【3412】 ◎ ジョン・C・マクスウェル (宮本喜一:訳) 『あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発する』 (2006/09 ダイヤモンド社) ★★★★☆

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指図や命令なしに人を動かす力こそが本物のリーダーシップ。その鍛え上げ方を説く。

あなたがリーダーに生まれ変わるとき.jpgあなたがリーダーに生まれ変わるとき2006.jpg developing the leader within you.jpg ジョン・C・マクスウェル2.jpg ジョン・C・マクスウェル 『あなたがリーダーに生まれ変わるとき―リーダーシップの潜在能力を開発する』 〔'06年〕『Developing the Leader within you

 あとがきによると、著者は、アメリカでリーダーシップと言えば、知らない人がいないほどの権威であり、さらに、Wikipediaによれば、2014年に、「Inc.」誌による世界のリーダーシップ、経営の専門家のランキングで第1位となったそうです(二十数年にわたり教会の主任牧師を務めた経験も持つ)。そうした著者の古典的名著とされる本書(原題:Developing the Leader Within You, 1993 (Repackaged 2001))は、指図や命令なしに人を動かす力こそが本物のリーダーシップであるとし、誰もが持っている本物のリーダーになるための資質を鍛え上げるにはどうすればよいかを説いた本です。

 第1章では、リーダーシップとは影響力のことであり、それは身につけられるものだとしています。さらに、リーダーシップには、低次から高次にかけて、①地位、②相互理解、③成果、④人材育成、⑤人間性の5つのレベルがあるとしています。

 第2章では、リーダーシップ発揮のカギは、ものごとの優先順位を見きわめることであるとし、パレートの法則(80:20の法則)を紹介するとともに、その優先順位に見られるいくつかの法則を解説しています。

 第3章では、リーダーシップの最も重要な構成要素は誠実さであるとし、誠実さが信頼感を育てること、誠実さは大きな影響力があることなど、誠実さが重要な理由を7つ挙げています。

 第4章では、リーダーシップの究極の試練は、徹底した変革を生み出せるかどうかであり、なぜ人は変化に抵抗するのか、変化を起こす前にチェックすべきことは何か、変化に向かう空気をつくり出すにはそうすればよいかを説いています。

 第5章では、リーダーシップを手に入れる最速の方法は、みなが抱えている問題を解決することであり、優れたリーダーは先回りして問題を認識する能力を有し、立ち向かっている問題の大きさを評価でき、正しい心構えのもと、しっかりした行動計画を立て、問題解決へのプロセスを過たないとしています。

 第6章では、リーダーシップにとりわけ大切なものはその心構えであり、リーダーの心構えが部下の心構えをも左右するとして、自分の心構えを変えるにはどのようなステップを踏めばよいか解説しています。

 第7章では、周りの人たちまでをリーダーに育て上げるだけの影響力があるリーダーには限界がないとし、人材育成の成功のカギをとして、①人について適切な仮説を立てる、②人について適切な質問をぶつける、③人に対して適切な支援をする、の3つを挙げています。

 第8章では、リーダーシップになくてはならない資質として、ビジョンを挙げています。そして、ビジョンを企業に根づかせるには、①認知(現実的な目で現状をみつめる)、②先見性(洞察力のある目でこらから先のことを見通す)、③可能性(ビジョンのある目で起こりそうなことを見通す)の3つのレベルがあるとしています。

 第9章では、本物のリーダーはみな、自分自身を律して初めて、周りの人たちを動かせることを知っているとして、リーダーにとっての自己規律の重要性を説くとともに、自分の生活にめりはりをつけるために実践すべき10のこと、誠実さを育むために意識すべき5つにことを挙げています。

 第10章では、リーダーシップの最も重要な課題はスタッフの育成であるとしています。常勝チームには本物のリーダーがいて、財務・人事・計画立案の三大分野をコントロールし、優秀な人材を選抜し、メンバーの実力を向上させているとしています。

 極めてオーソドックスなことが書かれており、「リーダーシップ」について俯瞰するのに適切な本です。本書によれば、最も内向的な人でも一生の間に1万人の人たちに影響を与えるという社会学者の説があるとのこと。そして本書では、リーダーシップとは影響力のことであると言っているわけです。他の人に影響を与える可能性のある人間としての心構えを持ち、自分のリーダーシップの潜在能力を開発することは、充実した人生を送るためには、誰にとっても必要なことかもしれないと、改めて思わされる内容でした。

多くの事例を引いていますが、それで終わらせず、その都度、ポイントを3つや5つ、或いは10程度にとまとめているのが分かりやすいです。以前に著者の『伸びる会社には必ず理想のリーダーがいる』('11年/辰巳出版)を読みましたが、著者のこれまでの著作から著者自身がエッセイを130篇抜粋して、26週間の月曜から金曜まで毎週5日、それぞれ1日1頁に収まるような形で割り振ったもので、本来ならば、26週間かけてじっくり内省を深めながら読むべきなのだろうけれど、これを一気に読んでしまったので、何だか"お腹一杯"であまり頭に残らなかった感じでした。こっちを先に読んでおけば、先に「体系」が理解出来てよかったかもしれないと思った次第です。

《読書MEMO》
●【目次】
はじめに
第1章 リーダーシップとは影響力のこと
第2章 リーダーシップ発揮のカギ 優先順位の見きわめ
第3章 リーダーシップの最も重要な構成要素 誠実さ
第4章 リーダーシップ究極のテスト 徹底した変革を生み出せるか
第5章 リーダーシップを手に入れる最速の方法 問題の解決
第6章 リーダーシップにとりわけ大切なもの 心構え
第7章 最も大切な資産を育てる 人材の育成
第8章 リーダーシップになくてはならない資質 ビジョン
第9章 リーダーシップにつける価格 自己規律
第10章 リーダーシップの最も重要な課題 スタッフの育成
エピローグ
訳者あとがき
●リーダーシップの5つのレベル(第1章)
・第一レベル:地位
・第二レベル:相互理解
・第三レベル:成果
・第四レベル:人材育成
●優先順位の法則(第2章)
・優先順位は決して"不変不動"ではない
・どんなに重要そうに見えても、無視できないものはない
・"そこそこの出来"は"最高の出来"の敵
・すべてを手に入れることは不可能
・優先順位の高いものがあまりにも多いと、立ち往生の原因になる
・優先順位の低いものが過大な負担になると大きな問題が生まれる
・期限と緊急度が私たちに優先順位の設定を迫る
・本当に重要なものがわかったときには手遅れ、という場合が多すぎる
●誠実さはなぜ重要か、7つの理由(第3章)
①誠実さが信頼感を育てる
②誠実さには大きな影響力がある
③誠実さは志の高い規範を生み出す力となる
④誠実さが生み出すのはイメージではなく確かな評判
⑤誠実さとは人を動かす前に自分時自身が日々誠実に生きること
⑥誠実さは、リーダがただ賢くなるのではなく信頼できる人物になるための力になる
⑦誠実さは必死で身につけるもの
●心構えを変えるための6段階(第6章)
①問題のある感情を見きわめる
②問題のある行動を見きわめる
③問題のある考えからを見きわめる
④真っ当な考えを見きわめる
⑤組織全体が真っ当な考えにこだわるようにする
⑥真っ当な考えを実現する計画を練る
●人材育成の成功のカギをと(第7章)
①人について適切な仮説を立てる
②人について適切な質問をぶつける
③人に対して適切な支援をする
●ビジョンを企業に根づかせるには(第8章で)
①認知(現実的な目で現状をみつめる)
②先見性(洞察力のある目でこらから先のことを見通す)
③可能性(ビジョンのある目で起こりそうなことを見通す)
●自分の生活にめりはりをつける(第9章)
①自分の優先順位を定める
②自分のカレンダーに優先順位を書き込む
③予期しない案件に少しばかり時間を割く
④仕事への取り組みはひとつずつ
⑤仕事のスペースを整える
⑥自分の気質と相談しながら仕事をする
⑦通勤時間を簡単な仕事や自己啓発に活用する
⑧自分のために役立つシステムを開発する
⑨会議と会議の合間の分秒を活用するプランを常に用意する
⑩活動ではなく、成果にこだわる

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