「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1779】 江藤 努 (編) 『映画イヤーブック 1993』
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'91年公開作品で個人的◎は「テルマ&ルイーズ」。この年は「ツイン・ピークス」の年だった。
『映画イヤーブック〈1992〉 (現代教養文庫)
』「テルマ&ルイーズ (スペシャル・エディション) [DVD]
」「ターミネーター2 特別編 [DVD]
」「ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD]
」
現代教養文庫の『映画イヤーブック』の1992年版で、1991年に劇場公開された洋画413本、邦画151本。計564本のデータを収めるほか、映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオムービー、未公開ビデオデータなども網羅しています(付録の部分が充実して、前年版より約50ページ増の470ページに)。
本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「わが心のボルチモア」「ワイルド・アット・ハート」「ニキータ」「マッチ工場の少女」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「羊たちの沈黙」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ターミネーター2」「コルチャック先生」「テルマ&ルイーズ」「真実の瞬間(とき)」「ボイジャー」「髪結いの亭主」「トト・ザ・ヒーロー」など、一方、邦画で四つ星は、大林宣彦監督の「ふたり」、山田洋次監督の「息子」、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海」、竹中直人監督の「無能の人」の4本だけで、分母数が違うけれどこの頃は概ね「洋高邦低」が続いた時期だったのかもしれません。
個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話(ロンドン映画批評家協会賞「作品賞」「女優賞(スーザン・サランドン)」受賞作)。
リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいと
思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。
ハーヴェイ・カイテル(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ブラッド・ピット
逃避行の背景となる西部の大自然を、映像に凝るリドリー・スコット監督らしく美しく撮っていて、最後は何台ものパトカーによりグランドキャニオンの絶壁に2人は追いつめられるのですが、こうなると結末は見えてしまうものの(「明日に向かって撃て!」の現代女性版だね)、からっとした爽快感があって、ある種、日常生活や夫の面倒にかまけ、生きることに飽いている女性の「夢」を描いた作品と言えるかも(アメリカの女性ってそんなに鬱々とした日常を生きているのか?―でも、ある層はそうかもしれないなあ)。
「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。
ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになる
ジェームズ・キャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は最高評価になる星4つ)。IMDb評価は、「ターミネーター」が[8.1]、「ターミネーター2」が[8.6]で、「2」が上になっています。後からまとめて観た人は「2」の方がいいのかもしれないけれど、それぞれリルタイムで観た自分の場合、「1」のインパクトが大きかったです。
「ターミネーター」('84年/米・英)はアーノルド・シュワルツネッガーを一気にスターダムに押し上げた作品でしたが、ジェームズ・キャメロン監督にとっても監督デビュー作「殺人魚
フライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返っても
強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(ヒットしたB級映画にありがちだが、すぐにでも続編を撮りたいところが版権が複数社に跨っており、撮ろうにもなかなか撮れなかった)、その間に
シュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「トータル・リコール」「キンダガートン・コップ」といった作品に主演しており、こうなるともう悪役には戻れない...。特に「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」といったコメディもそつなくこなしているのが大きいと思われ、人気面だけでなく演技面でも、「コナン・ザ・グレート」('82/米)でラジー賞の"最低男優賞"になってしまった人とは思えない成長ぶりでした(このことが「ターミネーター2」の"ヒューマンなターミネーター"役につながっていくわけか)。
因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」が6月にWOWOWで日本で初公開、9月にビデオがリリースされており、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。
ビデオ14巻、全29話(パイロット版(「序章」)を含めると30話)、25時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっ
、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔と言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。(●その後、2017年に物語の25年後を描いた「リミテッド・イベント・シリーズ(全18話)」(邦題「ツイン・ピークス The Return」)が作られた。)
この作品のパイロット版は、もともとTVシリーズの第1話として作られたものですが、ヨーロッパへの輸出用に作られた、それ自体で映画として完結するインターナショナル・ヴァージョンが当時リリースされており、本編の「謎とき」とまではいかないですが、背景の説明としてガイド的役割を果たしています(ウィキペディアでは本作には「2種類の序章」があるとの言い方をしている)。
また、'92年に「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」という劇場版が作られ、本編との矛盾もあるものの、こちらも本編の解説的役割を果たしています(と言っても、到底一筋縄で解るといったものではないけれど)。
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 [DVD]」
TV版の雰囲気をしっかり引き継いでいるし(むしろデイヴィッド・リンチ的な雰囲気はより前面に出ている)、"壊れゆくローラ"を演じたシェリル・リーの演技も悪くない。ある意味、TV版の結末よりも正統派的な展開なのかもしれないけれど、メタファーの大部分が理解不能だったなあ。《ツイン・ピークス・フリークス》と言われる人のサイトを見て、なるほどそういうことなのかと理解した次第(登場人物そのものがメタファーだったりしてるわけだ)。まあ、TVシリーズを最後まで観てから映画を観た方がいいに違いはありません(それでも、よく解らないところが多かったのだが)。
「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)
「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991
年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)
「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハード
●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:
アーノルド・シュワルツェネッガー/マイケル・ビーン/リンダ・ハミルトン/ポール・ウィンフィールド/ランス・ヘンリクセン/リック・ロッソヴィッチ/ベス・マータ/ディック・ミラー●日本公開:1985/05●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・文化シネマ2 (85-05-26) (評価:★★★☆)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2008(平成20)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン
Twin Peaks (1990)
「ツイン・ピークス(全30話)」●原題:TWIN PEAKS●制作年:1990~1991年●制作国:アメリカ●監督:デヴィッド・リンチ 他●時間:24時間(全30回)●出演:カイル・マクラクラン/ミゲル・フェラー/マイケル・オントキーン/ジョアン・チェン/シェリル・リー/シェリリン・フェン/ララ・フリン・ボイル/メッチェン・エイミック/ペギー・リプトン/レイ・ワイズ/ラス・タンブリン/ミゲル・ファーラー/デヴィッド・リンチ●日本放映:1991/04 WOWOW 初公開/1991/06~ TBS(評価★★★★☆)
「ツイン・ピークス ゴールド・ボックス アンコール [DVD]」(2016)25時間3分
「ツイン・ピークス」 Twin Peaks (ABC 1990/04~1991/06) ○日本での放映チャネル: WOWWOW(1991)
【ツイン・ピークス主要登場人物】
(1段目)デイル・クーパー捜査官(カイル・マクラクラン)/ローラ・パーマー(シェリル・リー)/アルバート・ローゼンフィールド捜査官(ミゲル・フェラー)/ハリー・S・トルーマン保安官(マイケル・オントキーン)/ハリーの部下、アンディ・ブレナン(ハリー・ゴアズ)/(2段目)ホーク保安官補佐(マイケル・ホース)/署の受付嬢ルーシー(キミー・ロバートソン)/ローラの同級生ドナ・ヘイワード(ララ・フリン・ボイル)/ローラの同級生オードリー・ホーン(シェリリン・フェン)/シェリー・ジョンソン(メッチェン・アミック)/(3段目)製材所経営者の未亡人ジョスリン・パッカード(ジョアン・チェン)/ボビー・ブリッグス(ダナ・アッシュブルック)/マイク・ネルソン(ゲイリー・ハーシュバーガー)/ローラの同級生ジェームズ・ハーレイ(ジェームズ・マーシャル)/シェリーの夫レオ・ジョンソン(エリック・ダ・レー)/(4段目)小さな男(マイケル・アンダーソン)/片腕の男(アル・ストロベル)/丸太おばさん(キャサリーン・コウルソン)/ネィディーン・ハーレイ(ウェンディ・ロビー)/謎の男ボブ(フランク・シルバ)
ジョアン・チェン/ベルナルド・ベルトルッチ監督「ラストエンペラー」('87年/伊・中国・英)・デヴィッド・リンチ監督「ツイン・ピークス」('90/英)・アン・リー監督「ラスト、コーション」('07年/米・中国・台湾・香港)
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」●原題:TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER(Twin Peaks:Fire Walk With Me)●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイ
ズ/メッチェン・アミック/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/ミゲル・フェラー/キーファー・サザーランド/ダナ・アシュブルック/フィービー・オーガスティン●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)
カイル・マクラクラン(デイル・クーパーFBI捜査官)/デヴィッド・ボウイ(フィリップ・ジェフリーズFBI捜査官...映画版のみ出演)/ミゲル・フェラー(アルバート・ローゼンフィールドFBI捜査官)
デイヴィッド・リンチ(映画監督)2025年1月15日逝去。78歳。人気ドラマシリーズ「ツイン・ピークス」や、映画「マルホランド・ドライブ」など、カルト的人気を得た多くの作品で知られる。
「朝日新聞」2025年1月18日朝刊
「ラッキー」 (17年/米)ジョン・キャロル・リンチ監督
デヴィッド・リンチ(ペットの陸ガメ"ルーズベルト"の失踪を嘆く白い帽子の男)/ハリー・ディーン・スタントン(ブラッディ・マリーを手にする男)
《読書MEMO》
●2025年ドラマ化【感想】2025年6月22日からNHKBSの「プレミアムドラマ」枠にて、直木賞作家での父である井上光晴と瀬戸内寂聴の不倫を基に描いた『あちらにいる鬼』('19年/朝日新聞出版)が話題になった井上荒野の『照子と瑠衣』('23年/祥伝社)のドラマ化作品が風吹ジュン・夏木マリのW主演で放映されたが、井上荒野の原作はまさに映画「テルマ&ルイーズ」へのオマージュ的な小説であり、従ってドラマも「テルマ&ルイーズ」を原案としていると
見ていい。ただし、原作は主人公の二人の女性の年齢を70代に引き上げており、ドラマでも実際に共に1952年5月生まれで73歳の風吹ジュン、夏木マリが演じている(二人は初共演)。70歳の親友同士の照子と瑠衣がそれぞれ、照子はモラハラ気味の夫との生活に見切りをつけ、瑠衣は老人マンションでのトラブルから逃れるために、二人一緒に逃避行を始め、長野県・八ヶ岳の別荘地で素性を隠して暮らし始めるというストーリー(因みに、井上荒野も2019年より長野県八ヶ岳の麓に暮らす)。風吹ジュンは年齢を重ねるごとにいい役者になっていく。
「照子と瑠衣」●演出:大九明子●脚本:大九明子/フル
タジュン●音楽:侘美秀俊●原作:井上荒野『照子と瑠衣』●時間:49分●出演:風吹ジュン/夏木マリ/福地桃子/久保田紗友/光宗薫/三浦りょう太/藤堂日向/藤崎ゆみあ/岡野陽一/安齋肇/山口智充/萩原聖人/筒井真理子/松雪泰子/由紀さおり/大和田伸也●放映:2025/06~08(全8回)●放送局:NHK-BSプレミアム4K/NHK BS