【2636】 ◎ 黒澤 明 「隠し砦の三悪人 (1958/12 東宝) ★★★★☆

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後の「用心棒」以上に娯楽性が高いかも。観直してみて脚本の上手さを再認識。

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Kakushi-toride no san-akunin (1958)隠し砦の三悪人[東宝DVD名作セレクション]」藤原釜足/千秋実

隠し砦の三悪人01.jpg 百姓の太平(千秋実)と又七(藤原釜足)は、褒賞を夢見て山名と秋月の戦いに参加したが、秋月の城は落ち、山名の捕虜として秋月城で埋蔵金探しの苦役をさせられる。捕虜たちの暴動に紛れて脱走した2人は谷で薪の中から秋月の紋章が刻まれた金の延べ棒を発見、そこに秋月家の侍大将・真壁六郎太(三船敏郎)という男が現れる。男は落城後、大量の金を薪に仕込んで泉に隠し、秋隠し砦の三悪人 1.jpg月家の生き残りの雪姫(上原美佐)や重臣・長倉和泉(志村喬)らと山中の隠し砦に身を潜めていたのだった。秋月家再興のため、同盟国の早川領へ逃げ延びる方法を思案していた六郎太だが、秋月領と早川領の国境は山名に固められている。しかし太平と又七が口にした敵の山名領に入って早川領へ抜ける脱出法を聞きこれを実行することに。六郎太と隠し砦に行った2人はそこで女に出会い、六郎太は女を「俺のも隠し砦の三悪人 34.jpgのだ」と言うが、彼女が雪姫だった。女を姫と目星をつけた又七は、恩賞欲しさに町へ出かけるが、姫は打ち首になったと聞く。しかし、それは姫の身代わりだった。六郎太は、気性の激しい雪姫の正体を百姓2人にも隠し通すために唖に仕立て、太平と又七を連れて早川領を目指す。関所で怪しまれるが、六郎太は隠していた金を逆に番卒に突き出し、「褒美をくれ」と駄々をこねる内に関所を通される。夜、木賃宿で人買いに売られた隠し砦の三悪人00.jpg百姓娘(樋口年子)を見た雪姫は、彼女を買い戻させ仲間に入れる。道中、六郎太一行を怪しんだ騎馬武者(土屋嘉男)に発見され、六郎太は武者を斬り捨てるう隠し砦の三悪人03.jpgちに、かつての盟友で今は宿敵の山名の侍大将・田所兵衛(藤田進)の陣に駆け込んでしまう。2人は槍で果たし合いをし、六郎太は兵衛を打ち負かす。又七と太平は姫へ手を出そうとするが、姫と見抜いて恩義を感じている百姓娘に阻まれる。一行は火祭りの薪を運ぶ群集に紛れ込むが、監視兵が配されていて、又七と太平は祭りの火に薪をくべることを拒むが、六郎太は「燃やせ燃やせ!踊隠し砦の三悪人09.jpgれ踊れ!」と燃やしてしまい、楽しそうに踊る姫に反して、二人は情けない顔で踊る。翌朝、灰から拾い上げた金を背負って一行は進むが追手が迫り、又七と太平は逃亡、姫と六郎太と娘は山名に捕えられる。関所で囚われた3人の前に兵衛が現れる。果たし合いの件で大殿に罵られ、弓杖で顔を打たれた兵衛は六郎太を恨んでいた。雪姫は「姫は楽しかった。潔く死にたい」と言い、六郎太は男泣きする。それに心動かされた兵衛は処刑の日、「裏切り御免!」と姫と六郎太を解放し、自らも逃げる―。

隠し砦の三悪人022.jpg 1958(昭和33)年)の12月28日公開の黒澤明監督作品で、1959年・第9回ベルリン国際映画祭「銀熊賞(監督賞)」「国際批評家連盟賞」受賞作(国内では「ブルーリボン賞(作品賞)」などを受賞)。黒澤作品の中でも特に娯楽性の強い作品とされているもので、時期的には「蜘蛛巣城」('57年/東宝)と「用心棒」('61年/東宝)の間になりますが、確かに、黒澤明監督が娯楽性を徹底的に追求した作品とされる「用心棒」よりも更に娯楽性が高いかもしれません。

 初めて観た時は(雪姫を演じる上原美佐のショートパンツ・スタイルからして)時代劇というよりまるで「劇画」(漫画)みたいだなあという印象で、個人的評価は◎までは行かず○でしたが、観直してみて脚本の上手さを再認識しました。やはりジョージ・ルーカス監督が「スター・ウォーズ」('77年/米)で、太平と又七C‐3POとR2‐D2.jpgからC‐3POとR2‐D2を、雪姫からレイア姫のキャラクターを着想しただけのことはあると思わされました。ジョージ・ルーカスという宇多丸.jpg監督の(ノンポリティカルな)エンターテインメント性と合致している作品ともとれます。ラッパーで、映画評論で知られるラジオDJの宇多丸氏が、黒澤作品の中では"経年劣化"が進んでいる作品としていましたが、それとは逆に、個人的には評価を○から◎に改めました(こうしていると、日本映画の個人的ベストテンの半分くらいは黒澤作品になってしまいそう)。

隠し砦の三悪人 三船.jpg隠し砦の三悪人 藤田.jpg 真壁六郎太を演じる三船敏郎もスタントなしで派手な騎乗シーンを見せてくれているし、田所兵衛を演じる藤田進も無骨で昔風の武将らしくていい感じです。ヒロイン雪姫を隠し砦の三悪人s.jpg「隠し砦の三悪人」7.jpg演じた上原美佐も、三船敏郎と拮抗して演技にメリハリがあり、この作品の上原美佐を見る限り、"黒澤明は女性を撮るのが下手"という一部の評論家の意見は当て嵌まらないように思いました(雪姫のキャラ自体が男勝りであるという特殊条件があるが)。雪姫役には全国から4000人もの応募が集まったが候補者は見つからず、全国の東宝系社員にも探させて、ようやく社員がスカウトしたのが当時文化女子短期大学の学生だった上原美佐だったとのこと。演技経験の無い上原美佐に対して、黒澤明は、全部自ら演技してみせ、その通りやるように指導したとのことですが、ここまで出来れば立派。但し、本人は、その後何本か映画に出演したものの、「自分には才能が無い」と言う理由で、2年で映画界を引退しています(2003年死去。満67歳没)。

 2008年に樋口真嗣監督によるリメイク作品「隠し砦の三悪人 THE LAST PRINCESS」(東宝)が撮られていますが、2人の百姓の内の一人を主役にして、アイドルグループ嵐の松本潤がそれを演じています(真壁六郎太役は阿部寛、雪姫役は長澤まさみ)。個人的には未見ですが、あまり観たいとも思いません。先の宇多丸氏も、オリジナルが"経年劣化"している(あくまで氏の見方だが)からこそリメイクの入り込む余地があったはずなのに、前半と後半で登場人物のキャラクターに一貫性の無い(おそらく松本潤の役柄のこと)駄作になってしまったと酷評していました。(映画雑誌「映画秘宝」主宰2008年度・第2回HIHOはくさい映画賞「最低監督賞」(樋口真嗣)受賞)。リメイクとオリジナルで格差が激しいのも、(相対評価ではあるが)オリジナルがまだ"経年劣化"していないことの一つの証しと言えるようにも思います。

大魔神.jpg大魔神 1966 31.jpg 因みに、洞窟に潜んでお家再興の機を窺うというのは、この映画の8年後に作られた安田公義監督の「大魔神」('66年/大映)などもそのパターンでした(「大魔神」の場合、潜伏期間が10年と結構長いが)。
 
「大魔神」('66年/大映)
 
 

音楽:佐藤勝

「隠し砦の三悪人」加藤武(落武者)
「隠し砦の三悪人」加藤.jpg隠し砦の三悪人042.jpg「隠し砦の三悪人」●制作年:1958年●監督:黒澤明●製作:藤本真澄/黒澤明●脚本:菊島隆三/小国英雄/橋本忍/黒澤明●撮影:山崎市雄●音楽:佐藤勝●時間:139分●出演:三船敏郎/千秋実/藤原釜足/上原美佐/藤田進/樋口年子/志村喬/三好栄子/藤木悠/土屋嘉男/高堂国典/加藤武/三井弘次/小川虎之助/田吉二郎/富田仲次郎/田島義文/沢村いき雄/大村千吉/堺左千夫/佐藤允/小杉義男/谷晃/佐田豊/笈川武夫/中丸忠雄/熊谷二良/広瀬正一/西条悦朗/長島正芳/大橋史典/大友伸/伊藤実/鈴木治夫/金沢重勝/日方一夫/中島春雄/久世竜/千葉一郎/砂川繁視/緒方燐作/山口博義/坂本晴哉/日劇ダンシングチーム●公開:1958/12●配給:東宝●最初に観た場所:大井武蔵野舘(85-02-24)(評価:★★★★☆)●併映:「生きる」(黒澤明)

(2024年1月28日NHK-BSで放映)      加藤武/千秋実/藤原釜足
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