【2508】 ○ 庵野 秀明/樋口 真嗣 「シン・ゴジラ (2016/07 東宝) ★★★☆ ○ 山崎 貴 「ゴジラ-1.0(マイナスワン) (2023/11 東宝) ★★★★)

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概ね原点回帰か。人情ドラマ抜きの事実っぽい脚本が功を奏す。"変態"は不要だった? 解釈としては...。
シン・ゴジラ  2016.jpgシン・ゴジラ 41.jpg シン・ゴジラ 07.jpg
「シン・ゴジラ」チラシ

シン・ゴジラ9.jpg ゴジラシリーズの第29作で、『ゴジラ FINAL WARS』('04年/東宝)以来約12年ぶりの日本製作のゴジラシリーズ作。公開前は、コアな映画ファン、ゴジラファンの間ではともかく、一般にはそれほど話題にもなっていなかったのが、7月29日の公開後にネットや口コミでどんどん客足を伸ばし、前作で目標としていたものの果たせなかった'54年からスタートしたシリーズの累計観客動員数1億人突破を公開4日で果たし、公開1か月で累計動員360万人、累計興行収入53億円を突破、11月16日までの公開111日間で、観客動員551万人、興行収入が80億167万円を記録するなど、興行面で成功を収めています(2017年(2016年度)「芸術選奨」受賞作)。 

シン・ゴジラ 45.jpg 映画がヒットした要因としてまず挙げられることは、完璧とまでは言えないもののゴジラ映画の原点に回帰した点であり、観る前は全編CGでどうなのかなと思いましたが、観てみたら、ゴジラならではの重々しさや生々しさ、無敵の暴れん坊ぶりはなかなかのものでした。ゴジラのテーマや自衛隊のテーマなどお馴染みの伊福部BGMも使われていて、シリーズのオールドファンには懐かしいのではないでしょうか。個人的には、「宇宙大戦争」('59年/東宝)のテーマが使われていたのが(リアルタイムで観た作品ではないけれど)何だか嬉しかったです。

シン・ゴジラ 42.jpg 庵野秀明監督は、脚本の執筆段階から防衛省・自衛隊に協力を依頼し、「実際にゴジラが現れた場合、自衛隊はどのように対処するのか」「ゴジラに対して武器の使用が認められるのか」などミーティングを繰り返し行い、事実に即した脚本に仕上げていったとのことで、それが怪獣映画にしては比較的豪勢な役者陣の演技と相俟って、緊迫感とテンポの良さを生み出しています(時にコミカルな風刺も効かせていて、これもまたいい)。この映画から、自衛隊の強みと弱みが窺えるという人もいるくらいで、「機能的」脚本とでも言うか、こうした映画に挿入されがちな、恋人がどうしたとか妻子がどうしたといった人情ドラマは殆ど混ざり込む余地のない作りになっているのがいいです(石原さとみの"バイリンガルの米国大統領特使"だけが浮いていた)。

シン・ゴジラ 44.jpg ここまで殆ど褒めっ放しで、では欠点は無いのかと言うと、概ねゴジラ映画の原点に回帰したとは言え、ゴジラ自体が核開発の犠牲者であるという悲劇的要素がややシン・ゴジラ第2形態.jpg抜け落ちた印象も受けました(従って、ゴジラの雄叫びにオリジナルのような悲壮感があまり感じられない)。加えて、ゴジラが1個体で4段階もの変態を繰り返すというのは、本当に必要なアレンジだったのかやや疑問に思いました(CGで出来るからやったという印象も)。

『シン・ゴジラ』.jpg 特に第2変態の段階で、最初に上陸してその顔が正面から捉えられたと思ったら、ウーパールーパーみたいな顔に見えたのが拍子抜けしたと言うか、オリジナル特有の悲壮感から更に遠くなり残念に思いました(深海サメの一種「ラブカ」をモチーフにしたらしいが、ラブカはあんなピンポン玉みたいな目ではない。ほとんどぬいぐるみの世界)。

シン・ゴジラ49.jpg ゴジラを倒すための血液凝固剤って結局何だったのか、単なる液体窒素だったのか、それならば、牧悟郎(岡本喜八が写真のみの出演)博士の「ゴジラの元素変換機能を阻害する極限環境微生物の分子式」を解読する作業なんてあまり意味が無さそうにも思えるし、そもそも博士がなぜ資料をわざわざ暗号化したのかも、分かった人には分かったのかもしれないけれど、自分にはイマイチぴんときませんでした。この辺りについては、「シン・ゴジラを読み解くこと」がある種ブームのようになっていて、一般的な映画ファンだけでなく、例えば朝日新聞などは論説委員が新聞に読み解きを書いており、興味がある人はそうした記事も読んだ覚えがあるかも(政治の無能に対して行政の有能、日本型組織の強みがある種「美談」として描かれている一方、初代ゴジラに見られたような、ゴジラを生み出した文明のありように対する疑念や苦悩は殆ど描かれていないという指摘は的を射ていると思った)。

シン・ゴジラs.jpg ゴジラを倒しておいて、取り敢えず首都は大阪に移して、ゴジラは凍らせたまま東京駅傍に放置しておくなんてあり得るのかなあという気がしますが、おそらく、ゴジラは「原発」のメタファーであり、ゴジラ(原発)を管理し続けるという宿命を負った日本の未来を表しているのでしょう。ならば、博士の「好きにしろ」という「遺言」の意味は何なのか?-とか、ラストのゴジラの尾に蠢く人影は何を意味するのか?-とか、確かにいろいろ読み解きを促す作りにはなっています。

シン・ゴジラ 09.jpg 今度ゴジラが動き出したら、熱核攻撃のカウントダウンが再開するということで、次回作は東京駅から始まるのでしょうか。都心を汚染したゴジラの放射性物質は半減期が短く、2、3年で影響がなくなるとの設定なので、やがて避難先から360万人の住民が帰還することになったとして、スカイツリーじゃないのだから、立ち尽くすゴジラを見ながら半恒久的に生活を送るというのはちょっと考えにくく、やはり次回作を想定した終わり方なのでしょう(これで、次回作でゴジラがまたいきなり海の中から出てきたら、あの東京駅傍のゴジラはどうなったと突っ込みたくもなるだろう)。

塚本晋也 in「シン・ゴジラ」('16年・庵野秀明監督)「沈黙-サイレンス-」('17年・マーティン・スコセッシ監督)
塚本晋也 シンゴジラ.jpg 塚本晋也 沈黙.jpg

シン・ゴジラ84.jpg「シン・ゴジラ」●制作年:2016年●総監督・脚本:庵野秀明●監督・特技監督:樋口真嗣●撮影:山田康介●音楽:鷺巣詩郎/伊福部昭●時間:119分●出演:長谷川博己/竹野内豊/石シン・ゴジラ cast.jpg原さとみ/高良健吾/大杉漣/柄本明/余貴美子/國村隼/市川実日子/ピエール瀧/斎藤工/小出恵介/古田新太/前田敦子/犬童一心/緒方明/片桐はいり/神尾佑/KREVA/黒田大輔/小出恵介/小林隆/嶋田久作/諏訪太朗/高橋シン・ゴジラ 大杉漣.jpg一生/塚本晋也/津田寛治/鶴見辰吾/手塚とおる/中村育二/野間口徹/橋本じゅん/浜田晃/原一男/平泉成/藤木孝/松尾諭/松尾スズキ/三浦貴大/光石研/森廉/モロ師岡/矢島健一/渡辺哲/(ゴジラのモーションキャプチャ)野村萬斎●公開:2016/07●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ新宿(16-08-29)(評価:★★★☆)
大杉漣(1951-2018)(内閣総理大臣・大河内清次)
TOHOシネマズ新宿
TOHOシネマズ新宿.jpgスクリーン 座席数(車椅子用) スクリーンサイズ
TOHOシネマズ 新宿3.jpgSCREEN 1 86+(2) 3.2×7.6m
SCREEN 2 108+(2) 5.3×12.6m MX4D®
SCREEN 3 128+(2) 4.5×10.8m
SCREEN 4 200+(2) 5.2×12.6m
SCREEN 5 184+(2) 4.0×9.6m
SCREEN 6 117+(2) 4.6×11.0m
SCREEN 7 407+(2) 7.3×17.7m
SCREEN 8 88+(2) 3.2×7.6m
SCREEN 9 499+(2) 8.0×19.2m TCX
SCREEN 10 311+(2) IMAX®デジタルシアター
SCREEN 11 122+(2) 3.9×9.5m
SCREEN 12 73+(2) 2.8×6.6m
12スクリーン 2,323+(24)
   
映画「ゴジラ」シリーズ.jpg映画「ゴジラ」シリーズ全29作

●第1期・昭和ゴジラシリーズ(1954~1975)[15作]
 第1作「ゴジラ」~第15作「メカゴジラの逆襲」
●第2期・平成ゴジラシリーズ(1984~1995)[7作]
 第16作「ゴジラ」~第22作「ゴジラvsデストロイア」
●第3期・ミレニアムゴジラシリーズ(1999~2004)[6作]
 第23作「ゴジラ2000 ミレニアム」~第28作「ゴジラ FINAL WARS」
●2010年代[1作]
 第29作「シン・ゴジラ」

●2020年代[1作]
 第30作「ゴジラ-1.0」

「ゴジラ-1.0」2023.jpg(●2023年、「ALWAYS 三丁目の夕日」('05年)、「海賊と呼ばれた男」('16年)の山崎貴監督・脚本で「ゴジラ-1.0」が製作・公開された。CGの技術が前作よりアップしていて、海上を追いかけてくるゴジラは迫力があった(米国でも邦画実写として歴代1位となる興行成績を上げ、第96回「アカデミー賞」の「視覚効果賞」に日本映画として初めてノミネートされ、受賞を果たした)。「特攻できなかった特攻隊」を主軸に据えた脚本も悪くなく、人間ドラマとしても良く「ゴジラ-1.0」[.jpg出来ていた(最後、「アルマゲドン」みたいにならなくて良かった)。主演の神木隆之介・浜辺美波は「屍人荘の殺人」('19年)でも共演したが、牧野富太郎をモデルにした昨年「'23年」度上期のNHK連続テレビ小説「らんまん」での共演を経たためか、互いが遣り取りする演技が上手くなっていた。「シン・ゴジラ」が概ねゴジラ映画の原点に回帰したと前に書いてしまったが、こちらの方がより原点回帰的であり、「4段階もの変態を繰り返す」という「シン・ゴジラ」の方は、「新ゴジラ」と言うよりは「邪道」に思えてきてしまった。)

神木隆之介/浜辺美波

「ゴジラ-1.0」1.jpg「ゴジラ-1.0(マイナスワン)」●英題:GODZILLA MINUS ONE●制作年:2023年●監督・脚本:山崎貴●監督・特技監督:山田兼司/岸田一晃/阿部豪/守屋圭一郎●撮影:柴崎幸三●音楽:佐藤直紀/伊福部昭●時間:125分●出演:神木隆之介/浜辺美波/山田裕貴/田中美央/遠藤雄弥/飯田基祐/永谷咲笑/須田邦裕/谷口翔太/鰐渕将市/三濃川陽介/日下部千太郎/赤妻洋貴/千葉誠太郎/持永雄恵/市川大貴/吉岡秀隆/藤田啓介/苅田裕介/松本誠/伊藤亜斗武/保里ゴメス/阿部翔平/仲城煎時/青木崇高/安藤サクラ/佐々木蔵之介●公開:2023/11●配給:東宝●最初に観た場所:TOHOシネマズ日本橋(23-12-20)(評価:★★★★)
 
東京ミッドタウン日比谷 初代ゴジラ・ハーフ立像(2024年2月1日~3月10日)2024年2月8日撮影
ゴジラ像.jpg
 
安藤サクラ「第47回日本アカデミー賞」で主演女優賞(「怪物」)と助演女優賞(「ゴジラ-1.0」)のW受賞(2024.3.8 YouTube Japan)/山崎貴監督「第96回米アカデミー賞」で視覚効果賞(「ゴジラ-1.0」)を日本映画として初受賞(2024.3.11 日本テレビ)
2024日米アカデミー.jpg

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