【1276】 ○ 堀江 あき子 『昭和少年SF大図鑑―昭和20〜40年代僕らの未来予想図 (らんぷの本)』 (2009/07 河出書房新社) ★★★★ (○ リュック・ベッソン 「フィフス・エレメント」 (97年/仏) (1997/09 日本ヘラルド映画) ★★★★)

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自分が大人になる頃にはこうなっていると信じていた時期があった"懐かしい未来"。

昭和少年SF大図鑑 カバー.jpg 昭和少年SF大図鑑.jpg   「エア・カー時代」 小松崎 茂(雑誌「少年」昭和36年1月号.jpg
昭和少年SF大図鑑 (らんぷの本)』 ['09年] 「エア・カー時代」 小松崎 茂(雑誌「少年」昭和36年1月号口絵)
フィフス・エレメント [DVD] 2013.jpg フィフス・エレメント70f.jpg フィフス・エレメント mira.jpg ゲイリー・オールドマン.jpg
フィフス・エレメント [DVD] ミラ・ジョヴォヴィッチ/ゲイリー・オールドマン
 昭和20年代から40年代の少年向け雑誌やプラモデルの箱を飾った空想未来絵図を集めたもので、本郷の弥生美術館で展覧会も行われましたが、その弥生美術館で学芸員をしている女性による編集及び本文解説。

 この方面での画家と言えば、個人的には小松崎茂(1915-2001/享年86)の印象がかなり強いのですが、本書を見ると、小松崎茂が第一人者であったことは間違いないようですが、中島章作、伊藤展安、梶田達二、高荷義之、中西立太、南村喬之と、多彩な人たちがいたのだなあと。

 今見ると、これらの概ね楽天的な、時には物理の法則を逸脱したようなイラストには微笑ましい印象も受けますが、子供時代の一時期においては、自分たちが大人になる頃にはほぼ間違いなくこういう時代が来るのだと、「予測図」より「予定図」みたいな感じで半ば信じていて、素敵な夢を見させて貰いました。

 本書は、そうした夢を描いていた頃の自分を思い出させる、"懐かしい"未来図とでも言えるでしょうか。

「ブレードランナー」('82年/米)/「フィフス・エレメント」('97年/仏)
Blade Runner (1982) ages.jpgFifth Element Cars.jpg 自動車に代わってエアカーが飛び交う様などは、リドリー・スコット監督(「エイリアン」('79/米))の「ブレードランナー」('82年/米)やリュック・ベッソン監督(「グラン・ブルー」('88年/仏・伊))の「フィフス・エレメント」('97年/仏)などの映画の中ではお目にかかれていますが、実現するのはいつのことになるのでしょう。

ポリススピナー.jpg 「ブレードランナー」のハリソン・フォード演じるデッカートが操るポリススピナー(左)に比べて、15年後に作られた「フィフス・エレメント」のパトカーやブルース・ウィリス演じるコーベンが運転するタクシー(上)の方がややキッチュに描かれているのが興味深いです(映画自体も、変てこな悪役ジャン=バティスト・エマニュエル・ゾーグを演じゲイリー・オールドマン.jpgゲイリー・オールドマンやラジオDJ役のクリス・タッカーの怪演が楽しめた、肩の凝らない娯楽作品。この作品でも「ディーバ」(歌姫)がモチーフになっているなあ、リュック・ベンソンは)。

 ただ、この本にある、当時描かれた未来図の全てが荒唐無稽だったとは言えず、臨海副都心構想に近いアイデアやリニアモーターカーの原型など、かなり"いい線"いっているものあります。

 "明るい未来図"ばかりでなく、昭和40年代に入ると、公害問題などの世相を反映して"恐ろしい未来図"も結構出てきて、小松崎茂などは、地球温暖化で極地の氷が溶けて関東地方の大部分が水没する想像図なんてのも描いていて先見性を感じますが、だからと言って人間がエラ呼吸器を手術で植え付け、水中生活に適した身体に変えていくというのは、ちょっと行き過ぎ?

Minority Report.jpgTom Cruise  in Minority Report.jpg 同じくネガティブな未来図として描かれている類で、コンピュータに人間の生が支配されたり、コンピュータによって人間の思考や行動が監視される社会などというのは、ウォシャウスキー兄弟の映画「マトリックス」('99年/米)やスティーヴン・スピルバーグ監督の「マイノリティ・リポート」('02年/米)など、近年のSF映画にも類似したモチーフを看て取れます。
Minority Report (2002)

 但し、「マイノリティ・リポート」(原作は「ブレードランナー」と同じくフィリップ・K・ディック)は、プリコグと呼ばれるヒト個人に予知能力が備わっていることが前提となっていますが、この発想は昔からあったかもしれません。「マイノリティ・リポート」や、同じくフィリップ・K・ディック原作の「トータル・リコール」('90年)が「サターンSF映画賞」を獲って、「ブレードランナー」が賞を逃しているというのは、選考委員としては失策だったのではないでしょうか(因みに、フィリップ・K・ディック本人は、自作の初映画化である「ブレードランナー」」の公開直前で脳梗塞で53歳で急逝していて、完成版を観ることはなかった)。

田中 耕一 記者会見2.jpg 今、若者たちが映画で受身的に観ている様な仮想未来社会を、かつての子供たちは、少年雑誌のイラストで見て、自ら想像力を働かせイメージを膨らませていたのだろうなあ(彼らにとって、これらのイラストの乗り物などは、頭の中では映画のように動いていたに違いない)と思わされます。そして、その中には、今、科学技術の最前線で研究開発に勤しんでいる科学者や技術者もいるのだろうなあと思いました('02年にノーベル化学賞を受賞した田中耕一氏が小松左京原作の「空中都市008」の愛読者だったと自ら言っていた)。
    
ブレードランナー チラシ  22.jpg「ブレードランナー」1982 ンロード.jpg「ブレードランナー」1982 .jpg「ブレードランナー」●原題:BLADE RUNNER●制作年:1982年●制作国:アメリカ●監督:リドリー・スコット●製作:マイケル・ディーリー ●脚本:ハンプトン・フィンチャー/デイヴィッド・ピープルズ●撮影:ジョーダン・クローネンウェス●音楽:ヴァンゲリス●時間:117分●出演:ハリソン・フォード/ルトガー・ハウアー/ショーン・ヤング ●日本公開:1982/07●配給:ワーナー・ブラザース●最初に観た場所:二子東急(83-06-05)(評価:★★★★☆)

フィフス・エレメント.jpgクリス・タッカー.jpg「フィフス・エレメント」●原題:THE FIFTH ELEMENT(Le Cinquie`me e'le'ment)●制作年:1997年●制作国:フランス●監督・脚本:リュック・ベッソン●撮影:ティエリー・アルボガスト●音楽:エリック・セラ●時間:渋谷パンテオン.jpg126分●出演:渋谷パンテオン 2.jpgブルース・ウィリス/ミラ・ジョヴォヴィッチ/ゲイリー・オールドマン/イアン・ホルム/クリス・タッカー/ルーク・ペリー●日本公開:1997/09●配給:日本ヘラルド映画●最初に観た場所:渋谷パンテオン(97-10-24) (評価:★★★★)フィフス・エレメント [DVD]
渋谷パンテオン 東急文化会館1F、1956年オープン。2003(平成15)年6月30日閉館。
    

マイノリティ・リポート06.jpg「マイノリティ・リポート」●原題:MINORITY REPORT●制作年:2002年●制作国:アメリカ●監督:スティーヴン・スピルバーグ●製作:ボニー・カーティス/ジェラルド・R・モーレン/ヤン・デ・ボン/ウォルター・F・パークス●脚本:ジョン・コーエン/スコット・フランク ●撮影:ヤヌス・カミンスキマイノリティ・リポート シドー.jpgー●音楽:ジョン・ウィリアムズ●原作:フィリップ・K・ディック ●時間:145分●出演:トム・クルーズ/コリン・ファレル/ササマンサ・モートン マイノリティ・リポート.jpgマンサ・モートン/マックス・フォン・シドー/ロイス・スミス/スティーヴン・スピルバーグ●日本公開:2002/12●配給:20世紀フォックス (評価:★★★)

トム・クルーズ/サマンサ・モートン(「ミスター・ロンリー」('07年/英・仏・米))


【2014年・2019年新装版】

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