【3620】 ○ 野村 芳太郎 (原作:松本清張) 「影の車 (1970/06 松竹) ★★★★

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"恐怖の子ども"は主人公の幻想。許される範囲内での「映像のウソ」。

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<あの頃映画> 影の車 [DVD]
松本清張傑作映画ベスト10 10 影の車 (小学館DVD BOOK)」藤剛/岩下志麻/小川真由美
影の車 db.jpg影の車001.jpg 浜島幸雄(加藤剛)はある日、幼馴染の小磯泰子(岩下志麻)の呼びかけに振り返る。それは、平凡な男の生涯を根底からゆさぶる運命の声だった。浜島は旅行案内所に勤続12年の係長で、妻の啓子(小川真由美)は万事に社交好きで影の車003.jpg陽気だ。毎日が会社と団地の往復、生活も仕事も単調で味気ない浜島は、泰子に会って同じバスに乗っただけで軽い興奮があった。二度目に泰子に会った時、勧められるままに泰子の家を訪ねる。4年前に夫に死なれた泰子は6歳の健一(岡本久人)と二人暮し。保険の集金と勧誘での慎ましい生活だ。健一は父親が無いためか、孤独癖のある無口な子供だった。夢多き思春期の共通の追憶に話が弾み、浜島の泰子への傾斜は急だった。やがて、狭い泰子の家では、健一の眼が浜島には苦痛になった。だが、自然影の車002.jpgの成り行きで二人は結ばれる。初夜のように白無垢の長襦袢で浜島を迎える泰子がいた。浜島は健一を手なづけようと心を砕くが、その都度失敗する。浜島にも幼い日に夫を失った母(岩崎加根子)と伯父(滝田裕介)との間に立たされた忘れ得ぬ記憶があったため、健一の反感がこたえた。そして、健一が自分を殺そうとしている幻想に悩まされ始めた。一度は妻と別れて泰子と結婚しようと決心しながら、健一のことを考えると、また泰子を諦らめようかと思い迷った。一方、空閨を癒やされた泰子は、啓子への後ろめたさも、浜島を見る健一の白い目にも心を向けず、ひたすら愛欲の歓びに溺れた。紅葉のころ、浜島苦心のドライブ旅行も小さな健一の本能的な反発を食う。浜島は再び幻影の虜になった。宿命というには、余りにも似かよった浜島自身の幼年期の体験。あの時のように俺は健一に殺される。泰子は浜島のノイローゼを満ちたりた笑いで一蹴した。しかし、恐るべき運命の符合は、悪魔の悪戯か、結末が逆になった―。

影の車 d.jpg 野村芳太郎監督、橋本忍脚本の1970年公開作で、原作は、松本清張の「婦人公論」1961(昭和36)年1月号から8月号まで連載され、同年8月、中央公論社より単行本が刊行された連作短編集『影の車』の内の1つ「潜在光景」。ただし、この"潜在光景"というタイトルに符合する結末が最後になってみないと分からないためか、それとも逆にネタバレ的なタイトルとも言えるせいか、短編集のタイトルが映画化作品のタイトルになっています。

影の車 j.jpg 加藤剛が主人公の不倫する男を演じていますが、彼が岩下志麻演じる不倫相手の子どもに対して抱く恐怖はおそらく幻想であり、それは、今自分は不倫をしているという罪の意識と、かつて幼い自分が母の不倫相手に対して殺意を抱いたという原体験からくるものでしょう。子どもの所作の一つひとつが自分を批判しているように見え、仕舞いには凶器でもって自分を殺害しようとしているように見えてきます。

 映像的にも、子どもの顔に影が差すように撮ったり、持っている道具がこれから凶行に及ぶための凶器に見えるように撮ったりしています。見方によっては、ヒッチコックがサスペンス映画において"禁じ手"とした「映像のウソ」であるとも言えますが、ここは、"恐怖の子ども"は加藤剛演じる主人公の心象を映像化したものであることが明らかであり、許される範囲内での「映像のウソ」ではないかと思いました。

「影の車」ドラマ.jpg「影の車」ドラマ1.jpg 因みに、これまで3度テレビドラマ化されていて、2001年の「松本清張特別企画・影の車」(TBS)(風間杜夫・原田美枝子・浅田美代子版)を観ましたが、これも悪くなかったです。この作品の場合、主人公の男性は真面目そうな人間であればあるほど良く、それは罪の意識が浮き彫りにされるためで、風間杜夫もその要件を満たしていましたが、加藤剛はそれ以上で、まさにピッタリでした。

 ・1971年「影の車」(フジテレビ)日色ともゑ・園井啓介・岡本久人・橋爪功
 ・1988年「松本清張サスペンス・潜在光景」(関テレ・フジテレビ) 水谷豊・大谷直子
 ・2001年「松本清張特別企画・影の車」(TBS)風間杜夫・原田美枝子・浅田美代子

影の車 w.jpg影の車 岩下.jpg「影の車」●英題:THE SHADOW WITHIN●制作年:1970年●監督:野村芳太郎●製作:三嶋与四治●脚本:橋本忍●撮影:川又昂●音楽:芥川也寸志●時間:98 分●出演:加藤剛/岩下志麻/小川真由美/岩崎加根子/滝田裕介/近藤洋介/岡本久人/小山梓/芦田伸介/稲葉義男/長谷川哲夫●公開:1970/06●配給:松竹●最初に観た場所:池袋・新文芸坐(25-03-13)(評価:★★★★)

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This page contains a single entry by wada published on 2025年8月10日 16:02.

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