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今見ても「未来的」。見ていて楽しいし、資料としても貴重。
『真鍋博 本の本』['22年]
イラストレーター・エッセイストとして活躍した真鍋博(1932-2000/68歳没)による、星新一や筒井康隆らの小説をはじめとする書籍装幀から雑誌の表紙まで、974点を収めたものです。 作家・担当編集者による貴重な証言も掲載されています(筒井康隆、豊田有恒、最果タヒ、榎本俊二らが寄稿)。2022年に生誕90周年を迎えたことを記念しての刊行のようです。全484ページ。「書籍 第一部」「「書籍 第二部」「教科書・教材」「雑誌」「業界紙・広報誌」「真鍋博自著」の6章構成となっています。
第1章と第2章の「書籍 第一部」「書籍 第二部」で全体のおおよそ3分の2を占めます。「書籍 第一部」には、早川書房、新潮社、東京創元社など13の版元の本の、真鍋博が手掛けた表紙が紹介されていいて、名を挙げた3社分だけで100ページ以上になります。第2章の「書籍 第二部」では、角川書店や文藝春秋など30余社の版元の本が紹介されてます。このように版元別になっているので、整理がついて分かりやすいです。
早川書房が点数が多いのは、「ハヤカワ・ミステリ文庫」のアガサ・クリスティー作品の表紙をほぼ全部手掛けていることが大きいと思われ(観音開きの状態で全冊88冊を一覧できるようレイアウトされている)、加えてコナン・ドイル作品なども手掛けています。さらに、ポケットサイズの「ハヤカワ・SF・シリーズ」で、レイ・ブラッドベリの『火星年代記』、フィリップ・K・ディックの『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』や、小松左京、星新一、筒井康隆作品などを、また、単行本の「ハヤカワ・ノヴェルズ」でアントニイ・バージェスの『時計じかけのオレンジ』やジョン・ル・カレの『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の表紙なども手掛けています。
新潮社は、「新潮文庫」での星新一や筒井康隆作品の表紙が懐かしいです。掲載されている新潮文庫の表紙デザインは、この二人の作家の本で占められています。筒井康隆作品は、中央公論社の単行本でも表紙を手掛けており、星新一との結びつきの強いイメージの下に隠れがちですが、筒井康隆との縁の深さを感じます。小松左京なども含めSF作家の作品の表紙を手掛けることが多かったのは、筒井康隆がその画風を「未来的」と評していることからも分かりますが、今見ても「未来的」であるのがスゴイと思います。
東京創元社は、やはり「創元推理文庫」で、エラリー・クィーン、ヴァン・ダイン作品はほぼすべて手掛けているほか、アーサー・C・クラークやレイ・ブラッドベリの作品の表紙も手掛けています。
「雑誌」で手掛けている点数として多いのはやはり「ミステリマガジン」の表紙でしょうか。このあたりまでは大体知っていましたが、後の方になると、こんなのも手掛けてていたのかと、意外だったものもありました。
見ていて楽しいし、資料としても貴重だと思います。こうして見ると、絵柄だけでなく、全体のデザインが計算されているように思われます。真鍋博による本の表紙絵をたっぷり堪能できる本です。