【1428】 ○ ダニエル・シュミット 「ヘカテ」 (82年/仏・スイス) (1983/08 ヘラルド・エース) ★★★★ (○ マイケル・カーティス 「カサブランカ」 (42年/米) (1946/06 セントラル映画社) ★★★★)

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女が愛しているのは快楽だけだという事実を突き付け、愛の行為の果てを描いた「ヘカテ」。

Hécate(1982).jpgヘカテ/ダニエル・シュミット.jpg ヘカテ/エレンディラ.jpg カサブランカ 1942.jpg
Hécate(1982) 輸入版DVDジャケット「ヘカテ [DVD]」ベルナール・ジロドー/ローレン・ハットン/VHS「エレンディラ/ヘカテ」「カサブランカ 特別版 [DVD]

 1942年、スイスのベルン。フランス大使館主催のパーティの人混みの中で、ある男がひとりもの想いに沈んでいた。その男ジュリアン・ロシェル(ベルナール・ジロドー)は10年前、フランスの植民地である北アフリカの地に赴任、熱い太陽の下で退屈な日々を送っていたが、あるパーティでテラスで風に吹かれていたクロチルドという女性(ローレン・ハットン)に出会い、その魔性の魅力に溺れていく。やがて、彼はクロチルドに大きな秘密があることを知る。それが秘密と呼んでいいものなのか、彼自身にもわからないのだが。彼は、ギリシャ神話に登場する女神ヘカテヘカテ パンフ.JPGを思い浮かべた。犬を従えて闇を歩く夜の魔女ヘカテ―。

エレンディラ サンリオ文庫.png かつてレンタルビデオで「エレンディラ」と「ヘカテ」の2本組みというのがありましたが、何だか凄い組み合わせだなあと(エレンディラの祖母とヘカテことクロチルドの"魔女"セットか)。「エレンディラ」はガルシア=マルケス原作、「ヘカテ」はポール・モラン(1888-1976/享年88)原作で、この作家は外交官としてアフリカに赴任していたこともあり、亡命先のスイスでの、ココ・シャネル(1883-1971/享年87)へのインタヴュー取材などでも知られています。

HECATE by  Daniel Schmid.jpgHecate.jpg 「ヘカテ」というのは、ギリシャ神話に出てくる、男を、子供を、更に世界をも支配する巨大な魔力を持つ、神秘的で残酷な女神のことだそうで、主人公の男にとってクロチルドはまさに「ヘカテ」であり、パンフレットにある批評の「恋とは永遠に不確か」(映画評論家・渡辺祥子)、「恋に乱れる男たちの愚かさよ」(画家・合田佐和子)と言うよりむしろ、「女が愛しているのは快楽だけだという事実」(翻訳家・小沢瑞穂)を突き付け、「愛の行為の果て」(作家・辻邦生)を描いた映画とも言えるかも。

Hécate(1982) 2.jpg クロチルド役のローレン・ハットン(Lauren Hutton、1943年生まれ)は、アローレン・ハットン.bmpメリカン・ヴォーグの専属モデル出身の女優で、特別にグラマーでも美人でもないですが、服の着こなしがいいのか、ダニエル・シュミット(1941-2006/享年64)のカメラ指示がいいのか、シュミットの映像美にマッチしており、この作品では、アンニュイなセクシーさを充満させています。
 後に、61歳でヌードになったことで話題になり、更に、'08年には、65歳にして、スペイン大手ファッションチェーン、マンゴのアルジェリアで新規ショップのオープンに際して、親善大使並びにイメージ・キャラクターに起用されています(やはり、この人も"魔女"か)。

マンゴの広告キャンペーンに登場したローレン・ハットン(2008年・65歳)

HECATE 1982.jpg この映画で、ベルナール・ジロドー演じる外交官が赴任した国は同じ北アフリカでもモロッコのようですが、いずれにせよ、辺境の地で無聊を託っている折に、目の前にこんな女性が現れ、その女性が、恋人、愛人、情婦、更には貴婦人としても完璧であれば、男はずぶずぶ深みに嵌っていくだろうなあと思わせるものがあり、実際、この映画の主人公の男は次第に嫉妬心のコントロールが出来なくなって、狂気に駆られていきます。

 後に狂気から覚めた男が、シベリアの地で今は世捨て人同様となった彼女の夫と見(まみ)え、「君も、僕と同類さ。あれに噛まれた犬なんだ」と言われる場面は、何とも怖いと言うか、しんみりさせられると言うか...(原作の原題は「ヘカテとその犬たち」)。

異邦人パンフレット.jpg 映画の、北アフリカの砂漠の町という舞台設定が、何と言ってもいいです。パンフレットにある、筈見有弘(1937-1997/享年59)の、映画における「文化果つる辺境のロマンチシズム」というのは、マレーネ・デートリッヒ主演の「モロッコ」('30年)、ジャン・ギャバン主演の「望郷」('37年)あたりから連綿とあって、マルチェロ・マストロヤンニ主演の「異邦人」('68年)などもそうであり、この作品も、その系譜にあるとの解説に頷かされまカサブランカ1942.jpgした。マイケル・カーティス監督の「カサブランカ」('42年/米)なども「北アフリカ映画」とでも言うか、その類と言えるのではないかと思います。

 第二次大戦下の仏領モロッコの首都カサブランカは戦乱をさけて渡米する人々の寄港地。米国人リック(ハンフリー・ボガート)が経営する酒場には様々な人間が出入りする。ドイツ官憲から旅券を奪ったウーガーテ(ピーター・ローレ)がリックを訪れ保管を依頼。ウーガーテが立ち去ろうとした時、彼を追うドイツ軍将校シュトラッサー少佐(コンラッド・ファイト)に命じられた警察署長ルノー(クロード・レインズ)がウーガーテを逮捕。その後に来たのが反ナチ運動の指導者ラズロ(ポール・ヘンリード)と妻イルザ(イングリット・バーグマン)で、目的は旅券入手だった。イルザはリックを見て驚く。それは、パリ時代、イルザは夫であるラズロが捕虜収容所で死んだと聞かされ、出会ったばかりのリックと恋に落ちた過去があったため。パリ陥落の日、リックカサブランカ00.jpgはイルザと一緒に旅立つ予定だったが、約束の時間にイルザは現れず、リックはイルザに振られたと思っていた。実はその日、イルザは生きていたラズロと再会していたのだ。余儀のない事情が二人を割いたのだったと知って、リックの愛情は蘇る。リックはラズロ夫妻に旅券を渡し、ルノーを味方にして飛行場へ。二人を飛行機に乗せた時、ラズロを追ってシュトラッサー少佐が現れ、離陸を止めようとするシュトラッサーをリックが射殺。リックはカサブランカ脱出を決め、リックを見逃すルノーと共に夜霧の中へ消えていく―。

下段左からシドニー・グリーンストリート(カサブランカの市場を仕切っているとされるイタリア人事業家フェラーリ。リックの潜在的な協力者となる)、ハンフリー・ボガート(酒場経営者リック)/ポール・ヘンリード(反ナチ運動の指導者ラズロ)、イングリット・バーグマン(その妻イルザ)、クロード・レインズ(警察署長ルノー)、ボガート
ボガート、ピ―タ―・ローレ(ドイツ官憲から旅券を奪ったウーガーテ)
カサブランカ ピ―タ―ローレ.jpgカサブランカ2.jpg シュトラッサーを射ち殺してでも彼女を守ろうとするリックは、過去の痛みに耐えていた彼ではなかったということでしょう。その上で、愛を失っても大義を守ろうとしたリック。その彼を前にして、実はレジスタンスの隠れた支援者であったルノーは、自由フランスの支配地域であるフランス領赤道アフリカのブラザヴィルへ逃げるように勧めて、リックを見逃すという流れが(因みに、カサブランカとブラザヴィルでは陸路で千キロ以上の遠隔地であるが)、出来すぎた結末と言えばそうかもしれませんが、実際よく出来ていたように思います。基本、ラブロマンス映画ではあるものの、アメリカも参戦した第二次世界大戦における国際関係と対立を中心に置いて製作された作品であることもあり、プロパガンダ的要素が多分にあったのだと今振り返って思います。でも、そうしたことを超えて、「君の瞳に乾杯」というボガードがあまりにカッコよすぎる...。
 

Hécate(1982) 1.jpg「ヘカテ」●原題:HECATE●制作年:1982年●制作国:フランス/スイス●監督:ダニエル・シュミット●製作:ベルント・アイヒンガー●脚本:ダニエル・シュミット/パスカル・ジャルダン●撮影:レナート・ベルタ●音楽:カルロス・ダレッシオ●原六本木駅付近.jpg俳優座劇場.jpg作:ポール・モラン「ヘカテとその犬たち」●時間:108分●出演:ベルナール・ジロドー/ローレン・ハットン/ジャン・ブイーズ/ジャン=ピエール・カルフォン/ジュリエット・ブラシュ●日本公開:1983/08●配給:ヘラルド・エース●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(83-10-17)●2回目:自由が丘・自由劇場(84-09-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)
六本木・俳優座シネマテン(六本木・俳優座劇場内) 1981年3月20日オープン。2003年2月1日休映(後半期は「俳優座トーキーナイト」として不定期上映)。

カサブランカ1.jpg「カサブランカ」●原題:CASABLANCA●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティス●製作:ハル・B・ウォリス●脚本:ハワード・コッチ/ジュリアス・J・エプスタイン/フィリップ・G・エプスタイン●撮影:アーサー・エディソン●音楽:マックス・スタイナー」●時間:102分●出演:ハンフリー・ボガート/イングリッド・バーグマン/ポール・ヘンリード/クロード・レインズ/コンラート・ファイト/シドニー・グリーンストリート/ピーター・ローレ/S・K・サコール/マデリーン・ルボー/ドーリー・ウィルソン/ジョイ・ペイジ/ジョン・クォーレン/レオニード・キンスキー/クルト・ボウワ●日本公開:1946/06●配給:セントラル映画社●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-05)(評価:★★★★)

カサブランカ ピ―タ―ローレ.jpg ピーター・ローレ

カサブランカ ピ―タ―ローレ2.jpgピーター・ローレ in「暗殺者の家」('34年)/「マルタの鷹」('41年)/「カサブランカ」('42年)/ヒッチコック劇場「南部から来た男」(1960) (日本放送時のタイトル「指」)with Steve McQueen/「黒猫の怨霊」('62年)エドガー・アラン・ポー原作

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