【373】 ○ 山元 大輔 『脳と記憶の謎―遺伝子は何を明かしたか』 (1997/04 講談社現代新書) ★★★☆

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前半はわかりやすく、後半のニューロンと遺伝子の関係はやや専門的。

脳と記憶の謎200_.jpg脳と記憶の謎.jpg  山元 大輔.bmp 山元 大輔 ・東北大教授(行動遺伝学)(略歴下記)
脳と記憶の謎―遺伝子は何を明かしたか』 講談社現代新書 〔'97年〕

Illustration by Lydia Kibiuk.jpg 冒頭の、「頭の記憶」(陳述記憶)がダメになるアルツハイマーと、「体の記憶」(手続き記憶)がダメになるピック病との対比で、記憶とは何かを述べるくだりはわかりやすいものでした。扁桃体が情動記憶センターだとすれば、海馬は陳述記憶の集配基地であり長期記憶に関わる-この説明の仕方もわかりやすい。

 さらに、短期記憶にも長期記憶にも前頭前野が深く関わっており、記憶の座とは一点にあるものではないことがわかります。ここまでが前半部分。

 後半はニューロンの情報記憶メカニズムに迫りますが、NMDAレセプターがグルタミン酸に結合し、神経細胞を興奮させるイオンチャンネルとして働く...、NMDAレセプターへの刺激により一酸化炭素が発生し、LTP(長期増強)が起こるが、このとき転写を起こす遺伝子群がある...、といったニューロンによる遺伝子の読み出しという考え(多分これが著者の一番言いたかったこと)に至るプロセスは、分子生物学の初学者である自分には、ちょっと難解に感じられました。
 
 本書の前半と後半の難易度にギャップを感じたのは、自分だけだろうか。

《読書MEMO》
●アルツハイマー型痴呆...「体の記憶」(手続き記憶)はOKだが、「頭の記憶」(陳述記憶)はダメ。ピック病は、その逆(ホッチキスで爪を切る...)(28-29p)
●海馬は陳述記憶、扁桃体は情動記憶。海馬がなくても体が反応、ただし自分では覚えていない。扁桃体がないと、覚えているのに感じない(81p)
●《概要》記憶のシステムは筋肉を動かすシステムと同じ刺激=反応で、ニューロンが未知の刺激には電気反応を起さないのに、過去に経験した刺激につては特徴的反応を示すのは、経験済みの刺激だけ通りやすくなっているため

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山元 大輔(やまもと・だいすけ)
1954年生まれ。東京農工大学大学院修了。米国ノースウエスタン大医学部博士研究員、三菱化学生命科学研究所室長をへて、99年より早稲田大学人間科学部教授、03年より現職。『恋愛遺伝子運命の赤い糸を研究する』(光文社)は、遺伝子の専門知識がない人でも面白く読める本として注目を集めた。そのほかにも『行動を操る遺伝子たち』(岩波書店)など著書多数。

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