【1099】 ◎ マーティン・スコセッシ 「タクシードライバー」 (76年/米) (1976/09 コロムビア映画) ★★★★★

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危うい偶然に支えられた主人公のブレークスルー。何と言ってもロバート・デ・ニーロの演技。
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タクシードライバー2.jpgタクシードライバー1.jpg  タクシードライバー パンフレット.jpg
タクシードライバー コレクターズ・エディション [DVD]」 /パンフレット
Taxi Driver(1976) マーティン・スコセッシ/ロバート・デ・ニーロ
Taxi Driver(1976).jpgマーティン・スコセッシ 「タクシードライバー」.jpg 海兵隊上がりの不眠症の男トラヴィス(ロバート・デ・ニーロ)がタクシードライバーの仕事に就く場面から始まるこの映画は、ニューヨークという大都会の中で、運転手仲間ともうちとけず、女性(シビル・シェパード)にもフラれ、孤独に生きる彼が、社会に対する漠たる憤りや自らの無力感、虚しさを募らせ、徐々に精神が病んでいく様が見事に描かれていたように思います。やがて彼は、独自の腐敗浄化計画のようなものに傾倒し、自らの身体を鍛え、銃器を購入し、まず、彼が偽善的だと感じた大統領候補の暗殺を図るも果たせず、今度は、たまたま知り合った少女(ジョディ・フォスター)がヒモ男(ハーヴェイ・カイテル)に囲われている、腐敗と搾取に満ちた売春宿を襲撃して、その結果、街のヒーローになる―。

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TD3.jpg 「大統領候補の暗殺」と「売春窟の掃討」という行動が、トラヴィスの中では同じベクトル上にあるというのが、必ずしも説明的に描かれているのではないのに観ていてよくわかるというのが、この映画のスゴイところかも。「大統領候補の暗殺」を果たしてしまえば、彼は「凶悪犯」になっていたわけで、それが、最終的には「ヒーロー」になってしまうというある意味の逆説が、鮮やかに描かれているように思えました。

 近年は日本でも、本来は1人で行う自殺行為が自己顕示的な形に置き代わって周囲を巻き込んだと言えるのではないかと思われるタイプの犯罪が見られるようになりましたが、「売春窟の掃討」を果たした彼が拳銃自殺をイメージしている(ように見えた)場面には、こうした行為の予兆的なものを感じます。

「タクシードライバー」3.jpgTaxi Driver (Martin Scorsese).jpg しかし、銃弾が尽きていたためトラヴィスは自殺もせず、結果として生き残り、以前と同じようにタクシーで街を流しますが、前に自分のことをフッた女性(シビル・シェパード)をたまたま客として乗せても、ゆったりとした気持ちで彼女を迎えることができる―。

「タクシードライバー」7.jpg 1人の男のレベルで見れば、ある種のブレークスルー・ムービーであり"ハッピーエンド"になっているわけですが、そこに至るまでに、「大統領候補の暗殺」の失敗と「自殺」の未遂という2つの偶然があったというのが、いかにも危ういのではないでしょうか(個人的にはラストをブレークスル―と解したが、実は主人公は事件で死んでおり、ラストはその死の前に主人公が見た白日夢であるとの解釈もあるらしい)。

ハーヴェイ・カイテル/ロバート・デ・ニーロ
   
ジョディ・フォスター タクシードライバー.jpgタクシードライバー3.jpg この作品はアカデミー賞の作品賞や主演男優賞などにノミネートされましたが、作品賞は「ロッキー」という有力候補があったために獲れなかったのは仕方なかったのかもしれないけど、結局アカデミー賞に関してはどの賞も獲っていないのが意外です(ロバート・デ・ニーロは'80年の「レイジング・ブル」で主演男優賞淀川長治2.jpgを受賞)。「タクシードライバー」におけるロバート・デ・ニーロの演技について故・淀川長治が当時、「ああいう演技をするにはとてつもない集中力が必要なはず」と言っていたのが印象的でした。

タクシードライバー」02.jpgタクシードライバー」03.jpg 共演のジョディ・フォスターは後にアカデミー主演女優賞を2度受賞するまでの女優になっていますが(「告発の行方」('88年)と「羊たちの沈黙」('96年))、彼女も、この作品でのロバート・デ・ニーロの演技を見て(当時まだ13歳だったのだが) "演技開眼"したと後に述べています(ロバート・デ・ニーロはこの作品で、ニューヨーク、全米、ロサンゼルスの3大映画批評家協会賞の「主演男優賞」を受賞しているが、ジョディ・フォスターもこの作品で全米映画批評家協会賞の「助演女優賞」を受賞している)。

Cybill Shepherd in TAXI DRIVER/MOONLIGHTING
シビル・シェパード 1.jpgこちらブルームーン探偵社.jpg 作中でトラヴィスがアタックをかける女性を演じたシビル・シェパードは、その後テレビシリーズ「こちらブルームーン探偵社」(1985-1989)で主役に抜擢され、「タクシー・ドライバー」の中ではクールなキャリア・ウーマンという感じでしたが、「こちらブルームーン探偵社」ではコメディタッチのドラマ展開の中でその演技の幅を見せて、1986年、1987年と連続してゴールデン・グローブシビル・シェパード.jpg賞(テレビシリーズ・コメディー・ミュージカル部門)のこちらブルームーン探偵社 dvd.jpg最優秀女優賞を獲得、共演のシリーズ当初は無名だったブルース・ウィルスも1987年に最優秀男優賞を獲得し(エミー賞・ドラマシリーズ部門の主演男優賞も獲得)、それが彼の「ダイ・ハード」('88年)の主役の座へのオファーに繋がっています。

「こちらブルームーン探偵社」MOONLIGHTING (ABC 1985~1989) ○日本での放映チャネル:NHK(1986~1993)

タクシードライバー」01.jpgタクシー・ドライバー チラシ.jpg「タクシードライバー」●原題:TAXI DRIVER●制作年:1976年●制作国:アメリカ●監督:マーティン・スコセッシ●製作:マイケル・フィリップス/ジュリア・フィリップス●脚本:ポール・シュレイダー●撮影:マイケル・チャップマン●音楽:バーナード・ハーマン●時間:114分●出演:ロバーTAXI DRIVER.PETER BOYLE AND ROBERT DE NIRO.jpgト・デ・ニーロ/シビル・シェパード/ジョディ・フォスター/ハーヴェイ・カイテル/ピーター・ボイル/アルバート・ブルックス/マーティン・スコセッシ/ジョー・スピネル/ダイアン・アボット/レナード・ハリス/ヴィクター・アルゴ/ガース・エイヴァリー/リチャード・ヒッグス/ロバート・マルコフ、/ハリー・ノーサップ/スティーブン・プリンス●日本公開:1976/09●配給:コロムビア映画●最初に観た場所:早稲田松竹(77-11-05)●2回目:池袋文芸坐(79-02-11)●3回目:三鷹オスカー(81-03-18)●4回目:早稲田松竹(85-03-23)(評価:★★★★★)●併映(1回目):「アメリカングラフィティ」(ジョ早稲田松竹 予定表.jpg早稲田松竹.jpgージ・ルーカス)早稲田松竹内.jpg●併映(2回目):「ローリング・サンダー」(ジョン・フリン)●併映(3回目):「アリスの恋」(マーティン・スコセッシ)/「ミーン・ストリート」(マーティン・スコセッシ)●併映(4回目):「ミッドナイト・エクスプレス」(アラン・パーカー) 早稲田松竹 1951年封切館としてオープン、1975年からいわゆる「名画座」に。2002年4月1日閉館、有志の手で2002年12月21日再建、2003年1月25日から本格的再開。

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