【528】 △ 山口 瞳 『会社の渡世 (2005/07 河出書房新社) ★★☆

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未刊エッセイ2シリーズだが、期待したほどでもなかった。

会社の渡世.jpg 『会社の渡世』 (2005/07 河出書房新社)

山口瞳2.jpg 山口瞳(1926‐1995)の没後10周年企画として、単行本未収録エッセイを集めたもので、「山口瞳氏の生活と意見」と「山口瞳氏の一日社員」から成っています。

 「山口瞳氏の生活と意見」は'65(昭和40)年から翌年にかけて『漫画読本』に断続連載されたもので、'63(昭和38)年から連載がスタートした「男性自身」と雰囲気が似ていますが、漫画よりも野球に関するコメントが多いのが興味深かったです。著者はもともと野球少年でしたが、生涯スポーツマインドを持ち続けた人だったなあと。

 「山口瞳氏の一日社員」は、'64(昭和39)年に『オール讀物』に連載された氏の企業訪問記で、高度成長期の企業人や経営者のここまで来たことへの感慨と現在の自信、これからの夢と希望が感じられます。

 ただ、旅行記風に面白くしようとしていたりはしますが、本質部分ではPR記事のライターがよく書く文章に似ている感じがして(著者の出自のせいかも。「習い癖となる」...)、企業のことはよくわかっていいのだけれども、期待したほど面白いとは思いませんでした。

 村上春樹に『日出る国の工場』('87年/平凡社)という"工場"訪問記がありますが、この手のものはそういった"素"の人が書いたものの方が、雑誌のパブリシティなどを見慣れている読者には意外性があって面白いものになるのかも。
 
 全体として、単行本で購入するほどのものでもなかったかなと(文庫化されるかどうか知らないけれど)。

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