【802】 ○ 栗田 哲也 『数学に感動する頭をつくる (2004/06 ディスカヴァー・トゥエンティワン) ★★★☆

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数学教育(学習)に必要な能力と、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本。

数学に感動する頭をつくる.jpg 『数学に感動する頭をつくる』 〔'04年〕  栗田哲也先生.jpg 栗田 哲也 氏 (駿台英才セミナー講師)

 著者は、数学オリンピックを目指す学生のために駿台英才セミナーで教える、所謂カリスマ講師と呼ばれる人たちの1人で、本書では、「数学力」をつけるにはどうしたらよいかということを、小学生から大人まで幅広い層に向けて説きつつ、現在の学校教育に対する批判を織り交ぜています。

 ただし、著者によれば、計算力・連想力・発想力・推理力・洞察力などはあっても「数学力なんて存在しない」ということで、自分の目的を持って、どの能力を伸ばしたいか先ず決めなさいと。
 難関中学の入試問題の訓練をすれば作業力・推理力が伸び、学校のカリキュラムを先取り学習すれば抽象理解力・洞察力は伸びるが、何れにせよ、工夫力・イメージ力・発想力などは伸びないそうです。

 著者が重視するのは、頭の中に図形や数の状態を思い浮かべそれらを頭の中だけで操ることができる「イメージ能力」や、2つのものの類似を感じ取ったり問題を拡張したりする「発想力」であって、推理力や構想力はさほど重要でなく、また、「構造化された記憶」をもとに未知のもの自分の世界に取り込もうと自問自答することによって「位置づけの能力」を伸ばすことが大事だとのことです。

 数学オリンピックに出るような学生を見てきた経験からの説明は説得力がありますが(どういう子が"数学オリンピック向き"かという話になっている気もするが)、こうした抜きん出て優秀な生徒たちの中にも、小学校低学年まで「公文式」とかやっていた子が多いとのことで、小学校低学年で計算力や記憶力をつけることは、それはそれで大事であるとのことです。

 数学を再勉強したい大人の場合、子どもの中学受験の面倒を見たいということであるならば、網羅的な問題集を1冊買って繰り返し解くことがお薦めであるとのことで、そうした具体例も書かれていますが、全体としては、数学教育(数学学習)に必要な能力を定義するとともに、その裏づけとなる理論分析に重きが置かれた本でした。

 著者は東大文学部中退ですが、算数・数学教師はこれを読んでどう思うのだろうか、個人的には書かれていることはそれなりに納得できるものでしたが、ただし、実践はたいへんではないかと...(だから著者の塾へ来なさい、ということでもないとは思うが)。

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This page contains a single entry by wada published on 2007年12月14日 22:18.

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