【1438】 ○ フランシス・フォード・コッポラ (原作:マリオ・プーゾ) 「ゴッドファーザーPARTⅡ」 (74年/米) (1975/04 パラマウント映画=CIC) ★★★★

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マフィアの一族においても強力な「父性原理」が過去のものとなりつつあったことの予兆。

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「">ゴッドファーザー PART II 」チラシ/パンフレット(1975.04)/「ゴッドファーザー PART II [DVD]

ゴッドFⅡ 012.JPG 1958年、湖畔の教会ではドン・マイケル・コルレオーネ(アル・パチーノ)の息子の聖餐式が行われており、湖に臨む大邸宅の庭でのパーティには、妻ケイ(ダイアン・キートン)と息子、妹らが、来賓には、ママ・コルレオーネ(マリア・カータ)、次兄フレドー(ジョン・カザール)夫婦、妹コニー(タリア・シャイア)とその恋人(トロイ・ドナヒュー)、相談役トム・ヘーゲン(ロバート・デュヴァル)らが招かれていた。パーティが済みマイケルがベッドへ入ろうとした時、機関銃の弾が寝室にぶち込まれ、床に伏したマイケルは、ベッドから転がり落ちた妻ケイを抱きかかえていた―。

ゴッドFⅡ 021.JPG 言わずと知れたフランシス・フォード・コッポラ監督による前作「ゴッドファーザー」(′69年/米)の続編で、正編・続編共にアカデミー作品賞を受賞した唯一のシリーズ。

 サンチャゴ版「ゴッドファーザー」的なドン・ウィンズロウの『フランキー・マシーンの冬』('10年/角川文庫)に、映画「ゴッドファーザー」のトリビアなネタが幾つか出てくるので思い出したのですが、「PARTⅡ」では、コルレオーネ家は本拠をニューヨークからネバダ州に移していて、それは近くに収入源であるラスベガスがあるからだったのだなあと。

ゴッドFⅡ 031.JPG 本編でマーロン・ブランドが演じたヴィトー・コルレオーネの後継者としてゴッドファーザーになった三男のマイケルが、今度は父の遺産を守るために苦悩する姿が描かれる一方で、マリオ・プーゾの原作にはあるものの本編では描かれなかった、若き日のヴィトー(ロバート・デ・ニーロ)がシチリアからアメリカに移民としてやって来て、一代で裏社会の巨大ファミリーを築くまでのエピソードが、共に本編を挟むような形で対を成しています。

ゴッドFⅡ 041.JPG 時間的にはヴィトーの出ている時間の方が少ないのですが、「ミーン・ストリート」('73年/米)の演技が認められてコッポラ監督に抜擢されたロバート・デ・ニーロの演技が良く、彼がリトル・イタリーで次第に人望を集めていく様が、最初の内は、パン屋とか八百屋とか様々なごく普通の市井の民としての仕事をしながら、まるで地区の"相談係"乃至はもめ事の"解決係"みたいなことを任されていくという風に描かれているのが興味深いです(「タクシードライバー」('76年/米)の主人公トラヴィスの持つ繊細な一面を彷彿させるが、この作品のロバート・デ・ニーロは「タクシードライバー」に出演する2年前。若いなあ)。

ゴッドFⅡ 051.JPG 一方、家族の確執に悩まされるマイケルの方は、崩壊していく家族の絆を目の当たりにし、自らも裏切った親族に手を下しつつ、改めてヴィトーの偉大さに想いを馳せるという、アル・パチーノとしてはやや損な役回りだったかも(本編のマーロン・ブランドの下でひ弱な印象をこの作品でも引き摺っている?)。

同じ役柄を演じたふたりの俳優.jpg 本編あっての続編ではあるものの、続編でヴィトーの若き日の台頭と、現在のマイケルの孤絶を描くことで、単なるマフィアものを超えて、イタリア移民の一族の年代記としての厚みが増したように思います(ヴィトー・コルレオーネを演じたロバート・デ・ニーロはアカデミー「助演男優賞」受賞。本編でマーロン・ブランドが主演男優賞を受賞しており、同じ役柄を演じた二人の俳優がアカデミー賞の演技賞を獲得したことになる)。

 本編では"家族の絆"の強さというものが描かれていて、日本でも大いに受けたわけですが、心理療法家の河合隼雄が、プロスペル・メリメがシチリアの伝承に材を得た小編「マテオ・ファルコーネ」(岩波文庫『エトルリヤの壷』に所収)(官憲に追われている男を腕時計と引き換えに官憲に密告した息子をその場で射殺した父親の話)を挙げて、こうした強力な「父性原理」は、日本のような「母性原理」の社会では見られないと指摘したように、"家族の絆"の根底にあるものが根本的に日本と異質のような感じもします(だから、肉親であっても裏切者は殺られてしまう)。

ザ・ソプラノズ.jpg ただ、米国のイタリア(シチリア)系社会でもこうした強力な「父性原理」はすでに過去のものとなっているのかも知れず、それがこの続編で予兆として現れていて、近年の海外ドラマ「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」('99-07年)などを観ていると、そのギャップがある種パロディカルに描かれるに至っているように思いました。

 「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」のジェームズ・ギャンドルフィーニ演じる主人公のマフィアのボスであるトニー・ソプラノは、ストレスと悩みが原因のパニック障害を有し、精神科のカウンセリングを受けていますが(ギャンドルフィーニはこの役でエミー賞を3回受賞)、ロバート・デ・ニ―ロもハロルド・ライミス監督のコメディ「アナライズ・ミー」('99年/米)で、パニック障害で精神分析医に掛かるマフィアのボスを演じています。

The Godfather Part II(1974).jpgThe Godfather: Part II(1974)
「ゴッドファーザーPARTⅡ」●原題:THE GODFATHER PART II●制作年:1974年●制作国:アメリカ●監督:フランシス・フォード・コッポラ●製作:フランシス・フォード・コッポラ/グレイ・フレデリクソン/フレッド・ルース●脚本:マリオ・プーゾ/フランシス・フォード・コッポラ●撮影:ピーター・ツィンナー/バリー・マルキン/リチャード・マークス●音楽:ニーノ・ロータ/カーマイン・コッポラ●原作:マリオ・プーゾ「ゴッドファーザー」●時間:200分●出演:アル・パチーノゴッドファーザーPARTⅡ ロバート・デュヴァル0.jpgロバート・デ・ニーロ/マリア・カータ/ダイアン・キートン/ロバート・デュヴァル/ジェームズ・カーン/ジョン・カザール/タリア・シャイア/リー・ストラスバーグ/マイケル・ヴィンセント・ガッツォ/リチャード・ブライト/ガストン・モスチン/トム・ロスキー/ブルーノ・カ-ビー/フランク・シベロ/フランチェスカ・デ・サピオ/モーガナ・キング/マリアナ・ヒル/レオパルド・トリエステ/ドミニク・キアネーゼ/アメリゴ・トット/トロイ・ドナヒュー●日本公開:1975/04●配給:パラマウント映画=CIC●最初に観た場所:池袋文芸坐(78-01-12)(評価:★★★★)●併映:「コーザ・ノストラ」(フランチェスコ・ロージ)     
 
The Sopranos (1999).jpgザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア.jpgThe Sopranos 2.jpg「ザ・ソプラノズ 哀愁のマフィア」The Sopranos (HBO 1999/01~2007)○日本での放映チャネル:WOWOW/スーパー!ドラマTV

The Sopranos (1999)

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ジェームズ・ギャンドルフィーニ (米国俳優)
2013年6月19日、イタリアのシチリアで開催される第59回タオルミーナ映画祭に出席するため、現地入りしていたところ、心臓発作で死去。51歳。

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