「●心理学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 「●超心理学・スピリチュアル・オカルト」 【213】 宮城 音弥 『超能力の世界』
「あるある」オンパレード。どんな認知バイアスがあるかを知っておくことは大事なのかも。
『大図鑑シリーズ バイアス大図鑑 (Newton大図鑑シリーズ) 』['24年]
科学雑誌「ニュートン」の2020年から刊行が続いている本格図鑑シリーズ「Newton大図鑑シリーズ」の第33弾(2024年までに33巻刊行)。心理学系は、『心理学大図鑑』に続いて2巻目ですが、図鑑に心理学系の本があること自体が「ニュートン」らしいかも。
「認知バイアス」という言葉が注目を集めている昨今ですが(ジャンル的には心理学だが、プロスペクト理論とか行動経済学などの分野との関係も深い)、認知バイアスを場面に応じて大きく6つに分類し、実験や調査などのエビデンスとともに、イラストと図で分かりやすく解説しています。
どれも「あるある」という感じで、まさに「あるある」のオンパレードです。その理由として書かれていることにも大体は以前から見当がついていたように思えましたが、それぞれにちゃんと名前がついているのだということが興味深かったです。
Part1「知覚にまつわるバイアス」では、広告などを何度も見ると好きになっていく「単純接触効果」、A型は几帳面だと根拠なく信じてしまう「確証バイアス」、占いが当たっていると感じる「バーナム効果」、日頃の習慣や知識が固定観念となって新たな発想を妨げる「機能的固着」、ドキドキしただけでもっともらしい原因があると取り違えて好きになる「誤帰属」、効き目のない偽薬で症状が改善する「プラセボ効果」(これはよく知られている)、幸せや悲しみは実際よりも長く続くと思う「インパクト・バイアス」、すべては計画通りに進むと思い込む「計画錯誤」、無意識に辻褄を合わせようとする「認知的不協和」(フェスティンガーが提唱したこれも有名)etc.。
Part2「記憶にまつわるバイアス」では、思い出を後から作る「偽記憶」、記憶が言葉一つで変わってしまう「事後情報効果」、昔の出来事を最近のことのように感じる「圧縮効果」、10代から20代の出来事ばかり思い出す「レミニセンス・バンプ」、今よりも昔の方がよく見える「バラ色の回顧」、完了された内容よりも中断された内容を覚えているツァイガルニック効果」、「後出し」で記憶を都合よく修正する「後知恵バイアス」、過去から未来までずっと人は変わらないと思い込む「一貫性バイアス」よい印象より悪い印象の方が残りやすい「ネガティビティ・バイアス」etc.。
Part3「判断・意思決定にまつわるバイアス」では、数値を示されると尤もらしいと思ってしまう「アンカリング」、質問の仕方で答えが変わる「フレーミング効果」、損が気になって挑戦できない「現状維持バイアス」(この辺りはプロスペクト理論か)、過去の投資が勿体なく無駄な投資を続ける「サンクコスト効果」(コンコルドの写真が出ている)、明日得られる利益よりも今日得られる利益を大切にする「現在志向バイアス」、どうせ失敗するなら何もしない方を選ぶ「不作為バイアス」、レアものや限定品が魅力的に感じる「希少性バイアス」、選択肢が多いとかえって選べない「択肢過多効果」、手間をかけたものに価値を感じる「イケア効果」(家具などを購入者自らが組み立てる)etc.。
Part4「対人関係にまつわるバイアス」では、見た目良ければすべて良しとなる「ハロー効果」(代表的な考課者錯誤として有名)、期待をかけられると成果が出る「ピグマリオン効果」、実力不足だと自分の実力より過大評価する「ダニング・クルーガー効果」、自分と意見が合わないと相手が間違っていると考える「ナイーブ・リアリズム」、他の人も自分と同じように考えているだろうと思い込む「フォールス・コンセンサス」、自分が思っているほど他人は自分に興味がないことに気づかない「スポットライト効果」、否定されるとよけいに自分が正しいと思う「バックファイア効果」etc.。
Art5「集団にまつわるバイアス」では、勝ち馬に乗って自分も勝者になりたい「バンドワゴン効果」、出身地が同じということだけで贔屓してしまう「内集団バイアス」(出身地に限らずこれはある)、人がたくさんいると行動しなくなる「傍観者効果」etc.。Part6「数にまつわるバイアス」では、アイスが売れると水難事故が増えるといった「疑似相関」、連続で黒が出たら次は赤が出る確率が高くなると思う「ギャンブラー錯誤」(ドストエフスキーなら黒に賭け続ける(『賭博者』))etc.。
見て分かるように、認知バイアスは様々な場面で見られますが,自分ではなかなか気づかないもので、それゆえに「バイアス」として在るのだろうし、だからといって「自分はいつも正しい」と開き直るのではなく(これこそが最大のバイアスかも)、本書が言うように、どんな認知バイアスがあるかを知っておくことで、いざというとき、バイアスにうまく対処することができるのでしょう。
《読書MEMO》
●目次
Part1 知覚にまつわるバイアス
錯視/見落としの錯覚/単純接触効果/真実性の錯覚/確証バイアス/バーナム効果/機能的固着/誤帰属/プラセボ効果(偽薬効果)/妥当性の錯覚/インパクト・バイアス/計画錯誤/COLUMN 認知的不協和
Part2 記憶にまつわるバイアス
虚記憶(偽りの記憶)/事後情報効果/ラベリング効果/圧縮効果/レミニセンス・バンプ/バラ色の回顧/ツァイガルニック効果/皮肉なリバウンド効果/後知恵バイアス/一貫性バイアス/ピーク・エンドの法則/ネガティビティ・バイアス/気分一致効果/COLUMN 有名性効果
Part3 判断・意思決定にまつわるバイアス
代表性ヒューリスティック/利用可能性ヒューリスティック/アンカリング/フレーミング効果/正常性バイアス/現状維持バイアス/サンクコスト効果/デフォルト効果/現在志向バイアス/不作為バイアス/ゼロサム・バイアス/COLUMN 利用可能性カスケード/おとり効果/希少性バイアス/選択肢過多効果/メンタル・アカウンティング/保有効果/イケア効果/単位バイアス/曖昧さ回避/身元のわかる犠牲者効果/モラル・ライセンシング/COLUMN リスク補償
Part4 対人関係にまつわるバイアス
ハロー効果/ステレオタイプ/ピグマリオン効果/平均以上効果/ダニング・クルーガー効果/自己奉仕バイアス(セルフ・サービング・バイアス)/楽観性バイアス/ナイーブ・リアリズム/フォールス・コンセンサス/知識の呪縛/貢献度の過大視/スポットライト効果/透明性の錯覚/公正世界仮説・被害者非難/システム正当化/敵意的メディア認知/バックファイア効果/COLUMN 第三者効果
Part5 集団にまつわるバイアス
同調バイアス/集団への同調/少数派への同調/バンドワゴン効果/集団極性化/権威バイアス/外集団同質性バイアス/内集団バイアス(内集団びいき)/究極的な帰属の誤り/錯誤相関/COLUMN 傍観者効果
Part6 数にまつわるバイアス
ナンセンスな数式効果/平均値の誤謬/生存者バイアス/相関分析の落とし穴/シンプソンのパラドックス/擬似相関/回帰の誤謬/ギャンブラー錯誤/モンティ・ホール問題/確率の誤謬/COLUMN 確実性効果