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犯人の無目的性がこの作品を面白く、深くしている。「新幹線大爆破」などよりずっといい。

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太陽を盗んだ男
「「太陽を盗んだ男」01.jpg 中学校の理科教師の城戸誠(沢田研二)は、日頃から遅刻を繰り返す無気力教師。ある日、生徒たちを引率し原発の社会科見学を終え「「太陽を盗んだ男」伊藤.jpgた時、火器を持つ老人(伊藤雄之助)にバスジャックされる。彼の要求は「ただちに皇居へ向かい、天皇陛下に合わせろ」。事件を解決すべく、丸の内警察署捜査一課の山下警部(菅原文太)らによる犯人確保と人質救出作戦が始まる。山下は誠と協力し、生徒らを盾にしてバスを降りてきた老人を取り押さえる。この出来事に影響され、誠は変わる。休み時間に学校のネットをよじ登る、授業は学級崩壊を気にせず延々と原子力や原爆の作り方についての講義を行う等の奇行が始まった。だがこれは、彼がこれから起こす犯罪のための予「「太陽を盗んだ男」02.jpg習だった。ある日、誠は茨城県東海村の原発から液体プルトニウムを強奪し、アパートの自室で「「太陽を盗んだ男」03.jpg原爆を完成させる。そして、精製した金属プルトニウムの欠片を仕込んだダミー原爆を国会議事堂に置いて日本政府を脅迫、交渉相手として山下を指名する。誠の第一の要求は「プロ野球のナイターを試合の最後まで中継させろ」。電話を介しての山下との交渉の結果、その夜の巨人vs.大洋戦は急遽完全中継される。快哉を叫ぶ誠は山下に「俺は『9番』」と名乗る。第二の要求を何にするか思いつかずに迷う誠は、愛聴するラジオDJ・ゼロこと沢井零子(池上季実子)を巻き込む。「「太陽を盗んだ男」西田.jpg「「太陽を盗んだ男」04.jpg公開リクエストの結果、誠の決めた第二の要求は「ローリング・ストーンズ日本公演」。これにも従わざるを得ない山下だったが、原爆製造のため借金したサラ金業者(西田敏行)に返済を迫られた誠が出した第三の要求は「現金5億円」。山下は、逆探知時間を把握し、ギリギリまで電話で話す誠の性癖を逆手に、電電公社に電話の逆探知時間を短縮させる罠を仕掛ける。作戦は的中し、誠が東急デパート屋上から電話をしていることが判明、デパート出入口を警察が封鎖する。誠はトイレに駆け込むも、歯茎からの出血や吐き気などの被爆症状の進行を悟る。封鎖を突破することが困難とみた誠は、山下に原爆の在りかを教え、原爆のタイマー解除を交換条件として、用「「太陽を盗んだ男」s.jpg意した5億円を屋上からばら撒くことと封鎖を解くことを指示。万札が空から降ってきて大騒ぎになる街中を誠は逃げ切る。原爆を回収した山下らは、起爆装置を解除するも、解体作業は翌朝になる。誠は原爆が保管されているビルを襲い、原爆を奪取す「「太陽を盗んだ男」ss.jpgると車で逃走、追跡する警察とのカーチェイスの際に零子が事故の巻き添えになる。ローリング・ストーンズ公演の日、山下と誠は対峙する。ストーンズの来日はもともと予定されておらず、観客にわざと暴動を起こさせ全員まとめて逮捕、その中から犯人を洗い出すという作戦だった。誠は山下を、原爆を置いていたビルの屋上まで連れて行って銃で撃つが、銃弾を何発も身に受けながら、山下は誠を道連れにしようと屋上から転落する。山下は全身打撲で殉職、誠はどうにか生き長らえる。誠は被爆で弱った上に転落の怪我の流血が止まらないまま、原爆を持ちながら街を歩き、やがて30分が過ぎる―。

 長谷川和彦監督の'79年公開作(同監督の監督作は「青春の殺人者」('76年/ATG)とこれのみ)。「キネマ旬報 日本映画ベスト・テン」第2位(同読者選出日本映画ベスト・テン第1位)、「毎日映画コンクール」監督賞(長谷川和彦)、「報知映画賞」作品賞・主演男優賞(沢田研二)、「日本アカデミー賞」最優秀助演男優賞(菅原文太)などを受賞。

 脚本は当初は村上龍が予定されていたが、彼の仲介者だった長谷川和彦自身が村上案を没にし、'77年に渡米先で知り合ったレナード・シュレイダー(シドニー・ポラック監督・高倉健主演「ザ・ヤクザ」('74年/米)の原作者でもある)に依頼、レナード・シュレイダーはドストエフスキー張りの脚本を書き上げたとのこと。当初は中学教師・城戸が犯行に「新幹線大爆破」高倉.jpg及ぶ理由として、校長と喧嘩するとか色々と案はあったようですが、同じくパニック映画である「新幹線大爆破」('75年/東映)で高倉健が新幹線を爆破するにはそれなりに理由があるものの、それが映画をつまらなくしていると長谷川和彦は考えたため、主人公の家族の関係など全てカットし、都会で孤独に生きる中学校教師という人物造型にしたとのこと。この目論見は成功しており、犯人の無目的性がこの作品を「新幹線大爆破」などより面白く、また深くしています。

 山本又一朗プロデューサーは萩原健一を主役の中学教師役に想定していたようです。長谷川和彦は警部のイメージを「鬼警部」として描いていたため、高倉健に話を持って行ったら、高倉健から「原爆を作る方をやりたい」と言われ(「新幹線大爆破」でも犯人役を演じたから?)、長谷川和彦は原爆を作る中学教師はちゃらんぽらんな男として描きたかったため高倉健のイメージと合わず、結局は高倉健からも断られます。そこで、以前から新宿ゴールデン街の飲み友達だった菅原文太に出演依頼すると快諾を得、その菅原文太から「主役にはジュリーなんかどうなの?」との提案を受けて沢田研二になったそうです(長谷川和彦は沢田研二主演のTVドラマ「悪魔のようなあいつ」('75年/TBS、全」17話)の脚本を書いていた)。

 因みに、長谷川和彦は、石川達三原作・神代辰巳監督・萩原健一主演の「青春の蹉跌」('74年/東宝)で脚本を務め、主人公をアメフト選手にする原作には無い設定を入れ(長谷川和彦は東大アメフト部出身)、萩原健一演じる主人公が試合するシーンは、明大と東大のアメフト部員を動員して、長谷川和彦が自分でメガホンを取ったとのことで、萩原健一が主役を演じる可能性もかなりあったように思います。でも、この映画は沢田研二を使ったことで成功していると思うし、また、菅原文太も渋くて良かったです(長谷川和彦からヤクザ風の演技に何度もダメ出しされたのを、役者魂でよく耐えたとか)。

 犯罪映画としては、今村昌平監督の 「復讐するは我にあり」('79年/松竹)に迫る面白さです。途中、巻き添えであっさり死んでしまう池上季実子に対し、ラストで、何発撃たれても「新幹線大爆破」高2.jpgなかなか死なない菅原文太など、リアリティを外した場面もありましたが(没シーンも多かったようだ。主人公が小学校のプールにプルトニウムを撒いて多くの子供が死体となって浮き上がるシーンは、当初の"現実の出来事"の予定から"主人公の想像"に置き替わった)、「新幹線大爆破」で最後に射殺される主人公は高倉健のイメージにそぐわなかったのに対し、取り敢えずは生き延びるこの映画の主人公は、まずますジュリーのイメージに合っているのでは(「新幹線大爆破」の宇津井健演じる運転指令長運頼み的行動も疑問)。

「「太陽を盗んだ男」p.jpg「「太陽を盗んだ男」0ss.jpg ラストの沢田研二を羽交い絞めにし、一緒にビルの屋上から落ちようとする菅原文太の「行くぞ『9番』」というセリフは菅原文太の案で、元々は長谷川和彦自身が脚本でそう書いていたものの、ホモセクシュアルの暗示が露骨なため、「死ぬぞ『9番』」に変更していたところ、菅原文太から「行くぞ『9番』」でという提案があったそうで、菅原文太はこれがどんな映画かよく分かっていた?

 意外と原爆製造シーンが丹念に描かれていたし、誠が液体プルトニウム強奪のため東海村の原発に潜入するシーンは「ミッション:インポッシブル」('96年/米)みたい。冒頭の日本兵の軍装で皇居に突撃しようとするバスジャック犯を演じた特別出演の伊藤雄之助(1919-1980)は怪演。池上季実子は、演技はクサいけれども、ヘドロの東京湾に飛び込んで体を張っていました。当時の新宿や渋谷の街並みも懐かしく、貴重映像と言っていいくらい('79年夏公開の映画「スーパーマン」('78年/米・英)の看板があった)。突っ込みどころも多いけれど、長谷川和彦にもっと作品を撮って欲しかったと思わせる力作。なかなか劇場で観る機会が無かったというレア感なども加味して、評価は★★★★☆としました。

「「太陽を盗んだ男」ぽ.jpg「「太陽を盗んだ男」4.jpg「太陽を盗んだ男」●制作年:1979年●監督:長谷川和彦●製作:山本又一朗●脚本:長谷川和彦/レナード・シュレイダー●撮影:鈴木達夫●音楽:井上堯之/星勝●原作:レナード・シュレイダー●時間:147分●出演:沢田研二/菅原文太/池上季実子/北村和夫/神山繁/佐藤慶/伊藤雄之助(特別出演)/汐路章/市川好朗/石山雄大/森大河/樽仙三/中平哲仟/江角英明/風間杜夫/草薙幸二郎/小松方正/西田敏行/水谷豊●公開:1979/10●配給:東宝●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-07-19)(評価:★★★★☆)

菅原文太(丸の内警察署捜査一課警部・山下満州男)/佐藤慶(市川博士)

「新幹線大爆破」p.jpg「新幹線大爆破」●制作年:1975年●監督:佐藤純弥●脚本:小野竜之助/佐藤純弥●撮影:飯村雅彦/山沢義一/清水政郎●音楽:青山八郎●時間:152分●出演:高倉健/千葉真一/宇津井健/山本圭/郷鍈治/織田あきら/竜雷太/宇津宮雅代/藤田弓子/多岐川裕美/志穂美悦子/渡辺文雄/福田豊土/田坂都/十勝花子/片山由美子/風見章子/岩城滉一/小林稔侍/阿久津元/黒部進/河合絃司/志村喬/山内明/永井智雄/鈴木瑞穂/(以下、特別出演)丹波哲郎/北大路欣也/川地民夫/田中邦衛●公開:1975/05●配給:東映(評価:★★☆)

宇津井健(倉持運転指令長)/高倉健(主人公・沖田哲男)/山本圭(元過激派・古賀勝)
千葉真一(ひかり109号・青木運転士)/小林稔侍(ひかり109号・森本運転士)
「新幹線大爆破」001.jpg

丹波哲郎(特別出演:須永警察庁刑事部長)/北大路欣也(特別出演:空港で張り込む刑事)/田中邦衛(古賀勝(山本圭)の兄)
山内明(内閣官房長官)・永井智雄(国鉄新幹線総局長)・志村喬(国鉄総裁)/鈴木瑞穂(花村警察庁捜査第一課長)・渡辺文雄(宮下義典国鉄公安本部長)・青木義朗(千田刑事)
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面白かったが重厚さはさほどなかった。映画化でますます浅くなった感じがした『人間の証明』。

『人間の証明』1976単行本.jpg 『人間の証明』1977角川文庫.jpg 『人間の証明』1997カッパノベルズ.jpg 『人間の証明』講談社文庫.jpg.png
『人間の証明』2004.jpg 『人間の証明』20047カッパノベルズ.jpg 『人間の証明』2015.jpg 「人間の証明」dvd.jpg 「人間の証明」b.jpg
『人間の証明』['76年/角川書店]/['77年/角川文庫]/['83年/講談社文庫]/['97年/カッパ・ノベルズ]『新装版 人間の証明 (角川文庫)』['04年]『人間の証明 (カッパ・ノベルス) 』['04年]『人間の証明 (角川文庫)』['15年]「人間の証明 角川映画 THE BEST [DVD]」「人間の証明 角川映画 THE BEST [Blu-ray]
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 東京・赤坂にある「東京ロイヤルホテル」のエレベーター内で、胸部を刺されたまま乗り込んできた黒人青年ジョニー・ヘイワードが死亡した。麹町署の棟居弘一良刑事らは、ジョニーを清水谷公園から東京ロイヤルホテルまで乗せたタクシー運転手の証言から、車中で彼が「ストウハ」という謎の言葉を発していたことを突き止める。さらに羽田空港から彼が滞在していた「東京ビジネスマンホテル」まで乗せた別のタクシーの車内からは、ジョニーが忘れたと思われる恐ろしく古びた『西條八十詩集』が発見された。一方、バーに勤めていたとある女性が行方不明になる。夫の小山田は独自に捜索をし、妻・文枝の浮気相手である新見を突き止めるが文枝の居場所は分からなかった。文枝はこの時点で轢死しており、犯人は政治家郡陽平とその妻の家庭問題評論家・八杉恭子の息子・郡恭平だった。恭平は車の運転中、スピンを起こし文枝をはねてしまったのだ。発覚を怖れた恭平は同棲相手の路子と共に遺体を東京都西多摩郡の山林へ隠す。その後路子の勧めで身を隠すため、路子を伴ってニューヨークへ渡った。棟居刑事は「ストウハ」がストローハット(麦わら帽子)を意味すると推理した。また、事件現場であるホテルの回転ラウンジの照明が遠目には麦わら帽子のように見えるため、ジョニーがそれを見て現場に向かったのだと解釈した。また、タクシーから発見された詩集の中の一編の詩が「麦わら帽子と霧積(きりづみ)という地名」を題材としていたことと、ジョニーがニューヨークを去る際に残した「キスミー」という言葉から、捜査陣は群馬県の霧積温泉を割り出した。棟居らが現地に向かうと、ジョニーの情報を知っているであろう中山種という老婆がダムの堰堤から転落死していた。群馬県警は転落による事故と考えていたが棟居らは殺人事件と主張する。棟居らは中山種の本籍のある富山県八尾町へ向かう。そして捜査の中で、八杉が八尾出身であることを偶然発見する。更にアメリカ側からの捜査により、ハーレムに住むジョニーの父親が資産家アダムズの車に飛び込み示談金を得て、ジョニーの渡航費を捻出したことがわかる。父親はその後死亡した。新見によるひき逃げ事件の捜査も進み、現場に残されていた熊のぬいぐるみの所持者が恭平であること、ぬいぐるみに付着していた血液が文枝のものであることが明らかになると、新見は単身ニューヨークへ飛び、恭平からひき逃げと死体遺棄を白状させた。同じ頃、文枝の遺体がハイカーの大学生アベックに山中で発見され、その現場に恭平のコンタクトケースが落ちていたことで、犯人は恭平と断定された。新見から、恭平と路子の身柄が警察へ引き渡された。八杉とジョニーは生き別れた母子だった。ジョニーの父親は八杉と恋人同士であったが、当時は米国軍人と正式な結婚をすることが出来ず、親子3人で霧積温泉へ旅行した後、父親は二歳になるジョニーを連れて米国へ帰国し、日本に残された八杉は勧められるままに郡と見合結婚をした。ジョニーの存在が世間に知れ渡り、過去に黒人と関係を持っていた事実が露見することを恐れた恭子は自分に会いに来日したジョニーを殺害し、事情を知っている中山種も殺していた―。

 作者が、1975年に父を引き継ぎ角川書店社長に就任した角川春樹から、「作家の証明書になるような作品を書いてもらいたい」と依頼されて書いた作品で、1975年に旧「野性時代」(角川書店)で連載されました。1976年・第3回「角川小説賞」受賞作。

 映画監督の押井守氏が対談で、「『人間の証明』というのは松本清張みたいな話じゃん。『ゼロの焦点』とかあの辺の話だよね。戦後に暗い過去があって混血児を生んだ女が、いまはセレブになってるんだけどその息子が会いに来て、結局殺しちゃいましたというさ。これってまるっきり松本清張だよ」と言っていましたが、まさにそうだと思いました(「ストウハ」がストローハット(麦わら帽子)を意味したというところなどは、『砂の器』の「亀田」が「亀嵩」だったというのを想起させる)。

 テンポよく読めて面白く、様々な伏線もちゃんと繋がっていて、文庫の解説で横溝正史が評価し、帯で宮部みゆき氏が推薦しているのも分かります。ただ、松本清張作品ほどの重厚さは感じられなかったでしょうか。戦後の闇市で強姦されかけていた恭子を助けた棟居の父は、米軍兵士たちに袋叩きにあって命を落としていますが、その米軍兵の一人がケン・シュフタン刑事だったというのも、あまりに偶然が過ぎて、ご都合主義的な気がしました(一方で、ケン・シュフタン刑事が混血だったと最後に出てくるが、途中どこにもその説明が無かったのが不可解)。

「人間の証明」03.jpg 1977年、角川春樹事務所製作の第2弾として映画化され、八杉恭子を演じた岡田茉莉子は、角川春樹と作者で直接を出演依頼し、松田優作、ジョージ・ケネディらが日本映画で初めて本格的なニューヨークロケをしたとのこと。映画は途中までは原作に比較的近いですが、原作では棟居とケン・シュフタンの刑事同士接触はなく、棟居(松田優作)がアメリカに行ってケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に会う辺りから急激に原作を外れてしまいます。作者自身は「映像化にOKを出した時点で、嫁に出すようなもの。好きに料理してくれ、という考えです」と言い、原作にはない米国ロケでアクションを繰り広げた松田優作にも感謝していたそうですが...。

「人間の証明」松田ハナ.jpg それにしても原作から外れすぎ、と言うか、いろいろ付け加えすぎて、ますます浅くなった感じ。八杉恭子の息子・恭平(岩城滉一)は 、ヘイワード殺しの犯人を追っていたはずのニューヨーク市警ケン・シュフタン刑事(ジョージ・ケネディ)に射殺されるし、息子の死の知らせを受けた八杉恭子は、授賞式の舞台で「あの子は私の生きがいです。 あの子は私の麦わら帽子だったんです。 私はすでに一つの麦わら帽子を失っています。 だからもう一つの麦わら帽子を失いたくなかったんです」という、黒人の息子より恭平の方が大事だったみたいな演説をぶって、最後は霧積まで行って『ゼロの焦点』よろしく自殺するし―。

「人間の証明」岡田.jpg 莫大な宣伝費をかけたメディアミックス戦略の効果で映画はヒットし、実際、観た人の中には感動したという人も少なくなかったようですが、映画評論家からは酷評されました(第51回「キネマ旬報ベスト・テン」では第50位、読者選出では第8位)。「山本寛斎のファッションショーが延々と長すぎる」「松田優作が、テレビドラマのジーパン刑事そのままで何とも異様」等々。小森和子は雑誌の映画評で「日米合作としては違和感のない出来上がり。ただすべてが唐突な筋立て」と述べたように、滅多に悪く批判しない映画評論家までが映画作品としての密度の希薄さを指摘し、特に大黒東洋士と白井佳夫の批判がキツ過ぎ、この二人は角川関連の試写会をボイコットされたそうです。出演した鶴田浩二も映画誌で、「製作に12億かけて宣伝に14億かけるなんて武士の商法じゃない。本来、宣伝費は製作費の1割5分か2割でしょう。これは外道の商法です」と角川商法を批判しました。

「人間の証明」松田.jpg 批判の多さに原作者の森村誠一自身が激怒し、「作品中のリアリティと現実を混同したり、輪舞形式をとった設定をご都合主義と評したりするのは筋違いの批評...映画評論家は悪口書いて、金をもらっている気楽な稼業。マスコミ寄生人間の失業対策事業で、マスコミのダニ」などと映画評論家を猛烈に批判したとのことです。

 いずれにせよ、メディアミックス戦略等で映画業界に1つ革新をもたらしたのは事実だと思いますが、そうしたビジネス上の功績と併せて、角川映画ってこんなものだという質的評価は、良くも悪くも映画「人間の証明」で定まってしまったように思います。

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野性の証明 単行本.jpg「野性の証明」図3.jpg 作者は、『人間の証明』の発表翌年に『野性の証明』を発表、東北の寒村で大量虐殺事件が起き、その生き残りの少女と、訓練中、偶然虐殺現場に遭遇した自衛の二人を主人公に、東北地方のある都市を舞台にした巨大な陰謀を描いた作品でした。こちらも発表翌年に高倉健、薬師丸ひろ子主演で映画化されましたが、大掛かりな分、多分に大味な映画になっていました。結局、高倉健演じる自衛隊の特殊部隊の隊員(味沢岳史)がある集落でたまたま正当防衛的に住民を殺してしまい、いろいろな経緯があって、薬師丸ひろ子演じる集落の生き残りの少女を守りながら、三國連太郎演じる日本のある地方を牛耳ってるボスと戦うというわけのわからない話である上に、映画では誰もが簡単に人を殺し、味沢もまたその例外ではなく、ラストも原作の味沢が細菌に侵されて狂人になってしまうというものではなく、異なる結末になっていました。まあ、とことん駄作にしてしまった感じ。結局は高倉健のカッコ良さも空回りしていて、お金をかけてこうした映画を撮る監督(どちらかと言うと製作者?)の気が知れないです。

「人間の証明」d.jpg「人間の証明」三船.jpg「人間の証明」●英題:PROOF OF THE MAN●制作年:1977年●監督:佐藤純彌●製作:角川春樹/吉田達/サイモン・ツェー●脚本:松山善三●撮影:姫田真佐久●音楽:大野雄二(主題歌:ジョー山中「「人間の証明のテーマ」)●原作:森村誠一●時間:133分●出演:岡田茉莉子/松田優作/ジョージ・ケネ「人間の証明」長門夏八木勲范文雀.jpgディ/ハナ肇/鶴田浩二/三船敏郎/ジョー山中/岩城滉一/高沢順子/夏八木勲/范文雀/長門裕之/地井武男/鈴木瑞穂/峰岸徹/ブロデリック・クロフ「人間の証明」09.jpgォード/和田浩治/田村順子/鈴木ヒロミツ/シェリー/竹下景子/北林谷栄/大滝秀治/佐藤蛾次郎/伴淳三郎/近藤宏/室田日出男/小林稔侍(ノンクレジット)/西川峰子(仁支川峰子)/小川宏/露木茂/坂口良子/リック・ジェイソン/ジャネット八田/小川宏/露木茂/三上彩子/姫田真佐久/今野雄二/E・H・エリック/深作欣二/角川春樹/森村誠一●公開:1977/12●配給:東映(評価:★★★)「人間の証明」m」.jpg「人間の証明」八田.jpg 「人間の証明」深作.jpg 「人間の証明」長門.jpg
[上]坂口良子(おでん屋の女将)/大滝秀治(おでん屋の客A)・佐藤蛾次郎(おでん屋の客B)
[下]森村誠一(ロイヤルホテル チーフ・フロントマネージャー)/ジャネット八田(ハーレムで写真屋を営む女性・三島雪子...写真提供:吉田ルイ子)/深作欣二(渋江警部補)・長門裕之(なおみ(范文雀)の夫・小山田武夫)

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「野性の証明」●制作年:1978年●監督:佐藤純彌●製作:角川春樹/坂上順/遠藤雅也●脚本:高田宏治●撮影:姫田真佐久●音楽:大野雄二(主題歌:町田「野性の証明」高倉.jpg義人「戦士の休息」)●原作:森村誠一●時間:143分●出演:高倉健/薬師丸ひろ子/中野良子/夏木勲 /三國連太郎(特別出演)/成田三樹夫/舘ひろし/田「野性の証明」[図3.jpg村高廣/松方弘樹/リチャード・アンダーソン/鈴木瑞穂/丹波哲郎/大滝秀治/角川春樹/ジョー山中/ハナ肇/中丸忠雄/渡辺文雄/北村和夫/山本圭/梅宮辰夫/成田三樹夫/寺田農/金子信雄/北林谷栄/絵沢萠子/田中邦衛/殿山泰司/寺田「野性の証明」3.jpg農/芦田伸介(特別出演)/角川春樹/ジョー山中●公開:1978/10●配給:日本へラルド映画=東映(評価:★★)

田中邦衛(八戸市のバーのマスター)/殿山泰司(八戸市のおでん屋台の主人)
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『人間の証明』... 【1977年3月文庫化[角川文庫]/1977年3月新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 人間の証明』)]/1983年再文庫化[講談社文庫]/1997年再文庫化[ハルキ文庫]/2004年再文庫化[角川文庫(『新装版 人間の証明』) ]/2004年再新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 人間の証明』)]/2015年再文庫化[角川文庫(2004年角川文庫版に「永遠のマフラー」を併録)]】
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『野生の証明』... 【1978年3月文庫化[角川文庫]/1978年3月新書化[カッパ・ノベルズ(『長編推理小説 野生の証明』)]/2004年再文庫化[角川文庫(『新装版 野生の証明』) ]/2015年再文庫化[角川文庫(2004年角川文庫版に「深海の隠れ家」を併録)]】
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演技達者が揃っていて楽しめる。渥美・倍賞の「男はつらいよ」の前年作。

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あの頃映画 「白昼堂々」」渥美清/藤岡琢也/倍賞千恵子
「白昼堂々」01.jpg ワタ勝こと渡辺勝次(渥美清)は、名の通ったスリだった。しかし、スリ係の刑事・森沢(有島一郎)の説得もあり、堅気になって九州の炭坑で働いていた。ワタ勝は間もなくヤマが潰れたのを機会に、仲間を集めてスリの集団組織をつくり上げた。彼は東京のデパートに狙いをつけ、大仕掛けな万引き計画を立てる。東京に向かったワタ勝は、盗品を捌くために昔のスリ仲間・銀三(藤岡琢也)を口説く。銀三は更生してデパートの警備員となり、女房の春子(三原葉子)は小さいながら洋品店を営んでいた。銀三は一人娘・桃江(大貫泰子)のためにも、ワタ勝の誘いを断るべきだと思いながら、ついに自分の洋品店で盗品を捌くことになった。知恵者の銀三が仲間に加わったことで、万引集団の成果はうなぎ上りに上昇し、それも高級洋品の布地を一巻ごと万引きするという大掛りなものだった。東京、大阪、京都、北海道と、ワタ勝たちは全国を仕事場にしていたが、危「白昼堂々」6.jpgなくなると九州のボタ山集落へ帰るという具合だった。デパート側が警備を強化しても、結局はワタ勝たちの素早さにかなわない。仲間が捕まると、専門の弁護士・坂下(フランキー堺)に処理させるという「白昼堂々」 倍賞 .jpg具合だ。ある日、美人スリ・よし子(倍賞千恵子)が仲間に加わる。ワタ勝も彼女にはぞっこんで、見かねた銀三のとりもちで目出度く結婚する。一方、銀三やワタ勝がすっかり足を洗っていたものとばかり思っていた森沢は、万引集団が二人の手になるものと知って烈火の如く憤り、着々と捜査の輪を狭めていた。そんな時、ワタ勝は仲間があちこちで捕まり、しかも、よし子が仲間四人と名古屋で捕まったと知ってガックリする。盗品の捌きもストックが増え出し、坂下が弁護料を大幅に値上げしてきている時でもあった。思いあまったワタ勝はデパートの売り上げ金二億円を奪うという大胆な作戦を立てる。デパートの警備員をやめた銀三は、その手助けは断ったがやはりなにかと援助する。計画は成功目前で、森沢の炯眼の前にあえなく潰える。銀三とワタ勝は逮捕されたが、二人ともくよくよしなかった。ワタ勝はよし子の手紙を読みながら、刑期の終るのを待っている―。
白昼堂々 (角川文庫 緑 267-3)
「白昼堂々 - 結城昌治. 文庫jpg.jpg 結城昌治(1927 -1996/68歳没)の原作(「週刊朝日」所載)を野村芳太郎が監督した喜劇です。原作は'65(昭和40)年6月から12月にかけて「週刊朝日」に連載され('66(昭和41)2月朝日新聞社刊)、'66(年上期・第55回「直木賞」候補となっています(作者としては「ゴメスの名はゴメス」に次ぐ2度目の候補で、3度目の候補作「軍旗はためく下に」で受賞し、直木賞作家となった)。

 原作は実在のスリ集団に想を得ていますが、この連載後間もなく、そのモデルとなった、北九州から上京した本物の万引き集団13人が検挙されています。作者がその集団の存在を知ったのは、昭和34年に日本橋三越で犯行中にスリ集団が一斉検挙される事件があったのを記憶に留めていたためで、それをヒントに、実際に訪れた北九州の炭鉱地帯の様子から、炭鉱不況とスリ集団を結びつけて小説を構想したとのことで、そうしたら、日本橋三越の事件から6年経って、彼らが再び検挙されたということです。
白昼堂々 (光文社文庫)
「白昼堂々 (光文社文庫).jpg 原作は主に銀三の視点で描かれていますが、原作も映画と同じようなストーリーで、比較的忠実に映像化されているように思いました。ただし、銀三も勝次も最後は捕まってしまうのは同じですが、銀三と勝次はラストで大金を持ってデパート内を逃げ、屋上へ追い詰められて、勝次はすぐに捕まったものの、銀三はアドバルーンに絡まって空高く舞い上がり、紙幣は風に飛ばされてあたりに撒き散らされ(映画「地下室のメロディー」('63年)っぽい)、アドバルーンは下降して木に絡まり、銀三はいったん気を失って、気がついたらその木は刑務所内の敷地に生えていた木だったという喜劇的なオチになっています。

 映画のラストで渥美清演じるワタ勝も藤岡琢也演じる銀三も刑務所内にいながらどこか明るいです(ワタ勝は倍賞千恵子が演じる美人スリ・よし子が現在の"結婚契約"を解消しないとの手紙をくれて大いに嬉しい)。これは、原作では小説内では描かれていませんが、作者の「あとがき的」に、彼らは(仲間を売ることもなく)明るく逞しく生き続けるだろうとしています。

「白昼堂々」生有島.jpg 映画は、渥美清、藤岡琢也と有島一郎の取り合わせなど、演技達者で観ていて楽しいかったです。倍賞千恵子(当時27歳)、生田悦子(当時21歳)も若くて綺麗。共にスリ役で、倍賞千恵子、渥美「白昼堂々 - 渥美倍賞jpg.jpg「白昼堂々」倍賞jpg.jpg清にとっては「男はつらいよ〈シリーズ第1作〉」('69年)の前年の作品になります。渥美清が演じるワタ勝が倍賞千恵子が演じるよし子に求婚するシーンがありますが、この二人を見ているとどうしても"兄妹"のイメージになってしまいます。

「白昼堂々」生田藤岡.jpg「徹子の部屋」生田悦子.jpg 生田悦子は映画デビューが1967年なので、当時まだデビュー3年目。2018年の4月に「徹子の部屋」に出演していて71歳で元気そうだったのが、同年7月に心不全で急逝したのが惜しまれます。
  
「白昼堂々」12.gif「白昼堂々」●制作年:1968年●監督:野村芳太郎●製作:杉崎重美●脚本:野村芳太郎/吉田剛●撮影:川又昂●音楽:林光●原作:結城昌治●時間:99分●出演:渥美清(渡辺勝次)/倍賞千恵子(腰石よし子)/藤岡琢也(富田銀三)/大貫泰子(富田桃江)/三原葉子(富田春子)/有島一郎(森沢刑「白昼堂々」田中.jpg事)/高橋とよ(森沢タツ子)/新克利(寺井刑事)/生田悦子(八百橋ユキ)/田中邦衛(マーチ)/佐藤蛾次郎(野田)/フランキー堺(万引き団のお抱え弁護士・坂下)/穂積隆信(安藤警部)/山本幸栄「白昼堂々 55jpg.jpg(丸山刑事)/三遊亭歌奴(川又の巡査)/「白昼堂々 田中jpg.jpgコント55号・坂上二郎(財布を掏られる男)/コント55号・萩本欽一(ホームレス)●公開:1968/10●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-02)(評価:★★★☆)

田中邦衛(二度にわたる炭坑の爆発で記憶を失ってしまったスリ・マーチ)

「白昼堂々 - 結城昌治2.jpg「白昼堂々 - 結城昌治.jpg【1971年文庫化[角川文庫]/1996年新書化[講談社・大衆文学館]/2008年再文庫化[光文社文庫(結城昌治コレクション『白昼堂々』)]】

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この頃の大島渚のパワーはスゴイ。 主演は川津祐介でも佐々木功でもなく、炎加世子だった。

『太陽の墓場』.jpg 「太陽の墓場」1.jpg 「太陽の墓場」3.jpg
あの頃映画 太陽の墓場 [DVD]」津川雅彦/川津祐介/炎加世子/佐々木功

「太陽の墓場」p.jpg「太陽の墓場」101.jpg 大阪の小工場街の一角にバラックの立ち並ぶドヤ街の建物の中で、若い男ヤス(川津祐介)に見張らせて、元陸軍衛生兵の村田(浜村純)が大勢の日雇作業員から採血し、花子(炎加世子)がそれを手伝い、ポン太(吉野憲司)が三百円払う。動乱屋(小沢栄太郎)は国難説をぶって一同を煙にまき、花子の家に往みつくことに。ヤスとポン太は新興の愚連隊「信栄会」の会員で、この種の小遣い稼ぎは会長の信(津川雅彦)から禁じられている。二人の立場を見抜いた花子は、支払いを値切る。一帯を縄張りとする大浜組を恐れる信は、組の殴り込みを恐れてドヤを次々に替えた。二人は武(佐々木功)と辰夫(中原功二)という二少年を信栄会に入れる。仕事は女の客引き。ドヤ街の一角には、花子の父・寄せ松(伴淳三郎)、バタ助(藤原釜足)・ちか(北林谷栄)夫婦、ちかと関係のある朝鮮人・寄せ平(渡辺文雄)、ヤリ(永井一郎)とケイマ(糸久)ら「太陽の墓場」3n1.jpgが住む。一同は旧日本陸軍の手榴弾を持った動乱屋を畏敬の目で迎える。武は信栄会を脱走して見つかるが、「太陽の墓場」x.jpg花子の力でリンチを免れる。信の命令で仕事に出た武、辰夫、花子は公園でアベックを襲う。花子が見張り、物を盗り、辰夫が女を犯した。花子は動乱屋と組んで血の売買を始めたが利益分配で揉め、信栄会と組む。信の乾分の手で村田は街から追い出される。動乱屋のもう一つの仕事は、色眼鏡の男(小池朝雄)に戸籍を売る男を世話することで、その戸籍は外国人に売られるのだった。その金で武器を買い、旧軍人の秘密組織を作るのだと豪語する。花子は医師の坂口(佐藤慶)を誘惑し、採血仲間に加える。やがて信栄会は分裂し、信と花子は喧嘩別れに。仲間のパンパンを連れて大浜組に身売りしようとしたヤスは信に殺される。アベックの男も自殺し、これらを見た武は嫌気がさすが、その武に花子は惹かれる。村田を拾い上げた花子は、動乱屋と組んで再び血の売買を始める。バタ助は動乱屋に戸籍を売ると、その金で大盤ふるまいをして首を吊る。人のいい大男(羅生門)の戸籍を買った動乱屋は、男を北海道に追いやる。花子は武の口からそれとなく信栄会のドヤを聞く。二人が「太陽の墓場」171.jpg公園まで来ると、恋人に死なれたアベックの女(富永ユキ)が武に飛びかかり、花子が突き放すと女は崖から転落する。安ホテルの一室で二人は激しく抱き合う。信栄会を辞める決心した武は辰夫に相談、反対する辰夫はナイフを抜くが、格闘の末倒れたのは辰夫だった。花子は大浜組に信栄会のドヤを教え、信栄会は殴り込みを受け、信以外は全員殺される。武と逃げる信は、ドヤの場所が武の口から花子に知れたことを悟り、武を銃で撃つ。撃たれた武は信にしがみつき、離れない二人の上を列車が通過する。呆然とする花子に動乱屋のヤジが聞こえた。ソ連が攻めて来て、世の中が変ったところで、このドヤ街に何の変化が来よう!花子もヤジる。騒然とした中で動乱屋の手榴弾が爆発し、バラックは吹っ飛ぶ。その中を、採血針を持った村田が花子の後を気ぜわしげに駈け廻っていた―。

「太陽の墓場」えp.jpg「太陽の墓場」さつえい.jpg 1960年に公開された、大島渚(1932-2013/80歳没)が、彼自身と助監督の石堂淑朗との共同オリジナル・シナリオを監督した作品で、大阪のドヤ街を舞台にしていますが、「青春残酷物語」('60年)を撮り終えた後、こちらの方は非常に短い期間で撮り切ったようです。この年にさらに「日本の夜と霧」('60年)も撮っているわけで、'60年代の大島渚監督作は16作に及び、例えば1967年にも「忍者武芸帳」「日本春歌考」「無理心中 日本の夏」の3作を撮っていたりします(精力的!)

「太陽の墓場」9.jpg ストーリーを長々書きましたが、群像劇なので、ストーリーの細部や順番はあまり重要ではないのかもしれません。大阪が舞台であるのに、出演者の大阪弁がヘタクソとの声もありますが、それさえもあまり重要ではないことかも。とにかく、登場人物たちの熱気を感じます。

 当時あまり売れていなかった役者を拾い上げたのも良かったのかもしれません。松竹への移籍後、ヒット作に恵まれていなかった津川雅彦も然り、出演2作目の新「太陽の墓場」2.jpg人で、本作の成功で松竹専属となった佐々木功(後のさ「太陽の墓場」19.jpgさきいさお)も然り、劇団員だったところを大島に起用されて映画に転じた戸浦六宏も然り、いずれもこの映画が転機となった俳優です。一方で、「青春残酷物語」から引き続いての起用の川津祐介、渡辺文雄、佐藤慶、浜村純などもいて、上手く組み合わせて化学反応を起こさせている感じです。

「太陽の墓場」炎.jpg「太陽の墓場」佐々木.jpg 主人公は最初に登場する川津祐介が演じるヤスかと思いましたが、これがあっさり殺されてしまい、そっか、佐々木功が演じる武が主人公だったのかと思ったら、彼も最後、信と一緒に轢死してしまい、最後に残ったのは炎加世子「太陽の墓場」炎2.jpg「太陽の墓場」炎3.jpgが演じる花子でした。思えば、最初にクレジットされているのは炎加世子だったし、この群像劇の中で最も強烈な印象を残したのも彼女でした。

 DVDの口上では、「60年安保闘争で揺れる世相の中、釜ヶ崎という小さな地域を日本全体の縮図とみたてて、縦社会である暴力団の非人間性を暴きたてた作品」とありますが、そこまで言い切「太陽の墓場」4 m.jpgらなくとも、ドヤ街に住む最底辺の人々が、飲めば、やれ革命だ、やれ戦争だと騒ぐのを見れば、60年代安保が頭に浮かびます。ただ、最近の若い人にどう伝わるかなというのはありました。

 でも、このパワーと言うか喧噪感は伝わるみたいです。今回この映画を観たのは芸術センターのシネマブルースタジオで、観客は自分以外は、東京芸大生と思われる男女3人だけでした。映画が終わった後、女子学生が拍手して、席の立ち際に「すごい映画を観てしまった」と言っていました。

田中邦衛
IMG_20220308_15561.png「太陽の墓場」田中.jpg「太陽の墓場」●制作年:1960年●監督:大島渚●製作:池田富雄●脚本:大島渚/石堂淑朗●撮影:川又昂●音楽:真鍋理一郎●時間:97分●出演:炎加世子/伴淳三郎/渡辺文雄/藤原釜足/北林谷栄/小沢栄太郎/小池朝雄/羅生門/浜村純/佐藤慶/戸浦六宏/松崎慎二郎/佐々木功/津川雅彦/中原功二/川津祐介/吉野憲司/清水元/永井一郎/糸久/宮島安芸男/田中謙三/曽呂利裕平/小松方正/茂木みふじ/山路義人/田中邦衛/富永ユキ/檜伸樹/左卜全/安田昌平●公開:1960/08●配給:松竹●最初に観た場所:シネマブルースタジオ(22-03-08)(評価:★★★★)
羅生門(綱五郎) in「太陽の墓場」(1960)/「用心棒」(1961)
「太陽の墓場」羅生門.jpg「用心棒」羅生門1.jpg

「用心棒」羅生門2.jpg
 
 
  
 
kawazu.jpg 川津祐介(1935-2022.2.26)

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勧善懲悪&恋愛ドラマ。混ざり気が少なく、すべて"藤沢周平"という感じが良い。

隠し剣 鬼の爪 dvd.jpg「隠し剣」永瀬松.jpg 新装版 隠し剣孤影抄.jpg
隠し剣 鬼の爪 [DVD]」永瀬正敏/松たか子『新装版 隠し剣孤影抄 (文春文庫)

「隠し剣」永瀬1.jpg「隠し剣」101.jpg 幕末、東北・海坂藩の平侍・片桐宗蔵(永瀬正敏)は、母(倍賞千恵子)と妹の志乃(田畑智子)、女中のきえ(松たか子)と、貧しくも笑顔の絶えない日々を送っていた。やがて母が亡くなり、志乃ときえは嫁入りしていく。心中は寂しいが武士としての筋目を守り、日々を過ごす宗蔵。海坂にも近代化の波は押し寄せつつあり、藩では英国式の教練が取り入れられ始めていた。ある雪の日、宗蔵は3年ぶりにきえと再会する。大きな油問屋の伊勢屋に嫁して幸せに暮らしているとばかり思っていたきえの、青白くやつれた横顔に心を傷めた宗蔵。志乃の口からきえが嫁ぎ先で酷い扱いを受けて寝込んでいることを知り、宗蔵は武士の面目や世間体を忘れ去って走り出していた。伊勢屋を訪れた宗蔵は、陽のあたらない板の間に寝かされ、やつれ果てたきえを見ると、自分で背負い家に連れ帰る。回復したきえと共に暮らし始め、宗蔵は心の安らぎを覚える。だが、世間の目は二人が同じ家に暮らすことを許さなかった。宗蔵はきえを愛している自分と、彼女の人生を捻じ曲げている自身の狡さに悩む。きえも身分の前に伝えられない気持ちを抱え、気づかない振りをして目をそらしてきた。そんな時、藩に大事件が起きた。宗蔵と同じく藩の剣術指南役・戸田寛斎(田中泯)の門下だった狭間弥市郎(小澤征悦)が謀反を企んだ罪で囚われ、さらに牢を破って逃げ出したのだ。宗蔵は、逃亡した弥市郎を斬るよう、家老・堀将監(緒形拳)に命じられる。そうすれば、狭間と親しかったお前の疑いも晴れると。かつて狭間は門下の中でも随一の腕前であった。しかしある時を境に宗蔵に抜かれ、それを宗蔵が戸田より授かった秘剣「鬼の爪」によるものだという不満を抱いていた。「隠し剣」141.jpg狭間の妻・桂(高島礼子)からの、躰を宗蔵に捧げることを引き換えした夫の命乞いを拒んだ宗蔵は、不条理さを感じつつも藩命に従い、狭間との真剣勝負に挑む。そして宗蔵は師より新たに伝授されていたもう一つの秘剣「龍尾返し」を用い、「鬼の爪」を振るうことなく狭間を倒す。深手を負った狭間は「龍尾返し」を「卑怯な騙し技」と罵りながら、失意の中で鉄砲隊に撃たれて死んだ。しかし戦いのあと、家老の堀が夫の助命嘆願に来た狭間の妻を騙し、辱め、彼女を死に追いやった。その所業を知るに及び、遂に「鬼の爪」が振るわれる―。

 山田洋次(1931年生まれ)監督の2004年公開作で、時代劇三部作の「たそがれ清兵衛」('02年)と「武士の一分」('06年)の間に位置する作品。この三部作はいずれも藤沢周平の短編を原作としますが、この「隠し剣 鬼の爪」は、「隠し剣」シリーズの「隠し剣鬼ノ爪」「邪剣竜尾返し」(『隠し剣孤影抄』収録)と男女の人情劇「雪明かり」(『時雨のあと』収録)の3つの短編を基にしており、一つの短編を独自に膨らませた他の二作品とは少し違います(すべて"藤沢周平"という意味で、混ざり気が少ないとも言えるのでは)。

 「たそがれ清兵衛」と同じように、主人公(永瀬正敏)が意図せずに上意討ちの討ち手に選ばれてしまうという、藤沢作品によくあるパターンですが、その相手(小澤征悦)が自分のかつて同じ師匠に剣を学んだライバルであり友であるという点が大きく違います。因みに、「たそがれ清兵衛」の時の主人公・清兵衛(真田広之)の上意討ちの相手だった一刀流の使い手・余吾善右衛門を演じた田中泯が、ここでは二人のかつての師匠役となっています。また、サイドストーリーとして、宗蔵と女中きえ(松たか子)との秘めたる恋の物語があって、松たか子のお嬢さん的な雰囲気がなかなか女中には見えないという難はありましたが、まずまずに演技ぶりだったでしょうか。

「隠し剣」11.jpg 宗蔵が狭間弥市郎との対決では使わなかった秘剣「鬼の爪」がどのようなものか、最後まで関心が持たれましたが(原作では狭間弥市郎は、それが知りたいがために、自分の討ち手に宗蔵を指名する)、最後に振るわれたそれは、一騎討の際に使うようなものではなく完全な暗殺剣で、動作としては"居合"っぽい感じでした。ただ、使うのは日本刀ではなく、匕首のようなもので(原作でも匕首となっている)、体外出血しないということで、千枚通しのようなものかとも思いましたが、そうなると、仇の堀将監必殺仕掛人 春雪仕掛針s.jpg役の緒形拳がかつて演じた「必殺仕掛人」の表の顔は鍼医者、裏の顔は仕掛人の藤枝梅安と同じになっちゃうからなあ(笑)。最後に宗蔵が「隠し剣」を狭間弥市郎夫妻の墓地に埋めるシーンがあり、やはり千枚通しというより匕首でした。

「隠し剣」12.jpg 映画では宗蔵は禄を返上して町人になる決意をしますが、これは映画のオリジナルで、原作では、下級武士ではあるものの、武士の身分のまま、きえに求婚します。野外ではなく自宅で、お茶飲んでから(笑)プロポーズ。「知っているとおりの軽輩の家だから、やかましいことはいらん」と言うと、きえが泣き出しそうな顔で、「旦那さま...私には、親の決めた人がおります」と打ち明けたため、きえを他の男にやることなど出来ないと思った宗蔵は、「ま、わしにまかせろ」と。まあ、映画の方が現代的かも(映画はほとんど現代劇になってしまっていると言えなくもないが)。

 こうした細部の改変はあり、また、きえを婚家から救出するのは「雪あかり」から、狭間弥市郎との死闘シーンは「邪剣龍尾返し」からそれぞれ引いていますが、「たそがれ清兵衛」でラストに清兵衛の娘(岸惠子)の墓参りシーを持ってきて、清兵衛が戊辰戦争で死んだことにしてしまったのに比べると、たいした改変とは言えないでしょう。

 「たそがれ清兵衛」と「隠し剣 鬼の爪」が同じ幕末を描いていても、「隠し剣 鬼の爪」の方が刀の時代が終わりを告げようとしていることを如実に物語って入り、ラストは現代劇になってしまったと書きましたが、この流れからすると、宗蔵が禄を返上して町人になるという改変は不自然ではなかったように思います。

 癖にない勧善懲悪&恋愛ドラマとも言え、興行的には三部作の中で一番ぱっとしなかったようですが、嫌いではない作品です。

高島礼子(狭間弥市郎の妻・桂)/吉岡秀隆(島田左門)・小澤征悦(狭間弥市郎)・永瀬正敏(片桐宗蔵)
「隠し剣23.jpg「隠し剣22.jpg「隠し剣 鬼の爪」●制作年:2004年●監督:山田洋次●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:長沼六男●音楽:冨田勲●原作:藤沢周平●時間:131分●出演:永瀬正敏/松たか子/小澤征悦/吉岡秀隆/田畑智子/高島礼子/田中泯/田中邦衛/倍賞千恵子/小林稔侍/神戸浩/光本幸子/松田洋治●公開:2004/10●配給:松竹(評価:★★★★)

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遺産相続を巡る女と男の赤裸々な欲望を描いたピカレスク・ロマン。面白かった。

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あの頃映画松竹DVDコレクション からみ合い」渡辺美佐子/山村聰
山村聰(社長)・千秋実(秘書課長)/岸惠子(秘書)/仲代達矢(吉田の部下)/宮口精二(顧問弁護士・吉田)
『からみ合い1.jpg『からみ合い』みや.jpg.png 東都精密工業社長・河原専造(山村聡)は癌で後3カ月しか生きられないことを知る。専造は、3億円に及ぶ財産を以前に関係あった女性らの子どもに分配することにした。妻・里枝(渡辺美佐子)、秘書課長・藤井(千秋実)、秘書『からみ合い121.jpg・宮川やす子(岸恵子)、顧問弁護士・吉田(宮口精二)とその部下・古川(仲代達矢)が呼び集められ、妻・里枝に3分の1、残りの3分の2が行方不明の子供3人に渡されることになった。捜索期限は1カ月、呆然とする人びとに役割が振り当てられ。藤井には川越にいる7つの子を、吉田は『からみ合い』よし.jpg温泉街に流れて行った二十歳になる娘を、やす子は役人と結婚した女の息子を探すことに。古川は、温泉街のヌード・スタジオで専造の落し子の神尾真弓と思しき娘・神尾マリ(芳村真理)を見出し、彼女に札びらを切って関係を持ち、ある契『からみ合い』かわ.jpg約を結ぶ。川越へ行った藤井は、産婆のさよ(千石規子)から目当ての子・ゆき子がすでに死んでいることを突き止め、代わりにある女の子を〈ゆき子〉として連れて来るが、実はそれは里枝との間にできた子だった。やす子が探し出した定夫(川津祐介)は、養父母にとっては手におえない二十歳の不良青年だった。やす子は暴風雨の晩、河『からみ合い』71.jpg原に挑まれて体の関係を持ち、以来、幾たびか体の関係があった。いよいよ河原の容態が悪化し、彼は定夫を除いた2人の子に遺言を伝えようとするが、その場に刑事(安部徹)がやって来て、殺人容疑で〈真弓〉を逮捕する。実は彼女の姉が河原の子で、彼女は父親違いの妹のマリエであり、姉を自殺に見せかけて殺害し入れ替わったのだ。古川も仲間として吉田弁護士に追放される。一方、河原に遺産で財団法人を設立させ、その幹部に収まることを目論んでいた吉田弁護士は、〈ゆき子〉が偽物であることを事前に掴み、それをやす子に伝え、自分は出張に行くから関係書類を河原に渡すよう言う。やす子は専造に妊娠したことを打明けると、死期迫る専造は狂喜し、3分の1は無条件に生れる子のため遺すと言う。実は、やす子には体だけの『からみ合い』461.png関係の男がいたが、男はやす子が妊娠したと知って身を退いたため、やす子はお腹の子を専造の子に仕立たのだ。遺言書は書き直され、財産は、妻の里枝に3分の1、ゆき子に3分の1、そしてやす子のお腹にいる子に3分の1ずつ分けられることになる。やがて河原が死亡し、倉山弁護士(滝沢修)の前に関係者が集まるが、その場で、吉田弁護士の調べで〈ゆき子〉が河原の子ではないことが判明したと倉山弁護士から発『からみ合い』es1.jpg表され、ゆき子はもちろん、詐欺罪に該当する里枝も相続権を失う。吉田弁護士は、ゆき子が替え玉であること知りながら黙っていたやす子にも相続の資格は無いと主張するが、やす子は、自分はゆき子が替え玉であると知らされていないし、書類の中身も見ていないと嘘をつく。吉田弁護士は逆に倉山弁護士から、ゆき子が替え玉であること知りながら河原に知らせなかったことの責任を追及される。結局、やす子のお腹の子だけが相続人となる―。
  
『からみ合い』31.jpg 1962(昭和37)年公開作。原作は、経済学者でもあった直木賞作家・南条範夫(1908-2004/95歳没)の『からみ合い』で、1959年12月創刊の〈カッパ・ノベルス)で、松本清張の『ゼロの焦点』とこの作品が第一回配本でした。監督は、この年「切腹」('62年/松竹)も撮ることになる小林正樹です。遺産相続を巡る女と男の赤裸々な欲望を描いたピカレスク・ロマンで、原作が面白いのでしょうが、良く出来たストーリーだと思いました。山村聰、岸惠子、渡辺美佐子、仲代達矢、宮口精二といった役者面々の演技も良かったように思います。

『からみ合い』41.jpg ピカレスク・ロマンの主役は秘書の宮川やす子(岸恵子)ですが、最初は他の関係者連中が、藤井(千秋実)が子どもの替え玉を用意したり、古川(仲代達矢)が里枝(渡辺美佐子)と二股かけようとしたりする中、彼女だけが唯一真面目に河原の息子(川津祐介)を探していて、それが終盤にになって彼女自身が急速な変貌を遂げてピカレスク・ロマンの主役となっていくところに引き込まれます。

『からみ合い』ksi keiko2.jpg 吉田弁護士(宮口精二)が、河原に財団法人の設立資金を遺させ、その幹部に収まるの目論んで、〈ゆき子〉が偽物であることを自分から河原には言わず、(出張前に言うチャンスが無かったとして)やす子に言わせることでやす子を利用しようとしたのに対し、やす子は、〈ゆき子〉が偽物であると吉田からは聞かされておらず、(河原が亡くなる前に言うチャンスが無かったとして)書類の中身を見ないまま倉山弁護士(滝沢修)に渡したとして、吉田のやり方を逆手にとったところが面白いです。自分が財団の幹部になったら、「君の将来も十分に保証する」という吉田の言葉を、やす子はハナから信じていなかったということでしょう。

 相続人が胎児である場合、死産または流産したら、父親が相続人になり、父親が不在の場合は母親が相続人になるということも、やす子は、弁護士に六法全書を見せられるうちに、さりげなく学習していったのでしょう。

『からみ合い』きし.jpg『からみ合い』みや2.jpg 冒頭と結末が、すっかり貴婦人風となったやす子と、やや恨めしさを漂わす吉田弁護士との再会シーンになっていますが、やす子の子が生まれて間もなくして死んだと聞かされ、吉田はやす子の謀略を確信したのでしょう(その前に「河原とどっちに似た子か楽しみだったのに」と言っているから、最初から河原の子ではないと踏んでいたのかもしれない)。怪しい儲け話を持ち掛ける吉田に、やす子に弁護士は廃業しないのかと訊きますが、いつかあなたの弁護人を買って出るかも分からない、その時まで弁護士を辞めないと言っているから、その疑念は固い。ただし、それさえも、「ご心配なく。私は法律に逆らうようなことは決してしません」とのやす子の言葉にあっさり跳ね返されてしまうラストが見事でした。

『からみ合い 91.jpg いよいよ河原(山村聡)の容態が悪化し、やす子を抱けなくなって、裸で目の前を歩かせ(画面では首から上しか映ってないが)、それを病床から眺める様は、谷崎潤一郎原作の「」('59年/大映)か、はたまた、山村聡自身が演じた「瘋癲老人日記」('62年/大映)の世界といった感じでした。
   
    
佐藤慶(不良青年らをマークしている私服警官)/蜷川幸雄[右端](不良青年グループの一人)
『からみ合い』さとう.jpg 『からみ合い』にながわ.jpg
田中邦衛(定夫(川津祐介)と店で喧嘩する谷組チンピラ)/安部徹(マリエ(芳村真理)を連行しにきた刑事)/滝沢修(倉山弁護士)
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『からみ合い』撮影.jpg「からみ合い」●制作年:1962年●監督:小林正樹●製作:若槻繁/小林正樹●脚本:稲垣公一●撮影:川又昂●音楽:武満徹●原作:南条範夫●時間:115分●出演:岸惠子/山村聰/渡辺美佐子/千秋実/宮口精二/仲代達矢/滝沢修/信欣三/浜村純/槙芙佐子/川口敦子/芳村真理/鷹理恵子/利根司郎/大杉莞児/三井弘次/安部徹/永井玄哉/水木松竹の女優たち.jpg涼子/千石規子/菅井きん/本橋和子/北龍二/北原文枝/川津祐介/蜷川幸雄/瀬川克弘/田中邦衛/佐藤慶●公開:1962/02●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(08-09-20)(評価:★★★★)

神保町シアター「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.6「松竹の女優たち」

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南條範夫『からみ合い』1952年12月刊行(松本清張『ゼロの焦点』と共に〈カッパ・ノベルス〉第一回配本)

《読書MEMO》
2022年2月2日「徹子の部屋」(草笛光子88歳・岸恵子89歳)
草笛光子88歳・岸恵子89歳.jpg

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いい映画だったが、原作をヒントに「東京物語」を撮った? という印象も。

「息子」 山田洋次1991.jpg『息子』1991.jpg 「息子」 山田洋次図1.jpg  ハマボウフウの花や風200_.jpg
あの頃映画 「息子」 [DVD]」『ハマボウフウの花や風

「息子」 山田洋次 11.jpg バブル景気時の1990年7月、東京の居酒屋でアルバイトをしている浅野哲夫(永瀬正敏)は、母の一周忌で帰った故郷の岩手でその不安定な生活を父の昭男(三國連太郎)に戒められる。その後、居酒屋のアルバイトを辞めた哲夫は下町の鉄工所にアルバイトで働くようになる(後に契約社員へ登用)。製品を配達しに行く取引先で川島征子(和久井映見)という美しい女性に好意を持つ。哲夫の想いは募るが、あるとき彼女は聴覚に障害があることを知らされる。当初は動揺する哲夫だったが、それでも征子への愛は変わらなかった。翌年の1月に上京してきた父に、哲夫は征子を紹介する。彼は父に、征子と結婚したいと告げる―。

 1991年公開の山田洋次監督作で、原作は椎名誠の短編小説「倉庫作業員」です(『ハマボウフウの花や風』('91年10月刊/文藝春秋)所収で、単行本が出たのと映画が公開されたのが同時期ということになる)。第15回「日本アカデミー賞」で「最優秀作品賞/最優秀主演男優賞/最優秀助演男優賞/最優秀助演女優賞」を受賞し、第65回「キネマ旬報ベスト・テン」でも「日本映画部門第1位/監督賞/主演男優賞/助演男優賞/助演女優賞」を受賞しているので、"Wで四冠"といったところでしょうか(そのほかに「毎日映画コンクール 日本映画大賞」「報知賞 作品賞」「日刊スポーツ映画大賞 作品賞」なども受賞)。「日本アカデミー賞」の演技賞受賞対象者は、主演男優賞は三國連太郎、助演男優賞は永瀬正敏、助演女優賞は和久井映見ですが、とりわけ永瀬正敏はこれ以外にも多くの賞を受賞し、飛躍の契機となった作品になります。

「息子」 山田洋次 wkakui e1.jpg いい映画だと思いました。原作は短編で、哲夫の家族は登場せず(従って、哲夫が母の一周忌で帰省する場面で、その際に兄弟・家族関係を明らかにするといった描写もない)、哲夫が日雇い労働をしていたのが、より安定した仕事を求めて伸銅品問屋に臨時社員として就職するところから始まります。そして、仕事を通して知り合った川島征子に好意を抱き、不器用ながらもアプローチする中で彼女が聾唖者であること知って、この恋を貫こうと決意するところで終わるので、映画で言えば、哲夫が「それがどうしたっていうんだ!いいではねぇか!」と心中で叫ぶところで終わっていることになり、あとは原作の後日譚ということになります。

「息子」 山田洋次 8.jpg 戦友会の集まりに出るために哲夫の父・昭男が上京し、哲夫の兄の家に泊まるりますが、哲夫の生活が心配な昭男は哲夫の元を訪れます。外食でもしようと哲夫を誘う昭男でしたが、哲夫は断り自宅で料理するため昭男とスーパーへ買い物に。そして、哲夫の部屋で昭男は哲夫から征子を紹介されます。耳の聞こえない征子のためにFAXを購入している哲夫。哲夫から、征子と真面目に付き合っていて、結婚することを告げられる昭男。いくら反対したって無駄だからと昭男に言う哲夫。昭男は征子に向かって「本当にこの子と一緒になってくれるのですか?」と訊き、頷く征子を見て「有難う。有難う」と感謝する。哲夫に対しては「もしお前がこの子の事を傷つけるようなことがあれば、俺はこの子の両親の前で腹を切らなきゃならないからな」と覚悟を問い、哲夫は当たり前だと答える―。いい場面だったなあ。仲睦まじい二人を見て昭男が素直に喜び、心配していた哲夫が立派になっていることに胸を撫でおろす様がいいです。

「息子」 山田洋次 5.jpg こうして息子のことを気に掛ける父と、一人暮らしになった父をどうするかに悩む哲夫の兄夫婦や姉などが描かれますが、どちらかと言うと後者の方が色合いが強く、誰の世話にもならないと言い張る父親に周囲が戸惑っているといった感じです。それでも、一番ふらふらしていたように見えた息子・哲夫の成長を見届けて、昭男自身は安心して息子が買ったファックスを持ってまた岩手に戻っていく―。ああ、核家族社会における親離れ・子離れの話で、山田洋次監督が「家族」('70年)以来追求し続けてきたテーマの映画だったのだなあと思いました。

東京物語 小津 笠・原2.jpg さらに言えば、田中隆三演じる息子長男とはまともに話ができないけれども、原田美枝子演じる血縁関係のないその嫁とはしみじみと本音で語り合えるというのは、これはもう小津安二郎の「東京物語」の笠智衆(周吉)と原節子(周吉の次男の妻)の世界。そう思うと、一人になった父をどうするか悩む兄や妹らも、一方で自分たちの生活の事情があって、父親の存在を「処理すべきやっかいな問題」として捉えているという点で、これまた「東京物語」で山村聰(長男)や杉村春子(長女)、中村伸郎(長女の夫)が演じた役に通じるところがあります。原作をヒントに「東京物語」を撮った?みたいな感じの映画で、原作者も「感動的な映画でした」と苦笑するしかないのでしょう。主人公が、原作には出てこない父・昭男に哲夫から代わり、その昭男を演じた三國連太郎が〈主演男優賞〉で、永瀬正敏の方は〈助演男優賞〉ですから。

「息子」 山田洋次 21.jpg 三國連太郎の自然な演技もさることながら、賞を総嘗めした永瀬正敏は、実際いい演技でした。この映画での高評価を機に、テレビドラマにはあまり出ず、映画出演を専らとする、言わば"映画「息子」 山田洋次 wakui.png俳優"になっていったのではないでしょうか(日本にはあまりいないタイプ。浅野青天を衝け 和久井映見.jpg忠信あたりが後継者か)。和久井映見もとても感じが良かったです。彼女も、この作品からちょうど30年を経た今年['21年]のNHK大河ドラマ「青天を衝け」で吉沢亮演じる渋沢栄一の母・渋沢ゑい役を演じるなど、息の長い女優になってきました。
「青天を衝け」('21年)和久井映見(渋沢栄一の母・渋沢ゑい)

「息子」 山田洋次 41.jpg あと、鉄工所のおっさん役のをいかりや長介や、トラック運転手タキさん役の田中邦衛をはじめ、梅津栄、佐藤B作、レオナルド熊、松村達雄といった脇を固める面々の演技が手堅く、演技の下手な人が出てこない映画とも言えるのではないでしょうか。とりわけ、黒澤明監督が前年「息子」ikariya.jpgに「」('90年)で役者としては実質的に初めて映画に起用したいかりや長介に、「夢」の時は単に絵的な使われ方だったのに対し、この作品できちっり演技させているのは、後のいかりや長介の俳優としての活躍のことを思うと慧眼だったと思います。後に藤山直美が阪本順治監督の「」('00年)で、映画初出演・初主演にして演技賞を総嘗めしたということがありましたが、舞台をやっていた人は、それがドタバタコントや定番喜劇であろうと、映画の方でもすっとと役に入り込んで力を発揮することがままあるように思います(映画に限らず、テレビドラマの方に行っても同じ。あの荒井注でも、ドリフターズ「江戸川乱歩美女シリーズ」荒井注.jpg脱退後に出演した「土曜ワイド劇場・江戸川乱歩の美女シリーズ」(テレビ朝日)に1978年の第2話より明智小五郎の盟友の波越警部役で出演し、新人助演男優賞のような演技賞をもらっていた記憶があります(明智役の天知茂が他界する1985年の最終・第25話まで演じ通した)。
永瀬正敏/いかりや長介/田中邦衛
映画「息子」00.jpg

「息子」パンフ.jpg「息子」●制作年:1991年●監督:山田洋次●製作:中川滋弘/深澤宏●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:松村禎三●原作:椎名誠「倉庫作業員」●時間:121分●出演:三國連太郎/永瀬正敏/和久井映見/田中隆三/原田美枝子/浅田美代子/山口良一/浅利香津代/ケーシー高峰/いかりや長介/田中邦衛/梅津栄/佐藤B作/レオナルド熊/松村達雄●公開:1991/10●配給:松竹(評価:★★★☆)

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"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向において力を発揮する作家?

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鉄道員(ぽっぽや)』『鉄道員(ぽっぽや) (集英社文庫)』「鉄道員(ぽっぽや)」映画ポスター「鉄道員(ぽっぽや) [DVD]」「駅 STATION」チラシ

 1997(平成9)年上半期・第117回「直木賞」受賞作。

 道央の廃止寸前のローカル線「幌舞線」の終着駅「幌舞駅」の駅長・佐藤乙松(おとまつ)は。鉄道員一筋に生きてきたが近く定年を迎え、また同時に彼の勤める幌舞駅も路線と共に廃止の時を迎えようとしていた。彼は生まれたばかりの一人娘を病気で失い、妻にも先立たれ、孤独な生活を送っていた。ある雪の日、ホームの雪掻きをする彼のもとに、忘れ物をしたと一人の鉄道ファンの少女が現れる。乙松が近所にある寺の住職の孫だと思い込んだ彼女の来訪は、彼に訪れた優しい奇蹟の始まりだった―(「鉄道員」)。

 「鉄道員(ぽっぽや)」「ラブ・レター」「悪魔」「角筈にて」「伽羅」「うらぼんえ」「ろくでなしのサンタ」「オリヲン座からの招待状」の8編を収録し、何れも1995(平成7)年から1997(平成9)年にかけて発表された作品で、作者によれば「奇蹟」をモチーフにしたものを集めたとのことです。

井上ひさし2.jpg 直木賞の選評を見ると、8人の選考委員のうち田辺聖子、黒岩重吾、井上ひさし、五木寛之の各氏が◎で、他の委員も概ね推している印象ですが、故・井上ひさしが、「高い質を誇っていた」と評価しつつも、「8つの短編が収められているが、内4つは大傑作であり、残る4つは大愚作である」とし、「大傑作群に共通しているのは、"死者が顕われて生者に語りかける"という趣向」であると指摘しているのが興味深いです(「この趣向で書くときの作者の力量は空恐ろしいほどだ」とも述べている)。

 "死者が顕われて生者に語りかける"作品となると、冒頭の、鉄道員の男のもとへ亡き娘の甦りとも思える少女が現われる「鉄道員」と、ポルノショップの店長である主人公に、自分との偽装結婚の末に亡くなった戸籍上の妻で出稼ぎ外国人の白蘭という女性が、手紙を通してまだ見ぬ夫である自分への想いを語る「ラブ・レター」、海外配転が決まったサラリーマンの主人公が、40年前自分が幼い頃に自分を捨てた父親と歌舞伎町で再会する「角筈にて」、子どもの頃に肉親を亡くして身寄りが無くなり、薬剤師となって医師と結婚した主人公が、嫁いだ先で夫の親族に苛められているところへ亡くなった祖父が現われ、主人公の力になるという「うらぼんえ」の4つということになるのでしょうか。

 文庫解説の北上次郎氏が、この短編集を「すごくよかった」と言う人が「鉄道員」「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」の4派に分かれるとし、それを派ごとの主張争いに模して解説していますが、そもそもこの4作品が選ばれていることが、故・井上ひさしの"死者が顕われて生者に語りかける"作品という指摘と合致しているように思いました。

 それ以外の作品はどうかと言うと、ややベタが過ぎたり気味悪かったりして、やはり個人的もこの4つかなあと。更に自分の好みを言えば、「ラブ・レター」はやはりベタ過ぎる印象があるし(北上次郎氏は女性読者には好評な作品としている)、上手さから言えばやはり「鉄道員」になるのかなあ。これだって、斎藤美奈子氏に言わせれば、「怪談、死んだ娘だから父に優しい(生きていたらグレてる)」ということになるのであって、直木賞選考委員の中にも阿刀田高氏のように、「悪くはないけれど、あまりにも型通りで、涙腺をふくらませながらも、こんなことで泣けるかと、しらけるところなきにしもあらず」ということにもなるのかも(考えてみればすべて乙松の頭の中で起きたこととも取れるし)。

鉄道員  02.jpg 「鉄道員」は降旗康男監督、高倉健主演で映画化されましたが('99年/東映)、昔劇場で観た、同じ降旗康男監督、高倉健主演の「駅 STATION」('81年/東映)が、倉本聰が高倉健のために書き下ろした脚本だったためか、何だか高倉健のプロモーション映画みたいで、日本映画ワースト・テンに名を連ねることも多く、個人的にも、自殺した円谷選手の遺書のナレーションを映画の中で使うことなどに抵抗を感じ、いいと思えませんでした(小谷野敦氏が「日本語をローマ字読みしてくっつけた作品のタイトルはダサい」と言っていた(『頭の悪い日本語』('14年/新潮新書))。先にそのイメージと何となくあって、結局「鉄道員」の方は劇場で観ることはなく、テレビがビデオで観たように思います。

鉄道員 志村けん.jpg 原作が短編なので、志村けんが酒癖の悪い炭坑夫として出て来きて炭鉱事故で亡くなる話や、その息子が成長してイタリアへ料理修業に行く話など、原作に無いエピソードで膨らませている部分はありますが、原作の持ち味(ひとことで言えば気持よく泣けるということか)はまずまず保たれていたのではないでしょうか。志村けん志村けん.jpg自宅の留守番電話に主演の高倉健直々の出演依頼のメッセージが入っていて驚いたとのこと。志村けんが俳優として映画出演したのは、ドリフターズの付き人時代に志村康徳名義で端役出演した「ドリフターズですよ!冒険冒険また冒険」('68年/東宝)、「ドリフターズですよ!特訓特訓また特訓」('69年/東宝)の2作以外ではこの作品のみとなります(志村けんは山田洋次監督の「キネマの神様」に菅田将暉とダブル主演の予定だったが、'20年に新型コロナウイルスによる肺炎で急逝したため叶わなかった)

鉄道員 02.jpg これも一歩間違えばどうしようもない映画になりそうなところを、高倉健をはじめとする俳優陣の演技力で強引に持たせていたという感じがします。実際、日本アカデミー賞の主要7部門のうち、作品賞、監督賞、脚本賞、主演男優賞(高倉健)、主演女優賞(大竹しのぶ)、助演男優賞(小林稔侍)の6部門を受賞していて、高倉健主演映画で、主要7部門中"6冠"達成は山田洋次監督の「幸福鉄道員 大竹しのぶ.jpgの黄色いハンカチ」('77年/松竹)以来ですが、「幸福の黄色いハンカチ」の方は第1回日本アカデミー賞ということもあって、監督賞や脚本賞は「『男はつらいよ』シリーズ」との合わせ技でした(因みに、「駅 STATION」も作品賞、脚本賞、主演男優賞を獲っている)。「鉄道員」で獲らなかったのは助演女優賞だけで、これは広末涼子のパートになるかと思いますが、その広末涼鉄道員  s.jpg子さえも、けっして上手いとは言えませんが、そう悪くもなかったように思います(最優秀賞の候補にはなっている)。大竹しのぶは流石に上手ですが、やはりこの映画は高倉健なのでしょう(高倉健は'99年モントリオール世界映画祭で主演男優賞受賞)。「駅STATION」の頃より年齢を重ねて良くなっていて、これなら泣ける? 泣けるかどうかと評価はまた別だとは思いますが。降旗康男監督、高倉健のコンビは2年後に再タッグを組み「ホタル」('01年/東映)を撮りますが、こちらも日本アカデミー賞で13部門ノミネートされ、高倉も主演男優賞にノミネートされましたが、後輩の俳優に道を譲りたい」として辞退しています。

「鉄道員(ぽっぽや)」●.jpg鉄道員 s.jpg「鉄道員(ぽっぽや)」●制作年:1999年●監督:降旗康男●脚本:岩間芳樹/降旗康男●撮影:木村大作●音楽:国吉良一(主題歌:坂本美雨「鉄道員」)●原作:浅田次郎●時間:112分●出演:高倉健/大竹しのぶ/広末涼子/吉岡秀隆/安藤政信/志村けん/奈良岡朋子/田中好子/小林稔侍/大沢さやか/安藤政信鉄道員  1s.jpg/山田さくや/谷口紗耶香/松崎駿司/田井雅輝/平田満/中本賢/中原理恵/坂東英二/きたろう/木下ほうか/田中要次/石橋蓮司/江藤潤/大沢さやか●公開:1999/06●配給:東映(評価★★★☆)
    
高倉健、小林稔侍、田中好子(1956-2011)  大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子
鉄道員 高倉健、小林稔侍、田中好子.jpg 鉄道員 大竹しのぶ、高倉健、奈良岡朋子.jpg
吉岡 秀隆            撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健
鉄道員 吉岡 秀隆1.jpg撮影の合間に談笑する志村けんと高倉健.jpg


「駅 STATION」●.jpg駅station dvd.jpg「駅 STATION」●制作年:1981年●監督:降旗康男●製作:田中寿一●脚本:倉本聰●撮影:木村大作●音楽:宇崎竜童(主題歌のみ坂本龍一)●時間:132分●出演:高倉健/倍賞千恵子/いしだあゆみ/岩淵建/名古屋章/大滝秀治/八木昌子/池部良/潮哲也/寺田農/渡会洋幸/高駅station 01.jpg橋雅男/榎本勝起/烏丸せつこ/田中邦衛/竜雷太/小林念侍/根津甚八/宇崎竜童/北林谷栄/藤木悠/永島敏行/古手川祐子/今福将雄/名倉良/平田昭彦/阿藤海/室田日出男●公開:1981/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル池袋(82-07-24)(評価★★☆)●併映:「泥の河」(小栗康平)
駅 STATION [DVD]
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駅 STATION 池部良.JPG 駅station 06.jpg 駅Station 大滝秀治2.jpg
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【2000年文庫化[集英社文庫]/2004年再文庫化[講談社文庫(『鉄道員/ラブ・レター』)]/2013年文庫化[集英社みらい文庫]】

「●野村 芳太郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2990】 野村 芳太郎 「疑惑 
「●「芸術選奨(監督)」受賞作」の インデックッスへ(野村芳太郎)「●芥川 也寸志 音楽作品」の インデックッスへ「●緒形 拳 出演作品」の インデックッスへ「●岩下 志麻 出演作品」の インデックッスへ「●小川 眞由美 出演作品」の インデックッスへ「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ「●加藤 嘉 出演作品」の インデックッスへ「●蟹江敬三 出演作品」の インデックッスへ「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「●日本のTVドラマ (90年代~)」の インデックッスへ(「松本清張スペシャル・鬼畜」「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」「●ま 松本 清張」の インデックッスへ ○あの頃映画 松竹DVDコレクション

概ね原作に忠実に作られているように思われた。ラストは「砂の器」より上か。原作も越えた?
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鬼畜dvd 2015.jpg鬼畜dvd.jpg Kichiku  (1978)  .jpg
鬼畜 [DVD]」/Kichiku (1978)
あの頃映画 the BEST 松竹ブルーレイ・コレクション 鬼畜 [Blu-ray]
「松本清張スペシャル・鬼畜」('02年・日本テレビ)/「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」('17年・テレビ朝日)
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岩下志麻
鬼畜 岩下1.jpg 川越市で印刷屋を営む竹下宗吉(緒形拳)は、妻・お梅(岩下志麻)に隠れ、鳥料理屋の女中・菊代(小川真由美)を妾として囲い、7年間に3人の隠し子を作鬼畜 小川1.jpgった。やがて火事と大印刷店攻勢で宗吉の商売は凋落し、手当を貰えなくなった菊代が、利一(6歳)、良子(4歳)庄二(1歳半)を連れて宗吉の家に怒鳴り込む。菊代はお梅と口論した挙句、3人を宗吉に押しつけて蒸発し、お梅が子供達と宗吉に当り散らす鬼畜 緒形・岩下1.jpg地獄の日々が始まる。末の庄二が栄養失調で衰弱し、医者に行ったある日、寝ている庄二の顔の上にシートが故意か偶然か被さって庄二は死ぬ。宗吉はお梅の仕業と思いながらも口に出せず、逆に、「あんたも一つ気が楽になったね」と言われる。その夜、夫婦は久しぶりに燃え、共通の罪悪感に昂ぶる。お梅鬼畜k51.jpgは残りの子供も〈処分〉することを宗吉に迫り、宗吉は良子を東京タワーに連れて行って置き去り鬼畜k3 1.jpgにし、一人エレベーターを降りる。更に長男・利一を毒殺しようとするものの果たせず、何日か後、新幹線こだま号に利一を乗せ、北陸海岸に連れて行く。能登半島に辿り着き、日本海を臨む岸壁で、宗吉は利一を海に落す。翌朝、沖の船が絶壁の途中に引掛っている利一を発見し、かすり傷程度で鬼畜 09.jpg助け出す。警察の調べに利一は父親と遊びに来て眠っているうちに落ちたと言い張り、名前、住所、親のことや身許の手掛かりになることは一切言わない。しかし警察は、事故ではなく利一は突き落とした誰かを庇っていると判断し、利一の持っていた石版印刷に使用する石材のかけら(利一はこれを石蹴り遊びに使っていた)から宗吉が殺人未遂容疑で警察に拘束される。そして、移送されてきた宗吉が警察で利一と対面する―。

鬼畜―松本清張短編全集〈7〉 (カッパ・ノベルス)1.jpg 松本清張の短編小説「鬼畜」を野村芳太郎(1919-2005)監督が映画化した1978年公開作で、脚本は「赤ひげ」('65年/東宝)の井出雅人、音楽は「砂の器」('74年/松竹)の芥川也寸志(他に「ゼロの焦点」「黒い十人の女」(共に'61年)など)。主な出演者は、緒形拳(1937-2008)、岩下志麻、小川真由美。野村芳太郎による松本清張原作の映画化作品では「砂の器」の評価が高いようですが、この「鬼畜」も非常に良く出来ていると思います。「砂の器」は原作を超えていませんが、「鬼畜」は一面において原作を超えているようにも思います。
鬼畜―松本清張短編全集〈7〉 (カッパ・ノベルス)

鬼畜011.jpg まず、前半部分しか出てきませんが、小川真由美の3人の子供を連れての鬼畜k211.jpg押しかけぶりが良く、岩下志麻との競演は見所であり、更に中盤の見せ場は、岩下志麻演じるお梅の児童虐待ぶりの凄まじさでしょうか(子役たちは撮影の休憩時間中も岩下志麻に寄りつかなかったという)。

鬼畜k612.jpg それらに比べると、2人の女の間でおろおろしている宗吉を演じた緒形拳はやや影が薄いようにも見えましたが、これはこれで、あまりやりすぎると喜鬼畜k31.jpg劇になってしまうし、あまり抑え過ぎると面白くないし、意外と加減の難しい役どころだったのではないでしょうか(緒形拳はこの演技で、「第2回日本アカデミー賞」「第3回報知映画賞」「第21回ブルーリボン賞」の主演男優賞を"3冠"受賞した)。

鬼畜 蟹江.jpg その他にも、印刷所の工員(原作でもいることになっているが人物造型は描かれていない)を蟹江敬三(1944-2014)が好演していたし(お梅が赤ん坊の口に米を突っ込んで虐待するのを「よせよ」と遠巻きに言うだけで何もできない夫・宗吉に代わって毅然と赤ん坊を取り上げ、「しっかりしろよ!旦那の子だろ!」と言うという、いい人のキャラだった)、子役の演技も、賛否ありますが、個人的には悪くなかったと思います(子役の演技力というより監督の演出力の成果だろう)。

 原作が発表されたのは'57(昭和32)年ですが、それを映画が作られた'78(昭和53)年に置き換えていて(利一が歌う「科学忍者隊ガッチャマン」は、この映画が公開された'78年10月に続編のアニメ放送が始まっている)、宗吉の営む印刷所は、東京から急行列車で3時間を0鬼畜 男衾.jpg要する地方にあるS市という原作の設定から埼玉県の川越市に改変され、宗吉が菊代を囲った家は、原作ではS市から1時間ばかり汽車で行く町ということで、映画では同じ埼玉県の男衾(おぶすま)駅付近となっています。

「鬼畜」 9s1.jpg鬼畜 6.jpg 宗吉が良子を置き去りにするのは原作では東京タワーではなく銀座のデパートの屋上のミニ動物園、利一を毒殺しようとして上野動物園で食鬼畜 緒形 .pngべさせるのはアンパンではなく最中(もなか)、利一を旅に連れて行ったのは北陸ではなく原作では西伊豆です。映画では西伊豆を北陸に変え(米原まで新幹線で行く)、能登金剛までやって来て、そこで利一を崖から放ってしまう―。能登金剛は「ゼロの焦点」('61年/松竹)のラストシーンの舞台でもあります(こちらは原作通り)。これら細かい改変点はありますが、概ね原作に忠実に作られているように思われ、こうした作り方は個人的には割合と好きな方です。

「鬼畜」 s21.jpg 原作と一番異なる点はラストで、原作が、利一が頑なに黙秘を続けるも、持っていた石材で宗吉の犯行の足が付くことを示唆して終わるのに対し、映画では、宗吉が殺人未遂容疑で逮捕され、利一と面会を果たす場面が加えられていることです。そこでも利一は、「坊やのお父さんだね?」 との警官の問いに、「知らないおじさんだよ!」と否定し、宗吉はそんな利一にすがりつき、後悔と罪悪感で号泣する―。利一は何故黙秘を続けたのかという疑問を更に発展させて、利一は宗吉を庇ったのか見捨てたのかという究極の問いを観る者に投げかけている訳で、この持って行き方は悪くないように思いました。答えはそう難しくないと思いますが(脚本の井手雅人は「父親を拒否した」を意図したが、野村芳太郎監督が「父親を庇った」ととれる演出に変えたと言われている)、観る者にちょっとだけ考えさせるこの終わり方が余韻となっており、「砂の器」の加藤剛が延々とピアノ曲「宿命」を奏でる(やや大仰な)エンディングより上だったかもしれません。一面において原作を超えていると思うのも、この分かりやすい問題提起とでも言うか、まさにこの点にあります(因みに、原作にはモデルとなった実際の事件があって、犯人の男は在獄中に発狂死したという凄まじいエピソードがある)。

松本清張スペシャル・鬼畜5.jpg松本清張スペシャル 鬼畜 dvd.jpg 過去に1度だけテレビドラマ化されていて、'02年10月15日に日本テレビ系列で「火曜サスペンス劇場('81年~'95年)1000回突破記念作品」として「松本清張スペシャル・鬼畜」のタイトルで放送されています(監督は「江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者」('76年)「女教師」('77年)の田中登)。時代を「今」に移し、保夫(宗吉から改変)をビートたけし、妻・春江(お梅から改変)を黒木瞳、妾の昌代(菊代から改変)を室井滋が演じ、竹中印刷所の所在地を川越市から同じ埼玉県の川口市に移していますが、あとは概ね映画と同じような展開でした。ビートたけしは、映画でおろおろしてばかりいた緒形拳に比べると抑制した演技。一方、春江を演じた黒木瞳は頑張っていたとは思いますが美しす松本清張スペシャル・鬼畜 9.jpgぎて、映画の岩下志麻ほどの凄味もやつれ感も無かったように思います。映画では岩下志麻演じるお梅が赤ん坊の口に米を突っ込んで虐待するところが、ドラマでは食事が美味しくないと言う子どもに腹を立てた黒木瞳演じる春江が玉子焼きを取り上げて捨てるぐらいで、後の方で保夫が長男を連れて行った上野動物園そばの不忍池で、長男に妻が毒を入れたおにぎりを無理やり食べさせようとするシーンなどがあり(前述の通り原作は最中、映画はアンパン)、黒木瞳がやるはずの汚れ役の一部をビートたけしが肩代わりしている印象もありました。全体として、夫婦を突き放すのではなく、寄り添うような感じだったでしょうか。

松本清張スペシャル・鬼畜3面.jpg

 子どもを捨てようと思った保夫が長女を連れて行く場所は、映画の東京タワーからお台場に改変されていて、長男を最後に連れて行く場所は、映画の能登金剛から原作と同じ西伊豆に戻されています。ラストは、映画と同じように保夫が子どもと対面するシーンがあって(原作にはない)、映画と同じように父親のことを知らないと子どもは言い張ります。映画では、子どもが父親を拒否したとも庇ったともとれるつくりになっていますが、ドラマの方はビートたけしがおいおい泣くので、ああ「庇った」のだなあとすぐ判ります。でもここが、それまで抑えた演技をしてきたビートたけしの、ラストでの演技の見せ所であったと思います。「火曜サスペンス劇場」のいつもの2時間ドラマよりかなり重かったし、ビートたけしがこれまで出演している清張原作ドラマの中でも一番いいくらいの出来ではなかったでしょうか(賛否はあるかと思うが、他のがあまりにひどい改変のものが多いから)。

鬼畜  岩下志麻.jpg 鬼畜 小川真由美.jpg 岩下志麻小川真由美
鬼畜 蟹江敬三.jpg 鬼畜 大滝秀治.jpg 蟹江敬三大滝秀治
鬼畜 田中1.jpg 鬼畜 鈴木瑞穂、大竹しのぶ.jpg 田中邦衛/鈴木瑞穂・大竹しのぶ



鬼畜 パンフ.jpg鬼畜 o.jpg「鬼畜」●制作年:1978年●監督:野村芳太郎●製作:野村芳太郎/野村芳樹●脚本:井手雅人●撮影:川又昂●音楽:芥川也寸志●原作:松本清張●時間:110分●出演:緒形拳/岩下志麻/小川真由美/加藤嘉/蟹江敬三/大滝秀治/大竹しのぶ/田中邦衛/浜村純/鈴木瑞穂/岩瀬浩規/吉沢美幸/穂積隆信/石井旬/山谷初男/三谷昇●公開:1978/10●配給:松竹●最初に観た場所:銀座・東劇(野村芳太郎特集)(05-08-27)●2回目:新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-16)●3回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-31)(評価:★★★★☆)
映画パンフレット 「鬼畜」 監督 /野村芳太郎 出演 /岩下志麻、緒方拳
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小川真由美 in「鬼畜」('78年)/「復讐するは我にあり」('79年)/「江戸川乱歩 美女シリーズ/悪魔のような美女」('79年)
小川真由美 鬼畜 - 2.jpg 小川真由美 復讐するは我にあり.jpg 8悪魔のような美女 06.jpg
松本清張の種族同盟・湖上の偽装殺人事件」('79年)
松本清張の種族同盟図9.jpg


松本清張スペシャル 鬼畜 dvd.jpg松本清張スペシャル 「鬼畜」.jpg松本清張スペシャル・鬼畜4.jpg「松本清張スペシャル・鬼畜」●監督:田中登●企画:酒井浩至●脚本:佐伯俊道●音楽:大谷和夫(エンディング:安全地帯「出逢い」)●原作:松本清張●時間:141分(放送分)●出演:ビートたけし/黒木瞳/室井滋/片岡涼/佐藤愛美/諸岡真尋/小野武彦/奥村公延/石倉三郎/日野陽仁/渡辺哲/波乃久里子/斉藤暁/大林丈史/津田三七子/井田國彦/斎藤歩/酒井敏也/水田啓太郎/斉藤実紀●放映:2002/10/15(全1回)●放送局:日本テレビ
火曜サスペンス劇場2 鬼畜 [DVD]

《読書MEMO》
●2度目のテレビドラマ化「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」(テレビ朝日・2017年12月24日放送)
監督:和泉聖治/出演:玉木宏(宗吉)・常盤貴子(梅子)・木村多江(菊代)
ドラマSP 松本清張「鬼畜].jpg 「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」(テレビ朝日).jpg
ドラマ 鬼畜.jpg【感想】脚本・竹山洋(「松本清張 点と線」('07年))、監督・和泉聖治(「アガサ・クリスティ そして誰もいなくなった」('17年))(共に1946年生まれ)というベテランコンビでのドラマ化。ビートたけし主演のドラマ化の際は、妻役の黒木瞳がキレイ過ぎたが(男が黒木瞳を捨てて室井滋(愛人役)に奔るはずがないとの声もあったとかで、バランスも大事なのか)、今回はどちらもキレイで、共にやつれ感があまりない。まあ最初から、緒形拳・岩下志麻・小川真由美という強力布陣の映画版ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」3.jpgを超えるのは難しいと思って観ているが、演出はまずまず手堅かったように思う。映画では、終盤で子どもが父親を庇ったのか拒絶したのか解釈が分かれるような作りだが、このドラマでは婦警が「この子は親を庇っている」と言ってしまっている。ラストは原作と異なり、妻に贖罪させたような感じで、男の方は刑務所に入り、刑期を終えて出てきて墓参り。モデルとなった人物は獄中で狂死したことを思うと、やや甘い。妻に贖罪させたことも含め、テレビ的な改変であったように思う。しかし、ネットでいちばん話題になっていたのは、なぜこれをクリスマスイブに放映するのか謎であるということだった(笑)。


「鬼畜」ドラマ61.jpg「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」.jpg「ドラマスペシャル 松本清張 鬼畜」●監督:和泉聖治●プロデューサー:五十嵐文郎●脚本:竹山洋●音楽:吉川清之●原作:松本清張●時間:138分(放送分)●出演:玉木宏/常盤貴子/木村多江/余貴美子/南岐佐(菊代の長男で7歳)/稲谷実恩(菊代の長女で4歳)/今中陸人(菊代の次男で2歳)/前田亜季/近藤芳正/羽場裕一/片桐竜次/河西健司/萩原悠/嘉門洋子/平泉成/柳葉敏郎/橋爪功●放映:2017/12/24(全1回)●放送局:テレビ朝日


     
  

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予算カットで白黒映画になったことで、却ってシリーズの中で際立っている。

網走番外地dvd.jpg 網走番外地 南原宏治 高倉健4.jpg 網走番外地 南原宏治 高倉健6.jpg
網走番外地 [DVD]」 南原宏治/高倉健

網走番外地g_1.jpg網走番外地 title.jpg 冬の網走駅で汽車を降ろされた男たちが、トラックに乗せられ網走刑務所へ護送される。受刑者の橘真一(高倉健)もその一人だった。入所後、雑居房に入網走番外地s.jpgれられた橘は、殺人鬼"鬼寅"の義兄弟と称して幅を利かせていた牢名主の依田(安部徹)や同じ新入りの権田(南原宏治)と衝突、喧嘩の責任をとって懲罰房に送られる。一人になった橘は、幼かった自分と妹を飢えさせないために母(風見章子)が不幸な再婚をしたこと、養父の横暴に耐え切れず母と妹(宗方奈美)を残して家を出たことを回想する。都会へ網走番外地acb.jpg出てやくざとなった彼は、渡世の義理で人を斬り3年の刑期を宣告され網走刑務所に送られたのだった。入所から半年が過ぎ、真面目に労役に汗を流す橘を囚人たちは点数稼網走番外地 丹波哲郎.pngぎとして冷ややかに見る。仲間への意地から騒動を起こし再び懲罰房へ行かされる橘に対し、保護司の妻木(丹波哲郎)だけは親身になって相談に乗る。故郷の妹からの手紙によると、母が死の床にあり早く戻ってほしいという内容網走番外地Q.jpgであり、同情した妻木は仮釈放の手続きを約束してくれる。一方、雑居房では依田、権田らが脱走計画を練っており、密告すれば渡世の仁義を踏みにじるイヌとされ、巻き込まれると仮釈放が消える橘は苦悩する。この脱走を直前になって失敗させたのは同じ雑居房にいた阿久田老人(嵐寛網走番外地  .jpg寿郎)であり、彼の正体こそ"鬼寅"であり、鬼寅は橘の苦境を見抜いて彼を救ったのだった。翌日、森林伐採の労役でトラックに乗せられた依田らは無蓋の荷台から飛び降りる。権田と手錠でつながれた橘も彼と一緒に飛び出して脱獄囚とされてしまう。報告を聞いた妻木は、やっともらった橘の仮釈放認可の書類を破り捨て二人を追う―。

石井輝男.jpg網走番外地_04.jpg 石井輝男(1924-2005/享年81)監督による作品で、'65年公開当初は小沢茂弘監督の任侠映画「関東流れ者」(鶴田浩二主演)の添え物映画という位置づけであり、映画業界でカラーフィルムによる「総天然色」が主流になりつつあった時代に、「主役が脱獄囚であり、ヒロインにあたる女優が登場せず、ラブロマンスもないため興収を見込めない(だから当たりそうもない)」という理由で、石井輝男監督らが北海道のロケハンより戻ってきた際に「予算はカット、添え物の白黒映画にする」と会社(東映)から言われたそうです。何とかカラーで撮らせてくれと執拗に迫った高倉健に対し、大川博社長(東映の事実上の創業者)は「文句があるなら主役を梅宮辰夫に変えるぞ」と言ったそうです。しかしながら映画はヒットし、高倉健は一躍スターダムへ。石井輝男=高倉健のコンビで、以下、シリーズ第10作まで作られました。

 主人公が長崎出身であるということもあり、シリーズの中で舞台を南国に移したりしていますが、さすがにシリーズ最後の方は勢いが落ちてきたでしょうか(石井輝男監督自身、シリーズの性格上観客のニーズにワンパターンで応えるような映画作りに飽きがきていたと言われる)。第4作「北海篇」や第7作「大雪原の対決」のように時に舞台を北海道に戻して原点回帰を図っていますが、質的にはやはり第1作を超えるまでには至らなかったのではないでしょうか。それでも、東映映画上映館の館主会からの強い要望により、監督を変えて「新網走番外地」シリーズ('68~'72年)8本が、同じく高倉健主演で作られています。

網走番外地 南原宏治 高倉健2s.jpg この第1作は、(高倉健はカラー映画を望んだわけだが望みが聞き入れられず)白黒映画になったことで、雪中シーンが多いことやシンプルなアクションシーンなどとの相乗効果で、却ってシリーズの中で際立つことになったように思網走番外地 南原宏治.pngいます(シリーズ第2作以降は全作品カラー)。また、第2作以降に出てくる(「男はつらいよ」シリーズのような)マドンナ的な女性がこの第1作では登場せず、「母子物」的要素と「義侠心」に近い男の'友情'が前面に押し出されています(「母子物」的要素は第5作「網走番外地 南国の対決」にもあるが、それは子供が当事者であって、一方、第1作は大人としての主人公が当事者である)。

網走番外地  高倉健.jpg網走番外地 高倉健.png ロケは大変だったろうなあと思わせる作品でした(特に高倉健と南原宏治)。大雪原の脱走、トロッコによる追跡劇、列車による手錠切断から大団円までを演じた高倉健網走番外地 安部徹.jpgは、まだこの頃みずみずしさがあって良く、若くして存在感がある一方で(このシリーズでの特徴だが)ちょっと剽軽一面も見せます(高倉健の実際の性格にも近いとも言われる)。南原宏治やいかつい顔の安部徹(若手時代は二枚目俳優だった)も悪くないですが、嵐寛寿郎演じる"八人殺しの鬼寅"の役回りも極めて良く、嵐寛寿郎は南原宏治、安部徹らを凌駕するどころか、準主役の丹波哲郎や主役の高倉健より良かったという人もいます。どういうわけか獄中59年、残り刑期が21年あったはずの"鬼寅"網走番外地 嵐寛寿郎.jpg網走番外地  嵐寛寿郎.pngが、以降のシリーズ作でも設定を変え、キャラクターのみ"鬼寅"のそれを継承して毎回出てきますが、やっぱりこの第1作の"鬼寅"が一番印象に残ります。
   
 網走刑務所から囚人が脱獄を企てる話を映画化することを最初に思いついたのはかつて東映の専属だった三國連太郎で、大島渚を監督に推したそうですが、東映上層部が大島渚の「天草四郎時貞」('62年/東映)の興業的失敗から忌避反応を示して頓挫、三國連太郎の原案も使えなくなったところへ、伊藤一の『網走番外地』という小説が見出され、これは傷害事件を起こし服役するやくざ者と医者の家の令嬢との道ならぬ純愛物語で、日活が既にそれをタイトルも中身も忠実に小高雄二、浅丘ルリ子主演で「網走番外地」('59年)として映画化していて、従って形としては本作はリメイク作品となりますが、石井輝男監督網走番外地 浅丘.jpg手錠のままの脱獄ド.jpgは、スタンリー・クレイマー監督、トニー・カーチス,シドニー・ポワチエ主演の「手錠のままの脱獄』('58年/米)を換骨奪胎した脚本を書き、女っ気の無い、男だけの脱獄映画、雪上アクション映画となったという経緯があります(こうなると伊藤一の小説は殆ど'原作'とは言えないのでは)。
「網走番外地」('59年/日活)   「手錠のままの脱獄」('58年/米)

網走番外地vhs.jpg 脱獄する気も無かったのに脱獄犯として追われるという不条理な状況に置かれた高倉健演じる主人公の橘が、最後の最後に嫌疑が晴れてスッキリというこのパターンは、映画会社が違っても高倉健が主演の「君よ憤怒の河を渉れ」('76年/松竹)などに引き継がれており、また、「幸福の黄色いハンカチ」('77年/松竹)なども、高倉健に「網走帰り」という役柄イメージが染み渡っているからこそ成り立っている部分が大きい作品であるという気が改めてします。

 それにしても、この頃の高倉健は年にいくつもの作品に出演していて、'65年には10本の作品に出ています。しかもその中に、「飢餓海峡」「網走番外地」「昭和残侠伝(シリーズ第1作)」が含まれているというのは、今思えばスゴイことです。

網走番外地 1965N.jpg「網走番外地」●制作年:1965年●監督・脚本:石井輝男●企画:大賀義文●撮影:山沢義一●音楽:八木正生●原作:伊藤一「網走番外地」●時間:92分●出演:高倉健/丹波哲郎/南原宏治/安部徹/嵐寛寿郎/田中邦網走番外地 丹波哲郎2.png衛/沢彰謙/風見章子/杉義一/潮健児/滝島孝二/三重街恒二/ジョージ吉村/佐藤晟也/関山耕司/菅沼正/北山達也/志摩栄/宗方奈美/河合絃司/小塚十紀雄/山之内修/日尾孝司/久保一/相馬剛三/久地明/沢田実/水城一狼/久保比佐志/山田甲一/沢田浩二/秋山敏/植田灯孝/最上逸馬/勝間典子/佐藤公明/石川えり子●公開:1965/04●配給:東映(評価:★★★★)

●「網走番外地」シリーズ(石井監督作品・全10作)一覧
1. 網走番外地 (1965年4月)
2. 続 網走番外地 (1965年7月)(1965年度興行収入ベスト10 : 6位)
3. 網走番外地 望郷篇 (1965年10月)(1965年度興行収入ベスト10 : 4位)
4. 網走番外地 北海篇 (1965年12月)(1965年度興行収入ベスト10 : 2位)
5. 網走番外地 荒野の対決 (1966年4月)(1966年度興行収入ベスト10 : 9位)
6. 網走番外地 南国の対決 (1966年8月)(1966年度興行収入ベスト10 : 3位)
7. 網走番外地 大雪原の対決 (1966年12月)(1966年度興行収入ベスト10 : 1位)
8. 網走番外地 決斗零下30度 (1967年4月)
9. 網走番外地 悪への挑戦 (1967年8月)
10.網走番外地 吹雪の斗争 (1967年12月)(高倉健と菅原文太が初共演)

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高倉健の作品の中ではちょっと変わった味がある? この映画のお蔭で黒澤映画に出られなかった。

居酒屋兆治 poster.jpg居酒屋兆治 dvd.jpg
居酒屋兆治 昭和58年.jpg
居酒屋兆治 [DVD]高倉健伊丹十三/細野晴臣
題字:山藤章二
居酒屋兆治 2.jpg 函館で居酒屋「兆治」を営む藤野英治(高倉健)は、輝くような青春を送り、挫折と再生を経て現在に至っている。かつての恋人で、今は資産家と一緒になった「さよ」(大原麗子)の転落を耳にするが、現在の妻・茂子(加藤登紀子)との生活の中で何もできない自分と、振り払えない思いに挟まれていく。周囲の人間はそんな彼に同情し苛立ち、さざなみのような波紋が周囲に広がる。「煮えきらねえ野郎だな。てめえんとこの煮込みと同じだ」と学校の先輩の河原(伊丹十三)に挑発されても頭を下げるだけの英治。そんな夫を見ながら茂子は、人が人を思うことは誰にも止められないと呟いていた―。

居酒屋兆治 31.jpg 今月['14年11月]10日に亡くなった高倉健(1931-2014/享年83)の52歳の時の出演作。文春文庫ビジュアル版の『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年)に監督・男優・女優の各ベスト10のコーナーがあって、男優ベスト10は、1位・坂東妻三郎、2位・高倉健、3位・笠智衆、4位・三船敏郎、5位・三國連太郎、6位・森雅之、7位・志村喬、8位・石原裕次郎、9位・市川雷蔵、10位・緒形拳となっており、この中で存命していたのは高倉健のみだっただけに、その死は尚更に寂しく思えます。'12年の菊池寛賞の受賞式を欠席したのはともかく、'13年の文化勲章受賞式に出席したのを見て逆にもしかしてちょっとヤバいのかなと思ったけれど...。

居酒屋兆治 41.jpg この作品は最初に観た時は、大原麗子(当時37歳)のあまりの暗さに引いてしまいましたが(「網走番外地 北海篇」('65年)などで見せた勝気で明るい女性キャラとは真逆)、改めて観直してみるとそう悪くも感じないのは自分の年齢のせいか。その大原麗子(1946-2009/享年62)も亡くなってしまったわけですが、河原役の伊丹十三(1933-97/享年64)、居酒屋の親爺で英治の師匠役の東野英治郎(1907-94/享年86)、「兆治」の常連客役の池部良(1918-2010/享年92)(高倉健とは「昭和残侠居酒屋兆治 大滝秀治.jpg伝」シリーズ('65-'72年)以来、正確には「君よ憤怒の河を渉れ」('76年)、「冬の華」('78年)、「駅STATION」('81年)に続く共演)、英治が元いた会社の専務役の佐藤慶(1928-2010/享年81)、小学校長役の大滝秀治(1925-2012/享年87)など、'84年にテアトル新宿で初めてこの作品を観てから亡くなった人が随分いるなあと。高倉健、伊丹十三、池部良のスリーショットなんて、観ていてしみじみしてしまいます。

居酒屋兆治 山藤.jpg居酒屋兆治 11.jpg 俳優だけでなく、原作者の山口瞳(1926-1995/享年68)や、この映画の題字を担当した山藤章二(共に右写真中央)、ミュージシャンの細野晴臣なども出演していて(水色のランニング姿。カメオ出演というより役者として出ている。'82年から'83年にかけてYMOの活動休止期があり、それを機に坂本龍一が「戦場のメリークリスマス」('83年)、高橋幸宏が「だいじょうぶマイ・フレンド」('83年)、「天国にいちばん近い島」('84年)などに出演したりした)、皆で楽しく作っている作品という印象もあり、女性陣も、ちあきなおみ加藤登紀子といった役者が本業ではない人が活き活きと演技しています。
ポスター・題字:山藤章二

 高倉健はこの「居酒屋兆治」への出演準備をしていた矢先に黒澤明監督から「」('85年/東宝)への架空の人物「鉄修理(くろがねしゅり)」の役での出演を打診されていますが、「でも僕が『乱』に出ちゃうと、『居酒屋兆治』がいつ撮影できるかわからなくなる。僕がとても悪くて、計算高い奴になると追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました」と述懐しています。黒澤明は自ら高倉宅へ足繁く黒澤明2.jpg4回も通って、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗康男君のところへ謝りに行きます」と口説いたけれども、高倉健は「いや、それをされたら降旗監督が困ると思いますから。二つを天秤にかけたら誰が考えたって、世界の黒澤作品を選ぶでしょうが僕には出来ない。本当に申し訳ない」と断ったため、黒澤明から「あなたは難しい」と言われたそうです(結局、鉄修理は井川比佐志が演じることになった。高倉健はその後、偶然「乱」のロケ地を通る機会があり、「畜生、やっていればな」と後悔の念があったとも語っている。但し、高倉健の後期の黒澤作品に対する評価はイマイチのようだ)。

居酒屋兆治 71.jpg 今観ると、高倉健の降旗監督に寄せる信頼が、この作品のアットホームな雰囲気を醸しているのかもしれないという気もします。高倉健と田中邦衛がやり合う場面で、田中那衛のオーバーアクションに高倉健が噴き出したように見えるシーンがあって、最初に観た時はそれがものすごく引っかかったのですが(普通はNGではないかと)、そうした雰囲気の中で撮られた作品だと思うとさほど気にはならず、高倉健の出演作の中ではちょっと変わった味があると思えるようにもなってきました。
  
  
   高倉健・ちあきなおみ  /  高倉健・東野英治郎  /  伊丹十三・細野晴臣
居酒屋兆冶 ちあき.jpg 居酒屋兆冶 東野.jpg 居酒屋兆冶 細野.jpg
  高倉健・田中邦衛    /    田中邦衛・大滝秀治
田中邦衛 「居酒屋兆治」2.jpg田中邦衛 「居酒屋兆治」.jpg

チャン・イーモウ監督と高倉健さん.jpg    高倉健 訃報.png
チャン・イーモウ監督と高倉健(2005年東京国際映画祭)[毎日新聞]/2013年文化勲章受章

池部 良 居酒屋兆治1.jpg池部 良 居酒屋兆治2.jpg「居酒屋兆治」●制作年:1983年●監督:降旗康男●製作:田中プロモーション●脚本:大野靖子●撮影:木村大作●音楽:井上堯之(主題歌「時代おくれの酒場」 歌:高倉健/作詞・作曲:加藤登紀子)●時間:125分●原作:山口瞳「居酒屋兆治」●出演:高倉健/大原麗子/加藤登紀子/伊丹十三/田中邦衛/小林稔侍/左とん平/池部良/ちあきなおみ/東野英治郎/佐藤慶/平田満/河原さぶ/小松政夫/美里英二/あき竹城/大滝秀治/石野真子/山谷初男/細野晴臣/三谷昇/石山雄大/武田鉄矢/好井ひとみ/伊佐山ひろ子/板東英二/山藤章二/山口瞳●公開:1983/11●配給:東宝●最初に観た場所:テアトル新宿(84-02-12)(評価:★★★☆)●併映:「魚影の群れ」(相米慎二)

大原麗子メモリー ずっと好きでいて」('10年/講談社)
大原麗子メモリー ずっと好きでいて200_.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいてWL.jpg 大原麗子メモリー ずっと好きでいて1L.jpg
「居酒屋兆治」05.jpg

《読書MEMO》
●ロングインタビュー(時事ドットコム 2012年)より
 「降旗監督の「居酒屋兆治」の準備が進んでいたとき、黒澤さんの「乱」に(鉄修理=くろがね・しゅり=役で)出演できるという話があった。でも、僕が「乱」に出ちゃうと「居酒屋兆治」がいつ撮影できるか分からなくなる...。とても僕が悪くて、計算高いやつになるという風に追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました。
 あの時、黒澤さんは僕の家に4回いらして、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗君のところへ謝りに行きます」とまで言ってくれた。でも、僕は「いや、それをされたら降旗さんが困ると思いますから。二つをてんびんに掛けたら、誰が考えたって世界の黒澤作品を選ぶのが当然でしょうが、僕にはできない。本当に申し訳ない」と謝った。黒澤さんには「あなたは難しい」って言われましたね。
 その後、「乱」のロケ地を偶然通ったことがあって、「畜生、やっていればな」と思いましたよ。
 ただ、黒澤監督の晩年の作品には、良いものがないと思うんですよね。僕は、監督が(作品の常連だった)三船敏郎さんと別れたのが大きい気がする。志村喬さんもそうだったけれど、三船さんは(黒澤作品の)エンジンの大きな出力だったのでしょう。二人が抜けたことで、その出力がどーんと落ちた。怖いですよね。映画は絶対に一人ではできないんですよ。」

「●深作 欣二 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3224】深作 欣二 「バトル・ロワイアル
「●あ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●菅原 文太 出演作品」の インデックッスへ「●松方 弘樹 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い」「仁義なき戦い 頂上作戦」「仁義なき戦い 完結篇」)「●梅宮 辰夫 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い」「仁義なき戦い 代理戦争」「仁義なき戦い 頂上作戦」)「●渡瀬 恒彦 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い」「仁義なき戦い 代理戦争」)「●北大路 欣也 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 広島死闘篇」「仁義なき戦い 完結篇」)「●千葉 真一 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 広島死闘篇」) 「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い」「仁義なき戦い 代理戦争」「仁義なき戦い 頂上作戦」「仁義なき戦い 完結篇」) 「●加藤 嘉 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 広島死闘篇」)「●前田 吟 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 広島死闘篇」)「●丹波 哲郎 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 代理戦争」)「●加藤 武 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 代理戦争」「仁義なき戦い 頂上作戦」)「●夏八木 勲 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 頂上作戦」)「●小林 稔侍 出演作品」の インデックッスへ(「仁義なき戦い 頂上作戦」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○存続中の映画館」の インデックッスへ(吉祥寺東映(吉祥寺プラザ))

群像活劇。配役の"混乱"が作品の"混沌(カオス)"的雰囲気と重なった。

仁義なき戦い dvd.jpg   女奴隷船 dvd.jpg
仁義なき戦い [DVD]」/「仁義なき戦い」テーマ(津島利章)/「女奴隷船 [DVD]

6 仁義なき戦い.jpg 広能昌三(菅原文太)は復員後、遊び人の群れに身を投じていたが、山守組々長・山守義雄(金子信雄)はその度胸と気風の良さに感心し、広能を身内にする。まだ小勢力だった山守組は、土居組との抗争に全力を注ぐ。その土居組を破門された若頭・若杉(梅宮辰夫)が山守組に加入し、若杉による土居(名和宏)殺害計画が進む―。 

 「仁義なき戦い」シリーズの作曲家の津島利章の訃報が入ってきました(1936-2013.11.25/享年77)。キネマ旬報が'09(平成21)年に実施した「オールタイム・ベスト映画遺産200(日本映画編)」で、歴代第5位という上位にランクされた作品ですが、個人的にはあの作品で最も印象に残ったのはテーマ曲だったかも。

 任侠道を美化して描くそれまでの"時代劇風の舞台演劇"っぽいヤクザ映画から、ヤクザの行動原理も結局は金と権力に拠るという視点に立った、"リアルな群像活劇"へのターニングポイントとなった作品と言われていますが、裏切りに続く裏切りの一方で、主人公の広能だけは、従来の任侠道を貫く者として美化されているような感じで、やや矛盾を感じなくもありません。但し、そのことが作品としての救いにもなっています。「その他大勢」はストレートに「我欲に忠実」な人々とでも言うべきでしょうか。そうした点も含め、深作欣二の作品の中では、その演出力が最も発揮された作品だと思います。

梅宮辰夫の若杉.jpg仁義なき戦いAL_.jpg仁義なき戦い5_AL_.jpg 「仁義なき戦い 広島死闘篇「('73年)、「仁義なき戦い 代理戦争」('73年) 、「仁義なき戦い 頂上作戦('74年)、「仁義なき戦い 完結篇」('74年)も続けて観ましたが、広能の他にも、松方弘樹演じる板井や梅宮辰夫演じる若杉などサブヒーロー的な登場人物がいることはいますが、彼らは皆、この第1作の中で死んでしまいます。
獄中の広能を訪ねる若杉(梅宮辰夫)
明石組幹部 岩井信一(梅宮辰夫
梅宮辰夫 仁義なき戦い.jpg シリーズの後の方になると、死んだ人物の役を演じた俳優がまた別の役で出てくるので、観ていて妙な感じがします。第1作における梅宮辰夫の「若杉」などは結構キーパーソンだったのですが、第3作「仁義なき戦い 代理戦争」と第4作と「仁義なき戦い 頂上梅宮辰夫 アンナ2.jpg作戦」には「明石組幹部 岩井信一」の役で出演しています。この役を演じるのに際して眉毛を剃り落としましたが、これは、岩井のモデルで梅宮ア辰夫ンナ.jpgある三代目山口組若頭の山本健一に眉毛がなかったためで、眉のない父の顔を見た娘の梅宮アンナ(1972年生まれ)は、怖くて泣いたそうです。でも、このシリーズの演技で最も飛躍した俳優の一人が彼、梅宮辰夫であり、異なった役を演じ切ったこともその要因としてあったのでは。違った役と言えば、第3作に第1作と別の役で出てくるのは渡瀬恒彦も然り。しかも、ストーリー的には、この第3作が第1作の続編となっているのでややこしいです。松方弘樹は第4作「頂上作作戦」で別の役で登場、第5作「完結篇」でさらに別の役で出てきます。

「仁義なき戦い」シリーズ松方.jpg松方弘樹 in「仁義なき戦い」(坂井鉄也・射殺される)/「仁義なき戦い頂上作戦」(藤田正一(射殺される)/「仁義なき戦い完結編」(市岡輝吉・射殺される)

「仁義なき戦い」73.jpg 準主役級でさえそうですから、主に殺され役である川谷拓三などは第1作から第5作まで全部異なる役で登場しており、一方で、小林旭は第3作から第5作まで、山城新伍は第2作から第5作まで同じ役で出ていたりもします。流れとしては、誰か特定の個人の生き様を追うというよりは、次第に"群像活劇"の色合いを濃くしていくという感じでしょうか(広能が結構長く刑務所に入っている期間があって、必ずしも毎回は表舞台に出てはこないということもある)。
「仁義なき戦い」('73年)

 個人的には、配役から受ける"混乱"が、そのまま、作品の"混沌(カオス)"的雰囲気と重なりました(笑)。その他、千葉真一(第2作)、北大路欣也(第2作・第5作)、丹波哲郎(第3作、写真のみ)、宍戸錠(第5作)といった面々も登場します。因みに第5作「完結篇」は、当初4作で終わる予定が、シリーズ続行でオマケ的に作られた作品です。

吉祥寺東映.jpg このシリーズを通しで観た「吉祥寺東映」は、自分が30年前に通った当時は座席数の割には狭い映画館で、「仁義なき戦い」上映時は満席で立ち見も出る状態でした。但し、席にアルプス・スタンドのようなかなり急勾配の段差が設けられて(最前列には手すりがあった)、前の人が邪魔になるということはありませんでした。東宝配給の「もののけ姫」('97年)の吉祥寺地域での上映誘致を契機に、'96年7月に館名を「吉祥寺プラザ」に変えていますが、その前にいつの間にかロード館になっていて、あの座席はかなり早い時期に取り壊されたみたいです。
吉祥寺東映 1978(昭和53)年に吉祥寺駅北方面・五日市街道沿いにオープン、1996年7月~吉祥寺プラザ

「女奴隷船」(新東宝)1.jpg 菅原文太は、'60(昭和35)年の正月映画「女奴隷船」(新東宝)に26歳で主演しています。この作品は舟崎淳の「お唐さん」を基にした和風海洋アドベンチャー(?)で、これ、昭和20年初頭の時代設定なのですが(「仁義なき戦い」と大差ない)、日本女性を上海まで運んでセリにかけて売り飛ばす「お唐さん船」というものがストーリー背景となっています。

「女奴隷船」(新東宝)2.jpg菅原文太 「女奴隷船」.jpg 善玉主人公が菅原文太で(この頃は何となく的場浩司と似ている)、悪役は丹波哲郎(この人は昔からこんな感じだったんだなあと)、女優陣は新東宝のセクシー看板女優・三原葉子に、この映画を撮った小野田嘉幹監督と結婚することになる三ツ矢歌子など。

「女奴隷船」(新東宝)3.jpg 菅原文太は丹波哲郎とのアクション対決を演じたりしましたが、う~ん、スゴイ「B級」の冒険アクション&お色気映画。ダサいセットが微笑ましく、但し、東映風のミニチュア特撮を駆使したりしている努力は買えます。音楽は、東大文学部卒心理学科卒で作曲家になった渡辺宙明(1925-font color=red>2022/96歳没)です。
三原葉子/三ツ矢歌子

女奴隷船l2.jpg 丹波哲郎の海賊の統領役はあまりに漫画チックで笑女奴隷船 1シーン.jpgえますが(洋画の影響?)、これでも作品全体としては新東宝作品群の中では相対的にみてゴージャスな方女奴隷船il2.jpgと言ってよく(この作品は'60年の新東宝のお正月映画であり、新東宝は翌'61年に倒産する)、三原葉子三原葉子のベリーダンス.jpgベリーダンスもどきの踊り(これも洋画の影響?)が見ることができるなど、「珍品」的意味合いで星1個オマケという感じ大井武蔵野館 閉館日2.jpg大井武蔵野館 閉館日22.jpgでしょうか(大井武蔵野館って変わった作品を上映していた)。
大井武蔵野館 1999(平成11)年1月31日閉館

 菅原文太は、新東宝の経営が倒産して東映に移籍してからは10年間くらい「雌伏の時」がありましたが(というと聞こえはいいが、セリフさえない端役時代が長らくあった)、やがて徐々に頭角を現し、この「仁義なき戦い」シリーズでブレイク、この人、東北出身ですが(井上ひさしの「吉里吉里人」の映画化権を持っている)、どうしても「仁義なき戦い」のイメージがあって「じゃけんの~」という広島弁の方が似合ってしまう役者です。

Jingi naki tatakai (1973)
Jingi naki tatakai (1973) .jpg仁義なき戦い 1973年1月13日公開.jpg「仁義なき戦い 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利「仁義なき戦い」1973年.jpg章●原作:飯干「仁義なき戦い」渡瀬.jpg晃一●時間:99分●出演:菅原文太/松方弘樹/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/成田三樹夫/渡瀬恒彦/曽根晴美/川地民夫/田中邦衛/名和宏/内田朝雄/伊吹吾郎/川谷拓三/中村英子/木村俊恵/渚まゆみ/内田朝雄/三上真一郎/高野真二/高宮敬二/林彰太郎/中村錦司/野口貴史/大前均/志賀勝/岩尾正隆●公開:1973/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)●併映:「仁義なき戦い 広島死闘篇」/「仁義なき戦い 代理戦争」/「仁義なき戦い 頂上作戦」/「仁義なき戦い 完結篇」(何れも深作欣二)  

「女奴隷船」ポスター/スチール写真
女奴隷船 ポスター.jpg女奴隷船 スチール.jpg女奴隷船ps.jpg「女奴隷船」●制作年:1960年●監督:小野田嘉幹●製作:大蔵貢●脚本:田辺虎男●撮影:山中晋●音楽:渡辺宙明●原作:舟崎淳「お唐さん」●時間:83分●出演:菅原文太/三原葉子/三ツ矢歌子/丹波女奴隷船 vhs.jpg映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】_.jpg哲郎/左京路子/沢井三郎/大友純/杉山弘太郎/川部修詩/中村虎彦●公開:1960/01●配給:新東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館(86-10-04)(評価:★★☆)●併映:「女獣」(曲谷守平)主演:菅原文太
女奴隷船 [VHS]」「映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】」   
        

       
Hiroshima shitô hen (1973)  
Hiroshima shitô hen (1973) .jpg仁義なき戦い 広島死闘篇12.jpg仁義なき戦い 広島死闘篇.jpgHiroshima shitô hen _.jpg「仁義なき戦い 広島死闘篇」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:100分●出演:菅原文太/前田吟/松本泰郎/司裕介/金子信雄/木村俊恵/名和宏/成田三樹夫/北大路欣也/山城新伍/宇崎尚韶/笹木俊志/木谷仁義なき戦い 広島死闘篇 1973年2.jpg仁義なき戦い 広島死闘篇   .jpg仁義なき戦い 広島死闘篇_梶2.jpg邦臣/小池朝雄/堀正夫/遠藤辰雄/国一太郎/川谷拓三/藤沢徹夫/白川浩二郎/千葉真一/大木晤郎/室田日出男/八名信夫/志賀勝/広瀬義宣/北川俊夫/加藤嘉/中村錦司/梶芽衣子●公開:1973/04●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
「仁義なき戦い 広島死闘篇」前田吟/千葉/加藤.jpg前田吟(広能組若衆・島田幸一)/千葉真一(大友組組長・大友勝利)/加藤嘉(大友連合会々長・大友長次)
     

          
Jingi naki tatakai:Dairi sensô (1973)
Jingi naki tatakai:Dairi sensô (1973).jpg
仁義なき戦い 代理戦争3.jpg仁義なき戦い 代理戦争dvd.jpg「仁義なき戦い 代理仁義なき戦い 代理戦争  .jpg戦争」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:102分●出演:菅原文太仁義なき戦い 代理戦争 田中邦衛.jpg0仁義なき戦い 代理戦争 1973年.png/小林旭/渡瀬恒彦/山城新伍/池玲子/金子信雄/木村俊恵/成田三樹夫/加藤武/山本麟一/川谷拓三/北村英三/汐路章/内田朝雄/遠藤辰雄/室田「仁義なき戦い 代理戦争 」渡瀬.jpg日出男/大前均/野口貴史/曽根晴美仁義なき戦い 代理戦争 丹波.jpg/名和宏/丹波哲郎「仁義なき戦い 代理戦争」加藤武.jpg宮辰夫田中邦衛●公開:1973/09●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
  

  
Jingi naki tatakai:Chôjô sakusen (1974)
Jingi naki tatakai:Chôjô sakusen (1974) .jpg
仁義なき戦い 頂上作戦.jpg仁義なき戦い 頂上作戦 1974年1月.jpg「仁義なき戦い 頂上作戦」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:101分●出演:菅原文太/梅宮辰夫/黒沢年男/田中邦仁義なき戦い 頂上作戦t.jpg衛/小林旭/松方弘樹/堀越光恵/木村俊恵/中原早苗/渚まゆみ「仁義なき戦い 頂上作戦」加藤武.jpg/金子信雄/小池朝雄/山城新伍/加藤武/夏八仁義なき戦い 頂上作戦 小林旭2.jpg木勲/遠藤太津朗/内田朝雄/長谷川明男/小倉一郎/葵三津子/城恵美/八名信夫/汐路章/室田日出男/鈴木瑞穂/野口貴史/小林稔侍/岡部正純/高月忠/白川浩二郎/有川正治●公開:1974/01●配給:東映「仁義なき戦い 頂上作戦」小林.jpg●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★仁義なき戦い 頂上作戦 小林稔侍2.jpg頂上作戦 渚まゆみ2.jpg★☆)

小林稔侍・岡部正純・高月忠/渚まゆみ
 
   

Jingi naki tatakai:Kanketsu-hen (1974)
Jingi naki tatakai:Kanketsu-hen (1974) .jpg
仁義なき戦い 完結篇.jpg仁義なき戦い 完結篇 1974.jpg「仁義なき戦い 完結篇」●制作年:1974年●監督:深作欣二●脚本:高田宏治●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:98分●出演:菅原文太/伊吹吾郎/野口貴史/寺田誠/桜木健一/松方弘樹/唐沢民賢/白川浩三郎/小林旭/北大路欣也/西田良/曽根晴美/成瀬正孝/宍戸錠/山田吾一/誠直也/織本順吉/高並功/八名信夫/山城新伍/木谷邦臣/田中邦衛/国一太郎/川谷拓三/金子<第五作  槇原政吉(田中邦衛).jpg仁義なき戦い 完結篇ド.jpg信雄/岩尾正隆/鈴木康弘/天津敏/内田朝雄/野川由美子/藤浩子/中原早苗/橘麻紀/賀川雪絵●公開:1974/06●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)
田中邦衛(槇原組組長・槇原政吉)

「●小津 安二郎 監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1488】 小津 安二郎 「大学は出たけれど
「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ(「学生ロマンス 若き日」)「●は行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ(「私をスキーに連れてって」)「●竹中 直人 出演作品」の インデックッスへ「私をスキーに連れてって」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(渋谷宝塚劇場) 「●「菊池寛賞」受賞者作」の インデックッスへ(松任谷由実)

昭和初期の軟派系早大生を描いた、小津版「私をスキーに連れてって」。

学生ロマンス 若き日 vhs2.jpgGakusei romansu Wakaki hi (1929).jpg 私をスキーに連れてって.jpg
Gakusei romansu: Wakaki hi (1929)私をスキーに連れてって [DVD]
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 大学の同級生仲間の渡辺(結城一郎)と山本(斎藤達雄)は、憧れのマドンナ千恵子(松井潤子)がスキーに行ったのを知り、彼女の後を追いかけて妙高高原・赤倉に行き、恋の争奪戦を繰り広げていくが―。

「学生ロマンス 若き日」.bmp 1929(昭和4)年公開の小津安二郎監督の第8作にして初の長編作品。小津安二郎の監督作品は記録映画も含めると全部で54作ありますが、その内の現存する37作品の中ではこれが最初期の作品で、個人的には今回が初見。本来はBGMも無い「完全サイレント」作品ですが、神保町シアターで、エレクトーン奏者・柳下美恵氏の伴奏により鑑賞しました。

 陽気でお調子者の渡辺と、生真面目だがちょっと抜けている山本のコンビが妙。もともと2人が千恵子と知り合ったのは、渡辺が下宿に「貸間あり」の張り紙をし、男が訪ねてきたら「残念でした。今日、僕が入居しました」と言って追い払い、美女が訪ねてきたら一旦部屋を引き払って、後で忘れ物をしたと言って部屋に上がり込んで、その女性と親しくなるという戦略によるものです。

学生ロマンス 若き日5.jpg そうして知り合った千恵子が赤倉にスキーに行くことを知った2人ですが、渡辺には仕送りが来ず、山本は財布を落としたために共にその資金が無く、山本の下宿に転がり込んだ渡辺が、山本に「上を向け」と言って、その間に山本の部屋の書籍や家財道具をかき集め、それを質屋に持っていき"軍資金"を作る下りは、渡辺の部屋にポスターが貼ってあったフランク・ボーゼージ監督の1927年映画「第七天国」の、掃除夫の主人公が自分はもっと偉くな「学生ロマンス 若き日」第七天国」.jpgるのだという前向きな気持ちを表した「上を向け」という台詞のパロディで、主人公が自分の住む部屋を「第七天国」と称した「七」に「質」を懸けています(柳下美恵氏の解説による)。このように、小津安二郎監督の初期サイレント映画には必ずといっていいほどモダンな洋画ポスターが出てきます。本作ではその「第七天国」のポスターが、元の下宿でも引っ越し先の下宿でも映っています。

学生ロマンス 若き日.jpg 渡辺と山本がゲレンデで千恵子を巡って恋の鞘当を繰り広げる場面は、随所にスラップスティックなノリが感じられ、山本が渡辺にスキー板を流され取りに行く間に、渡辺と千恵子が仲好く語らう場面など、チャップリン映画さながら(この作品に多分に影響を与えていると思われるキートンの「カレッジ・ライフ」(1927)ほどまではいかないが)。

Gakusei romansu Wakaki hi 1.jpg ストーリーの方は、実は、千恵子は、母親(飯田蝶子)と共にお見合いをするためにスキー場に来ていたのであり、見合いの相手は、渡辺らの同級生(日守新一)だったという皮肉な展開に(それでも諦めない渡辺なのだが...)。

 2人がスキー場を後にし、乗った列車の中で、スキーに出かける前に受けた期末試験の担当教授に会い(何で教授がこの列車に乗っている?)、テストの点数を教えてもらったところ、それぞれ45点と37点で、「君たち、スキーをしている場合じゃないだろ」。渡辺は落第、同級生と千恵子の見合いはうまくいったようで、常人ならばがっくりくるところですが、下宿に戻ってから落ち込んでいるのは山本の方で、渡辺は、「俺がもっとシャン(美人)を捜してやるから」と明るく前向き。再び「貸間あり」の張り紙をしたためる図々しさ(今度は山本の部屋なんだよなあ。結城一郎は、いけしゃあしゃあとした主人公を好演)。

 思ったよりゲレンデ・シーンが多く、小津安二郎版「私をスキーに連れてって」('87年/東宝)といったところでしょうか。スキー部の学生の一人として出演した笠智衆(当時25歳)の回想録によると、スキー初心者のままロケ地に入ったが、1週間の撮影が終わって帰る頃にはスキーの腕前も上達し、駅まで滑って帰ったとのことです(『小津安二郎先生の思い出』(朝日文庫))。
笠智衆(当時25歳)

私をスキーに連れてって 1.jpg 「私をスキーに連れてって」の方の舞台は奥志賀のゲレンデ。主人公(原田知世)が恋人へのプレゼントを届けるために横手山から万座へ夜中にスキーで山越えをするといった話だったと思いますが、あまりに現実離れしたストーリーで、しかも出演者の演技はみんな下手(もう一人の主演の三上博史は、最初に脚本を読んだ時、あまりのバカバカしさにゴミ箱に捨てたというから、最初からモチベーション低かった? そんな演技にOK出しする作り手の方に問題があるのだろうが)。ユーミンの挿入歌「恋人はサンタクロース」くらいしか印象に残らなかった作品ですが、「見栄講座」のホイチョイ・プロダクションの映画だから、ストーリーや演出よりも、バブル景気に湧いていた当時の「猫も杓子もゲレンデへ」といった世相を映し出すことが主眼の作品だった言えなくも無く、その目的は果たしたか?

彼女が水着にきがえたら10.jpg ホイチョイ・プロダクションはその後"青春ムービー"第2弾として、東京アーバン・マリンリゾートを舞台に、海底に眠る財宝を追う女性ダイバー(原田知世)とヨット乗りの青年(織田裕二、当時は殆ど無名の"ほぼ新人"だった)との恋と冒険を描いた「彼女が水着にきがえたら」('89年/東宝)も製作。「私をスキーに連れって」と同じく、馬場康夫・監督、一色伸幸・脚本で、音楽はユーミンからサザン・オールスターズへ。「渋谷宝塚劇場」の映画館前で開演待ちをしていた客は若いカップルばかりで、"デート用映画"と割り切るにしてもちょっと異様な光景でした(その「渋谷宝塚劇場」も今は無く、跡地に立ったQ‐FRONTビルにオープンした「渋谷シネフロント」も昨年['10年]閉館した...)。 

学生ロマンス 若き日2.jpgGakusei romansu Wakaki hi.jpg さすがに小津安二郎はダイビング映画までは撮っていませんが、「世相を描く」ことが主眼となっているという点では「青春ロマンス 若き日」にも当て嵌る部分があり(演出はこっちの方がしっかりしていて、昭和初期とは思えないほど現代的)、スキーをする時にパイプを咥えたりベレー帽をかぶるのが流行りだったのか(?)とか、「ゲレンデ交際」という当時の若者風俗を描いていること自体に大いに関心を引かれました(時代期には共に、その後に不況が控えていたという点でも共通するかも)。

学生ロマンス 若き日  1929年 2.bmp 冒頭「都の西北」とあることから、主人公たちは早稲田の学生なのでしょうが(ロケも早稲田キャンパスでやっている模様)、その他にもいろいろと当時の学生の気風や生活ぶりが窺えるのが興味深かったです。まあ、主人公の渡辺は当時としてはかなりの軟派系だとは思いますが(因みに、小津安二郎自身は現役の時に神戸高等商業学校(現在の神戸大学)を受験して失敗、更に1浪後に三重師範学校(現在の三重大学教育学部)を受験してこれも失敗し、大学に行っていない)。

 監督初の長編作品であるためか冗長な部分もあり、コメディとしてはテンポが今一つですが(但し小津映画全体でみればテンポの早い方?)、そうした「映像記録」的な価値を加味して、評価は少しオマケしました。


学生ロマンス 若き日 vhs2.jpg「学生ロマンス 若き日」●制作年:1929年●監督:小津安二郎●脚本:伏見晁●撮影:茂原英雄●原作:伏見晁●時間:103分(完全版109分)●出演:結城一郎/斎藤達雄/松井潤子/飯田蝶子/高松栄子/小藤田正一/大国一郎/坂本武/日守新一/山田房生/笠智衆/小倉繁/一木突破/錦織斌/蜂野豊夫●公開:1929/04●配給:松竹蒲田●最初に観た場所:神保町シアター(10-12-04)(評価:★★★☆)
    
              
私をスキーに連れてって  .jpg私をスキーに連れてって3.jpg「私をスキーに連れてって」●制作年:1987年●監督:馬場康夫●脚本:一色伸幸●撮影:長谷川元吉●音楽:杉山卓夫(挿入歌:松任谷由実/テーマ曲「恋人がサンタクロース」)●原作:ホイチョイ・プロダクション●時間:98分●出演:原田知世/三上博史/ 原田1 私をスキーに連れてって.jpg「私をスキーに連れてって 竹中直人.jpg貴和子/沖田浩之/高橋ひとみ/布施博/鳥越マリ/上田耕一/飛田ゆき乃/小坂一也/竹中直人田中邦衛●公開:1987/11●配給:東宝(評価:★★)
「私をスキーに連れてって」テーマ曲:松任谷由実「恋人がサンタクロース」
  


彼女が水着にきがえたら oda.jpg彼女が水着にきがえたら     .jpg「彼女が水着にきがえたら」●制作年:1989年●監督:馬場康夫●脚本:一色伸幸●撮影:長谷川元吉●音楽:サザンオールスターズ(テーマ曲:「さよなら彼女が水着にきがえたら2.jpg彼女が水着にきがえたら DVD2.jpgベイビー」)●原作:ホイチョイ・プロダクション●時間:98分●出演:原田知世/織田裕二/伊藤かずえ/竹内力/田中美佐子/谷啓/伊武雅刀/安岡力也/坂田明/白竜/今井雅之/佐藤允/玉井美香(叶美香)●公開:1989/06●配給:東宝●最初に観た場所:渋谷宝塚劇場(89-06-11)(評価:★★)彼女が水着にきがえたら [DVD]
 
1975年 渋谷宝塚劇場.jpg渋谷宝塚 峰岸ビル.jpg渋谷シネフロント.jpg渋谷宝塚劇場
宇田川町・峰岸ビル内にオープン。ビル取り壊しに伴い1997年5月30日閉館(跡地にQFRONTビルが建設、1999年12月18日「渋谷シネフロント」開館、都内初となる全席指定席・完全入替制を導入、2010年1月22日閉館)


松任谷由実 菊池寛賞.jpgサザンとユーミン競演.jpg第66回「菊池寛賞」贈呈式での松任谷由実(2018年12月7日・帝国ホテル)Photo by スポニチ 
(受賞理由:1972年、大学在学中の衝撃的なデビュー以来、その高い音楽性と同時代の女性心理を巧みに掬いあげた歌詞は、世代を超えて広くそして長く愛され、日本人の新たな心象風景を作り上げた)

第69回「NHK紅白歌合戦」での松任谷由実とサザンオールスターズ・桑田佳祐(2018年12月31日・NHKホール)Photo by 夕刊フジ
 
 

●小津安二郎フィルモグラフィー
公開年  作品名   製 作   主な出演者
1927年 懺悔の刃 松竹蒲田 吾妻三郎、小川国松、河原侃二、野寺正一、渥美映子 白黒サイレント69分 現存せず
1928年 若人の夢 松竹蒲田 斎藤達雄、吉谷久雄、松井潤子、坂本武、大山健二、笠智衆 白黒サイレント55分 現存せず
1928年 女房紛失 松竹蒲田 斎藤達雄、岡本文子、国島荘一、菅野七郎、坂本武、笠智衆 白黒サイレント54分 現存せず
1928年 カボチヤ 松竹蒲田 斎藤達雄、日夏百合絵、半田日出丸、小桜葉子、坂本武 白黒サイレント42分 現存せず
1928年 引越し夫婦 松竹蒲田 渡辺篤、吉川満子、大国一郎、中川一三 白黒サイレント40分 現存せず
1928年 肉体美 松竹蒲田 斎藤達雄、飯田蝶子、木村健児、大山健二 白黒サイレント54分 現存せず
1929年 宝の山 松竹蒲田 小林十九二、日夏百合絵、青山萬里子、岡本文子 白黒サイレント66分 現存せず
1929年 学生ロマンス 若き日 松竹蒲田 結城一郎、斎藤達雄、松井潤子、飯田蝶子、高松栄子 白黒サイレント 103分
1929年 和製喧嘩友達 松竹蒲田 野田高梧 渡辺篤、吉谷久雄、浪花友子、結城一朗、高松栄子 白黒サイレント77分
1929年 大学は出たけれど 松竹蒲田 高田稔、田中絹代、鈴木歌子、大山健二、日守新一 白黒サイレント70分
1929年 会社員生活 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、小藤田正一、加藤精一、青木富夫 白黒サイレント57分 現存せず
1929年 突貫小僧 松竹蒲田 斎藤達雄、青木富夫、坂本武 白黒サイレント38分
1930年 結婚学入門 松竹蒲田 栗島すみ子、斎藤達雄、高田稔、龍田静枝、岡本文子 白黒サイレント71分 現存せず
1930年 朗かに歩め 松竹蒲田 高田稔、川崎弘子、吉谷久雄、伊達里子、坂本武 白黒サイレント98分
1930年 落第はしたけれど 松竹蒲田 斎藤達雄、田中絹代、月田一郎、二葉かほる、笠智衆 白黒サイレント64分
1930年 その夜の妻 松竹蒲田 岡田時彦、八雲恵美子、市村美津子、山本冬郷、斎藤達雄、笠智衆 白黒サイレント65分
1930年 エロ神の怨霊 松竹蒲田 斎藤達雄、星ひかる、伊達里子、月田一郎 白黒サイレント27分 現存せず
1930年 足に触つた幸運 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、青木富夫、市村美津子 白黒サイレント74分 現存せず
1930年 お嬢さん 松竹蒲田 栗島すみ子、岡田時彦、斎藤達雄、田中絹代、岡田宗太郎 白黒サイレント135分 現存せず
1931年 淑女と髯 松竹蒲田 岡田時彦、川崎弘子、伊達里子、月田一郎 白黒サイレント74分
1931年 美人哀愁 松竹蒲田 岡田時彦、斎藤達雄、井上雪子、岡田宗太郎 白黒サイレント158分 現存せず
1931年 東京の合唱 松竹蒲田 岡田時彦、八雲恵美子、斎藤達雄、坂本武、菅原秀雄、高峰秀子 白黒サイレント90分
1932年 春は御婦人から 松竹蒲田 城多二郎、斎藤達雄、井上雪子、泉博子、坂本武 白黒サイレント74分 現存せず
1932年 大人の見る繪本 生れてはみたけれど 松竹蒲田 斎藤達雄、吉川満子、菅原秀雄、突貫小僧 白黒サイレント91分
1932年 青春の夢いまいづこ 松竹蒲田 江川宇礼雄、斎藤達雄、田中絹代、大山健二、笠智衆 白黒サイレント91分
1932年 また逢ふ日まで 松竹蒲田 岡田嘉子、岡譲二、奈良真養、川崎弘子、飯田蝶子 白黒音響版 78分 現存せず
1933年 東京の女 松竹蒲田 岡田嘉子、江川宇礼雄、田中絹代、奈良真養 白黒サイレント47分
1933年 非常線の女 松竹蒲田 田中絹代、岡譲二、水久保澄子、三井秀男 白黒サイレント100分
1933年 出来ごころ 松竹蒲田 坂本武、大日方伝、伏見信子、突貫小僧、飯田蝶子 白黒サイレント100分
1934年 母を恋はずや 松竹蒲田 吉川満子、大日方伝、三井秀男、岩田祐吉、奈良真養、加藤清一 白黒サイレント93分
1934年 浮草物語 松竹蒲田 坂本武、八雲理恵子、坪内美子、飯田蝶子、三井秀男、突貫小僧 白黒音響版89分
1935年 箱入娘 松竹蒲田 飯田蝶子、田中絹代、坂本武、突貫小僧、竹内良一、吉川満子 白黒音響版67分 現存せず
1935年 東京の宿 松竹蒲田 坂本武、岡田嘉子、突貫小僧、末松孝行、小嶋和子、飯田蝶子 白黒音響版80分
1936年 大学よいとこ  松竹蒲田 近衛敏明、笠智衆、高杉早苗、小林十九二、大山健二 白黒音響版86分 現存せず
1936年 鏡獅子 国際文化振興会/松竹大船 (記録映画)六代目尾上菊五郎、松永和楓、柏伊三郎 白黒初のトーキー24分
1936年 一人息子 松竹大船 飯田蝶子、日守新一、坪内美子、笠智衆、吉川満子、葉山正雄 白黒トーキー87分
1937年 淑女は何を忘れたか 松竹大船 斎藤達雄、栗島すみ子、桑野通子、佐野周二 白黒75分
1941年 戸田家の兄妹 松竹大船 佐分利信、高峰三枝子、葛城文子、斎藤達雄、吉川満子、三宅邦子 白黒105分
1942年 父ありき 松竹大船 笠智衆、佐野周二、坂本武、水戸光子、津田晴彦、佐分利信、大塚正義 白黒94分
1947年 長屋紳士録 松竹大船 飯田蝶子、青木放屁、河村黎吉、笠智衆、吉川満子、坂本武、高松栄子 白黒71分
1948年 風の中の牝雞 松竹大船 田中絹代、佐野周二、村田知英子、笠智衆、坂本武、高松栄子、三井弘次 白黒84分
1949年 晩春 松竹大船 原節子、笠智衆、月丘夢路、宇佐美淳、杉村春子、三島雅夫、三宅邦子、坪内美子 白黒108分
1950年 宗方姉妹 新東宝 田中絹代、高峰秀子、上原謙、山村聰、堀雄二、高杉早苗、笠智衆、斎藤達雄 白黒112分
1951年 麦秋 松竹大船 原節子、笠智衆、淡島千景、菅井一郎、東山千栄子、三宅邦子、杉村春子、佐野周二 白黒125分
1952年 お茶漬の味 松竹大船 佐分利信、木暮実千代、鶴田浩二、津島恵子、淡島千景、笠智衆、三宅邦子 白黒116分
1953年 東京物語 松竹大船 笠智衆、東山千栄子、原節子、山村聰、杉村春子、三宅邦子、香川京子、東野英治郎、中村伸郎、十朱久雄、大坂志郎、桜むつ子、長岡輝子 白黒136分
1956年 早春 松竹大船 池部良、淡島千景、岸惠子、高橋貞二、中北千枝子、浦辺粂子、笠智衆、山村聰、三宅邦子、加東大介、三井弘次、田浦正二、杉村春子、宮口精二 白黒144分
1957年 東京暮色 松竹大船 原節子、有馬稲子、笠智衆、山田五十鈴、田浦正巳、高橋貞二、中村伸郎、杉村春子、宮口精二、須賀不二夫、信欣三、三好栄子 白黒140分
1958年 彼岸花 松竹大船 佐分利信、田中絹代、山本富士子、有馬稲子、久我美子、佐田啓二、高橋貞二、浪花千栄子、中村伸郎、桑野みゆき、笠智衆 カラー118分
1959年 お早よう 松竹大船 設楽幸嗣、島津雅彦、三宅邦子、笠智衆、佐田啓二、久我美子、杉村春子、高橋とよ、沢村貞子、長岡輝子、東野英治郎 カラー94分
1959年 浮草 大映 中村鴈治郎、京マチ子、若尾文子、川口浩、杉村春子、三井弘次、田中春男、潮万太郎 カラー119分
1960年 秋日和 松竹大船 原節子、司葉子、佐分利信、岡田茉莉子、佐田啓二、中村伸郎、北竜二、桑野みゆき、三宅邦子、沢村貞子、三上真一郎、高橋とよ、桜むつ子、笠智衆、岩下志麻 カラー128分
1961年 小早川家の秋 宝塚映画 中村鴈治郎、原節子、新珠三千代、小林桂樹、司葉子、森繁久彌、浪花千栄子、加東大介、宝田明、団令子、白川由美、山茶花究、藤木悠、杉村春子 カラー103分
1962年 秋刀魚の味 松竹大船 笠智衆、岩下志麻、岡田茉莉子、佐田啓二、東野英治郎、杉村春子、中村伸郎、北竜二、加東大介、吉田輝雄、三宅邦子、高橋とよ、岸田今日子 カラー113分

「●か行の日本映画の監督」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2507】 河野 寿一 「独眼竜政宗
「●や‐わ行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●「芸術選奨新人賞(監督)」受賞作」の インデックッスへ(黒木和雄) 「●佐藤 勝 音楽作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●原田芳雄 出演作品」の インデックッスへ(「祭りの準備」「冬物語」) 「●大滝 秀治 出演作品」の インデックッスへ(「純」)「●笠 智衆 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●伊藤 雄之助 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●仲代 達矢 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「●田中 邦衛 出演作品」の インデックッスへ(「肉弾」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(新宿昭和館)インデックッスへ(ギンレイホール)「●日本のTVドラマ」の インデックッスへ(「冬物語」)「●津川 雅彦 出演作品」の インデックッスへ(TVドラマ「冬物語」)

振り切ってきた過去へのノスタルジーに満ちた「祭りの準備」。大谷直子が鮮烈な「肉弾」。

祭りの準備.jpg 祭りの準備  タイトル.jpg  肉弾.jpg 肉弾 大谷直子3.jpg
祭りの準備 [DVD]」(監督:黒木和雄)          「肉弾 [DVD]」 (監督:岡本喜八)

黒木和雄.jpg中島丈博.jpg 「祭りの準備」('75年/ATG)は、昭和30年代の高知を舞台に、1人の青年がしがらみの多い土地の人間関係に圧迫されながらも巣立っていく姿を描いた青春映画で、主人公(江藤潤)が信用金庫に勤めながらシナリオライターになることを夢見ていることからも窺えるように、原作は中島丈博の自伝的小説であり、監督は'06年に亡くなった黒木和雄です。
祭りの準備 DVDカバー.jpg
黒木和雄(1930‐2006/享年75)/中島丈博

映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」.jpg 「青春映画」とは言え青春の真只中でこの作品を観ると、あまりにどろどろしていて結構キツいのではないかという気もしましたが、このどろどろ感が中島丈博の脚本の特色とも言えます。

 父親(ハナ肇)は女狂い、祖父(浜村純)はボケ老人、母親(馬渕晴子)は主人公の青年を溺愛し、彼は二十歳にしてそこから逃れられないでいて、心の恋人(竹下景子)も片思いの対象でしかなく、結局、男達の性欲の捌け口となっている狂った女(桂木梨江)と寝てしてしまうが、その女が妊娠したらしいことがわかる―。 映画チラシ 黒木和雄「祭りの準備」

祭りの準備00.jpg祭りの準備2.jpg 青年がシナリオを書くとセックス描写が頻出し、左翼かぶれの"心の恋人"に「労働者階級をもっときちんと描くべきで、どうしてセックスのことばかり書くの」となじられる始末。そのくせ、彼女はオルグの男性にフラれると、宿直中の青年に夜這いして来て、そこで小火(ボヤ)事件が起きてしまうという、青年同様に彼女自身、青春の混沌の中でちょっと取りとめが無い状態になっています。

祭りの準備図0.jpg こんな状況から脱したいという青年の気持ちがよく分かり、その旅立ちを駅のホームで列車に伴走しながら万歳して見送る、青年の隣家の泥棒一家「中島家」の次男で殺人の容疑をかけられ逃亡の身の男「中島利広」を演じているのが原田芳雄(1940-2011)で、冬物語2.gif役柄にしっくり嵌っていい味を出しています(この俳優を渋いなあと最初に思ったのは映画ではなくテレビで観た「冬物語」('72年~'73年/日本テレビ)というメロドラマだった。恋人役は浅丘ルリ子、ふられ役は大原麗子)。

「冬物語」('72年~'73年)浅丘ルリ子・原田芳雄

 創作の要素はあるとは言え、この「祭りの準備」という映画には、原作者(中島丈博)が過去に振り切ってきた諸々に対するノスタルジーが詰まっている感じがします(東京への"脱出"行を果たした江藤潤と、それが出来ないでいる原田芳雄という対比構造になっている)。
竹下景子 in 「祭りの準備」(1975)[下写真]
祭りの準備3.jpg 祭りの準備 竹下景子.jpg 祭りの準備 図1.jpg
竹下景子 (たけしたけいこ) 1953年9月15日生まれ.jpg 竹下景子(1953年生まれ、当時22歳)の映画デビュー2作目、主演級は初で、桂木梨江(1955年生まれ、当時20歳)も映画デビュー2作目。この作品は竹下景子のヌードシーンで話題になることがありますが、主人公の青年に夜這いした際の下着姿と引き続く火事の炎の向こうにチラッと見える全裸(半裸?)姿程度で(この頃の彼女は結構コロコロ体型、よく言えばグラマラスだった)、この後清純派で売り出し、"お嫁さんにしたい桂木梨江 祭りの準備.jpg女性No.1"などと言われたために以降全くスクリーン上では脱がなくなり(「天の花と実」('77年/テレビ朝日)ではヌードを拒否した)、そんな経緯もあって「祭りの準備」のこのシーンの付加価値が出たのかも? むしろ、この作品で大胆なヌードを見せたのは「中島家」の末娘で男達の性欲の捌け口となっている狂女を演じた桂木梨江の方で、彼女はこの演技で第18回ブルーリボン賞新人賞、第49回キネマ旬報ベスト・テン助演女優賞にノミネートされています。
桂木梨江/原田芳雄 in 「祭りの準備」(1975)
映画「純」 横山博人 江藤潤 ポスター.jpg純 江藤潤DVD.jpg 主演の江藤潤(1951年生まれ)も、映画初主演の割には良い演技をしていたように思います。その後も、「帰らざる日々」('78年/日活)、「純」('80年/東映セントラルフィルム)などの作品に出演していますが、主演の「純」は東映出身の横山博人監督の第一回作品で、'78年4月に完成したものの国内公開の目途の立たぬまま翌年度のカンヌ映画祭に出品され、新人監督の登竜門「批評家週間」オープニング上映作品に選出され、以後、ロンドン映画祭、ロサンゼルス映画祭に招待されるなど高い評価を得ため、'80年に一般公開となったという作品。

映画 「純」朝加真由美.jpg 長崎の軍艦島から漫画家を志望して上京し、遊園地の修理工場で働いている主人公の二十歳の松岡純(江藤潤)は、恋人がいながらその手さえ握らず、通勤電車の中で痴漢行為に耽ける―漫画家を志望で軍艦島から東京に出てきたというところが、脚本家志望で高知・四万十から都会へ行こうとする「祭りの準備」の主人公と似ていますが、ラストまでのプロセスが観ていて気が滅入るくらい暗くて(痴漢行為に耽っているわけだから明るいはずはないが)、脇を固めている俳優陣は非常にリアリティのある演技をしていたものの、イマイチ自分の肌には合わなかったなあ(リアリティがあり過ぎて?)。江藤潤はやはり「祭りの準備」の彼が良かったように思います(「純」はどうして海外でウケたのだろう。外国人には痴漢が珍しいのかなあ。そんなことはないと思うが、クロード・ガニオン監督の「Keiko」('79年/ATG)でも冒頭に痴漢シーンがあった)。

大谷直子 in 「肉弾」(1968)[下写真]
『肉弾』(監督 岡本喜八)2.bmp 女優のデビュー時乃至デビュー間もない頃のスクリーン・ヌードという点では、「高校生ブルース」('70年/大映)の関根(高橋)惠子(1955年生まれ、当時15歳)、「旅の重さ」('72年/松竹)の高橋洋子(1953年生まれ、当時19歳)、「十六歳の戦争」('73年制作/'76年公開)の秋吉久美子(1954年生まれ、当時19歳)、「恋は緑の風の中」('74年/東宝)の原田美枝子(1958年生まれ、当時15歳)、「青春の門(筑豊篇)」('74年/東宝)の大竹しのぶ(1957年生まれ、当時16歳)、「はつ恋」('75年/東宝)の仁科明子(亜季子)(1953年生まれ、当時22歳)などがありますが(これらの中では、関根惠子と原田美枝子の15歳が一番若くて、仁科明子の22歳が竹下景子と並んで一番遅いということになる)、個人的には、'05年に亡くなった岡本喜八監督の「肉弾」('68年/ATG)の大谷直子(1950年生まれ、当時17歳)が鮮烈でした。

nikudann vhs.jpg肉弾3.jpg肉弾 寺田農.jpg この「肉弾」という作品は、特攻隊員(寺田農)を主人公に据え(「肉弾」とは「肉体によって銃弾の様に敵陣に飛び込む攻撃」のこと)、戦争の悲劇というテーマを扱っていながら、コミカルで悲壮感を(一応は)表に出していないという変わった映画で、映画肉弾 大谷直子4.jpg自体は、太平洋に漂流するドラム岳の中で魚雷を抱えている(ある意味、既に死んでいる)主人公の回想という形で進行し、主人公が1日だけの外出許可日に古本屋に行くつもりが思わず女郎屋に駆け込んでしまい、そこにいたセーラー服姿の肥溜めに咲いた一輪の白百合のような少女と防空壕の中で結ばれるという、その少女の役が映画初出演の大谷直子でした(その後、NHKの朝の連ドラ「信子とおばちゃん」('69年)でTVデビュー)。

 彼女が全裸で土砂降りの雨の中を走るシーンは衝撃的で、モノクロ映画ゆえに却ってその美しさは印象に残りましたが、かの特攻隊員は、そこで初めて自らが守るべきものを見出し、空襲で彼女が犠牲になったことで復讐心から戦闘意欲に燃え、魚雷と共に太平洋に出るという―これ、岡本喜八ならではのアイロニーなのですが、笑えるようでやっぱり岡本喜八.jpg笑えないなあ。岡本監督はその後も自らと同年代の戦中派の心境を独特のシニカルな視点で描き続けますが、「独立愚連隊」('59年)とこの「肉弾」は、そのルーツ的な作品でしょう。「日本のいちばん長い日」('67年)のようなオールスター大作を撮った後に、私費を投じてこのような自主製作映画のような作品を撮っているというのも凄いことだと思います。

岡本喜八(1924- 2005/享年81) 下:「肉弾」大谷直子  寺田農/笠智衆
肉弾 大谷直子1.jpg 肉弾 大谷直子2.jpg 肉弾 笠智衆5.jpg 
 

祭りの準備es.jpg祭りの準備ド.jpg「祭りの準備」●制作年:1975年●監督:黒木和雄●製作:大塚和/三浦波夫●脚本:中島丈博●撮影:鈴木達夫●音楽:松村禎三●原作:中島丈博●時間:117分●出演:江藤潤/馬渕晴子/ハナ肇/浜村純/竹下景子/原田芳雄/杉本美樹/桂木梨江/石山雄大/三戸部スエ/絵沢萠子/原知佐子祭りの準備 桂木梨江.jpg祭りの準備 竹下景子.jpg/真山知子/阿藤海/森本レオ/斉藤真/芹明香/犬塚弘/湯沢勉/瀬畑佳代子/夏海千佳子/石津康彦/下馬二五七/福谷強/中原鐘子/柿谷吉美●公開:1975/11●配給:ATG●最初に観た場所:飯田橋・ギンレイホール(78-07-25)(評価:★★★★☆)●併映:「サード」(東陽一)
飯田橋ギンレイホールド.jpgギンレイホール.jpg飯田橋ギンレイホール内.jpgギンレイホール 1974年1月3日飯田橋にオープン 2022年11月27日閉館


  
      
 
  

「純」●制作年:1978年●監督・脚本:横山博人●製作:横山博人プロダクション●撮影:「純」dv.jpg高田昭●音楽:一柳慧(1933-2022)●時間:88分●出演:江藤潤/朝加真由美/中島ゆたか/榎本ちえ子/赤座美代子/山内恵美子/田島令子/橘麻紀/花柳幻舟/原良子/江波杏子/小松方正/深江章喜/大滝秀治/安倍徹/小坂一也/小鹿番/「純」p.jpg今井健二/森あき子/田中小実昌●公開:1980/12●配給:東映セントラルフィルム●最初に観た場所:新宿昭和館(83-05-05)(評価:★★☆)●併映:「聖獣学園」(鈴木則文新宿昭和館2.jpg新宿昭和館3.jpg/主演:多岐川裕美)
新宿昭和館 1951(昭和26)年K's cinema.jpg7月13日新宿3丁目にオープン(前身は1932年開館の洋画上映館「新宿昭和館」)。1956年、昭和館地下劇場オープン。2002(平成14)年4月30日 建物老朽化により閉館。跡地にSHOWAKAN-BLD.(昭和館ビル)が新築され、同ビル3階にミニシアター「K's cinema」(ケイズシネマ)がオープン(2004(平成16)年3月6日)。


肉弾 アートシアター.jpg肉弾 vhs2.jpg『肉弾』(監督 岡本喜八)1.bmp「肉弾」●制作年:1968年●監督・脚本:岡本喜八●撮影:村井博●音日劇文化.jpg楽:佐藤勝●時間:116分●出演:寺田農/大谷直子/天本英世/笠智衆/北林谷栄/三橋規子/今福正雄/春川ますみ/園田裕久/小沢昭一/菅井きん/三戸部スエ/頭師佳孝/雷門ケン坊/田中邦衛/中谷一郎/高橋悦史/伊藤雄之助/(ナレーター)仲代達矢●公開:1968/10●配給:ATG●最初に観た場所:有楽町・日劇文化(80-07-05)(評価:★★★★)●併映:「人間蒸発」(今村昌平)
田中邦衛(区隊長)/笠智衆(戦争で両腕が無い古本屋の老人)
映画 肉弾 tanaka.jpg 映画 肉弾 ryuu.jpg


冬物語.gif「冬物語」.jpg冬物語 ドラマタイトル.jpg「冬物語」●演出:石橋冠●制作:銭谷功/早川恒夫●脚本:清水邦夫/林秀彦●音楽:坂田「冬物語」2.bmp晃一(主題歌「冬物語」作詞:阿久悠/作曲・編曲:坂田晃一/唄:フォー・クローバース)●出演:浅丘ルリ子/原田芳雄/津川雅彦/扇千景/大原麗子/高松英郎/原田大二郎/宝生あや子/南美江/荒谷公之/鳥居恵子/渡辺篤史/下元勉/潮万太郎/上野山功一/柿沼真二/下川清子/野々あさみ/渥美マリ●放映:1972/11~1973/04(全20回)●放送局:日本テレビ

原田芳雄/浅丘ルリ子/原田大二郎/津川雅彦/大原麗子
冬物語0d87.jpg冬物語31645_21.jpg冬物語 大原.jpg

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平沢無罪説を先駆的に展開。GHQの関与については"隔靴掻痒の感"は否めないが。
小説帝銀事件.jpg 松本 清張 『小説 帝銀事件』.jpg 小説 帝銀事件.jpg  悪魔が来りて笛を吹く 1979 ちらし.jpg 犬神家の一族 角川映画 THE BEST [DVD].jpg
小説帝銀事件 (1959年)』/角川文庫/『小説帝銀事件 (角川文庫)』/「悪魔が来りて笛を吹く【DVD】」「犬神家の一族 角川映画 THE BEST [DVD]
昭和23年9月28日毎日新聞
帝銀事件02.jpg帝銀事件.jpg '59(昭和34)年に雑誌「文藝春秋」に発表された松本清張の「昭和史発掘シリーズ」に先立つ昭和の事件モノで、「昭和史発掘シリーズ」の中でも'48(昭和23)年という占領時代に起きたこの「帝銀事件」は取り上げられていますが、「小説」と頭に付くのは、捜査に疑念を抱いた新聞社の論説委員の視点からこれを描いているのと、事件の部分がセミドキュメンタリータッチで再現されているためでしょうか。

 12人が死亡した凶悪事件と平沢貞通画伯が犯人に祭り上げられていく過程もさることながら、個人的には本書によって初めて、関東軍細菌戦部隊(731部隊)の生き残り関係者の事件への関与が疑われること、彼らはGHQの保護下にあったことなどを知り、そっちの方の衝撃も大きかったです。

 731部隊がいかに残虐の限りを尽くしたか、また、その戦犯行為の当事者らが人体実験を含む研究データを渡す代わりに戦争犯罪に問われないと言う約束をGHQに取り付け免責されたという事実については、森村誠一氏の『悪魔の飽食―「関東軍細菌戦部隊」恐怖の全貌!長編ドキュメント』('81年/カッパノベルズ)があるし(この本は後に記述や写真の誤謬を多く指摘された)、太田昌克氏の『731 免責の系譜―細菌戦部隊と秘蔵のファイル』('99年/日本評論社)青木富貴子氏の『731-石井四郎と細菌戦部隊の闇を暴く』('05年/新潮社)では "免責問題"をより深く追及していますが、「小説帝銀事件」の発表は『悪魔の飽食』と比べても、それより20年以上早いことになります。

 いま読み直してみると、最初に挙がった何人かの容疑者の中に平沢の名前があり、一旦それが消えて軍関係者へ嫌疑が向けられるも、そちら方面の捜査が打ち切られて再び平沢の名が浮上したという経緯や、面通しの結果誰も平沢を犯人だとする人がいなかったこと、彼の病的な虚言癖などについては細かく書かれている一方で、GHQの関与については"隔靴掻痒の感"は否めず、このことは、平沢は無実の罪に問われたということが公然の事実のようになっている今と違い(歴代の法務大臣が誰も死刑執行のハンコを押さなかったわけだし)、「事件は解決済み」とする風潮がまだ根強かった当時としては、米軍から情報を得られない限りは、平沢を犯人とする根拠の脆弱さに的を絞って、そこから平沢無実説を導き出すことを主眼とするしかなかったためと思われます。

帝銀事件0.JPG帝銀事件01.jpg平沢貞通.bmp 平沢が疑われることになった原因の1つに、所持金の出処の曖昧さの問題がありましたが、「春画を描いたと自分の口から白状すれば、彼の画家的な生命は消滅するのである」とし、「肉体的な死刑よりも、芸術的生命の処刑を重しとした」と、その精神的内面まで踏み込んで"推理"している点も作家らしく、またこれも、タイトルに「小説」と付くことの所以の1つであると思います。    

事件発生直後の現場の様子/犯人の行動を再現させられる平沢(ともにWikipediaより) 平沢貞通(1892-1987/享年95)

仲谷昇(平沢貞通)/田中邦衛(平沢を犯人と決めつけてしまった古志田警部補)
帝銀事件 ドラマ 1.jpg帝銀事件 ドラマ 3.jpg帝銀事件 ドラマ 2.jpg 松本清張のこの作品は1980(昭和55)年に1度だけドラマ化されていて、ドラママタイトルは「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」、監督は森崎東、脚本は新藤兼人、主演は仲谷昇、共演は田中邦衛・橋本功などです。テレビ帝銀事件・大量殺人獄中32年の死刑囚.jpg朝日の「土曜ワイド劇場」枠で放映されました。平沢(仲谷昇)を犯人と決めつけてしまった古志田警部補(田中邦衛)に焦点を当て、平沢に対する拷問に近い取り調べなどが描かれており、第17回ギャラクシー賞(月間賞)を受賞するなどしています。結局、「GHQのことなど何も知らなかった」と後に嘯く警部補も、利用された人間だったということでしょう。誰による犯行かについては、冒頭に犯人が犯「帝銀事件:タイトル2.jpg行に及ぶ場面がかなりの間尺であり、その間常に犯人の背中や手元・足元だけを映し顔を殆ど映していませんが、犯人が犯行後に現場付近で待機していたと思われる軍用ジープで現場を立ち去る場面などがあり、最初からGHQ関係者の犯行であることを強く匂わせる作りとなっています。

「帝銀事件 大量殺人 獄中三十二年の死刑囚」●制作年:1980年●監督:森崎東(監修:野村芳太郎)●脚本:新藤兼人●撮影:小杉正雄●音楽:佐藤勝●原作:松本清張「小説帝銀事件」「日本の黒い霧」●出演:仲谷昇/田中邦衛/橋本功/中谷一郎/小松方正/戸浦六宏/木村理恵/大塚道子/浜田寅彦/稲葉義男/暮林修/ジェリー・ククルスキー●放送局:テレビ朝日●放送日:1980/01/26(評価:★★★★)
 
 
 因みに、横溝正史の『悪魔が来りて笛を吹く』(雑誌「宝石」1951年11月号 - 1953年11月号に発表)は、この帝銀事件をモチーフに書かれたと言われています(作中では「天銀堂事件」となっており、ストーリーは事件の後日譚となっている)。悪魔が来りて笛を吹く 1979.jpg原作は読んでいませんが、西田敏行が金田一耕助を演じた映画「悪魔が来りて笛を吹く」('79年/東映)を観ました(角川春樹製作、監督は「太陽にほえろ」「俺たちの旅」などのTVシリーズを手掛けた斎藤光正)。青酸カリも事件に絡んで出てきますが、メインのモチーフは近親相姦と言えるでしょうか。謎解きの部分で複雑な家系図が出てきますが、映画ではそれが分かりにくいのが難でした(「読んでから観る」タイプの映画だったかも)。歴悪魔が来りて笛を吹く 1979.jpg代の横溝正史原作の映画化作品の中ではまあまあの評価のようですが、そのわりには西田敏行が金田一耕助を演じたのはこの1回きりでした。まあ、映画で金田一耕助を1度演じただけという俳優は、西田敏行以前には池部良、高倉健、中尾彬、渥美清などがいて、西田敏行以降も古谷一行、鹿賀丈史、豊川悦司などがいるわけですが...(石坂浩二と並んで金田一耕助役のイメージが強い古谷一行は映画では1度きりだが、MBSテレビの「横溝正史シリーズ」('77-'78年)、TBSの「名探偵・金田一耕助シリーズ」('83-'05年)でそれぞれ金田一耕助役を演じている)。

犬神家の一族 (1976年)1.jpg犬神家の一族 (1976年)2.jpg 金田一耕助ものの映画化作品でやはりまず最初に思い浮かぶのは、東宝の市川崑監督・石坂浩二主演の金田一耕助シリーズ(「犬神家の一族」('76年)、「悪魔の手毬唄」('77年)、「獄門島」('77年)、「女王蜂」('78年)、「病院坂の首縊りの家」('79年))ではないでしょうか。特に、角川映画第1作として作られた「犬神家の一族」('76年)(配給会社は東宝、共演は島田陽子坂口良子など)は、かつて片岡千恵蔵の金田一耕助シリーズ(「獄門島」('49年)など)で千恵蔵がスーツ姿だったりしたのが、金田一耕助を初めて原作通りの着物姿で登場させた映画であり(結局、西田敏行版「悪魔が来りて笛を吹く」などもその路線をなぞっていることになる)、原作の複雑な人物関係も分かりやすく表されていて、細部では原作と改変されている部分も少なからずあるものの、エンタテインメントとしてよく出来ていたように思います。30年後の2006年に同じ監督・主演コンビでリメイクされ(原作からの改変部分まで旧作を踏襲している)、石坂浩二(金田一)のほかに、大滝秀治(神官)、加藤武(署長)が旧作と同じ役で出演していますが、00年代としては犬神家の一族」(2006ード.jpg犬神家の一族 (2006年 松嶋.jpg犬神家の一族 (2006年 富司.jpg豪華キャストであるものの、それでも旧作と比べると役者の豪華さ・熟達度で及ばないように思いました。犬神家の三姉妹は旧作の高峰三枝子、三條美紀、草笛光子に対して、新作が富司純子、松坂慶子、 萬田久子でそれなりに錚々たるものでしたが、何となく違うなあと思いました。富司純子も大女優ですが、高峰三枝子が長年役柄を通して培ってきた"毒気"のようなものが無いように思われました。ヒロイン役の島田陽子と松嶋菜々子を比べても、松嶋菜々子って何か運命的なものを負っている将軍 SHŌGUN0.jpgという印象が島田陽子に比べ弱いなあと(ただ、島田陽子も米テレビドラマ「将軍 SHŌGUN」('80年)に出てダメになった。ジェームズ・クラベルのベストセラー小説を原作に、アメリカで12時間ドラマとしてTV放映したものを劇場用にまとめたものを観たが、日本人の描き方がかなりヘンだ。どうしてこんな作品に三船敏郎はじめ日本の俳優は臆面もなく出るのか。ただし、島田陽子はこの作品で日本人女性初のゴールデングローブ賞を受賞している)。
島田陽子 in「将軍 SHŌGUN」

 「小説 帝銀事件」から始まって、映画「悪魔が来りて笛を吹く」を経て、映画「犬神家の一族」の新旧比較になってしまいました。

「犬神家の一族」(1976)
「犬神家の一族」1976.jpg
「犬神家の一族」(1999)
「犬神家の一族」1999.jpg
「犬神家の一族」新旧キャスト.gif
 
 
 

悪魔が来りて笛を吹く 1979 ポスター.jpg悪魔が来りて笛を吹く 1979 vhs.jpg「悪魔が来りて笛を吹く」●制作年:1979年●監督:斎藤光正●製作:角川春樹●脚本:野上龍雄 ●撮影:伊佐山巌●音楽:山本邦山/今井裕●原作:横溝正史●時間:136分●出演:西田敏行/夏木勲(夏八木勲)/仲谷昇/鰐淵晴子/斎藤とも子/村松英子/石浜朗/小沢栄太郎/池波志乃/原知佐子/山本麟一/宮内淳/二木てるみ0「悪魔が来りて笛を吹く」.jpg/梅宮辰夫/浜木綿子/北林早苗/中村玉緒/加藤嘉/京悪魔が来りて笛を吹く jidojpeg.jpeg慈道...加藤嘉.jpg唄子/村田知栄子/藤巻潤/三谷昇/熱田一久/住吉道博/村田知栄子/藤巻潤/三谷昇/金子信雄/中村雅俊/秋野太作/横溝正史/角川春樹●公開:1979/01●配給:東映(評価:★★☆)

西田敏行(32歳)/斉藤とも子(18歳)/鰐淵晴子(34歳)/原知佐子(43歳)/小沢栄太郎(70歳)
悪魔が来りて笛を吹く...西田敏行(32).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...斉藤とも子(18).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...鰐淵晴子(34).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...原知佐子(43).jpg 悪魔が来りて笛を吹く...小沢栄太郎.jpg
「「悪魔が来りて笛を吹く」夏木.2jpg.jpg夏木勲(夏八木勲)(39歳)等々力警部

梅宮辰夫(40歳)「俺はな、金田一耕助というのは明智小五郎より名探偵だと思ってるんだ」(風間俊六)
「悪魔が来りて笛を吹く」梅宮1.jpg

池袋東映-2.jpg●最初に観た場所:池袋東映 (79-01-13)


池袋東映 池袋東口2分60階通り(地下に池袋名画座) 1985年頃閉館 

0池袋東映.jpg 1982年8月 舛田利雄監督・丹波哲郎主演「大日本帝国」公開時
         
犬神家の一族 (1976年)0.jpg「犬神家の一族」●制作年:1976年●監督:市川崑●製作:市川犬神家の一族 poster.jpg坂浩犬神家の一族 女優.jpg喜一●脚本:市川崑/日高真也/長田紀生●撮影:長谷川清●音楽:大野雄二●原作:横溝正史●時間:146分●出演:石坂浩二/島田陽子/あおい輝彦/川口恒/川口晶/坂口良子/地井武男/三条美紀/原泉/草笛光犬神家の一族 (1976年)00.jpg子/大滝秀治/岸田今日子/加藤武/小林昭二/三谷昇/三木のり平/高峰三枝子/小沢栄太郎/三國連太郎●公開:1976/11●配給:東宝(評価:★★★☆)

犬神家の一族(2006) [DVD]」「犬神家の一族」(2006年)市川崑監督とキャストら(2006.10 東京国際映画祭)
犬神家の一族 (2006年 DVD.jpg犬神家の一族 2006.jpg「犬神家の一族」●制作年:2006年●監督:市川崑●製作:市川喜一●脚本:市川崑/日高真也/長田紀生●撮影:五十畑幸勇●音楽:谷川賢作/大野雄二(テーマ曲)●原作:横溝正史●時間:134分●出演:石坂浩二/松嶋菜々子/尾上菊之助/富司純子/松坂慶子/萬田久子/池内万作/奥菜恵/岸部一徳/深田恭子/三條美紀/草笛光子/大滝秀治/加藤武/中村敦夫/仲代達矢●公開:200「犬神家の一族」matuzaka.jpg犬神家の一族 (2006年  大滝秀治.jpg犬神家の一族 (2006年 仲代.jpg6/12●配給:東宝(評価:★★★)
松坂慶子(次女・犬神竹子)/大滝秀治(神官・大山泰輔)/仲代達矢(犬神佐兵衛)

 
 
 
 

将軍 SHŌGUN p.jpg将軍 SHŌGUN1.jpg将軍 SHŌGUN2.jpg「将軍 SHŌGUN」●原題:SHŌGUN●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督:ジェリー・ロンドン●製作プロデューサーベル/ケリー・フェルザーン●脚本:エリック・バーコビッチ●撮影:アンドリュー・ラズロ●音楽:モーリス・ジャール●原作:ジェームズ・クラベル●時間:121分(TV版全5話・547分)●出演:リチャード・チェンバレ将軍 shogun 島田.jpg/ベン・チャップマン/ジェームズ・クラ将軍 SHŌGUN31.jpgン/三船敏郎/島田陽子/フランキー堺/目黒祐樹/金子信雄/ダミアン・トーマス/ジョン・リス=デイビス/安部徹/高松英郎/宮口精二/夏木陽介/岡田真澄/宅麻伸/山本麟一/(ナレーション)オーソン・ウェルズ●日本公開:1980/11●配給:東宝●最初に観た場所:飯田橋・佳作座 (81-01-24)(評価:★☆)●併映:「二百三高地」(舛田利雄)
将軍 SHŌGUN vhs.jpg


【1961年文庫化・2009年新装版[角川文庫]/1980年再文庫化[講談社文庫]】

 
《読書MEMO》
神保町シアター「没後40年 横溝正史 銀幕の金田一耕助」特集(2021年6月5日~25日)ライアンアップ
銀幕の金田一耕助.jpg1.『三つ首塔』 昭和31年 白黒 監督:小林恒夫、小沢茂弘 出演:片岡千恵蔵、高千穂ひづる、三条雅也、中原ひとみ、南原伸二
2.『悪魔の手毬唄』 昭和36年 白黒 監督:渡辺邦男 出演:高倉健、北原しげみ、小野透、永田靖、大村文武
3.『本陣殺人事件』 昭和50年 カラー 監督:高林陽一 出演:中尾彬、田村高広、村松英子、東野孝彦、常田富士男
4.『犬神家の一族』 昭和51年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、高峰三枝子、三条美紀、草笛光子、あおい輝彦
5.『悪魔の手毬唄』 昭和52年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、岸恵子、若山富三郎、加藤武、草笛光子
6.『獄門島』 昭和52年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、司葉子、大原麗子、草笛光子、太地喜和子
7.『八つ墓村』 昭和52年 カラー 監督:野村芳太郎 出演:渥美清、萩原健一、山崎努、小川真由美、山本陽子
8.『女王蜂』 昭和53年 カラー 監督:市川崑 出演:石坂浩二、岸恵子、司葉子、高峰三枝子、仲代達矢
9.『悪魔が来りて笛を吹く』 昭和54年 カラー 監督:斎藤光正 出演:西田敏行、夏八木勲、鰐淵晴子、斉藤とも子、仲谷昇

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文化大革命以降、意外な日本映画が中国で大反響。その背景を分析。

中国10億人の日本映画熱愛史2.jpg君よ憤怒の河を渉れ 高倉・原田 2.jpg 君よ憤怒の河を渉れ (1976年3.jpg
君よ憤怒の河を渉れ [DVD]」('76年)高倉健・原田芳雄/中野良子・大滝秀治
中国10億人の日本映画熱愛史-高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで』['06年] 

追捕.jpg君よ憤怒の河を渉れ.jpg 文化大革命以降の中国国内における日本映画の歴史を解説したもので、何よりも、文革直後に中国で公開された数少ない映画が、中国の一般の人々や映画人に与えた影響が絶大なものであったことを本書で知りました。その代表というのが、今は日本では殆ど顧みられることのない作品「君よ憤怒の河を渉れ」('76年/製作:大映、配給:松竹)で、西村寿行の原作を佐藤純彌が監督したこの作品は、'78年に中国で「追捕」というタイトルで公開されるや大反響を呼び、中国人の約80%以上が観たということで(スゴイ!)、主演の高倉健、中野良子は今でも中国で人気があるそうです。

サンダカン八番娼館 望郷.jpg これに続いたのが、山崎朋子の原作を熊井啓が監督した「サンダカン八番娼館・望郷」('74年製作)で、主演の栗原小巻の中国での人気は今でも高いそうですが、その後も「愛と死」('71年/中村登監督)、「人間の証明」('77年/佐藤純彌監督)、「砂の器」('74年/野村芳太郎監督)などが中国に輸入され、高い人気を博したとのこと(「愛と死」を80年代に日本人が観れば、既にノスタルジーの対象であったものが、当時の中国人にはオシャレに見えた。この点が、今の日本の"韓流ブーム"とは異なるところ)。

 本書では、中国に輸入された日本映画とその影響を、「第5世代」と呼ばれる中国の新映画人の台頭など国産映画の動向と併せて解説し、何故それら日本映画が中国の人々に受け入れられたのかを分析していて、先に挙げたものは、中国に輸入された日本映画の初期のものに過ぎないのですが、とりわけ反響が絶大であっただけに、その「ウケた理由」には自ずと興味が持たれます(こうしてみると、芸術性はあまり関係ないなあ)。

山口百恵 赤い疑惑.jpg 中国における高倉健の人気は、ハリウッドスターを含めた海外映画俳優の中で今でもトップという圧倒的なものだそうですが、女優で最大人気は、'84年から中国で放映されたTVドラマ「赤い疑惑」シリーズの山口百恵だそうで、殆どカリスマのような存在。

コン・リー.jpg 大物女優の鞏俐(コン・リー)なども、中国が本当にオリジナルな芸術性を持った作品を作り始めた第五世代の代表的監督・張芸謀(チャン・イーモウ)の初期作品「紅いコーリャン」('87年)に出演した頃は、中国国内で「中国の山口百恵」と言われているという話を聞いた覚えがあります(本書によれば、その後すぐに彼女はそのイメージから脱却したそうだが、スピルバーグがプロデュースした「SAYURI」('05年)に、チャン・ツィイーと共に日本人女性役で出ているというのが興味深い。本来は日本人がやる役だけれど、ハリウッド進出は中国女優の方が既に先行している)。

 著者は映画芸術論を専門とする中国人の学者で('94年以降、日本在住)、本書は初めから日本語で書かれたもの。知らないことだらけで興味深く読めたけれど、1行当たりの"漢字含有率"がどうしても高くなってしまうのは、本の内容上、仕方がないことなのか。

君よ憤怒の河を渉れ poster.jpg君よ憤怒の河を渉れ 高倉・原田.jpg 冒頭で掲げた「君よ憤怒の河を渉れ」は(原作は「ふんぬ」だが映画タイトルには「ふんど」のルビがある。因みに監督の佐藤純彌は東大文学部卒)、高倉健の東映退社後の第一作目(当時45歳)で、高倉健が演じるのは、政界黒幕事件を追ううちに無実の罪を着せられ警察に追われる立場になる東京地検検事・杜丘冬人(上君よ憤怒の河を渉れ 池部s.jpg司の伊藤検事正を池部良が演じている)。原田芳雄が演じる彼を追う警視庁の矢村警部との間で、次第に友情のようなものが芽生えてくるのがポイントで、最後は2人で黒幕を追い詰め、銃弾を撃ち込むという任侠映画っぽい結末でした(検事と警官で悪を裁いてしまうという無茶苦茶ぶりだが、その分カタルシス効果はあったか)。健さんは逃亡過程においては、馬を駆ったりセスナ機を操縦したりと007並みの活躍で、その間、中野良子や倍賞美津子に助けられるという盛り沢山な内容です。

Kimi yo fundo no kawa wo watare (1976)
Kimi yo fundo no kawa wo watare (1976) .jpg君よ憤怒の河を渡れ  .jpg そこそこ面白いのですが、B級と言えばB級で、なぜこの映画が中国で受けたのか不思議というのはあります。中国人の約80%以上が観たというのが大袈裟だとして、たとえそれが30%であったとしても、最も多くの人が観た日本映画ということになるのではないでしょうか。張藝謀(チャン・イーモウ)監督のように、この映画を観て高倉健に恋い焦がれ、その想いがコラボ的に高倉健が主演することになった「単騎、千里を走る。」('05年)に結実したということもあります。やっぱり、中国で文革後に実質初めて公開された日本映画という、そのタイミングが大きかったのでしょう。今観ると、意外と2時間半の長尺を飽きさせずに見せ、また70年代テイスト満載の映画でもあり、その部分を加味して星半個オマケしておきます。
君よ憤怒の河を渉れ 大和田.jpg 君よ憤怒の河を渉れ nakano.jpg
大和田伸也/高倉健/原田芳雄                 高倉健/中野良子
君よ憤怒の河を渉れsp.jpg「君よ憤怒の河を渉れ」1.jpg「君よ憤怒の河を渉れ」●制作年:1976年●監督:佐藤純彌●製作:永田雅一●脚本:田坂啓/佐藤純彌●撮影:小林節雄●音楽:青山八郎●原作:西村寿行「君よ憤怒の河を渉れ」●時間:151分●出君よ憤怒の河を渉れ-s.jpg君よ憤怒の河を渉れ 倍賞.jpg演:高倉健/原田芳雄/池部良/大滝秀治/中野良子/倍賞美津子/岡田英次/西村晃/田中邦衛/伊佐山ひ君よ憤怒の河を渉れ サントラ.jpgろ子/内藤武敏君よ憤怒の河を渉れ s.jpg君よ憤怒の河を渉れ 大滝秀治s.jpg/大和田伸也/下川辰平/夏木章/石山雄大/松山新一/木島進介/久富惟晴/神田隆/吉田義夫/木島一郎/浜田晃/岩崎信忠/姿鉄太郎/沢美鶴/田畑善彦/青木卓司/田村貫/里木佐甫良/阿藤岡田英次 君よ憤怒の河を渉れ.jpg海(阿藤快)/松山新一/小島ナナ/中田勉、/飛田喜佐夫/細井雅夫/千田隼生/宮本高志/本田悠美子●公開:1976/02●配給:松竹 (評価:★★★☆)      
岡田英次(主人公・杜丘を自殺させようとする医師・堂塔)/西村晃(政界の黒幕・長岡了介)
君よ憤怒の河を渉れ 西村晃.jpeg

君よ憤怒の河を渉れ 池部3.jpg池部良(杜丘の上司・伊藤検事正)/原田芳雄/高倉健

田中邦衛 君よ憤怒の河を渉れ.jpg

田中邦衛(横路敬二・杜丘を窃盗犯と名指した寺田俊明と名乗る男。最後は精神病院での人体実験的投薬により廃人となる)

   
  
●世界歴代観客動員数・2021年3月8日現在(Wikipedia[要出典])
タイトル 公開年 チケット販売数(推定) 製作国
君よ憤怒の河を渉れ 1976 800,000,000 日本
白蛇伝 1980 700,000,000 中国
喜盈門(中国語版) 1981 650,000,000 中国
神秘的大佛 1980 403,210,000 中国
風と共に去りぬ 1939 338,400,000 アメリカ
スター・ウォーズ 1977 338,400,000 アメリカ
キャラバン(英語版) 1971 319,000,000 インド
少林寺 1982 304,920,000 香港・中国
タイタニック 1997 301,300,000 アメリカ
保密局的鎗聲 1979 300,000,000 中国
サウンド・オブ・ミュージック 1965 283,300,000 アメリカ
アベンジャーズ/エンドゲーム 2019 278,301,590 アメリカ
E.T. 1982 276,700,000 アメリカ
十戒 1956 262,000,000 アメリカ
炎(ヒンディー語版) 1975 250,021,329 インド
ドクトル・ジバゴ 1965 248,200,000 アメリカ・イタリア
ジョーズ 1975 242,800,000 アメリカ
アバター 2009 238,600,000 アメリカ
放浪者(英語版) 1951 217,100,000 インド
白雪姫 1937 214,900,000 アメリカ
エクソシスト 1973 214,900,000 アメリカ
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 2018 210,856,433 アメリカ
101匹わんちゃん 1961 199,800,000 アメリカ
スター・ウォーズ/フォースの覚醒 2015 196,584,093 アメリカ
ジュラシックパーク 1993 165,447,929 アメリカ
ベン・ハー 1959 161,877,059 アメリカ
戦狼 ウルフ・オブ・ウォー 2017 159,322,273 中国
ライオン・キング 2019 159,166,303 アメリカ
アベンジャーズ 2012 157,614,553 アメリカ
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 1999 157,000,804 アメリカ
ジュラシック・ワールド 2015 152,003,952 アメリカ
ハリー・ポッターと賢者の石 2001 148,973,885 イギリス・アメリカ
ライオン・キング 1994 144,602,914 アメリカ
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 2003 142,573,659 ニュージーランド・アメリカ
赤いカリーナ(ロシア語版) 1974 140,000,000 ソビエト
廬山恋(中国語版) 1980 140,000,000 中国
アナと雪の女王 2013 139,738,456 アメリカ
ジャングル・ブック 1967 137,915,958 アメリカ
Disco Dancer (英語版記事) 1982 135,000,000 インド
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト 2006 134,528,334 アメリカ
ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 2002 130,420,246 ニュージーランド・アメリカ
スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 1980 129,984,978 アメリカ
ゴッドファーザー 1972 128,176,173 アメリカ
ブラックパンサー 2018 126,325,768 アメリカ
スター・ウォーズ /ジェダイの復讐 1983 126,255,825 アメリカ
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け 2019 126,062,216 アメリカ
スパイダーマン 2002 125,026,496 アメリカ
ファインディング・ニモ 2003 124,728,882 アメリカ
美女と野獣 2017 123,766,498 アメリカ
ジャングル・ブック 2016 123,663,450 アメリカ
スティング 1973 123,048,854 アメリカ
シュレック2 2004 123,023,527 アメリカ
007/サンダーボール作戦 1965 122,235,389 イギリス・アメリカ
ダークナイト ライジング 2012 121,771,548 イギリス・アメリカ
インデペンデンス・デイ 1996 120,752,312 アメリカ
スーパーマン 1978 117,872,453 アメリカ
グリース 1978 117,075,584 アメリカ
クレオパトラ 1963 116,470,333 アメリカ
ボビー 1973 116,400,000 インド
アナと雪の女王2 2019 115,994,260 アメリカ
ダークナイト 2008 115,688,414 イギリス・アメリカ
インクレディブル・ファミリー 2018 113,261,772 アメリカ
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 2016 111,452,976 アメリカ
アラジン 2019 106,787,769 アメリカ
メリー・ポピンズ 1964 105,507,268 アメリカ
バーフバリ 王の凱旋 2017 105,003,001 インド
スパイダーマン2 2004 104,531,972 アメリカ
流転の地球 2019 104,027,044 中国
シックス・センス 1999 103,747,446 アメリカ
レイダース/失われたアーク《聖櫃》 1981 103,498,886 アメリカ
ランボー 1982 101,187,271 アメリカ
荒野の七人 1960 100,923,583 アメリカ
フォレスト・ガンプ/一期一会 1994 100,522,518 アメリカ


《読書MEMO》
2014年11月の高倉健逝去を悼み、中国各所でこの作品の上映会が催された。
君よ憤怒の河を渉れ415.jpg

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「雨あがる」の主人公と似ている「日日平安」(「椿三十郎」の原作)の主人公。

雨あがる 山本周五郎短篇傑作選.jpg 日日平安.jpg    椿三十.bmp 「椿三十郎」1962.jpg
雨あがる―山本周五郎短篇傑作選』 〔'99年〕/『日日平安』 新潮文庫/「椿三十郎 [DVD]

 『雨あがる―山本周五郎短篇傑作選』('99年/角川書店)は、山本周五郎(1903‐1967)の時代小説のうち、「日日平安」「つゆのひぬま」「なんの花か薫る」「雨あがる」の4編を所収し、これらは何れも黒澤明(1910-1998)監督が映画化した、或いは映画化しようとして脚本化していたものにあたります。

椿三十郎 三船 仲代.jpg椿三十郎パンフ.jpg 「日日平安」は、映画「椿三十郎」('62年/黒澤プロ=東宝)の原作('54(昭和29)年7月「サンデー毎日涼風特別号」発表)で、城代家老を陥れようとする次席家老ら奸臣たちに対し、城代の危難を救うべく起ち上がった若い侍たちを素浪人が助太刀するというストーリーは映画と同じ。但し、原作の助太刀浪人・菅田平野は、映画の椿三十郎のような神がかり的剣豪ではなく(映画の中の三船敏郎と仲代達矢の"噴血"決闘シーンは有名だが、原7 椿三十郎.jpg作にこうした決闘場面は無い)、どちらかと言うと、切羽詰ると知恵を絞って苦境を乗り切るタイプで、未熟な若侍たちをリードしながらも、結構自分自身も窮地においては焦りまくっていたりします。

「椿三十郎」 (黒澤プロ=東宝)
「椿三十郎」.jpg『椿三十郎』(1962).jpg 城代のグループを手助けすることになったついでに、あわよくば仕官が叶えばと思っているくせに、城代の救出が成ると自ら姿を消すという美意識の持ち主で、それでも一方で、誰か追っかけて来て呼び止めてくれないかなあなんて考えている、こうした等身大の人物像がユーモラスに描かれていて、読後感もいいです。
小林佳樹 椿三十郎.jpg 小林桂樹
Tsubaki Sanjûrô(1962)
椿三十郎ポスター.jpg椿三十郎 mihune.jpg 黒澤明は最初は原作に忠実に沿って、やや脆弱な人物像の主人公として脚本を書いたのですが、映画会社に採用されず、その後映画「用心棒」('61年)が大ヒットし椿三十郎 shimura.jpgたためその続編に近いものを要請されて、一度はオクラになっていた脚本を、「用心棒」で三船が演じた桑畑三十郎のイメージに合わせて「剣豪」時代劇風に脚色し直したそうで、ついでに主人公の名前まで「菅田平野」→「椿三十郎」と、前作に似せたものに変えたわけです(映画の中では、主人公が自分でテキトーに付けた呼び名とされている)。

 原作に大幅に手を加えて原作をダメにしてしまう監督や脚本家は多くいますが、黒澤明の場合は第一級のエンタテインメントに仕上げてみせるから立派としか言いようがなく(この作品は昭和47年のお正月映画だった)、「原作を捻じ曲げて云々...」といった類のケチをつける隙がありません。

雨あがる.jpg 黒澤明の没後に小泉堯史監督により映画化された「雨あがる」('99年/東宝)の原作「雨あがる」('51(昭和26)年7月「サンデー毎日涼風特別号」発表)の主人公・三沢伊兵衛(みさわいへい)も浪人ですが、こちらは柔術などもこなすホンモノの剣豪で、ただし、腕を生かして仕官したいのはやまやまだが、人を押しのけてまで仕官するぐらいなら妻のおたよと仲良く暮らせればそれでいいという人物。人助けの際に見せた自分の腕前が見込まれて士官が叶いそうになるが...。

雨あがる 特別版 [DVD]

雨あがる 00.jpg 映画化作品の方は、28年間にわたって黒澤の助手を務めたという経歴を持つ小泉堯史監督の監督デビュー作で、スタッフ・キャストを含め「黒澤組」が結集して作った作品でもあり、冒頭に「この映画を黒澤明監督に捧げる」とあります。

雨あがる01.jpg 元が中編でそれを引き延ばしているだけに、良く言えばじっくり撮っていると言えますが、ややスローな印象も。伊兵衛を演じた寺尾聡は悪くなかったけれど、脇役陣(エキストラ級の端役陣)のセリフが「学芸会」調だったりして、黒澤明監督ならこんな演技にはOKを出さないだろうと思われる場面がいくつかありました。
  
i雨あがる.jpg 日本アカデミー賞において最優秀作品賞、最優秀脚本賞(故・黒澤明)、最優秀主演男優賞(寺尾聡)、最優秀助演女優賞(原田美枝子)、最優秀音楽賞(佐藤勝)、最優秀撮影賞(上田正治)、最優秀照明賞(佐野武治)、最優秀美術賞(村木与四郎)の8部門の最優秀賞を獲得。但し、個人的には、セリフの一部が現代語っぽくなっている部分もあり、それが少し気になりました。これは黒澤作品でもみられますが(そもそも、この作品の脚本は黒澤自身)、黒澤監督作品の場合、骨太の演出でカバーして不自然さを感じさせないところが、この映画では、先のエキストラ級の端役陣の「学芸会」調のセリフも含め、そうした勢いが感じられませんでした。そのため、そうした不自然さが目立った印象を受けたように個人的には感じました。

44『道場破り』.jpg 因みに、この「雨あがる」は、60年代に内川清一郎監督により「道場破り」('64年/松竹)として映画化されており、脚本は「椿三十郎」と後の「雨あがる」の両作品にも関与している小国英雄。三沢伊兵衛役はこの作品が映画初主演だった長門勇。主人公の三沢伊兵衛は藩主の側室になるよう無理強いされていた家老の息女・妙(たえ)(岩下志麻)を連れて逐電し、追っ手に狙われながらも関所を越えられず宿場に潜み、剣の腕前を利用して、悪い心得と知りながらも道場破りを行い、関所越えにつかう賄賂のためにまとまった金子(きんす)をつくろうとする―という話に改変されていて、原作から大幅改変と言っていいかと思いますが、三沢伊兵衛という人間の精神性といったものは活かされていたように思います。
内川 清一郎 「道場破り」 (1964/01 松竹) ★★★★

 映画の「椿三十郎」と「雨あがる」の主人公は、剣豪という意味では同じであるものの人物造型はかなり違っている感じがしましたが、それぞれの原作においては、片や脆弱、片や剣豪、ただし、ついつい人助けをする人の良さや、自分の腕前や手柄に自分自身何となく気恥ずかしさのようなものを持っている点で、かなり通じる部分があるキャラクターだと言えるのではないでしょうか。また、こうした人物像に対する愛着が、山本周五郎と黒澤明の共通項としてあるような気がします。

三船敏郎、土屋嘉男、加山雄三、田中邦衛  
椿三十郎4b0.jpg仲代達矢 椿三十郎.jpg「椿三十郎」●制作年:1962年●製作:東宝・黒澤プロダクション●監督:黒澤明●脚本:黒澤明/菊島隆三/小国英雄●撮>影:小泉福造/斎藤孝雄●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「日日平安」●時間:96分●出演:三船敏郎/仲代達矢/司葉子/加山雄三/小林桂樹/団令子/志村喬/藤原釜足/入江たか子/清水将夫/伊藤雄之助/久伊藤雄之助 椿三十郎.jpg仲代達矢・三船敏郎 椿三十郎o.jpg三船三十郎と仲代.jpg明/太刀川寛/土屋嘉男/田中邦衛/江原達怡/平田昭彦/小川虎之助/堺左千夫/松井鍵三/樋口年子/波里達彦/佐田豊/清水元/大友伸/広瀬正一/大橋史典●劇場公開:1962/01●配給:東宝(評価★★★★☆)

三船敏郎/仲代達矢

「椿三十郎」若侍.jpg
     
雨あがる-Press01.JPG雨あがるes.jpg「雨あがる」●制作年:2000年●製作:黒澤久雄/原正人●監督:小泉堯史●脚本:黒澤明/菊島隆三/小国英雄●撮影:上田正治●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「雨あがる」●時間:96分●出演:寺尾聰/宮崎美子/三船史郎/吉岡秀隆/仲代達矢/原雨あがる 辻月丹 仲代達矢1.jpg田美枝子/井川比佐志/檀ふみ/大寶智子/松村達雄/奥村公延/頭師孝雄/山口馬木也/森塚敏/犬山半太夫/鈴木美恵/児玉謙次/加藤隆之/森山祐子/下川辰平●劇場公開:2000/01●配給:東宝(評価★★★)
仲代達矢(剣豪・辻月丹)
「雨あがる図1.jpg

 「雨あがる」...【1956年単行本〔同光社〕/2008年文庫化[時代小説文庫]】 「日日平安」...【1958年単行本〔角川書店〕/1965年文庫化・1989年・2003年改版〔新潮文庫〕/2006年再文庫化[ハルキ文庫→時代小説文庫]/2020年文庫化[講談社文庫(『雨あがる―映画化作品集』)]】

《読書MEMO》
●「日日平安」...1954(昭和29)年発表 ★★★★
●「つゆのひぬま」「なんの花か薫る」...1956(昭和31)年発表 ★★★
●「雨あがる」...1951(昭和26)年発表 ★★★★

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