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交流分析(TA)の対話例を多くとりあげ、詳細かつわかりやすく解説。
『自己実現への道―交流分析(TA)の理論と応用 (1976年)』
「交流分析(TA-Transactional Analysis)」は米国の精神科医エリック・バーン博士によって創始されたパーソナリティー理論の一つであり、心理療法として開発されたものですが、本書はその理論と実践場面での応用についてかなり早い時期に翻訳紹介された本で、バーン博士の直接の弟子にあたる人たちによって書かれています。
「交流分析」とは要するに人と人とのやりとりの分析であり、
◆P:ペアレント(親)、
◆A:アダルト(大人)、
◆C:チャイルド(子供)
という3つの自我状態をクライエントとセラピストがロールプレイし、P-P、P-A...といった対人パターン(3×3=9通り)の中で状況にふさわしい態度・考え方・行動様式を対話分析を通じて獲得していくもので、本書ではその具体的な対話例を多くとりあげ、詳細かつわかりやすく解説しています。
さらに、CP(批判的な親)、NP(保護的な親)、A(客観的な大人)、FC(自由な子供)、AC(順応した子供)という5パターンに拡大した応用についても、実例を示して解説していて、1セッションの中での役割変換のダイナミズムなども理解しやすいものとなっています(この5パターンが基本形で、さらに右図のような応用形があるのだが)。
P(親)、A(大人)、C(子供)という自我概念は、フロイト理論の超自我・自我・エスにほぼ対応しているようですが、最初に本書を読んだときに、非常にプラグマティカル(実用的)なものを感じました(そのことは、"Born to Win" という原題からも窺える)。
精神分析というものが既に先行して行われていたこと、人種の坩堝社会の中で対話コミュニケーションが重要な位置づけを持つなど、日本とは異なる土壌や文化が背景にあり、一方で、日本において普通の社会人が、例えばチャイルド(子供)という自我状態にスッと入っていくロールプレイがどこまで可能かという難しさは感じました(TAは日本では、理論はあるが技法は弱い、ともよく言われている)。
しかし日本でも、教育現場などを中心に以前からTAが行われており、またその応用であるエコグラムによる自己分析などは、ビジネスの現場でもとりあげられるようになってきています。