【2432】 ○ テレンス・ヤング (原作:イアン・フレミング) 「007 ロシアより愛をこめて (007/危機一発)」 (63年/英) (1964/04 ユナイテッド・アーティスツ) ★★★★

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今まで観たシリーズ作品の中では一番。"リップサービス"がそのままタイトルに?

007_ロシアより愛をこめてps.jpg007_ロシアより愛をこめてdvd601_.jpg 007_ロシアより愛をこめてdvd60_.jpg 007_ロシアより愛をこめてdvd_.jpg ダニエラ・ビアンキ.jpg
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007_ロシアより愛をこめて es.jpg 犯罪組織「スペクター」は、クラブ諸島の領主ノオ博士の秘密基地を破壊し、アメリカ月ロケットの軌道妨害を阻止した英国海外情報局の諜報員007ことジェームズ・ボンド(ショーン・コネリー)への復讐、それもソビエト情報局の美人女性情報員と暗号解読機「レクター」を餌にボンドを「辱めて殺す」ことで両国に泥を塗り外交関係を悪化させ、さらにその機に乗じて解読機を強奪するという、一石三鳥の計画を立案した。実はスペクターの女性幹部であるソビエト情報局のローザ・クレッ007_ロシアより愛をこめて0ges.jpgブ大佐(ロッテ・レーニャ)は、真相を知らない部下の情報員タチアナ・ロマノヴァ(ダニエラ・ビアンキ)を騙し、暗号解読機を持ってイギリスに亡命する様、また亡命時にはボンドが連行することが条件だロシアから愛をこめて.JPGと言うように命令する。英国海外情報局のトルコ支局長・ケリム(ペドロ・アルメンダリス)からタチアナの亡命要請を受けたボンドは、罠の匂いを感じつつも、トルコのイスタンブルに赴いた。しかし、そこにはスペクターの刺客・グラント(ロバート・ショウ)が待っていた―。

007_ロシアより愛をこめて700.jpg 1963年公開の007シリーズ第2作で、監督は第1作と同じくテレンス・ヤング(1915-1994)。1964年4月日本初公開時の邦題は「007/危機一発」で007/危機一発3.JPGした(意図的に誤字を使った)。1972年のリバイバル公開時に、タイトルを小説の題名に近い「007 ロシアより愛をこめて」に変えていますが、手元にある『大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150』('91年/文春文庫ビジュアル版)にもまだ「007/危機一発」とあり、但し、「ロシアより愛をこめて」と小さくカッコ付きであります(初公開時から主題歌の邦題は「ロシアより愛をこめて」だった)。この本では、ミステリーサスペンス洋画全体の中で15位に入っており、007シリーズの中では最上位にきていますが、個人的にも、今まで観たシリーズ作品の中では一番良かったかと思います。

 イアン・フレミングの原作では、英国情報部vs,ソ連情報部という構図になっているのを、映画の方は脱イデオロギー化と言うか、秘密組織スペクターを敵役にして、ソ連、英国、スぺクターの三つ巴に改変していますが、それでも、当時のソ連にとって好ましくない描写もあったため、同国ではその後007シリーズは御法度とされていたようです。一方、日本国内では、配給収入は約2億4千万円と、前作「007は殺しの番号」に比べ4倍の収入増でした。

007_ロシアより愛をこめて dv.jpg ボンドガールはダニエラ・ビアンキで、ロシアではなくイタリア出身の女優です。知的な雰囲気を醸す美形であり、彼女が演じる秘密情報員タチアナ・ロマノヴァは、偽上司クレッブ大佐(ロッテ・レーニャ)の計略で「祖国のために」ボンドを籠絡すべくスパイとして彼の下へ遣わされて、結局、ボンドのことを好きになってしまうわけで、このパターンは後のボンドガールにも多くみられるタイプであり、また彼女は、その頂点に立つと言っていいかもしれません。

ロシアより愛をこめて1.jpg 前作「007 ドクター・ノオ」('62年)のシルビア・トレンチもこれに近いですが、殺されもしなければ、ボンドとよろしくやるにも至らず、結局ボンドに追い返されてしまう脇役のボンドガールでした。そのシルビア・トレンチを演じたユーニス・ゲイソンが、この「ロシアより愛をこめて」では冒頭、ボンドとハイキングを楽しむガールフレンド役で出ていて、役名クレジットは同じくシルビア・トレンチとなっており、この辺りのお遊びは楽しいです(ボンドは結局、呼び出し指令でハイキングを途中できり上げることになるのだが)。

007_ロシアより愛をこめてq.jpg レギュラー・キャラクターは、第1作から出ていたボンドの上司にあたるM(バーナード・リー)やその秘書マネーペニー(ロイス・マクスウェル)に加えて、秘密兵器担当のQ(デスモンド・リュウェリン)が登場してコマが揃った感じです。例によって、ボンドが最初はやや珍奇で使うことはあるまいと見ていたようなアタッシュケースに仕込まれたその秘密兵器が、いざという時にボンドの窮地を救うことに...(武器以外に金貨が仕組まれていたのも計算づくだったのか)。

007_ロシアより愛をこめて8es.jpg お話の舞台は殆どイスタンブールで、ボンドがタチアナの持ち出したソ連領事館の青写真を入手する場所が聖ソフィア寺院だったりと、異国情緒充分です。ボンド・カーはまだ出てきませんが、オリエント急行からトラックへ、トラックからモーターボートと乗り継いでヴェネツィアへ向かうという流れで、世界の景勝地を飛びまわる豪華観光映画的絵作りがここに出来上がったとも言えます。

From Russia with Love .jpg オリエント急行内でのグラント(ロバート・ショウ)との対決が1つヤマ場なのですが、それまでにもボンドは、ロマの女性同士の男を奪い合っての決闘に巻き込まれたり、ラストでも、全て終わって一安心と思ったら、ホテルのメイドに化けていたクレッブに襲われたりと盛り沢山で、ノン・ストップ007_ロシアより愛をこめてls.jpg・ムービーと言っていいかも。但し、格闘アクションに関しては、ボンドとグラントの殴り合いさえも今観ると何となくやや地味で(列車内で狭い)、最後のクレッブなどは、ボンドに立ち向かうにしても靴先に忍ばせた毒針が武器とホント地味、しかも教え子のタチアナに寝返られてやや気の毒ささえも漂いました(でも、こうした手作り感にに加え、スパイの哀切感もあって悪くないか)。

007_ロシアより愛をこめてss.jpg 「ロシアより愛をこめて」の邦題は、 "From Russia with Love"の原題の意に、「ロシアを愛する以上にあなたを愛する」というタチアナの気持ちを懸けたとの説もありますが、やや無理があるのでは。この作品では、これから任務に就くボンドからマネーペニーへの書き置きとして、この"From Russia with Love"というフレーズが登場します。ボンドに恋愛感情を持つマネーペニーが色々な方法でボンドにアピールするもののボンドにその気はなく、いつも"リップサービス"のみで返すのがシリーズのお決まりとなりますが、その"リップサービス"がそのままタイトルになっているというのはちょっと面白い気がします。

007_ロシアより愛をこめて6.jpg「007 ロシアより愛をこめて(007/危機一発)」●原題:007 FROM RUSSIA WITH LOVE●制作年:1963年●制作国:イギリス●監督:テレンス・ヤング●製作: ハリー・サルツマン/アルバート・R・ブロッコリ●脚本:リチャ007 ロシアより愛をこめて.2.jpegード・メイボーム●撮影:テッド・ムーア●音楽:ジョン・バリー●原作:イアン・フレミング●110分●出演:ショーン・コネリー/ダニエラ・ビアンキ/ペドロ・アルメンダリス/ロッテ・レーニャロバート・ショウ/バーナード・リー/ロイス・マクスウェル/デスモンド・リュウェ007_ロシアより愛をこめてges.jpgリン/マルティーヌ・ベズウィック/ユーニス・ゲイソン/ヴラデク・シェイバル/ヴラディク・シェイバル●日本公開:1964/04●配給:ユナイテッド・アーティスツ(評価:★★★★)
Robert Shaw(1927-78/享年51)/Lotte Lenya(1898-1981/享年83)
ロバート・ショウ in 「007 ロシアより愛をこめて」('63年)/「スティング」('73年)/「ジョーズ」('75年)
ロバート・ショー007.jpgロバート・ショー スティング.jpgロバート・ショー jaws.jpg

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