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本書を読んで、映画の鑑賞法の原点に立ち返るのもいいのではないか。

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映画を見ると得をする (新潮文庫)』「映画を見ると得をする もっと映画が面白くなる」[Kindle版]

映画を見ると得をする (ゴマブックス)』['80年]

 著者は言います。なぜ映画を見るのかといえば、人間は誰しも一つの人生しか経験できない。だから様々な人生を知りたくなる。しかも映画は、わずか2時間で隣の人を見るように人生を見られる。それ故、映画を見るとその人の世界が広がり、人間に幅ができてくる―と。

 まさに至言ではないでしょうか。本書は、シネマディクト(映画狂)を自称する著者が、映画の選び方から楽しみ方、効用を縦横に語り尽くしたものです。個人的に印象に残ったポイントをいくつか拾っていくと―

「料理長殿、ご用心」0.jpg 原題をそのまま題名にするのが流行っている。何かイメージがわく題名なら、中身もいい。... 日本語でいい題がつくときは、映画としてもいいものであるとして、「料理長(シェフ)殿、ご用心」 ('78年/米)がその例で、原作の小説より映画の方がよくできていたとしている。

「ナイル殺人事件」0.jpg 外国映画の「大作」は絶対に観るに値する。失敗作でさえも見るべきところがいっぱい。... 映画自体は失敗作でも、大作はセットも素晴らしいし、ロケにも金をかけていて、「ナイル殺人事件」('78年/英)などは本当にエジプトに行って撮っている」わけでしょと。個人的は、観光映画としても楽しめる要素があったなあ。

「元禄忠臣蔵」0.jpg「残菊物語」0.jpg 戦前の日本映画には凄い大作があった。例えば「残菊物語」「元禄忠臣蔵」。... 溝口健二の「残菊物語」('39年/松竹)は個人的にも完璧な恋愛・人情ドラマだと思った。「元禄忠臣蔵」('41-'42年/松竹)で、松の廊下を原寸通りに作っちゃったというのも凄いと(確かに)。歴史の中にしか存在しなかったものを、ぼくらの眼前に再現してくれているのが大作の価値だと。

「カサノバ 」フェリーニ0.jpg 「難解きわまる映画」というものがある。ときにはそういう映画で自分を鍛える。...  アラン・レネはどれも難しいと。フェリーニは「81/2」('63年/伊・仏)から後はみなわからなくなっちゃって、「アマルコルド」('73年/伊・仏)で昔のフェリーニに戻って、これはだれが観ても素晴らしかったが、ところが今度「カサノバ」('76年/伊)を撮ったら、やっぱりわからないと。主演のドナルド・サザーランドが、終わってから、「自分は一体どういう役をやったのかさっぱりわからない...」と、いったそうで、ぼくもパリで観たが退屈したと。

「赫い髪の女」0.jpg ポルノをつくっている会社の映画にも、時には観るべきものがある。例えば「赫い髪の女」。... 「赫い髪の女」('79年/にっかつ)は、中上健次の原作がいいし、男と女の愛欲を探究しているものだから、凄いけれど、いやな感じはないと。

 「巨匠」の作品必ずしも秀作にあらず。ただし、美術的感覚に見るべきものあり。... 「」('54年/伊)を作ったころのフェリーニは、大道芸人の可哀そうな女とか哀れな男に本当に共感を持っていたと思うが、フェリーニ自身が大巨匠になっておかしくなってしまったと。

「影武者」1.jpg 黒澤明然り。ただし、筆を持たせたら素晴らしく、「影武者」('80年/東宝)のスケッチなどは大したものであると(著者自身が絵を描くからそう感じるのだろう)。個人的には、かつての黒澤作品のダイナミズムは影を潜め、映画は映像美・様式美に終始してしまった印象。カンヌ国際映画祭でパルムドールを撮ったのは、その様式美がジャポニズムとして受けたのでは。勝新太郎が黒澤監督と喧嘩して主役を降りたけれど、もともと勝新太郎向きではなかった? 映画の完成披露試写会を勝新太郎が観に来たていて、「面白くなかった...俺が出ていたらもっと面白くなってたよ」と言ったそうだ。

椿三十郎 三船 仲代.jpg 「役者を汚して、血を噴出させる」のがリアリズムという日本映画の馬鹿の一つ覚え。... 最初にやったのが黒澤明の「椿三十郎」('62年/東宝)で、黒澤さんが悪いんじゃなく、黒澤監督としてはちょっと珍しいことをやってみたに過ぎない、それを猫も杓子も真似しちゃったから困ったものだと。

淀川長治2.jpg 映画評論を読めば、自分自身の「好み」や「個性」がわかってくる。それが値打ち。... 推薦できる評論家として、飯島正、南部圭之助、双葉十三郎を挙げ、淀川長治さんなんかの映画評論を一般のファンは当てにしたらいいんじゃないかと思うと(そう言えば、本書のカバー裏の著者紹介は淀川長治が書いている)。

「荒野の用心棒」2.jpg荒野の用心棒 1964.jpg ハリウッドの西部劇とマカロニ・ウエスタン。その大きな違いの一つは「女の描き方」。... マカロニ・ウエスタンには女の匂いがぷんぷんするような女が出てきて男とからみ合うが、アメリカの方は「女なんか全然数のうちじゃない...」といった男がいっぱい出てくると。また、マカロニ・ウエスタンの特徴はサディスティックであることで、拷問シーンなどでもユーモアがないとのこと。「荒野の用心棒」イーストウッド.jpg確かに「荒野の用心棒」('64年/伊)がそうだった。クリント・イーストウッド演じる「名無しの男」はボロボロにやられていた。ただし、著者は、黒澤明の「用心棒」を無断でかっぱらった「荒野の用心棒」が面白くないはずがないと(「名無しの男」というのも「用心棒」の「桑畑三十郎」がその場で思いついた名前であることをなぞっている)。

夕陽のガンマン アルティメット・エディション [DVD]
「夕陽のガンマン」1965.jpg 因みに、「荒野の用心棒」(原題の意味は「一握りのドルのために」)の続編は「続・荒野の用心棒」('66年/伊、セルジオ・コルブッチ監督・フランコ・ネロ主演)で「夕陽のガンマン」1イースト.jpgはなく「夕陽のガンマン」('65年/伊・西独・スペイン、セルジオ・レオーネ監督・ クリント・イーストウッド主演、原題の意味は「もう数ドルのために」)であり、その続編(出来事としては前二作より以前の話だが)「続・夕陽のガンマン」('65年/伊・西独・スペイン・米、セルジオ・レオーネ監督・クリント・イーストウッド主演、原題の意味は「善玉、悪玉、卑劣漢」)と併せて「ドル箱三部作」または(主人公の名がでないため)「夕陽のガンマン」2.jpg「名無しの三部作」と言われています。「荒野の用心棒」は黒澤明の「用心棒」と同じで、互いに相争う2組の悪党どもの対立をイーストウッド演じる主人公が一層煽り、けしかけながら、双方を壊滅状態に追い込むという話「夕陽のガンマン」リーヴァンクリーフ.jpgなのに対し、「夕陽のガンマン」は、共に腕利きの同業者にして宿命のライバルたる2人の賞金稼ぎが、時に相争い、時には紳士協定を結んで互いに協力しながら、いずれも多額の懸賞金を狙うという話。ただし、クリント・イーストウッド演じる「名無しの男(あだ名はモンコ(Manco)、スペイン語で「片腕」)」が単なる金目当て賞金稼ぎなのに対し、リー・ヴァン・クリーフが演じるモーティマー大佐には別の目的があった―。続編の方が本編より上とされる作品の1つ(年代が古い、米国映画でない、邦題がまるきり違うなどの理由であまり取り沙汰されないが)で、この1作でリー・ヴァン・クリーフはマカロニ・ウェスタンのスターとなりました。

イノセント.jpg 最近ではヴィスコンティの遺作「イノセント」。歴史に残るセックスシーンの1つだろう。... 「イノセント」('76年/伊・仏)のそれは素晴らしかったと。夫婦が別荘に行って、ちょうど春で、ぽかぽか温かくなり、庭に花が咲き乱れ、男がだんだん興奮してくる...。全身を写すところもあったが、たいていは胸から上しか写さず、それでいて本当にエロチックなシーンだったと。

「最後の晩餐」0.jpg 洒落たフランス映画を観た後で「フランス料理を食べたい」という女の子なら悪くない。... フランス映画を観た後では鮨屋よりフランス料理を食べに行きたくなるが、逆の場合もあり、それが「最後の晩餐」('73年/伊・仏)であると(確かに)。四人の主人公が死ぬまで食べ続ける映画だった。マルコ・フェレーリは巨匠ではないが相当の監督だと。

「旅芸人の記録パンフ2.jpg 例えば「忠臣蔵」を一本観ただけで、その人の世界がグーンと広くなっちゃう。... 「旅芸人の記録」('75年/ギリシャ)という映画を観れば、自然にギリシャという国に興味を持って、ギリシャに歴史を読んでみよう、ギリシャの生活について何か探して読んでみようということになり、それをやれば、ぼくの持っている世界が広がっていくわけだと。まさに、本書のエッセンスがここに述べられているように思いました。

 この本が出たころは、映画と言えば(テレビで観ることもあったとは思うが)基本的にみんな映画館で観たのだろうなあ。それが、レンタルビデオの時代を経て、今やAmazon PrimeやNetflixの時代へと移りつつあり、昨今は、映画を倍速で視聴するユーザーが急増しているようです。今一度、本書を読んで映画鑑賞の在り方の原点に立ち返るののいいのではないかと思いました。

影武者[東宝DVD名作セレクション]」 山﨑努(信玄の弟・武田信廉)/仲代達矢(武田信玄、影武者)
「影武者」dvd1980.jpg「影武者」01.jpg「影武者」●制作年:1980年●制作国:日本・アメリカ●監督:黒澤明●製作:黒澤明/田中友幸●外国版プロデューサー:フランシス・コッポラ/ジョージ・ルーカス●脚本:黒澤明/井手雅人●撮影:斎藤孝雄/上田正治「影武者」志村僑0.jpg「影武者」大滝秀治.jpg●音楽:池辺晋一郎●時間:180分●出演:仲代達矢/山﨑努/萩原健一/根津甚八/油井昌由樹/隆大介/大滝秀治/桃井かおり/倍賞美津子/室田日出男/阿藤海/矢吹二朗/志村喬/藤原釜足/清水綋治/清水のぼる/山本亘/音羽久米子/江幡高志/島香裕/井口成人/松井範雄/大村千吉●公開:1980/04●配給:東宝●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(81-02-14)(評価:★★★)
志村喬(信玄の父・田口刑部、信玄に追放され、信長の手先として送り込まれる)/大滝秀治(信玄家臣・山縣昌景)
倍賞美津子(側室・於ゆうの方)/桃井かおり(側室・お津弥の方)  黒沢明監督「影武者」、カンヌ映画祭の最高賞に(1980年5月23日)[日本経済新聞]/日劇(1981年閉館)
「影武者」倍賞・桃井.jpg 黒澤 カンヌ.jpg 日劇文化.jpg

「荒野の用心棒」イーストフッド1.jpg「荒野の用心棒」●原題:PER UN PUGNO DI DOLLARI(英:A FISTFUL OF DOLLARS)●制作年:1964年●制作国:イタリア・西ドイツ・スペイン●監督:セルジオ・レオーネ●脚本:ヴィクトル・アンドレス・カテナ/ハイメ・コマス・ギル/セルジオ・レオーネ●製作:アリゴ・コロンボ/ジョルジオ・パピ●音楽:エンニオ・モリコーネ●時間:96分(完全版100分)●出演:クリント・イーストウッド/ジャン・マリア・ヴォロンテ/マリアンネ・コッホ/ホセ・カルヴォ/ヨゼフ・エッガー/アントニオ・プリエート/ジークハルト・ルップ/ウォルフガング・ルスキー/マルガリータ・ロサノ/ブルーノ・カロテヌート/マリオ・ブレガ●公開:1965/12●配給:東宝(評価:★★★★)

「夕陽のガンマン」dvd.jpg「夕陽のガンマン」l.jpg「夕陽のガンマン」●原題:PER QUALCHE DOLLARO IN PIU(英:FOR A FEW DOLLARS MOREA)●制作年:1965年●制作国:イタリア・西ドイツ・スペイン●監督:セルジオ・レオーネ●脚本:セルジオ・レオーネ/ルチアーノ・ヴィンチェンツォーニ●製作:アルトゥーロ・ゴンザレス/アルベルト・グリマルディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●時間:130分(米国版132分)●出演:クリント・イーストウッド/リー・ヴァン・クリーフ/ジャン・マリア・ヴォロンテ/マリオ・ブレガ/ルイジ・ピスティッリ/クラウス・キンスキー/パノス・パパドプロス/トーマス・ブランコ/フランク・ブラナ/ホセ・マルコ/ヨゼフ・エッガー●公開:1967/01●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★★)
夕陽のガンマン [DVD]

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【1987年文庫化[新潮文庫]】

《読書MEMO》
●続編の評価が本編に匹敵するかそれ以上であるとされる作品([]内はIMDb評価)
「荒野の用心棒」('64年)[7.9]<「夕陽のガンマン」('65年)[8.2](「続・夕陽のガンマン('66年)[8.8])
・「ゴッドファーザー」('72年)[9.2]「ゴッドファーザー PART II」('74年)[9.0]
・「エイリアン」('79年)[8.5]「エイリアン2」('86年)[8.4]
・「マッドマックス」('79年)[6.8]<「マッドマックス2」('81年)[7.6]
・「ターミネーター」('84年)[8.1]<「ターミネーター2」('91年)[8.6]

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映画に纏わる自伝的エッセイ漫画、映画青春記。その時代のシズル感があった。

『名画座面白館』03.jpg『名画座面白館』01.jpg ギターを持った渡り鳥 HDリマスター版.jpg
赤塚不二夫の名画座・面白館』「日活100周年邦画クラシック GREAT20 ギターを持った渡り鳥 HDリマスター版 [DVD]

 赤塚不二夫(1935-2008/72歳没)が自らの映画体験を漫画で描いた本で、1989(平成元)年刊行。1954(昭和29)年頃の江戸川区小松川の化学薬品工場の寮に住み込んで『漫画少年』など投稿を続け、肉筆回覧誌「墨汁一滴」の同人に参加した頃から、その後のトキワ荘に移ってからの期間を中心に、若い頃、お金はなくとも映画を観まくっていた時代に観た映画を漫画で語った、自伝的エッセイ漫画です。

 全13話の各タイトルになっている(メインで取り上げている)映画は、「七人の侍」「狂った果実」「ニッポン無責任時代」「ゴジラ」「独立愚連隊」「唐獅子牡丹」「ギターを持った渡り鳥」「けんかえれじい」「楢山節考」「男はつらいよ」「眠狂四郎殺法剣」。そして、これらに関連するその他多くの映画作品にもふれています。

 特に長谷邦夫(1937-2018/84歳没)や石森章太郎(1938-1998/60歳没)らと映画談義をしている場面が多くありますが、映画に関しては彼らの方が先輩格と言うか理論派の映画マニアであり、談論形式でその言説をそのまま載せたりしているのが素直です。実際、冒頭の「七人の侍」('54年/東宝)などは、長谷邦夫に強く薦められて観に行って、感銘を受けています。三人で雑司ヶ谷の手塚治虫邸を最初に訪ねた時、石ノ森章太郎が16歳、長谷邦夫が17歳、赤塚不二夫が19歳だったとあり、赤塚不二夫が一番年上なわけですが、長谷邦夫や石森章太郎は、映画という面では赤塚不二夫の"師匠"でもあったのでしょう。

『名画座面白館』022.jpg でも、そうした仲間に感化されながらも自分の好みをしっかり持っていて、そのあたりはやはり職業柄、創作者であれば当然かもしれませんが、分かる気がしました。例えば、木下惠介監督などは絶賛の対象であり、「楢山節考」('58年/松竹)を取り上げ、長谷邦夫や石森章太郎らと語り合いながら自らの意見も述べ、舞台仕立てにした部分が見事であるとし、リメイク版の今村昌平の作品「楢山節考」('83年/東映)の土俗的リアリズムは「わしは買わないのだ」と断言しています(個人的にはそれぞれにいいと思うのだが)。

IMG_20220228_050114.jpg ここでは木下惠介監督の「野菊の如き君なりき」('55年/松竹)についても長谷邦夫や石森章太郎らと語り合3人で語り合っていますが、石森章太郎が全体を楕円にしてまわりをボカした手法について指摘すると、長谷邦夫が「昔の懐かしい写真アルバム集みたいな感じを出すためだね」とはっきり言っていて、こういうのに赤塚不二夫自身が教えられたということを、漫画で再現しているという感じでしょうか(切ない映画だった)。

 「ギターを持った渡り鳥」('59年/日活)のところでは、小林旭ファンの「少年サンデー」の記者が出てきて、長谷邦夫も交えて議論し、漫画ならではに構図でシリーズの流れなどを解説していて分かりやすかっ「ギターを持った渡り鳥」3.jpgたです。このシリーズで一番人気が急上昇したのは一昨年['20年]亡くなった"殺し屋ジョージ"こと宍戸錠で、拳銃無頼帖シリーズとか「早射ち野郎」('61年/日活)はその後だったのだなあ。でも、「ギターを持った渡り鳥」のいいところ(切ないところ)はやはり土地(本作は函館市が舞台)の娘・浅丘ルリ子との別れでしょう。浅丘ルリ子がウェットな執着を見せず、「あの人は戻らない」と決めてかかっているのも西部劇の影響でしょうか。

 映画青春記であると共に、読者に対する鑑賞ガイドになっている点が親切です(長谷邦夫や石森章太郎の意見を多く取り入れている分、押しつけがましさがな無い)。また、どういう状況やきかっけでその作品を観に行って、その時の映画館や客席はどうだったのかとかも描かれていたりするので、時代のシズル感がありました。ビデオすらない時代の話。家で一人でNetflixやAmazonプライムで観てしまうと、こういう、映画そのものとそれを観た時の状況がセットで記憶に残るという感触は味わえないのだろうなあ。

「ギターを持った渡り鳥」2.jpg「ギターを持った渡り鳥」1.jpg「ギターを持った渡り鳥」●制作年:1959年●監督:齋藤武市●脚本:山崎巌/原健三郎●撮影:高村倉太郎●音楽:小杉太一郎●原作:小川英●時間:78分●出演:小林旭/浅丘ルリ子/中原早苗/渡辺美佐子/金子信雄/青山恭二/宍戸錠/二本柳寛/木浦佑三/鈴木三右衛門/神戸瓢介/片桐恒男/青木富夫/弘松三郎/伊丹慶治/野呂圭介/近江大介/水谷謙之/高田保/宮川敏彦/ 衣笠真寿夫/原恵子/清水千代子/菊田一郎/倉田栄三/渡井嘉久雄/竹部薫/ 高瀬将敏●公開:1959/10●配給:日活(評価:★★★☆)

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読みやすいし、楽しく読めるコラム集。甦る70年代後半の洋画全盛期の息吹。

地獄の観光船 (1981年).jpg地獄の観光船 (集英社文庫).jpg1『地獄の観光船』.jpg コラムは踊る―エンタテインメント評判記.jpg
地獄の観光船―コラム101 (集英社文庫)』['84年](装丁:平野甲賀+小島武)/『コラムは踊る―エンタテインメント評判記 1977~81 (ちくま文庫)』['89年](カバーイラスト:和田誠)
地獄の観光船―コラム101 (1981年)』['81年](装丁:平野甲賀(1938-2021.03)+小林泰彦)

 本書は、著者が1977年から1981年春まで「キネマ旬報」に連載した「小林信彦のコラム」をまとめたもので、単行本にする際に70年代後半のクロニクル的側面を打ち出すため、相倉久人氏の「大洪水のあとの70年代はビートルズの解散に始まり、地獄の観光船となって80年代に向かう」というエッセイのタイトルから引いて、このタイトルに改めたとのこと。1984年に集英社文庫で文庫化された後、1989年にちくま文庫で『コラムは踊る―エンタテインメント評判記 1977~81』と改題されて再文庫化されました。

 夥しい数の洋画と邦画(巻末に題名索引が付されている)を紹介し、日活アクション、ヒチコック、マルクス兄弟(単行本表紙)、B級映画などを論じるとともに、漫才ブームやタモリといったタレントにも言及していて、娯楽メディア全般を対象としているので、改題後のサブタイトルがむしろ内容紹介的には分かりやすいかもしれません(ただ、インパクトは「地獄の観光船」の方がある)。年代別に印象に残ったところを一部拾っていくと―(以下、#はコラムの通し番号。ページ数は集英社文庫)。

1977年
タクシードライバー パンフレット.jpgタクシードライバー 映画館.jpg#2.タクシードライバーで、主人公のトラヴィスが初デートでポルノ映画を観に行く件りがあり、あれは日本ではトラヴィスが非常識だということで片付けられるが、映画に出てくるポルノ映画ををやっていた小屋は、高級な映画館なのだそうです(17p)。トラヴィスなりに奮発したということか。そんなの、予備知識なしにフツーに観ている分には分からなかったなあ。単にこの男"狂っている"と思ってしまう。

ネットワーク 1976 ちらし.jpgネットワーク ロバート・デュヴァル2.jpg#9.ネットワークを、わくわくするほど面白い設定なのに、ラストの一発で、すべてが嘘くさくなったケースであり「惜しい」としています(35p)。フェイ・ダナウェイが、テレビ番組の視聴率アップのためにテロリストを利用したことを指しているのでしょう。確かにあのラストでリアリティが無くなったようにも思えますが、個人的には、ある種の"寓話"として敢えてリアリティを度外視して、ああいう風なラストにしたのではないかと思います。

ROLLERCOASTER 1977.jpgROLLERCOASTER 19772.jpg#16.「ジェット・ローラー・コースター」は集団捜査劇めかしているが、保安基準局役人のジョージ・シーガルと爆発狂のティモシイ・ボトムズの対決であるとしています(53p)。この点においては「真昼の決闘」や「ジャッカルの日」などと同系譜で、特徴的なのは、敵味方がモノマニアックである点だと。なるほど。アメリカ人は大体「個対組織」より「個対個」の対決が好きなのかも。著者はこの映画のジョージ・シーガルの演技を絶賛しています。個人的には、パニック映画としては懐かしい作品ですが、「ポセイドンアドベンチャー」('72年/米)のような先行する巨大スケールのパニック映画があるので、スケール面でどうしても弱いかなあというのはありました。因みに、この映画の脚本は、「刑事コロンボ」でお馴染みのリチャード・レヴィンソン&ウィリアム・リンクでした。リチャード・ウィドマーク、ハリー・ガーディノ、スーザン・ストラスバーグなども出ていて、(観た当時の評価は★★★だが)これをB級パニック映画なんて言うと失礼にあたる?

アニー・ホール poster.jpgANNIE HALL.jpg#24.アニー・ホールは、ウディ・アレンとダイアン・キートンの実生活がベースになっているらしいとし(アニー・ホールがダイアン・キートンの本名であることには触れていない)、ウディ・アレンの映画を観ることは、「日本語のよく気きとれない外人さんが寅さん映画を観るようなもの」だとしています(72p)。個人的には、有楽町の「ニュー東宝シネマ2」というマイナーなロードショー館に観に行った際に、外国人の観客が結構多く来ていて、笑いの起こるタイミングが字幕を読んでいる日本人はやや遅れがちで、しまいには外国人しか笑わないところもあったりした記憶があります。また、会話が早すぎて、訳を端折っている感じもしました。当時は"入れ替え制"というものが無かったので、同じ劇場で2度観ました(個人的には当時、英会話学校に通っていた)。
          
1978年
ミスター・グッドバーを探して1.jpg#32.ミスター・グッドバーを探して(これもダイアン・キートンだが)を著者は大力作であると絶賛し、ショックで体調がおかしくなったくらいだとしています(93p)。当時の日本人の批評は、男が描けていないとかボロクソだったようで、著者は作品の魂が分かっていないと憤慨し、「リチャード・ブルックス老にこれほどの現代性とスタミナがあるとは、思ってもみなかった」とまで述べていますが、自分の評価も実はそう高くはなかったです(作品の魂が分からなかった?)。 そう言えば、同じ英会話学校に通っていたアメリカ帰りの友人が、この「ミスター・グッドバーを探して」を、「アニー・ホール」と共に絶賛し、ペーパーバックを読んでいました(自分も買ったと思うが、読み終えた記憶はない)。

スター・ウォーズ エピソード4.jpgスター・ウォーズ 1977 sabaku.jpg#32.「スター・ウォーズ」で、「二つのロボットが砂漠をとぼとぼ行く場面で、こんなシーンを観たことがあったな、と思った。黒澤明の「隠し砦の三悪人」のオープニング―千秋実と藤原釜足が腹をへらして歩いているシーンと同じ撮り方だ、とすぐに気づいた」とのこと(94p)。後にジョージ・ルーカス自身が黒澤明からの"頂き"だと白状しており、著者は1998年のエッセイ(『人生は五十一から』)でも「ぼくが見つけた」と書いています(自慢?)。個人的にはこの映画、周りが大騒ぎした分あまり乗り切れず、だいぶ遅れて'82年に飯田橋の佳作座で「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」との併映で、日本語吹き替え版を観ました(ハン・ソロ役の森本レオは雰スター・ウォーズ 1977 ハンソロ2.jpg囲気出ていた。ルーク役は奥田瑛二!)。悪くはないけれど、十分満足したかと言うとイマイチだったというのが当時の印象で(評価★★★☆)、前年公開の「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」とどっこいどっこいか、やや「レーダース」の方が面白かったくらいでしょうか。やっぱりこういうのは中身云々もさることながら、"旬"の内に観ないと気分的に"乗れない"のかもしれません。そう言えば、ハリソン・フォード来日の際の記者会見で、質疑応答の際に「インディー・ショーンズ」のことは訊いてもいいけれど、「スター・ウォーズ」のことに触れるのはご法度であったとか。ハリソン・フォードの中では、ジョーンズ博士はインテリで、ハン・ソロはお馬鹿キャラとの意識があるようです。

1979年「二人でヒッチコック映画の魅力を語ろう」―和田誠氏との対談
引き裂かれたカーテン1.jpg引き裂かれたカーテン2.jpg 「引き裂かれたカーテン」('66年)を、著者は、作品は失敗だったけれど、ヒッチコック好みの俳優を使ったという意味では、この作品のポール・ニューマンがそうだとしているのに対し、和田誠は、この作品を好きだとし、ポール・ニューマンには「逆転」('63年)などのようにスリラーが似合うと言っています(143p)(「動く標的」('66年)などもそうかも。2011年にやっとDVD化された作品だが)。「引き裂かれたカーテン」の日本での低評価は、ポール・ニューマンに理論物理学者の役は似合わないという先入観によるところが大きいのではないかと思われます(東側の物理学者の前で黒板に物理方程式を書いてみせる場面がある)。また、和田誠が、ヒッチコック映画のヒロインでは「北北西に進路を取れ」('59年)のエヴァ・マリー・セイントが印象的だったと言うと、著者も、「あれは最高です」と。著者が、「引き裂かれたカーテン」のジュリー・アンドリュースを指し、色っぽくない女優を色っぽく見せることにおいてヒッチコックの独壇場だと(笑)。一方で、ファッションモデルみたいな美人も好んで使うと言っているのは確かに。その代表格が「裏窓」('54年)のグレース・ケリーということになるのでしょう(144p)。
      
1979年
ナイル殺人事件 DVD.jpgナイル殺人事件 スチール.jpg#49.ナイル殺人事件」のピーター・ユスチノフのポワロは良かったと。身体がでか過ぎるのが次第に気にならなくなったのは、彼の演技力の賜物だとしています(ピーター・ユスティノフ はその後「地中海殺人事件」('82年)、「死海殺人事件」 ('88年)でもポアロを演じることになる)。クリスティが自作「カーテン」でポワロを殺してしまったのは、こうすれば誰かが著作権者に金を払ってポワロ物の続きを書くといったことが出来ないからだということで、なるほどなあ。007が登場する小説を書こうと思ったら著作権者に金を払わなければならないわけだ(164p)。これがジェフリー・ディーバーやアンソニー・ホロヴィッツぐらいになるとと、逆にイアン・フレミング・エステートからのオファーを受けて書くことになるわけか。

麦秋 dvd V.jpg麦秋 sugimura.jpg#52.麦秋('51年、小津安二郎監督)を正月にNHKで観て(この辺りからテレビで観たものも入ってくる。今の著者の「週刊文春」の連載のエッセイ「本音を申せば」(旧題は「生は五十一から」)がこのパターンだなあ)、石堂淑朗(1932年生まれ「怪奇大作戦/呪いの壷呪いのツボ」('69年)の脚本)、笠原和夫(1927年生まれ・「仁義なき戦い」('73年)の脚本)など著者の多くの知人がしゅんとしたそうな(173p)。著者自身、「封切当時は、古い映画、死ね、とった気持ちで観ていた」とのことで、それを今観て粛然とした気持ちになるのは、「要するに、ぼくらの世代はトシをとったのだ、ということでしょうがねえ」と。これを書いている時点で著者は45歳くらいのはずですが...。

ビッグ・ウェンズデー dvd.jpgビッグ・ウェンズデー 1.jpg#53.ビッグ・ウェンズデーを、脚本・監督のジョン・ミリアスの、自伝的と言うより、私小説ならぬ私映画の秀作としていて、なるほどね。日本ではサーフィン・ブームが始まったところなので、「若い観客を動員できれば、アタると思うのですが」と(実際、そこそこヒットしたのでは)。「これは、もう、浦山桐郎さんの世界ですね」と言っているのが面白いです(176p)。「アメリカン・グラフィティ」などと同じノスタルジー映画の系譜ということでしょうか。

エノケンの近藤勇2.bmp#55.エノケンの近藤勇 「エノケンの頑張り戦術」などエノケン映画を、久々に上京してきた筒井康隆氏と二日間にわたり4本観たと(179p)(この辺りからエノケンの頑張り戦術 1.jpg日記風の話も多くなり、この様式も「週刊文春」の連載のエッセイ「本音を申せば」に受け継がれている)。二日目から色川武大氏が加わったというからスゴイ面子。それにしても「エノケンの頑張り戦術」を「博覧強記の色川さんが、題名さえも知らなかった」とは意外。そう言う著者も、「頑張り戦術」は知らなかったとのこと。按摩に化けたエノケンが如月寛多を「もみくちゃ」にし、取っ組み合いになるところを、カメラ据えっぱなしのワンショットで撮っているいるところが飛びぬけて面白かったとしていますが、「エノケンの近藤勇」にもそうした撮り方をしている場面があります。

料理長殿、ご用心 p1.jpg料理長シェフ殿、ご用心 02.jpg#58.料理長(シェフ)殿、ご用心を「さいきん、数少ない〈小品佳作〉であった」と。〈小品佳作〉というのは、戦前から戦後にかけてよく使用された言葉で、出演者のランクを認めた上での言葉で、「料理長殿、ご用心」で言えば、ジャクリーン・ビセットが素晴らしく、一人で全編を支えているとしています。そう言えば、和田誠も『お楽しみはこれからだ PART3―映画の名セリフ』('80年)でこの映画を評価していましたが、あれもこのコラムと同時期の「キネマ旬報」の連載コラムでした。

復讐するは我にあり dvd7.jpg復讐するは我にあり  04 .jpg#61.復讐するは我にありを、面白かったとして取り上げています(193p)。「前半の屋外場面は冴えないが、後半、浜松の旅館に移ってから、今村昌平調の屋内ドラマが溌溂とする。緒形拳がシャニムニという力演で、よろしかった」と。但し、「犯罪者の〈内面の追究〉というのは、あまり、意味がないと思う」とも。著者は邦画も数多く観ていますが、かなり厳しめの評価になるのは、常に洋画と比較しているからではないかと思ったりもしました。

エイリアン DVD.jpgエイリアン ジョンハート.jpg#62.エイリアンをFOXで観せてもらった(195p)とのことで、試写会でしょうか。「宇宙船内のわりにリアルな描写」を良いとし、着陸する変な惑星は、1950年代の「禁断の惑星」風であると。そっかあ。この映画を観た時、「禁断の惑星」はまだ観ていなかったので気がつきませんでした。「要するに、これは、SFに形を借りた恐怖映画」なのだと。そう言えば、内田樹氏が『映画の構造分析』(晶文社)の中で、妊娠と出産に対する女性の側の恐怖の暗喩だと言っていたのを思い出しました。

人情紙風船2.jpg人情紙風船 dvd1.jpg #63.人情紙風船('37年・山中貞雄監督)を、機会があって観たとあります(200p)。邦画に厳しいと書きましたが、この映画に関しては「もう、よくって、よくって。だまされたと思って、観てごらんなさい。こんな映画も、めったにないよ」とべた褒めです。でも、実際、いい映画なのです(かなり暗い話だけれど)。

 
 
1980年
二百三高地 dvd.jpg#90.二百三高地を、「もっとも不足しているのは〈ふつうの描写〉である」と(267p)。「人間がメシを食うとか、そういう描写が下手、というより、まるで無い」のがだめで、観客は大戦争とかを常に観たいと思うのではなく、ときどき〈ふつうの描写〉も眺めたいと思うもので、「クレーマー、クレーマー」などは、その欲求にぴしりとはまったからヒットしたのだと。個人的にも、「二百三高地」はいいと思わなかったけれど、それは乃木希典の描き方に不満を感じたりしたからで、一方で、こうした見方もあるのだなあと。著者は、「小津安二郎的なものに、心を惹かれるきょうこのごろで、要するに、トシですわな」とも言ってはいますが。

殺しのドレス.jpgDRESSED TO KILL Angie Dickinson.jpg#95.殺しのドレス(ブライアン・デ・パルマ監督)を絶賛(279p)。「二度見た。あまりに面白かったからだが、とにかく、アタマが白紙の状態だったからこそ、最高に楽しめたのだ」と。こういうのは、「いっさい、何も知らないみなければならない」とし、リポーター(しばしば映画評論家という肩書がつく)が映画の内容をばらしてしまう風潮を痛烈に批判しています。思うに、最近の日本映画などは、もう観る前に大体の内容はわかっていて、若い人などは、描かれ方を確認するような鑑賞スタイルになってきているのではないでしょうか。
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 先にも書いた通り、連載の後の方では、漫才ブームやタレントの話もあって、映画に限っても、話題は、作品観賞から、映画館について、字幕の話など多岐にわたり、80年代に入ってからは、すでに世に出始めたビデオで映画を観るということについても触れています(まだVHSとベータがシェア争いをしていた頃だが)。

 この著者のコラムは、読みやすいし、また楽しく読めますが、著者のあとがきによれば、「キネマ旬報」という映画専門誌に連載しながら(「だからこそ」とも言えるが)、敢えて映画評とはなるべく離れた内容の方がいいと言う編集部の意向に、著者自身も沿ったものだとのこと。個人的は、70年代後半の洋画全盛期の息吹がリアルタイムで甦ってくるようなコラム集であったし、当時の自分の評価の振り返りにもなりました。「ジェット・ローラー・コースター」などは、観た当時は「B級」と思いましたが(これ、著者に言わせれば差別用語になるらしい)、著者が言うところの〈小品佳作〉だったかもしれないと思います。観直していないので評価は★★★のまま修正はしませんでしたが、機会があれば観直してみたいと思います(2017年にHDリマスター版Blu-rayがリリーズされている)。

    
タクシードライバー」01.jpgタクシー・ドライバー チラシ.jpg「タクシードライバー」●原題:TAXI DRIVER●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:マイケル・フィリップス/ジュリア・フィリップス●脚本:ポール・シュレイダー●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:バーナード・ハーマン●時間:114分●出演:ロバート・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ジョディ・フォスター/ハーヴェイ・カイテル/ピーター・ボイル/アルバート・ブルックス/マーティン・スコセッシ/ジョー・スピネル/ダイアン・アボット/レナード・ハリス/ヴィクター・アルゴ/ガース・エイヴァリー/リチャード・ヒッグス/ロバート・マルコフ、/ハリー・ノーサップ/スティーブン・TAXI DRIVER.PETER BOYLE AND ROBERT DE NIRO.jpgプリンス●日本公開:1976/09●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:早稲田松竹(77-11-05)●2回目:池袋文芸坐(79-02-11)●3回目:三鷹オスカー(81-03-18)●4回目:早稲田松竹(85-03-23)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「アメリカングラフィティ」(ジョージ・ルーカス)●併映(2回目):「ローリング・サンダー」(ジョン・フリン)●併映(3回目):「アリスの恋」(マーティン・スコセッシ)/「ミーン・ストリート」(マーティン・スコセッシ)●併映(4回目):「ミッドナイト・エクスプレス」(アラン・パーカー)


ネットワーク 1976 11.jpgネットワーク [DVD].jpg「ネットワーク」●原題:NETWORK●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:パディ・チャイエフスキー●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:エリオット・ローレンス●時間:121分●出演:フェイ・ダナウェイ/ウィリアム・ホールデン/ピーター・フィンチ/ロバート・デュヴァル/ベアトリス・ストレイト/ウェズリー・アディ/ネッド・ビーティ/ジョーダン・チャーニー/コンチャータ・フェレル/レイン・スミス/マーリーン・ウォーフィールド●日本公開:1977/01●配給:ユナイト映画●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-12-13)(評価:★★★★)●併映:「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ)
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ジェット・ローラー・コースター -HDリマスター版- [Blu-ray]
ジェット・ローラー・コースター dvd.jpg「ジェット・ローラー・コースター」●原題:ROLLERCOASTER●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:ジェームズ・ゴールドストーン●製作:ジェニングス・ラング●脚本:リチャード・レヴィンソン/ウィリアム・リンク●撮影:デヴィッド・M・ウォルシュ●音楽:ラロ・シフリン●時間:119分●出演:ジョージ・シーガル/ヘンリー・フォンダ/リチャード・ウィドマーク/ティモシー・ボトムズ/ハリー・ガーディノ/ハリー・デイビス/スーザン・ストラスバーグ/ヘレン・ハント/スティーヴ・グッテンバーグ●日本公開:1977/06●配給:CIC●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(78-01-21)(評価:★★★)●併映:「新・猿の惑星」(ドン・テイラー)/「ローラーボール」(ノーマン・ジュイソン)/「世界が燃えつきる日」(ジャック・スマイト)(オールナイト)

ANNIE HALL .jpg「アニー・ホール」●原題:ANNIE HALL●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:ウディ・アレン●製作:チャールズ・ジョフィ/ジャック・ローリンズ●脚本:ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン●撮影:ゴードン・ウィリス ●時間:94分●出演:ウディ・アレン/ダイアン・キートン/トニー・ロバーツ/シェリー・デュバル/ポール・サイモン/シガニー・ウィーバー/クリストファー・ウォーケン/ジェフ・ゴールドブラム/ジョン・グローヴァー/トルーマン・カポーティ(ノンクレジット)●日本公開:1978/01●配給:オライオン映画●最初に観た場所:有楽町・ニュー東宝シネマ2(78-01-18)●2回目:有楽町・ニュー東宝シネマ2 (78-01-18)(評価:★★★★)


映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」.jpg「ミスター・グッドバーを探して」●原題:LOOKING FOR MR. GOODBAR●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:リチャード・ブルックス●製作:フレディ・フィールズ●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:アーティ・ケイン●原作:ジュディス・ロスナー「ミスター・グッドバーを探して」●時間:135分●出演:ダイアン・キートン/アラン・フェインスタイン/リチャード・カイリー/チューズデイ・ウェルド/トム・ベレンジャー/ウィリアム・アザートン/リチャード・ギア●日本公開:1978/03●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(79-02-04)(評価:★★☆)●併映:「流されて...」(リナ・ウェルトミューラー)
映画パンフレット 「ミスターグッドバーを探して」出演ダイアン・キートン


昭和外国映画史―「月世界探検」から「スター・ウォーズ」まで「別冊1億人の昭和史」』('78年6月/毎日新聞社)
0昭和外国映画史.jpgスター・ウォーズ 1977 ハンソロ1.jpg「スター・ウォーズ(「スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望」)」●原題:THE STAR WARS●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジョージ・ルーカス●製作: ゲイリー・カーツ●撮影:ギルバート・テイラー●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:121分(特別編:125分)●出演:マーク・ハミル/ハリソン・フォード/キャリー・フィッシャー/デヴィッド・プラウズ/ジェームズ・アール・ジョーンズ(声)/アレック・ギネス/アンソニー・ダニエルズ/ケニー・ベイカー/ピーター・メイヒュー/ピーター・カッシング/フィル・ブラウン/シラー・フレイザー/ジェレミー・ブロック/ポール・ブレイク/ローリー・グード/アンソニー・フォレスト/ドリュー・ヘンレイ/アンガス・マッキネ/デニス・ローソン/ギャリック・ヘイゴン/ローリー・グード/パム・ローズ/リチャード・ルパルメンティエ/デレック・ライオンズ●日本公開:1978/06●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(82-07-11)(評価:★★★☆)●併映:「レイダース 失われた《聖櫃》」(スティーブン・スピルバーグ)


引き裂かれたカーテン 1966.jpg引き裂かれたカーテン5.jpg「引き裂かれたカーテン」●原題:TORN CURTAIN●制作年:1966年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●ジェニングス・ラング●脚本:ブライアン・ムーア/ウィリス・ホール/キース・ウォーターハウス●撮影:ジョン・F・ウォーレン●音楽:ジョン・アディソン●時間:128分●出演:ポール・ニューマン /ジュリー・アンドリュース/ハンスイェルク・フェルミー/ギュンター・シュトラック/ルドウィヒ・ドナート/ヴォルフガン「引き裂かれたカーテン」ヒッチカメオ.pngグ・キーリング/リラ・ケドロヴ/モート・ミルズ/ギゼラ・フィッシャー/デヴィッド・オパトッシュ/タマラ・トゥマノワ/モーリス・ドナー/ロバート・ブーン/ノーバート・シラー/ハロルド・ディレンフォース/アーサー・グールド=ポーター/ピーター・ローレ・Jr/アンドレア・ダルビー/エリック・ホランド/レスター・フレッチャー●日本公開:1966/10●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ.(評価:★★★★)
引き裂かれたカーテン [DVD]


「ナイル殺人事件」映画パンフレット
ナイル殺人事件 パンフレット.jpgナイル殺人事件 オリヴィア・ハッセー.jpgナイル殺人事件 べティ・デイヴィス.jpgミア・ファロー_3.jpg「ナイル殺人事件」●原題:DEATH ON THE NILE●制作年:1978年●制作国:イギリス●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ジョン・ブラボーン/リチャード・グッドウィン●脚本:アンソニー・シェーファー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:アガサ・クリスティ「ナイルに死す」●時間:140分●出演:ピーター・ユスティノフ/ミア・ファローベティ・デイヴィス/アンジェラ・ランズベリー/ジョージ・ケネkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612353.jpgディ/オリヴィア・ハッセー/ジョン・フィンチ/マギー・スミス/デヴィッド・ニーヴkinopoisk.ru-Death-on-the-Nile-1612358.jpgン/ジャック・ウォーデン/ロイス・チャイルズサイモン・マッコーキンデール/ジェーン・バーキン/サム・ワナメイカー/ハリー・アンドリュース●日本公開:1978/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:日比谷映画劇場(78-12-17)(評価:★★★☆)

  

麦秋 1.jpg「麦秋」●制作年:1953年●監督:小津安二郎●製作:山本武●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田麦秋 1951  .jpg雄春●音楽:伊藤宣二●時間:124分●出演:原節子/笠智衆/淡島千景/三宅邦子/菅井一郎/東山千栄子/杉村春子/二本柳寛/佐野周二/村瀬禪/城澤勇夫/高堂国典/高橋とよ/宮内精二/井川邦子/志賀真津子/伊藤和代/山本多美/谷よしの/寺田佳世子/長谷部朋香/山田英子/田代芳子/谷崎純●公開:1951/03●配給:松竹(評価:★★★★☆)


ビッグ・ウェンズデー  ps.jpgBig Wednesday (1978).jpgBIG WEDNESDAY .jpg「ビッグ・ウェンズデー」●原題:BIG WENSDAY●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ミリアス●製作:バズ・フェイトシャンズ/アレクサンドラ・ローズ●脚本:ジョン・ミリアス/デニス・アーバーグ●撮影:ブルース・サーティース●音楽:ベイBIG WEDNESDAY.jpgジル・ポールドゥリス●時間:119分●出演:ジャン=マイケル・ヴィンセント/ウィリアム・カットBIG WEDNESDAY   .jpg/ゲイリー・ビジー/リー・パーセル/サム・メルヴィル/パティ・ダーバンヴィル/ダレル・フェティ/ジェフ・パークス/レブ・ブラウン/デニス・アーバーグ/リック・ダノ/バーバラ・ヘイル/ジョー・スピネル/ロバート・イングランド●日本公開:1979/04●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(82>-03-13)(評価:★★★☆)●併映:「カッコーの巣の上で」(ミロシュ・フォアマン)


エノケンの近藤勇1.jpg「エノケンの近藤勇」●制作年:1935年●監督:山本嘉次郎●脚本・原作:ピエル・ブリヤント/P.C.L.文芸部●撮影:唐沢弘光●音楽:栗原重一●時間:81分●出演:榎本健一/二村定一/中村是好/柳田貞一/如月寛多/田島辰夫/丸山定夫/伊藤薫/花島喜世子/宏川光子/北村季佐江/エノケンの頑張り戦術 vhs.jpg千川輝美/高尾光子/夏目初子●公開:1935/10●配給:P.C.L.(評価:★★★)
「エノケンの頑張り戦術」●制作年:1939年●監督:中川信夫●脚本・原作:小国英雄●撮影:伊藤武夫●音楽:栗原重一●時間:74分●出演:榎本健一/宏川光子/小高たかし/如月寛多/渋谷正代/川童/柳田貞一/柳文代/音羽久米子/北村武夫 /金井俊夫/南光司●公開:1939.09●配給:東宝東京(評価:★★★)


01料理長(シェフ)殿.jpg02料理長(シェフ)殿1.jpg「料理長(シェフ)殿、ご用心」●原題:SOMEONE IS KILLING THE GREAT CHEFS OF EUROPE●制作年:ヴァン・ライアンズ/ナン・ラ1978年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コチェフ●脚本:ピーター・ストーン●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ヘンリー・マンシーニ●原作:アイヴァン・ライアンズ/03料理長(シェフ)殿.pngナン・ライアンズ●時間:112分●出演:ジャクリーン・ビセット/ジョージ・シーガル/ロバート・モーレイ/ジャン=ピエール・カッセル/フィリップ・ノワレ/ジャン・ロシュフォール/ルイージ・プロイェッティ/ステファノ・サッタ・フロレス●日本公開:1979/05●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(80-02-18)(評価:★★★)●併映「セント・アイブス」(J・リー・トンプソン)/「クリスチーヌの性愛記」(アロイス・ブルマー)

Fukushû suru wa ware ni ari (1979)
Fukushû suru wa ware ni ari (1979) .jpg復讐するは我にありC2.jpg「復讐するは我にあり」●制作年:1979年●監督:今村昌平●製作:井上和男●脚本:馬場当/池端俊策●撮影:姫田真佐久●音楽:池辺晋一郎●原作:佐木隆三●時間:140分●出演:緒形拳/三國連太郎/ミヤコ蝶々/倍賞美津子/小川真由美小川真由美 復讐するは我にあり2.jpg清川虹子/殿山泰司/垂水悟郎/絵沢萠子/白川和子/フランキー堺/北村和夫/火野正平/根岸とし江(根岸李江)/河原崎長一郎/菅井きん/石堂淑郎/加藤嘉/佐木隆三●公開:1979/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-17)(評価:★★★★☆)


エイリアン 1979.jpgエイリアン スタントン.jpg「エイリアン」●原題:ALIEN●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:ゴードン・キャロル/デヴィッド・ガイラー/ウォルター・ヒル●脚本:ダン・オバノン●撮影:デレク・ヴァンリント●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●時間:117分●出演:トム・スケリット/シガニー・ウィーバー/ヴェロニカ・カートライト/ハリー・ディーン・スタントン/ジョン・ハート/イアン・ホルム/ヤフェット・コットー●日本公開:1979/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)(評価:★★★★)●併映:「遊星からの物体X」(ジョン・カーペンター)


人情紙風船 kawarazaki.jpg人情紙風船 01.jpg「人情紙風船」●制作年:1937年●監督:山中貞雄●製作:P.C.L.●脚本:三村伸太郎●撮影:三村明●音楽:太田忠郎●美術考証:岩田専太郎●原作:河竹黙阿弥(『梅雨小袖昔八丈』、通称『髪結新三』)●時間:86分●出演:河原崎長十郎(海野又十郎)/中村翫右衛門(髪結新三)/山岸しづ江(又十郎の女房おたき)/霧立のぼる(白子屋の娘お駒)/助高屋助蔵(家主長兵衛)/市川笑太朗(弥太五郎源七)/中村鶴蔵 (金魚売源公)/市川莚司[加東大介])(猪助)/橘小三郎[藤川八蔵](毛利三左衛門)/御橋公(白子屋久左衛門)/瀬川菊乃丞(忠七)/市川扇升(長松)/原緋紗子(源公の女房おてつ)/坂東調右衛門/市川樂三郎/市川菊之助/岬たか子●公開:1937/08●配給:東宝映画●最初に観た場所:早稲田松竹(07-08-12)(評価:★★★★☆)●併映:「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」(山中貞雄)


7二百三高地 丹波哲郎 dvdジャケット1.jpg「二百三高地」●制作年:1980年●監督:舛田利雄●脚本:笠原和夫●撮影:飯村雅彦●音楽:山本直純●主題曲:さだまさし●時間:181分●出演:仲代達矢/あおい輝彦/新沼謙治/湯原昌幸/佐藤允/永島敏行/長谷川明男/稲葉義男/新克利/矢吹二朗/船戸順/浜田寅彦/近藤宏/伊沢一郎/玉川伊佐男/名和宏/横森久/武藤章生/浜田晃/三南道郎/二百三高地 丹波哲郎.jpg北村晃一/木村四郎/中田博久/南廣/河原崎次郎/市川好朗/山田光一/磯村健治/相馬剛三/高月忠/亀山達也/清水照夫/桐原信介/原田力/久地明/秋山敏/金子吉延/森繁久彌/天知茂/神山繁/平田昭彦/若林豪/野口元夫/土山登士幸/川合伸旺/久遠利三/須藤健/吉原正皓/愛川欽也/夏目雅子/野際陽子/桑山正一/赤木春恵/原田清人/北林早苗/土方弘/小畠絹子/河合絃司/須賀良/石橋雅史/村井国夫/早川純一/尾形伸之介/青木義朗/三船敏郎/松尾嘉代/内藤武敏/丹波哲郎●公開:1980/08●配給:東映●最初に観た場所:飯田橋・佳作座 (81-01-24)(評価:★★)●併映:「将軍 SHOGUN」(ジェリー・ロンドン)


『殺しのドレス』(1980) 2.jpg「殺しのドレス」●原題:DRESSED TO KILL●制作年:1980年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ブライアン・デ・パルマ●製作:ジョージ・リットー●撮影:ラルフ・ボード●音楽:ピノ・ドナッジオ●時間:114分●出演:マイケル・ケイン/アンジー・ディキンソン/ナンシー・アレン/キース・ゴードン/デニス・フランツ/デヴィッド・ マーグリーズ/ブランドン・マガート●日本公開:1981/04●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(81-04-03)●2回目:テアトル吉祥寺 (86-02-15)(評価:★★★★)●併映(2回目):「デストラップ 死の罠」(シドニー・ルメット)/「日曜日が待ち遠しい!」(フランソワ・トリュフォー)/「ハメット」(ヴィム・ヴェンダース)

【1984年文庫化[集英社文庫]/1989年再文庫化[ちくま文庫(『コラムは踊る―エンタテインメント評判記 1977~81』)]】


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「リズム感とスピード感あふれる口語体」(坪内祐三)。実は相当なインテリ? 

殿山泰司ベスト・エッセイ.jpg6殿山泰司ベスト・エッセイ.jpg  螢川図5.jpg
殿山泰司ベスト・エッセイ (ちくま文庫)』['18年](カバーデザイン・イラスト:南伸坊) 須川栄三監督「螢川」('87年)

 名脇役であり、ジャズとミステリーをこよなく愛し、趣味を綴った著書も多数残している殿山泰司(1915-1989/73歳没)ですが、そのエッセイ集『三文役者あなあきい伝』('74年/講談社)などは、講談社文庫に収められた後、絶版になっていました。こうした著者のエッセイ集を、その没後に掘り起こして再度文庫化しているのがちくま文庫で、そのラインナップは以下の通りです。

三文役者あなあきい伝1・2.jpg ・『三文役者あなあきい伝〈PART1〉』('95年1月/ちくま文庫)
 ・『三文役者あなあきい伝〈PART2〉』('95年1月/ちくま文庫)』
 ・『JAMJAM日記』('96年2月/ちくま文庫)
 ・『三文役者のニッポンひとり旅』('00年2月/ちくま文庫)
 ・『三文役者の無責任放言錄』('00年9月/ちくま文庫)
 ・『バカな役者め!!』('01年3月/ちくま文庫)
 ・『三文役者のニッポン日記』('01年3月/ちくま文庫)
 ・『三文役者の待ち時間』('03年3月/ちくま文庫)

 先に取り上げた坪内祐三(1958-2020)著『文庫本を狙え!』('16年/ちくま文庫)で『三文役者のニッポンひとり旅』が紹介されていましたが、殿山泰司の盟友だった新藤兼人(1912-2012)の著書『三文役者の死―正伝殿山泰司』('00年/岩波現代文庫)をもとに新藤兼人自身が監督した映画「三文役者」('00年/主演:竹中直人)が公開されることになったことを話題とする一方、ここでも、「殿山泰司復活の大きな力となっているのは、何といっても、ちくま文庫だ」としています。
『日本女地図』('2.jpg
『日本女地図』(1.jpg また、坪内祐三は、殿山泰司の作品の特徴は、「リズ『三文役者の無責任放言錄』.jpgム感とスピード感あふれる口語体」にあるとし、初期エッセイ『日本女地図』('69年/カッパ・ブックス)の角川文庫版('83年)で、糸井重里氏が「昭和軽薄体の父が嵐山光三郎であるならば、そのまぶたの父は殿山泰司である」と書いたことを紹介しています(そっか、糸井重里や椎名誠よりもずっと前の、言わば先駆者だったのだなあ)。

 復活してくれるのは有難いし、読んでいて面白いのですが、全部読むのはたいへんという人もいるかと配慮してくれた(?)のが本書ベストエッセイ集で、三部構成の1部は『三文役者のニッポン日「JAMJAM日記」.jpg三文役者の無責任放言録 (ちくま文庫).jpg記』、『三文役者あなあきい伝〈PART1・2〉』からの抜粋、第2部は『三文役者の無責任放言錄』、『三文役者のニッポン日記』、『JAMJAM日記』、『三文役者の待ち時間』、それと『殿山泰司のしゃべくり105日』('84年/講談社)からの抜粋、第3部がその他となっています。
三文役者の無責任放言録 (ちくま文庫)

 個人的には、自叙伝風に構成されている第1部が波乱万丈で特に面白く感じられましたが、銀座8丁目のおでん屋「お多幸」の息子だったのだなあと思い出しました(本人は役者になるため、家業は弟が継いだ)。小学校は愛のコリーダ 殿山.png泰明小学校かあ(公立校だが、何年か前にアルマーニを標準服にしたことで話題となった)。「お呼びがかかればどこへでも」をモットーに「三文役者」を自称し、大島渚監督の「愛のコリーダ」('76年/日・仏)で「フルチン」になったりしましたが、実生活では流行に敏感でお洒落であり、公私にわたりジーンズにサングラスがトレードマークだったようです。
大島 渚「愛のコリーダ」('76年)
新藤兼人「人間」('62年)
「人間」 殿山泰司山本圭.jpg 第1部の終わりの方にある、殿山泰司が出演した新藤兼人監督の「裸の島」('60年/主演:乙羽信子・殿山泰司)や野上弥生子原作の「人間」('62年/出演:乙羽信子・殿山泰司・山本圭・佐藤慶)など作品ごとの映画撮影時の裏話なども興味深かったですが(結構ハチャメチャな面のあったりする)、第2部に1977年から1980年までの日記の抜粋があり、撮影所に出向いて仕事したかと思えばジャズコンサートに行き、さらにミステリもたくさん読んで批評するなど、非常に密度の濃い時間を送っていることが窺えました。語り口とは裏腹に、相当インテリであるような印象を受けましたが、本人はそう見られることを極力避けていたのかもしれません。

黒澤 明「酔いどれ天使」('48年)/小津安二郎「お早よう」('59年)/小栗康平「泥の河」('81年)
酔いどれ天使Drunken-Angel-0.50.16.jpg小津 お早う 殿山.jpg泥の河 殿山泰司9.jpg 新藤兼人、大島渚のみならず、黒澤明、川島雄三、小津安二郎、野村芳太郎、今村昌平など多くの監督に愛されてその作品に起用され(小栗康平監督の「泥の河」('81年)に出演した時砂の器 殿山泰司.jpgのことも書かれていたなあ。舟の上から橋の上にいる子供にスイカを投げてやるオッさん役だった)、一方でこれだけエッセイ集を残しているわけで、充実した生き方であったのではないでしょうか。
野村芳太郎「砂の器」('74年)
  
田中小実昌・色川武大(阿佐田哲也)・殿山泰司
田中小実昌 色川武大 殿山泰司 .jpg田中小実昌(1925-2000/74歳没)
色川武大(1929-1989.4.10/60歳没)
殿山泰司(1915-1989.4.30/73歳没)

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かなりマニアック? 観た映画があると嬉しいくらい、知らない映画が多かった。

日本映画隠れた名作-昭和30年代前後- 中公選書.jpg日本映画隠れた名作-昭和30年代前後- 中公選書 - コピー.jpg 秀子の応援団長 vhs.jpg
日本映画 隠れた名作 - 昭和30年代前後 (中公選書)』 「秀子の応援団長」高峰秀子/灰田勝彦

 サブタイトルに、「昭和30年前後」とあり、昭和19年生まれの川本三郎氏と、昭和23年生まれの筒井清忠氏の二人の対談形式で、しかも二人とも早くから映画を見始めているということもあって、自ずとそうなるのかもしれません。ただ、読んでみると、「昭和30年前後」の「前後」をかなり幅広い年代にわたって解釈している印象も受けました。かなりマニアック? と言うか、観たことがある映画があると嬉しいくらい、知らない映画が多かったです。

「魔像」(昭和27年)山田五十鈴/阪東妻三郎(二役)
魔像  1952jh.jpg 第1章(「ふたりの映画回想」)で、二人の個人的映画史を一気に振り返っています。川本氏が一番最初の頃に見た映画の一つに、坂東妻三郎の「魔像」(昭和27年)を挙げていて、怖かった覚えがあると述べていますが(坂東妻三郎が二役を演じた)、8歳頃でしょうか。自分も観たことがある映画が出てきて、一瞬ついて行けるかなと思いましたが、どんどんマニアックになっていきました。「二十四の瞳」(昭和29年)や「東京物語」(昭和28年)のような「隠れた名作」ならぬ超有名映画の話も出てきますが、これはあくまで「戦争」という話題に絡めてのことのようです。久松静児監督作は、川本氏が江戸川乱歩「心理試験」の映画化である「パレットナイフの殺人」(昭和21年)をビデオで観たそうで、筒井氏は同監督作では「三面鏡の恐怖愛よ星と共に 01.jpg(昭和23年)を挙げています。北海道つながりで、川本氏が小津安二郎監督の「東京暮色」(昭和32年)の中村伸郎と山田五十鈴が最後北海道に行くことを指摘、さらに、池部良、高峰秀子の「愛よ星と共に」(阿部豊監督、昭和22年)で、池部良が北海道にジャガイモの品種改良に行くと。当時「北海道に行けば何とかなる」という夢があったとのことですが、小津安二郎監督の「出来ごころ」(昭和9年)でも、坂本武が北海道に行く開拓民船(蟹工船?)に乗り込み金を工面しようとしたのではなかったでしょうか。

「愛よ星と共に」(昭和22年)高峰秀子

「黒い画集・寒流」(昭和36年)新玉三千代/池部良
黒い画集 寒流01.jpg 第2章以下は主に監督別に「隠れた名作」を振り返っていて、第2章(「戦後」の光景)では、家城巳代治、鈴木英夫、千葉泰樹、渋谷実、関川秀雄などが取り上げられています。この辺りの監督、あまり観ていないなあと思いつつも、川本氏が、池部良が出てくる清張ミステリーで、新玉三千代がファム・ファタルになる鈴木英夫監督の「黒い画集・寒流」(昭和36年)を忘れられないとし、筒井氏も、人間というのはこういうふうに裏切るんだということがわかる逸品としていて、確かにそう思います。千葉泰樹監督作では、川本氏が、高峰秀子、灰田勝彦共演の「秀子の応援団長」(昭和15年)で、実は二人が一緒の場面が無いことを指摘、川本氏が以前に高峰秀子にインタビューした時、彼女が「あの映画で私、灰本日休診_3.jpg田勝彦さんの顔を見ていないのよ」と言っていたそうで、ビデオジャケットでも共に並んで写っているだけにやや驚きました。筒井氏が戦前の映画とは思えず、戦後的であると言っているのにも納得です。渋谷実監督作は個人的には「本日休診」(昭和27年)しか観ていませんが、川本氏が、好きなのはこの作品くらいかなと言っています(笑)。

「本日休診」(昭和27年)岸恵子/柳永二郎

 第3章(「純真」をみつめて)では、清水宏、川頭義郎、村山新治、田坂具隆などの監督に触れています。ただ、個人的には、この中では清水宏などは〈巨匠〉と清水宏監督 『簪』 1941 .jpg呼ぶ人もいるのではないかなあと。しかしながら、世間一般の知名度で言うと、小津安二郎などよりはマイナーということになるのかもしれません。井伏鱒二「四つの湯槽」の映画化作品「」(昭和16年)を筒井氏が名作とし、川本氏もいいですよと言っています。温泉が舞台で、負傷兵の笠智衆が温泉で湯治いているところへ、田中絹代が身延山参りでやって来る話でしたが、井伏鱒二の定宿が下部温泉にあったそうですが、映画のロケはそこではやっていないそうです。斎藤達雄の大学教授は、あれはインテリ批判だったのかあ。川頭義郎監督は、俳優川津祐介の実兄ですが、早くに亡くなったなあ。

「簪」(昭和16年)田中絹代/笠智衆

「張り込み」(昭和33年)大木実/高峰秀子
『張込み』(1958)2.jpg張込み 1958汽車.png 第4章(「大衆」の獲得)では、滝沢英輔、野村芳太郎、堀川弘通、佐伯清、沢島忠、小杉勇などの監督を扱っています。この中で、川本氏も述べているように、松本清張作品と言えば野村芳太郎になるなあと。「張り込み」(昭和33年)では、アバンタイトル(タイトルが出る前のシーン)が12分もあったのかあ。当時としては珍しかったようです。でも、川本氏が証言2.bmp黒い画集 あるサラリーマンの証言.jpg言うように、宮口精二と大木実が夜行に乗り込んで、東海道本線、山陽本線を経由して、ようやっと佐賀についたところでタイトルが出るのですが、そこまで行くのに丸一日かかったというところに時代が感じられ、良かったです(あれを今の時代に再現するのは難しため、結局テレビでドラマ化されるとどれも今の時代に改変されてしまう)。筒井氏は「砂の器」(昭和49年)と共に大傑作としていますが、確かにそうだけれど、その分"隠れた名作"と言えるのかは疑問です。同じ清張原作でも、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(昭和35年)は堀川弘通監督作でした。

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(昭和35年)小林桂樹/原知佐子

エノケンの森の石松 yanagiya .jpg 第5章(「職人」の手さばき)では、中村登、大庭秀雄、丸山誠治、中川信夫、西河克己などに触れていますが、まさに職人というべき監督ばかりかも。中川信夫は「東海道四谷怪談」(昭和34年)が有名ですが、初期作品で「エノケンの森の石松」(昭和14年)というのがあり、あれも舞台は東海道でした(エノケンと柳家金語楼の「江戸っ子だってねぇ」「神田の生まれよ」の掛け合いが)。西河克己は、吉永小百合の「伊豆の踊子」(昭和38年)を撮っていますが、山口百恵の「伊豆の踊子」(昭和49年)も撮っていました。筒井氏は吉永小百合の方が叙情性があると評価していますが、撮られた時代もあるのだろうなあ。

「エノケンの森の石松」(昭和14年)柳家金語楼/榎本健一

 ここにはあまり書きませんでしたが、知っている映画より知らない映画の方がずっと多く、興味をそそられたものが少なからずありました。ただ、そうした映画を今観るのがなかなか難しかったりするのではないかと思います。川本氏は90年代に東京・三軒茶屋にあったスタジオams(西友の5階にあった)に395秀子の応援団長.JPG407秀子の応援団長.JPG通ったそうですが今はもうないし、京橋フィルム・センターやシネマヴェーラ渋谷、ユジク阿佐ヶ谷がマニアックなプログラムを組むことがありますが、邦画に限っていないのでなかなか本書にあるような作品に巡り合わないです(ユジク阿佐ヶ谷は来月['20年8月]で休館する)。結局、筒井氏がCSの「日本映画専門チャンネル」などで殆ど観たと述べているように、そうしたものに加入するしかないのかも。最近、図書館で「日本映画傑作選集」の「秀子の応援団長」を借りて観ましたが、こうしたものを置いている図書館も少なくなってきているのかもしれません(VHSビデオだしなあ。個人的にはテレビデオで観ているが)。

hideo秀子の応援団長.jpg 「秀子の応援団長」(昭和15年)は、当時少女スターとして活躍していた高峰秀子が、弱少プロ野球球団アトラス軍の応援歌を作って見事チームを優勝へと導くという青春映画でした。アトラス軍は、かつて大黒柱だった大川投手が出征しているため、新人の人丸投手(灰田勝彦)が登板しますが、スタルヒンや水原を擁する巨人軍との力量の差は明らかでチームは最下位に甘んじ、アトラス軍の高島監督(千田是也)の家族達は憂い顔。高島家の祖母(清川玉枝)や娘の雪子(若原春江)と一緒に憂い顔なのが雪子の従妹で社長令嬢の女学生・秀子(高峰秀子)で、父親(小杉義男)は野球嫌い、教育熱心な母親(沢村貞子)には謡のお稽古をさせられるも、雪子と一緒にこっそりアトラス軍の練習場へ出かけて二人が作った応援歌を披露したり、謡の先生も野球好きと知り先生を説得して親に内緒で一緒に後楽園に応援に出かけたりするうちに、彼女達が応援に来た試合はアトラス軍面白いように勝ちはじめる―。

秀子の応援団長 0.jpg 高峰秀子と灰田勝彦は、会話シーンもればそのプレイを応援するシーンもあり、祝勝パーティで灰田勝彦がウクレレ片手に歌って高峰秀子も同席しているシーンもあったりしますが、あれ全部"別撮り"だったのかあ。そう言えば、冒頭のスタルヒンや水原らスター選手がいる巨人軍との試合も、本当に試合するはずもなく全部"別撮り"だというのは考えてみればすぐ分かります。秀子らが各球団の戦力偵察に行く設定なので、当時の主要球団の有力選手並びに戦前の後楽園球場、上井草球場?、西宮球場、甲子園球場なども見られ、スポーツ・フィルム史的にみて貴重です。太平洋戦争が始ま394秀子の応援団長.JPGる2年弱前に作られた作品にしては何と明るいこ千田是也.jpgとか(お気楽と言っていいくらいだが、コメディのツボは押さえていて、しかもラストは少し捻っている)。灰田勝彦がプロ球団の投手役というのも見ものですが、戦後、俳優座のリーダー的存在として活躍した千田是也(1904-1994)が、プロ野球の監督役というのが珍しいです。千田是也はテレビドラマへの出演はほとんど皆無ですが、1940年代から1970年代頃まで約100本の映画に出演していて、この作品はそのうちの最も初期のものとなります。
千田是也/若原春江/高峰秀子
秀子の應援團長 【東宝DVD名作セレクション】」2020年12月リリース
秀子の應援團長.jpg

魔像 19562.JPG魔像 dvd 19521.jpg「魔像」●制作年:1952年●監督:大曾根辰夫●脚本:鈴木兵吾●撮影:石本秀雄●音楽:鈴木静一●原作:林不忘●時間:98分●出演:阪東妻三郎/津島恵子/山田五十鈴/柳永二郎/三島雅夫/香川良介/小林重四郎/小堀誠/永田光男/海江田譲二/田中謙三/戸上城太郎●公開:1952/05●配給:松竹(評価:★★★☆)

二十四の瞳312.jpg「二十四の瞳」●制作年:1954年●監督・脚本:木下惠介●製作:桑田良太郎●撮影:楠田浩之●音楽:木下忠司●原作:壺井栄●時間:156分●出演:高峰秀子/天本英世/夏川静江/笠智衆/浦辺粂子/明石潮/高橋豊子/小林十九二/草香田鶴子/清川虹子/高原駿雄/浪花千栄子/田村高廣/三浦礼/渡辺四郎/戸井田康国/大槻義一/清水龍雄/月丘夢路/篠原都代子/井川邦子/小林トシ子/永井美子●公開:1954/09●配給:松竹●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(18-05-08)(評価:★★★★☆)

笠智衆/原節子/東山千榮子
東京物語 紀子のアパート.jpg東京物語 10.jpg「東京物語」●制作年:1953年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:136分●出演:笠智衆/東山千榮子/原節子/香川京子/三宅邦子/杉村春子/中村伸郎/山村聰/大坂志郎/十朱久雄/東野英治郎/長岡輝子/高橋豊子/桜むつ子/村瀬禪/安部徹/三谷幸子/毛利充宏/阿南純子/水木涼子/戸川美子/糸川和広●公開:1953/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★★☆)●併映:「彼岸花」(小津安二郎)/「秋刀魚の味」(小津安二郎)

パレットナイフの殺人1.jpgパレットナイフの殺人22.jpgパレットナイフの殺人s.jpg「パレットナイフの殺人」●制作年:1946年●製作:大映(東京撮影所)●監督:久松静児●脚本:.高岩肇●撮影:高橋通夫●音楽:斎藤一郎●原作:江戸川乱歩●時間:71分(76分)●出演:宇佐美淳(宇佐美淳也)/植村謙二郎/小柴幹治(三条雅也)/小牧由紀子/松山金嶺/平井岐代子/西條秀子/若原初子/須藤恒子/上代勇吉/花布辰男/桂木輝夫●公開:1946/10●配給:大映(評価:★★★)

三面鏡の恐怖 vhs.jpg三面鏡の恐怖(1948)6.jpg三面鏡の恐怖06.jpg「三面鏡の恐怖」●制作年:1948年●監督:久松静児●●脚本:高岩肇/久松静児●撮影:高橋通夫●音楽:齋藤一郎●原作:木々高太郎「三面鏡の恐怖」●時間:82分●出演:木暮実千代/上原謙/新宮<信子/瀧花久子/水原洋一/宮崎準之助/船越英二/千明みゆき/上代勇吉●公開:1948/06●配給:大映(評価:★★★)

有馬稲子/山田五十鈴/原節子
東京暮色  1957.jpg 東京暮色 j.jpeg「東京暮色」●制作年:1954年●監督:小津安二郎●製作:山内静夫●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:140分●出演:原節子/有馬稲子/笠智衆/山田五十鈴/高橋貞二/田浦正巳/杉村春子/山村聰/信欣三/藤原釜足/中村伸郎/宮口精二/須賀不二夫/浦辺粂子/三好栄子/田中春男/山本和子/長岡輝子/櫻むつ子/増田順二/長谷部朋香/森教子/菅原通済(特別出演)/石山龍児●公開:1957/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):角川シネマ新宿(シネマ1・小津4K 巨匠が見つめた7つの家族)(18-06-28)((評価:★★★★)

愛よ星と共に vhs.jpg愛よ星と共に4.jpg「愛よ星と共に」●制作年:1947年●監督:阿部豊●製作:青柳信雄●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:八田尚之●撮影:小原譲治●音楽:早坂文雄●時間:95分●出演:高峰秀子/池部良/横山運平/浦辺粂子/川部守一/藤田進/逢初夢子/清川莊司/一の宮あつ子/田中春男/鳥羽陽之助/冬木京三/鬼頭善一郎/江川宇礼雄/山室耕/花岡菊子/條圭子/水島三千代●公開:1947/09●配給:東宝(評価:★★★)

「出来ごころ」vhs.jpg出来ごころ 1シーン.jpg「出来ごころ」●制作年:1933年●監督:小津安二郎●脚本:池田忠雄●撮影:杉本正二郎●原作:ジェームス槇(小津安二郎)●活弁:松田春翠●時間:100分●出演:坂本武/伏見信子/大日方傳/飯田蝶子/突貫小僧/谷麗光/西村青児/加藤清一/山田長正/石山隆嗣/笠智衆(ノンクレジット)●公開:1933/09●配給:松竹蒲田●最初に観た場所:ACTミニシアター(90-08-13)(評価:★★★)●併映:「浮草物語」(小津安二郎)

平田昭彦/新珠三千代/池部良
黒い画集 寒流03.jpg黒い画集 寒流 ド.jpg「黒い画集 第二話 寒流(黒い画集 寒流)」(映画)●制作年:1961年●監督:鈴木英夫●製作:三輪礼二●脚本:若尾徳平●撮影:逢沢譲●音楽:斎藤一郎●原作:松本清志「寒流」●時間:96分●出演:池部良/荒木道子/吉岡恵子/多田道男/新珠三千代/平田昭彦/小川虎之助/中村伸郎/小栗一也/松本染升/宮口精二/志村喬/北川町子/丹波哲郎/田島義文/中山豊/広瀬正一/梅野公子/池田正二/宇野晃司/西条康彦/堤康久/加代キミ子/飛鳥みさ子/上村幸之/浜村純/西條竜介/坂本晴哉/岡部正/草川直也/大前亘/由起卓也/山田圭介/吉頂寺晃/伊藤実/勝本圭一郎/松本光男/加藤茂雄/細川隆一/大川秀子/山本青位●公開:1961/11●配給:東宝(評価:★★★☆)

鶴田浩二/角梨枝子/淡島千景
『本日休診』スチル2.jpg本日休診 スチル.jpg「本日休診」●制作年:1939年●監督:渋谷実●脚本:斎藤良輔●撮影:長岡博之●音楽 吉沢博/奥村一●原作:井伏鱒二●時間:97分●出演:柳永二郎/淡島千景/鶴田浩二/角梨枝子/長岡輝子/三國連太郎/田村秋子/佐田啓二/岸恵子/市川紅梅(市川翠扇)/中村伸郎/十朱久雄/増田順司/望月優子/諸角啓二郎/紅沢葉子/山路義人/水上令子/稲川忠完/多々良純●公開:1952/02●配給:松竹(評価:★★★★)

斎藤達雄  
簪 齋藤.jpg簪 kanzashi 1941.jpg「簪(かんざし)」●制作年:1941年●監督・脚本:清水宏●製作:新井康之●撮影:猪飼助太郎●音楽:浅井挙曄●原作:井伏鱒二「かんざし(四つの湯槽)」●時間:75分●出演:田中絹代/笠智衆/斎藤達雄/川崎弘子/日守新一/坂本武/三村秀子/河原侃二/爆弾小僧/大塚正義/油井宗信/大杉恒夫/松本行司/寺田佳世子●公開:1941/08●配給:松竹(評価:★★★★)
      
大木実/宮口精二
大木実/宮口精二 張込み.jpg張込み 映画2.jpg「張込み」●制作年:1958年●製作:小倉武志(企画)●監督:野村芳太郎●脚本:橋本忍●撮影:井上晴二●音楽:黛敏郎●原作:松本清張「張張込み 1958汽車2.png込み」●時間:116分●出演:大木実/宮口精二/高峰秀子/田村高廣/高千穂ひづる/内田良平/菅井きん/藤原釜足/清水将夫/浦辺粂子/多々良純/芦田伸介●公開:1958/01●配給:松竹●最初に観た場所:池袋文芸地下(84-02-22)(評価★★★☆)
Suna no utsuwa (1974)  丹波哲郎/森田健作        
Suna no utsuwa (1974).jpg砂の器sunanoutuwa 1.jpg「砂の器」●制作年:1974年●製作:橋本プロ・松竹●監督:野村芳太郎●脚本:橋本忍/山田洋次●音楽:芥川也寸志●原作:松本清張●時間:143分●出演:丹波哲郎/森田健作/加藤砂の器 丹波哲郎s.jpg剛/加藤嘉/緒形拳/山口果林/島田陽子/佐分利信/渥美清/笠智衆/夏純子/松山省二/内藤武敏/春川ますみ/花沢徳衛/浜村純/穂積隆信/山谷初男/菅井きん/殿山泰司/加藤健一/春田和秀/稲葉義男/信欣三/松本克平/ふじたあさや/野村昭子/今井和子/猪俣光世/高瀬ゆり/後藤陽吉/森三平太/今橋恒/櫻片達雄/瀬良明/久保晶/中本維年/松田明/西島悌四郎/土田桂司/丹古母鬼馬二●公開:1974/10●配給:松竹●最初に観た場所:池袋文芸地下(84-02-19) (評価★★★★)●併映:「球形の荒野」(貞永方久)

小林桂樹/原知佐子
黒い画集 あるサラリーマンの証言      .jpg黒い画集 あるサラリーマンの証言    .jpg「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原知佐子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭彦/小池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)

エノケンの森の石松 vhs1.jpg「エノケンの森の石松」●制作年:1939年●監督:中川信夫●脚本:小林正●撮影:唐沢弘光●音楽:栗原重一●口演:広沢虎造●原作:和田五雄●時間:72分(現存57分)●出演:榎本健一/鳥羽陽之助/浮田左武郎/松ノボル/木下国利/柳田貞一/北村武夫/小杉義男/斎藤勤/近藤登/梅村次郎/宏川光子/竹久千恵子/柳家金語楼●公開:1939/08●配給:東宝(評価:★★★)

伊豆の踊子 (吉永小百合主演).jpg「伊豆の踊子」●制作年:1963年●監督:西河克己●脚本:三木克己/西河克己●撮影:横山実●音楽:池田正義●原作:川端康成●時間:87分●出演:高橋英樹/吉永小百合/大川端康成 伊豆の踊子 吉永小百合58.jpg坂志郎/桂小金治/井上昭文/土方弘/郷鍈治/堀恭子/安田千永子/深見泰三/福田トヨ/峰三平/小峰千代子/浪花千栄子/茂手木かすみ/十朱幸代/南田洋子/澄川透/新井麗子/三船好重/大倉節美/高山千草/伊豆見雄/瀬山孝司/森重孝/松岡高史/渡辺節子/若葉めぐみ/青柳真美/高橋玲子/豊澄清子/飯島美知秀/奥園誠/大野茂樹/花柳一輔/峰三平/宇野重吉/浜田光夫●公開:1963/06●配給:日活●最初に観た場所:池袋・文芸地下(85-01-19)(評価:★★★☆)●併映:「潮騒」(森永健次郎)

秀子の応援団長 4.jpg秀子の応援団長ド.jpg「秀子の応援団長」●制作年:1940年●監督:千葉泰樹●脚本:山崎謙太●音楽:佐々木俊一●原作:高田保●時間:71分●出演:高峰秀子/灰田勝彦/千田是也/音羽久米子/若原春江/伊達里子/小杉義男/澤村貞子/清川玉枝●公開:1940/01●配給:東宝映画(評価★★★☆)
登場するプロ野球選手
【東京巨人軍】17 スタルヒン、19 水原茂、27 吉原正喜、3 中島治康【大阪タイガース】9松木謙次郎、18若林忠志、31堀尾文人、32森国五郎、36小林吉雄、6景浦将、27松広金一、29皆川定之、12田中義雄、38三輪八郎、17門前真佐人、35中田金一【セネタース】12佐藤武夫、19保手浜明、18野口ニ郎、5尾茂田叶、7浅岡三郎、14横沢七郎【阪急軍】6石井武夫、12日比野武、23土肥省三、14西村正夫、7下村豊、22重松道雄、24黒田健吾、5上田藤夫、16山下好一

主題歌「青春グラウンド」(唄:灰田勝彦(映画では高峰秀子)) 挿入歌「燦めく星座」(唄:灰田勝彦)
 

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「ああ、これはここで撮影したのか」と。写真で見るのもいいが、やはりは行ってみたいもの。

海外名作映画と巡る世界の絶景 00.jpg海外名作映画と巡る世界の絶景0_.jpg  サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 DVD.jpg
海外名作映画と巡る世界の絶景』「サウンド・オブ・ミュージック 製作50周年記念版 DVD(2枚組)」['15年]

海外名作映画と巡る世界の絶景 01.jpg 海外名作映画の中に登場する美しい絶景の数々を、映画のストーリーや実際に撮影されたシーンと共にご紹介したもので、スマホで掲載されているバーコードを読み込むことで、バーチャル旅行を楽しんだりすることもできる点が今風と言えば今風でしょうか。

海外名作映画と巡る世界の絶景 02.jpg 15作の映画を取り上げ、それぞれ数カ所の場面シーンの実際にモデルになった場所の写真を載せ、併せて映画のシーンなども引用するとともに、撮影にまつわるコラム風の解説を付しています。その15作とは、「ハリー・ポッター」「スター・ウォーズ」「インディ・ジョーンズ」「ダ・ヴィンチ・コード」「ミッション:インポッシブル」「ロード・オブ・ザ・リング」「ライフ!」「マンマ・ミーア!」「プラダを着た悪魔」「フォレスト・ガンプ」「ローマの休日」「アメリ」「サウンド・オブ・ミュージック」「パディントン」「ピーターラビット」になります。

海外名作映画と巡る世界の絶景.jpg 「ああ、これはここで撮影したのか」みたいな発見もあって楽しめたことは楽しめましたが、どのような基準で15作選んだのかよく分からなかったのと、Amazonnのレビューで誰かが書いてましたが、「もうちょっとおとなしめの写真でもよかったかな」と自分も思いました(写真に彩色してあるように思われた。敢えて絵画的に見せているのか)。そサウンド・オブ・ミュージック .jpgれでも、「サウンド・オブ・ミュージック」('65年/米)とか、音楽もさることながら、改めて見どころが多かったなあと思いました。

 「サウンド・オブ・ミュージック」は、1938年のオーストリアを舞台に、後に家族合唱団となるフォン・トラップ一家をモデルに「ウエストサイド物語」のロバート・ワイズが監督した作品で、史実との違いがいろいろ言われていますが、1つの作品に使われた曲で、これだけ多くの曲が誰ものお馴染みになっているという点では稀有な作品であるように思います。

サウンド・オブ・ミュージック ヘルブルン宮殿.jpgサウンド・オブ・ミュージック ヘルブルン宮殿2.jpg その主要な映画の舞台であるザルツブルグは、モーツァルトの出身地としても知られていますが、行ったことはありません。ただ、家族が合唱遠征で行って、本書にも写真がある、映画の中で若い二人が密会して「もうすぐ17才」を歌うヘルブルン宮殿のガラスのパビリオン(映画に使われたものと同じものを後に観光用に再現したものらしいが)や、ザザルツブルグのソルト.JPGザルツブルグ栓抜き.JPGルツブルクの祝祭劇場で行われたコンクール(ここでは「ドレミの歌」「エーデルワイス」「さようなら、ごきげんよう」が歌われる)のロケ地となったメンヒスブルグの丘なども訪ね、合唱を披露し憲章都市 (Statutarstadt)章.pngたようです。お土産は"モーツァルト・チョコ"と""モーツァルト栓抜き"(笑)。それと"ザルツブルグ"という都市名の由来になったよく言われているソルト(塩)でした("ザルツブルグ"という都市名は、実際には市章にもなっている城の固有名詞が由来だそうだが)。

 また、この作品は、個人的には、小学校の時の転校先で同学年の生徒たちが前年に課外授業で鑑賞しており、途中から転入した自分だけ観てなかったりしたもので、ちょっとコンプレックスがあった作品でもあります。大人になったらなったで、家族が現地に行ったことがあって自分は行ったことがないという、ある意味、"負い目"が付きまとう作品かも(笑)。写真で見るのもいいですが、やっぱり実際に行ってみたいものです。

サウンド・オブ・ミュージック 製作45周年記念HDニューマスター版 [AmazonDVDコレクション]」['18年]
サウンド・オブ・ミュージック45周年記念HDニュー.jpg「サウンド・オブ・ミュージック」●原題:THE SOUND OF MUSIC●制作年:1965年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ワイズ●製作:ロバート・ワイズ/ソウル・チャップリン●脚本:アーネスト・レーマン●撮影:テッド・マッコード●音楽:リチャード・ロジャース/オスカー・ハマースタイン二世/アーウィン・コスタル●原作:ワード・リンゼイ/ラッセル・クローズ●時間:174分●出演:ジュリー・アンドリュース/クリストファー・プラマー/エリノア・パーカー/リチャード・ヘイドン/ペギー・ウッド/チャーミアン・カー/ヘザー・メンジース/ニコラス・ハモンド/デュエイン・チェイサ/アンジェラ・カートライト/デビー・ターナー/キム・カラス/アンナ・リー/ポーティア・ネルソン/マーニ・ニクソン/イベドネ・ベイカー/ベン・ライト/ダニエル・トゥルーヒット●日本公開:1965/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:池袋文芸坐(81-01-28)●2回目:三軒茶屋映劇(87-03-21)(評価:★★★★)●併映:(1回目)「奇跡の人」(ポール・アーロン)/(2回目)「王様と私」(ウォルター・ラング)

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スクリーンで観るのとはまた違った、一人一人の意外な人となりが伝わってくる男優・女優篇。

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昭和の映画ベスト10 ‐男優・女優・作品‐

 1941年生まれで、大学卒業後、東映AG、角川春樹事務所などに勤務した著者が、「映画は娯楽」という考えのもと、昭和の男優、女優、作品のベスト10を選んで解説したものです。

 男優では長谷川一夫、三船敏郎、渥美清、高倉健、市川雷蔵、勝新太郎、萬屋錦之介、石原裕次郎、菅原文太、仲代達矢、女優では、田中絹代、李香蘭、原節子、高峰秀子、京マチ子、美空ひばり、岩下志麻、吉永小百合、富司純子、薬師丸ひろ子、作品では、「東京物語」(昭和28年)、「七人の侍」(29年)、「二十四の瞳」(29年)、「椿三十郎」(37年)、「浮雲」(30年)、「飢餓海峡」(40年)、「男はつらいよ」(44年)、「仁義なき戦い」(48年)、「砂の器」(49年)、「幸福の黄色いハンカチ」(52年)が選ばれています(ベスト10内での順位づけは無し)。

 男優篇・女優篇で全体の8割を占め、作品よりも俳優の方にウェイトがかかっている感じですが、"映画通"を称するならば知っておきたい(または知っているであろう)エピソードが詰まっていて楽しめました。それぞれの俳優に思い入れを込めながらも、淡々と逸話を紹介しているのも良かったです。

 長谷川一夫(昭和59年没)については、松竹から東宝へ移籍した際にヤクザに顔を切られた「林長二郎傷害事件」の、当時マスコミに公表されることがなかった"真実"が書かれていて、当時松竹系の新興キネマの撮影所長をしていたという永田雅一が関係していたとはびっくり。長谷川一夫のNHK大河ドラマ「赤穂浪士」への出演ギャラは史上空前だったそうですが、当時のNHKってそんなに大盤振る舞いだったのか。

「羅生門」.jpg 三船敏郎(平成9年没)がカメラマン志望で東宝を受けて、書類の手違いで俳優志願に回され、面接会場にいた高峰秀子の目に留まって、その存在感に胸騒ぎを感じた高峰秀子が黒澤明に連絡し、駆けつけた黒澤明も三船敏郎を見てただならぬ雰囲気を感じて審査委員長だった山本嘉次郎監督に直訴して三船敏郎の採用が決まったというのは有名な話。その後、黒澤明監督の「羅生門」で世界に羽ばたく三船敏郎ですが、当初、この作品の国内での評価はそう高くなく(キネ旬ベストテン5位)、最初は大映社長の永田雅一も「この映画はわけがわからん」と言っていたのが、ベネチア映画祭でグランプリの受賞が決まると態度を一変、自分の手柄のように語り、世間は「黒澤明はグランプリ、永田雅一はシランプリ」と揶揄したとあります。因みに、三船敏郎はいつも撮影現場に誰よりも早く来て、セリフは完璧に覚えていて、相手がとちっても嫌な顔ひとつ見せず、お付きを絶対付けず、カバン(化粧箱)なども自分で持ったそうで、撮影現場で非常にストイックな姿勢を見せ周囲の尊敬を集めたという高倉健をちょっと想起させます。

男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎
男はつらいよ 浪花の恋の寅次郎 水中花.jpg 渥美清(平成8年没)のところでは、世間ではあまり知られていない彼の来歴が書かれてていて、テキ屋稼業みたいなこともやっていたのだなあ。ストリップ劇場で仕事していたというのは片や劇団員として、片や漫才師としてという違いがあるものの、後のビートたけしなどにもつながるように思いました。当時、渥美清は1歳年上のストリッパーと同棲していて、彼女は渥美清に惚れ込んで尽くし、渥美清が大病したときも献身的に世話をしたけれども、彼が有名になると静かに身を引いたとのことで、こういう気質の女性って昔はいたのだなあと。公私混同を嫌った渥美清の私生活は謎に包まれ、彼が結婚していたことを彼の死まで知らなかった人も多かったそうです。

高倉健 bunka.png 高倉健(平成26年没)もプライベートを見せなかった俳優で、晩年にガンで病床に伏してもごく一部の人にしか伝えられなかったというのは、渥美清とちょっと似ているように思いました('13年の文化勲章親授式に出席した際は、もしかしたら...とは思ったが)。死後、養女・小田貴月(たか)氏の振る舞いに、高倉健をよく知る関係者らから嘆きの声が聞こえてくるのが残念。自宅も壊され、鎌倉霊園の墓も更地になって、その骨さえ家族の元には残らず、著者も「名声と富を極めた高倉だったが、死後の始末までは心が至らなかった。しかし、立派な足跡は残った」と書いています。

大映グラフ 1967年 昭和42年 新春特別号.jpg 市川雷蔵(昭和44年没)が、長谷川一夫に続くスタートして脚光を浴びたのに、長谷川一夫よりずっと早く亡くなってしまったのは本当に残念。本書では、同じ大映で仲の良かった勝新太郎から見た市川雷蔵像と言うのがあって、メイクをすると「市川雷蔵に変わる」「メーキャップをしている姿は菩薩のように見えた」とのこと。この人もガンで、37歳の短い生涯でした。

大映グラフ 1967年 昭和42年 新春特別号 市川雷蔵 勝新太郎保

 といったように続いていきますが、女優篇も、原節子が「小早川家の秋」で共演した司葉子と撮影中に明石へプライベートで海水浴に行ったとき、淡路島を見て「司さん、私、あそこまで泳いでくる」と言うので、びっくりして「お願いだからやめてください」と。スクリーンで観るのとはまた違った、一人一人の意外な人となりが伝わってくる選りすぐりのエピソードがコンパクトに取り上げられていて、適度な"トリビア感"が個人的には良かったです。

 女優ベスト10に薬師丸ひろ子が入っているのがやや異質のようにも思いましたが、著者が角川春樹事務所に勤務していた時期があったということで、おそらくそれなりに思い出や思い入れがあるためではないかと推察します。まえがきでも、本書の「ベスト10」はあくまで著者の判断であると断っていて、「読者諸氏には、たとえば同期が集まった際、病気自慢や孫の話ばかりでなく、本書をネタに、自分の思うところを大いに議論して貰いたいと思う」とあります(なかなかそうはならず、結局は病気自慢や孫の話ばかりになってしまったりするものだが)。

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高倉健の"原点"と併せ、60年代から70年代にかけての"時代"を感じさせる。
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憂魂、高倉健.jpg憂魂、高倉健0.jpg
憂魂、高倉健』['09年](28.2 x 20.4 x 3.8 cm)
   
憂魂、高倉健11.jpg憂魂、高倉健00.jpg 1971年に刊行されたものの、版元の倒産や東映による販売差し止め等の事情により書店店頭に並ぶことのなかった写真集の38年ぶりの復刻リニューアル版で、遠藤努撮影による俳優・高倉健(1931-2014)のスチール写真を中心に、プライベート写真やスナップも含め、横尾忠則が編集した370ページあまりの写真集です。細江英公、立木義浩、森山大道、石黒健治ほか写真家の作品、横尾忠則による高倉健インタビュー・年譜なども収録されています。

『憂魂、高倉健』['71年]

 左開きの表紙の最初に7ページほど細江英公撮影の海の写真が続き、高倉健の生地の五万分の一の地図が入って、次のページから立木義浩に憂魂、高倉健12.jpgよるヌード写真5枚とその間にヘンリー・フォンダのポートレイト(インタビューによればヘンリー・フォンダは高倉健の好きな俳優)、なぜか乳牛を撮ったものなどイメージ写真が挿入されていて、次に1ページ9点、8ページにわたって、高倉健の映画撮影の際などに撮られたスナップ写真やそれに混じって横尾氏による高倉健のイラストレーションが続き、続いて12ページほどの高倉健に対する質問状形式のインタビューがあり、年譜が3ページあって、さらに高倉健の赤ちゃんの時から明治大学1年生の時までのポートレイト的な写真が続き、ここまででで60ページになります。

憂魂、高倉健02.jpg憂魂、高倉健03.jpg その後はすべてモノクロで310ページ分、各ページ断ち落としで高倉健の映画スチール、撮影現場などでのスナップ写真が続き、そのうちの7割が東映のスチールカメラマンだった遠藤努氏の撮影によるもので、残りの3割は石黒健治氏の雑誌発表の写真や新たに撮り直した写真などとなっています。ですから、ボリューム比率からすると遠藤努、石黒健治両氏による写真集と言えなくもないですが、上記の60ページまでの構成から窺えるように、また、表紙デザインなどからも窺えるように、横尾忠則氏の編集色がはっきり出ている写真集でもあります。

憂魂、高倉健1 3.jpg憂魂、高倉健04.jpg 収められているのが70年代以前の、「日本侠客伝」シリーズ('64年スタート)、「網走番外地」シリーズ('65年スタート)、「昭和残侠伝」シリーズ('65年スタート)に出まくっている頃の高倉健のスチール写真、スナップ写真が大半で(その時点ですでにネガが棄却されていたものが殆どで、プリントされた印画紙を撮り直しているため、コラージュ的な雰囲気がある)、高倉健の"原点"的なものが感じられるとともに、60年代から70年代にかけての"時代"を感じさせるものにもなっています。そのことは、それだけ高倉健という俳優が、その時代の何かを背負っていたということなのかもしれません(後の人が彼に"時"を重ねたとも言える)。

『憂魂、高倉健』['71年]
憂魂、高倉健 都市出版社1.jpg憂魂、高倉健 都市出版社2.jpg 「付録」リーフレットなどによれば、本書のオリジナル版は1971年に都市出版社から刊行され、前述の通り色々な事情があってそのオリジナル版が書店に並ぶことはなく、その一部は古書店に流通しただけだけだったとのことですが、それよりも以前に、その本の元になった『高倉健賛江』('68年/天声出版)というものがあり、こちらは、出版社に突発事故が生じ、見本数冊を作っただけで出版さえ実現しなかったとのことです。復刻リニューアル版では、函のデザインに「高倉健賛江」のカバーを使用し、本体には「憂魂、高倉健」のカバー写真を使用するなどして、「高倉健賛江」と「憂魂、高倉健」を合体させた形となっています。

 インタビューのところが、1968年と1971年で同じ質問をしてそれを対比させる形になっているのは、『高倉健賛江』編集時のインタビューと『憂魂、高倉健』編集時のインタビューということになるかと思いますが、同じ質問に対して回答が殆ど同じものもあれば、一部に答えが真逆だったりするものもあって面白かったです。個人的に興味深かったのは、「好きな自分の映画」で、1971年のインタビューで、「お正月にいった網走番外地」(どういう意味?)と、1回目の「日本侠客伝」、1回目の「昭和残侠伝」を挙げていて、やはり1回目の作品が印象深いのでしょう(1968年のインタビューでは「ジャコ万と鉄」と1回目の「昭和残侠伝」を挙げている)。「網走番外地」「日本侠客伝」「昭和残侠伝」をシリーズとして比べてどうかというと、「京都と東京スタジオに分かれてますねェ。イレズミの入っているのと入ってないのとあります。残侠伝は好きですねェ。で、やってて楽しいのは網走が楽しいです。ハイ、役柄としては、ですよ」と。

I憂魂、高倉健_5269.JPG 横尾忠則氏が全体をコラージュのように編集しているという意味で、写真集と言うより横尾氏の作品と言った方がいいくらいかもしれませんが、横尾氏自身は、「藝術」と言うより高倉ファンとしての思い入れでこの写真集を編集したように思われ、再度復刻されたことも含め、その思い入れが伝わってくる内容でした。

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高倉健が仕事を通してスタッフや周囲の人々に与える影響力の大きさを感じた。

高倉健の身終い2.jpg 高倉健の身終いs.jpg
高倉健の身終い (角川新書)』/著者が高倉健に初インタビューしたときの写真(写真/渋谷典子)[本書より]

 フリー編集者として高倉健の取材を重ねてきた著者による本では『「高倉健」という生き方』('15年/新潮新書)がありますが、本書『高倉健の身終い』の方は、タイトルからも窺えるように、前著より高倉健の活動後期のエピソードが多いでしょうか。それと、高倉健と共に映画作りに関わった人々の証言やエピソードの比重が高いように思いました。

居酒屋兆治 000.jpg 印象に残ったのは、大原麗子に取材した際の話でしょうか(57p)。彼女は、健さんと仕事して、「仕事に"お"の字を付けなくなった」とのことで、「"お仕事"っじゃなくって、"仕事"。命を賭けてやるものに"お"を付けると、なんだか甘っちょろいじゃない」と。これを「健さんの生き方から学んだ」というから、一緒に仕事した人に与える影響力がすごいなあと。大原麗子が40代、1990年代の話であるとのことで、「網走番外地 北海篇」('65年/東映)で大原麗子19歳、高倉健34歳で初共演してからのことを振り返っているのでしょうか。「居酒屋兆治」('83年/東宝)でも共演しているし(大原麗子の演じた女性は凄まじいくらい薄幸だった。その大原麗子自身も、'09年に孤独死に近い死を遂げる)、NHKドラマ「チロルの挽歌」('92年)でも共演していて(大原麗子45歳。高倉健61歳)、女優人生の節目節目で高倉健の影響を受けたのだろなあ。

映画 ホタル00.jpgホタル (映画)00.jpg 「居酒屋兆治」と同じく降旗康男の監督作である「ホタル」('01年/東映)で、健さんから著者にロケ地へのお呼びが掛かったという、山岡(高倉健)、知子(田中裕子)夫婦が二人の北海道の旅を回想するシーンで(撮影地は長野県・蓼科)、丹頂鶴の求愛ダンスを見ているうちに高倉健が急にコートやワイシャツを脱ぎ、「くわぁ、くわぁ」と鶴の鳴き声を真似て舞ったのは、あれ、脚本にない演技、つまりアドリブだったそうです(153p)。そういうことする俳優なんだと、今まで知らなかった面を知ったように思いました。

 「四十七人の刺客」('94年/東宝)で、スタッフの実際にやっているところを見なくともその丁寧な仕事ぶりをよく理解していたり(168p)、「南極物語」('83年/東宝)で、疲労が重なって犬橇を上手く扱えず撮影を妨げたスタッフに、「宿舎に帰らせろ」と怒鳴ったかと思ったら、後で手にいっぱい栄養剤を持ってそのスタッフの宿舎に行き「これ、飲め"!」と言ったりとか(175p)、大スターでありながら、映画は一人で作るものではないということがよく分かっていたのだなあと。いい作品を作るためにスタッフの仕事ぶりを理解し、励ますという、監督のように先頭に立って目立ったことをするわけではないけれど、これもある種のリーダーシップではないかと思いました(しかも、こういうの、大上段に構えたリーダーシップ以上にヒトの琴線に触れる)。

鉄道員poster (1).jpg鉄道員 02 (2).jpg 監督も偉いです。「鉄道員 (ぽっぽや)」('99年/東映)の撮影の時、佐藤乙松(高倉健)、静枝(大竹しのぶ)夫婦の子供が亡くなった時の回想シーンで、静枝が乙松に遺児を手渡す場面に違和感を感じた著者が、降旗康男監督からどうかと訊かれてその旨を伝えると、出来上がった作品では、静枝がずっと遺体を抱き続けている演技になっていたと。こうした柔軟性があるから、降旗康男監督って高倉健とも相性が良かったのだろなあ。

黒澤明2.jpg 本書には無いエピソードですが、高倉健は「居酒屋兆治」('83年/東宝)への出演準備をしていた矢先に黒澤明監督から「」('85年/東宝)に架空の人物「鉄修理(くろがねしゅり)」役での出演を打診されていて、「でも僕が『乱』に出ちゃうと、『居酒屋兆治』がいつ撮影できるかわからなくなる。僕がとても悪くて、計算高い奴になると追い込まれて、僕は黒澤さんのところへ謝りに行きました」と述懐しています。黒澤明映画「ホタル」監督.jpgは自ら高倉宅へ足繁く4回も通って、「困ったよ、高倉君。僕の中で鉄(くろがね)の役がこんなに膨らんでいるんですよ。僕が降旗康男君のところへ謝りに行きます」と口説いたけれども、高倉健は「いや、それをされたら降旗監督が困ると思いますから。二つを天秤にかけたら誰が考えたって、世界の黒澤作品を選ぶでしょうが僕には出来ない。本当に申し訳ない」と断ったため、黒澤明から「あなたは難しい」と言われたそうです(結局、鉄修理は井川比佐志が演じた)。

 高倉健らしい話だし、役者と監督のいい関係がずっと続いた例でしょう(黒澤監督が三船敏郎の関係が途中で途絶えたり、勝新太郎と喧嘩のような別れ方をしたのとは対照的)。その降旗康男監督も、昨年['19年]5月に84歳で亡くなっており、寂しいことです。

高倉健(1931-2014、83歳没)/降旗康男監督(1934-2019、84歳没)(「ホタル」('01年)撮影現場)

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高倉健が、真似や演技ではなく実際に「高倉健」という生き方としていたように思えた。

「高倉健」という生き方 (新潮新書).jpg  谷 充代.jpg  谷 充代 氏[写真:婦人公論]
「高倉健」という生き方 (新潮新書)

 フリー編集者として80年代半ばから2000年代まで高倉健の取材を重ねてきた著者(ラジオ番組をベースにした『旅の途中で』(高倉健著、'03年/新潮社、'05年/新潮文庫)のプロデュース担当者でもある)が、国内外の映画の現場や私的な会合の場や旅先などで、俳優として人としての高倉健を男を追い続ける中で、「健さん」本人をはじめ監督や俳優仲間、スタッフや縁あった人々に細やかな取材を重ね書き綴ってきた全33話のエピソード集です。

 さすが取材に年季が入っているなあという感じ。そして何よりも、高倉健に対する敬愛の念を感じました。本人が亡くなってから、一部いろいろな話も出てきていますが、やはりスターはスターのままでいて欲しいと思うので、個人的にはそうしたものをほじくり返すような動きにはあまり関心がいきません。本書も「いい話」ばかりですが、これはこれでいいのでは。

 印象に残ったのは、「関係を尽くすひと」「一期一会ということに体を張っている」(105p)というところ。この先、また会うかどうか分からない人に対してもそうした姿勢で接することができるというのはスゴイことだなあと。著者はそれを、どこまでいっても自分に執着するブルジョワ的生き方と対比させて、"貴族の無欲"と表現していますが、ある種"孤高の精神"のようなものを感じました(こういうの感じさせる人って、ハリウッドスターにはいないなあ)。

 妻だった江利チエミの墓参りを欠かさなかったことはよく知られていますが、著者も健さんの仕事の前には江利チエミの墓参りをしていて、行くとすでに墓前にウィスキーロックがあったりして、撮影のプランの依頼と併せてその感動を手紙で伝えたところから撮影の仕事を引き受けてもらえたとのこと(113p)。1999年のことで、カメラマンは十文字美信氏(野地秩嘉氏の『高倉健ラストインタヴューズ』('17年/プレジデント社)のカバー写真などもこの人の撮影)。

 『男としての人生―山本周五郎が描いた男たち』(木村久邇典著、グラフ社)という本が気に入っていて、絶版の古書扱いになっていたものを、「自分が百冊引き取る」と言って増刷に漕ぎ着けたという話(136p)も良かったです(同じ山本周五郎好きの黒澤明監督と一度仕事して欲しかった)。

網走番外地g_  .jpg 随筆集『あなたに褒められたくて』の「あなた」が「お母さん」であることはその本の中でも述べられていますが(そう言えば、「網走番外地」('65年/東映)は、主人公が母恋しさに網走刑務所からムショ仲間と手錠につながれたまま脱獄する話だった)、自分の母親が亡くなったとき、まわりの誰にも知られないように仕事を続けていたそうで(144p)、これもスゴイなあと思います。

 地方で地元の人しか知らない温泉場を教えてくれた蕎麦屋の主人が、「アンタね、俺が若いころに観たことがある。ん~と、あの~」と言いつつ名前が出てこず、「ウン、よたもんの俳優だ」「あの、よたもん」と言ったのを、宿に帰る車の中で何度も「あの、よたもん」と口真似しながら、嬉しそうに笑っていたというのもいい話です(174p)。

 著者が海外の撮影にも同行を許され、手持無沙汰に身の回りの世話をしようとすると、「谷、書くためにきているんだろ。そんなことしなくていいよ」と戒めたという(195p)、これなんか、なかなか言えないことだと思います。

後藤久美子.jpg 若者を見ていると時代の変化を感じると言い、「立派だなぁと思ったのは後藤久美子さん。彼女の恋愛は実に正直で堂々としている。恋人と海外で暮らしていて、仕事がある時にだけ日本に帰ってくる。公私混同せずに生きているよね」と言っていて(101p)、自分よりずっと若い人に対しても、いいところを見つけ褒める姿勢も立派です。この「公私混同せず」の考えは彼自身の生き方にも反映されているように思います。また、若い頃に恋人が女優志望であったために一緒に暮らしたいというのを突っぱねたという過去があったとのこと。その本人が、彼女との生計のために俳優になり、何とか食べていけるようになった時にはその彼女と別れてしまったというのは、まさに皮肉の連続と言っていい人生だなあ。

 これまで、高倉健という人は「高倉健」を演じ続ける生き方をせざるを得ず、その壊せない(壊してはいけない)「高倉健」像に縛られるような面もあって、晩年は出演映画数なども減ったのかなあと思っていました。それだけだと、「高倉健」(という虚像)を生きる、ということになりかねないですが、本書を読んで、「高倉健」を本人はわりと自然に生きていた―つまり、真似や演技ではなく実際に「高倉健」という生き方としていたように思えてきました。

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新東宝「最後の生き証人」たちの懐述。丹波哲郎の話が一番面白かった。

新東宝1947-1961.jpg新東宝1947-1961 創造と冒険の15年間.jpg 新東宝1947-19613.JPG
新東宝1947-1961 創造と冒険の15年間』カバー写真「盗まれた恋」('51年 市川崑監督)森雅之/久慈あさみ

 本書は前半が主に90年代半ばから2000年代にかけておこなわれた新東宝作品関係者へのインタビュー集で(故人となっている人が多い。新東宝について言えば「最後の生き証人」たちの懐述ともいえる)、後半が新東宝の全作品(800本超!)のフィルモグラフィーとなっており、このフィルモグラフィーはまさに貴重な資料ですが、前半のインタビュー部分も同じく貴重な記録だと思います。

インタビューの方は、浅野辰雄(監督)から吉田輝雄(俳優)まで五十音順に31人が登場し、石井輝男、小野田嘉幹、曲谷守平といった監督から、宮川一郎といった脚本家、前田通子、三ツ矢歌子といった女優から、丹波哲郎、沼田曜一、由利徹といった男優まで多彩です。

 監督で話が面白かった(興味深かった)のは「ナショナル・キッド」の脚本も手掛けた大貫正義監督で、斎藤寅次郎監督が晩年"寅二郎"に改名したのは、「男はつらいよ」の寅次郎と一緒の名前が嫌だったというのが真相だとか...。

殺人容疑者 映画.jpg 男優で最も話が面白かったのは丹波哲郎で、駆け出しの頃、「殺人容疑者」('52年)製作時に、主役の俳優に予定していた役者が都合できず、困って探していた製作本部から、そこへ使いで行ったところをマネジャーか事務員と間違えられて「君に似た俳優を探してきてくれ」と言われ、「ああ、知ってるよ」と答えたら30人のスタッフに取り囲まれ、「はい、俺だ」とは言えなくなって、「いまちょっと名前は忘れたけれど、事務所に帰れば分かる」と...(最終的にはこの「殺人容疑者」が丹波哲郎のデビュー作となる)。

人喰海女 三ツ矢歌子.jpg 女優では、三ツ矢歌子が面白かったそうでしょうか。一番思い出に残っている作品が「スーパージャイアンツ」シリーズで、女子高生の格好のまま吊られて空を飛ぶシーンが大変で、泣きたくなるぐらいだったが、今思うと楽しかったとか、小野田嘉幹監督の「人喰海女」('60年)で、入浴シーンで「また裸になるのは嫌です」と言ったら、「裸にならなくても、水着を着てタオルで隠せばいいから」といって庇ってくれて、「それで、フッと気持ちが動いたのか、それから二年後に結婚しました(笑)」。

三ツ矢歌子 in「人喰海女」('60年)

前田通子 ]女王蜂の復讐.jpg 前田通子のインタビューでは、志村敏夫監督の「女真珠王の復讐」('56年)で、彼女の後ろ姿の全裸が出てくるのは「アナタハン事件」をベースにしているとか(映画の方?)。「女真珠王の復讐」の時は、脱ぐシーンがあることが事前に分かっていて、裸になることに「ためらいはございませんでした」と。新東宝を辞める契機となった俗に言う「裾まくり事件」(彼女と一緒に志村敏夫監督も辞めた)については、本人は「嫌だ」とも「やりたくない」とも言っていなくて、ただし急な話だったので「うっ」となった時に昼食休憩に入って、そのまま、「前田通子が現場でゴネてる」という話になったとか。

前田通子 in「女真珠王の復讐」('56年)

 前田通子の話も貴重ですが(インタビュー収録は1996年)、真相は「藪の中」といったところでしょうか。やはり一番面白かったのは丹波哲郎かな(彼のことだから話を"盛っている"ことは十分考えられるが)。

 あとがきによれば、本書の企画自体は1990年代初期にスタートしたものの、諸事情があって10数年以上中断し、5年ほど前に蘇って今年['19年]の刊行に至ったとのこと。800本超のフィルモグラフィーは、先に取り上げた『新東宝は"映画の宝庫"だった』('15年/メディアックス)の第五章「新東宝映画完全リスト」の716本を上回りますが、ほぼ全作品にあらすじや解説がついていて、実はこの作業が一番大変であったとのことです。企画が潰えなかったのは、編者らの努力というか執念のお陰と言っていいいと思います。

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タイトル通り「新東宝は"映画の宝庫"だった」のだなあと。

新東宝は 新東宝は映画の宝庫だった 0.jpg 新東宝は映画の宝庫だった h.jpg
新東宝は"映画の宝庫"だった』カバー写真「海女の化物屋敷」('59年)沼田曜一/万里昌代/瀬戸麗子

新東宝は映画の宝庫だった 巻末.jpg 第一章で、新東宝映画の代表作を1作1ページから2ページで紹介、第二章は、著者のエッセー「新東宝映画の歴史 監督 スターたち」、第三章が、中川信夫インタビュー「中川信夫 全作品を語る」で、第四章が、宮川一郎インタビュー「大蔵貢は説明はいらない 面白いところだけ繋げ、と言った。」(共に聞き手は著者)、最後の第五章が「新東宝映画完全リスト」(全716本! 著者による評価とコメント入り。ソフト化されていない作品が多く、資料としても貴重)という構成ですが、1945年から1961年までの新東宝作品を紹介した第一章が全体の半分以上を占め、やはりこれがメインでしょうか。書き溜めていたとは言え、約150本の作品を200ページ近くにわたって、個人的な思い入れも含め(ただしあらすじ等も丁寧に紹介している)解説しているのはスゴイことかもしれません。

稲垣浩監督「忘れられた子等」('49年)/黒澤明監督「野良犬」('49年)
「忘れられた子等」 .jpg野良犬1.jpg 第一章は、萩原遼監督の「大江戸の鬼」('47年)から始まって(著者は、長谷川一夫と高峰峰子のロマンスの情緒が感じられなかったとのことだが)、市川崑監督の「人間模様」('49年)、中川信夫監督の「エノケンのとび助冒険旅行」('49年)、稲垣浩監督の「忘れられた子等」('49年)と、初期40年代の作品は、時代物、サスペンス、コメディ、ヒューマンドラマと、実に内容多彩です。そして、あの黒澤明監督の「野良犬」('49年、配給会社は東宝)(日本で初めての刑事物)も、清水宏監督の「小原庄助小原庄助さん 2.jpg宗方姉妹B.jpgさん」('49年、配給会社は東宝)(相米慎二監督が日本映画のベスト3に挙げていたとのこと)も新東宝映画でした(巻末のリスト見て、小津安二郎監督の「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」('50年)も小津安二郎が新東宝に招かれて撮った作品だったこと思い出したが、著者はこの作品を小津映画にしてはイマイチと。確かに)。
清水宏監督「小原庄助さん」('49年)/小津安二郎監督「宗方姉妹」('50年)
 
志村敏夫監督「女真珠王の復讐」('56年)/志村敏夫監督「海女の戦慄」('57年)
女真珠王の復讐00.jpg海女の戦慄jpg.jpg 50年代に入ると。溝口健二監督の「西鶴一代女」('52年)のようなベネチア映画祭で賞を受賞する作品まで出てきて、それでいながら娯楽作品も多く(どちらかと言えば娯楽作品がメイン)、志村敏夫監督、前田通子主演の「女真珠王の復讐」('56年)や(日本映画で初のオールヌード映画。著者によれば、ストーリーはデュマの「岩窟王」の女性版とのこと。ナルホド)、「海女の戦慄」('57年)(ご都合主義だが、前田通子のゴージャスな肉体を味わう映画と思えば一見の価値ありと)などは、まさにこれぞ新東宝映画!という感じです。

曲谷守平監督「海女の化物屋敷」('59年)/小野田嘉幹監督「女奴隷船」('60年)カラー作品
海女の化物屋敷33.jpg海女の化物屋敷 09.jpg「女奴隷船」(新東宝)1.jpg「女奴隷船」(新東宝)2.jpg さらに中川信夫監督の「亡霊怪猫屋敷」('58年)や、本書のカバー写真にもなっている曲谷守平監督の「海女の化物屋敷」('59年)といった怪奇スリラーが多く作られ(と言っても、著者が言うように「海女の化物屋敷」の三原葉子などは"明るい探偵役"で、映画自体も怖くない)、「海女の化物屋敷」で映画初主演を果たした菅原文太は小野田嘉幹監督の「女奴隷船」('60年)(著者は「優秀な特撮技術で創られたスケールの大きな海洋冒険アクション」と評価)で丹波哲郎とぶつかります。丹波哲郎は「女真珠王の復讐」で天知茂の敵役で出ていて、この「女奴隷船」では海賊の首領役で菅原文太の敵役に。天知茂は、石井輝夫監督の「黒線地帯」('60年)で主役のトップ屋黒線地帯 1960 dvd.jpg黒線地帯03.jpg黒線地帯 1960① 天知茂(町田広二).jpgに。それをコメディリリーフするのが三原葉子。著者は、「黒線地帯」を中川信夫監督の「東海道四谷怪談」('59年)「地獄」('60年)とともに新東宝映画の三大傑作の一つに挙げています。

石井輝男監督「黒線地帯」('60年)

 新東宝の歴史と、どんな監督が活躍し、どんなスターを輩出したかは、第二章の三部構成の著者のエッセーに詳しいです。しかし、途中から社長になった大蔵貢が低予算の猟奇怪談お色気といった「エロ・グロ路線」を敷いて新東宝の経営を再建、新・黄金時代を築いたかと思ったら、自ら企画の手詰まりで1960年に退陣、翌年には新東宝という会社自体が瓦解するという、この会社の栄枯盛衰の最後の「衰」の部分はあっけなかったなあ。

 活躍した監督は、渡辺邦男、中川信夫、市川崑、石井輝夫、渡辺祐介、土居通芳、小野田嘉幹、志村敏夫など。男優では、初期の頃は、大河内伝次郎、長谷川一夫、後に天知茂、菅原文太、丹波哲郎、若山富三郎、宇津井健、吉田輝雄、中山昭二、高島忠夫など。女優は、初期の頃は、原節子、高峰秀子、後に三ツ矢歌子(「女奴隷船」の小野田嘉幹監督と映画に出た年に結婚)、三原葉子、久保菜穂子、池内淳子、大空真弓、万里昌代など。これだけを見ても、「新東宝は"映画の宝庫"だった」というのは分かる気がします。そうだ、前田通子を忘れてはならない。あれほど会社に貢献した女優をかっとなってクビにしてしまう、そんな大蔵貢のワンマンぶりも、会社を倒産に追い込んだ原因の一つだったように思います。

新東宝1947-1961.jpg ただし、今年['19年]になって刊行された『新東宝1947-1961 創造と冒険の15年間』('19年/ワイズ出版)によると、この本は新東宝関係者へのインタビュー集なのですが、小森白監督などは、大蔵貢の社長就任前に新東宝の経営は傾いており、「悪いのは大蔵貢ではない」と擁護しています(大貫正義監督なども擁護派)。


「大江戸の鬼」長谷川一夫・高峰秀子.jpg「大江戸の鬼」●制作年:1947年●監督:萩原遼●製作:伊藤基彦●脚本:三村伸太郎●撮影:安本淳●音楽:鈴木静一●時間:100分●出演:大河内傳次郎/長谷川一夫/黒川彌太郎/宮川五十鈴/上山草人/汐見洋/岬洋二/鬼頭善一郎/原文雄/小森敏/小島洋々/田中春男/高峰秀子/清川荘司/鳥羽陽之助/伊藤雄之助/阪東橋之助/横山運平/澤井三郎/永井柳太郎/高勢実乗●公開:1947/05●配給:新東宝(評価:★★☆)

高峰秀子・長谷川一夫


忘れられた子等2 vhs.jpg忘れられた子等 2.jpg忘れられた子等 タイトル.jpg忘れられた子等003.jpg「忘れられた子等」●制作年:1949年●監督・製作・脚本:稲垣浩●撮影:安本淳●音楽:西梧郎●原作:田村一二●時間:86分●出演:掘雄二/笠智衆/泉田行夫/岩田直二/葛木香一/浅野光男/葉山富之輔/松浦築枝/滝沢静子/木下サヨ子/宮川喜美枝●公開:1949/10●配給:新東宝(評価:★★★☆)
     
「野良犬」●制作年:1野良犬 1949 0.jpg949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:菊島隆三/黒澤明●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:122分●出演:三船敏郎/志村喬/木村功/清水元/河村黎吉/井田木村 功 野良犬.jpg綾子(淡路恵子)/三好栄子/千石規子/本間文子/飯田蝶子/東野英治郎/永田靖/松本克平/岸輝子/千秋実/山本礼三郎●公開:1949/10●配給:東宝●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(10-12-18)(評価:★★★★)   
        
小原庄助さん 1949.jpg小原庄助さん 1.jpg「小原庄助さん」●制作年:1949年●監督:清水宏●製作:岸松雄/金巻博司●製作会社:新東宝●脚本:清水宏/岸松雄●撮影:鈴木博●音楽:古関裕而●時間:94分●出演:大河内傳次郎/風見章子/飯田蝶子/清川虹子/坪井哲/川部守一/田中春男/清川荘司/杉寛/宮川玲子/鮎川浩/鳥羽陽之助/日守新一/石川 冷 /尾上桃華/高松政雄/倉橋享/今清水甚二/高村洋三/佐川混/加藤欣子/徳大寺君枝/赤坂小梅●公開:1947/11●配給:東宝(評価:★★★★)
 
宗方姉妹ges.jpg上原謙  高峰秀子 宗方姉妹.jpg「宗方姉妹(むねかたきょうだい)」●制作年:1950年●監督:小津安二郎●製作:児井英生郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:小原譲治●音楽:斎藤一郎●原作:大仏次郎「宗方姉妹」●時間:112分●出演:田中絹代/高峰秀子/上原謙/山村聡/高杉早苗/堀雄二/藤原釜足/河村黎吉/千石規子/一の宮あつ子/堀越節子/坪内美子/斎藤達雄/笠智衆●公開:1950/08●配給:新東宝(評価:★★★☆)
      
女真珠王の復讐9d.jpg女真珠王の復讐1b.jpg女真珠王の復讐 ps.jpg「女真珠王の復讐」●制作年:1956年●監督:志村敏夫●製作:星野和平●脚本:相良準/松木功●撮影:友成達雄●音楽:松井八郎●原作:青木義久「復讐は誰がやる」●時間:89分●出演:前田通子/宇津井健/藤田進/丹波哲郎天知茂/三ツ矢歌子/遠山幸子/小倉繁/若月輝夫/芝田新/林寛/沢井三郎/光岡早苗(後に城山路子)/保坂光代/藤村昌子/石川冷/宮原徹/菊地双三郎/高村洋三/有馬新二/山田長正/国創典(後に邦創典)/伸夫英一/倉橋宏明/高松政雄/山川朔太郎/北一天知茂s.jpg馬/村山京司/竹中弘直/小林猛/川部修詩/大谷友彦/草間喜代四/岡女真珠王の復讐  丹波s.jpg竜弘/池月正/三宅実/西一樹/東堂泰彦/三井瀧太郎/三村泰二/沢村勇/山口多賀志/万里昌子(後に昌代)/有田淳子/藤田博子/森悠子/ジャック・アルテンバイ●公開:1956/07●配給:新東宝(評価:★★★)
天知茂/丹波哲郎
        
前田通子(左から2人目)
海女の戦慄1s.jpg海女の戦慄 前田.jpg海女の戦慄2.jpg「海女の戦慄」●制作年:1957年●監督:志村敏夫●脚本:内田弘三/坂倉英一●撮影:岡戸嘉外●音楽:レイモンド服部●原案:志賀弘●時間:73分●出演:前田通子/天城竜太郎(後に若杉英二)/小倉繁/松本朝夫(後に朝生)/三ツ矢歌子/林寛/芝田新/菊地双三郎/有馬新二/村山京司/九重京司/木下隆二/川原「海女の戦慄」_0.jpg健/桂京子/万里昌子(後に昌代)/大江満彦/石川冷/美舟洋子/有田淳子/秋田真夢/長門順子/水上恵子/島伊津子/保坂光代/辻祐海女の戦慄 スチール.jpg子/葉山由紀子/吉田昌代/水帆順子/太田博之(子役)/武村新/山田長正/信夫英一/広瀬康治/千葉徹/小森敏/国(後に邦)創典/沢村勇/遠藤達雄/高橋一郎/菊川大二郎/南沢潤一●公開:1957/07●配給:新東宝(評価:★★)
「海女の戦慄」(スチール写真)
松本朝夫/三ツ矢歌子/前田通子(手前の3人)

海女の化物屋敷g_1.jpg「海女の化物屋敷」●制作年:1959年●監督:曲谷守平●脚海女の化物屋敷_4.jpg本:杉本彰/赤司直●撮影:岡戸嘉外●音楽:長瀬貞夫●原案:葭原幸造●時間:81分●出演:三原葉子/菅原文太/瀬戸麗子/山村邦子/万里昌代海女の化物屋敷02.jpg沼田曜一/国方伝/五月藤江/岬洋二/九重京司/大原永子/由木城太郎/山下明子/沖啓二/倉橋宏明/白川晶雄/高橋一郎/西朱実/宇田勝哉 ●公開:1959/07●配給:新東宝(評価:★★★)
  
「女奴隷船」ポスター/スチール写真
女奴隷船 ポスター.jpg女奴隷船 スチール.jpg女奴隷船ps.jpg「女奴隷船」●制作年:1960年●監督:小野田嘉幹●製作:大蔵貢●脚本:田辺虎男●撮影:山中晋●音楽:渡辺宙明●原作:舟崎淳「お唐さん」●時間:83分●出演:菅原文太/三原葉子/三ツ矢歌子/丹波女奴隷船 vhs.jpg映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】_.jpg哲郎/左京路子/沢井三郎/大友純/杉山弘太郎/川部修詩/中村虎彦●公開:1960/01●配給:新東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館(86-10-04)(評価:★★☆)●併映:「女獣」(曲谷守平)主演:菅原文太
女奴隷船 [VHS]」「映画「女奴隷船」【TBSオンデマンド】」  

黒線地帯 [DVD] - 1.jpg石井輝男 黒線地帯8.jpg「黒線地帯」●制作年:1960年●監督:石井輝男●製作:大蔵貢●脚本:石井輝男/宮川一郎●撮影:吉田重業●音楽:渡辺宙明●時間:80分●出演:天知茂/三原葉子/三ツ矢歌子/細川俊夫/吉田昌代/魚住純子/ 守山竜次/鳴門洋二/宗方祐二/瀬戸麗子/南原洋子/菊川大二郎/鮎川浩/城実穂/浅見比呂志/板根正吾/山村邦子/桂京子/小高まさる/大谷友彦/水上恵子/国創典/倉橋宏明/宮浩一/晴海勇三/村山京司/原聖二●公開:1960/01●配給:新東宝(評価:★★★★)

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1945年から1980年の「カルトムービー」を紹介。単著なのでまとまりがあった。

カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980.jpgカルトムービー本当に面白い日本映画 1981「→2013.jpg  誘惑 1948.jpg 誘惑 1948年).jpgあの頃映画 誘惑 [DVD]
カルトムービー 本当に面白い日本映画 1945→1980 (メディアックスMOOK)』['13年]カバー「黒線地帯」('60年/新東宝)天知茂/三原葉子『カルトムービー 本当に面白い日本映画 1981→2013 (メディアックスMOOK)』['14年]

 1945年から1980年に公開された、ベストテン映画ではないが面白い「カルトムービー」154作を紹介したもの。単著(一人の著者によるもの)なので、トーンが均一でまとまりがありました(著者は続編として『カルトムービー 本当に面白い日本映画 1981→2013』('14年)も上梓しているが、個人的にはこの"前編"の方が馴染みの作品が多かった)。

IMG_1象を喰った連中.JPG 吉村公三郎監督の「象を喰った連中」('47年)は、確かに、冒頭の出演者のクレジットもわざわざ「象を喰った連中」と「象は喰はない連中」に分けて紹介するというユーモアがありました。本書によれば、宝塚の動物園で病死した象の肉を食べた連中がワクチンを探して大騒ぎになった、という記事を読んだ吉村公三郎監督の着想で生まれた作品とのことで、半分"実話"だった? 最後、著者は、ラストシーンで死を免れたことを喜び、阿部徹が妻と抱き合うシーンで手だけアップになるところが秀逸なのに、「下品だと書いたバカな評論家が当時一人いたことを付け加えておく」と(誰?)。

IMG_2女真珠王の復讐.JPG 志村敏夫監督の「女真珠王の復讐」('56年)は、日本映画史上、女優が初めて大胆なオールヌードを見せた作品として知られ、そのほかにも、前田通子がビキニ姿で海中に潜ったり、手だけで胸を隠して逃げ回るシーンがあるため、単にセクシー映画と見られがちですが、著者は、スピード感溢れるドラマ展開の作りに驚嘆させられると。しかし、やっぱりこの映画は、漂流した一人の女性と32人の男性が南洋の小島で共同生活を送るうちに、女性を巡って殺し合いするまでに発展した、あの「アナタハン事件」がモデルだったのかあ。

IMG_3点と線.JPG 小林恒夫監督の「点と線」('58年)は、犯人の妻役で登場した高峰三枝子は当時40歳で28歳の病弱な妻を演じていますが、著者の言うように、映画の中では年齢に触れられていないので、単に病弱な妻として見れば違和感はないかも。普通なら犯人役など引き受けない大女優がこの役を引き受けたことで、後の市川崑監督の「犬神家の一族」('76年)への出演に繋がり、ブルーリボン助演女優賞を受賞するまでになったと著者は述べています。時刻表のアップは、カラーのシネマスコープでは技術上撮れなかっため、10畳ほどの大きさの時刻表を作り、レールに載せたカメラで接写したとのこと。東京駅のプラットホームの撮影も、国鉄が協力し、列車が止まった深夜に行われたとのこと。本書によって、撮影の苦労の跡が窺えました。

IMG_4モスラ.JPG 本多猪四郎監督の「モスラ」('61年)は、個人的には生まれて初めて観た特撮怪獣映画であり、思い出深いのですが(記憶自体はあとで観直して補強された面もあるかと思うが)、日米合作映画として作られたのだなあ。契約でアメリカのシーンを入れることになっていたのに、予算の都合で日本のシーンだけで撮影を終わらせたところ、アメリカ側から抗議を受け(そりゅあ怒る)、ラストはロリシカ国(ロシアとアメリカの合成語?)に逃げた悪徳興行師(あの小美人を金儲けのために見世物にした)を追って成虫モスラがニューヨークの摩天楼やサンフランシスコの金門橋と思われる街並みを破壊するシーンを撮り直したそうです(観てみたい!)。

IMG_5乾いた花.JPG 篠田正浩監督、石原慎太郎原作の「乾いた花」('64年)は、博打シーンを克明に映像化する篠田正浩監督に対し、脚本の馬場当は物語の骨子が見えにくくなったと不満であったとのことで、配給予定だった松竹も中身が難解だとして公開を見送って8カ月後にやっと封切り、しかも、加賀まりこはスタイリッシュだが裸シーンは本人もそれ以外も無く、人が殺されるシーンも池部良がヤクザの親分を刺すシーンのみで、それも効果音無しの荘厳なオペラでのBGM。それなのに映倫が成人映画に指定(著者は博打シーンのためではないかと推測)-だったにも関わらず、公開されると大ヒットだったとのことです(池部良の本作での演技が、「昭和残侠伝」('65年)での高倉健との共演に繋がった)。

IMG_6大魔神.JPG そのほか、安田公義監督の「大魔神」('65年)(大魔神の身長を4.5メートルに設定し、それは人間の身長の2.5倍の高さが人間が見上げたときに一番恐怖を感じるからという理IMG_7ある殺し屋.JPG由からだったそうだ)、森一生監督、藤原審爾原作の「ある殺し屋」('67年)(市川雷蔵のカッコよさ。「歌手の小林幸IMG_8盲獣.JPG子がまだ中学生で、小料理屋の女中を演じているのもご愛嬌」)や、増村保造監督、江戸川乱歩原作の「盲獣」('67年)(「登場人物たった三人」)など、二頁見開きで紹介されている作品と、そのほかに一頁紹介の作品がありますが、自分がちょっと気にかけている作品がどれも二頁見開き紹介なのが嬉しいです(それだけ、「カルトムービー」としては"メジャー"と言えるのかも)。
    
誘惑ges.jpg誘惑2.jpg 一頁紹介の作品の方がもしかしたら"カルト度"は高いのかなとも思ってしまいますが、そんな一頁紹介作品の中に、吉村公三郎監督の「誘惑」('48年)がありました。吉村公三郎監督としては「象を喰つた連中」「安城家の舞踏会」に次ぐ終戦後第三回作品で、原節子が女子医科大で医者を目指す女子大生役で、唯一の肉親であった父を亡くし、佐分利信が演じる、父の教え子だった妻子ある男性の家に、子どもたちの家庭教師として住み込むことなって、そこから当初無邪気に見えた彼女が次第に小悪魔的に見えるよう変貌し、杉村春子演じる病身の妻がそれに嫉妬するというもの。原節子には、以前から彼女のことが好きだった誘惑547.jpgという男子大学生も現れて、いろいろあった末、最後は、死に行く杉村春子が原節子に夫と妻を託し、原節新藤兼人.png子は迷った末に佐分利信の下へ―(脚本は新藤兼人(1912‐2012/享年100))。ラスト、雪の中、窓辺に立って、「佐分利信へ抱っこをねだるように両手を差し出す原節子」を(実際に佐分利信はお姫様抱っこして彼女を部屋に迎え入れる)、著者は、その仕草が「彼女を再び純愛娘に変えてしまった」としていますが、これってある種"略奪婚"映画ではないかと。メロドラマらしく比較的丁寧に作られていますが、後に原節子が小津安二郎作品などで演じる女性像とあまりに違っているため、作っている側が意図しないところで「カルトムービー」になったような気がします。そ東京の女性3s.jpg東京の女性1.jpgの意味では、原節子が19歳の時に仕事と恋の狭間で悩むキャリアウーマン(高級外車のセールスウーマン)を演じた丹羽文雄原作、伏水修監督の「東京の女性」('39年/東宝)なども「カルトムービー」と言えるかもしれません。

「東京の女性」('39年/東宝)
         

カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980ges.jpg黒線地帯 1960 vhs.jpg「黒線地帯」●制作年:1960年●監督:石井輝男●製作:大蔵貢●脚本:石井輝男/宮川一郎●撮影:吉田重石井輝男 黒線地帯8.jpg業●音楽:渡辺宙明●時間:80分●出演:天知茂/三原葉子/三ツ矢歌子/細川俊夫/吉田昌代/魚住純子/ 守山竜次/鳴門洋二/宗方祐二/瀬戸麗子/南原洋子/菊川大二郎/鮎川浩/城実穂/浅見比呂志/板根正吾/山村邦子/桂京子/小高まさる/大谷友彦/水上恵子/国創典/倉橋宏明/宮浩一/晴海勇三/村山京司/原聖二●公開:1960/01●配給:新東宝(評価:★★★★)

象を喰った連中 001.jpg象を喰った連中01.jpg「象を喰った連中」●制作年:1947年●監督:吉村公三郎●製作:小倉武志●脚本:斎藤良輔●撮影:生方敏夫●音楽:万城目正 /仁木他喜雄●時間:84分●出演:日守新一/笠智衆/原保美/神田隆/安部徹/村田知英子/空あけみ/朝霧鏡子/文谷千代子/岡村文子/若水絹子/植田曜子/奈良真養/高松栄子/志賀美彌子/中川健三/遠山文雄/西村青兒/永井達郎/横尾泥海男●公開:1947/02●配給:松竹大船(評価:★★★)
   
女真珠王の復讐00.jpg女真珠王の復讐1b.jpg女真珠王の復讐 ps.jpg「女真珠王の復讐」●制作年:1956年●監督:志村敏夫●製作:星野和平●脚本:相良準/松木功●撮影:友成達雄●音楽:松井八郎●原作:青木義久「復讐は誰がやる」●時間:89分●出演:前田通子/宇津井健/藤田進/丹波哲郎天知茂/三ツ矢歌子/遠山幸子/小倉繁/若月輝夫/芝田新/林寛/沢井三郎/光岡早苗(後に城山路子)/保坂光代/藤村昌子/石川冷/宮原徹/菊地双三郎/高村洋三/有馬新二/山田長正/国創典(後に邦創典)/伸夫英一/倉橋宏明/高松政雄/山川朔太郎/北一天知茂s.jpg馬/村山京司/竹中弘直/小林猛/川部修詩/大谷友彦/草間喜代四/岡女真珠王の復讐  丹波s.jpg竜弘/池月正/三宅実/西一樹/東堂泰彦/三井瀧太郎/三村泰二/沢村勇/山口多賀志/万里昌子(後に昌代)/有田淳子/藤田博子/森悠子/ジャック・アルテンバイ●公開:1956/07●配給:新東宝(評価:★★★)
天知茂/丹波哲郎
    
「点と線」 ポスター.jpg「点と線」 ポスター2.jpg「点と線」●制作年:1958年●監督:小林恒夫●企画:根津昇 ●脚本:井手雅人●撮影:藤井静●音楽:木下忠司●原作:松本清張「点と線」●時間:85分●出演:南廣/高峰三枝子/山形勲/加藤嘉志村喬点と線 志村喬.jpg点と線 加藤嘉.jpg点と線_m.jpg三島雅夫/堀雄二/河野秋武/奈良あけみ/小宮光江/月丘千秋/光岡早苗/楠トシエ/風見章子/織田政雄/点と線 DVD.jpg映画 「点と線」(1958年/東映) .jpg曽根秀介/永田靖/成瀬昌彦/神田隆/小宮光江/増田順二/奈良あけみ/花沢徳衛/楠トシエ●劇場公開:1958/11●配給:東映●最初に観た場所:池袋文芸地下(88-01-23) (評価★★★☆)●併映:「黄色い風土」(石井輝男)/「黒い画集・あるサラリーマンの証言」(堀川弘通)
 

           
モスラ4S.jpg「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:古関裕而●特殊技術:円谷英二●イメージボード:小松崎茂●原作:中村真一郎/福永武彦/堀田モスラ_1.jpg善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:モスラ111 .jpgフランキー堺小泉博香川京子/ジェリー伊藤/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙/志村喬/平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広瀬正一/桜井巨郎/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎)

乾いた花sim.jpg乾いた花  title.jpg「乾いた花」●制作年:1964年●監督:篠田正浩●製作:白井昌夫/若槻繁●脚本:馬場当/篠田正浩●撮影:小杉正雄●音楽:武満徹/高橋悠治●原作:石原慎太郎●時間:99分●出演:池部良/加賀まりこ/藤木孝/原知佐子/中原功二/東野英治郎/三乾いた花 (1).jpg上真一郎/宮口精二/佐々木功/杉浦直樹/平田未喜三/山茶花究/倉田爽平/水島真哉/竹脇無我/水島弘/玉川伊佐男/斎藤知子/国景子/田中明夫●公開:1964/03●配給:松竹(評価:★★★★)

大魔神2.jpg大魔神 blu-ray.jpg「大魔神」●制作年:1966年●監督:安田公義●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:伊福部昭●時間:84分●出演:高田美和/青山良彦/二宮秀樹/藤巻潤/五味龍太郎/島田竜三/遠藤辰雄/杉山昌三九/伊達三郎/月宮於登女/出口静宏/尾上栄五郎/伴勇太郎/黒木英男/香山恵子/木村玄/橋本力(大魔神)●公開:1966/04●配給:大映(評価:★★★☆)大魔神 Blu-ray BOX

市川雷蔵 in「ある殺し屋」
「ある殺し屋」森一生 1967.jpgある殺し屋3.jpg「ある殺し屋」●制作年:1967年●監督:森一生●脚本:増村小林幸子 3.jpg保造/石松愛弘●撮影:宮川一夫●音楽:鏑木創●原作:藤原審爾「前夜」●時間:82分●出演:市川雷蔵/野川由美子/成田三樹夫/渚まゆみ/ある殺し屋小林幸子.jpg小林幸子(当時13歳)/小池朝雄/千波丈太郎/松下達夫/伊達三郎/「ある殺し屋」4.bmp「ある殺し屋」3.bmp浜田雄史●公開:1967/04●配給:大映●最初に観た場所:大井ロマン(87-10-31)(評価:★★★★)●併映:「ある殺し屋の鍵」(森一生)
    
Môjû (1969) .jpg盲獣11.png盲獣090.jpg「盲獣」●制作年:1969年●監督:増村保造●脚本:白坂依志夫●撮影:小林節雄●音楽:林光●原作:江戸川乱歩「盲獣」●時間:84分●出演:船越英二/緑魔子/千石規子>●公開:1969/01●配給:大映(評価:★★★)
      
誘惑 原節子 佐分利 杉村.jpg誘惑   1948.jpg「誘惑」●制<作年:1948年●監督:吉村公三郎●製作:小倉武志●脚本:新誘惑」(1948年)原.jpg藤兼人●撮影:生方敏夫●時間:84分●出演:原節子/佐分利信/杉村春子/芳丘直美/河野祐一/山内明/殿山泰司/文谷千代子/神田隆/西村青児/高松栄子●公開:1948/02●配給:松竹吉村 公三郎 「誘惑」u01.jpg大船(評価:★★★)
吉村 公三郎 「誘惑」t.jpg

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意外とメジャー。少しごちゃごちゃした感じになったか。川本三郎インタビューが一番面白かった。

鮮烈!アナーキー日本映画史1959-1979.jpg鮮烈!アナーキー日本映画史1959-1979【愛蔵版】2.jpg 映画秘宝EX爆裂! アナーキー日本映画史1980~2011.jpg 完全版アナーキー日本映画史1959-2016.jpg
映画秘宝EX爆裂! アナーキー日本映画史1980~2011 (洋泉社MOOK)』カバー「愛のむきだし」('09年)満島ひかり『完全版アナーキー日本映画史1959-2016 (映画秘宝COLLECTION)』['16年]
鮮烈! アナーキー日本映画史1959-1979【愛蔵版】 (映画秘宝COLLECTION 50)』['13年]表カバー「月曜日のユカ」('64年/日活)加賀まりこ/裏カバー「竜馬暗殺」('74年/ATG)原田芳雄
映画秘宝EX 鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979』['12年]
映画秘宝EX 鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979.jpg映画秘宝ex 鮮烈!アナーキー日本映画史1959-1979  .jpg 本書は、2012年に「洋泉社MOOK」として刊行された『映画秘宝EX 鮮烈!アナーキー日本映画史1959~1979』('12年)の「映画秘宝COLLECTION」版で、「洋泉社MOOK」では本書の続編にあたる『映画秘宝EX爆裂! アナーキー日本映画史1980~2011』も同年に刊行されていますが、その後、「映画秘宝COLLECTION」版『完全版アナーキー日本映画史1959-2016』('16年)として統合されています。何かが過剰な日本映画のアウトサイダー的作品ばかりを紹介したシリーズで、本章での選評収録作品は以下の通りです。

■60年代
黒い十人の女 ポスター.jpg盲獣poster.jpg 独立愚連隊/野獣死すべし/東海道四谷怪談/地獄/黄線地帯/地平線がぎらぎらっ/黒い十人の女/しとやかな獣/月曜日のユカ/危ないことなら銭になる/君も出世ができる/黒蝪蜒/真田風雲録/座頭市物語/斬る/忍びの者/野獣の青春/十三人の刺客/二匹の牝犬/マタンゴ/太平洋の翼/大魔神赤い天使網走番外地飢餓海峡/組織暴力/ある殺し屋/紅の流れ星/「エロ事師たち」より 人類学入門/100発100中/殺人狂時代/日本のいちばん長い日/盲獣/みな殺しの霊歌/江戸川乱歩全集 恐怖奇形人間/無頼 人斬り五郎/反逆のメロディー/女番長 野良猫ロック/殺しの烙印/荒野のダッチワイフ/処女ゲバゲバ/薔薇の葬列/白昼の襲撃/首/日本暗殺秘録

IMG_2「黒い十人の女」.jpg IMG_20210523_044336.jpg

■70年代
 ゴジラ対ヘドラ/呪いの館 血を吸う眼/でんきくらげ/谷岡ヤスジのメッタメタガキ道講座/新座頭市 破れ!唐人剣/エロス+虐殺/股旅/昭和残侠伝 死んで貰います/博奕打ち いのち札/マル秘色情めす市場/女番長ブルース 牝蜂の逆襲/番格ロック/0課の女 赤い手錠/徳川セックス禁止令 色情大名/女生きてます 盛り場渡り鳥/ポルノの女王 にっぽんSEX旅行/軍旗はためく下に/仁義なき戦い/仁義の墓場/実録 私服銀座警察/子連れ狼 三途の川の乳母車/女囚701号 さそり/修羅雪姫/野獣狩り/旅の重さ/バージンブルース/ノストラダムスの大予言/新幹線大爆破/直撃地獄拳 大逆転/トラック野郎 御意見無用/青春の殺人者犬神家の一族八甲田山/八つ墓村/やくざ残酷秘録 片腕切断/犬神の悪霊/女獄門帖 引き裂かれた尼僧/悶絶!!どんでん返し/悲愁物語/最も危険な遊戯/高校大パニック/復讐するは我にあり/餌食/十九歳の地図

 黒沢明、小津安二郎こそ出てきませんが、娯楽映画として結構メジャーな作品もあり、全体としては、「アナーキー」の定義がやや曖昧なものの、本当にアナーキーと言えるのは半分くらいかも。ただし、一見フツーの娯楽大作に見える作品が、見方によってはアナーキー映画ととれるというを論じ方をしているものもあります。

 これら作品紹介と併せ、中原昌也、斎藤工、町山智浩、桂千穂など識者や俳優などによる「僕の好きな日本映画」というコラムが13本、映画評論家などによる監督評が15本、「モダンホラー」「日活ニューアクション」「ATG映画」といった系譜ごとにみたコラムが32本あり、これらが作品紹介の間々に挿入されています(例えば、「黒い十人の女」('61年)の後に「市川崑」評が、「十三人の刺客」('61年)の後に「東映集団抗争時代劇」のコラムがきている)。したがって、全体としてもほぼ時系列になっているし、切り口も、作品・好み・監督・ジャンルと豊富なのですが、ページをめくるごとにフォーマットが変わったして、ややごちゃごちゃした感じになったかもしれません。

 個人的に一番良かったのは(そこだけ纏まったページになっていたというのもあったかもしれませんが)、中ほどにある川本三郎氏へのインタビューで、「阿佐ヶ谷オデオン座」が彼にとっての映画学校で、そこで「オールナイト」と称して夜10時から名作を1本だけかけていて、「第三の男」などいろいろな作品を観たとのこと。一方で、ピンク映画は「荻窪スター座」で観たというのは、自分も若いころ荻窪に住んでいたことがあるで、何となく懐かしかったです(荻窪東亜会館にあった「荻窪オデヲン」は知っている。荻窪スター座は荻窪オデヲンよりも後に閉館したようだ)。新東宝の三原葉子とか前田通子が好きだっておおぴらには言えなかった(笑)というのは、先々月['19年10月]亡くなった和田誠氏との対談でも言ってたように思います。

 この人、麻布中学、麻布高校、東大法学部、朝日新聞社というエリートコースを歩みながら、ある政治的事件に巻き込まれて朝日新聞社を解雇されるわけですが(その経緯なども記した自伝『マイ・バック・ページ』が'11年に映画化された)、朝日新聞社をクビになったから仕方なく映画評論家になったと言われるけれど、もともとは映画好きで、むしろ非政治的人間で、朝日でも映画記者になりたかったとのこと。でも、今はこの人の過去を知らない人の方が多いと思われ、この人がもとから映画評論家であったと思っている人の方が多いのではないかなあ。

荻窪オデオン座 - 2.jpg荻窪駅付近.jpg荻窪オデヲン.jpg荻窪東亜会館.jpg荻窪オデヲン座・荻窪劇場 1972年7月、荻窪駅西口北「荻窪東亜会館」B1にオープン。1991(平成3)年4月7日閉館。(パンフレット「世にも怪奇な物語」)菅野 正 写真展「平成ラストショー」HPより

 因みに、『「映画秘宝COLLECTION」版『完全版アナーキー日本映画史1959-2016』('16年)』の本文で取り上げている80年代以降の作品は以下の通り。

■80年代
ツィゴイネルワイゼン/野獣死すべし/魔界転生/セーラー服と機関銃/ねらわれた学園/戦争の犬たち/ガキ帝国/闇のカーニバル/嗚呼!おんなたち 猥歌/幻の湖/震える舌/丑三つの村/湯殿山麓呪い村/野獣刑事/狂った果実/さらば愛しき大地/九月の冗談クラブバンド/オン・ザ・ロード/人魚伝説/TATTOO(刺青)あり/伊賀野カバ丸/神田川淫乱戦争/竜二/BLOW THE NIGHT 夜をぶっとばせ/痴漢電車 百恵のお尻/宇能鴻一郎の濡れて打つ/美少女プロレス 失神10秒前/逆噴射家族/ザ・オーディション/ア・ホーマンス/水のないプール/十階のモスキート/コミック雑誌なんかいらない!/ロケーション台風クラブ雪の断章-情熱-/ときめきに死す/すかんぴんウォーク/ビー・バップ・ハイスクール/タンポポ/帝都物語/1999年の夏休み/追悼のざわめき/死霊の罠/ノーライフキング/その男、凶暴につき/鉄男将軍家光の乱心 激突/文学賞殺人事件 大いなる助走/座頭市

■90年代
われに撃つ用意あり READY TO SHOOT/マリアの胃袋/鉄拳/3-4×10月/ソナチネ/大誘拐 RAINBOW KIDS/遊びの時間は終らない/ザザンボ/いつかギラギラする日/SCORE/裸足のピクニック/屋根裏の散歩者/無頼平野/ヌードの夜/GONIN/KAMIKAZE TAXI/女優霊/リング2/極道戦国志 不動/鉄と鉛 STEEL & LEAD/ポルノスター/ラブ&ポップ/黒の天使Vol.2/鬼畜大宴会/グループ魂のでんきまむし/ガメラ3 邪神<イリス>覚醒/パレット・バレエ/蛇の道/DEAD OR ALIVE 犯罪者/地獄

■2000年代
オーディション/HYSTERIC/新選組/リリイ・シュシュのすべて/GO/青い春/回路/血を吸う宇宙/殺し屋1/自殺サークル/凶気の桜/害虫/ヴァイブレータ/ばかのハコ船/下妻物語/たまもの/童貞。をプロデュース/ラザロ/エクスクロス 魔境伝説/愛のむきだし/SR サイタマノラッパー/片腕マシンガール/オカルト/劔岳 点の記/空気人形/その日のまえに/十三人の刺客/サウダーヂ/ラビット・ホラー3D/監督失格/KOTOKO/恋の渦/劇場版テレクラキャノンボール2013/凶悪/おとぎ話みたい/百円の恋/GONINサーガ/リアル鬼ごっこ/テラスハウス クロージング・ドア/孤高の遠吠/アイアムアヒーロー/FAKE/貞子vs伽椰子/クリーピー 偽りの隣人      
 

■60年代
黒い十人の女1072_n.jpg黒い十人の女パンフレット.jpg「黒い十人の女」●制作年:1961年●監督:市川崑●製作:永田雅一●脚本:和田夏十●撮影:小林節雄●特撮:築地米三郎●音楽:芥川也寸志●時間:103分●出演:船越英二/岸恵子/山本富士子/宮城まり子/中村黒い十人の女   .jpg玉緒/岸田今日子/宇野良子/村井千恵子/有明マスミ/紺野ユカ/倉田マユミ/永井智雄/伊丹一三/大辻伺郎/浜村純/早川雄三/三角八郎/森山加代子/ハナ肇とクレイジーキャッツ●公開:1961/05●配給:大映(評価:★★★☆)

山本富士子/中村玉緒/岸田今日子
船越英二/岸恵子/宮城まり子

片岡千恵蔵 in「十三人の刺客」
十三人の刺客 片岡.jpg十三人の刺客 嵐.jpg十三人の刺客 西村.jpg「十三人の刺客」●制作年:1963年●監督:工藤栄一●製作:東映京都撮影所●脚本:池上金男●撮影:鈴木重平●音楽:伊福部昭●時間:125分●出演:片岡千恵蔵/里見浩太朗/嵐寛寿郎/阿部九州男/加賀邦男/汐路章/春日俊二/片岡栄二郎/和崎俊哉/西村晃/内田良平/山城十三人の刺客 里見.jpg十三人の刺客 丹波.jpg月形龍之介.jpg新伍/丹波哲郎/月形龍之介/菅貫太郎/水島道太郎/沢村精四郎/丘さとみ/藤純子/河原崎長一郎/三島ゆり子/高松錦之助/神木真寿雄●公開:1963/12●配給:東映 (評価:★★★★☆)

丹波哲郎/月形龍之介

大魔神 Blu-ray BOX」「大魔神」(1966)高田美和(当時19歳)
大魔神 1966.jpg大魔神 blu-ray.jpg大魔神 高田美和.jpg「大魔神」●制作年:1966年●監督:安田公義●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:伊福部昭●時間:84分●出演:高田美和/青山良彦/二宮秀樹/藤巻潤/五味龍太郎/島田竜三/遠藤辰雄/杉山昌三九/伊達三郎/月宮於登女/出口静宏/尾上栄五郎/伴勇太郎/黒木英男/香山恵子/木村玄/橋本力(大魔神)●公開:1966/04●配給:大映(評価:★★★☆)

「赤い天使」[.jpg「赤い天使」6.jpg「赤い天使」●制作年:1966年●監督:増村保造●脚本:笠原良三●撮影:小林節雄●音楽:池野成●原作:有馬頼義●時間:95分●出演:若尾文子/芦田伸介/川津祐介/赤木蘭子/千波丈太郎/喜多大八●公開:1966/10●配給:大映●最初に観た場所:角川シネマ有楽町(大映4K映画祭)(23-02-07)(評価:★★★★☆)

網走番外地 南原宏治 高倉健.jpg「網走番外地」●制作年:1965年●監督・脚本:石井輝男●企画:大賀義文●撮影:山沢義一●音楽:八木正生●原作:伊藤一「網走番外地」●時間:92分●出演:高倉健/丹波哲郎/南原宏治/安部徹/嵐寛寿郎/田中邦衛/沢彰謙/風見章子/杉義一/潮健児/滝島孝二/三重街恒二/ジョージ吉村/佐藤晟也/関山耕司/菅沼正/北網走番外地 丹波哲郎2.png山達也/志摩栄/宗方奈美/河合絃司/小塚十紀雄/山之内修/日尾孝司/久保一/相馬剛三/久地明/沢田実/水城一狼/久保比佐志/山田甲一/沢田浩二/秋山敏/植田灯孝/最上逸馬/勝間典子/佐藤公明/石川えり子●公開:1965/04●配給:東映(評価:★★★★)
丹波哲郎
   
Kiga kaikyô (1965)
Kiga kaikyô (1965) .jpg飢餓海峡film.jpg高倉健 若い頃.png「飢餓海峡」●制作年:1965年●制作:東映●監督:内田吐夢●脚本:鈴木尚之●撮影:仲沢半次郎●音楽:冨田勲●時間:183分●出演:三國連太郎(樽見京一郎/犬飼多吉)、左幸子(杉戸八重/千鶴)/伴淳三郎(弓坂吉太郎刑事、函館)/高倉健(味映画「飢餓海峡」2.jpg村時雄刑事、東舞鶴)/加藤嘉(杉戸長左衛門、八重の父)/三井弘次(本島進市、亀戸の女郎屋「梨花」の主人)/沢村貞子(本島妙子)/藤田進(東舞鶴警察署長、味村の上司)/風見章子(樽見敏子、樽見の妻)/山本麟一(和尚、弓坂の読経を褒める)/最上逸馬(沼田八郎、岩34587552f0e389e1d42e569c1a635e71--japanese-film.jpg内の強盗犯)/安藤三男(木島忠吉、岩内の強盗犯)/沢彰謙(来間末吉)/関山耕司(堀口刑事、東舞鶴)/亀石征一郎(小川、チンピラ)/八名信夫(町田、チンピラ)/菅沼正(佐藤刑事、函館)/曽根秀介(八重が大湊で働いていた娼館、"花や"の主人)/牧野内とみ子(朝日館女中)/志摩栄(岩内署長)/岡野耕作(戸波刑事、函館)/鈴木昭生(唐木刑事、東舞鶴)/八木貞男(岩田刑事、東舞鶴)/外山高士(田島清之助、岩内署巡査部長)/安城百合子(葛城時子、八重が東京で訪ねる)/河村久子(煙草屋のおかみ)/高須準之助(竹中誠一、樽見家の書生)/河合絃司(巣本虎次郎、網走刑務所所長)/加藤忠(刈田治助)/須賀良(鉄、チンピラ)/大久保正信(漁師の辰次)/西村淳二(下北の巡査)/田村錦人(大湊の巡査)/遠藤慎子(巫子)/荒木玉枝(一杯呑み屋のおかみ)/進藤幸(弓坂織江、弓坂の妻)/松平峯夫(弓坂の長男)/松川清(弓坂の次男)/山之内修(記者)/室田日出男(記者)●劇場公開:1965/01●最初に観た場所:銀座並木座 (87-10-18) (評価★★★★☆) 

市川雷蔵 in「ある殺し屋」
「ある殺し屋」森一生 1967.jpgある殺し屋3.jpg小林幸子 3.jpg「ある殺し屋」●制作年:1967年●監督:森一生●脚本:増村保造/石松愛弘●撮影:宮川一夫●音楽:鏑木創●原作:藤原審爾「前夜」●時間:82分●出演:市川雷蔵/野川由美子/成田三樹夫/渚まゆみ/ある殺し屋小林幸子.jpg小林幸子(当時13歳)/小池朝雄/千波丈太郎/松下達夫/伊達三郎/「ある殺し屋」4.bmp「ある殺し屋」3.bmp浜田雄史●公開:1967/04●配給:大映●最初に観た場所:大井ロマン(87-10-31)(評価:★★★★)●併映:「ある殺し屋の鍵」(森一生)


音楽:林 光(1931-2012)  千石規子/船越英二/緑魔子
林光.jpg盲獣11.png盲獣090.jpg「盲獣」●制作年:1969年●監督:増村保造●脚本:白坂依志夫●撮影:小林節雄●音楽:林光●原作:江戸川乱歩「盲獣」●時間:84Môjû (1969) .jpg分●出演:船越英二/緑魔盲獣16.jpg盲獣19.jpg子/千石規子●公開:1969/01●配給:大映(評価:★★★)


Môjû (1969)
   
   
「殺しの烙印」1967.jpg「殺しの烙印」dvd.jpg「殺しの烙印」真理.jpg「殺しの烙印」●制作年:1967年●監督:鈴木清順●脚本:具流八郎(鈴木清順/大和屋竺/木村威夫/田中陽造/曽根中生/岡田裕/山口清一郎/榛谷泰明)●撮影:永塚一栄●音楽:山本直純(主題歌:大和屋竺「殺しのブルース」)●時間:91分●出演:宍戸錠/南原宏治/真理アンヌ/小川万里子/南廣/長弘/大和屋竺●公開:1967/06●配給:日活●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(23-03-28)(評価:★★★★)   
           
   
■70年代      
「ゴジラ対ヘドラ」●制作年:1971年●監督:坂野義光(水中撮影も「ゴジラ対ヘドラ」1971f」.jpg兼任)●製作:田中友幸●脚本:馬淵薫/坂野義光●撮影:真野田陽一●音楽:眞鍋理一郎(主題歌:「かえせ! 太陽を」麻里圭子 with 「ゴジラ対ヘドラ」d.jpgハニー・ナイツ&ムーンドロップス)●特殊技術:中野昭慶●美術:井上泰幸(1922-2012)●時間:85分●出演:山内明/柴本俊夫(柴俊夫)/川瀬裕之/麻里圭子/木村俊恵/吉田義夫/中山剣吾(ヘドラ)/中島春雄/●公開:1971/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):神保町シアター(22-08-18)(評価:★★★☆)
ゴジラ対ヘドラ [DVD]
       
「昭和残侠伝 死んで貰います」m1.gif「昭和残侠伝 死んで貰います」m2.jpg「昭和残侠伝 死んで貰います」●制作年:1970年●監督:マキノ雅弘●脚本:大和久守正●撮影:林七郎●音楽:菊池俊輔●時間:92 分●出演:高倉健/藤純子/加藤嘉/池部良/永原和子/荒木道子/山本麟一/津川雅彦/三島ゆり子/松原光二/永原和子/八代万智子/石井富子/高野真二/諸角啓二郎/赤木春恵/小倉康子/日尾孝司/下沢広之(真田広之)/永山一夫/南風夕子/「昭和残侠伝 死んで貰います」13.jpg小林稔侍/久地明/久保一/伊達弘/田甲一/土山登士幸/花田達/木川哲也/佐川二郎/山浦栄/畑中猛重/青木卓司/五野上力/高月忠/長門裕之●公開:1970/09●配給:東映●最初に観た場所:新宿昭和館(01-03-22)(評価:★★★★)●併映:「日本女侠伝 血斗乱れ花」(山下耕作)/「博徒対テキ屋」(小沢茂弘)
 
 
  
       
  
Jingi naki tatakai (1973)
Jingi naki tatakai (1973) .jpg「仁義なき戦い」1973年.jpg仁義なき戦い 1973年1月13日公開.jpg「仁義なき戦い」●制作年:1973年●監督:深作欣二●脚本:笠原和夫●撮影:吉田貞次●音楽:津島利章●原作:飯干晃一●時間:99分●出演:菅原文太/松方弘樹/田中邦衛/金子信雄/梅宮辰夫/成田三樹夫/渡瀬恒彦/曽根晴美/川地民夫/田中邦衛/名和宏/内田朝雄/伊吹吾郎/川谷拓三/中村英子/木村俊恵/渚まゆみ/内田朝雄/三上真一郎/高野真二/高宮敬二/林彰太郎/中村錦司/野口貴史/大前均/志賀勝/岩尾正隆●公開:1973/01●配給:東映●最初に観た場所:吉祥寺東映(83-07-09)(評価:★★★☆)●併映:「仁義なき戦い 広島死闘篇」/「仁義なき戦い 代理戦争」/「仁義なき戦い 頂上作戦」/「仁義なき戦い 完結篇」(何れも深作欣二)  
   
「新幹線大爆破」p.jpg「新幹線大爆破」001.jpg「新幹線大爆破」●制作年:1975年●監督:佐藤純弥●脚本:小野竜之助/佐藤純弥●撮影:飯村雅彦/山沢義一/清水政郎●音楽:青山八郎●時間:152分●出演:高倉健/千葉真一/宇津井健/山本圭/郷鍈治/織田あきら/竜雷太/宇津宮雅代/藤田弓子/多岐川裕美/志穂美悦子/渡辺文雄/福田豊土/田坂都/十勝花子/片山由美子/風見章子/岩城滉一/小林稔侍/阿久津元/黒部進/河合絃司/志村喬/山内明/永井智雄/鈴木瑞穂/(以下、特別出演)丹波哲郎/北大路欣也/川地民夫/田中邦衛●公開:1975/05●配給:東映(評価:★★☆)
   
青春の殺人者03.jpg青春の殺人者(長谷川和彦).jpg「青春の殺人者」●制作年:1976年●監督:長谷川和彦●製作:今村昌平/大塚和●脚本:田村孟●撮影:鈴木達夫●音楽:ゴダイゴ●原作:中上健次●時間:132分●出演:水谷豊/内田良平/市原悦子/原田美枝子/白川和子/江藤潤/桃井かおり/地井武男/高山千草/三戸部スエ●公開:1976/10●配給:ATG(評価:★★★☆)
   
犬神家の一族 (1976年)0.jpg「犬神家の一族」●制作年:1976年●監督:市川崑●製作:市川喜一●脚本:市川崑/日高真也/長田紀生●撮影:長谷川清●音楽:大野雄二●原作:横溝正史●時間:146分●出演:石犬神家の一族 poster.jpg坂浩犬神家の一族 女優.jpg二/島田陽子/あおい輝彦/川口恒/川口晶/坂口良子犬神家の一族 (1976年)00.jpg/地井武男/三条美紀/原泉/草笛光子/大滝秀治/岸田今日子/加藤武/小林昭二/三谷昇/三木のり平/高峰三枝子/小沢栄太郎/三國連太郎●公開:1976/11●配給:東宝(評価:★★★☆)

      
八甲田山 特別愛蔵版.jpg八甲田山03.jpg「八甲田山」●制作年:1977年●監督:森谷司郎●製作:橋本忍/野村芳太郎/田中友幸●脚本:橋本忍●撮影:木村大作●音楽:芥川也寸志●時間:169分●出演:高倉健/北大路欣也/島田正吾/三國連太郎/丹波哲郎/藤岡琢也/加山雄三/小林桂樹/神山繁/森田健作/下絛アトム/大滝秀治/前田吟/東野英心/緒方拳/加賀まり子秋吉久美子/山谷初男/丹古母鬼馬二/菅井きん/加藤嘉/田崎潤/栗原小巻/金尾哲八甲田山 加賀まりこ.jpg八甲田山 akiyosi.jpg夫/玉川伊佐男/江角英明/樋浦勉/浜田晃/加藤健一/江幡連/高山浩平/安永憲司/佐久間宏則/大竹まこと/新克利/山西道宏/船橋三郎●公開:1977/06●配給:東宝(評価:★★★☆)

Fukushû suru wa ware ni ari (1979)
Fukushû suru wa ware ni ari (1979) .jpg復讐するは我にありC.jpg「復讐するは我にあり」●制作年:1979年●監督:今村昌平●製作:井上和男●脚本:馬場当/池端俊策●撮影:姫田真佐久●音楽:池辺晋一郎●原作:佐木隆三●時間:140分●出演:緒形拳/三國連太郎/ミヤコ蝶々/倍賞美津子/小川真由美小川真由美 復讐するは我にあり2.jpg清川虹子/殿山泰司/垂水悟郎/絵沢萠子/白川和子/フランキー堺/北村和夫/火野正平/根岸とし江(根岸李江)/河原崎長一郎/菅井きん/石堂淑復讐するは我にあり 弁護士.jpg郎/加藤嘉/佐木隆三●公開:1979/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-17)(評価:★★★★☆)
緒形拳(榎津巌)/加藤嘉(河島弁護士)  
 
「十九歳の地図」●.jpg十九歳の地図5.jpg「十九歳の地図」●制作年:1979年●監督・脚本:柳町光男●製作:柳町光男/中村賢一●撮影:榊原勝己●音楽:板橋文夫●原作:中上健次「十九歳の地図」●時蟹江敬三.jpg間:109分●出演:本間優二/蟹江敬三/沖山秀子/山谷初男/原知佐子/西塚肇/うすみ竜/鈴木弘一/白川和子/豊川潤/友部正人/津山登志子/中島葵/川島めぐ /竹田かほり/中丸忠雄/清川虹子/柳家小三治/楠侑子●公開:1979/12●配給:プロダクション群狼●最初に観た場所:文芸坐ル・ピリエ(81-1-31)(評価:★★★★)●併映:「ゴッド・スピード・ユー! BLACK EMPEROR」(柳町光男) 
  

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「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●「カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ」受賞作」の インデックッスへ(「ジョニーは戦場に行った」)「●ドナルド・サザーランド 出演作品」の インデックッスへ(「ジョニーは戦場に行った」)「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ「●「ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「未来世紀ブラジル」)「●ロバート・デ・ニーロ 出演作品」の インデックッスへ(「未来世紀ブラジル」) 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

絶望シネマの「映画の定石」の破り方の多様性を感じた。ビジュアルもいい。

観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88201.jpg IMG_7877.JPG
観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88』カバー写真「炎628」('85年/ソ連)

 鉄人社「観ずに死ねるか !」シリーズの「韓国映画 この容赦なき人生」('11年)、「観ずに死ねるか ! 傑作ドキュメンタリー88」('13年)、「観ずに死ねるか ! 傑作青春シネマ邦画編」('14年)、に続くシリーズの第4弾で、畳み掛ける不幸や理不尽な狂気、負の連鎖や死にまっしぐらの生き様など、救われない中身と結末の、いわば"絶望"を描いた映画を、文筆家ら70人がそれぞれの個人的視点で語り尽くした1冊です(カバーには、第二次世界大戦下でのナチスの掃討部隊アインザッツグルッペンによるウクライナでの大量虐殺行為を描いた「炎628」('85年/ソ連)がきている)。

「地下水道」 dvd.jpg『禁じられた遊び』(1952)2.jpgジョニーは戦場に行った  pos.jpg 第1章「悲劇」では、「禁じられた遊び」(立川志らく)、「誰も知らない」(川本三郎)、「地下水道」(荒井晴彦)、「ジョニーは戦場に行った」(森達也)など13本が取り上げられています。アンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」('56年/ポーーランド)は『下水道映画を探検する』('16年/星海社新書)でも取り上げられていて「下水道映画」(下水道が出てくる映画)では個人的にはナンバー1ですが、絶望度で言うと「ジョニーは戦場にdalton trumbo 2.jpg行った」('71年/米)も相当なもの。カンヌ国際映画祭 審査員特別グランプリ受賞作でありながら、殆どホラー映画に近い戦慄を覚えましたが、選者の森達也氏が、映画を通して主人公の苦痛を一度は体験すべきだと述べているのには賛同します。監督は「ローマの休日」('53年/米)の脚本家ドルトン・トランボで(原作もドルトン・トランボで発表は1938年)、第二次世界大戦後に「赤狩り」の標的とされ投獄された経験もあり(そう言えば「パピヨン」('73年/米)の脚本家でもある)、朝鮮戦争とベトナム戦争も経験しています(選者は、目も鼻もない兵士は大量に生産されているとも言っている)。

未来世紀ブラジ_7878.JPG 第2章「戦慄」では、「未来世紀ブラジル」(高橋ヨシキ)、「ミスト」(松﨑健夫)、最後の晩餐/2.jpg復讐するは我にあり」(二階堂ふみ)、「めまい(ヒッチコック)」(松崎まこと)、「炎628」(橋口亮輔、スチールが表紙に使われている)、「最後の晩餐復讐するは我にあり_7880.JPG」(伊藤彰彦)など20本が取り上げられています。テリー・ギリアム監督の「未来世紀ブラジル」('85年/英)は、「1984」のような"ディストピアSF"に見えますが(ロバート・デ・ニーロが謎の電気修理人役でいきなり登場したのは可笑しかったが)、特権階級の不気味な非人間性を描いていると選者の高橋ヨシキ氏は述べていて、ナルホドと。今村昌平監督の「復讐するは我にあり」('79年/松竹)のラストの三國連太郎と倍賞美津子の散骨シーンを、選者の女優・二階堂ふみが、「緒形さんが、まるで、俺はまだ生きていると叫んでいるような」骨のストップシーンと表現しているのにも共感しました、

 第3章「破壊」では、「黒い画集 あるサラリーマンの証言」(みうらじゅん)、「黒い画集 第二話 寒流」(西IMG_7881.JPG村賢さらば愛しき大地 poster.jpg太)、「ポーラX」(安藤尋)、「気狂いピエロ」(末井昭)、「さらば愛しき大地」(佐々木俊尚)など16本が取り上げられています。松本清張原作の「黒い画集」シリーズから2本入っているのが興味深いですが、「黒い画集 第二話 寒流」の選者の芥川賞作家・西村賢太氏が、「清張の原作に付け加えられたカタルシスなき結末」に着眼しており、原作と読み比べてみるのもいいと思います(原作はスッキリさせられる逆転劇、映画は...)。

 第4章「哀切」では、「ミリオンダラー・ベイビー」(渚ようこ)、「真夜中のカーボーイ」(大槻ケンヂ)、「ミッドナイトクロス」(松崎まIMG_7884.JPGこと)、「東京暮色」(真魚八重子)など16本が取り上げられていて、第5章「狂気」では、「少女ムシェット」(坪内祐三)、「ゴーン・ガール」(大根仁)、「時計しかけのオレンジ」(水道橋博士)、「追悼のざわめき」(森下くるみ)など11本が取り上げられています。スタンリー・キューブリック監督の「時計しかけのオレンジ」は、主人公が拷問的洗脳IMG_7885.JPGを受けるという点で「未来世紀ブラジル」と少し似ている部分もあったように思います。

 70人の選者が1人1作思いを込めて作品を論じていて、いろいろ気付きを与えてくれます。70人の中には、作家、映画監督や映画評論家などに混じって男優、女優、歌手なども何人かいて、例えば女優では、先に取り上げた二階堂ふみや、成海璃子、武田梨奈など結構若手もおり、彼女らなりに映画をしっかり捉えているのが興味深かったです。

 ハッピーエンドと正反対の(バッドエンドの)映画、本書で言う「絶望シネマ」というのはまだ沢山あると思いますが、いずれも言わば「映画の定石」なるものをを破っているわけであって、その破り方が極めて多様であることが窺え(こうしてみると、ハッピーエンドの映画はどれも同じように見えてきてしまう)、本書を通して改めて「幸福の形はいつも同じだが、不幸の形はそれぞれ違う」ことが浮き彫りになったように思います。ビジュアル面でも、映画の見どころシーンが多く織り込まれていて、まだ観たことのない作品も観てみたくなるほどに楽しめる1冊です。

ジョニーは戦場へ行った [DVD]
ジョニーは戦場へ行った [DVD].jpgジョニーは戦場に行ったード.jpg「ジョニーは戦場に行った」●原題:JOHNNY GOT HIS GUN●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督:ダルトン・トランボ●製作ブルース・キャンベル●脚本:ダルトン・トランボ●撮影: ジュールス・ブレンナー●音楽:ジェリー・フィールデジョニーは戦場に行った サザーランド2.jpgィング●原作:ダルトン・トランボ●時間:112分●出演:ティモシー・ボトムズ/キャシー・フィールズ/ドナルド・サザーランド/ジェイソン・ロバーズ/マーシャ・ハント/ チャールズ・マッグロー/ダイアン・ヴァーシ/エドワード・フランツ/ ケリー・マクレーン●日本公開:1973/04●配給:ヘラルド映画●最初に観た場所:新宿アートビレッジ(79-02-24)(評価:★★★★)

未来世紀ブラジル [DVD]
未来世紀ブラジル [DVD].jpg未来世紀ブラジル 111.jpg「未来世紀ブラジル」●原題:BRAZIL●制作年:1985年●制作国:イギリス●監督:テリー・ギリアム●製作:アーノン・ミルチャン●脚本:テリー・ギリアム/チャールズ・マッケオン/トム・ストッパード●撮影:ロジャー・プラット●音楽:マイケル・ケイメン●時間:142分●出演:ジョナサン・プライス/ロバート・デ・ニーロ/キ未来世紀ブラジル ロバートデニーロ.jpgム・グライスト/マイケル・ペイリン/キャサリン・ヘルモンド/ボブ・ホスキンス/デリック・オコナー/イアン・ホルム/イアン・リチャードソン/ピーター・ヴォーン/ジム・ブロードベント●日本公開:1986/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘(87-07-19)(評価:★★★★)●併映:「ザ・フライ」(デビッド・クローネンバーグ)

復讐するは我にあり_7889.JPG「復讐するは我にあり」●制作年:1979年●監督:今村昌平●製作:井上和男●脚本:馬場当/池端俊策●撮影:姫田真佐久●音楽:池辺晋一郎●原作:佐木隆三●時間:140分●出演:緒形拳/三國連太郎/ミヤコ復讐するは我にあり 骨.jpg蝶々/倍賞美津子/小川真由美/清川虹子/殿山泰司/垂水悟郎/絵沢萠子/白川和子/フランキー堺/北村和夫/火野正平/根岸とし江(根岸李江)/河原崎長一郎/菅井きん/石堂淑郎/加藤嘉/佐木隆三●公開:1979/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):新宿ピカデリー(緒形拳追悼特集)(08-11-23)●2回目:北千住・シネマブルースタジオ(10-01-17)(評価:★★★★☆)

IMG_7883.JPG「最後の晩餐」●原題:LA GRANDE BOUFFE●制作年:1973年●制作国:イタリア・フランス●監督・脚本:マルコ・フェレーリ●製作:ヴァンサン・マル/ジャ「最後の晩餐」2.jpgン=ピエール・ラッサム●撮影:マリオ・ヴルピアーニ●音楽:フィリップ・サルド●時間:130分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ウーゴ・トニャッツィ/フィリップ・ノワレ/ミシェル・ピッコリ/アンドレア・フェレオル●日本公開:1974/11●最初に観た場所:大塚名画座 (78-11-07) (評価★★★★☆)●併映:「糧なき土地」(ルイス・ブニュエル)/「自由の幻想」(ルイス・ブニュエル)

さらば愛しき大地 7892.JPG「さらば愛しき大地」●制作年:1982年●監督:柳町光男●製作:柳町光男/池田哲也/池田道彦●脚本:柳町光男/中上健次●撮影:田村正毅●音楽:横田年昭●時間:120分●出演:根津甚八/秋吉久美子/矢吹二朗/山口美也子/蟹江敬三/松山政路/奥村公延/草薙幸二郎/小林稔侍/中島葵/白川和子/佐々木すみ江/岡本麗/志方亜紀子/日高澄子●公開:1982/04●配給:プロダクション群狼●最初に観た場所:シネマスクウエアとうきゅう(82-07-10)●2回目:自由が丘・自由劇場(85-06-08)(評価:★★★★☆)●併映(2回目):「(ゴッド・スピード・ユー! ブラック・エンペラー」(柳町光男)

時計じかけのオレンジ [WB COLLECTION][AmazonDVDコレクション] [DVD]
IMG_7882.JPG時計じかけのオレンジ dvd.jpg「時計じかけのオレンジ」●原題:A CLOCKWORK ORANGE●制作年:1971年●制作国:イギリス・アメリカ●監督・製作・脚本:スタンリー・キューブリック●撮影:ジョン・オルコット●音楽:ウォルター・カーロス●原作:アンソニー・バージェス●時間:137分●出演:マルコム・マクダウェル/ウォーレン・クラーク/ジェームズ・マーカス/ポール・ファレル/リチャード・コンノート/パトリック・マギー/エイドリアン・コリ/ミリアム・カーリン/オーブリー・モリス/スティーヴン・バーコフ/イケル・ベイツ/ゴッドフリー・クイグリー/マッジ・ライアン/フィリップ・ストーン/アンソニー・シャープ/ポーリーン・テイラー●日本公開:1972/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー(80-02-09)●2回目:吉祥寺セントラル(83-12-04)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「非情の罠」(スタンリー・キューブリック)

《読書MEMO》
●「観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88」 (鉄人社)出版記念上映会 @テアトル新宿(2015年)
観ずに死ねるか!出版記念上映会.jpg

観ずに死ねるか! 出版記念上映会2.jpg

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「●文春新書」の インデックッスへ「●ルキノ・ヴィスコンティ監督作品」の インデックッスへ「●バート・ランカスター 出演作品」の インデックッスへ(「家族の肖像」)「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ「●「全米映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「ミリオンダラー・ベイビー」)「●クリント・イーストウッド 出演・監督作品」の インデックッスへ(「ミリオンダラー・ベイビー」)「●モーガン・フリーマン 出演作品」の インデックッスへ(「ミリオンダラー・ベイビー」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

実質的な1位は自分が"隠れ"ファンを自認していた作品だった(笑)。

週刊文春「シネマチャート」全記録.jpg イノセント1シーン.jpg 家族の肖像 デジタル修復完全版.jpg ミリオンダラー・ベイビード.jpg
週刊文春「シネマチャート」全記録 (文春新書)』「イノセント」「家族の肖像」「ミリオンダラー・ベイビー」

 「週刊文春」の映画評「シネマチャート」が、1977(昭和42)年6月に連載を開始してから丸40年を迎えたのを記念して企画された本。40年間で4千本を超える映画に29名の評者が☆をつけてきたそうですが、その☆を今回初めて集計し、洋画ベスト200、邦画ベスト50選出しています。

地獄の黙示録01ヘリ .jpg 洋画のベスト1(評者の中で評価した人が全員満点をつけたもの)は10本あって(ただし、2003年までの満点が☆☆☆であるのに対し、2004年以降は☆☆☆☆☆で満点)、その中で評価(星取り)をしなかった(パスした)評者がおらず、全員が満点をつけたものが1977年から2003年までの間で9本、2004年以降が2本となっています。さらに、2003年までは評者の人数にもばらつきがあり、最も多くの評者が満点をつけたのがルキノ・ヴィスコンティ監督の「イノセント」('76年/伊・仏)(☆☆☆8人)、次がフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)(☆☆☆7人、無1人)となっています。

 選ばれた作品を見て、あれが選ばれていない、これが入っていないという思いは誰しもあるかと思いますが、巻頭に選定の総括として、中野翠、芝山幹朗両氏、司会・植草信和・元「キネマ旬報」編集長の座談会があり(中野翠、芝山幹朗両氏は現役の評者)、彼ら自身が選定に偏りがあるといった感想を述べていて、特定の作品が高く評価されたりそれほど評価されなかったりした理由を、その時の時代の雰囲気などとの関連で論じているのが興味深かったです。

 それにしても、全般に芸術映画の評価は高く、娯楽映画の評価はそうでもない傾向があるようですが、洋画ベスト200の実質的なトップにルキノ・ヴィスコンティ監督の「イノセント」がきたのは、この作品の"隠れ"ファンを自認していた自分としては意外でした(全然"隠れ"じゃないね)。しかも、この時の評者が、池波正太郎、田中小実昌、小森和子、品田雄吉、白井佳夫、渡辺淳など錚々たるメンバーだからスゴイ。彼らが「イノセント」を高く評価したというのも時代風潮かもしれませんが、だとすれば、「家族の肖像」('74年)、「ルードウィヒ/神々の黄昏」('80年)が共に62位と相対的に低いのはなぜでしょうか(ただし、個人的評価は、「イノセント」★★★★☆、「ルードウィヒ/神々の黄昏」★★★★、「家族の肖像」★★★★で、今回の順位に符号している)。

家族の肖像 78.jpg家族の肖像00.jpg(●「家族の肖像」は2020年に劇場でデジタルリマスター版で再見した。日本ではヴィスコンティの死後、1978年に公開されて大ヒットを記録し、日本でヴィスコンティ・ブームが起きる契機となった作品だが、上記の通り個人的評価は星5つに届いていない。今回、読書会のメンバーから、「家族」とその崩壊がテーマになっているという点で小津安二郎の「東京物語」に通じるものがあるという見解を聞き、そのあたりを意識して観たが、バート・ランカスター演じる大学教授は平穏な生活を求める自分が闖入者によって振り回された挙句、最後家族の肖像01.jpgには「家族ができたと思えばよかった」と今までの自分の態度を悔やんでいることが窺えた。ただし、「家族の肖像」の場合、主人公の教授がすでに独り身になっているところからスタートしているので、日本的大家族の崩壊を描いた「東京物語」と比べると状況は異なり、「家族」というモチーフだけで両作品を敷衍的に捉えるまでには至らなかった。一方、主人公の教授がヘルムート・バーガー演じる若者に抱くアンビバレントな感情には同性愛的なものを含むとの見解もあるようで、それはどうかなと思ったが、再見して、シルヴァーナ・マンガーノ演じるその若者を自分の愛人とする女性が、教授に対して「あなたも彼の魅力にやられたの」と言って二人の間に同性愛的感情があることを示唆していたのに改めて気づいた。)

 ☆☆☆☆☆で満点となった2004年以降で満点を獲得したのは、ゲイリー・ロス監督の「シービスケット」('03年/米)と クリント・イーストウッド監督の「ミリオンダラー・ベイビー」('04年/米)ですが、クリント・イーストウッド監督は洋画ベスト200に9作品がランクインしており、2位のルキノ・ヴィスコンティ監督の6作品を引き離してダントツ1位。この辺りにも、この「シネマチャート」における評価の1つの傾向が見て取れるかもしれません。クリント・イーストウッド監督の9作品のうち、個人的に一番良かったのは「ミリオンダラー・ベイビー」なので、自分の好みってまあフツーなのかもしれません。

ミリオンダラー・ベイビー01.jpg 「ミリオンダラー・ベイビー」は重い映画でした。女性主人公マギーを演じたヒラリー・スワンクは、イーストウッドに伍する演技でアカデミー主演女優賞受賞。作品自体も、アカデミー作品賞、全米映画批評家協会賞作品賞を受賞しましたが、公開時に、マギーが四肢麻痺患者となった後で死にたいと漏らしフミリオンダラー・ベイビー04.jpgランキーがその願いを実現させたことに対して、障がい者の生きる機会を軽視したとの批判があったようです。批判の起きる一因として、主人公=イーストウッドとして観てしまうというのもあるのではないでしょうか。「J・エドガー」('11年)などもそうですが、イーストウッドのこの種の映画は問題提起が主眼で、後は観た人に考えさせる作りになっているのではないかと思います。

 因みに、邦画ベスト50では1位の「愛のコリーダ2000」('00年)だけが評者全員(5人)が満点(☆☆☆)でした。この作品は、「愛のコリーダ」('76年)における修正を減らしたノーカット版により近いものであり、実質的なリバイバル上映だったと言えます(これ、現時点['19年]でDVD化されていない)。


●週刊文春「シネマチャート」満点作品(評者全員が満点をつけた作品)1977-2017
 (洋画)
 ・1975年「イノセント」 (伊)ルキノ・ヴィスコンティ監督
 ・1979年「地獄の黙示録」(米)フランシス・フォード・コッポラ監督
 ・1983年「風櫃(フンクイ)の少年」(台湾)侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督
 ・1984年「冬冬(トントン)の冬休み」(台湾)侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督
 ・1990年「コントラクト・キラー」(フィンランド)アキ・カウリスマキ監督
 ・1994年「スピード」(米)ヤン・デ・ボン監督
 ・2000年「愛のコリーダ2000」(仏・日)大島渚監督
 ・2001年「トラフィック」(米)スティーヴン・ソダーバーグ監督
 ・2002年「ボウリング・フォー・コロンバイン」(米)マイケル・ムーア監督
 ・2006年「シービスケット」(米)ゲイリー・ロス監督
 ・2004年「ミリオン・ダラー・ベイビー」 (米)クリント・イーストウッド監督

Inosento(1976)
イノセント .jpgInosento(1976).jpg「イノセント」●原題:L'INNOCENTE●制作年:1976年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ●脚本:スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ/ルキノ・ヴィスコンティ●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:フランコ・マンニーノ●原作:ガブリエレ・ダヌンツィオ「罪なき者」●時間:129分●出演:ジャンカルロ・ジャンニーニ/ラウラ・アントネッリ/ジェニファー・オニール/マッシモ・ジロッティ/ディディエ・オードパン/マルク・ポレル/リーナ・モレッリ/マリー・デュボア/ディディエ・オードバン●日本公開:1979/03●最初に観た場所:池袋文芸坐 (79-07-13)●2回目:新宿・テアトルタイムズスクエア (06-10-13) (評価★★★★☆)●併映(1回目):「仮面」(ジャック・ルーフィオ)

Jigoku no mokushiroku (1979)
Jigoku no mokushiroku (1979).jpg「地獄の黙示録」●原題:APOCALYPSE NOW●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督・製作:フランシス・フォード・コッポラ●脚本:ジョン・ミリアス/フランシス・フォード・コッポラ/マイケル・ハー(ナレーション)●撮影:ヴィットリオ・ストラーロ●音楽:カーマイン・コッポラ/フランシス・フォード・コッポラ●原作:ジョゼフ・コンラッド「地獄の黙示録 デニス・ホッパー_11.jpg闇の奥」●時間:153分(劇場公開版)/202分(特別完全版)●出演:マーロン・ブランド/ロバート・デュヴァル/マーティン・シーン/フレデリック・フォレスト/サム・ボトムズ/ローレンス・フィッシュバーン/アルバート・ホール/ハリソン・フォード/G・D・スプラドリン/デニス・ホッパー/クリスチャン・マルカン/オーロール・クレマン/ジェリー・ジーズマー/トム・メイソン/シンシア・ウッド/コリーン・キャンプ/ジェリー・ロス/ハーブ・ライス/ロン・マックイーン/スコット・グレン/ラリー・フィッシュバーン(=ローレンス・フィッシュバーン)●日本公開:1980/02●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:銀座・テアトル東京(80-05-07)●2回目:高田馬場・早稲田松竹(17-05-07)(評価★★★★)●併映(2回目):「イージー・ライダー」(デニス・ホッパー)

家族の肖像 デジタル・リマスター 無修正完全版 [DVD]
家族の肖像.jpg家族の肖像 dvd.jpg「家族の肖像」●原題:GRUPPO DI FAMIGLIA IN UN INTERNO(英:CONVERSATION PIECE)●制作年:1974年●制作国:イタリア・フランス●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ジョヴァンニ・ベルトルッチ●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/エンリコ・メディオーリ●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:フランコ・マンニーノ●時間:121分●出演: バート・ランカスター/ヘルムート・バーガー/シルヴァーナ・マンガーノ/クラウディア・マルサーニ/ステファノ・パトリッツィ/ロモロ・ヴァリ/クラウディア・カルディナーレ(教授の妻:クレジットなし)/ ドミニク・サンダ(教授の母親:クレジットなし)●日本公開:1978/11●配給:東宝東和●最初に観た場所:池袋・文芸座(79-09-24)●2回目(デジタルリマスター版):北千住・シネマブルースタジオ(20-11-17)(評価:★★★★)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ルキノ・ヴィスコンティ)

ルートヴィヒ 04.jpgルードウィヒ 神々の黄昏 ポスター.jpg「ルートヴィヒ (ルードウィヒ/神々の黄昏)」●原題:LUDWIG●制作年:1972年(ドイツ公開1972年/イタリア・フランス公開1973年)●制作国:イタリア・フランス・西ドイツ●監督:ルキノ・ヴィスコンティ●製作:ウーゴ・サンタルチーア●脚本:ルキノ・ヴィスコンティ/エンリコ・メディオーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ●撮影:アルマンド・ナンヌッツィ●音楽:ロベルト・シューマン/リヒャルト・ワーグナー/ジャック・オッフェンバック●時間:(短縮版)184分/(完全版)237分●出演:ヘルムート・バーガー/ロミー・シュナイダー/トレヴァー・ハワード/シルヴァーナ・マンガーノ/ゲルト・フレーベ/ヘルムート・グリーム/ジョン・モルダー・ブラウン/マルク・ポレル/ソーニャ・ペドローヴァ/ウンベルト・オルシーニ/ハインツ・モーグ/マーク・バーンズ1962年の3人2.jpgロミー・シュナイダー.jpg●日本公開:1980/11(短縮版)●配給:東宝東和●最初に観た場所:(短縮版)高田馬場・早稲田松竹(82-06-06) (完全版)北千住・シネマブルースタジオ(14-07-30)(評価:★★★★)
ロミー・シュナイダー(Romy Schneider,1938-1982)
ロミー・シュナイダー(手前)、アラン・ドロン、ソフィア・ローレン(1962年)

シルヴァーナ・マンガーノ in 「ベニスに死す」('71年)/「ルートヴィヒ」('72年)/「家族の肖像」('74年)
シルヴァーナ・マンガーノ.jpg

ナオミ・ワッツ(Naomi Watts1968- )(2012年)
大統領たちが恐れた男 j.エドガー dvd2.jpgナオミ・ワッツ.jpg「J・エドガー」●原題:J. EDG「J・エドガー」01.jpgAR●制作年:2011年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:クリント・イーストウッド/ ブライアン・グレイザー/ロバート・ロレンツ●脚本:ダスティン・ランス・ブラック●撮影:トム・スターン●音楽:クリント・イーストウッド●時間:137分●出演:レオナルド・ディカプリオ/ ナオミ・ワッツ/アーミー・ハマー/ジョシュ・ルーカス/ジュディ・デンチ/エド・ウェストウィック●日本公開:2012/01●配給/ワーナー・ブラザーズ(評価★★★☆)

ミリオンダラー・ベイビー [DVD]」 モーガン・フリーマン(アカデミー助演男優賞)
ミリオンダラー・ベイビー.jpgミリオンダラー・ベイビー02.jpg「ミリオンダラー・ベイビー」●原題:MILLION DOLLAR BABY●制作年:2004年●制作国:アメリカ●監督:クリント・イーストウッド●製作:ポール・ハギス/トム・ローゼンバーグ/アルバート・S・ラディ●脚本:ポール・ハギス●撮影:トム・スターン●音楽:クリント・イーストウッド●原案:F・X・トゥール●時間:133分●出演:クリント・イーストウッド/ヒラリー・スワンク/モーガン・フリーマン/ジェイ・バルチェル/マイク・コルター/ルシア・ライカ/ブライアン・オバーン/アンンソニー・マッキー/マーゴ・マーティンデイル/リキ・リンドホーム/ベニート・マルティネス/ブルース・マックヴィッテ●日本公開:2005/05●配給:ムービーアイ=松竹●評価:★★★★

《読書MEMO》
●『観ずに死ねるか!傑作絶望シネマ88』 (2015/06 鉄人社)
ミリオンダラー・ベイビー_7893.JPG

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「作品の質×下水道が出てくる度合」で見ると「地下水道」が一番、「第三の男」が二番。

下水道映画を探検する.jpg  「地下水道」ド.jpg 「第三の男」es.jpg
下水道映画を探検する (星海社新書)』「地下水道 [DVD]」「第三の男」オーソン・ウェルズ

D下水道映画を探検する.jpg 下水道が出てくる映画ばかり59本を集めた映画ガイドで、日本で唯一の下水道専門誌「月刊下水道」で人気を博した連載の「まさかの新書化!」とのことです。ユニークな切り口というか、そもそも「月刊下水道」などという月刊誌があることを知りませんでした(Amazonで検索したらあった!)。

 著者(1954年生まれ)は下水道に関わる技師だったとのことで、2015年に名古屋市の下水道局を定年退職していますが、2009年より「スクリーンに映った下水道」を「月刊下水道」に連載開始、本書刊行時点で('16年)まだ毎月続いているそうです。

 「ネズミ編」「災害編」「モンスター編」「逃走路編」「強奪編」「隠れ家編」「脱獄編」「歴史編」と分かれていて、それでも名作映画、娯楽映画、アクション映画、パニック映画、モンスター映画といった異種映画が隣り合わせで並んだりするのが、「下水道」を切り口にした本書ならではの特徴かも。マニアックながらも、「下水道」について読者にもっと認知してもらいたいという著者の気持ちも伝わってきます(著者の肩書は「水PR研究家」となっている)。

「地下水道」 vhs.jpg 取り上げられている作品の中では、個人的には、アンジェイ・ワイダ監督の「地下水道」('56年/ポーランド)が「作品の質×下水道が出てくる度合」で見たら一番ではないかなと思います。著者も解説で、執筆にあたり参考にした文献を3冊挙げていて、力が入っている印象です。自分もそうでしたが、著者自身、過去に何回か観たときは、本物の下水道で撮影されたと信じて疑わなかったそうですが、諸資料に当たってみると、セット撮影だったと分かったそうです(プロでも見抜けなかったということか)。
地下水道 [VHS]」(カバーイラスト:安西水丸

第三の男
第三の男2.jpg第三の男 観覧車.jpg これと並ぶ傑作がキャロル・リード監督の 「第三の男」('49年/英)で、「下水道が出てくる度合」は「地下水道」より低いけれども、映画の重要なポイントで使われているように思います(これも参考文献3冊!)。本書によれば、主演のオーソン・ウェルズは、当初は役に気乗り薄で、下水道に降りると悪臭と冷気で肺炎になると嫌悪し、「この役はできないよ!」と叫んだそうな。監督にそこに立つだけでいいと懇願されて、それがカメラが回り始めると、10回も撮り直すほど撮影にのめり込んだというエピソードも貴重でした。

「レ・ミゼラブル」ジャン・ギャバン
les_miserables11jw.jpg ビクトル・ユーゴ―の『レ・ミゼラブル』を原作とする映画「レ・ミゼラブル」は4作品で下水道が描かれているそうで(ジャン・バルジャンは娘コゼットの想い人マリユスを下水道伝いに背負って救い出す)、個人的には、ジャン・ギャバン版('57年/仏・伊)、リーアム・ニーソン版('98年/米)、ヒュー・ジャックマン版('12年/英)を観ましたが、この中ではジャン・ギャバン版がストーリー的にも「下水道」的にもよく描かれていて、リーアム・ニーソン版はストーリー作品としては食い足りないが(ジャン・バルジャンの最期まで描かれていない)、下水道の映像は美しいとのことです。ヒュー・ジャックマン版は個人的には良かったけれども、下水道は暗すぎて良く分からなかった?

逃亡者 1993   01.jpg逃亡者 (1993年の映画) 02.jpg その他、ハリソン・フォード主演の「逃亡者」 ('93年/米)でもリチャード・キンブルが下水管(正しくは排水管だそうだ)から飛び降りるシーンはあったし、ショーン・コネリー主演の「ザ・ロック」('96年/米)でも、元イギリス情報局秘密情報部員のメイソンたちは下水管(これも正しくは排水管)を伝ってアルカトラズ島内に入っていくけれども、映画の中に占める比重はそう高くなかったように思います。

映画「アリゲーター」('80年/米.jpg映画「アリゲーター」1980.jpg 文章は読みやすく、各章の末尾にその作品で下水道が写っているシーンをちょこっと載せているのも親切です(これ集めるの、結構手間ではなかったか)。ただ、どうしても、「アリゲーター」('80年/米)みたいなワニとかネズミとかが出てくる動物パニックものとかが多くなってしまうので、その分、マニアック度が高くなってしまったきらいはあります。

アリゲーター [DVD]

 全体を通して、「作品の質×下水道が出てくる度合」で見たら「地下水道」が何といっても一番、「第三の男」が二番、ジャン・ギャバン版の「レ・ミゼラブル」がこれに続く三番という印象でしょうか。

地下水道 [DVD]
地下水道 [DVD].jpg地下水道.png地下水道.jpg「地下水道」●原題:KANAL●制作年:1956年●制作国:ポーランド●監督:アンジェイ・ワイダ●製作:ダリル・F・ザナック●脚本:イェジー・ステファン地下水道(米国版DVD).jpg・スタウィニュスキー●撮影:イェジー・リップマン●音楽:ヤン・クレンズ●原作:イェジー・ステファン・スタウィニュスキー●時間:96分●出演:タデウシュ・ヤンツァー/テレサ・イジェフスカ/エミール・カレヴィッチ/ヴラデク・シェイバル/ヤン・エングレルト●日本公開:1958/01(1979/12(リバイバル))●配給:東映洋画●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-04-10) (評価:★★★★☆) ●併映:「灰とダイヤモンド」(アンジェイ・ワイダ)
Kanal [DVD] [Import] (2003)米国版DVD

第三の男.gif第三の男 ポスター.jpg「第三の男」●原題:THE THIRD MAN●制作年:1949年●制作国:イギリス●監督:キャロル・リード●製作:キャロル・リード/デヴィッド・O・セルズニック●脚本:グレアム・グリーン●撮影:ロバート・クラスカー●音楽:アントン・カラス●原作:グレアム・グリーン●時間:104分●出演:ジョセフ・コットン/オーソン・ウェルズ/トレヴァー・ハワード/アリダ・ヴァリ/バーナード・リー/ジェフリー・キーン/エルンスト・ドイッチュ●日本公開:1952/09●配給:東和●最初に観た場所:千代田映画劇場(→日比谷映画) (84-10-15) (評価:★★★★☆)

レ・ミゼラブル ポスター.jpgレ・ミゼラブル-2.jpg「レ・ミゼラブル」●原題:LES MISERABLES●制作年:1957年●制作国:フランス・イタリア●監督・製作:ジャン=ポール・ル・シャノワ●脚本:ルネ・バジャベル/ミシェル・オーディアール/ジャン=ポール・ル・シャノワ●撮影:ジャック・ナトー●音楽:ジョルジュ・バン・パリス●原作:ヴィクトル・ユゴー●時間:186分●出演:ジャン・ギャバン/ダニエル・ドロルム/ベルナール・ブリエ/セルジュ・レジアニ/ブールヴィル/エルフリード・フローリン/シルヴィア・モンフォール/ジャンニ・エスポジート/ベアトリス・アリタリバ/フェルナン・ルドゥー/マーティン・ハーヴェット●日本公開:1959/06●配給:中央映画社(評価:★★★★☆)

THE FUGITIVE s.jpg「逃亡者」●原題:THE FUGITIVE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:アンドリュー・デイヴィス●製作:アーノルド・コペルソン●脚本:デヴィッド・トゥーヒー/ジェブ・スチュアート●撮影:マイ逃亡者 (1993年の映画) last.jpgケル・チャップマン●音楽:ジェームズ・ニュートン・ハワード●原作:ロイ・ハギンズ●130分●出演:ハリソン・フォード/トミー・リー・ジョーンズ/ジェローン・クラッベ/セーラ・ウォード/ジュリアン・ムーア/アンドレアス・カツーラス/ジョー・パントリアーノ/ダニエル・ローバック/L・スコット・カードウェル/トム・ウッド/ジェーン・リンチ●日本公開:1993/09●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★☆)

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「●京 マチ子 出演作品」の インデックッスへ

作品遍歴としても個々の作品解説としても読める。最初は"ついでに面接した娘"だった。

美と破壊の女優 京マチ子.jpg京マチ子 雨月物語.jpg 鍵 1959 京.jpg
雨月物語」('53年/大映)/「」('59年/大映)
美と破壊の女優 京マチ子 (筑摩選書)

京マチ子 死去 朝日新聞.jpg 今年['19年]5月に亡くなった京マチ子(1924-2019)に関する女優論。映画デビュー後、瞬く間にスターの座に上り詰め、日本映画の黄金期を駆け抜けた彼女は、強烈な肉体美で旧弊な道徳を破壊したかと思えば、古典的で淑やかな日本女性を演じてみせ、バンプから醜女、喜劇からシリアスな役まで、多彩な役を変幻自在に演じた女優でもあります。本書は、100本以上にのぼる彼女の出演作から代表的なものを選び、作品ごとに彼女がどのように変遷を遂げてきたかを、その魅力とともに語っています。

 こうして見ると、実際に彼女は作品ごとに大きな変化を遂げてきたことが分かり、著者が京マチ子のことを「美と破壊性をあわせ持つ無二の女優」としているのよく分かりました。作品遍歴としても個々の作品解説としても読めるとともに、彼女の主演作が海外の名だたる映画祭で高く評価されたのはなぜか? 戦後、多くの日本人に熱烈に支持されたのはなぜか? といったことにも考察が及び、更には、京マチ子の出演した映画やその反響等を通じて、戦前から戦後の日本社会を分析する本にもなっています(この辺りは著者が大学教授であることも関係していると思われるが、やや拡げ過ぎか)。

羅生門」('50年/大映)
京マチ子 羅生門.jpg やはり前半の、初期作品の解説が、知ら牝犬 [DVD].jpgないことも多くて興味深かったです。そもそも個人的に観ていない作品が多くありますが、その内の1つで、「羅生門」('50年/大映)の翌年に公開された「牝犬」('51年/大映)を著者は高く評価していて(本書の表紙には「牝犬」のスチール写真が使われている)、観てみたい気になりました。DVD化されていますが、意外と「羅生門」や「雨月物語」('53年/大映)は観ていても、こうした話題の狭間にある作品は、観る機会がなかったり、見落としていたりするものです。「牝犬 [DVD]

痴人の愛」('49年/大映)with 宇野重吉
痴人の愛 京マチ子.jpg痴人の愛 京マチ子 宇野重吉 .jpg エピソードとして最も興味深かったのは、第1章の「痴人の愛」('49年/大映)(共演の宇野重吉が彼女を絶賛している。今鍵 修復版 [Blu-ray].jpg月['19年9月]、「」('59年/大映)などと併せて修復版[Blu-ray]がリリースされた)のところにある、京マチ子の本格デビューに至る経緯でした。大映の企画本部長だった松山英夫が'49年に、新人をスカウトしようと大阪松竹歌劇団の目当ての踊子を観に行ったところ、同じ舞台にすらりとして豊満な踊子がいて、本命の踊子とセットで面接することに。ところが会ってみると、ニキビが噴き出た顔と大阪弁丸出しの"ついでに面接した娘"(京マチ子)に幻滅した。それが、カメラテストのフィルムを後で回してみると、瑞々しい肢体と何とも言えぬ色気に「これはいける!」ということになったそうです。「鍵 修復版 [Blu-ray]

花くらべ狸御殿0.jpg これにより京マチ子は、「最後に笑う男」('49年/大映)で本格デビューし、以降、「痴人の愛」を含め「花くらべ狸御殿」('49年/大映)から「蛇姫道中」('49年/大映)までこの年だけで5作品に、翌年には「羅生門」など7作品に、さらにその次の年にも「偽れる盛装」('51年/大映)、「源氏物語」('51年/大映)など7作品にいづれも主役乃至は重要な役どころで出演していますから、運命と言うのは分からないものです(大阪松竹歌劇団の舞台で、そのスカウトが本命視していた踊子と一緒に出ていなかったらどうなった?)。

花くらべ狸御殿」('49年/大映)with 水の江滝子

 作品の年代順に解説されているので分かりやすく、巻末に、京マチ子のフィルモグラフィーとして、100作を越える出演映画のリストがあるのも丁寧です。こうした本が出るころに、本人が亡くなってしまうというのが、95歳とほぼ長寿を全うしたと言えるにしても、ちょっと寂しい気がします。

 本書にも、京マチ子が海外のスタート並んで写っている写真のある新聞記事が紹介されていますが、(本書にはないものの)個人的には、1955年のヴェネチア国際映画祭で、当時売り出し中のソフィア・ローレンと並んで写っている写真が印象に残っています(当時の実績では、出演作の「羅生門」「雨月物語」が同映画祭のそれぞれグランプリと銀獅子賞を獲得している京マチ子の方が上)。

 著者は、「京マチ子に関しては、驚くほど忘却されたままである」としていますが、亡くなったときに結構「まだ生きていたの」的な声が聞かれたように思います。ただし、さすがに亡くなった直後に、雑誌「キネマ旬報」と「ユリイカ」で「京マチ子」特集が組まれています。

京マチ子とソフィア・ローレン(1955年・ヴェネチア)
京マチ子とソフィア・ローレンD.jpg 京マチ子とソフィア・ローレン.jpg

《読書MEMO》
●目次
序章 京マチ子の誕生前夜
第1章 肉体派ヴァンプ女優の躍進
第2章 国際派グランプリ女優へ
第3章 真実の京マチ子―銀幕を離れて
第4章 躍動するパフォーマンス―文芸映画の京マチ子
第5章 "政治化"する国民女優―国境を越える恋愛メロドラマ
第6章 "変身"する演技派女優―顔の七変化
第7章 闘う女―看板女優の共演/競演
終章 千変万化する映画女優

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ものすごくマニアックというほどでもなく、気軽に愉しめる1冊。

カルト映画館 SF.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ローラーボール [DVD].jpg ローラーボール 映画0.jpg
カルト映画館 SF (現代教養文庫)』『カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(共に表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ローラーボール [DVD]」ジェームズ・カーン

 『カルト映画館 ホラー』('95年/教養文庫)の4名の執筆者に永野寿彦氏を新たに加えた執筆陣が、SF映画100作品を、「名作SF館」「シリーズSF館」「日本SF館」の3篇に分けて紹介したものです。「名作SF館」は、さらに、➀1900~1950年代、②1960年代、③1970年~1990年代に分かれ、「日本SF館」はさらに➀1950年代、②1960年から1996年に分かれています。

キング・コング 02.jpgキング・コング 1933 dvd.jpg 「名作SF館」の➀1900~1950年代では、やはり「キング・コング」('33年)は外せないところでしょう。本書によれば、コングは、上半身だけの巨大なメカニカル操作の物と、ウィリス・H・オブライエンの人形アニメによって創造されているとのこと。人形アニメのキャラが主役で登場した最初で最後の映画であるとのことで、そう言われてもちょっとぴんとこない面もありますが、要するにあのコマ撮りが「人形アニメ」ということになるのだろうなあと。

宇宙水爆戦1.jpg宇宙水爆戦 dvd.jpg 「宇宙水爆戦」('55年)は、ストーリーにあまり関係ないところで登場するミュータントがいなければ、さほど印象には残らなかったであろうとしていますが、確かに。これに対し、「禁断の惑星」('56年)は、「全編が見どころ。50年代に製作されたSF映画の最高傑作であり、今もって映画史に残る至宝として知られる」としています。「裸の銃を持つ男」シリーズで知られるレスリー・ニールセンが正当な二枚目俳優として出演していること、シェイクスピアの「テンペスト」をSFに翻案したものであることなどに触れているのが嬉しいです。

2001 space odyssey22.jpg2001年宇宙の旅2.jpg ②1960年代には、60年代がSF映画の黄金時代であったことを物語るかのように、「博士の異常な愛情」('64年)や「2001年宇宙の旅」('68年)などの名作があり、それが、③1970年~1990年代で、まず70年代の前半、世界の破滅を描いた映画が出回り、70年後半にはスペースオペラが復権、80年代のSFX映画時代の到来、90年代のSF映画不毛の時代を経て今('96年)に至っているとのことです。

惑星ソラリスSOLARIS 1972.jpg惑星ソラリス dvd.jpg そう言えば、ハリウッド映画に限らず、アンドレ・タルコフスキー監督の「惑星ソラリス」('73年)や「ストーカー」('80年)なども、どこかディストピア的な雰囲気があったかも。ただし、「惑星ソラリス」については、従来のSF作品では取り上げられなかった哲学の世界にまで昇華し、「2001年宇宙の旅」と並び称される傑作としています。

「ローラーボール」('76年)映画.jpg アメリカ映画では、B級映画と言えばB級映画ですが、ノーマン・ジュイソン監督作でジェームズ・カーン主演の「ローラーボール」('76年)を取り上げているのが懐かしいです。これもある意味ディストピア映画で、優れたSF・ファンタジー・ホラー映画に与えられる「サターン賞」の、創設間もない'75年度第3回のサターンSF映画賞、サターン主演男優賞を受賞しています。想定されている年代は2018年です。ジェームズ・カーンの役どころは、古代ローマの見世物としての闘技会のグラディエーターの未来版といったところでしょうか。デスマッチ式のローラーボール・ゲームを戦うのは、ニューヨーク・チームvs.東京チームで、そう言えば70年代に「ローラーゲーム」というスポーツがあり、「東京ボンバーズ」というチームがあったなあ(この作品は2002年、「ダイ・ハード」のジョン・マクティアナン監督によりリメイクされたが、リメイク版は製作費7,000万ドルに対し興行収入2,585万ドルと振るわず、2009年にハリウッド・レポーター誌が発表した過去10年間に全米公開され、大コケした失敗作の8位にランクインした)。
James Caan (1976)
James_Caan_(1976).jpg ジェームズ・カーンは「ゴッドファーザー」('72年)、「ゴッドファーザーPARTⅡ」('74年)でアル・パチーノ演じるマイケルの兄ソニー・コルレオーネ役に抜擢された後の出演作になり、同じ年にサム・ペキンパー監督のアクション映画「キラー・エリート」('75年)にも出てたりして、やっぱりこの人は肉体派でしょうか(シルヴェスター・スタローン脚本・主演の「ロッキー」('66年)の当初の主演候補でもあった)。ただし、スティーヴン・キング原作、ロブ・ライナー監督のサスペンスホラー映画「ミザリー」('90年)では、キャシー・ベイツ演じる狂気的女性ファンに監禁されるベストセラー作家を演じて、演技派の一面も見せています。90年代以降はコメディ映画の出演も多いですが、個人的には、「イレーザー」('96年)で、主演のアーノルド・シュワルツェネッガー演じるクルーガーの師でありながら実は黒幕でもあったというアクの強い役を演じていたのが印象に残っています(2022年7月6日、82歳で逝去)
ジェームズ・カーン in「ゴッドファーザー」('72年)/「ミザリー」('90年)with キャシー・ベイツ/「イレーザー」('96年)with アーノルド・シュワルツェネッガー
ジェームズ・カーン.jpg

カプリコン1.jpgCapricorn 1.jpg エリオット・グールド主演の「カプリコン・1」('77年)は、アメリカ政府が人類初の有人火星着陸の試みが失敗したのを隠蔽し、"成功"を偽装するという内容で、現実性はともかく、著者が言うように、権力に追い詰められる者の恐怖はよく描けていたかも。何事にも疑いの目を向けよという批判精神が評価された作品ではないかと思います。

Close Encounters of the Third Kind (1977).jpg未知との遭遇-特別編.jpg 本書によれば、「カプリコン・1」と同年公開の「未知との遭遇」('77年)にも、「実はアメリカ政府が人類支配をもくろむエイリアンと既に契約を取り交わしていて、その事実を隠蔽するために宇宙人は平和の使者であるというイメージを大衆に与えようと本作が作られた...」という説があったとのことです。主人公がいかにも"純粋無垢"そうな宇宙人たちに宇宙船内に招き入れられる〈特別編〉まで作られ公開されていることから、そのような説が出てきたりするのではないでしょうか。

ブレードランナー.jpg『ブレードランナー』4.jpgブレードランナー パンフ.jpg 「ブレードランナー」('82年)は一時代を画したといってもいい傑作。「ルトガー・ハウガーがレプリカントを圧倒的な存在感で演じ切っている」とする著者に同感ですが、著者によれば、ルトガー・ハウガーはその後どルトガー・ハウアー.jpgんな映画にも出過ぎて、映画ファンには"どうも仕事を選ばないおじさん"という印象があるそうな。いずれにせよ、この「ブレードランナー」という作品は、公開前及び公開直後はそれほど話題にもなっておらず、時を経て評価が高まった作品で、同年の第7回「サターンSF映画賞」も、候補にはなったものの「E.T.」('82年)に持っていかれています。(ルトガー・ハウガーは、この文章をアップした18日後の 2019年7月19日に出身地のオランダにて75歳で亡くなった。)

WarGames.jpgウォー・ゲーム.jpg 「ウォー・ゲーム」('83年)は、パソコン好きの高校生が遊び心から侵入したコンピュータで戦争ゲームをやっていたのが、実はそれは軍の核戦略プログラムで、現実に第三次世界大戦勃発の危機を招いてしまうというもの。"人間が作り出した機械によって起こりうる危機"を上手く描き出していました。こうしたモチーフは「ダイハード4.0(フォー)」('07年)などに継承されていることを考えると、結構先駆的な作品だったかも。

トータル・リコール 1.jpgトータル・リコール dvd.jpg 「トータル・リコール」('90年)も「ブレードランナー」と同じくフィリップ・K・ディック原作(短編SF小説「記憶売ります」)とのことで、まずまず面白かったのでは。原作にはない火星のシーンを映像化できたのも、その頃急速に進化していたCG技術のお陰でしょうか。
   
 以上が「名作SF館」で、「シリーズSF館」では、「物体X」シリーズから「ロボコップ」シリーズまで13のSFシリーズが取り上げられ、「日本SF館」では、「ゴジラ」('54年)から始まって18作品が紹介されています。その中では、永野寿彦氏が「モスラ」('61年)を高く評価しているのが印象に残りました。

 こちらも、『カルト映画館 ホラー』同様、ものすごくマニアックというほどでもなく、馴染みのある作品が多くて、気軽に愉しめる1冊でした。

ローラーボール (特別編) [DVD]
ローラーボール (特別編).jpgローラーボール 映画1.jpg「ローラーボール」●原題:ROLLERBALL●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督・製作:ノーマン・ジュイソン●脚本:ウィリアム・ハリソン●撮影:ダグラス・スローカム●音楽:アンドレ・プレヴィン●原作:ウィリアム・ハリソン●時間:125分●出演:ジェームズ・カーン/ジョン・ハウスマン/モード・アダムス/ジョン・ベック/モーゼス・ガン/パメラ・ヘンズリー/シェーン・リマー/バート・クウォーク/ロバート・イトー/ラルフ・リチャードソン●日本公開:1975/07●配給:ユナイテッド・アーテ池袋テアトルダイア s.jpg池袋テアトルダイア  .jpgテアトルダイア5.jpgィスツ●最初に観た場所:池袋・テアトルダイヤ(78-01-21)(評価:★★★)●併映:「新・猿の惑星」(ドン・テイラー)/「ジェット・ローラーコースター」(ジェームズ・ゴールドストーン)/「世界が燃えつきる日」(ジャック・スマイト)(オールナイト)
池袋テアトルダイア  1956(昭和31)年12月26日池袋東口60階通り「池袋ビル」地下にオープン(地上は「テアトル池袋」)、1981(昭和56)年2月29日閉館、1982(昭和57)年12月テアトル池袋跡地「池袋テアトルホテル」地下に再オープン、2009年8月~2スクリーン。2011(平成23)年5月29日閉館。

イレイザー [DVD]」アーノルド・シュワルツェネッガー/ヴァネッサ・ウィリアムズ
「イレイザー」1996.jpg「イレイザー」1.jpg「イレイザー」●原題:ERASER●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:チャック・ラッセル●製作:アーノルド・コペルソン/アン・コペルソン●脚本:トニー・パーイヤー/ウォロン・グリーン●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:アラン・シルヴェスト「イレイザー」syuwarutunegga-.jpgリ(主題歌:「Where Do We Go From Here(愛のゆくえ))」ヴァネッサ・ウィリアムズ)●原案:トニー・パーイヤー/ウォロン・グリーン/マイケル・S・チャヌーチン●時間:115分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェームズ・カーン/ヴァネッサ・ウィリアムズ/ジェームズ・コバーン/ロバート・パストレリ/ジェームズ・クロムウェル/ダニー・ヌッチ/ニック・チンランド/ジョー・ヴィテレリ/マーク・ロルストン/ジョン・スラッテリー/ローマ・「イレイザー」ジェームズ・カーン.jpg「イレイザー」ジェームズ・コバーン.jpgマフィア/オレク・クルパ/パトリック・キルパトリック●日本公開:1996/08●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★)

    

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比較的オーソドックスなラインアップ。いろいろ思い出させてくれた。

カルト映画館 ホラー0.jpgカルト映画館 ホラー.jpg  ザ・チャイルド 30周年特別版.jpg ザ・チャイルド3.jpg
カルト映画館 ホラー (現代教養文庫)』(表紙イラスト:永野寿彦(シネマ・イラストライター))「ザ・チャイルド 30周年特別版 [DVD]

 4名の執筆者が、ホラー映画100作品を、「名作ホラーの館」「ホラーカルトの館」「ホラー監督の館」「日本怪奇館」の4篇に分けて紹介したものです。

 「名作ホラーの館」は、共著者全員で作品を分担して紹介しているためか、それほどマニアックでもなく、比較的オーソドックスなラインアップだったように思います。

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpgフランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg 「フランケンシュタインの花嫁」('35年)が、本編「フランケンシュタイン」('31年)と比べ、「どこをとっても第1作目をしのいでいる」というのがよく理解できる解説になっていました。個人的にも、80年代に渋谷の旧ユーロ・スペースで予備知識なしに2本続けて観て、「花嫁」の方が上だと感じました。

サイコ1.jpgPsycho.jpg 「サイコ」('60年)は、あの和田誠氏が『お楽しみはこれからだ Part3』('80年/文藝春秋)で是非見てみたいと言っていた劇場予告編のことが書いてあります(ヒッチコックが登場して映画に登場するモーテルで現場検証よろしく、事件を説明するというもの)。今はネットで見ることができます。

「世にも怪奇な物語」2.jpg世にも怪奇な物語 dvd.jpg 「世にも怪奇な物語」('67年)は、エドガー・アラン・ポーの怪奇小説3作をロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニの3監督が共作したオムニバス映画で、これも和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』('75年/文藝春秋)の中で、ロジェ・ヴァディムのパートは「耽美主義的映像が逆に小細工のようでいけなかった」とし、「通俗的にはルイ・マルが面白く、怖さや不思議さではフェリーニが圧巻」としています。ただし、本書は映画の批評と言うより紹介が主であるため、「三人の名匠が個性派俳優たちを使って絶妙な味付けを施した」と同等に評価しています。

ローズマリーの赤ちゃん』(1968).jpgローズマリーの赤ちゃん.jpg 「ローズマリーの赤ちゃん」('68年)は、"悪魔"の存在がローズマリーの被害妄想かと思ったら実は本当に悪魔が存在していたというのが怖いとしていますが、著者が「"オカルト映画"にふさわしい秀逸な悪夢にイメージとして特筆される」としている、ローズマリーがすべてを受け入れ、至福の表情でわが子を抱いて子守歌を口ずさむラストの方が、ある意味それ以上に怖かったかも。

The Shining.bmp「シャイニング」 (1980) 英.jpg 「シャイニング」('80年)は、スタンリー・キューブリックが作品に織り込んだ"狂気"を見事に表現したのがジャック・ニコルソンで、それによって、スティーヴン・キング原作の映画化の中でも、一,二を争う出来になっているというのは同感です(ただし、当のスティーヴン・キングはこの映画化作品を気に入ってなかった)。

ハンガー パンフ.jpg 「ハンガー」('83年)は、デヴィッド・ボウイが吸血鬼役に挑んだ映画でしたが、著者が言うように、あくまでも主役は女吸血鬼を演じたカトリーヌ・ドヌーブでした。仏映画調のようなフィルム・ノワール調で描かれ、「これがMGM映画なの?」と思わずにはいられないとしていますが、カトリーヌ・ドヌーブが"仕切った"いうことも関係しているのではないでしょうか。

フランケンシュタイン (1994年) dvd.jpg 「フランケンシュタイン」('94年)は、ケネス・プラマー監督がロバート・デ・ニーロと組んだ作品ですが、「フランケンシュタインの"花嫁"となったジェームズ・アイヴォリー作品の乙女、ヘレナ・ボナム・カーターの怪奇女優ぶり」を思い出させてくれました。「眺めのいい部屋」('86年)のお嬢様役からの180度イメチェンは、「ハリー・ポッター」シリーズの魔女役よりずっと前から始まっていたわけか。

 「ホラーカルトの館」は、「鷲巣義明プレゼンツ」とあるように、個人のセレクションであるため、その分マニアック度が上がっているように思いました。

 「ロサンゼルス」('81年)のマイケル・ウィナーが監督した、教会と悪魔を対等に描いたためタブー映画とされている「センチネル」('77年)や(個人的には未見)、ナルシソ・イバネ・セッラドール監督の子供たちが大人たちを襲うというスペインのホラー映画「ザ・チャイルド」('76年)などは、本書にあるように当時はビデオ化されませんでした。「センチネル」にはフリークス(言わば身体障碍者)を悪魔視する描かれ方があり、「日本でのビデオ化はまず不可能」としています。また、「ザ・チャイルド」には、子供が胎児を操って胎内から母親を攻撃、ショック死させる場面があったりします。ところが「ザ・チャイルド」はその後ビデオ化されて2001年にはDVDにもなり、「センチネル」も2009年にDVD化されました。

映画 ザ・チャイルド.jpg とりわけ、「ザ・チャイルド」は、著者が「劇場公開時に観て、本作の素晴らしさに舌を巻いた」と言うように、初めてこの作品を観たホラー映画ファンの間である種ブームとなり、2008年には、「30周年特別版DVD」が発売されたほどです。個人的には、初めて観たときは「大人を襲っている子供たちもやがて大人になるのになあ」とか「子供と大人の中間にいる人はどうすればいいの?」とか引っ掛かりがありましたが、観たのが学生の時だったというのもあるし、或いは、"怖さ"に飲み込まれないよう、わざと白けたことを考えるようにしていたのかもしれんません(基本的に怖がりなので)。

ザ・チャイルド (1976年の映画).jpg「ザ・チャイルド」●原題:WHO CAN KILL A CHILD?//ISLAND OF THE DAMNED●制作年:1976年●制作国:スペイン●監督:ナルシソ・イバニェス・セラドール●製作:マヌエル・ペ2_ザ・チャイルド 4Kリマスター.jpgレス●脚本:ルイス・ペニャフィエル●撮影:ホセ・ルイス・アルカイネ●音楽:ワルド・デ・ロス・リオス●原作:9_ザ・チャイルド.jpgファン・ホセ・プランス●時間:107分●出演:ルイス・フィアンダー/プルネラ・ランサム/アントニオ・イランソ/ルイス・シヘス●日本公開:1977/05●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:中野武蔵野館(77-12-12)(評価:★★★☆)●併映:「小さな悪の華」(ジョエル・セリア)

ザ・チャイルド 4Kリマスター45周年特別版 [Blu-ray]」['21年]

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スター男優、スター女優、名優・名脇役で辿る昭和邦画史。選ばれた100本はオーソドックスか。

邦画の昭和史_3799.JPG邦画の昭和史_3798.JPG邦画の昭和史.jpg   フラガール 映画  蒼井.jpg
邦画の昭和史―スターで選ぶDVD100本 (新潮新書)』映画「フラガール」       北日本新聞 2018.10.25
長部 日出雄.jpg 昨年['18年]10月に亡くなった作家の長部日出雄(1934-2018/84歳没)が雑誌「小説新潮」の'06年1月号から'07年1月号に間歇的に5回にわたって発表したものを新書化したもの。'73年に「津軽じょんから節」で直木賞を受賞していますが、元は「週刊読売」の記者で、その後、雑誌「映画評論」編集者、映画批評家を経て作家になった人でした。個人的には『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年/文春文庫ビジュアル版)の中での、赤瀬川準、中野翠氏との座談が印象に残っています(赤瀬川隼も1995年に「白球残映」で直木賞作家となったが、この人も2015年に83歳で亡くなった)。

 本書は全3章構成で、第1章ではスター男優を軸に(いわば男優篇)、第2章ではスター女優を軸に(いわば女優篇)、第3章では名優・名脇役を軸に(いわば名優・名脇役篇)、それぞれ昭和映画史を振り返っています。

銀嶺の果て 中.jpg 第1章「戦後のスーパスターを観るための極め付き35本」(男優篇)で取り上げているのは、三船敏郎、石原裕次郎、小林旭、高倉健、鶴田浩二、菅原文太、森繁久彌男はつらいよ・知床慕情.jpg、加山雄三、植木等、勝新太郎、市川雷蔵、渥美清らで、彼らの魅力と出演作の見所などを解説しています。この中で、昭和20年代の代表的スターを三船敏郎とし、昭和30年代は石原裕次郎、昭和40年代は高倉健、昭和50年代は渥美清としています。章末の「35本」のリストでは、その中に出演作のある12人の俳優の内、三船敏郎が9本と他を圧倒し(黒澤明監督作品8本+黒澤明脚本作品(「銀嶺の果て」))、石原裕次郎は2本、高倉健は3本、渥美清も3本入っていて、さらに渥美清+三船敏郎として、「男はつらいよ・知床慕情」を入れています(したがって最終的には三船敏郎10本、渥美清4本ということになる)。

 第2章「不世出・昭和の大女優に酔うための極め付き36本」(女優篇)で取り上げているのは、原節子、田中絹代、高峰秀子、山本富士子、久我美子、京マチ子、三原葉子、藤純子、宮下順子、松阪慶子、浅丘ルリコ、吉永小百合、岸恵子、有馬稲子、佐久間良子、夏目雅子、若尾文子などで、彼女らの魅力と出演作のエピソードや見所を解説しています(京マチ子、先月['19年5月]亡くなったなあ)。文庫化にあたり、「大女優篇に+1として、破格ではあるが」との前置きのもと書き加えられたのが「フラガール」の蒼井優で(青井優と言えば、この映画で南海キャンディーズの山崎静代と共演した縁から、今月['19年6月]南海キャン蒼井優 フラガール.jpg蒼井優 山里亮太.jpgディーズの山里亮太と結婚した)、本書に出てくる中で一番若い俳優ということになりますが、著者は彼女を絶賛しています。章末の「36本」のリストでは、原節子、田中絹代、高峰秀子の3人が各4本と並び、あとは24人が各1本となっていて、男優リストが12人に対して、こちらは27人と分散度が高くなっています。

 第3章「忘れがたき名優たちの存在感を味わう30本」(名優・名脇役篇)では、一般に演技派とか名脇役と呼ばれる人たちをを取り上げていますが、滝沢修、森雅之、宇野重吉、杉村春子、伊藤雄之助、小沢栄太郎、小沢昭一、殿山泰司、木村功、岡田英次、佐藤慶などに触れられていて、やはり前の方は新劇など舞台出身者が多くなっています。章末の「30本では、滝沢修、森雅之、宇野重吉、小沢栄太郎の4人が各2本選ばれており、残り22人が各1本となっています。

乾いた花  jo.jpeg 先にも述べたように、スター男優・女優や名優・名脇役を軸に振り返る昭和映画史(殆ど「戦後史」と言っていいが)であり、『大アンケートによる洋画ベスト150』の中での対談でも感じたことですが、この人は映画の選び方が比較的オーソドックスという感じがします。したがって、エッセイ風に書かれてはいますが、映画の選び方に特段のクセは無く、まだ日本映画をあまり見ていない人が、これからどんな映画を観ればよいかを探るうえでは(所謂「観るべき映画」とは何かを知るうえでは)、大いに参考になるかと思います。と言って、100本が100本メジャーな作品ですべて占められているというわけでもなく、女優篇の「36本」の中に三原葉子の「女王蜂と大学の竜」('03年にDVD化されていたのかあ)なんていうのが入っていたり、名優編の「30本」の中には、笠智衆の「酔っぱらい天国」(こちらは「DVD未発売」になっていて、他にも何本かDVD化されていない作品が100本の中にある)や池部良の「乾いた花」(本書刊行時点で「DVD未発売」になっているが'09年にDVD化された)など入っているのが嬉しいです(加賀まりこ出演作が女優篇の「36本」の中に入っていないのは、彼女が主演したこの「乾いた花」を男優篇の方に入れたためか。「キネマ旬報助演女優賞」を受賞した「泥の河」は、田村高廣出演作として名優篇の方に組み入れられている)。

フラガール 映画0.jpgフラガール 映画s.jpg 因みに、著者が元稿に加筆までして取り上げた(そのため「100本」ではなく「101本」選んでいることになる)「フラガール」('06年/シネカノン)は、個人的にもいい映画だったと思います。プロデューサーの石原仁美氏が、常磐ハワイアンセンター創設にまつわるドキュメンタリーをテレビでたまたま見かけて映画化を構想し、当初は社長を主人公とした「プロジェクトX」のような作品の構想を抱いていたのがフラガール 映画1.jpg、取材を進める中で次第に地元の娘たちの素人フラダンスチームに惹かれていき、彼女らが横浜から招かれた講師による指導を受けながら努力を重ねてステージに立つまでの感動の物語を描くことになったとのことで、フラガールび絞ったことが予想を覆すヒット作になった要因でしょうか。主役の松雪泰子・蒼井優から台詞のないダンサー役に至るまでダンス経験のない女優をキャスティングし、全員が一からダンスのレッスンを受けて撮影に臨んだそうです。ストーリー自体は予定調和であり、みうらじゅん氏が言うところの"涙のカツアゲ映画"と言えるかもしれませんが(泣かせのパターンは「二十四の瞳」などを想起させるものだった)、著者は、この映画のモンタージュされたダンスシーンを高く評価しており、「とりわけ尋常でない練習フラガール 映画6.jpgと集中力の産物であったろう蒼井優の踊り」と、ラストの「万感の籠った笑顔」を絶賛しています。確かに多くの賞を受賞した作品で、松雪泰子・富司純子・蒼井優と女優陣がそれぞれいいですが、中でも蒼井優は映画賞を総嘗めにしました。ラストの踊りを「フラ」ではなく「タヒチアン」で締めているのも効いているし、実話をベースにしているというのも効いているし(蒼井優が演じた紀美子のモデル・豊田恵美子は実はダンス未経験者ではなく高校でダンス部のキャプテンだったなど、改変はいくつもあるとは思うが)、演出・撮影・音楽といろいろな相乗効果が働いた稀有な成功例だったように思います。
[フラガール 松雪1.jpg [フラガール 松雪2.jpg [フラガール 松雪4.jpg
松雪泰子(平山まどか(カレイナニ早川(早川和子)常磐音楽舞踊学院最高顧問がモデル))
「フラガール」岸部.jpg 「フラガール」富司.jpg
岸部一徳(吉本紀夫(中村豊・常磐炭礦元社長がモデル))/富司純子

富司純子・蒼井優(第30回「日本アカデミー賞」最優秀助演女優賞受賞)/富司純子・豊川悦司         
「フラガール」富司。蒼井.jpg「フラガール」富司。豊川.jpg
      
蒼井優(谷川紀美子(常磐音楽舞踊学院1期生・小野(旧姓 豊田)恵美子がモデル))・山崎静代
フラガール 映画d.jpgフラガール 映画2.jpg「フラガール」●制作年:2006年●監督:李相日(リ・サンイル)●製作: シネカノン/ハピネット/スターダストピクチャーズ●脚本:李相日/羽原大介●撮影:山本英夫●音楽:ジェイク・シマブクロ●時間:120分●出演:松雪泰子/豊川悦司/蒼井優/山崎静代(フラガール ダンサー.jpg南海キャンディーズ)/岸部一徳/富司純子/高橋克実/寺島進/志賀勝/徳永えり/池津祥子/三宅弘城/大河内浩/菅原大吉/眞島秀和/浅川稚広シネカノン有楽町1丁目03.jpg/安部智凛/池永亜美/栗田裕里/上野なつひ/内田晴子/田川可奈美/中浜奈美子/近江麻衣子/千代谷美穂/直林真里奈/豊川栄順/楓●公開:2006/09●配給:シネカノン●最初に観た場所:有楽町・シネカノン有楽町(06-09-30)(評価:★★★★☆)

内田晴子/田川可奈美/栗田裕里/豊川栄順/池永亜美

蒼井優が演じた紀美子のモデル・レイモミ豊田(小野(旧姓豊田)恵美子)/常磐ハワイアンセンター最後のステージ
レイモミ豊田.jpg 

【お悔み】初代フラガール、小野恵美子さん死去 79歳 いわきにフラ文化築く福島民友新聞 2023年8月5日
小野恵美子.jpg

シネカノン有楽町1丁目(2010年1月28日閉館)/角川シネマ有楽町(2011年2月19日オープン)
シネカノン有楽町1丁目.jpg角川シネマ有楽町2.jpgシネカノン有楽町1丁目 2004年4月24日角川シネマ有楽町.jpg有楽町「読売会館」8階に「シネカノン有楽町」オープン。2007年10月6日「シネカノン有楽町1丁目」と改称。㈱シネカノン社の民事再生法申請により2010年1月28日閉館。2011年2月19日に角川書店の映像事業のフラッグシップ館として居抜きで再オープン(「角川シネマ有楽町」)

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「150本すべてみなさい!」はあながち大袈裟なことを言っているわけではないと。

世界と日本のアニメーションベスト150.jpg ユーリ・ノルシュテイン作品集.jpg くもとちゅうりっぷ 政岡憲三作品集.jpg 権藤 俊司.jpg 権藤 俊司 氏(アニメーション研究家・評論家)
ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]」「くもとちゅうりっぷ 政岡憲三作品集 【DVD】
世界と日本のアニメーションベスト150

 2003年刊行の本書は、「時代・ジャンル・国内外問わず、劇場用長・短編、TV、あるいはCM、MC(ミュージッククリップ)も問わず、アニメーションであれば可」という規定で、ベストだと思うアニメーション作品を20本挙げてもらうアンケートを、アニメーション監督を中心に現場で働くスタッフに向けて行い(評論家などアニメ業界関係者も若干名含む)、138名から得られた回答を取りまとめ、得点ランキング化したものです。内、50位までの結果は以下の通り。

順位   作品名 / 制作国 / 監督 / 制作年
霧の中のハリネズミ 12.jpg1   霧につつまれたハリネズミ / 露 / ユーリ・ノルシュテイン / 1975
2   話の話 / 露 / ユーリ・ノルシュテイン / 1979
「ファンタジア」ド2.jpg3   ファンタジア / 米 / ベン・シャープスティーン / 1940
4   木を植えた男 / カナダ / フレデリック・バック / 1987
5   やぶにらみの暴君 / 仏 / ポール・グリモー / 1952
6   未来少年コナン / 日本 / 宮崎駿 / 1978
となりのトトロ dvdes3.jpg7   となりのトトロ / 日本 / 宮崎駿 / 1988
白雪姫 1937 22.jpg8   白雪姫 / 米 / デヴィッド・ハンド / 1937
イエロー・サブマリン dvd2.jpg9   イエロー・サブマリン / 英 / ジョージ・ダニング / 1968
わんぱく王子の大蛇退治 300.jpg10   わんぱく王子の大蛇退治 / 日本 / 芹川有吾 / 1963
11   太陽の王子 ホルスの大冒険 / 日本 / 高畑勲 / 1968
12   クラック! / カナダ / フレデリック・バック / 1981
13   バッタ君町に行く / 米 / デイブ・フライシャー / 1941
14   ウォレスとグルミット ペンギンに気をつけろ! / 英 / ニック・パーク / 1993
15   くもとちゅうりっぷ / 日本 / 政岡憲三 / 1943
風の谷のナウシカ11.jpeg16   風の谷のナウシカ / 日本 / 宮崎駿 / 1984
雪の女王22.jpg17   雪の女王 / 露 / レフ・アタマノフ / 1957
18   線と色の即興詩 / カナダ / ノーマン・マクラレン / 1955
19   天空の城ラピュタ / 日本 / 宮崎駿 / 1985
ルパン三世 カリオストロの城122.jpg20   ルパン三世 カリオストロの城 / 日本 / 宮崎駿 / 1979
21   対話の可能性 / チェコ / ヤン・シュヴァンクマイエル / 1982
22   手 / チェコ / イジー・トルンカ / 1965
23   真夏の夜の夢 / チェコ / イジー・トルンカ / 1959
24   禿山の一夜 / 仏 / アレクサンドル・アレクセイエフ / 1933
25   道成寺 / 日本 / 川本喜八郎 / 1976
26   ナイトメアー・ビフォア・クリスマス / 米 / ティム・バートン / 1993
27   「ファンタスティック・プラネット」  (73年.jpgファンタスティック・プラネット / 仏 / ルネ・ラルー / 1973
28   おこんじょうるり / 日本 / 岡本忠成 / 1982
千と千尋の神隠し 011.jpg29   千と千尋の神隠し (通常版) / 日本 / 宮崎駿 / 2001
30   AKIRA / 日本 / 大友克洋 / 1988
31   ガンバの冒険 / 日本 / 出崎統 / 1975
32   トムとジェリー / 米 / ウィリアム・ハンナ/ジョセフ・バーベラ / 1940~67
鉄腕アトム 1963 4.jpg33   鉄腕アトム / 日本 / 手塚治虫 / 1963~66
34   岸辺のふたり / オランダ / マイケル・デュドック・デ・ヴィット / 2000
35   ピノキオ / 米 / シャープスティーン&ラスク / 1940
機動戦士ガンダム dvd2.jpg36   機動戦士ガンダム / 日本 / 富野善幸 / 1979~80
37   バンビ / 米 / デヴィッド・ハンド / 1942
38   ストリート・オブ・クロコダイル / 英 / ブラザーズ・クエイ / 1986
hotarunohaka5.jpg39   火垂るの墓 / 日本 / 高畑勲 / 1988
40   ベティ・ブープ / 米 / デイブ・フライシャー / 1930~
41   アイアン・ジャイアント / 米 / ブラッド・バード / 1999
42   チェブラーシカ / 露 / ロマン・カチャーノフ / 1969~74
43   バヤヤ / チェコ / イジー・トルンカ / 1950
44   砂の城 / カナダ / コ・ホードマン / 1977
トイ・ストーリー19.jpg45   トイ・ストーリー / 米 / ジョン・ラセター / 1995
46   シリー・シンフォニー / 米 / ウィルフレッド・ジャクソン / 1937
アニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 1999.jpg47   老人と海 / 露 / アレクサンドル・ペドロフ / 1999
新世紀エヴァンゲリオン11.jpg48   新世紀エヴァンゲリオン / 日本 / 庵野秀明 / 1995~96
49   ストリート / カナダ / キャロライン・リーフ / 1976
50   スノーマン / 英 / ダイアン・ジャクソン / 1982
     

カレル・ゼーマン「水玉の幻想」/アレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」/山村浩二「頭山」
カレル・ゼマン 水玉の幻想 .jpgアレクサンドル・アレクセイエフ「鼻」(ゴーリキー原作).jpgAtama Yama (Mt. Head).jpg 上記のほか、第51位から第150位までには、第56位にカレル・ゼーマンの「水玉の幻想」('48年/チェコスロバキア、12分)、第61位に「ルパン3世(TV第1作)」('71年/日本)、第70位にジョン・ラセターの「ルクソー Jr.」('86年/米、2分)、第72位にアレクサンドル・アレクセイエフ の「」('63年/仏、11分)、第73位にブルーノ・ボツェットの「ネオ・ファンタジア」('76年/イタリア)、第90位に山村浩二の「頭山」 ('02年/日本、10分) 、第92位にユーリー・ノルシュテインの「外套」(未完成/ロシア)、第97位に押井守の「うる星やつら2/ ビューティフル・ドリーマー」('84年/日本)、第119位に吉川惣司の「ルパン三世~ルパンVS複製人間」('78年/日)、第127位にウォルト・ディズニー製作の「ダンボ」 ('41年/米)、第130位に宮崎駿の「もののけ姫」('97年/日本)などがランクインしています。

 アンケートの回答者138名の内訳が、日本114名、海外24名ということもあって、日本の作品が多いのはもとより、比較的我々に馴染みのある作品が多いように思いましたが、そんな中、ユーリ・ノルシュテインの「霧につつまれたハリネズミ」('75年/露)が第1位、同「話の話」('79年/露)が第2位と、ユーリ・ノルシュテインが圧倒的な支持を得ています。

道成寺 川本.jpg 「霧につつまれたハリネズミ」は10分の作品、「話の話」は29分の作品ですが、短編が結構上位に来ているのは、短編の方が、時代の先端技術の粋を集めた完成度が高い作品、あるいは個人の意匠を集約した、"純度"が高い作品となりやすいためでしょうか。日本の作品でも、第15位にランクインの政岡憲三監督の「くもとちゅうりっぷ」('43年)は16分の作品、第25位のアニメーション作家であるとともに人形作家でもあった川本喜八郎(1925-2010)監督の「道成寺」('76年)は19分の短編作品です。

「道成寺」('76年)
 
くもとちゅうりっぷ tenntoumusi.jpgくもとちゅうりっぷ くも.jpg 「くもとちゅうりっぷ」は戦時中(昭和18年4月公開)の作品で、クモに襲われそうになったテントウムシの女の子をチューリップ(擬人化されている)が助けるというもの。松本零士や手塚治虫も昔観たそうですが、戦時中に多く作られた(例えば同時期に作られた37分のアニメ映画「桃太郎の海鷲」(昭和18年3月公開)のような)明らかなプロパガンダ目的の国策映画ではなく、童話のようなミュージカル仕立てで描いている点で特異な作品とされています。一方、テントウムシは日本人的な顔立ちでクモは黒人のような顔なので、日本と敵国を表しているようにも見えます。しかしながら、テントウムシの女の子は白人の女の子にも見え、クモの方は、日本が大東亜共栄圏を築くために友好関係を築く必要がある南洋の原住民に見えなくもなく、そのため文部省の推薦を得ることが出来なかったとか。テントウムシの女の子の動きは、政岡憲三監督が自分の妻に水着を着せてモデルにして作画したそうで、ディズニーが「白雪姫」('37年)などで用いた方法に似ているように思います(今ならばモーションキャプチャーといったところか)。

 ランキング150作品の紹介のほかに、専門家3名(片山雅博、角鍋博之、権藤俊司の各氏)による「座談会」や、「監督ランキングベスト100」、絵本に描かれた「霧につつまれたハリネズミ」などの特集が組まれていて、ども充実しています。中でも、8ページにわたる「座談会」(鼎談)は、なぜ「霧につつまれたハリネズミ」が1位で「話の話」が2位になったのかという分析から始まって、以下の作品についても知られざるエピソードが満載で、興味深く読めました。

 その座談会のタイトルキャッチは、「根性ある人は150本すべてみなさい!」となっていますが、素人目にも身近な作品が多く含まれており、その中に一部だけなかなかお目にかかれない作品も含まれているといった感じで、このキャッチはあながち大袈裟なことを言っているわけではないように思えました。
 
霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)


くもとちゅうりっぷes.jpgあの頃映画松竹DVDコレクション 桃太郎 海の神兵.jpg「くもとちゅうりっぷ」●制作年:1943年●監督・脚本・撮影:政岡憲三●製作:松竹動画研究所●動画:桑田良太郎/熊川正雄/土井研二/山本三郎/木村阿弥子●作曲・指揮:弘田龍太郎●歌:村尾護郎/杉山美子●原作・作詞:横山美智子●時間:16分●公開:1943/04●配給:松竹(評価:★★★☆)
あの頃映画松竹DVDコレクション 桃太郎 海の神兵 / くもとちゅうりっぷ デジタル修復版」['16年]

《読書MEMO》
●内容
世界と日本のアニメーションベスト150_2.jpg世界と日本のアニメーションベスト150発表&作品紹介
時代、ジャンル、国内外を問わず、すべてのアニメーションを対象にした、世界初のランキング! アニメーション監督を中心に業界関係者たちに、好きな作品ベスト20を挙げてもらいました。 厳しいプロたちに選ばれたベストアニメーション150本を発表!
座談会「根性ある人は150本すべて見なさい!」
アニメーション監督と評論家による言いたい放題の座談会。ランキングについてはもちろん、普段は聞けない監督や作品にまつわる知られざるエピソードなどを披露。
監督ランキングベスト100
ランキング作品の点数を元にした監督ランキングBest100。 作品のBest150とはひと味違うランキング結果に注目。
絵本「霧につつまれたハリネズミ」絵コンテ
絵本のために描かれた「霧につつまれたハリネズミ」のラフを特別収録。
アンケート全掲載138+α
回答者138人のアンケートを一挙に大公開。 「好きなアニメーション作品20本」という以外に決まりがないため、ユニークな作品やコメントが満載。
前代未聞のランキング結果発表!!
ランキングされた924タイトルを全掲載。 監督名、得点はもとより、英語タイトル、制作年、制作国などをリスト形式にして発表。
五味洋子が選ぶ、マイフェイバリットアニメ100
アニメーションへの目線の確かさでは信頼の厚い五味洋子が選んだ~My Favorite Animations「世界と日本のベストアニメ厳選100」
ピックアップ30
150位圏外にもすばらしい作品がたくさん。 すべて紹介したいが、ランキングの中から30本をピックアップ。
ユーリ・ノルシュテインからのメッセージ 芸術家がこの混迷の時代にものをつくるということ
映像詩人といわれるロシアのアニメーション作家ユーリ・ノルシュテイン。 ラピュタアニメーションフェスティバル'02のシンポジウムで語ったメッセージ。

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原節子"通"を任ずるならば押さえておきたい1冊。本人発言等、事実からその実像に迫る。

原節子 伝説の女優 千葉.jpg原節子―映画女優の昭和.jpg原節子さん死去 - 号外:朝日新聞.jpg
原節子―伝説の女優 (平凡社ライブラリー)』『原節子―映画女優の昭和』   朝日新聞「号外」2015年11月25日

原節子、号泣す.jpg 末延芳晴 著『原節子、号泣す』('14年/集英社新書)をちょうど再読し終えた頃に原節子の訃報に接しましたが、既に95歳だっため何となく予感はありました。本人の遺志により発表を遅らせたとのことで、読んでいた頃にはもう亡くなっていたのかあ。文春文庫ビジュアル版の『大アンケートによる日本映画ベスト150』('89年)に監督・男優・女優の各ベスト10のコーナーがあり、女優は、1位・原節子、2位・吉永小百合、3位・高峰秀子、4位・田中絹代、5位・岩下志麻、6位・京マチ子、7位・山田五十鈴、8位・若尾文子、9位・岸恵子、10位・藤純子となっており、やはりスゴイ女優だったのだなあと。

 本書(同著者の『原節子―映画女優の昭和』('87年/大和書房)に加筆修正してライブラリー化したもの)は、その原節子の女優としてのキャリアを丹念に追ったものであり、原節子"通"を任じるならば是非とも押さえておきたい1冊です。著者があとがきで述べていますが、従来の女優の自伝・評伝の、身近な人間関係に密着して展開する書き方とはやや距離を置き、原節子のその時点時点での発言を重視し、その意味を、役や作品や周囲の証言や、その時代の映画・歴史状況と対応させてみるという手法を取っています。こう書くと難しく感じるかもしれませんが、実際はその逆で、事実を出来るだけ詳しく記し、解釈は読者に預ける、或いは事実から汲み取ってもらうという手法にも思え、著者による作品解釈等引っ掛かったりすることが殆ど無いため、正味400ページありますが、すらすら読めました。

 興味深かったのは、デビュー以来その素材を買われながらも今一つ力が出し切れず、一部からは「大根」と呼ばれていた時期が結構長くあったのだなあということで、時折、その年代ごとの女優のブロマイドの売れ行きベストテンやギャランティによる番付、映画雑誌による人気ランキングが出てきますが、ベストテンには早くから名を連ねるものの、ずっとその中では6位以下の下位グループに位置し、結局、戦前10年ベストテンの下位に低迷し続け、彼女が初めてベスト5に入ったのが、雑誌「近代映画」の1949年正月号で、この時点でも、1位に高峰三枝子(当時30歳)、2位に高峰秀子(同24歳)がいて、原節子(同28歳)は第3位でした。4位が田中絹代(同31歳)で5位が山田五十鈴(同31歳)だから、確かに演技面力の面でも"強者"揃いであるわけですが。

麦秋 原節子.jpg 本書によれば、彼女が人気の頂点に達したのは1951年で、ハリウッドの外国人記者協会が企画し毎日新聞が代行した日本における一般投票で、前年の4位からこの年のトップになっています。但し、1952年の「映画ファン」5月号の人気投票では、作品投票で主演作の「麦秋」('51年)、「めし」('51年)が1位と2位に選ばれたにも関わらず、原節子(当時32歳)は津島恵子(同26歳)に次いで2位に後退しており、今でこそ「伝説の女優」と言われていますが、当時は彼女も、移ろいがちな女優人気のうねりの中にいたのだなあと思いました。

麦秋」(1951年)

 そうした原節子の魅力を十分に引き出したの小津安二郎監督であると言われていますが、本書の中にあるエピソードでは、「麦秋」のクランクインが迫った際に、原節子はギャラが高いから別の女優にしてくれと松竹から言われた小津安二郎監督が、原節子が出なければ作品は中止すると珍しく興奮した声で言ったといい、それを聞いた原節子が、自分のギャラは半分でもいいから小津の作品に出演したいと言ったという話に、二人の結びつきの強さを感じました。

 また、原節子はこの頃には女優としての意識にも高いものがあり、「日本映画そのものに、ハッキリとした貫くような個性がないんですもの。リアリズムも底が衝けないか、或いは詩がないのよ」(「近代映画」'51年7月号)とも言っており、「麦秋」の完成間近には、「日本映画の欠点?そうね、それはシナリオだと思うわ。小説の映画化ばかり追っかけている現状は悲しいと思うの。演技者にあった強力なオリジナルを書いて、あッと言わしてくれるシナリオ・ライターがあってもいいと思うわね。」(「時事新報」'51年9月14日)とまで言っていますが、確かに「麦秋」はオリジナル脚本でした(その前の「晩春」('49年)は広津和郎「父と娘」が原作)。

 その少し後には「私は演技がナチュラルに没してしまうのが恐いんです。(中略)映画のリアリズっていうものが、私たちが演技するナチュラルな写実ではなくって、出演者の(中略)厳密なね、リアリズムが一分の隙もなくナチュラルに見える結果の演技でなくっちゃ...。」(「丸」'54年1月号)などといった発言もあり、これ、スゴくない?

 興味深かったのは、「日刊スポーツ」や「スポーツニッポン」「報知新聞」といったスポーツ紙のインタビューが本書には多く載っていますが、その中で、結構ざっくばらんに自分のことを語っている点で、自らを「大根」だとか「おばちゃん」だとか言ったり、自分が演じた役柄が自分には今一つしっくりこなかったとあっさり言ってしまうなど相当サバけた印象があり、結婚に関する記者の質問にも自分なりの考えを述べるなど(時に記者を軽くあしらい)、非常に現代的・現実的な思考や感覚の持ち主であったことが窺える点でした。

 小津安二郎が彼女の魅力を引き出したのは確かですが、小津の描いたやや古風な女性像に続いて、そうした彼女の実像に近いモダンな部分を作品にうまく反映させる監督が現れなかったというのも、彼女が引退を決意した理由として考えられるのではないでしょうか。映画評論家の白井佳夫氏が、「原節子を、完全に使いこなし、その比類なき魅力をスクリーンに開花させてくれるような、一群の映画作家たちの魔術が、だんだん消え失せてしまうような新時代の到来が、彼女に引退を決意させたのだ...」と言っていますが、原節子自身は、そうした新時代の女性を演じるに適した素養も持っていたような気もします。

原節子 インタビュー.jpg 勿論、インタビューでの発言や態度がそのまま映画作品の人物造型に反映されるとも限らないし、本書からは、原節子自身が早くから年齢を意識し、引退を考えていたことも窺えるので何とも言えませんが...。本書を読むと、人気がピークになればなるほど、引退を強く意識していたような感じも。そして、'63年の小津監督の死で「引退」は決定的になったように思います。本書によれば、小津の通夜に姿を現した原節子は小津の遺体に号泣し、この時、本名の会田昌江で弔意を表したそうです。'64年には狛江の自宅を引き払い、鎌倉に住む義兄の熊谷久虎監督の夫婦のもとに引っ越しています(この地が彼女の終の住処となる)。

1960年11月、東京都内の自宅で取材に応じる原節子[朝日新聞デジタル 2015年12月8日]

 出来るだけ客観的事実で本書を構成し、あまり自身の見解を織り込み過ぎないように注意を払ってきたかに見える著者ですが、本書末尾で、「映画女優としての原節子は希有な美しさのため、"花"としての存在価値が大きく、そのなかにあって、原の自己主張は覆い隠されてしまった傾向がある」としており、この見方には大いに頷かされました。

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'読むだけでも楽しめるが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を観たくなる本。

私の映画の部屋_.jpg 私の映画の部屋.jpg  めぐり逢い dvd.jpg 魚が出てきた日 dvd.jpg
私の映画の部屋 (文春文庫)』「めぐり逢い [DVD]」「魚が出てきた日 [DVD]」 
私の映画の部屋―淀川長治Radio名画劇場 (1976年)

 この「私の映画の部屋」シリーズは、70年代にTBSラジオで月曜夜8時から1時間放送されていた「淀川長冶・私の映画の部屋」を活字化したもので、1976(昭和51年)刊行の本書はその第1弾です。著者の場合、1966(昭和41)年から始まったテレビ朝日系「日曜洋画劇場」(当初は「土曜洋画劇場」)の解説者として番組開始から死の前日までの32年間出演し続けたことでよく知られていますが、先行した当ラジオの方は、番組時間枠の内CM等を除く40分が著者の喋りであり、それを活字化した本書では、「日曜洋画劇場」でお馴染みの淀川長治調が、より長く、また、より作品中身に踏み込んだものとして楽しめます。

 本書の後、シリーズ的に、続、続々、新、新々と続きますが、この第1弾の単行本化時点で既に140回分が放送されており、その中から13回分を集めて本にしたとのことで、「チャップリンの世界」から始まって、かなりの選りすぐりという印象を受けます(但し、どの回を活字化するかは版元のTBSブリタニカが決めたとのこと)。

「めぐり逢い」1957G.jpg 個人的には、昔は淀川長冶ってそれほどスゴイとは思っていなかったのですが、今になってやはりスゴイ人だったんだなあと思ったりもします。作品解説もさることながら、作品を要約し、その見所となるポイントを抽出する技は絶妙という感じです。本書で言えば、例えば、レオ・マッケリー監督、ケーリー・グラント、デボラ・カー主演の「めぐり逢い」('57年、原題:An Affair to Remember)のラストシーンのエンパイアステートビルで出会えなかった2人が最後の最後に出会うシーンの解説などは、何だか今目の前に映画のスクリーンがあるような錯覚に陥りました。この映画、最初観た時はハーレクイン・ロマンスみたいと思ったけれど、今思えばよく出来ていたと(著者に指摘されて)思い直したりして...。これ自体が同じレオ・マッケリー監督作でシャルル・ボワイエ、アイリーン・ダン主演の「邂逅(めぐりあい)」('39年、原題:Love Affair)のリメイクで(ラストを見比べてみるとその忠実なリメイクぶりが窺える)、その後も別監督により何度かリメイクされています。トム・ハンクス、メグ・ライアン主演の「めぐり逢えたら」('98年)では、邂逅の場所をエンパイアステートビルがら貿易センタービルに変えていましたが、何とオリジナルにある行き違いはなく2人は出会えてしまいます。これでは著者の名解説ぶりが発揮しようがないのではないかと思ってしまいますが、でも、あの淀川さんならば、いざとなったらそれはそれで淀川調の解説をやるんでしょう。

幸福 [DVD]
幸福 ps.jpg幸福 DVD_.jpg 章ごとに見ていくと、「女の映画」の章のアニエス・ヴァルダ監督の「幸福(しあわせ)」('65年)、フランソワ・トリュフォー監督の「黒衣の花嫁」('68年)とトニー・リチャードソン監督「マドモアゼル」('66年)が、著者の解説によって大いに興味を惹かれました。「幸福」は、夫の幸福のために自殺する妻という究極愛を描いた作品。「黒衣の花嫁」は、結婚式の場で新郎を殺害された新婦の復讐譚。「マドモアゼル」は周囲からはいい人に見られているが、実は欲求不満の捌け口をとんでもない事に見出している女教師の話。「ルイ・マル」の章の「死刑台のエレベーター」('57年)、「黒衣の花嫁 DVD.jpgマドモアゼル DVD.jpg恋人たち」('58年)もいいけれど、「黒衣の花嫁」「マドモアゼル」共々ジャンヌ・モロー主演作で、ジャンヌ・モローっていい作品、スゴイ映画に出ている女優だと改めて思いました。
黒衣の花嫁 [DVD]」「マドモアゼル [DVD]

昨日・今日・明日.jpg昨日・今日・明日P.jpgひまわり ポスター.bmp イタリア映画では、ビットリオ・デ・シーカの「昨日・今日・明日」('63年)、「ひまわり」('70年)に出ているソフィア・ローレンがやはり華のある女優であるように思います(どちらも相方はマルチェロ・マストロヤンニだが、片や喜劇で片や悲劇)。
「昨日・今日・明日」輸入版ポスター
 
魚が出てきた日7.jpg魚が出てきた日ps2.jpg あと個人的には、「ギリシア映画」の章のマイケル・カコヤニス製作・脚本・監督の「魚が出てきた日」('68年)が懐しいでしょうか。スペイン沖で核兵器を積載した米軍機が行方不明になったという実際に起きた事件を基にした、核兵器を巡ってのギリシアの平和な島で起きた放射能汚染騒動(但し、島の地元の人たちは何が起きているのか気魚が出てきた日3.jpgづいていない)を扱ったブラックコメディで、ちょっと世に出るのが早すぎたような作品でもあります。
1968年初版映画パンフレット 魚が出てきた日 ミカエル・カコヤニス監督 キャンディス・バーゲン トム・コートネー コリン・ブレークリー
THE DAY THE FISH COME OUT 1967  c.jpg トム・コートネイ、サム・ワナメイカー、キャンディス・バーゲンが出演。キャンディス・バーゲンって映画に出たての頃からインテリっぽい役を地でやっていて、しかも同時に、健康的なセクシーさがありました。

Candice Bergen in 'The Day The Fish Came Out', 1967.

 読むだけでも楽しめますが、(巧みな語り口に乗せられて)まだ観ていない映画を拾って観たくなる、そうした本でした。
     
「めぐり逢い」1957ps.jpg「めぐり逢い」1957EO.jpg「めぐり逢い」●原題:AN AFFAIR TO REMEMBER●制作年:1957年●制作国:アメリカ●監督:レオ・マッケリー●製作:ジェリー・ウォルド●脚本:レオ・マッケリー/デルマー・デイヴィス/ドナルド・オグデン・ステュワート●撮影:ミルトン・クラスナー●音楽:ヒューゴ・フリードホーファー●原案:レオ・マッケリー/ミルドレッド・クラム●時間:119分●出演:ケーリー・グラント/デボラ・カー/リチャード・デニング/ネヴァ・パターソン/キャスリーン・ネスビット/ロバート・Q・ルイス/チャールズ・ワッツ/フォーチュニオ・ボナノヴァ●日本公開:1957/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター(85-11-03)(評価:★★★☆)●併映:「ティファニーで朝食を」(ブレイク・エドワーズ)

SLEEPLESS IN SEATTLE.jpgめぐり逢えたら 映画 dvd.jpg「めぐり逢えたら」●原題:SLEEPLESS IN SEATTLE●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ノーラ・エフロン●製作:ゲイリー・フォスター●脚本:ノーラ・エフロン/デヴィッド・S・ウォード●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マーク・シャイマン●原案:ジェフ・アーチ●時間:105分●出演:トム・ハンクス/メグ・ライアン/ビル・プルマン/ロス・マリンジャー/ルクランシェ・デュラン/ルクランシェ・デュラン/ギャビー・ホフマン/ヴィクター・ガーバー/リタ・ウィルソン/ロブ・ライナー●日本公開:1993/12●配給:コロンビア映画(評価:★★☆)
めぐり逢えたら コレクターズ・エディション [DVD]

死刑台のエレベーター01.jpg死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年死刑台のエレベーター2.jpg●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)●3回目:六本木・俳優座シネマテン(85-02-10)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「恐怖の報酬」(アンリ=ジョルジュ・クルーゾー)/(2回目):「大人は判ってくれない」(フランソワ・トリュフォー) 
死刑台のエレベーター [DVD]

LES AMANTS 1958 3.jpg恋人たち モロー dvd.jpg「恋人たち」●原題:LES AMANTSD●制作年:1958年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:イレーネ・ルリッシュ●脚本:ルイ・マル/ルイ・ド・ヴィルモラン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ヨハネス・ブラームス●原作:イヴァン・ドノン「明日はない」●時間:95分●出演:ジャンヌ・モロー/ジャン・マルク・ボリー/アラン・キュニー/ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ/ジュディット・マーグル/ガストン・モド/ジュディット・マーレ●日本公開:1959/04●配給:映配●最初に観た場所:北千住・シネマブルースタジオ(14-07-08)(評価:★★★★)
恋人たち【HDマスター】《IVC 25th ベストバリューコレクション》 [Blu-ray]
Himawari(1970)
Himawari(1970).jpg
「ひまわり」.jpg「ひまわり」●原題:I GIRASOLI(SUNFLOWER)●制作年:1970年●制作国:イタリア・フランス・ソ連●監督:ヴィッひまわり01.jpgトリオ・デ・シーカ●製作:カルロ・ポンティ/アーサー・コーン●脚本:チェザーレ・ザsunflower 1970.jpgバッティーニ/アントニオ・グエラ/ゲオルギス・ムディバニ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ヘンリー・マンシーニ●時間:107分●出演:マルチェロ・マストロヤンニ/ソフィア・ローレン/リュドミラ・サベーリエワ/アンナ・カレーナ/ジェルマーノ・ロンゴ/グラウコ・オノラート/カルロ・ポンティ・ジュニア●日本公開:1970/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:目黒シネマ(83-05-01)(評価:★★★★)●併映:「ワン・フロム・ザ・ハート」(フランシス・フォード・コッポラ)  

魚が出てきた日ps3.jpgTHE DAY THE FISH COME OUT 1967 .jpg魚が出てきた日4.jpg「魚が出てきた日」●原題:THE DAY THE FISH COME OUT●制作年:1967年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:マイケル・キャンディス・バーゲンM23.jpg魚が出て来た日lp.jpgカコヤニス●撮影:ウォルター・ラサリー●音楽:ミキス・テオドラキス●時間:110分●出演:コリン・ブレークリー/サム・ワナメーカー/トム・コートネイ/キャンディス・バーゲン中野武蔵野ホール.jpgディミトリス・ニコライデス/ニコラス・アレクション/マリーナ・ショウ/パリ・アレクサンダー/アーサー・ミッチェル/トム・クルニス/イヴァン・オグルヴィ/●日本公開:1968/06●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:中野武蔵野館(78-02-24)(評価:★★★☆)●併映:「地球に落ちてきた男」(ニコラス・ローグ) 中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館 
「魚が出てきた日」キャンディス・バーゲン.jpg

キャンディス・バーゲン ボストン・リーガル.jpgキャンディス・バーゲン in 「ボストン・リーガル」 with ウィリアム・シャトナー Boston Legal (ABC 2004~2008) ○日本での放映チャネル:FOX CRIME(2007~2011)

【1985年文庫化[文春文庫(『私の映画の部屋』)]】
 

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錚々たる面子が論じる人と作品。但し、本人の自作へのコメントが一番興味深かった。

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世界の映画作家 9 (イングマル・ベルイマン)_.jpg     [野いちご]撮影中のベルイマン.jpg
世界の映画作家 9 (イングマル・ベルイマン)』('71年/キネマ旬報社)/「野いちご」撮影中のベルイマン

 キネマ旬報社による「世界の映画作家」シリーズの1冊で、1971年刊行。編集後記によれば、この時点でイングマール・ベルイマン(1918-2007/享年89)の監督作品は32本あり、そのうち日本で公開されていたのは12本だけだったとのことです(因みにベルイマンの生涯監督作品は63本)。巻末に、「鏡の中にある如く」('61年)、「沈黙」('63年)と併せて所謂「神の沈黙」3部作と呼ばれる「冬の光」('63年)の脚本が付されていますが、この「冬の光」が日本で公開されたのは1975年のことで、本書刊行からもややあってのことでした(既に脚本の翻訳はとっくに出来ていたのに)。ベルイマンは当時すでに確固たる名声を博していたかと思いますが(このシリーズが、ゴダールとパゾリーニ、フェリーニとヴィスコンティ、アントニオーニとアラン・レネがそれぞれ抱き合わせで1冊なのに対し、本書はベルイマンのみをフィーチャーしていることからもそれが窺える)、それでもやはり、ベルイマン作品は難しすぎて日本人にはウケないというイメージが、映画関係者の間でも当時はあったのでしょうか。

 今でいうムックのような構成で、まず映画評論家の岡田晋(1924-1991)が「ベルイマンの形而上学」を説き(やはり、やや難しいか)、佐藤忠雄が「原爆の下の平和」というタイトルで寄稿していますが、このやや唐突にも思えるタイトルの小論は、巻末の「冬の光」の脚本を頭に入れてから読んだ方がいいかも。続いて、映画監督の新藤兼人(1912-2012)が、「〈沈黙〉のベルイマン」と題して「沈黙」に見る"愛の不在"をベルイマンの実生活に重ねて考察し(ベルイマンは5回結婚している)、映画評論家の飯島正(1902-1996)が、ベルイマンが映画以前に関わった演劇と文学について解説、更に、「ベルイマン全自作を語る」を挟んで、映画研究家の山本喜久男が海外におけるベルイマン論を紹介、最後に映画評論家で、ベルイマンの「夏の遊び」('50年)から日本語字幕を担当し、近年ではベルイマン監督のテレビ映画「サラバンド」('03年)の字幕監修などもしている三木宮彦が「ベルイマンと演劇」について語るという、キネマ旬報ならではの本格派ラインアップです。

 自分としては、ベルイマンが「危機」('46年)から「情熱」('69年)まで自らが監督した30本の映画についてそれぞれ簡単にコメントした「ベルイマン全自作を語る」が一番興味深く読めたでしょうか(個人的には見ていない作品の方が多いのだが、一応、内容もそれぞれ簡単に紹介されている)。

ベルイマン 夏の遊び.jpgベルイマン第七の封印.jpg 「夏の遊び」('50年)が、ベルイマンが17歳の時に書いた中編小説がベースになっていたとは知りませんでした。「第七の封印」('57年)は頭で作ったが、この映画は心で作った」とも述べています。その「第七の封印」についはやや長めのコメントが付されていますが、子供の頃に教会で見た中世の宗教画にそのモチーフがあったというのが興味深いです。

ベルイマン 野いちご.jpgベルイマン 冬の光.jpg 一方、「野いちご」('57年)については、主演のヴィクトル・シューストレムを讃えるとともに、老いをテーマにしたこの作品の撮影そのものが「時」に対する闘いであったことを明かし、「冬の光」('63年)については、自分の生活における宗教の存在が完全に消滅した時、人生は恐ろしく生きやすいものとなったとして、映画もそういたものをブチ壊すことによって始めたのですべては穏やかで良かったとし、「これは絶対にいい映画であり、どんな批判にも100%応えられるものである」としています。

 自作品に対するコメントと同時に、ベルイマンに対するインタビューや彼自身が平生語った言葉も併録されており、結構赤裸々に語っていて興味深いです。インタビュー部分ではベルイマン作品をこきおろすインタビュアーと喧嘩になってしまっていますが、これはどうやら、インタビューそのものが実はベルイマンが構成した〈フィクション〉であるとのことのようで、結構ベルイマンという人は茶目っ気もあったようです。

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「●わ 和田 誠」の インデックッスへ

好きな映画の話になると止まらないという感じの和田誠氏。マニアックぶりに圧倒される。

たかが映画じゃないか 単行本.jpgたかが映画じゃないか 単行本7.jpg  たかが映画じゃないか 文春文庫.jpg
たかが映画じゃないか (1978年)』『たかが映画じゃないか (文春文庫 (385‐1))

 映画評論家の山田宏一氏がホストになって、友人でイラストレーターの和田誠氏に映画について語ってもらうという企画で、タイトルは、アルフレッド・ヒッチコック監督が、将来"傑作"と呼ばれるようになる作品に出ることにこだわるイングリッド・バーグマンに言ったという、「イングリッド、たかが映画じゃないか」という言葉からとっています。

 対談は、和田誠氏の「キネマ旬報」での「お楽しみはこれからだ」の連載が一段落した際に行われたもので、それまでの連載は『お楽しみはこれからだ』('75年/文藝春秋)、『お楽しみはこれからだ PART2』('76年/文藝春秋)として単行本化されましたが、本書も、'78年にほぼ同じ体裁で単行本化されました。一段落していた連載を再開し、最終的には「PART7」までいった「お楽しみはこれからだ」は、和田誠氏の意向により文庫化されていませんが、こちらは文庫化されています('85年/文春文庫)。

 山田宏一氏が1938年生まれ、和田誠氏が1936年生まれと年齢も近いことからか、和田氏も「俺」言葉で話し、終始リラックスし、また終始"熱い"感じでもあります。冒頭、「スター・ウォーズ」('77年)や「未知との遭遇」('77年)の話がありますが、それぞれ日本での公開がこの対談の年('78年)ですから、つい最近観たばっかりという感じで話していて、山田宏一氏も、「未知との遭遇」の博士役が何故フランソワ・トリュフォーなのかとかを熱く語っています。

 この1冊だけで560本もの映画に触れているとのことで、もう少し若い人との対談だと、昔の映画のことは多少控えめに紹介する程度だったりする和田誠氏ですが、本書では、自分の好きな映画の話になるともう止まらないという感じです。「ジョルソン物語」('46年)、「虹を掴む男」('47年)、「天国への階段」('46年)あたりになると、話の中で名シーンを逐一再現してみせ、どこがポイントかという解説までついて、結果としてもの凄くマニアックになっています。「お楽しみはこれからだ」で、細かいセリフをよく覚えているものだと感心させられましたが、当然のことながら、映像的シチュエーションと全部セットになって脳裏に焼きついているのだと改めて思いました。

 画面が切り替わる際にどういった種類のワイプを用いたかまで覚えているのだからスゴイ。マニアックぶりに圧倒されてやや毒気に当てられた印象さえありましたが(自分が観ていない映画の話が結構あったということもある)、そうした中で、メル・ブルックス監督の「ヤング・フランケンシュタイン」('74年)を「粋だった」と評価しているのが個人的には嬉しかったです。そして、ここでも、字幕に表れなかったセリフのパロディの趣旨を解説してみせています。

 ジェーン・フォンダは和田誠氏のお気に入りの女優の一人なのだなあ。「バーバレラ」('62年)のことを、「スター・ウォーズ」をもっときれいで、しかもセクシーなところでやっているとは、凄い高評価! 山田宏一氏も、「いまリバイバルすればいいのにな」と言っていますが、実際にリバイバルされたのは、この対談が行われた15年後の1993年でした。勿論、「バーバレラ」のようなカルト的作品だけではなくて、「ひとりぼっちの青春」('69年)も良かったと和田氏は言っています(山田氏も、ジェーン・フォンダは「あれでカムバックしたわけだ」と言っている)。個人的も好きな作品なので、これもまた嬉しく思いました。

YOUNG FRANKENSTEN.jpgヤング・フランケンシュタイン.gif「ヤング・フランケンシュタイン」●原題:YOUNG FRANKENSTEN●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:メル・ブルックス●製作:マイケル・グラスコフ●脚本:ジーン・ワイルダー/メル・ブルックス●撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド●音楽:ジョン・モリス●原作:メアリー・シェリイ●時間:108分●出演:ジーン・ワイルダー/ピーター・ボイル/マーティ・フェルドマン/テリー・ガー/ジーン・ハックマン●日本公開:1975/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール (78-12-14) (評価:★★★★)●併映:「サイレントムービー」(メル・ブルックス)ヤング・フランケンシュタイン HDリマスター版 [DVD]

バーバレラ [DVD].jpgBARBARELLA.jpg「バーバレラ」●原題:BARBARELLA●制作年:1968年●制作国:イタリア/フランス●監督:ロジェ・ヴァディム●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ジャン=クロード・フォレ/クロード・ブリュレ/クレメント・ウッド/テリー・サザーン/ロジェ・ヴァディム/ヴィットーリオ・ボニチェッリ/ブライアン・デガス/テューダー・ゲイツ●撮影:クロード・ルノワール●音楽:チャールズ・フォックス●原作:ジャン=クロード・フォレスト 「バーバレラ」●時間:98分●出演:ジェーン・フォンダ/ジョン・フィリップ・ロー/アニタ・パレンバーグ/ミロ・オーシャ●日本公開:1968/10●発売元:パラマウント(評価★★★) 「バーバレラ [DVD]

ひとりぼっちの青春1.png「ひとりぼっちの青春」●原題:THEY SHOOT HOURSES,DON'T THEY?●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ポラック●音楽:ジョン・グリーン●原作:ホレース・マッコイ 「彼らは廃馬を撃つ」●時ひとりぼっちの青春.jpg間:133分●出演:ジェーン・フォンダ/マイケル・サラザン/スザンナ・ヨーク/ギグ・ヤング●日本公開:1970/12●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:三鷹東映(78-01-17) (評価★★★★☆)●併映:「草原の輝き」(エリア・カザン)/「ジョンとメリー」(ピーター・イェイツ)
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【1985年文庫化[文春文庫]】

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A級、B級問わず映画を語る楽しくて充実した内容の鼎談。瀬戸川氏への哀悼の意が感じられる。

今日も映画日和 単行本2.jpg今日も映画日和 単行本.jpg  今日も映画日和 文庫.jpg
今日も映画日和』['99年] 『今日も映画日和 (文春文庫)』['02年]

 心から映画を愛する3人が、SF、法廷劇、スポーツものなど、12のテーマに沿って語り尽くした楽しい鼎談集です。「カピタン」1997年7月号から1998年6月号にかけて連載された際にページの都合で割愛された部分も、きちんと再録したロング・バージョンであるとのことで、脚注・写真も充実しています(文庫版は脚注のみ、写真無し)。

 単行本の刊行は、鼎談者の一人・瀬戸川猛資(1948 -1999/享年50)がその年の3月に肝臓がんで亡くなっていて氏の存命中に刊行を間に合わせられなかったのですが、脚注では話中に出てきた映画の情報の他に、川本三郎氏、和田誠氏が自らの発言内容に独自に補足するばかりでなく、瀬戸川氏の発言に関係するコメントを瀬戸川氏の著書の中から引用するなどしており、両人のこの鼎談集への思い入れと、瀬戸川氏への哀悼の意が感じられます。

 和田氏が1936年生まれ、川本氏が1944年生まれ、瀬戸川氏が1948年生まれで、和田氏によれば、川本氏は昭和の庶民を描く日本映画や映画のファッションに強く、瀬戸川氏はミステリに強いというようにお互いの守備範囲があるようですが、一方で、映画を、A級とかB級とか関係なく、分け隔てなく観てきたという点で共通するとのことで、それは本書を読めばよく分かります。

 取り上げているテーマは、まず「映画館」から始まって、SF、夏休み(ボーイズライフ)、サラリー★激しい季節(1959)2.jpgマン、野球、クリスマス、酒場、スポーツ、法廷、良妻・悪妻、あの町この町、大スターと続きますが、それらをモチーフとした映画がぽんぽん出てきて、もう誰が話しているのかあまり区別がつかないくらいです。

おもいでの夏 dvd.bmp 3人が若い頃に観た映画の話がかなりあって、「夏休み(ボーイズライフ)」のところで、川本三郎氏が、「激しい季節」('59年/伊)のエレオノラ・ロッシ・ドラゴがオッパイを見せていたのにショックを受けたとかあったりして、当時のアメリカ映画とイタリア映画の倫理コードの違いもあるのだろうなあ。「おもいでの夏」('71年/米)を瀬戸川氏はともかく和田氏も観ておらず(新しすぎるのか?)、川本氏の講釈を受けるという展開は意外でした。
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ガンホーdvd.jpg 「サラリーマン」の章のところで、瀬戸川氏がアメリカでヒットしたのに日本では未公開だった「ガン・ホー」('86年/米)について取り上げると、川本氏が「日本の企業をバカにしたやつですね」と言ったのに対し、「全然バカにしていないですよ。あの通りなんだから」と応えているのが興味深いです。アメリカ地方都市の日本資本の自動車会社("アッサン自動車"。漢字で「圧惨自動車」と表記する)の工場を舞台に、日米自動車経済摩擦を描いた作品ですが、アメリカ側のキャストに後に「バットマン」に出演することになるマイケル・キートンや、演技達者のジョン・タトゥーロまで出ているけれど、ケディ・ワタナベ演じる日本側主人公も好人物に描かれていて、最後、日系の自動車会社側の重役の山村聡が出てきて貫禄で問題を解決し、日米の企業人のカルチャーギャップを解消しているから、軽いノリの映画ではありますが、日本人をバカにした映画とまでは言えないでしょう。日本の企業経営を皮肉ったシーンガン・ホー1986 03.pngガン・ホー1986 01.jpgがあり、これを日本人をバカにしていると観客がとれば日本では受けないとして配給会社が配給を見送ったようですが、ちょっと世に出るのが早すぎたでしょうか。監督は後に「アポロ13」('95年)や「ダ・ヴィンチ・コード」('06年)を監督することになるロン・ハワードです(観た時の評価は星3つだが、グローバル人材がどうのこうの言われる今日において観直すと面白いかも―という観点から星半分プラス)。

黒い画集 あるサラリーマンの証言[1].jpg サラリーマン映画では、「失楽園」も川本氏しか観てなかったなあ。その川本氏が堀川弘通監督の「黒い画集 あるサラリーマンの証言」('60年/東宝、原作:松本清張)を傑作としていますが、当時の方が今よりも不倫に対する風当たりは強かったというのが川本氏の見方のようです。確かに小林桂樹、電話で不倫相手の原知佐子に向かって「はい、承りました」ってやっていたけれど。また、瀬戸川氏が、ワイルダーってアメリカ映画の中で異色なくらい会社を舞台にした作品が多いと指摘していますが(和田誠氏でなく瀬戸川氏が指摘しているのが興味深い)、「アパートの鍵貸します」は勿論のこと、「麗しのサブリナ」('54年/米)なども、確かに言われてみればそうだなあと。
「アパートの鍵貸します」パンフレット
「アパートの鍵貸します」パンフ.jpgアパートの鍵貸します2.jpg 「アパートの鍵貸します」('60年/米)は、アカデミー賞の作品賞、監督賞など5部門受賞した作品で、和田誠氏が『お楽しみはこれからだ』シリーズなどで何度も取り上げている作品でもあります。出世の足掛かりにと、上役の情事のためにせっせと自分のアパートを貸している会社員バドことC・C・バクスター(ジャック・レモン)でしたが、人事部長のJ・D・シェルドレイク(アパートの鍵貸します3.jpgフレッド・マクマレイ)が自分の部屋に連れ込んで来たのが、何と自身の意中の人であるエレベーターガールのフラン(シャーリー・マクレーン)だったというよく知られたApâto no kagi kashimasu (1960).jpgストーリーで、宮仕えのサラリーマンの哀愁を描く中で、ラストの急転は実に爽やかでした(こうした急展開は「麗しのサブリナ」などでも見られるが、こちらの方が洒落ている)。テニス・ラケットでパスタをすくったり、マテーニのオリーブを1つずつ時計のように並べたり、小道具をさりげなく使ったシーンにも旨さを感じられ、そもそも役者陣で下手な人は誰も出ていないような演出の見事さ。その中でもやはり、ジャック・レモンの演技が光ったし、シャーリー・マクレーンも良かったです(シャーリー・マクレーンはこの作品でヴェネツィア国際映画祭女優賞を獲得)。
Apâto no kagi kashimasu (1960)

野良犬 野球場.jpg 「野球」のところで、黒澤明の「野良犬」('49年/東宝)で後楽園球場が出てきて巨人の川上や青田がちゃんとプレーしているのが良かったと和田氏が言った野良犬 ビール.bmpのに対し、あの試合は巨人対南海線で、日本シリーズではなく1リーグ制の時の試合だと川本氏が指摘しているのがマニアックです。志村喬が野球監督を演じた「男ありて」('55年/東宝)を取り上げると、川本氏が「素晴らしい映画」だとすかさずフォローするのが嬉しいです。

「野良犬」の話は、続く「酒場」のところでも出てきて、川本氏が、志村喬が部下の三船敏郎を自分の家に連小津安二郎 秋刀魚の味 トリスバー.jpgれてきて飲ませるビールは"配給"だったとか(そう言えば、今日はたまたまビールが手に入ったようなことを志村喬が言ってたっけ)、一方、小津安二郎はサントリーと提携してい秋刀魚の味 東野2.jpgて、「秋刀魚の味」('62年/松竹)では、恩師の東野英治郎を教え子の笠智衆や中村伸郎たちが招待するシーンで、わざわざサントリー・オールドを映して「おいしいね、小津安二郎 秋刀魚の味 サッポロビール.jpgこのウィスキーは」と言わせているとか、岸田今日子がやっている店がトリスバーだとか。なるほどで。それでいて、冒頭の川崎球場の照明塔のシーンでサッポロビールとあるから、川本氏が言うように両方から金もらっていたのか(因みに、サントリーがビール事業に再進出したのは1963(昭和38)年で、この映画が公開された翌年)。小津映画では酒好きの中村伸郎のために、飲むシーンは実際に酒を飲ませ、肴もウニだったりしたというからスゴイね。笠智衆は下戸だったけれど、東野英治郎は本当に酔っぱらっていたわけかあ。

女競輪王00.jpg A級、B級問わずと言うことで、黒澤や小津といった巨匠ばかりでなく、前田葉子主演の「女競輪王」('56年/新東宝)なんて作品なんかも取り上げているのが何だか嬉しいです。

 鼎談の持ち味が出ていただけに、もう1冊分ぐらいやって欲しかった企画であり、瀬戸川氏の逝去が惜しまれます。

                   
Estate Violenta.jpgヴァレリオ・ズルリーニ★激しい季節(1959).jpg「激しい季節」●原題:ESTATE VIOLENTA●制作年:1959年●制作国:イタリア●監督:ヴァレリオ・ズルリーニ●製作:シルヴィオ・クレメンテッリ●脚本:ヴァレリオ・ズルリーニ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ジョルジョ・プロスペリ●撮影:ティノ・サントーニ●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:93分●出演:ジャン・ルイ・トランティニャン/エレオノラ・ロッシ・ドラゴ/ジャクリーヌ・ササール/ラフ・マッティオーリ/フェデリカ・ランキ/リラ・ブリナン●日本公開:1960/04●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(84-11-17)(評価:★★★★)

ガン・ホー1986 04.jpgガン・ホー1986 02.jpg「ガン・ホー」●原題:GUNG HO●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:デボラ・ブラム/トニー・ガンツ●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル●撮影:ドナルド・ピーターマン●音楽:トーマス・ニューマン●時間:111分●出演:マイケル・キートン/ゲディ・ワタナベ/ミミ・ロジャースガン・ホー02.jpgガン・ホー01.jpg/山村聰/クリント・ハワード/サブ・シモノ/ロドニー・カゲヤマ/ジョン・タトゥーロ/バスター・ハーシャイザー/リック・オーヴァートン●日本公開:(劇場未公開)VHS日本発売:1987/11●発売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン(評価:★★★☆)     
証言2.bmp黒い画集 あるサラリーマンの証言.gif証言0.bmp「黒い画集 あるサラリーマンの証言」●制作年:1960年●監督:堀川弘通●製作:大塚和/高島幸夫●脚本:橋本忍●撮影:中井朝一●原作:松本清張「証言」●時間:95分●出演:小林桂樹/中北千枝子/平山瑛子/依田宣/原佐和子/江原達治/中丸忠雄/西村晃/平田昭彦/小池朝雄/織田政雄/菅井きん/小西瑠美/児玉清/中村伸郎/小栗一也/佐田豊/三津田健/西村晃/、平田昭彦●公開:1960/03●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸地下 (88-01-23)(評価★★★☆)
黒い画集 あるサラリーマンの証言 [DVD]
                    「アパートの鍵貸します [DVD]
アパートの鍵貸します8.jpgアパートの鍵貸しますdvd.jpgアパートの鍵貸します1.bmp 「アパートの鍵貸します」●原題:THE APARTMENT●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/I・A・Lアパートの鍵貸します4.jpg・ダイアモンド●撮影:ジョセフ・ラシェル●音楽:アドルフ・ドイッチ●時間:120分●出演:ジャック・レモン/シャーリー・マクレーン/フレッド・マクマレイ/レイ・ウォルストン/ジャック・クラスチェン/デイビット・ホワイト/ホープ・ホリデイ/デイビット・ルイス/ジョアン・ショウリイ/エディ・アダムス/ナオミ・スティーブンス●日本公開:1960/10●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:銀座文化2(86-06-13) (評価:★★★★)
「銀座文化1・銀座文化2」「銀座文化/シネスイッチ銀座」
銀座文化1・2.png銀座文化・シネスイッチ銀座.jpgシネスイッチ銀座.jpg銀座文化2 1955年11月21日オープン「銀座文化劇場(地階466席)・銀座ニュー文化(3階411席)」、1978年11月2日~「銀座文化1(地階353席)・銀座文化2(3階210席)」、1987年12月19日〜「シネスイッチ銀座(前・銀座文化1)・銀座文化劇場(前・銀座文化2)」、1997年2月12日〜休館してリニューアル「シネスイッチ銀座1(前・シネスイッチ銀座)・シネスイッチ銀座2(前・銀座文化劇場)」
                       
野良犬 1949  ポスター0.jpg野良犬 1949 0.jpg「野良犬」●制作年:1949年●監督:黒澤明●製作:本木荘二郎●製作会社:新東宝・映画芸術協会●脚本:菊島隆三/黒澤明●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:122分●出演:三船敏郎/志村喬/木村功/清水元/河村黎吉/淡路恵子/三好栄子/千石規子/本間文子/飯田蝶子/東野英治郎/永田靖/松本克平/岸輝子/千秋実/山本礼三郎●公開:1949/10●配給:東宝(評価:★★★★)

秋刀魚の味 チラシ.jpg秋刀魚の味 加東.jpg「秋刀魚の味」●制作年:1962年●監督:小津安二郎●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●原作:里見弴●時間:113分●出演:笠智衆/岩下志麻/佐田啓二/岡田茉莉子/中村伸郎/東野英治郎/北竜二/杉村春子/加東大介/吉田輝雄/三宅邦子/高橋とよ/牧紀子/環三千世/岸田今日子/浅茅しのぶ/須賀不二男/菅原通済●公開:1962/11●配給:松竹●最初に観た場所:三鷹オスカー(82-09-12)(評価:★★★☆)●併映:「東京物語」(小津安二郎)/「彼岸花」(小津安二郎)

【2002年文庫化[文春文庫]】

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セリフの拾い方、連想ゲームのようにつないでいく手法の巧みさ&イラストも楽しめる優れもの。

お楽しみはこれからだ part3.jpg
  料理長殿、ご用心 p1.jpg 料理長シェフ殿、ご用心 02.jpg
料理長(シェフ)殿、ご用心 [DVD]」 Jacqueline Bisset
お楽しみはこれからだ〈part 3〉―映画の名セリフ (1980年)

  「PART2のあとがきに、PART3を作る予定はない、と書いたのだけれど、こうしてPART3が出来てしまった。「キネマ旬報」で連載を再開し、もう一冊分続けたというわけである。(中略)一つだけ新趣向を加えた。項目から次の項目への橋渡しを、シリトリのようにつないでゆく、というもので、いくらかこじつけもないではないが、どうやら最後の項目が最初に戻る形で輪のようにつながった。反省は、アメリカ映画に片寄り過ぎた点である。」 (あとがきより)

 和田誠(1936年生まれ)氏のシリーズ第3冊目で、あとがきに以上あるように、PART2で打ち止めの予定が「キネマ旬報」で連載を再開したために出来上がったもの(結局、その後も間歇的に連載し、シリーズは1995年単行本刊行の第7巻(PART7)までの累計ページ数は1,757ページに及ぶことになります。
 PART2で邦画も取り上げていましたが、PART3では洋画だけに戻しています。PART2で、洋画が多くなる理由として字幕で見たセリフの方が記憶に残っているからとありました。

 このシリーズ、あとがきは、読者からあった"誤り"の指摘に基づく訂正でほぼ費やされることが多いのですが、PART3のあとがきで、「七人の侍」で「勝ったのは百姓たちだ。俺たちではない」と書いたことに読者から「俺」ではなく「わし」と言ったはずだとの指摘があったという話に続いて、「ほとんど記憶だけで書いているので、一字一句正確にしなければならないとなると、ちょっとつらい。外国映画だとどっちみち翻訳になるから、意味さえ取り違えなければいいと思うが、日本映画はもともと日本語だから、意訳というわけにもいかず、つい敬遠することになる」とありました。ナルホドね。これも洋画が多くなる理由か。それにしても、連載しているのが「キネ旬」だから、読者も映画通が多かったりして、結構プレッシャーだろうなあ。実際には、どうしてあの映画のあのセリフをとりあげないのかといった手紙が多く、中には語気鋭いものもあったそうです。

 確かに今回はアメリカ映画に偏った分、マニアックになった感じもありますが、一方で「麗しのサブリナ」みたいな著者のお気に入りは、PART1に続いて再登場したりもしています。でも。こんな面白いセリフがあったのだなあという内容でした。

 年代的には、30年代終わりから始まって、40年代、50年代、60年代と割合均等で、70年代も、70年代終盤だけでも「さすらいの航海」('77年)、「アニー・ホール」('77年)、「ブリンクス」('78年)、「アルカトラズからの脱出」('79年)、「グッバイ・ガール」('77年)、「おかしな泥棒ディック&ジェーン」('77年)、「ジュリア」('77年)、「カリフォルニア・スイート」('78年)、「帰郷」('78年)、「遠すぎた橋」('77年)、「世界が燃えつきる日」('77年)、「リトル・モー」('77年)、「天国から来たチャンピオン」('78年)、「オー!ゴッド('77年)、「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)、「リトル・ロマンス」('78年)、「ナイル殺人事件」('78年)、「チャイナ・シンドローム」('79年)、「愛と喝采の日々」('77年)、「マンハッタン」('79年)、「パワープレイ」('78年)など結構数多く取り上げています。このあたりは、連載時にほぼリアルタイムに近いかたちで公開されたものではないでしょうか(70年代は特に後半の方が多くなっている)。

Jacqueline Bisset Who Is Killing the Great Chefs.jpg1978 WHO IS KILLING THE GREAT CHEFS of EUROPE  PROMO MOVIE PHOT.jpg ジャクリーン・ビセットがジョージ・シーガルと共演した「料理長(シェフ)殿、ご用心」('78年)なんて、何てことはない映画だけれどよくできていたのでは(監督は4年後に「ランボー」('82年)を撮るテッド・コチェフ)。懐かしいなあ。著者が書いているように、ちょっと洒落たスリラーで、ヨーロッパの一流シェフが次々と、それぞれの得意の料理法に因んだ方法で殺されていくというもの。ジャクリーン・ビセットの役は所謂パティシエですが、まあ当時の自分自身の理解としてはデザート専門のコックという感じ(著者も本書で「コック」と書いている。パティシエなんて言葉は当時日本では聞かなかった)。サスペンスですがユーモアがあって、ちょっとエロチックでもあるというもの(勿論ビセットが)。個人的には、本書が刊行される少し前くらいに名画座で観ましたが、「クリスチーヌの性愛記」('72年、ジャクリーン・ビセットが19才のストリッパー役で主演した作品)と「セント・アイブス」('76年、チャールズ・ブロンソン主演)の3本立て「ジャクリーン・ビセット特集」でした(そう言えばこの頃「大空港」('70年)にも機長の不倫相手の客室乗務員役で出ていた。70年代のセクシーアイコンの1人と言えるか)。

音楽:ヘンリー・マンシーニ

「クリスチーヌの性愛記」.jpg「クリスチーヌの性愛記」00.jpg 因みに、「クリスチーヌの性愛記」('72年)は、そのタイトルやチラシなどからポルノ映画と思われているフシがありますが、下にあらすじを書いたように、自分の気の赴くままに生きる若い女性の運命とその悲劇をテーマとしています。ジャクリーン・ビセット演じる、田舎の退屈から抜け出し、刺激と幸せを掴めると期待しながらカナダからラスベガスにやってきた19歳の若い女性が、ホテルのショー「クリスチーヌの性愛記」01.jpg・ガールとしてせっせと働くも、結婚相手が殺害されて生活のためコール・ガールとなり、さらには男に貯めた金を持ち逃げ「クリスチーヌの性愛記」02.jpgされたりして、最後は夢破れては田舎に戻るという社会派女性映画です。ただ、そう多くの人がこうした映画を見たいとは思わないわけで、そこで原題("The Grasshopper"「バッタ」。次々に世の中を渡り歩く主人公を示していると思われる)を外れて「性愛記」みたいなタイトルにしたのでしょう(ところがポルノチックな場面はほとんど無いため、日本でもヒットしなかった)。(演出面などから)佳作とまでは言えないものの、今思えば多くの点で当時の米国の世相の一端を映し出していた作品でした。
  
ヒッチコック サイコ 予告編.jpg あと、個人的な収穫は、「サイコ」('60年)のところで、著者が予告編を観ていないことを非常に残念がっていて、ヒチコックがお喋りするだけのものでありながら、予告編史上に残る傑作と観た人は皆言っていたそうですが、そうした予告編があることを本書で初めて知ったのがまさに拾い物でした。これ、今はネット動画で観ることが可能であったりもします(アップされては消されたりもしているが)。

「サイコ」予告編

 1995年単行本刊行でこのシリーズが終わったというのは、DVDなどの普及などで便利になり過ぎて、セリフを追いやすくなったために、個人的な記憶の意義が相対的に軽くなったというのもあるのではないかなあ。誰もが検証可能だからといって、洋画のセリフまで一字一句正確を期さねばならなくなったら、そちらの方に時間をとられて、連載がしづらいというのもあるのでは?

 でも、セリフの拾い方にしても、こうした「新しい」映画や「古い」映画を織り交ぜて、しりとりか連想ゲームのようにつないでいく手法にしても、その技は著者ならではの巧みさがあり、しかも、イラストも楽しめるという、今読んでも優れものの映画エッセイであると思います。

料理長殿、ご用心 v1.jpg料理長殿、ご用心 』.jpg「料理長(シェフ)殿、ご用心」●原題:SOMEONE IS KILLING THE GREAT CHEFS OF EUROPE●制作年:1978年●制作国:アメリカ●監督:テッド・コチェフ●脚本:ピーター・ストーン●撮影:ジョン・オルコット料理長シェフ殿、ご用心 03.png●音楽:ヘンリー・マンシーニ●原作:アイヴァン・ライアンズ/ナン・ライアンズ●時間:112分●出演:ジャクリーン・ビセット/ジョージ・シーガル/ロバート・モーレイ/ジャン=ピエール・カッセル/フィリップ・ノワレ/ジャン・ロシュフォール/ルイージ・プロイェッティ/ステファノ・サッタ・フロレス●日本公開:1979/05●配給:日本「料理長(シェフ)殿、ご用心」1.jpg料理長(シェフ)殿、ご用心 ロバート・モーレイ.jpgヘラルド映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(80-02-18)(評価:★★★☆)●併映「セント・アイブス」(J・リー・トンプソン)/「クリスチーヌの性愛記」(アロイス・ブルマー)
ジョージ・シーガル/ロバート・モーレイ(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」・ロサンゼルス映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ジャクリーン・ビセット  

「セント・アイブス」(1976)with チャールズ・ブロンソン    「ザ・ディープ」(1977)
「セント・アイブス」1.jpg 「セント・アイブス」2.jpg  ザ・ディープ1977★★.jpg

Jacqueline Bisset in "The Grasshopper"(クリスチーヌの性愛記)
「クリスチーヌの性愛記.jpgJacqueline Bisset THE GRASSHOPPER.jpg「クリスチーヌの性愛記」●原題:THE GRASSHOPPER●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:ジェリー・パリス●製作:ジェリー・ベルソン●脚本:ジェリー・ベルソン/イリー・マーシャル●撮影:サム・リーヴィット●音楽:ビリー・ゴールデンバーグ●原作:マーク・マクシェイン「通り魔」●時間:96分●出演:ジャクリーン・ビセット/ジム・ブラウン/ジョセフ・コットン/コーベット・モニカ/クリストファー・ストーン●日本公開:1972/02●配給:フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(80-02-18) (評価★★★)●併映「セント・アイブス」(J・リー・トンプソン)/「料理長(シェフ)殿、ご用心」(テッド・コチェフ)
  
五反田TOEIシネマ 2.jpg五反田TOEIシネマ79.jpg五反田TOEIシネマ.jpg五反田TOEIシネマ 3.jpg五反田TOEIシネマ/五反田東映(写真:跡地=右岸)「五反田東映」をを分割して1977(昭和52)年12月3日オープン、1990(平成2)年9月30日「五反田TOEIシネマ」閉館(1995年3月21日「五反田東映」閉館)

サイコ dvd.jpgPSYCHO2.jpg「サイコ」●原題:PSYCHO●制作年:1960年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ロバート・ブロック「気ちがい(サイコ)」●時間:108分●出演:アンソニー・パーキンス/ジャネット・リー/ベラ・マイルズ/マーチン・バルサン/ジャン・ギャヴィン●日本公開:1960/09●配給:パラマウント●最初に観た場所:六本木・俳優座シネマテン(97-09-19) (評価★★★★)

七年目の浮気
お楽しみはこれからだ part3 七年目の浮気.jpg

【2022年愛蔵版】

《読書MEMO》
「クリスチーヌの性愛記」あらすじ
「クリスチーヌの性愛記」03.jpg大学生のクリスチーヌ・アダムス(ジャクリーン・ビセット)はカナダの田舎の生活に退屈し、恋人のエディを訪ねてロサンゼルスに向ったが、途中、有名なコメディアンのダニー(コーベット・モニカ)と知り合い華やかなラスベガスを案内してもらった。やっとのこ「クリスチーヌの性愛記」05.jpgとでエディに会い、しばらく生活したが、ここでも退屈はついてまわった。彼女は再びラスベガスを訪れ、ホテルのショー・ガールとして生活するようになつた。バンドマンのジョイや、支配人トミー(ジム・ブラウン)と知り合い、クリスチーヌはトミーと結婚した。二人はやがてロサンゼルスに移ったが、トミーは、以前クリスチーヌに手を出そうとして喧嘩したデッカーの部下に殺された。失意のどん底に落とされたクリスチーヌはコール・ガールとなり、モーガンという金持の老人の面倒を受けるようになったが、ジェイと再会し、彼との幸福な家庭を夢見てせっせと働いた。ところが、田舎で牧場を経営するためにためた金をジェイに持ち去られ、彼女の夢は一瞬にして消えた。短期間ではあったが、彼女は人生の表裏を見た。22歳の彼女は田舎に戻るより外はなかった。

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PART2で区切りをつけるつもりで書いていたと思われるだけに、密度濃く、充実している。

お楽しみはこれからだ Part2 映画の名セリフ.jpg 男はつらいよ 第一作 dvd2.jpg  和田 誠 氏.jpg 和田 誠
「男はつらいよ」(1969)渥美清/倍賞千恵子/光本幸子             
お楽しみはこれからだ〈Part2〉―映画の名セリフ (1976年)』 「男はつらいよ〈シリーズ第1作〉 [DVD]

 1973年から「キネマ旬報」に連載されたイラストレーターの和田誠(1936年生まれ)氏による映画エッセイシリーズのPART2で単行本刊行は1976(昭和51)年。PART1との違いは、日本映画がいくらか入っていることと、古い映画から当時の新作まで年代的に幅が拡がっていることです。このシリーズ、著者が許可を出さないためなのか文庫化されていませんが、一方で、当時の映画のロードショー料金を上回らない価格設定にするため、表紙は単色でしかも新刊時から帯無しというシンプルなスタイルになっています。このシンプルさにも、多くの装丁を手掛ける著者の美意識が表れているのかも。但し、例えば表紙にトリュフォーの「アメリカの夜」をもってきていますが、本文の形式を倣いながらも(この作品は本文でも取り上げいている)、表紙用に文も絵も新たに書き(描き)起こすなど、手抜きはしていません。

 日本映画は、冒頭から「幕末太陽伝」('57年)、「夫婦善哉」('55年)、「けんかえれじい」('66年)、「総長賭博」('68年)、「日本沈没」('73年)ときて、途中、「生きる」('52年)をはじめとする一連の黒澤明監督作や、中村翫右衛門らが出演したオムニバス映画「怪談」('64年)、片岡千恵蔵主演の「七つの顔の男だぜ」('60年)、更には高倉健主演の「網走番外地」('65年)やその他任侠映画まで様々取り上げていますが、それでもトータルでは洋画の方が多くなっています。

 新作も幾つか入れたといっても数的にはそれほどでもなく、圧倒的に著者が昔観た古い映画の話が多く、次いで、テレビや映画祭の特集で最近観た、かつて観ることが出来なかった昔の作品などがくる感じでしょうか。有名な作品と併せてややマニアックな作品もとり上げていて、よく観ているなあと思う一方で、その記憶力には驚かされます。

さらば友よ (お楽しみはこれからだ─和田誠─より.jpg このシリーズは、映画の中の名セリフを取り上げて、リレー方式というか連想方式的に一定サイクル話を繋いでいっていますが(それと、勿論のことだが、イラストとの組み合わせ)、著者によれば、日本映画の方がセリフに関する記憶が少なく、洋画においてスパーインポーズで読んだものの方が記憶に残っているとのことです(そういうものかもしれないなあ)。

 ここまでで「キネマ旬報」連載の60回分がひとまず落着し、あとがきで著者はまた書かせてもらう機会があるかもしれないといったことを書いていますが、結局、間を置きながらも20年以上にわたって連載は続き、単行本はPART7まで刊行されました。いずれの巻も映画ファンには読み応えがありますが、特にPART2までは、当初はそこで区切りをつけるつもりで書いていたと思われるだけに、密度が濃くて充実しているように思います。
「さらば友よ」(1968)

 久しぶりに読み返してああそうか、ナルホドなと思った点を、外国映画主体のこのシリーズの中では少数派である日本映画から2つ。

椿三十郎 三船 仲代.jpg 1つは、「椿三十郎」('62年)のラストの三船敏郎、仲代達矢の決闘シーンで、近距離で一瞬にして勝負がつく斬り合いは、著者自身、当時"新機軸"だと思ったそうですが、山中丹下左膳 百万両の壺 dvd.jpg貞雄の「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」('35年)で、すでに大河内伝次郎の丹下左膳がヤクザ風の男を斬る場面で使われていたことを、著者はフィルムセンターで観て知ったとのことです。ああ、そうだったかなあ。「百萬兩の壺」の丹下左膳って、それまでの丹下左膳像と違ってコミカルな印象が強くて、剣豪のイメージが相対的に抑えられていたような気がしましたが、コミカルであろうと強いことに変わりはないんだよね、丹下左膳は。但し、あの"噴血"はやはり黒澤ならではの見せ方ではないかな。
丹下左膳餘話 百萬両の壺 [DVD] COS-032

『男はつらいよ』森川信、渥美清、三崎千恵子、倍賞千恵子ら.jpg もう1つは、「男はつらいよ」('69年)で、この作品はTVが先で映画が後ですが、著者はTVは観ていたけれど映画化されてこれほどの人気シリーズになるとは思っていなかったとのことで、作者らもそうだったのでないかとしている点です。その証拠として、TV版のあらゆる要素が(総まとめ的に)ぶちこまれていて、妹のさくらが結婚してしまうのもその現れで、シリーズ化が先に決まっていれば、さくらの見合いを寅が邪魔するなど、第2作以降にさくらの結婚は持ち越されていたのではないかとしており、ナルホドなあと思いました。

「男はつらいよ」(1969)森川信、渥美清、三崎千恵子、倍賞千恵子ら

光本幸子さん .jpg その代りのお楽しみとして、毎回違った"マドンナ"が登場するパターンになったということなのでしょう。初代マドンナは昨年['13年]食道癌で亡くなった光本幸子でした。また、著者が矛盾を指摘する「俺がいたんじゃお嫁にゃ行けぬ」という主題歌の歌詞はもともとTV版用に作られたものですが、映画版の第2作からは別の歌詞に差し替えられています。
光本幸子(1943-2013)

男はつらいよ 志村・笠1.jpg 第1作は、黒澤明監督映画の重鎮俳優・志村喬(諏訪飈一郎役)が出演し、さくらの披露宴のシーンで小津映画の重要俳優・笠智衆(御前様役)と同じ画面に収まっているというのが珍しいかもしれません(黒澤監督の「赤ひげ」('65年/東宝)にも2人共が出演しているが、それぞれ違った場面での登場となっている)。

男はつらいよ 〈シリーズ第1作〉.jpg 第1作がヒットして、山田洋次監督が松竹渥美清の泣いてたまるか 男はつらい0.jpgから3作撮ったところで好きな映画作りをしてもいいと言われて撮ったのが「家族」('70年)ですが、「家族」の構想は山田監督の中で製作の5年前からあったそうです。一方の「男はつらいよ」は、山田洋次監督が渥美清に最初に出会った時に「この役者は天才だ」と思ったそうで、おそらく、毎回脚本家が変わり、渥美清も毎回違う役柄で出演した連続テレビドラマ「渥美清の泣いてたまるか」('66‐'68年/TBS[全53話])(渥美清主演のほかに、青島幸男、中村嘉津雄主演の「泣いてたまるか」がそれぞれ14話と13話作られた)が二人の出会いではないかと思われますが、そこから急に構想が芽生えてきたのではないかと勝手に推測しています。「渥美清の泣いてたまるか」の最終回は山田洋次監督が脚本担当で、タイトルは「男はつらい」でした。やがて、これが独立した連続TVドラマ「男はつらいよ」('68‐'69年/フジテレビ[全26回])になったという流れでしょうか。
渥美清の泣いてたまるかVOL.20 [DVD]


お楽しみはこれからだPART2 223.jpg 「天井桟敷の人々」(1945)のところで、初めて観たのが高校1年の時で、その良さを理解できなかったように思うというのは正直か(その後何度か観て、少しずつ判ってきたとのこと)。山田宏一(1938年生まれ)氏が中学時代にこの映画を観てフランス語を習う決心をした話を引き合いに、著者は「バチスト(ジャン=ルイ・バロー)とガランス(アルレッティ)のベッドシーンで、カメラが窓の方にパンしてしまうのを不服に思ったのが初めて観たときの印象だから、ずいぶんと差がついてしまった」と書いているのがユーモラスです。個人的にも名作だと思いますが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素もあったように思います。

「天井桟敷の人々」(1945)

 『お楽しみはこれからだ』―時々読み返してみるのも悪くないシリーズです。

「椿三十郎」.jpg椿三十.bmp「椿三十郎」●制作年:1962年●製作:東宝・黒澤プロダクション●監督・脚本:黒澤明●音楽:佐藤勝●原作:山本周五郎「日日平安」●時間:96分●出演:三船敏郎/仲代達矢/司葉子/加山雄三/小林桂樹/田中邦衛/山茶花究/加東大介/河津清三郎/山田五十鈴/東野英治郎/入江たか子/志村喬/藤原釜足/夏木陽介/清水将夫 /伊藤雄之助/久保明/太刀川寛/土屋嘉男/団令子/平田昭彦●劇場公開:1962/01●配給:東宝 (評価★★★★☆)椿三十郎 [監督:黒澤明] [三船敏郎/仲代達矢] [レンタル落ち]

『丹下左膳余話 百萬両の壺』のDVD版のジャケット.jpg丹下左膳 百万両の壺 02.jpg「丹下左膳餘話 百萬兩の壺」●制作年:1935年●監督:山中貞雄●脚本:三村伸太郎●潤色:三神三太郎●撮影:安本淳●音楽:西梧郎●原作:林不忘●時間:92分●出演:大河内傳次郎/喜代三/沢村国太郎/山本礼三郎/鬼頭善一郎/阪東勝太郎/磯川勝彦/清川荘司/高勢実乗/鳥羽陽之助/宗春太郎/花井蘭子/伊村理江子/達美心子/深水藤子●公開:1935/06●配給:日活(評価:★★★★☆)丹下左膳餘話 百萬兩の壺 [DVD]
                          
シリーズ第1作「男はつらいよ」三崎千恵子.jpg「男はつらいよ 〈シリーズ第1作〉」●制作年:1969年●監督・原作:山田洋次●脚本:山田シリーズ第1作「男はつらいよ」渥美清.jpg洋次/森崎東●製作:上村力●撮影:高羽哲夫●音楽:山本直純●時間:91分●出演:渥美清/倍賞千恵子/光本幸子/笠智衆/志村喬(特別出演)/森川信/前田吟/津坂匡章/佐藤蛾次郎/関敬六「男はつらいよ」志村喬.jpg男はつらいよ 第一作 dvd.png三崎千恵子/太宰久雄/近江俊輔/広川太一郎/石島戻太郎/志賀真津子/津路清子/村上記代/石井愃一/市山達己/北竜介/川島照満/水木涼子/谷よしの/●公開:1969/08●配給:松竹(評価:★★★★)

第1作 男はつらいよ HDリマスター版 [DVD]

●キネマ旬報 映画評論家による男はつらいよランキング
2006年1月上旬号のキネマ旬報より、映画評論家・著名人41人による男はつらいよのベストテン。
順位  作数    作品名        マドンナ
1位   1作   男はつらいよ        光本幸子
2位  15作  男はつらいよ 寅次郎相合い傘   浅丘ルリ子
3位   17作  男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け   太地喜和子
4位  11作  男はつらいよ 寅次郎忘れな草   浅丘ルリ子
5位   2作   続・男はつらいよ     佐藤オリエ
6位   5作   男はつらいよ 望郷篇      長山藍子
7位   38作  男はつらいよ 知床慕情      竹下景子
8位   25作  男はつらいよ 寅次郎ハイビスカスの花  浅丘ルリ子
9位   9作   男はつらいよ 柴又慕情      吉永小百合
10位  32作   男はつらいよ 口笛を吹く寅次郎    竹下景子
10位  48作   男はつらいよ 寅次郎紅の花     浅丘ルリ子

光本幸子 in「男はつらいよ〈第1作〉」('69年/松竹)/「必殺仕事人・激突!」('91-'92年/テレビ朝日系)
第1作 男はつらいよ 光本幸子.jpg 必殺仕事人・激突.jpg

泣いてたまるか1.jpg渥美清の泣いてたまるか 男はつらい2.jpg「泣いてたまるか」●制作:国際放映/松竹テレビ室/TBS●脚本:野村芳太郎/橋田壽賀子/早坂暁/家城巳代治/山田洋次/清水邦夫/泣いてたまるかe.jpg青島幸男/橋本忍/金城哲夫/小林久三/山中恒/深作欣二/木下惠介/山田太一/井出雅人/佐藤純彌/森崎東/桜井康裕/山根優一郎/鈴木尚之/掛札昌裕/光畑碩郎/高岡尚平/関沢新一/大川久男/渡邊祐介/大石隆一/大原清秀/高岡尚平/北野夏生/山内泰雄/入江昭夫/乙武英樹/灘千造/家城秀男/稲垣俊/大川タケシ/秋山透/内田栄一●演出:高橋繁男/山際永三/松野宏軌/中川晴之助/森崎東/今井正/深作欣二/降旗康男/福田純/円谷一/佐藤純彌/降旗康男/望月優子/山際永三/佐伯孚治/下村堯二/渡邊祐介/真船禎/松林宗恵/家城巳代治/飯島敏宏/瀬川昌治/神谷吉彦/枝川弘/平松弘至/小山幹夫/吉野安雄/大槻義一/鈴木英夫/井上博/香月敏郎●音楽:木下忠司(主題歌「泣いてたまるか」(作詞:良池まもる、作曲:木下忠司、歌:渥美清(渥美清主演の時))●出演(主人公):渥美清/青島幸男/中村賀津雄●放映:1966/04~1968/03(全80回)●放送局:TBS
   
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★★★)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

【2022年愛蔵版】

《読書MEMO》
「男はつらいよ」(第1作)予告編映像/4Kデジタル修復版ブルーレイ 2019年12月5日リリース

「●わ 和田 誠」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【2184】 和田 誠 『お楽しみはこれからだ PART2
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20年以上続いたシリーズの記念すべき単行本第1冊。著者はビリー・ワイルダーがお好き?

お楽しみはこれからだ  1 - コピー.jpg和田 誠 氏.jpg 和田 誠 氏 麗しのサブリナ bl.jpg 麗しのサブリナ 3.jpg 
お楽しみはこれからだ―映画の名セリフ』「麗しのサブリナ [Blu-ray]」Humphrey Bogart, Audrey Hepburn, William Holden

 本書は、「キネマ旬報」に1973(昭和48)年から連載されたもので、単行本で全7冊あるシリーズの第1作目です。サブタイトルにあるように、映画の名セリフを素材に映画批評と言うよりエッセイ風に書いていますが、それにイラストを組み合わせるスタイルになっています。

 和田誠(1936年生まれ)氏は古い映画を非常によく観ていて(まあ、単行本初版が1975年であるため、それより以前の映画の話しか出てこないわけだが)、しかも、ビデオもそう普及していない時代に、よくセリフを記憶しているものだなあと感心させられます。

 一部シナリオに頼ったりしているそうですが殆ど自分の記憶頼みで、従って連載中に映画通の読者や評論家から誤りを指摘されることもあったとのことですが、単行本化に際して間違っているところは修正したとのこと。それにしてもやっぱりスゴイ記憶力だなあと。故・淀川長治なども尋常でない記憶力だったようですが、本当に映画が好きで、何回も観ているのでしょう。

サンセット大通り.jpg 「サンセット大通り」.jpg 自分があまり面白いと思わなかった映画は、その理由も含め正直に書いているのもいいです。一方、この人の一番好きな監督は、表紙に「サンセット大通り」('50年)がきていることから、やはりビリー・ワイルダーでしょうか(自分も個人的に高く評価している監督なのだが)。しかしながら、この本で最も多く登場する作品は「カサブランカ」('43年)で、やはりあの作品は名セリフの宝庫だということなのでしょう。
  
麗しのサブリナ tirashi.png ボギーことハンフリー・ボガートが出演したビリー・ワイルダー作品では「麗しのサブリナ」('54年)があり、ここではボガートの「ぼくをみてください。神経痛の大学生だ」というセリフを取り上げていますが、堅物の兄ボガートが、遊び人の弟ウィリアム・ホールデンから女の子オードリー・ヘプバーンを引き離すために自分が代わりにデートする、その際に無理矢理若作りしている自分のことを自嘲気味に父親に言うセリフです。

麗しのサブリナ b&h.jpg この作品は、ボガートがコメディタッチの演技を見せ(しかもラストは女の子を追いかけるために飛んでいく)、三島由紀夫.jpgそれが彼にあまりに似合っていないのではないかということで、一般の評価はそう高くないように思いますが、本書では、三島由紀夫がこのセリフを言うボガートを評して、「これ以上の適役はなかろう」と当時の「スクリーン」誌に書いていることを取り上げ、「こんな文章を読むと、とてもあのような死に方をする人とは思えないのだ」と書いているが印象深かったです(和田氏がこの文章を書いている時は、三島の自決からまだ3年と経っていない)。

麗しのサブリナ32.jpg 「麗しのサブリナ」は、サミュエル・テイラーの舞台劇を映画化したもので、「ローマの休日」に続くヘプバーン主演第2作。運転手の娘が何故ジバンシィを着ているのかというのはあるけれ麗しのサブリナ02.jpgど(ジバンシィがヘプバーンのドレスを最初にデザインしたのがこの作品だが、ジバンシィはヘプバーンと顔を合わせるまで、自分が衣裳を担当する女優はキャサリン・ヘプバーンだと思っていた)、モノクロのせいか、ヘプバーンの美しさ、可憐さという点では「ローマの休日」と並んで一番の作品ではないかと思います。でも、ビリー・ワイルダーの演出も結構しっかりしていて、そこがまた見所だったのかも(因みに、ボガートは撮影中、ヘプバーンの演技の未熟さにややウンザリさせられていたという話もある(エドワード・ルケィア『ハリウッド・スキャンダル』より))。

 久しぶりの読み直しで、いろいろなことを思い出させてくれる本―と言うより、殆ど忘れてしまっていたなあという感じで実質的には初読に近かった? こういう本って、手元に置いておいて、時々ぱらぱらめくって楽しむのがいいのでしょう。ただ、回ごとの繋がりが良いせいもあって、読み始めると止まらなくなるという面もあります。

 一冊に連載30回分が纏められているそうで、連載1回につき8ページ(「キネ旬」誌上では4ページ)というのは結構きつかったのではないでしょうか。因みに第7巻(PART7)までの累計ページ数は1,757ページで、その第7巻は1995年刊行されていますから、第1巻である本書の刊行から20年、連載としては22年続いたことになりますが、連載を終える際に和田氏は、これでもう映画を観なくなってしまうのではと自分で心配したというから、連載が新たに映画を観たり古い映画を観直したりする動機づけになっていた面はあるのでしょう。

SABRINA 1954 08.jpg麗しのサブリナ dvd.jpg「麗しのサブリナ」●原題:SUBRINA●制作年:1954年●制作国:アメリカ●監督・製作:ビリー・ワイルダー●脚本:ビリー・ワイルダー/ サミュエル・テイラー/アーネスト・レーマン●撮影:チャールズ・ラング・Jr●音楽:フレデリック・ホランダー●原作:サミュエル・テイラー●時間:113分●出演:オードリー・ヘプバーン/ハンフリー・ボガート/ウィリアム・ホールデン/ジョン・ウィリアムズ/マーサ・ハイヤー/ジョーン・ヴォーンズ/ウォルター・ホールデン●日本公開:1954/09●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場・ACTミニシアター (85-04-27)(評価:★★★★)●併映「失われた週末」(ビリー・ワイルダー)
麗しのサブリナ [DVD]

お楽しみはこれからだ  1.jpgSUNSET BOULEVARD2.jpg「サンセット大通り」●原題:SUNSET BOULEVARD●制作年:1950年●制作国:アメリカ●監督:ビリー・ワイルダー●製作:チャールズ・ブラケサンセット大通り10.jpgット●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:110分●出演:グロリア・スワンソン/ウィリアム・ホサンセット大通り 和田誠ポスター.jpgールデン/エリッヒ・フォン・シュトロハイム:マックス/バスター・キートン/ナンシー・オルソン●日本公開:1951/10●配給:セントラル●最初に観銀座文化・シネスイッチ銀座.jpg銀座文化1・2.pngた場所:銀座文化劇場 (88-12-12) (評価:★★★★)


【2022年愛蔵版】

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「●円谷 英二 特撮作品」の インデックッスへ

写真も楽しいけれど、エピソードも楽しい一冊。円谷英二の人柄が伝わってくる。

円谷英二 日本映画界に残した遺産 01.jpg円谷英二 日本映画界に残した遺産 復刻版.jpg    円谷英二 日本映画界に残した遺産 02.jpg
円谷英二 日本映画界に残した遺産』[復刻版](2001/06)
(27.4 x 19.8 x 2.2 cm)

『円谷英二 日本映画界に残した遺産』(1973/01 小学館)

円谷英二 日本映画界に残した遺産09.JPG 1973年に円谷プロの設立10周年を記念して刊行された本で、円谷英二(1901-1970/享年68)の足跡、生い立ちから始まって生涯とその仕事を、豊富な写真と主に本人が折々に書いた文章や談話で辿ったもの。

 幼少の頃、撮影助手としての掛け出しの頃の写真家から始まって、ミニチュア模型に囲まれていたり怪獣たちに"演技指導"していたりする制作現場の写真などが数多く含まれていて、写真を見ているだけでも興味深いですが、円谷英二自身の文章・談話のほかに、多くの関係者がエッセイを寄せていて、元本が、1970年1月に円谷英二が亡くなってちょうど3年経った時に刊行されたものであることを考えあわせても、「追悼本」の色合いが濃いかと思います。

円谷英二 日本映画界に残した遺産10.JPG 撮影に取り組む姿勢は厳しかったものの、人間味があり、現場の雰囲気づくり、現場をまとめ上げることが非常に上手だった人のようで、そうでなければ、あのような多くの人手と才能を要する特撮作品を幾つも作ることは出来なかっただろうし、そのことからすれば、そうした人柄は想像に難くないにしても、ともかくエピソードに事欠かない人物だなあと。 

 "ゴジラ"制作の頃のエピソードが特に面白く、監督の本多猪四郎によれば、初代"ゴジラ"は生ゴム加工で大変な重量であり、完成していざ歩こうとしたゴジラは5㎝角の木材に足を引っ掛けてその場にドウと倒れたまま、自力で寝返りも打てなかったとのこと、後にゴジラが身軽に動けるようになったのは次々開発された合成樹脂のお蔭だそうですが、トンボを切ったりすることまで出来るようになった分、ゴジラのイメージ自体も軽くなっていた印象があります。

円谷英二 日本映画界に残した遺産11.JPG 円谷英二本人の述懐では、怪獣もののロケハンの際に、銀座のMデパートの屋上に上がり、「新橋のあのあたりに火をつけて銀座の方へ燃え移らせよう」とか打ち合わせしていたところ、一階の出口でストップをかけられ不審尋問を受けた(昭和37年4月、毎日新聞)というのは可笑しいです。

 怪獣好きな東北の少年が交通事故で死んだ時、涙を流して小さな怪獣を作って仏壇に置く歌というスクリプターの証言は泣けるなあ。

 国際線の機中で、乗客簿を見て、ゴジラを作った有名なミスター・ツブラヤが乗っていると知った機長が挨拶に来て、ゴジラファンである子供のためにとせがまれスチールにサインしたら、男の子二人で喧嘩すると困るからもう一枚サインして貰えないかとねだられたとか―写真も楽しいけれど、エピソードも楽しい一冊です。

 因みに、本書は長らくの間、古本市場でもそれほど数が出回らないためプレミア価格になっていましたが、2001年に円谷英二生誕100年を記念して復刻されています。

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ディズニー・アニメ中心で、作品の選抜基準がかなり恣意的。内容の割には値段が高すぎる。
世界アニメーション歴史事典.jpg 1世界アニメーション歴史事典』.png 
世界アニメーション歴史事典』 (2012/09 ゆまに書房)(26.2 x 23.8 x 3.8 cm)

 100年にわたるアニメーションの歴史を、図版と解説とで紹介したアニメの歴史事典で、アニメ映画だけでなく、テレビ番組、ゲーム、インディペンデント系映画、インターネットのアニメにいたるまでフォローした、定価8,500円の豪華本です(重い!)

 年代順に整理されていて分かりやすく、何よりも図版の配置が贅沢。その分、400頁余というページ数の割には、取り上げられている作品数に制約があり、観て楽しむ分にはいいですが、「事典」としてはどうかなという思いも。

ファンタジア.JPG 掲載されているアニメ数は700余点とのことですが、芸術アニメからディズニーの大ヒットアニメまでカバーしている分、それぞれの分野で抜け落ちを多いような気もして、作品の選抜にやや恣意性を感じました。

 日本のアニメは、「白蛇伝」('58年)が片面で小さく図版が入っているのみなのに対し、「AKIRA」('88年)が見開き両面に図版を入れての紹介、映画「ファイナルファンタジー」が片面図版入りなのに対し、「鉄腕アトム」('63年)や「千と千尋の神隠し」('01年)が、まるで邦訳版のために後から加えたかのように、図版無しの簡単な文章のみの紹介となっています(これらも、"700余点"にカウントされているのか)。

ファンタジア01.png 「ファンタジア」('41年、日本公開'55年)の見開き4ページにわたる紹介を筆頭に(これ、確かに名作ではある。本書にも紹介されている「ネオ・ファンタジア」('76年/伊)の方が大人向きの芸術アニメで、「ファンタジア」1世界アニメーション歴史事典f.pngがレオポルド・ストコフスキーならば「ネオ・ファンタジア」の方はヘルベルト・フォン・カラヤンで迫るが、「ネオ・ファンタジア」は「ファンタジア」より35年も後に作られた作品にしては残念ながらはアニメーション部分がイマイチ)、本書全体としてかなりディズニー偏重ではないかと思われ、イギリス映画である「イエロー・サブマリン」('68年/英)なども制作の経緯が結構詳しく記されているけれども、それらも含め米国においてメジャーであるかどうかという視座が色濃いとも言えます。

1世界アニメーション歴史事典y.png 個人的には「イエロー・サブマリンン」は、「ビートルズがやって来るヤァ!ヤァ!ヤァ!」('64年/英)、「ヘルプ!4人はアイドル」('65年/英)などとの併映で名画座で観ましたが、いつごろのことか記憶にありません。劇場(ロードショー)公開当初はそれほど話題にならなかったといいますが、今思えば、日本の70年代ポップカルチャーに与えた影響は大きかったかも。イラストレーターの伊坂芳太良なんて、影響を受けた一人では?(この人、1970年には亡くなっているが)。

 もちろんディズニー・アニメは歴史的にも先駆的であり、「白雪姫」('37年、日本公開'50年)はディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと思うし、個人的には自分の子供時代の弁当箱の図柄だった「ダンボ」('41年、日本公開'54年)にも思い入れはあるし(「ダンボ」は1947年・第2回カンヌ国際映画祭「アニメーション賞」受賞作)、「ファンタジア」のDVDなどは大型書店に行けば児童書のコナーで簡単に購入できるなど、今も世界的にもメジャーであることは間違いないのですが...。自分の子供時代に関して言えば、「ダンボ」は劇場で観たけれど、「ファンタジア」は観なかったなあ(リヴァイバルされる機会が少なかったのかも)。今観ても、「ファンタジア」はどこよなく"情操教育"っぽい雰囲気が無きにしもあらずで、個人的に懐かしい「ダンボ」の方がやや好みか。

 冒頭の地域別アニメ史の要約は「北米」「西欧」「ロシア・東欧」「アジア」という区分になっていますが、本文中ではアメリカがやはり圧倒的に多いです(著者のスティーヴン・キャヴァリアは、アニメ制作キャリア20年の英国人で、ディズニーの監督もしたことがあるとのことだが、何という作品を監督したのかよく分からない)。

雪の女王.jpg 芸術アニメに関して言えば、アレクサンドル・ペドロフの「老人と海」('99年/露・カナダ・日)は紹介されていますが、山村浩二監督の「頭山」('02年)は無く(加藤久仁生監督の「つみきのいえ」('08年)はある)、伝統的に芸術アニメの先進国であるチェコの作品などは、カレル・ゼーマンの「悪魔の発明」('58年)は入っていますが「水玉の幻想」('48年)などは入っておらず、ロシアの作品は、雪の女王 dvd.jpg「イワンと仔馬」('47年)は図版無しの文章のみの紹介で、「雪の女王」('57年)に至っては「イワンと仔馬」の解説文の中でその名が出てくるのみ、同じく、ユーリ・ノルシュテインの「霧の中のハリネズミ(霧につつまれたハリネズミ)」('75年)も、日本でも絵本にまでなっているくらい有名な作品ですが、「話の話」('79年)の解説文の中でその名が出てくるのみで、その「話の話」の図版さえもありません(「話の話」が「霧の中のハリネズミ」の"続編"として作られたと書いてあるが、それぞれ別作品ではないか)。これでは日本人だけでなく、東欧人やロシア人の自国のアニメを愛するファンも怒ってしまうのでは?

1ロジャー・ラビット.png ロバート・ゼメキス監督の「ロジャー・ラビット」('88年)のような「実写+アニメーション合成作品」も取り上げられていますが、確かにアカデミー視覚効果賞などを受賞していて、合成技術はなかなかののものと当時は思われたものの、合成を見せるためだけの映画になっている印象もあり、キャラクターが飛び跳ねてばかりいて観ていて落ち着かない...まあ、アメリカのトゥーン(アニメーションキャラクター)の典型的な動きなのだろうけれど、これもまたディズニー作品。但し、この作品以降、「リジー・マグワイア・ムービー」('03年)まで15年間、ディズニーは実写+アニメーション合成作品を作らなかったことになります(最も最近の実写+アニメーション合成作は「魔法にかけられて」('07年))。まあ、実写とアニメの合成は、作品全体のごく一部分としてならば、ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊る「錨を上げて」('45年/米)の頃からあるわけだけれど。

 結果的には、アメリカのアニメ史、特にディズニー・アニメに絞って追っていく分にはいい本かも(と思ったら、版元の口上にも、「ディズニー主要作品も網羅した本格的な初のアニメファン必備書」とあった)。個人的には、懐かしいアニメもありましたが、一つ一つの作品解説がそう詳しいわけでもなく(但し、制作の裏話などではトリビアなエピソードも多くあったりする)、むしろアメリカ・アニメ史の中でのそれら作品の位置づけを確認できる、といった程度でしょう。内容的に見て、事典と言うより個人の著書の色合いが濃く、買うには値段が高すぎる本でした。


FANTASIA 1941.jpgファンタジア dvd.jpg「ファンタジア」●原題:FANTASIA●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー●音楽:チャイコフスキー/ムソルグスキー/ストラヴィンスキー/ベートーヴェン/ポンキェッリ/バッハ/デュカース/シューベルト(レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団演奏)●時間:オリジナル125分/1942年リバイバル版81分/1990年リリース版115分●出演:ディームス・テーラー/レオポルド・ストコフスキー●日本公開:1955/09●配給:RKO=大映(評価:★★★☆)ファンタジア [DVD]

ネオ・ファンタジア dvd.jpg「ネオ・ファンタジア」●原題:ALLEGRO NON TROPPO●制作年:1976年●制作国:イタリア●監督・製作:ブルーノ・ボツェット●脚本:ブルーノ・ボツェット/グイド・マヌリ/マウリツィオ・ニケッティ●アニメーション:アニメーション:ギゼップ・ラガナ/ウォルター・キャバゼッティ/ジョバンニ・フェラーリ/ジャンカルロ・セレダ/ジョルジョ・バレンティニ/グイド・マヌリ/パオロ・アルビコッコ/ジョルジョ・フォーランニ●実写撮影:マリオ・マシーニ●音楽:ドビュッシー/ドヴォルザーク/ラヴェル/シベリウス/ヴィヴァルディ/ストラヴィンスキー(ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮、フィラデルフィアベルリン・フィルハーモニー管弦楽団)●時間:85分●出演:マウリツィオ・ニケッティ/ネストール・ガレイ/マウリツィオ・ミケーリ/マリア・ルイーザ・ジョヴァンニーニ●日本公開:1980/01●配給:アート・フォーラム●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)(評価:★★★)●併映:「天井桟敷の人々」(マルセル・カルネ)ネオ・ファンタジア [DVD]

白雪姫 dvd.jpg「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)白雪姫 スペシャル・エディション [DVD]

ダンボ dvd.jpgダンボ 1941.jpg「ダンボ」●原題:DUMBO●制作年:1941年●制作国:アメリカ●監督:ベン・シャープスティーン●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:ジョー・グラント/ディック・ヒューマー/ビル・ピート/オーリー・バタグリア/ジョー・リナルディ/ジョージ・スターリング/ウェッブ・スミス/オットー・イングランダー●音楽:オリバー・ウォレス/フランク・チャーチル●撮影:ボブ・ブロートン●原作:ヘレン・アバーソン/ハロルド・パール●時間:64分●声の出演:エド・ブロフィ/ハーマン・ビング●日本公開:1954/03●配給:RKO=大映(評価:★★★★)ダンボ スペシャル・エディション [DVD]

イエロー・サブマリン dvd.jpgイエロー・サブマリン.jpg「イエロー・サブマリン」●原題:YELLOW SUBMARINE●制作年:1968年●制作国:イギリス●監督:ジョージ・ダニング/ジャック・ストークス●製作:アル・ブロダックス●撮影:ジョン・ウィリアムズ●編集:ブライアン・J・ビショップ●時間:90分●出演:(アニメ画像として)ザ・ビートルズ(ジョン・レノン/ポール・マッカートニー/ジョージ・ハリスン/リンゴ・スター)●日本公開:1969/07●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所(再見):北千住・シネマブルースタジオ(07-08-28)(評価:★★★☆)
イエロー・サブマリン [DVD]

ロジャー・ラビット dvd.jpg「ロジャー・ラビット」●原題:WHO FRAMED ROGER RABBIT●制作年:1988年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●アニメーション監督:リチャード・ウィリアムス●製作:フランク・マーシャル/ロバート・ワッツ●脚本:ジェフリー・プライス/ピーター・シーマン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ゲイリー・K・ウルフ●時間:113分●出演:デボブ・ホスキンス/クリストファー・ロイド/ジョアンナ・キャシディ/スタッビー・ケイ/アラン・ティルバーン/リチャード・ルパーメンティア●日本公開:1988/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:渋谷スカラ座(88-12-04)(評価:★★)ロジャー・ラビット [DVD]
渋谷東宝会館2.jpg渋谷スカラ座 渋谷東宝会館4階(1階は渋谷東宝劇場)。1989年2月26日閉館。1991年7月6日、跡地に渋東シネタワーが開館。


錨を上げて アニメ.jpg「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シド錨を上げて.jpgテアトル新宿.jpgニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

老人と海(99年公開).jpgアニメーション「The Old Man and the Sea(老人と海)」 by Alexandre Petrov(アレクサンドル・ペトロフ) 1999.jpg 「老人と海」●原題:THE OLD MAN AND THE SEA●制作年:1999年●制作国:ロシア/カナダ/日本●監督・脚本:アレクサンドル・ペドロフ/和田敏克●製作:ベルナード・ラジョア/島村達夫●撮影:セルゲイ・レシェトニコフ●音楽:ノーマンド・ロジャー●原作:アーネスト・ヘミングウェイ●時間:23分●日本公開:1999/06●配給:IMAGICA●最初に観た場所:東京アイマックス・シアター (99‐06‐16) (評価★★★☆)●併映:「ヘミングウェイ・ポートレイト」(アレクサンドル・ペトロフ)●アニメーション老人と海 [DVD]」('99年/ロシア/カナダ/日本)

雪の女王 dvd.jpg「雪の女王」●原題:Снежная королев(スニェージナヤ・カラリェバ)●制作年:1957年●制作国:ソ連●監督:レフ・アタマノフ●脚本:レフ・アタマノフ/G・グレブネル/N・エルドマン●音楽:A.アイヴァジャン●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:63分●声の出演:Y.ジェイモー/A.カマローワ/M.ババノーワ/G.コナーヒナ/V.グリプコーフ●公開:1960/01/1993/08 ●配給:NHK/日本海映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(84-01-14)(評価:★★★★)●併映:「せむしの仔馬」(イワノフ・ワーノ)

雪の女王 [DVD]」('57年/ソ連)


霧の中のハリネズミ.jpg「霧の中のハリネズミ(霧につつまれた霧の中のハリネズミ 1.jpgユーリ・ノルシュテイン作品集.jpgハリネズミ)」●原題:Ёжик в тумане / Yozhik v tumane●制作年:1975年●制作国:ソ連●監督:ユーリイ・ノルシュテイン●脚本:セルゲイ・コズロフ●音楽:ミハイール・メイェローヴィチ●撮影:ナジェージダ・トレシュチョーヴァ●原作:セルゲイ・コズロフ●時間:10分29秒●声の出演:アレクセーイ・バターロフ/マリヤ・ヴィノグラドヴァ/ヴャチェスラーフ・ネヴィーヌィイ●公開:2004/07(1988/10 ジェネオン・ユニバーサル・エンターテイメント【VHS】)●配給:ふゅーじょんぷろだくと=ラピュタ阿佐ヶ谷(評価:★★★★)

ユーリ・ノルシュテイン作品集 [DVD]

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ディズニーにおける「夢と愛の物語」「アメリカの新たな民話」の作り方が窺えた。

ディズニーの魔法.jpg     白雪姫 dvd.jpg  スノーホワイト マイケル・コーン.jpg   美女と野獣 DVD.jpg 
ディズニーの魔法 (新潮新書)』「白雪姫 [DVD]」「スノーホワイト [DVD]」「美女と野獣 スペシャル・エディション (期間限定) [DVD]

 メディア論が専門の著者が、ディズニーの名作アニメについて原作の物語とアニメとの違いを分析することで、ディズニー・アニメというものが、「本当は怖い」話をいかにして「夢と愛の物語」に変え、「アメリカの新たな民話」を作り上げていったかを探るとともに、その背後にあるディズニーの思想とでもいうべきものを探った本であり、面白い試みだと思いました。

 取り上げられているのは以下の長編アニメーション6作。
・「白雪姫(白雪姫と七人の小人」('37年)/原作:『グリム童話』収録「白雪姫」(1812)
・「ピノキオ」('40年)/原作:コッローディ作の童話『ピノッキオの冒険』(1883)
・「シンデレラ」('50年)/原作:シャルル・ペロー『過ぎし昔の物語ならびに教訓』収録「サンドリヨン」(1697)、『グリム童話』収録「灰かぶり姫」
・「眠れる森の美女」('59年)/原作:シャルル・ペロー『過ぎし昔の物語ならびに教訓』収録「眠れる森の美女」(1697)、『グリム童話』収録「いばら姫」
・「リトル・マーメイド」('89年)/原作:アンデルセン『お話と物語』収録「人魚姫」(1837年)
・「美女と野獣」('91年)/原作:ボーモン夫人『美女と野獣』(1758年)

 これらについて、まず原作のあらすじを紹介し、続いてディズニーはどのようにオリジナルを作り変えたかを解説する形式で統一されているため読み易く、改変点に関する、これまで知らなかった知識が得られること自体が楽しいです。

 原作となった古典童話は、桐生操氏の『本当は恐ろしいグリム童話』('98年/ベストセラーズ)シリーズで広く知られるようになったオリジナルのグリム童話をはじめ、残酷で暴力的で、しばしば猟奇的、倒錯的でもあり、例えば「白雪姫」は最後に継母に残酷な仕返しをするし、『ピノッキオの冒険』では「喋るコオロギ」はピノッキオに木槌で叩き殺され、グリムの「灰かぶり姫」では、意地悪な連れ子姉妹が「金の靴」を無理に足に押し込むため、それぞれ足先と踵を切り落として歩けなくなる―。

 ペローの「眠れる森の美女」では、美女は100年以上も眠っていたため年齢も100歳以上になっているはずであり(王子は生きた白雪姫ではなくその死体と恋に落ちている)、アンデルセンの「人魚姫」は人間との恋を実らせることが出来ずに海の泡になってしまい、ボーモン夫人の『美女と野獣』に登場する「野獣」は、こちらはむしろディズニー版のそれより思慮深く優しいとのこと。

 まあ、原作のままのストーリーではファミリー向けにならないものが殆どであり、改変はしかるべくして行われたようにも思いますが、さらに突っ込んで、その背景にある当時のアメリカ社会の状況やディズニー文化の指向性などを社会学・文化学的に考察しており、但し、あまり堅くなり過ぎず、制作や改変の経緯にまつわるエピソードなども織り交ぜ(その部分はビジネス・ストーリー風とも言える)、改変点に関するトリビアな知識と併せて、コンパクトな新書の中に裏話が満載といった感じの本でもあります。

 ディズニーは、原作を改変することでそこに愛と感動、夢と希望を込め、当時の観客に合ったものに作り変えていったわけで、それを、ドロドロした原作のキレイな上澄み液だけを掬って換骨脱胎したと批判しても仕方がない気がしますが、ディズニー作品を契機にそれらの原作に触れることで、原作の持つグロテスクな雰囲気を味わってみるのもいいのでは(実態としては原作もディズニー作品の内容そのものであると思われているフシがあるが)。

白雪姫 1937.jpg 個人的には、映画「白雪姫」を観て、これがディズニーの最初の「長編カラー」アニメーションですが、1937年の作品だと思うとやはりスゴイなあと。白雪姫や継母である后の登場する場面は実際に俳優を使って撮影し、その動作を分解して絵を描くという手法はこの頃からやっていたわけです。因みに、7人の小人は、原作ではゴブリン(ドラクエのキャラにもある小鬼風悪魔)であるのに対し、ディズニーによって、サンタクロースのイメージに変えられたとのことです。

白雪姫 1937 2.jpg 原作では、王子が初めて白雪姫に合った時、姫は死んでいたため、本書では、王子はネクロフィリア(死体に性的興奮を感じる異常性欲)であるとしています(半分冗談を込めてか?)。ディズニー版では王子を最初から登場させることで純愛物語に変えていますが、原作の基調にあるのは、白雪姫の后に対する復讐物語であり(結婚式で、継母=魔女は真っ赤に焼けた鋼鉄の靴を履かされて、死ぬまで踊り続けさせられた)、ヒロインが自分の婚礼の席で、自分を苛め続けてきた義姉妹の両眼を潰して復讐する「シンデレラ」の原作「灰かぶり姫」にも通じるものがあります。

 「この映画をディズニーが実写でリメイクするという話がある」と本書にあるのが、ルパート・サンダーズ監督によるシャーリーズ・セロンが継母の后を演じた「スノーホワイト」('12年)ですが、ダーク・ファンタジーを指向しながらも、やはりディズニー・アニメの枠内に収まっているのではないかな(評判がイマイチで観ていないけれど、白雪姫より継母の方が美女であるというのは、シャーリーズ・セロンの注文か?)。

snowwhite 1997 3.jpgsnowwhite 1997  1.jpg むしろ、本書にも紹介されている、シガーニー・ウィーヴァーが継母の后を演じたTV実写版「スノーホワイト」('97年)が比較的オリジナルに忠実に作られている分だけ、よりホラー仕立てであり、'99年の年末の深夜にテレビで何気なく見て、そのダークさについつい引き込まれて最後まで観てしまいました。これ、継母が完全に主人公っぽい。ホラー風だがそんなに怖くなく、但し、雰囲気的には完全に大人向きか(昨年('12年)テレビ東京「午後のロードショー」で再放映された)。

 著者は、「ビートルジュース」「バットマン」「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」のティム・バートン監督がディズニーで働いていたことがあるので、彼に頼めばいいものができるだろうと―(ティム・バートンは、本書刊行後に、ジョニー・デップ主演でロアルド・ダール原作の「チャーリーとチョコレート工場」('05年)を撮った。やや不気味な場面がありながらもコミカル調で、原作(続編を含めた)通りハッピーエンド)。「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の脚本家キャロライン・トンプソンが監督したTV版「スノーホワイト/白雪姫」もあり('01年/米)、こちらもちょっと観てみたい気も。

ガストン.jpg美女と野獣 01.jpg 本書の最後に取り上げられている「美女と野獣」は、個人的には90年代のディズニー・アニメの頂点を成している作品だと思うのですが、原作では、ヒロインであるベルは妬み深い二人の姉に苛められていて、グリムの「灰かぶり姫」のような状況だったみたいです。ディズニー・アニメでは、この姉たちは出てこず、代わりに、強引にベルに言い寄るガストンなる自信過剰のマッチョ男が出てきますが、これは、グリムのオリジナルには全く無いディズニー独自のキャラクター。

美女と野獣 02.jpg 本書によれば、オリジナルは、ベルの成長物語であるのに対し、ディズニー版ではベースト(野獣)の成長物語になっているとのことで、「美女と野獣」ではなく「野獣と美女」であると。そう考えれば、「悔い改めたセクシスト」であるビスーストと対比させるための「悔い改めざるセクシスト」ガストンという配置は、確かにぴったり嵌る気もしました。

 ストーリー構成もさることながら、絵がキレイ。大広間でのダンスのシークエンスでは、台頭しつつあったピクサーが作ったCGを背景に使っています(ピクサーはディズニーとの関係を構築しようとしていた(『世界アニメーション歴史事典』('12年/ゆまに書房)より))。

 本書では触れられていませんが、ディズニーはこの作品以降、グローバル戦略乃至ダイバーシティ戦略と言うか、「アラジン」('92年)、「ポカホンタス」('95年)、「ムーラン」('98年)など非白人系主人公の作品も作ったりしていますが、90年代半ば以降はスティーブ・ジョブズのピクサー社のCGアニメに押され気味で、「ポカホンタス」は「トイ・ストーリー」('95年)に、「ムーラン」は「バグズ・ライフ」('98年)に興業面で完敗し、今世紀に入っても「アトランティス 失われた帝国」('01年)は「モンスターズ・インク」('01年)に、「ホーム・オン・ザ・レンジ」('04年)は「Mr.インクレディブル」('04年)に完敗、それぞれピクサー提供作品の3分の1程度の興業収入に止まりました(ピクサー制作の「トイ・ストーリー」から「Mr.インクレディブル」まで、劇場公開は何れもディズニーによる配給ではあるが)。

スティーブ・ジョブズ 2.jpg '05年にディズニーのアイズナー会長は経営責任をとって退任し、'06年にはディズニーとの交渉不調からディズニーへのピクサー作品提供を打ち切るかに思われていたスティーブ・ジョブズが一転してピクサーをディズニーに売却し、同社はディズニーの完全子会社となり、ジョブズはディズニーの筆頭株主に。「トイ・ストーリー」などを監督したピクサーのジョン・ラセターは、ディズニーに請われ、ピクサーとディズニー・アニメーション・スタジオの両方のチーフ・クリエイティブ・オフィサーを兼任することに。'06年にピクサー制作の「カーズ」('06年)を監督するなどしながらも、「ルイスと未来泥棒」('07年)などの以降のディズニー・アニメの制作総指揮にあたっています(ディズニー作品も3D化が進むと、ディズニー・アニメのピクサー・アニメ化が進むのではないかなあ)。

Snow white 1937.jpg白雪姫 dvd.jpg「白雪姫」●原題:SNOW WHITE AND THE SEVEN DWARFS●制作年:1937年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・ハンド●製作:ウォルト・ディズニー●脚本:テッド・シアーズ/オットー・イングランダー/ アール・ハード/ドロシー・アン・ブランク/ リチャード・クリードン/メリル・デ・マリス/ディック・リカード/ウェッブ・スミス●撮影:ボブ・ブロートン●音楽:フランク・チャーチル/レイ・ハーライン/ポール・J・スミス●原作:グリム兄弟●時間:83分●声の出演:アドリアナ・カセロッティハリー・ストックウェル/ルシール・ラ・バーン/ロイ・アトウェル/ピント・コルヴィグ/ビリー・ギルバート/スコッティ・マットロー/オーティス・ハーラン/エディ・コリンズ●日本公開:1950/09●配給:RKO(評価:★★★★)

スノーホワイト 1997 vhs.jpg「スノーホワイト(グリム・ブラザーズ スノーホワイト)」snowwhite 1997.jpg●原題:SNOW WHITE: A TALE OF TERROR(THE GRIMM BROTHERS' SNOW WHITE)●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・コーン●製作:トム・エンゲルマン●脚本:トム・スゾロッシ/デボラ・セラズ●撮影:マイク・サウソン●音楽:ジョン・オットマン●原作:グリム兄弟●時間:100分●出演:シガーニー・ウィーヴァー/サム・ニール/モニカ・キーナ/ギル・ベローズ/デヴィッド・コンラッド/ジョアンナ・ロス/タリン・デイヴィス/ブライアン・プリングル●日本公開:1997/10●配給:ギャガ=ヒューマックス(評価:★★★)

「美女と野獣」03.jpg美女と野獣 dvd.jpg「美女と野獣」●原題:BEAUTY AND THE BEAST●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ゲーリー・トゥルースデイル/カーク・ワイズ●製作:ドン・ハーン●脚本:リンダ・ウールヴァートン●撮影:ディーン・カンディ●音楽:アラン・メンケン●原作:ジャンヌ・マリー・ルプランス・ド・ボーモン●時間:84分●声の出演:ペイジ・オハラ/ロビー・ベンソン/リチャード・ホワイト/レックス・エヴァーハート/ジェリー・オーバック/アンジェラ・ランズベリー/デイヴィッド・オグデン・スティアーズ●日本公開:1992/09●配給:ブエナ・ビスタ(評価:★★★★)

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1783】 江藤 努/中村 勝則 『映画イヤーブック 1997
「●ロマン・ポランスキー監督作品」の インデックッスへ「●あ行外国映画の監督」の インデックッスへ「●か行外国映画の監督」の インデックッスへ 「●た‐な行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●さ行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●や‐わ行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●や‐わ行の外国映画の監督②」の インデックッスへ「●「ゴールデングローブ賞 外国語映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「テス」)「●フランシス・レイ音楽作品」の インデックッスへ(「レッスンC」)「●エンニオ・モリコーネ音楽作品」の インデックッスへ(「遊星からの物体X」)「●ナスターシャ・キンスキー 出演作品」の インデックッスへ(「キャット・ピープル」「テス」「レッスンC」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「インベーダー」「ロズウェル/星の恋人たち」) 

見ていると眠れなくなってしまいそうな本。美麗本であれば、ファンには垂涎の一冊。

怪奇SF映画大全2.jpg メトロポリス.JPG 1『怪奇SF映画大全』アマゾンの半魚人.jpg
怪奇SF映画大全』(30 x 23 x 2.4 cm) 「メトロポリス」('27年) 「アマゾンの半魚人」('54年)

図説ホラー・シネマ.jpgGraven Images 1992.jpgGraven Images 2.jpg 先に『図説 モンスター―映画の空想生物たち(ふくろうの本)』('07年/河出書房新社)を取り上げましたが、本書(原題"Graven Images" 1992)は怪奇映画だけでなくSFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」であり、「カリガリ博士」「キング・コング」から「吸血鬼ドラキュラ」「2001年宇宙の旅」まで怪奇・SF・ファンタジー映画の歴史をポスターの紹介と併せて解説したまさに永久保存版であり、1910~60年代まで450本の映画及びポスターが紹介されています。
"Graven Images: The Best of Horror, Fantasy, and Science-Fiction Film Art from the Collection of Ronald V. Borst"
 ポスターの紹介点数もさることながら、大型本の利点を生かしてそれらを大きくゆったりと配置しているためかなり見易く、また、迫力のあるものとなっています(表紙にきているのはボリス・カーロフ主演の(「フランケンシュタイン」('31年)ではなく)「ミイラ再生」('32年)のポスター。原著の表紙はロバート・フローリー監督、ベラ・ルゴシ主演の「モルグ街の殺人」('32年))。

 「ふくろうの本」の方が映画そのものの解説が詳しいのに比べ、こちらはポスターそのものを見せることが主で、その余白に映画の解説が入るといった作りになっていますが、それでも解説も丁寧。「10年代と20年代」から「60年代」まで年代ごとの"編年体"の並べ方になっているため、時間的経緯を軸に怪奇SF映画の歴史を辿るのにはいいです。

 更に各章の冒頭に、ロバート・ブロック(「サイコ」の原作者)、レイブラッド・ベリ、ハーラン・エリスン、クライブ・パーカーなどの作家陣が、年代ごとの作品の解説を寄せていますが(序文はスティーヴン・キング)、それぞれエッセイ風の文章でありながら、作品解説としてもかなり突っ込んだものになっています。

「キング・コング」('33年)
kingkong 1933 poster.jpgキング・コング 1933.jpg ポスターに関して言えば、60年代よりも前のものの方がいいものが多いような印象を受けました。個人的には、「キング・コング」('33年)のポスターが見開き4ページにわたり紹介されているのが嬉しく、「『美女と野獣』をフロイト的に改作」したものとの解説にもナルホドと思いました。映画の方は、最近のリメイクのようにすぐにコングが出てくるのではなく、結構ドラマ部分で引っ張っていて、コングが出てくるまでにかなり時間がかかったけれど、これはこれで良かったのでは。当のコングは、ストップ・アニメーションでの動きはぎこちないものであるにも関わらず、観ている不思議と慣れてきて、ティラノサウルスっぽい「暴君竜」との死闘はまるでプロレスを観ているよう(コマ撮りでよくここまでやるなあ)。比較的自然にコングに感情移入してしまいましたが、意外とこの時のコングは小さかったかも...現代的感覚から見るとそう迫力は感じられません。但し、当時は興業的に大成功を収め(ポスターも数多く作られたが、本書によれば、実際の映画の中でのコングの復讐_1.jpgコングの姿を忠実に描いたのは1点[左上]のみとのこと)、その年の内に「コングの復讐」('33年)が作られ(原題は「SON OF KONG(コングの息子)」)公開されました。 「コングの復讐」('33年)[上]

紀元前百万年 ポスター.jpg
紀元前百万年 スチール.jpg 因みに、アメリカやイギリスでは「怪獣映画」よりも「恐竜映画」の方が主に作られたようですが、日本のように着ぐるみではなく、模型を使って1コマ1コマ撮影していく方式で、ハル・ローチ監督、ヴィクター・マチュア、キャロル・ランディス主演の「紀元前百万年」('40年)ではトカゲやワニに作り物の角やヒレをつけて撮る所謂「トカゲ特撮」なんていう方法も用いられましたが、何れにしても動きの不自然さは目立ちます。そもそも恐竜と人類が同じ時代にいるという状況自体が進化の歴史からみてあり得ない話なのですが...。
     
one million years b.c. poster.jpg この作品のリメイク作品が「恐竜100万年」('66年)で、"全身整形美女"などと言われたラクエル・ウェルチが主演でしたが(100万年前なのにラクェル・ウェルチ   .jpgラクェル・ウェルチがバッチリ完璧にハリウッド風のメイキャップをしているのはある種"お約束ごと"か)、やはりここでも模型を使っています。結果的に、ラクエル・ウェルチの今風のメイキャップでありながらも、何となくノスタルジックな印象を受けて、すごく昔の映画のように見えてしまいます(CGの出始めの頃の映画とも言え、なかなか微妙な味わいのある作品?)。

King Kong 02.jpg「キングコング」(1976年)1.jpg「キングコング」(1976年).jpg それが、その10年後の、ジョン・ギラーミン監督のリメイク版「キングコング」('76年)(こちらは邦題タイトル表記に中黒が無い)では、キング・コングの全身像が出てくる殆どのシーンは、リック・ベイカーという特殊メイクアーティストが自らスーツアクターとなって体当たり演技したものであったとのことで、ここにきてアメリカも、「ゴジラ」('54年)以来の日本の怪獣映画の伝統である"着ぐるみ方式"を採り入れたことになります(別資料によれば、実物大のロボット・コング(20メートル)も作られたが、腕や顔の向きを変える程度しか動かせず、結局映画では、コングがイベント会場で檻を破るワンシーンしか使われなかったという)。

フランケンシュタインの花嫁 poster.jpg 「フランケンシュタイン」('31年)や「フランケンシュタインの花嫁」('35年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されていて、本書によれば、ボリス・カーロフは自分の演じる怪物にセリフがあることを不満に思っていたそうな(普通、逆だけどね)。その後も続々とフランシュタイン物のポスターが...。やはり、フランケンシュタインはSFまで含めても怪奇物の王者だなあと。

 40年代では「キャット・ピープル」('42年)や「ミイラ男」シリーズ、50年cat people 1942 poster.jpgthe thing 1951 poster.jpgforbbidden planet 1956 poster.jpg代では「遊星よりの物体X」('51年)「大アマゾンの半魚人」('54年)などのポスターがあるのが楽しく、50年代では日本の「ゴジラ」('54年)のポスターもあれば、「禁断の惑星」('56年)、「宇宙水爆線」('55年)のポスターもそれぞれ見開きで各種紹介されています(50年代の最後にきているのはヒッチコックの「サイコ」('60年)のポスター)。

「キャット・ピープル」('42年)/「遊星よりの物体X」('51年)/「禁断の惑星」('56年)各ポスター

「遊星よりの物体X」('51年)/「遊星からの物体X」('82年)
the thing 1951.jpgthe thing 1982.jpg 「キャット・ピープル」はポール・シュレイダー監督、ナスターシャ・キンスキー主演で同タイトル「キャット・ピープル」('81年)としてリメイクされ(オリジナルは日本では長らく劇場未公開だったが1988年にようやく劇場公開が実現したため、多くの人がリメイク版を先に観たことと思う)、「遊星よりの物体X」は、ジョン・カーペンター監督によりカート・ラッセル主演で「遊星からの物体X」('82年)としてリメイクされています。

「キャット・ピープル」('42年)/「キャット・ピープル」('81年)
cat people 1942 01.jpgcat people 1982.jpg 前者「キャット・ピープル」は、オリジナルでは、猫顔のシモーヌ・シモンが男性とキスするだけで黒豹に変身してしまう主人公を演じていますが、ストッキングを脱ぐシーンとか入浴シーン、プールでの水着シーンなどは当時としてはかなりエロチックな方だったのだろうなあと。実際に黒豹になるナスターシャ「キャット・ピープル」.jpg場面は夢の中で暗示されているのみで、それが主人公の妄想であることを示唆しているのに対し、リメイク版では、ナスターシャ・キンスキーが男性と交わると実際に黒豹に変身します。ナスターシャ・キンスキーの猫女(豹女?)はハマリ役で、後日テス 0.jpg「あの映画では肌を露出する場面が多すぎた」と述懐している通りの内容でもありますが、むしろ構成がイマイチのため、ストーリーがだらだらしている上に分かりにくいのが難点でしょうか。ナスターシャ・キンスキー自身は、「テス」('79年)で"演技開眼"した後の作品であるため、「肌を出し過ぎた」発言に至っているのではないでしょうか。「テス」は、19世紀のイギリスの片田舎を舞台に2人の男の間で揺れ動きながらも愛を貫く女性を描いた、文豪トマス・ハーディの文芸大作をロマン・ポランスキーが忠実に映画化した作品で、ナスターシャ・キンスキーの演技が冴え短く感じた3時間でした(ナスターシャ・キンスキーはこの作品でゴールデングローブ賞新人女優賞を受賞)。一方、「テス」に出る前年にナスターシャ・キンスキーは、スイスの全寮制寄宿学校を舞台に、そこにやって来たアメリカ人少女というレッスンC  poster.jpg「レッスンc」.jpg設定の青春ラブ・コメディ「レッスンC」('78年)に出演していて、そこでは結構「しっかり肌を出して」いたように思います。「レッスンC」は音楽はフランシス・レイでありながらもB級というよりC級映画に近いですが(まあ、フランシス・レイは「続エマニュエル夫人」('75年)といった作品の音楽も手掛けているわけだが)、16歳のナスターシャ・キンスキーのキュートでお茶目なぶりがいやらしさを感じさせず、ある種ガーリームービーとして後にカルト的人気となった作品です。それにつられた訳ではないが、個人的評価も当初×(★★)だったのを△(★★☆)にしました(音楽も今聴くと懐かしい)。

 後者「遊星からの...」はカート・ラッセル主演で、オリジナル「遊星よりの...」の"植物人間"のモチーフを更に"擬態"にまで拡げてアレンジ、犬の顔がバナナの皮が剥けるように割けるシーンや、首を切られて落ちた頭に足が生えてカニのように逃げていくシーンのSFXはスゴかった...。これを観てしまうと、オリジナルはやや大人し過ぎるでしょうか。リメイクの方がむしろジョン・W・キャンベルの原作『影が行く』に忠実な面もあり、オリジナルを超えていたかもしれません。SFXを駆使して逆にオリジナルの良さを損なう作品が多い中、誰が「偽人間」なのかと疑心暗鬼に陥った登場人物らの心理をドラマとして丁寧に描くことで成功しています。エンニオ・モリコーネの音楽も効いていました。

インベーダー1st Season DVD-BOX
インベーダー1st Season DVD-BOX.jpg リメイク版「遊星からの物体X」がオリジナルの「遊星よりの物体X」と大きく異なるのは、あらゆる生物を同化する「物体」の姿を、ありふれたモンスター的なデザインとはせず、動物や人間の姿に置き換えるようにしていることで、「誰が人間ではないのか、自分が獲り込まれたのかすらも分からない緊迫した状況」を生み出している点です。そう言えば、エイリアンが人間に獲りついたり人間の姿を借りているため、一見して普通の人間と見分けがつかないというのは、米国のテレビドラマ「インベーダー」('67年~'68年)年の頃からありました。建築家デビッド・ビンセントは深夜に空飛ぶ円盤が着陸するのを目撃し、宇宙からの侵略者(=インベーダー)の存在を知るが、その事実を誰にも信じてもらえず、ビンセントはインベーダーの陰謀を追って全米各地を飛び回るというもので、テレビドラマ「逃亡者」('68年~'67年)と同じクイン・マーチン・プロダクションの制作。そのためか、妻殺しの濡れ衣を着せられ死刑を宣告された医師リチャード・キンブルが、警察の追跡を逃れながら、真犯人を探し求めて全米を旅するという「逃亡者」とちょっと似ています。ロズウェル dvd.jpg「インベーダー」は日本でも一時ブームになりましたが、米国でのUFOブームに便乗した企画だったのが、ブームが下火になったため2シーズンで終了しています(インベーダーの本当の姿が分からないまま終わった)。インベーダーは外見は地球人と同じだが、手の小指が動かないという設定でした(これじゃ見分けつかないね)。その後、人間の姿をした宇宙人が出てくるドラマは、「ロズウェル/星の恋人たち」('99年~'02年)など幾つか作られました。「ロズウェル」は、普通の高校生たちが、自分たちの特殊な能力に気づき、実は自分たちは宇宙人だったということを知るというもので、恋あり友情ありの青春ドラマにSFの味付けをしたという感じ。NHKで放映されましたが、本国の方で視聴率が伸び悩み、こちらも3シーズンで終了しました(ラストでちらっと彼らの本当の姿が見られる)。

ロズウェル/星の恋人たち シーズン1 (SEASONSコンパクト・ボックス) [DVD]

「インベーダー」(The Invaders) (ABC 1967.01~1968.01) ○日本での放映チャネル:NETテレビ(現テレビ朝日)(1967.10~1970.07)
「ロズウェル/星の恋人たち」(ROSWELL) (The CW 1999.10~2002.05) ○日本での放映チャネル:NHK(2001.05~2002.10)NHK教育テレビ(2003.04~2004.04)


フェイ・レイ.jpg2フェイ・レイ.jpgキング・コング 1976 ジェシカ・ラング.jpg 「キング・コング」('33年)のリメイク、ジョン・ギラーミン監督の「キングコング」('76年)は、オリジナルは、ヒロイン(フェイ・レイ)に一方的に恋したコングが、ヒロインをさらってエンパイアステートビルによじ登り、コングの手の中フェイ・レイは恐怖のあまりただただ絶叫するばかりでしたが(このため、フェイ・レイ"絶叫女優"などと呼ばれた)、King Kong 1976 03.jpgリメイク版のヒロイン(ジェシカ・ラング)は最初こそコングを恐れるものの、途中からコングを慈しむかのように心情が変化し、世界貿易センタービルの屋上でヘリからの銃撃を受けるコングに対して「私といれば狙われないから」と言うまでになるなど、コングといわば"男女間的コミュにケーション"をするようになっています(そうしたセリフ自体は観客に向けての解説か?)。但し、「美女と野獣」のモチーフが、それ自体は「キング・コング」の"正統的"なモチーフであるにしてもここまで前面に出てしまうと、もう怪獣映画ではなくなってしまっている印象も。個人的には懐かしい映画であり、郵便配達は二度ベルを鳴らす 1981.jpg興業的にもアメリカでも日本でも大ヒットしましたが、後に観直してみると、そうしたこともあってイマイチの作品のように思われました。ジェシカ・ラング「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)で一皮むける前の演技であるし...2005年にナオミ・ワッツ主演の再リメイク作品が作られましたが、ナオミ・ワッツもジェシカ・ラング同様、以降の作品において"演技派女優"への転身を遂げています。

 因みに、ボブ・ラフェルソン(1933-2022/89歳没)監督、ジャック・ニコルソン、ジェシカ・ラング主演の「郵便配達は二度ベルを鳴らす」はジェームズ・M・ケインの原作の4度目の映画化作品でしたが(それまでに米・仏・伊で映画化されている)、その中で批評家の評価は最も高く、個人的もルキノ・ヴィスコンティ監督版('42年/伊、出演はマッシモ・ジロッティとクララ・カラマイ)を超えていたように思います。
ジェシカ・ラング in「郵便配達は二度ベルを鳴らす」('81年)

 「蠅男の恐怖」('58年)のリメイク、デヴィッド・クローネンバーグ監督の「ザ・フライ」('86年)などは、原作の"ハエ男"化していく主人公の哀しみをよく描いていたように思われ、こちらはもオリジナル以上と言えるのではないかと思います。ラストは、視覚的には"蠅男"が"蟹男"に見えるのが難点ですが、ドラマ的にはしんみりさせられるものでした。

 見ていると眠れなくなってしまいそうな本であり、ファンには垂涎の一冊と言えますが、絶版中。発売時本体価格6,800円で、古本市場でも美麗本だとそう安くなっていないのではないかな。そこだけが難点でしょうか。

キングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター.jpgキングコング 髑髏島の巨神 日本ポスター2.jpg(●2017年に32歳のジョーダン・ヴォート=ロバーツ監督による「キングコング:髑髏島の巨神」('17年/米)が作られた。シリーズのスピンオフにあたる作品とのことだが、主役はあくまでキングコング。1973年の未知の島髑髏島がキングコング 髑髏島の巨神 01.jpg舞台で、一応、コングが島の守り神であったり、主人公の女性を救ったりと、オリジナルのコングに回帰している(一方で、随所にフランシス・フォード・コッポラ監督の「地獄の黙示録」('79年/米)へのオマージュが見られる)。コングのほかにいろいろな古代生物が出てくるが、コングも含め全部CG。コングはまずまずだが、天敵の大蜥蜴などはアニメっぽかったように思えた(日本のアニメへのオマージュもキングコング 髑髏島の巨神 02.jpg込められているようだ)。ヴォート=ロバーツ監督自らが来日して行われた本作のプレゼンテーションに参加したジョーダン・ヴォート=ロバーツ、樋口真嗣。.jpgシン・ゴジラ」('16年/東宝)の樋口真嗣監督は、本作のコングについて、'33年のオリジナル版キングコングのような人形劇の動きに近く、2005年版で描かれたような巨大なゴリラではなく、どちらかといえばリック・ベイカー(1976年版コングのスーツアクター)っぽいと述べたが、モーション・キャプチャを使っているせいではないか。同じCG主体でも、「ジュラシック・パーク」('93年/米)が登場した時のようなインパクトもなく(もうCG慣れしてしまった?)、その上、サミュエル・L・ジャクソンやオスカー女優のブリー・ラーソンが出ている割にはドラマ部分も弱くて、人間側の主人公が誰なのかはっきりしないのが痛い。)
「キングコング」('76年)/「キングコング:髑髏島の巨神」('17年)
キングコング 新旧.jpg


キング・コング [DVD]
キング・コング 1933 dvd.jpgキング・コング 02.jpg「キング・コング」●原題:KING KONG●制作年:1933年●制作国:アメリカ●監督:メリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサキング・コング(オリジナル).jpgック●製作:マーセル・デルガド●脚本:ジェームス・クリールマン/ルース・ローズ●撮影:エドワード・リンドン/バーノン・L・ウォーカー●音楽:マックス・スタイナー●時間:100分●出演:フェイ・レイ/ロバート・アームストロング/ブルース・キャボット/フランク・ライチャー/サム・ハーディー/ノーブル・ジョンソン●日本公開:1933/09●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★☆)●併映:「紀元前百万年」(ハル・ローチ&ジュニア)

紀元前百万年 dvd.jpg紀元前百万年 dvd.jpg「紀元前百万年」●原題:ONE MILLION B.C.●制作年:1940年●制作国:アメリカ●監督:ハル・ローチ&ジュニア●製作:マーセル・デルガド●脚本:マイケル・ノヴァク/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリーカート●撮影:ノーバート・ブロダイン●音楽:ウェルナー・リヒャルト・ハイマン●時間:80分●出演:ヴィクター・マチュア/キャロル・ランディス/ロン・チェイニー・Jr/ジョン・ハバード/メイモ・クラーク/ジーン・ポーター●日本公開:1951/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(84-06-30)(評価:★★★)●併映:「キング・コング」(ジュニアメリアン・C・クーパー/アーネスト・B・シェードサック) 「紀元前百万年 ONE MILLION B.C. [DVD]

恐竜100万年 [DVD]
恐竜100万年 dvd.jpg恐竜100万年 ラクエル・ウェルチ.jpg「恐竜100万年」●原ラクエルウェルチ71歳.jpg題:ONE MILLION YEARS B.C.●制作年:1966年●制作国:イギリス・アメリカ●監督:ドン・チャフィ●製作:マイケル・カレラス●脚本:ミッケル・ノバック/ジョージ・ベイカー/ジョセフ・フリッカート●撮影:ウィルキー・クーパー●音楽:マリオ・ナシンベーネ●時間:105分●出演:ラクエル・ウェルチ/ジョン・リチャードソン/パーシー・ハーバート/ロバート・ブラウン/マルティーヌ=ベズウィック/ジェーン・ウラドン●日本公開:1967/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:杉本保男氏邸 (81-02-06) (評価:★★★)  Raquel Welch age71

フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
フランケンシュタインの花嫁[DVD]

禁断の惑星 dvd.jpg禁断の惑星 ポスター(東宝).jpg「禁断の惑星」●原題:FORBIDDEN EARTH●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・マクラウド・ウィルコックス●製作:ニコラス・ネイファック●脚本:シリル・ヒューム●撮影:ジョージ・J・フォルシー●音楽:ルイス・アンド・ベベ・バロン●原作:アーヴィング・ブロック/アレン・アドラー「運命の惑星」●時間:98分●出演:ウォルター・ピジョン/アン・フランシス/レスリー・ニールセン/ウォーレン・スティーヴンス/ジャック・ケリー/リチャード・アンダーソン/アール・ホリマン/ジョージ・ウォレス●日本公開:1956/09●配給:MGM●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-04-29)(評価:★★★☆)
禁断の惑星 [DVD]」/パンフレット

宇宙水爆戦 dvd.jpg「宇宙水爆戦」.bmp「宇宙水爆戦」●原題:THIS ISLAND EARTH●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督:ジョセフ・ニューマン●製作:ウィリアム・アランド●脚本:フランクリン・コーエン/エドワード・G・オキャラハン●撮影:クリフォード・スタイン/デビッド・S・ホスリー●音楽:ジョセフ・ガ―シェンソン●原作:レイモンド・F・ジョーンズ●時間:86分●出演:フェイス・ドマーグ/レックス・リーズン/ジェフ・モロー/ラッセル・ジョンソン/ランス・フラー●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ●日本公開:1955/12)●最初に観た場所:新宿・名画座ミラノ(87-05-17)(評価:★★★☆)
宇宙水爆戦 -HDリマスター版- [DVD]

CAT PEOPLE 1942 .jpgキャット・ピープル 1942 DVD.jpg 「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1942年●制作国:アメリカ●監督:ジャック・ターナー●製作:ヴァル・リュウトン●脚本:ドゥィット・ボディーン●撮影:ニコラス・ミュスラカ●音楽:ロイ・ウェッブ●時間:73分●出演:シモーヌ・シモン/ケント・スミス/ジェーン・ランドルフ/トム・コンウェイ/ジャック・ホルト●日本公開:1988/05●配給:IP●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「遊星よりの物体X」(クリスチャン・ナイビー) 「キャット・ピープル [DVD]

シモーヌ・シモン(1910-2005)

シモーヌ・シモン in 「快楽」('52年/仏)監督:マックス・オフュルス 原作:ギ・ド・モーパッサン「モデル」
LE PLAISIR 1952.jpg
        
「キャット・ピープル」●原題:CAT PEOPLE●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ポール・シュレイダー●製作:チャールズ・フライズ●脚本:アラン・オームキャット・ピープル 1982.jpgズビー●撮影:ジョン・ベイリー●音楽:ジョルジキャット・ピープル dvd.jpgキャット・ピープル ポスター.jpgオ・モロダー(主題歌:デヴィッド・ボウイ(作詞・歌)●原作(オリジナル脚本):ドゥイット・ボディーン●時間:118分●出演:ナスターシャ・キンスキー/マルコムジョン・ハード/ アネット・オトウール/ルビー・ディー●日本公開:1982/07●配給:IP●最初に観た場所:新宿(文化?)シネマ2(82-07-18)(評価:★★☆)
キャット・ピープル [DVD]」/チラシ

テス Blu-ray スペシャルエディション
テス  0.jpgテス   00.jpg「テス」●原題:TESS●制作年:1979年●制作国:フランス・イギリス●監督:ロマン・ポランスキー●製作:クロード・ベリ●脚本:ロマン・ポランスキー/ジェラール・ブラッシュ/ジョン・ブラウンジョン●撮影:ギスラン・クロケ/ジェフリー・アンスワース●音楽:フィリップ・サルド●原作:トーマス・ハーディ「ダーバヴィル家のテス」●時間:171分●出演:ナスターシャ・キンスキー/ピーター・ファース/リー・ローソン/ジョン・コリン/デイヴィッド・マーカム/ローズマリー・マーティン/リチャード・ピアソン/キャロリン・ピックルズ/パスカル・ド・ボワッソン●日本公開:1980/10●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:テアトル吉祥寺(81-03-18)(評価:★★★★)

レッスンC [DVD]」 音楽:フランシス・レイ
レッスンC dvd.jpg「レッスンC」●原題:LEIDENSCHAFTLICHE BLUMCHEN/PASSION FLOWER HOTEL●制作年:1977年●制作国:西ドイツ・フランス・アメリカ●監督:アンドレ・ファルワジ●製作:アルツール・ブラウナー●脚本:ポール・ニコラス●撮影:リチャード・スズキ●音楽:フランシス・レイ●原作:ロザリンド・アースキン●時間:171分●出演:ナスターシャ・キンスキー/ゲリー・サンドクイスト/キャロリン・オーナー/マリオン・クラット/ヴェロニク・デルバーグ●日本公開:1982/05●配給:ジョイパックフィルム●最初に観た場所:中野武蔵野館(82-10-03)(評価:★★☆)●併映:「グローイング・アップ3 恋のチューインガム」(ボアズ・デビッドソン)

遊星よりの物体X3.jpg遊星よりの物体X dvd.jpg「遊星よりの物体X」●原題:THE THING●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:クリスチャン・ナイビー●製作:ハワード・ホークス●脚本:チャールズ・レデラー●撮影:ラッセル・ハーラン●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:マーガレット・シェリダン/ケネス・トビー/ロバート・コーンスウェイト/ダグラス・スペンサー/ジェームス・R・ヤング/デウェイ・マーチン/ロバート・ニコルズ/ウィリアム・セルフ/エドゥアルド・フランツ●日本公開:1952/05●配給:RKO●最初に観た場所:千石・三百人劇場(88-05-04)(評価:★★★)●併映:「キャット・ピープル」(ジャック・ターナー)
遊星よりの物体X [DVD]

遊星からの物体X.jpg遊星からの物体Xd.jpg遊星からの物体X dvd.jpg「遊星からの物体X」●原題:THE THING●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・カーペンター●製作:デイヴィッド・フォスター/ローレンス・ターマン/スチュアート・コーエン●脚本:ビル・ランカスター●撮影:ディーン・カンディ●音楽:エンニオ・モリコーネ●原作:ジョン・W・キャンベル「影が行く」●時間:87分●出演:カート・ラッセル/A・ウィルフォード・ブリムリー/リチャード・ダイサート/ドナルド・モファット/T・K・カーター/デイヴィッド・クレノン/キース・デイヴィッド●日本公開:1982/11●配給:ユニヴァーサル=CIC●最初に観た場所:三軒茶屋東映(84-07-22)●2回目:三軒茶屋東映(84-12-22)(評価:★★★★)●併映(1回目):「エイリアン」(リドリー・スコット)●併映(2回目):「ブレードランナー」(リドリー・スコット) 
遊星からの物体X [DVD]
遊星からの物体X(復刻版)(初回限定生産) [DVD]

音楽:エンニオ・モリコーネ
    
King Kong 01.jpgking kong 1976.jpg「キングコング」●原題:KING KONG●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・ギラーミン●製作:ディノ・デ・ラウレンティス●脚本:ロレンツォ・センプル・ジュニア●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●時間:134分●出演:ジェフ・ブリッジス/ジェシカ・ラング/チャールズ・グローディン/ジャック・オハローラン /ジョン・ランドルフ/ルネ・オーベルジョノワ/ジュリアス・ハリス/ジョン・ローン/ジョン・エイガー/コービン・バーンセン/エド・ローター ●日本公開:1976/12●配給:東宝東和●最初に観た場所:新宿プラザ劇場(77-01-04)(評価:★★★)

郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD].jpg郵便配達は二度ベルを鳴らす br.jpg「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●原題:THE POSTNAN ALWAYS RINGS TWICE●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ボブ・ラフェルソン●製作:チャールズ・マルヴェヒル/ ボブ・ラフェルソン●脚本:デヴィッド・マメット●撮影:スヴェン・ニクヴィスト●音楽:マイケル・スモール●原作:ジェイムズ・M・ケイン「郵便配達は二度ベルを鳴らす」●時間:123分●出演:ジャック・ニコルソン/ジェシカ・ラング/ジョン・コリコス/マイケル・ラーナー/ジョン・P・ライアン/ アンジェリカ・ヒューストン/ウィリアム・トレイラー●日本公開:1981/12●配給:日本ヘラルド●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07)●2回目:自由ヶ丘・自由劇場 (84-09-15)(評価★★★★)●併映:(1回目)「白いドレスの女」(ローレンス・カスダン(原作:ジェイムズ・M・ケイン))●併映:(2回目)「ヘカテ」(ダニエル・シュミット)
郵便配達は二度ベルを鳴らす [DVD]」「郵便配達は二度ベルを鳴らす [Blu-ray]

ザ・フライ dvd.jpg「ザ・フライ」●原題:THE FLY●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督・脚本:デヴィッド・クローネンバーグ●製作:スチュアート・コーンフェルド●撮影:マーク・アーウィン●音楽:ハワード・ショア●原作:ジョルジュ・ランジュラン「蠅」●時間:87分●出演:ジェフ・ゴールドブラム/ジーナ・デイヴィス/ジョン・ゲッツ/ジョイ・ブーシェル●日本公開:1987/01●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:大井武蔵野舘 (87-07-19)(評価★★★★)●併映:「未来世紀ブラジル」(テリー・ギリアム)
ザ・フライ <特別編> [DVD]

キングコング 髑髏島の巨神24.jpgキングコング 髑髏島の巨神es.jpgキングコング 髑髏島の巨神 海外.jpg「キングコング:髑髏島の巨神」●原題:KONG:SKULL ISLAND●制作年:2017年●制作国:アメリカ●監督:ジョーダン・ヴォート=ロバーツ●脚本:ダン・ギルロイ/マックス・ボレンスタイン/デレク・コノリー●原案:ジョン・ゲイティンズ/ダン・ギルロイ●製作:トーマス・タル/ジョン・ジャシュー/アレックス・ガルシア/メアリー・ペアレント●撮影:ラリー・フォン●音楽:ヘンリー・ジャックマン●時間:118分●出演:トム・ヒドルストン/キングコング髑髏島の巨神ド.jpgブリー・ラーソン キング・コング.jpgサミュエル・L・ジャクソン/ジョン・グッドマン/ブリー・ラーソン/ジン・ティエン/トビー・ケベル/ジョン・オーティス/コーリー・ホーキンズ/ジェイソン・ミッチェル/シェー・ウィガム/トーマス・マン/テリー・ノタリー/ジョン・C・ライリー●日本公開:2017/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:OSシネマズ ミント神戸 (17-03-29)(評価★★☆)
旧神戸新聞会館9.jpgミント神戸6.jpgミント神戸.jpgOSシネマズ ミント神戸 神戸三宮・ミント神戸(正式名称「神戸新聞会館」。阪神・淡路大震災で全壊した旧・神戸新聞会館跡地に2006年10月完成)9F~12F。全8スクリーン総座席数1,631席。

阪神・淡路大震災で廃墟と化した旧・神戸新聞会館(1995.2.3大木本美通氏撮影)

Raquel Welch
Raquel Welch RPT 0005.jpgRaquel Welch RPT.jpgRaquel Welch RPT 0006.jpg




 
 
 
  
《読書MEMO》
●主な収録作品
【10~20年代】エッセイ=ロバート・ブロック
カリガリ博士/吸血鬼ノスフェラトゥ/巨人ゴーレム/ロスト・ワールド/猫とカナリヤ/メトロポリス/狂へる悪魔/ダンテ地獄篇/バット/オペラの怪人/真夜中すぎのロンドン/プラーグの大学生/他
【30年代】エッセイ=レイ・ブラッドベリ
魔人ドラキュラ/フランケンシュタイン/フランケンシュタインの花嫁/透明人間/モルグ街の殺人/悪魔スヴェンガリ/M/怪人マブゼ博士/倫敦の人狼/猟奇島/恐怖城/怪物団/肉の蝋人形/キング・コング/オズの魔法使/ミイラ再生/獣人島/バスカヴィル家の犬/他
【40年代】エッセイ=ハーラン・エリスン
狼男の殺人/バグダッドの盗賊/猿人ジョー・ヤング/キャット・ピープル/ミイラの復活/謎の下宿人/スーパーマン/夢の中の恐怖/凸凹フランケンシュタインの巻/美女と野獣/バッタ君町に行く/死体を売る男/猿の怪人/他
【50年代】エッセイ=ピーター・ストラウブ
遊星よりの物体X/地球最後の日/宇宙戦争/大アマゾンの半魚人/原子怪獣現わる/ゴジラ/放射能X/タランチュラの襲撃/禁断の惑星/宇宙水爆戦/海底二万哩/蠅男の恐怖/吸血鬼ドラキュラ/ミイラの幽霊/狩人の夜/空の大怪獣ラドン/ボディ・スナッチャー 恐怖の街/シンドバッド7回目の航海/戦慄!プルトニウム人間/他
【60年代】エッセイ=クライヴ・パーカー
サイコ/血だらけの惨劇/ローズマリーの赤ちゃん/忍者と悪女/血塗られた墓標/吸血狼男/テラー博士の恐怖/ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド/タイム・マシン/恐竜100万年/猿の惑星/2001年宇宙の旅/怪談/鳥/何がジェーンに起ったか?/華氏451/バーバレラ/博士の異常な愛情/ミクロの決死圏/血の祝祭日/他

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見てるだけで楽しい。圧倒的に多いフランケンシュタイン物。パロディ映画にも楽しいものが。

図説ホラー・シネマ.jpg  図説 ホラー・シネマ2.jpg      怪奇SF映画大全.jpg
図説 ホラー・シネマ―銀幕の怪奇と幻想 (ふくろうの本)』('01年/河出書房新社、123ページ(21.4x16.4x1.2cm)) 『怪奇SF映画大全』('97年/国書刊行会、239ぺージ(30x23x2.4cm))
フランケンシュタイン dvd.jpg フランケンシュタインの花嫁 dvd.jpg ヤング・フランケンシュタイン.gif ノスフェラトゥ dvd.jpg ドラキュラ都へ行く dvd.jpg 5時30分の目撃者 vhs 5.jpg
フランケンシュタイン[DVD]」「フランケンシュタインの花嫁[DVD]」「ヤング・フランケンシュタイン〈特別編〉 [DVD]」「ノスフェラトゥ [DVD]」「ドラキュラ都へ行く[VHS]」「特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」
下右ページはトッド・ブラウニング 監督、ベラ・ルゴシ主演「魔人ドラキュラ」('31年/米)のポスター
IMG_20220204_052826.jpg 同著者による『図説 モンスター―映画の空想生物たち』('01年/河出書房新社)に続くシリーズ第2段で、草創期(サイレント時代~1930年代)、繁栄と低迷(1940~1950年代)、復興と世代交代(1960年代以降)という流れで、各時代の名作を紹介、製作にまつわる裏話やエピソードなども交え解説しています。

 何よりもポスターやスチール写真が豊富で、よくこれだけ揃えたなあと。見ているだけで楽しく、表紙には「狼男」がきていますが、圧倒的に多いのはフランケンシュタインもので、次にドラキュラものがきて、狼男は3番目といったところでしょうか。映画会社IMG_20220204_134630.jpgでみると、戦前はボリス・カーロフ、ベラ・ルゴシ(上右)をホラー・スターに育てたユニヴァーサル、戦後はピーター・カッシングとクリストファー・リー(右上)をホラー・キングに育てたハマー・プロが中心なっています。

 それにしても、こんなにも多くのフランケンシュタイン映画、ドラキュラ映画が作られてきたのかと改めて驚かされ、そうした数多くの作品群の中でも、フランケンシュタイン映画に占めるボリス・カーロフと、ドラキュラ映画に占めるクリストファー・リーの重みは、それぞれの活躍した時代は異なるものの、圧倒的であるように思いました。

フランケンシュタイン (光文社古典新訳文庫)2010.jpg イギリスの詩人シェリーの夫人メアリー・シェリー(1797-1851)原作の『フランケンシュタイン』は、文学史上でも最もよく知られた作品でありながら、原作は殆ど読まれていないということでも有名な作品ですが、「フランケンシュタイン」は怪物(クリーチャー)の名前ではなく、怪物を生み出したマッド・サイエンティストの名前です。

フランケンシュタイン 1931 ポスター.pngフランケンシュタイン 1931 01.jpg 現代のホラー映画をすっかり観慣れてしまうと、ジェームズ・ホエール(1889-1957)監督、ボリス・カーロフ主演の「フランケンシュタイン(FRANKENSTEIN)」('31年/米)に出てくる怪物も、漫画「怪物くん」のフランケンのようにどこか可愛いかったりもし、湖のほとりで少女と触れ合うシーンは、ビクトル・セリエ監督の「ミツバチのささやき」('73年/スペイン)でも、主人公の少年が観る映画の1シーンで使われました。

「フランケンシュタインの花嫁」.jpg   FRANKENSTEIN and old man.jpg フランケンシュタインの花嫁 1935 01.jpg
 本編で風車小屋に追い詰められて焼き殺された怪物を復活させて作った続編の「フランケンシュタインの花嫁」('35年)は、本編以上に面白くてBride of Frankenstein _.jpg笑えますが、但し、ラストは異性(と言っても、かなりキツイ感じの女フランケンシュタインなのだが)に愛されない男の悲哀を表していて、しんみりさせられます(これ、傑作)。因みに、監督のジェームズ・ホエールは、自らが同性愛者であることを早くから公表していました(女性嫌いだった?)。Bride of Frankenstein (1935)

 フランケンシュタイン映画では、フランシス・フォード・コッポラが「ドラキュラ」('92年/米、ドラキュラ伯爵役はゲイリー・オールドマン。石岡瑛子がこの作品でアカデミー賞衣裳デザイン賞を受賞)に続きフランケンシュタイン (1994年).jpg製作した、ケネス・ブラナー監督の「フランケンシュタイン」('94年/英・日・米)などもありましたが、フランケンシュタイン (1994年) dvd.jpgロバート・デ・ニーロが演じたクリーチャー(被造物)は、見かけは醜怪だけれど心性的には子どものようであるという設定でした(フランシス・フォード・コッポラは妖怪好きなのか? 一方のケネス・ブラナーの方は、この作品ではヴィクター・フランケンシュタイン博士役での主演も兼ねている)。クリーチャーが元々はセンシティブで知的な存在として描かれているなど、原作に忠実に作られているようですが、原作って結構混み入ったスト-リーだったのだなあと。2時間で収まりきらず、個人的には消化不良感あり。更にデ・ニーロのメイクに懲りすぎて、単なるホラー映画になってしまった印象も。「フランケンシュタイン Hi-Bit Edition [DVD]

YOUNG%20FRANKENSTEN2.jpgメル・ブルックス『ヤング・フランケンシュタイン』(1974).jpg フランケンシュタインのパロディ映画では、メル・ブルックス(1926- )監督のヤング・フランケンシュタイン」('74年/米)が通好みのコメディであり、ギョロ目の怪優マーティー・フェルドYOUNG FRANKENSTEIN.jpgマン(せむし男)やピーター・ボイル(怪物)など、脇役がいいです。オリジナルの「フランケンシュタインの花嫁」にも出てくる山小屋に住む盲目の老人役はジーン・ハックマン、ラストに小さくクレジットされていました。

「ヤング・フランケンシュタイン」マーティ・フェルドマン/ジーン・ワイルダー/テリー・ガー
  
ヘルツォーク「ノスフェラトゥ」1.jpgヘルツォーク「ノスフェラトゥ」2.jpg ドラキュラ映画の古典的作品で劇場で観たものは記憶にありませんが、70年代の作品でヴェルナー・ヘルツォーク監督の「ノスフェラトゥ」('79年/西独)は、フリードリッヒ・ヴィルヘルム・ムルナウ監督の吸血鬼映画の古典的作品「吸血鬼ノスフェラトゥ(不死人)」('22年/独、無声映画)のリメイク作品であり、「アギーレ/神の怒り」('72年/西独)などヘルツォーク作品でお馴染みの怪優クラウス・キンスキーが主人公のドラキュラ伯爵を演じていました。
ノスフェラトゥ [DVD]

吸血鬼ドラキュラ (角川文庫).jpg ムルナウは、ブラム・ストーカーの小説『吸血鬼ドラキュラ』を原作に映画化するつもりが映画化権を得られず、それで「ドラキュラ伯爵」を「オルロック伯爵」に変えて19世紀初頭のドイツの小都市に吸血鬼が出現するという設定にし、その容貌も禿頭の特異なものとしたわけですが、イザベル・アジャーニ.jpgヘルツォーク/キンスキー版は、「ドラキュラ伯爵」に戻しながらも設定はムルナウ版を踏襲。全体として透明感のある映像で、ペストで住民が死滅した村の描写などは絶妙でしたが、それら以上に、クラウス・キンスキーの怪演ぶり、「キモさ」が際立っていた印象です(彼に噛まれる女性役は美貌のイザベル・アジャーニ。トリュフォーの「アデルの恋の物語」('75年/仏)で知られるフランスの人気女優だが、この作品でドイツ語で話しているのは、父親がアルジェリア人であるのに対し、母親はドイツ人であるため。「ノスフェラトゥ」の前年作のウォルター・ヒル監督のアクション映画「ザ・ドライバー」('78年/米)でみせたように英語も堪能)。

ドラキュラ都へ行く  映画宝庫.jpgドラキュラ都へ行く02.jpg ドラキュラのパロディでは(クリストファー・リーが「エアポート'77/バミューダからの脱出」('77年/米)で土左衛門姿で出てきた際に見せていた苦悶の表情も、ドラキュラのパロディと言えばパロディだったけれど)、たまたま「ノスフェラトゥ」と同じ年に作られたもので、本書にも紹介されている「ドラキュラ都へ行く」('79年/米、原題:Love at First Bite)という5時30分の目撃者.jpgジョージ・ハミルトンが主演し製作総指揮もした作品もありました(ジョージ・ハミルトンは「刑事コロンボ」の第31話「5時30分の目撃者」('75年)で犯人の精神分析医役を演じていた二枚目俳優で、ハリウッド社交界でもプレイボーイで鳴らした彼らしく、愛人が絡むエピソードだが、計画殺人ではなく衝動殺人になっているのがややプロット的には弱点か。ハミルトンは、「刑事コロンボ」の新シリーズ(通算第57話)「犯罪警報」('91年)でも人気テレビ番組のホストである犯人役を演じた)。
 「ドラキュラ都へ行く」という邦題タイトルは、フランク・キャップラの「スミス都へ行く」をもじったものですが、内容は無関係。楽屋ネタのギャグ満載の身内で楽しみながら作った感じの映画で、一緒に観に行った外国人女性にはすごく受けていましたが、字幕頼りの自分にとっては残念ながらさほどでも(映画字幕はセリフが相当端折られていたように思うが、DVD化はされていないようだ)。

 SFホラーまで領域を拡げた「映画ポスター+解説集」では、ロナルド・V・ボーストの怪奇SF映画大全('97年/国書刊行会)という大型本があり、こちらは本書よりも更にポスター中心であるため、これも見て楽しめます。


FRANKENSTEIN 1931 poster.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1931年●制作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:アーサー・エジソン●音楽:バーンハルド・カウン●原作:メアリー・シェリーFRANKENSTEIN 1931.jpg●時間:71分●出演:コリン・クライヴ/ボリス・カーロフ/メイ・クラークメイ・クラーク.jpgエドワード・ヴァン・スローン/ドワイト・フライ/ジョン・ポールズ/フレデリック・カー/ライオネル・ベルモア●日本公開:1932/04●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★☆)●併映:「フランケンシュタインの花嫁」(ジェイムズ・ホエール)
メイ・クラーク

BRIDE OF FRANKENSTEIN2.jpg「フランケンシュタインの花嫁」●原題:BRIDE OF FRANKENSTEIN●制作年:1935年●制フランケンシュタインの花嫁 1935 poster.jpg作国:アメリカ●監督:ジェイムズ・ホエール●製作:カール・レームル・Jr●脚本:ギャレット・フォート/ロバート・フローリー/フランシス・エドワード・ファラゴー●撮影:ジョン・J・メスコール●音楽:フランツ・ワックスマン●時間:75分●出演:ボリス・カーロフ/エルザ・ランチェスター/コリン・クライヴ/アーネスト・セシガー●日本公開:1935/07●配給:ユニヴァーサル映画●最初に観た場所:渋谷ユーロ・スペース (84-07-21)(評価:★★★★)●併映:「フランケンシュタイン」(ジェイムズ・ホエール)
「フランケンシュタインの花嫁」公開時ポスター。「カーロフ」の苗字が冠のように載っている。(本書より)

FRANKENSTEIN 1994 2.jpgFRANKENSTEIN 1994.jpg「フランケンシュタイン」●原題:FRANKENSTEIN●制作年:1994年●制作国:イギリス・日本・アメリカ●監督:ケネス・ブラナー●製作:フランシス・フォード・コッポラ/ジェームズ・V・ハート/ジョン・ヴィーチ/ケネス・ブラナー/デビッド・パーフィット●脚本:ステフ・レイディ/フランク・ダラボン●撮影:ロジャー・プラット●音楽パトリック・ドイル●原作:メアリー・シェリー●時間:123分●出演:ロバート・デ・ニーロ/ケネス・ブラナー/トム・ハルス/ヘレナ・ボナム=カーター/エイダン・クイン/イアン・ホルム/ジョン・クリーズ/シェリー・ルンギ/リチャード・ブライアーズ/アレックス・ロー●日本公開:1995/01●配給:トライスター・ピクチャーズ(評価:★★★)

ジーン・ワイルダー/マデリン・カーン
「ヤング・フランケンシュタイン」マデリンカーン.jpg「ヤング・フランケンシュタイン」2.jpgヤング・フランケンシュタイン.gif「ヤング・フランケンシュタイン」●原題:YOUNG FRANKENSTEN●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:メル・ブルックス●製作:マイケル・グラスコフ●脚本:ジーン・ワイルダー/メル・ブルックス●撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド●音楽:ジョン・モリス●原作:メアリー・シェリイ●時間:108分●出演:ジーン・ワイルダー/ピーター・ボイル/マーティ・フェルドマン/テリー・ガー/マデリーン・カーン/ジーン・ハックマン●日本公開:1975/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール (78-12-14) (評価:★★★★)●併映:「サイレントムービー」(メル・ブルックス)

「ノスフェラトゥ」2.jpg「ノスフェラトゥ」01.jpg「ノスフェラトゥ」●原題:NOSTERTU. PHANTOM DER NACHT●制作年:1979年●制作国:西ドイツ●監督・脚本・製作:ヴェルナー・ヘルツォーク●撮影:イェルク・シュミット=ライトヴァノスフェラトゥ(1978)[A4判].jpgイン●音楽:ポポル・ヴー●時間:107分●出演:クラウス・キンスキー/イザベル・アジャーニ/ブルーノ・ガンツ/ロラント・トーポー/ワルター・ラーデンガスト/ダン・ヴァン・ハッセン/ヤン・グロート/カールステン・ボディヌス●日本公開:1984/10●配給:ドイツ文化センター●最初に観た場ドイツ文化センター 青山.jpgドイツ文化センター 2.jpg所:青山・ドイツ文化センター(84-10-07)(評価:★★★☆)●併映:「ヴォイツェック」「カスパーハウザーの謎」(ヴェルナー・ヘルツォーク) 「映画パンフレット ノスフェラトゥ(1978作品) 発行:㈱パルコ(A4) 監督:ヴェルナー・ヘルツォーク 出演:イザベル・アジャーニ

ドイツ文化センター 1962年、青山通り付近にオープン

ドラキュラ都へ行く01.jpg「ドラキュラ都へ行く」●原LOVE AT FIRST BITE.jpg題:LOVE AT FIRST BITE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:スタン・ドラゴッティ●製作・脚本:ロバート・カウフマン●撮影:エドワード・ロッソン●音楽チャールズ・バーンスタイン●時間:96分●出演:ジョージ・ハミルトン/スーザン・セント・ジェームズ/ディック・ショーン/アート・ジョンソン/リチャード・ベンジャミン/シャーマン・ヘムズリー●日本公開:1979/12●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:日比谷・みゆき座(79-12-15)(評価:★★★)

5時30分の目撃者 vhs.jpg刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者.jpg「刑事コロンボ(第31話)/5時30分の目撃者」●原題:A DEADLY STATE OF MIND●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:ハーベイ・ハート●製作:エヴァレット・チェンバース●脚本:ピーター・S・フィッシャー●ストーリー監修:ピーター・S・フィッシャー●音楽:バーナード・セイガル●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ジョージ・ハミルトン/レスリー・ウォーレン/スティーブン・エリオット/カレン・マックホン/ブルース・カービー/ライアン・マクドナルド/ジャック・マニング/フレッド・ドレイパー/ウィリアム・ウィンターソウル/ヴァンス・デイヴィス/レッドモンド・グリーソン/グローリー・カウフマン●日本公開:1976/12●放送:NHK(評価:★★★☆)特選 刑事コロンボ 完全版「5時30分の目撃者」【日本語吹替版】 [VHS]

《読書MEMO》
是枝裕和監督の選んだオールタイムベスト10["Sight & Sound"誌・映画監督による選出トップ10 (Director's Top 10 Films)(2012年版)]
 ●ラルジャン(ロベール・ブレッソン)
 ●恋恋風塵(ホウ・シャオシェン)
 ●浮雲(成瀬巳喜男)
 ●フランケンシュタイン(ジェームズ・ホエール)
 ●ケス(ケン・ローチ)
 ●旅芸人の記録(テオ・アンゲロプロス)
 ●カビリアの夜(フェデリコ・フェリーニ)
 ●シークレット・サンシャイン(イ・チャンドン)
 ●シェルブールの雨傘(ジャック・ドゥミ)
 ●こわれゆく女(ジョン・カサヴェテス)

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映画と日付との関連はやや強引。それにこだわらず、単に作品解説としてならば楽しめる。

1ビデオが大好き.pngブラザー・サン シスター・ムーン チラシ.jpg ブラザー・サン シスター・ムーン パンフレット.jpg ロミオとジュリエットp.jpg
ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー (文春文庫―ビジュアル版)』「映画チラシ「ブラザー・サン シスター・ムーン」」「映画パンフレット「ブラザー・サン シスター・ムーン」」/「ロミオとジュリエット」

 洋画の名作・傑作を1年間の日付や季節と関連付けてカレンダーに沿って1月から12月まで紹介し、ビデオ観賞に利用してもらおうという試みで、発想はなかなか面白いと言うか"風流"と言うか...。ただ、編集する側も、企画を思いついてこれはいいと思ったものの、それなりの名作を取り上げることを前提にそれをやってみたら結構たいへんだったというのが本音ではないでしょうか。すべてを1年間365日に1日ずつ関連づけようとすると、映画そのものより付随するエピソードの方を日付と結びつけたりすることにもなりがちで、やや強引な面もあるように思いました(「モダン・タイムス」('36年/米)が2月5日にきているのは米国での公開が1936年2月5日だったからとか、「ゴジラ(海外版)」('56年/東宝)が11月3日にきているのはの日本での公開が1956年11月3日だったからとか)。

バングラデシュ・コンサート ボブ・ディラン  2.jpg 「バングラデシュ・コンサート」 ('71年/米)が8月1日にきてい狼たちの午後2.jpgるのは実際コンサートがあったのが1971年8月1日であったからとか、「狼たちの午後」('75年/米)が8月22日にきているのは1972年8月22日にニューヨークのブルックリン区で発生した銀行強盗事件を題材にしているから、「荒野の決闘」('47年/米)が10月26日にきているのはOK牧場の決闘が1881年10月26日にあったから、などというのはいいとして、例えば「スタア誕生」('55年/米)が3月26日にきているのは3月下旬がアカデミー賞授賞式シーズンであるからとか、「エデンの東」('55年/米)が4月6日にきているのは、死んだと思ったEast of Eden.jpg母親の実像を弟キャル(ジェームズ・ディーン)により無理矢理知ることになったアーロンが捨て鉢になって徴太陽はひとりぼっちs2.jpg兵に応じた第一次世界大戦にアメリカが参戦した日であるからとか、アニメ「不思議な国のアリス」('53年/米)が4月15日になっているのは東京ディズニーランドの開園日が1983年4月15日だからとか、「太陽はひとりぼっち」('62年/伊・仏)(原題「日蝕」)が8月3日にきているのは、次の日蝕が見られるのは2017年8月であるからとか―。

ベニスに死す 3.jpg 当てモノをするような楽しみも無きにしも非ずですが、むしろ、解説の一つ一つがカレンダーの「日付」に厳密に関連づけるというよりも、そのポセイドン・アドベンチャーsb.jpg「季節」や(「ベニスに死す」('71年/伊・仏)が8月12日にきているのは1911年の夏のヴェネツィアが舞台であるからとか。原作でも日付は特定されていない)、乃至は「時期」「時間」に関係づけているものも多くあるように思いました。結果として、その映画の名場面が想起されたりし、その点が本書のいいところなのかもしれません。1月2日ある愛の詩022.jpgのところにある「ポセイドン・アドベンチャー」('72年/米)はニューイヤーを迎えた日から1月5日までの出来事だったのだなあとか(思っていたより長丁場だった)、「ある愛の詩」('72年/米)でオリバー(ライアン・オニール)とジアパートの鍵貸します1.bmpェニー(アリ・マックグロー)の二人がセントラル・パークに行ったのは1月4日だったのかあとか(その2週間後にジェニーは白血病で亡くなる)。1月13日のところにある「アパートの鍵貸します」('60年/米)は、1959年11月1日に話が始まり、翌年の1月中旬にバクスター(ジャック・レモン)とフラン(シャーリー・マクレーン)が結ばれるという約3カ月の恋の物語だったのだなあとか、その「特定の日」と言うよりも、映画内の時間感覚を改めて感じることができたりしました。

 よく知られている作品、映画ファンなら外せない名作を多く選んでいるのもそうした狙いがあるのではないかと思います。タイトルからも窺えるように、当時ビデオで鑑賞可能であることが取り上げる前提となっていますが、名作・傑作揃いであるため、今はほとんどDVD化されているように思われます(中には例外もあるかもしれないが)。

BROTHER SUN SISTER MOON poster.jpg 四季ごとに4人の映画評論家が、それぞれの季節に関連する映画への自らの思いを寄せていて、「春」のところで北川れい子氏が「エデンの東」などの幾つかの作品を取り上げる中で(要するに「青春」の「春」というわけだ)、"春、青春、男の子"の極めつけけとしてフランコ・ゼフィレリレッリ監督が、13世紀イタリアの、最もキリストに近い聖人だったと言われる聖フランチェスコの青春時代を描いた「ブラザー・サン シスター・ムーン」('72年/英・伊)を取り上げていましたが(作品中のも厳しい冬のシーズンから雪解けの春に移る季節の転換場面がある)、映像も音楽も美しい映画だったと思います。

ブラザー・サン シスター・ムーン o1.jpg この作品で一番目を引くのは、主演のグレアム・フォークナーのフランチェスコへの「なり切り感」であり、フランコ・ゼフィレリレッリ監督は、「ロミオとジュリエット」('68年/英・伊)でもまだ16歳だったオリビア・ハッセーを上手く使っているし(この作品公開後のオリビア・ハッセーの日本での人気の高騰ぶりはスゴかっTHE CHAMP22.jpgた)、「チャンプ」('79年/米)では子役リッキー・シュローダーに世間をして「天才」と言わしめるほどの演技をさせていますが、結局、これら全て監督の演出力だったのだろうなあ。改めてその力量を感じます。因みに、本書で「チャンプ」が6月22日にきているわけは、大体この頃が「父の日」(6月の第3日曜)に当たるからとのことです。
    
ブラザー・サン シスター・ムーン dvd.jpgBROTHER SUN SISTER MOON1.jpg「ブラザー・サン シスター・ムーン」●原題:BROTHER SUN SISTER MOON●制作年:1972年●制作国:イギリス・イタリア●監督:フランコ・ゼフィレッリ●脚本:フランコ・ゼフィレッリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/ケネス・ロス/リナ・ウェルトミューラー●撮影:エンニオ・グァルニエリ●音楽:ドノヴァン●時間:135分●出演:グレアム・フォークナー/ジュディ・バウカー/リー・ローソン/アレック・ギネス/ヴァレンティナ・コルテーゼ/アドルフォ・チェリ●日本公開:1973/06●配給:パラマウント=CIC●最初に観た場所:中野武蔵野館 (77-10-29)●2回目:中野武蔵野館 (77-10-29)(評価:★★★★)●併映:「ジーザス・クライスト・スーパースター」(ジノーマン・ジュイスン)
ブラザー・サン シスター・ムーン [DVD]

「ロミオとジュリエット」.jpg「ロミオとジュリエット」●原題:ROMEO AND JULIET●制作年:1968年●制作国:イギリス・イタリア●監督:フランコ・ゼフィレッリ●製作:ジョン・ブレイボーン/アンソニー・ヘイヴロック=アラン●脚本:フランコ・ゼフィレッリ/フランコ・ブルサーティ/マソリーノ・ダミコオリビア・ハッセー.jpg●撮影:パスクァリーノ・デ・サンティス●音楽:ニーノ・ロータ(歌:グレン・ウェストン)●時間:138分●出演:レナード・ホワイティング/オリヴィア・ハッセー/マイケル・ヨーク/Olivia Hussey RPT.jpg場所:三鷹オスカー (81-03-15)(評価:★★★☆)●併映:「ハムレット」(ローレンス・オリヴィエジョン・マケナリー/ミロ・オーシャ/パット・ヘイウッド/ロバート・スティーヴンス/ブルース・ロビンソン/ポール・ハードウィック/ナターシャ・パリー/アントニオ・ピエルフェデリチ/エスメラルダ・ルスポーリ/ロベルト・ビサッコ/(ナレーション)ローレンス・オリヴィエ●原作:ウィリアム・シェイクスピア●日本公開:1968/11●配給:パラマウント映画●最初に観た)/「マクベス」(ロマン・ポランスキー)  Olivia Hussey(オリヴィア・ハッセー)

「Romeo and Juliet(ロミオとジュリエット)」(1968年)
theme music:「What Is A Youth」
作曲:Nino Rota(ニーノ・ロータ


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'97年は「もののけ姫」ヒットの年。宮崎駿監督のお陰で映画産業界は底を脱した?
  
映画イヤーブック 1998.jpg もののけ姫 1997 dvd.jpg もののけ姫 0.jpg となりのトトロ dvdes.jpg
映画イヤーブック (1998) (現代教養文庫)』「もののけ姫 [DVD]」「となりのトトロ [DVD]」('88年/東宝)

映画イヤーブック.JPG 1997年の劇場公開作品、洋画344本、邦画191本の計535本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅、このシリーズは8冊目となり、巻末に'91年版から'98年版までの全巻を通しての索引が付いていますが、結局このシリーズはその後刊行されることなく、2000年代に入って版元の社会思想社は倒産しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「シャイン」「イングリッシュ・ペイシェント」「浮き雲」「コンタクト」「世界中にアイ・ラブ・ユー」「タイタニック」の6作品、邦画は、「うなぎ」(今村昌平監督)、「もののけ姫」(宮崎駿監督)、「バウンズ ko GALS」(原田眞人監督)、「ラヂオの時間」(三谷幸喜監督)の4作品。

 トム・クルーズ主演の「ザ・エージェント」('96年)やブルース・ウィリス主演の「フィフス・エレメント」('97年)、ハリソン・フォード主演の「エアフォース・ワン」('97年)、トミー・リー・ジョーンズ主演の「メン・イン・ブラック」('97年)と、ハリウッド・スター映画もそれなりに頑張っていたけれど(本書評価は何れも「三つ星」)、この頃からビデオ化されるサイクルがどんどん早くなってきたので、個人的にもこうした作品はビデオで観てしまうことが多くなりました。

もののけ姫.jpg 世間一般でもこうした「ビデオで観る」派が増えて、'96年の映画館の入場者数が1億1,957万人と史上最低だったわけですが、翌年は、この年'97年7月公開の「もののけ姫」('97年/東宝)のヒットを受けて、邦画の映画館入場者数は前年比2千万人増、さらに12月公開のジェームズ・キャメロン監督の「タイタニック」('97年)のヒットが、翌年の洋画の映画館入場者数を前年比2千万人以上押し上げ、映画業界は何とか底を脱したかたちになりました。

 ちなみに、'90年から'98年までの年度別映画興行成績(配給収入)ベストワンは、  
  1990年 「バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2」 (UIP) 55.3億円  
  1991年 「ターミネーター2」(東宝東和) 57.5億円   
  1992年 「紅の豚 」(東宝) 28億円   
  1993年 「ジュラシック・パーク」 (UIP) 83億円   
  1994年 「クリフハンガー」 (東宝東和) 40億円  
  1995年 「ダイ・ハード3」 (20世紀フォックス) 48億円   
  1996年 「ミッション:インポッシブル」 (UIP) 36億円  
  1997年 「もののけ姫」 (東宝) 113億円
  1998年 「タイタニック」 (20世紀フォックス) 160億円
となっています。
Sen to Chihiro no kamikakushi (2001)
Sen to Chihiro no kamikakushi (2001).jpg 2001年には宮崎駿監督の「千と千尋の神隠し」が304億円、2003年には「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」が173.5億円、2004年には宮崎駿監督の「ハウルの動く城」が196億円、2008年には同じく宮崎駿監督の「崖の上のポニョ」が155億円、2010年にはジェームズ・キャメロン監督の「アバター」が156億円と、それぞれ年間で150億円以上の興行成績を打ち立てていますが、この(社)日本映画製作者連盟による統計のとり方は、90年代までは「配給収入」をみていたのが、2000年以降は海外(米国)の基準に沿って「配給収入」ではなく「興行収入」でみています

 「興行収入」は映画館の入場料の総和そのもので、「配給収入」はそこから映画館(興行側)の取り分を差し引いた、配給会社の収益ですので、「興行収入」の方が「配給収入」よりも数字は大きくなり(配給収入=興行収入×50~60%、洋画メジャー大作の場合は×70%)、2000年代に入り、数字上は100億円超の"興行成績"を収める映画が出やすくなっているというのもあります。

 そうした観点からしても、90年代の"100億円"映画というのは大ヒット作ということになり(「もののけ姫」を「興業収入」でみると193億円になる)、90年代後半にそうした作品が出てきたところで、本書のような評論家による作品評価やマイナー作品の映画情報も入った「総合映画事典」的な文庫の刊行が途絶えたことはやや残念でした。

 確かに、一発「お化けヒット」した作品が出れば映画業界は活気づくけれども、皆が皆、宮崎駿やジェームズ・キャメロンの監督作品、或いは「ハリー・ポッター」シリーズ(このシリーズも殆どが興行収入100億円超)に靡いて劇場の前に列を作るというのもどうかと―(と言いつつ、自分もこの頃にはすでにあまり劇場に行かず、専らビデオで映画を観ることが多くなっていたのだが)。

もののけ姫2.jpg 「もののけ姫」は、それまでの宮崎駿監督の作品の集大成とも言える大作で、作画枚数は14万枚以上に及び、これは後の「千と千尋の神隠し」の11.2万枚をも上回る枚数です。時代の特定は難しいですが、室町後期あたりのようで、室町時代にしたのはこれ以上遡ると現実感が希薄になって自分自身もイメージが湧きにくくなるためだというようなことを、宮崎監督が養老孟司氏との対談で言っていました(『虫眼とアニ眼』 ('08年/新潮文庫))。自然と人間の対決というテーマは「風の谷のナウシカ」('84年)にも見られましたが、こちらはより深刻かつ現実的に描かれているような気もします。バックボーンになっているのは明らかに網野善彦(1928-2004)の展開する非農業民に注目した日本史観であり、映画全編を通して様々な要素が入っていて、その解釈となると結構難解もののけ姫 1.jpgな世界とも言え、歴史学の知識に疎もののけ姫e.jpgい身としては、その辺りが今一つ解らなかったもどかしさもありました(その網野善彦からは、当時の女性は皆ポニーテールだったとの指摘を受けている)。「となりのトトロ」('88年)みたいに、深く考えないで観た方が良かったのかも。

天空の城ラピュ dvd.jpgKaze no tani no Naushika (1984).jpg 因みに、スタジオジブリはこの「もののけ姫」からプロデューサーに鈴木敏夫氏を据え、企画、宣伝、興行全てを鈴木プロデューサーが取り仕切り、徹底的なメディア戦略を行ったそうです。そのことにより、先に述べたように作品はヒットし、初期作品「風の谷のナウシカ」「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」の15倍から18倍の観客を動員しています。「千と千尋の神隠し」となると、更にその1.5倍ほどの差になるわけですが、だからと言って、「もののけ姫」や「千と千尋の神隠し」が「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」や「となりのトトロ」より優れているということには必ずしもならないでしょう。

Kaze no tani no Naushika (1984)

千と千尋の神隠しド.jpg千と千尋の神隠し 01.jpg 「千と千尋の神隠し」が記録的な興行成績となったのは、第75回アカデミー賞長編アニメ映画賞を受賞し、海外でも評価されたということで、普段アニメを観ない人も映画館に行ったという事情もあったのではないで千と千尋の神隠し アカデミー.jpgしょうか。但し、米国アカデミー賞受賞は、先に第52回ベルリン国際映画祭で「金熊賞」を受賞したことと(アカデミー賞外国映画賞がその典型だが、アカデミー賞が外国映画に与えられる場合、すでに海外の映画祭などで賞を獲って高評価を得ているものに与えられることが多い)、もう1つ、宮崎駿監督の友人である映画監督ジョン・ラセターの尽力によって北米で公開されたということが大きな要因としてあったように思います。内容は"夢落ち"ですが、予めそのことが示唆されていて、観ていてだまされたという感じはしません(「もののけ姫」みたいに網野史観が分からないと映画が読み解けないといったプレッシャーもない?)。

となりのトトロes.jpg 「風の谷のナウシカ」が出たての頃、この作品にすごく注目していた友人がいて、薦められてその友人の家でレーザーディスクで観たことがありますが(彼は当時パイオニアに勤務していた)、彼は先見の明があったのかもしれません。また、「となりのトトロ」については、この作品が出た時期に限らず、その後もビデオやDVDの普及で繰り返し多くの家庭で観られ、幅広い世代の幼年期の記憶に残ったのではないでしょうか(個人的には「となりのトトロ」がスタジオジブリの最高傑作だと思っている)。こうした初期作品の方が好きな人も結構いるように思います。

「となりのトトロ」('88年/東宝)

もののけ姫  .jpgもののけ姫11.jpg「もののけ姫」●制作年:1997年●監督・脚本:宮崎駿●製作:鈴木敏夫●撮影:奥井敦●音楽:久石譲(主題歌:米良美一「もののけ姫」)●時間:133分●声の出演:松田洋治/石田ゆり子/美輪明宏/渡辺哲/小林薫/森繁久彌/田中裕子/佐藤允/森光子/上條「もののけ姫」ジコ坊.jpg恒彦/島本須美/名古屋章/近藤芳正/飯沼慧●公開:1997/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)
0小林薫.jpg ジコ坊(声:小林薫

「もののけ姫」乙事主.jpg 森繁久彌.jpg 乙事主(おっことぬし)(声:森繁久彌

風の谷のナウシカ1.jpeg風の谷のナウシカ DVD.jpg「風の谷のナウシカ」●制作年:1984年●監督・脚本・原作:宮崎駿●製作:高畑勲●撮影:白神孝始●音楽:久石譲●時間:116分●声の出演:島本須美/松田洋治/榊原良子/家弓家正/永井一郎/富永み~な/京田尚子/納谷悟朗/辻村真人/宮内幸平/八奈見乗児/矢田稔●公開:1984/03●配給:東映●最初に観た場所:下高井戸京王(84-08-25)(評価:★★★☆)●併映:「未来少年コナン」(佐藤肇)
風の谷のナウシカ [DVD]

となりのトトロ 1.jpgとなりのトトロ DVD.jpg「となりのトトロ」●制作年:1988年●監督・脚本・原作:宮崎駿●製作:原徹●撮影:白井久男●音楽:久石譲(主題歌:井上あずみ「となりのトトロ」)●時間:88分●声の出演:日高のり子/坂本千夏/糸井重里/島本須美/高木均/北林谷栄/丸山裕子/鷲尾真知子/鈴木れい子/広瀬正志/雨笠利幸/千葉繁●公開:1988/04●配給:東宝 (評価:★★★★☆)
となりのトトロ [DVD]

千と千尋の神隠し 03.jpg千と千尋の神隠し 02.jpg「千と千尋の神隠し」●制作年:2001年●監督・脚本・原案・原作:宮崎駿●製作:鈴木敏夫●撮影:奥井敦●音楽:久石譲(主題歌:木村弓「いつも何度でも」)●時間:124分●声の出演:柊瑠美菅原文太 千と千尋の神隠し.jpg菅原文太 .jpg/入野自由/夏木マリ/中村彰男/玉井夕海/内藤剛志/沢口靖子/神木隆之介/我修院達也/大泉洋/小野武彦/上條恒彦/菅原文太●公開:2001/07●配給:東宝 (評価:★★★☆)

釜爺(声:菅原文太
     
《読書MEMO》
●ジブリ作品の興行収入(1984-2011) 
作品 公開年度  興行収入   観客動員
「風の谷のナウシカ」  1984年 14.8億円 91万人
「天空の城ラピュタ」   1986年 11.6億円 77万人
「となりのトトロ」  1988年 11.7億円 80万人
「魔女の宅急便」  1989年 36.5億円 264万人
「おもひでぽろぽろ」   1991年 31.8億円 216万人
「紅の豚」  1992年 47.6億円 304万人
「平成狸合戦ぽんぽこ」 1994年 44.7億円 325万人
「耳をすませば」  1995年 31.5億円 208万人
「もののけ姫」  1997年 193億円 1,420万人
「千と千尋の神隠し」  2001年 304億円 2,350万人
「猫の恩返し」  2002年 64.6億円 550万人
「ハウルの動く城」 2004年 196億円 1,500万人
「ゲド戦記」  2006年 76.5億円 588万人
「崖の上のポニョ」  2008年 155億円 1,200万人
「借りぐらしのアリエッティ」2010年 92.5億円 750万人
「コクリコ坂から」  2011年 44.6億円 355万人

森卓也.jpg森卓也(映画評論家)の推すアニメーションベスト10(『大アンケートによる日本映画ベスト150』(1989年/文春文庫ビジュアル版))
○難破ス物語第一篇・猿ヶ島('30年、正岡憲三)
くもとちゅうりっぷ('43年、正岡憲三)
○上の空博士('44年、原案・横山隆一、演出:前田一・浅野恵)
○ある街角の物語('62年、製作構成:手塚治虫、演出:山本暎一・坂本雄作)
殺人(MURDER)('64年、和田誠)
○長靴をはいた猫('69年、矢吹公郎)
ルパン三世・カリオストロの城('79年、宮崎駿)
うる星やつら2/ビューティフル・ドリーマー('84年、押井守)
○天空の城ラピュタ('86年、宮崎駿)
となりのトトロ('88年、宮崎駿)
森卓也(映画評論家)の日本アニメ映画ベストテン(『オールタイム・ベスト 映画遺産 アニメーション篇』(2010年/キネ旬ムック)
○難船ス物語 第一篇・猿ヶ島(1931)
○くもとちゅうりっぷ(1943)
○上の空博士(1944)
桃太郎 海の神兵(1945)
○長靴をはいた猫(1969)
○道成寺(1976)
○ルパン三世 カリオストロの城(1979)
○うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー(1984)
となりのトトロ(1988)
○東京ゴッドファーザーズ(2003)

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'96年は映画館入場者数最低年。「スパイ大作戦」とは別物の「ミッション:インポッシブル」。

『映画イヤーブック 1997』.JPGミッション:イン ポッシブル 1996 dvd.jpg ミッション:イン ポッシブル 1996 01.jpg  「スパイ大作戦」シーズン2 dvd.jpg
映画イヤーブック〈1997〉 (現代教養文庫)』「ミッション:インポッシブル [DVD]」「スパイ大作戦 シーズン2(日本語完全版) [DVD]

 1996年に公開された洋画379本、邦画175本、計554本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅しています。

過去.png '96年の映画館の入場者数は1億1,957万人とのことで1億2千万人を割り込みましたが、本書の編者・江藤努氏は編集後記において、レンタルビデオによる映画鑑賞が定着し、〈映画人口〉というより〈映画館人口〉が減少したとみるべきだろうが、やはり憂慮すべき事態であるとしています。また、シネマ・コンプレックス建設ブームで映画館自体の数は52館増えたので、小劇場化の流れが定着したところで、この凋落傾向の底が見えるのではないかともしています。

 この予想は長期的に見て概ね当たり、短期的には、翌年'97年には「もののけ姫」('97年7月公開)、更に'98年には「タイタニック」('97年12月日本公開)という、それぞれ興行収入(配給収入)100億円を超えるメガヒット作品があったりもして、過去20年間の映画館入場者数を振り返ってみれば、洋・邦画トータルではこの'96年という年が最低の入場者数だったことになります。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「セブン」「ビフォア・ザ・レイン」「アンダーグランド」「イル・ポスティーノ」「デッドマン・ウォーキング」「ザ・ロック」「ファーゴ」「秘密と嘘」の8作品、一方邦画は、「Shall We ダンス?」(周防正行監督)、「ガメラ2」(金子修介監督)、「キッズ・リターン」(北野武監督)、「学校Ⅱ」(山田洋次監督)などの6作品。

ミッション:イン ポッシブル 1996 00.jpgMission Impossible  01.jpg 個人的には、トム・クルーズがプロデューサーとしてブライアン・デ・パルマを監督に指名した「ミッション:インポッシブル」('96年)に注目しましたが、それなりに楽しめたけれども、オリジナルの「スパイ大作戦」とは随分違った作りになったなあと。

 リーダーのフェルペス以外は全て映画用のオリジナル・キャラクターで、しかもチームワークで事件に当たるというよりは、完全にトム・クルーズ演じるイーサン中心です。トム・クルーズは「ザ・ファーム/法律事務所」('93年)にしても、後の「マイノリティ・リポート」('02年)にしてもそうですが、組織内にいて、その組織に裏切られたり組織から追われたりするという脚本が好きなのかなあ。第1作でフェルプスが裏切り者になってしまったため、「スパイ大作戦」でフェル「スパイ大作戦」.jpgプスを演じたピーター・グレイブスは衝撃を受け、他のドラマ出演者からの評判も良くなかったようです。

「スパイ大作戦」ピーター・グレイブス(右端)

 鉄壁の組織内チームワークを誇った「スパイ大作戦」とはえらい違いですが、このパターンで「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」('11年)まで4作続けて、これはこれで「スパイ大作戦」とは別モノとしての一つの流れを完全に作ったなあと思いました。そうした意味では成功作なんだろうけれど、デ・パルマ監督が撮らなくとも、大体こんな映画になったのではないか。ジョン・ウー監督の「ミッション:インポッシブル2」('00年)の方が、監督の個性が出ていたかも(その分、さらにMIらしくない)。その後のシリーズ過程でチームワーク重視にトーン変更しており、J・J・エイブラムス監督の「ミッション:インポッシブル3」('06年)では、前2作よりMission Impossible III 02.jpg「スパイ大作戦」の映画化らしい出来にする、という前提条件があり、テレビシリーズの構図に近い出来となっていました。現場を引退して教Mission Impossible III 01.jpg官をしていたイーサンが、敵に拉致された教え子の女エージェントの救出プロジェクトに参加することになりますが、彼女は頭の中に仕掛けられていた小型爆弾により死亡し、逆にイーサン自身が彼女と同様の窮地に陥り、さらに婚約者も拉致されてしまう―イーサンを救い、さらにイーサンの婚約者を奪還するために仲間が協力するという"身内"色の強い内容でしたがそう悪くなく、この3作目をシリーズベストに挙げる人もいるようです。
     
「ミッション インポッシブル」dvd.jpgEmmanuelle Béart Mission:Impossible.jpg「ミッション:インポッシブル」●原題:MISSION:IMPOSSIBLE●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ブライアン・デ・パルマ●製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー●脚本:デヴィッド・コープ/ロバート・タウン/スティーヴン・ザイリアン●撮影:スティーヴン・H・ブラム●音楽:ダニー・エルフマン(テーマ音楽:ラロ・シフリン)●原作:ウィンストン・グルーム●時間:110分●出演:トム・クルーズ/ジョン・ヴォイトエマニュエル・ベアール/ジャン・レノ/ヘンリー・ツェーニー/ダニー・ エルフマン/クリスティン・スコット・トーマス/インゲボルガ・ダクネイト/ヴィジョン・ヴォイト ミッションインポッシブル.jpgミッション:インポッシブル2.jpgング・レイムス/ヴァネッサ・レッドグレイヴ/ヘンリー・ツェニー/アンドリアス・ウイスニウスキー/ロルフ・サクソン/マーセル・ユーレス/デイル・ダイ●日本公開:1996/07●配給:パラマウント=UIP(評価:★★★☆)
ジョン・ヴォイト(ジム・フェルプス)/エマニュエル・ベアール(クレア・フェルプス)

スパイ大作戦 サウンドトラック 1967.jpg「スパイ大作戦」 Mission: Impossible (CBS 1966~1973) ○日本での放映チャネル:フジテレビ(1967~)/スーパーチャンネル(現Super! drama TV)(2011~) テーマスパイ大作戦 ピーター・グレイブス.jpg
曲:ラロ・シフリン

ピーター・グレイブス(ジム・フェルプス)


「ミッション インポッシブル3」2006.jpg「ミッション インポッシブル3」  2006.jpg「ミッション:インポッシブル3(M:i:III)」●原題:MISSION:IMPOSSIBLE III●制作年:2006年●制作国:アメリカ●監督:J・J・エイブラムス●製作:トム・クルーズ/ポーラ・ワグナー●脚本:アレックス・カーツマン/ロベルト・オーチー/J・J・エイブラムス●撮影:ダニエル・ミンデル●音楽:マイケル・ジアッキーノ(テーマ音楽:ラロ・シフリン)●時間:126分●出演:トム・クルーズ/フィリップ・シーモア・ホフマン/ヴィング・レイムス/ビリー・クラダップ/ミシェル・モナハン/サイモン・ペッグ/ジョナサン・リース=マイヤーズ/ケリー・ラッセル/マギー・Q/ローレンス・フィッシュバーン●日本公開:2006/07●配給:パラマウント=UIP(評価:★★★☆)

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'95年はトム・ハンクスが洋画界を牽引? 「フォレスト・ガンプ」の底にある「愛国心」。

『映画イヤーブック 1996』.JPGフォレスト・ガンプ 一期一会  ポスター.jpg フォレスト・ガンプ dvd.jpg  フォレスト・ガンプ 一期一会 スコア.jpg
映画イヤーブック〈1996〉 (現代教養文庫)』「フォレスト・ガンプ 一期一会」ポスター「フォレスト・ガンプ 一期一会 スペシャル・コレクターズ・エデション [DVD]」(2008)「フォレスト・ガンプ~一期一会 オリジナル・スコア集

 1995年に公開された洋画330本、邦画184本、計518本の全作品データと解説を収録し、ビデオ・ムービー、未公開洋画、テレビ映画ビデオのデータなども網羅しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「フォレスト・ガンプ/一期一会」「クイズ・ショウ」「レオン」「ショーシャンクの空に」「ブロードウェイと銃弾」「アポロ13」「恋する惑星」「エドワード・ヤンの恋愛時代」「エド・ウッド」「マディソン郡の橋」「スモーク」の11作品、一方邦画は、「東京兄妹」(市川準監督)、「ガメラ」(金子修介監督)、「Love Letter」(岩井俊二監督)、「KAMIKAZE TAXI」(原田眞人監督)、「午後の遺言状」(新藤兼人監督、)「幻の光」(是枝裕和監督)の6作品と、比較的邦画も頑張った年でしたが、編者の江藤努氏に言わせれば、邦画は洋画に比べて作品の質が興行成績に繋がらなかったとのことで、確かに、ややマイナー感はあるラインアップ。

Sally Field FORREST GUMP.jpg ロバート・ゼメキス監督の「フォレスト・ガンプ/一期一会」('94年)はアカデミー賞6部門(作品・監督・主演男優・脚色・視覚効果・編集)独フォレスト・ガンプ 一期一会01.jpg占で、トム・ハンクスは「フィラデルフィア」('93年)に続いてアカデミー賞主演男優賞2年連続受賞、さらにこの年公開の「アポロ13」('95年)にも出演していて、当時は洋画界を一人で牽引しているような勢いがありましたが、アカデミー俳優トム・ハンクス主演ということで、これらの作品を観に映画館に足を運んだ人も多かったのではないでしょうか。

フォレスト・ガンプ 一期一会02.jpg 「フォレスト・ガンプ」は50年代から80年代にかけてのアメリカ現代史を駆け抜けていったIQが人並みに至らない男ガンプの話ですが、彼は俊足を買われて大学で全米アメフト代表選手となってケネディ大統領に祝福され、ベトナム戦争では戦友の命を救ってジョンソン大統領から栄誉を授かる一方、全米卓球チームのメンバーになって「ピンポン外交」特使としてジョン・レノンとテレビ共演するほど有名になり、さらにエビの事業で成功して大金持ちになるといった具合に、アメリカン・ドリームを絵に描いたような道を歩みます。

フォレスト・ガンプ 一期一会03.jpg 但し、そうした"お目出度い"話ばかりでなく、彼の人生と交錯する人びとの挫折や苦悩も描いており、ガンプ自身も幼馴染みの恋人に何度か去られ、最後にやっと愛を成就できたかと思ったら、その彼女に死なれてしまうなどして人生の寂寥感を味わい、それでも彼女が遺した自分の息子に出会うことで未来への希望を抱くという、ラストシーンで空を舞う羽根のように、ふわ~っと心に滲み入る作品でした。

フォレスト・ガンプ 一期一会04.jpg 原作は、1985年にウィンストン・グルームが発表した小説 Forrest Gumpで、ガンプのモーレツぶりは、ジョン・アービング原作、ジョージ・ロイ・ヒル監督、ロビン・ウィリアムズ主演の「ガープの世界」('82年)の登場人物らに通じるものを感じましたが、「ガープの世界」がアービングの自伝的小説であるのに対し、グルームの原作では、主人公のガンプは宇宙飛行士やプロレスラー、チェスのチャンピオンになるといったエピソードもあるとのことで、映画においても、「ガンプ」はシンボライズされたキャラクターと見るのがスジでしょう。

 では、アメリカ現代史を駆け抜けたガンプは何の象徴なのかと言うと、やはりアメリカ国民そのものの象徴であり、見方によってはアメリカという国そのものの象徴ということにもなるのかもしれません。

Forrest Gump (1994).bmp 映画ではアメリカ現代史の様々な映像が合成SFXでガンプの物語に織り込まれており(ゼメキス監督は「バック・トゥ・ザ・フューチャー」でも見せたとおり、特撮が持ち味。ガンプがケネディ大統領と握手し、「おしっこしたい」と言うシーンは笑える)、それもこの作品の一つの見所ですが、個人的には、ウォーターゲート事件にしてもベトナム反戦運動にしても、ガンプの純粋さを媒介としてある種戯画化されて描かれているように思いました。

 この映画がアメリカで「ガンプ現象」と言われるほどのブームになったのは、アメリカ人のヒーローに対する愛着、純粋無垢なモーレツさへの憧憬だけでなく、いろんなことを乗り越えてもアメリカ人は前を向いて走り続けることができる国民なのだという「愛国心」(本書でこの作品の解説を担当している東敬一氏もこの言葉を用いているが)の裏返しのようなものが、作品の底にあるためであるように思いました(すごく自己肯定的だけど、所謂ナショナリズムとは少し違うんだよなあ)。

チャンス.jpg この作品を観て思い出すのは、ハル・アシュビー監督の「チャンス」('79年/米)で、知的障害がある庭師のチャンスが、余命いくばくも無い財界大物を夫に持つ美しい貴婦人が乗る高級車に轢かれ、屋敷に招かれることになったのをきっかけに、その言葉に実は深い意味があると周囲から勝手に解釈されて、世間の注目を集めテレビ出演までするようになり、国民的な人気を得ることになりますが、彼自身は全くそんなことには無頓着でいるというもの。この作品で、ピーター・セラーズ(1925-1980)が演じるチャンスは次期大統領候補にまでなる一方で、ラストはチャンスの死を暗示させて終わりますが、ピーター・セラーズ本人もこの映画の日本公開前に心臓発作で急逝、彼の遺作となった作品であるということでも知られています。

チャンス ラスト.jpg ジャージ・コジンスキーの脚本のベースになっているのはニーチェの『ツァラトゥストラはかく語りき』であり、原題の"Being There"は、ドイツの哲学者マルティン・ハイデッガーの未完の主著『存在と時間』からきているとのことで、「ただそこにある(もの)」という意味ですが、「チャンス」という主人公の名前を邦題にしてしまったため、「どんなハンディキャップがある人にもチャンスがある」という話と捉えられている向きがあるように思います。

 個人的には、そうした解釈でもいいと思うし、実際、「アメリカとはそういう(誰にでもチャンスのある)国だ」という意図のもとに作られた作品ととれなくもないですが、ちょっと違うような気がする。。。だからと言って、正しい解釈はこうだと言い切れるものが自分としてもイマイチ明確にないのですが。

Forrest Gump(1994).jpg 「フォレスト・ガンプ/一期一会」の「一期一会」は要らなかったように思いますが、内容的にはこちらの方がスンナリ受け止めることができました。「チャンス」は、コメディとしては秀逸であることは間違いないですが(シャーリー・マクレーン、メルヴィン・ダグラスなど一流の演技達者が"脇を固めている"というのがスゴイ)、原題通り「ビーイング・ゼア」としてくれた方がこの作品の象徴性について(自分も世間も)より深く考える契機になったような気がします。最近、かなり再評価されているようですが、当時としては、そんなタイトルでは観客受けしないと思われたのでしょうか。もともと、本国公開から日本公開までの間に1年以上もの間隔があった作品でした。

Forrest Gump(1994)[IMDbスコア 8.8]

サリー・フィールド(ミセス・ガンプ) 
フォレスト・ガンプes.jpgSally Field in FORREST GUMP.jpg「フォレスト・ガンプ/一期一会」●原題:FORREST GUMP●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・ゼメキス●製作:ウェンディ・フィネルマン/スティーヴ・ティッシュ/スティーヴ・スターキー●脚本:エリッゲイリー・シニーズ Forrest_Gump.jpgク・ロス●撮影:アーサー・シュミット●音楽:アラン・シルヴェストリ●原作:ウィンストン・グルーム●時間:142分●出演:トム・ハンクス/ロビン・ラフォレスト・ガンプ 一期一会 dvd.jpgイト/サリー・フィールドゲイリー・シニーズ/ミケルティ・ウィリアムソン/ハーレイ・ジョエル・オスメント/マイケル・コナー・ハンフリーズ/ハンナ・R・ホール●日本公開:1995/02●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(95-03-12)●配給:UIP(評価:★★★★)フォレスト・ガンプ 一期一会 ― スペシャル・コレクターズ・エディション [DVD]」(2001)
日劇1.jpg有楽町マリオン 阪急.jpg日本劇場 1984年10月6日「有楽町マリオン」有楽町阪急側11階にオープン(1,008席)、2002年~「日劇1」(948席)、2006年10月~「TOHOシネマズ日劇・スクリーン1」(上写真:「日劇1」館内) 2018年2月4日閉館 (閉館時、都内最大席数の劇場だったが、閉館により「丸の内ピカデリー1」(802席)が都内最大席数に)
トム・ハンクス in「フォレスト・ガンプ 一期一会」('94年)/「アポロ13」('95年)
フォレスト・ガンプ  トム・ハンクス.jpg アポロ13 トム・ハンクスapollo13.jpg

BEING+THERE+1.jpgBillionaire Benjamin Rand (Melvyn Douglas) takes on Chance (Peter Sellers) as a trusted advisor.メルヴィン・ダグラス(億万長者ベンジャミン・ランド)アカデミー助演男優賞・ゴールデングローブ賞助演男優賞・ニューヨーク映画批評家協会賞助演男優賞・ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞受賞

「チャンス」●原題:BEING THERE●制作年:1979年●制作国:アメリカ●監督:ハル・アシュビー●製作:アンドチャンス_m.jpgリュー・ブラウンズバーグ●脚本:ジャチャンスes.jpgージ・コジンスキー●撮影:キャレブ・デシャネル●音楽:ジョニー・マンデル●原作:ジャージ・コジンスキー●時間:130分●出演:ピーター・セラーズ/シャーリー・マクレーン/メルヴィン・ダグラス/ジャック・ウォーデン/リチャード・ダイサート/リチャード・ベースハート/ルチャンス dvd.jpgス・アタウェイ/デイヴィッド・クレノン/フラン・ブリル●日本公開:1981/01●最初に観た旧丸の内ピカデリー  .jpg場所:有楽町・丸の内ピカデリー(81-02-09)●配給:松竹=富士映画配給(評価:★★★★)チャンス [DVD]」(2005)
丸の内松竹(初代).jpg旧・丸の内ピカデリー1・2 前身は1925年オープンの「邦楽座」(後の「丸の内松竹」)。1957年7月、旧朝日新聞社裏手にオープン(地下に「丸の内松竹」再オープン)。 1984年10月1日閉館。1984年10月6日後継館「丸の内ピカデリー1・2」が有楽町センタービル(有楽町マリオン)西武側9階にオープン。
旧丸の内ピカデリー1・2/丸の内松竹 1984(昭和59年9月) Photo:「ぼくの近代建築コレクション
旧丸の内ピカデリー。.jpg

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'94年公開の個人的ラスト・アクション・ヒーロー・ムービー「トゥルーライズ」「スピード」。

『映画イヤーブック 1995』.JPGスピードdvd1.jpg トゥルーライズ dvd2.jpg TRUE LIES movie.jpg
映画イヤーブック〈1995〉 (現代教養文庫)』「スピード [DVD]」「トゥルーライズ [DVD]

 1994年劇場公開の全作品(洋画304本、邦画161本、計465本)にデータと解説を付して収録、ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しているほか、『映画イヤーブック』としては5冊目になるということで、全5冊の総索引も付きました。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「トゥルー・ロマンス」「シンドラーのリスト」「さらば、わが愛 覇王別姫」「ピアノ・レッスン」「青い凧」「ギルバート・グレイブ」「パルプ・フィクション」「ショート・カッツ」「スピード」の9作品、一方邦画は、「トカレフ」(阪本順治監督)、「全身小説家」(原一男監督)、「棒の哀しみ」(神代辰巳監督)、「忠臣蔵外伝・四谷怪談」(深作欣二監督)の4作品。

 '94年の映画館入場者数は1億2299万人で、それまでの史上最低だったそうで、前年の「ジュラシック・パーク」のような大ヒット作が無かったということもあるようですが、この頃には平成不況による停滞感が定着して、多くの人が、わざわざ映画館まで行かなくともビデオで観ればいいいという感覚になっていたのではないかなあ。

スピードdvd.jpg ハリウッド映画のアクション系で、「ダイ・ハード」('88年)、「氷の微笑」('92年)のカメラマンだったヤン・デ・ボン(「トータル・リコール」「氷の微笑」のポール・バーホーベン監督と同じくオランダ人)の初監督作品「スピード」('94年)が気を吐きました。

「スピード」('94年).jpg 時速を80キロ以下に落とすと爆発する爆弾を仕掛けたバスの疾走が迫力満点のノンストップアクションで、バスが街中を車をはじき飛ばしながら爆走したり、キアヌ・リーブスが爆弾を解除するために高速で走るバスの下にもぐりこむシーン、或いは、地下鉄の車両が工事現場を破壊しながら地上に突き抜けるシーンなどは実写中心であるため見応えはありました。

スピード01.jpg 脚本を書いたグレアム・ヨストは、 アンドレイ・コンチャロフスキー監督の「暴走機関車」('86年/米)の原「スピード」ホッパー2.jpg案である黒澤明のオリジナル脚本を読んで着想を得たと述懐していますが、その脚本もまずまずではないでしょうか。但し、脚本を含めてよく出来ていた「ダイ・ハード」と比べるのと、トータルではやや落ちるか。キアヌ・リーブス、サンドラ・ブロック共に頑張っているけれど、爆弾魔のデニス・ホッパー(1936-2010)は、クイズ好きのオタクみたいで、それほど凄味がないような....。デニス・ホッパーということで、期待し過ぎてしまったのかもしれませんが(結局、大掛かりなアクションで見せる映画だった。元々の狙いも概ねそうだとは思うが)。

speed 2s.jpgスピード2  05.jpg ということで、個人的にはヤン・デ・ボン監督には次に期待、というところだったのですが、その続編「スピード2」('97年/米)であっさりコケてしまった感じでした(既に同年の「ツイスター」('97年/米)を観れば、この監督の力量の限度は窺い知れたのだが。因みに、竜巻パニックスピード2 dvd.jpg映画「ツィスター」はアメリカではそこそこヒットしたらしく、アメリカ人にとって竜巻は身近な恐怖なのでしょう(日本にもこうした映画のファンは多いらしく、Amazon.comのレビュー評価などもそう悪くないようだが、個人的には、竜巻をあまりに擬人化し過ぎているように思えた)。「スピード2」は舞台を大型客船に移したことで、看板の〈スピード〉感は無くなり、サンドラ・ブロック演じるヒロインは残りましたがキアヌ・リーブスは出演しておらず、代わりにジェイソン・パトリックが出演していましたが地味で、敵役のウィレム・デフォーの方がむしろ頑張ってはいましたが、それでもデニス・ホッパーに比べるとやはり格下感は否めなかったでしょうか。話の展開にも〈スピード〉感は感じられなかった...(いずれにせよ、キアヌ・リーブスとデニス・ホッパーがいないというのはロスト感が大きい)。
スピード2 [DVD]

トゥルーライズ dvd.jpg 「スピード」の「四つ星」評価に対し、本書で星3つの評価となっている「ターミネーター」シリーズのジェームズ・キャメロンが監督した「トゥルーライズ」('94年)の方が、ユーモアの要素があって個人的な評価はやや上になります。

トゥルーライズ1.jpg アガサ・クリスティの「おしどり探偵」シリーズの現代アクション版みたいで、アーノルド・シュワルツェネッガーはコメディも充分にこなすし、スタント無しのジェイミー・リー・カーティスも良かったです(アクションでもそれ以外でも身体を張った演技をしていたなあ)。

トゥルーライズ jlカーチス.jpg カーチェイスの場面で実際に橋を爆破したというのもスゴいですが、一方で、シュワちゃんがゴールデン・ゲート・ブリッジにしがみつくシーンやハリヤー・ジェット機上でのテロリストとの"生身"のバトルシーンなど、デジタル合成のSFXをふんだんに使っています。

 アクション・シーンをCGで撮るというのは「バットマン リターンズ」('92年)あたりがハシリだそうですが、米国の俳優協会ではその頃から、役者自身がアクションを演じる場面が無くなってしまうということで問題視され始めていたようです。「バットマン リターンズ」の中には、一旦CGで撮ったものを、俳優協会からの要請で俳優やスタントマンを使ったものに撮り直した場面があります(高い所から飛び降りたバットマンが地面に着地するシーンなど)。

トゥルーライズ2.jpg 「トゥルーライズ」ではそのほかに、ハリヤー・ジェット機の熱で空気が揺らぐシーンなどにもデジタル・ドメイン社が開発したCGが初めて使われていて、この技術は「アポロ13」('95年)のロケット発射シーンなどにも使われました(ジェームズ・キャメロンはデジタル・ドメイン社の初代共同経営者)。

 シュワルツェネッガーは、この作品の前年にジョン・マクティアナン監督の「ラスト・アクション・ヒーロー」('93年)を製作総指揮しており(主演もシュワルツェネッガー)、もう生身の肉体を使ってのアクションは終わりだなという意識はこの頃からあったのではないでしょうか。その前の作品が、それこそCGで描かれる敵と戦う「ターミネーター2」('91年)だったし(これもジェームズ・キャメロン監督)。

 個人的には、'94年の「トゥルーライズ」が(すでにCGがいっぱい使われてはいるけれども)自分の中での"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーという印象ですが、同じく'94年の「スピード」も、キアヌ・リーブスの次のヒット作「マトリックス」('99年)がアクションシーンをCG主体で構成していたことを考えると、キアヌ・リーブス的に言えばこれもまた"ラスト・アクション・ヒーロー"ムービーだったと言えるように思います。
 
SPEED-1994 -On set / Keanu Reeves|Sandra Bullock
SPEED 1994.jpgスピード02.jpg「スピード」●原題:SPEED●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督:「スピード」ホッパー.jpgヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:ランダル・マコーミック/ジェフ・ナサンソン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:マーク・マンシーナ/ビリー・アイドル●時間:115分●出演:キアヌ・リーブス/デニス・ホッパサンドラ・ブロック/ジョー・モートン/ジェフ・ダニエルズ/アラン・ラック●日本公開:1994/12●配給:20世紀フォックス映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-12-17)(評価:★★★☆)

speed 2es.jpgスピード2 01.jpg「スピード2」●原題:SPEED:CRUISE CONTROL●制作年:1997年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:マーク・ゴードン●脚本:グレアム・ヨスト●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:121分●出演:サンドラ・ブロック/ジェイソン・パトリック/ウィレム・デフォー/テムエラ・モリソン/ブライアン・マッカーディー/グレン・プラマー/コリーン・キャンプ/ロイス・チャイルズ/マイケル・G・ハガーティー/ボー・スヴェンソン/フランシス・ギナン/ジェレミー・ホッツ●日本公開:1997/08●配給:20世紀フォックス映画(評価:★★☆)

ツイスター.jpgツイスタード.jpg「ツイスター」●原題:TWISTER●制作年:1996年●制作国:アメリカ●監督:ヤン・デ・ボン●製作:キャスリーン・ケネディ/イアン・ブライス/マイケル・クライトン●脚本:マイケル・クライトン/アン・マリー・マーティン●撮影:ジャック・N・グリーン●音楽:マーク・マンシーナ●時間:113分●出演:ヘレン・ハント/ビル・パクストン/ケイリー・エルウィス/ジェイミー・ガーツ/ロイス・スミス/アラン・ラック/フィリップ・シーモア・ホフマン/トッド・フィールド/ジョーイ・スロトニック/ジェレミー・デイビス/スコット・トマソン/ウェンデル・ジョセファー/ショーン・ウォーレン/ザック・グルニエ/ラスティ・シュウィマー●日本公開:1996/07●配給:UIP(評価:★★)
ツイスター [DVD]

「トゥルーライズ」.jpgトゥルーライズ01.jpg「トゥルーライズ」●原題:TRUE LIES●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ジェームズ・キャメロン●製作:ジェームズ・キャメロン/ステファニー・オースティン●オリジナル脚本:クロード・ジディ/シモン・ミシェル/ディディエ・カミンカ●撮影:ラッセル・カーペンター●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:144分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/ジェイミー・リー・カーティス/トム・アーノルド/ビル・パクストン/ティア・カレル/アート・マリックトゥルーライズ  ティア・カレル.jpgトゥルーライズ チャールトン・ヘストン.jpg/エリザ・ドゥシュク/グラント・ヘスロヴ/チャールトン・ヘストン●日本公開:1994/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:有楽町・日本劇場(94-09-25)(評価:★★★★)
アーノルド・シュワルツェネッガー/ティア・カレル
チャールトン・ヘストン

ラスト・アクション・ヒーローs.jpgラスト・アクション・ヒーロー  vhs.jpg「ラスト・アクション・ヒーロー」●原題:LAST ACTION HERO●制作年:1993年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・マクティアナン●製作:スティーヴ・ロス/ジョン・マクティアナン●脚本:デヴィッド・アーノット/シェーン・ブラック●撮影ディーン・セムラー●音楽:マイケル・ケイメン●時間:131分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/オースティン・オブライエン/チャールズ・ダンス/ロバート・プロスキー/トム・ヌーナン/フランク・マクレー/アンソニー・クイン/ブリジット・ウィルソン/F・マーリー・エイブラハム/マーセデス・ルール/アート・カーニー/イアン・マッケラン/プロフェッサー・トオル・タナカ/ジョーン・プロウライト/ノア・エメリッヒ●日本公開:1993/08●配給:コロンビア映画(評価:★★★)

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'93年は「ジュラシック・パーク」の年か。アイロニカルだった「ザ・プレイヤー」。

『映画イヤーブック 1994』.JPG映画イヤーブック1994.jpg    ザ・プレイヤー.jpg  ザ・プレイヤー  dvd.jpg
映画イヤーブック〈1994〉 (現代教養文庫)』/「ザ・プレイヤー」チラシ/「ザ・プレイヤー デラックス版 [DVD]

 1993年に公開された洋画328本、邦画151本、計479本の全作品データと解説を収録、更に映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオ・ムービー、未公開ビデオのデータなども網羅しています。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「ザ・プレイヤー」「愛の風景」「マルコムX」「許されざる者」「クライング・ゲーム」「秋菊の物語」「ジュラシック・パーク」「アラジン」「リバー・ランズ・スルー・イット」「ザ・シークレット・サービス」「タンゴ」「友だちのうちはどこ?」など10作品、一方邦画は、「お引越し」(相米慎二監督)、「病院で死ぬということ」(市川準監督)、「月はどっちに出ている」(崔洋一監督)、「ヌードの夜」(石井隆監督)の4作品と、依然やや寂しいか。

 映画館の年間入場者数は、それまでの史上最低を記録した'92年よりやや上向いて1億3千万人台に戻りましたが、これは偏に「ジュラシック・パーク」の大ヒットのお陰、邦画は、前年の「シコふんじゃった。」に続いて、今度は「月はどっちに出ている」が映画賞を総ナメするという、表面的にはやや偏った状況でした。

ザ・プレイヤー  vhs.jpg でも、前出の通り、ピレ・アウグスト監督の「愛の風景」(スウェーデン他9カ国)、チャン・イーモウ監督の「秋菊の物語」(中国)、パトリス・ルコント監督の「タンゴ」(仏)、アッバス・キアロスタミ監督の「友だちのうちはどこ?」(イラン)といったハリウッド映画以外の作品も一部で注目された年であり、また、ハリウッド映画の中にも、ロバート・アルトマン監督がハリウッドの映画製作の内幕を描いた「ザ・プレーヤー」('92年/米)などの変わった作品もありました(この作品は1992年カンヌ国際映画祭「監督賞」「男優賞」及びインディペンデント・スピリット賞、ザ・プレイヤー 1.jpgニューヨーク映画批評家協会賞などを受賞している)。

 原作・脚本はマイケル・トルキンで、ハリウッド映画界の権力者"プレイヤー"を目指す若手プロデューサーのグリフィン(ティム・ロビンス)が、脚本を没にされた脚本家から脅迫を受けるが、逆に脅迫者とおぼしき脚本家を殺害し、その恋人(グレタ・スカッキ)をも自分の女にしてしまう―「えーつ、これで終わり!?」という感じで、皮肉を込めたピカレスク・ロマンだったわけね。

THE PLAYER 1992 movie.jpg ラスト近く、グリフィンはウケだけを狙ったどうしょうもない通俗映画を作っていて、それに主演しているのが、ジュリア・ロバーツ、ブルース・ウィリスの二人で、更にバート・レイノルズ、アンジェリカ・ヒューストン、ジョン・キューザック、ジャック・レモン、アンディ・マクダウェル、シェール、ピーター・フォーク、スーザン・サランドンなどが映画内映画にカメオ出演している―この辺りはやはりロバート・アルトマンの名の下に―という感じでしょうか。

スーザン・サランドン/ピーター・フォーク

 ロバート・アルトマンは「M★A★S★H」(70年/米)、「ナッシュビル」(75年/米)以来、時々こうした"仲間内"感覚の作品を撮っていたなあ。この作品も、アイロニカルだけれど、みんなんで楽しみながら映画を作っている感じもあって、その分「毒」が中和されている印象も。

"THE PLAYER"(1992)輸入版DVD
THE PLAYER 1992.jpg「ザ・プレイヤー」●原題:THE PLAYER●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルトマン●製作:デヴィッド・ブラウン/マイケル・トルキン/ニック・ウェクスラー●脚本・原作:マイケル・トルキン●撮影:ジャン・ルピーヌ●音楽:トーマス・ニューマン●時間:124分●出演:ティム・ロビンス/グレタ・スカッキ/フレッド・ウォード/ウーピー・ゴールドバーグ/ピーター・ギャラガー/ブライオン・ジェームズ/ヴィンセント・ドノフリオ/ディーン・ストックウェル/リチャード・E・グラント/シドニー・ポラック/シンシア・スティーヴンソン/ダイナ・メリル/ジーナ・ガーション/ジェレミー・ピヴェン/リーア・エアーズ●カメオ出演ジュリア・ロバーツ/ブルース・ウィリス/バート・レイノルズ/アンジェリカ・ヒューストン/ジョン・キューザック/ジャック・レモン/アンディ・マクダウェル/The-Player.jpgシェール/ピーター・フォーク/スーザン・サランドン/ジル・セント・ジョン/リリー・トムリン/ジョン・アンダーソン/ミミ・ロジャース/ジョエル・グレイ/ハリー・ベラフォンテ/ゲイリー・ビューシイ/ジェームズ・コバーン/ルイーズ・フレッチャー/スコット・グレン/ジェフ・ゴールドブラム/エリオット・グールド/サリー・カークランド/マーリー・マトリン/マルコム・マクダウェル/ニック・ノルティ/ロッド・スタイガー/パトリック・スウェイジ●日本公開:1993/01●配給:大映(評価:★★★☆) Julia Roberts, Bruce Willis and may others for The Player

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'92年公開作品はバブル崩壊"効果"? ちょっと変わった感じの映画が目立った年。

『映画イヤーブック 1993』.JPGバートン・フィンク vhs1.jpg フライド・グリーン・トマト vhs.jpg
映画イヤーブック〈1993〉 (現代教養文庫)』/「バートン・フィンク」(VHS)/「フライド・グリーン・トマト」(VHS)  


プリティ・リーグ dvd.jpg 1992年に公開された洋画317本、邦画133本、計450本の全作品データと解説を収録していますが、この数字、本書の前年版によれば、前年の1991年に劇場公開された洋画は413本、邦画は151本、計564本となっていましたから、前年の2割減(洋画は2割5分減)ということになり、バブル崩壊の影響がこの辺りにも出たなあと。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「バートン・フィンク」「JFK」「美しき諍い女」「フライド・グリーン・トマト」「仕立て屋の恋」「プリティ・リーグ」など10作品、邦画は、「シコふんじゃった。」「いつかギラギラする日」「青春デンデケデケデケ」など4作品とやや寂しいか。
プリティ・リーグ [DVD]

バートン・フィンク0.jpg 結局、邦画界は1月に公開された周防正行監督の「シコふんじゃった。」がその年の映画賞を総ナメした形になりましたが、これ、意外と穴だったと言うか、実際に面白く(個人的にもこの年のナンバー1作品。但し、これだけ賞を獲ると、日本映画は他にいい作品がないのかという気も)、一方、洋画も例年の大作とは一味違ったものがじわじわ人気を呼んだりして、その典型が1991年・第44回カンヌ国際映画祭でパルムドールを受賞したジョエル・コーエン監督の「バートン・フィンク」('91年/米)ではなかったでしょうか。

Barton Fink -John Goodman & John Turturro

バートン・フィンク1.jpg 1941年、場末の安ホテルに籠って脚本を書いていた劇作家バートン・フィンク(ジョン・タトゥーロ)は、隣室のセールス男メドウズ(ジョン・グッドマン)と親しくなるが、フィンク自身は脚本が書けなくなるスランプに陥り、更には自分の部屋で殺人事件が起きて、メドウズが死体を片付けてくれたものの、彼は完全に神経症に陥る―。

 幾つもの解釈ができる面白い作品で、結局、フィンク自身が現実と空想の区別がつかなくなっているようです。ラストのホテルの部屋の壁に架かった絵画のアップが1つの謎解きと言えるかも(バートン・フィンクのモデルはフォークナーだそうだ)カンヌ映画祭で史上初の三冠(パルム・ドール(グランプリ)・監督賞・男優賞(ジョン・タトゥーロ))を成し遂げた作品とのことで、ストーリーの巧さもあるけれども、脚本執筆という創造の苦しみが描かれているのが、同業者の共感を呼んだ?

フライド・グリーン・トマト1.jpg もう一つ、同じく'92年公開のジョン・アヴネット監督の「フライド・グリーン・トマト」('91年/米)は、「ドライビング・ミス・デージー」のジェシカ・タンディが演じる元カフェ経営者の昔話を、「ミザリー」のキャシー・ベイツ演じる夫に愛想をつかされた女性が聴くという展開でしたが(アカデミー主演賞女優同士!)、ジェシカ婆さんが淡々と語る話の内容が、ある種、女性たちの人間として生きる権利を求めての闘いの軌跡というか、感動ストーリーでありながらも、合間に入るエピソードがグリム童話みたいに残酷(猟奇的)だったりして、この取り合わせの妙が何とも言えない作品でした。
    
プリティ・リーグ 2.png 女流監督ペニー・マーシャルが「レナードの朝」('90年)の次に撮った「プリティ・リーグ」('91年/米)のあらすじは―、1943年、男たちが戦争に駆り出され、プロ野球閉鎖の危機が訪れる中、全米女子プロ野球リーグが結成され、最強チーム"ピーチズ"のメンバーは、田舎の主婦からホール・ダンサーまで、野球を愛する男顔負けのスーパー・レディースで構成さMadonna A League of Their Own.jpgれていたが、汗と埃にまみれて白球を追う彼女たちの力強く美しい姿には全米が拍手を贈った―という感動もので、一見すると漫画的題材ですが、実話がベースになっているというのはやはり強いなあと。監督役のトム・ハンクスの演技が冴え、痛快スポーツ・ドラマとなっていますが、最後の同窓会的にかつてのメンバーが集う場面は、賛否があるものの個人的には良かったです。スーパースターのマドンナがナインの一員として(エース役のジーナ・デイビスの助演として)しっかり演技しているという点で興味深い作品でもあります。マドンナはハマリ役でした。 

Madonna in A League of Their Own

 好き嫌いが分かれそうな作品もありますが、バブル崩壊"効果"ではないでしょうが、がんがん力で押していくタイプの大作より、こうしたちょっと変わった感じの映画が目立った年でした。

バートン・フィンク dvd.jpgバートン・フィンク [DVD]」 ジュディ・デイヴィス in「バートン・フィンク」(1991年ニューヨーク映画批評家協会賞助演女優賞受賞) BARTON FINK, Michael Lerner, マイケル・ラーナー(1991年ロサンゼルス映画批評家協会賞助演男優賞受賞)
ジュディ・デイヴィス バートン・フィンク.jpgBARTON FINK, Michael Lerner, 1991l.jpg「バートン・フィンク」●原題:BARTON FINK●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョエル・コーエン●製作:イーサン・コーエン●脚本:ジョエル&イーサン・コーエン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:カーター・パウエル●時間:116分●出演:ジョン・タトゥーロ/ジョン・グッドマン/ジュディ・デイヴィス/マイケル・ラーナー/ジョン・マホーニー/トニー・シャルーブ●日本公開:1992/03●配給:KUZUIエンタープライズ(評価:★★★★)

「フライド・グリーン・トマト」 (91年/米).jpg「フライド・グリーン・トマト」●原題:FRIED GREEN TOMATO●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・アヴネット●製作:ジョン・アヴネット/ジョーダン・カーナー●脚本:キャロル・ソビエスフライド・グリーン・トマト dvd.jpgキー/ファニー・フラッグ●撮影:ジェフリー・シンプソン●音楽:トーマス・ニューマン●原作:ファニー・フラッグ「フライド・グリーン・トマト・アット・ザ・ホイッスル・ストップ・カフェ」●時間:130分●出演:キャシー・ベイツ/ジェシカ・タンディ/メアリー・スチュアート・マスターソン/メアリー=ルイーズ・パーカー/スタン・ショウ/シシリー・タイソン/クリス・オドネル/ゲイラード・サーテイン/ティム・スコット/ロイス・スミス/グレイソン・フリック/アフトン・スミス/ゲイリー・バサラバ/レイノール・シェイン●日本公開:199206●配給:アスキー映画(評価:★★★★)
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トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/ マドンナ
プリティ・リーグ [DVD].jpgプリティ・リーグ 1.png「プリティ・リーグ」●原題:A LEAGUE OF THEIR OWN●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ペニー・マーシャル●製作:ロバート・グリーンハット/エリオット・アボット●脚本:ババルー・マンデル/ローウェル・ガンツ●撮影:ミロスラフ・オンドリチェク●音楽:ハンス・ジマー●時間:116分●出演:トム・ハンクス/ジーナ・デイヴィス/マドンナ/ロリー・ペティ/ロージー・オドネル/ジョン・ロビッツ/デヴィッド・ストラザーン/ゲイリー・マーシャル/ビル・プルマン/ティア・レオーニ/アン・キューザック/エディ・ジョーンズ/アン・ラムゼイ/ポーリン・ブレイスフォード/ミーガン・カヴァナグ/トレイシー・ライナー/ビッティ・シュラム/ドン・S・デイヴィス/グレゴリー・スポーレダー●日本公開:1992/10●配給:コロンビア・トライスター映画社(評価:★★★★)

Madonna - 1992 Steven Meisel   ジーナ・デイビス in「テルマ&ルイーズ」('91年/米)
Madonna - 1992 Steven Meisel.jpg テルマ&ルイーズ ジーナ・デイビス.jpg

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'91年公開作品で個人的◎は「テルマ&ルイーズ」。この年は「ツイン・ピークス」の年だった。

映画イヤーブック 1992 1.JPG映画イヤーブック 1992.jpg  テルマ&ルイーズ dvd.jpg ターミネーター2 dvd.jpg ツイン・ピークス dvd.jpg映画イヤーブック〈1992〉 (現代教養文庫)』「テルマ&ルイーズ (スペシャル・エディション) [DVD]」「ターミネーター2 特別編 [DVD]」「ツイン・ピークス ファーストシーズン [DVD]

 現代教養文庫の『映画イヤーブック』の1992年版で、1991年に劇場公開された洋画413本、邦画151本。計564本のデータを収めるほか、映画祭、映画賞の記録、オリジナル・ビデオムービー、未公開ビデオデータなども網羅しています(付録の部分が充実して、前年版より約50ページ増の470ページに)。

 本書での最高評価になる「四つ星」作品は、「わが心のボルチモア」「ワイルド・アット・ハート」「ニキータ」「マッチ工場の少女」「ダンス・ウィズ・ウルブス」「羊たちの沈黙」「エンジェル・アット・マイ・テーブル」「ターミネーター2」「コルチャック先生」「テルマ&ルイーズ」「真実の瞬間(とき)」「ボイジャー」「髪結いの亭主」「トト・ザ・ヒーロー」など、一方、邦画で四つ星は、大林宣彦監督の「ふたり」、山田洋次監督の「息子」、北野武監督の「あの夏、いちばん静かな海」、竹中直人監督の「無能の人」の4本だけで、分母数が違うけれどこの頃は概ね「洋高邦低」が続いた時期だったのかもしれません。

テルマ&ルイーズ ジーナ・デイビス.jpgテルマ&ルイーズ1.bmp 個人的なイチオシは、リドリー・スコット監督の「テルマ&ルイーズ」('91年/米)で、専業主婦のテルマ(ジーナ・デイヴィス)とレストランでウエイトレスとして働く独身女性のルイーズ(スーザン・サランドン)の親友同士が週末旅行に出掛けた先で、自分たちをレイプしようとした男を射殺したことから、転じて逃走劇になるという話(ロンドン映画批評家協会賞「作品賞」「女優賞(スーザン・サランドン)」受賞作)。

テルマ&ルイーズ2.bmp リドリー・スコットが女性映画を撮ったという意外性もありましたが、ジーナ・デイヴィスとスーザン・サランドンが、どんどん破局に向かいつつも、その過程においてこれまでの束縛や因習から解放され自由になっていく女性を好演し、彼女ら追いつつも彼女らの心情を理解し、何とか連れ戻したいとテルマ&ルイーズ ハーヴェイ・カイテル.jpgテルマ&ルイーズ ブラッド・ピット.jpg思う警部役のハーベイ・カイテルの演技も良かったです(まださほど知られていない頃のブラッド・ピットが、彼女らの金を持ち逃げするヒッチハイカー役で出ていたりもした)。
ハーヴェイ・カイテル(全米映画批評家協会賞「助演男優賞」受賞)/ブラッド・ピット

 逃避行の背景となる西部の大自然を、映像に凝るリドリー・スコット監督らしく美しく撮っていて、最後は何台ものパトカーによりグランドキャニオンの絶壁に2人は追いつめられるのですが、こうなると結末は見えてしまうものの(「明日に向かって撃て!」の現代女性版だね)、からっとした爽快感があって、ある種、日常生活や夫の面倒にかまけ、生きることに飽いている女性の「夢」を描いた作品と言えるかも(アメリカの女性ってそんなに鬱々とした日常を生きているのか?―でも、ある層はそうかもしれないなあ)。


ターミネーター2 01.jpg 「ダンス・ウィズ・ウルブス」といったアカデミー賞受賞作品と並んで「羊たちの沈黙」や「ターミネーター2」が星4つの評価を得ているというのがこの年の特徴でしょうか。

ターミネーター2L.jpg ジェームズ・キャメロン監督の「ターミネーター2」('91年/米)は、形状記憶疑似合金でできたT1000型ターミネーターが登場したものでしたが、この作品の前に「アビス」('89年)を撮り、ずっと後に「アバター」('09年)を撮ることになるターミネーター2 t1000.jpgジェームズ・キャメロン監督らしい特撮CGが冴えていたように思われ、T1000型を演じるロバート・パトリックも、華奢なところがかえって凄味がありました。一方、アーノルド・シュワルツネッガーが演じる旧タイプのT800型ターミネーターを善玉にまわしてヒューマンにした分、前作「ターミネーター」に比べ甘さがあるように思いました(これ、本書において山口猛氏が書いている批評とほぼ同じなのだが、山口氏の評価は最高評価になる星4つ)。IMDb評価は、「ターミネーター」が[8.1]、「ターミネーター2」が[8.6]で、「2」が上になっています。後からまとめて観た人は「2」の方がいいのかもしれないけれど、それぞれリルタイムで観た自分の場合、「1」のインパクトが大きかったです。

 「ターミネーター」('84年/米・英)はアーノルド・シュワルツネッガーを一気にスターダムに押し上げた作品でしたが、ジェームズ・キャメロン監督にとっても監ターミネーター14.png督デビュー作「殺人魚ターミネーター00.jpgフライング・キラー」(81年)に続く監督2作目であり、彼の出世作と言えます。ジェームズ・キャメロン監督はシュワルツネッガーと1度会食をしただけで、キャリアが浅く当初脇役で出演の予定だった彼をT800型ターミネーター役に抜擢することを決めたそうですが、シュワルツネッガーの全裸での登場シーンから始まって、そのストロングタイプのヒールぶりは今振り返ってもターミネーター    .jpg強烈なインパクトがあったように思います。ただ、この作品の後、「ターミネーター2」との間の7年間の間隔があり(ヒットしたB級映画にありがちだが、すぐにでも続編を撮りたいところが版権が複数社に跨っており、撮ろうにもなかなか撮れなかった)、その間にターミネーター01.pngシュワルツネッガーは「レッドソニア」「コマンドー」「ゴリラ」「プレデター」「バトルランナー」「レッドブル」「ツインズ」「トータル・リコール」「キンダガートン・コップ」といった作品に主演しており、こうなるともう悪役には戻れない...。特に「ツインズ」や「キンダガートン・コップ」といったコメディもそつなくこなしているのが大きいと思われ、人気面だけでなく演技面でも、「コナン・ザ・グレート」('82/米)でラジー賞の"最低男優賞"になってしまった人とは思えない成長ぶりでした(このことが「ターミネーター2」の"ヒューマンなターミネーター"役につながっていくわけか)。 

ツイン・ピークス1.jpg 因みに、91年は、これも映像表現に特徴のあるデイヴィッド・リンチ監督のテレビ・シリーズ「ツイン・ピークス」のビデオが日本でリリースされた年で、日本中のレンタルビデオ店が「ツイン・ピークス」入荷&予約待ち状態になるという大ブームになりましたが、この作品もある意味「脱日常」的な作品だったなあと(まあ、「Xファイル」にしろ「LOST」にしろ、どれもみんな「脱日常」なのだが)。

ツイン・ピークス2.jpg ビデオ14巻、全29話(パイロット版を含めると30話)、24時間強のサスペンス・ミステリーですが、毎回毎回いつもいいところで終わるので、続きを観るまで禁断症状になるという(あの村上春樹も米国でリアルタイムでハマったという)―ラストは腑に落ちなかったけれども(「えーっ、これが結末?」という感じか)、そのことを割り引いてもテレビ・ムービーの金字塔とツイン・ピークス3.jpg言えるのでは(デイヴィッド・リンチによると、このラストはあくまでも第2シーズンの最終話に過ぎず、「ツイン・ピークス」という物語そのものの結末ではないとのことだが、続編は未だ作られていない)。

 この作品のパイロット版は、もともとTVシリーズの第1話として作られたものですが、ヨーロッパへの輸出用に作られた、それ自体で映画として完結するインターナショナル・ヴァージョンが当時リリースされており、本編の「謎とき」とまではいかないですが、背景の説明としてガイド的役割を果たしています。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間.jpg また、'92年に「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」という劇場版が作られ、本編との矛盾もあるものの、こちらも本編の解説的役割を果たしています(と言っても、到底一筋縄で解るといったものではないけれど)。

ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間 [DVD]

 TV版の雰囲気をしっかり引き継いでいるし(むしろデイヴィッド・リンチ的な雰囲気はより前面に出ている)、"壊れゆくローラ"を演じたシェリル・リーの演技も悪くない。ある意味、TV版の結末よりも正統派的な展開なのかもしれないけれど、メタファーの大部分が理解不能だったなあ。《ツイン・ピークス・フリークス》と言われる人のサイトを見て、なるほどそういうことなのかと理解した次第(登場人物そのものがメタファーだったりしてるわけだ)。まあ、TVシリーズを最後まで観てから映画を観た方がいいに違いはありません(それでも、よく解らないところが多かったのだが)。

THELMA & LOUISE 2.jpgTHELMA & LOUISE.jpg「テルマ&ルイーズ」●原題:THELMA & LOUISE●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:リドリー・スコット/ミミ・ポーク●脚本:カーリー・クーリ●撮影:エイドリアン・ビドル●音楽:ハンス・ジマー●時間:129分●出演:スーザン・サランドン/ジーナ・デイヴィス/ハーヴェイ・カイテル/マイケル・マドセン/ブラッド・ピット●日本公開:1991/10●配給:松竹富士(評価:★★★★☆)

ターミネーター2-15.jpg「ターミネーター2」●原題:TERMINATOR2:JUDGMENT DAY●制作年:1991ターミネーター2 02.jpg年●制作国:アメリカ●監督・製作:ジェームズ・キャメロン●脚本ジェームズ・キャメロン/ウィリアム・ウィッシャー●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:137分(公開版)/154分(完全版)●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/リンダ・ハミルトン/エドワード・ファーロング/ロバート・パトリック/アール・ボーエン/ジョー・モートン/ジャネット・ゴールドスタイン●日本公開:1991/08●配給:東宝東和(評価:★★★)

ターミネーター ps.jpgターミネーター25.jpg「ターミネーター」●原題:THE TERMINATOR●制作年:1984年●制作国:アメリカ/イギリス●監督:ジェームズ・キャメロン●製作:ゲイル・アン・ハード●脚本:ジェームズ・キャメロン/ゲイル・アン・ハードターミネーター03.png●撮影:アダム・グリーンバーグ●音楽:ブラッド・フィーデル●時間:108分●出演:新宿文化シネマ2.jpgアーノルド・シュワルツェネッガー/マイケル・ビーン/リンダ・ハミルトン/ポール・ウィンフィールド/ランス・ヘンリクセン/リック・ロッソヴィッチ/ベス・マータ/ディック・ミラー●日本公開:1985/05●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:新宿・文化シネマ2 (85-05-26) (評価:★★★☆)
新宿文化シネマ2 2006(平成18)年9月15日閉館、2006(平成18)年12月9日〜文化シネマ1・4が「新宿ガーデンシネマ1・2」としてオープン(2008(平成20)年6月14日「角川シネマ館」に改称)、文化シネマ2・3が「シネマート新宿1・2」としてオープン

Twin Peaks (1990)
Twin Peaks (1990).jpg
Twin Peaks (ABC 1990).jpgツイン・ピークス.jpg「ツイン・ピークス」 Twin Peaks (ABC 1990/04~1991/06) ○日本での放映チャネル: WOWWOW(1991)
                                   
ツイン・ピークス4.bmp
カイル・マクラクラン
      
「ツイン・ピークス ローラ・パーマー最期の7日間」●原題:TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER(Twin Peaks:Fire Walk With Me)●制作年:1TWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER2.jpgTWIN PEAKS THE LUST SEVEN DAYS OF LAURA PALMER.jpg992年●制作国:アメリカ●監督:デイヴィッド・リンチ●製作:グレッグ・ファインバーグ●脚本:デイヴィッド・リンチ/ロバート・エンゲルス●撮影:ロン・ガルシア●音楽:アンジェロ・バダラメンティ●時間:135分●出演:シェリル・リー/レイ・ワイズ/カイル・マクラクラン/デヴィッド・ボウイ/キーファー・サザーランド●日本公開:1992/05●配給:日本ヘラルド映画(評価:★★★?)

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'90年公開作品で個人的◎は「ドゥ・ザ・ライト・シング」「ドライビング Miss デイジー」。

映画イヤーブック 1991 3298.JPG映画イヤーブック1991 教養文庫.jpg  ドゥ・ザ・ライト・シング0.bmp DRIVING MISS DASIY.bmp
映画イヤーブック〈1991〉 (現代教養文庫)』「ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]」「ドライビングMissデイジー [DVD]
 
 90年代に毎年刊行された現代教養文庫(版元の社会思想社は倒産)の『映画イヤーブック』の1991年版で、1990年に劇場公開された洋画406本、邦画146本、計552本のデータを収めています。ストーリー紹介だけでなく、主だった作品は、映画評論家が分担して執筆し、それぞれ批評を織り込んでいて、後でDVDなどで観賞する際の参考になりました(本書評価は★★★★→必見、★★★→ぜひ見る価値アリ、★★→見て損はしない、★→ヒマつぶしにはなるかも)。本書における四つ星評価(「必見」)作品から幾つか拾うと―。

ドゥ・ザ・ライト・シング1.bmp '90年公開の洋画で先ず個人的に良かったのは、スパイク・リー監督の「ドゥ・ザ・ライト・シング」('89年/米)で、ブルックリンの黒人街でピザ屋を営むイタリア系父子と店員のムーキーやその周辺の黒人たちの暑い夏の1日を、毒々しい色彩感覚とラップのリズムにのせて描いたものですが、まだメジャーになる前のスパイク・リー監督自身がピザ屋の店員のムーキー役で主演しており、作品の根柢には人種差別問題があるのですが、予定調和に終わらない結末にスパイク・リーの鋭さが窺えました。ダニー・アイエロは「ゴッドファーザーPart II」や「ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ」にもちょこっと出ていた俳優ですが、この作品で1989年・ロサンゼルス映画批評家協会賞「助演男優賞」を受賞しています。(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。

ドライビング miss デイジー.bmp 続いて良かったのがブルース・ベレスフォード監督の「ドライビング Miss デイジー」('89年/米)で、90年度アカデミー賞優秀作品賞・主演女優賞などの最多4部ジェシカ・タンディ アカデミー賞.jpg門に輝いた秀作(ジェシカ・タンディは歴代最高齢(80歳)でのアカデミー主演女優賞受賞)。1948年のアトランタを舞台に70歳過ぎのユダヤ人の元教師(ジェシカ・タンディ)と黒人運転手(モーガン・フリーマン)の交流を描いたもので、ラストの老人ホームでの二人の再会シーンは感動的。こうした"感動ストーリー"仕立てを好まない人もいますが、個人的には入れ込んでしまいました。dジェシカ・タンディの名演もさることながら、この頃のモーガン・フリーマンもいいです(本書評価★★★★/個人的評価★★★★☆)。

「ショーシャンクの空に」03.jpg モーガン・フリーマンが映画俳優として知られるようになったのは50歳の時、ジェリー・シャッツバーグ監督の「NYストリート・スマート」('87年/米)でアカデミー助演男優賞にノミネートされてからで、この「ドライビング Miss デイジー」でアカデミー主演演男「ショーシャンクの空に」02.jpg優賞にノミネートされたのは52歳の時。さらにフランク・ダラボン監督の「ショーシャンクの空に」('94年/米)でティム・ロビンスと共に主役レッドを演じて最高の評価を得、前作に続いてアカデミー主演演男優賞にノミネートされますが受賞はならず、その10年後に、クリント・イーストウッドが監督した「ミリオンダラー・ベイビー」('04年/米)でアカ「ショーシャンクの空に」1994.jpg「ショーシャンクの空に」モーガン.jpgデミー助演男優賞受賞を受賞し、4回目のノミネートでアカデミー俳優となります。(●2023年10月9日、「ショーシャンクの空に」を「TOHOシネマズ錦糸町オリナス」にて「午前十時の映画祭13」で4K版にて再鑑賞(劇評で観るのは初)。モーガン・フリーマンの堂々たる演技が、レッドを単なる"観察者"ではなくより強い存在していることを再認識した。一方で、アカデミー賞を獲れなかった理由も、主人公と異なりレッドが"行動者"ではなく"観察者"に留まっているという役柄設定のせいもあったのではないかと思った。原作は スティーヴン・キングの『刑務所のリタ・ヘイワース』。壁に貼られた女優のポスターリタ・ヘイワース、マリリン・モンロー、ラクエル・ウェルチと変わっていくのが時の流れを表していた。2023年時点で、IMDb Top 250 Moviesの第1位[スコア9.3])
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 自分としては「ショーシャンクの空に」よりも「ドライビング Miss デイジー」に感動してしまったクチなのですが、アメリカの黒人コミュニティーの間では「ドライビング Miss デイジー」は白人にとって都合のいい黒人が描かれている映画として、評判は良くないようです。確かにハリウッド映画の伝統的な黒人の描かれ方の枠を出ていないかも(でも、個人的には名作だと思う)。その対極にあるのが、「ドゥ・ザ・ライト・シング」でもあると言え、アカデミー賞授賞式のプレゼンターとして舞台に立ったキム・ベイシンガーは、「今年のノミネート作品ほど素晴らしい作品が揃った年はない。しかし一つだけ最高の傑作をアカデミーは忘れている」と発言して、「ドゥアカデミー賞 キム・ベイシンガー1.jpgアカデミー賞 キム・ベイシンガー.jpg・ザ・ライト・シング」を取り上げ、「この映画には真実がある」と訴えています(キム・ベイシンガーも「ドライビング Miss デイジー」が良くないとは言っていない。しかしながら、この頃からアカデミーのある種"偏向"を見抜いていたとも言える)。

Guddoferozu(1990).jpgグッドフェロー1.bmp マーティン・スコセッシ監督の「グッドフェローズ」('90年/米)は、実在の人物をモデルにギャングたちの生き様を描いた作品で、ヴェネツィア国際映画祭「銀獅子賞」受賞作。ロバート・デ・ニーロが口封じのために仲間を次々と殺していく様子や、ジョー・ペシがギャングの幹部に呼ばれて昇格かと思い出向いたところ、逆に殺されてしまうところなどオソロシイ。「グッドフェローズ」って、反語的意味合いを含んでいるわけね(本書評価★★★★/個人的評価★★★★)。
Guddoferozu(1990)

トータル・リコール 12.jpg 「トータル・リコール」('90年/米)は、フィリップ・K・ディック(1928-1982/享年53)の短編SF小説「記憶倍シャロン・ストーン12.jpgります」をポール・バーホーベンが監督したもので、シュワルツェネッガー演じる主人公の偽(ニセ)の妻役に、後に同じくポール・バーホーベン監督の「氷の微笑」('92年/米)に主演するシャロン・ストーンが出ていました。優れたSF映画に贈られる「サターンSF映画賞」の第17回受賞作。この作品、最近リメイクされています(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。

フィリップ・K・ディック原作映画 「ブレードランナー」 ('82年/米)/「マイノリティ・リポート」('02年/米)
ブレードランナー チラシ.jpg ブレードランナー.jpg    マイノリティ・リポート01.jpg マイノリティ・リポート 02.jpg 


ロボコップ 警官.jpg 因みに、ポール・バーホーベン監督は「ロボコップ」('87年/米)で米映画界に進出して成功を収めたオランダ人です。「ロボコップ」は、殉職した警官の遺体を利用したサイボーグ警官が活躍するバイオレンスSFアクション映画で低予算で作られながらもヒットし、「ロボコップ2」「ロボコップ3」やテレビドラマシリーズも作られました(2014年にリメイクされた)。サイボーグ警官を演じたのはピーター・ウェラーでしたが、アーノルド・シュワルツェネッガーも候補だったとロボコップ 1987 pw.jpgか。犯罪多発都市としてデトロイト市を舞台としていますが、デトロイトは当時から既に自動車産業の衰退で荒廃していたため、ロケのほとんどはダラスで行われたそうです。暴力シーンも多いですが、一方で、ピーター・ウェラーの演じる哀愁を帯びた主人公と、そのロボット歩き(ピーター・ウェラーしかできなかったので彼がスタントも演じた)はなかなかのものでした。ラストで、悪人がオム二社(ロボコップを造った会社)の会長を人質にして逃走を図りますが、悪人はオムニ社の役人で、ロボコップに内蔵されていた「オムニ社役員には危害を加えない」というプログラムがあって手を出せないでいたところ、会長が悪人に「お前はクビだ!」と叫んだことでプログラムの規定が消滅し、ロボコップは悪人を射殺するという、そうしたコミカルな面もありました(これも「サターンSF映画賞」の受賞作)。

  
バタアシ金魚ド.jpgバタアシ金魚 dvd2.bmp 洋画ばかり挙げましたが、邦画では「バタアシ金魚」('90年/シネセゾン)なんてあったなあ。個人的には自主制作時代の作品も何本か観たことのある松岡錠司監督の劇場用映画デビュー作、主演の筒井道隆(坊主「バタアシ金魚」.bmp頭で出演)・高岡早紀にとっても共にデビュー作ということで、新鮮味はありました。コミックが原作ながらも、インディペンデント系の雰囲気を残してしてまあまあ面白かったけれど、ストーリーとしては中途半端だった印象も。過食症でブタのように太った主人公も高岡早紀が演じたのだろうか。顔があまり映っていなかったが...(本書評価★★★★/個人的評価★★★☆)。 


ドゥ・ザ・ライト・シング 03.jpg

ドゥ・ザ・ライト・シング dvd.jpg「ドゥ・ザ・ライト・シング」●原題:DO THE RIGHT THING●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:スパイク・リー●撮影:アーネスト・ディッカーソン●音楽:ビル・リー●時間:120分●出演:スパイク・リー/ダニー・アイエロ/ルビー・ディー/サミュエル・L・ジャクソン/オジー・デイヴィス/リチャード・エドソン/ジョン・タトゥーロ/ビル・ナン/ロージー・ペレス/ ジョイ・リー/ジャンカルロ・エスポジート/ジョン・サベージ/ロビン・ハリス●日本公開:1990/04●配給:ユニヴァーサル=UIP(評価:★★★★☆)ドゥ・ザ・ライト・シング [DVD]
ドライビング miss デイジー dvd.bmp
ドライビング miss デイジー ちらし.jpg「ドライビング Miss デイジー」●原題:DRIVING MISS DASIY●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ブルース・ベレスフォード●製作:リチャード・D・ザナック/リリ・フィニー・ザナック●原作・脚本:アルフレッド・ウーリー●撮影:ピーター・ジェームズ●音楽:ハンス・ジマー●時間:99分●出演:ジェシカ・タンディ/モーガン・フリーマン/ダン・エイクロイド/パティ・ルポーン/エスター・ローレ/ジョアン・ハヴリラ/ウィリアム・ホール・Jr.●日本公開:1990/05●配給:東宝東和(評価:★★★★☆)ドライビングMissデイジー [DVD]

「ショーシャンクの空に」d.jpg「ショーシャンクの空に」01.jpg「ショーシャンクの空に」●原題:THE SHAWSHANK REDEMPTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:フランク・ダラボン●製作:ニキ・マーヴィン●撮影:ロジャー・ディーキンス●音楽:トーマス・ニューマン●原作:スティーヴン・キング「刑務所のリタ・ヘイワース」●時間:142分●出演:ティム・ロビンス/モーガン・フリーマン/ボブ・ガントン/ウィリアム・サドラー/クランシー・ブラウン/ギル・ベローズ/ジェームズ・ホイットモア●日本公開:1995/06●配給:松竹富士(評価:★★★★)ショーシャンクの空に [DVD]

「グッドフェローズ」.jpg「グッドフェローズ」●原題:GOODFELLAS●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:アーウィン・ウィンクラー●脚本:ニコラス・ピレッジ/マーティン・スコセッシ●撮影:ミヒャエル・バルハウス●時間:145分●出演:レイ・リオッタ/ロバート・デ・ニーロ/ジョー・ペシ/ロレイン・ブラッコ/ポール・ソルヴィノフランク・シベロ/グッドフェローズ dvd.jpgマイク・スター/フランク・ヴィンセント/チャック・ロー/フランク・ディレオ/サミュエル・L・ジャクソン/クリストファー・セロ/スザンヌ・シェパード/キャサリン・スコセッシ/チャールズ・スコセッシ●日本公開:1990/10●配給:ワーナー・ブラザーズ(評価:★★★★)グッドフェローズ スペシャル・エディション 〈2枚組〉 [DVD]

トータル・リコール [DVD]
トータル・リコール003.jpgトータル・リコール dvd.jpg「トータル・リコール」●原題:TOTAL RECALL●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:バズ・フェイシャンズ/ロナルド・シュゼット●脚本:ロナルド・シュゼット/ダン・オバノン/ゲイリー・ゴールドマン●撮影:ヨスト・ヴァカーノ●音楽:ジェリー・ゴールドスミス●原作:フィリップ・K・ディック「記憶売ります」●時間:113分●出演:アーノルド・シュワルツェネッガー/レイチェル・ティコトータル・リコール シャロン・ストーン.jpgティン/シャロン・ストーン/ロニー・コックス/マイケル・アイアンサイド/マーシャル・ベル/メル・ジョンソン・Jr/ ロイ・ブロックスミス/レイ・ベイカー/マイケル・チャンピオン/デビッド・ネル●日本公開:1990/06●配給:東宝東和(評価:★★★☆)

ロボコップ 1987.jpgロボコップ pw.jpg「ロボコップ」●原題:RoboCop●制作年:1987年●制作国:アメリカ●監督:ポール・バーホーベン●製作:アーン・L・シュミット●脚本:エドワード・ニューマイヤー/マイケル・マイナー●撮影:ヨスト・ヴァカーノ/ソル・ネグリン●音楽:ベイジル・ポールドゥリス●時間:103分●出演:ピーター・ウェラー/ナンシー・アレン/ロニー・コックス/カートウッド・スミス/ダン・オハーリー/ミゲル・フェラー/ロバート・ドクィ/フェルトン・ペリー/レイ・ワイズ/ポール・マクレーン●日本公開:1988/02●配給:ワーナー・ブラザース映画(評価:★★★★)
ロボコップ/ディレクターズ・カット [DVD]

高岡早紀(17歳)(テレフォンカード)/「バタアシ金魚 [DVD]
バタアシ金魚 1990.jpg「バタアシ金魚」2.bmpバタアシ金魚 dvd.jpg「バタアシ金魚」●制作年:1990年●監督・脚本:松岡錠司●製作:日本ビクター●撮影:笠松則通●音楽:茂野雅道●原作:望月峯太郎●時間:95分●出演:高岡早紀/筒井道隆/白川和子/伊武雅刀/東幹久/土屋久美子/浅野忠信/大寶智子/橋本真由子/いしかわじゅん/桜金造/山村美智子/佐藤オリエ/安原麗子●公開:1990/06●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネパトス新宿 (90-06-16)(評価:★★★☆)

筒井道隆(19歳)・浅野忠信(16歳)共に映画デビュー作
「バタアシ金魚」筒井・浅野.jpg「バタアシ金魚」浅野.jpg  
 「バタアシ金魚」で、浅野忠信は丸刈りで牛川工業高校水泳部の主将ウシを演じた。 
 浅野忠信は、自身のSNSのプロフィールとコメントが書かれたページで、「バタアシ金魚」について「撮影の時はあまり楽しくなかったです。撮影以外の時も楽しくなかったです」とコメント。他の部員役は床屋でカットしたが、「僕だけ八王子まで行って、そこから車でちょっと行ったふつうの家に連れてかれ、牛のフンくさい太陽がギラギラ照っている外で、とても暑い思いをしてバリカンの試し刈りとしか思えない断髪式をやった事がとてもムカムカ」したとし、さらに「人の頭を刈るだけ刈って長さメチャクチャ」「あとはメイクさん、向こうで切ってと言って、端の方で頭刈られて、極めつけは、さっきまで僕が頭を刈られてた所でロケをやっているんですから、もうバクハツ寸前でした」と。しかし最後は「でも泳ぎがうまくなったし、世の中の厳しさが分かったし電車にも詳しくなったし、友達ができたのでよかったです。スタッフの人はいい人ばかりでした」としている(引用:「浅野忠信」インスタグラム(@tadanobu_asano))

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往年の大物俳優のトリビア集。洋画ファンには気軽に楽しめる本。 

ハリウッド・スキャンダル―.jpgハリウッド・スキャンダル.jpg 『ハリウッド・スキャンダル―ちょっと気になる話 (現代教養文庫)

 プレイボーイ誌に連載されたゴシップ欄の集大成の抄訳で(原題"CELEBRITY TRIVIA:A Collection of Little‐Known Facts About Well‐Known People"、原著刊行は1980年)、ハリウッド映画のスターを中心に、映画監督や歌手などのトリビアを、編訳者が選んだもの。

 この翻訳が出て間もなくして読んだのですが、振り返ってみれば、出てくるのは大物スター、それも「超大物クラス」ではあるものの、そうドロドロした話ばかりでなくいい話もあったりして、洋画ファンには気軽に楽しめる本でした(版元が無くなっているので、新たに入手しようとすれば古書市場からになるが)。

ピーター・フォーク2.jpg 個人的に一番印象に残った話は、ピーター・フォークのエピソードで、彼は3歳の時に悪性の腫瘍のため右目を取り、代わりに義眼を入れていたのですが、12歳の時、野球の試合で二塁打を三塁打にしようと三塁にかけ込んだらアンパイアがアウトにしたので、「どこ見てんだヨォ。お前のがよっぽどこれが必要じゃねぇかァ?」と、おもむろに義眼を取り出して怒鳴ったことがある―というもの。

 気が強かったんだなあ。因みに、ベテラン性格俳優のトーマス・ミッチェルが1962年にブロードウェイの舞台で「コロンボ副隊長」を演じたのを、TV作家のリチャード・レヴィンソンとウィリアム・リンクがTV「刑事コロンボ」にするため、歌手のビング・クロスビーにコロンボ役の白羽を立てたもののクロスビーの都合がつかず、それでピーター・フォークにコロンボ役が廻ってきたとのこと。

Gregory Peck/Gary Cooper
グレゴリー・ペック .jpgゲイリー・クーパー .jpg この手の話は本書の中で他にも幾つか紹介されていて、グレゴリー・ペックは「真昼の決闘」の主役を降りたが、「駅馬車」(1939)の主役を降りたゲイリー・クーパーが代わりに主役をやり、アカデミー主演男優賞を獲得した―。因みに、ウィキペディアによれば製作者のスタンリー・クレイマーはこの映画を「誰も守ろうとするガッツが無かったので滅んでいった町についての話だ」と語ったといい、別の本で、ジョン・ウェインなどは同じような理由でこの作品が好きではなかったというような話を読んだことがあります(作家の村上春樹氏が『村上さんのところ』('15年/新潮社)真昼の決闘 ド.jpgで「何度も観返している映画ベスト3はなんですか?」との問いに、「ジョン・フォードの『静かなる男』と、フレッド・村上春樹 09.jpg村上さんのところs.jpgジンネマンの『真昼の決闘』です。四面楚歌みたいな状況に置かれたときに(何度かそういうことがありました)、よく観ました。見終わると、「僕もがんばらなくちゃな」という気持ちになれます。どちらもとてもよくつくられた映画です。何度観ても飽きません」と答えていた。同氏によれば、アメリカのホワイトハウスの映画室で、もっとも数多く大統領に観られた映画は「真昼の決闘」だという話を聞いたことがあるそうな)

ユル・ブリンナー.jpg 「マイ・フェア・レディ」のヒンギス教授役で知られるレック・ハリスンは、ミュージカル「王様と私」の"王様"役を断り、代わりに初舞台を飾り、大成功を収めたのが当時新人のユル・ブリンナーであるとのこと。当然のことながら、そのまま映画でも"王様"を演じたユル・ブリンナーは、アカデミー主演男優賞を受賞しています("アンナ"役のデボラ・カーもゴールデングローブ賞主演女優賞を受賞)。

 ジェームズ・ディーンはテレビ出演のために映画「銀の盃」(1955)の出演を断ったが、ポール・ニューマンがその代役をやり、ポール・ニューマンのデビュー作となったとのこと(この映画は海外ではDVD化されているが、日本では現在['12年]リリースされていない)。

East of Eden .jpg ポール・ニューマンは、「エデンの東」(1955)では逆にジェット・リンク役を(これは「シェーン」のアラン・ラッドが役を降りたために空いてしまっていたのだが)ジェームズ・ディーンにもって行かれ涙をのむが、一方、「傷だらけの栄光」(1956)はジェームズ・ディーンが主役をやるはずだったのが、'55年9月に彼が自動車事故死したため、ポール・ニューマンが代わりにやることになった―。

ロバート・レッドフォード.bmp ジョン・ガ―フィールドが「欲望という名の電車」(1951)のスタンリー・コワルスキー役を断ったために、その役が廻ってきたのが明日に向かって撃て 0 1.jpgマーロン・ブランド。そのマーロン・ブランドは、「明日に向かって撃て!」(1969)でポール・ニューマンと共演するはずだったが、当時起きたキング牧師暗殺事件に衝撃を受けてその気になれず、結局代わりに大役を射止めたのがロバート・レッドフォードであるとのこと(これとは別に、ポール・ニューマンと共同で脚本を買い取ったスティーブ・マックイーンがブッチ役で、ポール・ニューマンがサンダンス役の予定だったのが、スティーブ・マックイーンが都合により出演しなくなったため、ポール・ニューマンがブッチ役に回り、当時無名のロバート・レッドフォードがサンダンス役に抜擢されたとの話もある)。

『追憶』(1973) 13.jpg卒業 [DVD] 2L.jpg そのロバート・レッドフォード主演の三大作品「スティング」「追憶」「華麗なるギャツビー」の何れも、ウォーレン・ビーティが主演を断ってロバート・レッドフォードの所に廻されたもの。

 ロバート・レッドフォード自身も、「卒業」(1967)のベンジャミン・ブラッド役を断っていて、その役はダスティン・ホフマンに廻った―(ロバート・レッドフォードとダスティン・ホフマンでは全然雰囲気違う感じがするけれど)。

 ロバート・レッドフォードは「バージニア・ウルフなんか恐くない」(1966)のニック役、「ローズマリーの赤ちゃん」(1968)のガイ・ウッドハウス役、「ある愛の詩」(1970)のジャッカルの日 パンフ2.jpgある愛の詩 1970.jpgRosemary's Baby2.jpgオリバー・バレット役、「ジャッカルの日」(1973)のジャッカル役を降りているとのことです(「ローズマリーの赤ちゃん」はジョン・カサヴェテス、「ある愛の詩」はライアン・オニール、「ジャッカルの日」はエドワード・フォックスがそれぞれ主演することになった)。

 最終的に主役俳優が決まるまでいろいろあったんだなあと、改めて思いました。

真昼の決闘.jpg「真昼の決闘」●原題:HIGH NOON●制作年:1952年●制作国:アメリカ●監督:フレッド・ジンネマン●製作:ス真昼の決闘 DVD.jpgタンリー・クレイマー/カール・フォアマン●脚本:カール・フォアマン●撮影:フロイド・クロスビー●音楽:ディミトリ・ティオムキン●原案:ジョン・W・カニンガム●85分●出演:ゲイリー・クーパー/グレイス・ケリー/トーマス・ミッチェル/ケティ・フラド/ロイド・ブリッジス/ロン・チェイニー・ジュニア/イアン・マクドナルド/シエブ・ウーリー/リー・ヴァン・クリーフ/ロバート・ウィルク/ジャック・イーラム●日本公開:1952/09●配給:ユナイテッド・アーチスツ日本支社=松竹●最初に観た場所:池袋・文芸座ル・ピリエ(83-01-10)(評価:★★★☆)
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「英語」の本と言うより、暇な時に読む「映画教養書」といった感じか。

使ってみたい映画の英語―.JPG使ってみたい映画の英語.jpg使ってみたい映画の英語 男の名セリフを味わう

 「風と共に去りぬ」「カサブランカ」から「ラスト サムライ」「スクール・オブ・ロック」まで、年代別に44本の映画の中のセリフを取り上げ、そのセリフの背景となるあらすじを大体2ページぐらいで紹介して、あとは、その作品についての一口メモと英語のセリフについての一口メモが1ページずつあるといった構成になっています。

 きれいに纏まっているので、語学雑誌か何かの連載かと思ったりもしましたが、書き下ろしみたい。

 あらすじの説明に各2ページも割いているわけで、どちらかと言うと、「英語」の本と言うより「映画」の本であり、サブタイトルに「男の名セリフを味わう」とあるように、取り上げられているのはすべて男性登場人物のセリフです(サブタイトルの方が内容に即している)。

 あとがきにも、編集者から「団塊の世代を中心に、中高年男性が読んで楽しめるような、カッコいい男たちの名セリフ集を作れないか」との話があって本書を執筆したとあり、「同世代の男性に向けて書いた」(著者は1953年生まれ)ともあります。

 従って、映画の内容を思い出しながら、再度その作品を見る際は幾つかのセリフにこだわって観る楽しみにするといった読み方になるのでしょうか。

 著者自身が、そのセリフが語られた背景を丁寧に解説しているわけで、「使ってみたい」と言っても、そう使うような場面が日常であるようにも思えない印象を受けました。

 作品に関する一口メモには、俳優に関するエピソードや映画が作られた際の裏話なども織り込まれていてそれなりに楽しめましたが、メジャーな作品ばかり取り上げているため、映画ファンからすれば"一般常識"の範疇内の話も多く、一方、「英語」の方を期待した読者には、物足りないものとなっているのではないかと思いました。

 「使ってみたい」は編集者がつけたタイトルなんだろなあ、きっと。
 暇な時にさっと目を通す「映画」の本(映画教養書)といった感じでしょうか。

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見るだけでも楽しいが、手塚治虫自身による裏話が多く盛り込まれており、読んでも面白かった。

手塚治虫劇場.jpgジャングル大帝917.JPG 
手塚治虫劇場―手塚治虫のアニメーションフィルモグラフィー』(1997/07 手塚プロダクション) (カバーイラスト:和田 誠)/「ジャングル大帝 レオのうた(劇場版1966)」作詞:辻真先/作曲:冨田勲/歌:弘田三枝子

 手塚アニメのフィルモグラフィーで、'97年刊行(初版は'91年)。'60(昭和35)年公開の「西遊記」から'97年公開の「ジャングル大帝」までの劇場公開されたアニメーション映画作品、並びに、'63年から'66年にかけて放映された「鉄腕アトム」から、'97年に放映された「聖書物語」までのTVアニメ作品(「バンパイヤ」などの実写との合成版を含む)の、画像や上映・放送記録データを収録しています。

 主要作品については、作者・手塚治虫自身がメディア各誌等で語ったその作品に関する長文の談話が付されていて、主にアニメーションの制作の苦労話や技術的なことについて触れているものが多く、そうした意味では、アニメに特化した編集の趣旨が明確に出ていていいです。

 冒頭の'88年の「朝日賞」受賞時の講演(作者が亡くなる1年前)からしてまさにそうであり、殆どアニメ制作の現場にいる玄人に向けて話すような内容を、一般の人にも分かり易いよう噛み砕いて語っていて、それがそのまま、日本のアニメ史や手塚アニメの特徴を語ることにもなっています。

 代表作「鉄腕アトム」に対する作者の後の自己評価はさほど高くなかったように思いましたが、それでも日本のTVアニメにおいて画期的な作品ではあったのだなあと。その自負は、作者自身の談話からも感じ取れます。
 
 取り上げられているている作品の中で個人的に思い出深いのは、「ジャングル大帝」のテレビアニメ版と旧い方の劇場版('66年/東宝)。

「ジャングル大帝 テレビアニメ 昭和40年.jpgジャングル大帝 テレビ 1965.jpgジャングル大帝 テレビ 1965 2.jpg 原作のオリジナルは、'50(昭和25)年から5年間「漫画少年」に連載されたもので、「鉄腕アトム」のオリジナルよりも以前になりますが、それを虫プロが手直しして、TV版に改変し放映を開始したのが'65(昭和40)年で、当時はまだカラーテレビの普及率が低かったものの(東京でカラー受像機は5千台程度)、番組スポンサーである電機メーカーのカラーテレビを普及させたいとの強い意向から、日本初のカラーアニメ番組が実現したとのことです。
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 このスポンサーというのは「三洋電機」のことであり、喜劇俳優の「エノケン」こと榎本健一(1904-1970)の「うち~のテレビにゃ色がない 隣のテレビにゃ色がある あらまきれいとよく見たら サンヨー・カラーテレビ」という軽妙ながらも視聴者の購買意欲をそそるコマーシャルが流れていました(因みににエノケンがCMに顔を出すのはこの作品だけで、初めてのCM出演がカラーで喜んだそうだ)。

弘田三枝子(1965)
弘田三枝子 1965.jpg冨田勲6.jpg また、番組のエンディングテーマ「レオのうた」の作曲者は、後にシンセサイザー音楽作家として名を馳せる冨田勲(1932-2016)で、弘田三枝子(1947-2020)のパンチの効いた歌唱力により、アニメのエンディングテーマとしては人々の記憶に最も残るものの1つとなりました。弘田三枝子は、伊東ゆかりらと同様、少女時代から米軍キャンプで唄っていた経歴の持ち主で、このテーマを唄っている頃の彼女はややふっくら体型でしたが、自分で作ったカロリーブックをもとに、1日の食事を2000キロカロリー以内に抑えて半年間で17キロのダイエットに成功、1969年に「人形の家」がブレイクして第11回日本レコード大賞の歌唱賞を受賞し、1970年には『ミコのカロリーBOOK』を出版し150万部を超えるベストセラーになりました。

「ジャングル大帝 1966.jpgジャングル大帝・サンダ対ガイラ.gif 「ジャングル大帝」は、本書の手塚治虫自身の談によれば視聴率40%を超えたとのことで、その翌年に映画化され、主人公のレオが大人になってからの物語「新ジャングル大帝 進めレオ!」も引き続きテレビ放映されました。

「ジャングル大帝」('66年/東宝)ポスター(併映「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年/東宝))

 映画版は劇場で見ましたが、オープニングの迸るような色彩の噴出に、ただただ圧倒された思い出があります(おそらくテレビではまだ白黒でしか見ておらず、それがいきなり大型スクリーンでカラーだったから衝撃をもって受け止められたのではないか)。

 本書の手塚治虫の談話を読むと、まずTVアニメの方は、音楽に経費を使い過ぎて、アニメの方は使い回しするなど苦心したとのこと、また、原画の色が当時のテレビ受像機ではそのままに出ないので、実際に映ったものを何度も見て絵具を塗り直したとのこと、それが今度は映画になると、その色がそのまま映像に出てしまうので、また修正と、かなり苦労したようです。

 因みに「ジャングル大帝」はその後、'97年(監督:竹内啓雄)、'07年(監督:谷口悟朗)に映画化されていますが(本書第2版は'97年版「ジャングル大帝」の公開に合わせて刊行されている)、それらはDVD化されているのに対し、この'66年版(監督:山本暎一)はDVDが無いようですが、他作品とバンドルされて、期間限定でDVD化されたりしたことはあったかもしれません。(このブログを見た人から、実際に「鉄腕アトム」「ジャングル大帝」「新宝島」の3部作DVD-BOX として、2005年と2008年に発売されていることを、メールで教えていただいた(感謝!)。期間限定生産だったが、マーケットプレイスで購入可能のようだ。)

w3.JPG 「ジャングル大帝」のテレビ放映時期は「鉄腕アトム」の終わりの方と重なっており、ほぼ同じ時期に虫プロのTVアニメ第2弾作品「W3(ワンダースリー)」の放映がありましたが('65年6月~'66年6月フジテレビで放映)、「W3」は「鉄腕アトム」と「ジャングル大帝」のどちらのアニメチームにも入れなかった虫プロのスッタフの「俺たちは落ちこぼれじゃないか」というひがみムードを払拭するために、そうしたスッタフの自発的なアイディアを尊重して作られた作品であるとのことです。

 もともと宇宙からきたリスのシリーズを考えていたところ、他のプロダクションでそっくりな企画が進行しているとの情報が入ってスパイ疑惑まで生じ、豊田有恒氏が虫プロを辞める事態にまで至ったわけですが(これが巷にいう「W3事件」)、その別のプロダクションの作品というのが「宇宙少年ソラン」です。

 「少年マガジン」で「W3」の連載が始まった後に「宇宙少年ソラン」の連載も同誌で始まり、しかもアニメ化された番組のスポンサーは菓子メーカー同士(ロッテ(W3)と森永(ソラン))の競合だったという―。結局、「W3」は「少年マガジン」の連載を中断し、「少年サンデー」で再開。但し、アニメの方は、途中から裏番組に「ウルトラQ」がきて、ガクンと視聴率が下がってしまったとのことですが、アメリカのローカル局に買われたとのことです(ローカル局のためか、吹き替え無しの字幕放送だった)。

 この本は、見ているだけでも楽しいですが、作者・手塚治虫自身による現場の裏話がふんだんに盛り込まれており(「W3事件」に関しても手塚自身が殆どの経緯を述べている)、読んでも面白かったです。

ジャングル大帝 1965.jpgジャングル大帝3.jpg「ジャングル大帝」●製作:山本暎一●チーフ・ディレクター:林重行●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●出演(声):太田淑子/小池朝雄/松尾佳子/明石一/田村錦人/勝田久/加藤精三/熊倉一雄/川久保潔/関根信昭/山本嘉子/千葉順二●放映:1965/10~1966/09(全52回)●放送局:フジテレビ

ジャングル大帝 劇場版 (1966)b.jpgジャングル大帝(劇場版)1966年2.jpg「ジャングル大帝」(劇場版)●制作年:1966年●監督:山本暎一●脚本:辻真先●音楽:冨田勲●原作:手塚治虫●時間:75分●声の出演:太田淑子/明石一/勝田久/松尾佳子/田村錦人/緑川稔●公開:1966/07●配給:東宝(評価:★★★★)

W3(ワンダースリー).jpgW3(ワンダースリー)2.jpg「W3(ワンダースリー)」●プロデューサー:黒川慶二郎●チーフ・ディレクター:杉山卓●音楽:宇野誠一郎●原作・総監督:手塚治虫●出演(声):白石冬美/近石真介/小島康男/沢田和子/金内吉男/池田一臣/桜井良子●放映:1965/06~1966/06(全52回)●放送局:フジテレビ

  
冨田勲.jpg 冨田勲ド.jpg  冨田 勲(1932-2016/享年84) 
関連作品
【TV番組】
宇宙人ピピ.jpg キャプテンウルトラ2.jpg 空中都市008(中山千夏)2.jpg宇宙人ピピ」('65年)/「キャプテンウルトラ」('67年)/「空中都市008」('69年)
【映画】
飢餓海峡(ポスター)65年.jpg たそがれ清兵衛 dvd.jpg飢餓海峡」('65年)/「たそがれ清兵衛」('02年)

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「五社協定」はまさに、三船、裕次郎にとっての「破砕帯」であった。

黒部の太陽 ミフネと裕次郎.jpg 黒部の太陽 全記録.jpg  黒部の太陽 ポスター.jpg 熊井啓.bmp 熊井 啓(1930‐2007)
黒部の太陽』['05年]『映画「黒部の太陽」全記録 (新潮文庫)』['09年] 映画「黒部の太陽 [通常版] [DVD]」['68年]ポスター

黒部の太陽 ポスター2.jpg 映画「黒部の太陽」('68(昭和43)年/日活)は、或る一定世代おいては学校の課外授業で観た人も多いと思いますが、自分もその一人。この度、石原プロが、東日本大震災の被災地支援のため全国でチャリティー上映会を催すとのことで、その第1弾の上映が来月('12年5月)に黒部市で行われ、年末までに全国約150カ所を巡って上映するそうですが、どういう上映形態になるのでしょうか。

 と言うのは、生前の石原裕次郎が「こういった作品は映画館の大迫力の画面・音声で見て欲しい」と言い遺したためソフト化されていない一方で(2013年3月DVD化)、スクリーン上映もこれまで殆ど行われておらず、裕次郎の13回忌や17回忌などに、石原プロが関係するイベントで上映されている程度。しかも、封切版は3時間15分の作品ですが、海外公開用に編集された「約1時間がカットされたもの」を公開しているとのこと(本書著者あとがき)、過去のノーカット版の上映は、大阪市と黒部市での2回のみだそうです。

黒部の太陽2.jpg 今年('12年)3月17日にはNHK‐BSプレミアムで33年ぶりにTV放映され、「特別篇」と称した2時間20分の海外用短縮版を観ましたが、ラストの三船敏郎がダム完成後に工事用の隧道内を歩くシーンなど、作品において不可欠と思われる場面がカットされているように思われました。こうなると、不完全燃焼感の残る再放送を観るよりも、こちらの監督自身による、映画完成までの苦難の道程を記録した記録を読む方が面白かったりして...。

 勿論、映画を観た上での相乗効果的な面白さですが、まだ映画を観ていない人は、本書を読んでから映画を観るとより面白いと思います(本書後半には、映画シナリオの完全版を掲載)。

黒部の太陽3.jpg 本書によれば、映画制作のきっかけは、石原プロの専務・中井景が、毎日新聞編集委員・木本正次が'64(昭和39)年に毎日新聞に116回に渡り連載した原作小説『黒部の太陽』に着目したことですが、'62年に日活から独立した石原裕次郎は、'63年には独立第1弾として、「太平洋ひとりぼっち」を公開するものの興行面では失敗に終わり(これは母親に連れられてリアルタイムで観たなあ)、ややジリジリしていたみたいで、中井が著者に監督を打診する辺りなどは、なかなか興味深いものがあります。

 一方で中井は三船プロの三船敏郎にも渡りを付け、監督が熊井啓ならば、ということで制作・出演の了解を得(三船は初め熊井のことをよく知らなかったみたいだが)、映画は石原プロと三船プロという俳優が興したプロダクションによって制作されることになりますが、当時は大手の映画会社が制作・配給・劇場公開までを仕切るのが通常で、裕次郎、三船という日活・東宝の看板スターでも、独立系プロダクションが映画を作るというのは大変なことだったようです。

 特に石原・三船らを苦しめたのは、当時映画会社の間にあった「五社協定」と呼ばれる取り決めで(当初は、松竹・東宝・大映・東映・新東宝の5社、後に新東宝に替わって日活が加わる)、協定では、実質上ある映画会社の俳優は、その映画会社の撮影所でその映画会社の監督以下スタッフのもと映画に出演し、制作・配給し、その映画会社の系列映画館でしかできないというもので、日活に縁のある石原裕次郎が、東宝に縁のある三船敏郎と組んで、日活社員であった熊井啓に映画会社の事前了解無く脚本を書かかせ(井手雅人の脚本の前に熊井自身が一度脚本を書いている)、映画を撮らせるというのは、そうした閉鎖的な業界から見れば掟破りのことだったようです。

 '64年に三船敏郎と石原裕次郎は「三船プロ・石原プロの共作で『黒部の太陽』を映画化する」と"中央突破"的に会見し、このことは同じく会見に臨んだ著者(熊井啓)の日活解雇問題にまで発展、こうした経緯が、映画化が実現するまでに時間を要した原因となりますが、その間にも、石原プロが厳しい財政状況だった裕次郎は、スタッフ・キャスティングに必要な人件費が充分にないため、劇団民藝の主宰者である宇野重吉を訪ねて協力を依頼し(宇野重吉は協力・出演を快諾。映画は、息子・寺尾聡の映画初出演作ともなった)、また、制作に当たって映画会社から圧力が掛かっていた関西電力を訪ね、経営層トップにシンパを築くことなどもしていきます

 '66年に再び三船と裕次郎が会見を開き、『黒部の太陽』を映画化すると再発表しますが、資金面だけでなく撮影面でも大掛かりであったため(トンネル工事の再現セットが愛知県豊川市の熊谷組の工場内に作成された)、クランクインしてからも苦難の連続で、トンネル内の出水シーンでは、420トンの水タンクの水が想定以上に勢いよく押し寄せ、裕次郎が親指を骨折したほか負傷者が何人も出たとのことです(奔流に流される裕次郎を救出しようと監督がカメラの前に飛び出したのが映っている)。

高熱隧道.jpg トンネル工事、とりわけ「関電トンネル」にフォーカスした脚本は成功していると思われますが、結局、ダム工事で一番大変なのが隧道建設であることは、戦前・太平洋戦争直前の黒部第三ダムの建設を描いた吉村昭のノンフィクション小説『高熱隧道』('67年/新潮社)からも窺えます(この「黒部第三ダム」の建設の大変さは、映画では、裕次郎演じる熊谷組下請け会社・岩岡(モデルは笹島建設の社長)の父・源三(辰巳柳太郎)などによって再現されている)。

高熱隧道 (新潮文庫)

 因みに、"昭和の大工事"とされた黒部川第四発電所建設での犠牲者が171名に対し、この第三発電所建設は全工区で300名以上の死者が出て、吉村昭が小説でフォーカスした阿曾原谷側工事だけでも188名の死者が出ています(この時は温泉水脈の傍を掘ったため、"灼熱地獄"の中での工事だった)。

黒部の太陽 5.jpg 黒四ダムの「関電トンネル」は全長5.4キロを掘り進む工事でしたが、熊谷組坑口から1.4キロの地点で「大破砕帯」にぶつかり、湧水を含んだ地中の軟弱層が切羽を押し潰すという事態が繰り返し起きて工事は難航(こちらは、漏水による言わば"水地獄"状態)、これが、本書を読むと、「五社協定」によって映画作りが難航したことと丁度ダブって見え、まさに「五社協定」は、三船、裕次郎にとっての「大破砕帯」であったわけです。

 その他にも本書を読んで知ったのは、三船敏郎が演じた関西電力黒四建設事務所次長・北川の娘(日色ともゑ)が白血病で亡くなるという話は、モデルとなった芳賀公介という人が、関電トンネルの完成とほぼ同じ頃に娘を亡くしており、事実に基づいた話だったのだなあと。

「黒部の太陽」03.jpg 関電トンネルが貫通してもいい頃なのになかなか貫通せず、その日も皆諦めて帰りかけた時に、裕次郎演じる岩岡が鑿を突っ込んだら貫通していたというのも、笹島氏の話によると事実だそうで、それで、貫通祝賀の儀式は、反対面から掘っていた間組ではなく、熊谷組の仕切りになったそうです。

「黒部の太陽」.jpg 47歳の三船敏郎の演技は重厚。貫通祝賀の日に娘の訃報が入るという、歓喜と悲嘆の入り混じる場面の演技は秀逸ですが、撮影前夜に笹島氏らと酒を飲み、しかも三船は朝まで飲んで、真っ赤に充血した目で撮影現場に現れたそうで、それが黒部の太陽1.jpg映画では演技にリアルさを持たせ、それも役作りの一環だったわけかと、後で笹島氏は悟ったそうです。

 石原裕次郎(1934‐1987)、三船敏郎(1920‐1997)が亡くなった際の著者の追悼文が付されていますが、まさか三船を兄貴分と慕っていた裕次郎の方が先に亡くなるとは。プロデューサーの中井景も脚本の井手雅人も鬼籍に入り、裕次郎、三船への追悼文を書いた著者・熊井啓(1930‐2007)も、本書が文庫化される前に亡くなっているのが寂しいです。
 
黒部の太陽58.jpg「黒部の太陽」●制作年:1968年●製作:三船敏郎(三船プロダクション)/中井景(石原プロモーション)/石原裕次郎(石原プロ)●監督:熊井啓●脚本:井手雅人/熊井啓●撮影:金宇満司●音楽:黛敏郎●原作:木本正次「黒部の太陽」●時間:195分●出演:三船敏郎/石原裕次郎/滝沢修志村喬/辰巳柳太郎/宇野重吉/二谷英明/芦田伸介/佐野周二/岡田英次/山内明/寺尾聰/柳永二郎/玉川伊佐男/高津住男/加藤武/成瀬昌彦/信欣三/大滝秀治/清水将夫/下川辰平/庄司永建/鈴木瑞穂/日色ともゑ/樫山「黒部の太陽」 滝沢修.jpg大滝秀治 黒部の太陽.jpg文枝/川口晶/内藤武敏/佐野浅夫/草薙幸二郎/榎木兵衛/武藤章生/北林谷栄/三益愛子/高峰三枝子●公開:1968/02●配給:日活(評価:★★★★☆)

滝沢修(関西電力社長・太田垣士郎)/大滝秀治(間組・上条班長)

「黒部の太陽」高峰三枝子.jpg「黒部の太陽」三船。石原.jpg

【2009年文庫化[新潮文庫(『映画「黒部の太陽」全記録』)]】

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全1,811ページ、洋邦画13,600本を網羅。DVD化されなかった昔の作品のデータなどを知る上で貴重か。
シネマクラブ.JPG  『ぴあ Cinema Club 1995:洋画・邦画篇』 71.JPG『ぴあ Cinema Club 1995:洋画・邦画篇』(1995/01)

『ぴあ Cinema Club 1995:洋画・邦画篇』 272.JPG '72(昭和57)年に創刊され、'11年8月4日号が最終号となった雑誌「ぴあ」が別冊として出していた映画データベースMOOK「ぴあシネマクラブ」の1冊。

 「ぴあシネマクラブ」の刊行履歴を振り返ると、80年代後半から90年代にかけては、'87年 洋画篇、'89年 邦画篇、'89年 洋画篇、'91年 邦画篇、'91年 洋画篇、'92年 邦画篇、'92年 洋画篇、'93年 邦画篇、'93年 洋画篇、'94年 邦画篇、'94年 洋画篇、'95年 洋画・邦画篇、'96年 邦画篇、'96年 洋画篇、'97-98年 洋画編、'97-'98年 邦画編、'98-'99年 洋画編、'98-99年 邦画編......となっていて、『外国映画+日本映画 2008年最新版』('07年)というのが最後になっていますが、新しいものが過去のものの掲載分も全て網羅しているわけではなく、DVD化されなかったり廃盤になったりしているものは一部除かれているようです。

あ Cinema Club 1995.jpg そうした意味では、昔のものは昔のものなりに保存しておく価値もありそうですが、amazon.com で「ぴあシネマクラブ」で検索してみると、マーケットプレイス(古書市場)に出品されているのは、'96年の 邦画篇と洋画篇以降で、'95年以前のものは出されていないようです。

 全部とっておいても良かったのですが、スペースを取るし、1年ごとに見ると殆ど過去分は重複しているように見えるため、結局処分してしまったのだなあ―ということで、手元にある一番古いものは、この'95年版の「洋画・邦画篇」。

 この辺りの年代では、この年度だけ洋画・邦画合体版で、1冊で事が足るため便利で、それで捨てずにいたのだろうなあ(マーケットプレイスでも入手できないとなると、ある意味"貴重"か)。

 全1,811ページ、洋画8,500本、邦画5,100本、計13,600本を網羅し、『外国映画+日本映画 2008年最新版』の全2,015ページ、13,700本に匹敵する歴代2番目のヴォリューム(冒頭に示したように、洋画と邦画を一纏めにしたのはこの2回しかなかったわけだから、自ずとそうなるのだが)。この年の号の新規掲載が約600本で、'08年版の新規掲載が約900本だから、毎回、相当数の掲載作品の入れ替えがなされていたということなのだなあと。

 ネット化の時代、こうした電話帳顔負けのボリュームのMOOKは「紙文化」の遺物と言えなくもないけれど(「ぴあ」本誌の休刊もネット化の流れが最大の要因かと思われる)、当MOOKには、ネットで検索しても殆ど情報が得られないような作品についても、あらすじや評価などが記されているのが利点で(評価は星(★)半個単位、最高評価は★★★★。但し、星による評価があるのは'96年版まで)、特に一旦ビデオ化はされたことはあるけれども、DVD化されることは無かったような作品の内容を知る上では結構使えます。

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イデオロギー至上主義が人間性を踏みにじる様が具体的に描かれている。

私の紅衛兵時代6.jpg私の紅衛兵時代―ある映画監督の青春.jpg    さらばわが愛~覇王別姫.jpg 写真集さらば、わが愛/覇王別姫.jpg
私の紅衛兵時代 ある映画監督の青春 (講談社現代新書)』['90年/'06年復刻]/「さらば、わが愛覇王別姫」中国版ポスター/写真集『さらば、わが愛覇王別姫』より

陳凱歌(チェン・カイコー).jpg 中国の著名な映画監督チェン・カイコー(陳凱歌、1952年生まれ)が、60年代半ばから70年代初頭の「文化大革命」の嵐の中で過ごした自らの少年時代から青年時代にかけてを記したもので、「文革」というイデオロギー至上主義、毛沢東崇拝が、人々の人間性をいかに踏みにじったか、その凄まじさが、少年だった著者の目を通して具体的に伝わってくる内容です。

紅衛兵.jpg 著者の父親も映画人でしたが、国民党入党歴があったために共産党に拘禁され、一方、当時の共産党員幹部、知識人の子弟の多くがそうしたように、著者自身も「紅衛兵」となり、「毛沢東の良い子」になろうとします(そうしないと身が危険だから)。

 無知な少年少女が続々加入して拡大を続けた紅衛兵は、毛沢東思想を権威として暴走し、かつて恩師や親友だった人達を糾弾する、一方、党は、反国家分子の粛清を続け、"危険思想"を持つ作家を謀殺し、中には自ら命を絶った「烈士」もいたとのことです。

 そしてある日、著者の父親が護送されて自宅に戻りますが、著者は自分の父親を公衆の面前で糾弾せざるを得ない場面を迎え、父を「裏切り」ます。

 共産党ですら統制不可能となった青少年たちは、農村から学ぶ必要があるとして「下放」政策がとられ、著者自身も'69年から雲南省の山間で2年間農作業に従事しますが、ここも発狂者が出るくらい思想統制は過酷で、但し、著者自身は、様々の経験や自然の中での肉体労働を通して逞しく生きることを学びます。

 語られる数多くのエピソードは、それらが抑制されたトーンであるだけに、却って1つ1つが物語性を帯びていて、「回想」ということで"物語化"されている面もあるのではないかとも思ったりしましたが、う~ん、実際あったのだろなあ、この本に書かれているようなことが。

紅いコーリャン [DVD]」張藝謀(チャン・イーモウ)監督
紅いコーリャン .jpgチャン・イーモウ(張藝謀).jpg 結果的には「農民から学んだ」とも言える著者ですが、17年後に映画撮影のため同地を再訪し、その時撮られたのが監督デビュー作である「黄色い大地」('84年)で、撮影はチャン・イーモウ(張藝謀、1950年生まれ)だったとのこと。

 個人的には、チャン・イーモウ監督の作品は「紅いコーリャン」('87年/中国)を初めて観て('89年)、これは凄い映画であり監督だなあと思いました(この作品でデビューしたコン・リー(鞏俐)も良かった。その次の作品「菊豆<チュイトウ>」('90年/日本・中国)では、不倫の愛に燃える若妻をエロチックに演じているが、この作品も佳作)。 
               
童年往事 時の流れOX.jpg童年往事 時の流れ.png童年往時5.jpg その前月にシネヴィヴァン六本木で観た台湾映画「童年往時 時の流れ」('85年/台湾)は、中国で生まれ、一家とともに台湾へ移住した"アハ"少年の青春を描いたホウ・シャオシェン(侯孝賢、1947年生まれ)監督の自伝的作品でしたが(この後の作品「恋恋風塵」('87年/台湾)で日本でも有名に)、中国本土への望郷の念を抱いたまま亡くなった祖母との最期の別れの場面など、切ないノスタルジーと独特の虚無感が漂う佳作でした(ベルリン国際映画祭「国際批評家連盟賞」受賞作)。
【映画チラシ】童年往時/「童年往事 時の流れ [DVD]」 (パンフレット)

坊やの人形.jpg ホウ監督の作品を観たのは、一般公開前にパルコスペースPART3で観た「坊やの人形」('83年/台湾)に続いて2本目で、「坊やの人形」は、サンドイッチマンという顔に化粧をする商売柄(チンドン屋に近い?)、家に帰ってくるや自分の赤ん坊を抱こうとするも、赤ん坊に父親だと認識されず、却って怖がられてしまう若い男の悲喜侯孝賢.jpg劇を描いたもので、台湾の3監督によるオムニバス映画の内の1小品。他の2本も台湾の庶民の日常を描いて、お金こそかかっていませんが、何れもハイレベルの出来でした。

坊やの人形 [DVD]」/侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督

 両監督作とも実力派ならではのものだと思いましたが、同じ中国(または台湾)系でもチャン・イーモウ(張藝謀)とホウ・シャオシェン(侯孝賢)では、「黒澤」と「小津」の違いと言うか(侯孝賢は小津安二郎を尊敬している)、随分違うなあと。

陳凱歌監督 in 第46回カンヌ映画祭 「さらば、わが愛~覇王別姫 [DVD]」 /レスリー・チャン(「欲望の翼」「ブエノスアイレス」)
覇王別姫第46回カンヌ映画祭パルムドール.jpgさらば、わが愛/覇王別姫.jpg覇王別姫.jpg「さrあばわが愛」チェン.jpg 一方、チェン・カイコー(陳凱歌)監督の名が日本でも広く知られるようになったのは、もっと後の、1993年・第46回カンヌ国際映画祭パルム・ドール並びに国際映画祭国際映画批評家連盟賞受賞作「さらば、わが愛/覇王別姫」('93年/香港)の公開('94年)以降でしょう。米国でも評価され、ゴールデングローブ賞外国語映画賞、ニューヨーク映画批評家協会賞外国語映画賞などをを受賞しています(これも良かった。妖しい魅力のレスリー・チャン、残念なことに自殺してしまったなあ)。
さらば、わが愛/覇王別姫 4K修復版Blu-ray [Blu-ray]」(2023)
「さらば、わが愛/覇王別姫」00.jpg(●2023年10月12日、シネマート新宿にて4K修復版を鑑賞(劇場で観るのは初)。張國榮(レスリー・チャン)と鞏俐(コン・リー)が一人の男を巡って恋敵となるという、ある意味"空前絶後"的映画だったと改めて思った。)

 本書も刊行されたのは'90年ですが、その頃はチェン・カイコー監督の名があまり知られていなかったせいか、一旦絶版になり、「復刊ドットコム」などで復刊要望が集まっていたのが'06年に実際に復刻し、自分自身も復刻版(著者による「復刊のためのあとがき」と訳者によるフィルモグラフィー付)で読んだのが初めてでした。

 「さらば、わが愛/覇王別姫」にも「紅いコーリャン」にも「文革」の影響は色濃く滲んでいますが、前者を監督したチェン・カイコー監督は早々と米国に移住し(本書はニューヨークで書かれた)、ハリウッドにも進出、後者を監督したチャン・イーモウ監督は、かつては中国本国ではその作品が度々上映禁止になっていたのが、'08年には北京五輪の開会式の演出を任されるなど、それぞれに華々しい活躍ぶりです(体制にとり込まれたとの見方もあるが...)。


「中国問題」の内幕.jpg中国、建国60周年記念式典.jpg 中国は今月('09年10月1日)建国60周年を迎え、しかし今も、共産党の内部では熾烈な権力抗争が続いて(このことは、清水美和氏の『「中国問題」の内幕』('08年/ちくま新書)に詳しい)、一方で、ここのところの世界的な経済危機にも関わらず、高い経済成長率を維持していますが(GDPは間もなく日本を抜いて世界第2位となる)、今や経済界のリーダーとなっている人達の中にも文革や下放を経験した人は多くいるでしょう。記念式典パレードで一際目立っていたのが毛沢東と鄧小平の肖像画で、「改革解放30年」というキャッチコピーは鄧小平への称賛ともとれます(因みに、このパレードの演出を担当したのもチャン・イーモウ)。

 中国人がイデオロギーやスローガンに殉じ易い気質であることを、著者が歴史的な宗教意識の希薄さの点から考察しているのが興味深かったです。
 
童年往来事ド.jpg「童年往時/時の流れ」●原題:童年往来事 THE TIME TO LIVE AND THE TIME TO DIE●制作年:1985年●制作国:台湾●監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)●製作:徐国良(シュ・クオリヤン)●脚本:侯孝賢(ホウ・シャオシェンシネヴィヴァン六本木.jpg)/朱天文(ジュー・ティエンウェン)●撮影:李屏賓(リー・ピンビン)●音楽:呉楚楚(ウー・チュチュ)●時間:138分●出演:游安順(ユーアンシュ)/辛樹芬(シン・シューフェン)/田豊(ティェン・フォン)/梅芳(メイ・フアン)●日本公開:1988/12●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(89-01-15)(評価:★★★★)
シネヴィヴァン六本木 1983(平成5)年11月19日オープン/1999(平成11)年12月25日閉館

坊やの人形 <HDデジタルリマスター版> [Blu-ray]
坊やの人形 00.jpg坊やの人形 00L.jpg「坊やの人形」(「シャオチの帽子」「りんごの味」)●原題:兒子的大玩具 THE SANDWICHMAN●制作年:1983年●制作国:台湾●監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)/曹壮祥(ゾン・ジュアンシャン)/萬仁(ワン・レン)●製作:明驥(ミン・ジー)●脚本:呉念眞(ウー・ニェンジェン)●撮影:Chen Kun Hou●原作:ホワン・チュンミン●時間:138分●出演:陳博正(チェン・ボージョン)/楊麗音(ヤン・リーイン)/曽国峯(ゾン・グオフォン)/金鼎(ジン・ディン)/方定台(ファン・ディンタイ)/卓勝利(ジュオ・シャンリー)●日本公開:1984/10●配給:ぶな企画●最初に観た場所:渋パルコスペース Part3.jpg渋谷シネクイント劇場内.jpgCINE QUINTO tizu.jpg谷・PARCO SPACE PART3(84-06-16)(評価:★★★★)●併映:「少女・少女たち」(カレル・スミーチェク)
PARCO SPACE PART3 1981(昭和56)年9月22日、演劇、映画、ライヴパフォーマンスなどの多目的スペースとして、「パルコ・パート3」8階にオープン。1999年7月~映画館「CINE QUINTO(シネクイント)」。 2016(平成28)年8月7日閉館。

「さらば、わが愛/覇王別姫」(写真集より)/「さらば、わが愛/覇王別姫」中国版ビデオ
『さらば、わが愛/覇王別姫』(1993) 2.jpgさらばわが愛~覇王別姫.jpg「さらば、わが愛/覇王別姫」●原題:覇王別姫 FAREWELL TO MY シネマート新宿2 .jpgCONCUBI●制作年:1993年●制作国:香港●監督:陳凱歌(チェン・カイコー)●製作:徐淋/徐杰/陳凱歌/孫慧婢●脚本:李碧華/盧葦●撮影:顧長衛●音楽:趙季平(ヂャオ・ジーピン)●原作:李碧華(リー・ビーファー)●時間:172分●出演:張國榮(レスリー・チャン)/張豊毅(チャン・フォンイー)/鞏俐(コン・リー)/呂齊(リゥ・ツァイ)/葛優(グォ・ヨウ)/黄斐(ファン・フェイ)/童弟(トン・ディー)/英達(イン・ダー)●日本公開:1994/02●配給:ヘラルド・エース=日本ヘラルド映画(評価:★★★★☆)●最初に観た場所(再見)[4K版]:シネマート新宿(23-10-12)
「さらば、わが愛/覇王別姫」0.jpg

「さらば、わが愛/覇王別姫」図1.jpg

チャン・フォンイー、コン・リー、レスリー・チャン.jpgさらば、わが愛 覇王別姫 鞏俐 コン・リー.jpg鞏俐(コン・リー)in「さらば、わが愛 覇王別姫」(1993年・二ューヨーク映画批評家協会賞 助演女優賞受賞)
   
張豊毅(チャン・フォンイー)、鞏俐(コン・リー)、張國榮(レスリー・チャン)in 第46回カンヌ国際映画祭フォトセッション

レスリー・チャン in「欲望の翼('90年)」/「ブエノスアイレス」('97年)
欲望の翼01.jpg ブエノスアイレス 00.jpg

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テーマ分けにより、見やすくて充実した内容。巻末の淀川長治氏の対談もいい。

ポスターワンダーランド―シネマパラダイス.jpg(25.8 x 21.2 x 1.6 cm)    淀川長治.jpg 淀川長治(1909-1998/享年89)
ポスターワンダーランド―シネマパラダイス』['96年]

 クラシックなものから最近のものまでのポスターを集めた講談社の「ポスターワンダーランド」シリーズには、映画ポスターを集めた本書「シネマパラダイス」の他に、「酒とたばこ」('95年)、「カー・グラフィティ」('96年)などがありましたが、映画好きならやはり本書でしょう。

 洋画・邦画の主だった作品のポスターを集め、200点という掲載点数はそう多くは無いと思いますが、その分、オールカラーの図版がしっかりしていて中身は濃く、作品の選定も含め充実しています。

 見開きページごとにテーマ分けされ、「ハリウッドは歌の都」「なつかしの名画群-ハリウッド全盛期」「ヒッチコック映画の魅力」とか、「映画界、最盛の昭和30年代」「独立プロの活躍」「渡世人の美学」などと題された特集になっていて、それぞれの右ページ上に年代が書かれているのも解りやすいし、間にあるコラムやエッセイなどもいいです。

 無声映画から始まって、邦画に関しては、例えば和田誠氏のイラストによる「新宿名画座」のポスターをフューチャーしたり、洋画に関してはハリウッド映画だけでなく、東欧などのアート系のポスターなどもフォーカスしたりしています。

クライング・ゲーム.jpgふくろうの河.jpg 個人的には、巻末の淀川長治氏と新井満氏の対談が楽しめ、淀川氏がロベール・アンリコ監督の「ふくろうの河」('61年)のストーリーや、ニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」('92年)の導入部分を語る、その話ぶりの旨さに感心させられました(80歳代後半にしてスゴイ記憶力!)。

駅馬車1.jpg また、ポスターに関する話でも、日本の監督で一番ポスターにこだわったのは誰か(黒澤明)といった話や、淀川氏がユナイトで「駅馬車」の邦題をそのように決める前に予定されていたタイトル(「地獄馬車」)の話などが興味深かったです。

 あのポスターの「駅馬車」という字は、淀川氏自身がそこらにあった定規で手書きしたという話は、別のところでも読んでビックリした記憶があります(荒井魏 著 『淀川長治の遺言―映画・人生・愛』('99年/岩波書店)だったか?)。

淀川長治さんの宣伝裏話」より

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高評価作品が多い30年~50年代。40年~50年代の12作品の著者の評価を自分のと比べると...。

ミュージカル洋画 ぼくの500本.jpg     巴里のアメリカ人08.jpg バンド・ワゴン 映画poster.jpg 南太平洋 チラシ.jpg
ミュージカル洋画ぼくの500本 (文春新書)』 「巴里のアメリカ人」1シーン/「バンド・ワゴン」ポスター/「南太平洋」チラシ

 著者の外国映画ぼくの500本('03年4月)、『日本映画 ぼくの300本』('04年6月)、『外国映画 ハラハラドキドキぼくの500本』('05年11月)、『愛をめぐる洋画ぼくの500本』('06年10月)に続くシリーズ第5弾で、著者は1910年10月生まれですから、刊行年(西暦)の下2桁に90を足せば、刊行時の年齢になるわけですが、凄いなあ。

 本書で取り上げた500本は、必ずしもブロードウェイなどの舞台ミュージカルを映画化したものに限らず、広く音楽映画の全般から集めたとのことですが、確かに「これ、音楽映画だったっけ」というのもあるにせよ、500本も集めてくるのはこの人ならでは。何せ、洋画だけで1万数千本観ている方ですから(「たとえ500本でも、多少ともビデオやDVDを買ったり借りたりするときのご参考になれば幸甚である」とありますが、「たとえ500本」というのが何だか謙虚(?))。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG『天井桟敷の人々』(1945).jpg 著者独自の「星」による採点は上の方が厳しくて、100点満点換算すると100点に該当する作品は無く、最高は90点で「天井桟敷の人々」('45年)と「ザッツ・エンタテインメント」('74年)の2作か(但し、個人的には、「天井桟敷の人々」は、一般的な「ミュージカル映画」というイメージからはやや外れているようにも思う)。
 85点の作品も限られており、やはり旧い映画に高評価の作品が多い感じで、70年代から85点・80点の作品は減り、85点は「アマデウス」('84年)が最後、以降はありません。
 これは、巻末の「ミュージカル洋画小史」で著者も書いているように、70年代半ばからミュージカル映画の急激な凋落が始まったためでしょう。

 逆に30年代から50年代にかけては高い評価の作品が目白押しですが、個人的に観ているのは40年代半ば以降かなあという感じで自分で、自分の採点と比べると次の通りです。(著者の☆1つは20点、★1つは5点)

①「天井桟敷の人々」 ('45年/仏)著者 ☆☆☆☆★★(90点)/自分 ★★★★(80点)
天井桟敷の人々1.jpg天井桟敷.jpg天井桟敷の人々 ポスター.jpg 著者は、「規模の雄大さ、精神の雄渾において比肩すべき映画はない」としており、いい作品には違いないが、3時間超の内容は結構「大河メロドラマ」的な要素も。占領下で作られたなどの付帯要素が、戦争を経験した人の評価に入ってくるのでは? 著者は「子供の頃に見た見世物小屋を思い出す」とのこと。実際にそうした見世物小屋を見たことは無いが(花園神社を除いて。あれは、戦前というより、本来は地方のものではないか)、戦後の闇市のカオスに通じる雰囲気も持った作品だし、ヌード女優から伯爵の愛人に成り上がる女主人公にもそれが体現されているような。

「天井桟敷の人々」●原題:LES ENFANTS DU PARADIS●制作年:1945年●制作国:フランス●監督:マルセル・カルネ●製作:フレッド・オラン●脚本:ジャック・プレヴェール●撮影:ロジェ・ユベール/マルク・フォサール●音楽:モーリス・ティリエ/ジョセフ・コズマ●時間:190分●出演:アルレッティ/ジャン=ルイ・バロー/ピエール・ブラッスール/マルセル・エラン/ルイ・サルー/マリア・カザレス/ピエール・ルノワール●日本公開:1952/02●配給:東宝●最初に観た場所:池袋文芸坐(82-03-21)●併映:「ネオ・ファンタジア」(ブルーノ・ボセット)

②「アメリカ交響楽」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★★(70点)自分 ★★★☆(70点)
アメリカ交響楽 RHAPSODY IN BLUE.jpgアメリカ交響楽.jpg この映画の原題でもある「ラプソディー・イン・ブルー」や、「スワニー」「巴里のアメリカ人」「ボギーとベス」などの名曲で知られるガーシュウィンの生涯を描いた作品で、モノクロ画面が音楽を引き立てていると思った(著者は、主役を演じたロバート・アルダより、オスカー・レヴァント(本人役で出演)に思い入れがある模様)。因みに、日本で「ロード・ショー」と銘打って封切られた映画の第1号。

「アメリカ交響楽」 ●原題:RHAPSODY IN BLUE●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アーヴィン・クーパー●製作:フレッド・オラン●脚本:ハワード・コッホ●撮影:ソル・ポリート●音楽ジョージ・ガーシュウィン●時間:130分●出演:ロバート・アルダ/ジョーン・レスリー/アレクシス・スミス/チャールズ・コバーン/アルバート・バッサーマン/オスカー・レヴァント/ポール・ホワイトマン/ジョージ・ホワイト/ヘイゼル・スコット/アン・ブラウン、アル・ジョルスン/ジュリー・ビショップ●日本公開:1947/03●配給:ワーナー・ブラザース映画●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

③「錨を上げて」 ('45年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
錨を上げて08.jpg錨を上げて2.jpg錨を上げて.jpgAnchors Aweigh.jpg 4日間の休暇を得てハリウッドへ行った2人の水夫の物語。元気のいい映画だけど、2時間20分は長かった。ジーン・ケリーがアニメ合成でトム&ジェリーと踊るシーンは「ロジャー・ラビット」の先駆けか(著者も、その技術を評価。ジーン・ケリーが呼び物の映画だとも)。
錨を上げて アニメ.jpg
「錨を上げて」●原題:ANCHORS AWEIGH●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・シドニー●製作:ジョー・パスターナク●脚本:イソベル・レナート●撮影:ロバート・プランク/チャールズ・P・ボイル●音楽監督:ジョージー・ストール●原作:ナタリー・マーシン●時間:140分●出演:フランク・シナトラ/キャスリン・グレイソン/ジーン・ケリー/ホセ・イタービ /ディーン・ストックウェル/パメラ・ブリットン/ジョージ・シドニー●日本公開:1953/07●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

④「夜も昼も」 ('46年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★(60点)
NIGHT AND DAY 1946.jpg夜も昼も NIGHT AND DAY.jpgNight and Day Cary Grant.jpg アメリカの作曲家コール・ポーターの伝記作品。著者の言う通り、「ポーターの佳曲の数々を聴かせ唄と踊りの総天然色場面を楽しませる」のが目的みたいな作品(曰く「その限りにおいては楽しい」と)。

「夜も昼も」●原題:NIGHT AND DAY●制作年:1946年●制作国:アメリカ●監督:マイケル・カーティズ●製作:アーサー・シュワルツ●脚本:チャールズ・ホフマン/レオ・タウンゼンド/ウィリアム・バワーズ●撮影:ペヴァレル・マーレイ/ウィリアム・V・スコール●音楽監督:レオ・F・フォーブステイン●原作:ナタリー・マーシン●時間:116分●出演:ケーリー・グラント/アレクシス・スミス/モンティ・ウーリー/ジニー・シムズ/ジェーン・ワイマン/カルロス・ラミレス●日本公開:1951/01●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑤「赤い靴」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★(60点)
赤い靴 ポスター.jpg赤い靴.jpg赤い靴2.jpg ニジンスキーとロシア・バレエ団の主宰者ディアギレフとの関係がモデルといわれているバレエもの(ハーバート・ロス監督の「ニジンスキー」('79年/英)は両者の確執にフォーカスした映画だった)だが、主人公が女性になって、「仕事か恋か」という今も変わらぬ?テーマになっている感じ。著者はモイラ・シアラーの踊りを高く評価している。ヨーロッパには「名人の作った赤い靴をはいた者は踊りの名手になれるが、一生踊り続けなければモイラ・シアラー.jpgならない」という「赤い靴」の伝説があるそうだが、「赤い靴」と言えばアンデルセンが先に思い浮かぶ(一応、そこから材を得ているとのこと)。

「赤い靴」 ●原題:THE RED SHOES●制作年:1948年●制作国:イギリス●監督:エメリック・プレスバーガー●製作:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●脚本:マイケル・パウエル/エメリック・プレスバーガー●撮影:ジャック・カーディフ●音楽演奏:ロイヤル・フィルハーモニック・オーケストラ●原作:ハンス・クリスチャン・アンデルセン●時間:136分●出演:アントン・ウォルブルック/マリウス・ゴーリング/モイラ・シアラー/ロバート・ヘルプマン/レオニード・マシーン●日本公開:1950/03●配給:BCFC=NCC●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-11-10)●併映:「トリュフォーの思春期」(フランソワ・トリュフォー)
モイラ・シアラー

⑥「イースター・パレード」('48年/英)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
Easter Parade (1949).jpgイースター・パレード dvd.jpg ジュディ・ガーランドとフレッド・アステアのコンビで、ショー・ビズものとも言え、一旦引退したアステアが、骨折のジーン・ケリーのピンチヒッター出演で頑張っていて、著者の評価も高い(戦後、初めて輸入された総天然色ミュージカルであることも影響している?)。

「イースター・パレード」●原題:EASTER PARADE●制作年:1948年●制作国:アメリカ●監督:チャールズ・ウォルターズ●製作:アーサー・フリード●脚色:シドニー・シェルダン/フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●撮影:ハリー・ストラドリング●音楽演奏:ジョニー・グリーン/ロジャー・イーデンス●原作:フランセス・グッドリッチ/アルバート・ハケット●時間:136分●出演:ジュディ・ガーランド/フレッド・アステア/ピーター・ローフォード/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン●日本公開:1950/02●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑦「踊る大紐育」('49年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★☆(70点)
踊る大紐育.jpg 24時間の休暇をもらった3人の水兵がニューヨークを舞台に繰り広げるミュージカル。3人が埠頭に降り立って最初に歌うのは「ニューヨーク、ニューヨーク」。振付もジーン・ケリーが担当した。著者はヴェラ=エレンの踊りが良かったと。

踊る大紐育(ニューヨーク) dvd.jpg「踊る大紐育」●原題:ON THE TOWN●制作年:1949年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハロルド・ロッソン●音楽:レナード・バーンスタイン●原作:ベティ・カムデン/アドルフ・グリーン●時間:98分●出演:ジーン・ケリー/フランク・シナトラ/ジュールス・マンシン/アン・ミラー/ジュールス・マンシュイン/ベティ・ギャレット/ヴェラ・エレン●日本公開:1951/08●配給:セントラル●最初に観た場所:テアトル新宿(85-09-23)

巴里のアメリカ人 ポスター.jpg⑧「巴里のアメリカ人」 ('51年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
巴里のアメリカ人2.jpg巴里のアメリカ人 dvd.jpg 音楽はジョージ・ガーシュイン。踊りもいいし、ストーリーも良く出来ている。著者の言う様に、舞台装置をユトリロやゴッホ、ロートレックなど有名画家の絵に擬えたのも楽しい。著者は「一番感心すべきはジーン・ケリー」としているが、アクロバティックな彼の踊りについていくレスリー・キャロンも中国雑伎団みたいで凄い(1951年アカデミー賞作品)。

ジーンケリーとレスリーキャロン.jpg巴里のアメリカ人09.jpg「巴里のアメリカ人」●原題:AN AMERICAN IN PARIS●制作年:1951年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:アラン・ジェイ・ラー「巴里のアメリカ人」 .jpgナー●撮影:アルフレッド・ギルクス●音楽:ジョージ・ガーシュイン●時間:113分●出演:ジーン・ケリー/レスリー・キャロン/オスカー・レヴァント/ジョルジュ・ゲタリー/ユージン・ボーデン/ニナ・フォック●日本公開:1952/05●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:高田馬場パール座(78-05-27)●併映:「シェルブールの雨傘」(ジャック・ドゥミ)

⑨「バンド・ワゴン」('53年/米)著者 ☆☆☆☆★(85点)自分 ★★★★(80点)
バンド・ワゴン08.jpgバンド・ワゴン2.jpgバンド・ワゴン.jpgバンド・ワゴン 特別版 [DVD].jpgシド・チャリシー.jpg 落ち目のスター、フレッド・アステアの再起物語で、「イースター・パレード」以上にショー・ビズもの色合いが強い作品だが、コメディタッチで明るい。ストーリーは予定調和だが、本書によれば、ミッキー・スピレーンの探偵小説のパロディが織り込まれているとのことで、そうしたことも含め、通好みの作品かも。但し、アステアとシド・チャリシーの踊りだけでも十分楽しめる。シド・チャリシーの踊りも、レスリー・キャロンと双璧と言っていぐらいスゴイ。

THE BANDO WAGON.jpg「バンド・ワゴン」●原題:THE BANDO WAGON●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ヴィンセント・ミネリ●製作:アーサー・フリード●脚本:ベティ・コムデン/アドルフ・グリーン●撮影:ハリー・ジャクソン●音楽:アドルフ・ドイッチ/コンラッド・サリンジャー●時間:112分●出演:フレッド・アステア/シド・チャリシー/オスカー・レヴァント/ナネット・ファブレー●日本公開:1953/12●配給:MGM●最初に観た場所:テアトル新宿(85-10-19)

⑩「パリの恋人」('53年/米)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★☆(70点)
パリの恋人dvd.jpg『パリの恋人』(1957).jpgパリの恋人 映画ポスター.jpg 著者曰く「すばらしいファション・ミュージカル」であり、オードリー・ヘプバーンの魅力がたっぷり味わえると(原題の「ファニー・フェイス」はもちろんヘップバーンのことを指す)。Funny Face.jpg 衣装はジバンシー、音楽はガーシュウィンで、音楽と併せて、女性であればファッションも楽しめるのは確か。'S Wonderful.bmp ちょっと「マイ・フェア・レディ」に似た話で、「マイ・フェア・レディ」が吹替えなのに対し、こっちはオードリー・ヘプバーン本人の肉声の歌が聴ける。それにしても、一旦引退したこともあるはずのアステアが元気で、とても57才とは思えない。結局、更に20余年、「ザッツ・エンタテインメント」('74年)まで活躍したから、ある意味"超人"的。

『パリの恋人』(1957) 2.jpgパリの恋人 パンフ.jpg「パリの恋人」●原題:FUNNY FACE●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スパリの恋人 パンフ.jpgタンリー・ドーネン●製作:アーサー・フリード●脚本:レナード・ガーシェ●撮影:レイ・ジューン●音楽:ジョージ・ガーシュウィン/アドルフ・ドイッチ●時間:103分●出演:オードリー・ヘプバーン/フレッド・アステア/ケイ・トンプスン/ミシェル・オークレール●日本公開:1957/02●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場ACTミニシアター(85-11-03)●併映:「リリー・マルレーン」(ライナー・ヴェルナー・ファスビンダー) 
  
南太平洋パンフレット.jpg⑪「南太平洋」('58年/米)著者 ☆☆☆★(65点)自分 ★★★☆(70点)
 1949年初演のブロードウェイミュージカルの監督であるジョシュア・ローガンが映画版でもそのまま監督したもので、ハワイのカウアイ島でロケが行われた(一度だけ行ったことがあるが、火山活動によって出来た島らしい、渓谷や湿地帯ジャングルなど、野趣溢「南太平洋」(自由が丘武蔵野館).jpgれる自然が満喫できる島だった)。著者は「戦時色濃厚な」作品であるため、あまり好きになれないようだが、それを言うなら、著者が高得点をつけている「シェルブールの雨傘」などは、フランス側の視点でしか描かれていないとも言えるのでは。超エスニック、大規模ロケ映画で、空も海も恐ろしいくらい青い(カラーフィルターのせいか? フィルターの色が濃すぎて技術的に失敗しているとみる人もいるようだ)。トロピカル・ナンバーの定番になった主題歌「バリ・ハイ」や「魅惑の宵」などの歌曲もいい。

「南太平洋」映画チラシ/期間限定再公開(自由が丘武蔵野館) 1987(昭和62)年7月4日~7月31日 
       
南太平洋(87R).jpg南太平洋.jpg「南太平洋」●原題:SOUTH PACIFIC●制作年:1958年●制作国:アメリカ●監督:ジョシュア・ローガン●製作:バディ・アドラー●脚本:ポール・オスボーン●撮影:レオン・シャムロイ●音楽:リチャード・ロジャース●原作:ジェームズ・A・ミッチェナー「南太平洋物語」●原作戯曲:オスカー・ハマースタイン2世/リチャード・ロジャース/ジョシュア・ローガン●時間:156分●出演:ロッサノ・ブラッツィ/ミッチ自由が丘武蔵野館.jpgー・ゲイナー/ジョン・カー/レイ・ウォルストン/フランス・ニューエン/ラス・モーガン●日本公開:1959/11●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:自由が丘武蔵野館(87-07-05)(リバイバル・ロードショー) 自由が丘武蔵野館 (旧・自由が丘武蔵野推理) 1951年「自由が丘武蔵野推理」オープン。1985(昭和60)年11月いったん閉館し改築、「自由が丘武蔵野館」と改称し再オープン。2004(平成16)年2月29日閉館。
   
⑫「黒いオルフェ」('59年/仏)著者 ☆☆☆☆(80点)自分 ★★★★(80点)
黒いオルフェ2.jpg黒いオルフェ (1959).jpg黒いオルフェ dvd.jpg 娯楽作品と言うより芸術作品。ジャン・コクトーの「オルフェ」('50年)と同じギリシア神話をベースにしているとのことだが、ちょっと難解な部分も。著者も言うように、リオのカーニヴァルの描写が素晴らしい。カンヌ国際映画祭パルム・ドール、アカデミー外国映画賞の受賞作。

「黒いオルフェ」●原題:ORFEO NEGRO●制作年:1959年●制作国:フランス●監督:マルセル・カミュ●製作:バディ・アドラー●脚本:マルセル・カミュ/ジャック・ヴィオ●撮影:ジャン・ブールゴワン●音楽:アントニオ・カルロス・ジョビン/ルイス・ボンファ●原作:ヴィニシウス・デ・モライス●時間:107分●出演:ブレノ・メロ/マルペッサ・ドーン/マルセル・カミュ/ファウスト・グエルゾーニ/ルルデス・デ・オリベイラ/レア・ガルシア/アデマール・ダ・シルバ●日本公開:1960/07●配給:東和●最初に観た場所:八重洲スター座(79-04-15)

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青春映画の原点とされる作品。主演3人がそれぞれに夭逝しているだけに複雑な思いも。

理由なき反抗 輸入版ポスター.jpg  理由なき反抗パンフレット.jpg 理由なき反抗.jpg Rebel Without A Cause.jpg
「理由なき反抗」輸入版ポスター/パンフレット 「理由なき反抗 特別版 [DVD]
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo
Co-stars Natalie Wood and Sal Mineo.jpg ジェームズ・ディーンが補導されて警察署いる場面のパンフレットが懐かしいこの映画は、「理由なき反抗」1.jpgマーロン・ブランドが出演を断った脚本が、ジョージ・スティーブンス監督の「ジャイアンツ」('56年)の撮影がエリザベス・テーラーの妊娠により中断し時間的余裕のあったジェームズ・ディーンに回ってきて、急遽彼を使うことにした低予算映画だったそうですが、当初はモノクロの予定が、エリア・カザン監督の「エデンの東」('55年)のヒットでカラーに計画変更されたとのことです。ジェームズ・ディーンの演技が良く、結果として青春映画の原点みたいな位置づけの作品になりました(ディーンは撮影の途中からノッてきて、ナイフでの喧嘩シーンでは本物のナイフを使ったりしている)。

理由なき反抗・Rebel Without a Cause.jpg「理由なき反抗」 2.jpg この映画でのジム(ジェームズ・ディーン)とプレイトウ(サル・ミネオ)の関係はよく同性愛だと言われていますが、17歳という設定ですから思春期的なものであると思われ、それでも当初はジムがプレイトウにキスしようとするシーンもあったそうですが、米国内の検閲でカットされたとのこと。個人的には、カットされて良かったと思います。もしそのシーンがあると、BL色が濃くなって、ジュディ(ナタリー・ウッド)を含めた3人の関係のバランスが壊れていたのではないかと思われるからです。

『理由なき反抗』(1955).jpg 一方で、この映画の脚本には、当時の若者の声を聞いたアンケートが反映されていて、そのため、世間の親への教唆的要素が多分に含まれているようにも思います(「理由なき反抗」というタイトルからして)。

 ジムが"チキン・ラン"レースに臨む前に小心者の父親にナイフで切られた血のついたシャツをわざと見せて、これから自分がする事の危険について話したにも関理由なき反抗 Jディーン・Nウッド.jpgわらず、父親は叱ることも止めることも出来ずジムをガッカリさせる場面な理由なき反抗 ディーン.jpgどは、当時言われるようになっていた"父権の失墜"に対する警告ともとれるのではないでしょうか。

 この作品については、こうした作品の意図とは別に、主演の3人の俳優が何れも不慮の死を遂げたこともあって、やや複雑な感慨があります(よく知られるように、ジェームズ・ディーンはこの作品の公開の1ヵ月前に事故死していている(享年24)。アカデミー賞に死後ノミネートされた俳優は何人かいるが、2度ノミネートされたのはジェームズ・ディーンのみである(「理由なき反抗」と「ジャイアンツ」)。

Sal Mineo(1936-1976)/Natalie Wood(1938-1981)
サル・ミネオes.jpg「理由なき反抗」3.jpgNatalie Wood.jpgNATALIE WOOD  (1938 - 1981).jpg '75年にレイ・コノリー監督により「ジェームズ・ディーンのすべて-青春よ永遠に」(James Dean:The First American Teenager)という記録映画(TV用ドキュメンタリー)が作られていて、その中でナタリー・ウッドもサル・ミネオもジェームズ・ディーンの思い出を語っていますが、その翌年の'76年にサル・ミネオは強盗に刺殺され(享年38、生前はピーター・フォークと知己の関係にあり、「刑事コロンボ」の「ハッサン・サラーの反逆」('75年)に、アラブのある国の大使館員の役で出演していた。犯人役はヘクター・エリゾンド(最近では「名探偵モンク」でモンクの新しいかかりつけの精神分析医役を演じている)で、犯人に協力させられて、結局口封じのため殺されてしまう役だった)、更にそのハッサン・サラーの反逆720.jpgハッサン・サラーの反逆 2.jpgハッサン・サラーの反逆 サル・ミネオ.jpg5年後の'81年には、ナタリー・ウッドが撮影中にボートの転覆事故で亡くなっています(享年43、その死因には、事故説以外に他殺説、自殺説もある)。

サル・ミネオ、ヘクター・エリゾンド in「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」

Marlon Brando and James Dean.bmp この記録映画の中では、ジェームズ・ディーンがマーロン・ブランドの演技を意識していたことが窺えたのが興味深かったです(演技ばかりでなく、自分はパーティ嫌いでバーティを避けていたのに、パーティに出ていたマーロン・ブランドがどういった様子だったかを人に聞くなど、普段の立ち振る舞いにも強い関心を示していた)。もし、もっと長生きしていたら、どんな作品に出ていただろうかと、ついつい考えてしまいますが、オヤジになったジェームズ・ディーンなんて見たくないという人も結構いるだろうなあ。

James Dean and Marlon Brando
 
エデンの東」('55年)(ケイレブ(キャル)・トラスク)/「ジャイアンツ」('56年)(ジェット・リンク)
iエデンの東H.jpg Giant is best known as Dean's last film.jpg         
James Dean and Natalie Wood
nwood-0730-06.jpg「理由なき反抗」 ちらし.jpgJAMES DEAN REBEL WITHOUT A CAUSE.jpg「理由なき反抗」●原題:REBEL WITHOUT A COUSE●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・原案:ニコラス・レイ●製作:デヴィッド・ワイスバート●脚本:スチュワート・スターン/アーヴィング・シュルマン●撮影:アーネスト・ホーラー●音楽:レーナード・ローゼンマン●時間:105分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッド/サル・ミネオ/デニス・ホッパー/ジム・バッカス/ロシェル・ハドソン/コーレイ・アレン/ウィリア「理由なき反抗08.jpgム・ホッパー/ニック・アダムス/エドワード・プラット/アン・ドーラン/フランク・マッゾラ●日本公開:1956/04●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:高田馬場・早稲田松竹(77-12-21)●デニス・ホッパー 理由なき反抗.jpg2回目:池袋文芸坐(79-02-18)(評<価★★★★)●併映(1回目):「ジャイアンツ」(ジョージ・スティーブンス)●併映(2回目):「エデンの東」(エリア・カザン」

デニス・ホッパー(左から2人目)
 

「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」 パンフレット
ジェームズ・ディーンのすべて パンフ.jpgJAMES DEAN THE FIRST AMERICAN TEENAGER.jpgジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に00.jpg「ジェームズ・ディーンのすべて 青春よ永遠に」●原題:JAMES DEAN:THE FIRST AMERICAN TEENAGER●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:レイ・コノリー●製作:デイヴィッド・パトナムJAMES DEAN THE FIRST AMERICAN TEENAGER Dennis Hopper.jpgJAMES DEAN THE FIRST AMERICAN TEENAGER Natalie Wood.jpg/サンディ・リーバーマン●時間:80分●出演:ジェームズ・ディーン/ナタリー・ウッドサル・ミネオデニス・ホッパー/サミー・デイビスJr./キャロル・ベイカー●日本公開:1977/09●配給:東宝東和●最初に観た場所:テアトル新宿(78-01-13)(評価★★★) ●併映:「サスペリア」(ダリオ・アルジェント)●記録映画

テアトル新宿 tizu.jpgテアトル新宿13.jpgテアトル新宿kannnai.jpgテアトル新宿 1957年12月5日靖国通り沿いに名画座としてオープン、1968年10月15日に新宿テアトルビルに建替え再オープン、1989年12月に封切り館としてニューアル・オープン(新宿伊勢丹メンズ館の隣、新宿テアトルビルの地下一階)2017年座席リニューアル
  
ハッサン・サラーの反逆9.jpgハッサン・サラーの反逆 00.jpg「刑事コロンボ(第33話)/ハッサン・サラーの反逆」●原題:A CASE OF IMMUNITY●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:テッド・ポスト●製作:エドワード・K・ドッズ●脚本:ルー・ショウ●撮影:リチャード・C・グローナー●音楽:ベルナルド・セガール/ハル・ムーニー●時間:73分●出演:ピーター・フォーク/ヘクター・エリゾンド/サル・ミネオ/ケネス・トビー/バリー・ロビンス/ビル・ザッカート/ハンク・ロビンソン/ハーヴェイ・ゴールド/アンドレ・ローレンス/ネイト・エスフォームス/ジョージ・スカフ/ジェフ・ゴールドブラム(ノンクレジト(デモ隊の男))●日本公開:1976/12●放送:NHK:★★★☆)
ヘクター・エリゾンド in「名探偵モンク」(2008)
ヘクター・エリゾンド モンク.jpg 名探偵モンク1.jpg

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評伝としての部分も、日本を含む文化に与えた影響の部分についても前著より詳しい。

アメリカでいちばん美しい人.jpg マリリン・モンロー 岩波新書.jpg   荒馬と女2.gif「荒馬と女」(1961)亀井 俊介.jpg 亀井 俊介 氏 (東大名誉教授・岐阜女子大大学院教授(アメリカ文学・比較文学))
アメリカでいちばん美しい人―マリリン・モンローの文化史』 ['04年] 『マリリン・モンロー (岩波新書 黄版 (381))』 ['87年]

Andy Warhol "Marilyn (pink)"
Andy Warhol.jpg 著者の新書版『マリリン・モンロー』('87年/岩波新書)は、著者自身によれば、モンローをめぐる「文化」についての本であって「伝記」を目指したものではなかったとしていますが、本書では、Ⅰ・Ⅱ章でモンローの生涯を前著より掘り下げ、多くの伝記や評論を参照しつつ、写真も豊富に交えて(表紙の"ジャンプするマリリン"もいい)より評伝風に記す一方、Ⅲ・Ⅳ章で、モンローの人間性と女優としての系譜を探るとともに、死後、彼女が「愛の女神」としてイコン(偶像)化される過程を、アンディ・ウォーホルの作品に代表されるようなアメリカ文化の展開と合わせて論じています。

 新書版にあったことと重なる内容も少なくないのですが、これも前著にもあった日本の大衆文化やアーティストたちに与えた影響についても、近年のものまで含めてより詳細に紹介されていて、新書版の方が入手しにくいこともあり、これはこれで堪能できる1冊と言えるのではないでしょうか。

 Monroe and Arthur Miller  Monroe and Truman Capote
Marilyn Monroe with Arthur Miller.jpgMarilyn Monroe and Truman Capote.jpg 文学者との関係において、前著ではノーマン・メイラーが重点的にとりあげられていましたが、本書ではその他に、アーサー・ミラー(モンローの最後の夫でモンロー主演の遺作「荒馬と女」のシナリオを書いている)、トルーマン・カポーティ(自作「ティファニーで朝食を」の主演にモンローを推したがハリウッドはオードリー・ヘップバーンを選んだ)なども取り上げています。

 アーサー・ミラーは大男、トルーマン・カポーティは小男でしたが、モンローの好みは長身の男? 「荒馬と女」の撮影ではクラーク・ゲーブルに好意を寄せたようだし。もっとも、もう1人の共演者、モンゴメリー・クリフトはホモセクシュアルでしたが(因みに、モンローに恋したトルーマン・カポーティもホモセクシュアルだった)。

荒馬と女 パンフ.jpg 上のモンローとアーサー・ミラーの写真は、アーサー・ミラーが「荒馬の女」(1961年)の撮影現場を訪れた時のものですが、この時はもう既に夫婦仲は冷え切っていたものになっていたようです。

「荒馬と女」リバイバル公開時チラシ
荒馬と女 リバイバル公開時チラシ.jpg 映画自体はいかにも劇作家らしい脚本、砂漠で繰り広げられる心理劇という感じで、個人的にはイマイチでしたが、モンローの遺作となっただけでなく(1962年没(享年36))、クラーク・ゲーブル(1960年没(享年59))にとっても遺作となった作品で(ゲーブルはこの作品の公開前に亡くなっている)、モンゴメリー・クリフト(1966年没(享年45))もこの作品の公開後5年ほどで亡くなっていることに因縁めいたものを感じます(因みに、モンローは生前、モンゴメリー・クリフトについて、「私よりネがクライ人なんてモンティーしかいないわ」と言っていたという)。

 本書に何度か引用されている「ヘミングウェイとモンロー。彼らの名前はそっとしておけ。彼らは私たちにとって、2人のアメリカでいちばん美しい人だった」という言葉を述べたノーマン・メイラー).jpgのはノーマン・メイラーですが、モンロー自身はヘミングウェイを、彼がハンティングを好んだという理由で好きでなかったというのは面白いエピソードです。大女優には動物愛護主義者が多いのかな(「荒馬と女」での彼女の役どころもそれに近い要素を持ったキャラクターなのだが)。

 全体を通して著者の最も言わんとしていることは、「マリリンの前にマリリンなく、マリリンの後にマリリンなし」ということであるように思えました。

Jayne Mansfield
Jayne Mansfield.jpg モンローの後継者とされたジェーン・マンスフィールドが、モンロー以上の巨乳である上に「知能指数158」という宣伝文句だったというのは、モンローの死後、「白痴美」と思われた彼女の言動を後で振り返ってみると、実はモンローかなり頭のいい女性だったと思われたということと関係しているのではないだろうかと、個人的には思いました。よくモンローに比されるマドンナも、知能指数は140以上あると聞きますが、ただし著者は、両者を異質のものとして捉えているようです。両者の時代の間にフェニミズム運動があって女性からの受容のされ方が異なり、またイメージ的にも、マドンナの基調は"黒"であるのに対し、モンローは"白"であるとのことです。

 モンローがドストエフスキー作品などを読んで自分を高める努力をし、リー・ストラスバーグ主宰の「アクターズ・スタジオ」に通って演技を学んだことは、自らの人気と実力のギャップを埋めようした葛藤として知られていますが、周囲はそうした彼女の努力が逆に彼女の魅力をスポイルするのではと危惧した―そうした中で、演技の大家ストラスバーグ(「ゴッド・ファーザーPARTII 」に役者としても出ていたなあ、この人)が、モンローとマーロン・ブランドが、彼の門下で最も優れた才能の持ち主であると認めていたというのは、大変興味深いことです。

ティファニーで朝食を.jpg でも、トルーマン・カポーティからの「ティファニーで朝食を」の出演依頼を断ったポーラ・ストラスバーグは、リー・ストラスバーグの妻でアクターズ・スタジオのコーチだった人なんだなあ。作家の井上篤夫氏によると、彼女は「荒馬の女」に関しても、「私は『荒馬と女』のひとコマひとコマに携わってきたわ。私の仕事ぶりはスクリーンに表われている」と言っており、ジョン・ヒューストンは、「ポーラには思い知らせてやるつもりだ。この映画を牛耳っている」と怒っていますから、相当干渉したのでしょう。

荒馬と女.jpg「荒馬と女」●原題:THE MISFITS●制作年:1961年●制作国:アメリカ 「荒馬と女 [DVD]」 ●監督:ジョン・ヒューストン●製作:フランク・E・テイラー●脚本:アーサー・ミ大井ロマン.jpg大井武蔵野館.jpgラー●撮影:ラッセル・メティ●音楽:アレックス・ノース●時間:124分●出演:マリリン・モンロー/クラーク・ゲーブル/モンゴメリー・クリフト/イーライ・ウォラック/セルマ・リッター/ジェームズ・バートン/エステル・ウィンウッド●日本公開:1961/06●配給:セントラル●最初に観た場所:大井ロマン (85-09-22) (評価:★★★)●併映:「白鯨」(ジョン・ヒューストン) 
大井ロマン(大井武蔵野館) 1999(平成11)年1月31日閉館

大井武蔵野館・大井ロマン(1985年8月/佐藤 宗睦 氏)
大井武蔵野館・大井ロマン.jpg

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モンローの魅力の秘密を思い入れ込めて解くとともに、モンローをめぐる「文化」について考証。

マリリン・モンロー.gif
マリリン・モンロー 岩波新書2.jpg
   亀井 俊介.jpg 亀井俊介・東大名誉教授
マリリン・モンロー (岩波新書 黄版))』['87年]

亀井 俊介 『マリリン・モンロー』.jpg亀井 俊介 『マリリン・モンロー』1.jpg 著者は、「近代文学におけるホイットマンの運命」研究で日本学士院賞を受賞したアメリカ文学者(この人、日本エッセイストクラブ賞も受賞している)。著者によれば、マリリン・モンロー(1926-1962/享年36)は、生きている間は「白痴美の女」と見られることが多かったのが、その死を契機として同情をもって見られるようになり、謀殺説などもあってハリウッドに殺された犠牲者とされる傾向があったとのこと。著者は、こうした、彼女を弱者に仕立て上げるあまり、彼女が自分を向上Marilyn Monroe by Ben Ross.jpgさせていった力や、積極的に果たした役割を十分に認めない考えに与せず、確かにハリウッドの強制によって肉体美を発揮したが、それだけではなく、アメリカ娘の心の精華のようなものを兼備していて、それらが溶け合わさったものが彼女の永続的で普遍的な魅力であるとしています。

Marilyn Monroe photo by Ben Ross

 ノーマ・ジーンとしての生い立ちからマリリン時代になりスターの地位を築くまで、そして突然の死とそれに伴う風評について、彼女について書かれた幾つかの伝記も参照しながら語られていますが、本書自体は伝記を目的としたものではなく、1つは、そうしたマリリン・モンローの魅力とは何だったのかということについて、個人的な思い入れも含めて考察し、もう1つは、生前・死後を通じて、彼女の存在やその魅力がアメリカの文化とどのように呼応し合ったかということを考証しているような本です。

Norman Mailer.jpgNorman (Kingsley) Mailer (1923-2007).jpg 更に本書の特徴を挙げるならば、マリリン・モンローに強い関心を抱きながらも彼女に逃げられ続けたノーマン・メイラー(1923 -2007/享年84)のことが、少し偏っていると言ってもいいぐらい大きく扱われていて、これは、モンローとメイラーに"精神的な双生児"的共通点があるとしている論評があるのに対し、両者の共通点と相反部分を著者なりに解き明かしたもので、この部分はこの部分で興味深いものでした(メイラーは結局、モンローに会えないまま、モンローの死後、彼女の伝記を書いているが、モンローはメイラーに会うことで自分が何らかの者として規定されてしまうことを避けたらしい)。

 Norman (Kingsley) Mailer (1923-2007)
Milton Ebbins pushed Monroe onstage for her famous rendition of Happy Birthday (Mr President).jpgMonroe onstage for her famous rendition of Happy Birthday (Mr President)

 ジョン・F・ケネディ大統領の誕生祝賀パーティーで「ハッピー・バースデー」を歌ったという有名な場面も、歌の出向田邦子3.jpgだしはおぼつかなく、作家の向田邦子は、「大丈夫かな」と会場全員の男女を「子どもの学芸会を見守る親の心境」にさせておいて、最後は情感を込めて見事に歌い上げ、満場の拍手を得る―「影の演出者がいたとしたら、その人は天才だと思った」と書いていますが、著者は本書において「マリリン自身が天才だったのだ」とし、モンローには「政治家ふうの計算」はできなかったが、「政治家よりも豊かな心で、民衆の心と通い合うすべを完全に見につけていた」としています。

【1995年選書化[岩波新書評伝選]】

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写真が豊富(数千点)かつ鮮明。生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"。

東宝特撮怪獣映画大鑑(増補版).jpg 東宝特撮怪獣映画大鑑 増補版.jpg ゴジラ.jpg モスラ対ゴジラ1964.jpg
東宝特撮怪獣映画大鑑』(1999/03 朝日ソノラマ) 「ゴジラ」(1954)/「モスラ対ゴジラ」(1964)

 朝日ソノラマの旧版('89年刊行)の「増補版」。553ページにも及ぶ大型本の中で、'54年の「ゴジラ」から'98年の「モスラ3」までのスチールや撮影風景の写真などを紹介していますが、とにかく写真が充実(数千点)しているのと、その状態が極めてクリアなのに驚かされます。

浅野ゆう子.jpg 怪獣映画ファンサークル代表竹内博氏が、仕事関係で怪獣映画の写真が手元に来る度に自費でデュープして保存しておいたもので(元の写真は出版社や配給会社に返却)、当時の出版・映画会社の資料保管体制はいい加減だから(そのことを氏はよく知っていた)、結局今や出版社にも東宝にもない貴重な写真を竹内氏だけが所持していて、こうした集大成が完成した、まさに生活費を切り詰め集めた"執念のコレクション"です(星半個マイナスは価格面だけ)。

水野久美2.jpg若林映子2.jpg やはり、冒頭に来るのは「ゴジラ」シリーズですが、スチールの点数も多く、ゴジラの変遷がわかるとともに、俳優陣の写真も豊富で、平田昭彦、小泉博、田崎潤、佐原健二、藤木悠、宝田明、高島忠夫、女優だと水野久美若林映子(後のボンドガール)、根岸明美、さらに前田美波里や、ゴジラものではないですが浅野ゆう子('77年「惑星大戦争」)なども出ていたのだなあと。

モスラ対ゴジラ.jpgモスラ.jpgゴジラ ポスター.jpg 「ゴジラ」('54年)は、東宝の田中友幸プロデューサーによる映画「ゴジラ」の企画が先にあって、幻想小説家の香山滋が依頼を受けて書いた原作は原稿用紙40枚ほどのものであり、現在文庫で読める『小説ゴジラ』は、映画が公開された後のノヴェライゼーションです。

ゴジラ 1954.jpgゴジラs29.jpg  自分が生まれる前の作品であり(モノクロ)、かなり後になって劇場で観ましたが、バックに反核実験のメッセージが窺えたものの、怪獣映画ファンの多くが過去最高の怪獣映画と称賛するわりには、自分自身の中では"最高傑作"とするまでには、今ひとつノリ切れなかったような面もあります。やはりこういうのは、子供の時にリアルタイムで観ないとダメなのかなあ。ゴジラ 1954.jpg初めて「怪獣映画」というものを観た人たちにとっては、強烈なインパクトはあったと思うけれど。昭和20年代終わり頃に作られ、自分がリアルタイムで観ていない作品を、ついつい現代の技術水準や演出などとの比較で観てしまっている傾向があるかもしれません。但し、制作年('54年)の3月にビキニ環礁で米国による水爆実験があり、その年の9月に「第五福ゴジラ_.jpg竜丸」の乗組員が亡くなったことを考えると、その年の12月に公開されたということは、やはり、すごく時代に敏感に呼応した作品ではあったかと思います。

宝田明(南海サルベージKK所長・尾形秀人)/河内桃子(山根恭平博士の娘・山根恵美子)/平田昭彦(科学者・芹沢大助)
Gojira (1954) 菅井きん(1926-2018/享年92)(小沢代議士)/志村喬(古生物学者・山根恭平博士)
Gojira (1954) .jpg菅井きん ゴジラ.jpgo志村喬ゴジラ.jpg「ゴジラ」●制作年:1954年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:村田武雄/本多猪四郎●撮平田昭彦 ゴジラ.jpg影:玉井正夫●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二ほか●原作:香山滋●時間:97分●出演:宝田明/河内桃子/平田昭彦/志村喬/堺左千夫/村上冬樹/山本廉/榊田敬二/鈴木豊明 /馬野都留子/菅井きん/笈川武夫/林幹/恩田清二郎/高堂国典/小川虎之助/手塚克巳/橘正晃/帯一郎/中島春雄/川合玉江/東静子/岡部正/鴨田清/今泉康/橘正晃/帯一郎●公開:1954/11●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★★☆)●併映:「怪獣大戦争」(本多猪四郎)


モスラ_0.jpg 作品区分としてはゴジラ・シリーズではないですが、中村真一郎、福永武彦、堀田善衛の3人の純文学者を原作者とする「モスラ」('61年)の方が、今観ると笑えるところも多いのですが、全体としてはむしろ大人の鑑賞にも堪えうるのではないかと...。まあ、「ゴジラ」と「モスラ」の間には7年もの間隔があるわけで、その間に進歩があって当然なわけだけれど。

「モスラ」('61年)予告

モスラ51.jpg ザ・ピーナッツ(伊藤エミ(1941-2012)、伊藤ユミ(1941-2016))のインドネシア風の歌も悪くないし、東京タワー('58年完成、「ゴジラ」の時「モスラ」(61年).jpgはまだこの世に無かった)に繭を作るなど絵的にもいいです。原作「発光妖精とモスラ」では繭を作るのは東京タワーではなく国会議事堂でしたが、60もののけ姫のオーム.jpg年安保の時節柄、政治性が強いという理由で変更されたとのこと、これにより、モスラは東京タワーを最初に破壊した怪獣となり、東京タワーは完成後僅か3年で破壊の憂き目(?)に。繭から出てきたのは例の幼虫で、これが意外と頑張った? 宮崎駿監督の「もののけ姫」('97年)の"オーム"を観た時、モスラの幼虫を想起した人も多いのではないでしょうか。

モスラ4S.jpg「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:古関裕而●特殊技術:円谷英二●イメージボード:小松崎茂●原作:中村真一郎/福永武彦/堀田モスラ_1.jpg善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:モスラ111 .jpgフランキー堺小泉博香川京子/ジェリー伊藤/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙志村喬平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広「モスラ」上原・香川.jpg志村 モスラ.jpg瀬正一/桜井巨郎平田昭彦 モスラ.jpg/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎)   
   
   
モスラ対ゴジラ ポスター2.jpgモスラ対ゴジラ ポスター.jpg 「ゴジラシリーズ」の第1作「ゴジラ」を観ると、ゴジラが最初は純粋に"凶悪怪獣"であったというのがよくわかりますが、「ゴジラシリーズ」の第4作「モスラ対ゴジラ」('64年)(下写真)の時もまだモスラの敵役モスラ対ゴジラ 02.jpgでした。この作品はゴジラにとって怪獣同士の闘いにおける初黒星で、昭和のシリーズでは唯一の敗戦を喫した作品でもあります。因みに、「ゴジラシリーズ」の第3作「キングコング対ゴジラ」('62年)は両者引き分け(相撃ち)とされているようです。それが、'64年12月に公開された('64年12月公開予定だった黒澤明監督「赤ひげ」の撮影が長引いたため、正月興行用に急遽制作された)「ゴジラシリーズ」の第5作「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)(下写真)「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)3.jpgになると、宇宙怪獣キングギド三大怪獣 地球最大の決戦.jpgラを倒すべく力を合わせようというモスラ(幼虫)の"呼びかけ"にラドンと共に"説得"されてしまいます。この怪獣たちが極端に擬人化された場面のバカバカしさは見モノでもあり、ある意味、珍品映画として貴重かもしれません。ともかく、ゴジラはこの作品以降、昭和シリーズではすっかり"善玉怪獣"になっています(この映画で、東京上空を飛行したキングギドラは衝撃波で東京タワーを破壊し、「モスラ」に続いて東京タワーを破壊した2番目の怪獣となる)。また、この「三大怪獣 地球最大の決戦」には、後にボンドガールとなる若林映子が、キングギドラに滅ぼされた金星人の末裔であるサルノ王女(の意識が憑依した女性)役で出ていましたが、王女の本名はマアス・ドオリナ・サルノ(まあ素通りなさるの!)でした(笑)。この作品、「四大怪獣」ではないかとも言われましたが、モスラ、ゴジラ、ラドンの地球の3匹が若林映子 サルノ王女.jpg三大怪獣 地球最大の決戦 (1964年)-s2.jpg平田昭彦 三大怪獣jpg.jpgを力を合わせて宇宙怪獣キングギドラ戦に挑むことから、「地球の三大怪獣」にとっての最大の決戦という意味らしいです。
若林映子(サルノ王女)/夏木陽介・星由里子・志村喬 in「三大怪獣 地球最大の決戦」/平田昭彦

Mosura tai Gojira(1964)
Mosura tai Gojira(1964).jpgモスラ対ゴジラ hujita .jpgモスラ対ゴジラ2.jpg「モスラ対ゴジラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:89分●出演:宝田明星由里子小泉博/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/藤木悠/田島義文/佐原健二/谷晃/木村千吉/中モスラ 小美人用に作られた巨大セット.jpgモスラ .jpg山豊/田武謙三/藤田進/八代美紀/小杉義男/田崎潤/沢村いき雄/佐田豊/山本廉/佐田豊/野村浩三/堤康久/津田光男/大友伸/大村千吉/岩本弘司/丘照美/大前亘●公開:1964/04●配給:東宝(評価:★★★☆)
小泉博・宝田明・星由里子・ザ・ピーナッツ/小美人用に作られた巨大セット(本多監督とザ・ピーナッツ)
「モスラ対ゴジラ」('64年)予告

「三大怪獣 地球最大の決戦」('64年)予告

San daikaijû Chikyû saidai no kessen(1964)                 
三大怪獣・地球最大の決戦 パンフレット.jpgSan daikaijû Chikyû saidai no kessen(1964).jpg三大怪獣 地球最大の決戦2.jpg「三大怪獣 地球最大の決戦」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:97分●出演:夏木陽介/小泉博/星由里子若林映子「三大怪獣 地球最大の決戦」.png三大怪獣 地球最大の決戦 星百合子e.jpgザ・ピーナッツ/志村喬/伊藤久哉/平田昭彦/佐原健二/沢村いき雄/伊吹徹/野村浩三/田島義文/天本英世/小杉義男/高田稔/英百合子/「三大怪獣 地球最大の決戦」6.jpg加藤春哉●時間:93分●公開:1964/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★☆)●併映:「モスラ」(本多猪四郎)
夏木陽介・若林映子(サルノ王女) in「三大怪獣 地球最大の決戦」
  
怪獣大戦争.jpg怪獣大戦争01.jpg 更に、ゴジラシリーズ第6作「怪獣大戦争」('65年)は、地球侵略をたくらむX星人がキングギ怪獣大戦争 土者.jpgドラ、ゴジラ、ラドンの3大怪獣を操り総攻撃をかけてくるというもので、X星人の統制官(土屋嘉男)がキングギドラを撃退するためゴジラとラドンを貸して欲しいと地球人に依頼してきて(土屋嘉男は「地球防衛軍」('57年)のミステリアン統領以来の宇宙人役か)、その礼としてガン特効薬を提供すると申し出るが実はそれは偽りで...という、まるで人間界のようなパターンの詐欺行為。「シェー」をするゴジラなど、怪獣のショーアップ化が目立ち、"破壊王"ゴジラはここに至って、遂に自らのイメージをも完全粉砕してしまった...。

怪獣大戦争011.jpg 本書にはない裏話になりますが、この作品に準主役で出演した米俳優のニック・アダムスは、ラス・タンブリンなど同列のSF映画で日本に招かれたハリウッド俳優達が日本人スタッフと交わろうとせずに反発を受けたのに対し、積極的に打ち解け馴染もうとし、共演者らにも人気があったそうで、土屋嘉男とは特に息が合い、土屋にからかわれて女性への挨拶に「もうかりまっか?」と言っていたそうで、仕舞には、自らが妻帯者であるのに、水野久美に映画の役柄そのままに「妻とは離婚するから結婚しよう」と迫っていたそうです(ニック・アダムスは当時、私生活では離婚協議中だったため、冗談ではなく本気だった可能性がある。但し、彼自身は、'68年に錠剤の過量摂取によって死亡している(36歳))。

怪獣大戦争ges.jpgニック・アダムス2.jpg「怪獣大戦争」●制作年:1965年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本: 関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:94分●出演:宝田明/ニック・アダムス/久保明/水野久美/沢井桂子/土屋嘉男/田崎潤/田島義文/田武謙三/、村上冬樹/清水元/千石規子/佐々怪獣大戦争 土屋嘉男.jpg怪獣大戦争2.jpg木孝丸●公開:1965/12●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★☆)●併映:「ゴジラ」(本多猪四郎)
中央:X星人統制官(土屋嘉男
    
水野久美.jpg 怪獣の複数登場が常となったのか、「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)などというのもあって(「ゴジラ」シリーズとしては第7作)、監督は本多猪四郎ではなく福田純で、音楽は伊福部昭ではなく佐藤勝ですが、これはなかなかの迫力だった印象があります(後に観直してみると、人間ドラマの方はかなりいい加減と言うか、ヒドいのだが)。
水野久美 in「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」('66年)宝田明
ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘 水の2.jpg
 
ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘ps.jpgゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘2.jpg シリーズ第6作「怪獣大戦争」に"X星人"役で出ていた水野久美が今度は"原住民"の娘役で出ていて、キャスティングの変更による急遽の出演で、当時29歳にして19歳の役をやることになったのですが、今スチール等で見ても、妖艶過ぎる"19歳"、映画「南太平洋」('58年/米)みたいなエキゾチックな雰囲気もありましたが、何せ観たのは子供の時ですから、南の島の島民たちが大壷で練っている黄色いスープのような液体の印象がなぜか強く残っています(何のための液体だったのか思い出せなかったのだが、後に観直して"エビラ除け"のためのものだったと判り、スッキリした)。

「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」●制作年:1966年●監「ゴジラ・エビラ・モスラ 南海の大決闘」.jpg督:福田純●製作:田中友幸●脚本:関沢新一●撮影:山田一「ゴジラ・エビラ・モスラ」水野.jpg夫●音楽:佐藤勝●特殊技術:円谷英二●出演:宝田明/渡辺徹/伊吹徹/当銀長太郎/砂塚秀夫/水野久美/田崎潤/平田昭彦/天本英世/佐田豊/沢村いき雄/伊藤久哉/石田茂樹/広瀬正一/鈴「ゴジラ・エビラ・モスラ」hirata 野.jpg「ゴジラ・エビラ・モスラ」takarada .jpg木和夫/本間文子/中北千枝子/池田生二/岡部正/大前亘/丸山謙一郎/緒方燐作/勝部義夫/渋谷英男●時間:87分●公開:1966/12●配給:東宝(評価:★★★☆)●併映:「これが青春だ!」(松森 健)
   
    
      
大怪獣ガメラgamera_1.jpg この辺りまで怪獣映画は東映の独壇場ともいえる状況でしたが、'65年に大映が「大怪獣ガメラ」、'67年に日活が「大巨獣ガッパ」でこの市場に参入します(本書には出てこないが)。このうち、「大怪獣ガメラ」('65年/大映)は、社長の永田雅一の声がかりで製作されることとなり(永田雅一の「カメ」で行けという"鶴の一声"で決まったようで、湯浅憲明(1933-2004)監督はじめスタッフは苦労したのではないか)、これがヒットして、ガメラ・シリーズは'71年に大映が倒産するまでに7作撮影されましたが、本作はシリーズ唯一のモノクロ作品です(「ゴジラ」の第1作を意識したのかと思ったが、予算と技術面の都合だったらしい)。大怪獣ガメラ 船越英二.jpgあらすじは、砕氷調査船・ちどり丸で北極にやってきた東京大学動物学教室・日高教授(船越英二)らの研究チームが、国大解呪ガメラ 1965es.jpg籍不明機を目撃、その国籍不明機には核爆弾が搭載されており、その機体爆発の影響で、アトランティスの伝説の怪獣ガメラが甦るというもの。「ガメラ」の命名者でもある永田雅一の「子供たちが観て『怪獣がかわいそうだ』とか哀愁を感じないといけない。子供たちの共感を得ないとヒットしない」との考えの大怪獣ガメラ _.jpg大怪獣ガメラ 1965_.jpgもと、ガメラは子供には優しく、特にカメを大事に飼っている主人公の少年には優しいのですが、いくら何でも擬人化し過ぎたでしょうか(永田雅一は「ガメラを泣かせろ」と指示したそうな)。特撮自体は悪くなく、逃げ惑う人々のシーンの人海戦術も効いているだけに、お子様仕様になってしまったのが惜しまれます(出来上がった作品を観て永田雅一は「面白い」と言ったそうだが、映画はヒットしたわけだから、商売人としての感性はあった?)。
大怪獣ガメラ [Blu-ray]」「大怪獣ガメラ デジタル・リマスター版 [DVD]
「大怪獣ガメラ」●制作年:1965年●監督:湯浅憲明●製作:永田秀雅(製作総指揮:永田雅一)●脚本:高橋二三●撮影:宗川信夫●音楽:山内正●時間:78分●出演:船越英二/山下洵一郎/姿美千子/霧立はるみ/北原義郎/左卜全/浜村純/北城寿太郎/吉田義夫/大山健二/小山内淳/藤山浩二/大橋一元/高田宗彦/谷謙一/中田勉/森矢雄二/丸山修/内田喜郎/槙俊夫/隅田一男/杉森麟/村田扶美子/竹内哲郎/志保京助/中原大怪獣ガメラ 船越英二  2.jpg健/森一夫/佐山真次/喜多大八/大庭健二/荒木康夫/井上大吾/三夏伸/清水昭/松山新一/岡郁二/藤井竜史/山根圭一郎/村松若代/沖良子/加川東一郎/伊勢一郎/佐原新治/宗近一/青木英行/萩原茂雄/古谷徹/中条静夫(ナレーション)●時間:87分●公開:1965/11●配給:大映(評価:★★★)

船越英二・霧立はるみ
 
「大魔神」(1966)青山良彦/高田美和/月宮於登女/藤巻潤
大魔神 1966.jpg大魔神77.jpg 「ガメラ」のヒットを受け、翌年「ガメラシリーズ」の第2作として総天然色による「大怪獣決闘 ガメラ対バルゴン」('66年/大映)が作られましたが、併映の「大魔神」('66年/大映)大魔神1.jpg方が"初物"としてインパクトがあったかも。ジュリアン・デュヴィヴィエ監督の「巨人ゴーレム」('36大魔神2.jpg年/チェコスロバキア)で描かれたゴーレム伝説に材を得たそうですが、戦国時代に悪人が陰謀を巡らせて民衆が虐げられると、穏やかな表情の石像だった大魔神が復活して動き出し、破壊的な力を発揮して悪人を倒すというストーリーは分かりやすいカタルシスがありました。大映映画ですが、音楽は東宝ゴジラ映画の伊福部昭(1914-2006/享年91)が担当しています(同じく大映映画で伊福部昭が音楽を担当した作品に、黒澤明監督が大映で撮った「静かなる決闘」('49年)がある)。「大魔神」は、ほぼ同じパターン内容で同年にシリーズ第2作「大魔神怒る」、第3作「大魔神逆襲」が公開されています。

「大魔神怒る」66年.jpg「大魔神怒る」t.jpg「大魔神怒る」1.jpg 「大魔神怒る」('66年/大映)は、1作目が大ヒットしたため、お盆興行作品として製作されたもので、監督は三隅研次(1921-1975)で、これも伊福部昭が音楽を担当。千草家とその分家・名越家が領主の平和な国が隣国か「大魔神怒る」f.jpgら侵略され、領主は滅ぶもお家再興と平和を望んで千草家の本郷功次郎の許嫁である名越家の藤村志保が魔人に願掛けするというもの。今回は魔人は「水の神」という設定になっていて、藤村志保「大魔神怒る」3.jpgが悪人たちより「大魔神怒る」4.jpg焚刑に処せられることになって、今まさに火に焼かれようとする時、この身を神に捧げますと涙を流すと大魔神が現れ(出現シーンはハリウッド映画「十戒」('57年)に想を得ている)、悪者たちが大魔人に倒され藤村志保が魔人に感謝し、その涙が湖に落ちると、魔人は水と化して消えていくという、第1作より洗練された感じでした。製作費は1億円、興行収入もほぼ同額だったそうです。
「大魔神怒る」藤村2.jpg 「大魔神怒る」藤村志保(当時27歳)

「大魔神逆襲」66年.jpg「大魔神逆襲」1.jpg 「大魔神逆襲」('66年/大映)の監督は森一生監督(1911-1989)で、これもまた音楽は伊福部昭が担当。森一生監督は「女と男はつまらない。子供好きだから「大魔神逆襲」2.jpg子供でやりたい」と子「大魔神逆襲」3.jpg.png供たちが主役に据え、少年の純真な信仰心が大魔神を動かすという設定で、今回は大魔神「雪の魔神」として雪の中から現れ、最後には粉雪となって消えていきます。子供たちを主役に据えるのも悪いとは言いませんが、やは「大魔神逆襲」4.jpg.png.jpgり当時19歳の高田美和、27歳の藤村志保と続いた後だと、完全にお子様向けに路線変更してしまったなあという印象は拭えません。製作費は1億円弱、興行では併映なしの2番館上映となり、配給収入(興行収入から映画館の取り分を差し引いた配給会社の収入)も赤字で、4作目の企画もあったものの、これで打ち止めになっています。結局、わずか1年の間の3作で終わってしまったわけですが、その分、大魔神の重厚感は印象に残るものでした。ゴジラが「怪獣大戦争」('65年)で「シェー」をするなど、シリーズが永らえたゆえに"堕落"してしまったのとは対照的と言えるでしょうか。

「大魔神」(1966)  高田美和(当時19歳)
大魔神 blu-ray.jpg大魔神 高田美和.jpg「大魔神」●制作年:1966年●監督:安田公義●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:伊福部昭●時間:84分●出演:高田美和/青山良彦/二宮秀樹/藤巻潤/五味龍太郎/島田竜三/遠藤辰雄/杉山昌三九/伊達三郎/月宮於登女/出口静宏/尾上栄五郎/伴勇太郎/黒木英男/香山恵子/木村玄/橋本力(大魔神)●公開:1966/04●配給:大映(評価:★★★☆)
大魔神 Blu-ray BOX」(2009)

「大魔神怒る」(1966) 藤村志保(当27歳)in「大魔神怒る」('66年)/「なみだ川」('67年・三隅研次監督)
「大魔神怒る」b.jpg「大魔神怒る」藤村.jpgなみだ川 1967 2.jpg「大魔神怒る」●制作年:1966年●監督:三隅研次●製作:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:今井ひろし/森田富士郎●音楽:伊福部昭●時間:79分●出演:本郷功次郎/藤村志保/丸井太郎/内田朝雄/北城寿太郎/藤山浩二/上野山功一/神田隆/橋本力/平泉征/水原浩一/寺島雄作/高杉玄/黒木英男/三木本賀代/橘公子/加賀爪清和/小柳圭子/橋本力(大魔神)●公開:1966/08●配給:大映(評価:★★★☆)
大魔神怒る [Blu-ray]」(2009)

「大魔神逆襲」(1966)  
「大魔神逆襲」b.jpg「大魔神逆襲」5.jpg「大魔神逆襲」え.jpg「大魔神逆襲」●制作年:1966年●監督:森一生●製作総指揮:永田雅一●脚本:吉田哲郎●撮影:森田富士郎●音楽:伊福部昭●時間:87分●出演:二宮秀樹/堀井晋次/飯塚真英/長友宗之/山下洵一郎/仲村隆/安部徹/名和宏/北林谷栄/守田学/早川雄三/堀北幸夫/石原須磨男/南部彰三/橋本力(大魔神)●公開:1966/12●配給:大映(評価:★★★☆)
大魔神逆襲 [Blu-ray]」(2009)
    
    
「ゴジラ対ヘドラ」1971.jpg 一方、話を「大映」から「東宝」に戻して、シリーズ第15作「メカゴジラの逆襲」('75年)でゴジラvsキングギドラ.jpgゴジラvsビオランテ.gif「ゴジラ」1984.jpg一旦終了した「ゴジラ」シリーズ(その間に唯一ゴジラが空を飛ぶ第11作「ゴジラ対ヘドラ」('71年)などの異色作もあった)は、'84年に9年ぶりに再開されます。久々に作られた第16作「ゴジラ」('84年)では、ゴジラを原点の"凶悪怪獣"に戻したようですが、第17作あたりから、また少しおかしくなってくる...。

「ゴジラ vs ビオランテ」vhs.jpg 第17作「ゴジラ vs ビオランテ」('89年)は、バイオテクノロジーによってゴジラとバラの細胞を掛け合わせて造られた超獣ビオランテが登場し、一般公募ストーリー5千本から選ばれたものだそうですが(選ばれたのは「帰ってきたウルトラマン」第34話「許されざるいのち」の原案者である小林晋一郎の作品。一般公募と言ってもプロではないか)、確かに植物組織を持った怪獣は、「遊星よりの物体X」('51年/米)(「遊星からの物体X」('82年/米)のオリジナル)の頃からあるとは言え、随分と荒唐無稽なストーリーを選んだものだと...。

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ゴジラ vs キングギドラ 1991.jpg 第18作「ゴジラ vs キングギドラ」('91年)は、南洋の孤島に生息していた恐竜が核実験でゴジラに変身したという新解釈まで採り入れており(ここに来てゴジラの出自を変えるなんて)、ゴジラが涙ぐんでいるような場面もあって、また同じ道を辿っているなあと(この映画、敵役の未来人のUFOが日本だけを攻撃対象とするのも腑に落ちないし、タイム・パラドックスも破綻気味)。

ゴジラvsキングギドラ tutiya2.jpg 第17、第18作は大森一樹監督で、いくらか期待したのですが、かなり脱力させられました(第18作「ゴジラ vs キングギドラ」で怪獣映画の中での土屋嘉男を見たのがちょっと懐かしかったくらいか。山村聰も内閣総理大臣役で出ていたけれど)。この監督は商業映画色の強い作品を撮るようになって、はっきり言ってダメになった気がします。大森一樹監督の最高傑作は自主映画作品「暗くなるまで待てない!」('75年/大森プロ)ではないでし山村聰「ゴジラ vs キングギドラ」.jpgょうか。神戸を舞台に大学生の若者たちが「暗くなるのを待てないで昼間から出てくるドラキュラの話」の映画を撮る話で、モノクロで制作費の全くかかっていない作品ですが、むしろ新鮮味がありました(今年['08年]3月に、大森監督によってリメイクされた)。

 結局、ゴジラ・シリーズは'04年の第28作をもって終了しますが、「ゴジラ」シリーズ全体での観客動員数は9,925万人で、「男はつらいよ」シリーズ全48作の合計観客動員数7,957万人を上回り、歴代で最も観客動員数多い劇場映画シリーズとされています('16年7月29日に「ゴジラ」シリーズの第29作、国内では「ゴジラ FINAL WARS」('04年/東宝)以来約12年ぶりの日本製作のゴジラ映画として「シン・ゴジラ」が公開され、8月1日までに観客動員71万人となり、「ゴジラ」シリーズが累計観客動員数で1億人突破した)。

ゴジラ vs ビオランテ  .jpgゴジラ vs ビオランテs.jpg「ゴジラ vs ビオランテ」●制作年:1989年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:すぎやまこういち(ゴジラテーマ曲:伊福部昭)●時間:97分●出演:三田村邦彦/田中好子/小高恵美/峰岸徹/高嶋政伸/高橋幸治/沢口靖子(特別出演)/永島敏行(友情出演)/久我美子(友情出演)●公開:1989/12●配給:東宝(評価:★☆)ゴジラvsビオランテ [DVD]
「ゴジラ vs ビオランテ」久我.jpg「ゴジラ vs ビオランテ」永島1.jpg「ゴジラ vs ビオランテ」沢口1.jpg久我美子(大和田圭子官房長官 ※友情出演)/永島敏行(山本精一技術部長 ※友情出演)/沢口靖子(白神源壱郎博士の一人娘・白神英理加 ※特別出演)

「ゴジラ vs キングギドラ」.jpg「ゴジラ vs キングギドラ」●制作年:1991年●監督・脚本:大森一樹●製作:田中友幸●音楽:伊福部昭●特技監督:川北紘一●原作:香山滋●時間:103分●出演:中川安奈/豊原功補/小高恵美/西岡徳馬/土屋嘉男/山村聰/佐原健二/時任三郎/原田貴和子/小林昭二/佐々木勝彦/チャック・ウィルソン/ケント・ギルバート/ダニエル・カール/ロバート・スコットフィールド●公開:1991/12●配給:東宝 (評価:★☆)
  
暗くなるまで待てない!47.jpg「暗くなるまで待てない」のサウンドトラックm.jpg「暗くなるまで待てない!」●制作年:1975年●監督:大森一樹●脚本:大森一樹/村上知彦●音楽:吉田健志/岡田勉/吉田峰子●時間:30分●出演:稲田夏子/栃岡章/南浮泰造/村上知彦/森岡富子/磯本治昭/塚脇小由美/大森一樹/鈴木清順●公開:1975/04●配給:大森プロ●最初に観た場所:高田馬場パール座 (80-12-25) (評価:★★★★)●併映:「星空のマリオネット」(橋浦方人)/「青春散歌 置けない日々」(橋浦方人)

「暗くなるまで待てない」サウンドトラック(吉田健志)

日本誕生.jpg ゴジラ・シリーズ以外で、役者だけで見れば何と言っても凄いのが「日本誕生」('59年)で、ヤマタノオロチが出てくるため確かに"怪獣映画"でもあるのですが、三船敏郎、乙羽信子、司葉子、鶴田浩二、東野英治郎、杉村春子、田中絹代、原節子など錚々たる面々、果ては、柳家金語楼から朝汐太郎(当時の現役横綱)まで出てくるけれど、「大作」転じて「カルト・ムービー」となるといった感じでしょうか(観ていないけれど、間違いなくズッコケそうで観るのが怖いといった感じ)。 

「日本誕生」 アメノウズメノミコ (乙羽信子)

マタンゴ.jpg 初期の「透明人間」('54年)やガス人間第1号」('60年)など"○○人間"モノや天本英夫の「マタンゴ」('63年)といった怪奇モノ、地球防衛軍」('57年)宇宙大戦争」('59年)などの宇宙モノから中国妖怪モノ、"フランケンシュタイン"モノまで、シリーズごとのほぼ全作品を追っていて、作品当りのスチール数も豊富な上に、一部については、デザイン画や絵コンテなども収められています。

 この頃東宝はゴジラ映画だけを作っていたわけではなく、クラゲの化け物のような怪獣が登場する宇宙大怪獣ドゴラ」('66年)といった作品もありました。個人的には、"フランケンシュタイン"モノでは、フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」('66年)などが印象に残っています。
 
水野久美 in 「フランケンシュタイン対地底怪獣」('65年)/根岸明美 in「キングコング対ゴジラ」('62年)
東宝特撮怪獣映画大鑑1.jpg 東宝特撮怪獣映画大鑑2.jpg
根岸明美(1934.3.26-2008.3.11/享年73) in 「アナタハン」('53年)、「キングコング対ゴジラ」('62年)
根岸明美 アナタハン.jpg 根岸明美 マタンゴ.jpg
赤ひげ 根岸明美 2.jpg赤ひげ」('65年)(阿部嘉典『「映画を愛した二人」黒沢明 三船敏郎』(1996/01 報知新聞社)より)

《読書MEMO》
● 桂 千穂 『カルトムービー本当に面白い日本映画 1945→1980』['13年/メディアックス]
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文化大革命以降、意外な日本映画が中国で大反響。その背景を分析。

中国10億人の日本映画熱愛史2.jpg君よ憤怒の河を渉れ 高倉・原田 2.jpg 君よ憤怒の河を渉れ (1976年3.jpg
君よ憤怒の河を渉れ [DVD]」('76年)高倉健・原田芳雄/中野良子・大滝秀治
中国10億人の日本映画熱愛史-高倉健、山口百恵からキムタク、アニメまで』['06年] 

追捕.jpg君よ憤怒の河を渉れ.jpg 文化大革命以降の中国国内における日本映画の歴史を解説したもので、何よりも、文革直後に中国で公開された数少ない映画が、中国の一般の人々や映画人に与えた影響が絶大なものであったことを本書で知りました。その代表というのが、今は日本では殆ど顧みられることのない作品「君よ憤怒の河を渉れ」('76年/製作:大映、配給:松竹)で、西村寿行の原作を佐藤純彌が監督したこの作品は、'78年に中国で「追捕」というタイトルで公開されるや大反響を呼び、中国人の約80%以上が観たということで(スゴイ!)、主演の高倉健、中野良子は今でも中国で人気があるそうです。

サンダカン八番娼館 望郷.jpg これに続いたのが、山崎朋子の原作を熊井啓が監督した「サンダカン八番娼館・望郷」('74年製作)で、主演の栗原小巻の中国での人気は今でも高いそうですが、その後も「愛と死」('71年/中村登監督)、「人間の証明」('77年/佐藤純彌監督)、「砂の器」('74年/野村芳太郎監督)などが中国に輸入され、高い人気を博したとのこと(「愛と死」を80年代に日本人が観れば、既にノスタルジーの対象であったものが、当時の中国人にはオシャレに見えた。この点が、今の日本の"韓流ブーム"とは異なるところ)。

 本書では、中国に輸入された日本映画とその影響を、「第5世代」と呼ばれる中国の新映画人の台頭など国産映画の動向と併せて解説し、何故それら日本映画が中国の人々に受け入れられたのかを分析していて、先に挙げたものは、中国に輸入された日本映画の初期のものに過ぎないのですが、とりわけ反響が絶大であっただけに、その「ウケた理由」には自ずと興味が持たれます(こうしてみると、芸術性はあまり関係ないなあ)。

山口百恵 赤い疑惑.jpg 中国における高倉健の人気は、ハリウッドスターを含めた海外映画俳優の中で今でもトップという圧倒的なものだそうですが、女優で最大人気は、'84年から中国で放映されたTVドラマ「赤い疑惑」シリーズの山口百恵だそうで、殆どカリスマのような存在。

コン・リー.jpg 大物女優の鞏俐(コン・リー)なども、中国が本当にオリジナルな芸術性を持った作品を作り始めた第五世代の代表的監督・張芸謀(チャン・イーモウ)の初期作品「紅いコーリャン」('87年)に出演した頃は、中国国内で「中国の山口百恵」と言われているという話を聞いた覚えがあります(本書によれば、その後すぐに彼女はそのイメージから脱却したそうだが、スピルバーグがプロデュースした「SAYURI」('05年)に、チャン・ツィイーと共に日本人女性役で出ているというのが興味深い。本来は日本人がやる役だけれど、ハリウッド進出は中国女優の方が既に先行している)。

 著者は映画芸術論を専門とする中国人の学者で('94年以降、日本在住)、本書は初めから日本語で書かれたもの。知らないことだらけで興味深く読めたけれど、1行当たりの"漢字含有率"がどうしても高くなってしまうのは、本の内容上、仕方がないことなのか。

君よ憤怒の河を渉れ poster.jpg君よ憤怒の河を渉れ 高倉・原田.jpg 冒頭で掲げた「君よ憤怒の河を渉れ」は(原作は「ふんぬ」だが映画タイトルには「ふんど」のルビがある。因みに監督の佐藤純彌は東大文学部卒)、高倉健の東映退社後の第一作目(当時45歳)で、高倉健が演じるのは、政界黒幕事件を追ううちに無実の罪を着せられ警察に追われる立場になる東京地検検事・杜丘冬人(上君よ憤怒の河を渉れ 池部s.jpg司の伊藤検事正を池部良が演じている)。原田芳雄が演じる彼を追う警視庁の矢村警部との間で、次第に友情のようなものが芽生えてくるのがポイントで、最後は2人で黒幕を追い詰め、銃弾を撃ち込むという任侠映画っぽい結末でした(検事と警官で悪を裁いてしまうという無茶苦茶ぶりだが、その分カタルシス効果はあったか)。健さんは逃亡過程においては、馬を駆ったりセスナ機を操縦したりと007並みの活躍で、その間、中野良子や倍賞美津子に助けられるという盛り沢山な内容です。

Kimi yo fundo no kawa wo watare (1976)
Kimi yo fundo no kawa wo watare (1976) .jpg君よ憤怒の河を渡れ  .jpg そこそこ面白いのですが、B級と言えばB級で、なぜこの映画が中国で受けたのか不思議というのはあります。中国人の約80%以上が観たというのが大袈裟だとして、たとえそれが30%であったとしても、最も多くの人が観た日本映画ということになるのではないでしょうか。張藝謀(チャン・イーモウ)監督のように、この映画を観て高倉健に恋い焦がれ、その想いがコラボ的に高倉健が主演することになった「単騎、千里を走る。」('05年)に結実したということもあります。やっぱり、中国で文革後に実質初めて公開された日本映画という、そのタイミングが大きかったのでしょう。今観ると、意外と2時間半の長尺を飽きさせずに見せ、また70年代テイスト満載の映画でもあり、その部分を加味して星半個オマケしておきます。
君よ憤怒の河を渉れ 大和田.jpg 君よ憤怒の河を渉れ nakano.jpg
大和田伸也/高倉健/原田芳雄                 高倉健/中野良子
君よ憤怒の河を渉れsp.jpg「君よ憤怒の河を渉れ」1.jpg「君よ憤怒の河を渉れ」●制作年:1976年●監督:佐藤純彌●製作:永田雅一●脚本:田坂啓/佐藤純彌●撮影:小林節雄●音楽:青山八郎●原作:西村寿行「君よ憤怒の河を渉れ」●時間:151分●出君よ憤怒の河を渉れ-s.jpg君よ憤怒の河を渉れ 倍賞.jpg演:高倉健/原田芳雄/池部良/大滝秀治/中野良子/倍賞美津子/岡田英次/西村晃/田中邦衛/伊佐山ひ君よ憤怒の河を渉れ サントラ.jpgろ子/内藤武敏君よ憤怒の河を渉れ s.jpg君よ憤怒の河を渉れ 大滝秀治s.jpg/大和田伸也/下川辰平/夏木章/石山雄大/松山新一/木島進介/久富惟晴/神田隆/吉田義夫/木島一郎/浜田晃/岩崎信忠/姿鉄太郎/沢美鶴/田畑善彦/青木卓司/田村貫/里木佐甫良/阿藤岡田英次 君よ憤怒の河を渉れ.jpg海(阿藤快)/松山新一/小島ナナ/中田勉、/飛田喜佐夫/細井雅夫/千田隼生/宮本高志/本田悠美子●公開:1976/02●配給:松竹 (評価:★★★☆)      
岡田英次(主人公・杜丘を自殺させようとする医師・堂塔)/西村晃(政界の黒幕・長岡了介)
君よ憤怒の河を渉れ 西村晃.jpeg

君よ憤怒の河を渉れ 池部3.jpg池部良(杜丘の上司・伊藤検事正)/原田芳雄/高倉健

田中邦衛 君よ憤怒の河を渉れ.jpg

田中邦衛(横路敬二・杜丘を窃盗犯と名指した寺田俊明と名乗る男。最後は精神病院での人体実験的投薬により廃人となる)

   
  
●世界歴代観客動員数・2021年3月8日現在(Wikipedia[要出典])
タイトル 公開年 チケット販売数(推定) 製作国
君よ憤怒の河を渉れ 1976 800,000,000 日本
白蛇伝 1980 700,000,000 中国
喜盈門(中国語版) 1981 650,000,000 中国
神秘的大佛 1980 403,210,000 中国
風と共に去りぬ 1939 338,400,000 アメリカ
スター・ウォーズ 1977 338,400,000 アメリカ
キャラバン(英語版) 1971 319,000,000 インド
少林寺 1982 304,920,000 香港・中国
タイタニック 1997 301,300,000 アメリカ
保密局的鎗聲 1979 300,000,000 中国
サウンド・オブ・ミュージック 1965 283,300,000 アメリカ
アベンジャーズ/エンドゲーム 2019 278,301,590 アメリカ
E.T. 1982 276,700,000 アメリカ
十戒 1956 262,000,000 アメリカ
炎(ヒンディー語版) 1975 250,021,329 インド
ドクトル・ジバゴ 1965 248,200,000 アメリカ・イタリア
ジョーズ 1975 242,800,000 アメリカ
アバター 2009 238,600,000 アメリカ
放浪者(英語版) 1951 217,100,000 インド
白雪姫 1937 214,900,000 アメリカ
エクソシスト 1973 214,900,000 アメリカ
アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー 2018 210,856,433 アメリカ
101匹わんちゃん 1961 199,800,000 アメリカ
スター・ウォーズ/フォースの覚醒 2015 196,584,093 アメリカ
ジュラシックパーク 1993 165,447,929 アメリカ
ベン・ハー 1959 161,877,059 アメリカ
戦狼 ウルフ・オブ・ウォー 2017 159,322,273 中国
ライオン・キング 2019 159,166,303 アメリカ
アベンジャーズ 2012 157,614,553 アメリカ
スター・ウォーズ エピソード1/ファントム・メナス 1999 157,000,804 アメリカ
ジュラシック・ワールド 2015 152,003,952 アメリカ
ハリー・ポッターと賢者の石 2001 148,973,885 イギリス・アメリカ
ライオン・キング 1994 144,602,914 アメリカ
ロード・オブ・ザ・リング/王の帰還 2003 142,573,659 ニュージーランド・アメリカ
赤いカリーナ(ロシア語版) 1974 140,000,000 ソビエト
廬山恋(中国語版) 1980 140,000,000 中国
アナと雪の女王 2013 139,738,456 アメリカ
ジャングル・ブック 1967 137,915,958 アメリカ
Disco Dancer (英語版記事) 1982 135,000,000 インド
パイレーツ・オブ・カリビアン/デッドマンズ・チェスト 2006 134,528,334 アメリカ
ロード・オブ・ザ・リング/二つの塔 2002 130,420,246 ニュージーランド・アメリカ
スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲 1980 129,984,978 アメリカ
ゴッドファーザー 1972 128,176,173 アメリカ
ブラックパンサー 2018 126,325,768 アメリカ
スター・ウォーズ /ジェダイの復讐 1983 126,255,825 アメリカ
スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け 2019 126,062,216 アメリカ
スパイダーマン 2002 125,026,496 アメリカ
ファインディング・ニモ 2003 124,728,882 アメリカ
美女と野獣 2017 123,766,498 アメリカ
ジャングル・ブック 2016 123,663,450 アメリカ
スティング 1973 123,048,854 アメリカ
シュレック2 2004 123,023,527 アメリカ
007/サンダーボール作戦 1965 122,235,389 イギリス・アメリカ
ダークナイト ライジング 2012 121,771,548 イギリス・アメリカ
インデペンデンス・デイ 1996 120,752,312 アメリカ
スーパーマン 1978 117,872,453 アメリカ
グリース 1978 117,075,584 アメリカ
クレオパトラ 1963 116,470,333 アメリカ
ボビー 1973 116,400,000 インド
アナと雪の女王2 2019 115,994,260 アメリカ
ダークナイト 2008 115,688,414 イギリス・アメリカ
インクレディブル・ファミリー 2018 113,261,772 アメリカ
ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー 2016 111,452,976 アメリカ
アラジン 2019 106,787,769 アメリカ
メリー・ポピンズ 1964 105,507,268 アメリカ
バーフバリ 王の凱旋 2017 105,003,001 インド
スパイダーマン2 2004 104,531,972 アメリカ
流転の地球 2019 104,027,044 中国
シックス・センス 1999 103,747,446 アメリカ
レイダース/失われたアーク《聖櫃》 1981 103,498,886 アメリカ
ランボー 1982 101,187,271 アメリカ
荒野の七人 1960 100,923,583 アメリカ
フォレスト・ガンプ/一期一会 1994 100,522,518 アメリカ


《読書MEMO》
2014年11月の高倉健逝去を悼み、中国各所でこの作品の上映会が催された。
君よ憤怒の河を渉れ415.jpg

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シリーズ中、特に充実した内容。回答者のコメントを読むのが楽しい。

ミステリーサスペンス洋画ベスト150.jpg大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト15074.JPG  『現金(げんなま)に体を張れ』(1956).jpg
大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)』['91年]表紙イラスト:安西水丸/「現金(げんなま)に体を張れ」(1956).

 映画通と言われる約400人からとったミステリー・サスペンス洋画のアンケート集計で、『洋画ベスト150』('88年)の姉妹版とも、専門ジャンル版とも言えるもの('91年の刊行)。

 1つ1つの解説と、あと、スチール写真が凄く豊富で、一応、"ベスト150"と謳っていますが、ランキング200位まで紹介しているほか、監督篇ランキングもあり、個人的に偏愛するがミステリーと言えるかどうかというものまで、「私が密かに愛した映画」として別枠で紹介しています。また、エッセイ篇として巻末にある、20人以上の映画通の人たちによる、テーマ別のランキングも、内容・写真とも充実していて、このエッセイ篇だけで150ページあり、全体では600ページを超えるボリュームで、この文春文庫の「大アンケート」シリーズの中でもとりわけ充実しているように思えます。                                                         
第三の男.gif『恐怖の報酬』(1953) 2.jpg太陽がいっぱい.jpg 栄えある1位は「第三の男」、以下、2位に「恐怖の報酬」、3位に「太陽がいっぱい」、4位「裏窓」、5位「死刑台のエレベーター」、6位「サイコ」、7位「情婦」、8位「十二人の怒れる男」...と続き、この辺りのランキングは順当過ぎるぐらい順当ですが、どんな人が票を投じ、どんなコメントを寄せているのかを読むのもこのシリーズの楽しみで、時として新たな気づきもあります。因みに、ベスト150の内、ヒッチコック作品は17で2位のシドニー・ルメット、ビリー・ワイルダーの6を大きく引き離し、監督部門でもヒッチコックは1位です。
第三の男
第三の男2.jpg第三の男 観覧車.jpg 「第三の男」1949年・第3回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」受賞作)はグレアム・グリーン原作で、大観覧車、下水道、ラストの並木道シーン等々、映画史上の名場面として語り尽くされた映画ですが、個人的にも、1位であることにとりあえず異論を挟む余地はほとんどないといった感じ。この映画のラストシーンは、映画史上に残る名シーンとされていますが、男女の考え方の違いを浮き彫りにしていて、ロマンチックとかムーディとか言うよりも、ある意味で強烈なシーンかもしれません。オーソン・ウェルズが、短い登場の間に強烈な印象を残し(とりわけ最初の暗闇に光が差してハリー・ライムの顔が浮かび上がる場面は鮮烈)、「天は二物を与えず」とは言うものの、この人には役者と映画監督の両方が備わっていたなあと。この若くして過剰なまでの才能が、映画界の先達に脅威を与え、その結果彼はハリウッドから締め出されたとも言われているぐらいだから、相当なものです。
恐怖の報酬
恐怖の報酬3.jpg『恐怖の報酬』(1953).jpg恐怖の報酬1.bmp 「恐怖の報酬」1953年・第6回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」、1953年・第3回ベルリン国際映画祭「金熊賞」受賞作)は、油田火災を消火するためにニトログリセリンをトラックで運ぶ仕事を請け負った男たちの話ですが、男たちの目の前で石油会社の人間がそのニトロの1滴を岩の上に垂らしてみせると岩が粉微塵になってしまうという、導入部の演出が効果満点。イヴ・モンタンってディナー・ショーで歌っているイメージがあったのですが、この映画では汚れ役であり、粗野ではあるが渋い男臭さを滲ませていて、ストーリーもなかなか旨いなあと(徒然草の中にある「高名の木登り」の話を思い出させるものだった)。この作品は、'77年にロイ・シャイダー主演でアメリカ映画としてリメイクされています。
太陽がいっぱい」(音楽:ニーノ・ロータ
太陽がいっぱい PLEIN SOLEIL.jpg 「太陽がいっぱい」は、原作はパトリシア・ハイスミス(1921- 1995)の「才能あるリプレイ氏」(『リプリー』(角川文庫))で、'99年にマット・デイモン主演で再映画化されています(前作のリバイバルという位置づけではない)。『太陽がいっぱい』(1960).jpgこの淀川長治2.jpg映画の解釈では、淀川長治のホモ・セクシュアル映画説が有名です(因みに、原作者のパトリシア・ハイスミスはレズビアンだった)。あの吉行淳之介も、淀川長治のディテールを引いての実証に驚愕した(吉行淳之介『恐怖対談』)と本書にありますが、ルネ・クレマンが来日した際に淀川長治自身が彼に確認したところ、そのような意図は無いとの答えだったとのことです(ルネ・クレマン自身がアラン・ドロンに"惚れて"いたとの説もあり、そんな簡単に本音を漏らすわけないか)。(●2016年にシネマブルースタジオで再見。トムがフィリップの服を着て彼の真似をしながら鏡に映った自分にキスするシーンは、ゲイ表現なのかナルシズム表現なのか。マルジュがフィリップに「私だけじゃ退屈?そうなら船をおりるわ」とすねるのは、フィリップの恋人である彼女が、男性であるトムをライバル視してのことか。再見していろいろ"気づき"があった。) 
            
 個人的に、もっと上位に来てもいいかなと思ったのは(あまり、メジャーになり過ぎてもちょっと...という気持ちも一方であるが)、"Body Heat"という原題に相応しいシズル感のある「白いドレスの女」(27位)、コミカルなタッチで味のある「マダムと泥棒」(36位)、意外な場面から始まる「サンセット大通り」(46位)、カットバックを効果的に用いた強盗劇「現金(げんなま)に体を張れ」(51位)、「大脱走」を遥かに超えていると思われる「第十七捕虜収容所」(55位)、これぞデ・パルマと言える「殺しのドレス」(70位)(個人的には「ボディ・ダブル」がランクインしていないのが残念)、チャンドラーの原作をボギーが演じた「三つ数えろ」(92位)、脚本もクリストファー・リーブの演技も良かった「デス・トラップ/死の罠」(94位)、ミステリーが脇に押しやられてしまっているため順位としてはこんなものかも知れないけれど「ディーバ」(101位)、といった感じでしょうか、勝手な見解ですが。

kathleen-turner-body-heat.jpg白いドレスの女1.jpg白いドレスの女2.jpg白いドレスの女.jpg 「白いドレスの女」は、ビリー・ワイルダーの「深夜の告白」('48年)をベースにしたサスペンスですが、共にジェイムズ・M・ケインの『殺人保険』(新潮文庫)が原作です(ジェイムズ・ケインは名画座でこの作品と併映されていた「郵便配達は二度ベルを鳴らす」の原作者でもある)。この映画では暑さにむせぶフロリダが舞台で、主人公の弁護士の男がある熱帯夜の晩に白いドレスの妖艶な美女に出会い、彼女の虜になった彼は次第に理性を奪われ、彼女の夫を殺害計画に加担するまでになる―という話で、ストーリーもよく出来ているし、キャスリーン・ターナーが悪女役にぴったり嵌っていました。 kathleen-turner-body-heat(1981)

マダムと泥棒1.jpgマダムと泥棒.jpg 「マダムと泥棒」は、老婦人が営む下宿に5人の楽団員の男たちが練習部屋を借りるが、実は彼らは現金輸送車を狙う強盗団だった―という話で、これもトム・ハンクス主演で'04年に"The Ladykillers"(邦題「レディ・キラーズ」)というタイトルのまま再映画化されています。イギリス人の監督と役者でないと作り得ないと思われるブラック・ユーモア満載のサスペンス・コメディですが、この作品でマダムこと老婦人を演じて、アレック・ギネスやピーター・セラーズといった名優と渡り合ったケイティ・ジョンソンは、後にも先にもこの映画にしか出演していない全くの素人というから驚き。この作品は、本書の姉妹版の『洋・邦名画ベスト150 〈中・上級篇〉』('92年/文春文庫ビジュアル版)では、洋画部門の全ジャンルを通じての1位に選ばれています。

現金に体を張れ.jpg 「現金に体を張れ」(原題:THE KILLING)は、刑務所を出た男が仲間を集めて競馬場の賭け金を奪うという、これもまた強盗チームの話ですが、綿密なはずの計画がちょっとした偶然から崩れていくその様を、同時に起きている出来事を時間を繰り返カットバック方式でそれぞれの立場から描いていて、この方式のものとしては一級品に仕上がっており、また、人間の弱さ、夢の儚さのようなものもしかっり描けています。 スタンリー・キューブリック (原作:ライオネル・ホワイト) 「現金(ゲンナマ)に体を張れ」 (56年/米) ★★★★☆

『パルプ・フィクション』(1994) 2.jpgPulp Fiction(1994) .jpg 本書刊行後の作品ですが、同じくカットバックのテクニックを用いたものとして、ボスの若い妻(ユマ・サーマン)と一晩だけデートを命じられたギャング(ジョン・トラヴォルタ)の悲喜劇を描いたクエンティン・タランティーノ監督の1994年・第47回カンヌ国際映画祭「パルム・ドール」受賞作「パルプ・フィクション」があり(インディペンデント・スピリット賞作品賞も受賞)、テンポのいい作品でしたが(アカデミー脚本賞受賞)、カットバック方式に限って言えば、「現金に体を張れ」の方が上だと思いました(競馬場強盗とコーヒー・ショップ強盗というスケールの違いもあるが)。

Pulp Fiction(1994)

deathtrap movie.jpgdeathtrap movie2.jpg 「デス・トラップ 死の罠」の原作は「死の接吻」「ローズマリーの赤ちゃん」のアイラ・レビンが書いたブロードウェイの大ヒット舞台劇。落ち目の劇作家(マイケル・ケイン)の許に、かつてのシナリオライター講座の生徒クリフ(クリストファー・リーヴ)が書いた台本「デストラップ」が届けられ、作家は、金持ちの妻マイラ(ダイアン・キャノン)に「この劇はクリストファー・リーブ superman.jpg傑作だ」と話し、盗作のアイデアと青年の殺害を仄めかし、青年が郊外の自宅を訪れる際に殺害の機会を狙う―(要するに自分の作品にしてしまおうと考えた)。ドンデン返しの連続は最後まで飽きさせないもので、「スーパーマン」のクリストファー・リーブが演じる劇作家志望のホモ青年も良かったです(この人、意外と演技派俳優だった)。
「デス・トラップ 死の罠」00.jpg クリストファー・リーブ/マイケル・ケイン

映画「ディーバ].jpgディーバ.jpg 「ディーバ」は、オペラを愛する18歳の郵便配達夫が、レコードを出さないオペラ歌手のコンサートを密かに録音したことから殺人事件に巻き込まれるというもので、1981年12月にユニフランス・フィルム主催の映画祭「新しいフランス映画を見るフェスティバル」での上映5作品中の1本目として初日にThe Space (Hanae Mori ビル5F)で上映されるも、その時はすぐには日本配給には結びきませんでした。しかし、'81年シカゴ国際映画祭シルヴァー・ヒューゴー賞を受賞し、'82年セザール賞で最優秀新人監督作品賞(ジャン=ジャック・ベネックス)のほかに、撮影賞(フィリップ・ルースロ)、Jean-Jacques Beineix's Diva.jpgディーバ_5455.JPG音楽賞(ウラディミール・コスマ)など4部門で受賞したことなどもあり、日本でも遅ればせながらフランス映画社配給で'83年11月にロードショーの運びとなりました('82年4月にアメリカでも公開)。個人的には'84年に名画座(大井武蔵野館)で観て、'94年に俳優座シネマテンでのリバイバル上映を観ました。デラコルタ(スイス人作家ダニエル・オディエのペンネーム)の原作は、ジグゾーパズル好きで、波を止めようと考えているゴロディッシュという不思議な男と、彼にくっついて回るアルバ(原作では13歳のフレンチガール)という少女を主人公にしたセリノアール6部作になっているそうで、「ディーバ」はその中の一篇です(この作品のみが翻訳あり)。新潮文庫に翻訳のある原作と映画を比べてみるのも面白いかと思います。


POWER PLAY OPERATION OVERTHROW.jpgパワー・プレイ.jpgPower Play by Peter O'Toole.jpg「パワー・プレイ (1978).jpg 「私が密かに愛した映画」で「パワー・プレイ」を推した橋本治氏が、「すっごく面白いんだけど、これを見たっていう人間に会ったことがない」とコメントしてますが、見ましたよ。

Power Play (1978).jpg ヨーロッパのある国でテログループによる大臣の誘拐殺人事件が起き、大統領がテロの一掃するために秘密警察を使ってテロリスト殲滅を実行に移すもののそのやり方が過酷で(名脇役ドナルド・プレザンスが秘密警察の署長役で不気味な存在感を放っている)、反発した軍部の一部が戦車部隊の隊長ゼラー(ピーター・オトゥール)を引き入れクーデターを起こします。クーデターは成功しますが、宮殿の大統領室にいたのは...。「漁夫の利」っていうやつか。最後、ピーター・オトゥールがこちらに向かってにやりと笑うのが印象的でした。

「パワー・プレイ」輸入版ポスター(上)/輸入盤DVD(右)
                            

第三の男 ポスター.jpg「第三の男」●原題:THE THIRD MAN●制作年:194日比谷映画・みゆき座.jpg日比谷映画.jpg9年●制作国:イギリス●監督:キャロル・リード●製作:キャロル・リード/デヴィッド・O・セルズニック●脚本:グレアム・グリーン●撮影:ロバート・クラスカー●音楽:アントン・カラス●原作:グレアム・グリーン●時間:104分●出演:ジョセフ・コットン/オーソン・ウェルズ/トレヴァー・ハワード/アリダ・ヴァリ/バーナード・リー/ジェフリー・キーン/エルンスト・ドイッチュ●日本公開:1952/09●配給:東和●最初に観た場所:千代田映画劇場(→日比谷映画) (84-10-15) (評価:★★★★☆)
千代田映画劇場 東京オリンピック - コピー.jpg
日比谷映画内.jpg
千代田映画劇場(日比谷映画) 1957年4月東宝会館内に「千代田映画劇場」(「日比谷映画」の前身)オープン、1984年10月、「日比谷映画劇場」(1957年オープン(1,680席))閉館に伴い「日比谷映画」に改称。2005(平成17)年4月8日閉館。

千代田劇場 「東京オリンピック」('65年/東宝)封切時
                                                     
「恐怖の報酬」.bmp恐怖の報酬.jpg恐怖の報酬3.jpg「恐怖の報酬」●原題:LE SALAIRE DELA PEUR●制作年:1953年●制作国:フランス●監督・脚本:アンリ・ジョルジュ・クルーゾー●撮影:アルマン・ティラール●音楽:ジョルジュ・オーリック●原作:ジョルジュ・アルノー●時間:131分●出演:イヴ・モンタン/シャルル・ヴァネル/ヴェラ・クルーゾー/フォルコ・ルリ/ウィリアム・タッブス/ダリオ・モレノ/ジョー・デスト●日本公開:1954/07●配給:東和●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10) (評価:★★★★)●併映:「死刑台のエレベーター」(ルイ・マル)

太陽がいっぱい 和田誠.jpg「ポスター[左](和田 誠
太陽がいっぱい15.jpg太陽がいっぱい ポスター2.jpg太陽がいっぱい ポスター.jpg「太陽がいっぱい」●原題:PLEIN SOLEIL●制作年:1960年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●製作:ロベール・アキム/レイモン・アキム●脚本:ポール・ジェゴフ/ルネ・クレマン●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:ニーノ・ロータ●原作:パトリシア・ハイスミス 「才能あ文芸坐.jpg文芸坐ル・ピリエ.jpgるリプレイ氏」●時間:131分●出演:アラン・ドロン/マリー・ラフォレ/モーリス・ロネ/ エルヴィール・ポペスコ/エルノ・クリサ/ビル・カーンズ/フランク・ラティモア/アヴェ・ニンチ●日本公開:1960/06●配給:新外映●最初に観た場所:文芸坐ル・ピリエ (83-02-21)●2回目:北千住シネマブルー・スタジオ(16-02-23) (評価:★★★★)
文芸坐ル・ピリエ (11979(昭和54)年7月20日、池袋文芸坐内に演劇主体の小劇場としてオープン)1997(平成9)年3月6日閉館

「白いドレスの女」.jpg「白いドレスの女」●原題:BODY HEAT●制白いドレスの女8.jpg作年:1981年●制作国:アメリカ●監督・脚本:ローレンス・カスダン●製作:フレッド・T・ガロ●撮影:リチャード・H・クライン●音楽:ジョン・バリー●原作:ジェイムズ・M・ケイン 「殺人保険」●時間:113分●出演:ウィリアム・ハート/BODY HEAT.bmpキャスリーン・ターナー/リチャード・クレンナ/テッド・ダンソン/ミッキー・ローク/J・A・プレストン/ラナ・サウンダース/キム・ジマー●日本公開:1982/02●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:三鷹オスカー (82-08-07) ●2回目:飯田橋ギンレイホール(86-12-13)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「郵便配達は二度ベルを鳴らす」(ボブ・ラフェルソン)

THE LADYKILLERS 1955.jpgマダムと泥棒2.jpg「マダムと泥棒」●原題:THE LADYKILLERS●制作年:1955年●制作国:イギリス●監督:アレクサンダー・マッケンドリック●製作:セス・ホルト●脚本:ウィリアム・ローズ●撮影:オットー・ヘラー●時間:97分●出演:アレック・ギネス/ピーター・セラーズ/ハーバート・ロム/ケイティ・ジョンソン/シル・パーカー/ダニー・グリーン/ジャック・ワーナー/フィリップ・スタントン/フランキー・ハワード●日本公開:1957/12●配給:東和 (評価:★★★★)

現金に体を張れ01.jpgthe killing.jpg現金に体を張れ1.jpg「現金に体を張れ」●原題:THE KILLING●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:スタンリー・キューブリック●製作:ジェームス・B・ハリス●脚本:スタンリー・キューブリック/ジム・トンプスン●撮影:ルシエン・バラード●音楽:ジェラルド・フリード●原作:ライオネル・ホワイト 「見事な結末」●時間:83分●出演:スターリング・ヘイドン/ジェイ・C・フリッペン/メアリ・ウィンザー/コリーン・グレイ/エライシャ・クック/マリー・ウィンザー/ヴィンス・エドワーズ●日本公開:1957/10●配給:ユニオン=映配●最初に観た場所:新宿シアターアプル (86-03-22) (評価:★★★★☆)

パルプフィクション5E.jpegパルプ・フィクション4.jpg「パルプ・フィクション」●原題:PULP FICTION●制作年:1994年●制作国:アメリカ●監督・脚本:クエンティン・タランティーノ●製作:ローレンス・ベンダーパルプフィクション スチール.jpg●原案:クエンティン・タランティーノ/ロジャー・エイヴァリー●撮影:アンジェイ・セクラ●音楽:カリン・ラットパルプ・フィクション ジョン トラボルタ.jpgマン●時間:155分●出演:ジョン・トラヴォルタ/サミュエル・L・ジャクソン/ユマ・サーマン/ハーヴェイ・カイテル/アマンダ・プラマー/ティム・ロス/クリストファー・ウォーケン/ビング・ライムス/ブルース・ウィリス/エリック・ストルツ/ロザンナ・アークエット/マリア・デ・メディロス/ビング・ライムス●日本公開:1994/09●配給:松竹富士 (評価:★★★★)
ジョン トラボルタ(1994年・第20回ロサンゼルス映画批評家協会賞「主演男優賞」
「パルプ・フィクション」カイテル.jpg ハーヴェイ・カイテル
   
「デス・トラップ 死の罠」8.jpegDEATHTRAP 1982 2.jpg「デス・トラップ 死の罠」●原題:DEATHTRAP●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:バート・ハリス●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:アンジェイ・バートコウィアク●音楽:ジョニー・マンデル●原作:アイラ・レヴィン●時間:117分●出演デス・トラップ 死の罠.jpg「デストラップ」ケイン.jpg:マイケル・ケイン/クリストファー・リーヴ/ダイアン・キャノン/アイリーン・ワース/ヘンリー・ジョーンズ/ジョー・シルヴァー●日本公開:1983/09●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:テアトル吉祥寺 (86-02-15) (評価:★★★☆)●併映「殺しのドレス」(ブライアン・デ・パルマ)


ディーバ  チラシ.jpgディーバ 1981.jpg「ディーバ」●原題:DIVA●制作年:1981年●制作国:フランス●監督:ジャン=ディーバ dvd.jpgジャック・ベネックス●製作:イレーヌ・シルベルマン●脚本:ジャン=ジャック・ベネックス/セルジュ・シルベルマン●撮影:フィリップ・ルースロ●音楽:ウラディミール・コスマ●原作:デラコルタ●時間:117分●出演:フレデリック・アンドレイ/ウィルヘルメニア=ウィンギンス・フェルナンデス/リシャール・ボーランジェ/シャンタル・デリュアズ/ジャック・ファブリ/チュイ=アン・リュー●日本公開:1981/12●配給:フランス映画社●最初に観た場所:大井武蔵野館 (84-06-16)●2回目:六本木・俳優座シネマテン(97-10-03) (評価:★★★★)●併映(1回目):「パッション」(ジャン=リュック・ゴダール)
 
「パワー・プレイ 参謀たちの夜」  .jpgPOWER PLAY OPERATION OVERTHROW 1978 .jpg「パワー・プレイ 参謀たちの夜」●原題:POWER PLAY OPERATION OVERTHROW●制作年:1978年●制作国:イギリス/カナダ●監督:マーティン・バーク●製作:クリストファー・ダルトン●撮影:オウサマ・ラーウィ●音楽:ケン・ソーン●時間:110分●出演:ピーター・オトゥール/デヴィッド・ヘミングス/バリー・モース/ドナルド・プレザンス/ジョン・グラニック/チャック・シャマタ/アルバータ・ワトソン、/マーセラ・セイント・アマント/オーガスト・シェレンバーグ●日本公開:1979/11●配給:ワールド映画●最初に観大塚駅付近.jpg大塚名画座 予定表.jpg大塚名画座4.jpg大塚名画座.jpgた場所:大塚名画座 (80-02-21) (評価:★★★☆)●併映:「Z」(コスタ・ガブラス)

大塚名画座(鈴本キネマ)(大塚名画座のあった上階は現在は居酒屋「さくら水産」) 1987(昭和62)年6月14日閉館

《読書MEMO》
- 構成 -
○座談会 それぞれのヒッチコック
○作品編 ここに史上最高最強の151の「面白い映画」がある
○監督編 人をハラハラさせた人たち
○エッセイ集-映画を見ることも、映画について読むことも楽しい(一部)
 ・原作と映画の間に (山口雅也)
 ・どんでん返しの愉楽 (筈見有弘)
 ・ぼくの採点表 (双葉十三郎)
 ・映画は見るもの、ビデオは読むもの (竹市好古)
 ・わたしの「推理映画史」 (加納一朗)
 ・法廷映画この15本- 13人目の陪審員 (南俊子)
 ・襲撃映画この15本-なにがなんでも盗み出す (小鷹信光)
 ・ユーモア・パロディ映画この20本-笑うサスペンス (結城信孝)
 ・10人のホームズ、10人のワトソン、10人のモリアティ、そして8人のハドソン夫人 (児玉数夫)
 ・世界の平和を守った10人の刑事 (浅利佳一郎)
 ・世界を震えあがらせた10人の悪党 (逢坂剛)
 ・サスペンス映画が似合う女優10人 (渡辺祥子)
 ・フランス人はなぜハドリー・チェイスが好きなのか (藤田宜永)
 ・主題曲は歌い、叫ぶ (岩波洋三)
 ・『薔薇の名前』と私を結んだ赤い糸 (北川れい子)
 ・マイケル・ケインはミステリー好き (松坂健)
 ・TV界のエラリー・クイーン (小山正)
 ・394のアンケートを読んで (赤瀬川準)

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【265】 筈見 有弘 『ヒッチコック
「●山田 洋次 監督作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●「キネマ旬報ベスト・テン」(第1位)」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●「毎日映画コンクール 日本映画大賞」受賞作」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●「ブルーリボン賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●「報知映画賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」) 「●佐藤 勝 音楽作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●高倉 健 出演作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●倍賞 千恵子 出演作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●桃井 かおり 出演作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「●渥美清 出演作品」の インデックッスへ(「幸福の黄色いハンカチ」)「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ ○あの頃映画 松竹DVDコレクション(「幸福の黄色いハンカチ」)

60年代、70年代の名画が中心。新たな気づきが得られる批評文。

eiganoehonn.jpg   映画の絵本〈3〉.jpg 映画の名画座.jpg 
映画の絵本―マイ・シネマ,マイ・イラスト (1981年) (旺文社文庫)』 『映画の絵本―マイ・シネマ マイ・ドリーム (2) (旺文社文庫)』『映画の絵本〈3〉イラスト映画館へどうぞ (旺文社文庫)』『映画の名画座―259本だてイラスト・ロードショウ (現代教養文庫)

20世紀の366日.jpg イラストレーターによる映画批評で、1作品につきイラストと文章で各1ページずつが大体の基本構成で、イラストもさることながら、批評文がたいへん凝縮されたものとなっています。

 他の著作を見ても分かるように、もともと国内レベルからグローバルレベルまでの政治風刺画が多い人(常に風刺の急先鋒にいる人)ですが、本書に関しては、純粋に映画批評、芸術批評として各作品を捉え、それに政治的なテーマが付随してくることもある、といったスタンスです。

橋本 勝 『20世紀の366日』 ['96年]

映画の絵本1.jpg '81年刊行の第1集は、チャップリン作品から始まり、「泥の河」('80年)まで、'83年刊行の第2集は、同じくチャップリン作品から始まり、「サン・ロレンツォの夜」('82年)で終わっていて、共に60年代-70年代のよく知られた作品が主となっています。

 娯楽映画も取り上げらていますが、フェリーニやゴダール、ベルイマンやミケランンジェロ・アントニオーニ作品などの"通"好みと思えるものも多く取り上げられており、今だからこそ名作クラシックとされているこれらの作品も、もしかしたら80年初頭の段階では、映画ファンの多くにごく馴染みの作品だったと言えるのかもしれません。    
  「禁じられた遊び」       「生きる」
禁じられた遊び.jpg生きる 志村喬 伊藤雄之助.jpg 映画の解釈が深く、第1集では「禁じられた遊び」で、死の意味もわからないうちに親を失った幼児のする"お葬式ごっご"に「真の死への畏敬」を見い出す点などは、まだオーソドックスな方かも知れませんが、黒澤明の「生きる」で、志村喬より伊藤雄之助のメフィストフェレス的役回りに注目しています。
「幸福の黄色いハンカチ」
「幸福の黄色いハンカチ」1978.jpg「幸福の黄色いハンカチ」2.jpg また、山田洋次監督の「幸福の黄色いハンカチ」('77年/松竹)を、「これを見て、ヤクザ映画の輝ける悲運のヒーローだったあの健さんが、幸せの健さんへと堕落したとみる人はよっぽど幸せなマイホームパパ」とし、この話は「嘘」を描いてもっともらしいところが秀逸なのであり、「山田監督は人情でなぜ悪いと居直っていますが、これはあくまで愛の神話であって、人情の神話ではありません」と断言、「健さんのヤクザ映画にみられた禁欲的フ「幸福の黄色いハンカチ」19772.jpg「幸福の黄色いハンカチ」倍賞.jpgェミニズムは、ここでは一夫一妻制のエロチシズムに見事に変質しています」という読み解きも興味深く、他にも、娯楽映画なども含め、新たな視点に気づかせてくれる解説が多くあり、映画評論としても第一級のものであるように思えます。
   
映画の絵本27.JPG 第2集でも、「シェーン」でジャック・パランスが演じたウィルソンの内面を同じく孤独に生きるシェーンと対比したり、「エデンの東」をホームドラマとしか見れない宗教オンチの日本人を皮肉ったり、「ジョーズ」のロバート・ショー演じるクイントの憎悪に社会を反映させたり、著者ならでは読み解きは健在で、こうした独自の読み解きが「マイ・シネマ」というサブ・タイトルに繋がっているわけです。

 雑誌の連載などではなく、著者が若いときからこつこつ書き(描き)溜めてきたものがかなりを占めているようで、いきなり文庫で刊行されたみたいですが、なかなか見られなくなっている名画も多いだけに、単行本で復映画の名画座0.JPG刻してもよさそうな気もしました。また、それだけの内容・レベルのものだと思います。実際、文庫ではありますが、この2冊の後に刊行された第3弾『映画の絵本3―イラスト映画館へどうぞ』('86年/旺文社文庫)との3冊分を併せた内容の『映画の名画座-259本だてイラスト・ロードショウ』(現代教養文庫)が'90年に刊行されました。しかしながら、版元の社会思想社がほどなく倒産してしまったため(もともと、旺文社文庫が文庫自体が'87年に廃刊されたため現代教養文庫に移ってきたのだったが)、今のところ古書市場でしか手に入らない状況です(或いは図書館の書庫にあるかもしれない)。1冊で3冊分を収めているので、保存版としては便利です。

映画の名画座―259本だてイラスト・ロードショウ (現代教養文庫)

 
  
禁じられた遊び3.jpg禁じられた遊び  .jpg「禁じられた遊び」●原題:JEUX INTERDITS●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ポスト●撮影:ロバート・ジュリアート●音楽:ナルシソ・イエペス●時間:86分●出演:ブリジッド・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー/スザンヌ・クールタル/リュシアン・ユベール/ロランヌ・バディー/ジャック・マラン●日本公開:1953/09●配給:東和●最初に観た場所:早稲田松竹 (79-03-06)(評価:★★★★☆)●併映:「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)

『生きる』.jpg「生きる」●制作年:1952年●監督:黒澤明●製作:本木莊二郎●脚本:黒澤明/橋本忍/小国英雄●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●原作:レフ・トルストイ「イワン・イリッチの死」●時間:143分●出演:志村喬/小田切みき/金子信雄/関京子/浦辺粂子/菅井きん/丹阿弥谷津子/田中春男/千秋実/左ト全/藤原釜足/中村伸郎/渡辺篤/木村功/伊藤雄之助/清水将夫/南美江/阿部九洲男 /宮口精二/加東大介/山田巳之助●日本公開:1952/10●配給:東宝●最初に観た場所:大井武蔵野館 (85-02-24) (評価★★★★)●併映「隠し砦の三悪人」(黒澤明)
     
映画パンフレット 「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」.gif「幸福の黄色いハンカチ」1.jpg「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」●制作年:1978年●監督:山田洋次●製作:名島徹●脚本:山田洋次/朝間義隆●撮影:高羽哲夫●音楽:佐藤勝●原作:ピート・ハミル「黄色いリボン」(『ニューヨーク・スケッチブック』所収)●時間:108分●出演:高倉健/倍賞千恵子/桃井かおり/武田鉄矢/赤塚真人/梅津栄/三崎千恵子/笠井一彦/里木左甫良/小野泰次郎/河原裕昌/たこ八郎/山本幸栄/川井みどり/長谷川英敏/谷よしの/羽生昭彦/渥美清●日本公開:1977/10●配給:松竹 (評価★★★★)
映画パンフレット 「幸福(しあわせ)の黄色いハンカチ」
「幸福の黄色いハンカチ」渥美.jpg 渥美清(新得警察署の警察官・渡辺勝次)

シェーン last.jpgシェーン9.jpg「シェーン」●原題:SHANE●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ジャック・シェーファー「シェーン」●時間:118分●出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジーン・アーサー/ブランドン・デ・ワイルド/ジャック・パランス/ペン・ジョンスン/エドガー・ブキャナン/エミール・メイヤー●日本公開:1953/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-20) (評価★★★☆)●併映:「駅馬車」(ジョン・フォード)

iエデンの東H.jpg「エデンの東」●原題:EAST OF EDEN●制作年:1955年●制作国:アメリカ●監督・製作:エリア・カザン●脚本:ポール・オスボーン●撮影:テッド・マッコード●音楽:レナード・ローゼンマン●原作:ジョン・スタインベック●時間:115分●出演:ジェームズ・ディーン/ジュリー・ハリス/レイモンド・マッセイ/バール・アイヴス●日本公開:1955/10●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐(79-02-18)(評価:★★★☆)●併映:「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)

JAWS/ジョーズes.jpg「JAWS/ジョーズ」●原題:JAWS●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:デイヴィッド・ブラウン/リチャード・D・ザナック●脚本:ピーター・ベンチュリー/カール・ゴッドリーブ●撮影:ビル・バトラー●音楽:ジョン・ウィリアムズジョーズ 03.jpg●原作:ピーター・ベンチュリー●時間:124分●出演:ロイ・シャイダー/ロバート・ショウ/リチャード・ドレイファス/カール・ゴットリーブ/マーレイ・ハミルトン/ジェフリー・クレイマー/スーザン・バックリーニ/ジョナサン・フィレイ/クリス・レベロ/ジェイ・メロ●日本公開:1975/12●配給:CIC●最初に観た場所:新宿ローヤル (82-12-28) (評価★★★★)

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【825】 毎日新聞社 『昭和外国映画史
「●か 川本 三郎」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ「●は行の外国映画の監督②」の インデックッスへ 「●シドニー・ルメット監督作品」の インデックッスへ 「●「ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「狼たちの午後」) 「●ジーン・ハックマン 出演作品」の インデックッスへ(「ヤング・フランケンシュタイン」) 「●ハリソン・フォード 出演作品」の インデックッスへ(「アメリカン・グラフィティ」) 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「ボストン・リーガル」)

名脇役たちを通して'60‐'70年代が一気に甦ってくる本。

傍役グラフィティ.jpg傍役グラフィティ2.gif Roy Scheider.jpg Peter Boyle.jpg Marty Feldman.jpg John Cazale.jpg Ed Lauter.jpg Charles Martin Smith.jpg
傍役グラフィティ―現代アメリカ映画傍役事典 (1977年)』/Roy Scheider /Peter Boyle/Marty Feldman/John Cazale/Ed Lauter/Charles Martin Smith

JAWS/ジョーズ5.bmpJAWS/ジョーズ4.bmp 今年('08年)2月に「JAWS/ジョーズ」でお馴染みのロイ・シャイダーが亡くなりましたが、TVドラマ「サード・ウォッチ」にロシア・マフィア役で出ていて、何だか凄みが増した感じだったけれども、既にその時はガン闘病中だったのか。エルモア・レナード原作の「デス・ポイント/非情の罠」(『五万二千ドルの罠』)に主演していますが、「ジョーズ」とか「デス・ポイント」みたいに、ちょっとビクついている感じの役の方が似合っていた気もします。

 ロイ・シャイダーを思い出したついでに、「ニューシネマ以降10年のアメリカ映画に登場した愛すべきバイプレーヤー200人」をとりあげたという本書を取り出してパラパラめくっていると、旧知に再会したような感じで、結構ノスタルジックな気分になりました。 個人的に"好み"のところでは―、           

YOUNG FRANKENSTEN.jpg『ヤング・フランケンシュタイン』(1974) 2.jpg『ヤング・フランケンシュタイン』(1974).jpg ピーター・ボイルは、「タクシードライバー」('76年/米)でトラビス(デ・ニーロ)を気遣う先輩タクシー運ちゃんぶりが良かったけれど(この映画にはハーヴェイ・カイテルもポン引き役で出ていた)、その前のメル・ブルックジーン・ワイルダー1.jpgス監督、ジーン・ワイルダー主演(脚本も務めた)の「ヤング・フランケンシュタイン」でボイルが演じたのは、何とボリス・カーロフ顔負けのフランケンシュタイン(この映画の奇妙な執事、ギョロ目のマーティ・フェルドマンの怪演も印象的)。ボイルは、「X‐ファイル」にもゲスト出演していましたが、この人も最近亡くなった...。

「ヤング・フランケンシュタイン」2.jpg この映画はシェリイ夫人の原作及び古典的ホラー映画のパロディですが、アインシュタインに似た博士(ジーン・ワイルダー)やその助手(テリー・ガー)も快演(怪演)しているほか、オリジナルの「フランケンシュタイン」にも出てくる小屋に住む盲ヤング・フランケンシュタイン ジーン・ハックマン.jpg目の老人役は、ラストに小さくクレジットされているだけで大概の人は気づかないのですがジーン・ハックマンであるという遊びもありました。

ジーン・ハックマン(右)
ジーン・ワイルダー/マデリン・カーン
「ヤング・フランケンシュタイン」マデリンカーン.jpgヤング・フランケンシュタイン.gif「ヤング・フランケンシュタイン」●原題:YOUNG FRANKENSTEN●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:メル・ブルックス●製作:マイケル・グラスコフ●脚本:ジーン・ワイルダー/メル・ブルックス●撮影:ジェラルド・ハーシュフェルド●音楽:ジョン・モリス●原作:メアリー・シェリイ●時間:108分●出演:ジーン・ワイルダー/ピーター・ボイル/マーティ・フェルドマン/テリー・ガー/マデリーン・カーン/クロリス・リーチマン/リチャード・ヘイドン/ジーン・ハックマン●日本公開:1975/10●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:飯田橋ギンレイホール (78-12-14) (評価:★★★★)●併映:「サイレントムービー」(メル・ブルックス)

狼たちの午後7.bmp狼たちの午後8.bmp狼たちの午後 ポスター.gifDog Day Afternoon.jpg狼たちの午後2.jpg "おでこのジョン"ことジョン・カザール「狼たちの午後」での鬱々とした演技が良く(アル・パチーノが上手いのはさすがだが、この映画でのチャールズ・ダーニングもいい)、「ディア・ハンター」('78Meryl Streep and John Cazale 2.jpg年)に起用された際に、彼がガン宣告を受けたため出演させることを渋った製作側に対し、降板に反対するロバート・デ・ニーロらに口説かれ、治療を受けながら演じたという、その「ディア・ハンター」が彼の遺作となりました(無名時代に共演したメリル・ストリープと婚約中だった)。

dog_day_afternoon_9.png狼たちの午後.jpg この「狼たちの午後」は、実際にあった銀行強盗をモチーフに作られた作品ですが、撮影のかなりの部分はアドリブで撮られていて、アル・パチーノの演技の旨さもさることながら、その"妻"を演じたクリス・サランドンは、冒頭の僅か10分そこそこの登場で(銀行に押し入ったとたんに怖くなって逃げ出してしまう)アカデミー助演男優賞候補になったというオマケも付きました(犯人の内2人が同性婚していたのは事実らしい)。

アル・パチーノ(第1回ロサンゼルス映画批評家協会賞「主演男優賞」受賞)
「狼たちの午後」●原題:DOG DAY AFTERNOON●制作年:1975年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:マーティン・ブレグマンほか●脚本:「狼たちの午後」.jpgフランク・ピアソン●撮影:ジヴィクター・J・ケンパー●時間:125分●出演:アル・パチーノ/ジョン・カザール/チャールズ・ダーニング/クリス・サランドン/キャロル・ケイン/ランス・ヘンリクセン/ジェームズ・ブロデリック/ペニー・アレン/サリー・ボイヤー●日本公開:1976/03●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋文芸坐 (77-12-14) (評価:★★★★)●併映:「セルピコ」(シドニー・ルメット)

『ロンゲスト・ヤード』(1974).jpg『ロンゲスト・ヤード』(1974)2.jpgEd Lauter.jpg ド・ローターは「ロンゲスト・ヤードの鬼看守役で、バート・レイノルズと拮抗した演技を見せていましたが(「X‐ファイル」にも出ていた)、この人や「十二人の怒れる男」のリー・J・コップなどは、"脇役"の域を超えているかも。ジャック・ウォーデンも、「十二人」の1人でしたが、「ジャスティス」で判事役をやったほか、「評決」でポール・ニューマンと組む弁護士役をやるなど、裁判絡みの役が結構あったなあと。

Burt Reynolds THE LONGEST YARD.jpgロンゲスト・ヤード.jpg 「ロンゲスト・ヤード」は看守対囚人のフットボールの試合を描いた男臭い映画でしたが(主演のバート・レイノルズはフットボール選手出身。三鷹オスカーで観たレイノルズ主演の3本立てでは、この作品の役が一番ハマっていた)、007の敵役ジョーズ役リチャード・キールなんていうのも出ていました(この作品は'05年にリメイクされた)。

「ロンゲスト・ヤード」●原題:THE MEAN MACHINE (THE LONGEST YARD)●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルドリッチ●製作:ロバートエヴァンスほか●撮影:ジョセフ・F・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォル●原案:アルバート・S・ラディ ●時間:121分●出演:バート・レイノルズ/エディ・アルバート/マイケル・コンラッド/リチャード・キール/エド・ローター/ジム・ハンプトン/ハリー・シーザー/ジョン・スティードマン/アルバート・S・ラディ/トレイシー・キーナン・ウィン/バーナデット・ピーターズ●日本公開:1975/05●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:三鷹オスカー (78-07-20) (評価:★★★★)●併映:「トランザム7000」(ハル・ニーダム)/「デキシー・ダンスキングス」(ジョージ・G・アビルドセン)

アメリカン・グラフィティ.jpg  ボー・ホプキンスなどは、ジョージ・ルーカス監督の「アメリカン・グラフィティ」のファラオ団のリーダーでしたが、すでに「ワイルドバンチ」で、ペキンパー一家の1人だったわけか。

アメリカン・グラフィティ [DVD]

 「アメリカン・グラフィティ」では、少しひ弱な感じのチャールズ・マーティン・スミスも印象に残りました。
アメリカン・グラフィティAmerican Graffiti.jpgアメリカン・グラフィティ チラシ.jpgCharles Martin Smith.jpgCharles Martin Smith

 彼はラストで、ベトナムで戦死したことになっていたなあ。リチャード・ドレイファスら演じた4人組の内の1人、ロン・ハワードが演じたスティーヴは"事故死"になっていましたが、ロン・ハワード自身は後に監督となり「アポロ13」「ダビンチ・コード」を撮ります。この映画撮影当時、プロの役者として活動しいたのは実はロン・ハワードのみで、但し、当時はまだ無名です。リチャード・ドレイファス、ハリソン・フォード、チャールズ・マーティン・スミスらは、役者としての実績すら殆どありませんでした。チャールズ・マーティン・スミスは、「アンタッチャブル」でも死んでいく役で、どこまでも"脇"でした。

『ワイルドバンチ』(1969).jpgワイルドバンチ.jpg 因みに「ワイルドバンチ」は、本書が最も注目する脇役"宝庫"の映画であり、主役級のウィリアム・ホールデンのほかに、アーネスト・ボーグナイン、ローバート・ライアン、ウォーレン・オーツ、エドモンド・オブライエン、ベン・ジョンソン、ジェイミー・サンチェス、エミリオ・フェルナンデスらが、プロデューサーとの衝突でハリウッドを干されていたサム・ペキンパーのもとに集結して作った西部劇作品(これだけ出ていれば、ボー・ホプキンスが出ていたことをすぐに思い出せないのも無理ない)。無法者たちの織り成す殺戮劇はヤクザ映画に通じるところがありますが、ペキンパーは本来は「滅びの美学」というより「暴力の虚しさ」を説きたかったのではないかと思います(深作欣二の「仁義なき戦い」も一応はそういうことになっているのだが)。

アメリカン・グラフィティ図1.jpgチャーリー・マーチン・スミス2.jpg「アメリカン・グラフィティ」●原題:AMERICAN GRAFFITI●制作年:1973年●制作国:アメリカ●監督:ジョーハリソン・フォード アメリカン・グラフィティ.jpgジ・ルーカス●製作:フランシス・フォード・コッポラ/ゲイリー・カーツ●脚本:ジョージ・ルーカス/グロリア・カッツ/ウィラード・ハイク●撮影:ロン・イヴスレイジ/ジョン・ダルクイン ●時間:110分●出演:リチャード・ドレイファス/ロン・ハワード/チャーリー・マーチン・スミス/キャンディ・クラーク/ポール・ル・マット/シンディ・ウィリアムズ/ ウルフマン・ジャック/ボー・ホプキンス/ハリソン・フォード/ケイ・レンツ/マッケンジー・フィリップス/キャスリーン・クインラン●日本公開:1974/12●配給:ユニバーサル●最初に観た場所:早稲田松竹 (77-11-05) (評価:★★★★)●併映:「タクシードライバー」(マーチン・スコセッシ)

THE WILD BUNCH_02.jpgTHE WILD BUNCH.jpg「ワイルドバンチ」●原題:THE WILD BUNCH●制作年:1969年●制作国:アメリカ●監督:サム・ペキンパー●製作:フィル・フェルドマン●脚本:ウォロン・グリーン/サム・ペキンパー/ロイ・N・シックナー●撮影:ルシアン・バラード●音楽:ジェリー・フィールディング●時間:110分●出演:アーネスト・ボーグナイン/ローバート・ライアン/ウォーレン・オーツ/エドモンド・オブライエン/ベン・ジョンソン/ジェイミー・サンチェス/エミリオ・フェルナンデス/ストローザー・マーティン/L・Q・ジョーンズ/アルバート・デッカー/ボー・ホプキンス●日本公開:1969/08●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:池袋文芸坐 (88-03-13) (評価:★★★★)●併映:「リオ・ブラボー」(ハワード・ホークス)

William Shatner&Candice Bergen in Boston Legal.jpgボストン・リーガル1.jpgウィリアム・シャトナー.jpg 挙げていくとキリがありませんが、脇役から主役級になった人、TVドラマで活躍している人もいるし、映画からテレビに移って役柄のイメージが変わった人もいます。

ウィリアム・シャトナー2.jpgWilliam Shatner&Candice Bergen in Boston Legal

 何せ、「スター・トレック」(元々はテレビシリーズだったわけだが)のカーク船長、ウィリアム・シャトナーが「ボストン・リーガル」で法律事務所長をコメディタッチで演じているぐらいだから...(共演は、キャンディス・バーゲン!それと、ジェームズ・スペイダー演じるアラン・ショアが役どころとしてはいい。彼はこのシリーズで、プライムタイム・エミー賞の最優秀主演男優賞を2度獲っている)。

「ボストン・リーガル」 Boston Legal (ABC 2004~2008) ○日本での放映チャネル:FOX CRIME(2007~2011)

 亡くなった人もいれば、まだまだ頑張っている人もいるし、ロン・ハワードのように監督になった人も...。'60年-'70年代が一気に甦ってくる本です。

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1777】 江藤 努 (編) 『映画イヤーブック 1991
「●黒澤 明 監督作品」の インデックッスへ「●「ヴェネツィア国際映画祭 銀獅子賞」受賞作」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●小国 英雄 脚本作品」の インデックッスへ「●橋本 忍 脚本作品」の インデックッスへ 「●早坂 文雄 音楽作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●伊福部 昭 音楽作品」の インデックッスへ(「十三人の刺客」)「●志村 喬 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●三船 敏郎 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●東野 英治郎 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●加東 大介 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●宮口 精二 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●土屋 嘉男 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●山形 勲 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●仲代 達矢 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」)「●加藤 武 出演作品」の インデックッスへ(「七人の侍」「●か行の日本映画の監督」の インデックッスへ「●嵐 寛寿郎/片岡 千恵蔵 出演作品」の インデックッスへ(「十三人の刺客」)「●丹波 哲郎 出演作品」の インデックッスへ(「十三人の刺客」) 「●西村 晃 出演作品」の インデックッスへ(「十三人の刺客」)「●富司 純子(藤 純子) 出演作品」の インデックッスへ「○日本映画 【制作年順】」の インデックッスへ ○東宝DVD名作セレクション(黒澤明監督作品)(「七人の侍」)

シリーズ中では充実した内容。回答者のコメントが楽しい。中上級編の注目は「十三人の刺客」。

大アンケートによる日本映画ベスト150 0_.jpg 七人の侍 志村喬.jpg  洋・邦名画ベスト1501.JPG
大アンケートによる日本映画ベスト150 (文春文庫―ビジュアル版)』/「七人の侍」/『洋・邦名画ベスト150〈中・上級篇〉』 (表紙イラスト:共に安西水丸

 『大アンケートによる日本映画ベスト150』は、同じ「文春文庫ビジュアル版」の『大アンケートによる洋画ベスト150』('88年)の続編で、この映画シリーズはこの後、

大アンケートによるわが青春のアイドル女優ベスト150  .jpg ◆『大アンケートによるわが青春のアイドル女優ベスト150』 〔'90年〕
 ◆『洋画・邦画ラブシーンベスト150』 〔'90年〕
 ◆『大アンケートによるミステリー・サスペンス洋画ベスト150』 〔'91年〕
 ◆『ビデオが大好き!365夜―映画カレンダー』 〔'91年〕
 ◆『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』 〔'92年〕
 ◆『大アンケートによる男優ベスト150』 〔'93年〕
 ◆『戦後生まれが選ぶ洋画ベスト100』 〔'95年〕

映画イヤーブック1994.jpgと続いています。これらの内の何冊かは、'90年代に毎年刊行されていた現代教養文庫(版元の社会思想社は倒産)の『映画イヤーブック』と共に愛読・活用させてもらいました。角川文庫にも『日本映画ベスト200』('90年)などのアンケート・シリーズがありますが、「ビジュアル版」と謳っている文春文庫のシリーズの方が、掲載されているスチール、ポートレート、ポスターの量と質で、角川文庫のものを上回っています。

Shichinin no samurai(1954).jpg七人の侍 パンフ.jpg7samurai.jpg 本書『邦画ベスト150』には、赤瀬川順・長部日出雄・藤子不二雄A氏らの座談会や、映画通が選んだジャンル別のマイベスト、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」といった興味深い企画もありますが、メインの「ベスト150」は、1位が「七人の侍」で、以井上ひさしs.jpg下「東京物語」「生きる」「羅生門」「浮雲」と続く"まともな"ラインアップとなっています。また、井上ひさしの「たったひとりでベスト100選出に挑戦する!」も、第1位が「七人の侍」で、あと「天国と地獄」「生きる」と黒澤作品が続きます(因みに「七人の侍」は、1954年度「キネマ旬報ベストテン」第3位だったが、本書の10年後発表の「キネマ旬報オールタイムベスト・ベスト100日本映画編(1999年版)」では第1位(下段参照))
Shichinin no samurai(1954)  「七人の侍」('63年/東宝)

七人の侍 1954.jpg「七人の侍」.jpg 「七人の侍」の「1位」には、個人的にもほぼ異論を挟む余地が無いという気がします。先にジョン・スタージェス監督の「荒野の七人」('60年/米)を観てオリジナルであるこの作品も早く観たいと思っていたですが、観るのなら絶対に劇場でと思い、リヴァイバル上映を待ちに待って、結局'90年代にニュープリント、リニューアル・サウンドの完全オリジナル版が15年ぶりに公開されたのを機にやっと観ました。渋谷のロードショーシアターへ、休日の昼間ではおそらく行列に並ぶことになるだろうと思い、冬の日の朝一番なら多少すいているかもしれないと思って観にいったら、観客多数のため上映館が急遽変更されていて、渋谷の街中(まちなか)を走った思い出があります。

『七人の侍』(1954) .jpg 「荒野の七人」もいい映画ではあるものの、やはりオリジナルは遥かにそれを凌ぐレベルの作品だったことを実感しました。アクション映画としても傑作ですが、脚本面でも思想性という面でも優れた作品だと思い七人の侍n.jpgます(2018年10月29日、英BBCが最も偉大な外国語映画100本を発表、世界43の国と地域の映画評論家209人が挙げたベストテンをポイント別に集計して順位が付けられているそうで、その第1位に「七人の侍」が選ばれた[当ページ再下段参照])
三船敏郎(菊千代)/土屋嘉男(利吉)

 因みに、本書における(同じくアンケートによる)「男優ベスト10」「女優ベスト10」は次の通りとなっています。
 男優ベスト10:1位・坂東妻三郎、2位・高倉健、3位・笠智衆、4位・三船敏郎、5位・三國連太郎、6位・森雅之、7位・志村喬、8位・石原裕次郎、9位・市川雷蔵、10位・緒形拳
 女優ベスト10:1位・原節子、2位・吉永小百合、3位・高峰秀子、4位・田中絹代、5位・岩下志麻、6位・京マチ子、7位・山田五十鈴、8位・若尾文子、9位・岸恵子、10位・藤純子

阪東妻三郎3.jpg(ウィキペデイアの「坂東妻三郎」の項に、「1989年(平成元年)に文春文庫ビジュアル版として『大アンケートによる日本映画ベスト150』という一書が刊行されたが、文中372人が選んだ「個人編男優ベストテン」の一位は阪妻だった。死後35年余りを経て、なおこの結果だった」とある。)

        
日本映画 洋・邦名画ベストベスト150.JPG 姉妹書である『洋画ベスト150』もそうですが、映画通と言われる特定の映画にこだわりを持った人々からアンケートをとったとしても、それらを全部を集計してしまうと、一般の映画ファンのアンケート結果とそう変わらないものになるという印象を受けます。そこで、「人目にふれにくい傑作」にテーマを絞った『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』が企画されたのは「むべなるかな」という感じがします。

Jûsan-nin no shikaku (1963)「十三人の刺客」
Jûsan-nin no shikaku (1963).jpg十三人の刺客.jpg 『洋・邦名画ベスト150 中・上級篇』の方では、「日本映画ベスト44」の1位が工藤栄一(1929‐2000)監督の「十三人の刺客」、「外国映画ベスト109」の1位は「マダムと泥棒」となっていて、「七人の侍」は前述の通り個人的にも大傑作だと思いますが、「七人の侍」がこれほど賞賛されるならば「十三人の刺客」ももっと注目されるべきであるし、ヒッチコック(個人的は好きな監督)の作品に人気が集まるならば、「マダムと泥棒」も見て!という印象は確か受けます。

十三人の刺客 1963ド.jpg十三人の刺客 1963 片岡 内田.jpg 「十三人の刺客」は、将軍の弟である明石藩主というのが実は異常性格気味の暴君で、事情を知らない将軍が彼を老中に抜擢する話が持ち上がったために、筆頭老中が暴君排除を決意し、暗殺の密命を旗本島田新左衛門に下すというもの。
片岡千恵蔵(島田新左衛門)/内田良平(鬼頭半兵衛)

「十三人の刺客」 ('63年/東映)
十三人の刺客s.jpg十三人の刺客dvd.jpg 片岡千恵蔵演ずる島田新左衛門が集めた刺客は12人で、参勤交代の道中の藩主を襲うが、対する明石藩士は53名。この、2勢力の武士が、何か2匹の生き物のように画面狭しと動き回って、時代劇というよりまさにアクション映画。そうした点では「七人の侍」と見比べると、また違った味があります(脚本の「池上金男」は今年['07年]5月に亡くなった、後に『四十七人の刺客』で新田次郎文学賞を受賞する池宮彰一郎(1923-2007/享年83)。音楽は「ゴジラ」の伊福部昭!)。
十三人の刺客 [DVD]

十三人の刺客 工藤栄一.jpg 本書にもあるように、アクション映画は、シチュエーションを単純にしてディテールに凝ったほうが面白いと言うその典型で、ラストの30分にわたるリアルな決戦シーンとそこに至るまでの作戦の積み重ねは、「早すぎた傑作」と呼ばれるにふさわしく、公開当時はあまり評価されなかったとのこと。大体、時代物に疎く、かなり後になってビデオで観たのですが、劇場で観たかったです(オールド・プリントで、ちょっと画面が暗い。DVDの方はどうなのだろうか(2019年にNHK-BSプレミアムで放映されたものを観たが、クリアな画像だった)

木村 功(岡本勝四郎)・土屋嘉男(利吉)・志村 喬(島田勘兵衛) /宮口精二(久蔵)/加東大介(七郎次)
「七人の侍」 志村喬 土屋嘉男 木村功.jpg宮口精二 七人の侍2.jpg七人の侍 加東大介.jpg「七人の侍」●制作年:1963年●監督:黒澤明●製作:本木莊二郎●脚本:黒澤明/橋本忍/小国英雄●撮影:中井朝一●音楽:早坂文雄●時間:207分●出演: 志村喬/三船敏郎/木村功/稲葉義男七人の侍 仲代達矢ekisutora .jpg加東大介/千秋実/宮口精二/藤原釜足/津島恵子/土屋嘉男/小杉義男/左卜全/高堂国典/東野英治郎/島崎雪子/山形勲/渡辺篤/千石規子/堺左千夫/千葉一郎/本間文子/安芸津広/多々良七人の侍f23.jpg純/小川虎之/熊谷二良/上田吉二郎/谷晃/中島春雄/(以下、エキストラ出演)仲代達矢(右写真)/宇津井健/加藤武●公開:1954/04●配給:東宝 ●最初に観た場所:渋谷東宝(渋東シネタワー4)(91-12-01)(評価:★★★★★
東野英治郎(百姓の子供を人質にとって小屋に立て籠った盗人)
千秋 実(林田平八)/稲葉義男(片山五郎兵衛)/山形 勲(鉄扇の浪人―腕は立つが七人には加わらない)
林田平八(千秋 実).jpg 片山五郎兵衛(稲葉義男).jpg 鉄扇の浪人(山形 勲).jpg

Shibutoh_Cine_Tower.JPG渋東シネタワービル(シネタワー1・2・3・4)

渋東シネタワー 1991(平成3)年7月6日、「渋谷東宝会館」を「渋東シネタワー」と改称し、4スTOHOCINEMAS_Shibuya.JPGクリーンに増設して再オープン。シネタワー1(606席)、シネタワー2(790席)、シネタワー3(342席)、シネタワー4(248席)。2011(平成23)年、上層TOHOシネマズ渋谷 .jpg階にあったシネタワー1と2を閉鎖・改装し、同年7月15日、TOHOシネマズ渋谷スクリーン1・2・3・4がオープン。次いで下層階のシネタワー3・4を改装し、同年11月30日にTOHOシネマズ渋谷スクリーン5・6がオープン。


片岡千恵蔵 in「十三人の刺客」
十三人の刺客 片岡.jpg十三人の刺客 嵐.jpg十三人の刺客 西村.jpg「十三人の刺客」●制作年:1963年●監督:工藤栄一●製作:東映京都撮影所●脚本:池上金男●撮影:鈴木重平●音楽:伊福部昭●時間:125分●出演:片岡千恵蔵/里見浩太朗/嵐寛寿郎/阿部九州男/加賀邦男/汐路章/春日俊二/片岡栄二郎/和崎俊哉/西村晃/内田良平/山城十三人の刺客 里見.jpg新伍/丹波哲郎/月形龍之介/菅貫太郎/水島道太郎/沢村精四郎/丘さとみ/藤純子/河原崎長一郎/三島ゆり子/十三人の刺客 丹波.jpg月形龍之介.jpg「十三人の刺客」藤.jpg高松錦之助/神木真寿雄●公開:1963/12●配給:東映(評価:★★★★☆)
丹波哲郎/月形龍之介/藤純子(当時17歳)


●キネマ旬報オールタイムベスト・ベスト100日本映画編(1999年版)
1七人の侍 黒澤明

2浮雲 成瀬巳喜男
3飢餓海峡 内田吐夢
3東京物語 小津安二郎
5幕末太陽伝 川島雄三
5羅生門 黒澤明
7赤い殺意 今村昌平
8仁義なき戦い 深作欣二
8二十四の瞳 木下恵介
10雨月物語 溝口健二
11生きる 黒澤明
11西鶴一代女 溝口健二
13真空地帯 山本薩夫
13切腹 小林正樹
13太陽を盗んだ男 長谷川和彦
13となりのトトロ 宮崎駿
13泥の河 小栗康平
18人情紙風船 山中貞雄
18無法松の一生 稲垣浩
18用心棒 黒澤明
21蒲田行進曲 深作欣二
21少年 大島渚
21月はどっちに出ている 崔洋一
21麦秋 小津安二郎
21復讐するは我にあり 今村昌平
26家族ゲーム 森田芳光
26砂の器 野村芳太郎
26青春残酷物語 大島渚
26人間の条件 小林正樹
26また逢う日まで 今井正
31一条さゆり 濡れた欲情 神代辰巳
31キューポラのある街 浦山桐郎
31けんかえれじい 鈴木清順
31幸せの黄色いハンカチ 山田洋次
31Shall we ダンス? 周防正行
31にっぽん昆虫記 今村昌平
31夫婦善哉 豊田四郎
38愛を乞うひと 平山秀幸
38赫い髪の女 神代辰巳
38遠雷 根岸吉太郎
38仁義の墓場 深作欣二
38ソナチネ 北野武
38天国と地獄 黒澤明
38日本のいちばん長い日 岡本喜八
38日本の夜と霧 大島渚
38野良犬 黒澤明
38ゆきゆきて、神軍 原一男
38竜二 川島透
49安城家の舞踏会 吉村公三郎
49おとうと 市川崑
49隠し砦の三悪人 黒澤明
49十三人の刺客 工藤栄一
49近松物語 溝口健二
49もののけ姫 宮崎駿
55青い山脈 今井正
55神々の深き欲望 今村昌平
55キッズ・リターン 北野武
55櫻の園 中原俊
55青春の殺人者 長谷川和彦
55台風クラブ 相米慎二
55丹下左膳余話・百万両の壷 山中貞雄
55天使のはらわた 赤い教室 曾根中生
55楢山節考 木下恵介
55野菊のごとき君なりき 木下恵介
55宮本武蔵 五部作 内田吐夢
55竜馬暗殺 黒木和雄
67赤線地帯 溝口健二
67赤ひげ 黒澤明
67駅・STATION 降旗康男
67恋人たちは濡れた 神代辰巳
67サード 東陽一
67細雪 市川崑
67三里塚 辺田部落 小川紳介
67青春の蹉跌 神代辰巳
67日本の悲劇 木下恵介
67の・ようなもの 森田芳光
67裸の島 新藤兼人
67張り込み 野村芳太郎
67乱れ雲 成瀬巳喜男
67約束 斎藤耕一
67野獣の死すべし 村川透
82愛のコリーダ 大島渚
82赤ちょうちん 藤田敏八
82赤西蠣太 伊丹万作
82悪魔の手鞠唄 市川崑
82稲妻 成瀬巳喜男
82鴛鴦歌合戦 マキノ正博
82お葬式 伊丹十三
82影武者 黒澤明
82火宅の人 深作欣二
82カルメン故郷に帰る 木下恵介
82きけわだつみの声 関川秀雄
82CURE 黒沢清
82沓掛時次郎 遊侠一匹 加藤泰
82蜘蛛巣城 黒澤明
82狂った果実 中平康
82午後の遺言状 新藤兼人
82秋刀魚の味 小津安二郎
82次郎長三国志 マキノ雅弘
82新宿泥棒日記 大島渚
82砂の女 勅使河原宏
82素晴らしき日曜日 黒澤明
82戦場のメリークリスマス 大島渚
82Wの悲劇 澤井信一郎
82忠次旅日記・全三部 伊藤大輔
82ツィゴイネルワイゼン 鈴木清順
82椿三十郎 黒澤明
82東海道四谷怪談 中川信夫
82どついたるねん 阪本順治
82肉弾 岡本喜八
82日本春歌考 大島渚
82人間蒸発 今村昌平
82八月の濡れた砂 藤田敏八
82笛吹川 木下恵介
82豚と軍艦 今村昌平
82真昼の暗黒 今井正
82めし 成瀬巳喜男
82酔いどれ天使 黒澤明
82私が棄てた女 浦山桐郎


●英BBC・最も偉大な外国語映画100本(2018年)
日本映画の順位と全体の順位

1. 七人の侍       (黒澤明 1954)
3. 東京物語       (小津安二郎 1953)
4. 羅生門        (黒澤明 1950)
37. 千と千尋の神隠し (宮崎駿 2001)
53. 晩春       (小津安二郎 1949)
61. 山椒大夫     (溝口健二 1954)
68. 雨月物語     (溝口健二 1953)
72. 生きる      (黒澤明 1952)
79. 乱        (黒澤明 1985)
88. 残菊物語     (溝口健二 1939)
95. 浮雲       (成瀬巳喜男 1955)
 
1. Seven Samurai (Akira Kurosawa, 1954) 七人の侍
2. Bicycle Thieves (Vittorio de Sica, 1948) 自転車泥棒
3. Tokyo Story (Yasujiro Ozu, 1953) 東京物語
4. Rashomon (Akira Kurosawa, 1950) 羅生門
5. The Rules of the Game (Jean Renoir, 1939) ゲームの規則
6. Persona (Ingmar Bergman, 1966) 仮面/ペルソナ
7. 8 1/2 (Federico Fellini, 1963) 8 1/2
8. The 400 Blows (Francois Truffaut, 1959) 大人は判ってくれない
9. In the Mood for Love (Wong Kar-wai, 2000) 花様年華
10. La Dolce Vita (Federico Fellini, 1960) 甘い生活
11. Breathless (Jean-Luc Godard, 1960) 勝手にしやがれ
12. Farewell My Concubine (Chen Kaige, 1993) さらば、わが愛/覇王別姫
13. M (Fritz Lang, 1931) M
14. Jeanne Dielman, 23 Commerce Quay, 1080 Brussels (Chantal Akerman, 1975) ブリュッセル1080、コメルス河畔通り23番地、ジャンヌ・ディエルマン
15. Pather Panchali (Satyajit Ray, 1955) 大地のうた
16. Metropolis (Fritz Lang, 1927) メトロポリス
17. Aguirre, the Wrath of God (Werner Herzog, 1972) アギーレ/神の怒り
18. A City of Sadness (Hou Hsiao-hsien, 1989) 悲情城市
19. The Battle of Algiers (Gillo Pontecorvo, 1966) アルジェの戦い
20. The Mirror (Andrei Tarkovsky, 1974) 鏡
21. A Separation (Asghar Farhadi, 2011) 別離
22. Pan's Labyrinth (Guillermo del Toro, 2006) パンズ・ラビリンス
23. The Passion of Joan of Arc (Carl Theodor Dreyer, 1928) 裁かるるジャンヌ
24. Battleship Potemkin (Sergei M Eisenstein, 1925) 戦艦ポチョムキン
25. Yi Yi (Edward Yang, 2000) ヤンヤン 夏の想い出
26. Cinema Paradiso (Giuseppe Tornatore, 1988) ニュー・シネマ・パラダイス
27. The Spirit of the Beehive (Victor Erice, 1973) ミツバチのささやき
28. Fanny and Alexander (Ingmar Bergman, 1982) ファニーとアレクサンデル
29. Oldboy (Park Chan-wook, 2003) オールド・ボーイ
30. The Seventh Seal (Ingmar Bergman, 1957) 第七の封印
31. The Lives of Others (Florian Henckel von Donnersmarck, 2006) 善き人のためのソナタ
32. All About My Mother (Pedro Almodovar, 1999) オール・アバウト・マイ・マザー
33. Playtime (Jacques Tati, 1967) プレイタイム
34. Wings of Desire (Wim Wenders, 1987) ベルリン・天使の詩
35. The Leopard (Luchino Visconti, 1963) 山猫
36. La Grande Illusion (Jean Renoir, 1937) 大いなる幻影
37. Spirited Away (Hayao Miyazaki, 2001) 千と千尋の神隠し
38. A Brighter Summer Day (Edward Yang, 1991) 牯嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件
39. Close-Up (Abbas Kiarostami, 1990) クローズ・アップ
40. Andrei Rublev (Andrei Tarkovsky, 1966) アンドレイ・ルブリョフ
41. To Live (Zhang Yimou, 1994) 活きる
42. City of God (Fernando Meirelles, Katia Lund, 2002) シティ・オブ・ゴッド
43. Beau Travail (Claire Denis, 1999) 美しき仕事
44. Cleo from 5 to 7 (Agnes Varda, 1962) 5時から7時までのクレオ
45. L'Avventura (Michelangelo Antonioni, 1960) 情事
46. Children of Paradise (Marcel Carne, 1945) 天井桟敷の人々
47. 4 Months, 3 Weeks and 2 Days (Cristian Mungiu, 2007) 4ヶ月、3週と2日
48. Viridiana (Luis Bunuel, 1961) ビリディアナ
49. Stalker (Andrei Tarkovsky, 1979) ストーカー
50. L'Atalante (Jean Vigo, 1934) アタラント号
51. The Umbrellas of Cherbourg (Jacques Demy, 1964) シェルブールの雨傘
52. Au Hasard Balthazar (Robert Bresson, 1966) バルタザールどこへ行く
53. Late Spring (Yasujiro Ozu, 1949) 晩春
54. Eat Drink Man Woman (Ang Lee, 1994) 恋人たちの食卓
55. Jules and Jim (Francois Truffaut, 1962) 突然炎のごとく
56. Chungking Express (Wong Kar-wai, 1994) 恋する惑星
57. Solaris (Andrei Tarkovsky, 1972) 惑星ソラリス
58. The Earrings of Madame de... (Max Ophuls, 1953) たそがれの女心
59. Come and See (Elem Klimov, 1985) 炎628
60. Contempt (Jean-Luc Godard, 1963) 軽蔑
61. Sansho the Bailiff (Kenji Mizoguchi, 1954) 山椒大夫
62. Touki Bouki (Djibril Diop Mambety, 1973) トゥキ・ブゥキ/ハイエナの旅
63. Spring in a Small Town (Fei Mu, 1948) 田舎町の春
64. Three Colours: Blue (Krzysztof Kieslowski, 1993) トリコロール/青の愛
65. Ordet (Carl Theodor Dreyer, 1955) 奇跡
66. Ali: Fear Eats the Soul (Rainer Werner Fassbinder, 1973) 不安は魂を食いつくす
67. The Exterminating Angel (Luis Bunuel, 1962) 皆殺しの天使
68. Ugetsu (Kenji Mizoguchi, 1953) 雨月物語
69. Amour (Michael Haneke, 2012) 愛、アムール
70. L'Eclisse (Michelangelo Antonioni, 1962) 太陽はひとりぼっち
71. Happy Together (Wong Kar-wai, 1997) ブエノスアイレス
72. Ikiru (Akira Kurosawa, 1952) 生きる
73. Man with a Movie Camera (Dziga Vertov, 1929) これがロシヤだ(別題:カメラを持った男)
74. Pierrot Le Fou (Jean-Luc Godard, 1965) 気狂いピエロ
75. Belle de Jour (Luis Bunuel, 1967) 昼顔
76. Y Tu Mama Tambien (Alfonso Cuaron, 2001) 天国の口、終りの楽園。
77. The Conformist (Bernardo Bertolucci, 1970) 暗殺の森
78. Crouching Tiger, Hidden Dragon (Ang Lee, 2000) グリーン・デスティニー
79. Ran (Akira Kurosawa, 1985) 乱
80. The Young and the Damned (Luis Bunuel, 1950) 忘れられた人々
81. Celine and Julie go Boating (Jacques Rivette, 1974) セリーヌとジュリーは舟でゆく
82. Amelie (Jean-Pierre Jeunet, 2001) アメリ
83. La Strada (Federico Fellini, 1954) 道
84. The Discreet Charm of the Bourgeoisie (Luis Bunuel, 1972) ブルジョワジーの秘かな愉しみ
85. Umberto D (Vittorio de Sica, 1952) ウンベルト・D
86. La Jetee (Chris Marker, 1962) ラ・ジュテ
87. The Nights of Cabiria (Federico Fellini, 1957) カビリアの夜
88. The Story of the Last Chrysanthemum (Kenji Mizoguchi, 1939) 残菊物語
89. Wild Strawberries (Ingmar Bergman, 1957) 野いちご
90. Hiroshima Mon Amour (Alain Resnais, 1959) 二十四時間の情事
91. Rififi (Jules Dassin, 1955) 男の争い
92. Scenes from a Marriage (Ingmar Bergman, 1973) ある結婚の風景
93. Raise the Red Lantern (Zhang Yimou, 1991) 紅夢
94. Where Is the Friend's Home? (Abbas Kiarostami, 1987) 友だちのうちはどこ?
95. Floating Clouds (Mikio Naruse, 1955) 浮雲
96. Shoah (Claude Lanzmann, 1985) ショア
97. Taste of Cherry (Abbas Kiarostami, 1997) 桜桃の味
98. In the Heat of the Sun (Jiang Wen, 1994) 太陽の少年
99. Ashes and Diamonds (Andrzej Wajda, 1958) 灰とダイヤモンド
100. Landscape in the Mist (Theo Angelopoulos, 1988) 霧の中の風景

(The 100 greatest foreign-language films)

《読書MEMO》
個人的に特に良かった日本映画49本['22年]
良かった映画49.jpg

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スチールが豊富でレイアウトがダイナミック。

昭和外国映画史0.JPG昭和外国映画史.jpg 昭和外国映画史2.jpg
昭和外国映画史―「月世界探検」から「スター・ウォーズ」まで (1978年)

 「1億人の昭和史」という毎日新聞社の雑誌の別冊シリーズ(今で言う"ムック")として刊行されたものです。

「月世界探検」(1902)
月世界探検.jpg 一応「昭和」とタイトルにありますが、1908(明治41)年公開の「月世界探検(月世界旅行)」('02年/仏)から取り上げていて(これ、8mmフィルムで観たことがあるが、"大掛かりな学芸会"みたいな作品だった)、日本で公開された外国映画をスチールで紹介する「全史」となっています。10年単位で均等に作品を取り上げているため、20世紀初期の多くの無声映画が紹介されているなど、類書に比べ相対的に古典的作品が詳しく紹介されていることになっています。

IMG_2849.JPG 本書自体が'78(昭和53)年の刊行なので、昭和を10年残したところで終わっていますが、掲載されているスチールの総数は千枚近いのではないかと思われます。大胆でダイナミックなレイアウトにより、外国映画の持つスケールと迫力、豊かな情感が伝わってきて、まだ観ていない映画も見たくなってきます。

 1枚のスチール写真で1ページ、更には見開きページを使っている作品もあり、因みに見開き掲載となっているのは、「未完成交響曲」(昭和10年公開)、「駅馬車」(昭和15年公開)、「風とともに去りぬ」(昭和27年公開)、「スター誕生」、「旅情」(共に昭和30年公開)、「荒野の七人」(昭和36年公開)、「ゴッドファーザー」(昭和47年公開)等々。

IMG_2848.JPG あくまでも日本での公開順に昭和を10年単位で区切り(「戦艦ポチョムキン」('25年/ソ連)などは昭和40年代のグループにある)、併せて時代風潮と映画業界の動向を総括していますが、例えば、昭和30年代の冒頭には、日本初の"シネラマ劇場"「テアトル東京」の写真があり、当時1日1万人近い観客が押しかけたのこと(現在の京橋駅近くの「ル・テアトル銀座」の場所にあった)。

 自分も'81年の閉館直前の頃ですが、ここで「地獄の黙示録」「天国の門」などを観た思い出があり、その頃にはもうガラガラに空いていましたが(ロードの終わりの頃だったのかなあ)、初体験の2チャンネル・サウンドや湾曲したスクリーンの記憶は消えません。

「風と共に去りぬ」」パンフレット(1975年リバイバル公開版)
「風と共に去りぬ」」1」.jpg オールド・ムービーについて知る手引きとして楽しませてもらい、今も手元に置いていますが、「1枚のスチールは10の解説よりも雄弁」という思いを強く抱かされます。

 「風とともに去りぬ」('39年/米)が本書のちょうど真ん中にくるぐらいでしょうか(前の方には、自分の知らない古典的作品がいっぱいある)。1930年代に「風と共に去りぬ」のようなスケールの大きな映画がアメリカで作られ、それを日本人が1950年代になって初めて観て驚き、こんな映画を作った国と戦争しても勝てるはずがなかったのだと改めて思ったわけだなあ(小津安二郎や徳川夢声は戦時中に日本軍の被占領地(シンガポール)でこの映画を観ている)。

風と共に去りぬ パンフ01.JPG アカデミー賞の作品賞・監督賞・主演女優賞・助演女優賞・脚色賞・撮影賞・室内装置賞・編集賞・制作賞・特別賞受賞(主演女優賞のヴィヴィアン・リーは、1939年(第5回)ニューヨーク映画批評家協会賞の主演女優賞も受賞)。アメリカ国内での興行収入は、チケット価格のインフレ調整計算すると歴代1位になり、日本でも高度成長期を中心に10回以上リバイバル上映され、今日も世界中のどこかの映画館で必ず上映されていると言われるスゴイ映画です。因みに、世界で初めてテレビ放映されたのも日本においてです(1975年/日本テレビ系列)。

「風と共に去りぬ」」2.jpg「風と共に去りぬ」●原題:GONE WITH THE WIND●制作年:1939年●制作国:アメリカ●監督:ビクター・フレミング●製作:デヴィッド・O・セルズニック●脚本:シドニー・ハワード●撮影:アーネスト・ホーラー/レイ・レナハン●音楽:マックス・スタイナー●原作:マーガレット・ミッチェル●時間:231分●出演:ヴィヴィアン・リー/クラーク・ゲーブル/レスリー・ハワード/オリヴィア・デ・ハヴィランド/トーマス・ミッチェル/バーバラ・オニール/ハティ・マクダニエル/イヴリン・キース/アン・ラザフォード/ハリー・ダベンボート/ローラ・ホープ・クルーズ/キャロル・ナイ/オナ・マンスン/カミー・キング●日本公開:1952/09●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-06-03)(評価:★★★★)

月世界旅行 dvd.jpg月世界旅行1.jpg月世界旅行2.jpg 「月世界旅行」(げつせかいりょこう)●原題:THE TRIP TO THE MOON(Le Voyage dans la Lune)●制作年:1902年●制作国:フランス●監督・製作・脚本:ジョルジュ・メリエス●原作:ジュール・ヴェルヌ/H・G・ウェルズ●時間:14分●出演:ジョルジュ・メリエス/ブリュエット・ベルノン/ ジュアンヌ・ダルシー/ヴィクター・アンドレ/アンリ・デラヌー●日本公開:1905/08●配給:MGM日本支社●最初に観た場所:杉本保男氏邸(81-01-31)(評価:★★★?)
月世界旅行&メリエスの素晴らしき映画魔術 Blu-ray」['12年] 2010年彩色版

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著者の「週刊文春」連載エッセイのスタート年の分。この頃の方が良かったかも。

人生は五十一から 単行本.gif         人生は五十一から.jpg    小林信彦.jpg 小林 信彦 氏    
人生は五十一から』 ['99年]  『人生は五十一から (文春文庫)』 〔'02年〕 (カバー装画:小林泰彦)

 先月['06年10月]に「菊池寛賞」の受賞が決まった著者ですが、受賞理由は「純文学、エンターテイメント、評伝、映画研究、コラムなど多方面にわたってすぐれた作品を発表し、その文業の円熟と変わらぬ実験精神によって『うらなり』を完成させた。」とのことです。因みに『うらなり』は、夏目漱石の『坊つちやん』の登場人物の英語教師「うらなり」を語り手にして夏目漱石の小説の後日談を書くというある種実験小説だそうです。

 その著者の「週刊文春」に連載のエッセイが「本音を申せば」というタイトルでリニューアルされる前の連載「人生は五十一から」は、'98年1月1日号からスタートし、'02年掲載分まで1年ごとにまとめて6冊の単行本シリーズとなっていますが(すべて文庫化もされている)、本書はその1年目('98年)分をまとめたものです。

 「人生は五十一から」とは自分を励ますつもりでつけたタイトルだそうですが、著者は'32年生まれで、連載開始時点で既に65歳だったということに改めて気づいた次第(エンタツ・アチャコの主演映画「人生は六十一から」('41年/東宝= 吉本映画)をもじったものであるとも思われ、映画通らしいネーミング)。

 サッカーW杯('98年フランス大会)の熱狂報道を第二次世界大戦中の新聞報道になぞらえるなどは、疎開を経験した戦中派ならではの視点で、世相や言葉の乱れに対する批判は、"山本夏彦"を彷彿させますが(このころの著者にはやや憂鬱傾向も感じられる)、65歳だったんだなあ、となんだかしっくりきてしまいました。

 「本音を申せば」などはかなり広く時事問題や政治問題を取り上げていますが、拡げすぎてピントがぼやけている感じもするのに対し、このころは、映画・演劇・テレビ・ラジオなど著者の専門領域の話題が多く、ジャンル的な偏りはあるものの、今より舌鋒が鋭いのではという気がします(最近の「本音を申せば」は、また映画の話題の比重が高くなった。個人的にはその方がいい)。

 シリーズ全体として安定感はあるものの、後の方にいくと少しトンチンカンな政治的発言も出てくるのは、政治は先を読むのが難しいから仕方ないのかも。但し、「人生は五十一から」シリーズの中でどれか1年分を読むならば、先ずこの1冊ではないでしょうか。

ユージュアル・サスペクツ.jpg 映画ファンには、映画ネタが多い分、楽しめます。「隠し砦の三悪人」が「スター・ウォーズ」に与えた影響を指摘したのもこの人ですが(ジョージ・ルーカスが後に「隠し砦の三悪人」を参考にしたことを認めた)、本書にある「ユージュアル・サスペクツ」で登場人物が口にする虚偽を映像にしているのはアンフェアであるという議論も、発端はこの人なのかなあ。個人的には、「ユージュアル・サスペクツ」という映画を評価するに際してかなり影響を受けた議論でした。

 因みに、「週刊文春」の長期連載ということでいうと、'83年8月4日号よりスタートした林真理子氏の「夜ふけのなわとび」が20年以上続いており、最も長いものとなっています。

 【2002年文庫化[文春文庫]】

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巨匠の作品でもダメなものはダメ、B級でも面白いも面白い、とする。「乱」はつまらなかった、で意見が一致した。
『最後の映画日記』.jpg最後の映画日記.jpg  乱 デジタル・リマスター版 [DVD].jpg
最後の映画日記』['04年/河出書房新社](表紙イラスト:池波正太郎) 乱 デジタル・リマスター版 [DVD]

  第1部は、'75年から'88年にかけて雑誌等に発表したもので、昔の映画の思い出や、自分の小説の劇化などについて書かれていますが、戦前の映画俳優や役者に対する思い入れが感じられ、また鬼平犯科帳をテレビでやるなら松本幸四郎(当時)でなければ許可しないと言ったなどの話が興味深い(萬屋錦之介ではダメだと)。

 第2部は、'74年から'85年にかけて連載した「映画日記」の単行本未収録分('81年から'82年分)で、60歳になっても芸術作品から娯楽作品まで、この時期公開された映画(リバイバル含む)の試写会を精力的にハシゴしている様子が窺えます。
 大家の作品でもダメなものはダメ、B級に近い作品でも面白いも面白いとし、映画や芝居を見た後でどこで何を食べたかまで全部書いてあるのも、お決まりとはいえ楽しめます。

 第3部はヒチコック、黒澤映画についてのトークと、常盤新平氏との対談など。
 精神分析的要素が入ってたヒチコック分析はさすが。氏は、ヒッチ氏の"気張った巨匠ぶり"がないところが気に入っているようです。
 一方、"巨匠"黒澤明の「乱」を、観客を置き去りにした、ドラマツルギーの無い作品として痛烈に批判していますが、個人的には自分も同じ意見です。海外での評価は高かったようですが、個人的にはイマイチでした。
 

「乱」キャスト1.jpg乱 nakadai.jpg「乱」●制作年:1985年●制作国:日本・フランス●監督:黒澤明●製作:セルジュ・シンベルマン/原正人●脚本:黒澤明/小国英雄/井手雅人●撮影:斎藤孝雄●音楽:武満徹●衣装:ワダエミ●時間:162分●出演:仲代達矢/寺尾聡/根津甚八/隆大介/原田美枝子/宮崎美子/野村武司/井川比佐志/ピーター/油井昌由樹/加藤和夫/松井範雄/伊藤敏八/鈴木平八郎/児玉謙次/渡辺隆/東「乱」井川.jpg郷晴子/南條玲子/神田時枝/古知佐知子/音羽久米子/加藤武/田崎潤/植木等●公開:1985/06●配給:東宝=日本ヘラルド映画(評価:★★☆)

井川比佐志(鉄修理(くろがねしゅり))

《読書MEMO》
●「映画日記」('81年10月から'82年9月)
嵐が丘(ウイリアム・ワイラー監督)、ジズ・イズ・エルビス、007/ユア・アイズ・オンリー、約束の土地(アンジェイ・ワイダ監督)、そして誰もいなくなった、タイム・アフター・タイム、ベリッシマ(ルキノ・ヴィスコンティ監督)、スター・クレージー(シドニー・ポワチエ監督)、秋のソナタ(イングマール・ベルイマン監督)、エクスカリバー、ラブレター(東陽一監督)、皆殺しの天使(ルイス・ブニュエル監督)、イレイザーヘッド(デヴィッド・リンチ監督)、針の眼(ケン・フォレット原作)、愛と哀しみのボレロ(クロード・ルルーシュ監督)、昔みたい(ニール・サイモン脚本・ゴールディ・ホーン主演)、アパッチ砦ブロンクス(ポール・ニューマン主演)、天国の門(マイケル・チミノ監督)、マノン(東陽一監督)、悪霊島(篠田正浩監督)、幸福(市川昆監督・水谷豊主演)、駅(倉本聡脚本・降旗康男監督・高倉健主演)、レイダース(S・スピルバーグ監督)、山猫(ヴィスコンティ監督)、エンドレス・ラブ(フランコ・ゼッフィレッリ監督)、泣かないで(N・サイモン脚本・マーシャ・メイスン主演)、勝利への脱出(S・スタローン主演)、四季(アラン・アルダ監督)、ミスター・アーサー、ジェラシー(ニコラス・ローグ監督)、女の都(フェデリコ・フェリーニ監督)、郵便配達は二度ベルを鳴らす(ジェシカ・ラング主演)、パラダイス・アーミー、告白(ロバート・デ・ニーロ、ロバート・デュバル主演)、マッドマックス2、Uボート、白いドレスの女、ミッドナイトクロス(ブライアン・デ・パルマ監督)、プリンス・オブ・シティ(シドニー・ルメット監督)、ベストフレンズ、アレキサンダー大王(テオ・アンゲロプロス監督)、フランス軍中尉の女、この生命誰のもの、タップス、スクープ(シドニー・ポラック監督・P・ニューマン主演)、終電車(フランソワ・トリュフォー監督)、黄昏(ヘンリー・フォンダ主演)、デュエリスト(リドリー・スコット監督)、鉄の男(A・ワイダ監督)、シャーキーズ・マシーン、フォー・フレンズ、ボーダー(ジャック・ニコルソン主演)、レッズ(ウォーレン・ビーティ主演・脚本・監督)、ザ・アマチュア、人類創世、チャタレイ夫人の恋人、未知への飛行、カリフォルニア・ドールズ、ザ・レイプ(東陽一監督)、さらば愛しき大地、コナン・ザ・グレート、ハンガリアン、キャット・ピープル(ナスターシャ・キンスキー主演)

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通し読みすると著者の映画観や評価スタンスがわかり、巻末の「ぼくの映画史」も味わい深い。

外国映画ぼくの500本.jpg ぼくの採点表 2 1960年代.jpg 黄金狂時代 1925.jpg黄金狂時代 コレクターズ・エディション [DVD]
外国映画ぼくの500本』 文春新書〔'03年〕 『ぼくの採点表 2 1960年代―西洋シネマ大系 (2)』 (全5巻)
映画雑誌『スクリーン』1957年1月号
映画雑誌『スクリーン』1957年1月号.jpg双葉十三郎.jpg 映画雑誌「スクリーン」に長年にわたって映画評論を書き続けてきた著者による、20世紀に公開された外国映画500選の評論です。何しろ1910年生まれの著者は、見た洋画が1万数千本、邦画も含めると約2万本、1920年代中盤以降公開の作品はほとんどリアルタイムで見ているというからスゴイ!

 本書のベースとなっているのは「スクリーン」の連載をまとめた『西洋シネマ体系 ぼくの採点表』という全5巻シリーズで、この中にある約8,900本の洋画の中からさらに500本を厳選し、1本当たりの文字数を揃えて五十音順に並べたのが本書であるとのことです(著者は『西洋シネマ体系 ぼくの採点表』全5巻完結の年に第49回「菊池寛賞」を受賞している)。

 名作と呼ばれる映画の多くを網羅していて、強いて言えば心温まる映画が比較的好みであるようですが、古い映画の中にはDVDなどが廃盤になっているものも多いのが残念です。

 映画評論の大家でありながら、B級映画、娯楽映画にも暖かい視線を注いでいて、一般観客の目線に近いところで見ているという感じがし、自分たちが青春時代に見た映画も著者自身は老境に入って見ているはずなのに、感想には若者のようなみずみずしさがあって、ああこの人は万年青年なのだなあと。

 1本ごとの見どころを短文の中にうまく盛り込んでいて、リファレンスとしても使え"外れ"も少ないと思いますが、一通り読んでみることをお薦めしたいです。著者の映画観や映画を評価するということについてのスタンスがわかります。すべての作品に白い星20点、黒い星5点での採点がされていますが、「映画とは点数が高ければいいというものではない」という著者の言葉には含蓄があります。

 因みに、90点以上は「黄金狂時代(チャールズ・チャップリン)」「西部戦線異状なし(リュウイス・マイルストン)」「大いなる幻影(ジャン・ルノワール)」「駅馬車(ジョン・フォード)」「疑惑の影(アルフレッド・ヒッチコック)」「天井桟敷の人々(マルセル・カルネ)」「サンセット大通り(ビリー・ワイルダー)」「河(ジャン・ルノワール)」「恐怖の報酬(アンリ・ジョルジュ・クルーゾー)」「禁じられた遊び(ルネ・クレマン)」「水鳥の生態(ドキュメンタリー)」「野いちご(イングマール・ベルイマン)」「突然炎のごとく(フランソワ・トリュフォー)」「スティング(ジョージ・ロイ・ヒル)」「ザッツ・エンタテイメント(ジャック・ヘイリー・ジュニア)」の15本となっています。

 先の「点数が高ければいいというものではない」という著者の言葉もあってこれを著者のベスト15ととっていいのかどうかは分かりませんが、故・淀川長治2.jpg淀川長治(1909-1998)が「キネマ旬報」1980年12月下旬号に寄せた自らのベスト5が「黄金狂時代(チャールズ・チャップリン)」「戦艦ポチョムキン(セルゲイ・エイゼンシュテイン)」「グリード(エリッヒ・フォン・シュトロハイム)」「大いなる幻影(ジャン・ルノワール)」「ベニスに死す(ルキノ・ヴィスコンティ)」となっており、「黄金狂時代」と「大いなる幻影」が重なっています。年齢が近かったこともありますが(双葉氏が1歳年下)、意外と重なるなあという印象でしょうか。巻末の「ぼくの映画史」も、著者の人生と映画の変遷が重なり、その中で著者が、映画の過去・現在・将来にどういった思いを抱いているかが窺える味わい深いものでした。

 「野いちご」('57年/スウェーデン)などベルイマンの作品を高く評価しているのが印象に残ったのと、チャップリン作品で淀川長治と同じく「黄金狂時代」('25年/米)をベ黄金狂時代 01.jpgストに挙げているのが興味を引きました(淀川長治は別のところでは、"生涯の一本"に「黄金狂時代」を挙げている)。「黄金狂時代」はチャップリン初の長編劇映画であり、ゴールドラッシュに沸くアラスカで一攫千金を夢見る男たちを描いたもので黄金狂時代 03.jpgすが、チャップリンの長編の中では最もスラップスティック感覚に溢れていて楽しめ(金鉱探しのチャーリーたちの寒さと飢えがピークに達して靴を食べるシーンも秀逸だが、その前の腹が減った仲間の目からはチャーリーがニワトリに見えてしまうシーンも可笑しかった)、個人的にもチャップリン作品のベストだと思います(後期の作品に見られるべとべとした感じが無い)。

黄金狂時代es.jpg黄金狂時代_15.jpg黄金狂時代14.jpg「チャップリンの黄金狂時代(黄金狂時代)」●原題:THE GOLD RUSH●制作年:1936年●制作国:アメリカ●監督・製作・脚本:チャールズ・チャップリン●撮影:ローランド・トザロー●時間:82~96分(サウンド版73分)●出演:チャールズ・チャップリン/ビッグ・ジム・マッケイ/マック・スウェイン/トム・マレイ/ヘンリー・バーグマン/マルコム・ウエイト/スタンリー・J・サンフォード/アルバート・オースチン/アラン・ガルシア/トム・ウッド/チャールズ・コンクリン/ジョン・ランドなど●日本公開:1925/12●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:高田馬場パール座 (79-03-06)(評価:★★★★☆)●併映:「モダン・タイムス」(チャールズ・チャップリン)

《読書MEMO》
●「双葉十三郎 ぼくの採点表」
☆☆☆☆★★(90点)
1925 黄金狂時代/チャールズ・チャップリン
1930 西部戦線異状なし/リュウイス・マイルストン
1937 大いなる幻影/ジャン・ルノワール
1939 駅馬車/ジョン・フォード
1942 疑惑の影/アルフレッド・ヒッチコック
1945 天井桟敷の人々/マルセル・カルネ
1950 サンセット大通り/ビリー・ワイルダー
1951 河/ジャン・ルノワール
1952 恐怖の報酬/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
1952 禁じられた遊び/ルネ・クレマン
1953 水鳥の生態/ドキュメンタリー
1957 野いちご/イングマール・ベルイマン
1961 突然炎のごとく/フランソワ・トリュフォー
1973 スティング/ジョージ・ロイ・ヒル
1974 ザッツ・エンタテイメント/ジャック・ヘイリー・ジュニア

☆☆☆☆★(85点)
■1920年代以前
 月世界旅行/ジョルジュ・メリエス
 イントレランス/D・W・グリフィス
 カリガリ博士/ロベルト・ウィーネ
■1920年代
 キッド/チャールズ・チャップリン
 ドクトル・マブゼ/フリッツ・ラング
 幌馬車/ジョン・フォード
 アイアン・ホース/ジョン・フォード
 結婚哲学/エルンスト・ルビッチ
 ジークフリート/フリッツ・ラング
 戦艦ポチョムキン/エイゼンシュテイン
 ビッグ・パレード/キング・ビダー
 巴里の屋根の下/ルネ・クレール
■1930年代
 会議は踊る/エリック・シャレル
 自由を我等に/ルネ・クレール
 暗黒街の顔役/ハワード・ホークス
 街の灯/チャールズ・チャップリン
 仮面の米国/マーヴィン・ルロイ
 グランド・ホテル/エドマンド・グールディング
 巴里祭/ルネ・クレール
 四十二番街/ロイド・ベーコン
 或る夜の出来事/フランク・キャプラ
 商船テナシチー/ジュリアン・デュヴィヴィエ
 たそがれの維納/ヴィリ・フォルスト
 オペラ・ハット/フランク・キャプラ
 孔雀夫人/ウィリアム・ワイラー
 望郷/ジュリアン・デュヴィヴィエ
 我等の仲間/デュヴィヴィエ
 舞踏会の手帖/デュヴィヴィエ
 風と共に去りぬ/ヴィクター・フレミング
 スミス都へ行く/フランク・キャプラ
■1940年代
 わが谷は緑なりき/ジョン・フォード
 ヘンリイ五世/ローレンス・オリヴィエ
 逢びき/デヴィッド・リーン
 ダイー・ケイの天国と地獄/ブルース・ハンバーストン
 荒野の決闘/ジョン・フォード
 黄金/ジョン・ヒューストン
 悪魔の美しさ/ルネ・クレール
 踊る大紐育/スタンリー・ドーネン
 黄色いリボン/ジョン・フォード
 情婦マノン/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
 第三の男/キャロル・リード
■1950年代
 アニーよ銃をとれ/ジョージ・シドニー
 イヴの総て/ジョゼフ・マンキウイッツ
 戦慄の七日間/ジョン・ブールティング
 巴里のアメリカ人/スタンリー・ドーネン
 グレンミラー物語/アンソニー・マン
 シェーン/ジョージ・スティーヴンス
 バンド・ワゴン/ヴィンセント・ミネリ
 ローマの休日/ウィリアム・ワイラー
 悪魔のような女/アンリ・ジョルジュ・クルーゾー
 波止場/エリア・カザン
 エデンの東/エリア・カザン
 赤い風船/アルベール・ラモリス
 第七の封印/イングマール・ベルイマン
 情婦/ビリー・ワイルダー
 魔術師/イングマール・ベルイマン
■1960年代
 甘い生活/フェデリコ・フェリーニ
 処女の泉/イングマール・ベルイマン
 太陽がいっぱい/ルネ・クレマン
 ウエストサイド物語/ロバート・ワイズ
 アラビアのロレンス/デヴィッド・リーン
 8 1/2/フェデリコ・フェリーニ
 シェルブールの雨傘/ジャック・ドゥミ
 戦争は終った/アラン・レネ
 アルジェの戦い/ジッロ・ポンテコルヴォ
 バージニア・ウルフなんかこわくない/マイク・ニコルズ
 ロシュフォールの恋人たち/ジャック・ドゥミ
 冒険者たち/ロベール・アンリコ
 素晴らしき戦争/リチャード・アッテンボロー
■1970年代
 ジョニーは戦場へ行った/ドルトン・トランボ
 叫びとささやき/イングマール・ベルイマン
 フェリーニのアマルコルド/フェデリコ・フェリーニ
 タワーリング・インフェルノ/ジョン・ギラーミン
■1980年代
 ファニーとアレクサンデル/イングマール・ベルイマン
 アマデウス/ミロス・フォアマン
■1990年代以降
 霧の中の風景/テオ・アンゲロプロス
 恋におちたシェークスピア/ジョン・マッデン

映画雑誌『スクリーン』1957年1月号 目次
映画雑誌『スクリーン』1957年1月号 目次.jpg

「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【1784】 江藤 努/中村 勝則 『映画イヤーブック 1998
「●あ行の外国映画の監督」の インデックッスへ 「●「ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「アニー・ホール」)「●「全米映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「アニー・ホール」)「●フェデリコ・フェリーニ監督作品」の インデックッスへ 「●「フランス映画批評家協会賞(外国語映画賞)」受賞作」の インデックッスへ(「フェリーニのアマルコルド」)「●「ナショナル・ボード・オブ・レビュー賞 外国語映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「フェリーニのアマルコルド」) 「●「ニューヨーク映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ(「フェリーニのアマルコルド」)「●「アカデミー国際長編映画賞」受賞作」の インデックッスへ(「フェリーニのアマルコルド」)「●ニーノ・ロータ音楽作品」の インデックッスへ(「フェリーニのアマルコルド」)「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(ニュー東宝シネマ2)

成育史、女性たちとの関わりなどから探るアレン作品。「ラジオ・デイズ」はフェリーニの「アマルコルド」にあたる作品。
ウディ・アレンのすべて.jpg アニー・ホール.jpgアニー・ホール poster.jpg ラジオデイズ vhs.jpg フェリーニのアマルコルド dvd.jpg
ウディ・アレンのすべて』['97年/河出書房新社]/「アニー・ホール」('77年)/「ラジオ・デイズ [DVD]/「フェリーニのアマルコルド 4K修復版 [Blu-ray]」['17年]

ベストワン事典.jpg 『ベスト・ワン事典』('82年/現代教養文庫)という'80年に英国で原著が出版された本の中で、「コメディアンのベスト」としてウディ・アレンが挙げられていましたが、一方'05年には、彼が自分のジャズバンドのツアーを再開するという報道があり、70歳にして元気だなあという感じ。

 本書を読めば、彼がクラリネット奏者として舞台に立ったのは、映画界にデビューするよりずっと早かったことがわかります。映画の方は、3歳から映画自体には接していたけれど、高校時代から暫くはギャグライター、それに引き続くテレビ構成作家として下積みがあり、スタンダップコメディアン(漫談師)として舞台にも立ち、劇脚本家、「ニューヨーカー」の常連作家などを経て、やがて映画脚本を書くようになり、その後にやっと映画監督になったということです。

 著者の井上一馬氏は、作家であり、ボブ・グリーンの翻訳で知られる翻訳家でもありますが(自分が個人的に親しんだのはマイク・ロイコのコラムの著者による翻訳本でした)、アレンへの単なる偏愛の吐露に終わらず、ウディ・アレンの成育史、影響を与えたもの、女性たちとの関わり、さらには映画表現における技術的手法から映画製作に絡んだ様々な映画人までとりあげ、アレン作品を重層的に探る評伝&フィルモグラフィとなっていています。

「フェリーニのアマルコルド」('73年/伊・仏)
ラジオ・デイズ 000.jpgアマルコルド.jpg ウディ・アレンがベルイマンの影響を受けているのは知っていましたが、フェリーニの影響を受けていたことは本書で知りました。「ラジオ・デイズ」('87年)は、第二次世界大戦開戦直後のニューヨーク・クイーンズ区ユダヤ系移民の大家族とその一員である少年を中心に、ラジオから流れる名曲の数々など当時の文化や市民生活を通じて、彼らの夢見がちな生き方や無邪気な時代の空気を表した作品でしたが、アレンの自伝的作品であることは確かで、著者はこの「ラジオ・デイズ」を、アカデミー外国語映画賞をANNIE HALL.jpg受賞したフェリーニの「アマルコルド」('73年/伊・仏)にあたる作品であるとしています(これにはナルホドと思った)。どちらかと言うとベルイマン系と言える「ハンナとその姉妹」('86年)が傑作の誉れ高いですが、個人的には、最初に見た「アニー・ホール」('77年)の彼自身の神経症的な印象が強烈でした。

「アニー・ホール」.jpg ウディ・アレン演じるノイローゼ気味のコメディアン、アルビーと明るい性格のアニー・ホール(ダイアン・キートン)の2人の出会いと別れを描いた、コメディタッチでありながらもほろ苦い作品でした。因みに、"アニー・ホール"はダイアン・キートンの本名であり、これは、ダイアン・キートンに捧げた映画であるとも言えます。また、作中にべルイマンのこの映画製作時における最新作でイングリッド・バーグマン、リヴ・ウルマン主演の「鏡の中の女」('76年、米国での公開タイトルは"FACE TO FACE")のポスターが窺えますが、ダイアン・キートンはこの「アニー・ホール」で1977年アカデミー賞、1978年ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞し、イングリッド・バーグマンが「白い恐怖」や「追想」で、リヴ・ウルマンがベルイマンの「叫びとささやき」で受賞しているニューヨーク映画批評家協会賞の主演女優賞も受賞しています(バーグマンはこの翌年ベルイマンの「秋のソナタ」('78年/スウェーデン)で3度目のニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞受賞をする)。

Diane Keaton 1977 Oscar.jpg 有楽町の「ニュー東宝シネマ2」というややマイナーなロードショー館に観に行った際には外国人の観客が結構多く来ていて、笑いの起こるタイミングが字幕を読んでいる日本人はやや遅れがちで、しまいには外国人しか笑わないところもあったりして、会話が早すぎて、訳を端折っている感じもしました。当時は"入れ替え制"というものが無かったので、同じ劇場で2度観ましたが、アカデミー賞の最優秀作品賞、主演女優賞受賞、監督賞受賞、脚本賞の受賞が決まるやいなや「渋谷パンテオン」などの大劇場で再ロードされました。

ダイアン・キートン 1977年ニューヨーク映画批評家協会賞・1977年全米映画批評家協会賞・1977年アカデミー賞、1978年ゴールデングローブ賞の各主演女優賞受賞

Truman Capote Look-Alike.jpg この映画には、様々な役者がパーティ場面などでチラリと出ているほか、「トルーマン・カポーティのそっくりさん」役でトルーマン・カポーティ本人が出ていたり、映画館で文明批評家マクルーハンの著作を解説している男に対し、アレンが本物のマクルーハンを引っぱってきて、「君の解釈は間違っている」と本人に言わせるなど、遊びの要素もふんだんに取り入れられています。

Truman Capote as Truman Capote Look-Alike

0f3de44e64a663d507abeffd3c5b6fc3 (1).jpg この映画で、アルビーは幼い頃ローラーコースター(和製英語で言えばジェットコースター)の下にある家で育ったことになっていますが(それが主人公が神経質な性格の原因だという)、これは撮影中のウディ・アレンの思いつきだったらしく、「ラジオ・デイズ」('87年)(こちらは劇場ではなく、知人宅でビデオで観た(89-05-02))でもその設定が踏襲されていたように思います(本当にウディ・アレンが子ども時代に遊園地の傍に住んでいたのかと思った)。

anniehall.jpg 何でこのウディ・アレンという人はこんなに女性にもてるのかと、羨ましい気分も少し抱いてしまいますが、いろんな人がいろんな形で彼の映画に出演したり関わったりしていることがわかり、楽しい本でした。


フェリーニのアマルコルド59.jpgフェリーニのアマルコルドog.jpeg(●2018年にフェリーニの「アマルコルド」('73年/伊・仏)を久しぶりに劇場で観ることができた。少年チッタ(ブルーノ・ザニン)とその家族を中心に、春の火祭り、豪華客船レックス号の寄港、年上の女性グラディスカ(マガリ・ノエル)への恋などが情感たっぷりに描かれる。ネットで誰かが「フェリーニのアマルコルド50.jpgフェリーニのアマルコルド30.jpgおよそ高尚とは程遠い、庶民による祝祭」と言っていたが、確かにそうかも。1930年代に台頭してきたファシズム「黒シャツ党」にグラディスカら女性たちが嬌声を上げたり、チッタの父が拷問を受けるシーンが時代を感じさせるが、映画全体のトーフェリーニのアマルコルドyo.jpegンは明るい。映像的にも美しいシ-ンが多いが、この映画で最も印象に残るシーンは、豪華客船レックス号が小船で沖へ出ていた町の人々の目の前に夜霧の中から忽然とその姿を現すシーンと、ラスト近くで、雪の日に街の真ん中で雪合戦をして遊ぶ少年達の目の前に白いクジャクが降り立つシーンだろう。ラストでチッタの母親は亡くなるが、イタリアでは孔雀は不吉なものとの迷信があり、後者のシーンは母親の死の前兆という位置づけにあることに改めて思い当たった。)


ANNIE HALL .jpg「アニー・ホール」●原題:ANNIE HALL●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:ウディ・アレン●製作:チャールズ・ジョフィ/ジャック・ローリンズ●脚本:ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン●撮影:ゴードン・ウィリス ●時間:94分●出演:ウディ・アレン/ダイアン・キートン/トニー・ロバーツ/シェリー・デュバル/ポール・サイモン/シガニー・ウィーバー/クリストファー・ウォーケン/ジェフ・ゴールドブラム/ジョン・グローヴァー/トルーマン・カポーティ(ノンクレジット)●日本公開:1978/01●配給:オライオン映画●最初に観た場所:有楽町・ニュー東宝シネマ2(78-01-18)●2回目:有楽町・ニュー東宝シネマ2 (78-01-18)(評価:★★★★)
ニュー東宝シネマ1.jpgニュートーキョービル2.jpgニュー東宝シネマ1・2 チケット入れ.jpgニュー東宝シネマ2 1972年5月、有楽町ニュートーキョービル(有楽町マリオン向かいニユートーキヨー数寄屋橋本店ビル)B1「スキヤバシ映画」をリニューアルしてオープン。1995年6月閉館(同ビル3Fの「ニュー東宝シネマ1」は「ニュー東宝シネマ」として存続)。「ニュー東宝シネマ」(旧「ニュー東宝シネマ1」)..2009年2月10日~「TOHOシネマズ有楽座」、 2015(平成27)年2月27日閉館。

「ラジオ・デイズ」●原題:RADIO DAYS●制作年:1987年●制作ラジオデイズ.jpg国:アメリカ●監督:ウディ・RADIO DAYS 1987.jpgアレン●製作:ロバート・グリーンハット●脚本:ウディ・アレン●撮影:カルロ・ディ・パルマ●音楽:ディッキー・ハイマン●時間:94分●出演:ミア・ファロー/ダイアン・ウィースト/セス・グリーン/ジュリー・カブナー/ジョシュ・モステル/マイケル・タッカー/ダイアン・キートン/ダニー・アイエロ/ジュディス・マリナ/ウィリアム・H・メイシー/リチャード・ポートナウ●日本公開:1987/10●配給:ワーナー・ブラザース (評価:★★★☆)
ラジオ・デイズ [DVD]

フェリーニのアマルコルド.jpegフェリーニのアマルコルド_2.jpg「フェリーニのアマルコルド」●原題:FEDERICO FELLINI AMARCORD●制作年:1973年●制作国:イタリア・フランス●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:フランコ・クリスタルディ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/トニーノ・グエッラ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:124分●出演:ブルーノ・ザニン/マガリ「フェリーニのアマルコルド」amarcord4.jpg「フェリーニのアマルコルド」amarcord3.jpg・ノエル/プペラ・マッジオ/アルマンド・ブランチャ/チッチョ・イングラシア●日本公開:1974/11●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋・文芸座(78-02-07)●2回目:早稲田松竹(18-12-14)●併早稲田松竹DSC_0019.JPG早稲田松竹DSC_0018.JPG映(1回目):「フェリーニの道化師」(フェデリコ・フェリーニ)●併映(2回目):「カザノバ」(フェデリコ・フェリーニ)(評価:★★★★)

早稲田松竹(2018.12.14)
                    
《読書MEMO》
ウディ・アレンが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督、1956年)
『市民ケーン』 (オーソン・ウェルズ監督、1941年)
『大人は判ってくれない』 (フランソワ・トリュフォー監督、1959年)
『8 1/2』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1963年)
『フェリーニのアマルコルド』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1974年)
『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』 (ルイス・ブニュエル監督、1972年)
『大いなる幻影』 (ジャン・ルノワール監督、1937年)
『突撃』 (スタンリー・キューブリック監督、1957年)
『羅生門』 (黒澤明監督、1950年)
『自転車泥棒』 (ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1948年)

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古典重視でマニアックな選択傾向に見えるが、なかなかの"本物志向"。

映画の魅惑・ジャンル別ベスト1000.jpg  ジャンル別映画ベスト1000.jpg      ダークマン.jpg 今宵限りは  シュミット.jpg
映画の魅惑―ジャンル別ベスト1000』「リテレール」別冊『ジャンル別映画ベスト1000』(学研M文庫)/サム・ライミ監督「ダークマン」/ダニエル・シュミッ監督「今宵かぎりは...」

 スーパーエディターと呼ばれ、'03年にガン死したヤスケンこと安原顕の編集からなる本書は、彼が編集長をしていた雑誌リテレールの別冊の1つ。文芸映画、青春映画、音楽映画など20ジャンルの映画のベスト50を、蓮實重彦、辻邦生など大家や曲者(?)20人が分担して選び評しています。
 ただし担当ジャンルの定義は担当した執筆者に任されているようで(ある意味、読者に対しては不親切ですが)、読者におもねることなく、執筆者はみな本当に好きな映画、見てもらいたい映画について真摯に語っています。

アンドレイ・タルコフスキー/鏡.jpgルシアンの青春2.jpg鬼火.jpgラルジャン1.jpg白夜2.jpg 個人的には、ブレッソンの「白夜」「ラルジャン」、ルイ・マルの「鬼火」「ルシアンの青春」、タルコフスキーの「鏡」などの評があるのが嬉しい。キューブリックの「現金に体を張れ」「バリー・リンドン」、ヴィスコンティの「夏の嵐」「若者のすべて」、ヘルツォークの「アギーレ・神の怒り」「フィッツカラルド」が入っているのもいい。

イワン雷帝(DVD).jpg世界名作映画全集 99 キートンの大列車追跡.jpgグリード.jpg若者のすべて DVD.jpg現金(ゲンナマ)に体を張れ.jpg シュトロンハイムの「グリード」、キートンの「将軍」、エイゼンシュタインの「イワン雷帝」などの古典もあれば、ホークスの「脱出」「三つ数えろ」、ヒューストンの「キー・ラーゴ」といったハードボイルドやオルドリッチの「ロンゲスト・ヤード」「カリフォルニア・ドールズ」、サム・ライミの「ダークマン」などB級アクション映画もあります。

フリークス dvd.jpgアフター・アワーズ.jpgBurt Reynolds THE LONGEST YARD.jpg三つ数えろ.jpg脱出2.jpg スコセッシは「アフター・アワーズ」がミステリー部門にあります。「フリークス」「快楽殿の創造」などは"アートシアター新宿"の定番カルトでした。「ロッキー・ホラー・ショー」は楽しい参加型カルト(映画館でびしょ濡れになった思い出がある)。'06年に亡くなったダニエル・シュミットの「今宵限りは...」は、音楽映画とアヴァンギャルドの2部門に登場。ファスビンダーの「ケレル」っていうのもジャン・ジュネ原作で結構アブナイ映画...。

 これらの中で「B級」作品で自分の好みは、 ロバート・アルドリッチ監督の「カリフォルニア・ドールズ」('81年/米)と、サム・ライミ監督の「ダークマン」('90年/米)でしょうか。

カリフォルニア・ドールス.jpg 「カリフォルニア・ドールズ」は、男臭い世界を描いて定評のあるアルドリッチが女子プロレスの世界を描いた作品で、さえない女子プロのタッグ「カリフォルニア・ドールズ」のプロモーターを「刑事コロンボ」 のピーター・フォーク が好演しており、彼と2人の女性選手との心の通い合いが結構泣けます。

「カリフォルニア・ドールズ」●原題:...All THE MARBLES a.k.a. THE CALIFORNIA DOLLS●制作年:1981年●制作国:アメリカ●監督:ロバート・アルドリッチ●製作:ウィリアム・アルドリッチ●脚本:メル・フローマン●撮影中野武蔵野ホール.jpg:ジョセフ・バイロック●音楽:フランク・デ・ヴォール●時間:113分●出演:ピーター・フォーク/ヴィッキー・フレデリック/ローレン・ランドン/バート・ヤング/クライド・クサツ/ミミ萩原●日本公開:1982/06●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:中野武蔵野館(83-02-06)(評価:★★★★)●併映「ベストフレンズ」(ジョージ・キューカー)

THE DARKMAN 1990.jpgダークマン.jpg 「ダークマン」は、「死霊のはらわた」('81年/米)などのスプラッター映画で知られ、後に「スパイダーマン」('02年/米)を撮るサム・ライミ監督が、事故で全身に大やけどを負った男の復讐を描いたもので、「神経を切られているため痛覚は無く、怒りによって超人的な力を発揮し、人工皮膚を駆使して他人に変身する、黒マントに身を包んだ"異形のヒーロー"」というコミック調ですが、悪を倒しても元の自分には結局戻れないわけで、その孤独と哀しみが切々と伝わってきました。

ダークマン 1990.jpg「ダークマン」●原題:THE DARKMAN●制作年:1990年●制作国:アメリカ●監督・原作:サム・ライミ●製作:ロバート・タパート●脚本:チャック・ファーラー/サム・ライミ/アイヴァン・ライミ/ダニエル・ゴールディン/ジョシュア・ゴールディン●撮影:ビル・ポープ●音楽: ダニー・エルフマン●時間:96分●出演:リーアム・ニーソン/フランシス・マクドーマンド/ラリー・ドレイク/コリン・フリールズ/ネルソン・マシタ/ジェシー・ローレンス・ファーガソン/ラファエル・H・ロブレド/ダン・ヒックス/テッド・ライミ/ジョン・ランディス/ブルース・キャンベル●日本公開:1991/03●配給:ユニヴァーサル=UIP(評価:★★★★)
 
 変わった映画というか、最初観た時はよく分らなかった映画と言えば、 ジム・シャーマン監督の「ロッキー・ホラー・ショー」('75年/英)と、ダニエル・シュミット監督の「今宵かぎりは...」('72年/スイス)でしょうか。

 「ロッキー・ホラー・ショー」は、最初に名画座で観た時は、ロック・オペラってこんなのもあるのかという感じで(スーザン・サランドンが出てたなあ)よく分らんという印象だったのですが、2度目に渋谷のシネマライズ渋谷(地下1階スクリーン)で観た時には、アメリカからシネセゾンが招聘したと思われるコスプレ軍団が来日していて、映画館の最前列で映画に合わせて踊ったり、紙吹雪や米を撒いたり、雨のシーンでは如雨露で水を撒いたりして観客も大ノリ、ああ、これ、こうやってパーティ形式で観るものなんだと初めて知りました。

ロッキー・ホラー・ショー (1976).jpg「ロッキー・ホラー・ショー」●原題:THE ROCKY HORROR SHOW●制作年:1975年●制作国:イギリス●監督:ジム・シャーマン●製作:マイケル・ホワイト●脚本:ジム・シャーマン/リチャード・オブライエン●撮影:ピーター・サシツキー●音楽:リチャード・ハートレイ●時間:99分●出演:ティム・カリー/バリー・ボストウィック/スーザン・サランドン/リチャード・オブライエン/パトリシア・クイン/ジョナサン・アダムス/ミート・ローフ/チャールズ・グレイ●日本公開:1978/02●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ(83-02-06)●2回目:シネマライズ渋谷(地下1階)(88-07-17)(評価:★★★?)●併映(1回目):「ファントム・オブ・パラダイス」(ブライアン・デ・パルマ)

今宵限りは  シュミット.jpg今宵限りは.jpg 「今宵かぎりは...」は、つい先だって('06年8月5日)亡くなった「ラ・パロマ」や「ヘカテ」の監督ダニエル・シュミットの最初の長編映画ですが(この人、大分の湯布院に行った時、自分と同じ旅館「亀の井別荘」に泊まっていた)、日本公開は制作の14年後でした。大きな屋敷の広間で夜中に宴会が行われていて、クラシック音楽が流れる中、殆ど台詞もなく淡々と、赤外線カメラで撮ったような粗い映像でその模様が映し出されているのですが、宴会の客たち以上にそれに仕える召使の方が陶然としている―実はこれ、年に一夜だけ、主人と召使たちが入れ替わる宴で、召使いのために主人が旅芸人たちと芝居などの余興を披露していたのだったという、そのことを映画を観た後で知り、しかしその後はなかなか観直す機会がない作品です。

今宵かぎりは .jpgHeute nacht oder nie (1972).jpg「今宵かぎりは...」●原題:HEUTE HACHT ODER NIE●制作年:1972年●制作国:スイス●監督・脚本:ダニエル・シュミット●製作:イングリット・カーフェン●脚本:メル・フローマン●撮影:レナート・ベルタ ●時間:90分●出演:ペーター・カーダニエル・シュミット.jpgン/イングリット・カーフェン/フォリ・ガイラー/ローズマリー・ハイニケル●日本公開:1986/11●配給:シネセゾン●最初に観た場所:シネヴィヴァン六本木(86-12-01)(評価:★★★?)
Daniel Schmid(1941- 2006/享年65)

 もちろん、もっと最近の映画や(といっても本書が'93年の刊行ですが)メジャーな映画(「スター・ウォーズ」など)も入っていますが、全体としてはいい意味で"本物志向" だけど古典重視でマニアックにも見えるかも。教養主義的な雑誌リテレールもほどなく廃刊となりましたが、この別冊のスタイルは'96年に学研から出た同じ編者の『ジャンル別映画ベスト1000』に引き継がれ、その後文庫にもなっています(学研M文庫)。

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「マイベスト10にはヨーロッパ映画が似合い、最初テレビで見たものは入れにくい」に納得。
大アンケートによる洋画ベスト150.jpg    『禁じられた遊び』(1952).jpg 大地のうた3部作.jpg
大アンケートによる洋画ベスト150』(表紙イラスト:安西水丸)「禁じられた遊び」「大地のうた3部作」

 1988年の出版で、映画通366人の選んだベスト10を集計しています。年齢の高い選者が多く(今や物故者となった人も多い)、個々の選択も結構まっとうという感じですが、映画産業に限らず様々な分野の人が「マイベスト10」を寄せているので、それはそれで面白いです。

天井桟敷の人々 パンフ.JPG天井桟敷の人々.jpg 総合ベスト10も、「天井桟敷の人々」「第三の男」「市民ケーン」「風と共に去りぬ」「大いなる幻影」「ウェストサイド物語」「2001年宇宙の旅」「カサブランカ」「駅馬車」「戦艦ポチョムキン」と"一昔前のオーソドックス"といった感じでしょうか(今でも名画であることには違いありませんが)。

風と共に去りぬ パンフ.JPG 間に挿入されている赤瀬川準、長部日出雄、中野翠の3氏の座談がいいです。

 自分のベスト10に赤瀬川氏、長部氏は「天井桟敷の人々」を入れていますが、戦後生まれの中野氏には入れていません。それを彼女は、「最初にテレビで見た負い目」と説明していますが、その気持ち何だかわかるな〜(「天井桟敷の人々」は自分は劇場で観たが、個人的なベスト10には入ってこない)。
 テレビで観たものがベスト10に入りにくいのは、観ている時は感動していても、その後すぐに日常生活に戻ってしまうからではないかなあ(映画館で観終わった後、余韻を胸に抱きながら帰路につく時間というのは結構大事なのかも)。中野氏が、好きなアメリカ映画がいっぱいあるのに、「ヨーロッパ映画がどうしてもベスト10に似合っちゃう」と言っているのも何となくわかります。

 映画と音楽(奏者と楽器)の不可分な、他に置き換えようがない繋がりというのも感じます。「第三の男」(2位)のアントン・カラスのチター、「禁じられた遊び」(11位)のナルシソ・イエペスのギター、「大地のうた」(39位)のラヴィ・シャンカールのシタール、「死刑台のエレベーター」(48位)のマイルス・デイヴィスのトランペット。
ナルシソ・イエペス/禁じられた遊び.jpg  禁じれた遊び パンフ.jpg 「禁じられた遊び」
禁じられた遊び2.jpg ルネ・クレマン監督の「禁じられた遊び」('52年/仏)は戦争孤児の物語ですが、テーマ曲の効果も相俟って本当にストレートに泣けました(原曲はスペイン民謡「愛のロマンス」)。ヴェネツィア国際映画祭の「金獅子賞」米国「アカデミー国際長編映画賞」などを受賞しています。
 「第三の男」の"ハリー・ライムのテーマ"を奏でたアントン・カラスは、ハンガリー系オーストリア人で、これは映画の舞台がウィーンであるということもあるかと思いますが、「禁じられた遊び」の舞台はフランス郊外なのに、(同じラテン系ではあるが)スペイン人のギター奏者ナルシソ・イエペス(ロドリーゴのアランフェス協奏曲の演奏でも知られる)を起用していて、撮影に金を使い過ぎてオーケストラ演奏する費用が無くなってしまったため、全編を通して彼のギターだけで通したということですが、逆にそれがいい結果となっているように思えます。

フランスの思い出.jpg「フランスの思い出」.jpg 本書刊行の頃の公開作品ですが、田舎での少年と少女の交流という点では、ジャン・ルー・ユベール監督の「フランスの思い出」('87年/仏)なども、パリ育ちの少年が夏休みに田舎で過ごした経験を描いたもので、ちょっとこの作品を意識したような雰囲気がありました。

「フランスの思い出」

 「フランスの思い出」は、主演のリシャール・ボーランジェととアネモーネが1988年(第13回)セザール賞(フランスにおける映画賞で、同国における米アカデミー賞にあたる)の最優秀男優賞と最優秀女優賞をそれぞれ受賞していますが、子役も良くて、とりわけ、田舎育ちの少女役のヴァネッサ・グジがいいです。そのお転婆ぶりは、「禁じられた遊び」でブリジッド・フォッセーが演じた都会の少女ポーレットとは対照的ですが、ポーレットも一面においては、動物のお墓作りをリードしている部分があったと言えるかも。

 小さな悪の華 チラシ.jpg「小さな悪の華」チラシ
Mais ne nous délivrez pas du mal (1971)
「小さな悪の華」 映画ード.jpgMais ne nous délivrez pas du mal (1971).jpg小さな悪の華 ポスター.jpg 一方、ジョエル・セリア監督の「小さな悪の華」('70年/仏)という作品は、早熟で魔性を持つ2人の15歳の少女が、ボードレールの「悪の華」を耽読し、農夫に裸を見せつけ、行きずりの男を誘拐して殺し、最後に焼身自殺するという衝撃的なものでしたが、祭壇作りにハマる少女たちには、「禁じられた遊び」の"十字架マニア"の少女ポーレットの"裏ヴァージョン"的なものを感じました。この作品は、"少女ポルノ"的描写であるともとれる場面があるため、製作当時、フランス本国では上映禁止となったとのことです。
                                    
「大地のうた」 (1955)
「大地のうた」 (1955).jpg大地のうた2.jpg『大地のうた』 (1955).jpg 「大地のうた」('55年/インド)はサタジット・レイ監督の「オプー3部作」の第1作で、ベンガル地方の貧しい家庭の少年オプーの幼少期が描かれ、何と言っても、貧困のため雨中に肺炎で斃れたオプーの姉の挿話が哀しかったです。

 第2作の「大河のうた」('56年)では、学業に優れたオプーが故郷を捨てカルカッタへ向かうところで終わりますが、これは家族(親族)離散の結末であり、インドの人はハッピーエンドでないと満足しない?ということでもないと思いますが、インド国内での興行成績は第1作ほど良くはなかったとのことです。
大地のうた 《IVC BEST SELECTION》 [DVD]

黒澤明 .jpg しかし、「大河のうた」は世界的には前作を上回る評価を得、1957年・第18回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞、サタジット・レイは黒澤明を尊敬していましたが、同年にコンペティション部門に出品されていた黒澤明の「蜘蛛巣城」('57年/東宝)をコンペで破ったことになります。その黒澤明は、「サタジット・レイに会ったらあの人の作品が判ったね。眼光炯炯としていて、本当に立派な人なんだ。『蜘蛛巣城』がヴェネチア国際映画祭で『大河のうた』に負けた時、これはあたりまえだと思ったよ」と語っています。世界から喝采を浴びたサタジット・レイは、この作品を3部作とすることを決意、第3作「大樹のうた」('58年)は、青年となったオプーと、亡き妻の間に生まれ郷里に置いてきた息子との再会の物語になっています。

「大河のうた」(1956)/「大樹のうた」(1958)
『大河のうた』 (1956).jpg 『大樹のうた』 (1955).jpgアヌーシュカ・シャンカール.jpgノラ・ジョーンズ.jpg 3作を通じて音楽にラヴィ・シャンカールのシタールが使われていることが、3部作に統一性を持たせることに繋がっていてるように思います。因みに、ラヴィ・シャンカールの2人の娘は、姉がジャズ歌手のノラ・ジョーンズ、妹がシタール奏者のアヌーシュカ・シャンカールで、この2人は異母姉妹です。なお、ラヴィ・シャンカールの演奏は、ジョージ・ハリスンの呼びかけで行われた飢饉救済コンサートのドキュメンタリー映画「バングラデシュ・コンサート」 ('71年/米)のコンサートのオープニングで見ることができます(ラヴィ・シャンカールはジョージ・ハリスンのシタールの師匠だった)。

死刑台のエレベーター2.jpg 「死刑台のエレベーター」('57年/仏)は、ルイ・マル25歳の時の実質的な監督デビュー作で、主人公のモーリス・ロネとジャンヌ・モローが不倫関係の末、殺人を犯すというもので、サスペンス映画としても良く出来ていると思いますが、恋人モーリス・ロネからの連絡が無く、不安の裡にパリの街を彷徨うジャンヌ・モローの姿にマイルス・デイヴィスのトランペットが被り、何とも言えないムードを醸しています。同じルイ・マル監督の「鬼火」における、エリック・サティのピアノも良く(この作品はベスト150には入ってませんが)、映像と音楽を結びつける才能があった監督でした。


禁じられた遊び  .jpg禁じられた遊び3.jpg「禁じられた遊び」●原題:JEUX INTERDITS●制作年:1952年●制作国:フランス●監督:ルネ・クレマン●脚本:ジャン・オーランシュ/ピエール・ポスト●撮影:ロバート・ジュリアート●音楽:ナルシソ・イエペス●原作:フランソワ・ボワイエ●時間:86分●出演:ブリジッド・フォッセー/ジョルジュ・プージュリー/スザンヌ・クールタル/リュシアン・ユベール/ロランヌ・バディー/ジャック・マラン●日本公開:1953/09●配給:東和●最初に観た場所:早稲田松竹 (79-03-06)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター (83-09-15)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「鉄道員」(ピエトロ・ジェルミ)●併映(2回目):「居酒屋」(ルネ・クレマン)

フランスの思い出  7.jpg「フランスの思い出」 00_.jpg「フランスの思い出」●原題:LE GRAND CHEMIN●制作年:1987年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=ルー・ユベール●製作:パスカル・オメ/ジャン・フランソワ・ルプティ ●撮影:クロード・ルコント●音楽:ジョルジュ・グラニエ●時間:91分●出演:アネモーネ/リシャール・ボーランジェ/アントワーヌ・ユベール/ヴァネッサ・グジ/クリスチーヌ・パスカル/ラウール・ビイレー●日本公開:1988/08●配給:巴里映画●最初に観た場所:五反田TOEIシネマ (89-08-26)(評価:★★★★)●併映:「人生は長く静かな河」(エティエンヌ・シャティリエ)
五反田TOEIシネマ 2.jpg五反田TOEIシネマ79.jpg五反田TOEIシネマ.jpg五反田TOEIシネマ 3.jpg五反田TOEIシネマ/(跡地=右岸)「五反田東映」をを分割して1977(昭和52)年12月3日オープン、1990(平成2)年9月30日「五反田TOEIシネマ」閉館(1995年3月21日「五反田東映」閉館)

「小さな悪の華」 映画.jpg小さな悪の華.jpg小さな悪の華2.jpg「小さな悪の華」●原題:MAIS NE NOUS DELIVREZ PAS DU MAL●制作年:1970年●制作国:フランス●監督・脚本:ジョエル・セリア●撮影:マルセル・コンブ●音楽:ドミニク・ネイ●時間:103分●出演:ジャンヌ・グーピル/カトリーヌ・ワグナー/ベルナール・デラン/ミシェル・ロバン●日本公開:1972/03●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:中野武蔵野館 (77-12-12)(評価:★★★☆)●併映:「ザ・チャイルド」(ナルシソ・イバネ・セッラドール)
中野武蔵野ホール.jpg中野武蔵野ホール 地図.jpg中野武蔵野ホール内.jpg中野武蔵野館 (後に中野武蔵野ホール) 2004(平成16)年5月7日閉館
           
           
Pather Panchali(1955)
Pather Panchali(1955).jpg大地のうた3部作 dvd.jpg「大地のうた」●原題:PATHER PANCHALI●制大地のうた 1955.jpg作年:1955年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:125分●出演:カヌ・バナールジ/コルナ・バナールジ/スピール・バナールジ●日本公開:1966/10●配給ATG●最初に観た場フィルムセンター旧新 .jpg京橋フィルムセンター.jpg:所:京橋フィルムセンター (80-07-08)●2回目:池袋テアトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映(2回目)「大河のうた」「大樹のうた」(サタジット・レイ)

旧・京橋フィルムセンター(東京国立近代美術館フィルムセンター) 1970年5月オープン、1984(昭和59)年9月3日火災により焼失、1995(平成7)年5月12日リニューアル・オープン。 
        
「大河のうた」.jpg大河のうた.jpg大河のうた   .jpg「大河のうた」●原題:APARAJITO●制作年:1956年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:110分●出演:ピナキ・セン・グプタ/スマラン・ゴシャール/カヌ・バナールジ/コルナ・バナールジ ●日本公開:1970/11●配給:ATG●最初に観た場所:池袋テア大樹のうた p.jpgトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映「大地のうた」「大樹のうた」(サタジット・レイ)

大樹のうた.jpg大樹のうた        .jpg「大樹のうた」●原題:APUR SANSAR●制作年:1958年●制作国:インド●監督・脚本:サタジット・レイ●撮影:スブラタ・ミットラ●音楽:ラヴィ・シャンカール●原作:ビブーティ・ブーション・バナージ●時間:105分●出演::ショウミットロ・チャテルジー /シャルミラ・タゴール/スワパン・ムカージ/アロク・チャクラバルティ●日本公開:1974/02●配給:ATG●最初に観た場所:池袋テアトルダイヤ (85-11-30)(評価:★★★★☆)●併映「大地のうた」「大河のうた」(サタジット・レイ)

「死刑台のエレベーター」『死刑台のエレベーター』 CD
死刑台のエレベーター パンフ.jpg死刑台のエレベーター.jpg「死刑台のエレベーター」●原題:ASCENSEUR POUR L'ECHAFAUD●制作年:1957年●制作国:フランス●監督:ルイ・マル●製作:ジャン・スイリエール●脚本: ロジェ・ニミエ/ルイ・マル●撮影:アンリ・ドカエ●音楽:マイルス・デイヴィス●原作:ノエル・カレフ●時間:95分●出演:モーリス・ロネ/ジャンヌ・モロー/ジョルジュ・プージュリー/リノ・ヴァンチュラ/ヨリ・ヴェルタン/ジャン=クロード・ブリアリ/シャルル・デネ●日本公開:1958/09●配給:ユニオン●最初に観た場所:新宿アートビレッジ (79-02-10)●2回目:高田馬場・ACTミニシアター(82-10-03)(評価:★★★★☆)●併映(1回目):「大人は判ってくれない」(トリュフォー) 

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多少マニアックな映画ファンが楽しんで読めるヒッチコック入門書。 

ヒッチコック.jpg  ヒッチコック2.jpg 白い恐怖 チラシ.jpg
ヒッチコック』 講談社現代新書 〔'86年〕/筈見 有弘 (1937-1997/享年59)/「白い恐怖 [DVD]」チラシ
ヒッチコック2.jpg
 ヒッチコックぐらい、その多くの作品が日本で見られる外国の監督はいないのではないでしょうか。例えば双葉十三郎『外国映画ぼくの500本』('03年/文春新書)でも、結果として作品数的にはヒッチコック作品が最も多く取り上げられていたし、自分自身も、劇場で見たものだけで20本を超えます(しかもハズレが少ない)。本書はそうしたヒッチコック映画の数々を、ストーリーや状況設定、小道具や出演女優など様々な角度から分析し、よく使われる「共通項」をうまく抽出しています。

『白い恐怖』(1945)2.jpgsiroikyouhu3.jpg  例えば、白と黒の縞模様を見ると発作を起こす医師をグレゴリー・ペック、彼を愛し発作の原因を探りだそうとする精神科医をイングリッド・バーグマンが演じた「白い恐怖」(原作はフランシス・ヒーディングの『白い恐怖』、本国での発表は1927年)では、グレゴリー・ペックの見る夢のシーンで用いられたサルバドール・ダリによるイメージ構成にダリの実験映画と同じような表現手法が見出せましたが(これにテルミンの音楽が被る)、この部分はあまりにストーレートで杓子定規な精神分析的解釈で、個人的にはさほどいいとは思えず、著者も「本来のヒチコックの映像造形とはかけ離れている」としています。

「白い恐怖」より(イメージ構成:サルバドール・ダリ)
    
白い恐怖 イングリッド・バーグマン.jpg  一方、イングリッド・バーグマンがはじめはメガネをかけていたことにはさほど気にとめていませんでしたが、他の作品では眼鏡をかけた女性が悪役で出てくるのに対し、この映画では、一見冷たさそうに見える女性が、恋をすると情熱的になることを効果的に表すために眼鏡を使っているとのことで、ナルホドと(イングリッド・バーグマンはこの作品で「全米映画批評家協会賞」の主演女優賞を受賞)。

 同じ小道具へのこだわりでも、その使い方は様々なのだなあと感心させられました(ただし、眼鏡をかけたイングリッド・バーグマンもまた違った魅力があり、ヒッチコックという人は、元祖「眼鏡っ子」萌え―だったかもと思ったりもして...。

マーニー 01.jpgマーニー 02.jpg 一方、「白い恐怖」と同様に精神分析の要素が織り込まれていたのが「マーニー」('64年)でした(日本では「マーニー/赤い恐怖」の邦題でビデオ発売されたこともある)。ある会社の金庫が破られ、犯人は近頃雇い入れたばかりの女性事務員に違いないとういうことになるが、当の彼女はその頃ホテルでブルネットの髪を洗って黒い染髪料を洗い流すとブロンドに様変わり。よって、その行方は知れない―幼児期の体験がもとで盗みを繰り返し、男性やセックスにおびえる女性マーニーを「鳥」('63年)のティッピ・ヘドレンが演じ(彼女も血筋的にはバーグマンと同じ北欧系)、彼女と結婚して彼女を救おうとする夫を「007 ロシアより愛をこめて」('63年)のショーン・コネリーが演じていますが、夫が妻を過去と対峙させてトラウマから解放する手法が精神分析的でした(夫は単なる金持ちの実業家で、精神分析ではないのだが)。

マーニー bul.jpg 著者はこの映画を初めて観たとき、ブルネットのときは盗みを働き、ブロンドの時は本質的に善であるマーニーから、ヒッチコックのブロンド贔屓もずいんぶん露骨だと思ったそうです。「裏窓」('54年)のグレース・ケリー、「めまい」('58年)のキム・ノヴァクも確かにブロンだしなあ。今まで観たことのある作品もナルホドという感じで、次にもう一度観る楽しみが増えます。
"Spellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladies (English Edition)"
Spellbound by Beauty.jpg 本書179pに、ティッピ・ヘドレンはグレース・ケリーをしのぐほどにクールなブロンド美女で、「生来の内気さを失ったヒッチコックは、彼女に言いよったが、彼女の方では相手にしなかったという噂もある」とありザ・ガール ヒッチコックに囚われた女.jpgますが、実際セクハラまがいのこともしたようです(ヒッチコックによるヘドレンへのセクハラを描いたドナルド・スポトの『Spellbound by Beauty: Alfred Hitchcock and His Leading Ladies』が、2012年に米・英・南アフリカ合作のテレビ映画「ザ・ガール ヒッチコックに囚われた女」としてトビー・ジョーンズ、シエナ・ミラー主演で映像化されていて、2013年にスター・チャンネルとWOWOWで放送されたようだが、個人的には未見)。
     
ヒッチコック アートプリント(Alfred Hitchcock Collage)
ヒッチコック アートプリント.jpg 著者なりの作品のテーマ分析もありますが、「すべてエンターテイメントのために撮った」というヒチコックの言葉に沿ってか、それほど突っ込んで著者の考えを展開しているわけではありません。

 むしろ映像として、あるいは音として表されているものを中心に、ヒッチコックのこだわりを追っていて、映画ファンというのは誰でも多少マニアックなところがあるかと思うのですが、そうしたファンが楽しんで読めるヒチコック入門書になっています。

映画術 フランソワ トリュフォー.jpg 因みに、映画監督のフランソワ・トリュフォーによるヒッチコックへのインタビュー集『映画術―ヒッチコック・トリュフォー』('81年/晶文社)では、ヒッチコックは、「バーグマンは私の演出を好まなかった。私は議論が嫌だったから、"イングリッド、たかが映画じゃないか"と言った。彼女は名作に出ることだけを望んだ。製作中の映画が名作になるかならないかなんて誰がわかる?」とボヤいています。ヒッチコックは当初バーグマンに特別な感情を抱いていたため、バーグマンとイタリア人監督ロベルト・ロッセリーニとの不倫劇はヒッチコックを大いに失望させたそうで、その辺りがこうしたコメントにも反映されているのかもしれません。ヒッチコックはバーグマンを「白い恐怖」('45年)、「汚名」('46年)、「山羊座のもとに」('49年)の3作で使っていますが、バーグマンとロッセリーニが正式に結婚した1950年以降は使っていません(ヒッチコックがバーグマンに"たかが映画じゃないか"と言ったのは「山羊座のもとに」撮影中のことだが、これはヒッチコックの口癖でもあったらしく、「サイコ」('60年)の主演女優のジャネット・リーにも同じことを言い、「そう、たかが映画よね。たった45秒のシーンのために、監督は8日間カメラを回し、70回カメラアングルを変えたわ」と切り返されたそうだ)。

 しかし、ともあれ、あのヒッチコックが"たかが映画じゃないか"と言ったというのが面白く、この言葉は、山田宏一、和田誠両氏の共著のタイトルになっています(『たかが映画じゃないか』('78年/文藝春秋))。

白い恐怖 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)」「白い恐怖 [DVD]
白い恐怖 (ハヤカワ・ポケット・ミステリ).jpg白い恐怖 イングリッド・バーグマン/グレゴリー・ペック.jpg白い恐怖.jpg 「白い恐怖」●原題:SPELLBOUND●制作年:1945年●制作国:アメリカ●監督:アルフレッド・ヒッチコック●製作:デヴィッド・O・セルズニック●脚本:ベン・ヘクト/アンガス・マクファイル●撮影:ジョージ・バーンズ●音楽:ミクロス・ローザ●原作:フランシス・ビーディング(ジョン・パーマー/ヒラリー・エイダン・セイント・ジョージ・ソーンダーズ)●時間:111分●出演:イングリッド・バーグマン/グレゴリー・ペック/レオ・G・キャロル/ロンダ・フレミング/ジョン・エメリー/ノーマン・ロイド/ビル・グッドウィン ●日本公開:1951/11●配給:ユナイテッド・アーティスツ●最初に観た場所:三鷹オスカー (83-10-22) (評価:★★★☆)●併映:「めまい」「レべッカ」(アルフレッド・ヒッチコック)
マーニー [DVD]
マーニー 1964.jpgマーニー 05.jpg「マーニー(マーニー/赤い恐怖)」●原題:MARNIE●制作年:1964年●制作国:アメリカ●監督・製作:アルフレッド・ヒッチコック●脚本:ジェイ・プレッソン・アレン●撮影:ロバート・バークス●音楽:バーナード・ハーマン●原作:ウィンストン・グレアム「マーニー」●時間:130分●出演:ショーン・コネリー/ティッピー・ヘドレン/マーティン・ガベル/ダイアン・ベイカー/ルイーズ・「マーニー」ヒッチ2.pngラサム/アラン・ネイピア/マリエット・ハートレイ/キンバリー・ベック/ブルース・ダーン●日本公開:1964/08●配給:ユニバーサル・ピクチャーズ(評価:★★★☆)

《読書MEMO》
●ヒチコックは「間違えられた男」の話が好き...暗殺者の家・三十九夜・弟3逃亡者・断崖・間違えられた男・泥棒成金・北北西に進路を取れ・フレンジー...
●偏執狂的小道具演出法...
・チキン料理(断崖・ロープ・知りすぎていた男)
・眼鏡をかけた女(弟3逃亡者・北北西に進路を取れ・三十九夜・断崖・白い恐怖・知りすぎていた男)
・イニシャル入りライター(見知らぬ乗客)など

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平易な言葉で"モンタージュ"技法などの「感動」させる仕組みを解き明かしている。

映画芸術への招待2.jpg  自転車泥棒.jpg 自転車泥棒b.jpg ランベルト・マジョラーニ(右)
映画芸術への招待 (1975年)』講談社現代新書「自転車泥棒 [DVD]

『自転車泥棒』(1948) 2.jpg ビットリオ・デ・シーカ監督に「自転車泥棒」('48年/伊)という名画があり、世界中の人を感動させたわけですが、実際自分がフィルムセンター(焼失前の)でこの作品を観たときも、上映が終わって映画館から出てくる客がみんな泣いていました。

zitensha.jpg この映画の主人公を演じたランベルト・マジョラーニは、演技においては全くのズブの素人だったとのことで、ではなぜ、そんな素人が演じた映画が名画たりえたかと言うと、それは"モンタージュ"によるものであるとして、著者は、その"モンタージュ"という「魔法」を、この本でわかり易く解説しています(素人の演技が何故世界中の人々を泣かせるのかという導入自体がすでに"モンタージュ"の威力を示しており、効果的なイントロだと言える)。

東京物語.jpg つまり映画とは"断片"から構成されるもので、例えば小津安二郎の映画は、1分間に平均10カットあり、役者は6秒間だけ演技を持続すればよい―、となると、役者の演技力の持続性は求められないわけです。そして、「現実」を映すだけの映画が「芸術」になりうるのは、まさにこのモンタージュにはじまる技法によるもので、本書ではそうした技法の秘密を、具体的に良く知られている内外の作品に触れながら解説しています。

 モンタージュ技法を最初に完成させたと言われるのが「戦艦ポチョムキン」('25年/ソ連)のセルゲイ・エイゼンシュテインですが、日本公開は昭和42年だったものの、作られた年代(大正14年)を考えるとスゴイ作品です。

 「戦艦ポチョムキン」.jpg 「戦艦ポチョムキン [DVD]

『戦艦ポチョムキン』(1925)2.jpg『戦艦ポチョムキン』(1925)1.jpg

イワン雷帝(DVD).jpgイワン2.jpgイワン1.jpg エイゼンシュテインは更に歌舞伎の影響を強く受け、結局「イワン雷帝」(第1部'44年/第2部'46年/ソ連)などはその影響を受け過ぎて歌舞伎っぽくなってしまったとのことですが、確かに、あまりに大時代的で自分の肌に合わなかった...(この映画、ずーっと白黒で、第2部の途中からいきなり極彩色カラーになるのでビックリした。「民衆の支持を得た独裁者」というパラドクサルな主題のため、時の独裁者スターリンによって公開禁止になった作品。第3部は未完)。そのエイゼンシュテインに影響を与えた歌舞伎は、実は人形浄瑠璃の影響を受けているというのが興味深く、まさに「自然は芸術を模倣する」(人が人形の動きを真似する)という言葉の表れかと思います。

 日本映画「白い巨塔」で、田宮二郎演じる主人公が執刀する手術の場面と教授選の場面が交互に出てくるシーンや、「砂の器」で、最後のピアノ演奏会と刑事の逮捕状請求場面と海辺をさすらう主人公の幼年時代がトリプル・ラッシュするのも、モンタージュ技法であると。三四郎.jpg八月の光.jpg更に、詩人である著者は、詩や小説にも同様の技法が用いられていることを示唆していて、フォークナーの『八月の光』と漱石の『三四郎』において、同じようなモンタージュ的表現が使われていることを指摘しています。

 難解になりがちな映像美学に関するテーマを扱いながら、終始平易な言葉で「感動」の仕組みを解き明かしていて、映画鑑賞に新たな視点を提供してくれる本だと思います。

Jitensha dorobô (1948)
Jitensha dorobô (1948).jpg
『自転車泥棒』(1948).jpg自転車泥棒2.jpg「自転車泥棒」●原題:LADRI DI BICICLETTE●制作年:1948年●制作国:イタリア●監督・製作:ビットリオ・デ・シーカ●脚本:チェーザレ・ザヴァッティーニ/オレステ・ビアンコーリ/スーゾ・チェッキ・ダミーコ/アドルフォ・フランチ/ジェラルド・グェリエリ●撮影:カルロ・モンテュオリ●音楽:アレッサンドロ・チコニーニ●原作:ルイジフィルムセンター旧新 .jpg・ バルトリーニ●時間:93分●出演:ランベルト・マジョラーニ/エンツォ・スタヨーラ/ジーノ・サルタメレンダ/リアネッラ・カレル/ヴィットリオ・アントヌッチ/エレナ・アルティエリ●日本京橋フィルムセンター.jpg公開:1950/08●配給:イタリフィルム●最初に観た場所:京橋フィルムセンター(78-11-30) (評価:★★★★)
旧・京橋フィルムセンター(東京国立近代美術館フィルムセンター) 1970年5月オープン、1984(昭和59)年9月3日火災により焼失、1995(平成7)年5月12日リニューアル・オープン。

戦艦ポチョムキン.jpg 「戦艦ポチョムキン」●原題:IVAN THE TERRIBLE IVAN GROZNYI●制作年:1925年)●制作国:ソ連●監督:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン●脚本:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン/ニーナ・アガジャノヴァ・シュトコ●撮影:エドゥアルド・ティッセ●音楽:ニコライ・クリューコフ●時間:66分●出演:アレクサンドル・アントノーフ/グリゴーリ・アレクサンドロフ/ウラジミール・バルスキー/セルゲイ・M・エイゼンシュテイン●日本公開:1967/10●配給:東和=ATG●最初に観た場所:武蔵野推理(78-12-18)●2回目:池袋文芸坐 (79-04-11) (評価:★★★★)●併映(1回目):「兵士トーマス」(スチュアート・クーパー)●併映(2回目):「イワン雷帝」(セルゲイ・エイゼンシュタイン) 「戦艦ポチョムキン [DVD]

イワン4.jpgイワン3.jpg 「イワン雷帝」●原題:IVAN THE TERRIBLE IVAN GROZNYI●制作年:1946年(第1部・1944年)●制作国:ソ連●監督・脚本:セルゲイ・M・エイゼンシュテイン●撮影:アンドレイ・モスクヴィン/エドゥアルド・ティッセ ●音楽:セルゲイ・プロコフィエフ●時間:209分●出演:ニコライ・チェルカーソフ/リュドミラ・ツェリコフスカヤ/セラフィマ・ビルマン/パーヴェル・カドチニコフ/ミハイル・ジャーロフ●日本公開:1948/11●配給:東和●最初に観た場所:池袋文芸坐 (79-04-11) (評価:★★★)●併映:「戦艦ポチョムキン」(セルゲイ・エイゼンシュタイン)

杉山平一2.jpg 杉山 平一(すぎやま へいいち、1914年11月2日 - 2012年5月19日)詩人、 映画評論家。2012年5月19日、肺炎のため死去。97歳。

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シナリオだが(一部、書き起こしあり)読んでそのままに面白く、またヴィヴィッドな印象。

ゴダール全集.jpg「スタジオ・ボイス」1994年2月号特集.jpg勝手にしやがれ.jpg 勝手にしやがれ10.jpg 
ゴダール全集〈3〉ゴダール全シナリオ集 (1970年)』/「Studio Voice」1994.02 ゴダール特集/「勝手にしやがれ」(1959)

ゴダール全集1 .jpg ゴダールの'60年代までの作品の全シナリオを収録したもので、映画が難解なイメージがあるわりには、本として読んでそのままにa bout de souffle.jpg面白いものが多く、またヴィヴィッドな印象を受けるのが意外かも知れません。よく知られているところでは、ジーン・セバーグ、ジャン=ポール・ベルモンド主演の「勝手にしやがれ」('59年)、アンナ・カリーナ、ベルモント主演の「気狂いピエロ」('65年)などの初期作品でしょうか。スチール写真が適度に配置され、読むと再度見たくなり、未見作品にも見てみたくなるものがありました。
ゴダール全集〈1〉ゴダール全シナリオ集 (1971年)
「勝手にしやがれ」('59年)/ 1978年公開時チラシ/DVD
『勝手にしやがれ』(1959).jpg勝手にしやがれ 1978年公開時チラシ.jpg勝手にしやがれ2.jpg 「勝手にしやがれ」の一応のあらすじは―、自動車泥棒のミシェル(ジャン=ポール・ベルモント)が、警官を殺してパリに逃げ、アメリカ人のパトリシア(ジーン・セバーグ)と互いに束縛しない関係を楽しんでいたところ、その『勝手にしやがれ』(1959)2.jpgパトリシアはミシェルとの愛を確認するため、ミシェルの居所をわざと警察に密告する―というもので、この不条理に満ちた話のオリジナル作者はフランソワ・トリュフォーですが、最終シナリオはゴーダルの頭の中にあったまま脚本化されずに撮影を開始したとのこと。台本無しの撮影にジャン=ポール・ベルモントは驚き、「どうせこの映画は公開されないだろうから、だったら好きなことを思い切りやってやろう」と思ったという逸話があります(1960年・第10回ベルリン国際映画祭「銀熊賞(監督賞)」受賞作)。

「気狂いピエロ」 ('65年)1983年公開時チラシ/DVD
気狂いピエロ(ポスター).jpg気狂いピエロ (1965/仏).jpg『気狂いピエロ』(1965) 2.jpg『気狂いピエロ』(1965).jpg「気狂いピエロ」 (65年/仏).jpg『気狂いピエロ』(1965) 3.jpg「気狂いピエロ」は―、フェルディナン(ジャン=ポール・ベルモント)という男が、イタリア人の妻とパーティに行くが、パーティに退屈し戻ってきた家で、昔の恋人マリアンヌ(アンナ・カリーナ)と再会し、成り行きで彼女のアパートに泊まった翌朝、殺人事件に巻き込まれて、2人は逃避行を繰り返す羽目に。フェルディナンは孤島での生活を夢見るが、お互いにズレを感じたマリアンヌが彼を裏切って情夫の元へ行ったため、フェルディナンは彼女と情夫を射殺し、彼も自殺するというもの(1965年・第26回ヴェネチア国際映画祭「新鋭評論家賞」受賞作)。

 脚本を先に読み、なかなかがいいと思いましたが、映像はほぼそれを裏切らなかったと思います(「勝手にしやがれ」よりギャング映画的な娯楽性を感じるが、前衛性はやや後退する)。これ、日本語タイトルはテレビコードにひっかかるのか、'89年テレビ放映時のタイトルは、原題のフランス語をカタカナ読みにした「ピエロ・ル・フ」になっていました。

「女と男のいる舗道」 ('62年)
「女と男のいる舗道」.jpg女と男のいる舗道2.jpg女と男のいる舗道.jpg "シナリオ"集といっても、この2つの作品やアンナ・カリーナ主演の「女と男のいる舗道」('62年)などは、蓮實重彦氏など本書の翻訳陣が映画を採録し、シナリオのスタイルに「再構成」したものです(「女と男のいる舗道」にはアドリブで撮られている箇所が幾つかある)。

ジャン=リュック・ゴダール 「女と男のいる舗道」 (62年/仏) ★★★★☆

 団地妻の売春という"予想外"の素材を扱った「彼女について私が知っている二、三の事柄」('66年)というのもありましたが、主婦が中産階級の生活を維持するためにパートタイムで売春するという話をドキュメンタリータッチで描いたもので(事実を基にしているらしい)、フランソワ・トリュフォーが共同製作ですが、それほど面白い作品でもなく、ゴダールの意図も個人的には読めませんでした。所収の作品で最後に見たのが政治的メッセージの強い「ヴェトナムから遠く離れて」('67年)あたり、本書所収以外ではローリング・ストーンズの名曲「悪魔を憐れむ歌」のレコーディング風景の記録映画「ワン・プラス・ワン」('68年)あたりまでで、更に政治的実験映画とも言える「ヒア&ゼアこことよそ」('76年)なども観ましたが(ドキュメンタリーだが、これは良かった。但し、観直す機会がなかなか無い)、その後はもう短編しか撮らないのかと思ったら、長篇劇映画「勝手に逃げろ/人生」('79年)で商業映画に復帰、80年代に入ってからも、「パッション」('82年)、「カルメンという名の女」('83年)と次々に発表し、「カルメンという名の女」ではヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を獲っています。

「勝手にしやがれ」p.jpg「勝手にしやがれ」●原題:A BOUT DE SOUFFLE(英:BREATHLESS)●制作年:1959年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●原作・原案・脚本:フランソワ・トリュフォー●撮三百人劇場2.jpg三百人劇場.jpg影:ラウール・クタール●音楽:マルチアル・ソラール●時間:95分●出演:ジャン=ポール・ベルモント/ジーン・セバーグ●日本公開:1960/03●配給:新外映●最初に観た場所:三百人劇場 (78-07-25) (評価★★★★)●併映:「ヒア&ゼア・こことよそ」(ジャン=リュック・ゴダール) 三百人劇場(文京区・千石駅付近)2006(平成18)年12月31日閉館
Kichigai Piero (1965)
Kichigai Piero (1965).jpg
気狂いピエロ s.jpg「気狂いピエロ」●原題:PIERROT LE FOU●制作年:1965年●制作国:フランス●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●製作:ジョルジュ・ド・ボールガール●撮影:ラウール・クタール●音楽:アントワース・デュアメル●原作:ライオネル・ホワイト「十一時の悪魔」●時間:109気狂いピエロ Pierrot Le Fou.jpg分●出演:ジャン=ポール・ベルモンド/アンナ・カリーナ/サミュエル・フラー /レイモン・ドボス/グラツィエッラ・ガルヴァーニ/ダーク・サンダース/ジミー・カルービ/ジャン=ピエール・レオ/アイシャ・アバディ/ラズロ・サボ●日本公開:1967/07●配給:セントラル●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★★)●併映:「彼女について私が知っている二、三の事柄」(ジャン=リュック・ゴダール)

「彼女について私が知っている二、三の事柄」●原題:2 OU 3 CHOSES QUE JE SAIS D'ELLE●制作年:1966年●制彼女について私が知っている二、三の事柄.jpg作国:フランス・イタリア●監督・脚本:ジャン=リュック・ゴダール●撮影:ラウール・クタール●音楽:ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン●原案:カトリーヌ・ヴィムネ●時間:90分●出演:ジョゼフ・ジェラール/マリナ・ヴラディ/アニー・デュプレー/ロジェ・モンソレ/ラウール・レヴィ/彼女について私が知っている二、三の事柄01.jpgジャン・ナルボニ/イヴ・ブネトン/エレナ・ビエリシック/クリストフ・ブルセイエ/マリー・ブルセイエ/マリー・カルディナル/ロベール・シュヴァシュー/ジャン=リュック・ゴダール(ナレーション)●日本公開:1970/10●配給:フランス映画社●最初に観た場所:有楽シネマ (83-05-28) (評価★★★)●併映:「気狂いピエロ 」(ジャン=リュック・ゴダール)
マリナ・ヴラディ/アニー・デュプレー
TOP 彼女について私が知っている二、三の事柄5.jpg
  
有楽シネマ 1991頃.jpg銀座シネ・ラ・セット  .jpg銀座シネ・ラ・セット.jpg有楽シネマa.jpg有楽シネマ  (1955年11月14日オープン、1994年12月休館、1995年6月16日~シネマ有楽町(成人映画上映館)、1996年~銀座シネ・ラ・セット、159席) 2004(平成16)年1月31日閉館  跡地に建設のイトシアプラザ内に2007年10月シネカノン有楽町2丁目オープン、2009年12月4日ヒューマントラストシネマ有楽町に改称

有楽シネマ(シネ・ラ・セット)解体工事〔2004〕/イトシアプラザ内ヒューマントラストシネマ有楽町[シアター1(16有楽シネマ解体9.jpg2席)・シアター2(63席)]
ヒューマントラストシネマ有楽町.jpgヒューマントラストシネマ有楽町 sinema2.jpg 
     
ゴダール全シナリオ集2.jpg 
  
《読書MEMO》
●ゴダール全シナリオ集・収録作品
Ⅰ 水の話・シャルロットと彼女のジュール・勝手にしやがれ・小さな兵隊・女は女である・立派な詐欺師・カラビニエ
Ⅱ 怠惰の罪・女と男のいる舗道・軽蔑・恋人のいる時間・未来展望・気狂いピエロ
Ⅲ アルファヴィル・男性女性・メイドインUSA・彼女について私が知っている二三の事柄・ヴェトナムから遠く離れて・中国女・ウィークエンド
 『ゴダール全集〈2〉ゴダール全シナリオ集 (1971年)

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休刊最終号の1つ前の号。いろいろあったが「再々創刊」された!

「映画秘宝」2204.jpg 映画秘宝 2024年 03 月号.jpg 「ブリット」1968.jpg 「ブリット」10.jpg
映画秘宝 2022年4月号 [雑誌]』(双葉社)『映画秘宝 2024年3月号 [雑誌] 』(秘宝新社)「ブリット」スティーブ・マックイーン
 月刊「映画秘宝」が、約2年の休刊期間を経て昨年['23年]12月、新たに設立された「合同会社秘宝新社」が雑誌の権利を取得し、今年['24]年1月19日発売の3月号から、月刊誌として約2年ぶりに「再々創刊」されています。

映画秘宝 エド・ウッドとサイテー映画の世界』['95年/洋泉社]『映画宝島 発進準備イチかバチか号』['90年/JICC出版局]
「映画秘宝」創刊.jpg「映画宝島」1990.jpg町山智浩.jpg 雑誌「映画秘宝」のあらましを辿ると、1995年に洋泉社で創刊、初代編集者は、今は映画評家として知られる町山智浩氏で、JICC(ジック)出版局(現・宝島社)に早稲田の学生バイトからそのまま入社した後に洋泉社に出向し、そこで「映画秘宝」の流れにつながる「映画宝島」('90年創刊)シリーズを企画しています。1996年に町山氏が退職し、田野辺尚人氏が2代目編集長として刊行を継続、田野辺氏は1993年に思潮社の編集者から洋泉社に転じた人です(このように洋泉社は宝島社との人的交流があったこともあり、1998年に宝島社の子会社となった)。

 「映画秘宝」は、当初「不定期刊」だったのが、1999年5月にA4版の「隔月刊」映画雑誌としてリニューアル、2009年から「月刊」化されています。2020年2月1日付で洋泉社が宝島社に吸収合併され解散するのに伴い、宝島社では継続発行せず、2020年3月号をもって休刊となり、その後、休刊時の編集長だった岩田和明氏が新たに発足させた「合同会社オフィス秘宝」が「映画秘宝」の商標権を取得、岩田氏が編集長として同社による編集、双葉社が発行する形で同年4月発売の6月号より復刊、ただし、それも、岩田氏の「恫喝DM問題」などを経て、2022年3月発売の5月号で、双葉社の刊行物としては休刊しています(休刊時の「合同会社オフィス秘宝」代表は田野辺氏、相談役は町山氏)。

「映画秘宝」2204.jpg「映画秘宝」22042.jpg 本誌2022年4月号は、その双葉社刊の最終号の1つ前の号となり、(表紙は'22年公開の「THE BATMAN-ザ・バットマン-」だが)特集名「映画猛者101人が選ぶ、2022年オールタイム映画ベストテン!」として、巻頭に町山智浩氏と平山夢明氏の「映画秘宝オールタイム・ベストテンを語る」という対談があり、メインで「深堀り!マイ・ベスト・オールターム映画」という特集を組んでいます。ここでは、「モダン・アメリカン・カルト映画マイ・ベスト」「日本のカルト映画マイベスト」「ヨーロッパのカルト映画ベストテン」といった感じで30ジャンルに渡って、それぞれのジャンルにこだわりを持つ評論家や識者などが選評しています。いきなりカルト映画がきて、その後に西部劇とか時代劇とやくざ映画とかがくるのが、この雑誌らしいかもしれません。


「ブリット」映画秘宝.jpg「ブリット」00.jpg 「モダン・アメリカン・カルト映画マイ・ベスト」で「パルプフィクション」などをベスト10に挙げていた町山智浩氏が、「カーチェイス映画オールタイムベスト10」で、ピーター・イェーツ監督の「ブリット」('68年)を挙げています。

「ブリット」040.jpg「ブリット」01.jpg サンフランシスコ市警察本部捜査課のブリット警部補(スティーブ・マックイーン)は、チャルマース上院議員(ロバート・ヴォーン)から裁判の重要証言者の保護を命じられる。その証言者とは、ジョー・ロスというマフィア組員。ロスは組の金を横領し、ヒットマンから狙われたために、司法取引によってマフィアを潰す証人となることで身の安全を図ったのだ。しかし、証人は何者かに、殺されもう一人の刑事も重傷を負ってしまう。ブリットは、証人が生きている、という偽の情報を流し、殺し屋を誘き寄せる作戦に出るが―。

 「ブリット」は、スティーブ・マックイーンが1968年式フォードムスタング・マッハワンで殺し屋の車を追ってサンフランシスコの旧坂を爆走して、ハリウッド映画にカーチェイス革命を起こしたとしています。この映画はジャクリーン・ビセットなども出てたりしますが、プロット的にも良かったのではないでしょうか。個人的にはカーチェイスは確かにすごいですが、改めて観ると、アクションだけの映画でなかったことに気づかされます(カーチェイスは「当時としては」革命的だったということだろう)。

「バニシングポイント」2.jpg それと、町山氏は「バニシング・ポイント」('71[「バニシングポイント」.jpg年)も挙げていますが、こちらの方がクルマ主体かも。1971年製「白」のダッチ・チャージャー(「ブリット」でカーチェイスの相手となった悪役がこれの1968年式「黒」に乗っていた)を陸送でコロラドからサンフランシスコに出来るだけ早く届ける賭けをした元レーサーのコワルスキー(ハリー・ニューマン)の話で、町山氏は「哲学映画」としています。個人的にはずっと観れないでいたのが、昨年['23年]4Kデジタルリマスター版を劇場で見ることが出来ました。
  
 「日本の怪獣映画のベストテン」で切通理作氏(1964年生まれ)が、「ゴジラ」('54年)を第5位とし、その上に第4位で「モスラ」('61年)がきていて、さらに上に第2位で「モスラ対ゴジラ」('61年)がきているというのが分かる気がしました(「ゴジラ」の5位は、白黒作品のため70年代にあまりテレビ放映されず、やっと観たのが小学4年だったことに起因すると)。一方、「ゴジラ対へドラ」('71年)を第6位にしていますが、小2の時初めて観たゴジラ映画がこの作品だったとのこと。幼少期にリアルタイムで観たものの方が相対的に記憶に残るというのはあるなあと思いました。


「ブリット」000.jpg「ブリット」●原題:BULLITT●制作年: 1968年●制作国:アメリカ●監督:ピーター・イェーツ●製作:フィリップ・ダントーニ●脚本:アラン・R・トラストマン/ハリー・クライナー●撮影:ウィリアム・A・フレイカー●音楽:ラロ・シフリン●原作:ロバート・L・フィッシュ●時間:113分●出演:スティーブ・マックイー「ブリット」ビセット.jpg「ブリット」rd.jpgン/ジャクリーン・ビセット/ロバート・ヴォーン/ドン・ゴード/ロバート・デュヴァル/サイモン・オークランド/ノーマン・フェル/ジョーグ・スタンフォード・ブラウン●日本公開:1968/12●配給:ワーナー・ブラザース=セヴン・アーツ●最初に観た場所:池袋・文芸坐(80-07-16)●2回目:Bunkamuraル・シネマ渋谷宮下(23-10-02)(評価:★★★★)●併映:1回目「華麗なる賭け」(ノーマン・ジュイソン)
ワーナー・ブラザース創立100周年記念上映"35ミリで蘇る ワーナーフィルムコレクション"selected by ル・シネマ
ワーナーフィルムコレクション.jpg

「バニシング・ポイント」00.jpg
「バニシング・ポイント」●原題:VANISHING POINT●制作年:1971年●制作国:アメリカ●「バニシング・ポイント」シネマート.png監督:リチャード・C・サラフィアン●製作:ノーマン・スペンサー●脚本:ギレルモ・ケイン(ギリェルモ・カブレラ=インファンテ)●撮影:ジョン・A・アロンゾ●時間:105分●出演:バリー・ニューマン/クリーヴォン・リトル/リー・ウィーバー/カール・スウェンソン/ディーン・ジャガー/スティーブン・ダーデン/ポール・コスロ/ボブ・ドナー/ティモシー・スコット/ギルダ・テクスター/アンソニー・ジェームズ/アーサー・マレット/ビクトリア・メドリン/シャーロット・ランプリング(イギリス公開版のみ)●日本公開:1971/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:シネマート新宿(スクリーン1)(23-04-04)((評価:★★★★)

シネマート新宿


ゴジラ ポスター.jpgゴジラ.jpg「ゴジラ」●制作年:1954年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚本:村田武雄/本多猪四郎●撮影:玉井正夫●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二ほか●原作:香山滋●時間:97分●出演:宝田明/河内桃子/平田昭彦/志村喬/堺左千夫/村上冬樹/山本廉/榊田敬二/鈴木豊明 /馬野都留子/菅井きん/笈川武夫/林幹/恩田清二郎/高堂国典/小川虎之助/手塚克巳/橘正晃/帯一郎/中島春雄/川合玉江/東静子/岡部正/鴨田清/今泉康/橘正晃/帯一郎●公開:1954/11●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿名画座ミラノ (83-08-06)(評価:★★★☆)●併映:「怪獣大戦争」(本多猪四郎)

「モスラ.jpgモスラ.jpg「モスラ」●制作年:1961年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:古関裕而●特殊技術:円谷英二●イメージボード:小松崎茂●原作:中村真一郎/福永武彦/堀田善衛「発光妖精とモスラ」●時間:101分●出演:フランキー堺/小泉博/香川京子/ジェリー伊藤/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/上原謙/志村喬/平田昭彦/佐原健二/河津清三郎/小杉義男/高木弘/田島義文/山本廉/加藤春哉/三島耕/中村哲/広瀬正一/桜井巨郎/堤康久●公開:1961/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):新宿シアターアプル (83-09-04)(評価:★★★☆)●併映:「三大怪獣 地球最大の決戦」(本多猪四郎)   

モスラ対ゴジラ.jpgモスラ対ゴジラ1964.jpg「モスラ対ゴジラ」●制作年:1964年●監督:本多猪四郎●製作:田中友幸●脚色:関沢新一●撮影:小泉一●音楽:伊福部昭●特殊技術:円谷英二●時間:89分●出演:宝田明/星由里子/小泉博>/ザ・ピーナッツ(伊藤エミ、伊藤ユミ)/藤木悠/田島義文/佐原健二/谷晃/木村千吉/中山豊/田武謙三/藤田進/八代美紀/小杉義男/田崎潤/沢村いき雄/佐田豊/山本廉/佐田豊/野村浩三/堤康久/津田光男/大友伸/大村千吉/岩本弘司/丘照美/大前亘●公開:1964/04●配給:東宝(評価:★★★☆)

「へドラ.jpg「ゴジラ対ヘドラ」1971p.jpg「ゴジラ対ヘドラ」●制作年:1971年●監督:坂野義光(水中撮影も兼任)●製作:田中友幸●脚本:馬淵薫/坂野義光●撮影:真野田陽一●音楽:眞鍋理一郎(主題歌:「かえせ! 太陽を」麻里圭子 with ハニー・ナイツ&ムーンドロップス)●特殊技術:中野昭慶●美術:井上泰幸(1922-2012)●時間:85分●出演:山内明/柴本俊夫(柴俊夫)/川瀬裕之/麻里圭子/木村俊恵/吉田義夫/中山剣吾(ヘドラ)/中島春雄/●公開:1971/07●配給:東宝●最初に観た場所(再見):神保町シアター(22-08-18)(評価:★★★☆)

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双葉社刊最終号。「ベスト映画」より「サイテー映画」特集の方が面白さで言えば面白い?

「映画秘宝」2205.jpg   東京暮色  1957.jpg 「ヨーロッパの解放 1970.jpg 「1941.jpg
東京暮色 デジタル修復版 [DVD]」「ヨーロッパの解放 HDマスター 1 <クルスク大戦車戦>(通常仕様) [DVD]」「1941 [DVD]
映画秘宝 2022年5月号 [雑誌]
映画秘宝 2205.jpg 双葉社刊の月刊「映画秘宝」の最終号です。このあと約2年の休刊期間を経て昨年['23年]12月、新たに設立された「合同会社秘宝新社」が雑誌の権利を取得し、今年['24]年1月19日発売の3月号から、月刊誌として約2年ぶりに「再々創刊」されていることは、これまでのこの雑誌の経緯と併せ、前エントリーに書きました。

 最終号が「サイテー映画」特集となるところがこの雑誌らしいです。因みに、1つ前の4月号が「映画猛者101人が選ぶ、2022年オールタイム映画ベストテン!」という特集なのですが、この「サイテー映画特集」でも「新世紀アメリカ・サイテー映画10傑」とか「日本のサイテー映画」といったジャンル別ランキング方式をとっていて、20以上の分野ごとのラインアップを、その分野にこだわりを持つ評論家が挙げており、思いもかけない映画が出てくるあたりは、こちらの方が、役に立つかどうかはともかく(笑)、面白さで言えば面白いかもしれません。
 
東京暮色157a.jpg10『東京暮色』.jpg 因みに、「日本のサイテー映画」(浦山珠夫)には、小津安二郎の「東京暮色」('57年/松竹)が入っていたりしますが、選者の浦山氏は、「サイテー映画の後始末」という視点で、「期待を裏切られてガッカリしたけど、改めて見るとなかなか」という映画を選んだとしています。「東京暮色」についても、主人公が鉄道自殺する、このやりきれなさが味わいなのだが、当時の評価では、「大人はわかってくれない」といった普遍的テーマを小津が扱ったことへの観客の違和感が、「失敗作」のレッテルにつながったとしています。個人的には小津は、キネ旬のランキングなんか気にせず(この映画は1957年度「キネマ旬報ベストテン」で第19位だったが、笠智衆によれば、小津安二郎自身がそのことを自虐を込めて語っていたようだ)、もっとこういう映画を撮って欲しかったです。評価は○
 
「ヨーロッパの解放.jpg「ヨーロッパの解放」2.jpg 「サイテー戦争映画」(大久保義信)では、4作挙げられているうちの1つが「ヨーロッパの解放」('70年~'71年)であり、これは全5部計468分の大作(7時間48分。観ていて、終いには、どれが何の戦いなのかわからなくなってくる(笑))。第1部は、史上最大の作戦と言われる1943年夏のロシア西部要衝クルクスの戦いがメイン、第2部はハリコフ奪回からドニエプル河渡河そしてウクライナ"解放"へ、第3部は1944年のベラルーシ"解放"戦。第4部はポーランドやチェコスロバキアの"解放"戦、第5部はベルリン戦から終戦へ―大久保氏に言わせると、これらが「史実の歪曲や無視、曲解のオンパレードで描かれる『これそ国策映画』」で、「これじゃ『ヨーロッパの侵略』だろう」としています(なるほど、ソ連の頃からロシアは変わっていない)。ただし、個人的には、初めて観た時はついていくのが精いっぱいで、あまりそこまで考えませでした。評価は△
 
「1941」.jpg「1941」3.jpg 「スティーブン・スピルバーグのダメ映画5選」(尾崎一男)で1位は「フック」('91年)、2位は「1941」('79年)になっています。選者の尾崎氏は、「1941」が駄作の筆頭のイメージがあるが、精緻なサンタモニカ公園のミニチュアや、それを攻撃する「1941」三船.jpg日本軍の奇襲攻撃シーンなどに見るべきところは多く、年を経るにつれてカルト的な評価を得て悪評も薄らいだ感があるとしています。ただし、本分であるコメディ演出は笑えないともしていて(三船敏郎はなぜこんな映画に出てしまったのか)、こちらは個人的には、世間評と同じくスピルバーグの一番の駄作であるように思われ、初めて観た時から評価は×

 「サイテー映画」とされていても、個人的な評価が必ずしも一致しないのは当然なことだし、カルト的人気で評価を挽回しているものもかなり含まれているように思いました。こうした特集にさえ取り上げられない「箸にも棒にも掛からない」映画もたくさんあるわけで、こうした特集に取り上げられるということは、それだけ観た人にインパクトを残したという面もあるように思います。


東京暮色 有馬稲子 .jpg東京暮色_640.jpg「東京暮色」●制作年:1954年●監督:小津安二郎●製作:山内静夫●脚本:野田高梧/小津安二郎●撮影:厚田雄春●音楽:斎藤高順●時間:140分●出演:原節子/有馬稲子/笠智衆/山田五十鈴/高橋貞二/田浦正巳/杉村春子/山村聰/信欣三/藤原釜足/中村伸郎/宮口精二/須賀不二夫/浦辺粂子/三好栄子/田中春男/山本和子/長岡輝子/櫻むつ子/増田順二/長谷部朋香/森教子/菅原通済(特別出演)/石山龍児●公開:1957/04●配給:松竹●最初に観た場所(再見):(18-06-28)((評価:★★★★)

「ヨーロッパの解放」03.jpg「ヨーロッパの解放(全5部)」●原題:ОСВОЬОЖЛЕНИЕ(OSVOBODZHDENIE)●制作年:1970-71年●制作国:ソ連●監督:ユーリー・オーゼロフ●製作:エマ・トーマス/チャールズ・ローヴェン/クリストファー・ノーラン●脚本:ユーリー・オーゼロフ/ユーリー・ボンダリョフ/オスカル・クルガーノフ●撮影: イーゴリ・スラブネヴィッチ●時間:468分●出演:ニコライ・オリャーリン/ラリーサ・ゴルーブキナ「ヨーロッパの解放」3.jpg/ミハイル・ウリヤーノフ/イヴォ・ガラーニ/フリッツ・ディッツ/スタニスラフ・ヤスケヴィッチ/ブフティ・ザカリアーゼ●日本公開:(第1部・第2部)1970/07/(第3部)1971/07/(第4部・第5部)1972/08●配給:松竹映配●最初に観た場所:三鷹オスカー(83-12-11)((評価:★★★)

「1941」2.jpg「1941」●原題:1941●制作年: 1979年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作: バズ・フェイトシャンズ●脚本:ロバート・ゼメキス/ボブ・ゲイル●音楽:ジョン・ウィリアムズ●時間:118分●出演:ジョン・ベルーシ/ネッド・ビーティ/ダン・エイクロイド/ロレイン・ゲイリー/マーレイ・ハミルトン/クリストファー・リー/ティム・マシスン/三船敏郎/ウォーレン・オーツ/ナンシー・アレン/ジョン・キャンディ/エリシャ・クック/ジェームズ・カーン(クレジットなし)●日本公開:1980/03●配給:コロンビア ピクチャーズ●最初に観た場所:飯田橋・佳作座(80-07-08)(評価:★★)●併映:「ローラー・ブギ」(マーク・L・レスター)

《読書MEMO》
●1957年度キネマ旬報ベストテン
1.米
2.純愛物語
3.喜びも悲しみも幾年月
4.幕末太陽傳
4.蜘蛛巣城
6.気違い部落
7.どたんば
8.爆音と大地
9.異母兄弟
10.どん底
11.地上
12.あらくれ
13.雪国
14.南極大陸
15.メソポタミア
16.世界は恐怖する
17.風前の灯
18.大阪物語
19.東京暮色
20.正義派
20.くちづけ
22.満員電車
23.黄色いからす
24.殺したのは誰だ
25.糞尿譚
26.女体は哀しく
27.挽歌
27.倖せは俺等のねがい
27.土砂降り
30.明治天皇と日露大戦争

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