【2875】 ○ 佐藤 有文 『悪魔全書 復刻版 (ドラゴンブックス)』 (2018/11 復刊ドットコム) ★★★★

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錚々たるメンバーによるイラスト。"豪華なキッチュ感"を楽しむ本(?)。

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悪魔全書 復刻版 (ドラゴンブックス)』['18年/復刊ドットコム]

悪魔全書 22.jpg 1970年代に数多くの怪奇系児童書を手掛けた怪奇作家・オカルト研究者の佐藤有文(さとう ありふみ、1939-1999)の本の復刻版で、ドラゴンブックスは、講談社が'74年11月から''75年12月にかけて刊行の怪奇系児童書のレーベルです(全11巻)。著者の代表作としては、「ドラゴンブックス」では本書『悪魔全書』以外に『吸血鬼百科』『霊魂ミステリー』『四次元ミステリー』『日本幽霊百科』があり、その外に立風書房の「ジャガーバックス」で『日本妖怪図鑑』『世界妖怪図鑑』など、秋田書店では『妖怪大全科』などがあります。

悪魔全書 26.jpg 今は当然のことながら全部絶版になっていますが、古本市場でプレミア価格になっていることもあって、そのうちの幾つかは、本書のように復刻版として刊行されているようです。昭和の味わい加え、キッチュ感がいいのだろうなあ。本書で言えば、イラストを描いているのは、石原豪人柳柊二南村喬之、加藤孝雄に加え、秋吉巒、山田維史といった錚々たるメンバーで、それらの人の絵が1冊に収まっているという辺りも、古本市場でプレミア価格がつく要因かと思います(解説よりも絵の方が楽しめるかも)。

悪魔全書 復刻版164.jpg  悪魔全書  エクソシスト.jpg

悪魔全書 18.jpg 解説の方は、当時、'74年7月にホラー映画「エクソシスト」('73年/米)が公開されたばかりであっためか、その「エクソシスト」を結構取り上げていますが、全体としては、中世ヨーロッパの典型的な悪魔(悪魔審問)・魔女(魔女裁判)は勿論のこと、バビロニアの悪魔から始まって、ルーダンの怪事件まで、古今東西の悪魔・魔女及び関連事項を広く取り上悪魔全書 ルーダンの怪事件.jpg尼僧ヨアンナ_22.jpgげています。ルーダンの怪事件は、ポーランド人作家ヤロスワフ・イヴァシュキェヴィッチ原作、イェジー・カヴァレロヴィッチ監督の映画「尼僧ヨアンナ」 ('60年/ポーランド)のモチーフになっていますが、写真は映画からとっているね。映画は舞台がフランスからポーランドに置き換えられているのだけど。

我が子を食らうサトゥルヌス.jpg食人鬼ゴール.jpg この人の場合、秋田書店の『妖怪大全科』で、ギリシャ神話のクロノスが子供の神々を喰らった件にモチーフを得たゴヤの「我が子を食らうサトゥルヌス」の絵に、ポルトガルの「食人鬼」とのキャプションをつけたりして(クロノスは"鬼"ではなく、大地および農耕の"神"。解説も典拠不明で、好き勝手に書いているのではないかという印象)、結構いい加減でもあるのですが(『妖怪大全科』は復刻されていないなあ)。
  
 まあ、そうしたいい加減さも含め(多くの妖怪を描いたあの水木しげるだって、「柳田國男のあたりのものは愛嬌もあり大いに面白いが、形がないので全部ぼくが作った」と言っている)、"豪華なキッチュ感"(言葉の用法的に矛盾しているが)を楽しむ本(?)とでも言うべきでしょうか。人によっては、子供時代のトラウマを追体験する本だったりして(笑)。

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This page contains a single entry by wada published on 2020年3月 8日 00:54.

【2874】 ○ 真鍋 博/星 新一 『真鍋博のプラネタリウム―星新一の插絵たち』 (2013/08 ちくま文庫) 《1983/10 新潮文庫》 ★★★★ was the previous entry in this blog.

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