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「法廷から男社会を刺す女の絆」。メッセージ性と娯楽性の両立。

「私がやりました」2023.jpg「私がやりました」30.jpg
「私がやりました」

「私がやりました」01.jpg 有名映画プロデューサーがパリの大豪邸の自宅で殺された。容疑者は、売れない新人女優マドレーヌ(ナディア・テレスキウィッツ)。プロデューサーに襲われ、「自分の身を守るために撃った」と自供する彼女は、親友で駆け出しの弁護士ポー「私がやりました」02.jpgリーヌ(レベッカ・マルデール)と共に法廷へ。正当防衛を訴える鮮やかな弁論と感動的なスピーチで裁判官や大衆の心をつかみ、見事無罪を勝ち取る。それどころか、「悲劇のヒロイン」として一躍時の人となったマドレーヌは、大スターの座へと駆け上がっていく。ところが、そんなある日、二人の前にオデット(イザベル・ユペール)という女が現れる。彼女は二人に証拠を突き付け、プロデューサー殺しの真犯人は自分で、マドレーヌたちが手にした富も名声も、自分のものだと言うのだ。こんなに魅力的な"犯人の座"は渡せない─。
 
「私がやりました」3人.jpg フランソワ・オゾン監督の2023年公開作で、3人の女たちが繰り広げる犯罪ミステリ&コメディです。ナディア・テレスキウィッツ(1996年生まれ)が新人女優マドレーヌ、レベッカ・マルデール(1995年生まれ)が新米弁護士ポーリーヌ、この二人より40歳以上も年上のイザベル・ユペール(1953年生まれ)が落ちぶれた元大女優のオデットを演じています(イザベル・ユペールは「エキセントリックで常軌を逸したような役を演じるのはとても楽しい」とインタビューで答えている)。

「私がやりました」04.jpg 30年代の戯曲をフランソワ・オゾン監督が脚色したもので、1930年代における女性の地位や差別撤廃にも言及する本作は、ドタバタ・コメディでありながら、フェミニズムや#MeTooムーブメントという現代的なテーマとも通底するメッセージを持っており、むしろ、それを敢えてドタバタコメディというスタイルで表現しているところに、この監督の才気煥発ぶりを感じます。

「私がやりました」05.jpg 最大の見せ場は、法廷で男性のみで構成された陪審員団に向けてナディア・テレスキウィッツ演じる新人女優が「嘘も真実となる」とばかり自分が犯人であるとの演説をし、それをレベッカ・マルデール演じる新米弁護士ポーリーヌが見守るシーンです(朝日新聞の批評子は「法廷から男社会を刺す女の絆」としていた)。

「私がやりました」03.jpg ナディア・テレスキウィッツも、「これはシスターフッドの物語。私とレベッカも出合ってすぐ、共に闘う共犯関係のようなもので結ばれました」と述べていますが、共演者同士の関係を映画と重なるように持っていくところに、フランソワ・オゾン監督の演出の旨さがあるのかもしれません。

 コメディですが、衣装が凝っていてセットもお金をかけて作っている感じ。コメディにこれだけお金をつぎ込むところがフランス映画らしいですが、クラシカルな味わいを持たせながらも、コメディとしてのテンポは維持しているところも上手だと思います。

 突然人気スターとなったマドレーヌのところに主演オファーが来て出た映画が「マリー・アントワネットの苦い涙」というもので、マドレーヌは断頭台で首を撥ねられるヒロインのマリー・アントワネット役(ややB級映画っぽい?)。フランソワ・オゾン監督の前作「苦い涙」('22年/仏)は、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー 監督の「ペトラ・フォン・カントの苦い涙」('72年/西独)をリメイクしたもので、これに懸けているところに監督の茶目っ気が窺えます。さらには、リドリー・スコット監督の「ナポレオン」('23年/米・英)が公開されたばかりですが、マリー・アントワネットが斬首刑に処されれるシーンが冒頭にあり、これにも懸けたと見るのは穿ち過ぎでしょうか(史実では、マリー・アントワネットは獄中で刈られた短髪で絞首台に登るが、リドリー・スコット版では、豊かな髪をたなびかせている。このフランソワ・オゾン版もマリー・アントワネットが髪を刈った痕跡は無い(笑))。

 メッセージ性がありながらも、コメディとしても楽しめる作品でした。

私がやりました
「私がやりました」imdb.jpg「私がやりました」シネリーブル.jpg「私がやりました」●原題:MON CRIME(英:THE CRIME IS MINE)●制作年:2023年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:エリック・アルトメイヤー /ニコラ・アルトメイヤー●撮影:マニュエル・ダコッセ●音楽:フィリップ・ロンビ●時間:103分●出演:ナディア・テレスキウィッツン/レベッカ・マルデール/イザベル・ユペール/ファブリス・ルキーニ/ダニー・ブーン/アンドレ・デュソリエ/エドゥアール・シュルピス●日本公開:2023/11●配給:ギャガ●最初に観た場所:シネ・リーブル池袋(スクリーン2)(20-11-14)(評価:★★★☆)●同日上映:「サタデー・フィクション」(婁燁(ロウ・イエ))

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やっぱり日本とは違うなあと思う一方で、あちらでも安楽死には壁があるのだなとも。

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「すべてうまくいきますように」ポスター[下]ソフィー・マルソー/ジェラルディーヌ・ペラス/アンドレ・デュソリエ
「すべてうまくいきますように」2021.jpg 人生を謳歌していた85歳のアンドレ(アンドレ・デュソリエ)は脳卒中で倒れて体が不自由になり、娘のエマニュエル(ソフィー・マルソー)に人生を終わらせる手助けをしてほしいと頼む。戸惑う彼女は父の考えが変わることを期待しつつも、合法的な安楽死を支援するスイスの協会と連絡を取り合う。一方、リハビリによって順調に回復するアンドレは積極的に日々を楽しみ、生きる希望を取り戻したかのようだった。しかし、彼は自ら定めた最期の日を娘たちに告げ、娘たちは葛藤しながらも父の決断を尊重しようとする―。

 「焼け石に水」「まぼろし」(共に'00年)などのフランソワ・オゾン監督が、安楽死を巡る父と娘の葛藤を描いたドラマで、原題はTout s'est bien passé(すべてうまくいった)。「まぼろし」「スイミング・プール」('03年)などで同監督と組んだ脚本家エマニュエル・ベルンエイム(1955-2017)による自伝的小説が原作で、オゾン監督のインタビューによれば、彼女の生前に映画化を持ちかけられたもののその時は触発されず、それが彼女が亡くなってから映画化してみようと思ったとのことです。

「すべてうまくいきますように」6.jpg5「すべてうまくいきますように」.jpg 長女エマニュエルを「ラ・ブーム」('80年)のソフィー・マルソー、父アンドレを「恋するシャンソン」('97年)のアンドレ・デュソリエが演じるほか、オゾン監督作「17歳」('13年)にも出演したジェラルディーヌ・ペラスが、父と姉の絆に複雑な想いを抱き嫉妬することもあるが、こうと決めたら真っ直ぐな姉を慕う健気な妹パスカルを演じています(メガネをしていて最初は分からなかった)。

「マリア・ブラウンの結婚」ハンナ・シグラ.jpg「すべてうまくいきますように」ハンナ・シグラ.jpg さらに、オゾン監督作の常連シャーロット・ランプリング(「まぼろし」の主演でもあった)がアンドレの妻、エマニュエル姉妹の母を演じ、安楽死を支援する協会から派遣されてくるスイス人女性(ちょっと怪しげ?)を、ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督の「マリア・ブラウンの結婚」('79年/西独)のドイツ人俳優ハンナ・シグラが演じています(年齢を経ていて最初は分からなかった)。

 安楽死という重いテーマを取り上げた映画ですが、最初は安楽死を願う父親と向き合いたがらなかった娘が、いつの間にか"無事に"父親の願いを叶えられるよう奔走しているという、ちょっとコミカルな面もありました。途中から急にサスペンス風になり、果たして当局の追手をかわして、安楽死が認められているスイスに父親を送り届けることができるかハラハラさせるという、こうしたちょっとユーモラスな作りは、この監督ならではと思います。

 娘たちの心境の変化の背景には、欧米社会には死を個人の権利と考える考え方がもともとあって、安楽死のハードルが日本などよりは精神土壌的に低いということがあるのではないかとも思えるし、自国でダメでもクルマで国境を越えて隣国に行けば何とかなるという、物理的なハードルの低さもあったように思います。

 一方で、自殺を大罪とするカトリックの思想がフランス、イタリア、スペインなどラテン系国家にはあり、同じ欧米社会でもプロテスタント系国家との間に格差があって、そのあたりが娘たちが最初は父親の願いを聴こうとしないことにも繋がっているように思いました。やっぱり日本とは違うなあと思う一方で、あちらでも安楽死には壁があるのだなとも思いました。

 同じく安楽死を扱った映画に、クリント・イーストウッド監督の 「ミリオンダラー・ベイビー」 ('04年/米)があり、あの映画も観る側に考えさせる映画でしたが、感動のツボを押さえたハリウッド映画らしい作り方になっていたように思います。一方のこの作品は、死ぬ側である父がブラック・ユーモアを発したりしていて、同じく感動的ではありますが、感動に至るプロセスがヨーロッパ映画的であり、こちらの方が意外とリアリティがあったように思います。

「すべてうまくいきますように」3.jpg 因みに、フランソワ・オゾン監督はゲイであることを公言していますが、この映画のアンドレ・デュソリエ演じる父親アンドレもゲイであり(その元カレが"クソ野郎"と呼ばれていたジェラルドだが、彼もアンドレを愛している)、シャーロット・ランプリング(1946年生まれ)演じる母親はゲイだとわかっていても夫を愛していたから別れなかったという設定のようです(娘ソフィー・マルソーが母がシーロット・ランプリングになぜ別れなかったのか問い詰める場面がある)。シーロット・ランプリングの常に憂いを秘めた表情に、そのあたりの経緯が込められていたでしょうか。

「すべてうまくいきますように」4.jpg「ラ・ブーム」 dvd.jpg ソフィー・マルソー(1966年生まれ)の演技も悪くなかったです。「ラ・ブーム」 ('80年/仏)の少女、「デサント・オ・ザンファー 地獄に墜ちて」 ('86年/仏)の若妻、 「007 ワールド・イズ・ノット・イナフ」 ('99年/英・米)のボンドガールなどを経て、著述業や監督業、社会貢献活動などもやりながら恋愛遍歴も重ね、いつの間にか演技派女優になっていたのか。

ハンナ・シグラ(1943年生まれ)
マリア・ブラウンの結婚」(1079)
「マリア・ブラウンの結婚」ハンナ・シグラ2.jpgハンナ・シグラ.jpg「すべてうまくいきますように」●原題:TOUT S'EST BIEN PASSÉ(英:EVERYTHING WENT FINE)●制作年: 2021年●制作国:フランス/ベルギー●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:エリック・アルトメイヤー/ニコラス・アルトメイヤー●撮影:イシャーム・アラウィエ●音楽:ニコラス・コンタン●原作:エマニュエル・ベルンエイム●時間:113分●出演:ソフィー・マルソー/アンドレ・デュソリエ/ジェラルディーヌ・ペラス/シャーロット・ランプリング/エリック・カラヴァカ/ハンナ・シグラ/グレゴリー・ガドゥボワ/ジャック・ノロ/ジュディット・マーレ/ダニエル・メズギッシュ/ナタリー・リシャール●日本公開:2023/02●配給:キノフィルムズ●最初に観た場所:ヒューマントラストシネマ有楽町(シアター2)(23-02-17)(評価:★★★★)

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いま一つ入り込めなかったが、4人並んだダンスシーンなどはセンスを感じた。

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焼け石に水 [DVD]」ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ

「焼け石に水」1r.jpg 1970年代のドイツ。婚約者がいる20歳の青年フランツ(マリック・ジディ)は、中年男レオポルド(ベルナール・ジロドー)に街で声を掛けられ、婚約者とのデートをすっぽかして彼の「焼け石に水」9r.jpg家に行く。レオポルドの妖しい魅力にとりつかれたフランツはそこにそのまま棲みついてしまう。やがて二人の関係が険悪になり始めた頃、フランツの婚約者の彼女アナ(リュディヴ-ヌ・サニエ)がやって来て、さらには昔レオポルドと7年間同棲していたという元恋人の"彼女" ヴェラ (アンナ・トムソン)が、男性から女性に性転換したと言ってやって来る―。

「焼け石に水」0r.jpgオゾンかんとく.jpg フランソワ・オゾン監督(1967年生まれ)が32歳で発表した2000年公開作。彼が敬愛するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が19歳で書いた未発表の戯曲の映画化した、4幕構成の室内劇風の作品です。2001年に日本公開され、キネマ旬報ベストテンで、外国映画の5位。昨年['21年]Bunkamuraル・シネマで20年ぶりに35ミリフィルムでリバイバル上映されました(個人的には今回シネマブルースタジオで観た。同監督の「クリミナル・ラヴァーズ」('99年/仏・日)もやっていたのだが観に行けなかった)。

まぼろし dvd.jpg カトリーヌ・ドヌーヴをはじめとする出演した8人の女優達に対して2002年のベルリン国際映画祭銀熊賞が贈られた「8人の女たち」('02年/仏)に通ずるミュージカル的シーン、「スイミング・プール」('03年/英・仏)に通じるエロティシズム、「ぼくを葬る」('05年/仏)に通じるゲイのモチーフなど、フランソワ・オゾン監督の原点的な作品であるとのことです。個人的には、「まぼろし」('00年/仏)を観て、まったくゲイっぽさを感じなかったのですが、こちらはもろゲイだった(笑)。そのせいではないですが、コメディなんだけれど、ちょっと入り込みにくかった気もします。

「焼け石に水」3r.jpg フランツの婚約者役のリュディヴ-ヌ・サニエは、映画を通してずっと裸かそれに近い下着姿でいて、セクシーと言うよりは健康的という感じ。でも、こんな娘を放っぱらかしにして中年オジンに取り込まれてしまうということは、女性よりも男性によってその孤独を癒されたということであり、フランツ青年はもともともとその素養があったのではないか...。

「焼け石に水」6r.jpg と思ったら、終盤にきて、リュディヴ-ヌ・サニ「焼け石に水」2r.jpgエの演じるアナの方が、ベルナール・ジロドー演じる中年男フランツの性的魅力に目覚めて(調教されて)しまい、この中年男は両刀使いだったわけなのだなあ。アナ、ヴェラとトリプルセックス状態で、これにはフランツ青年は大ショックで(同時に両方の性対象に裏切られたようなものだから)、結局自死の道を選びます。ある意味、「美貌ゆえの悲劇」と言えるかもしれません。

 このように明るい話ではないですが、見た目さほど悲劇的でもなく、むしろ全体のトーンはコメディタッチで、よく分かりませんが、この辺りがこの監督の才気煥発たるところなのでしょう。4人が並んでダンスするシーンなどはいい雰囲気と言うかセンスだと思いました。

HECATE 1982.jpg ベルナール・ジロドーは、ダニエル・シュミット監督の「ヘカテ」('82年/仏・スイス)で、北アフリカにあるフランス植民地(モロッコ?)の外交官で、ローレン・ハットン演じる魔性の美女に耽溺していく主人公を演じていました。今回は職業不詳ですが、何かの顧客業務をやっているみたい(外交官ならむ保険外交員?)。当時、53歳くらいでしょうか。20年前と同様に、性愛の虜になっている男を演じているのがいいです(2010年に63歳で亡くなっているのが残念)。

「ヘカテ」('82年/仏・スイス)ベルナール・ジロドー
 
「焼け石に水」br.jpg「焼け石に水」●原題:GOUTTES D'EAU SUR PIERRES BRULANTES(WATER DROPS ON BURNING ROCKS)●制作年:2000年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:オリヴィエ・デルボスク/マルク・ミソニエ/アラン・サルド/クリスティーヌ・ゴズラン●撮影:ジャンヌ・ラポワリー●音楽(挿入曲):フランソワーズ・アルディ●原作:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●時間:90分●出演:ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ/リュディヴィーヌ・サニエ/アンナ・レヴィン●日本公開:2001/07●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(22-08-09)(評価:★★★)

Hécate(1982) 1.jpg「ヘカテ」●原題:HECATE●制作年:1982年●制作国:フランス/スイス●監督:ダニエル・シュミット●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ダニエル・シュミット/パスカル・ジャルダン●撮影:レナート・ベルタ●音楽:カルロス・ダレッシオ●原六本木駅付近.jpg俳優座劇場.jpg作:ポール・モラン「ヘカテとその犬たち」●時間:108分●出演:ベルナール・ジロドー/ローレン・ハットン/ジャン・ブイーズ/ジャン=ピエール・カルフォン/ジュリエット・ブラシュ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(83-10-17)●2回目:自由が丘・自由劇場(84-09-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)
六本木・俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。

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「女たちの肖像」特集からの2作は、女優の演技を堪能できる映画。

あの日、欲望の大地で dvd.jpg あの日、欲望の大地で セロン.jpg ギジェルモ・アリアガ.jpg まぼろし dvd.jpg フランソワ・オゾン.jpg
あの日、欲望の大地で [DVD]」シャーリーズ・セロン/ギジェルモ・アリアガ監督 「まぼろし<初回限定パッケージ仕様> [DVD]」シャーロット・ランプリング/フランソワ・オゾン監督
キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス(当時17歳)
あの日、欲望の大地でes.jpg シルヴィア(シャーリーズ・セロン)は、ポートランドの海辺に建つ高級レストランのマネージャーとして働いている。だが、ひとたび職場を離れると、行きずりの男と安易に関係を持ち、自傷行為に走る。そんな彼女の前に、カルロス(ホセ・マリア・ヤスピク)と名乗るメキシコ人男性が現れ、彼が連れてきた12歳の少女マリア(テッサ・イア)の姿にシルヴィアは動揺し、思わず逃げ出す。その胸に、砂漠の中で真っ赤に燃え上がるトレーラーハウスの幻影が浮かび上がる...。シルヴィアがマリアーナと呼ばれていた10代の頃、彼女の一家はニあの日、欲望の大地で mix.jpegューメキシコ州の国境の町で暮らしていた。病気を克服したばかりの母親ジーナ(キム・ベイシンガー)に代わって、父親ロバート(ブレット・カレン)と3人の幼い兄弟の面倒を見るのはマリアーナ(ジェニファー・ローレンス)の役目だった。そんな中、ジーナは隣町に住むメキシコあの日、欲望の大地で 574_01.jpg人のニック(ヨアキム・デ・アルメイダ)と情事を重ねていた。お互いに家庭を持つ二人は、中間地点のトレーラーハウスを忍び逢いの場所に選び、貪るように愛を交わすが、その情事は唐突に終わりを告げる。二人が密会中にトレーラーハウスが炎上、二人は帰らぬ人とあの日、欲望の大地で   セロン.jpgなった。母の事故死は、多感なマリアーナの心に大きな傷跡を残したが、それはニックの息子・サンティアゴ(J・D・パルド)にとっても同様だった。やがて、両親を真似るように密会を重ねるようになった二人は、本気で恋に落ちていく―。それから12年、シルヴィアは、マリアーナの名前と共に置き去りにした過去と向き合うべき時が来たことを悟る―。


Charlize Theron/Kim Basinger/Jennifer Lawrence
あの日、欲望の大地で 8.jpg 「あの日、欲望の大地で」('08年/米、原題:The Burning Plain)は、メキシコ出身の脚本家・作家で「21グラム」('03年)、「バベル」('06年)などの脚本映画があるギジェルモ・アリアガが、2人のオスカー女優、シャーリーズ・セロン(1975年生まれ)とキム・ベイシンガー(1953年生まれ)を主演に迎えて撮り上げた2008年の監督デビュー作。「時代と場所を越えて3世代にわたる女性たちが織りなす愛と葛藤と再生の物語を、時制を錯綜させた巧みな語り口で描き出していく」という謳い文句ですが、まさにその通りの佳作でした。

 まず冒頭に、草原の中にあるトレーラーハウスが爆発炎上するシーンがあって、その後、アメリカ北東部メイン州の海辺の街ポートランドで高級レストランの女マネージャーとして働きながら、複数の男性といきずりの関係を繰り返す、シャーリーズ・セロン演じるシルヴィアの話と、アメリカ南部ニューメキシコ州の国境沿いの町でメキシコ人男性とトレーラーハウスで不倫を重ねる、キム・ベイシンガー演じる主婦ジーナの話が交互に展開され、まさに「場所を越えた」話になっています。さらに、ニューメキシコでの話には、シルヴィアの娘マリアーナが重要な位置を占めるようになり、3人の女性の物語かと思ったら実は...。

あの日、欲望の大地で7.jpg "脚本家"監督のまさに脚本の上手さを感じさせますが、驚くべきは、重要な役どころであるシルヴィアの娘マリアーナを演じたジェニファー・ローレンス(1990年生まれ)の演技力で、当時17歳にして、2人のオスカー女優の体当たり演技(これはこれで流石と言うべき好演)に拮抗する演技となっています。ギジェルモ・アリアガ監督には「メリル・ストリープの再来かと思った」と言わしめ、2008年・第65回ヴェネツィアジェニファー・ローレンス マルチェロ・マストロヤンニ賞.jpg国際映画祭ではマルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)を受賞しました。その4年後、コメディ映画「世界にひとつのプレイブック」('12年/米)でアカデミー賞主演女優賞を受賞、彼女自身もオスカー女優となっていますが、この「あの日、欲望の大地で」での演技の方が「世界にひとつのプレイブック」より上のように思います(シリアスドラマとコメディを比較するのは難しいが)。

ジェニファー・ローレンス(18歳)2008年・第65回ヴェネツィア国際映画祭マルチェロ・マストロヤンニ賞(新人俳優賞)受賞(「あの日、欲望の大地で」)

 この作品は、シネマブルースタジオで「女たちの肖像」特集の1本として観ましたが、この特集でその前に上映されたのが、最近「2重螺旋の恋人」('17年/仏・ベルギー)が日本公開されたばかりの、フランソワ・オゾン監督の「まぼろし」('00年/仏)でした。この監督も、ほぼ全作自分で(共同脚本もあるが)脚本を書いています。

ブリュノ・クレメール(ジャン)/シャーロット・ランプリング(マリー)
まぼろし ブリュノ・クレメール(左、ジャン).jpg 大学で英文学を教えるマリー(シャーロット・ランプリング)は、夫ジャン(ブリュノ・クレメール)とは結婚して25年になる50代の夫婦。子どもはいないが幸せな生活を送っている。毎年夏になると、フランス南西部・ランド地方の別荘で過ごし、今夏も同様にヴァカンスを楽しみに来た。昼間、マリーが浜辺でうたた寝する間、ジャンは海に泳ぎに行く。目を覚ましたマリーは、ジャンがまだ海から戻っていないことに気づく。気を揉みながらも平静を装うマリーだが、不安は現実のものとなる。ヘリコプターまで出動した大がかりな捜索にもかかわらずジャンの行方は不明のまま。数日後、マリーはひとりパリへと戻るが―。

まぼろし シャーロット・ランプリング(マリー).jpg シャーロット・ランプリング(1946年生まれ)が演じる、夫の死を受け入れられないマリーが、"壊れている"感がある分、どこかいじらしさもありました。彼女がパリに戻って最初の方のシーンで夫が出てくるため、その部分はカットバックかと思ったら、どうやらそうではなかったみたい。すでに「まぼろし」は始まっていた?(原題: Sous le sableは「砂の下」の意)。そう言えば、すでに女友達のアマンダ(アレクサンドラ・スチュワルト)に精神科に診てもらうよう勧められていました。

ジャック・ノロ(ヴァンサン)/アレクサンドラ・スチュワルト(アマンダ)
まぼろし ジャック・ノロ(左、ヴァンサン).jpg0まぼろし アレクサンドラ・スチュワルト.jpg 彼女にとって夫は生きているわけで、女友達のアマンダはヴァンサン(ジャック・ノロ)を再婚相手として紹介したつもりなのだろうけれども(一見カットバック・シーンと思われた食事会は、二人をくっつけるためのものだったわけか)、彼女自身は不倫のスリルと快感を味わっているようなまぼろし シャーロット・ランプリング まぼろし.jpg感じでした(やや滑稽にも見える)。夫の薬棚からうつ病の薬を見つけて夫が自殺することを心配し、医者に行ってヴァカンス以降は薬を受け取りに来ていないことを知っても、あくまでも自殺を心配しています。仕舞には、ラスト近くで夫と思しき水死体が揚がって自ら検死に行くも、腕時計が違うという理由だけで(それが正確かどうかも怪しいが)夫とは認めようとしない―精神分析でいう"合理化"なのでしょうが、やっぱり"壊れている"!

 ストーリー的にはそれだけで、「あの日、欲望の大地で」に比べるとずっとシンプルでした。ラストに救いがあり、それが主人公の"ブレークスルー"にもなっている「あの日、欲望の大地で」とは異なり、主人公が夫の死を受け入れられないまま(壊れたまま)終わるところが個人的にはややあっけなく、これってヨーロッパ映画的なのかなと思いましたが、この作品は本国フランスのみならずアメリカでも好評を得たというのが興味深いです(日本でも、キネマ旬報ベストテンで外国映画の5位にランクインした)。

シャーロット・ランプリング まぼろし .jpg アメリカでも好評を得た理由の1つは、シャーロット・ランプリングがアメリカ映画にもよく出ていることもあるのでは。まさにシャーロット・ランプリングの演技を観る映画になっているような感じですが、彼女はその負託に応えている感じで、この作品の演技が、「さざなみ」('15年/英)などでの高い評価を得た近年の演技の下地として連なっているのではないかと思います。かつて「愛の嵐」('74年/伊)の頃は、こんなに息の長い女優になるとは思われていなかったように思います。また、彼女は実際に活動が一時低調であったわけで、フランソワ・オゾン監督にこの作品で起用されたことで、再び注目を集めることになったとも言えます。
シャーロット・ランプリング in「まぼろし」('00年)

愛の嵐 [DVD]
「愛の嵐」1974.jpg「愛の嵐」1.jpg 「愛の嵐」は、リリアーナ・カヴァーニ監督の1973年のイタリア映画。ウィーンのとあるホテルの夜番のフロント係兼ポーターとして働くマクシミリアン(ダーク・ボガード)は、実は元ナチス親衛隊の将校で収容所の所長だった人物。アメリカから有名なオペラ指揮者がホテルに泊り客としてやってきますが、その妻ルチア(シャーロット・ランプリング)は、13年前マックスが強制収容所でその権力を使って倒錯した愛の生活を送ったユダヤ人の少女で、二人は再び倒錯した愛欲「愛の嵐」2.jpgの世界にのめり込んでいくという話です。この映画において、主人公マックスはじめとして元ナチ党員たちが孤立せずに、横のつながりを持ちながら生きていることが描かれていて(この部分は実際の社会や政治を反映している)、そうした輩にとってルチアは危険な存在になっていくが―。

シャーロット・ランプリング/ダーク・ボガード

「愛の嵐 「.jpg 「美しい」とか「醜い」とか様々な評価のある映画ですが、シャーロット・ランプリングの美貌が光る作品であったには違いなく、上半身裸にサスペンダーでナチ帽をかぶって踊る場面は、映画史に残る有名なシーンの1つとなりました。原題は「ナイトポーター」。昔観たときは、ヨーロッパのホテルにはダーク・ボガードみたいな顔のポーターがよくいるけれど、みんなスゴイ過去を持っているのかも...とも思ったりしました。

Liliana Cavani Leone d'oro alla carriera.jpg(●2023年・第80回「ヴェネチア国際映画祭」にて、リリアーナ・カヴァーニ監督は、俳優のトニー・レオンとともに栄誉金獅子賞を受賞した。)

Venezia 80: a Liliana Cavani e Tony Leung Chiu-wai vanno i Leoni d'Oro alla Carriera


 シネマブルースタジオの「女たちの肖像」特集からの2作は、ストーリー的には「あの日、欲望の大地で」が良かったですが、2作とも女優の演技を堪能することができる映画でした。


あの日、欲望の大地でs.jpg「あの日、欲望の大地で」●原題:THE BURNING PLAIN●制作年:2008年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ギジェルモ・アリアガ●製作:ウォルター・パークス/キム・ベイシンガー欲望の大地.jpgローリー・マクドナルド●撮影:ロバート・エルスウィット●音楽:ハンス・ジマー/オマール・ロドリゲス=ロペス●時間:106分●出演:シャーリーズ・セロン/キム・ベイシンガー/ジェニファー・ローレンス/ホセ・マリア・ヤスピク/ジョン・コーベット/ダニー・ピノ/テッサ・イア/ジョアキム・デ・アルメイダ/J・D・パルド/ブレット・カレン●日本公開:2009/09●配給:東北新社●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-09-07)(評価:★★★★)
キム・ベイシンガ in「ネバーセイ・ネバーアゲイン」('83年/米・英)/「ナインハーフ」('85年/米)/「バットマン」('89年/米)/「L.A.コンフィデンシャル」('97年/米)/「あの日、欲望の大地で」('08年/米)
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まぼろしSOUS LE SABLE.jpg「まぼろし」●原題:SOUS LE SABLE/(英)UNDER THE SAND●制作年:2000年●制作国:フランス●監督:フランソワ・オゾン●製作:オリヴィエ・デルボス/マルク・ミソニエ●脚本:フランソワ・オゾン/エマニュエル・ベルンエイム/マリナ・ドゥ・ヴァン/マルシア・ロマーノ●撮影:アントワーヌ・エベルレ/ジャンヌ・ラポワリー●音楽:フィリップ・ロンビ●時間:95分●出演:シャーロット・ランプリング/ブリュノ・クレメール/ジャック・ノロ/アレクサンドラ・スチュワルト/ピエール・ヴェルニエ/アンドレ・タンジー●日本公開:2002/09●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(18-09-03)(評価:★★★☆)


「愛の嵐」00.jpg「愛の嵐」3.jpg「愛の嵐」●原題:IL PORTIERE DI NOTTE/(英)THE NIGHT POTER●制作年:1974年●制作「愛の嵐 THE NIGHT PORTER.jpg国:イタリア●監督:リリアーナ・カヴァーニ●製作:ロバート・ゴードン・エドワーズ●脚本:リリアーナ・カヴァーニ/イタロ・モスカーティ●撮影:アルフィーオ・コンティーニ●音楽:ダニエレ・パリス●原作:リリアーナ・カヴァーニ/バルバラ・アルベルティ/アメディオ・パガーニ●時間:117分●出演:ダーク・ボガード/シャーロット・ランプリング/フィリップ・ルロワ/ガブリエル・フェルゼッティ/マリノ・マッセ/ウーゴ・カルデア/イザ・ミランダ/カイ・ジークフリート・シーフィルド●日本公開:1975/11/(ノーカット完全版)1997/03●配給:日本ヘラルド映画/(ノーカット完全版)彩プロ●最初に観た場所:八重洲スター座(79-02-01) (評価:★★★★)●併映:「ルシアンの青春」(ルイ・マル)

リリアーナー・カバーニ/イタロ・モスカティ共著『愛の嵐 THE NIGHT PORTER 』【ノベライズ小説】
   
シャーロット・ランプリング in「スパイ・ゲーム」('01年/米)/「わたしを離さないで」(10年/英)(原作:カズオ・イシグロ)/「デクスター 警察官は殺人鬼(シーズン8)」('13年/米)
Charlotte Rampling-spy-game-(2001) -.jpg シャーロット・ランプリング わたしを離さないで.jpg シャーロット・ランプリング デクスター.jpg

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