【3183】 △ フランソワ・オゾン (原作:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 「焼け石に水」 (00年/仏) (2001/07 ユーロスペース) ★★★

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いま一つ入り込めなかったが、4人並んだダンスシーンなどはセンスを感じた。

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焼け石に水 [DVD]」ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ

「焼け石に水」1r.jpg 1970年代のドイツ。婚約者がいる20歳の青年フランツ(マリック・ジディ)は、中年男レオポルド(ベルナール・ジロドー)に街で声を掛けられ、婚約者とのデートをすっぽかして彼の「焼け石に水」9r.jpg家に行く。レオポルドの妖しい魅力にとりつかれたフランツはそこにそのまま棲みついてしまう。やがて二人の関係が険悪になり始めた頃、フランツの婚約者の彼女アナ(リュディヴ-ヌ・サニエ)がやって来て、さらには昔レオポルドと7年間同棲していたという元恋人の"彼女" ヴェラ (アンナ・トムソン)が、男性から女性に性転換したと言ってやって来る―。

「焼け石に水」0r.jpgオゾンかんとく.jpg フランソワ・オゾン監督(1967年生まれ)が32歳で発表した2000年公開作。彼が敬愛するライナー・ヴェルナー・ファスビンダー監督が19歳で書いた未発表の戯曲の映画化した、4幕構成の室内劇風の作品です。2001年に日本公開され、キネマ旬報ベストテンで、外国映画の5位。昨年['21年]Bunkamuraル・シネマで20年ぶりに35ミリフィルムでリバイバル上映されました(個人的には今回シネマブルースタジオで観た。同監督の「クリミナル・ラヴァーズ」('99年/仏・日)もやっていたのだが観に行けなかった)。

まぼろし dvd.jpg カトリーヌ・ドヌーヴをはじめとする出演した8人の女優達に対して2002年のベルリン国際映画祭銀熊賞が贈られた「8人の女たち」('02年/仏)に通ずるミュージカル的シーン、「スイミング・プール」('03年/英・仏)に通じるエロティシズム、「ぼくを葬る」('05年/仏)に通じるゲイのモチーフなど、フランソワ・オゾン監督の原点的な作品であるとのことです。個人的には、「まぼろし」('00年/仏)を観て、まったくゲイっぽさを感じなかったのですが、こちらはもろゲイだった(笑)。そのせいではないですが、コメディなんだけれど、ちょっと入り込みにくかった気もします。

「焼け石に水」3r.jpg フランツの婚約者役のリュディヴ-ヌ・サニエは、映画を通してずっと裸かそれに近い下着姿でいて、セクシーと言うよりは健康的という感じ。でも、こんな娘を放っぱらかしにして中年オジンに取り込まれてしまうということは、女性よりも男性によってその孤独を癒されたということであり、フランツ青年はもともともとその素養があったのではないか...。

「焼け石に水」6r.jpg と思ったら、終盤にきて、リュディヴ-ヌ・サニ「焼け石に水」2r.jpgエの演じるアナの方が、ベルナール・ジロドー演じる中年男フランツの性的魅力に目覚めて(調教されて)しまい、この中年男は両刀使いだったわけなのだなあ。アナ、ヴェラとトリプルセックス状態で、これにはフランツ青年は大ショックで(同時に両方の性対象に裏切られたようなものだから)、結局自死の道を選びます。ある意味、「美貌ゆえの悲劇」と言えるかもしれません。

 このように明るい話ではないですが、見た目さほど悲劇的でもなく、むしろ全体のトーンはコメディタッチで、よく分かりませんが、この辺りがこの監督の才気煥発たるところなのでしょう。4人が並んでダンスするシーンなどはいい雰囲気と言うかセンスだと思いました。

HECATE 1982.jpg ベルナール・ジロドーは、ダニエル・シュミット監督の「ヘカテ」('82年/仏・スイス)で、北アフリカにあるフランス植民地(モロッコ?)の外交官で、ローレン・ハットン演じる魔性の美女に耽溺していく主人公を演じていました。今回は職業不詳ですが、何かの顧客業務をやっているみたい(外交官ならむ保険外交員?)。当時、53歳くらいでしょうか。20年前と同様に、性愛の虜になっている男を演じているのがいいです(2010年に63歳で亡くなっているのが残念)。

「ヘカテ」('82年/仏・スイス)ベルナール・ジロドー
 
「焼け石に水」br.jpg「焼け石に水」●原題:GOUTTES D'EAU SUR PIERRES BRULANTES(WATER DROPS ON BURNING ROCKS)●制作年:2000年●制作国:フランス●監督・脚本:フランソワ・オゾン●製作:オリヴィエ・デルボスク/マルク・ミソニエ/アラン・サルド/クリスティーヌ・ゴズラン●撮影:ジャンヌ・ラポワリー●音楽(挿入曲):フランソワーズ・アルディ●原作:ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー●時間:90分●出演:ベルナール・ジロドー/マリック・ジディ/リュディヴィーヌ・サニエ/アンナ・レヴィン●日本公開:2001/07●配給:ユーロスペース●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(22-08-09)(評価:★★★)

Hécate(1982) 1.jpg「ヘカテ」●原題:HECATE●制作年:1982年●制作国:フランス/スイス●監督:ダニエル・シュミット●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ダニエル・シュミット/パスカル・ジャルダン●撮影:レナート・ベルタ●音楽:カルロス・ダレッシオ●原六本木駅付近.jpg俳優座劇場.jpg作:ポール・モラン「ヘカテとその犬たち」●時間:108分●出演:ベルナール・ジロドー/ローレン・ハットン/ジャン・ブイーズ/ジャン=ピエール・カルフォン/ジュリエット・ブラシュ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(83-10-17)●2回目:自由が丘・自由劇場(84-09-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)
六本木・俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。

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This page contains a single entry by wada published on 2022年8月24日 00:59.

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【3184】 ◎ 加藤 久仁生 「つみきのいえ」 (2008/10 ロボット) ★★★★☆ is the next entry in this blog.

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