●併映:「二百三高地」(舛田利雄)
将軍 SHŌGUN vhs.jpg


【1961年文庫化・2009年新装版[角川文庫]/1980年再文庫化[講談社文庫]】

 
《読書MEMO》
神保町シアター「没後40年 横溝正史 銀幕の金田一耕助」特集(2021年6月5日~25日)ライアンアップ
銀幕の金田一耕助.jpg1.『三つ首塔』 昭和31年 白黒 監督:小林恒夫、小沢茂弘 出演:片岡千恵蔵、高千穂ひづる、三条雅也、中原ひとみ、南原伸二
2.『悪魔の手毬唄』 昭和36年 白黒 監督:渡辺邦男 出演:高倉健、北原しげみ、小野透、永田靖、大村文武
3.『本陣殺人事件』 昭和50年 カラー 監督:高林陽一 出演:中尾彬、田村高広、村松英子、東野孝彦、常田富士男
4.『犬神家の一族』 昭和51年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、高峰三枝子、三条美紀、草笛光子、あおい輝彦
5.『悪魔の手毬唄』 昭和52年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、岸恵子、若山富三郎、加藤武、草笛光子
6.『獄門島』 昭和52年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、司葉子、大原麗子、草笛光子、太地喜和子
7.『八つ墓村』 昭和52年 カラー 監督:野村芳太郎 出演:渥美清、萩原健一、山崎努、小川真由美、山本陽子
8.『女王蜂』 昭和53年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、岸恵子、司葉子、高峰三枝子、仲代達矢
9.『悪魔が来りて笛を吹く』 昭和54年 カラー 監督:斎藤光正 出演:西田敏行、夏八木勲、鰐淵晴子、斉藤とも子、仲谷昇

「●や 山崎 豊子」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1340】 山崎 豊子 『沈まぬ太陽アフリカ篇
「●「菊池寛賞」受賞者作」の インデックッスへ(山崎 豊子)「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●「毎日映画コンクール 日本映画大賞」受賞作」の インデックッスへ 「●佐藤 勝 音楽作品」の インデックッスへ「●丹波 哲郎 出演作品」の インデックッスへ「●加藤 嘉 出演作品」の インデックッスへ「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ 「●小沢 栄太郎 出演作品」の インデックッスへ「●山形 勲 出演作品」の インデックッスへ「●仲代 達矢 出演作品」の インデックッスへ「●北大路 欣也 出演作品」の インデックッスへ「●井川 比佐志 出演作品」の インデックッスへ「●藤村 志保 出演作品」の インデックッスへ「●秋吉 久美子 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ

読後の感動はあった。モデルはモデル、小説は小説として読むべきか。

不毛地帯 1.jpg 不毛地帯 2.jpg 不毛地帯 3.jpg 不毛地帯 4.jpg 不毛地帯12f9.jpg
『不毛地帯』 新潮文庫[旧版](全4巻)   映画「不毛地帯」('76年/東宝) 仲代達矢・丹波哲郎

不毛地帯 映画.jpg 『白い巨塔』('65年/新潮社)、『華麗なる一族』(73年/新潮社)が、それぞれ映画も含め力作だったのに対し、この『不毛地帯』の仲代達矢主演の"映画"の方は、配役は豪華だけれど個人的には今ひとつでした(テレビで観たため、平幹二朗主演のテレビ版と記憶がごっちゃになっている)。そもそも、181分という長尺でありながらも、原作の4分の1程度しか扱っておらず、原作が連載中であった事もありますが次期戦闘機決定をめぐる攻防部分だけを映像化したと言ってもよく、結果として壱岐正という主人公の生き方に深みが出てこない...。

不毛地帯ー.png「仲代達矢 不毛地帯.jpg ただし"原作"だけでみると、自分が最初に読んだ当時の読後の感動はこれが一番で、もともと映画に納まり切らない部分が多すぎたか? それと、こうした複雑な話が映画化された時によくありがちな傾向で、愛憎劇中心になってしまった感じもしました。

 この原作の方は、以前は商社マンを目指す人はみなこぞって読んで、そして感動したという話も聞きます。しかし今改めて読むと、作品に描かれる総合商社の体質は今も変わらないのかもしれませんが、産業構造の変化などで商社の仕事自体はずいぶん変わっているのではないかという気がします(その点、一番変わっていないのは『白い巨塔』で描かれた大学附属病院かもしれない)。

 国の二次防主力戦闘機の受注をめぐって、交渉相手の防衛庁の部長に戦時中の命の恩人である元陸軍中佐・壱岐正をぶつけるという商社の戦略が凄いと思いましたが、戦後60年以上を経た今現在、こうした"命の恩人"みたいな関係がどれだけあるのか、またそれがビジネスで成り立つかと考えると、かなり特異な状況を描いているようにも思えました。

 そうしたこともあり、良くも悪くも、モデルとされている瀬島龍三氏のイメージとどうしても切り離せません。
 小説の主人公はラストの身の引き方は美しいが、瀬島氏は商社マンとして一線を退いた後も中曽根内閣の臨調委員として政治"参謀"ぶりを発揮し(結局こういう「ひとかどの人物」は在野にいても声がかかる?)、90歳を超えてなお中曽根氏の個人的ブレーンの1人となっている...。

 著者は「これは架空の物語である。実在する人物、出来事と類似していても偶然に過ぎない」と言っています。
 『白い巨塔』と並ぶ著者の代表作であり傑作であることには違いなく、モデルはモデル、小説は小説として読むべきなのかも知れません(同一作者の後の作品『沈まぬ太陽』では、同一モデルであるはずのこの人物の描き方が、「国士」から単なる「策士」へと変化している)。

瀬島龍三(せじま・りゅうぞう)
瀬島龍三.jpg伊藤忠商事元会長。富山県松沢村(現小矢部市)出身。1938年12月陸軍大学校卒、大本営陸軍参謀として太平洋戦争を中枢部で指揮をとる。満州で終戦を迎えたが、旧ソ連軍の捕虜となり、11年間シベリアに抑留され、1956年に帰国。1958年、伊藤忠に入社し、主に航空機畑を歩いた。1968年専務に就き、いすゞ自動車と米ゼネラル・モーターズ(GM)との提携を仲介。戦前、戦中、戦後を通じて政、財界の参謀としての道を歩んだ。(2007年9月4日死去/享年95)

不毛地帯 映画.jpg不毛地帯 丹波哲郎2.jpg「不毛地帯」●制作年:1976年●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/宮古とく子●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:181分●出演:仲代達矢/丹波哲郎/山形勲/神山繁/滝田裕介/山口崇/日下武史/仲谷昇/山本圭/北大路欣也/小沢栄太郎/田宮二郎/久米明/大滝秀治/高橋悦史/井川比佐志/中谷一郎/八千草薫/秋吉久美子/藤村志保/志村喬/高城淳一/秋本羊介/岩崎信忠/石浜朗/内田朝雄/小松方正/加藤嘉/中津川衛/辻萬長/高杉哲平/杉田俊也/神田隆/永井智不毛地帯 dvd.jpg不毛地帯相関図.jpg不毛地帯久松経済企画庁長官  1.jpg雄/嵯峨善兵/伊沢一郎/青木義朗/アンドリュー・ヒューズ/デヴィット・シャピロ/●劇場公開:1976/08●配給:東宝(評価★★★) 
不毛地帯 [DVD]
不毛地帯 金脈図.jpg丹波哲郎(防衛庁・川又空将補)/加藤嘉(防衛庁・原田空幕長)/大滝秀治(経済企画庁長官・久松清蔵)
川又空将補 - 丹波哲郎.jpg 原田空幕長 - 加藤嘉.jpg 久松経済企画庁長官 - 大滝秀治.jpg
小沢栄太郎(貝塚官房長)
不毛地帯b-b014d3c5e38d.jpg「不毛地帯」 小沢栄太郎.jpg 
    
山形勲(近鉄商事社長・大門一三――壱岐をスカウトする)
山形勲 不毛地帯.jpg不毛地帯 山形.jpg

秋吉久美子(壱岐直子)
「不毛地帯」秋吉久美子.jpg

 【1983年文庫化[新潮文庫(全4巻)]・2009年改訂[新潮文庫(全5巻)]】

不毛地帯〔'76年/東宝〕監督:山本薩夫/製作:佐藤一郎/脚本:山田信夫/出演:仲代達矢/丹波哲郎/山形勲
不毛地帯 映画.jpg

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「華麗なる一族」1974年.jpg 古さを感じさせない。政財界にわたっての丹念な取材の跡が窺える。

山崎豊子 華麗なる一族.jpg  華麗なる一族 上巻.jpg 華麗なる一族 中巻.jpg 華麗なる一族 下巻.jpg 
華麗なる一族 (1980年) (新潮文庫)』 /新潮文庫(上・中・下)〔改訂版〕/映画「華麗なる一族」('74年/東宝)

華麗なる一族 dvd.jpg華麗なる一族.jpg 万俵財閥の当主で阪神銀行頭取の万俵大介の野望を軸に、それに翻弄される一族の姿を金融業界の内幕に絡めて描いた作品で、'73(昭和48)年の発表ですが、「金融再編」に伴う「銀行の合併問題」がモチーフになっているため、あまり古さを感じさせません。

 小説の冒頭は、志摩半島の英虞湾を望む一流ホテルでの主人公一族の豪奢な正月晩餐会から始まりますが、作者は舞台のモデルにした「志摩観光ホテル」のレストランから夕陽がどう見えるかまで取材しに行ったそうで、そうした丹念な取材は、銀行内部のみでなく、政治家や大蔵省など政財界に広く及んでいて、物語にリアルな厚みを増しています。 
華麗なる一族 [DVD]」/映画パンフレット                  

 大介の野望は、上位銀行の専務と結託してその銀行を併呑する、所謂「小が大を呑む」というもので(かつて神戸銀行が太陽銀行を吸収合併し、"名"前だけ「太陽神戸」として"実"の方をとった出来事がベースになっている)、大介の政財界への働きかけは、「政財癒着は良くない」という綺麗事のレベルを遥かに凌駕する凄まじさで、目的のためには親友も、長男さえも切り捨てる―。

 タイトルの「華麗なる一族」という言葉が、政界との癒着強化のための閨閥づくりを指すとともに、長男・鉄平の暗い過去の出生の秘密を表す反語にもなっています。

華麗なる一族 佐分利信.jpg華麗なる一族 仲代.png 同じ山崎豊子原作の映画化作品「白い巨塔」が大ヒットした華麗なる一族 仲代.jpgためか、この作品は豪華キャストで映画化されましたが('74年・山本薩夫((1910-1983))監督)、オールキャストとは言え、その中で圧倒的に存在感を際立たせているのは華麗なる一族 田宮二郎.jpg佐分利信であり、その佐分利信が演じる万俵大介と仲代達矢が演じる鉄平の"暗い血"にまつわる確執に重きが置かれていたような感じもしました。また、鉄平の最期が、大介の女婿を演じた田宮二郎の実人生での自殺方法と同じだったことに思い当たりますが、鉄平役は実は田宮二郎がやりたかった役だったそうです。

華麗なる一族 目黒.jpg華麗なる一族 佐分利.jpg どうしても、こういう複雑なストーリーの話が映画化されると、情緒的な方向に重きがいってしまったりセンセーショナルな部分が強調されるのは仕方がありませんが(大介の「妻妾同衾」シーンなども当時話題になった)、それなりの力作でした。"いい人"がとにかく苛められる(相手方銀行の頭取の二谷英明とか)点で「白い巨塔」に共通するものを改めて感じたのと、農家の預金獲得のために、ワイシャツ姿で終日稲刈りまでする銀行員なども描いていて「銀行員って意外と泥臭いなあ」と思わされたりもしました。
                    映画「華麗なる一族 [VHS]」 ビデオ(上・下)
華麗なる一族2.gif華麗なる一族 ビデオ.jpg「華麗なる一族」●制作年:1974年●製作:芸苑社●監督:山本薩夫●製作:佐藤一郎/市川喜一/森岡道夫●脚本:山田信夫●音楽:佐藤勝●原作:山崎豊子●時間:210分●出演:佐分利信仲代達矢/月丘夢路/京マチ子/酒井和歌子/目黒祐樹/田宮二郎/二谷英明/香川京子/山本陽子/中山麻里/小沢栄太郎滝沢修/河津清三郎/大空真弓/北大路欣也/志村喬中村伸郎加藤嘉/神山繁/平田昭彦/細川俊夫/大滝秀治/北林谷栄/西村晃/金田龍之介/小林昭二/花沢徳衛/鈴木瑞穂(ナレーション華麗なる一族 京マチ子 .pngも担当)/嵯峨善兵/荒木道子/小夜福子/中村哲/武内亨/梅野泰靖/浜田寅彦/花布辰男/下川辰平/伊東光一/田武謙三/若宮大祐/青木富夫/五藤雅博/生井健夫/白井鋭/夏木章/笠井一彦/守田比呂也/華麗なる一族 京マチ子.jpg鳥居功靖/堺美紀子/横田楊子/川口節子/森三平太/千田隼生/金親保雄/南治/麻里とも恵/木島一郎/坂巻祥子/隅田一男/久遠利三/鈴木昭生/記平佳枝/東静子/加納桂●劇場公開:1974/01●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山本薩夫監督追悼特集) (84-01-08) (評価★★★☆) 京マチ子(万俵大介の愛人・高須相子)
華麗なる一族 saburi.jpg滝沢修 華麗なる一族.jpg 大滝秀治 華麗なる一族.jpg 中村 伸郎 華麗なる一族.jpg 華麗なる一族 志村.jpg
佐分利信(阪神銀行頭取・万俵大介)/滝沢修(長期開発銀行頭取・宮本之三)/大滝秀治(社民党代議士・荒尾留七)/中村伸郎(日銀総裁・松平公之)/志村喬(大華麗なる一族 小沢栄太郎.jpg華麗なる一族 (1974東宝)katou .jpg阪重工社長・安田太左衛門)/小沢栄太郎(永田大蔵大臣)/仲代達矢(阪神特殊鋼専務・万俵鉄平)/加藤嘉(阪神特殊鋼常務・銭高)
西村晃(大同銀行専務・綿貫千太郎)/二谷英明(大同銀行頭取・三雲祥一)/北大路欣也(一之瀬(阪神特殊鋼:工場長)の息子・一之瀬四々彦)
華麗なる一族 西村・二谷.jpg 華麗なる一族 西村.jpg 「華麗なる一族」きたおうじ.jpg

華麗なる一族3.jpg月丘夢路(万俵大介の妻・万俵寧子)/香川京子(長女・美馬一子)/京マチ子(家庭教師・高須相子)/山本陽子(長男鉄平の妻・万俵早苗)/中山麻理(次男銀平の妻)/酒井和歌子(次女・万俵二子)


 【1973年単行本・1979年改訂[新潮社(上・中・下)]/1980年文庫化・2003年改訂[新潮文庫(上・中・下)]】

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医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせた傑作。もとは財前の勝利で終わる話だった。
白い巨塔 1965.jpg 白い巨塔 1.jpg 白い巨塔 2.jpg 白い巨塔 3.jpg kyotou2.jpg 白い巨塔 1シーン.jpg
白い巨塔 (1965年)』 『新潮文庫「白い巨塔 全5巻セット」』  映画「白い巨塔 [DVD]」['66年]
映画「白い巨塔」('66年/大映) 田宮二郎・田村高廣
映画「白い巨塔」('66年/大映).jpg この作品は何度かテレビドラマ化ざれ、佐藤慶('67年/テレビ朝日系/全26回)、田宮二郎('78年/フジテレビ系/全31回)、村上弘明(90年/テレビ朝日系/全2回)などが主役の財前五郎を演じています。更に最近では、'03年にフジテレビ系で唐沢寿明主演のもの(全21回)がありましたが、断トツの視聴率だったのは記憶に新しいところ(唐沢寿明版の最終回の視聴率32.1%で、'78年の田宮二郎版の最終回31.4%を上回る数字だった)。
                   
白い巨塔 66.jpg銀座シネパトス.jpg しかしながら個人的には、やっぱりテレビ版よりは、原作を読む前に観た山本薩夫(1910-1983)監督による映画化作品(田宮二郎主演)が鮮烈な印象として残っており、また観たいと思っていたら、'04年にニュープリント版が銀座シネパトス(東銀座・三原橋の地下にあるこの映画館は、しばしば昔の貴重な作品を上映する。2013年3月31日閉館)で公開されたため、約20年ぶりに劇場で観ることができました。これも全て今回の唐沢寿明版のヒットのお蔭でしょうか。

映画 「白い巨塔」('66年/モノクロ)

白い巨塔」(テレビ 1978.jpg田宮二郎自殺.jpg田宮二郎.jpg 田宮二郎(1935-1978/享年43)は、31歳の時にこの小説と巡り会って主人公・財前五郎に惚れ込み、作者の山崎豊子氏に懇願してその役を得たとのこと。その演技が原作者に認められ、それがテレビでも財前医師を演じることに繋がっていますが、テレビドラマの方も好評を博し、撮影終盤の頃、ドラマでの愛人役の太地喜和子(1943‐1992/享年48)との対談が週刊誌に掲載されていた記憶があります。それがまさか、ヘミングウェイと同じ方法でライフル自殺するとは思わなかった...。クイズ番組「タイム・ショック」の司会とかもやっていたのに(司会者は自殺しないなどという法則はないのだが)。

テレビドラマ版 「白い巨塔」('78~'79年/カラー)
 田宮二郎は30代前半の頃から躁うつ病を発症したらしく、テレビ版の撮影当初は躁状態で自らロケ地を探したりも田宮二郎 .jpgしていたそうです。それが終盤に入ってうつ状態になり、リハーサル中に泣き出すこともあったりしたのを、周囲が励ましながら撮影を進めたそうで、彼が自殺したのはテレビドラマの全収録が終わった日でした(実現が困難な事業に多額の投資をし、借金に追われて「俺はマフィアに命を狙われている」とか、あり得ない妄想を抱くようになっていた)。当時週刊誌で見た大地喜和子とのにこやかな対談は、実際に行われたものなのだろうか。

『続・白い巨塔』('69年/新潮社 )/『白い巨塔(全)』('94年/新潮社改版版)/映画「白い巨塔」('66年/大映)
白い巨塔 ラスト.jpg続白い巨塔.jpg白い巨塔1994.jpg
 もともとの『白い巨塔』('65年/新潮社)は、'63年から'65年にかけて「サンデー毎日」に連載されたもので、熾烈な教授選挙戦を征して教授になった財前五郎が、権力者の後ろ盾のもとに、彼の医療ミスを告発する里見医師らを駆逐するところで終わっています。映画('66年)も教授選をクライマックスに、主人公の財前が第一外科教授に昇進するまでを描いていて、原作・映画ともに、医学界の権威主義に対する強烈な風刺や批判となっていますが、権力志向の強い男のピカレスク・ロマンとしてもみることができます。しかしながら、こうした「悪が勝つ」終わり方に世間から批判があり、そのため『続・白い巨塔』('69年)が書かかれたということです('94年新装版では、正・続が2段組全1冊に収められている)。

白い巨塔 新潮文庫.jpg 文庫の方は、当初は正(上下2巻)・続に分かれていましたが、'93年の改定で「続」も含め『白い巨塔』として全3巻になり、更に'02年の改定で全5巻になっています(「続」という概念がある時期から消されているともとれる)。最近のテレビドラマもそれに準拠し、財前が亡くなるところまで撮り切っていますが、文庫で読むときは、もともとは今ある全5巻のうち、第3巻までで終わる話だったことを意識してみるのも良いのではないでしょうか。

 因みに、いくつかあるテレビ版で、原作の正編に相当する部分のみで終わっているのは、「続」が書かれる前にドラマ化された佐藤慶版('67年/テレビ朝日系/全26回)のみです。田宮二郎の主演のものも、テレビ版の方は唐沢寿明版と同じく、主人公が癌で亡くなるところまで撮っています。田宮二郎テレビ版では、田宮二郎自身が台本に自分で書いた遺書を挿入し、末期がんのがん患者になり切ったとのこと、ストレッチャーに乗る遺体役での演技をラッシュで確認して、本人は満足していたそうです(その場面が放送される前に自殺したわけだが)。

白い巨塔 .jpgkyotou1.jpg この小説は、続編も含め、単純な勧善懲悪物語にしていないところがこの著者の凄いところです。財前はむしろ、周囲に翻弄されるあやつり人形のような存在で(苦学生上がりで医師になったのに、才能を上司に認められないというのは辛いだろうなあ)、彼をとりまく人々の中に、医学界の権力構造の図式を鮮やかに浮かびあがらせている(読んでると、権力を持たなければ何も出来ないではないかという気にさえさせられる)一方、個々に「白い巨塔」小沢.jpgは、権力に憧れる気持ちと真実を追究し正義を全うしようという気持ちが入り混じっているような"普通の人"も多く出てきて、この辺りがこの小説の充実したリアリティに繋がっていると思います。 

山崎豊子(1924-2013
山崎豊子.png白い巨塔 東野.jpg白い巨塔 加藤嘉.jpg「白い巨塔」●制作年:1966年●製作:永田雅一(大映)●監督:山本薩夫●脚本:橋本忍●音楽:池野成●原作:山崎白い巨塔 船越 英二.jpg白い巨塔 滝沢修.jpg豊子●時間:150分●出演:田宮二郎/東野英治郎小沢栄太郎小川真由美/岸輝子/加藤嘉田村高廣船越英ニ滝沢修藤村志保/下条正巳/石山健二郎/加藤武/里見明凡太朗/鈴木瑞穂/清水将夫/下條正巳/須賀不二男/早白い巨塔 小川真由美.jpg白い巨塔 藤村志保  .jpg川雄三/高原駿雄/杉田康/夏木章/潮万太郎/北原義郎/長谷川待子/瀧花久子/平井岐代子/村田扶実子/竹村洋介/小山内淳/伊東光一/南方伸夫/河原侃二/山根圭一郎/浜世津子/白井玲子/天池仁美/岡崎夏子/赤沢未知子/福原真理子●劇場公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:渋谷・東急名画座(山甦れ!東急名画座3.jpg甦れ!東急名画座1.jpg東急文化会館.jpg東急名画座 1.jpg本薩夫監督追悼特集) (83-12-05)●2回目:銀座シネパトス (04-05-02) (評価★★★★)
東急名画座 (東急文化会館6F、1956年12月1日オープン、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館

銀座シネパトス.jpg銀座東映.jpg銀座シネパトス.jpg銀座シネパトス 1952(昭和27)年、ニュース映画の専門館「テアトルニュース」開館、1954(昭和29)年「銀座東映」開館、1967(昭和42)年10月3日「テアトルニュース」跡地に「銀座地球座」開館、1968(昭和43)年9銀座シネパトスs.jpg月1日「銀座東映」跡地に「銀座名画座」開館、1988(昭和63)年7月1日「銀座地球座」→「銀座シネパトス1」、「銀座名画座」→「銀座シネパトス2」「銀座シネパトス3」に改装。2013(平成25)年3月31日閉館

  
白い巨塔」(テレビ 1978.jpgテレビドラマ 白い巨塔 田宮二郎  dvd.jpg白い巨塔 ドラマ 1.jpg「白い巨塔」(テレビ・田宮二郎版)●演出:小林俊一●制作:小林俊一●脚本:鈴木尚之●音楽:渡辺岳夫●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:田宮二郎/生田悦子/太地白い巨塔 大滝秀治2.jpgTV版「白い巨塔」中村伸郎.jpg喜和子/島田陽子/藤村志保/上村香子/高橋長英/中村伸郎/小沢栄太郎/河原崎長一郎/山本學/金子信雄/清水章吾/大滝秀治佐分利信加藤嘉/渡辺文雄/戸浦六宏/関川慎二/東恵美子/中村玉緒/井上孝雄/小松方正/西村晃/曽我廼家明蝶/渡辺文雄/米倉斉加年/岡田英次/中北千枝子/児玉清/北村和夫/小林昭二●放映:1978/06~1979/01(全31回)●放送局:フジテレビ
白い巨塔 佐分利 信.jpg白い巨塔 (1978年のテレビドラマ) 大河内 加藤.jpg白い巨塔 戸浦六宏.jpg中村伸郎(浪速大学医学部第一外科教授→近畿労災病院院長・東貞蔵)/大滝秀治(大阪地方裁判所裁判長)/佐分利信(東都大学医学部第一外科教授教授・船尾悟)/加藤嘉(浪速大学医学部病理学教授・大河内清作)/戸浦六宏(浪速大学医学部産婦人科教授・葉山優夫)/小沢栄太郎(浪速大学医学部第一内科教授、浪速大学医学部長・鵜飼雅一)/渡辺文雄(真鍋外科病院院長・真鍋貫治)/岡田英次(里見清一(里見脩二の兄、洛北大学医学部第二内科講師→開業医))
「白い巨塔」小沢渡辺.jpg「白い巨塔」岡田.jpg『白い巨塔_1331.jpeg
    
白い巨塔 ドラマ 2003.jpg「白い巨塔」ドラマ  .jpg「白い巨塔」(テレビ・唐沢寿明版)●演出:西谷弘/河野圭太/村上正典/岩田和行●制作:大多亮●脚本:井上由美子●音楽:加古隆●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:唐沢寿明/江口洋介/西田敏行/佐々木蔵之介/上川隆也/伊藤英明/及川光博/石坂浩二/伊武雅刀/黒木瞳/矢田亜希子/水野真紀/高畑淳子/沢村一樹/片岡孝太郎/若村麻由美●放映:2003/10~2004/03(全21回)●放送局:フジテレビ

 【1965年単行本・1969年続編・1973年改訂・1994年新装版[新潮社]/1978年文庫化(上・下・続)・1993年改訂(全3巻)・2002年再改定(全5巻)[新潮文庫]】

《読書MEMO》
白い巨塔 岡田准一版.jpg白い巨塔 2019.jpg●2019年再ドラマ化【感想】'78年の田宮二郎版の全31回、'03年の唐沢寿明版の全21回に対して今回の岡田准一版は全5回とドラマ版としては短く、盛り上がる間もなくあっという間に終わってしまった感じで、岡田准一は大役を演じ切れてない印象を持った。最終回の視聴率が15.2%というのはそう悪い数字ではないが、この原作ならば本来はもっと高い数字になって然るべきで、やはり内容的に...。田宮二郎版の31.4%、唐沢寿明版の32.1%と比べると平凡な数字に終わったのもむべなるかなと。

白い巨塔 キャスト.jpg白い巨塔 2019  01.jpg「白い巨塔(テレビ・岡田准一版)~テレビ朝日開局60周年記念5夜連続ドラマスペシャル」●監督:鶴橋康夫/常廣丈太●脚本:羽原大介/本村拓哉/小円真●音楽/兼松衆●原作:山崎豊子「白い巨塔」「続・白い巨塔」●出演:岡田准一/松山ケンイチ/寺尾聰/小林薫/松重豊/岸部一徳/沢尻エリカ/椎名桔平/夏帆/飯豊まりえ/斎藤工/向井康「白い巨塔」小林.jpg白い巨塔 ドラマ 小林薫.jpg「白い巨塔」岸部.jpg二/岸本加世子/柳葉敏郎/満島真之介/八嶋智人/山崎育三郎/高島礼子/市川実日子/美村里江/市毛良枝/小林稔侍●放映:2019/05/22-26(全5回)●放送局:テレビ朝日
小林稔侍(浪速大学医学部名誉教授・滝村恭輔)/小林薫(財前の義父・財前産婦人科医院院長・財前又一)/岸部一徳(浪速大学医学部病理学科教授・次期第一外科教授選選考委員会委員長・大河内恒夫)
 

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