【1660】 ○ 千野 信浩 『できる会社の社是・社訓 (2007/04 新潮新書) ★★★☆

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企業理念・経営理念やビジョン・ミッション・バリューなどと微妙にニュアンスが異なるのが興味深い。

できる会社の社是・社訓6.JPGできる会社の社是・社訓.jpg 『できる会社の社是・社訓 (新潮新書)

 電通の「鬼十則」や日本電産、日清など有名企業の社是・社訓の成り立ちや、そこに込められた創業者や中興の祖の思いなどが、コンパクトに分かり易く紹介されていますが、各見出しには、社是・社訓に限らず、創業者の言葉などを引いているものもあり、併せて、創業者がどのようにして事業を起こし、どのようにしてそれを育て、現在の会社の礎を築いたかが書かれていて、ミニ社史を読んでいる感じも...(多分に各社の社史を参考にしているということもあるだろう)。

大丸.jpg先義後利.jpg 大丸の「先義後理」など享保年間(18世紀初頭)に遡るものから。楽天の「スピード!! スピード!! スピード!!」など近年のものまであり(因みに、ライブドアには社訓が無かったそうな)、また、シャープ、松下電器(現パナソニック)、ホンダなどになると、創業者の立志伝の紹介みたいになってきますが、それらはそれで、自分が知らなかったことなどもあって面白く読めました。

 著者は、就職を切り口にした教育問題などの特集記事を担当する経済週刊誌記者だそうで、社是・社訓が実際にその企業に今どのような形で定着し、活かされているかといった組織・人事的な視点は殆どありませんが、さすがに大きな不祥事のあった会社については、その時の経営者が社訓に悖る行動をとったことを解説しています。

 大丸の「先義後理」などの古い社訓は、広い意味でのCSR、コンプライアンスに沿っているように思われ、一方、資生堂のエシックス(倫理)カードにある「その言動は、家族に知れても構いませんか?」などは、90年代の企業不祥事の多発を受けてのものなのだろうなあ。

 サントリーが、山口瞳、開高健らが執筆陣に加わった社史『サントリーの70年』で、創業者・鳥井信治郎「やってみなはれ」「みとくんなはれ」を前面に押し出していたのに、100年史では「人と自然と響きあう」が企業理念となっていて、つまらなくなったようなことを著者は書いていますが、確かに。

 こうしてみると、創業者個人の強烈な思いが込められた「社是・社訓」は、「企業理念」「経営理念」や「ビジョン」「ミッション」「バリュー」などと呼ばれるものと重なる部分は多いものの(IBMの"THINK"とかアップルの"Think different"なども「行動規範」であり「バリュー」の一種とみていいのではないか)、「社是・社訓」と「企業理念」「経営理念」と言われるものとは、或いは日本と海外との間では、それぞれ微妙にニュアンスが異なる部分もあり、もしかしたらその部分に日本的経営の特性があるのかも―と思ったりもしました。

IBM1.jpg Think differentド.jpg

《読書MEMO》
●電通「鬼十則」"廃止"労働環境改善の取り組み発表(2016年12月9日 テレビ朝日ニュース)
できる会社の社是・社訓7.JPG 電通、1951年に定めた「鬼十則」を廃止.jpg

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