【3279】 ○ リチャード・C・サラフィアン 「バニシング・ポイント」 (71年/米) (1971/07 20世紀フォックス) ★★★★ (○ デニス・ホッパー 「イージー・ライダー」 (69年/米) (1970/01 コロンビア映画) ★★★☆)

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爽快感があった「バニシング・ポイント」。「イージー・ライダー」より好みか。

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バニシング・ポイント
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イージー・ライダー
「バニシングポイント」2.jpg 1970年代のアメリカ、新車の陸送を仕事としている男コワルスキー(バリー・ニューマン)は、請け負った「白の1970年型ダッジ・チャレンジャー」の陸送で、翌日の午後3時までの15時間でコロラド州デンバーからサンフランシスコまで到着させるという賭けをすることになった。途中、スピード違反で警察に追いかけられ、派手に騒ぎを起こして振り切ったことを地方ラジオ局の盲目の黒人DJ・スーパー・ソウル(クリーヴォン・リトル)に放送されたこともあって、他愛のない賭けは思わぬ大騒動へと発展する。かつてベトナム戦争に従軍した退役アメリカ陸軍軍人であり、レースドライバーであり、警官であったこともあり、そして愛す[「バニシングポイント」.jpgる女を失った男であるコワルスキーは、数々の障害が降りかかろうと、道々に追跡してくる警察を蹴散らし、ただひたすら車を走らせ続ける。そんな彼に対して、スーパー・ソウルを始め、共感するものたちの輪が広がっていき、ある者は協力し、またある者は声援を送った。その有様を苦々しく思う警察は、威信にかけてコワルスキーを止めようと異常なまでの検問をひく。しかし、コワルスキーは自らの消失点(バニシング・ポイント)に向かうかのようにアクセルを踏み続けるのだった―。

「バニシングポイント」シャロ十.jpg この「バニシング・ポイント」('71年)という映画は、まずイギリスで公開され、シーンをカットしてからアメリカ、日本で公開されたために、イギリス公開版にのみ存在するシーンと出演者がいます(行きずりのヒッチハイカー役で出ているシャーロット・ランプリングなど)。公開当時の米国で興行的には奮いませんでしたが、日本では第45回(1971年度)キネマ旬報ベストテンで第5位に選ばれており、米国でもカルト的な人気がある作品です。今回4Kデジタルリマスター版を劇場で見ることが出来ました。

 コロラド州デンバーからサンフランシスコまでの2,000キロを不眠不休、15時間で⾛り切るというコワルスキーの姿を、体制も反体制も超越した乾ききった精神性で鮮烈に描いており、既存の体制や⽂化への反抗や、現実に敗北する主⼈公の姿を描いた多くのニューシネマとは⼀線を画し、何も求めない主⼈公の虚無感が全篇を貫いているように思われます。

 よく比較されるのが、アメリカン・ニューシネマの代表的映画とされる「イージー・ライダー」('69年)ですが、こちらは―、

「イージー・ライダー.jpg メキシコからロサンゼルスへのコカインの密輸で大金を得たワイアット(ニックネームはキャプテン・アメリカ)(ピーター・フォンダ)とビリー(デニス・ホッパー)が、金をフルカスタムされたハーレーダビッドソンのタンク内に隠し、カリフォルニアからマルディグラ(謝肉祭「イージー・ライダー」3.jpg)の行われるルイジアナ州ニューオーリンズを目指して旅に出るというもの。カトリック信者の農夫の家でランチをご馳走になったり、ヒッチハイクをしていたヒッピーを拾って彼らのコミューンへ立ち寄ったりと気ままな旅を続ける二人。旅の途中、無許可で祭りのパレードに参加したことを罵られ、留置場に入れられると、そこで若い弁護士ハンセン(ジャック・ニコルソン)と出会い意気投合。ハンセンの口利きで釈放された2人は、ハンセンと共にルイジアナ州ニューオーリンズに向けての旅を続けるが、「自由」を体現する彼らは行く先々で沿道の排他的な人々の思わぬ拒絶に遭い、ついには殺伐としたアメリカの現実に直面する―。

 クルマとバイクの違いはありますが、自由を求めて旅するロードムービーでありカウンターカルチャーを反映し、マリファナやコカインが出てきて反体制・反権力を象徴しているなど、共通点も多いです。ただ、個人的には「バニシング・ポイント」の方が好みでしょうか。

 両者の違いとしては、まず、「イージー・ライダー」は意外と"安全走行"(笑)しているのに対し、「バニシング・ポイント」にはスピードの魅力があります。これは、娯楽映画としては大きなポイントです。

 また、二人が行き当たりばったりの旅をする、脚本のないヌーヴェルヴァーグ的な作りの「イージー・ライダー」に対し(この点もアメリカン・ニューシネマの代表的映画とされる理由の1つか)、「バニシング・ポイント」の冒頭とラストは繋がっており、こちらは予めよく練られた脚本のように思われます。

 「バニシング・ポイント」の主人公のコワルスキーはずっと一人でいるため、リアルタイムでのセリフはほぼ無く、代わりに過去の出来事が何度もフラッシュバックされることで、主人公の内面が浮かび上がる(観る者に考えさせる)ようになっていて、これも自分の好みです。

 「イージー・ライダー」のラストが哀しいのに対し、「バニシング・ポイント」のラストは壮絶ながらも意思的であり、爽快感があったように思いました。

「バニシングポイント」シャロッと.jpg「バニシング・ポイント」1971.jpg「バニシング・ポイント」●原題:VANISHING POINT●制作年:1971年●制作国:アメリカ●監督: リチャード・C・サラフィアン●製作:ノーマン・スペンサー●脚本:ギレルモ・ケイン(ギリェルモ・カブレラ=インファンテ)●撮影:ジョン・A・アロンゾ●時間:105分●出演:バリー・ニューマン/クリーヴォン・リトル/リー・ウィーバー/カール・スウェンソン/ディーン・ジャガー/スティーブン・ダーデン/ポール・コスロ/ボブ・ドナー/ティモシー・スコット/ギルダ・テクスター/アンソニー・ジェームズ/アーサー・マレット/ビクトリア・メドリン/シャーロット・ランプリング(イギリス公開版のみ)●日本公開:1971/07●配給:20世紀フォックス●最初に観た場所:シネマート新宿(スクリーン1)(23-04-04)((評価:★★★★)

新宿シネマート .jpgシネマート新宿(新宿3丁目「新宿文化ビル」4・5階)スクリーン1(335席)・スクリーン2(62 席)。
2006(平成18)年12月9日、旧「文化シネマ2・3」が「シネマート新宿1・2」、「旧文化シネマ1・4」が「新宿ガーデンシネマ1・2」として、として再オープン、2008(平成20)年6月14日「新宿ガーデンシネマ1・2」が「角川シネマ新宿1・2」に改称。2018(平成30)年7月休館、同月「角川シネマ新宿1」はアニメ作品のみを上映する「EJアニメシアター新宿」に改称、角川シネマ新宿2」は「アニメギャラリー」としてリニューアルオープン。
「バニシング・ポイント」シネマート.png 2023年4月4日「シネマート新宿」

「イージー・ライダー」デニス.jpg「イージー・ライダー」●原題:EASY RIDER●制作年: 1969年●制作国:アメリカ●監督:デニス・ホッパー●製作:ピーター・フォンダ●脚本:デニス・ホッパー/ピーター・フォンダ/テリー・サザーン●撮影:ラズロ・コヴァックス●音楽:ザ・バンド/ザ・バーズ/ホーリー・モーダル・ラウンダーズ/ザ・ジミ・ヘンドリックス・エクスペリエンス/ロジャー・マッギン/ステッペンウルフ●時間:94分●出演:ピーター・フォンダ/デニス・ホッパー/ジャック・ニコルソン/アントニオ・メンドーサ/カレン・ブラック/ルーク・アスキュー/ロバート・ウォーカー・jr/ルアナ・アンダース /トニー・バジル/フィル・スペクター●日本公開:1970/01●配給:コロンビア映画●最初に観た場所:早稲田松竹(17-05-07)(評価:★★★☆)●併映(2回目):「地獄の黙示録」(フランシス・フォード・コッポラ)

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