【140】 ○ ロジャー・エンリコ/ジェシー・コーンブルース (常盤新平:訳) 『コーラ戦争に勝った!―ペプシ社長が明かすマーケティングのすべて』 (1987/05 新潮文庫) ★★★★

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ボードの一員としてその場にいるような臨場感。コーラ戦争は終わっていない。

20040529.jpg           The Other Guy Blinked.jpg  enrico_sm.jpg Roger A. Enrico, PepsiCo
コーラ戦争に勝った!』 新潮文庫 〔'87年〕/"The Other Guy Blinked: How Pepsi Won the Cola Wars"

 後にペプシコ社会長となるロジャー・エンリコは、コーラ業界において、'70年代から激しさを増して「コーラ戦争」とまで呼ばれたコカ・コーラとの覇権争いの最中にペプシコ社社長に就任しますが、本書は彼が、その挑戦意欲・決断力とリーダーシップ、さらには徹底したマーティング戦 略により、シェアの奪回を果たした過程が描かれています。

 今もって示唆に富む内容ですが、翻訳がいいのか(常盤新平氏訳)、読んでいて自分がペプシコのボードの一員としてその場にいるような臨場感があり、読み物としても楽しめました。

 本書冒頭にあるように、敗れたコカ・コーラ社は方針転換し、'85年に〈ニュー・コーク〉を発表しますがこれは不評に終わり、僅か90日で元の味に戻しています(ただし、素早い決断をしたゴイズエタ会長は、後にその素早さゆえに名経営者と言われた)。

Pepsi Michael.jpg マイケル・ジャクソンのCM起用が本書終盤のヤマで、契約を結ぶことが出来た時点でエンリコはペプシの勝利を確信したフシがありますが、当時のマイケル・ジャクソンは、今のように大衆の好悪が割れるようなキャラクターイメージではなく、圧倒的な国民的スーパースターだったということでしょう(今でもポップス・ファンにとってスーパースターであることには違いないが)。

Michael Jackson Pepsi Generation

 CMによるイメージ戦略の威力は、コーラ以上に味そのものの識別が微妙なビールの業界における、アサヒスーパードライの成功を想起させます(飲料商品というのは多分にイメージ商品なのだなあと)。

ペプシネックス.jpg ペプシとコカ・コーラの売上げシェアが拮抗しているアメリカではともかく、日本ではシェアは圧倒的にコカ・コーラの方が勝っているので、その点では本書の内容は少しピンとこない部分もあるかも知れません。
 その後ペプシコは、日本での事業をサントリーに売却していますが、マーケティングやR&Dと原液供給はアメリカ本社主導で行う〈ボトリングシステム〉を維持していました。しかし日本でのシェアの伸び悩みは続き、ついに〈完全ボトリングシステム〉の方針を変更し、サントリー主導で開発した日本向けブランド「ペプシネックス」を今年('06年)になって発売しています。     
 このように、「コーラ戦争」はまだまだ続いているという感じですが、ペプシのCMも、'04年に作られたBritney Spears、Beyonce、P!NK、Enrique Iglesias出演の「We Will Rock You」に見られるように、派手さを一層に増している感じがします。

PEPSI Commercial (CM) - We Will Rock You [Britney Spears(中央), Beyonce(左), P!NK(右), Enrique Iglesias]

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