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東京オリンピックポスターのグラフィックデザイナーは、ただならぬ文筆家でもあった。

亀倉雄策の直言飛行0.jpg亀倉雄策の直言飛行 新装版.jpg 亀倉雄策の直言飛行00.jpg 亀倉雄策.jpg
亀倉雄策の直言飛行』亀倉雄策(1915-1997/82歳没)

亀倉雄策の直言飛行4c.jpg亀倉雄策の直言飛行1.jpg 日本のデザイン界を創ったとも言われるグラフィックデザイナーで、1964年東京オリンピックのポスターや、日本電信電話(NTT)のマークなどで知られる亀倉雄策(1915-1997/82歳没)によるエッセイ集で、1991年に刊行されたものを、2012年に新装版で復刊したものです。
亀倉雄策の直言飛行』['91年]

 A、B、C、Dの4章から成り、最初の「A」は何と追悼文集ですが、写真家・土門拳、彫刻家・イサム・ノグチ、装幀家・原弘、建築家・前川國夫、画家・有元利夫、詩人・草野心平といった錚々たる人々への追悼文を通して、それらの人々との交友が浮き彫りにされ、面白く読める分、亡くなった人への哀惜の気持ちがじわっと伝わってきます。この追悼文を読むだけでも、著者が、著名なデザイナーであったばかりでなく、ただならぬ文筆家でもあったことが窺えます。

 「B」は作家論で、カッサンドル、サヴィニャック、ウォーホル、ドーフスマンから丹下健三、瀧口修造、いわさきちひろ、永井一正、原田泰治、佐藤晃一まで、内外の作家を論じています。これも読ませますが、著者自身は、「どうせデザイン屋風情が書いたものですから、ボキャブラリーが貧しいんですね」と述べており、随分と謙虚です(全然そんなことはない)。

 「C」は、日本と西洋の文化について各所で論じたもので、前振りでいきなり「かなり憤慨している」とあるように、全体を通して、日本人の美意識の後退を嘆き、また、業界の風潮に対する批判が込められたものとなっています。

 最後の「D」は、タイトルにもなっている、モリサワという写真会社のPR誌「たて組ヨコ組」に連載した「直言飛行」というエッセイで、著者がインタビューに応え、その速記録を著者自身が筆入れしたものですが、1回につき二百字詰原稿用紙で40枚以上書き、4日くらいは潰したそうで、なかなかの労作のようです。

 内容は、引く続きデザイン業界の風潮に対する批判であったりしますが、この章がいちばん言いたいことを言っている感じで、面白かったです。黒澤明の「夢」などを真っ向から批判している一方で、そんな尖がった話ばかりでなく、生活雑感をユーモラスに描いていたりもし、肩の凝らないエッセイとなっています。

亀倉雄策の直言飛行4.jpg亀倉雄策の直言飛行2.jpg また、「直言飛行」連載時に毎回掲載された著者の似顔絵がカラー再録されていて、描いているのは下谷二助、安西水丸、秋山育、灘本唯人、木田安彦、古川倬、山口はるみ、空山基、そして最後が和田誠です。それらの似顔絵を、連載の最終回で著者自身が論評したりしていますが、東京オリンピックのポスターをパロディ化した和田誠のものを、「驚いたねえ」と絶賛しています。それが、この本の表紙になっているわけで、なぜ亀倉雄策に本なのに和田誠の表紙なのかと思ったら、そういうことだったのか。でも、確かに和田誠、上手いと言うか、着想がスゴイなあと思います。

1964 東京オリンピックポスター デザイン:亀倉雄策
1964 東京オリンピック 亀倉雄策.jpg
 

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見ているだけでうっとりするベストハウス集。ロフトは機能美を兼ね備えたゴージャス?

世界のベストハウス lofts.JPG 世界のベストハウス100.jpg Lofts.jpg
世界のベストハウス100』(28.8 x 28.6 x 3.2 cm)『Lofts (Architecture & Design)』(19.7 x 14 x 4.4 cm)

世界のベストハウス_54052.JPG 『世界のベストハウス100』(タイトルのみ日本語で本文は英語)は、世界各地の優れた現地住宅100例を紹介する全3冊シリーズの第1弾で、このシリーズでは、豊かな独創性、高い完成度はもとより、環境との調世界のベストハウス_5406.JPG和においても各建築家の技が最大限に発揮された建築物ばかりを集め、都市部の実験的作品から郊外の田園的な住宅まで、「家づくり」という共通テーマをベースに、世界の建築家たちの限りない創造性に迫っています。

世界のベストハウス_5407.JPG 紹介されているのは、アメリカ、カナダやイギリス、イタリア、フランス、スペイン、ドイツ、フィンランド、ギリシャ、オランダなど欧米世界のベストハウス_5408.JPG諸国のものから、タイ、ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、メキシコ、韓国、マレーシアなどの国のものもあり、モダニズムの中にもお国柄が窺えたりして興味深いです。

世界のベストハウス_5409.JPG やはりアメリカのものが多いですが、日本の建築家のものでは、岡田哲史(1962年生まれ)氏によるゲストハウス「富士北麓の家」と、阿部仁史(1962年生まれ)氏の鎌倉にある「n-house」、黒川紀章建築都市設計事務所の「O-Residence」などが紹介されていて、数がは多くないですが、若手と大御所事務所の組み合わせのようになっています(岡田哲史氏の「富士北麓の家」は、ちょ世界のベストハウス_5412.JPGうど本書刊行の頃、建築家の登竜門と呼ばれる新人賞「吉岡賞」(第17回(2001年)を受賞している)。

世界のベストハウス_5413.JPG 基本的に、別荘やゲストハウスも含め、個人が住まいとして居住する建築物が取り上げられていて(アメリカのものが多いのは発注資金が潤沢な資産家が多いためか)、インテリアもエクステリアと変わらないレベルで紹介されていますが、どれも見ていてうっとりするようなものばかりです。簡単な設計見取図も付されていて、プロならずとも、自分で自分のベストハウスを建ててみたいと思う人には参考になるのではないでしょうか。
       
LOFTS2.jpgロフト_5414.JPGロフト_5415.JPG 『Lofts』(手元にあるものの版元は在オランダ。本文は英語・スペイン語・イタリア語の対訳)は、テーマが、住まい、仕事場、ショッピング空間の3つに分かれていて、850ページにわたってびっちり"ロフト"を紹介しています。

ロフト_5416.JPG もともと"ロフト"とは建物の最上階または屋根裏部屋を指していましたが、それが天井の下でなく直接屋根の下にあり、倉庫などに使われる部屋のことも指すようになったようです。そうすると自ずと、天井が無い分だけ上部の空間が大きくて、屋根の傾斜や梁などがそうした空間デザインの一環として組み込まれているような部屋を想像しますが、実際そロフト_5417.JPGロフト_5418.JPGうした部屋が多くある中、「ああ、これもロフトと言えるのだなあ」といった意外なデザイン空間のものもあり、「ロフト」の奥の深さを感じました。本書の線で行くロフト_5420.JPGと、ロフトって結構"贅沢"(機能美を兼ね備えたゴージャス)とでも言うか、"憧れのロフト暮らし"ということになるのかも。そう言えば、『世界のベストハウス100』にも「ロフト」に該当するものがいくつもあったように思われ、この2冊の本の関係性を感じて一緒に取り上げた次第です。

ロフト_5424.JPG こちらも見ているだけで楽しめ、素人ながらインテリアの勉強にもなるし、家具などの色使いの参考にもなります(流行り廃りはあるのだろうけれど、自分の素人感覚では全部お洒落に見える)。でも、同じものを買うとなると、これが椅子1つで結構な価格になるのだなあ、この世界は。まあ、買える人はそれでも買うし、お金持ちでも総ヒノキ造りの神社仏閣みたいな家を建てる人もいるにはいる...。

ロフト_5419.JPGロフト_5426.JPG 随分前に刊行されたものですが、デザインの美しさには普遍性があるように思いました。その普遍性が何であるのかを追求するのは結構たいへんなのでしょう。知人の建築家で、建築からインテリアに徐々に移行し、今は完全にインテリア・デザイナー(すでにベテランの域なのでインテリア・プロデューサーと言うべきか)として活躍している人がいて、最近また需要が増えていているみたいですが、能力のある人のところに仕事が集まる、厳しい世界でもあるのだろうなあと思います。

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総数約900点。全ての作品に本人コメント付き。横尾忠則の精神史を垣間見える。

横尾忠則 全装幀集2013.jpg横尾忠則 全装幀集01.jpg   横尾忠則 全装幀集pster.jpg
横尾忠則 全装幀集』(24.7 x 19.7 x 5.3 cm)

横尾忠則 全装幀集044.jpg 横尾忠則と言えば、グラフィック・デザインとイラストレーション、コラージュに始まり、1980年代初めから絵画制作、さらに写真、小説なども手掛け、幅広い分野で精力的に活動している世界的デザイナーであり、"世界的"ということで言えば、個人的には90年代に、ニューヨーク近代美術館(MoMA)内の一等地とも言える展示スペースをその作品群が占めているのを見て、そのことを痛感した次第です(因みに、横尾忠則がデザイナーから画家へ転身した契機となったのは、80年代初めにMoMA「ピカソ展」にインスパイアされたためと自身で語っている)。

 その横尾忠則が、早くから機会あるごとに手掛けてきたのがブックデザインであり、本書は、1957年から2012年までの55年にわたる装丁の仕事を、処女作を含め約900点をカラーで収録したものであり、全ての作品に本人によるコメントが付されているというのが貴重です(本書の刊行に合わせて。

横尾忠則 全装幀集020.jpg横尾忠則 全装幀集176.jpg横尾忠則 全装幀集068.jpg 寺山修司「書を捨てよ、町へ出よう」、柴錬三郎「うろつき夜太」、デビット・ラシャペル「Lachapelle Land」などの単行本・大型本の他、アートディレクターを務めた流行通信や、広告批評などの雑誌(無名に近い頃には「少年サンデー」や「話の特集」などの表紙デザインも手掛けている)、そして自著に至るまで、意匠デザインだけでなくタイポグラフィ(絵文字)までもが個性的で、しかもモダンなものから筆文字まで多彩。それらがコラージュ写真や絵画などのビジュアルとぶつかり合って、また新たな味わいを醸しています。

横尾忠則 全装幀集156.jpg こうして見ていくと、横尾忠則自身が何度もインドを訪れていて、神秘主義やスピリチュアリズムに嵌っていた時代があり、そうしたものが反映されている作品が結構あるように思いました(インドに行くことを勧めたのは三島由紀夫だった)。横尾忠則 全装幀集268.jpgそうした彼の精神史も垣間見ることができ、また、後のものになるほど絵画的要素も入ってきているように思われました。版元による紹介にも「横尾忠則装幀という名の自伝」とあります(ただ、その辺りは、年代順に並べてくれた方が分かりやすかったかもしれないが、必ずしもそうはなっていない)。

横尾忠則 全装幀集506.jpg 国書刊行会から、本書の前に『横尾忠則全ポスター』('10年)、『横尾忠則コラージュ: 1972-2012』('12年)、本書の後に『横尾忠則全版画 HANGA JUNGLE』('17年)が刊行されていて、画集『全Y字路』('15年/岩波書店)なども刊行されており、10年代以降、横尾忠則の創作活動の再整理が進んでいるようです。こうして見ると、装丁の仕事が(他人の書いた本の装丁をするわけであって)一見制約を受けそうで、実はかなり多様性に富み、横尾忠則の創作の幅の広さを感じさせるのが興味深いです(その意味で、白地の比較的シンプルな装丁にしたのは良かった)。

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「●「朝日賞」受賞者作」の インデックッスへ(安藤忠雄)

世界のANDOの"中期"作品群。見て楽しめるだけでなく、資料としても貴重か。

GA ARCHITECT TADAO ANDO 12.png GA ARCHITECT TADAO ANDO 16.png  GA ARCHITECT TADAO ANDO 8.png GA ARCHITECT TADAO ANDO.jpg
GAアーキテクト (12) 安藤忠雄 1988-1993―世界の建築家 (GA ARCHITECT Tadao Ando Vol.2)』(梱包サイズ(以下、同)30.8 x 30 x 2.4 cm)['93年]『GAアーキテクト (16) 安藤忠雄 1994-2000―世界の建築家 (GA ARCHITECT Tadao Ando Vol.3)』(31 x 29.4 x 2.6 cm)['00年]『GAアーキテクト (08) 安藤忠雄 1972-1987―世界の建築家 (GA ARCHITECT Tadao Ando Vol.1)』['87年]『GA ARCHITECT 安藤忠雄 2001-2007』(31.1 x 30.8 x 2.3 cm)['07年]

tadao ando12.JPG安藤忠雄五輪.jpg 2020年五輪の新国立競技場問題で一部世間からバッシングを浴びた安藤忠雄氏ですが、最大のネックは文科省と日本スポーツ振興センター(JSC)にあっ安藤忠雄 五輪.jpgたと思われ(特にJSC)、安藤氏に非難される余地が全く無かったのかと言えば必ずしもそうと言い切れないとは思いますが、彼は当初からデザイン選定の責任者(審査委員長)であって、予算管理の責任者ではなかったはずでしょう。文科省、JSCの"罪"の大きさを思うに、相対的にみて、安藤氏に対しては個人的には同情的な考えでいます(顔が見えにくいところが非難を逃れ、顔が見えやすいところがバッシングを受けるのは世の常か)。

tadao ando127.JPG この騒動はともかく、安藤氏が世界的な建tadao ando128.JPG築家であることは論を待たないと思いますが、この人の、プロボクサーから建築家に転じ(しかも殆ど独学で建築学を学んで)、工業高校卒の最終学歴で東大の教授にまでなったというその経歴がこれまたスゴ過ぎます(現在は東大名誉教授)。

tadao ando129.JPG
[上]兵庫県立こどもの館(1987-89年)
[上右]国際花と緑の博覧会「名画の庭」(1990年)
[右]セビリア万博日本館(1992年)

1992セビリア日本館.jpg(セビリア万博日本館(1992年)は、この年2週間近くスペインを周遊する機会があって、その際に行ったということもあり、個人的には懐かしい。)

安藤忠雄 ボクサー.jpg黒川 紀章 - コピー.jpg そうした高卒で東大教授になったという(しかも高校の時はプロボクサーになろうと思いライセンスを取得している)異端の経歴もあって安藤氏のファンも結構多いと思いますが、その安藤氏も現在['15年12月]74歳、願わくば、晩年ちょっと箍(たが)が外れてしまった黒川紀章(1934-2007/享年73)の二の舞にはならないで欲しいと思います(まあ大丈夫だとは思うが)。

tadao ando16.JPG 本書は80年代から刊行が続いている建築家シリーズ「GAアーキテクト」の一環を成すものですが、このうち、安藤忠雄の作品集は1972年から1987年の作品を収めた第8巻('87年刊行)、1988年から1993年の作品を収めた第12巻('93年刊行)、1994年から2000年の作品を収めた第16巻、('00年刊行)の3巻がありましたが、'07年に2001年から2007年までの42作品を収録ものが刊行されています。
tadao ando162.JPG
 このシリーズで4巻も占めているのは安藤忠雄のみで、この外にも「安藤忠雄ディテール集」が'96年から'07年にかけて4巻刊行されていたりもしますが(とにかく群を抜く頻度の取り上げられ方)、取り敢えず上記4巻で、現時点での安藤忠雄作品集といった感じでしょうか。勿論、安藤氏は現在も活動中ですが、このTADAO ANDO Vol.2の第12巻とVol.3の第16巻で1988年から2000年の作品を網羅していることになり、"中期"作品集と言ってもいいように思います。

[右]シカゴの住宅(1992-1997年)
[下]FABRICA(伊ベネトン・アートスクール)(1992-2000年)

1GAアーキテクト.png 初期作品にも「住吉の長屋」('76年)など有名なものがありますが、やはり"中期"においてスタイルが確立したように思われ、また、セビリア万国博覧会日本政府館('92年)などはたまたま自分が行って目にしたこともあって懐かしく、淡路夢舞台の百段苑('00年)なども家族と旅行に行った思い出があり、これもまた懐かしいです(百段苑はスケールの大きさに圧倒される)。大判の写真に加え、詳細な図面や安藤氏自身のコメントも含む作品解説もあって、見て楽しめるだけでなく、資料としても貴重かと思います。

[下右]淡路夢舞台(1993-2000年)
tadao ando164.JPG 個人的には、安藤氏の作品は、作品によってはそのスケールの大きさから、建築と言うより「土木」っぽいところがあるものもあるように思います。そう言えば、このシリーズ、2020年五輪の新国立競技場デザイン案のコンペで安藤氏が推して一旦はその案の採用が決まっていたイラク出身の建築家ザハ・ハディッド女史の作品集も第5巻にありますが(今回の件で復刻印刷された)、この人の作品も何となく「建築」というより「土木」という感じがするなあ(競技場をあの原案の通り造ろうとしたら、技術的には建築工学より土木工学の技術が必要になるのでは)。


 「世界の最先端デザイン建築○○選」などといったサイトがありますが、そういうの見るにつけ建築の世界ってどんどん進化しているなあと思います。何年か経てば、安藤忠雄の作品であっても「これ、安藤忠雄が設計した」と言われて初めて何となくそのユニークさを感じるくらいになっているかも(ル・コルビュジエの建築などは今日ではそういう感じではないか)。一時、世海底都市0.jpg動くビル ドバイ.jpg界中の建設重機の半分が集まったとムンバイパンドラオーム.jpgムンバイパンドラオーム2.jpg言われたドバイ(世界一高い超高層ビル「ブルジュ・ハリファ」もここにある)とかはスゴイことになっているし(リーマンショックの前ぐらいまではSFに出てくるような「海底都市」や、回転して変形し、まるで生き物みたい動く(動いて見える?)ビルを造る構想もあり、「動くビル」構想は今も生きているらしい)、インドのムンバイでは、全室プール付マンション[右写真]の建設計画があるというし...(2009年には既に、マレーシアのクアラルンプールに全室プール付マンションが完成している)。

 建築家って、最先端辺りにいる人たちは、フツーの建造物では飽き足らず、いつも夢みたいにスゴイことを考えているんだろなあ。2020年における世界の建築イノベーションの進み具合ということを考えた場合、安藤氏がザハ・ハディッド氏の案を推した気持ちが理解できるような気がします(ザハ案は東京での開催誘致の際のプレゼンに織り込まれ、実際に東京への誘致と相成った訳だかザハ・ハディド.jpg北京・銀河SOHO  ザハ・ハディド_1.jpgアル・ワクラ・スタジアム.jpgら、ザハ案を選んだ安藤氏は誘致に貢献したとも言えるかと思うのだが...)。

ザハ・ハディド(1950-2016.3.31)/北京・銀河SOHO(設計:ザハ・ハディド)/アル・ワクラ・スタジアム[2022年FIFAワールドカップ(カタール大会)会場スタジアム完成予想図](設計:ザハ・ハディド)

《読書MEMO》
2022年08月14日 淡路夢舞台
2022年08月14日 淡路夢舞台.jpg

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デザイナー用の資料集として使えるが、図鑑としても楽しめた。

サイン・シンボル事典3.jpgサイン・シンボル事典2.jpgサイン・シンボル事典.jpg
サイン・シンボル事典

 宗教関係、太陽や月、樹木や花や虫や鳥から、人間の手足など人体の部位や楽器、帽子や仮面など衣服・装身具、象形文字や占星術、人の身振りまで、様々なサインやシンボルの意味やそれらに隠されたメッセージを解説した本で、フルカラーの写真とイラストが2,000点以上と数は豊富です。

 神話と宗教、自然、人間象徴体系といった具合に大分類されていて、その中でさらに例えば宗教であれば古代宗教、ユダヤ教、キリスト教といったようにカテゴライズされているため、それぞれの分野の傾向というものが何となく掴めるものとなっています。
 
 読んでいても面白く、個人的にも気に入っているのですが、絵入りとしては点数が多い分、各アイテムの一つ一つの解説はそれほど深くなく、一通り読んでもそんなに頭の中に残らないかも。全部頭に入れば、文化人類学についてはかなりの博識ということにはなるのだろうけれど...(繰り返し読んでも面白いということは、前に読んだのを忘れているということか)。

サイン・シンボル事典4.jpg 「事典」とあるように、基本的には資料集的な使い方になるかな。広告デザイナーなどは必携かも。自分の使ったモチーフに自分も知らなかったネガティブな意味があったりすると、後でたいへんなことになったりするかもしれないから(結構、そうしたトラブルはあるような気がする)。

 手元にあるのは初版本ですが、'10年に『サイン・シンボル大図鑑』として同じ版元(三省堂)から改訳刊行されています(そっか、自分は図鑑として楽しんでいたわけだ。一応、文化人類的関心から読んだのが)。

 改訳版も内容は大体同じではないかと思われるのですが、Amazon.comの「よく一緒に購入されている商品」で旧版と改訳版がセットになっていていました。

 改訳版は『図鑑』と呼ぶに相応しく、ページ数が128ページから352ページに大幅増となっています(内容も変わったのか?)。今買うなら、新しい方ということになるのかもしれません。

【2010年改訳[『サイン・シンボル大図鑑』]】

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美しく見せるという思惑がないところでの"キレイさ"。その"意外性"が面白いのかも。

工場萌え.jpg 工場萌えカレンダー.jpg 超高層ビビル.jpg ブレードランナー2.jpg
工場萌え』['07年]『工場萌えカレンダー 2008』『超高層ビビル 日本編 (Skyscrappers Vol 1)』['08年]/映画「ブレードランナー」より

 「工場」と言うより「コンビナート」のタンクやパイプ、煙突群の「構造美」を捉えた写真集で、「工場萌え」とは工場の景観を愛好する行為だそうですが、著者(石井氏)のmixiのブログに端を発して、ちょっとしたブームになっているらしく、カレンダーやDVDまで出ています。

ダム.jpg 高層ビルや吊り橋など人工の建造物を写真に収めることを趣味とする人は結構いるようで、最近では中谷幸司氏の『超高層ビビル 日本編』('08年/社会評論社)という写真集が刊行され、更には全国のダムを撮った萩原雅紀氏の『ダム』('07年/メディアファクトリー)などというのもあります(こちらも続編『ダム2(ダムダム)』('08年)が刊行され、DVDも出された)。

中谷 幸司 『超高層ビビル 日本編』.JPG この内、『超高層ビビル 日本編』は、日本全国の高さ100メートル超の高層ビルを写真に撮って並べたもので(但し、トップにきているのはビルでなく「東京タワー」。次に「六本木ヒルズ」)、キャプションとしては高さ・階数・建設年月・所在地が記されているだけですが、このカタログ的な並べ方が逆にいいです。

 写真も、変に意匠をこらさず、それぞれビルの全体像が分かるような(主に正面から見た)撮られ方になって、この本はある建築家がお薦めとしていまいしたが、建築・建設関係者の間では密かに人気を得ているようです(著者=撮影者はJavaのプログラマーであるとのことで、あくまで趣味の世界からスタートしている)。

 こうした写真集はある種の「機能美」を追ったものであり、とりわけ高層ビルや吊り橋に関しては、そうした「外見上の美しさ」というものが予め設計段階で織り込まれている―それに対し、「コンビナート」が美しく見えるというのは、そうした思惑がないところでのことで、その"意外性"が面白いのかも(但し、個人的には『超高層ビビル』の方が若干好みだが)。

 ただそれだけに、「鑑賞スポット」とでも言うか、見るポイントが限定されてくるわけで、本書の後半では、そうした撮影ポイントを地図と写真入りで紹介しており、更に"鑑賞"のための基礎知識として、「歩きやすい靴で」とか、近くにコンビニさえ無いことが多いから「飲み物を忘れずに」とか、色々な注意点が親切に書かれているのが、普通の「趣味ガイド」みたいで何となく面白い。

ブレードランナー チラシ.jpg 最後に「おすすめ工場コンテンツ」というのがあり、工場を知るための入門書や、工場のイメージを効果的に使った映像作品、工場に親しめる小説などが紹介されています。その中にはリドリー・スコット監督の映画「ブレードラブレードランナー(Blade Runner).jpgンナー」('82年/米)笙野頼子氏の『タイムスリップ・コンビナート』('94年/文藝春秋)(これ、芥川賞作ブレードランナーF.jpg品の中ではかなり異色ではないか)などがあったりして、"系譜"と言えるかどうかは別として、「コンビナート」的な「構造美」に惹かれる部分は意外と多くの人が持っていて、ただそれが、無機的であるとか、大気汚染とイメージリンクしてしまうとかで、隠蔽されてきた面もあるかもしれません。
映画「ブレードランナー」より
ブレードランナー.jpg また、映画「ブレードランナー」に関して言えば、'82年の公開時は大ヒット作「E.T.」の陰に隠れて興業成績は全く振るわなかったのが(本国でも「サターンSF映画賞」の候補にはなったものの、受賞は「E.T.」に持っていかれた)、少し後になってからジワジワと人気が出てきたという経緯があり、当初カルトムービー的に扱われてたものが、やがてSF映画のメジャー作品としての市民権を得たという点や(「サターン賞」側も、今になって思えばファンタジーである「E.T.」よりもSF色の濃い「ブレードランナー」に賞をあげておべきだったという"取りこぼし"感があるのでは)、ファンの多くが、映画のストーリーだけでなく、或いはそれ以上に、視覚的な背景などの細部に関心を持ったという点で、「工場萌え」ブームに共通するものを感じます。

『ブレードランナー』(1982).jpgBLADE RUNNER.jpg 「ブレードランナー」という映画の妙というか、観客に視覚的に強いインパクトを与えた部分の一つは(個人的にはまさにそうだったのだが)、未来都市にもダウンタウンがあり、ネオン塔やブレードランナー5.jpg筆字体の看板などがあって、そこに様々な人種が入り乱れて生活したり商売したりしている"生活感"、"人々の蠢(うごめ)き感"みたいなものがあった点ではなかったかと思います(80年代にシンガポールで見た高層ビルの谷間の屋台群を思い出した。シンガポールまで行かなくとも、新大久保のコリアン街でも似たような雰囲気は味わえるが)。

 但し、「工場」にはそうした生活感のようなものが全くない(とりわけ夜の工場には)―その、"純粋"機能美が、それはそれでまたウケるのかも知れませんが。『工場萌え』というタイトルが面白いし、効いていると思います。「萌え」というのは、本来はキャラクター的なものを対象としていることからすれば、ある意味パロディでしょう。確かに、視点や時間帯で様々な景観を示すコンビナートは、未来都市の一角のようで美しい(特に夜景が"妖しく"キレイ)と思ったけれども、個人的には、「こんなのが好きな人も結構いるんだ」という珍しさが先に立って、自分自身が「萌える」というところまではいかなかったでしょうか。

 因みに、自分が「ブレードランナー」を「二子東急」で観た頃('83年)、遊園地「二子多摩川園」ってまだ営業していたなあ。傍に東急ハンズもありました。

Blade Runner (1982)  
「ブレードランナー」('82年/米).jpg『ブレードランナー』.jpg 映画「ブレードランナー」より

『ブレードランナー』2.jpg 『ブレードランナー』3.jpg 『ブレードランナー』4.jpg
 
●英国の映画誌「TOTAL FILM」の投票による"史上最高のSF映画べスト10"(2011/07)
1位『ブレードランナー』('82)
2位『スター・ウォーズ エピソード5 帝国の逆襲』('80)
3位『2001年宇宙の旅』('68)
4位『エイリアン』('79)
5位『スター・ウォーズ エピソード4 新たなる希望』('77)
6位『E.T.』('82)
7位『エイリアン2』(86)
8位『インセプション』('10)
9位『マトリックス』('99)
10位『ターミネーター』('84)

二子東急(昭和50年代)
二子東急(昭和50年代) .jpg「ブレードランナー」●原題:BLADE RUNNER●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:マイケル・ディーリー ●脚本:ハンプトン・フィンチャー/デイヴィッド・ピープルズ●撮影:ジョーダン・クローネンウェス●音楽: ヴァンゲリス●時間:116分(劇場公開版、ディレクターズ・カット)/117分(ファイナル・カット)●出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング/ダリル・ハンナ/ブライオン・ジェイムズ/エドワード・ジェイムズ・オルモス/M・エメット・ウォルシュ/ウィリアム・ サンダーソン/ジョセフ・ターケル/ジョアンナ・キャシディ/ジェームズ・ホン/モーガン・ポール/ハイ・パイク/ロバート・オカザキ(ダウンタウンのスシバーの主人)●日本公開:1982/07●配給:ワーナー・ブラザース二子東急 1990.jpg●最初に観た場所:二子東急(83-06-05)●2回目:三軒茶屋東映(84-07-22)●3二子東急.gif回目:三軒茶屋東映(84-12-22)(評価:★★★★☆)●併映(2回目):「エイリアン」(リドリー・スコット)/「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター)●併映(3回目):「遊星からの物体x」(ジョン・カーペンター) 二子東急(1990年)

二子東急のミニチラシ.bmp二子東急 場所.jpg二子東急 1957年9月30日 開館(「二子玉川園」(1985年3月閉園)そば) 1991(平成3)年1月15日閉館

 
   
 
1985年3月31日 二子玉川園最終営業日(写真:フォートラベル)
二子玉川園.jpg

三軒茶屋シネマ.jpg
三軒茶屋シネマ/中央劇場.jpg三軒茶屋シネマ 内.jpg三軒茶屋東映 1955年世田谷通りの裏通り「なかみち街」にオープン、1973年建て替え、1997年~三軒茶屋シネマ (右写真:三軒茶屋シネマ/三軒茶屋中央劇場/サンタワービル(三軒茶屋映画劇場跡地)/左写真:現「三軒茶屋シネマ」内) 2014(平成26)年7月20三軒茶屋シネマ ラストしおり2.JPG日閉館

三軒茶屋東映予定表.bmp

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