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読み物としては楽しいが、実践には疑問も。タイトルもイマイチ。

カレーを作れる子は算数もできる.jpg 『カレーを作れる子は算数もできる (講談社現代新書)』 〔'06年〕 算数のできる子どもを育てる.jpg算数のできる子どもを育てる』〔'00年〕

 同じ著者の『算数のできる子どもを育てる』('00年/講談社現代新書)の続編にあたる本で、前著では、「鯨8頭とサンダル2足は足すことができるか」といった問いから、算数を教える前に先ず数の概念を理解させることの大切さを説いていてナルホドと思わせるものがありましたが、今回は、数学者・秋山仁氏の掲げる「数学を理解する能力」について解説するという形をとっています。

カレーを作れる子は算数もできる3.jpg 秋山氏の言う「数学を理解する能力」=「日常生活を支障なく過ごす能力」とは、
 ①靴箱に靴を揃えて入れることができる、
 ②料理の本を見て、作ったことのない料理を作ることができる、
 ③知らない単語を辞書で引くことができる、
 ④家から学校までの地図を描くことができる、
 という4つの能力で、前掲の「鯨8頭と...」は①に該当し、①から③までが具体的処理能力の段階で、④が抽象化能力ということになるようです。

 これらの能力の具体的意味と、それが身につくには代数や幾何問題にどう取り組んだらよいのかを、「理科」的な発想を導入して"実験的に"解説していく様は、読み物としては楽しいものでした(円の面積の求め方の裏づけ説明などは、目からウロコだった)。

 しかし、これを学校で教えるとなると、教師の資質にもよりますが、あまり現実的ではないように思えます。一部、学校教育の現場でも導入されているものもありますが、著者は、フリースクールの主宰者という立場で、こうした教え方をしているわけです。

 著者自身も、本書において後半はネタ切れ気味というか、暗記や公式に頼った解説になっている面もありあます。「カレーを作れる子は算数もできる」とうタイトルも少し気になるところで(4つの能力表象の1つに過ぎない)、これを真(ま)に受けて、小学校受験の面接対策で、「家でお手伝いすることはありますか」という質問に答えられるように、子どもにカレーのレシピを覚えさせる親もいるとか。編集部の意向もあるのかも知れませんが、こうしたタイトルのつけ方には一長一短があるように思います(前著『算数のできる子どもを育てる』の方がタイトルとしてはマトモだが、『続・算数のできる子どもを育てる』ではマトモすぎてインパクトが弱いと思ったのだろなあ)。

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「見える力」「詰める力」の大切さを説く。パズル指向だが、ドリル指向ではない。「NGワード」は教訓に。

小3までに育てたい算数脳.jpg 『小3までに育てたい算数脳』 〔'05年/健康ジャーナル社〕 高濱正伸.jpg 高濱 正伸 氏 (略歴下記)

 「百ます」計算だけでは、算数脳、すなわち「本当の学力」は身につかない、算数脳とはイメージ力であり、「見える力」(図形センス・空間認識力・試行錯誤力)と「詰める力」(論理性・要約力・精読力・執念)であると。

 さいたま市にある学習教室「花まる学習会」の代表が書いた本で、こうした進学教室では算数オリンピックの出場選手を育成しているところがありますが、著者は算数オリンピックの問題作成自体にも携わっている人(倫理上の問題はないのかな?)、東大生時代から塾講師もしていて(修士課程では何を専攻していたのだろうか?)、書かれていることには説得力ありました。

 いきなり、○○力、○○力、○○力が必要とずらずら並べるのでなく、「イメージ力→見える力・詰める力→」という具合に体系化して、わかりやすく説明されているのがいい。
 でも、間に挿入されている麻布中や灘中の問題、難しかったなあ。算数オリンピックの問題に通じるところもあり、良問には違いないのだろうけれど。

 本書後半では「外遊び」の重要性を説いていて(「健康ジャーナル社」から出ている本だからというわけではない...と思う)、著者の学習会も野外体験教室などを実施しているようですが、デキル子でも、そうした自然の中で遊ぶ機会が少ないと、いつかどこかで壁にぶつかるということか。

 何となく「デキル子」基準で書いてある気もしましたが、巻末の低学年向けゲームなどを見てやや安心し、「百ます」計算や「強育論」の宮本哲也氏のパズルに比べると、バリエーションが豊富で、好印象を抱いてしまいました。

 実際そうだろうなあ、この人のドリルもパズル指向ですが、1形式のパズルに熟達しても、芳沢光雄教授が批判するところの「ドリル学習」をしているのと同じことになり、応用が効かないと話にならない(ピーター・フランクル氏も本書を推薦していますが、これは算数オリンピックの選手を養成している「アルゴクラブ」繋がりか?)。

 途中にある「NGワード」(子供に言ってはならない言葉)というのには、半分笑って、半分ショックを受けました。わかっていても、ついつい言ってしまうのだ、これが。
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高濱 正伸 (たかはま まさのぶ)
昭和34年、熊本県生まれ。県立熊本高校卒業。東京大学・同大学院修士課程卒業。
学生時代から予備校等で受験生を指導する中で、学力の伸び悩み・人間関係での挫折とひきこもり傾向などの諸問題が、幼児期・児童期の環境と体験に基づいていると確信。
1993年2月、小学校低学年向けの「作文」「読書」「思考力」「野外体験」を重視した学習教室「花まる学習会」を、同期の大学院生等と設立。
算数オリンピック問題作成委員・決勝大会総合解説員を務め、スカイパーフェクTVの中学生の数学講座講師も務めた。
また、埼玉県内の医師やカウンセラーなどから組織された、ボランティア組織の一員として、いじめ・不登校・家庭内暴力などの実践的問題解決の最前線でケースに取り組んできた。

《読書MEMO》
「NGワード」の一部
● 「何回言ったらわかるの?」...「さっき言ったでしょ!」「ほら、また間違えている!」も同じくNG。
● 「この前だってそうでしょう」...過去の失敗を持ち出すのはNG。
● 「バカじゃないの」...これは最悪。
● 「テストがダメでも知らないわよ」...「知らない」と言ってはいけない。

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数学教育(学習)に必要な能力と、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本。

数学に感動する頭をつくる.jpg 『数学に感動する頭をつくる』 〔'04年〕  栗田哲也先生.jpg 栗田 哲也 氏 (駿台英才セミナー講師)

 著者は、数学オリンピックを目指す学生のために駿台英才セミナーで教える、所謂カリスマ講師と呼ばれる人たちの1人で、本書では、「数学力」をつけるにはどうしたらよいかということを、小学生から大人まで幅広い層に向けて説きつつ、現在の学校教育に対する批判を織り交ぜています。

 ただし、著者によれば、計算力・連想力・発想力・推理力・洞察力などはあっても「数学力なんて存在しない」ということで、自分の目的を持って、どの能力を伸ばしたいか先ず決めなさいと。
 難関中学の入試問題の訓練をすれば作業力・推理力が伸び、学校のカリキュラムを先取り学習すれば抽象理解力・洞察力は伸びるが、何れにせよ、工夫力・イメージ力・発想力などは伸びないそうです。

 著者が重視するのは、頭の中に図形や数の状態を思い浮かべそれらを頭の中だけで操ることができる「イメージ能力」や、2つのものの類似を感じ取ったり問題を拡張したりする「発想力」であって、推理力や構想力はさほど重要でなく、また、「構造化された記憶」をもとに未知のもの自分の世界に取り込もうと自問自答することによって「位置づけの能力」を伸ばすことが大事だとのことです。

 数学オリンピックに出るような学生を見てきた経験からの説明は説得力がありますが(どういう子が"数学オリンピック向き"かという話になっている気もするが)、こうした抜きん出て優秀な生徒たちの中にも、小学校低学年まで「公文式」とかやっていた子が多いとのことで、小学校低学年で計算力や記憶力をつけることは、それはそれで大事であるとのことです。

 数学を再勉強したい大人の場合、子どもの中学受験の面倒を見たいということであるならば、網羅的な問題集を1冊買って繰り返し解くことがお薦めであるとのことで、そうした具体例も書かれていますが、全体としては、数学教育(数学学習)に必要な能力を定義するとともに、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本でした。

 著者は東大文学部中退ですが、算数・数学教師はこれを読んでどう思うのだろうか、個人的には書かれていることはそれなりに納得できるものでしたが、ただし、実践はたいへんではないかと...(だから著者の塾へ来なさい、ということでもないとは思うが)。

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面白かったが、目的からすると食い足りない(または難しすぎる?)。

子どもが算数・数学好きになる秘訣.jpg 『子どもが算数・数学好きになる秘訣』〔'02年〕  数学的思考法.jpg 『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント 講談社現代新書』〔'06年〕

 '02年の刊行ですが、著者は'94年以降、算数や数学の面白さを新聞・雑誌・講演会などで訴えてきた数学者であるとのこと。
 46項目から成る本書は、1項目約3ページの本文において子どもが算数や数学を好きになるような学習のヒントをまとめ、それぞれの項目に、算数や数学に関する話題を扱ったコラムが付されています。

 こうした構成なので読みやすく、またコラムも含め面白くて、むしろ、読んだ親自身の方が、算数や数学の奥深さに触れ、その面白さを再認識するかも。
 ただし、それを直接子どもに伝え、学習面で動機付けしようとするのは、(子どもの年齢や学力・意欲の水準にもよるが)なかなか大変ではないかという気もしました。
 
 本文における著者の基本的考え方は、解法をパターン化して覚えさせることを避け、じっくり自ら考えさせることで戦略的思考力を養わせるもので、所謂パターン学習とは対極を成すものですが、定理や公式に頼りすぎるのもよくないけれども、ある程度それらを覚えないと、"掛算九九"と同じで、先に進めず、かえって挫折してしまうこともあるのでは。

 "親・教師"をターゲットとして書かれた本ですが、"一般読者"を対象とした同著者の『数学的思考法―説明力を鍛えるヒント』('06年/講談社現代新書)と多分に記述は重なり(コラムのネタなどは特に)、「数学的思考法」について書いた本としてみた場合は、近著の新書よりむしろこちらの方が読みやすかったです。

 ただし、帯にあるような、子ども「成績アップ」を期待して本書を手にした親には、「面白かったけれども、目的からすると食い足りない」、または「難しすぎる」という印象を受ける人もいるのでないかと、気を回してしまいます。 

 例えば、子どもが「現実社会型」であるか「純粋数学型」であるかを見極め、それに応じて問題の与え方を変えると効果的であるというのは、理屈はよくわかるけれども、教師からすれば学校でこの使い分けをするのは難しいし、親からすれば、少なくとも自分にある程度の数学的素養がないと...(本書にあるような「オイラーの小定理」を理解している親がどれぐらいいる?)。

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こういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならなかったと思うかも。

入門 算数学.jpg 『入門 算数学』(2003/07 日本評論社)算数のできる子どもを育てる.jpg 木幡 寛 『算数のできる子どもを育てる

 数学者であり長年数学教育の研究に携わってきた著者による小中学校レベルの算数・数学の入門書。

 算数の背景にある数学的思考を、算数を学ぶ際に前面に押し出すという考えのもとに書かれていて、素人目にはかえって難しくなるのではと思いがちだけれども、読んでみると目からウロコが落ちるようによくわかります。
 本書を読んで、「ああ、学校でこういう具合に教えてくれていれば算数嫌いにならずに済んだのに」と思った人も多いとか。

 例えば、足し算・引き算を教える前に、数の概念をキッチリ解説しています。
 数には「集合数」「順序数」があり、「集合数」の性質には、1対1対応での不変性などがある...と言葉にすると難しく聞こえますが、図説でわかりやすく解説されていて、「1〜9までと10との明確な違い」とか今まであまり考えたこともなかった話や、古今東西の数の数え方(位取り)といった面白い話もあります。

 以前、「自由の森学園」の校長だった木幡寛氏の『算数のできる子どもを育てる』('00年/講談社現代新書)を読んで、「鯨8頭とサンダル2足は足すことができるか」といった問いから子どもに数の概念を理解させるやり方があり、実にユニークでわかりよいけれど、こんなふうに教えている余裕が学校教育にあるかなと思いました(実際、氏は退職後にフリースクールにおいてこのやり方で教えている)。
 本書を読んで、そうした考え方(教え方)が、ユニークというよりもむしろ"スジ論"的考え方であることが、体系的な説明を通してわかりました。

 ただし、本書にあるような考え方に基づく指導方法は「学習指導要領」にはなく、こうした教え方は教師の自主的な研究・努力と、現場でそうした時間を作る工夫に懸かっているということなのでしょう。

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身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思う。

算数パズル「出しっこ問題」傑作選.jpg  『算数パズル「出しっこ問題」傑作選―解けて興奮、出して快感! (ブルーバックス)』 〔'01年〕

 問題の数は60問で、難易度は、ブルーバックスにあるこの手の本の中では高い方ではないと思いますが、古典的な傑作問題が多く含まれています。

 例えば「うそつき村と正直村」の問題。
 たどり着いた村がうそつき村か正直村かを、住人に1つだけ質問して言い当てるにはどんな質問をすればいいのか。

 それから「神様と悪魔と人間」の問題。
 Aは「私は神様ではない」と言い、Bは「私は悪魔ではない」と言い、Cは「私は人間ではない」と言う。神様はホントのことを言い、悪魔は嘘しか言わないが、人間は嘘をついたりホントのことを言ったりする。ならば、ABCはそれぞれ何者か。

 さらには、「白い帽子と赤い帽子」の問題。
 赤い帽子が3個、白い帽子が2個あって、ABCの順に前向きに並んだ3人に自分の帽子の色がわからないように被せ、自分の帽子の色を訊ねたところ、Cは「自分の帽子の色がわからない」と言い、Bも「わからない」と。それを聞いたAは「わかった!」と。Aの帽子は何色か。

 簡単に暗記できる内容なので、身近に問題を"出しっこ"できる相手がいれば楽しいと思います。
 著者自身は以前からが学校の算数・数学教育に提言をしている人で、一方で、『お父さんのための算数と数学の本』('79年/日本実業出版社)などといった著作もあります(...とすると、出す相手は自分の子どもということになるのか)。
 ブルーバックスには本書の姉妹編として 『論理パズル「出しっこ問題」傑作選-論理思考のトレーニング』(小野田博一著/'02年)という結構売れた本もありますが、本書より問題がやや難しい気がしました。
 
 ちなみに、上記3問の答えは、
 「あなたはこの村に住んでいますか」
 「A人間・B悪魔・C神様」
 「赤」
 ですが、答えが合った合わないよりも、発想と考え方のプロセスが大切なのでしょう。

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