「●心理学」の インデックッスへ Prev|NEXT ⇒ 【211】 新宮 一成 『夢分析』
「●講談社現代新書」の インデックッスへ
この線でいくと、星占いでも何でも心理学になり得るのではないかと...。
『トランスパーソナル心理学入門―人生のメッセージを聴く』講談社現代新書 〔'99年〕
本書によれば、〈トランスパーソナル心理学〉とは"個を越えたつながり"を志向する心理学で、行動主義・科学主義心理学や精神分析への批判から、第3の流れとして登場したマズローやロジャーズらの〈人間性心理学〉の、そのまた発展プロセスの中で生まれた"第4の勢力"としています。
マズローらの〈人間性心理学〉が「自己実現」を目指すとすれば、それさえもエゴイズムやナルシズムから新たな心の呪縛に陥るという矛盾を孕むもので、〈トランスパーソナル心理学〉では、その呪縛を解き放つために、「私の癒し」と「世界の癒し」「地球の癒し」を不可分とした"個を越えたつながり"を志向することで自分に起こる全ての出来事に意味を見出し "個が生きるつながり"を回復するとしています。
カウンセリングでの応用においては個人の〈超心理学〉的体験も重視しますが、むしろ考え方としては〈超心理学〉のレベルをも超えてスピリチュアリティを重視した心理学で、こうした考えに惹かれる人もいれば、新手の宗教のように思えて引いてしまう人もいるかも知れないと思います。
自分も(将来的には考え方が変わるかも知れないけれど、今のところ)後者の方で、実際、本書で紹介されているケン・ウィルバーには、 『宗教と科学の統合』という著作もあるし、自らの想像力が貧困なのかも知れませんが、この線でいくと、本書巻末にもその名のある「鏡リュウジ」じゃないけれど、星占いでも何でも心理学になり得るのではないかと(ウィルバーには、『ウィルバー・メッセージ 奇跡の起こし方』という著書もある)。
著者の諸富氏は、日本トランスパーソナル学会の会長であるとともにカウンセリングの専門家であり、〈フォーカシング〉などの技法を生かした心理療法の記述は参考になりましたが、確かに〈フォーカシング〉を〈トランスパーソナル心理学〉の応用的手法と捉えることが出来るかもしれませんが、「世界の癒し」「地球の癒し」となると、心理学の「了解」範囲を超えているような気がします。
こうした心理学の流れががあるということは知っておいて無駄ではないと思いますが、本書は新書という手軽さはあるものの、諸富氏自身も本書の内容を「私の色に染まったトランスパーソナル心理学」と自ら述べているように、ウィルバーの思想の人生論的解釈と、プラグマティカルな心理療法に重点が置かれ、どの部分が心理「学」なのかよくわからない本でした。