【1659】 △ 中谷 巌 『愚直に実行せよ!―人と組織を動かすリーダー論』 (2006/04 PHPビジネス新書) ★★☆

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"バランスの取れた教養人"が書いた"当たり障りのない"リーダーシップ論"。具体像が見えてこない。

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愚直に実行せよ! 人と組織を動かすリーダー論 (PHPビジネス新書)

 「PHPビジネス新書」の創刊ラインナップの1冊。

 第1章で、優れたリーダーの4つの資質として、「志がある」、「ビジョンと説明能力がある」、「愚直な実行力がある」、「身をもって示す姿勢がある」ことを挙げ、更に、カルロス・ゴーンの成功例などを引きながら、日本でリーダーシップを発揮するにはどのような条件が必要かを考察しています。

 第2章では、「志を高く持つ」ということはどういうことなのかを、「自信」「教養」「人間理解」をポイントに説き、第3章では、「説明能力」と「大局観」を読む力の大切さを説くと共に、日本という国の文明論的「位置」を意識せよと述べています。

 第4章では、「愚直な実行力」を持てということを、IBMのルイス・ガースナーの経営姿勢などを引いて説き、最後に(第7章)、リーダーは「身をもって示す」ことが肝要であるとしています。

 これだけだとキレイに纏まり過ぎていると思ったのか、第5章で、リーダーたる者は時に「狐」となれとし、また、第6章では、コーポレートガバナンスの問題などを扱っていますが、そうした章も含め、全体にキレイに纏まっているという印象で、さらっと読めるけれど、インパクトは弱いかなという感じ。

 結局、タイトルにもなり、まえがきでも強調されている「愚直に実行せよ」ということが"肝"なのだろうなあと思いましたが、ガースナー氏の登場も、書かれていることも、想定の範囲内という感じがしました。

 幅広い分析的な視点は、いかにも総研(三菱UFJリサーチ&コンサルティング)の理事長らしいですが、"バランスの取れた教養人"が書いた"当たり障りのない"リーダーシップ論"ということで、具体的なリーダー像が今一つ見えてこないのが難かも。

 本書の中で小泉純一郎元内閣総理大臣のリーダーシップを持ちあげていますが、'08年に『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社)を著して市場原理主義との決別を表明し、「小泉改革の大罪と日本の不幸 格差社会、無差別殺人─すべての元凶は「市場原理」だ」という論文を発表したりもしています(変節ぶりが甚だしいが、この人自身リーダーとして大丈夫なのか?)。

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