【268】 ○ 井上 一馬 『ウディ・アレンのすべて』 (1997/12 河出書房新社) ★★★☆ (○ ウディ・アレン 「アニー・ホール」 (77年/米) (1978/01 オライオン映画) ★★★★/○ ウディ・アレン 「ラジオ・デイズ」 (87年/米) (1987/10 ワーナー・ブラザース) ★★★☆)

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成育史、女性たちとの関わりなどから探るアレン作品。「ラジオ・デイズ」はフェリーニの「アマルコルド」にあたる作品。
ウディ・アレンのすべて.jpg アニー・ホール.jpgアニー・ホール poster.jpg ラジオデイズ vhs.jpg フェリーニのアマルコルド dvd.jpg
ウディ・アレンのすべて』['97年/河出書房新社]/「アニー・ホール」('77年)/「ラジオ・デイズ [DVD]/「フェリーニのアマルコルド 4K修復版 [Blu-ray]」['17年]

ベストワン事典.jpg 『ベスト・ワン事典』('82年/現代教養文庫)という'80年に英国で原著が出版された本の中で、「コメディアンのベスト」としてウディ・アレンが挙げられていましたが、一方'05年には、彼が自分のジャズバンドのツアーを再開するという報道があり、70歳にして元気だなあという感じ。

 本書を読めば、彼がクラリネット奏者として舞台に立ったのは、映画界にデビューするよりずっと早かったことがわかります。映画の方は、3歳から映画自体には接していたけれど、高校時代から暫くはギャグライター、それに引き続くテレビ構成作家として下積みがあり、スタンダップコメディアン(漫談師)として舞台にも立ち、劇脚本家、「ニューヨーカー」の常連作家などを経て、やがて映画脚本を書くようになり、その後にやっと映画監督になったということです。

 著者の井上一馬氏は、作家であり、ボブ・グリーンの翻訳で知られる翻訳家でもありますが(自分が個人的に親しんだのはマイク・ロイコのコラムの著者による翻訳本でした)、アレンへの単なる偏愛の吐露に終わらず、ウディ・アレンの成育史、影響を与えたもの、女性たちとの関わり、さらには映画表現における技術的手法から映画製作に絡んだ様々な映画人までとりあげ、アレン作品を重層的に探る評伝&フィルモグラフィとなっていています。

「フェリーニのアマルコルド」('73年/伊・仏)
ラジオ・デイズ 000.jpgアマルコルド.jpg ウディ・アレンがベルイマンの影響を受けているのは知っていましたが、フェリーニの影響を受けていたことは本書で知りました。「ラジオ・デイズ」('87年)は、第二次世界大戦開戦直後のニューヨーク・クイーンズ区ユダヤ系移民の大家族とその一員である少年を中心に、ラジオから流れる名曲の数々など当時の文化や市民生活を通じて、彼らの夢見がちな生き方や無邪気な時代の空気を表した作品でしたが、アレンの自伝的作品であることは確かで、著者はこの「ラジオ・デイズ」を、アカデミー外国語映画賞をANNIE HALL.jpg受賞したフェリーニの「アマルコルド」('73年/伊・仏)にあたる作品であるとしています(これにはナルホドと思った)。どちらかと言うとベルイマン系と言える「ハンナとその姉妹」('86年)が傑作の誉れ高いですが、個人的には、最初に見た「アニー・ホール」('77年)の彼自身の神経症的な印象が強烈でした。

「アニー・ホール」.jpg ウディ・アレン演じるノイローゼ気味のコメディアン、アルビーと明るい性格のアニー・ホール(ダイアン・キートン)の2人の出会いと別れを描いた、コメディタッチでありながらもほろ苦い作品でした。因みに、"アニー・ホール"はダイアン・キートンの本名であり、これは、ダイアン・キートンに捧げた映画であるとも言えます。また、作中にべルイマンのこの映画製作時における最新作でイングリッド・バーグマン、リヴ・ウルマン主演の「鏡の中の女」('76年、米国での公開タイトルは"FACE TO FACE")のポスターが窺えますが、ダイアン・キートンはこの「アニー・ホール」で1977年アカデミー賞、1978年ゴールデングローブ賞の主演女優賞を受賞し、イングリッド・バーグマンが「白い恐怖」や「追想」で、リヴ・ウルマンがベルイマンの「叫びとささやき」で受賞しているニューヨーク映画批評家協会賞の主演女優賞も受賞しています(バーグマンはこの翌年ベルイマンの「秋のソナタ」('78年/スウェーデン)で3度目のニューヨーク映画批評家協会賞主演女優賞受賞をする)。

Diane Keaton 1977 Oscar.jpg 有楽町の「ニュー東宝シネマ2」というややマイナーなロードショー館に観に行った際には外国人の観客が結構多く来ていて、笑いの起こるタイミングが字幕を読んでいる日本人はやや遅れがちで、しまいには外国人しか笑わないところもあったりして、会話が早すぎて、訳を端折っている感じもしました。当時は"入れ替え制"というものが無かったので、同じ劇場で2度観ましたが、アカデミー賞の最優秀作品賞、主演女優賞受賞、監督賞受賞、脚本賞の受賞が決まるやいなや「渋谷パンテオン」などの大劇場で再ロードされました。

ダイアン・キートン 1977年ニューヨーク映画批評家協会賞・1977年全米映画批評家協会賞・1977年アカデミー賞、1978年ゴールデングローブ賞の各主演女優賞受賞

Truman Capote Look-Alike.jpg この映画には、様々な役者がパーティ場面などでチラリと出ているほか、「トルーマン・カポーティのそっくりさん」役でトルーマン・カポーティ本人が出ていたり、映画館で文明批評家マクルーハンの著作を解説している男に対し、アレンが本物のマクルーハンを引っぱってきて、「君の解釈は間違っている」と本人に言わせるなど、遊びの要素もふんだんに取り入れられています。

Truman Capote as Truman Capote Look-Alike

0f3de44e64a663d507abeffd3c5b6fc3 (1).jpg この映画で、アルビーは幼い頃ローラーコースター(和製英語で言えばジェットコースター)の下にある家で育ったことになっていますが(それが主人公が神経質な性格の原因だという)、これは撮影中のウディ・アレンの思いつきだったらしく、「ラジオ・デイズ」('87年)(こちらは劇場ではなく、知人宅でビデオで観た(89-05-02))でもその設定が踏襲されていたように思います(本当にウディ・アレンが子ども時代に遊園地の傍に住んでいたのかと思った)。

anniehall.jpg 何でこのウディ・アレンという人はこんなに女性にもてるのかと、羨ましい気分も少し抱いてしまいますが、いろんな人がいろんな形で彼の映画に出演したり関わったりしていることがわかり、楽しい本でした。


フェリーニのアマルコルド59.jpgフェリーニのアマルコルドog.jpeg(●2018年にフェリーニの「アマルコルド」('73年/伊・仏)を久しぶりに劇場で観ることができた。少年チッタ(ブルーノ・ザニン)とその家族を中心に、春の火祭り、豪華客船レックス号の寄港、年上の女性グラディスカ(マガリ・ノエル)への恋などが情感たっぷりに描かれる。ネットで誰かが「フェリーニのアマルコルド50.jpgフェリーニのアマルコルド30.jpgおよそ高尚とは程遠い、庶民による祝祭」と言っていたが、確かにそうかも。1930年代に台頭してきたファシズム「黒シャツ党」にグラディスカら女性たちが嬌声を上げたり、チッタの父が拷問を受けるシーンが時代を感じさせるが、映画全体のトーフェリーニのアマルコルドyo.jpegンは明るい。映像的にも美しいシ-ンが多いが、この映画で最も印象に残るシーンは、豪華客船レックス号が小船で沖へ出ていた町の人々の目の前に夜霧の中から忽然とその姿を現すシーンと、ラスト近くで、雪の日に街の真ん中で雪合戦をして遊ぶ少年達の目の前に白いクジャクが降り立つシーンだろう。ラストでチッタの母親は亡くなるが、イタリアでは孔雀は不吉なものとの迷信があり、後者のシーンは母親の死の前兆という位置づけにあることに改めて思い当たった。)


ANNIE HALL .jpg「アニー・ホール」●原題:ANNIE HALL●制作年:1977年●制作国:アメリカ●監督:ウディ・アレン●製作:チャールズ・ジョフィ/ジャック・ローリンズ●脚本:ウディ・アレン/マーシャル・ブリックマン●撮影:ゴードン・ウィリス ●時間:94分●出演:ウディ・アレン/ダイアン・キートン/トニー・ロバーツ/シェリー・デュバル/ポール・サイモン/シガニー・ウィーバー/クリストファー・ウォーケン/ジェフ・ゴールドブラム/ジョン・グローヴァー/トルーマン・カポーティ(ノンクレジット)●日本公開:1978/01●配給:オライオン映画●最初に観た場所:有楽町・ニュー東宝シネマ2(78-01-18)●2回目:有楽町・ニュー東宝シネマ2 (78-01-18)(評価:★★★★)
ニュー東宝シネマ1.jpgニュートーキョービル2.jpgニュー東宝シネマ1・2 チケット入れ.jpgニュー東宝シネマ2 1972年5月、有楽町ニュートーキョービル(有楽町マリオン向かいニユートーキヨー数寄屋橋本店ビル)B1「スキヤバシ映画」をリニューアルしてオープン。1995年6月閉館(同ビル3Fの「ニュー東宝シネマ1」は「ニュー東宝シネマ」として存続)。「ニュー東宝シネマ」(旧「ニュー東宝シネマ1」)..2009年2月10日~「TOHOシネマズ有楽座」、 2015(平成27)年2月27日閉館。

「ラジオ・デイズ」●原題:RADIO DAYS●制作年:1987年●制作ラジオデイズ.jpg国:アメリカ●監督:ウディ・RADIO DAYS 1987.jpgアレン●製作:ロバート・グリーンハット●脚本:ウディ・アレン●撮影:カルロ・ディ・パルマ●音楽:ディッキー・ハイマン●時間:94分●出演:ミア・ファロー/ダイアン・ウィースト/セス・グリーン/ジュリー・カブナー/ジョシュ・モステル/マイケル・タッカー/ダイアン・キートン/ダニー・アイエロ/ジュディス・マリナ/ウィリアム・H・メイシー/リチャード・ポートナウ●日本公開:1987/10●配給:ワーナー・ブラザース (評価:★★★☆)
ラジオ・デイズ [DVD]

フェリーニのアマルコルド.jpegフェリーニのアマルコルド_2.jpg「フェリーニのアマルコルド」●原題:FEDERICO FELLINI AMARCORD●制作年:1973年●制作国:イタリア・フランス●監督:フェデリコ・フェリーニ●製作:フランコ・クリスタルディ●脚本:フェデリコ・フェリーニ/トニーノ・グエッラ●撮影:ジュゼッペ・ロトゥンノ●音楽:ニーノ・ロータ●時間:124分●出演:ブルーノ・ザニン/マガリ「フェリーニのアマルコルド」amarcord4.jpg「フェリーニのアマルコルド」amarcord3.jpg・ノエル/プペラ・マッジオ/アルマンド・ブランチャ/チッチョ・イングラシア●日本公開:1974/11●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:池袋・文芸座(78-02-07)●2回目:早稲田松竹(18-12-14)●併早稲田松竹DSC_0019.JPG早稲田松竹DSC_0018.JPG映(1回目):「フェリーニの道化師」(フェデリコ・フェリーニ)●併映(2回目):「カザノバ」(フェデリコ・フェリーニ)(評価:★★★★)

早稲田松竹(2018.12.14)
                    
《読書MEMO》
ウディ・アレンが選ぶベスト映画10(from 10 Great Filmmakers' Top 10 Favorite Movies)
『第七の封印』(イングマール・ベルイマン監督、1956年)
『市民ケーン』 (オーソン・ウェルズ監督、1941年)
『大人は判ってくれない』 (フランソワ・トリュフォー監督、1959年)
『8 1/2』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1963年)
『フェリーニのアマルコルド』 (フェデリコ・フェリーニ監督、1974年)
『ブルジョワジーの秘かな愉しみ』 (ルイス・ブニュエル監督、1972年)
『大いなる幻影』 (ジャン・ルノワール監督、1937年)
『突撃』 (スタンリー・キューブリック監督、1957年)
『羅生門』 (黒澤明監督、1950年)
『自転車泥棒』 (ヴィットリオ・デ・シーカ監督、1948年)

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