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「●講談社現代新書」の インデックッスへ
さほど目新しさが感じらず、むしろ、テレビって簡単には変われないのかも、とも。
『テレビ進化論 (講談社現代新書 1938)』 ['08年]
梅田望夫氏の『ウェブ進化論』('06年/ちくま新書)を模したようなタイトルで、本書の方もそれなりに売れたようですが、内容的にはさほど目新しさが感じられませんでした。
コンテンツ・ビジネスの現状を、最近のトピックス(かなり瑣末なものも含まれているように思える)を織り交ぜ、「再確認」的な意味でわかり易く取り纏めてはいるものの、最近の動向や現状分析が主体で、主テーマであるはずのテレビの「今後」ということに関してはやや漠としており、角川が昔やったメディアミックス戦略(出版・TVと広告と芸能キャラクターの複合戦略)に注目していたりしますが、これって、多かれ少なかれ今はどこの局でも(NHKですら)やっていることではないかと。
一見、「ギョーカイ」人が語るメディアの未来像みたいなムードを漂わせていますが、著者は最近まで経済産業省の官僚であった人で、TV局や映画会社など映像メディアの流通・配信に関わる産業が、いかに過去の因習やインフラ整備に係る法的な規制に縛られているかという「業界」内の産業構造の問題点が重点的に指摘されており、電波事業は郵政省の許認可及び監督事業であるわけですが、経済産業省にもメディアコンテンツ課というのがあり(著者はかつてここに勤務していた)、やはり人は自分の得意分野のことしか書けないということか、とも思ったりしました。
但し、グーグルのビジネス技法の特徴を「直接収益のように単一の受益者に金銭対価を要求するのではなく、複数の受益者を想定し、ある受益者には無償で利益を与え、そこから、獲得した情報と引き換えに別の受益者から金銭を回収するというやり方」だとし(これも言わば"再確認"事項に過ぎないが)、こうした「情報の三角貿易」を映像ビジネス世界でも模索する動きがあるというのには関心を持ちました。
ただ全体としては、ウェブの世界でアルゴリズム化されたOne To Oneマーケティングが進む中、テレビの方はそう簡単には変われないのではないか(「地デジ」にしても、郵政族議員の利権の上に進められているのであって、そうした双方向効果が具体的に見えているわけではない)という思いを、本書を読むことで更に強くしました。