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子供の想像力を刺激するような楽しい内容。ファンタージーのツボを押さえている。
Maurice Sendak(1928-2012)
"Where the Wild Things Are (Caldecott Collection)"/『かいじゅうたちのいるところ』['75年/冨山房]
1963年に米国の絵本作家モーリス・センダック(Maurice Sendak)が30代半ばで発表した絵本で(原題:Where the Wild Things are)、彼の出世作であり(コールデコット賞受賞)、代表作でもある作品。
狼のぬいぐるみを着ていたずら遊びをしていたマックスは、おかあさんに叱られ食事抜きで寝室に閉じ込められるが、寝室の床からにょきにょき木が生えてきて、そこからマックスの怪獣たちのいる島への不思議な旅が始まる―。
子供の想像力を刺激するような楽しい内容ですが、現実とファンタージーの繋ぎの部分が滑らかで、細密画のような独特のタッチも、怪獣たちや森の木々を描くのにぴったり合っているように思えます。布地のような質感や、カラフルだけれどもどぎつさの無い色使いは、怪獣たちのユーモラスな表情とともに、見る者の心に温かく沁み渡ってきます。
当初は内容が教育的ではないという批判もあったそうですが、教育的かどうかということを超えて画風が芸術的であるだけでなく、マックスの航海の旅を通じてのファンタージーにおける時間の概念の超越や、怪獣たちの王となったマックスが怪獣たちの食事を抜いて彼らをおとなしくさせるというストーリーの対照・反復性は、ファンタージーのツボを押さえているように思え、しかも最後は何だかほっとさせられます。
センダックの両親はポーランドからのユダヤ系移民で、彼自身はブルックリンのユダヤ人街で生まれ育ちましたが、英国の古典的イラストレーションの影響を受けていて、それでいて子供の時からディズニー・アニメのファンだったそうで(ミッキーマウスと同じ1928年生まれ)、ヨーロッパ的であると同時にアメリカ的でもあるというか、結果的に普遍性とオリジナリティを兼ね備えた作風になっているように思えました。
モーリス・センダック(Maurice Sendak)2012年5月8日、脳卒中による合併症のためコネティカット州で死去。83歳。