【3237】 ○ 野村 芳太郎 (原作:結城昌治) 「白昼堂々 (1968/10 松竹) ★★★☆ (○ 結城 昌治 『白昼堂々 (1966/02 朝日新聞社) ★★★☆)

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演技達者が揃っていて楽しめる。渥美・倍賞の「男はつらいよ」の前年作。

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あの頃映画 「白昼堂々」」渥美清/藤岡琢也/倍賞千恵子
「白昼堂々」01.jpg ワタ勝こと渡辺勝次(渥美清)は、名の通ったスリだった。しかし、スリ係の刑事・森沢(有島一郎)の説得もあり、堅気になって九州の炭坑で働いていた。ワタ勝は間もなくヤマが潰れたのを機会に、仲間を集めてスリの集団組織をつくり上げた。彼は東京のデパートに狙いをつけ、大仕掛けな万引き計画を立てる。東京に向かったワタ勝は、盗品を捌くために昔のスリ仲間・銀三(藤岡琢也)を口説く。銀三は更生してデパートの警備員となり、女房の春子(三原葉子)は小さいながら洋品店を営んでいた。銀三は一人娘・桃江(大貫泰子)のためにも、ワタ勝の誘いを断るべきだと思いながら、ついに自分の洋品店で盗品を捌くことになった。知恵者の銀三が仲間に加わったことで、万引集団の成果はうなぎ上りに上昇し、それも高級洋品の布地を一巻ごと万引きするという大掛りなものだった。東京、大阪、京都、北海道と、ワタ勝たちは全国を仕事場にしていたが、危「白昼堂々」6.jpgなくなると九州のボタ山集落へ帰るという具合だった。デパート側が警備を強化しても、結局はワタ勝たちの素早さにかなわない。仲間が捕まると、専門の弁護士・坂下(フランキー堺)に処理させるという「白昼堂々」 倍賞 .jpg具合だ。ある日、美人スリ・よし子(倍賞千恵子)が仲間に加わる。ワタ勝も彼女にはぞっこんで、見かねた銀三のとりもちで目出度く結婚する。一方、銀三やワタ勝がすっかり足を洗っていたものとばかり思っていた森沢は、万引集団が二人の手になるものと知って烈火の如く憤り、着々と捜査の輪を狭めていた。そんな時、ワタ勝は仲間があちこちで捕まり、しかも、よし子が仲間四人と名古屋で捕まったと知ってガックリする。盗品の捌きもストックが増え出し、坂下が弁護料を大幅に値上げしてきている時でもあった。思いあまったワタ勝はデパートの売り上げ金二億円を奪うという大胆な作戦を立てる。デパートの警備員をやめた銀三は、その手助けは断ったがやはりなにかと援助する。計画は成功目前で、森沢の炯眼の前にあえなく潰える。銀三とワタ勝は逮捕されたが、二人ともくよくよしなかった。ワタ勝はよし子の手紙を読みながら、刑期の終るのを待っている―。
白昼堂々 (角川文庫 緑 267-3)
「白昼堂々 - 結城昌治. 文庫jpg.jpg 結城昌治(1927 -1996/68歳没)の原作(「週刊朝日」所載)を野村芳太郎が監督した喜劇です。原作は'65(昭和40)年6月から12月にかけて「週刊朝日」に連載され('66(昭和41)2月朝日新聞社刊)、'66(年上期・第55回「直木賞」候補となっています(作者としては「ゴメスの名はゴメス」に次ぐ2度目の候補で、3度目の候補作「軍旗はためく下に」で受賞し、直木賞作家となった)。

 原作は実在のスリ集団に想を得ていますが、この連載後間もなく、そのモデルとなった、北九州から上京した本物の万引き集団13人が検挙されています。作者がその集団の存在を知ったのは、昭和34年に日本橋三越で犯行中にスリ集団が一斉検挙される事件があったのを記憶に留めていたためで、それをヒントに、実際に訪れた北九州の炭鉱地帯の様子から、炭鉱不況とスリ集団を結びつけて小説を構想したとのことで、そうしたら、日本橋三越の事件から6年経って、彼らが再び検挙されたということです。
白昼堂々 (光文社文庫)
「白昼堂々 (光文社文庫).jpg 原作は主に銀三の視点で描かれていますが、原作も映画と同じようなストーリーで、比較的忠実に映像化されているように思いました。ただし、銀三も勝次も最後は捕まってしまうのは同じですが、銀三と勝次はラストで大金を持ってデパート内を逃げ、屋上へ追い詰められて、勝次はすぐに捕まったものの、銀三はアドバルーンに絡まって空高く舞い上がり、紙幣は風に飛ばされてあたりに撒き散らされ(映画「地下室のメロディー」('63年)っぽい)、アドバルーンは下降して木に絡まり、銀三はいったん気を失って、気がついたらその木は刑務所内の敷地に生えていた木だったという喜劇的なオチになっています。

 映画のラストで渥美清演じるワタ勝も藤岡琢也演じる銀三も刑務所内にいながらどこか明るいです(ワタ勝は倍賞千恵子が演じる美人スリ・よし子が現在の"結婚契約"を解消しないとの手紙をくれて大いに嬉しい)。これは、原作では小説内では描かれていませんが、作者の「あとがき的」に、彼らは(仲間を売ることもなく)明るく逞しく生き続けるだろうとしています。

「白昼堂々」生有島.jpg 映画は、渥美清、藤岡琢也と有島一郎の取り合わせなど、演技達者で観ていて楽しいかったです。倍賞千恵子(当時27歳)、生田悦子(当時21歳)も若くて綺麗。共にスリ役で、倍賞千恵子、渥美「白昼堂々 - 渥美倍賞jpg.jpg「白昼堂々」倍賞jpg.jpg清にとっては「男はつらいよ〈シリーズ第1作〉」('69年)の前年の作品になります。渥美清が演じるワタ勝が倍賞千恵子が演じるよし子に求婚するシーンがありますが、この二人を見ているとどうしても"兄妹"のイメージになってしまいます。

「白昼堂々」生田藤岡.jpg「徹子の部屋」生田悦子.jpg 生田悦子は映画デビューが1967年なので、当時まだデビュー3年目。2018年の4月に「徹子の部屋」に出演していて71歳で元気そうだったのが、同年7月に心不全で急逝したのが惜しまれます。
  
「白昼堂々」12.gif「白昼堂々」●制作年:1968年●監督:野村芳太郎●製作:杉崎重美●脚本:野村芳太郎/吉田剛●撮影:川又昂●音楽:林光●原作:結城昌治●時間:99分●出演:渥美清(渡辺勝次)/倍賞千恵子(腰石よし子)/藤岡琢也(富田銀三)/大貫泰子(富田桃江)/三原葉子(富田春子)/有島一郎(森沢刑「白昼堂々」田中.jpg事)/高橋とよ(森沢タツ子)/新克利(寺井刑事)/生田悦子(八百橋ユキ)/田中邦衛(マーチ)/佐藤蛾次郎(野田)/フランキー堺(万引き団のお抱え弁護士・坂下)/穂積隆信(安藤警部)/山本幸栄「白昼堂々 55jpg.jpg(丸山刑事)/三遊亭歌奴(川又の巡査)/「白昼堂々 田中jpg.jpgコント55号・坂上二郎(財布を掏られる男)/コント55号・萩本欽一(ホームレス)●公開:1968/10●配給:松竹●最初に観た場所:神田・神保町シアター(23-02-02)(評価:★★★☆)

田中邦衛(二度にわたる炭坑の爆発で記憶を失ってしまったスリ・マーチ)

「白昼堂々 - 結城昌治2.jpg「白昼堂々 - 結城昌治.jpg【1971年文庫化[角川文庫]/1996年新書化[講談社・大衆文学館]/2008年再文庫化[光文社文庫(結城昌治コレクション『白昼堂々』)]】

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