【1043】 ○ ジョージ・スティーブンス (原作:エドナ・ファーバー) 「ジャイアンツ」 (56年/米) (1956/12 ワーナー・ブラザーズ) ★★★★ (○ ジョージ・スティーブンス 「シェーン」 (53年/米) (1953/10 パラマウント映画) ★★★☆)

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「シェーン」.jpg 「父親は強い男でなければならない」ということか。アラン・ラッドが降りて役を得たジェームズ・ディーン。
ジャイアンツ.jpg ジャイアンツ3.jpg エドナ・ファーバー「ジャイアンツ(上・下)」早川書房.jpg
ジャイアンツ [DVD]」/エドナ・ファーバー『ジャイアンツ(上・下)』 [56年/早川書房]/「シェーン [DVD]

ジャイアンツ パンフ.jpgジャイアンツ ポスター.jpg  「ジャイアンツ」('56年)はエドナ・ファーバー女史のベストセラー小説の映画化作品ですが、完成3日後にジェームズ・ディーンが事故死するという不幸もあって話題を呼び、当時アメリカでも日本でも大ヒットしたとのこと。
GIANT 1956.jpg ジェームズ・ディーンの老け役の演技には批評家の間で賛否があったものの、ディーンのスタニフラフスキー流演技が、ロック・ハドソンの古典派演技と好対照を成している点でも興味深い作品です。

 その他にも実に色々な見方ができる映画です。以前観た際には、アメリカン・ドリームの光と影を体現したジェームズ・ディーン演じるところのジェット・リンクにばかり目がいっていましたが、実はこの作品は、ロック・ハドソン、エリザベス・テーラーが夫婦役を演じる家族ドラマだったのだと思いました(当初は夫役をウイリアム・ホールディンがやる予定だったが、監督の気が変ってロック・ハドソンに。妻役も、グレース・ケリーに決めていたが、彼女がモナコ大公と結婚したために、オードリー・ヘップバーンなどが候補としてあがり、最終的にエリザベス・テーラーに決まった。一方、ジェームズ・ディーンは、ジョージ・スティーブンス監督にこのジェット・リンク役をやらせてほしいと直訴していた)。

シェーン.jpgSHANE.jpg ある家族の前に突然現れた流れ者という設定は、同じジョージ・スティーブンス監督の前作「シェーン」('53年)と似ていますが、流れ者の"シェーン"を演じたアラン・ラッドが、実は「ジャイアンツ」の同じく"流れ者"であるジェット・リンク役に予定されていたのが、アラン・ラッドが役を降りたために、監督に直訴していたジェームズ・ディーンの願いが叶い、ジェット・リンク役が彼に回ってきたという経緯があります。

Shane (1953).jpg 「シェーン」に出てくる家族の父親は、シェーンに一方的に助けられ何とか悪徳牧畜業者から家族を守りますが、これでは家長としての面目は丸つぶれではないでしょうか。奥さんはシェーンに惹かれ、シェーンも奥さんに惹かれている―その想いを断ち切るかのようにシェーンは去っていきますが、この後の夫婦の関係という観点から考えると、ハッピーエンドとは言い切れないモヤモヤしたものが残ります。

 但し、この映画、日本で西部劇の人気投票をすると必ず上位にくるだけでなく、しばしばトップに選ばれる作品で、映画評論家に言わせれば、日本の股旅物のストーリーと見事に重なるため、日本人の心情に合いやすい作品であるとのこと。

 一方、この「ジャイアンツ」の一家の父親(ロック・ハドソン)は、流れ者(ジェームズ・ディーン)に対し、家長としての威厳を賭して対抗し、ジェット・リンクに惹かれそうになる奥さん(エリザベス・テーラー)の気持ちを自らの元に繋ぎとめているように思えます。

 ジョージ・スティーブンス監督には幼い頃に母親喪失の不安感があったそうですが、自身の不安の克服が「父親は母親を守ることができる強い男でなければならない」というアメリカ的な信条に沿った内容に結実したということなのでしょうか。

Jaiantsu(1956).jpg 撮影中にジェームズ・ディーンは、自分の役の影が薄いことをジョージ・スティーブンス監督に何度も抗議したものの、監督にことごとく却下されたそうです。

 何よりも、タイトルに表される舞台スケールの大きさ(「ジャイアンツ」はテキサス州のことを表すと同時に、原題「ジャイアント」は巨大油田を表す)に惹かれます。ここが日本の家族ドラマと一番違うところであり、あの石油が噴き出すシーンなどはマネできない。なにせ、テキサス1州だけで日本の国土の総面積の1.8倍ぐらいの広さがありますから、まさに"ジャイアンツ"。

Jaiantsu(1956)

 ところで、「シェーン」で主役を演じたアラン・ラッド(1913-1964)は、それまでも二枚目俳優としてそこそこ人気はありましたが、ダシール・ハメット原作、スチュアート・ヘイスラー監督の「ガラスの鍵」('42年)などにアラン・ラッド.jpgシェーン002.jpgおいても、原作における主人公の役を演じているのに映画の中では準主役級にされてしまっていたように、大スターと言えるほどの俳優ではなかったのが、この「シェーン」1作で一気にハリウッドの大スターとなります。ところが、その後は大した作品に出ておらず、60年代を過ぎて人気にも陰りが出てからはノイローゼになり、最後は睡眠薬の多用が原因で亡くなっています(享年50)

Alan Ladd in SHANE(1953) 

Jack Palance  in SHANE(1953)/in Bagdad Cafe(1987)
ジャック・パランス1.jpgOUT OF ROSENHEIM.jpg 一方のシェーンの敵役の殺し屋のウィルソン(酒場でコーヒーしか飲まないところが却って凄味があった)を演じたジャック・パランス(1919-2006)は、その後も性格俳優として活躍し、どちらかと言うと相変わらず悪役が多かったですが、パーシー・アドロン監督のバグダッド・カフェ」('87年/西独)で"老い楽の恋"に静かな情念を燃やす老画家役を好演し、個人的には、あの映画では、ジェヴェッタ・スティールが歌うテーマ曲「コーリング・ユー」と並んで最も印象に残りました(「あのジャック・パランスが」という想いで観たということもあるが)。

 しかし、その後も娯楽映画で"しっかり"悪役を演じ続け(「デッドフォール」('89年)でシルヴェスター・スタローン、カート・ラッセルを相手に犯罪組織のボスを演じていた)、一方、モンスター・パニック映画「トレマーズ」('90年)のロン・アンダーウッド監督がその次に撮ったコメディ映画「シティ・スリッカーズ」('91年)では、アカデミー賞助演男優賞、ゴールデングローブ賞助演男優賞 をダブル受賞しています。「シティ・スシティ・スリッカーズ dvd.jpgリッカーズ」は、ビリー・クリスタルらが演じる3人の中年男シティ・スリッカーズ パランス.jpgが「カウボーイ体験ツアー」に軽い気持ちで参加し、予期せずにもそこで自らを見つめ直し、自己を取り戻していくという話で(当時のアメリカの不況を反映している面もあったのかも)、「カウボーイ体験ツアー」なるものがあるのを初めて知りましたが、ジャック・パランスはツアーの教官役の老齢のカウボーイを演じ、当時72歳でしたが、老境に達していい味を出していました。「シティ・スリッカーズ [DVD]」Jack Palance & Billy Crystal in City Slickers(1991)

ジャック・パランス.jpg 映画の中でジャック・パランス演じるベテラン・カウボーイは心臓病で急死し、残された3人は、素人のまま「牛追い」の旅をすることになるわけですが(ジョン・ウェインの「赤い河」を意識したかのような牛追いシーンがあった)、実際のジャック・パランス本人は'06年に87歳で老衰のため亡くなっています。

 「役者」としての足跡はアラン・ラッドの方が大きいのかもしれないけれど、「人生」としてはジャック・パランスの方が恵まれていたかも。

Elizabeth_Taylor_in_Giant.jpgRock_Hudson_in_Giant.jpgGiant is best known as Dean's last film.jpg「ジャイアンツ」●原題:GIANT●制作年:1956年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●製作:ジョージ・スティーヴンス/ヘンリー・ジンスバーグ●脚本:フレッド・ジュイオル/アイヴァン・モファット●撮影:ウィリアム・C・メラー/エドウィン・デュパー●音楽:デミトリー・ティオムキン/レイ・ハインドーフ●原作:エドナ・ファーバー「ジャイアンツ」●時間:201分●出演:ジェームズ・ディーン/エリザベス・テーラー/ロック・ハドソン/ジェーDennis Hopper Giant (1956).jpgン・ウィザース/キャロル・ベイカー/チル・ウィリス/メーセデス・マッキャンブリッジ/サル・ミネオ/ロッド・テイラー/ナポレオン・ホワイ「ジャイアンツ」d.gifティング/ジュディス・エヴリン/ポール・フィックス/エルザ・カルデナス/フラン・ベネット/デニス・ホッパー/マーセデス・マッケンブリッジ●日本公開:1956/12●配給:ワーナー・ブラザーズ●最初に観た場所:早稲田松竹(77-12-21) (評価★★★★)●併映:「理由なき反抗」(ニコラス・レイ)

デニス・ホッパー(ジョーダン3世)[中央]

シェーン001.jpgシェーン jパランス.jpg「シェーン」●原題:SHANE●制作年:1953年●制作国:アメリカ●監督:ジョージ・スティーブンス●製作:ジョージ・スティーヴンス●脚本:A・B・ガスリー・Jr●撮影:ロイヤル・グリグス●音楽:ヴィクター・ヤング●原作:ジャック・シェーファー「シェーン」●時間:118分●出演:アラン・ラッド/ヴァン・ヘフリン/ジーン・アーサー/ブランドン・デ・ワイルド/ジャック・パランス/ペン・ジョンスン/エドガー・ブキャナン/エミール・メイヤー/エリシャ・クック・Jr./ダグラス・スペンサー/ジョン・ディエルケス●日本公開:1953/10●配給:パラマウント映画●最初に観た場所:高田馬場パール座(77-12-20) (評価★★★☆)●併映:「駅馬車」(ジョン・フォード)          
パール座入口(写真共有サイト「フォト蔵」)①②高田馬場東映/高田馬場東映パラス ③高田馬場パール座 ④早稲田松竹
高田馬場パール座2.jpg高田馬場パール座 地図.pngパール座.jpg高田馬場パール座4.JPGパール座1.jpg高田馬場パール座(高田馬場駅西口、早稲田通り・スーパー西友地下) 1951(昭和26) 年封切館としてオープン。1963(昭和38)年の西友ストアー開店後、同店の地下へ。1989(平成元)年6月30日閉館。

  
 
 
 

「シティ・スリッカーズ」●原題:CITY SLICKERS●制作年:1991年●制作国:アメリカ●監督:ロン・アンダーウッド●製作:アービー・スミス●脚本:ローウェルシティ・スリッカーズ  .jpg・ガンシティ・スリッカーズ 2.jpgツ/ババルー・マンデル●撮影:ディーン・セムラー●音楽:マーク・シェイマン●時間:112分●出演:ビリー・クリスタル/ダニエル・スターン/ブルーノ・カービー/ヘレン・スレイター/ジャック・パランス/パトリシア・ウェティグ/ノーブル・ウィリンガム/デヴィッド・ペイマー/フィル・ルイス/ジェフリー・タンバー/カイル・セコー/トレイシー・ウォルタ/ロバート・コスタンゾ/イヤードリー・スミス/ジェイク・ジレンホール(映画初出演)/ダニエル・ハリス/フランク・ウェルカー●日本公開:1992/03●配給:東宝東和 (評価★★★) 「シティ・スリッカーズ/オリジナル・サウンドトラック

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エリザベス・テイラー 2011年3月23日うっ血性心不全のため死去。享年79.

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