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正統派の抒情文学である原作を見事に映像化。グッときた。

「泥の河「.jpg映画 「泥の河」.jpg  泥の河-2.jpg
泥の河〓81東映セントラル〓 [VHS]
田村高廣/藤田弓子 
小栗 康平 「泥の河」2.png 朝鮮動乱の新特需を足場に高度経済成長へと向かおうとしていた昭和31年の大阪安治川河口が舞台。ある朝、河っぷちの食堂に住む食堂の息子、信雄(朝原靖貴)は置き去りにされた荷車から鉄屑を盗もうとしていた少年、喜一(桜井稔)に出会う。喜一は、対岸に繋がれているみすぼらしい舟に住んでおり、信雄は泥の河.jpg銀子(柴田真生子)という優しい姉にも会った。信雄の父、晋平(田村高広)は、夜、あの舟に行ってはいけないという。しかし、父と母(藤田弓子)は姉弟を夕食に呼んで、温かくもて泥の河-2-3.jpgなした。楽しみにしていた天神祭りがきた。初めてお金を持って祭りに出た信雄は人込みでそれを落としてしまう。しょげた信雄を楽しませようと喜一は強引に船の家に誘った。泥の河に突きさした竹箒に、宝物の蟹の巣があった。喜一はランプの油に蟹をつけ、火をつけた。蟹は舟べりを逃げた。蟹を追った信雄は窓から喜一の母(加賀まりこ)の姿を見た。裸の男の背が暗がりに動いていた。次の日、喜一の舟は岸を離れた。信雄は「きっちゃーん!」と呼びながら追い続けた-。

「泥の河」    .jpg「泥の河」  .jpg 宮本輝の原作は'78年刊行の単行本『螢川』に所収。原作の"原色の街"のイメージに反して映画は白黒映画で、それがかえって良く、昭和31年の大阪下町のひと夏をノスタルジックに描いていました。蟹に油を塗って火をつけ遊ぶ2人の少年が、船べりを逃げる蟹を追って眼にしたものは―、ラストの「きっちゃーん」という少年の呼びかけに応えることなく出て行く"船"―等々。
映画 「泥の河」ポスター
泥の河 ポスター.jpg 信雄の父、晋平(田村高廣)には実は前妻がいて、母親(藤田弓子)が父親と結ばれた経緯が信雄を妊娠したことを契機とする略奪婚であり、その前妻が死に目に信雄に会いたがっているので京都の病院まで見舞いに行き、そこで後妻が前妻に謝る―というのは原作には無い設定ですが、その辺りは多分に「螢川」のストーリーを下敷きにしているようです。こうした原作からの改変こそありましたが、夏の強い日差しを表すコントラストの強い画面や、子ども目線でのカメラ位置などの効「泥の河」 加賀.jpg泥の河 加賀まりこ.jpg果的な技巧が窺え、出演者の演技もベテラン、子役ともになかなか良かったです。特にラストはグッときます。登場場面が数カットしかなかった加賀まりこ(当時の加賀まりこは多忙を極め、スケジュールの合間をぬって僅か6時間で彼女の出る全シーンを撮泥の河 映画es.jpg小栗 康平 「泥の河」3.jpgった)が「キネマ旬報助演女優賞」を受賞しましたが、確かに情感たっぷりの堂々たる演技ぶりでした。スティーブン・スピルバーグ5Q.jpg但し、個人的に思うに、一番上手かったのは子役達ではなかったかと(特に、姉弟の姉の方を演じた柴田真生子がいい)。この映画の子役の演技にはスティーブン・スピルバーグも感嘆し、演出の秘密を知ろうとして来日時に小栗康平に面会を求めたそうです。

 第55回「キネマ旬報ベストテン」で第1位に選ばれ、「毎日映画コンクール賞(日本映画大賞)」「ブルーリボン賞(作品賞)」なども受賞しました。個人的にも正統派の抒情文学である原作を見事に映像化しているように思え、「グッときた」作品でしたが、最初に映画の製作発表の記者会見を行った際は取材に来たマスコミは2社だけで、当初は上映館もなかなか決まらず自主上映だったとのとです。

シネマブルースタジオ 小栗康平監督特集(2023)
シネマブルースタジオ 小栗康平監督特集.jpg

泥の河00.jpg泥の河images.jpg「泥の河」●制作年:1981年●監督:小栗康平●脚本:重森孝子●撮影:安藤庄平●音楽:毛利蔵人●原作:宮本泥の河01.jpg輝●時間:105分●出演:田村高廣/藤田弓子/朝原靖貴/桜井稔/柴田真生子/加賀まりこ/殿山泰司/芦屋雁之助/西山嘉孝/蟹江敬三/八木昌子/初音礼子●劇場公開:1981/01●配給:東映セントラル●最初に観た場所:日比谷・第一生命ホール(81-05-22)●2回目:池袋・テアトル池袋(82-07-24)(併映:「駅 STATION」(降旗康雄))●3回目:キネカ泥の河 殿山泰司9.JPG泥の河 芦屋雁之助.jpg1981 泥の河 蟹江敬三.jpg大森(85-02-02) (評価★★★★☆)
殿山泰司(橋下から少年にスイカを投げ与える屋形船の男)/芦屋雁之助(荷車のおっちゃん)/蟹江敬三(巡査)
キネカ大森2.jpg
第一生命館.jpg旧・第一生命ホール(左) 1952年9月15日、第一生命館6Fにオープン、1989年閉館。2001年11月、晴海アイランド・トリトンスクエアに2代目第一生命ホールオープン キネカ大森(右) 1984年3月30日、西友大森店内に都内初のシネコンとしてオープン(3スクリーン)
キネカ大森(2023年1月7日)
キネカ大森l2.jpg

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森崎東監督によるシリーズ第3作。言われているほどには前の路線を外していないが...。

「フーテンの寅」1970.jpg「フーテンの寅」d.png「フーテンの寅」01.jpg
第3作 男はつらいよ フーテンの寅 HDリマスター版 [DVD]

「フーテンの寅」6.jpg 旅先で病気になってしまい、宿の女中(悠木千帆)に親兄弟があるのか心配された寅次郎(渥美清)は、とらやの人びとの写真を見せ、ついさくらを「奥さん」、満男を「自分の赤ちゃん」、おばちゃん・おいちゃんを「おふくろとおやじ」と見栄を張ってしまう。久々に故郷柴又に帰ってきた寅次郎を見合い話が待っていた。本人もすっかりその気になったが、相手の駒子(春川ますみ)は寅次郎と旧知の仲であり、しかも旦那持だった。寅次郎は、駒子の妊娠も知らずに旦那が浮気したと聞くや、二人の仲を取り持つために一肌脱ぐ。しかし、二人のための結婚式や新婚旅行まがいの宴会やハイヤーの代金をとらやに請求したことが原因で、おいちゃん(森川信)と大ゲンカして「フーテンの寅」o1.pngしまい、いたたまれなくなった寅次郎は再び旅に出る。旅先の伊勢・湯の山温泉で腹を下した寅次郎は、便所を借りに温泉宿・もみじ荘に入り浸り、そこの女将・お志津(新珠三千代)の同情を買って宿に泊めてもらう。未亡人のお志津に惚れ込んた寅次郎は、宿代がないことを理由にもみじ荘に居着くようになり、住み込みの番頭として一生懸命働く。お志津の弟・信夫(河原崎建三)となじみの芸者・染奴(香山美子)との仲を取り持つことに奔走してお志津に感謝され、お志津の小さな女の子を可愛がるあまり風邪を引いてお志津に看病してもらって、寅次郎は有頂天になる。しかし、寅次郎の知らないところで、お志津には再婚を考えている相手(高野真二)がいたのだった―。

 1970年1月公開の「男はつらいよ」シリーズの3作目で、今回は前作に代わって山田洋次監督から、山田洋次監督の助監督出身で(ただし4歳年長)、第1作やテレビ版の脚本にも参加した森崎東が監督し、山田洋次は当時、本作はもういいと思っており脚本(原作)のみ書いています。ただし、山田洋次監督はその後、この森崎東が監督した第3作と、小林俊一が監督した第4作に違和感を覚えて第5作で監督に復帰、以降、最後まで他人に監督させることはなかったことになります。

 森崎東の監督としての個性は山田洋次とは対照的で、薄味(山田)と濃い味(森崎)、柔と剛、洗練さと野暮ったさとはよく言われているところですが、個人的には、原作が山田洋次監督であることもあってか、言われているほどには第1作、第2作の雰囲気を大きく外してはいないように思いました(細部にこだわりを持つ人は、また異なる印象を持つのだろうが)。

「フーテンの寅」倍賞千恵子.jpg ストーリー的には、おいちゃん・おばちゃんが湯の山温泉を訪れた際、寅次郎が働いている宿に泊まり、寅と出会う(さらにマドンナのお志津の存在を知る)という設定になっていて、お志津がとらやを一度も訪れていないことも含め、旅先の寅次郎が中心の話になっており、さくら役の倍賞千恵子の出番は非常に少ないのが特徴でしょうか。

「フーテンの寅」m.jpg あとは、自分なりに"細部"を突き詰めていくと、おいちゃんと喧嘩したり(まあ、これはシリーズの他の作品でもあることが、この回のはかなり激しくやり合い、それが原因で寅次郎は再び旅に出ることになる)、染奴の中風にかかった父・清太郎(花沢徳衛)が元テキ屋であるということで、寅次郎の将来を暗示するかのように見えてしまったりするのがやや暗かったりします。駒子と再び一緒になった夫が、寅次郎からの電話をプツリと切ってしまうあたりもちょっと冷たい感じがしました。

「フーテンの寅」k.jpg 森崎東監督の演出は、シリーズ第4作「新・男はつらいよ」の監督・小林俊一とは相通じるものがあるかもしれません(小林俊一は山田洋次と共にこの作品に脚本参加している)。定番である「寅次郎の失恋」も、山田流では哀愁が漂う切ない雰囲気ですが、森崎・小林流だと、寅次郎の勘違いが際立っていて、可哀そうなのは同じですが、やや乾いた感じでした。暗い部分と明るい部分でバランスをとっていて、結局、前作に比べ「雰囲気を大きく外してはいない」という個人的感想に至ったのですが、観る人によって山田洋次監督版とは「大きく異なる」という人がいても納得です(細部を見ていけば必然的にそういうことになる)。

「フーテンの寅」yuki.jpg「男はつらいよ フーテンの寅」●制作年:1970年●監督:森崎東●脚本:山田洋次/小林俊一/宮崎晃●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●原作:山田洋次●時間:90分●出演:渥美清/新珠三千代(東宝)/倍賞千恵子/香山美子/河原崎建三/前田吟/春川ますみ/三崎千恵子/野村昭子/悠木千帆/佐々木梨里/高野真二/左卜全(特別出演)/佐藤蛾次郎/太宰久雄/晴乃ピーチク/晴乃パーチク/森川信/笠智衆/花沢徳衛●公開:1970/01●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-02)(評価:★★★☆)

悠木千帆(樹木希林)/渥美清

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良かった。従来の日本映画の〈非リアリティ〉の壁を打ち破ったという感じ。

「ハッピーアワー」01.jpg 「ハッピーアワー」03.jpg 「ハッピーアワー」02.jpg
Happy Hour [DVD] [Import]」田中幸恵/菊池葉月/三原麻衣子/川村りら
「ハッピーアワー」ws.jpg「ハッピーアワー」1.jpg 兵庫県神戸市で暮らす看護師のあかり(田中幸恵)、専業主婦の桜子(菊池葉月)、学芸員の芙美(三原麻衣子)、科学者の妻の純(川村りら)は、お互いに仲が良く、行動を共にすることが多い。彼女たちは、鵜飼(柴田修兵)が開催したワ「ハッピーアワー」3.jpgークショップに参加する。打ち上げの席上、純が離婚調停を進めていると知ったあかりは、なぜ今まで話してくれなかったのかと怒り、その場を立ち去る。その夜、駅のプラットフォームで倒れた純を桜子は自宅に泊め「ハッピーアワー」2.jpgる。あかり、桜子、芙美、純は温泉へ出かける。あかりと純のあいだにあったわだかまりは消えて、彼女たちは旅行を満喫するが、芙美は、夫で編集者の拓也(三浦博之)と小説家のこずえ(椎橋怜奈)が連れ立って歩いている場面を目撃してしまう。翌日、純は1人だけバスで帰途につく。後日、あかり、桜子、芙美は、純の夫の公平(謝花喜天)からの連絡を受けて、カフェを訪れる。純の行方が分からなくなっているのだという。離婚を望んでいた純が裁判に敗れたこと、そして、純が公平との子を妊娠しているらしいことも、公平の口から語られる。桜子は、中学生の息子が恋人の女性を妊娠させてしまったと知らされ「ハッピーアワー」f.jpgる。夫の良彦(申芳夫)と話し合ったのち、良彦の母のミツ(福永祥子)と共に女性の家を訪ねた桜子は、女性の両親に土下座する。その帰り道、桜子は、自分と良彦の仲を取り持ってくれたのが純であった、と息子に話す。桜子の息子が、フェリー乗り場で恋人の女性を待っていたところ、偶然にも純と出会う。純は、感謝の言葉を告げる桜子の息子に見送られながら、フェリーに乗り込む。純を乗せたフェリーが、神戸の街から遠ざかって行く。こずえ「ハッピーアワー」13.jpgの小説の朗読会が開催される。トークセッションに登場する予定だった鵜飼が途中で退席するが、純を探して朗読会に来ていた公平がその役割を引き継いで、朗読会は無事に終わる。打ち上げでは、公平、桜子、芙美、拓也、こずえのあいだで口論が起こる。その場にいた者たちが次々と席を外し、こずえと拓也が残される。帰りの車中でこずえは拓也に好意を伝える。その言葉に拓也は戸惑うが、こずえとそのまま一晩を明かす。芙美とともに最終電車に乗った桜子は、夫とは久しく性的な関係を持っていないと芙美に告げる。やがて電車が駅に着き、桜子と芙美は電車を降りるが、ワークショップの参加者だった風間(坂庄基)の姿を車内に見つけた桜子は、再び電車に乗る。転倒により足を怪我しているあかりは、松葉杖をつきながら、鵜飼の妹の日向子(出村弘美)が働くバーに行き、鵜飼と打ち解ける。翌朝、芙美は拓也に離婚の意思を伝える。芙美の言葉を聞いた拓也は動揺するが、出社の時間が迫っていたため、家を出て車に乗り込む。同じ頃、桜子は良彦に、風間と性的な関係を持ったことを伝える。その後、職場へ向かった良彦は、交差点で泣き崩れる。一方、病院に出勤したあかりは、いつも失敗を叱っていた後輩の柚月(渋谷采郁)から、泣きながら感謝の言葉を告げられる。あかりは柚月をそっと抱擁する。交通事故にあった拓也は、あかりが勤める病院に運びこまれる。あかりは、廊下にいた芙美を誘って、病院の屋上に上がる。芙美は拓也のそばにいるつもりだという。また4人で旅行へ行こう、と語るあかりの目の前には、神戸の街と海と空が広がっているのであった―。(Wikipediaより)

「ハッピーアワー ロカルノ.jpg 2015年公開の濱口竜介監督作で、主演を務めた田中幸恵、菊池葉月、三原麻衣子、川村りらの4人は、第68回「ロカルノ国際映画祭」で「最優秀女優賞」を受賞しています(予備選考の段階でコンペ部門に正式には入っていなかったこの作品が最終的には賞を受賞し、同監督の「偶然と想像」('21年)の「ベルリン国際映画祭・銀熊賞」の受賞、「ドライブ・マイ・カー」('21年)の「カンヌ国際映画祭・脚本賞」、「米アカデミー・国際長編映画賞」の受賞へと繋がっていった経緯が、アカデミー賞受賞を伝える朝日新聞に出ていて[下]、興味深く読んだ)。本作の製作は、2013年9月から5か月間、KIITOにて開催された「即興演技ワークショップ in Kobe」がきっかけとなっていて、ワークショップの参加に応募した希望者の中から、17名が選考されたたそうですが、参加者の約3分の2とのことですは、それまでに演技した経験が無かったとのことです。

 2014年5月に第3稿の脚本で撮影が開始され、その後、脚本の方は、演技の感触や撮影の状況により、撮影を重ねる中で微調整を加えていって第7稿まで手直しされたそうですが、2015年2月に5時間36分の編集ラッシュ版を上映したのち、3時間20分版や3時間50分版なども製作されたものの、5時間36分版の方が面白いということでスタッフの意見が一致し、これの一部を切り詰めて、5時間17分の上映時間となったとのことです。

「ハッピーアワー」sa.jpg 脚本の改稿を重ねる中で、出演者と面談し、彼女たちが脚本に感じる違和感は修正されていったとのこと(第3稿)。さらに、「語りたいドラマを語ること」と「『演者が口にできないだろう』と思わないセリフを書いていくこと」という2点の課題に取り組むこととなった(第6稿)とのことで、とりわけ後者は、ドキュメンタリーを思わせるようなタッチとなって効いているように思いました。大袈裟に言えば、従来の日本映画の〈非リアリティ〉の壁を打ち破ったという感じでしょうか。個人的には、今までに観た日本映画で最もインパクトが大きかった今村昌平監督の「人間蒸発」('67年)以来の衝撃でした(「人間蒸発」の場合はドキュメンタリーに潜む演技性を露わにしたものだったが)。

「ハッピーアワー」b.jpg 当初は、家庭という守るものを持っている3人の中年男性が、急死した親友の葬儀後、家族や仕事を放り出し、人生を見つめなおす放浪を繰り返すという、ジョン・カサヴェテス監督の「ハズバンズ(Husbands)」('70年/米)という映画における「4人組がひとりを失い、他の3人が精神的な彷徨いを体験する」構造を使おうとしたそうで、(実際その構図は活かされている)、「ハズバンズ」の女性版で、かつ「かつての花嫁たち」という皮肉が込めて(実際4人ともかつて結婚していたか、今も結婚しているが夫婦の危機にあるという設定)「BRIDES」という仮題がつけられていたそうですが、濱口監督が偶々「HAPPY HOUR」という看板を見つけて、「ファニーな響きが、映画が進行するに従って皮肉な働きをす「ハッピーアワー」cf.jpgる」「ラストをアンハッピーエンドと思わせない力をタイトルが持ち得るんじゃないか」と感じて、これを題名に選んだとのことです(製作段階において資金が底を尽きそうになったため、濱口竜介監督自らネットでクラウドファンディングを呼びかけたが、この時はまだ「BRIDES」という仮題のままだった)。

ネット動画でクラウドファンディングを呼びかける濱口竜介監督


「ハッピーアワー」k.jpeg 確かに、最初は4人ともフツーに日常を過ごしているアラフォーの女性たちに見えたのに、ワークショップの打ち上げの席上で純が離婚調停を進めていると告白したあたりから、それぞれが抱える容易ならぬ問題が浮き彫りになってきて、終盤になればなるほど何れもカタストロフィー(破局)に向かっていうように見えるけれども、アンハッピーエンドかというと、そんな印象も受けない不思議な作りになっているように思いました。

「ハッピーアワー」k.jpg 個人的には実家である神戸が舞台なので親近感がありましたが、今までにないニュータイプの日本映画を観たというか(リアリズムに立脚していることがニュータイプであるならば、今までの日本映画はなんだったのかというのはあるが)、ともかく、5時間17分を飽きさせないで見せる傑作であると思います。

「ハッピーアワー」●制作年:2015年●監督:濱口竜介●製作:高田聡/岡本英之/野原位●脚本:濱口竜介/野原位/高橋知由●撮影:北川喜雄●音楽:阿部海太郎●●時間:317分●出演:田中幸恵/菊池葉月/三原麻衣子/川村りら/申芳夫/三浦博之/謝花喜天/柴田修兵/出村弘美/坂庄基/久貝亜美/田辺泰信/渋谷采郁/福永祥子/伊藤勇一郎/殿井歩/椎橋怜奈●公開:2015/12●配給:神戸ワークショップシネマプロジェクト●最初に観た場所:渋谷・Bunkamura ル・シネマ1(22-03-22)(評価:★★★★★
Bunkamura ル・シネマ1.jpgBunkamura ル・シネマ内.jpgBunkamura ル・シネマ2.jpgBunkamura ル・シネマ1・2 1989年9月、渋谷道玄坂・Bunkamura6階にオープン

 
 
  

[左端]濱口竜介監督(出演)
「ハッピーアワー」14.jpg

「ハッピーアワー」0102.jpg.png.jpg「ハッピーアワー」0102.jpg.png.jpg

「朝日新聞」2022年3月28日夕刊

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スター男優、スター女優、名優・名脇役で辿る昭和邦画史。選ばれた100本はオーソドックスか。

邦画の昭和史_3799.JPG邦画の昭和史_3798.JPG邦画の昭和史.jpg   フラガール 映画  蒼井.jpg
邦画の昭和史―スターで選ぶDVD100本 (新潮新書)』映画「フラガール」       北日本新聞 2018.10.25
長部 日出雄.jpg 昨年['18年]10月に亡くなった作家の長部日出雄(1934-2018/84歳没)が雑誌「小説新潮」の'06年1月号から'07年1月号に間歇的に5回にわたって発表したものを新書化したもの。'73年に「津軽じょんから節」で直木賞を受賞していますが、元は「週刊読売」の記者で、その後、雑誌「映画評論」編集者、映画批評家を経て作家になった人でした。個人的には『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年/文春文庫ビジュアル版)の中での、赤瀬川準、中野翠氏との座談が印象に残っています(赤瀬川隼も1995年に「白球残映」で直木賞作家となったが、この人も2015年に83歳で亡くなった)。

 本書は全3章構成で、第1章ではスター男優を軸に(いわば男優篇)、第2章ではスター女優を軸に(いわば女優篇)、第3章では名優・名脇役を軸に(いわば名優・名脇役篇)、それぞれ昭和映画史を振り返っています。

銀嶺の果て 中.jpg 第1章「戦後のスーパスターを観るための極め付き35本」(男優篇)で取り上げているのは、三船敏郎、石原裕次郎、小林旭、高倉健、鶴田浩二、菅原文太、森繁久彌男はつらいよ・知床慕情.jpg、加山雄三、植木等、勝新太郎、市川雷蔵、渥美清らで、彼らの魅力と出演作の見所などを解説しています。この中で、昭和20年代の代表的スターを三船敏郎とし、昭和30年代は石原裕次郎、昭和40年代は高倉健、昭和50年代は渥美清としています。章末の「35本」のリストでは、その中に出演作のある12人の俳優の内、三船敏郎が9本と他を圧倒し(黒澤明監督作品8本+黒澤明脚本作品(「銀嶺の果て」))、石原裕次郎は2本、高倉健は3本、渥美清も3本入っていて、さらに渥美清+三船敏郎として、「男はつらいよ・知床慕情」を入れています(したがって最終的には三船敏郎10本、渥美清4本ということになる)。

 第2章「不世出・昭和の大女優に酔うための極め付き36本」(女優篇)で取り上げているのは、原節子、田中絹代、高峰秀子、山本富士子、久我美子、京マチ子、三原葉子、藤純子、宮下順子、松阪慶子、浅丘ルリコ、吉永小百合、岸恵子、有馬稲子、佐久間良子、夏目雅子、若尾文子などで、彼女らの魅力と出演作のエピソードや見所を解説しています(京マチ子、先月['19年5月]亡くなったなあ)。文庫化にあたり、「大女優篇に+1として、破格ではあるが」との前置きのもと書き加えられたのが「フラガール」の蒼井優で(青井優と言えば、この映画で南海キャンディーズの山崎静代と共演した縁から、今月['19年6月]南海キャン蒼井優 フラガール.jpg蒼井優 山里亮太.jpgディーズの山里亮太と結婚した)、本書に出てくる中で一番若い俳優ということになりますが、著者は彼女を絶賛しています。章末の「36本」のリストでは、原節子、田中絹代、高峰秀子の3人が各4本と並び、あとは24人が各1本となっていて、男優リストが12人に対して、こちらは27人と分散度が高くなっています。

 第3章「忘れがたき名優たちの存在感を味わう30本」(名優・名脇役篇)では、一般に演技派とか名脇役と呼ばれる人たちをを取り上げていますが、滝沢修、森雅之、宇野重吉、杉村春子、伊藤雄之助、小沢栄太郎、小沢昭一、殿山泰司、木村功、岡田英次、佐藤慶などに触れられていて、やはり前の方は新劇など舞台出身者が多くなっています。章末の「30本では、滝沢修、森雅之、宇野重吉、小沢栄太郎の4人が各2本選ばれており、残り22人が各1本となっています。

乾いた花  jo.jpeg 先にも述べたように、スター男優・女優や名優・名脇役を軸に振り返る昭和映画史(殆ど「戦後史」と言っていいが)であり、『大アンケートによる洋画ベスト150』の中での対談でも感じたことですが、この人は映画の選び方が比較的オーソドックスという感じがします。したがって、エッセイ風に書かれてはいますが、映画の選び方に特段のクセは無く、まだ日本映画をあまり見ていない人が、これからどんな映画を観ればよいかを探るうえでは(所謂「観るべき映画」とは何かを知るうえでは)、大いに参考になるかと思います。と言って、100本が100本メジャーな作品ですべて占められているというわけでもなく、女優篇の「36本」の中に三原葉子の「女王蜂と大学の竜」('03年にDVD化されていたのかあ)なんていうのが入っていたり、名優編の「30本」の中には、笠智衆の「酔っぱらい天国」(こちらは「DVD未発売」になっていて、他にも何本かDVD化されていない作品が100本の中にある)や池部良の「乾いた花」(本書刊行時点で「DVD未発売」になっているが'09年にDVD化された)など入っているのが嬉しいです(加賀まりこ出演作が女優篇の「36本」の中に入っていないのは、彼女が主演したこの「乾いた花」を男優篇の方に入れたためか。「キネマ旬報助演女優賞」を受賞した「泥の河」は、田村高廣出演作として名優篇の方に組み入れられている)。

フラガール 映画0.jpgフラガール 映画s.jpg 因みに、著者が元稿に加筆までして取り上げた(そのため「100本」ではなく「101本」選んでいることになる)「フラガール」('06年/シネカノン)は、個人的にもいい映画だったと思います。プロデューサーの石原仁美氏が、常磐ハワイアンセンター創設にまつわるドキュメンタリーをテレビでたまたま見かけて映画化を構想し、当初は社長を主人公とした「プロジェクトX」のような作品の構想を抱いていたのがフラガール 映画1.jpg、取材を進める中で次第に地元の娘たちの素人フラダンスチームに惹かれていき、彼女らが横浜から招かれた講師による指導を受けながら努力を重ねてステージに立つまでの感動の物語を描くことになったとのことで、フラガールび絞ったことが予想を覆すヒット作になった要因でしょうか。主役の松雪泰子・蒼井優から台詞のないダンサー役に至るまでダンス経験のない女優をキャスティングし、全員が一からダンスのレッスンを受けて撮影に臨んだそうです。ストーリー自体は予定調和であり、みうらじゅん氏が言うところの"涙のカツアゲ映画"と言えるかもしれませんが(泣かせのパターンは「二十四の瞳」などを想起させるものだった)、著者は、この映画のモンタージュされたダンスシーンを高く評価しており、「とりわけ尋常でない練習フラガール 映画6.jpgと集中力の産物であったろう蒼井優の踊り」と、ラストの「万感の籠った笑顔」を絶賛しています。確かに多くの賞を受賞した作品で、松雪泰子・富司純子・蒼井優と女優陣がそれぞれいいですが、中でも蒼井優は映画賞を総嘗めにしました。ラストの踊りを「フラ」ではなく「タヒチアン」で締めているのも効いているし、実話をベースにしているというのも効いているし(蒼井優が演じた紀美子のモデル・豊田恵美子は実はダンス未経験者ではなく高校でダンス部のキャプテンだったなど、改変はいくつもあるとは思うが)、演出・撮影・音楽といろいろな相乗効果が働いた稀有な成功例だったように思います。
[フラガール 松雪1.jpg [フラガール 松雪2.jpg [フラガール 松雪4.jpg
松雪泰子(平山まどか(カレイナニ早川(早川和子)常磐音楽舞踊学院最高顧問がモデル))
「フラガール」岸部.jpg 「フラガール」富司.jpg
岸部一徳(吉本紀夫(中村豊・常磐炭礦元社長がモデル))/富司純子

富司純子・蒼井優(第30回「日本アカデミー賞」最優秀助演女優賞受賞)/富司純子・豊川悦司         
「フラガール」富司。蒼井.jpg「フラガール」富司。豊川.jpg
      
蒼井優(谷川紀美子(常磐音楽舞踊学院1期生・小野(旧姓 豊田)恵美子がモデル))・山崎静代
フラガール 映画d.jpgフラガール 映画2.jpg「フラガール」●制作年:2006年●監督:李相日(リ・サンイル)●製作: シネカノン/ハピネット/スターダストピクチャーズ●脚本:李相日/羽原大介●撮影:山本英夫●音楽:ジェイク・シマブクロ●時間:120分●出演:松雪泰子/豊川悦司/蒼井優/山崎静代(フラガール ダンサー.jpg南海キャンディーズ)/岸部一徳/富司純子/高橋克実/寺島進/志賀勝/徳永えり/池津祥子/三宅弘城/大河内浩/菅原大吉/眞島秀和/浅川稚広シネカノン有楽町1丁目03.jpg/安部智凛/池永亜美/栗田裕里/上野なつひ/内田晴子/田川可奈美/中浜奈美子/近江麻衣子/千代谷美穂/直林真里奈/豊川栄順/楓●公開:2006/09●配給:シネカノン●最初に観た場所:有楽町・シネカノン有楽町(06-09-30)(評価:★★★★☆)

内田晴子/田川可奈美/栗田裕里/豊川栄順/池永亜美

蒼井優が演じた紀美子のモデル・レイモミ豊田(小野(旧姓豊田)恵美子)/常磐ハワイアンセンター最後のステージ
レイモミ豊田.jpg 

【お悔み】初代フラガール、小野恵美子さん死去 79歳 いわきにフラ文化築く福島民友新聞 2023年8月5日
小野恵美子.jpg

シネカノン有楽町1丁目(2010年1月28日閉館)/角川シネマ有楽町(2011年2月19日オープン)
シネカノン有楽町1丁目.jpg角川シネマ有楽町2.jpgシネカノン有楽町1丁目 2004年4月24日角川シネマ有楽町.jpg有楽町「読売会館」8階に「シネカノン有楽町」オープン。2007年10月6日「シネカノン有楽町1丁目」と改称。㈱シネカノン社の民事再生法申請により2010年1月28日閉館。2011年2月19日に角川書店の映像事業のフラッグシップ館として居抜きで再オープン(「角川シネマ有楽町」)

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池脇千鶴にはいい意味で予想を裏切られた。個々の俳優が集中力の高い演技をしている。

そこのみにて光輝く dvd.jpg  そこのみにて光輝く 映画サイト.jpg そこのみにて光輝く 1シーン.jpg  そこのみにて光輝く 河出文庫.jpg
そこのみにて光輝く 通常版DVD」/映画「そこのみにて光輝く」公式サイト/綾野剛・池脇千鶴 - アジア・フィルム・アワード最優秀助演女優賞/『そこのみにて光輝く (河出文庫)』['11年]
そこのみにて光輝く%20チラシ.jpg 仕事を辞めて何もせずに生活していた達夫(綾野剛)は、パチンコ屋で気が荒いもののフレンドリーな青年、拓児(菅田将暉)と出会う。拓児の住むバラックには、寝たきりの父親、かいがいしく世話をする母親、そして姉の千夏(池脇千鶴)がいた。達夫と千夏は互いに思い合うようになり、ついに二人は結ばれる。ところがある日、達夫は千夏の衝撃的な事実を知る―。

そこのみにて光輝く モントリオール.jpg 呉美保の2014年監督作で、モントリオール世界映画祭で最優秀監督賞(呉美保)を受賞しており(吉永小百合がプロデュース参画し主演した「ふしぎな岬の物語」の審査員特別賞グランプリ受賞と同時受賞)、第88回キネマ旬報ベスト・テンでも第1位に選ばれるなど、評価の高かった作品です(呉美保監督は平成26年度「芸術選奨文部科学大臣新人賞」も受賞)。
「北海道新聞・2007年10月9日」掲載記事より
「北海道新聞・2007年10月9日」掲載記事より.jpg佐藤泰志 生の輝きを求めつづけた作家.jpg 原作は函館出身の作家・佐藤泰志(1949-1990/享年41)が遺した長篇小説で、第2回「三島由紀夫賞」候補になりながら受賞には至らなかった作品。作者・佐藤泰志はそれまでにも5回「芥川賞」候補になるなどしていましたが、この初の長編小説の三島賞落選の翌年に自死を遂げています(統合失調症という病を抱えていた)。『佐藤泰志: 生の輝きを求めつづけた作家』['14年]

そこのみにて光輝く4752.JPG 原作では、造船所の労働争議に嫌気がさして会社を退職し、退職金を手に無為の日々を送っていた達夫が、貧しい生活を送る千夏・拓児の姉弟と出会い、達夫と千夏の関係が次第に深まっていく様を描いた〈第1部〉と、達夫と千夏が既に結婚していて、但し、達夫はある種"閉塞感"のようなものに囚われていて、そこから抜け出すために山(ヤマ=鉱山)へ行こうとする、その間際に拓児がある事件を起こすという〈第2部〉に分かれていました。

 映画化するならば「そこのみにて光輝く」というタイトルにも呼応する〈第1部〉かなと思っていましたが、概ねの所そうでした。但し、〈第2部〉の最後の達夫がヤマへ行こうとする話と拓児がある事件を起こす話がその〈第1部〉に織り込まれていて、まあ、これもありかなと(〈第2部〉が無いため、〈第1部〉の設定が"過去"ではなく"現在"になっている)。

 原作での造船所を退職してぶらぶらしているという達夫の設定が、ヤマで同僚を事故死させてしまいトラウマで働けなくなってしまったという設定に変えられていて、その事故シーンが冒頭に回想で出てくるため、最初はえっと思ってしまったのですが、全体を通して、原作の滅茶苦茶に暗い雰囲気はよく伝わってきました。

そこのみにて光輝く 映画X.jpg 観る前は、綾野剛(達夫)、池脇千鶴(千夏)、菅田将暉(拓次)という配役を聞いて、原作の登場人物のイメージに比べて「線が細い」感じで「お子様っぽいそこのみにて光輝く 映画S.jpg」のではないかとの印象を受けたのですが、実際に観てみたら、それなりに持ち味を出していたように思います。個人的感想で言えば、綾野剛の演じる達夫は、どちらかと言うと"観る側"であるから、綾野剛の演技が受身的であるのはいいとして、イメージ的に一番改変されていたのは菅田将暉が演じる拓次だったでしょうか。"幼い"と言うより"軽い"感じがしました。

そこのみにて光輝く 2.jpg そして、肝腎の千夏ですが、やはりどうしても"肉感的"な女性でなければならないのでは...と。それも、日中、イカをさばく工場で働いて、夜は売春で生計を立て、弟の勤め先の社長の愛人であり、要介護の父親の性欲処理を母親に代わってしているという、そうしたものを全て背負った上での"肉感的"な女性であるわけで、小柄な池脇千鶴ではイメージが弱いか或いは違うのではないかと思われたのですが、蓋を開けてみれば思った以上に役柄に嵌った"肉感的"ぶりだったと言うか、芯が強く、それでいて、ふと見せる優しい女性の顔もあり、いい意味で予想を裏切られました。

池脇千鶴 「ほんまもん」.jpg池脇千鶴 「三井のリハウス」 池脇千鶴(1981年生まれ。三井不動産リアルティの第8代"リハウスガール"('97-'98年)やNHK朝の連続テレビ小説「ほんまもん」('01年)の頃と随分変わった)はこの演技で、TAMA映画賞最優秀女優賞、毎日映画コンクール女優助演賞、日本映画批評家大賞助演女優賞などを受0afa ikeawki  miyasawa.jpg賞、「日本アカデミー賞」では優秀主演女優賞を受賞しましたが、"最優秀" 主演女優賞は「紙の月」の宮沢りえに持って行かれました(これは妥当か。宮沢りえの演技は抜きんでていた)。海外でも2015年「アジア・フィルム・アワード」で最優秀助演女優賞を受賞しましたが、マカオで行われた授賞式には、前月に「日本アカデミー賞」の最優秀主演女優賞を受賞した宮沢りえもプレゼンターとして登場していました(そう言えば、宮沢りえは初代('87年)の三井の"リハウスガール"である)。
   
 この作品は、個々の役者陣が頑張ったというのもあるかと思いますが、呉美保監督の演出力も大きいのだろうと思います。スクリプター出身の監督ですが、現場を纏め上げていくことで、俳優やスタッフの集中力を維持することに長けているのかも。それだけに、達夫の「ヤマで同僚を事故死させてしまいトラウマで働けなくなってしまった」という、やや手垢のついたような設定は要らなかったように思います。

そこのみにて光輝く eiga.jpg「そこのみにて光輝く」●制作年:2014年●監督:呉美保(お・みぽ)●製作:永田守/菅原和博●脚本:高田亮●撮影:藤龍人●音楽:田中拓人●原作:佐藤泰志「そこのみにて光輝く」●時間:120分●出演:綾野剛/池脇千鶴/菅田将暉/高橋和也/火野正平/伊佐山ひろ子/田村泰二郎●公開:2014/04●配給:東京テアトル・函館シネマアイリス(評価:★★★★)

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力のある作家がしっかり取材して書いた作品。素直に上手だなあと思った。

舟を編む10万.jpg舟を編む30万.jpg 
舟を編む』(2011/09 光文社) 「舟を編む」2013年映画化(監督:石井裕也/主演:松田龍平・宮﨑あおい・オダギリジョー)

 2012(平成24)年・第9回「本屋大賞」第1位作品。

 大手出版社・玄武書房の営業部に勤務する馬締(まじめ)は、営業部では変人としてお荷物扱いだったが、辞書編集一筋の荒木に後任として見込まれ辞書編集部に異動、言葉の捉え方における鋭い天性を発揮し、新しい辞書『大渡海』の編纂にのめり込んでいく。定年後嘱託として勤務する荒木や日本語研究に人生を捧げる老学者の松本先生、チャラいが外回りに才能を発揮する西岡、ファッション誌編集部から異動してきたキャリア系の岸辺―問題山積の辞書編集部において、馬締をはじめとするこれらの人々の努力により『大渡海』は完成の日の目を見ることができるのか―。

舟を編む00.jpg 素直に上手いなあと思いました。『まほろ駅前多田便利軒』('06年/文藝春秋)で直木賞を受賞した際に(29歳での直木賞受賞は、平岩弓枝(27歳)、山田詠美(27歳)に続く歴代3位の若さ)、選評で平岩弓枝氏が「この作者の年齢の時、私はとてもこれだけの作品は書けなかった」と一番褒めていたけれど、そこからまた進化した感じ。

 特に、前半の真締と西岡の関係がいい。『まほろ駅前多田便利軒』もそうだけど、男同士の関係を描いて巧み(直木賞選考の際に阿刀田高氏は、作者は男性だと思っていたらしい)。コミカルだけど、『まほろ駅前多田便利軒』に比べると、ギャグ調はむしろ抑え気味ではないかと。

 前半は馬締の香具矢に対する恋物語もあって青春小説のようにもなっていて、前半と後半で十数年の時を置くことで、後半が前半の後日譚のようにもなっている。それでいてダラダラ長くなく、気楽に読めるエンタテインメントに仕上がっているし、前半部では西岡を、後半部では岸辺の眼を通して、真締を主として「見られる側」の存在として描いているのも成功していると思いました。

 辞書が編まれるように、馬締、香具矢、荒木、松本先生、西岡、岸辺といった登場人物の人生が編まれていく―今時、全ての辞書がこうした編纂のされ方をしているのかという疑問も残りましたが、普通は小説の主人公にはならないような人たちに着眼したこと自体が一つの成功要因。そのうえで、もともと力のある作家がしっかり取材して書いた作品とみていいのではないでしょうか。

映画「舟を編む」1.jpg映画「舟を編む」2.jpg(●2013年に石井裕也監督、松田龍平主演で映画化され、第37回日本アカデミー賞で最優秀作品賞をはじめ6部門の最優秀賞を受賞、石井裕也監督は芸術選奨新人賞も受賞したほか、主演の松田龍平をはじめとするキャストやスタッフも多くの個人賞を得た。原作では年代を特定していないが、映画では松田龍平演じる主人公・馬締が辞書編集部に配転になったのが1995年で、原作で後日譚として扱われている部分が船を編む_n.jpg舟を編むeb.jpg舟を編む2d.jpgその12年後となっている。細部での改変はあるが、全体としては原作のストーリーを比較的忠実に追っている感じで、松田龍平、宮﨑あおい、オ「舟を編む」12.jpgダギリジョー、黒木華といった若手の俳優陣も頑張っているが、加藤剛、小林薫、伊佐山ひろ子、八千草薫といったベテランが脇を固めているのが大きく、特に、加藤剛の「先生」は印象的だった。そもそも、原作が、その後数多く世に出た"お仕事系"小説のどれと比べても優れているため、原作の良さに助けられている部分もあるが、少なくとも原作の持ち味を損なわずに活かしているという点で良かったと思う。)


舟を編む 映画.jpg舟を編む_l.jpg「舟を編む」●制作年:2013年●監督:石井裕也●プロデューサー:土井智生/五箇公貴/池田史嗣/岩浪泰幸●脚本:渡辺謙作●撮影:藤澤順一●音楽:渡邊崇●時間:133分●出演:松田龍平/宮﨑あおい/オダギリジョー/黒木華/渡辺美佐子/池脇千鶴/鶴見辰吾/伊佐山ひろ子/八千草薫/小林薫/加藤剛/宇野祥平/森岡龍/又吉直樹/斎藤嘉樹/波岡一喜/麻生久美子●公開:2013/04●配給:松竹=アスミック・エース(評価:★★★★)
 
【2015年文庫化[光文社文庫]】

「●コミック」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【690】 内田 春菊 『私たちは繁殖している
「○コミック 【発表・刊行順】」の インデックッスへ「●た‐な行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●伊丹 十三 監督作品」の インデックッスへ「●「キネマ旬報ベスト・テン」(第1位)」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」) 「●「毎日映画コンクール 日本映画大賞」受賞作」の インデックッスへ(「マルサの女」) 「●「ブルーリボン賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「マルサの女」) 「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」) 「●「山路ふみ子映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「お葬式」)「●「芸術選奨新人賞(監督)」受賞作」の インデックッスへ(伊丹十三「お葬式」)「●柴咲 コウ」の インデックッスへ(「県庁の星」)「●井川 比佐志 出演作品」の インデックッスへ(「県庁の星」)「●酒井 和歌子 出演作品」の インデックッスへ(「県庁の星」)「●山﨑 努 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」)「●宮本 信子 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」「マルサの女2」「スーパーの女」)「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」) 「●津川 雅彦 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女」「マルサの女2」)「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」「マルサの女2」)「●小林 薫 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」」)「●岸部 一徳 出演作品」の インデックッスへ(「お葬式」) 「●小沢 栄太郎 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女」)「●小林 桂樹 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女」)「●岡田 茉莉子 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女」)「●橋爪 功 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女」)「●三國 連太郎 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女2」)「●丹波 哲郎 出演作品」の インデックッスへ(「マルサの女2」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(新宿シネパトス(新宿ジョイシネマ3))「●あ行の現代日本の作家」の インデックッスへ(安土敏)

予定調和だが、それなりに楽しめた。映画の方は「スーパーの女」などと比べるとやはり...。
県庁の星2.jpg  県庁の星 桂.jpg 県庁の星 dvd.jpg県庁の星 織田 柴崎2.jpg  スーパーの女.jpg
県庁の星 (2) (ビッグコミックス)』 (全4巻) 桂 望実『県庁の星』「県庁の星 スタンダード・エディション [DVD]」柴咲コウ・織田裕二 「伊丹十三DVDコレクション スーパーの女

 Y県のエリート県庁職員である野村聡は、民間との人事交流プロジェクトに選ばれ、スーパー富士見堂で1年間の研修を受けることになるが、最初は役員根性・県庁マインド丸出しだった彼が、全く肌違いの民間の仕事を通して変質し、真の"スーパー改革"を実現するに至る―。

 公務員って、民間で言う「出向」のことを「研修」と言ってるみたいですね(「研修(出向)」と言っても、労務提供はしているわけだが、民間の「出向」と異なり、労災の請け元は官公庁のまま)。

 ということで、実質的なマンガの舞台は県庁内では無く、前半部分(1巻・2巻)はスーパーマーケット。後半部分(3巻・4巻)は、スーパーの経営を建て直した彼が、第3セクター赤字テーマパークを"潰す"ために送り込まれますが、前半からの流れで、結果はともかく、彼がどう立ち回るかは大体予想がついてしまいます。

 官庁の上層部や主人公の同期の役人の描き方はパターン化していて、事の展開もかなりご都合主義ですが、それでも、主人公とその教育係であるシングルマザーのパート女性とのやりとりも含め、結構楽しく読めました。"ギャグ的"に面白いというか、テーマパークに赴任した初日、「名刺を猿に配って終了」には思わず噴きました。

県庁の星 ポスター.jpg県庁の星1.jpg '05(平成17)年から'07(平成19)年にかけて「ビッグコミックススペリオール」に連載されたコミックで(桂望実の原作を杉浦真夕が脚色)、連載途中の'06年に織田裕二、柴咲コウ主演で映画化されていますが(実際に制作されたのは'05年。「白い巨塔」などのTVドラマを手掛けた西谷弘の映画初監督作品)、織田裕二って本気で演技してそれが丁度マンガ的になるようなそんな印象があり、こうした作品にはピッタリという感じでした。 柴咲コウ/織田裕二

スーパーの女.jpgスーパーの女2.jpg 但し、スーパーを舞台にした作品では、伊丹十三(1933-1997)監督、宮本信子主演の「スーパーの女」('96年/東宝)があるだけに、それと比べるとインパクトは劣るし、「スーパーの女」が食品偽装問題など今日的なテーマを10年以上も前から先駆的に扱っていたのに対し、「県庁の星」は映画もマンガもその部分での突っ込み度は浅く、特に映画は単なるラブ・コメになってしまったきらいも無きにしも非ずという感じ。

マルサの女.jpgマルサの女 1987.jpg 「お葬式」('84年/ATG)で映画界に旋風を巻き起こした伊丹十三監督でしたが、個人的には続く第2作タンポポ」('85年/東宝)と第3作「マルサの女」('87年/東宝)が面白かったです(「お葬式」と「マルサの女」はそれぞれ第58回と第61回のキネマ旬報ベスト・テン第1位に選ばれている)。「マルサの女」は、山崎努がラブホテル経営者"権藤"を演じていますが、彼が新人として出演した「天国と地獄」('63年/黒澤プロ・東宝)で三船敏郎が演じていた会社社長の苗字も"権藤"でした。巧妙な手口で脱税を行う経営者らとそれを見破る捜査官たちとの虚々実々の駆け引きをテンポよく描いており、ラストに抜けてのスリリングな盛り上げ方はなかなかのものでした。

マルサの女2 三國.jpgマルサの女 .jpg それまであまり世に知られていなかった国税査察部の捜査の様子をリアルに描いたということで社会的反響も大きく、翌年には「マルサの女2」('88年/東宝)も作られましたが、山崎努に続いてこちらも、宗教法人を隠れ蓑とし巨額の脱税を企てようとする"鬼沢"に大物俳優・三國連太郎マルサの女2 dvd.jpgを配し、これもまた脇役陣を含め演技達者が揃っていた感じでした。

 伊丹十三監督は「前作はマルサの入門編」であり、本当に描きたかったのは今作であるという伊丹十三.jpg趣旨のことを後に述べていますが、確かに、鬼沢さえも黒幕に操られている駒の1つに過ぎなかったという展開は重いけれども、ラストは前作の方がスッキリしていて個人的には「1」の方がカタルシス効果が高かったかなあ。監督自身は、高い娯楽性と巨悪の存在を一般に知らしめることとの両方を目指したのでしょう。
伊丹十三(1933-1997/享年64(自死))

お葬式 映画 dvd.jpg 確かに「お葬式」で51歳で監督デビューし、高い評価を得たのは鮮烈でしたが、作品の質としてはお葬式 映画 00.jpg3作目・4作目に当たる「マルサの女」「マルサの女2」の方が密度が濃いように思いました。それが、この「マルサの女1・2」以降は何となく作品が小粒になっていたような気がしたのが、この「スーパーの女」を観て、改めて緻密かつパワフルな伊丹作品の魅力を堪能できた―と思ったら、この「スーパーの女」を撮った翌年に伊丹十三は自殺してしまった。残念。
中央:菅井きん(日本アカデミー賞 最優秀助演女優賞)(1926-2018.8.10/享年92
伊丹十三DVDコレクション お葬式

企業家サラリーマン.gif 「スーパーの女」の原作は、『小説スーパーマーケット』(『小説流通産業』('81年))で、作者の「安土敏」こと荒井伸也氏は元サミット社長であり、この人の『企業家サラリーマン』('86年/講談社、'89年/講談社文庫)は、海外飲食店グループを指揮する男性と、新しい時代の経営者を目指す女性たちの生き方を描いた作品で、作者が現役役員の時点でこお小説を書いているということもあってシズル感があり面白かったですが、こちらもテレビドラマ化されているらしい。どこかで再放送しないものかなあ。

企業家サラリーマン (講談社文庫)

酒井和歌子(K県知事・小倉早百合)/石坂浩二(K県議会議長・古賀等)
「県庁の星」酒井和歌子石坂浩二2.jpg県庁の星9.jpg「県庁の星」●制作年:2006年●監督:西谷弘●製作:島谷能成/「県庁の星」井川2.jpg亀山千広/永田芳男/安永義郎/細野義朗/亀井修朗●脚本:佐藤信介●撮影:山本英夫●音楽:松谷卓●原作:桂望実「県庁の星」●時間:131分●出演:織田裕二/柴咲コウ/佐々木蔵之介/和田聰宏/紺野まひる/奥貫薫/井川比佐志/益岡徹/矢島健一/山口紗弥加/ベンガル/酒井和歌子/石坂浩二●公開:2006/02●配給:東宝(評価:★★★)

井川比佐志(スーパー「満天堂」店長・清水寛治)
柴咲コウ in「県庁の星」('06年/東宝)/「おんな城主 直虎」('17年/NHK)

県庁の星 柴咲コウ.jpg おんな城主 直虎 .jpg

中央:津川雅彦(1940-2018.8.4/享年78
スーパーの女ド.jpgスーパーの女 9.jpg「スーパーの女」●制作年:1996年●監督・脚本:伊丹十三●製作:伊丹プロダクション●撮影:前田米造/浜田毅/柳島克巳/高瀬比呂志●音楽:本多俊之●原作:安土敏「小説スーパーマーケット」●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅彦/三宅裕司/小堺一機/伊東四朗/金田龍之介/矢野宣/六平直政/高橋長英/あき竹城/松本明子/山田純世/柳沢慎吾/金萬福/伊集院光●公開:1996/06●配給:東宝(評価:★★★★)

お葬式 映画01.jpgお葬式 映画 02.jpg「お葬式」●制作年:1984年●監督・脚本:伊丹十三●製作:岡田裕/玉置泰●撮お葬式 大滝435.jpg影:前田米造●音楽:湯浅譲二●時間:124分●出演:山笠智衆 お葬式.jpgお葬式 笠智衆.jpg崎努/宮本信子/菅井きん/財津一郎/大滝秀治/江戸家猫八/奥村公廷/藤原釜足/高瀬春奈/友里千賀子/尾藤イサオ/岸部一徳/笠智衆/津川雅彦/佐野浅/小林薫/長江英和/井上陽水●公開:1984/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋日勝文化 (85-11-04)(評価:★★★☆)●併映「逆噴射家族」(石井聰互)
[左]笠智衆(僧侶)/[下]高瀬春奈(侘助の愛人・良子。侘助もだだをこね、雑木林で性交する)/小林薫(火葬場職員・焼いている遺体が生き返る夢を見ることがあると吐露する)
お葬式 高瀬春奈.jpgお葬式 高瀬春奈2.jpg 「お葬式」小林薫2.jpg

菅井きん in「生きる」('52年)/「ゴジラ」('54年)/「幕末太陽傳」('57年)/「天国と地獄」('63年)/「お葬式」('84年)
菅井きん 生きる .jpg 菅井きん ゴジラ.jpg 菅井きん 幕末太陽傳 南田洋子  左幸子.jpg 菅井きん 天国と地獄.jpg お葬式8e-s.jpg 菅井きん.jpg
Marusa no onna (1987)
Marusa no onna (1987) .jpgマルサの女  .jpgマルサの女AL_.jpg「マルサの女」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/山崎努津川雅彦/大地康雄/桜金造/志水マルサの女347.jpgマルサの女 岡田ド.jpgマルサの女 津川.jpg里子/松居一代/室田日出男/ギリヤーク尼ヶ崎/柳谷寛/杉山とく子/佐藤B作/絵沢萠小沢栄太郎 マルサの女.jpg子/山下大介/橋爪功/伊東四朗/小沢栄太郎/大滝秀治/芦田伸介/小林桂樹/岡田茉莉子/渡辺まちこ/山下容里枝/小坂一也/打田親五/まる秀也/ベンガル/竹内正太郎/清久光彦/汐路章/上田耕一●公開:1987/02●配給:東宝
右端:小沢栄太郎
ジョイシネマ3 .jpg新宿ジョイシネマ3.jpg●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★★)●併映「マルサの女2」(伊丹十三)

新宿シネパトス (1956年3月「新宿名画座」オープン→1987年5月「新宿シネパトス」→1995年7月「新宿ジョイシネマ5」→1997年11月「新宿ジョイシネマ3」)

2009(平成21)年5月31日閉館 

「マルサの女」ポスター
マルサの女 ポスター.jpg

「マルサの女2」三國連太郎/上田耕一
マルサの女2 三國連太郎_1.jpgマルサの女2 .jpg佐渡原:丹波哲郎.jpg「マルサの女2」●制作年:1987年●監督・脚本:伊丹十三●製作:玉置泰/細越省吾●撮影:前田米造●音楽:本多俊之●時間:127分●出演:宮本信子/津川雅マルサの女2 笠.jpg彦/三國連太郎丹波哲郎/大地康雄/桜金造/加藤治子/益岡マルサの女2」.jpg徹他/マッハ文朱/加藤善博/浅利香津代/村井のりこ/岡本麗/矢野宣/笠智衆/上田耕一/中村竹弥/小松方正●公開:1988/01●配給:東宝●最初に観た場所:新宿シネパトス (88-03-12)(評価:★★★☆)●併映「マルサの女」(伊丹十三)

《読書MEMO》
映画に学ぶ経営管理論2.jpg●松山 一紀『映画に学ぶ経営管理論<第2版>』['17年/中央経済社]

目次
第1章 「ノーマ・レイ」と「スーパーの女」に学ぶ経営管理の原則
第2章 「モダン・タイムス」と「陽はまた昇る」に学ぶモチベーション論
第3章 「踊る大捜査線THE MOVIE2レインボーブリッジを封鎖せよ!」に学ぶリーダーシップ論
第4章 「生きる」に学ぶ経営組織論
第5章 「メッセンジャー」に学ぶ経営戦略論
第6章 「集団左遷」に学ぶフォロワーシップ論
第7章 「ウォール街」と「金融腐蝕列島"呪縛"」に学ぶ企業統治・倫理論

「●は行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3180】樋口 真嗣 「シン・ウルトラマン
「●「キネマ旬報ベスト・テン」(第1位)」の インデックッスへ(「サード」) 「●「ブルーリボン賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「サード」) 「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「サード」) 「●「芸術選奨新人賞(監督)」受賞作」の インデックッスへ(東 陽一「サード」)「●武満 徹 音楽作品」の インデックッスへ(「初恋・地獄篇」)「●永島 敏行 出演作品」の インデックッスへ(「サード」)「●石橋 蓮司 出演作品」の インデックッスへ(「やさしいにっぽん人」)「●蟹江敬三 出演作品」の インデックッスへ(「やさしいにっぽん人」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(ギンレイホール) 「○存続中の映画館」の インデックッスへ(紀伊國屋ホール)「●て 寺山 修司」の インデックッスへ

寺山色が薄まった「サード」、寺山と羽仁進とのコラボがうまくいっていない「初恋・地獄変」。

サード ちらし.jpgサード.jpg 帰らざる日々.jpg 桃尻娘 竹田かほり.jpg 初恋・地獄篇.jpg
サード [DVD]」/ 「帰らざる日々 [DVD]」/ 「ピンクヒップガール 桃尻娘 [DVD]」 /「初恋・地獄篇 [DVD]」ポスターデザイン:宇野亜喜良
「サード」チラシ

サード4.jpgサード 78.jpg 「サード」('78年3月/ATG)は、少年院にいる"サード"という少年の、大人達から浮ついた励ましの言葉をかけられたところで決して満たされることのない鬱々とした日々を描いた作品。彼は元々、「大きな町へ行く」ことを夢見る高校生男女の4人組の1人で、資金稼ぎに始めた売春がもとで事件を起こし少年院へ送られてきたのだった―。

サード3.jpgサード  .jpg 寺山修司(1935‐1983)の脚本で(原作は軒上泊の「九月の町」)ATG映画の中でも評価の高い作品ですが(第52回キネマ旬報ベスト・テン第1位)、その脚本をまた撮影段階で大幅に変更したとのことで、寺山修司自身が監督した作品と比べれば当然ですが、この作品単体で見ても寺山の色をあまり感じませんでした。

サード1.jpg ただ、"オシ"という無口な少年をはじめ、"トベチン"、"アキラ"、"漢字"、脱走を試みる"ⅡB"といった少年達は皆、自閉的ながらもユニークで、こういうキャラは寺山の半自伝的作品にもあったかも(そう言えば"短歌"と呼ばれている少年もいた)。

 野球少年だったサードはひたすらホームベースの見えないグランドをぐるぐる走り続ける―ちょっとアラン・シリトーの『長距離走者の孤独』を想い出しますが、少年院の大人達に対するサード達の抵抗は、教育会で講師が語っているときにオナラをしたり、褒め言葉に対して暴言で返したりする程度で、ボランティアで慰問に訪れた女の子を暴行するのは、彼らの夢想の世界でのことでしかなく、今観れば、ああ、ここにも70年代の"閉塞感"があるなあと...。

永島敏行ド.jpgサード2.jpg 永島敏行(1956年生まれ。現在、俳優兼「農業コンサルタント」?)は、この作品が映画初出演でしたが、演技はそれほど悪くないけれども良くもないと言うか、あまり陰が感じられず、同年に主演した藤田敏八(1932‐1997/享年65)監督の帰らざる日々」('78年/日活)でのキャバレーのボーイをしながら作家を志している青年役の方が、まだ演技らしい演技だったかも。  

森下愛子(「サード」)
森下愛子.jpgサード1978年森下.jpg 「サード」は、主人公を演じた永島敏行よりも、主人公の女友達役の森下愛子(1958年生まれ、この作品が映画初出演。吉田拓郎と結婚し、いったん芸能活動を休止したが、その後また復帰し、宮藤官九郎脚本の作品の常連に)の陰のある演技が良く、「帰らざる日々」で主人公の青年が高校時代に思いを寄せた喫茶店のウェイトレス役の浅野真弓(1957年生まれ)や、中学時代の同級生役の竹田かほり(1958年生まれ、同年の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」('78年4月/日活)が映画初主演)などの演技も良かったように思います(橋本治原作の「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」は思春期の女の子をヴィヴィッドに描いていて単純に面白かった)。

森下愛子2.jpg サード 森下愛子.jpg  「帰らざる日々」浅野真弓.jpg 浅野真弓.jpg
森下愛子(「サード」)                    浅野真弓(「帰らざる日々」)
帰らざる日々2.jpg 帰らざる日々 竹田.jpg  竹田かほり ピンク・ヒップ.jpg
竹田かほり(「帰らざる日々」)      竹田かほり(「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」)

「初恋・地獄篇」 ('68年/ATG)
初恋・地獄変2.png初恋・地獄変.gif 寺山修司は「サード」以前にも、羽仁進監督の「初恋・地獄変」('68年/ATG)の脚本を羽仁進と共同で書いていて、これは、救護院にいた少年が彫金師に引き取られて成長する様を、少年の過去と現在を交互に織り交ぜ、そこにインタビューや隠し撮りなどのドキュメンタリーの手法も入れて描いたものですが、こちらは「サード」と違って、寺山の色が薄いと言うより、どの部分が寺山修司でどの部分が(多分ゴダールの影響を受けたらしい)羽仁進の部分かということが、観ていて何となく分かってしまう―その点では、必ずしも成功したコラボだったようには思えませんでした。

 一方、「サード」の監督・東陽一の手掛けた初の劇映画は「やさしいにっぽん人」('71年/東プロ)でした(この作品は新宿紀伊國屋ホールで観て、監督・出演者らの舞台挨拶があった。紀伊國屋ホールは緑魔子が70年代にリサイタルをやった会場でもあった)。沖縄で起きた集団自決から生き延びた赤ん坊が、そのことを何も覚えていないまま成長し、恋人や友人たちと一緒に真の「ことば」を求めて遍歴する姿を描く―という、今観るといかにも「70年代」といった感じの作品ですが、主人公・謝花(シャカ)の解放の道筋の合間に、育児ノイローゼの母親、ベトナム反戦デモなど当時の日本の世相が織り込まれ、出演陣も、河原崎長一郎、緑魔子、伊丹十三、伊藤惣一、石橋蓮司、蟹江敬三、渡辺美佐子と今観ると多彩で、「東京物語」('53年)のお婆さん・東山千栄子や、「ウルトラマン」('66-'67年)のフジ・アキコ隊員・桜井浩子も出演しています。
                
「やさしいにっぽん人」主題歌(詞:東陽一/曲:海老沼裕・田山雅光)
やさしいにっぽん人 dvd.jpg伊丹十三 .jpg 出演俳優の1人だった伊丹十三は、「このスタッフの無謀さに賭ける」という言葉を残していますが、当時の「時代の雰囲気」が出過ぎていて、遅れてきた世代には逆に中に入り込みにくいかも。そうしたの中で、別に説明的であるわけではなく、ただ存在として最も「時代の雰囲気」を分かり易く感じさせるのは、当時、石橋蓮司の内縁の妻だった緑魔子でしょうか(後に結婚)。東陽一監督は、「日本妖怪伝サトリ」('73年/青林舎)でも緑魔子を使っていました。 「やさしいにっぽん人 [DVD]」 2013年発売(販売元: 紀伊國屋書店)

やさしいにっぽん人7.jpgやさしいにっぽん人_o2.gif 日本妖怪伝 サトリ (1973).jpg日本妖怪伝サトリ [DVD]
「やさしいにっぽん人」映画チラシ/パンフレット表4

サード atg.jpgサード ≪HDニューマスター版≫ [DVD]」['17年]
サード ≪HDニューマスター版≫ [DVD].jpg「サード」●制作年:1978年●監督:東(ひがし)陽一●製「サード」永島1.jpg作:前田勝弘●脚本:寺山修司●撮影:川上皓市/小林達比古●音楽:田中未知●原作:軒上泊「九月の町」●時「サード」森下.jpg間:103分●出演:永島敏行/吉田次昭/森下愛子/志方亜紀子/片桐夕子/峰岸徹/内藤武敏/島倉千代子/西塚肇/根本豊/池田史比古/佐藤俊介/鋤柄泰樹/若松武 /飯塚真人/宇土幸一/渋谷茂/尾上一久/藤本新吾/岡本飯田橋ギンレイホールes.jpgギンレイホール.jpg弘樹/穂高稔/市原清彦/今村昭信/杉浦賢次/清川正廣/津川泉/小林悦子/大室温子/秋川ゆか/関口文子/角間進/北原美智子/品川博●公開:1978/03●配給:ATG●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(78-07-25)(評価:★★★)●併映:「祭りの準備」(黒木和雄)
ギンレイホール 1974年1月3日飯田橋にオープン 2022年11月27日閉館

江藤潤・永島敏行
「帰らざる日々」1978.jpg帰らざる日々00.jpg「帰らざる日々」●制作年:1978年●監督:藤田敏八●製作:岡田裕●脚本:藤田敏八/中岡京平●撮影:前田米造●音楽:アリス●原作:中岡京平●時間:99分●出演:江藤潤/永島敏行/朝丘雪路/根岸とし江(根岸季衣)/浅野真弓/竹田かほり/中村敦夫/中尾彬/吉行和子/小松方正/草薙幸二郎/丹波義隆/加山麗子/阿部敏郎/高品正広/深見博/日帰らざる日々takeda.jpg夏たより●公開:1978/08●配給:日活●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール(79-05-23)●2回目:神田・神保町シアター(22-08-28)(評価:★★★★)●併映(1回目):「八月の濡れた砂」/「赤い鳥逃げた?」(藤田敏八)
竹田かほり in「帰らざる日々」


桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガールpf.jpg桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガールvhs.jpg竹田かほり4.jpg「桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール」●制作年:1978年●監督:小原宏裕(おはらこうゆう)●製作:岡田裕●脚本:金子成人●撮影:森勝●音楽:長戸大幸●原作:橋本治「桃尻娘」●時間:87分●出演:竹田かほり/亜湖/高橋淳/野上祐二/桑崎晃男/森川麻美/清水国雄/佐々木梨里/片桐夕子/0『桃尻娘 ピンク・ヒップ・ガール』.jpg内田裕也/遠山牛/大竹智子/一谷伸江/関悦子/岸部シロー●公開:1978/04●配給:日活●最初に観た場所:池袋文芸地下(79-06-03)(評価:★★★☆)●併映:「ふりむけば愛」(大林宣彦)
    
初恋・地獄篇 ≪HDニューマスター版≫ [Blu-ray]」['17年]
初恋・地獄篇 ≪HDニューマスター版≫.jpg『初恋・地獄篇』(羽仁進監督)1.bmp『初恋・地獄篇』(羽仁進監督)2.bmp「初恋・地獄篇」●制作年:1968年●監督:羽仁進●脚本:脚本:寺山修司/羽仁進●撮影:奥村祐治●音楽:武満徹/矢代秋雄●時間:107分●出演:高橋章夫/石井くに子/満井幸治/福田知子/宮戸美佐子/湯浅実/額村喜美子/木村一郎/支那虎/湯浅春男●公開:1968/05●配給:ATG●最初に観た場所:有楽町・日劇文化(80-07-17)(評価:★★☆)●併映:「書を捨てよ町へ出よう」(寺山修司)

やさしいにっぽん人.jpgやさしいにっぽん人 vhd.jpg「やさしいにっぽん人」●制作年:1971年●監督:東陽一●製作:高木隆太郎●脚本:東陽一/前田勝弘●撮影:池田伝一●音楽:東陽一/田山雅光●時間:112分●出演:河原崎長一郎/緑魔子/伊丹十三/伊藤惣一/石橋蓮司/蟹江敬三/渡辺美佐子/寺田柾/横山リエ/大辻伺郎/平田守/東山千栄子/桜井浩子/秋浜悟史/陶隆司●公開:1971/03●配給:東プロ●最初に観た場所:●最初に観た場所:●最初に観た場所:新宿・紀伊國屋ホール(82-03-27)(評価:★★★☆)●併映:「日本妖怪伝サトリ」(東陽一)
東陽一監督「やさしいにっぽん人」('71年)/「日本妖怪伝サトリ」('73年)
「やさしいにっぽん人」「日本妖怪伝サトリ」.jpg
「やさしいにっぽん人」パンフレット
やさしいにっぽん人754.jpg
やさしいにっぽん人 813.jpg

竹田かほり in 探偵物語.jpg盲獣 midori .jpg 緑魔子 in「盲獣」('69年/東映)
竹田かほり in「探偵物語(TVドラマ)」(1979/09~1980/04(全27回)/TBS)

紀伊國屋書店.jpg紀伊国屋ホール.jpg紀伊國屋ホール 1964年、紀伊國屋書店本店4階にオープン。2003年、第51回菊池寛賞受賞。


「●か行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2507】 河野 寿一 「独眼竜政宗
「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●「芸術選奨新人賞(監督)」受賞作」の インデックッスへ(黒木和雄) 「●佐藤 勝 音楽作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●原田芳雄 出演作品」の インデックッスへ(「祭りの準備」「冬物語」) 「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ(「純」)「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●伊藤 雄之助 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●仲代 達矢 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(新宿昭和館)インデックッスへ(ギンレイホール)「●日本のTVドラマ」の インデックッスへ(「冬物語」)「●津川 雅彦 出演作品」の インデックッスへ(TVドラマ「冬物語」)

振り切ってきた過去へのノスタルジーに満ちた「祭りの準備」。大谷直子が鮮烈な「肉弾」。

祭りの準備.jpg 祭りの準備  タイトル.jpg  肉弾.jpg 肉弾 大谷直子3.jpg
祭りの準備 [DVD]」(監督:黒木和雄)          「肉弾 [DVD]」 (監督:岡本喜八)

黒木和雄.jpg中島丈博.jpg 「祭りの準備」('75年/ATG)は、昭和30年代の高知を舞台に、1人の青年がしがらみの多い土地の人間関係に圧迫されながらも巣立っていく姿を描いた青春映画で、主人公(江藤潤)が信用金庫に勤めながらシナリオライターになることを夢見ていることからも窺えるように、原作は中島丈博の自伝的小説であり、監督は'06年に亡くなった黒木和雄です。
祭りの準備 DVDカバー.jpg
黒木和雄(1930‐2006/享年75)/中島丈博

映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」.jpg 「青春映画」とは言え青春の真只中でこの作品を観ると、あまりにどろどろしていて結構キツいのではないかという気もしましたが、このどろどろ感が中島丈博の脚本の特色とも言えます。

 父親(ハナ肇)は女狂い、祖父(浜村純)はボケ老人、母親(馬渕晴子)は主人公の青年を溺愛し、彼は二十歳にしてそこから逃れられないでいて、心の恋人(竹下景子)も片思いの対象でしかなく、結局、男達の性欲の捌け口となっている狂った女(桂木梨江)と寝てしてしまうが、その女が妊娠したらしいことがわかる―。 映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」

祭りの準備00.jpg祭りの準備2.jpg 青年がシナリオを書くとセックス描写が頻出し、左翼かぶれの"心の恋人"に「労働者階級をもっときちんと描くべきで、どうしてセックスのことばかり書くの」となじられる始末。そのくせ、彼女はオルグの男性にフラれると、宿直中の青年に夜這いして来て、そこで小火(ボヤ)事件が起きてしまうという、青年同様に彼女自身、青春の混沌の中でちょっと取りとめが無い状態になっています。

祭りの準備図0.jpg こんな状況から脱したいという青年の気持ちがよく分かり、その旅立ちを駅のホームで列車に伴走しながら万歳して見送る、青年の隣家の泥棒一家「中島家」の次男で殺人の容疑をかけられ逃亡の身の男「中島利広」を演じているのが原田芳雄(1940-2011)で、冬物語2.gif役柄にしっくり嵌っていい味を出しています(この俳優を渋いなあと最初に思ったのは映画ではなくテレビで観た「冬物語」('72年~'73年/日本テレビ)というメロドラマだった。恋人役は浅丘ルリ子、ふられ役は大原麗子)。

「冬物語」('72年~'73年)浅丘ルリ子・原田芳雄

 創作の要素はあるとは言え、この「祭りの準備」という映画には、原作者(中島丈博)が過去に振り切ってきた諸々に対するノスタルジーが詰まっている感じがします(東京への"脱出"行を果たした江藤潤と、それが出来ないでいる原田芳雄という対比構造になっている)。
竹下景子 in 「祭りの準備」(1975)[下写真]
祭りの準備3.jpg 祭りの準備 竹下景子.jpg 祭りの準備 図1.jpg
竹下景子 (たけしたけいこ) 1953年9月15日生まれ.jpg 竹下景子(1953年生まれ、当時22歳)の映画デビュー2作目、主演級は初で、桂木梨江(1955年生まれ、当時20歳)も映画デビュー2作目。この作品は竹下景子のヌードシーンで話題になることがありますが、主人公の青年に夜這いした際の下着姿と引き続く火事の炎の向こうにチラッと見える全裸(半裸?)姿程度で(この頃の彼女は結構コロコロ体型、よく言えばグラマラスだった)、この後清純派で売り出し、"お嫁さんにしたい桂木梨江 祭りの準備.jpg女性No.1"などと言われたために以降全くスクリーン上では脱がなくなり(「天の花と実」('77年/テレビ朝日)ではヌードを拒否した)、そんな経緯もあって「祭りの準備」のこのシーンの付加価値が出たのかも? むしろ、この作品で大胆なヌードを見せたのは「中島家」の末娘で男達の性欲の捌け口となっている狂女を演じた桂木梨江の方で、彼女はこの演技で第18回ブルーリボン賞新人賞、第49回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞にノミネートされています。
桂木梨江/原田芳雄 in 「祭りの準備」(1975)
映画「純」 横山博人 江藤潤 ポスター.jpg純 江藤潤DVD.jpg 主演の江藤潤(1951年生まれ)も、映画初主演の割には良い演技をしていたように思います。その後も、「帰らざる日々」('78年/日活)、「純」('80年/東映セントラルフィルム)などの作品に出演していますが、主演の「純」は東映出身の横山博人監督の第一回作品で、'78年4月に完成したものの国内公開の目途の立たぬまま翌年度のカンヌ映画祭に出品され、新人監督の登竜門「批評家週間」オープニング上映作品に選出され、以後、ロンドン映画祭、ロサンゼルス映画祭に招待されるなど高い評価を得ため、'80年に一般公開となったという作品。

映画 「純」朝加真由美.jpg 長崎の軍艦島から漫画家を志望して上京し、遊園地の修理工場で働いている主人公の二十歳の松岡純(江藤潤)は、恋人がいながらその手さえ握らず、通勤電車の中で痴漢行為に耽ける―漫画家を志望で軍艦島から東京に出てきたというところが、脚本家志望で高知・四万十から都会へ行こうとする「祭りの準備」の主人公と似ていますが、ラストまでのプロセスが観ていて気が滅入るくらい暗くて(痴漢行為に耽っているわけだから明るいはずはないが)、脇を固めている俳優陣は非常にリアリティのある演技をしていたものの、イマイチ自分の肌には合わなかったなあ(リアリティがあり過ぎて?)。江藤潤はやはり「祭りの準備」の彼が良かったように思います(「純」はどうして海外でウケたのだろう。外国人には痴漢が珍しいのかなあ。そんなことはないと思うが、クロード・ガニオン監督の「Keiko」('79年/ATG)でも冒頭に痴漢シーンがあった)。

大谷直子 in 「肉弾」(1968)[下写真]
『肉弾』(監督 岡本喜八)2.bmp 女優のデビュー時乃至デビュー間もない頃のスクリーン・ヌードという点では、「高校生ブルース」('70年/大映)の関根(高橋)惠子(1955年生まれ、当時15歳)、「旅の重さ」('72年/松竹)の高橋洋子(1953年生まれ、当時19歳)、「十六歳の戦争」('73年制作/'76年公開)の秋吉久美子(1954年生まれ、当時19歳)、「恋は緑の風の中」('74年/東宝)の原田美枝子(1958年生まれ、当時15歳)、「青春の門(筑豊篇)」('74年/東宝)の大竹しのぶ(1957年生まれ、当時16歳)、「はつ恋」('75年/東宝)の仁科明子(亜季子)(1953年生まれ、当時22歳)などがありますが(これらの中では、関根惠子と原田美枝子の15歳が一番若くて、仁科明子の22歳が竹下景子と並んで一番遅いということになる)、個人的には、'05年に亡くなった岡本喜八監督の「肉弾」('68年/ATG)の大谷直子(1950年生まれ、当時17歳)が鮮烈でした。

nikudann vhs.jpg肉弾3.jpg肉弾 寺田農.jpg この「肉弾」という作品は、特攻隊員(寺田農)を主人公に据え(「肉弾」とは「肉体によって銃弾の様に敵陣に飛び込む攻撃」のこと)、戦争の悲劇というテーマを扱っていながら、コミカルで悲壮感を(一応は)表に出していないという変わった映画で、映画肉弾 大谷直子4.jpg自体は、太平洋に漂流するドラム岳の中で魚雷を抱えている(ある意味、既に死んでいる)主人公の回想という形で進行し、主人公が1日だけの外出許可日に古本屋に行くつもりが思わず女郎屋に駆け込んでしまい、そこにいたセーラー服姿の肥溜めに咲いた一輪の白百合のような少女と防空壕の中で結ばれるという、その少女の役が映画初出演の大谷直子でした(その後、NHKの朝の連ドラ「信子とおばちゃん」('69年)でTVデビュー)。

 彼女が全裸で土砂降りの雨の中を走るシーンは衝撃的で、モノクロ映画ゆえに却ってその美しさは印象に残りましたが、かの特攻隊員は、そこで初めて自らが守るべきものを見出し、空襲で彼女が犠牲になったことで復讐心から戦闘意欲に燃え、魚雷と共に太平洋に出るという―これ、岡本喜八ならではのアイロニーなのですが、笑えるようでやっぱり岡本喜八.jpg笑えないなあ。岡本監督はその後も自らと同年代の戦中派の心境を独特のシニカルな視点で描き続けますが、「独立愚連隊」('59年)とこの「肉弾」は、そのルーツ的な作品でしょう。「日本のいちばん長い日」('67年)のようなオールスター大作を撮った後に、私費を投じてこのような自主製作映画のような作品を撮っているというのも凄いことだと思います。

岡本喜八(1924- 2005/享年81) 下:「肉弾」大谷直子  寺田農/笠智衆
肉弾 大谷直子1.jpg 肉弾 大谷直子2.jpg 肉弾 笠智衆5.jpg 
 

祭りの準備es.jpg祭りの準備ド.jpg「祭りの準備」●制作年:1975年●監督:黒木和雄●製作:大塚和/三浦波夫●脚本:中島丈博●撮影:鈴木達夫●音楽:松村禎三●原作:中島丈博●時間:117分●出演:江藤潤/馬渕晴子/ハナ肇/浜村純/竹下景子/原田芳雄/杉本美樹/桂木梨江/石山雄大/三戸部スエ/絵沢萠子/原知佐子祭りの準備 桂木梨江.jpg祭りの準備 竹下景子.jpg/真山知子/阿藤海/森本レオ/斉藤真/芹明香/犬塚弘/湯沢勉/瀬畑佳代子/夏海千佳子/石津康彦/下馬二五七/福谷強/中原鐘子/柿谷吉美●公開:1975/11●配給:ATG●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(78-07-25)(評価:★★★★☆)●併映:「サード」(東陽一)
飯田橋ギンレイホールド.jpgギンレイホール.jpg飯田橋ギンレイホール内.jpgギンレイホール 1974年1月3日飯田橋にオープン 2022年11月27日閉館


  
      
 
  

「純」●制作年:1978年●監督・脚本:横山博人●製作:横山博人プロダクション●撮影:「純」dv.jpg高田昭●音楽:一柳慧(1933-2022)●時間:88分●出演:江藤潤/朝加真由美/中島ゆたか/榎本ちえ子/赤座美代子/山内恵美子/田島令子/橘麻紀/花柳幻舟/原良子/江波杏子/小松方正/深江章喜/大滝秀治/安倍徹/小坂一也/小鹿番/「純」p.jpg今井健二/森あき子/田中小実昌●公開:1980/12●配給:東映セントラルフィルム●最初に観た場所:新宿昭和館(83-05-05)(評価:★★☆)●併映:「聖獣学園」(鈴木則文新宿昭和館2.jpg新宿昭和館3.jpg/主演:多岐川裕美)
新宿昭和館 1951(昭和26)年K's cinema.jpg7月13日新宿3丁目にオープン(前身は1932年開館の洋画上映館「新宿昭和館」)。1956年、昭和館地下劇場オープン。2002(平成14)年4月30日 建物老朽化により閉館。跡地にSHOWAKAN-BLD.(昭和館ビル)が新築され、同ビル3階にミニシアター「K's cinema」(ケイズシネマ)がオープン(2004(平成16)年3月6日)。


肉弾 アートシアター.jpg肉弾 vhs2.jpg『肉弾』(監督 岡本喜八)1.bmp「肉弾」●制作年:1968年●監督・脚本:岡本喜八●撮影:村井博●音日劇文化.jpg楽:佐藤勝●時間:116分●出演:寺田農/大谷直子/天本英世/笠智衆/北林谷栄/三橋規子/今福正雄/春川ますみ/園田裕久/小沢昭一/菅井きん/三戸部スエ/頭師佳孝/雷門ケン坊/田中邦衛/中谷一郎/高橋悦史/伊藤雄之助/(ナレーター)仲代達矢●公開:1968/10●配給:ATG●最初に観た場所:有楽町・日劇文化(80-07-05)(評価:★★★★)●併映:「人間蒸発」(今村昌平)
田中邦衛(区隊長)/笠智衆(戦争で両腕が無い古本屋の老人)
映画 肉弾 tanaka.jpg 映画 肉弾 ryuu.jpg


冬物語.gif「冬物語」.jpg冬物語 ドラマタイトル.jpg「冬物語」●演出:石橋冠●制作:銭谷功/早川恒夫●脚本:清水邦夫/林秀彦●音楽:坂田「冬物語」2.bmp晃一(主題歌「冬物語」作詞:阿久悠/作曲・編曲:坂田晃一/唄:フォー・クローバース)●出演:浅丘ルリ子/原田芳雄/津川雅彦/扇千景/大原麗子/高松英郎/原田大二郎/宝生あや子/南美江/荒谷公之/鳥居恵子/渡辺篤史/下元勉/潮万太郎/上野山功一/柿沼真二/下川清子/野々あさみ/渥美マリ●放映:1972/11~1973/04(全20回)●放送局:日本テレビ

原田芳雄/浅丘ルリ子/原田大二郎/津川雅彦/大原麗子
冬物語0d87.jpg 冬物語31645_21.jpg 冬物語 大原.jpg
          
    
    
寺田農25.jpg 寺田農 2024年3月14日未明、肺がんのため81歳で死去。代表作「肉弾」など。出演作「雪の断章-情熱-」など。

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すっかりハマってしまった「シコふんじゃった。」。取材がしっかりしている。
シコふんじゃった。.jpg シコふんじゃった 6.jpg Shall We ダンス?.jpg Shall We ダンス22.jpg
シコふんじゃった。 [DVD]」本木雅弘 「Shall We ダンス? [DVD]」役所広司/草刈民代Shall we ダンス? [DVD]

シコふんじゃった2.jpgシコふんじゃった.jpg 就職先も決まっていた教立大学4年の秋平(本木雅弘)は、ある日、卒論指導教授の穴山(柄本明)に呼び出され、授業に一度も出席しなかったことを理由に、卒業と引き換えに穴山が顧問をする相撲部の試合に出るよう頼まれる―。

 「シコふんじゃった。」('91年/東宝)は、ひょんなことから相撲部に入ることになった大学生の奮闘を描いたもので、スポ根モノとして良くできている"佳作"―と言うより、観ていてすっかり嵌ってしまった自分を振り返れば、個人的には"大傑作"だったということになるでしょうか(第70回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位、第47回「毎日映画コンクール 日本映画大賞」、第35回「ブルーリボン賞 作品賞」、第17回「報知映画賞 作品賞」、第5回「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」受賞作品。第16回「日本アカデミー賞」で最優秀作品賞、最優秀監督賞、最優秀脚本賞(周防正行)、最優秀主演男優賞(本木雅弘)、最優秀助演男優賞(竹中直人)の5部門制覇)。

シコふんじゃった8.jpgシコふんじゃった2.jpg 何故そんなに面白かったのかを考えるに、劇画チックではあるけれど、スポ根モノとしては極めてオーソドックな展開で、観る側に充分なカタルシス効果を与えると共に、きっちりした取材の跡が随所に窺えること、何よりもそのことが大きな理由ではないかと思いました。

 大学相撲部(それも弱小の)という特殊な世界に関して、その背景が細部までしっかり描き込まれているから、"8年生"部員を演じる竹中直人のオーバーアクション気味の演技も、線画のしっかりしたマンガのようにすっと受け容れることが出来、楽しめたのかも知れません。

Shall We ダンス.jpg 同じく周防監督の「Shall We ダンス?」('96年/東宝)も、充分な取材の跡が感じられ、内容的にみても、多くの賞を受賞し(第70回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位作品)、ハリウッド映画としてリメイクされるぐらいですからそう悪くはないのですが、この監督のカタルシス効果の編成方法が大体見えてきてしまったというのはある...。

 それと、「シコふんじゃった。」で竹中直人が演じていたコミカルな部分を、今度は竹中直人と渡辺えり子(最近、美輪明宏の助言で「渡辺えり」に改名した)の2人が演じていて、片や役所広司と草刈民世のストイックなメインストーリーがあるにしても、2人分に増えたオーバーアクション(加えて竹中直人分は「シコふんじゃった。」の時より増幅されている)にはやや辟易させられました。

Shall We ダンス.jpg 但し、草刈民世を(演技的には無理させないで)キレイに撮っているなあという感じはして、外国の映画監督でもそうですが、ヒロインの女優が監督の恋愛対象となっている時は、女優自身の魅力をよく引き出しているということが言えるのでは。

 キャリアの初期に、ユニークで面白い、或いは骨太でパワフルな作品を撮っていた監督が、メジャーになってから、大作ながらもその人らしさの見えない、誰が監督しても同じようなつまらない作品ばかり撮っているというケースは多いけれども、この監督は、綿密な取材を通しての自分なりの映画づくりの路線を堅持するタイプに思え、引き続き期待が持てました。(渡辺えり子/竹中直人

Shall We ダンス 01.jpg 因みに「Shall we ダンス?」は、第20回「日本アカデミー賞」において史上最多の13冠を獲得しています。主要7部門に限っても、最優秀作品賞、 最優秀監督賞、 最優秀脚本賞(周防正行)、最優秀主演男優賞(役所広司)、最優秀主演女優賞(草刈民代)、最優秀助演男優賞(竹中直人)、最優秀助演女優賞(渡辺えり子)と7冠全て制覇して他の作品の共同受賞さえ許さなかったのは('09年現在)この作品だけです(残り6冠は、音楽・撮影・証明・美術・録音・編集。残るは新人賞や外国作品賞だから、実質完全制覇と言っていい)。「キネマ旬報ベスト・テン」第1位のほか、「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「報知映画賞 作品賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」も受賞しています。「シコふんじゃった。」がこれらに加えて受賞した「ブルーリボン賞 作品賞」は受賞していませんが、英「ロンドン映画批評家協会賞 作品賞」、米「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 外国語映画賞」など、海外で賞を受賞しています(2004年にアメリカにて「Shall We Dance?」のタイトルで、リチャード・ギア、ジェニファー・ロペス、スーザン・サランドンらが出演するアメリカ版のリメイク作品が製作された)

「シコふんじゃった」0「.jpgシコふんじゃった9.jpg「シコふんじゃった。」●制作年:1991年●監督・脚本:周防正行●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:105分●出演:本木雅弘/清水美砂/柄本明竹中直人/水島かおり/田口浩正/六平直政/宝井誠明/ロバート・ホフマン/梅本律子/松田勝/宮坂ひろし/村上冬樹/桜むつ子/片岡五郎/佐藤恒治/みのすけ●公開:1992/01●配給:東宝(評価:★★★★☆
「シコふんじゃった」09.jpg 「シコふんじゃった」柄本2.jpg

Shall We ダンスes.jpg「Shall We ダンス?」●制作年:1996年●監督・脚本:周防正行●製作:徳間康快●撮影:栢野直樹●音楽:周防義和/おおたか静流●時間:136分●出演:役所広司/草刈民代/竹中直人/田口浩正/徳井優/宝井誠明/渡辺えり子/柄本明/原日出子/草村礼子/森山周一郎/本木雅弘/清水美砂/上田耕一/宮坂ひろし/井田州彦/田中英和/峰野勝成/片岡五郎/大杉漣/石山雄大/本田博太郎/香川京子/田中陽子/東城亜美枝/中村綾乃/石井トミコ/川村真樹/松阪隆子/馬渕英俚可●公開:1996/01●配給:大映(評価:★★★☆)
(上段)役所広司/草刈民代/竹中直人/渡辺えり子/柄本明
(下段)森山周一郎/上田耕一/大杉漣/本木雅弘/香川京子
「Shall We ダンス?」.jpg
《読書MEMO》
●1997(平成9)年・第20回日本アカデミー賞
最優秀作品賞    「Shall We ダンス?」(周防正行)
最優秀監督賞    周防正行 - 「Shall We ダンス?」
最優秀脚本賞    周防正行 - 「Shall We ダンス?」
最優秀主演男優賞  役所広司 - 「Shall We ダンス?」
最優秀主演女優賞  草刈民代 - 「Shall We ダンス?」
最優秀助演男優賞  竹中直人 - 「Shall We ダンス?」
最優秀助演女優賞  渡辺えり子 - 「Shall We ダンス?」
※「Shall We ダンス?」は史上最多の13冠を獲得

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森田作品は出来にムラあり(?)。80年代前半の松田優作と秋吉久美子がいい。

家族ゲーム(ポスター).jpg 家族ゲーム.jpg   森田 芳光 「それから」.jpg  の・ようなもの.jpg   ウィークエンド・シャッフル.png
「家族ゲーム」チラシ/「家族ゲーム [DVD]」「それから [DVD]」 「の・ようなもの [DVD]」「映画パンフレット 「ウィークエンド・シャッフル」監督 中村幻児 出演 秋吉久美子/泉しげる/風間舞子/池波志乃/秋川リサ/渡辺えり子

家族ゲーム1.jpg「家族ゲーム」2.jpg「家族ゲーム」1.jpg 森田芳光(1950-2011)監督・脚本の「家族ゲーム」('83年/ATG)は、家族が食卓に横一列に並んで食事するシーンなど凝ったカットの多い作品でしたが、個人的には、川沿いの団地へ松田優作(1949‐1989/享年40)が演じる家庭教師が小舟に乗って赴く冒頭シーンと、教え子が無事に志望校に合格した後の家族全員の食事の席で、その家庭教師が食卓をぐちゃぐちゃにしてしまうラストが印象的でした。
Kazoku gêmu (1983)
Kazoku gêmu (1983) .jpg 冒頭シーンはアクション映画のパロディ(?)。ラストはかなり唐突な気もしましたが、おそらく家族が一緒に後かたずけをすることを余儀なくされ、その結果初めて家族が一体となる―という、ある意味、カタストロフィではなくハッピーエンドと見るべきなのかもしれません。全体を通して、松田優作のぼそぼそっと小声で早口で話す演技は、映画の家庭教師の特異なキャラクターとよくマッチしていたように思います(第57回「キネマ旬報ベスト・テン」第1位作。第5回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作。森田芳光監督は、その演出・脚色に対して「芸術選奨新人賞」を受賞)。

探偵物語 松田優作.jpg 松田優作は、翻訳家でハードボイルド作家でもある小鷹信光(1936-2015)の原案によるNTV系ドラマ「探偵物語」や、作家赤川次郎薬師丸ひろ子のために書き下ろした小説探偵物語 パンフレット.jpg探偵物語.jpgが原作である根岸吉太郎監督の映画「探偵物語」('83年/角川春樹事務所)で見せたような、コミカルな面のある軽めのキャラクターがハマっていたように思い、また彼自身、自然体でそうした役柄を演じているように感じました。

 映画「探偵物語」('83年)予告/音楽:加藤和彦(主題歌:薬師丸ひろ子)
探偵物語 松田優作 薬師丸ひろ子11.pngtantei-thumb-240x131-8361.jpg 「探偵物語」はTV版に比べて映画の方のストーリーはイマイチで(TV版「探偵物語」とは全く別物の話。先にも述べたように、テレビは小鷹信光が原案者、映画は赤川次郎原作なので違って当然だが)、恋愛ドラマ的要素が入る分、薬師丸ひろ子の演技力不足が痛く、澤井信一郎監督の 「Wの悲劇」('84年/角川春樹事務所)より前の彼女の演技は素人並Wの悲劇.jpgみではなかったでしょうか。「セーラー服と機関銃」('82年/角川春樹事務所)では相米慎二(1948-2001)監督の魔術的演出に救われていましたが、「探偵物語」では、岸田今日子のような演技達者を起用して脇を固めようとしてはいるものの、そんな演技未熟の薬師丸ひろ子を相手に演技している松田優作の苦闘ぶりが目につきました。玉川大学文学部就学のため一時芸能活動を休止していた薬師丸ひろ子の復帰第一弾を角川事務所が企画した作品であり、あくまでも薬師丸ひろ子が主人公の探偵(ごっこ)物語であって、脇だけ固めても主役があまりに未熟では...。それでも映画はヒットし、ラストの新東京国際空港での松田優作と薬師丸ひろ子の"身長差30センチ"キスシーンは当時話題となったのは、彼女がアイドルとしていかに人気があったかということでしょう。松田優作に関して言えば、TV版の方がハードボイルド・ヒーローでありながらずっこけたような面があるという点で、より"優作らしい"演技だったと言えるかも。

Wの悲劇 薬師丸 三田.jpg 薬師丸ひろ子が舞台女優を目指す劇団員を演じた「Wの悲劇」は、夏樹静子(1938- 2016)の原作は劇中劇として用いられているだけで、ストーリーは別物です("原作者"の夏樹静子氏は、劇場にこの作品を観に行って初めてそのことを知り、唖然としたという)。劇団の演出家蜷川幸雄.jpg役で蜷川幸雄(1935-2016)が出演し、実際に劇中劇の演出も担当しています。三田佳子がベテランらしい渋い演技を見せ(日本アカデミー賞最優秀助演女優賞を受賞)、薬師丸ひろ子もそれに触発されwの悲劇 高木美保.jpg演技開眼したのか、そう悪くない演技でした(高木美保の映画デビュー作でもあり、主人公を陥れようとする敵役だった)。夏樹静子の原作は、その後、テレビドラマとしてそれそれアレンジされながら繰り返し作られることとなります('83年TBS(秋吉久美子主演)、'86年フジテレビ(高峰三枝子主演)、'01年テレビ東京(名取裕子主演)、'10年TBS(菅野美穂主演)、'12年テレビ朝日(武井咲主演))。

時をかける少女 1983 併映.jpg 因みに、「探偵物語」と「Wの悲劇」の併映作品はそれぞれ「時をかける少女」('83年/角川春樹事務時をかける少女 1983 2.jpg所)、「天国にいちばん近い島」('84年/角川春樹事務所)でした。共に大林宣彦監督、原田知世主演で、「時をかける少女」は、原作は筒井康隆が学習研究社の「中三コース」1965(昭和40)年11月号にて連載開始し、「高一コース」1966(昭和41)年5月号まで全7回掲載したものであり、原田知世の映画デビュー作でした。 筒井康隆「時をかける少女」長尾みのる.jpg配役発表の時点では原田知世は当時圧倒的人気を誇っていた薬師丸ひろ子「時をかける少女」図1.jpgのアテ馬的存在でしたが、「時をかける少女」一作で薬師丸ひろ子と共に角川映画の二枚看板の一つになっていきます。「時をかける少女」は筒井康隆の原作の舞台を尾道に移して、大林監督の「尾道三部作」(他の2作は「転校生」「さびしんぼう」)の第2作目という位置づけになっていますが、後に「SFジュブナイルの最高傑作」とまで言われるようになった原作に対し、原田知世の可憐さだけでもっている感じの映画になってしまった印象がなくもない作品でした。

「時をかける少女」主題歌作詞・作曲:松任谷由実/筒井康隆『時をかける少女』('72年/鶴書房盛光社・SFベストセラーズ)カバー:長尾みのる/挿絵:谷俊彦/解説:福島正実

大林宣彦 転校生8.jpg「転校生」vhs.jpg 「尾道三部作」の中でいちばんの秀作と思われる「転校生」('82年/松竹)に比べるとやや落ちるでしょうか。「転校生」は、原作は山中恒(この人も「高一コース」とかにちょっとエッチな青春小説を連載していた)の『おれがあいおれがあいつであいつがおれで.jpgつであいつがおれで』で、旺文社の「小6時代」に1979年4月号から1980年3月号まで連載されたもの。男の子と女の子が0転校生 1982.jpg神社の階段から転げ落ち、そのはずみで心と身体が入れ替わってしまう話ですが、二人が入れ替わるまでをモノ田中小実昌 .jpgクロで、入れ替わってからはカラーで描き分け、また8ミリ映像も効果的に挿入しながら、古き良き町・尾道を魅力的に活写していました。この作品にはまだ、自主制作映画のようなテイストがあったなあ。第4回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作(田中小実昌(1925-2000)が「喜劇映画ベスト10」に選んでいたことがある)。
山中 恒『おれがあいつであいつがおれで (旺文社創作児童文学)』['80年/旺文社]

 「転校生」は公開当時はそれほど注目されませんでしたが、「時をかける少女」の方は、角川の「探偵物語」との抱き合わせでの宣伝活動もあってヒットし、角川では'97年に白黒映画でリメイク作品が作られましたが個人的には未見、'06年には細田守監督によるアニメ映画も作られました。細田守監督のアニメ「時をかける少女」は、原作の出来事から約20年後を舞台に、原作の主人公であった芳山和子の姪である紺野真琴が主人公として繰り広げる青春ドラマになっています(原作:筒井康隆となっているが中身は別物と言っていい)。筒井康隆は「新しく付け加えられたシチュエーションというのは、突っ込もうと思えばいくらでも突っ込める」としながらも、「本当の意味での二代目」とコメントしています。また、富野由悠季は「演出が優れており、実写より上手くまとまっている」としながらも、「高校生しか出てこないのでただの風俗映画に見える、キャラクターが活かしき時をかける少女 (2006).jpg時をかける少女 2006 2.jpgれていない」としていますが、(昨年['08年]7月にCXで2度目のテレビ放映されたのを観た)個人的感想は筒井氏の前者と富野氏の後者に近いでしょうか。主人公たちの「告白したい!」という台詞が「SEXしたい!」と自分には聞こえるとまで富野由悠季は言い切りましたが、鋭い指摘だと思います('10年に更にそのアニメの実写版のリメイクが作られている(主演はアニメ版の主人公の声を務めた仲里依紗)。'16年に日本テレビでテレビドラマ化された「時をかける少女」はまたオリジナルに戻っている(主演は黒島結菜)。テレビドラマ化はこれが5回目になる)
時をかける少女 限定版 [DVD]

天国にいちばん近い島 Wの悲劇s.jpg天国に一番近い島 2.jpg 「Wの悲劇」の併映作品だった「天国にいちばん近い島」は、個人的にはイマイチもの足りない映画でしたがこれもヒットし、舞台となったニューカレドニアに初森村桂.jpgめてリゾート・ホテルが建ったとか(バブルの頃で、日本人観光客がわっと押しかけた)。原作者・森村桂(1940-2004)が行った頃はリゾート・ホテルなど無かったようです。舞台は美しいけれど、バブルは崩壊したし、原作者が自殺したということもあって、今となってはちょっと侘しいイメージもつきまとってしまいます(森村桂の自殺の原因はうつ病とされている)。

「それから」松田優作/小林薫
それから [DVD].jpgそれから 松田優作/小林薫.jpg 「家族ゲーム」の後、松田優作が森田芳光監督と再び組んだ「それから」('85年/東映)は、評論家の評価は高かったですが(松田優作は文芸作品はこれが初めてではなく、「家族ゲーム」「探偵物語」の前年、泉鏡花原作、鈴木清順監督の「陽炎座」('81年/日本ヘラルド映画)で文芸作品デビューを果たしており、既に高い評価を得ていた)、個人的にはミスキャストだったように思え(何だか肩に力入り過ぎ)、松田優作や小林薫のロボットのような独特のエロキューションもちょっと違和感が感じられたし、作品自体も漱石の原作のイメージ(勝手に自分が抱いているイメージだが)とやや食い違ったものになってしまったような気がします。

 

「の・ようなもの」(1981 ヘラルド).jpgの・ようなもの1.jpg 森田芳光監督には、「の・ようなもの」('81年/N.E.W.S.コーポレーション)というある若手の落語家の日常と恋を描いた劇場用映画デビュー作があり、映画のつくりそのものはやや荒削りな面もありましたが、落語家の世界の描写に関しては丹念な取材の跡がみてとれ(森田監督は日大落研出身)、落語家志望の青年に扮する伊藤克信のとぼけた個性もいいし、彼が通うソープ嬢エリザベス役の秋吉久美子も"軽め"のしっとりした演技で好演しています(第3回「ヨコハマ映画祭」作品賞受賞作)。

愛と平成の色男/.jpg愛と平成の色男.png 愛と平成の色男/バカヤロー2.jpg「愛と平成の色男/バカヤロー!2 幸せになりたい。」
財前直見 写真集「とってもいいよ!」.jpg武田久美子 1989 .bmp 結局、森田芳光という監督の演出力はよくわかりません。監督の力量なのか役者のお陰なのか...。「愛と平成の色男」('89年/松竹)などは、ストーリーもどうしょうもないし(石田純一にぴったりとも言えるが)、役者もみんな下手くそなのに、結果として、当時はグラビアアイドルで、役者としては殆ど新人に近かった鈴木保奈美、財前直美、鈴木京香、武田久美子の4人を女優としていっぺんに発掘したことになっているし...映画初出演だった鈴木京香などは、この映画の出演を機にNHKの朝の連ドラに抜擢されています。
とってもいいよ!―財前直見写真集』(1988/11)/『マイディア ステファニー―武田久美子写真集』(1989/09)
鈴木保奈美/鈴木京香
鈴木保奈美.jpg鈴木京香2.jpg 鈴木保奈美はカネボウのCMモデル、財前直美は東亜国内航空の沖縄キャンペーンガール、鈴木京香はカネボウの水着キャンペーンガール出身。少女モデルから歌手になった武田久美子は中学生時代の1981年11月、東大駒場祭「第2回東大生が選ぶアイドルコンテスト'81」に自身で応募し、総数1263人の中で優勝、「東大生が選んだアイドル」として一時人気を博し、後に「逆噴射家族」('84年/Aシャッフル 1983.jpgTG)を撮る石井聰亙監督の34分の短編映画「シャッフル」('81年/ATG)にヒロインとして映画初出演(製作は'81年12月、一般劇場公開は'83年秋)したりしたものの、やがてマイナーに(「シャッフル」は大友克洋の短編漫画「RUN」の映画化で、自分を裏切った女を殺したチンピラと、彼を追う刑事の話で、日本版43才でもなぜ武田久美子でいられるのか.jpg「タクシードライバー」とも言われたが、個人的にはよくわからなくてイマイチ)。それが、昭和が終わったこの年に刊行された"貝殻ビキニ"の写真集が売れに売れて人気復活。この頃は、CMもグラビアも撮影と言えば3泊4日でハワイでというのが当たり前のバブル期でした。時の流れを感じますが、武田久美子だけ今もって肉体派路線を継続中? 「シャッフル [DVD]
43才でもなぜ武田久美子でいられるのか: 美ホルモンをアップして更年期を迎え撃つ』['11年]

 因みに、「愛と平成の色男」と併映の「バカヤロー!2 幸せになりたい。」('89年/松竹)は、森田監督の製作総指揮・脚本による4人の若手監督によるオムニバスで、岩松了監督(第3話)のチェッカーズの藤井郁弥が、山のようなレコードを抱え、CD全盛の世に取り残された男に扮する「新しさについていけない」と、成田裕介バカヤロー2 幸せになりたい 新しさについていけない.jpgバカヤロー2 幸せになりたい 女だけがトシとるなんて.jpg監督(第4話)の山田邦子が再就職に苦戦するハイミスに扮した「女だけがトシとるなんて」が良かったように思います。あとの2話は、本田昌広監督(第1話)の小バカヤロー2 幸せになりたい 小林.jpg林稔侍が家族のためにとったニューカレドニア旅行のチケットを会社から顧客に回すように言われた旅行代店社員を演じた「パパの立場もわかれ」と、堤真一が深夜のバカヤロー!2 堤.jpgコンビニでバイトしてお客の扱いで頭を悩ますうちに妄想ノイローゼになっていく男を演じた鈴木元監督(第二話)の「こわいお客様がイヤだ」(堤真一にとっては初主演映画。他に爆笑問題の太田光・田中裕二が映画初出演、太田光は後に「バカヤロー!4」('91年)の第1話を監督している)でした。

ウィークエンド・シャッフル 秋吉久美子.jpgウィークエンド・シャッフル(1982) ぴあ.gif 秋吉久美子は柳町光男監督の「さらば愛しき大地」('82年/プロダクション群狼)のような重い作品でその演技力を見せつける一方、ピンク映画出身の中村幻児監督の「ウィークエンド・シャッフル」('82年/幻児プロ=らんだむはうす)では、「の・ようなもの」以上に軽いノリで演じています。強盗(泉谷しげる)が主婦らに児童誘拐犯と間違えられ、さらに主婦(秋吉久美子)の偽夫の役回りを演じさせられるというハチャメチャなストーリーの原作は筒井康隆で、秋吉久美子、池波志乃、秋川リサら女ウィークエンド・シャッフル 秋吉久美子 泉谷しげる.jpgウィークエンド・シャッフル スチール.jpg優陣が惜しげもなく脱いでいますが、スラップスティク・コメディ調であるためにベタベタした現実感がなく、さらっと乾いた感じの作品に仕上がっています(ただ、原作のシュールな雰囲気までは出し切れていないか)。秋吉久美子って「70年代」というイメージのある女優ですが、80年代の作品を観ても、演技の幅が広かったなあと改めて思わされます。
「ウィークエンド・シャッフル」('82年/幻児プロ=らんだむはうす)(秋吉久美子/泉谷しげる) 
「ウィークエンド・シャッフル」9.jpg「ウィークエンド・シャッフル」T.jpg
 

「家族ゲーム」12.jpg「家族ゲーム」●制作年:1983年●監督・脚本:森田芳光●製作:佐々木志郎/岡田裕/佐々木史朗●撮影:前田米造●原作:本間洋平「家族ゲーム」●時間:106分●出演:松田優作伊丹十三/由紀さおり/宮川一朗太/辻田順一/松金よね子/岡本かおり/鶴田忍/戸川純/白川和子/佐々木志郎/伊藤克信/加藤善博/土井浩一郎/植村拓也/前川麻子/渡辺知美/松野真由子/中森いづみ/佐藤真弓/小川隆宏●公開:1983/06●配吉祥寺パーキングプラザ.jpgテアトル吉祥寺.jpg吉祥寺ピカデリー.jpg給:ATG●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (84-02-11)(評価:★★★★☆)●併映:「転校生」(大林宣彦)
テアトル吉祥寺 (1999年〜吉祥寺ピカデリー) 1979年、吉祥寺パーキングプラザ(右写真・現)地下1階にオープン。2000(平成12)年5月22日閉館

探偵物語38.jpg探偵物語 松田優作 dvd.jpg「探偵物語」(TVドラマ)●演出:村川透/西村潔/澤田幸弘/長谷部安春/加藤彰/小澤啓一/小池要之助●制作:伊藤亮爾/紫垣達郎/山口剛●脚本:丸山昇一/那須真知子/佐治乾/柏原寛司/宮田雪●音楽:鈴木清司●原案:小鷹信光●出演:松田優作/成田探偵物語 松田優作2.jpg探偵物語 倍賞美津子.jpg三樹夫/山西道広/竹田かほり/ナンシー・チェニー/平田弘美/橘雪子/重松収/倍賞美津子/佐藤蛾次郎/中島ゆたか/片桐竜次/草薙幸二郎/清水宏/広京子/川村京子/三原玲奈/真辺了子/戸浦六宏/熊谷美由紀(松田美由紀)●放映:1979/09~1980/04(全27回)●放送局:日本テレビ

左から竹田かほり、倍賞美津子、松田優作、ナンシー・チェニー

探偵物語 熊谷美由紀.jpg
第1話「聖女が街にやって来た」 松田優作/熊谷美由紀(松田美由紀)

岸田今日子/秋川リサ
探偵物語 .jpg探偵物語 松田優作 薬師丸ひろ子ru1.jpg探偵物語 長谷沼君江/岸田今日子1.jpg秋川リサ2.jpg 「探偵物語」●制作年:1983年●監督:根岸吉太郎●製作:角川春樹●脚本:鎌田敏夫●撮影:「探偵物語」岸田.jpg仙元誠三●音楽:加藤和彦(主題歌:薬師丸ひろ子)●原作:赤川次郎●時間:106分●出演:薬師丸ひろ子/松田優作/秋川リサ/岸田今日子/北詰友樹/坂上味和/藤田進/中村晃子/鹿内孝/荒井注/蟹江敬三/財津一郎/三谷昇/林家木久蔵/ストロング金剛/山西道広/清水昭博/榎木兵衛/加藤善博/草薙良一/清水宏●公開:1983/07●配給:角川春樹事務所●最初に観た場所:東急名画座 (83-07-17)(評価:★★☆)●併映:「時をかける少女」(大林宣甦れ!東急名画座3.jpg甦れ!東急名画座1.jpg東急文化会館.jpg東急名画座 1.jpg彦) 東急名画座 (東急文化会館6F、1956年12月1日オープン、1986年〜渋谷東急2) 2003(平成15)年6月30日閉館
 
 
 
Wの悲劇 [DVD].jpg「Wの悲劇」●制作年:1984年●監督:澤井信一郎●製作:角川春樹●脚本:荒井晴彦/澤井信一郎●撮影:仙元誠三●音楽:久石譲(主題歌:薬師丸ひろ子)●原作:夏樹静子●時間:108分●出演:薬師丸ひろ子/三田佳高木美保 Wの悲劇.jpg子/世良公則/三田村邦彦/仲谷昇/高木美保/蜷川幸雄/清水浩治/内田稔/草薙二郎/南美江/絵沢萠子/藤原釜足/香野百合子/志方亜紀子/幸日野道夫/西田健/堀越大史/渕野俊太/渡瀬ゆき●公開:1984/12●配給:東映/角川春樹事務所●最初に観た場所:新宿武蔵野館 (85-01-15)(評価:★★★★)●併映:「天国にいちばん近い島」(大林宣彦)
新宿武蔵野館(2019(令和元)年5月)
新宿武蔵野館42.JPG新宿 武蔵野館(1936年).jpg旧・新宿武蔵野館 (1920年武蔵野館オープン、1928年に現在の「新宿武蔵野館」の地に新築移転(モノクロ写真:新宿 武蔵野館(1936年))。1968年、武蔵野ビルを改装し7階に「新宿武蔵野館」として再オープン。1994年には同一ビルの3階にミニシアターとして「シネマ・カリテ(中黒あり)1・2・3」がオープン。2002年「新宿武蔵野館」を「新宿武蔵野館1」に改称し、同時に「シネマ・カリテ1・2・3」を「新宿武蔵野館2・3・4」に改称。2003(平成15)年9月30日「新宿武蔵野館1」閉館。それに伴い3階の「新宿武蔵野館2・3・4」を「新宿武蔵野館1・2・3」に改称し4館体制から3館体制となる。(2012年12月22日、武蔵野興業により新宿NOWAビル地下1階に2スクリーンの「シネマカリテ」がオープン)

岸部一徳 in「時をかける少女」
「時をかける少女」岸部2.jpg時をかける少女 原田c47.jpg「時をかける少女」●制作年:1983年●監督:大林宣彦●製作:角川春樹●脚本:剣持亘●撮影:前田米造●音楽:松任谷正隆(主題歌:原田知世(作詞・作曲:松任谷由実))●原作:筒井康隆●時間:104分●出演:原田時をかける少女 dvd.jpg時をかける少女 1983 3.jpg東急名画座 1.jpg知世/高柳良一/尾美としのり/津田ゆかり/岸部一徳/根岸季衣/内藤誠/入江若葉/高林陽一/きたむらあきこ/上原謙/入江たか子●公開:1983/07●配給:東映●最初に観た場所:東急名画座 (83-07-17)(評価:★★★)●併映:「探偵物語」(根岸吉太郎)
時をかける少女 [DVD]」入江たか子 /上原謙
「時をかける少女」上原・入0.jpg「時をかける少女」上原・入江.jpg


転校生 [DVD]
転校生 1982 .jpg転校生 1982ド.jpg転校生 1982 01.jpg「転校生」●制作年:1982年●監督:大林宣彦●製作:森岡道夫/大林恭子/多賀祥介●脚本:剣持亘●撮影:阪本善尚●原作:山中恒「おれがあいつであいつがおれで」●時間:112分●出演:尾美としのり/小林聡美/佐藤允/樹木希林/宍戸錠/入江若葉/中川勝彦/井上浩一/岩本宗規/大転校生 1982 02.jpg山大介/斎藤孝弘/柿崎澄子/山中康仁/林優枝/早乙女朋子/秋田真貴/石橋小大林宣彦 転校生ド.jpg百合/伊藤美穂子/加藤春哉/鴨志田和夫/鶴田忍/人見きよし/志穂美悦子●公開:1982/04●配給:松竹●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (83-07-17)●2回目:テアトル吉祥寺 (84-02-11)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「の・ようなもの」(森田芳光)/「ウィークエンド・シャッフル」(中村幻児)●併映(2回目):「家族ゲーム」(森田芳光)

「転校生」志穂美悦子/小林聡美
 
時をかける少女 文庫.jpg時をかける少女2006 1.jpg「時をかける少女(アニメ)」●制作年:2006年●監督:細田守●製作:渡邊隆史/齋藤優一郎●脚本:奥寺佐渡子●音楽:吉田潔●原作:筒井康隆●時間:98分●声の出演:仲里依紗/石田卓也/板倉光隆/原沙知絵/谷村美月/垣内彩未/関戸優希子●公開:2006/07●配給:角川ヘラルド映画(評価:★★☆)
        
天国に一番近い島 lp.jpg天国に一番近い島 dvd.jpg「天国にいちばん近い島」●制作年:1984年●監督:大林宣彦●製作:角川春樹●脚本:剣持亘●撮影:阪本善尚●音楽:朝川朋之(主題歌:原田知世)●原作:森村桂●時間:102分●出演:原田知世/高柳良一/朝川朋之/赤座美代子/泉谷しげる/高橋幸宏/小林稔侍/小河麻衣子/入江若葉/室田日出男/高橋幸宏/松尾嘉代/乙羽信子●公開:1984/12●配給:東映●最初に観た場所:新宿武蔵野館 (85-01-15)(評価:★★☆)●併映:「Wの悲劇」(澤井信一郎) 「天国にいちばん近い島 デジタル・リマスター版 [DVD]
乙羽信子(夫がニューカレドニアの海で戦死した戦争未亡人・石川貞)
乙羽「天国にいちばん近い島」.jpg

高橋幸宏(1952-2023/70歳没)in「天国にいちばん近い島」(1984)/坂本龍一(1952-2023/71歳没)in「戦場のメリークリスマス」(1983)/細野晴臣(1947- )in「居酒屋兆治」(1983)
天国にいちばん近い島 高橋幸宏.jpg戦場のメリークリスマス 6.jpg居酒屋兆冶 細野.jpg


藤谷美和子 それから.jpgそれから 笠智衆.jpegそれから.jpg「それから」●制作年:1985年●監督:森田芳光●製作:黒沢満/藤峰貞利樹●脚本:筒井ともみ●撮影:前田米造●音楽:梅林茂●原作:夏目漱石●時間:130分●出演:松田優作藤谷美和子/小林薫/笠智衆/中村嘉葎雄/草笛光子/風間杜夫/美保純/イッ「それから」1985年.jpgセー尾形/森尾由美/羽賀研二/それから 笠智衆.jpg川上麻衣子/遠藤京子/泉じゅん/一の宮あつ子/小林勝彦/佐原健二/加藤和夫/水島弘/小林トシエ/佐藤恒治/伊藤洋三郎●公開:1985/07●配給:東映●最初に観た場所:新宿ミラノ座 (85-11-17)(評価:★★☆)
 

の・ようなもの3.gifの・ようなもの2.jpg「の・ようなもの」●制作年:1981年●監督・脚本:森田芳光●製作:鈴木光●撮影:渡部眞●音楽:塩村宰●原作:本間洋平●時間:103分●出演:秋吉久美子/伊藤克信/尾藤イサオ/でんでん/小林まさひろ/大野貴保/麻生えりか/五十嵐知子/風間かおる/直井理奈/入船亭扇橋/内海好江/鷲尾真知子/吉沢由起/小宮久美子/三遊亭大井武蔵野館・大井ロマン.jpg大井武蔵野館 地図.jpg楽太郎/芹沢博文/加藤治子/春風亭柳朝/黒木まや●公開:1981/09●配給:N.E.W.S.コーポレーション=日本へラルド映画●最初に観た場所:大井武蔵野館 (83-03-13)(評価:★★★☆)●併映:「転校生」(大林宣彦)/「ウィークエンド・シャッフル」(中村幻児)
大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館(閉館日)(1999年1月/ぼうすの小部屋・おでかけ写真展より)
大井武蔵野館 閉館日2.jpg
大井武蔵野館2.jpg大井武蔵野館.jpg大井武蔵野館 1999(平成11)年1月31日閉館。
                                              
                         
 
                                                                                                   
鈴木保奈美/財前直見/武田久美子/鈴木京香
鈴木保奈美.jpg財前直美.jpg武田久美子.jpg鈴木京香.jpg「愛と平成の色男」●制作年:1989年●監督・脚本:森田芳光●製作:鈴木光●撮影:仙元誠三●音楽:野力奏一●時間:96分●出演:石田純一/鈴木保奈美/財前直見/武田久美子/鈴木京香/久保京子/桂三木助/佐藤恒治●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★☆)●併映:「バカヤロー!2」(本田昌広/鈴木元/岩松了/成田裕介、製作総指揮・脚本:森田芳光)
渋谷松竹1.jpg渋谷松竹sibuyatoei1.jpg渋谷東映・松竹・全線座shibuya.jpg渋谷松竹 1938年、前身の松竹系「東京映画劇場」オープン。1990(平成2)年9月16日、隣接の「渋谷東映」と共に閉館 (1985年道玄坂「ザ・プライム」6Fにオープンしていた渋谷松竹セントラル(2003年~「渋谷ピカデリー」)が後継館となる(2009(平成21)年1月30日「渋谷ピカデリー」閉館))(⑦渋谷東映/⑨渋谷松竹/⑬全線座(1977年閉館))


p映画シャッフル.jpg91syahhuru.jpg「シャッフル」●制作年:1981年大井武蔵野館・大井ロマン2.jpg●監督・脚本:石井聰亙(石井岳龍)●製作:秋田光彦●撮影:笠松則通●音楽:ヒカシュー●原作:大友克洋●時間:34分●出演:中島陽典/森達也/室井滋/武田久美子●公開:1981/12(1983)●配給:ATG●最初に観た場所:大井ロマン(89-07-15)(評価:★★☆)●併映:「レッドゾーン」(神有介)

第2話「こわいお客様がイヤだ」堤真一/第3話「新しさについていけない」竹中直人
バカヤロー2 幸せになりたい こわいお客様がイヤだ.jpgバカヤロー2 幸せになりたい 竹中.jpg「バカヤロー!2 幸せになりたい。」●制作年:1989年●製「バカヤロー!2 幸せになりたい。」2.jpg作総指揮・脚本:森田芳光●監督:本田昌広(第1話「パパの立場もわかれ」)/鈴木元(第2話「こわいお客様がイヤだ」)/岩松了(第3話「新しさについて「バカヤロー!2 幸せになりたい。」.jpgいけない」)/成田裕介(第4話「女だけがトシとるなんて」)●製作:鈴木光●撮影:栢原直樹/浜田毅●音楽:土方隆行●時間:98分●出演:(第1話)小林稔侍/風吹ジュン/高橋祐子/橋爪功/(第2話堤真一/金子美香/イッセー尾形/太田光/田中裕二/金田明夫/島崎俊郎/銀粉蝶/ベンガル/宮田早苗(第3話)藤井郁弥/荻野目慶子/尾「バカヤロー2」橋本2.jpg美としのり/柄本明/佐藤恒治/竹中直人/広岡由「バカヤロー2」柄本.jpg里子/(第4話)山田邦子/香坂みゆき/辻村真人/水野久美/加藤善博/桜金造●公開:1989/07●配給:松竹●最初に観た場所:渋谷松竹(89-07-15)(評価:★★★)●併映:「愛と平成の色男」(森田芳光)

第1話「パパの立場もわかれ」小林稔侍(旅行代理店社員・岡田良介(パパ))/橋爪功(部長・笠松好司)

第3話「新しさについていけない」柄本明(電器屋・寄貝やすし)

池波志乃/秋川リサ/渡辺えり子/泉谷しげる
「ウィークエンド・シャッフル」スチール.jpgウィークエンド・シャッフル ビデオカバー.jpg「ウィークエンド・シャッフル」●制作年:1982年●監督:中村幻児●製作:渡辺正憲●脚本:中村幻児/吉本昌弘●撮影:鈴木史郎●音楽:山下洋輔(主題歌:ジューシィ・フルーツ)●原作:筒井康隆「ウィークエンド・シャッフル」●時間:104分●出演:秋吉久美子/伊大井武蔵野館 閉館日.jpg大井武蔵野館.jpg武雅刀/泉谷しげる/池波志乃/渡辺えり子/秋川リサ/新井康弘/村上不二夫/尾口康生/永井英里/野上正義/芦川誠/春風亭小朝/美保純●公開:1982/10●配給:幻児プロ=らんだむはうす●最初に観た場所:大井武蔵野館 (83-03-13)(評価:★★★)●併映:「転校生」(大林宣彦)/「の・ようなもの」(森田芳光) 大井武蔵野館 閉館日(1999(平成11)年1月31日)


さらば愛しき大地3.jpgさらば愛しき大地 poster.jpg「さらば愛しき大地」●制作年:1982年●監督:柳町光男●製作:柳町光男/池田哲也/池田道彦●脚本:柳町光男/中上健次●撮影:田村正毅●音楽:横田年昭●時間:120分●出演:根津甚八/秋吉久美子/矢吹二朗/山口美也子/蟹江敬三/松山政路/奥村公延/草薙幸二郎/小林稔侍/中島葵/白川和子/佐々木すみ江/岡本麗/志方亜紀子/日高シネマスクエアとうきゅうMILANO2L.jpgシネマスクエアとうきゆう.jpgシネマスクウエアとうきゅう 内部.jpg澄子●公開:1982/04●配給:プロダクション群狼●最初に観た場所:シネマスクウェア東急(82-07-10)(評価:★★★★☆)
シネマスクエアとうきゅう 1981年12月、歌舞伎町「東急ミラノビル」3Fにオープン。2014年12月31日閉館。

《読書MEMO》
筒井康隆『時をかける少女』
『時をかける少女 (ジュニアSF)』(1967年3月20日/鶴書房盛光社)(時をかける少女/悪夢の真相/果てしなき多元宇宙)/『時をかける少女 (SFベストセラーズ)』(1972年/鶴書房盛光社)/『時をかける少女』(1976年/角川文庫)
『時をかける少女』図2.jpg 時をかける少女 (SFベストセラーズ).jpg  時をかける少女 (角川文庫).jpg
『時をかける少女 (SFベストセラーズ)』奥付・目次(併録:「悪夢の真相」)
時をかける少女 目次2.jpg.png.jpg

筒井康隆『ウィークエンド・シャッフル』
『「ウィークエンド・シャッフル」』単行本.jpg『「ウィークエンド・シャッフル」』講談社文庫.jpg『「ウィークエンド・シャッフル」』角川.jpgウィークエンド・シャッフル (1974年9月24日)』(装幀:下田一貴)(佇むひと/如菩薩団/「蝶」の硫黄島/ジャップ鳥/旗色不鮮明/弁天さま/モダン・シュニッツラー/その情報は暗号/生きている脳/碧い底/犬の町/さなぎ/ウィークエンド・シャッフル)/『ウィークエンド シャッフル (講談社文庫) 』/『ウィークエンド・シャッフル (角川文庫)』(カバーイラスト:山藤 章二


田中小実昌 .jpg田中小実昌(作家・翻訳家,1925-2000)の推す喜劇映画ベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年/文春文庫ビジュアル版))
○丹下左膳餘話 百萬兩の壺('35年、山中貞雄)
○赤西蠣太('36年、伊丹万作)
大林宣彦 転校生ロード.jpg○エノケンのちゃっきり金太('37年、山本嘉次郎)
○暢気眼鏡('40年、島耕二)
○カルメン故郷に帰る('51年、木下恵介)
○満員電車('57年、市川昆)
○幕末太陽傳('57年、川島雄三)
転校生('82年、大林宣彦)
○お葬式('84年、伊丹十三)
○怪盗ルビイ('88年、和田誠)


●【文化庁メディア芸術祭アニメ部門シンポジウム】
リメーク映画の金字塔「時をかける少女」が大賞受賞
細田守監督が富野由悠季監督と公開"辛口"トーク
富野由悠季:細田守.jpg富野「僕が細田監督の『時かけ』の嫌な点は、現代の高校生を安易に描いているんじゃないのかと。主人公たちの『告白したい!』という台詞が『SEXしたい!』と僕には聞こえるんです。ただの風俗映画になっているんじゃないかという危うさを感じるんです。アニメという実写映画以上に記号的なものを使って、映画的構造の中で単に風俗映画にしてしまうのはもったいないぞと。作品としてスタイリッシュな分、若者たちが無批判で受け入れてしまう可能性があるわけです。ウラジミール・ナブコフの小説を原作にした『ロリータ』('62)や文化革命を背景にした『小さな中国のお針子』(2002)といった素晴らしい作品があります。映画をつくる人間は、これぐらいの社会的視野を持っていて欲しいんです。その点、奥寺さん脚本の『時かけ』は高校生しか出てこないのが不満なんです。せっかく叔母さんという面白いキャラクターがいるのに、活かしきれてなくもったいない。もっと社会性があってよかったと思います。演出力が優れているだけに残念です」

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