【2566】 ○ ジョン・リー・ハンコック 「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」 (16年/米) (2017/07 KADOKAWA) ★★★☆ (△ ティム・バートン (原作:サム・ハム) 「バットマン」 (89年/米) (1989/12 ワーナー・ブラザース) ★★☆)

「●は行の外国映画の監督①」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【3073】 クロード・ピノトー 「ラ・ブーム
「○外国映画 【制作年順】」の インデックッスへ 「○都内の主な閉館映画館」の インデックッスへ(渋谷パレス座)インデックッスへ(渋谷シネパレス)「●海外のTVドラマシリーズ」の インデックッスへ(「怪鳥人間バットマン」)

テンポが良いサクセス・ストーリー。成功の裏側も描いていて楽しめた。

ファウンダー tirasi.jpg 
「ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ」チラシ

ファウンダー01.jpgファウンダー02.jpg 1954年、シェイクミキサーのセールスマン、レイ・クロック(マイケル・キートン)に8台もの注文が飛び込む。注文先はマック(ジョン・キャロル・リンチ)とディック(ニック・オファーマン)のマクドナルド兄弟が経営するカファウンダー04.jpgリフォルニア州南部にあるバーガー・ショップ「マクドナルド」だった。合ファウンダー05.jpg理的なサービス、コスト削減、高品質という、店のコンセプトに勝機を見出したクロックは兄弟を説得し、「マクドナルド」のフランチャイズ化を展開する。しかし、利益を追求するクロックと兄弟の関係は次第に悪化し、クロックと兄弟は全面対決へと発展してしまう―。

マクドナルド セミナー資料.jpg ジョン・リー・ハンコック監督の2016年製作映画(本国公開2016年12月7日、日本公開2017年7月29日)で、「マクドナルド」の"創業者"(founder)"レイ・クロックの成功とその裏側を描いた実話風ビジネスドラマです。レイ・クロックの「マクドナルド」に纏わる話は、本で読んだり(自伝『成功はゴミ箱の中に』成功はゴミ箱の中に 01.jpgは有名)、或いは、マクドナルドで教育研修を担当していた人の講演セミナーを聴いたりすることがあり知っていましたが(元社員の人は大体セミナーの冒頭にレイ・クロックの話をする)、映画はテンポが良くて、しかも内容がサクセス・ストーリーなので(成功の裏側も描いていて)楽しめました。『成功はゴミ箱の中に レイ・クロック自伝―世界一、億万長者を生んだ男 マクドナルド創業者 (PRESIDENT BOOKS)

マクドナルド兄弟の店.jpg    マクドナルド兄弟の店 ファウンダ―.jpg
マクドナルド兄弟の店(1940年カリフォルニア州サンバーナーディノにオープン)実物/映画

マクドナルド フランチャイズ1号店.jpg 壮大なフランチャイズ・ビジネスで利益を追求しようとするレイ・クロックと、小規模でも堅実な道を歩もうとするマクドナルド兄弟との確執に焦点を当てていて、フェイスブックの創業者間の対立を描いた「ソーシャル・ネットワーク」('10年)と似ている部分もありますが、本国の批評家の間では2010年ゴールデングローブ賞の作品賞を獲得した「ソーシャル・ネットワーク」ほどには(今のところ)評価されていないようです。ただ、個人的には「ソーシャル・ネットワーク」より面白かったです。
マクドナルド フランチャイズ1号店(1955年4月シカゴ郊外にオープン、現在はMcDonald's Corporation Museum)

ファウンダー 09.jpg この映画の日本版のキャッチ・コピーの1つに「英雄か。怪物か。」というのがありますが、本国版のキャッチ・コピーは"He took someone else's idea and America ate it up."で、「他人のアイデア」とあるように、30秒以内に注文客に商品を渡すといったマクドナルドのコンセプト自体は、レイ・クロックの独創ではないことをより明確に打ち出しています。この映画はマクドナルド社の協力無しに作られているわけですが、それでもレイ・クロックという人物を、アクの強さがあるにせよ、進取の気性に富み、スモール・ビジネスをビッグ・ビジネスに変えた傑物として描いている部分が大きいように思いました。

ファウンダー09.jpg 中盤でレイ・クロックが、人から"創業"はいつか聞かれて答えに窮する場面があったのが印象に残りました(創業したのはマクドナルド兄弟だから)。それが、ビジネスが拡張すると、彼自身が"ファウンダ―(創業者)"を名乗るようになり、終いにはマクドナルド兄弟から経営権を全面的に買い取って、兄弟には「マクドナルド」という名を使わせないようにします。マクドナルド兄弟に「マクドナルド」という名を使わせないというのもスゴイですが、兄弟が交換条件として求めた「永続的に利益の1%」を支払うという件については、契約書には記さず"紳士協定"ということにして、必ず守ると言いながら反故にし、兄弟の店はやがて閉店することになったことを映画は最後に伝えています。

ファウンダー 08.jpg こうした「目的のためには手段を選ばず」的な面はあるものの、52歳のうだつの上がらないシェイクミキサーのセールスマンだった男が、あれよあれよという間に外食産業の帝国を築いてしまうというのは、まさにアメリカン・ドリームを象徴するような話であるには違いありません。成功の条件は、ひたすら「根気強く」ということでしょうか。但し、映画で描かれる彼は、人の能力(やる気と言うべきか)を見抜く才能があり、そうして得た人材を適材を適所に配置することに長け、また、いいタイミングで自身の右腕となる参謀的な人物と出会えたという運もあったようです。

 マクドナルド兄弟が革新的な"スピード・サービス・システム"を編み出したプロセスが描かれているのが興味深かったです。まさに、テーラーの"科学的管理法"であり、映画の中でも言われているように、ヘンリー・フォードの"フォード・システム"です。但し、外食産業で一番最初にフォード・システムを取り入れたのは1930年創業のKFC(ケンタッキーフライドチキン)であり、1940年に最初のマクドナルドを開いたマクドナルド兄弟が考えたようなことを、当時は既に組織的に導入していたのではないかと思われます。

ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ 07.jpg KFCはフランチャイズ・ビジネスという点でもマクドナルドのずっと先輩格にあたるわけですが、マクドナルドもフランチャイズ・ビジネス抜きには考えられないわけで、そうした観点から見ればレイ・クロックも"ファウンダ―(創業者)"と言えなくはないと思います。彼は「マクドナルド」という商標にこだわったため、マクドナルド兄弟との対立が深まったという気もします。なぜ、「クロック」とせず「マクドナルド」にこだわったのかが、映画の中でも、また本物のレイ・クロックが登場する記録映像の中でも明かされていたのが興味深かったです(両親はチェコ系ユダヤ人であり、クロックという姓は当時の米国ではマイノリティ=被差別層を想起させる姓ということになる)。

バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡).jpgバードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)01.jpg 「バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)」('14年)でアカデミー主演男優賞にノミネートされたマイケル・キートンがレイ・クロックを好演しています。マイケル・キートン主演のビジネス・ムービーとガンホーdvd.jpg言えば、ロン・ハワード監督の米国に進出した日本の自動車メーカーを舞台とした「ガン・ホー」('86年)がありましたが、あれから30年経っているのかあ(髪の毛が薄くなるのも無理はない)。「バードマン」で、かつてのスーパーヒーロー、バードマン役で人気があったが今は落ち目の中年俳優を演じて、一気に"演技派"の評価を得ましたが("中年以降の人生の逆転劇"という点ではこの「ファウンダー」も同様)、マイケル・キートン自身もかつてはティム・バートン監督の「バットマン」('89年)と「バットマン・リターンズ」('89年)にバットマンことブルース・ウェイン役で出演していました。

バットマン BATMAN 1989.jpgバットマン マイケル・キートン.jpg 「バットマン」で彼が演じたバットマンはとにかく暗く、映画自体が暗かったです。ロビンも出てこないし、昔テレビでやっていた実写版の「怪鳥人間バットマン」('66‐'67年)とは随分違う感じがしました。映画は米国ではヒットしたようですが、日本では宣伝の割りにはイマイチだったように思います。"ジョーカー"を演じたジャック・ニコルソンのギャラの高さが話題になった記憶があります。

バットマン・リターンズ 02.jpgバットマン・リターンズ .jpg シリーズ第2作の「バットマン・リターンズ」は、ペンギン男にダニー・デヴィート、新登場のキャット・ウーマンにミシェル・ファイファーを配しましたが、共に主役のマイケル・キートンを完全に喰ってしまう怪演を見せ、第1作よりちょっとだけ面白かったかも。何れにせよ、マイケル・キートンは、主演であるのに第1作でジャック・ニコルソンに喰われ、第2作でダニー・デヴィート、ミシェル・ファイファーに喰われるという損な役回りだったようにも思います。

 マイケル・キートンはシリーズ3作目で、ティム・バートンの監督降板と共にバットマン役(二代目)をヴァル・キルマー(「トゥームストーン」('93年))に譲っています。ただし、ヴァル・キルマーのバットマン役はシリーズ第3作「バットマン フォーエヴァー」('95年)だけで、バットマン役はその後、第4作「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」('97年)ではジョージ・クルーニー、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイトトリロジー三部作」と言われる第5作「バットマン ビギンズ」('05年)、第6作「ダークナイト」('08年)、第7作「ダークナイト ライジング」('12年)ではクリスチャン・ベール(「ザ・ファイター」('11年))、第8作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」('16年)、第9作「ジャスティス・リーグ」('17年)ではベン・アフレック(「アルゴ」('12年))と変遷していきます。ただし、第8作「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」、第9作「ジャスティス・リーグ」は、DCコミックスの実写化映画作品を、同一の世界のクロスオーバー作品群として扱った「DCエクステンデッド・ユニバース」シリーズのそれぞれ第2作と第5作という位置づけにあり、純正なバットマン映画とは言い難い気もします。最初に演じたマイケル・キートンが最も嵌り役だった思いますが、次に挙げるとすれば、最多の3作出演のクリスチャン・ベールだったでしょうか。ただし、彼も、「ダークナイト」ではジョーカーを演じたヒース・レジャー(1979-2008(28歳没))( 「ブロークバック・マウンテン」('05年/米))に喰われ気味でした。


ファウンダー00.jpg「ファウンダー ハンバーファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ  .jpgガー帝国のヒミツ」●原題:THE FOUNDER●制作年:2016年●制作国:アメリカ●監督:ジョン・リー・ハンコック●製作:ドン・ハンドフィールド/ジェレミー・レナー/アーロン・ライダー●脚本:ロバート・シーゲル●撮影:ジョン・シュワルツマン●音楽:カーター・バーウェル●時間:115分●出演:マイケル・ファウンダーes.jpgキートン/ニック・オローラ・ダーン ファウンダー ハンバーガー帝国のヒミツ.jpgファーマン/ジョン・キャロル・リンチ/リンダ・カーデリニ/パトリック・ウィルソン/B・J・ノバク/ローラ・ダーン/ジャスティン・ランデル・ブルック/ケイト・ニーランド●日本公開:2017/07●配給:KADOKAWA●最初に観た場所:渋谷シネパレス(旧渋谷パレス座)(17-07-30)(評価★★★☆)

ジョン・キャロル・リンチ TV「ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言」('11年~'13年)/「ラッキー」('17年/米)監督
1ボディ・オブ・プルーフ 死体の証言 (2).jpg  ラッキー 映画 2017.jpg ジョン・キャロル・リンチ監督.jpg

渋谷シネパレス3.jpg渋谷パレス座.jpg渋谷シネパレス.jpgシネパレス シネクイント.jpg渋谷パレス座 1948年渋谷パレス座オープン。1990年6月閉館。1992年3月14日「渋谷シネパレス」として改築オープン。2003年6月~2館体制(スクリーン1:182席/スクリーン2:115席)。上写真「ハイローリング」('77年/米)(1978/12 公開)/「恋人たちの予感」('89年/米)(1989/12 公開)2018年5月28日「渋谷シネパレス」閉館。2018年7月2日「シネクイント」(旧PARCO SPACE PART3)(2016年8月7日閉館)の後継館として再オープン(スクリーン1:162席、スクリーン2:115席)。

ガン・ホー1986 04.jpgガン・ホー1986 02.jpg「ガン・ホー」●原題:GUNG HO●制作年:1986年●制作国:アメリカ●監督:ロン・ハワード●製作:デボラ・ブラム/トニー・ガンツ●脚本:ローウェル・ガンツ/ババルー・マンデル●撮影:ドナルド・ピーターマン●音楽:トーマス・ニューマン●時間:11ガン・ホー01.jpg1分●出演:マイケル・キートン/ゲディ・ワタナベ/ミミ・ロジャース/山村聰/クリント・ハワード/サブ・シモノ/ロドニー・カゲヤマ/ジョン・タトゥーロ/バスター・ハーシャイザー/リック・オーヴァートン●日本公開:(劇場未公開)VHS日本発売:1987/11●発売元:パラマウント・ホーム・エンタテインメント・ジャパン(評価:★★★☆)

バットマン 1989.jpgバットマン 1989 dvd.jpg「バットマン」●原題:BATMAN●制作年:1989年●制作国:アメリカ●監督:ティム・バートン●製作:ジョン・ピータース/ピーター・グーバー●脚本:サム・ハム/ウォーレン・スカーレン●撮影:ロジャー・プラット●音楽:ダニー・エルフマン(主題歌:プリンス)●原作:サム・ハム●時間:127分●出演:マイケル・キートンジャック・ニコルソン/キム・ベイシンガー/ロバート・ウール/パット・ヒングル/ビリー・ディー・ウィリアムス/マイケル・ガウ/ジャック・パランス/リー・ウォーレス●日本公開:1989/12●配給:ワーナー・ブラザース(評価★★☆)
バットマン [DVD]

バットマン・リターンズ 1992 .jpgバットマン・リターンズ 1992 dvd.jpg「バットマン・リターンズ」●原題:BATMAN RETURNS●制作年:1992年●制作国:アメリカ●監督:ティム・バートン●製作:デニーズ・ディ・ノヴィ/ティム・バートン●脚本:ダニエル・ウォーターズ●撮影:ステファン・チャプスキー●音楽:ダニー・エルフマン(主題歌:スージー・アンド・ザ・バンシーズ)●原作:ボブ・ケイン●時間:126分●出演:マイケル・キートンダニー・デヴィートミシェル・ファイファー/クリストファー・ウォーケン/マイケル・ガウ/パット・ヒングル/マイケル・マーフィー/ヴィンセント・スキャベリ●日本公開:1992/07●配給:ワーナー・ブラザース(評価★★★)
バットマン リターンズ [DVD]

クリスチャン・ベール in「ダークナイト」('98年)
ダークナイト dvd.jpgダークナイト2.jpg「ダークナイト」●原題:THE DARK KNIGHT●制作年:2008年●制作国:アメリカ・イギリス●監督:クリストファー・ノーラン●製作:クリストファー・ノーラン/チャールズ・ローヴェン/エマ・トーマス●脚本:クリストファー・ノーラン/ジダークナイト ヒースレジャー.jpgョナサン・ノーラン●撮影:ウォーリー・フィスター●音楽:ハンス・ジマー/ジェームズ・ニュートン・ハワード●原作:ボブ・ケイン/ビル・フィンガー「バットマン」●時間:152分●出演:クリスチャン・ベールヒース・レジャー/アーロン・エッカート/マギー・ジレンホール/マイケル・ケイン/ゲイリー・オールドマン/モーガン・フリーマン/メリンダ・マックグロウ/ネイサン・ギャンブル/ネスター・カーボネル●日本公開:2008/08●配給:ワーナー・ブラザース(評価:★★★☆)
怪鳥人間バットマン.jpg怪鳥人間バットマン dvd.jpg怪鳥人間バットマン3_0.jpg「怪鳥人間バットマン」(Batman) (ABC 1966~1968) ○日本での放映チャネル:フジテレビ(1966~1967)/WOWOW


《読書MEMO》
●「エスクァイア」編集部による歴代バットマン映画俳優ランキング(「バットマン」オリジナル・ムービー('66年)を含む)
第1位: マイケル・キートン/「バットマン」(1989年)、「バットマン リターンズ」(1992年)
第2位: クリスチャン・ベール/「バットマン ビギンズ」(2005年)、「ダークナイト」(2008年)、「ダークナイト ライジング」(2012年)
第3位: アダム・ウェスト/「バットマン」(1966年)
第4位: ヴァル・キルマー/「バットマン・フォーエヴァー」(1995年)
第5位: ジョージ・クルーニー/「バットマン&ロビン Mr.フリーズの逆襲」(1997年)
第6位: ベン・アフレック/「バットマン vs スーパーマン ジャスティスの誕生」(2016年)、「ジャスティス・リーグ」(2017年)
バットマン 歴代.jpg

Categories

Pages

Powered by Movable Type 6.1.1