「●映画」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒【1782】 江藤 努/中村 勝則 『映画イヤーブック 1996』
テーマ分けにより、見やすくて充実した内容。巻末の淀川長治氏の対談もいい。
(25.8 x 21.2 x 1.6 cm) 淀川長治(1909-1998/享年89)
『ポスターワンダーランド―シネマパラダイス』['96年]
クラシックなものから最近のものまでのポスターを集めた講談社の「ポスターワンダーランド」シリーズには、映画ポスターを集めた本書「シネマパラダイス」の他に、「酒とたばこ」('95年)、「カー・グラフィティ」('96年)などがありましたが、映画好きならやはり本書でしょう。
洋画・邦画の主だった作品のポスターを集め、200点という掲載点数はそう多くは無いと思いますが、その分、オールカラーの図版がしっかりしていて中身は濃く、作品の選定も含め充実しています。
見開きページごとにテーマ分けされ、「ハリウッドは歌の都」「なつかしの名画群-ハリウッド全盛期」「ヒッチコック映画の魅力」とか、「映画界、最盛の昭和30年代」「独立プロの活躍」「渡世人の美学」などと題された特集になっていて、それぞれの右ページ上に年代が書かれているのも解りやすいし、間にあるコラムやエッセイなどもいいです。
無声映画から始まって、邦画に関しては、例えば和田誠氏のイラストによる「新宿名画座」のポスターをフューチャーしたり、洋画に関してはハリウッド映画だけでなく、東欧などのアート系のポスターなどもフォーカスしたりしています。
個人的には、巻末の淀川長治氏と新井満氏の対談が楽しめ、淀川氏がロベール・アンリコ監督の「ふくろうの河」('61年)のストーリーや、ニール・ジョーダン監督の「クライング・ゲーム」('92年)の導入部分を語る、その話ぶりの旨さに感心させられました(80歳代後半にしてスゴイ記憶力!)。
また、ポスターに関する話でも、日本の監督で一番ポスターにこだわったのは誰か(黒澤明)といった話や、淀川氏がユナイトで「駅馬車」の邦題をそのように決める前に予定されていたタイトル(「地獄馬車」)の話などが興味深かったです。
あのポスターの「駅馬車」という字は、淀川氏自身がそこらにあった定規で手書きしたという話は、別のところでも読んでビックリした記憶があります(荒井魏 著 『淀川長治の遺言―映画・人生・愛』('99年/岩波書店)だったか?)。
「淀川長治さんの宣伝裏話」より