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作りすぎというか、盛り込み過ぎという感じだが、奈良岡朋子の「知覧の母」は良かった。

映画 ホタル .jpg 映画 ホタル vhs.jpg 映画 ホタル02.jpg
ホタル [DVD]」/VHS  高倉健・田中裕子
Hotaru2.jpg「ホタル」2001年図1.jpg 桜島を望む鹿児島県知覧町で、元特攻隊員の生き残りの山岡(高倉健)はこの日も漁船「とも丸」から養殖カンパチの生簀に餌を撒いていた。それを見守る妻の知子(田中裕子)と二人の間には子はなく、「とも丸」を我が子のように大事に乗りこなしてきた。知子が14年前に腎臓を患い人工透析が必要になったのを機に、沖合漁をやめカンパチの養殖を始めたのだった。昭和が終わり、平成が始まった頃、山岡は同じ特攻隊の生き残りだった藤枝(井川比佐志)が自殺したという知らせを聞き、青森に住む藤枝がホタル  2001 .jpg毎年のように山岡にリンゴを送っていただけに衝撃を受ける。数日後、藤枝の孫・真実(水橋貴己)が山岡の元を訪れる。真美(水橋貴己)が携えた藤枝の遺品のノートには、山岡から「生きろ」と励まされているように感じたこと、昭和が終わり自分の役目は終わったと感じることなど、その想いが綴られていた。数日後、山岡はかつて特攻隊員らから「知覧の母」と呼ばれて慕われていた富屋食堂の店主・山本富子(奈良岡朋子)から、特攻で命を落とした金山文隆少尉ことホタル  2001es.jpgキム・ソンジェ(小澤征悦)の遺品である面飾りのついた財布を韓国の実家に届けてほしいと託される。折しも医師(中井貴一)から知子の余命が僅か1年半と宣告されており、山岡は最後の思い出にと知子との韓国行きを決める。戦争時、知子(戦時中:笛木優子)は金山と婚約していて、当時は遺言さえ検閲される時代であり、山岡(戦時中:高杉瑞穂)は金山から口頭で、自分は大日本映画 ホタル2_m.jpg帝国のためではなく、知子や実家の家族、そして朝鮮民族の誇りのために死ぬのだという言葉を託されていた。山岡と知子は韓国の金山の実家を訪ねるが、遺族はなぜ金山が死に日本人の山岡が生き残ったのかと山岡を責める。しかし、山岡が金山の遺言を伝えると遺族は山岡を責めるのを止め、遺品を受け取る。山岡は知子に、今まで金山の遺言を伝えなかったことを謝罪すると、知子は「ありがとう」と泣きながら寄り添う。月日が流れ、21世紀のある日、老いた山岡は海辺で、役目を終えた「とも丸」が炎に包まれるのを見つめていた―。 

映画「ホタル」監督.jpg 2001年公開の降旗康男監督作で、その2年前に高倉健(1931-2014)が鹿児島県知覧町の「特攻平和祈念館」を訪ね、同行していた降旗康男監督に自ら映画化を持ちかけた作品で(高倉健が自ら製作を持ちかけたのは初めて)、降旗康男監督はこの作品で2001 年度・第52回「芸術選奨」を受賞しています。日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、70歳で203本目の出演映画となった高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退、富屋食堂の店主・山本富子を演じた奈良岡朋子がブルーリボン賞助演女優賞を受賞しています。

高倉健/降旗康男

 山本富子のモデルは、「知覧の母」乃至は「特攻隊の母」と呼ばれた富屋食堂の主人・鳥濱トメ(1902-1992)で、小澤征悦が演じる金山文隆のモデルは、出撃の前日、鳥濱トメに自身が朝鮮人ということを明かした上で、アリランを歌ったという卓庚鉉(1920-1945)です。但し、鳥濱トメに別れを言いに行った際に「ホタルになって戻ってくるよ」と言ったエピソードの主は、宮川三郎(1925-1945)という人です。この2人の人物のエピソードが一緒にされるようになったのは、河内音頭の鉄砲光三郎(1929-2002)作詞作曲の「知覧の母~ホタル~」あたりからでしょうか。後年の、石原慎太郎脚本・製作総指揮、新城卓監督の「俺は、君のためにこそ死ににいく」('07年/東映)にもこのエピソードが出てきますが(個人的には未見)、そちらでは、宮川三郎がモデルの役と卓庚鉉がモデルの役を分けているようです。

 高倉健は、降旗康男監督の前作「鉄道員」('99年/東映)のように鉄道員を演ずれば鉄道員らしく、この映画のように漁師を演じれば漁師らしくて、その意味では"名優"ですが、「役」である以前に「高倉健」であるという意味では"名優"と言うより"スター"ということになるのかも。でも、やはり"名優"であることも否定できないといった感じでしょうか。以前、この「ホタル」の撮影の頃かと思いますが、NHKが高倉健を特集取材したことがあり、本番直前の現場スタッフの全員がピリピリした雰囲気の中で、これから演技に向かう主役たる高倉健が番組スタッフのインタビューに気さくに応じ、気を使う番組スタッフに「あまり準備しない方がいいんだ」というようなことを言っていたのが印象的でした。同時期の「クローズアップ現代」の高倉健特集の中では、降旗康男監督が高倉健のことを、「涙を流すようなことが出来る俳優ではなかったのが最近変わった」というようなことを述べています。また、高倉健本人へのインタビューで国谷裕子キャスターが、「俳優・高倉健は、ご自身・小田剛一(高倉健の本名)に近づいているのではありませんか」と問うたところ、「小田剛一よりも高倉健の方が遥かに長くなりましたから、どちらが本当の自分なのか分からなくなってきています」と答えたのことです。

映画ホタル-l.jpg 映画の方は、「卓庚鉉」と「宮川三郎」を「金山文隆」ということで一緒にしてしまったのはともかく、金山に許婚がいて、それが主人公である山岡の今の妻の知子であり、その知子は不治の病に冒されていて余命いくばくもなく、最期に金山の遺言を伝えるため遺族のいる韓国へ夫婦で向かう―という、やや作りすぎというか、前半部分には同じ特攻隊の生き残りだった藤枝映画 ホタル 05.jpgの自殺もあったりして、それでその娘(水橋貴己)が山岡を訪ねてくるわけですが、こうなると盛り込み過ぎという感じで、何映画 ホタル 奈良岡.jpgれの話も中途半端になってしまった印象を拭えません。個人的評価としては本来は△ですが、「知覧の母」を演じた奈良岡朋子の、まさに「ホタル」のエピソードを語る部分の演技が光っていて(舞台劇風でありながらも映画向けの演技をしている)、星半個加点して○にしました。舞台出身俳優の中でも上手いです、この人。「鉄道員」にも幌舞駅前「だるま食堂」の店主役で出ていましたが、個人的には、やや遡って、須川栄三監督の「螢川」('87年/松竹)で、この人の演技のところでぐっときました。

映画 ホタル.jpgホタル (映画).jpg 高倉健はこの映画においてもカッコいいにはカッコいいですが、ヤクザ映画ならともかく「鉄道員」やこうした映画になると「高倉健」だけでは成立せず、それを支えているのが、それぞれ妻役を演じた「鉄道員」の大竹しのぶであり、この「ホタル」の田中裕子のような女優と言えるかもしれません。大竹しのぶも上手いことは上手いですが、いかにも"演技派"風の大竹しのぶよりも田中裕子の方が脇役の本分を心得ている感じもします(この人も故・蜷川幸雄に「近松心中物語」の英国公演('89年)などで鍛えられた女優ではある)。但し、奈良岡朋子はその上を行く感じでしょうか。彼女鉄道員 大竹しのぶ2.jpgが「ホタル」のエピソードを語るシーンが前半部にあって、終盤それを超えるシーンが無いのも、"盛りだくさん"なのに"もの足りなさ"を感じる一因かもしれません。

大竹しのぶ in「鉄道員」(1999年)
   
Hotaru (2001)
Hotaru (2001).jpg「ホタル」●制作年:2001年●監督:降旗康男●脚本:竹山洋/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一●時間:114分●出演:高倉健/田中裕子/水橋貴己/奈良岡朋子/井川比佐志/小澤征悦/小林稔侍/夏八木勲/原田龍二/石橋蓮司/中井貴一/高杉瑞穂/今井淑未/笛木夕子/小林綾子/田中哲司/伊藤洋三郎/小林滋央/永倉大輔/好井ひとみ/町田政則/姿晴香●公開:2001/05●配給:東映(評価:★★★☆) 
「ホタル」パンフ.jpg

奈良岡朋子 in「地の群れ」(1987)/「蛍川」(1987)/「鉄道員」(1999年)
「地の群れ」s (1).jpg螢川2es.jpg「鉄道員 大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子2.jpg

中江裕司監督(原案:水上勉)「土を喰ふ日々 わが精進十二ヶ月」(2022年11月11日)沢田研二/奈良岡朋子(1929年12月1日‐2023年3月23日(93歳没))
『土を喰らう十二ヵ月』.jpg

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"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向において力を発揮する作家?

鉄道員(ぽっぽや)単行本.jpg 鉄道員(ぽっぽや)文庫.jpg 鉄道員poster.jpg 鉄道員 dvd.jpg 駅station poster.jpg
鉄道員(ぽっぽや)』『鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)』「鉄道員(ぽっぽや)」映画ポスター「鉄道員(ぽっぽや) [DVD]」「駅 STATION」チラシ

 1997(平成9)年上半期・第117回「直木賞」受賞作。

 道央の廃止寸前のローカル線「幌舞線」の終着駅「幌舞駅」の駅長・佐藤乙松(おとまつ)は。鉄道員一筋に生きてきたが近く定年を迎え、また同時に彼の勤める幌舞駅も路線と共に廃止の時を迎えようとしていた。彼は生まれたばかりの一人娘を病気で失い、妻にも先立たれ、孤独な生活を送っていた。ある雪の日、ホームの雪掻きをする彼のもとに、忘れ物をしたと一人の鉄道ファンの少女が現れる。乙松が近所にある寺の住職の孫だと思い込んだ彼女の来訪は、彼に訪れた優しい奇蹟の始まりだった―(「鉄道員」)。

 「鉄道員(ぽっぽや)」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の8編を収録し、何れも1995(平成7)年から1997(平成9)年にかけて発表された作品で、作者によれば「奇蹟」をモチーフにしたものを集めたとのことです。

井上ひさし2.jpg 直木賞の選評を見ると、8人の選考委員のうち田辺聖子、黒岩重吾、井上ひさし、五木寛之の各氏が◎で、他の委員も概ね推している印象ですが、故・井上ひさしが、「高い質を誇っていた」と評価しつつも、「8つの短編が収められているが、内4つは大傑作であり、残る4つは大愚作である」とし、「大傑作群に共通しているのは、"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向」であると指摘しているのが興味深いです(「この趣向で書くときの作者の力量は空恐ろしいほどだ」とも述べている)。

 "死者が顕われて生者に語りかける"作品となると、冒頭の、鉄道員の男のもとへ亡き娘の甦りとも思える少女が現われる「鉄道員」と、ポルノショップの店長である主人公に、自分との偽装結婚の末に亡くなった戸籍上の妻で出稼ぎ外国人の白蘭という女性が、手紙を通してまだ見ぬ夫である自分への想いを語る「ラブ・レター」、海外配転が決まったサラリーマンの主人公が、40年前自分が幼い頃に自分を捨てた父親と歌舞伎町で再会する「角筈にて」、子どもの頃に肉親を亡くして身寄りが無くなり、薬剤師となって医師と結婚した主人公が、嫁いだ先で夫の親族に苛められているところへ亡くなった祖父が現われ、主人公の力になるという「うらぼんえ」の4つということになるのでしょうか。

 文庫解説の北上次郎氏が、この短編集を「すごくよかった」と言う人が「鉄道員」「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」の4派に分かれるとし、それを派ごとの主張争いに模して解説していますが、そもそもこの4作品が選ばれていることが、故・井上ひさしの"死者が顕われて生者に語りかける"作品という指摘と合致しているように思いました。

 それ以外の作品はどうかと言うと、ややベタが過ぎたり気味悪かったりして、やはり個人的もこの4つかなあと。更に自分の好みを言えば、「ラブ・レター」はやはりベタ過ぎる印象があるし(北上次郎氏は女性読者には好評な作品としている)、上手さから言えばやはり「鉄道員」になるのかなあ。これだって、斎藤美奈子氏に言わせれば、「怪談、死んだ娘だから父に優しい(生きていたらグレてる)」ということになるのであって、直木賞選考委員の中にも阿刀田高氏のように、「悪くはないけれど、あまりにも型通りで、涙腺をふくらませながらも、こんなことで泣けるかと、しらけるところなきにしもあらず」ということにもなるのかも(考えてみればすべて乙松の頭の中で起きたこととも取れるし)。

鉄道員  02.jpg 「鉄道員」は降旗康男監督、高倉健主演で映画化されましたが('99年/東映)、昔劇場で観た、同じ降旗康男監督、高倉健主演の「駅 STATION」('81年/東映)が、倉本聰が高倉健のために書き下ろした脚本だったためか、何だか高倉健のプロモーション映画みたいで、日本映画ワースト・テンに名を連ねることも多く、個人的にも、自殺した円谷選手の遺書のナレーションを映画の中で使うことなどに抵抗を感じ、いいと思えませんでした(小谷野敦氏が「日本語をローマ字読みしてくっつけた作品のタイトルはダサい」と言っていた(『頭の悪い日本語』('14年/新潮新書))。先にそのイメージと何となくあって、結局「鉄道員」の方は劇場で観ることはなく、テレビがビデオで観たように思います。

鉄道員 志村けん.jpg 原作が短編なので、志村けんが酒癖の悪い炭坑夫として出て来きて炭鉱事故で亡くなる話や、その息子が成長してイタリアへ料理修業に行く話など、原作に無いエピソードで膨らませている部分はありますが、原作の持ち味(ひとことで言えば気持よく泣けるということか)はまずまず保たれていたのではないでしょうか。志村けん志村けん.jpg自宅の留守番電話に主演の高倉健直々の出演依頼のメッセージが入っていて驚いたとのこと。志村けんが俳優として映画出演したのは、ドリフターズの付き人時代に志村康徳名義で端役出演した「ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険」('68年/東宝)、「ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓」('69年/東宝)の2作以外ではこの作品のみとなります(志村けんは山田洋次監督の「キネマの神様」に菅田将暉とダブル主演の予定だったが、'20年に新型コロナウイルスによる肺炎で急逝したため叶わなかった)

鉄道員 02.jpg これも一歩間違えばどうしようもない映画になりそうなところを、高倉健をはじめとする俳優陣の演技力で強引に持たせていたという感じがします。実際、日本アカデミー賞の主要7部門のうち、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(高倉健)、主演女優賞(大竹しのぶ)、助演男優賞(小林稔侍)の6部門を受賞していて、高倉健主演映画で、主要7部門中"6冠"達成は山田洋次監督の「幸福鉄道員 大竹しのぶ.jpgの黄色いハンカチ」('77年/松竹)以来ですが、「幸福の黄色いハンカチ」の方は第1回日本アカデミー賞ということもあって、監督賞や脚本賞は「『男はつらいよ』シリーズ」との合わせ技でした(因みに、「駅 STATION」も作品賞、脚本賞、主演男優賞を獲っている)。「鉄道員」で獲らなかったのは助演女優賞だけで、これは広末涼子のパートになるかと思いますが、その広末涼鉄道員  s.jpg子さえも、けっして上手いとは言えませんが、そう悪くもなかったように思います(最優秀賞の候補にはなっている)。大竹しのぶは流石に上手ですが、やはりこの映画は高倉健なのでしょう(高倉健は'99年モントリオール世界映画祭で主演男優賞受賞)。「駅STATION」の頃より年齢を重ねて良くなっていて、これなら泣ける? 泣けるかどうかと評価はまた別だとは思いますが。降旗康男監督、高倉健のコンビは2年後に再タッグを組み「ホタル」('01年/東映)を撮りますが、こちらも日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退しています。

「鉄道員(ぽっぽや)」●.jpg鉄道員 s.jpg「鉄道員(ぽっぽや)」●制作年:1999年●監督:降旗康男●脚本:岩間芳樹/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一(主題歌:坂本美雨「鉄道員」)●原作:浅田次郎●時間:112分●出演:高倉健/大竹しのぶ/広末涼子/吉岡秀隆/安藤政信/志村けん/奈良岡朋子/田中好子/小林稔侍/大沢さやか/安藤政信鉄道員  1s.jpg/山田さくや/谷口紗耶香/松崎駿司/田井雅輝/平田満/中本賢/中原理恵/坂東英二/きたろう/木下ほうか/田中要次/石橋蓮司/江藤潤/大沢さやか●公開:1999/06●配給:東映(評価★★★☆)
    
高倉健、小林稔侍、田中好子(1956-2011)  大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子
鉄道員 高倉健、小林稔侍、田中好子.jpg 鉄道員 大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子.jpg
吉岡 秀隆            撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健
鉄道員 吉岡 秀隆1.jpg撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健.jpg


「駅 STATION」●.jpg駅station dvd.jpg「駅 STATION」●制作年:1981年●監督:降旗康男●製作:田中寿一●脚本:倉本聰●撮影:木村大作●音楽:宇崎竜童(主題歌のみ坂本龍一)●時間:132分●出演:高倉健/倍賞千恵子/いしだあゆみ/岩淵建/名古屋章/大滝秀治/八木昌子/池部良/潮哲也/寺田農/渡会洋幸/高駅station 01.jpg橋雅男/榎本勝起/烏丸せつこ/田中邦衛/竜雷太/小林念侍/根津甚八/宇崎竜童/北林谷栄/藤木悠/永島敏行/古手川祐子/今福将雄/名倉良/平田昭彦/阿藤海/室田日出男●公開:1981/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル池袋(82-07-24)(評価★★☆)●併映:「泥の河」(小栗康平)
駅 STATION [DVD]
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駅 STATION 池部良.JPG 駅station 06.jpg 駅Station 大滝秀治2.jpg
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【2000年文庫化[集英社文庫]/2004年再文庫化[講談社文庫(『鉄道員/ラブ・レター』)]/2013年文庫化[集英社みらい文庫]】

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"躰を張ったアクション"と"手作りの特撮"。但し、アクションだけでいい映画は作れない。

将軍家光の乱心 激突 1989.jpg将軍家光の乱心 激突  .jpg将軍家光の乱心 激突 dvd.jpg 将軍家光の乱心 激突 ogata chiba.jpg
将軍家光の乱心 激突 [DVD]」 緒形拳・千葉真一(兼 アクション監督)

京本政樹・二宮さよ子・加納みゆき・茂山逸平

将軍家光の乱心 激突13_m.jpg将軍家光の乱心 激突2m.jpg将軍家光の乱心 激突 4_m.jpg将軍家光の乱心 激突m.jpg 三代将軍・徳川家光(京本政樹)の後継である竹千代(茂山逸平)は、乳母の矢島局(加納みゆき)と共に渓谷の湯屋で保養中、老中阿部重次(松方弘樹)の命を受けた伊庭庄左衛門(千葉真一)が指揮する根来忍者集団に襲撃されるが、堀田正盛(丹波哲郎)が雇った石河刑部(緒形拳)とその配下である多賀谷将軍家光の乱心 激突16.png六兵衛(長門裕之)・砥部左平次(織田裕二)・祖父江伊織(浅利俊博)・郡伝右衛門(荒井紀人)・土門源三郎(成瀬正孝)・猪子甚五右衛門(胡堅強(フー・チェンチアン))らに助けられ、堀田家に保護される。竹千代が狙われたのは、精神に異常をきたしていた家光の「竹千代は自分に似ていないから」という一存だけのためだった。竹千代は父・家光と対決することを決し、石河刑部たちは家光への怒りとそれに立ち向かう竹千代に意気を感じ、彼を護衛して江戸城へ向かう。その行く手を阻もうと伊庭庄左衛門が指揮する大軍が立ちはだかる―。

将軍家光1.jpg 1989(平成元)年1月14日公開の中島貞夫と松田寛夫の脚本を降旗康男が監督した作品ですが、アクション監督を務めた千葉真一色の濃い作品です。徳川家光の後継を巡って阿部重次(松方弘樹)と堀田正盛(丹波哲郎)が対立、竹千代を護らんと堀田正盛が雇った石河刑部(緒形拳)ら7人の浪人たちが、阿部重次の命を受けた伊庭庄左衛門(千葉真一)の追撃をかわして竹千代を無事江戸に送り届けられるかという単純な構図で、ストーリーよりもアクションを楽しむ映画でしょうか(史実では、阿部重次、堀田正盛とも徳川家光のもとで老中を務め、家光が死去した際に両名とも殉死しており、映画の序盤で堀田正盛が斬死してしまうという展開そのものが最初から史実無視か)。

将軍家光の乱心 激突 oda.jpg 全編を通じて千葉真一率いるJAC(ジャパンアクションクラブ)の"顔見世興行" ならぬ"アクション見世興行"みたいな感じで、敵味方とも無駄なアクションも多く、「彼女が水着にきがえたら」('89年/東宝)でブレイクする直前の織田裕二(浪人の中で一番最初に死んでしまう)なども頑張ってはいましたが、ここまでや将軍家光112.jpgられると飽きてきてしまい、やはりアクションだけでいい映画は作れないなあと。皆、躰を張って演っているのはよく分かるのですが、ロープシーンはブルーシートを使って撮影しているのが丸わかりだったし、終盤の長門裕之演じる六兵衛が人馬もろとも火だるまになりながら敵陣に突っ込む場面も、最初はスタントだったのが、途中から人も馬も人形になっている(車輪付き)のが分かってしまうといった具合でした。

将軍家光の乱心 激突29.jpg クライマックスの緒形拳と千葉真一の1対1の対決シーンも、いつの間にか家の屋根の上に登ったりぴょんぴょん飛び跳ねてばかりで、これが将軍家光 8.jpgJAC流の殺陣なのでしょうか。緒形拳の方は殆ど足元や背中しか映らないので、スタントであることがすぐに判ってしまいます。松方弘樹が黒幕の役で自身は全然殺陣をやらなかったけれど、どちらかと言うと、松方弘樹 vs. 千葉真一の殺陣を見たかった気がします(でも、それだと完全に正統本格派とJACとの"他流試合"になってしまうのでマズイんだろうなあ)。

 単純なストーリーながら、サイドストーリーとして、阿部重次と石河刑部はかつて幼馴染の親友同士で、阿部は妹お万(二宮さよ子)を刑部へ嫁がせたのが、そのお万が家光に好かれ側室になるチャンスに目が眩んだ阿部が、無理矢理刑部を離縁させて家光の側室とし、老中の地位を手に入れたというややこしい話もありました。ただ、こっちの方の話は説明不足で、逆に分かり辛かったです(竹千代は実は刑部の子ってことか)。

将軍家光役京本政樹.jpg 京本政樹が演じる徳川家光はホントにひどいご乱心ぶりで(他の時代劇映画ではマキノ正博監督の「家光と彦左」('41年/東宝)など以前から徳川家光は名君として扱われているケースの方が多いと思うが、江戸学の祖・三田村鳶魚は家光の奇行を書き記し、「私の見るところ、家光は馬鹿で、頓狂者で、タワイもない人であったように思われる」と酷評し、歴史学者の山本博文氏は不安神経症だったのではないかと言っている)、最後は自ら竹千代を殺さんとして乳母・矢島局(加納みゆき)らまで巻き込んでぐちゃぐちゃに。この刃傷沙汰は一体何なのだ、もう何でもありといった感じです(家光が亡くなって阿部重次、堀田正盛が殉死したという「史実」は、実は「公式記録」としてそう扱われただけのものだという解釈らしい)。

 「第39回ベルリン国際映画祭招待作品」であったということにちょっと驚きを感じます。先日、NHK-BSプレミアムでも放映していました。おそらく、現在的な価値としては、今だったらCGで処理してしまうところを"躰を張ったアクション"と"手作りの特撮"でやっているという点なのでしょう。そう思うと「×」をつけるのも忍びなく、星半個オマケして「△」にしました。

将軍家光の乱心 激突s.jpg「将軍家光の乱心 激突」●制作年:1989年●監督:降旗康男●アクション監督:千葉真一●原作脚本:中島貞夫/松田寛夫●撮影:北坂清●音楽:佐藤勝(主題歌:THE ALFEE 「FAITH OF LOVE」)●時間:117分●出演:緒形拳/加納みゆき/二宮さよ子/真矢武(JAC)/織田裕二/浅利俊博(JAC)/荒井紀人/成瀬正孝 /丹波哲郎/長門裕之/胡堅強(フーチェンチアン)/茂山逸平/京本政樹/松方弘樹/千葉真一/福本清三/林彰太郎/有川正治/川浪公次郎/宮城幸生/笹木俊志/木谷邦臣/志茂山高也/小峰隆司/平河正雄/司裕介/小船秋夫/石井洋充/入江武俊/丘祐子/森松豊文/久米朗子/桃山舞子/陳国安/王松平●公開:1989/01●配給:東映(評価:★★☆)

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高倉健の作品の中ではちょっと変わった味がある? この映画のお蔭で黒澤映画に出られなかった。

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居酒屋兆治 [DVD]高倉健伊丹十三/細野晴臣
題字:山藤章二
居酒屋兆治 2.jpg 函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治(高倉健)は、輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」(大原麗子)の転落を耳にするが、現在の妻・茂子(加藤登紀子)との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩の河原(伊丹十三)に挑発されても頭を下げるだけの英治。そんな夫を見ながら茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた―。

居酒屋兆治 31.jpg 今月['14年11月]10日に亡くなった高倉健(1931-2014/享年83)の52歳の時の出演作。文春文庫ビジュアル版の『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年)に監督・男優・女優の各ベスト10のコーナーがあって、男優ベスト10は、1位・坂東妻三郎、2位・高倉健、3位・笠智衆、4位・三船敏郎、5位・三國連太郎、6位・森雅之、7位・志村喬、8位・石原裕次郎、9位・市川雷蔵、10位・緒形拳となっており、この中で存命していたのは高倉健のみだっただけに、その死は尚更に寂しく思えます。'12年の菊池寛賞の受賞式を欠席したのはともかく、'13年の文化勲章受賞式に出席したのを見て逆にもしかしてちょっとヤバいのかなと思ったけれど...。

居酒屋兆治 41.jpg この作品は最初に観た時は、大原麗子(当時37歳)のあまりの暗さに引いてしまいましたが(「網走番外地 北海篇」('65年)などで見せた勝気で明るい女性キャラとは真逆)、改めて観直してみるとそう悪くも感じないのは自分の年齢のせいか。その大原麗子(1946-2009/享年62)も亡くなってしまったわけですが、河原役の伊丹十三(1933-97/享年64)、居酒屋の親爺で英治の師匠役の東野英治郎(1907-94/享年86)、「兆治」の常連客役の池部良(1918-2010/享年92)(高倉健とは「昭和残侠居酒屋兆治 大滝秀治.jpg伝」シリーズ('65-'72年)以来、正確には「君よ憤怒の河を渉れ」('76年)、「冬の華」('78年)、「駅STATION」('81年)に続く共演)、英治が元いた会社の専務役の佐藤慶(1928-2010/享年81)、小学校長役の大滝秀治(1925-2012/享年87)など、'84年にテアトル新宿で初めてこの作品を観てから亡くなった人が随分いるなあと。高倉健、伊丹十三、池部良のスリーショットなんて、観ていてしみじみしてしまいます。

居酒屋兆治 山藤.jpg居酒屋兆治 11.jpg 俳優だけでなく、原作者の山口瞳(1926-1995/享年68)や、この映画の題字を担当した山藤章二(共に右写真中央)、ミュージシャンの細野晴臣なども出演していて(水色のランニング姿。カメオ出演というより役者として出ている。'82年から'83年にかけてYMOの活動休止期があり、それを機に坂本龍一が「戦場のメリークリスマス」('83年)、高橋幸宏が「だいじょうぶマイ・フレンド」('83年)、「天国にいちばん近い島」('84年)などに出演したりした)、皆で楽しく作っている作品という印象もあり、女性陣も、ちあきなおみ加藤登紀子といった役者が本業ではない人が活き活きと演技しています。
ポスター・題字:山藤章二

 高倉健はこの「居酒屋兆治」への出演準備をしていた矢先に黒澤明監督から「」('85年/東宝)への架空の人物「鉄修理(くろがねしゅり)」の役での出演を打診されていますが、「でも僕が『乱』に出ちゃうと、『居酒屋兆治』がいつ撮影できるかわからなくなる。僕がとても悪くて、計算高い奴になると追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました」と述懐しています。黒澤明は自ら高倉宅へ足繁く黒澤明2.jpg4回も通って、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗康男君のところへ謝りに行きます」と口説いたけれども、高倉健は「いや、それをされたら降旗監督が困ると思いますから。二つを天秤にかけたら誰が考えたって、世界の黒澤作品を選ぶでしょうが僕には出来ない。本当に申し訳ない」と断ったため、黒澤明から「あなたは難しい」と言われたそうです(結局、鉄修理は井川比佐志が演じることになった。高倉健はその後、偶然「乱」のロケ地を通る機会があり、「畜生、やっていればな」と後悔の念があったとも語っている。但し、高倉健の後期の黒澤作品に対する評価はイマイチのようだ)。

居酒屋兆治 71.jpg 今観ると、高倉健の降旗監督に寄せる信頼が、この作品のアットホームな雰囲気を醸しているのかもしれないという気もします。高倉健と田中邦衛がやり合う場面で、田中那衛のオーバーアクションに高倉健が噴き出したように見えるシーンがあって、最初に観た時はそれがものすごく引っかかったのですが(普通はNGではないかと)、そうした雰囲気の中で撮られた作品だと思うとさほど気にはならず、高倉健の出演作の中ではちょっと変わった味があると思えるようにもなってきました。
  
  
   高倉健・ちあきなおみ  /  高倉健・東野英治郎  /  伊丹十三・細野晴臣
居酒屋兆冶 ちあき.jpg 居酒屋兆冶 東野.jpg 居酒屋兆冶 細野.jpg
  高倉健・田中邦衛    /    田中邦衛・大滝秀治
田中邦衛 「居酒屋兆治」2.jpg田中邦衛 「居酒屋兆治」.jpg

チャン・イーモウ監督と高倉健さん.jpg    高倉健 訃報.png
チャン・イーモウ監督と高倉健(2005年東京国際映画祭)[毎日新聞]/2013年文化勲章受章

池部 良 居酒屋兆治1.jpg池部 良 居酒屋兆治2.jpg「居酒屋兆治」●制作年:1983年●監督:降旗康男●製作:田中プロモーション●脚本:大野靖子●撮影:木村大作●音楽:井上堯之(主題歌「時代おくれの酒場」 歌:高倉健/作詞・作曲:加藤登紀子)●時間:125分●原作:山口瞳「居酒屋兆治」●出演:高倉健/大原麗子/加藤登紀子/伊丹十三/田中邦衛/小林稔侍/左とん平/池部良/ちあきなおみ/東野英治郎/佐藤慶/平田満/河原さぶ/小松政夫/美里英二/あき竹城/大滝秀治/石野真子/山谷初男/細野晴臣/三谷昇/石山雄大/武田鉄矢/好井ひとみ/伊佐山ひろ子/板東英二/山藤章二/山口瞳●公開:1983/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル新宿(84-02-12)(評価:★★★☆)●併映:「魚影の群れ」(相米慎二)

大原麗子メモリー ずっと好きでいて」('10年/講談社)
大原麗子メモリー ずっと好きでいて200_.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいてWL.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいて1L.jpg
「居酒屋兆治」05.jpg

《読書MEMO》
●ロングインタビュー(時事ドットコム 2012年)より
 「降旗監督の「居酒屋兆治」の準備が進んでいたとき、黒澤さんの「乱」に(鉄修理=くろがね・しゅり=役で)出演できるという話があった。でも、僕が「乱」に出ちゃうと「居酒屋兆治」がいつ撮影できるか分からなくなる...。とても僕が悪くて、計算高いやつになるという風に追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました。
 あの時、黒澤さんは僕の家に4回いらして、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗君のところへ謝りに行きます」とまで言ってくれた。でも、僕は「いや、それをされたら降旗さんが困ると思いますから。二つをてんびんに掛けたら、誰が考えたって世界の黒澤作品を選ぶのが当然でしょうが、僕にはできない。本当に申し訳ない」と謝った。黒澤さんには「あなたは難しい」って言われましたね。
 その後、「乱」のロケ地を偶然通ったことがあって、「畜生、やっていればな」と思いましたよ。
 ただ、黒澤監督の晩年の作品には、良いものがないと思うんですよね。僕は、監督が(作品の常連だった)三船敏郎さんと別れたのが大きい気がする。志村喬さんもそうだったけれど、三船さんは(黒澤作品の)エンジンの大きな出力だったのでしょう。二人が抜けたことで、その出力がどーんと落ちた。怖いですよね。映画は絶対に一人ではできないんですよ。」

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