【1931】 ○ シドニー・ルメット 「ネットワーク」 (76年/米) (1977/01 ユナイト映画) ★★★★

「●シドニー・ルメット監督作品」の インデックッスへ Prev|NEXT⇒「●ビリー・ワイルダー監督作品」【1063】ビリー・ワイルダー「サンセット大通り
「●フェイ・ダナウェイ 出演作品」の インデックッスへ 「●「ロサンゼルス映画批評家協会賞 作品賞」受賞作」の インデックッスへ 「●ロバート・デュヴァル 出演作品」の インデックッスへ 「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ

経営陣の企業倫理の逸脱パターンが戯画的に描かれている。フェィ・ダナウェイの演技は絶妙。

ネットワーク 1976 ちらし.jpgネットワーク 1976 vhs.jpg  ネットワーク 1976 11.jpg
  「ネットワーク [DVD]」       Faye Dunaway

NETWORK title.jpg 最盛期に28%の視聴率を誇ったUBSのビール(ピーター・フィンチ)のイブニング・ニュースも今や12%とに低落、これが引金となり、ジェンセン(ネッド・ビーティ)率いるCCAがUBSを買収し傘下に収め、CCAより新社長が就任、報道部長マックス(network 1976 01.jpgウィリアム・ホールデン)はビールに番組降板を通告する。翌日、ビールは本番中に自分が辞めさせられる事を暴き、さらに自殺予告までするが、そのことで視聴率は27%に上がる。野心家のダイアナ(フェイ・ダナウェイ)は、ビールを現代の偽善と戦う予言者とし「再売り出し」し、雨の日の本番中にスタジオに闖入したビールの社会不満を告発する言動が大ヒットするなどして、「ビール・ショー」の視聴率は48%に。ダイアナのアイデアはエスカレートし、過激Network.jpg派グループと契約して、ビールを絡めた衝撃シリーズを展開、これも成功し、彼女とマックスの社内での地位は逆転するが、過激化するビールが、親会社CCAを番組内で非難し始めたことで危機に陥る。ジェンセンはビールに強制暗示的に言動変更を迫り、感化されたビールは番組内でジェンセンの理論を滔々とぶつが視聴率は低下、ダイアナはジェンセンのロボットとなったビールを番組から降ろすために、上層部のハケット(ロバート・デュヴァル)らを説得して、ついにビールの暗殺を決定させ、テレビ局の走狗と化した過激派をスタジオの観客に紛れ込ませ、ビールを銃撃させる―。

ネットワーク 1976 02.jpg シドニー・ルメット(1924-2011/享年86)監督作品。最初観たときは、こんなのありっこないという荒唐無稽さを覚えましたが興業的には成功し、風刺劇としての世間評価も高かった作品であり(シドニー・ルメットはこの映画は風刺劇ではなくテレビ業界の内実を暴露したルポルタージュであると言った)、アカデミー賞においても主演男優賞(ピーター・フィンチ)、主演女優賞(フェイ・ダナウェイ)、など4部門獲得しました(ノミネート直後に心不全で急死したピーター・フィンチは、アカデミー賞史上初の「死後の主演男優賞受賞者」となった)。

 そうした評価につられてではないですが、観直してみて、よく出来ている作品だったかもと思いました。ピーター・フィンチに扇動される人々の描き方などは戯画的と言うか漫画チックですが、ピーター・フィンチの脇を固める俳優陣の演技が素晴らしいです。

network 1976 03.jpg ウィリアム・ホールデン演じるマックスがダイアナとの関係をなかなか断ち切れないのは、ある種"保護者"感覚ではないかなあ。彼女、傍に誰かいないとどうなるか分からないという...。それでもって、自分の妻(ベアトリス・ストレイト)に別居を切り出すというのも、言われた方の妻の心境は察するに余りありますが、ベアトリス・ストレイトはこのヘビイなNETWORK 1976.jpg状況に置かれた妻の哀しみを好演して、僅か5分間の登場でアカデミー賞の助演女優賞を獲っています。助演男優賞候補となったネッド・ビーティがもし受賞していれば(ネッド・ビーティがピーター・フィンチを緑色のシェードのライトが並んだ部屋で洗脳するシーンもスゴかったが)、アカデミー史上初の主演男優・主演女優・助演男優・助演女優の演技4賞独占となるところでしたが、「欲望という名の電車」('51年)に次ぐ史上2度目の演技賞3冠にとどまりました(因みに「欲望という名の電車」の時はマーロン・ブランドが主演男優賞を逃した)。
Ned Beatty - Network 1976

network 1976 02.jpg ダイアナの無茶苦茶な提案に躊躇するものの、最終的にはそれを是認してしまうテレビ局の上層部―というのは、経営陣が企業倫理を逸脱する際のパターンを描いており("殺人"まで認めてしまうというところが戯画的だが)、そもそもダイアナは、こんな"素晴らしいアイデア"になぜ上層部がすぐに同意を示さないかが解らず、逡巡する経営陣の様を見てきょとんとしている―この時のフェィ・ダナウェイの演技は絶妙です。

ネットワーク 1976 12.jpg 熾烈な視聴率競争を繰り広げるTV業界の中で「壊れていく」人々を描いた作品ですが、ピーター・フィンチ演じるニュースキャスターは「壊れている」と言うよりも「狂っている」のであって、「壊れている」という言葉が相応しいのはむしろフェィ・ダナウェイ演じるダイアナではないかなと思いました。最後はウィリアム・ホールデン演じるマックスも彼女を見切った感じですが、ダイアナの行く末がどうなったかまでは描かれていません。個人的には、再見して、この作品の主人公はダイアナではなかったかと思っただけに気になりました。

Faye Dunaway - Best Actress Oscar for Network 1976.jpgネットワーク [DVD].jpg「ネットワーク」●原題:NETWORK●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:シドニー・ルメット●製作:ハワード・ゴットフリード●脚本:パディ・チャイエフスキー●撮影:オーウェン・ロイズマン●音楽:エリオット・ローレンス●時間:121分●出演:フェイ・ダナウェイ/ウィリアム・ホールデン/ピーター・フィンチ/ロバート・デュヴァル/ベアトリス・ストレイト/ウェズリー・アディ/ネッド・ビーティネットワーク ロバート・デュヴァル2.jpg/ジョーダン・チャーニー/コンチャータ・フェレル/レイン・スミス/マーリーン・ウォーフィールド●日本公開:1977/01●配給:ユナイト映画●最初に観た場所:池袋・文芸坐(78-12-13)(評価:★★★★)●併映:「カプリコン・1」(ピーター・ハイアムズ)
ネットワーク [DVD]

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1