【3413】 ○ 田口 力 『次世代型リーダーの基準―世界基準で「話す」「導く」「考える」』 (2022/02 角川新書) ★★★★

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リーダーの在り方と併せ、リーダーシップ研修を行う際の気づきを促してくれる。

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次世代型リーダーの基準 世界基準で「話す」「導く」「考える」 (角川新書)』['22年]

 GE(ゼネラル・エレクトリック)のリーダー育成機関「クロトンビル」でマスター・トレーナーを務めた著者が、GEの幹部研修で語られる「リーダーに求められる考え方」「リーダーシップを発揮するために必要なスキル」を紹介した本です。

 第1部「仕事の基本」では、序章で、誰もが今よりも「自分を進化」させることができるとし、第1章で、自分を「知る」ための方法を「ジョハリの窓」などを用いて紹介、第2章で、自分で「考える」とはどういうことかを述べています。第3章では、自分を「鍛える」にはどうすればよいか、そのために心掛けるべきことを説き、「学ぶことをやめたら、会社を去れ」とまで言い切っています。第4章では、自分を「変える」ステップを「守・破・離」という考え方などと併せて解説し、第5章では、自分をより高みに「導く」ためには、自分の運命を自分でコントロールすることを意識せよと述べています。

 第2部「部下の育て方」では、序章で、なぜ部下を育てなければならないのかを説き、第1章で、部下を"エンゲージ"させるにはどうすればよいか、第2章で、部下の"人生の価値観"を把握するにはどうすればよいかを、それぞれ解説しています。第3章では、GEにおいてOJD(On the Job Development)と呼ばれる仕事を通じた人材育成について、フィードバックやコーチングの在り方と併せてそのポイントを紹介しています。第4章では、部下の基本能力をアップデートし、単なる「権限移譲」を超えた「エンパワーメント」をするための実践方法を説き、仮に「今日から100日で部下を育てよ」と言われたら何から着手すべきかを述べています。

 第3部「プレゼンの基本」では、序章で、なぜGEにおけるプレゼンが簡潔であることを旨としているのか解説しています。第1章で、優れた人は事前に「聞き手を知ろう」として情報を集めて整理するとし、第2章では、なぜ「構造がシンプル」な話は効果的なのか、プレゼンの全体構造の在り方について述べています。第3章では、なぜ簡潔な資料が「人を動かす」のか、第4章では、なぜ短く「15秒で話す」と記憶に残るのか、聞き手にとって印象的なプレゼンにするための技法を紹介し、第5章では、質問・反論は「歓迎すべき」ものであるとしてその理由を述べています。

 著者の前著『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられている仕事の基本』(2014年)、『世界最高のリーダー育成機関で幹部候補だけに教えられているプレゼンの基本』(2017年)、『世界基準の「部下の育て方」』(2019年)の3冊を合本・再編集したものであるため内容的には盛りだくさんです。ただし、図などの使用は最小限に抑え、ちょうど研修の場で講師が語るようなトーンで書かれていて、また、著者自身の経験に近いところで書かれていることあり、比較的読みやすかったです。

 GEでトップ15%の社員が受けられる幹部研修で語られる内容というだけあって、強い上昇志向が前提となっているように感じられます。また、GEという一企業の研修内容を紹介して「次世代型」「世界基準」と言い切る自信はスゴイいと思いました。しかしながら、ものすごく目新しいこと書かれているわけではなく、普段そこまで考えなかったり見落としがちであったりするけれども、本来は基本として押さえていくべきことが多く書かれていると思いました。

 自分の価値観を知る人は成長が早く、ではそれをどうやって知るかといったマインドセット的なことことから、プレゼンの後「ご質問はありませんか?」ではなく「ご質問をお願いします」と言うのがよいといったテクニカルなことまで、まさに「考え方」から「スキル」まで幅広くかつ体系的に網羅されていて、人事パーソンにとっては、リーダーの在り方を考える上でもそうですが、リーダーシップ研修を行う際のさまざまな気づきを促してくれる本でもあるかと思います。

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